03 松の怪談

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:37
03 松の怪談
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:38


始まりも終わりも『大好き』だった。


3 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:38
「やっほー、ごっちん」
「おーまっつー。どしたのさ」

楽屋前。
扉を開けたら、まっつーがいた。

「んー? 確認にきたの」
「なんじゃそら」
「いいじゃん、中に入れてよ」

にこにこ笑顔の、いつもと変わらないまっつー。
その手の持ったものさえ除けば。

でも、なんか、触れちゃいけない気がして。
とりあえず中に招き入れて畳に座らせた。

4 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:39
入れた途端におかしくなったのは鼻。
でも、気づいちゃいけない気がして。
とりあえず、まっつーにお茶を出した。

「で? なんの確認しにきたの?」
「にゃはは、ごっちんせっかちー」

せっかち?ごとーが?
どくん、と鳴る胸。
それを合図に、どくどくどく、と早くなる。

でも、これ以上大きな音を出しちゃいけない気がして。
とりあえず笑った。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:39
「気になるもん。で、なに?」
「うん、えっとねー」

笑ったまっつーの顔には、いつもの人懐っこい笑み。
その顔に、いくつか飛び散ったものさえなければ本当にいつもの笑み。

でも、言っちゃいけない気がして。
ただ、ごくんと生唾を飲み込んだ。

「あのねー、あたしさーいっつも壊しちゃうんだ、大好きなものとかさー
昔お父さんに買ってもらった人形も、手とか足とかどっかにやっちゃってー
お母さんから貰ったペンダントも踏み潰しちゃったりー、大事な手紙も
いつのまにかゴミ箱に破り捨てちゃってさー」

出てきたのは、他愛のない相談事。
その手にもったものをクルクルと回さなければ、よくある悩み相談。

でも見ちゃいけない気がして。
とりあえず、テーブルを見つめてふーんって頷いた。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:39
「それは困るねぇ」
「そう!困るんだよー、判ってくれる?ごっちん」
「うん、まーわかるよ」

ほんとは何が判ってるのか判らない。
でも、一つだけ判ったのは、

「やっぱごっちんっていいヤツだよねー。それでさー、ずっと考えたんだー
なんでこうやってすぐに壊しちゃったりするんだろうって。そしたら気づいたの」
「へー、なんでなんだろうね?」

まっつーの笑みが、すっごく輝いて見えたってこと。
それと、

「あのね。多分大好きだからなんだよ。今まで壊しちゃったもの全部。
大事だから壊しちゃったの。すっごく好きだから潰しちゃったの」
「へぇー…」

ごとーの声が、どんどんかすれていってるってこと。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:40
「さっきさ、モーニング娘さんの楽屋に行ってさ、確認してきたの。
で、気づいたんだぁ。あたしやっぱり、みきたんが大好きなんだって。
他の子なんてどうでもよくってさ、みきたんが大好きだったの」
「あー、まっつーいっつも言ってるもんねぇ。美貴ちゃんが好きって」
「うん」

あのさ、まっつー、
もう見てもいいよね。
っていうか、見ずには入られないんだけど。

8 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:40
「ねぇ、まっつー、それ、包丁?」
「うん、文化包丁」

気づいてもいいよね。

「赤く濡れてるねぇ。それに生臭い」
「そうだね、人間の血だもん」

触れてもいいよね。

「ちょっと…、ベタベタ…してるねぇ」
「うん、意外と粘っこいものだったんだ」

言ってもいいよね。

「…それって…、…誰の…?」
「みきたん」

9 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:41
音を出してもいいよね。

「う゛…う゛ぇぇ…っ! げほっ、げほっ!」
「なんだよー、吐くなよー」

気持ち悪い。
胸がムカムカする。
心臓が、どくどくする。

「それでね、ここにも確認にきたの」

がたんと背もたれから離れて、まっつーはあたしの隣にすり足で寄ってくる。

気持ち悪い。

「…なんの?」

ぺたぺたと手で畳を這ってくる。

赤い手形をいくつも残して。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:41
気持ち悪い。

「あたしが、ごっちんのこと好きなのか」

気持ち悪い。気持ち悪い。

「それで…?」

気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。

「うん」

ギラリと光ったのは、美貴ちゃんで濡れた包丁と、

「大好き。だから、壊すね」

同じくらい真っ赤に濡れたまっつーの瞳。

そして、激痛。

11 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:41
見えたのは、赤く染まる壁。
自分の胸。
鏡。
畳。
テーブル。
天井。
まっつー。

「にゃはははっ、大好きだよ、ごっちん」

まっつー。

ま…つー…。

ま………
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:42
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:42
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/10(木) 12:42
15 名前:名無読者さん 投稿日:2006/08/11(金) 18:37
こ、こわい・・・

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