02　一段で君より上

1 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:25

02　一段で君より上

2 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:25

ピン　ポーン。
だだだだっと、階段を駆け下りる音が聞こえた後、がちゃりと玄関のドアの鍵が開けられる音。

「こんにちはー」
「はいこんにちは」

美貴は肩にかけたトートバッグに一度手をやって、挨拶をした小春に応えた。
すす、と玄関に引き下がる小春の後について玄関へ入る。
靴を脱いで揃えていると小春が、「お茶持ってきますね」と台所の方角へ消えた。
一瞬逡巡した美貴だが、勝手に二階の小春の部屋へと向かった。
美貴は大学三年生で、小春の家庭教師をしている。
毎週木曜日の午後六時にこうして小春の家を訪れては勉強を教えるのだ。
仲介業者を通さず、小春の両親から直々に依頼されての家庭教師のバイトで時給はなかなか良い。

3 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:26

さすがに勝手に部屋にまで入るのは躊躇われたのか、部屋ドアの前で待っているとお盆にコップを
ふたつのせた小春がやってきた。

「ドア開けてくださーい」
「はいよ」

美貴がドアノブを捻り、先に部屋に入る。ドアが閉まらないように手でおさえていると、
小春が、「ありがとうございます」と礼を言った。
フローリングの床にマットを敷いてその上に座布団がふたつのせてある。
勉強机はあったが、教えやすさ優先のために低い小さなテーブルを使っていた。
美貴は小春の斜め前になる位置に腰を据え、小春がすすめるままにコップを手にした。

「暑かったでしょ？」
「うん、今年は暑いねえ」

確か去年も同じことを言って麦茶を口にした覚えがある。
カラン、とコップの中の氷が音を立てた。

4 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:26

「……今日は、なんか宿題出してたっけ？」
「国語の問題集です」

小春がテーブルの上の問題集をめくって、美貴に差し出す。
美貴はトートバッグから筆箱を取り出し、赤ペンを手にした。
解答の薄い冊子をぱらぱらとめくりながら記述の問題を採点する。

「んー、できてるね」
「よかったあ。あ、次も見てください」

小春が手を伸ばして問題集のページをめくる。
手を引いて美貴は小春の手を見た。バレーボールをやっているらしい小春の手だが、
とてもきれいだ、と美貴は思った。突き指なんかをしている時があるが、もったいないと思う。

「ここがわからなかったんです」
「えーと見せて」

美貴が眼鏡を取り出してかけた。
問題文を読んで解答を確かめた後、解説する。

5 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:26

「だから、これは主人公の心情を」
「あ、わかりました」

小春が問題集を引き寄せてシャーペンで解答を書き込もうとする。
美貴の手に小春の手が触れた。なんとなく、美貴はそのまま小春の手をつかんで目の前に持ってくる。

「どうしたんですか？」
「いや、きれいだなあと思って」

褒めてもなんにもでませんよー、と小春が笑った。美貴も一緒に笑う。
さりげなく小春が美貴の手を振り解き、解答にとりかかった。

6 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:26

7 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:27

「もう一時間半経ったか」
「終わりましょーかぁ」

小春が、ん、と伸びをする。美貴はあくびを堪えた。
テーブルに手をついてふたりが同時に立ち上がる。小春がにかっと笑った。

「藤本さんかわいいなあ」
「へ？」

五センチほどの身長の違いがある小春と美貴。小春が美貴の頭を撫でた。

「よーしよし」
「……美貴は動物か」
「あはは、怒らないで」

小春が美貴の頬を片手で撫でた。美貴はくすりと笑って、「怒ってないよ」と言った。

8 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:27

「眼鏡もういいでしょ？」
「ん」

小春が美貴の眼鏡を外す。たたんで美貴に返した。

「ありがとう」
「どういたしまして」

小春がコップがのった盆を手にし、部屋から出た。美貴も続く。

「ご飯食べていってくださいよ。ハンバーグですよ」
「肉いいねえ」

小春、美貴の順に階段を下る。
美貴は階段の一段目に立って、小春を見下ろした。

「藤本さん？」
「ん？」

首をかしげた小春に、ささやかな笑みを返して美貴は段から降りた。

9 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:27

川�Vv�V）＜バイト行くか

10 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:27

川*�Vv�V）＜こはる

11 名前：名無飼育さん 投稿日：2006/08/10(木) 00:27

終