50 魔法陣グリュグリュ
- 1 名前:50 魔法陣グリュグリュ 投稿日:2005/02/14(月) 00:04
- 50 魔法陣グリュグリュ
- 2 名前:50 魔法陣グリュグリュ 投稿日:2005/02/14(月) 00:05
- それを見つけたのは、れいながまだ小学生の頃だった。
家の近くの山で、男の子や女の子達と遊びまわっていた時、れいなは崖から落ちた。
伸び放題の草花の下に地面はなく、踏み出した右足を支えきれなかったからだった。
顔に何かが当たるのを感じ、れいなは目を覚ました。随分と気を失っていたのだろうか、いつしかあたりは
真っ暗だった。雨がぽつりぽつりと降っている。
起き上がろうとした次の瞬間、激痛がれいなの体全身を駆け巡った。半分地面に埋まった右半身が動かせない。
それでも無理矢理立ち上がる。だらーんと垂れ下がった右腕、有り得ない方向に曲がっている右足。
「ふぁ……」
目に涙が浮かぶ。痛さよりも、自分が壊れてしまったことのほうが問題だった。その涙をまぎらわさせるかの
ように、次第に雨は本降りになってきた。
このままじっとしているのは危険だ、そう本能的に感じ取ったれいなは、この場から逃れようと、ずるずると歩き
出した。痛みに顔が歪む。鼻をひくつかせ、涙や鼻水や涎や脂汗でぐちゃぐちゃになった顔を雨で洗い流し、
何度もこけて、泥まみれになりながらも、れいなは歩いた。
しばらくすると、れいなの虚ろな目に洞窟が映った。あそこなら、風雨をしのげるかもしれない。まるで吸い寄せら
れるかのようにその中に入ると、れいなはばたりと倒れ込み、再び気を失った。
- 3 名前:50 魔法陣グリュグリュ 投稿日:2005/02/14(月) 00:05
- ……ぴちょん……ぴちょん……ぴちょん……
その音に反応し、れいなは目を開いた。寝起きにも関わらず、目が霞むことも、頭がぼんやりとしているのでも
ない。そしてれいなは、自分の傷が完全に癒えていることを知った。右足も元の形に戻っている。
……一体どうなっとると? 決して良いとは言えない頭を働かせながら、れいなは辺りを見回した。
そこはおかしな空間だった。冷たくもなく、暖かくもなく、湿っているわけでも、乾燥しているわけでもない。
四方の壁や天井、そして床にはなにやら不思議な模様が書き込まれている。まだ習っていない漢字だろうか、
それとも他の国の言葉だろうか、丁寧とは到底思えない乱雑さを伴いながら、それでいて一種の秩序を保ちつつ、
大小様々な文字と、様々な図形が羅列している。
その空間の真ん中、ちょうどれいなの正面には、小さな砂山のようなものがあった。その山頂部はくぼんでいて、
透明度の高い水がゆらゆらと揺らいでいる。
……ぴちょん……
今にも溢れそうな水面に、水滴が落ちる。それは天井の中心から垂れ下がった、鍾乳洞のような一本の岩から
染み出ているものだった。しかし何滴垂れても、水が溢れることはなかった。この水があるお陰で、この空間に
ある種の緊張感が走っているような感じを、れいなは受けた。
……ぴちょん……ぴちょん……ぴちょん……
まるで現実感のない風景。わたしは死んでしまったんだろうか。思わず頬をつねる。痛かった。少なくとも、これ
は夢ではないらしい。それに出口もそのままだ。れいなはまるで何かに見張らているかのように、慎重にゆっくりと
その場所を後にした。
- 4 名前:50 魔法陣グリュグリュ 投稿日:2005/02/14(月) 00:06
- 世界は当たり前のようにそこに存在していた。唯一変わった点といえば、雨が上がり、太陽が斜めに昇っている
ことぐらいだった。
山を降り、家に帰ると、れいなは親から随分叱られた。そして二度とあの山で遊んではいけないと言われた。
それでも時々、れいなは親の目を盗んで山に行った。正確には、あの空間へと戻っていった。
洞窟だと思っていたその場所は、ほこらのような古びた建築物で、周りを草や蔦で覆われていた。しかし、まるで
何かの力が働いているかのように、植物は内部には入ってこなかった。
疲れた時や、辛い時や、悩んでいる時、れいなはここにやって来た。ここにくると、なんか落ち着く。それに生きる
力が湧いてくるみたいだ。何か不思議な力があるかもしれん。
れいなはこの場所のことを誰にも話さなかった。一緒に秘密基地を作った仲間にも、教えることはなかった。
◇ ◇ ◇
「最近疲れやすくなってきたなぁ。もう歳かなぁ?」
「藤本さんも、もう二十歳ですもんね。オバサンですよ」
「うるさい!」
福岡でのコンサートが終わり、楽屋で絵里とさゆみが美貴をからかっていた。そういえば、わたしも疲労が溜まっ
ている気がする。久しぶりにあそこに行ってみようか。幸い明日の午前中はオフだ。
「美貴ねぇ、美貴ねぇ。あのさ、いい場所があるんやけど、明日行かん?」
「いい場所?」
「何それ? エッチなとこ?」
「こら、さゆ!」
昔よく遊んだ仲間にも教えなかったことを簡単に教えたのは、ほんの気まぐれだった。
- 5 名前:50 魔法陣グリュグリュ 投稿日:2005/02/14(月) 00:06
-
……ぴちょん……ぴちょん……ぴちょん……
「へー、なんか変なとこー」「ほんとだー。あ、声が反射してるぅ」
四人はあの場所へと来ていた。絵里とさゆみは、やまびこやまびこー、などとはしゃいでいる。
「いや〜、いきなり山登るって行った時は疲れてんのに何させんだよって思ったけど、こんな所があったんだね」
「うん。多分見つけたのはれいなだけやと思う。それで、体の調子はどう?」
「あー、まだよくわかんない。てか、山登ったりとか久しぶりで、それもそんなにキツイやつじゃなかったから、なんか
自然と久々に触れ合えたってだけで、結構癒されてるかも」
ごろんと横になっている美貴の話を聞いて、そういえば、天然の土を踏みしめたのは自分も久しぶりの気がするな
とれいなは思った。
……ぴちょん……ぴちょん……ぴちょん……
「それにしてもさー、これ何なんだろうね」
さゆみが壁にかかれた模様をなぞりながら、誰ともなしに話し掛ける。
「韓国っぽくない? なんかこれ、冬ソナで見たことある気がする」
「絵里の知識はあてにならない」
「何それ。ひどくない?」
二人の会話を聞きながら、れいなはあらためて、これらの文字の意味不明さを再確認した。
「昔のさ、スッゴイ昔の、原始人とか、それぐらいの時の文字とか」
「それだったらさ、すごい発見だったりするんじゃないの?」
……ぴちょん……ぴちょん……ぴちょん……
- 6 名前:50 魔法陣グリュグリュ 投稿日:2005/02/14(月) 00:07
- 「美貴ねぇ、どう?」
「うーん」美貴はごろごろと転がりながら、「なんか不思議な感じ。疲れは取れてるような気もするけど……」
美貴はれいなの元へごろごろとやってきて、「あのうるさい二人がいなかったら、もっと癒されてたかな」と小声で話す。
「昔れいなが来てたときは、れいなだけやったから、そうかもしれん」
「個人専用かな」
……ぴちょん……ぴちょん……ぴちょん……
「それにしても、こんなにごろごろしてんのに、まったく眠くならないって不思議じゃない? なんか美貴、山歩いてた時
よりも、意識はっきりしてんだけど。温度とか湿度の関係かな?」
たしかに、とれいなは思い出す。たしかにわたしがここで眠ったのも、最初の一回だけだった。なんかわかんないけど、
ここだと意識がはっきりするように思う。
……ぴちょん……ぴちょん……ぴちょん……
「なんかのど渇いてきちゃったな。お茶でも持ってくれば良かった」
絵里が中央の水面を指差しながら、ねえ、この水飲んだことあるの? とれいなに聞く。
「いや、ない。そんなのど渇いたりしなかったし」喋ってないから、と付け加えようとしたが、嫌味っぽかったので止めた。
ふぅん、と絵里は拗ねたような声を出す。
……ぴちょん……ぴちょん……ぴちょん……
「これ飲めそうじゃない? さゆ飲んでみてよ」
「えー、なんでよー」
「だってさゆ、前トイレの水飲んでたじゃない」
「もういいでしょ、そんな昔のことは」
……ぴちょん……ぴちょん……ぴちょん……
冷たいのかな、と絵里が手を伸ばす。
止めといたほうがいいんじゃない、おなか壊すよ、と美貴が諭したが、大丈夫だよ、ね、と絵里はさゆみの意見を伺う。
さゆみは、大丈夫なんじゃないかなぁ、と曖昧な返事を返す。絵里は、大丈夫だよ、と自分に言い聞かす。れいなは
ただ見ているだけだった。
そして絵里の指先が水面に触れて水面に新たな波が
- 7 名前:50 魔法陣グリュグリュ 投稿日:2005/02/14(月) 00:07
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- 8 名前:50 魔法陣グリュグリュ 投稿日:2005/02/14(月) 00:07
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- 9 名前:50 魔法陣グリュグリュ 投稿日:2005/02/14(月) 00:07
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- 10 名前:50 魔法陣グリュグリュ 投稿日:2005/02/14(月) 00:08
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