われはうみのこ

1 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:18
われはうみのこ
2 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:18
時間があるから海にでも行こうか、相棒がそう呟いた。
特に拒否する理由も無かったから、ついていく事にした。

港町を出て目の前の道を真っ直ぐ歩いた。
本当に真っ直ぐ。ひたすら真っ直ぐ。

「予定よりかなり早く済んだけど、あれで良かったんやろか」
「遅かったら問題かもしんないけど、早いんならいいんじゃない?」

二股に分かれた道にぶつかった時でもとりあえず真っ直ぐ歩いた。
真っ直ぐ。本当に真っ直ぐ。

「性格出てるよね、ウチら」
「前にしか進まんって決めたからな」
「いつ決めたんだよ、のん聞いてないぞそれ」
「言うとらんもん」
「うっわ、最悪。アイちゃんそんなんだから」
「おーっ、潮の匂いがする!」
「聞けよ人の話!」

砂浜の手前でぼうぼうに生えていた雑草をかきわけながら、
やっぱり真っ直ぐ歩いた。
思い切り前に突き出した手に感触がなくなって、砂浜が現れる。
同時に潮風がウチらの前髪を真後ろに持っていった。

「うぷっ」

強い風だったので一瞬息が出来なくて顔を横に反らしたら、
アイちゃんも同じように反らしてて目が合った。
3 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:18
「やーいオールバックハーゲ」
「お前だって同じだろ!」
「あー残念や、今日曇ってるから海汚ねーなあ!」
「だから人の話聞けっつーの!」

砂浜の上に出てみたはいいけどこれ以上先は大海原なもんで、
とうとうウチらは歩くのを止めてぼんやりと波を眺めた。
行こうと思えば向こうに行けるなあなんてアイちゃんはちょっと
本気っぽかったので、そればっかりは止めてくれと全力で引き止めた。
のんを置いて行くな。

波は前後に行ったり来たり。
水なのに白く泡立ってるのは何でだろ、水槽の水はいくら
波打ってもこんな風にならねーよなあ。なんて事を考えていたら

「わーれーは うーみのーこ しーらなーみーの〜」

隣のアンポンタンはいきなり海に向かって歌いだした。

「……何それ」
「昔の歌や」
「そんなんあるんだ」
「やたら古い記憶だけはバッチグーなんよ」
「人の話は聞かないけどな」
「のんつぁんは腹壊すの解ってる癖に食うの止めんよな。
 あーしが止めんとずっと食っとる」
「それはぁー……だから感謝してるって言ってんじゃん」
「んふふ」
「……何かムカつくなあ、その笑い」
4 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:19
昼間だっつーのに空は曇っててやたら暗くて、アイちゃんは
何度も何度もそのことを残念がっていた。
どうしてそんなに気にすんの、と聞いたら、

昔々のことじゃった。地球で一番最初の生物は海から生まれた。
終わり。

「終わりかよ!」
「のうて、そん時の海ってひって綺麗やったんやと。けどもう
 今の海は汚れてもうて二度とその綺麗な海を見ることはできん。
 ほやったらせめて、太陽の光でキラキラ光った海を見たかった」
「あー……」

全てを聞いたらなかなかどうして深い理由だったので、のんは
どう返事していいかわかんなくて無言のまま波打ち際を歩いた。
ウチらだって水ん中から生まれたじゃん、咄嗟にそう言いたかったけど、
言い返される言葉は何となく予想できたから言わなかった。

二十分くらい歩いたと思う。
百メートルくらい向こう側に岸壁が見えて、砂浜もそこで途切れていた。

「ゴールだね」
「もう終わりかあ」
「終わり終わりってさっきから言うなよ。今日まだ残ってんだから」
「……なあのんつぁん、あれ、人やない?」

アイちゃんが立ち止まって岸壁を指差した。
見てみると確かに、人、っていうか海に浸ってる大岩に囲まれた隙間から、
服の色っぽい質感の深緑色が覗いてる。けど。
5 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:20
「ゴミとか草じゃねえの」
「いいや、あーし目ぇ良いもん、あれ絶対人や!」

言うが早いか、次の瞬間のんの目の前には駆け出したアイちゃんの
背中があった。
だからのんを置いてくなっつーの!

全力疾走してやっと追いついた。言ってた通り、人だった。
緑色のジャケットを着た、女の子。
岸壁の真下にゴロゴロあったうちの一番どでかい岩の上に膝を抱えて座ってて、
のん達のことを見た瞬間全身をビクッとさせた。
汗だくで必死こいて走ってきたから驚くのも無理ないか。
てか他の理由は考えたくない。

アイちゃんはいくつかの岩の上をピョンピョン飛び移り、女の子が座ってる
岩の手前で止まる。岩の高さがちょうど胸くらいのところにあったから、
その上に肘をついて作った声で女の子に訊ねた。

「迷子ちゃんかぇ?」

ひっさしぶりにこのロリ声聞いたなぁ。つっても、三十分くらい前だけど。

「……違います」

女の子は小さく首を振った。

「違うの?んじゃあ一人で遊びに来たんだ?」

……港町の、残り、かな。

「アナタノオナマエ、ナンテーノ」
「いやその言い方超アヤシイし。普通に聞けよ、普通に。
 組み込まれてる通りに」
「大人しそうやからちょっと笑かそうかと」
「専門外だろ、そういうのは」

「マイハです。舞う、波、で舞波です」
6 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:21
舞波ちゃん、って言うんだ。
へぇ〜……

「……アイちゃん」
「わかっとる」

アイちゃんの声はちょっと枯れた声になってた。
……乾燥、してんのかな、喉。

「いつからここにいたん?」
「えっと……一時間くらい前から。散歩の途中で少し休んでました」
「ああ、それじゃあ波の音で聞こえなかったかも知んないね」

のんの台詞に舞波ちゃんは首を傾げた。
思わず苦笑いが漏れた。

「どっから話したらええんやろね」

アイちゃんも困ってるみたいだ。

「舞波ちゃんさ、ロボットのことは知ってる?」
「……知ってます」
「ウチらがロボットなの、わかる?」
「……わかります」
「それなら話が早いや」

のんは岩に手をかけて弾みをつけて飛び上がり、舞波ちゃんの
隣に座った。ちょっと遅れてアイちゃんも上に上がってきた。
舞波ちゃんを挟んで一列に並んで座ったウチらは、何となく一緒に
遠くの水平線を見る。一言切り出すのに、少し時間がかかった。
7 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:22
「ロボットには使命っつーもんがあってさ」

波の音は静かだ。

「造られた時からやるべきことが決まっとる。
 まあ、それ実行するだけやからロボットなんやけど」
「……はい」
「そうそんで、ウチら同時に造られて同時に同じプログラムを
 頭ん中に組み込まれた」
「何でのんつぁんやったんかね。これがまた手間かかる相棒で」
「人の事言えんのかよ!てか話ぶった切るなよ!」

どうも真剣な話なのにこのアンポンタンのせいで漫才みたいだ。
その証拠に舞波ちゃんが肩を震わせて笑いを堪えてた。

「ヲホン、で、話の続きだけど」

手っ取り早い話、地球に人が増えすぎた。
このままだと地球は死んでしまう。人間と言う害虫のせいで。
ゴミは山を築き続け土地は腐り、汚水は海を汚し、木はなぎ倒され緑は減り。
温暖化の影響で海の底に沈んでしまった島すら存在する。

政府のえっらーいオッサンたちはそれを食い止めるために、
のん達を造った研究所にある依頼をした。
人の罪にならぬように、人を減らす方法を考えろ、と。
できなければ、君達の未来と今までの功績は無いと思え、と。
8 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:22
馬鹿じゃねーの。
でも、もっと馬鹿だったのは博士達だ。
言いなりになって、超真剣に研究しまくった。何年も、何十年も。

「そうして研究所自体もどんどん規模を拡大してった。ウチらが
 聞いた話じゃ、世界のあちこちにあるらしいっス」
「ちなみにこの国にあるのは三つ。どこにあるのかも、造られたのは何人
 居るのかも、正確にはあーしらにもわからん」

ウチらが知ってるのは、自分達の名前と通称と、研究所の場所、造られた目的、
あと……

「通称って、何ですか?」
「研究所とか博士が勝手につけたウチらの呼び名のこと。
 ロボロボしいのはマズイと思ったんじゃないかな。他の二つに
 それぞれ何人居るのかは、アイちゃんと一緒でのんの頭ん中にも
 記録されてない。三つの呼び名はそれぞれ」

山の魔女
森の妖精
そしてウチら

『海の神子!』

「神様の子なんやよ、あーしら!」
「超ー似合わねー!でも森の妖精じゃなくて良かった!」
「あ、でもな山の魔女ってほんとはロボットの名前やないって聞いたで。
 博士が言いにくそうにしてたから、深く聞けなかったけどな……
 にしても、妖精……ププ」
「ヨーセイだよ、フェアリーちゃんだよ」

のんとアイちゃんは揃って声を出して笑った。
笑い飛ばした、ってのが正確かもしんない。

ザッパーン、目の前の波も大笑いだ。
ほんっとマジ可笑しいから。有り得ないから。
海の神子なんだからお前達は、海を護れ。そのために

人を殺せ、なんて。
9 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:24
「……だから、
 二人とも服が汚れて真っ赤なんですね」

波を見たままの舞波ちゃんが呟いた一言は、のん達がここへ来る前のことを
全て表していた。
顔は洗ってきたんだけど、服は調達できなかった。
アンポンタンが全部、焼いてきちゃったから。

街ん中じゃ物凄い騒ぎになってたけど、いくらなんでも
ここじゃそれには気付かなかっただろうし、のん達にとっては
プログラムを実行しただけなので、ギャーとかワーとかうるせえなあと
思ったくらいだ。

「……一応な、ロボットやってバレんようにその、仕事する時は、こういう」

そう言いながら、アイちゃんが右手で顔を覆いすぐに離すと、
そこには額に角の生えた全く別の顔があった。
両の目は大きく見開かれその癖顔全体の皮膚は赤く爛れ、口の両端からは
鋭い牙が覗いている。男か女かなんてちっともわからない。
ま、つまり、バケモノ系の顔。

「っ…!!」

これには流石にビビったのか、舞波ちゃんはのんの肩にドン、と
勢い良くぶつかって来るくらいアイちゃんから離れた。
10 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:25
その顔になったのはほんの一瞬で、また手で顔を覆って
離すと元に戻ったものの、泣きそうな顔をした相棒の顔がそこにあった。

「流石に仕事やないから凹むなあ……」
「ま、舞波ちゃんもう戻ってるから!アイちゃんも泣くな!」
「あ、ご、ごめん……なさい」

う〜ん。
アイちゃんでこんな反応されたら、
実はのんの方がもっと凄い顔してて、その顔で

「人肉噛み千切りまくりましたー★」

なんて笑顔で言ったらこの子ぶっ倒れちゃいそうだ。

「くそったれ博士め、もう二度とこんな顔になるもんかぁ」

唇突き出した相棒は吐き捨てるようにそう言って、泣き真似をして見せた。
まっ、でも、アイちゃんどうせ『そん時』になったら、プログラムで
動くんだから。

凹んでる暇なんて、無いんだから。
11 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:26
「さあってと、そろそろ行くべ。のんつぁん」
「おう」

アイちゃんは立ち上がりのんもそれに倣った。
内蔵時計通りなら今日中に隣の港町に行って夜のうちにもう一回『仕事』
しなきゃなんないから、ほんとはこんなとこで長い時間油売ってる場合じゃ
なかったりする。
空を見たらまだ曇ってはいたけれどまだらに隙間が出来てて、
太陽の光線がそこから差し込んでた。オレンジ色の。
……アイちゃんが見たかった海の景色は結局見れなかったね。

「じゃあ、バイバイ舞波ちゃん」
「すぐには帰れんかも知れんけど、もうちょっと待てばだいぶ
 綺麗になっとるはずやから。研究所んとこは焼いとらんし」

岩から飛び降りたウチらは、まだ岩の上に座っていた彼女を振り返る。
名前を聞いた時から、ずっとのんの視界の上の方で赤い警告文が
右から左に流れてた。
それはきっとアイちゃんも同じだろう。



”The child of the name that originates in the sea is off the subject.”
(海に由来した名前の子供は対象外である)


12 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:26
「暗くなる前に帰るんやよー」
「あ、そーだ!
 待って待ってのんから最後のお願い。
 海をー、
 大事にしてくらさい!」

「くらさいやって!アッハ、ヒャーハハハハ!」
「うるせーいちいち笑ってんらねーよ!このアンポンタンが!」
「アンポンタンなんて名前と違うわ!愛って名前があるわい!」
「のんらって希美って超イイ名前があんだよ!」
「ののみ?」
「ノ・ゾ・ミ!」
「……知らんかった。てっきりのんって名前やと」

「うわっ、マジかよ!知ってろよばかちんが!」
「起動した時から入ってなかったんじゃ!聞いとらんのに
 憶えられるか!」
13 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:26




14 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:27
のん達は舞波ちゃんに背中を向けたまま、またひたすら
波打ち際を真っ直ぐ歩いた。目的地は港町なんだから歩いてりゃ
勝手に辿り着くから。

「……喉、渇いた」
「…………うん」

真っ直ぐ、ひたすら真っ直ぐ。……のつもりだったかもしんない。

けどなんか、体の半分が重いし。フラフラする。
やたらめったら喉がカラカラだし。

さっき、走ったから、かなあ……

「……のんつぁん」

愛ちゃんのその声は、波の音に今にもかき消されそうな程小さくて、

あれ?違う?のん、耳もちょっとおかしいかも。
波の音ってずっとザーってしてたっけ?
気になったからものすげー重たい右腕を超がんばって持ち上げて
耳にあてようとした。
そん時ふっと掌が目に入った。

「……何これ」

顔を洗った時に、手だってちゃんと洗ったよな?
じゃあ何だよこれ、この、茶色い跡。
左手にも、ある。
15 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:28
「……錆……?」

……ありえねー。
これはあれか、潮風に当たりすぎた、ってこと?

愛ちゃんがのんの呟きに気付いたらしい。

「ごめん」

謝られた。

「あーしが海行こうなんて言ったから」
「……聞こえねー」
「……ごめん」
「聞こえねぇってば!波の音、うるせーんだよ!」

怒鳴った直後、
いよいよ全身が重くなってのんはその場に倒れた。
目、開けてるはずなのに、真横に出来た一本の線から始まって、
少しずつ砂嵐になってく。

そんな状態でも
左隣でドサッて愛ちゃん倒れた音は聞こえたし。
そん時のんの左手に何か触れたのもわかったし。
耳のザーって音はどんどん大きくなってたけど、顔だけ動かしたら、
愛ちゃんの砂だらけの顔はものすっごい近くにあったからちゃんと声は届いた。

「うわ、錆てっから手くっ付いたもた。待って今、剥がす」
「……しなくていいよ」
「んなこと言わんでよ。あーしは良いからのんつぁんだけは」
「……のんのためだって言うなら、やめれ」

のんを一人にすんな。
16 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:28
ああちくしょう、ここで涙くらい出てくれればカンドーもんなのにな。
貯水タンクには涙一滴分の余裕も無いらしい。
けど、愛ちゃんわかってくれて、手はそのまま。うんうん、
わかってくれるとのんは信じてたぜ。それでこそ相棒。
これでたまに人の話無視しなけりゃ最高の相棒なんだけどな。

「くそったれ博士め。水槽ん中であーしら何十年寝かせてたんやろ」
「のん思うんだけどさあ、あの子、絶対ウチら寝てるとこ前に見たことあるって」
「最初からロボットやって知っとったもんな。博士が研究所に連れて来たんやろね。
 ……お母さんは、どこに居るんやろ。研究所、すぐ出たからなあ」
「……てか、マッパ見られた、ってことだよな」
「それは言うな……こんな時に」

「あーしらが出るまでの間に造られたロボット、世界中に何体居るんやろね」
「さーね。何だかんだ百とか二百とか居るんじゃない」
「……のんつぁんはそいつら全員ヒトゴロシのために造られたと思う?」
「それは、思わない」
「あーしも思わない。失敗だらけやったと思うし」
「ウチらみたいにね。結局ゴミ増やしてんだよ。人間ってほんっと……」

「……海の神子、名前だけか」
「つか神様なんて居るのかよ」

だってさあ、もう無理なんだもん。こんな小汚ねえ海を元通りにすることなんか。
そんなんロボットにだって理解んだよ。
でもウチらはそれを拒否できないだけなんだよ。博士だって、それを
知ってたから、あんなことしたんだ。
保存期間が長すぎて廃棄寸前のウチらを利用して、その場しのぎに一回限りの
騒ぎを起こす最低限の性能を与えた。
他のロボット達はのん達よりずっと性能が良いのに、でも良すぎるからって。
先に全部廃棄したんだって。

自分の限界はここまでです、って、その証拠としてのん達が起こされたんだ。
おかしいと思ったんだよ。何で博士港町まで着いてきてくれたのかって。
着いたらまず最初に自分を殺して、後は……っていうプログラムを
のん達に与えてたんだ。
17 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:29
研究所は勿論最初からターゲットから外してあって、
舞波ちゃんには万が一の時のために対策をもう一個。
それが、あの警告文だ。

ウチらのことは
時間経って鉄屑んなってもいつか波が飲み込んでくれて、
魚とか蟹とかのマイホームにでもなってくれりゃあ、ってさ。
……それが博士の最期のノゾミだったんだ。

「愛ちゃん」
「……何」
「魚と蟹ならどっち好き」

「サカナ……何ザカナ?」
「何でも良いから。意味解ってんだろ、どーせ」
「……どっちも好きとか嫌いとかは無いなあ。
 海の生き物はみんな愛しとるよ。あーしは愛やからな」
「のんのことは?のん海の神子サマなんだけど」
「……で?っていう」

最後の最期までいけ好かない相棒だなオイ!
と、声に出したつもりが、実際出てこなくて。

ああ、いよいよなんだ。
18 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:30
鉄の塊になる決意をしたのんは、
体のあちこちから軋む音を聞きながら愛ちゃんに近付いた。

「のんつぁんまだ動けるんやね。あーしはもう、動けん……」

うん、のんだって限界近いぜ。
上半身起こすことしか出来なくて、色んなメーター振り切ってる
感じが何となく解る。
解ったところで、とうとう目の前が真っ暗になった。
顔に何かがぶつかった衝撃があった。

愛ちゃんの背中か肩の上に落っこちたんだと思う、のんの顔。
もうすぐ、全てが止まるだろう。

哀しいとかは、無くて。

ただその時のんは、
いつかこの折り重なった鉄屑の隙間を住処にしてくれるかもしれない、
海の生き物たちのことを想った。
19 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:30

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20 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:31

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21 名前:  投稿日:2005/04/18(月) 23:31

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