20 gene

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/06(金) 12:10
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2 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/06(金) 12:14
レジで「袋要らないです」と言うと安倍さんはポケットから
折りたたまれた布を取り出した。広げるとそれは大きめの
バッグに変わって、買ったものをすべて包み込んでしまった。

安倍さんの家に来るのは初めてだった。私達6期に比べて
いっぱいお給料を貰っているって聞いてたし、私が小学生の
頃からモーニング娘。をしていたのだから、相当豪華な
暮らしをしているだろうと思っていた。
そんな私の想像はあっさりと打ち砕かれる。安倍さんの家は
部屋も靴も服も私と変わらない程度、いや、もしかしたら
私より少ないかも知れない?
それにしてもあぁ、こたつがないのが残念。

「ちょっと亀ちゃん、そんな見ないでよー」
トレイを抱えて載せて安倍さんが来た。ふたつの湯飲みと
お菓子入れ。さっきコンビニで買ったの、わざわざ移したんだ。
ことんとそれをテーブルに置くとソファに、私の横に腰を降ろした。
「安倍さんの部屋、すっごくシンプルですね」
見回しながら言うと安倍さんは「これくらいで困らないから」と
微笑んだ。

飲み終わった湯飲みをシンクに置きにいくと、冷蔵庫の上で
牛乳パックが丁寧に切られて重ねられていた。
「こんなことまでしてるんですね」
「え、なんのこと?」リビングから声がする。
「牛乳のパック、ちゃんと洗ってるんですね」

リサイクルとか面倒じゃないですか?と聞いた私に
安倍さんはそりゃあ面倒だよと笑った。
「でもさ」と続けた安倍さんの言葉は、私の胸にぐっと
刺さった。

駅まで送ると言う安倍さんを無理やり部屋に返して、
私はひとり駅への道を歩く。見上げれば月と星。街灯は
薄暗く心もとないけれど、私はポケットに手をつっこみ
胸を張る。ふぅとつく息は白い。

いろいろな悩みというか愚痴を安倍さんに聞いてもらって
だいぶすっきりした。私の悩みなんかきっと安倍さんは
5年も前に体験して乗り越えているんだろうな。
亀ちゃん悪くないよとか頑張ったねとか笑顔で聞いて
くれていたけれど。

今までを振り返ると、私はいつでも自分のことばかり
考えていた。歌を覚えられなかったときも、踊りが
完璧じゃなかったときも、そんな私がどう思われるか
それだけを気にしていた。
ファンの人達や他の娘。達にかかる迷惑をもっともっと
気にしなくちゃいけないってのに。

私よりちっちゃいのに、私より遥かに大きな背中。
安倍さんに追いつこうと決意して切った、小学校から
伸ばしてた髪。でもそんなことじゃスタートラインにも
並べてなかった。
「よし」
思い立った私は、走り出した。ポケットから出した手を
振り、息を詰まらせながら、ほとんど全力で駅へ。
なんかこう、いてもたってもいられない感じ。家に
着いたら苦手なステップを特訓しようとか考えてるし。

駅の改札をくぐると電車が見えた。そのままホームへの
階段を駆け下り電車に飛び乗る。やがて弾んだ息も
落ち着きを取り戻すけれど、それでも電車は発車しない。

「ただいま××地方にて大雪のためこの電車も発車を……」

繰り返されるアナウンス。
周りを見れば諦めて降りていく人、車掌さんを問い詰める
人、本を読みふける人、眠る人。いろんな人。
こっちは晴れているのに、××地方なんてここから遥か
遠くなのに、それが影響してくるなんて。
安倍さんの言う通り、ちっちゃなリサイクルでもどこか
遠くの誰かさんを本当に助けているのかも知れない。

世界や自分が変わるのも、最初はそれから始まるのかな。
信じることと、始めること。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/06(金) 12:18
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4 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/06(金) 12:18
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5 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/06(金) 12:18
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6 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/02/28(火) 12:08
another gene
7 名前:Max 投稿日:Over Max Thread
このスレッドは最大記事数を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。

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