10 ずっと好いとってよかと?

1 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:03
10 ずっと好いとってよかと?
2 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:03
「れいなー」
「なん?」
「今日も、行くの?」

「そげんこと、絵里には関係なか」

付いて来るなと言わんばかりに、教室の扉は閉められた。
絵里は、日直のれいなを待っていた絵里なのに。
一人、教室に取り残された。

「れぃなぁ」

夕日が差して赤く染まった教室。
届かない絵里の気持ちをあらわすかのように、声は赤の世界に消えていく。

あの日から、毎日こうだった。
3 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:04
それまでは、なんでも絵里に話していたのに。
あの人と挨拶しただの、登校途中にすれ違っただの。
向こうにしてみれば、なんでもないこと。
日常の一つで片付けられるようなことでも、れいなにとってはそれは夢の一歩で。
それをうれしそうに話すれいなが、絵里はただうれしかった。
嫉妬心とか、そういうものは一切無かった。

自分の大好きなれいなが喜んでくれている。

たったそれだけのこと。
それが絵里にとって一番の喜びであって。
その笑顔が自分に向けられたものでなくても……絵里は、それでも満足だった。
4 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:04
なのに。
なのにだ。

絵里は机をバンと叩く。

「どうして、れいなをいつまでも縛り付けるんですか?」

問いかける。
何も無い教室で、問いかける。
あの人が座っていた椅子に向かって、問いかける。
返事は、あるはずなんてない。

「れいなは……れいなは、一緒の学校に来れることを楽しみにしてたんですよ!」

言ってしまってから、肩が震えた。
自分が泣き始めていることを、絵里は自覚した。
5 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:05
「なのに……どうして……」

血のように真っ赤な教室で、絵里は声を上げて泣いた。
あの日以来、泣いたことの無いれいなの代わりをするかのように。

だけど、それはれいなが流したい涙とは別の種類の涙。
憎しみというエキスを、全身から抽出して流れる涙だ。

殺してやりたい。

絵里は強く思う。

存在自体を無いものにしたい。
れいなの記憶から、あの人に関することは、全部。
全部消し去りたい。

そうすれば……れいなはもう一度笑ってくれるかな?

私にじゃなくていい。
でも、あの人以外の誰かに、笑ってくれる?

馬鹿げた考えだけど。
それが絵里にとっての精一杯で。
6 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:05
涙を拭くことなく、絵里は教室の窓から外を見た。
町を赤く照らす夕日。
それは、昔から少しも変わることが無くって。
これから、大人になっても、決して変わることが無くって。

絵里は小さく呟いた。

「れいな……ずっと好きでいていいかな?」

7 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:06

◇◇

8 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:06
石畳に響くスニーカーの音。
夕日で真っ赤に染まった幾つものお墓は、さながら地獄のようにも見えた。
午後17時過ぎ。
所謂、妖怪が一番出てくると言われる逢魔が刻と呼ばれる時間帯。
れいなはそれを知っているわけではないが。
仮に知っていたとすれば、彼女はこう思うだろう。

妖怪でもなんでもいい。もう一度会えるのなら。と。

いつも通り、入り口で桶に水を汲んで、右手に持つ。
最初はどれくらいの量がいるかわからなくて、何度も汲みに戻ったりしたものだ。
だけど、今は違う。
一番角にあるお墓の前に立つと、手際よく水をかけていく。
備えられた花は、昨日れいなが買ってきたもの。
まだ瑞々しく花を咲かすそれを取り出し、水だけ替える。

「ピンクは、好いとった色やったね」

線香を取り出し、火をつけながられいなは言う。
その情報は、れいなが日々の会話から得ることができた、名前と学校以外の唯一の情報。
携帯についていたストラップがピンク色だったから。
「可愛いかストラップね」と言ったれいなの言葉に対する答えだった。
9 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:07
線香の独特な香りが、辺りを包む。
この瞬間がれいなは好きだった。
自分まであの世にいる気分になって。
あの人と同じ世界にいれる気がして。

手を合わせる。
今日の授業がどうだったとか、お弁当がおいしかっただとか。
思いつく限りの今日あった出来事を、心の中で一つ一つ話していく。
毎日毎日続けられるそれ。
ここに来てからなのだ。
れいながこうしてゆっくりとコミュニケーションを取れるのは。

それまでは、自分のことは名前と学校くらいしか伝えられていない。
だから、もっと自分のことを知って欲しいと。
れいなはただそれだけを思って。

目を開けて顔を上げる。
すっきりとした笑顔。
絵里がずっと求めている笑顔がそこにはあった。

それから、れいなは口を開く。
答えてくれるわけも無いのに、毎日毎日呪文のように口にしてきた言葉を。
10 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:07

「石川さん……ずっと好いとってよかと?」

11 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:07
从 ´ ヮ`)
12 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:08
ノノ*^ー^)
13 名前:10 ずっと好いとってよかと? 投稿日:2005/08/17(水) 18:09
从*・ 。.・从<さゆはずっと可愛いもん

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