34 Melty Love
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:02
- 34 Melty Love
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:03
- 私は今、雪だるまを作っている。
今年も始めて積もった雪で雪だるまを作る。
ただし一人で。
去年まで一緒に雪だるまを作っていた笑顔はもうない。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:04
-
「いくつまで雪だるまなんか作る気なのさ」
「そんなこと言って自分も楽しみにしてたんでしょ?」
ここ二、三年彼女との間で繰り返された会話。
「それに折角積もったんやもん。
雪だるま作らないなんて嘘やん」
「なんだよそれ?」
幼馴染の彼女は始めて雪が積もると必ず私の家に来ては
一緒に雪だるまを作りたがった。
中学に上がり、私だけ部活を始め、生活のリズムが合わなくなってきて、
会えない時間が増えてしまったここ数年だったが、その儀式だけは変わらずに続いていた。
「いくつまで雪だるまなんか作る気なのさ」
だけど今年、私の口からこぼれた言葉は、
冷たい風にただ浚われていくだけだった。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:05
- *****
「きっともう来てんだろうな」
私は部活を終えると、彼女を思い
家路を急いでいた。
「おっかえり〜♪遅かったやん」
案の定彼女は、私の部屋であたかも自分の部屋のように
コタツに潜り込み、みかんを食べ、くつろいで居た。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:06
- *****
「今年は来てくれないんだね」
私は一人雪を丸める。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:07
- ******
「へへへ、今年も可愛いのできたね」
「はいはい、そうだね」
「なんなんん?最近詰めたない?」
じゃれ付いてくる彼女を軽くあしらうと彼女はすねたようにプーっと膨れた。
「ははは、万丸で雪だるまみたい」
私がからかうと、今度はそっぽを向いてしまった。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:07
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「……もう一度会いたいよ」
雪球を重ねながら呟く。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:09
- ******
「昨日さあ、うち告白されてん」
「え?誰に?」
私は思わず詰め寄った。
「え?岡村先輩」
「岡村先輩ってサッカー部のちっこい?」
「うん、その岡村先輩」
「……で、何て言ったの?」
私ははやる動悸を押えつつ尋ねた。
「まだ、なんも言ってへん」
「……付き合うの?」
問い返したわたしはやけに喉が渇いて、かすれた声しか出なかった。
「……特に好きな人もおらんし、岡村先輩おもろいし、
良い人そうやし、付き合って見てもいいかなぁって」
「なんだよ!そんなんで付き合うの!
そんないいかげんな気持ちで付き合うの!?」
私は分けも分からず怒鳴っていた。
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:10
- 「いいかげんってなんやの!?なんで自分にそこまで言われなならんの?
じぶんとは関係ないやん!」
「関係なくない!」
そう、関係なくなんてなかった。
「いやだ!付き合わないでよ!!おねがい……誰とも付き合わないで」
私はいつの間にか彼女を抱きしめていた。
「……なんで?」
彼女が困惑気味に尋ねる。
「好きだから!ずっと好きだったから!
……小さいころからずっと」
「どう言う……意味なん?」
「誰にも渡したくない!……ずっと傍にいて……ほしいの」
彼女は私の告白に最初は驚いていたが、
しばらくすると小さく微笑んで頷いてくれた。
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:11
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「今でも大好きだよ」
黒いボタンとアメリカンチェリーで雪だるまに顔を作りながら呟く。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:12
- ******
「いい?」
私は彼女が恥ずかしそうに頷くのを確認すると、口付けをした。
唇に、頬に、首筋に、胸に……
彼女の雪のような白い肌のいたるところに唇を落とした。
私が唇で触れるたび、徐々に彼女の体が熱を帯びてくる。
白い彼女の肌が紅く染まっていくのがたまらなく美しくそして愛しかった。
―――
「送っていくよ」
「大丈夫、すぐそこやもん」
「……ほんとに大丈夫?」
「うん♪」
「ね〜、明日も来てくれる?」
「うん、雪だるま解けてへんか見にね」
彼女は悪戯っぽく微笑むと、私の頬にキスをして
小さく手を振り帰って行った。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:13
- ******
「ごめんね。あの時やっぱり送って行けば良かったんだよね」
私は自分の首の革紐から、彼女の形見のホワイトゴールドの指輪をはずすと
雪だるまの腕に使った枝に通しながら呟いた。
そう、あの時送って行けば。
それで彼女を救えたのかは分からないけれど、自分も一緒にいけたのかもしれない。
「そっくりだね」
真ん丸い白い顔、大きな黒目、アメリカンチェリーの唇。
なんだか方を膨らませ、唇を尖らせてるようで
どことなく彼女のすねた顔に似ていた。
「どうせなら笑顔で作ってあげればよかったよね」
私はチェリーの唇に、軽く唇を落とすと部屋に帰った。
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:15
- ―――
「……え、誰?
そこに誰か居るの」
夜中目を覚ますと、暗い部屋の片隅に浮かび上がる白い影を見つけた。
「誰ってひっどいなぁ」
「え?なんで?」
その声の主を認識すると、信じられず問い返した。
「何でってひっどいなぁ」
そう言うと暗い部屋の中で彼女はくすくす笑った。
「雪積もったから来たんやん」
「雪積もったからって……自分こそ酷くない?)
私が信じられない気持ちのまま不満げに呟くと、
彼女は両手で私の顔をはさんで、
唇を重ねて、優しく囁いた。
「大切な人に会いに来たに決まってるやん」
わたしは嬉しくって彼女を抱きしめた。
でもその体も、さっき触れた手のひらも、唇も氷のように冷たくって。
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:16
- 「大丈夫?すっごく冷たいじゃん」
「うん、ずっと外におったから」
「早く入りなよ」
私は布団の端を持ち上げ、彼女を促した。
「もう、エッチなんやから」
「なっ!そんなんじゃ?」
彼女は悪戯っぽく微笑むと、真っ赤になっている私の隣に滑り込んできた。
「でもなんで?だって去年の事故で」
「言いかけた私は再び、やわらかく冷たい感触に唇をふさがれた。
「うちは今ここにいる。すぐ傍に。
それだけでいいやん」
「……うん」
彼女の真っ直ぐな瞳に見つめられ、
なぜかわたしは二の句を次げなくなっていた。
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:19
- ―――
どれくらいの時間がたったの妥ろう。
抱き合ったまま、思い出話に花を咲かせていると
いつの間にかカーテンの隙間からは、柔らかい朝の光が差し込んできていた。
「……もう朝なんだね?」
「……ほんま……早いね」
彼女はそう言ったきり二人とも黙り込んでしまった。
「……今日は良い天気になりそうだね」
「……うん」
私は気まずい沈黙から抜け出そうと話題をふってみたんだけど、
そのかいもなく、なぜか彼女は寂しそうに頷くだけだった。
「…………」
「…………」
再び訪れた気まずい沈黙。
そして彼女は突然ためらいがちに囁いた。
「……ねえ……抱いてくれる?」
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:19
- 「え?」
なんだかおかしい。
私が知っている彼女は意外と恥ずかしがりやで
自分からこんなこと言える子じゃなかったはずだ。
「いやならいいけど……」
「そんなんじゃないけど……でも
……まだこんなに体冷たいよ」
「……きっとすぐ……熱くなるから」
私はその言葉と売るんだ彼女の瞳に抗うことはできなかった。
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:20
-
―――
私は彼女に口付けをした。
あの時と同じように、唇に、頬に、首筋に、胸に……。
彼女の雪のように白い歯だのいたるところに唇を落とした。
そして、私が唇で触れるたび、冷たかった彼女の体が徐々に熱を帯びていった。
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:22
-
―――
「大丈夫?」
愛し合った後、私は一向に息が整わない彼女に尋ねた。
「……うん、もう……限界かも」
「え?」
「……作ってくれて……ありがとう。
おかげで一晩だけでも……戻ってこれた」
彼女が苦しそうな息のした囁く。
「え?なんだよ?なんのこと?」
「ありがとう……ずっと好きでいてくれて
……うちのこと覚えていてくれて」
「何言ってんだよ、それじゃまるで」
そう、それじゃまるで
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:23
- 「でも……これからは、うちのことは
……もう、うちは傍に……いてあげれへんから」
「止めてよ、何言ってんだよ」
わたしは思わず彼女に回した手に力を込めた。
「ありがとう、うちは、……加護亜依は……辻希美に出会えて幸せでした」
その瞬間、彼女の体は私の腕をすり抜け、跡形もなく消えた。
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:25
- ―――
「……亜依ちゃん」
気がつくともはや朝日とは言えない強い日差しがカーテンの隙間から差し込んでいた。
「……夢……だったの?」
私は一人ベットの中で、自分を抱きしめるようにして蹲っていた。
なんて夢を見たんだろうか。
私は寂しさと少しの自己嫌悪を覚えた。
「……これって……」
私が半身を起こそうとした、その時
腕の中に何か硬い物を見つけた。
それは日の光の中、キラキラ光るホワイトゴールドの指輪だった。
- 21 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:35
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「……亜依ちゃん……ありがとう
……辻希美も加護会いに出会えて幸せでした」
私は指輪に囁き、口付けをすると 再び首の皮ひもに通した。
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:51
- F
- 23 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:52
- I
- 24 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 23:52
- N
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