44 ガキさんち
- 1 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 14:56
- 44 ガキさんち
- 2 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:03
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トゥルルルルル トゥルルルルル・・・・ガチャ
『もしもし、魔法使いを1人お願いしたいんですけど』
『わかりました。少々お待ち下さい』
半信半疑で電話した魔法使い協会という電話番号は実在していた。
わけもわからない私は、とりあえず1人の魔法使いを頼んでみた。
実際に魔法使いがいるとしたら、これで契約は成立するはずだ。
待つこと十数分、私の目の前には金髪で怪し気なサングラスのおっさんが立っていた。
「お、あんたか依頼人は。しっかし、まゆげがチャームポイントのかわい子ちゃんやな。
どうや、おっちゃんがデビューさせたるで」
「チェンジで」
現われたのは、関西弁を話すお調子者だった。
あんな奴が魔法使いなわけがない。
魔法使いはもっと年をとってなければダメだ。
そもそもデビューとか何の話わからないし。
- 3 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:04
- さらに待つこと十数分、現われたのは私より少し大人なお姉さんだった。
「お待たせ。チェンジする?」
「いや、オッケーです」
なかなか馴れ馴れしい魔法使いだな、この人。派遣のくせに。
「それじゃ始めるから。
えーっとこの度は魔法使い派遣協会「ハロープロジェクト」を御利用頂きまことにありがとうございます。
利用期間は金額により異なるので後で説明します。
尚、金額は前払いのシステムとなっております。
利用期間中はなんでも命令して下さって結構です。
問題があった場合は070ーXXXXーXXXXまで。
次に料金説明ですが、一万円で1日コース、十万円で1週間コース、百万円で1ヶ月コースの3パターンありますけど、どうする?」
えらく現実的なことばっかり説明してるけど、この人は本当に魔法使いなんだろうか。
ていうか、ピッチかよ。携帯使えよ、しょぼいな。
- 4 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:05
- まぁ、お金ならいくらでも払える私からしたら百万円を払ってみてもいいけど、使い物にならなかった場合にどぶにお金を捨てるようなもんだ。
とりあえずはお試し期間ということで一万円からスタートにするべきだな、うん。
「とりあえず一万円で」
「わかった。じゃあ、ここに名前書いて」
差し出された紙に新垣里沙とサインしてお姉さんに手渡した。
「よし、これで契約終了。
あ、私は会員番号0226藤本美貴。ミキティって呼ばないと命令聞かないからよろしく」
なるほど、魔法使いって結構痛い人なのかもしれない。
「あの、ミキティさん、いくつか聞きたいことがあるんですけど」
「なんでもいいよ。」
「なんでチラシの番号と苦情用が違うんですか?
あとなんでピッチなんですか、今どき携帯でしょ。
あとチラシとなんでくばるんですか、魔法使いなのに」
「ピッチは電話番が今安倍さん担当だから。まぁ、いろいろあるのさ。
で、魔法使い業界も今や不景気なのよ。
昔は国からも依頼もらってたりしたんだけど、最近はめっきりでさ。
おまけにハリポタまで飽きられてるから大変なのよ。
そしてここにきて給料も固定から歩合にされちゃったもんだから生活厳しくてね。
だから小金も稼ぐためにやってんの」
なるほど、こうやってお客に不平不満をぶつけることでストレスを発散させるのか。
「って、なんでお客に向かってキレてんですかぁぁぁ」
- 5 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:06
- 「あぁ、ごめんごめん。とりあえず前金だから一万円ちょうだい」
「わかりました、はい一万円」
一万円払ったからにはとにかく働いてもらわないと。
そうだな、とりあえず雪を降らしてもらおう。
「ミキティさん、雪を降らして下さい」
「無理無理。だって雪は飯田さんの管轄だもん。了解とるのめんどくさいし」
なんだ、最近の魔法使いは分業制なのか。
アレしてほしいとか、コレしてほしいってお願いしたら、ドーンって効果音使ってキラキラってなるんじゃないのか。
「それじゃ、ハワイまで一瞬で連れてって」
「移動は亀ちゃんか。ちょっとまってね
『・・・・あ、亀ちゃんミキだけど。うん今は・・・あ、そう・・・じゃ、頑張ってね』
ダメね、今スペインいってるって」
「はぁ!?じゃ何ができるんですか?」
「うーん・・・・・ラーメン」
『あ、もしもしれいな。いつもの二つよろしく』
はぁ!?
魔法使いを自称しているくせにできるのがラーメン?
そんなのコンビニでできるっつーの。
魔法使う必要なんてないじゃん。
しかも、電話しちゃってるし、あんたがやるんじゃないのかよ。
- 6 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:06
-
ほどなくしてラーメンを二つ持った少女が箒に乗って現われた。
「もう藤本さん勘弁して下さいよ。れいなだって仕事があるんで」
「はいはい、ありがとね」
「ちゃんとツケときますからね」
「ちっ、誰が仕事できるようにしてやったと思ってんだ。
とりあえずはい、これ博多ラーメン」
「はいってこれじゃただの出前じゃないですかー」
まったく人がお金払ってまで雇ったのに凡人もいいとこじゃん・・・でも
「うま」
「でしょ、これでちょっとは機嫌なおしてよ、ガキさん」
こいつ、魔法もろくに使えないくせに私のことをガキさん扱いかよ。
本気になれば、お前んとこの協会買い取るぐらいできんだぞ。
そしたらお前はそっこーで首だ、首。
- 7 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:07
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「で、ガキさんはなんで電話してきたの?」
「いや、魔法使いなんて本当にいるのかなーと思って」
「ふうん、とりあえずガキさん家行っていい?」
「あぁ、うん。行こっか」
「大体珍しいよ、呼び出しにホテル使うなんてさ。
ちょっとエッチなことされるのかと思ってミキ心配したよ。
あんなこととか、こんなこととか」
「はいはい。じゃいきますよ」
私は下に待たせてあった爺の車に乗り込むとミキティさんを連れ、家に帰った。
- 8 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:07
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「でっけー、これ全部ガキさん家なの?」
「まぁね」
目の前の家にめちゃくちゃびっくりしているミキティさんをおいて私は中に入った。
「「「おかえりなさいませ」」」
「パパとママは?」
「お二人とも今日も遅くなるそうで、先にお休みになられるようにとのことです」
「‥‥…そう」
「で、こちらの方は?」
「あぁ、友達のお姉さん。勉強教えてもらうんだ」
「さようでした。それでは御用があれば何なりと」
「わかった。下がっていいよ」
なんだよ、2人揃ってまた仕事。
結局私のことなんてどうでもいいんじゃん。
「あ、ちょっとちょっと爺やさん。ガキさんの親は何やってるの?」
「お嬢様ですか、お嬢様の御両親は会社を経営されており大変忙しい毎日を過ごされているのです」
「あー、………なるほどね」
- 9 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:07
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「うわー広いところに住んでるんだね、ガキさん」
「そんなことより本当にどんな願いなら叶えられるんですか?」
「あぁ、仕事の話はやめとこうよ。こんなに大きな家にきたんだし」
なんのこっちゃ。
本当にこの人はただのペテン師なんじゃないだろうか。
「あ、ミキのこと疑ってるでしょ、しょうがない。
私がいいよっていうまで目を開けちゃダメだよ」
いまさら人の御機嫌でもとろうっていうのかこの人は。
今度は誰に電話しようってんだ。
「いいよー」
言われるがままに目を開けた。
「何も変わってないじゃないですか。やっぱり何もできないじゃないですか。
苦情電話しますよ」
「いいから外見てみ」
外ってあんたずっと中にいたくせに何できるって・・・
- 10 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:08
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「雪だーーーー。ゆき、ユキ、雪」
「ガキさんの喜びと引き換えにミキは始末書をたんまりと書いて飯田さんのお説教2時間コース決定。
だからもっと楽しんでよね」
「他に何ができるんですか?本当に魔法使いだったんですね。すごいですね。
雪本当に降らせられるんじゃないですか」
「わかった、わかったから。ちゃんと見といて10分で消えちゃうから」
10分後、予告通り目の前で降っていた雪は消えてしまった。
間違いないこの人は絶対に魔法使いだ。
「あの・・・」
「親のことでしょ」
「な、なんでわかるんですかー?」
「そんなの理由なんてないよ。ただ、お金持ちの家の子どもの悩みっぽいじゃん」
私の心の中まで読んでしまうなんて、この人は本当はすごい魔法使いなんじゃないだろうか。
そうだ、きっとそうだ。
- 11 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:08
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「お願いです。時間を止めて下さい。」
「時間ねぇ。それでどうするの?」
「最近は3人で話をしたこともないから、話がしたいんです」
「何を話すの?」
「ちゃんと・・・ちゃんと忙しいってことをパパやママの口から説明してほしいんです。
もう爺やの口から伝達されてくるのはイヤなんです」
「わかった。じゃ時間を止めよう。ただ・・・」
「なんですか?」
「高いよ」
「いくらですか?」
「そうだな・・・ミキが謹慎中に稼ぐ予定だったお金をもらおうかな」
「だから、いくらぐらいですか?」
「先月は百だったんだけど」
「たった百万でいいんですか?」
「あ、じゃお仕置きの苦痛分を足して・・さ、三百」
この人、実は貧乏なんじゃないだろうか。
実は先月も十数万だったんじゃないだろうか。
そんな気さえしてしまうほど、三百万でビビっているのがわかった。
- 12 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:08
- 「じゃ、これ三百万ですね」
「よし、じゃあまた目を瞑ってくれる?」
ホクホク顔でお金をしまった彼女に言われるがまま目を瞑った。
「いいよ、ガキさん」
目を開けるとさきほどと何も変わってない部屋に立っていた。
不思議に思った私は部屋の隅にある水槽に目をやった。
魚は確かにその動きを止めていた。
「あーーーー、時間止まってるーーー」
「「里沙」」
「パパ、ママ」
その時、私はあまりの嬉しさに部屋のドアがしまったのに気付かなかった。
- 13 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:09
-
「ガキさん上手くやってよね。こっちは亀ちゃんに無理言って親を連れてきてもらったんだから。
さて、これでミキは今日からしばらく遊んで暮らせる」
「そうはいきませんよ」
「あ・・・・紺・・・ちゃん」
「管轄以外の魔法の使用、禁止魔法の時間停止魔法の使用、亀井さんの業務妨害、田中ちゃんのパシリ使用などなど、契約違反しすぎです。
明日から一年間謹慎です。その前に報告書と始末書の作成、飯田さんのお説教とかいろいろありますから」
「そ、そんなー」
「あと不法に請求したお金も没収ですからね」
「あんまりだよ、それじゃミキの巨乳大作戦は?焼肉食べ放題は?」
「もちろん無理です」
「そんなー」
「完璧です」
- 14 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:09
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どれくらいの時間がたったか、気付くと私はベッドの上で寝ていた。
近くにはパパもママもミキティさんの姿もなかった。
あれは夢だったのかな・・・・。
ふと見た机の上にはパパとママと一緒に笑う私の写真が残されていた。
ありがとう、ミキティさん。
- 15 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:10
- 後日___
「里沙ちゃん、あのチラシどうだった?」
「いたよ、魔法使い」
「まさかー。
魔法使いって、年をとったお婆さんで、杖持ってて、怪しい笑い声だしたりする。それで毒リンゴとか作れるんでしょ」
ちがうよ。
魔法使いはいるんだよ。
胸が小さくて、おでこが広くて、めんどくさがりで、おまけに少し貧乏な・・・
ステキな魔法使いがね。
- 16 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:10
- お
- 17 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:10
- わ
- 18 名前:ガキさんち 投稿日:2005/02/13(日) 15:10
- り
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