40 昨日見た夢
- 1 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:49
- 40 昨日見た夢
- 2 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:50
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湿気の多い日は古傷がよく痛む。
なるべく引きずらないように気にかけながら家路を急いだ。イライラが募る。
ミスしたことは認めるけど、
頭ごなしに否定されたら人間誰だって頭に来るに決まっているのに。
なにを考えているんだ、あのウスラハゲ。金髪に未来はないぞ寺田畜生。
日本代表応援するから帰るとか何様のつもりだ。
高卒でOLをしている自分の人生と上司を呪う。
家への近道である細い路地を通る。薄気味悪くてゴミの匂いが漂っていて不快だった。
散らかっているスポーツ紙を踏んづけると、膝を庇いながらもなるべく急いで歩く。
でもいつもと少しだけ違う雰囲気に、あたしは思わず足を止めた。
あまり見覚えのない手相占いが露店に混じって立っていた。
看板の横には机が置かれていて、皺くちゃな老婆が椅子に座って俯いている。
Youナカザワとはまた胡散臭い名前だ。
なんだか物珍しくて、あたしは思わずその店に寄った。
「手相見てよ」
- 3 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:51
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老婆はゆっくり顔を上げるとあたしの顔を見て静かに笑った。
薄気味悪いが、頼んでしまったからには仕方ない。
あたしはポケットの中で眠っていた右手を差し出すと、
老婆はゆっくりと手を撫で回した。
ちょっと待て、手相だろ。気色悪くてちょっとだけ背中に寒気が走った。
「……お前さん」
「なんですか?」
「夢が潰えて内容のない人生を送っているやろ」
「…なっ!」
いきなり言われたその一言。頭に一気に血が登った。
「な、なんなんですかあんた!」
「Youナカザワや」
「ゆ、Youナカザワさん!いきなり人の手掴んでなんか言い出すかと思ったら」
「その様子やと、図星やな」
「…!」
確かにYouナカザワの言う事は正しかった。
膝を少し摩ると、黙って次の言葉を待つ。
Youナカザワはくちゃくちゃとガムでも噛むかのように歯のない口を動かすと、
「夢が思い通りになる魔法の薬があったら、オモロイと思うやろ?」
- 4 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:52
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次の朝、目が覚めてゆっくりと体を起こすと、試しに飛び跳ねた。
下の住人に迷惑がかかるんじゃないかと言うくらい何度も。
「……痛くない」
昨日まであんなにも痛んでいた膝が、
全盛期の頃のようになんの痛みも感じなくなっていた。
キレだけ言えば、全盛期を遥かに凌駕するほどのものだった。
信じがたいことだったけど、確かに膝は完治していた。
そしてそうなれば、行く場所は決まっている。
押入れの奥から捨てられなかったジャージを取り出すとバックに詰めて、
家を飛び出した。
体は想像を超える軽さだった。
1年のブランクなんて微塵も感じさせない、
今すぐにでも代表で張れるだけの動き。
嬉しくて仕方がなくて、駅まで走ってしまった。
そしてあたしの目指す場所はただ一つ。貯金をはたいて切符を買うと、
あたしはその場所へ向かった。
- 5 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:52
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女子サッカー日本代表の合宿が行われている場所はごっちんに聞いていた。
練習場に到着すると、手を振りながら走った。
「みんな!」
「よっすぃ〜!?」
「足大丈夫なの!?」
全員あたしが来たことに驚きを隠せない。
でもすぐに精一杯の歓迎と、祝福をしてくれた。
夏監督まで来てくれて懐かしそうな顔をしている。
でもね、懐かしいじゃないんだ。これからまた、始まるんだから。
あたしは少し照れて笑った。
「膝治ったんで、またよろしくお願いします」
僅かばかしの沈黙を誰かが破ると、爆発が起こったみたいにみんな喜んでくれた。
真っ先に飛んできたのは梨華ちゃんだった。
「ちょっと梨華ちゃんキショイよー」
「キショくてもいいもん!よっすぃ〜とまたサッカー出来るなんて思わなかったんだもん!」
「梨華ちゃんよしこを独り占めしないでよー」
「そうそう、よっちゃんはみんなのものだよ」
「なんだよそれ」
久々に感じた暖かいぬくもり。
やっぱりここがあたしの居場所なんだろうと思うと、にやけてしまった。
- 6 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:53
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瞼がとてつもなく重い。全身に物凄い疲れ。久々に動きすぎたらしい。
体がだるかった。腕時計を手探りで探しながら、Youナカザワの言葉を思い出す。
「疲れがダイレクトに来るから気をつけな」
そういう意味か。
でもまたサッカーが出来るならそんなことは全く障害にならない。
それくらい乗り越えてどこまでも突っ走ってやる。
本当なら終わったはずの、昨日見た夢なのだから。
それが今、今日となっている。
…一昨日までの自分とのテンションの違いに違和感さえ覚えるけど、
これがあたしの本来の姿だったのだろう。時計を漸く発見して、手繰り寄せる。
「5時…そりゃ重いわ」
今日は午後から夏監督が記者会見であたしの復帰を発表する。
同席するからそれまで予定がなかった。まだ寝ても大丈夫な時間帯。
あたしは布団を被ると、もう一度、眠りについた。
- 7 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:54
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大量に炊かれたフラッシュは、あたしの復帰を報じるためのスポットライト。
その眩しさに今後の自分の人生と似た輝きを感じて、表情が緩みっぱなしだった。
――リハビリなどはどのくらいしたのですか?
「精一杯、自分を信じて、必ず治ると信じて、リハビリをし続けました」
嘘だ。
でもあくまで日本全国のスターであり続けることがケガをする前のあたしの役目だったし、
これからもそうだ。優等生はいつだって仮面を被るものなんだ。
――決まった瞬間の率直なお気持ちを
「やった、という気持ちと、自分の居場所に戻れたような、
我が家に帰ってきたような暖かさを代表のみんなから感じて、胸が熱くなりました」
――今後オリンピックに向けて最終予選が始まりますが
「みんなと気持ちを一つに、チーム一丸となってがんばっていけば、
必ずまたオリンピックへの道は開けると信じています」
――最後に今のお気持ちをどうぞ
「またこうやってプレイできるなんて夢みたいです」
- 8 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:55
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ホイッスルが鳴り響く。あたしは膝を抑えてピッチの上に蹲って。
チームのみんながあたしの下に集まった。
ピッチ上の時が止まる。
担架で運ばれていくあたしの姿を、みんな、敵チームでさえ哀れみの目で見ていた。
やめろ、そんな目で見るな。
声を出すことさえままならなかった。
骨がバラバラになったみたいな感触と、力が全く入らない膝。
それはあたしの選手生命の終わりを意味していた。
医者に見てもらわなくても分かる。自分の体のことは自分が一番分かるんだ。
ラインの外へ出たあたしのことを唯一人だけ、密かに笑っている女がいた。
敵チームではない。
そのときあたしは直感した。まさか、お前がスパイクに…。
亀井絵里の、悪魔のような笑顔。
目に焼きついて、今でも忘れられない。
- 9 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:55
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昔のことを思い出して、膝が僅かに震えた。
亀井。あたしと同ポジションの、いわゆるサブ。
司令塔というポジションで被ってしまった彼女は、
ほとんど出場の機会が得られぬまま、いわば飼い殺しの状態で代表に存在し続けていた。
しかしあたしが怪我をしてからは司令塔のポジションに入り、チームを引っ張っていた。
吉澤さんの分まで、なんてきれいなコメントを吐き捨てながら。
あたしは今でも亀井を許してはいなかった。
絶対に。あいつだけは。
代表復帰して一番面白くないのも彼女だろう。
またスパイクに細工でもするかもしれない。でも負ける気がしなかった。
今のあたしは、どんなプレーヤーにだって、男にだって、負ける気がしない。
夏監督はそれを証明するのにお誂えのステージをセッティングしてくれた。
「ミニゲームを行って次の試合のスタメンを決める」
彼女との違いを見せ付ける、ちょうど良すぎる機会だった。
- 10 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:56
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試合前、
スパイクから着ているゼッケンまできちんとチェックした上で、
あたしは試合に臨んだ。
また何かしてきたらたまったものではない。
向こうも試合直前に面白くなさそうな顔をふと覗かせたから、
おそらく今日は何もしていないだろう。
亀井だって少しくらいは、代表としてのプライドが芽生えているだろうし。
試合が始まるとあたしはあらゆる面で彼女を圧倒した。
彼女がいいパスを出せばそれよりも鋭く隙を突いたパスを出すし、
フリーキックでいい所へ打たれたらフリーキックで直接入れた。
2得点1アシスト。レギュラー復帰決定的な数字。
亀井は試合終了後、悔しそうな顔をしてボールを乱暴に蹴飛ばしていた。
誰にも見られないように隠れて。
大方の予想通り夏監督はあたしをスタメンに復帰させてくれた。
こんなに簡単に上手く行くとは、ちょっとだけ意外だった。
でもそうでないと「夢が思い通りに叶う」なんてフレーズでは
売らないだろう。
誇張かと思っていただけに嬉しかった。
- 11 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:57
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試合の次の日は更に体が重かった。
フルタイムピッチにい続けることで来る疲労がこんなにも大きなものだとは予想外だ。
それでもこんなに絶好調なことは今まで一度だってなかったから、全く気にならない。
予選大会は絶好調だった。
3試合で2得点3アシストの大車輪の活躍。
新聞紙は一般紙スポーツ紙限らずこの“吉澤フィーバー”を大きく取り上げ、
「かっけー」はちょっとした流行語にまでなっていた。
今までのサッカー人生の中で一番充実していた。
「本当に、あの薬に感謝しなきゃ…」
目も開けずに、小さく天上に向かって呟く。
やっと見つけて時計を引っ張り寄せると、時間を見た。
短い針は7を指している。
今日は完全休養。
疲れているし、一日中寝てしまおう……。
- 12 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:58
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暫くしてチャイムがあたしの目を覚ました。誰だろう。
重い体を布団から這い出すと、暴れる髪の毛を整えながら玄関に近づき、
ドアを開けた。
「…梨華ちゃんか」
「梨華ちゃんか、はないよー。せっかく会いに来たんだから」
梨華ちゃんは、
スポーツ選手不釣合いのピンクでまとめた奇妙なファッションで現れた。
高そうな靴を脱いで玄関にしっかりと並べると、
ちゃぶ台の横に腰を下ろした。
「相変わらず汚―い」
「うるさいなー。痛っ」
体の至る所がずきずきと痛む。
「膝大丈夫?」
「痛むかなー。でも全身筋肉痛の方が気になる」
「なにしたのよー」
梨華ちゃんは笑いながら、あたしの側によると、
代わりに冷蔵庫からウーロン茶を取り出した。
- 13 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 13:59
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お茶をコップに注ぐと、ちゃぶ台に静かに乗せる。
行儀よく正座する梨華ちゃんに対して、あたしは足を乱暴に開いているけど、
梨華ちゃんは何も言わない。
「思ったより元気そうだね」
「当たり前だよ、絶好調なんだから」
「おー。気合入ってるー」
「任せなさい」
調子に乗って立ち上がると体が痛くてすぐに座った。
「…やっぱり大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。昨日の疲れだから。梨華ちゃんは?」
「私は全然普通だよ。いつも通り。試合の後はやっぱり疲れるけど」
「だよねー」
ウーロン茶を飲み干すと、梨華ちゃんは立ち上がった。
「もう行くの?」
「疲れてそうだし、様子を見に来ただけだから。ゆっくり休みなよ」
「ありがとう。じゃあ寝なおすよ」
梨華ちゃんを玄関まで見送ると、
あたしは布団を思い切り被ってもう一眠りした。
- 14 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 14:00
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『吉澤絶不調ですね』
『どうしたんでしょうかねぇ』
解説の言葉が今にも聞こえてきそうだった。
やばい、信じられないくらいに調子が悪い。
パスミスするし、フリーキックも外すし、ありえない。なんで、なんで。
太ももをバシバシと叩いてみても、事態は全く好転しなかった。
どうにかしてミスを帳消しにするようなプレーをしなければならない。
そうでないと…今すぐにでも交替させられる絵が目に浮かんだ。
ごっちんからのパスが来る。
ボールが的確にあたしの胸元に吸い込まれるように飛んでくる。
胸でトラップしてドリブル…。頭の中でイメージを膨らまして、ボールを待つ。
ボールは誰にも邪魔されることなくあたしの胸元に当たった。
そして足元に降りてくるボールをトラップして…。
「あ!」
ボールはあろうことか、あさっての方向へと飛び、敵チームの足元にピッタリと納まった。
そしてすぐに、夏監督に呼び寄せられた。
「亀井と交替しろ。頭冷やせ」
あたしとすれ違い様見た、亀井の悪魔のような表情に、理性を失いかけた。
- 15 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 14:01
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その日からあたしの出場機会は消えてしまった。
亀井が大活躍して、あたしは出る幕を失った。昨日の試合もずっとベンチ。
昼間から布団に包まって寝ているあたしは負け組だ。
練習もサボって、いつものようにだるい体を納めこんでいる。
膝が震えて痛んでいた。
来客を告げる音が聞こえて、布団の中にい続けるわけにもいかなくなった。
ほふく前進しながら玄関へと少しずつ向かい、鍵を開けてドアを開けた。
「なにやってんの?」
ごっちんは少し呆れたような顔で笑っていた。
「いや、体が重くて」
「やっぱ元気なさそうだね」
ごっちんはよいしょっと掛け声を上げると、あたしをベッドまで運んだ。
「自堕落ですねー、こんな時間まで布団の中で」
「体が重くて動きましぇーん」
「そんなことじゃダメだよー。切り替えなきゃ」
「うーん…」
布団の中で体を蠢かせるあたしに、ごっちんは優しく語り掛けてくれた。
- 16 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 14:02
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ごっちんが帰った後、テレビをつけるとタイミングよく亀井が映った。
亀井が大活躍した昨日の試合を取り上げて、亀井を特集していた。
それを見ているうちに、段々と頭に血が登るような感覚を覚えて、
その笑顔が映った瞬間、理性が吹き飛んだ。
体の痛みとか、膝の痛みとかどうだってよかった。
確かに夢は叶った。でも一時のことだ。
そんな話全く聞かされてなかったぞ。
ビンに入った薬を強引に掴み取ると、飛び上がった。
「!」
膝を走る痛み。
それでもあたしは靴を履くと、部屋を駆け足で飛び出した。
時計は4時を告げていた。
- 17 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 14:02
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もつれる足、信じられない激痛に襲われながら、あたしは必死に走った。
裏路地、手相占い屋へ。
会って話をしなければならない。文句を言わなければならない。
Youナカザワに。
あの胡散臭さ爆発の老婆に。
老婆はこの間と何一つ変わらない路地に溶け込むように店を開いていた。
俯いていて、眠っているようにも見える。
倒れそうになりながらなんとか店の前に立つと、思い切り机を叩いた。
「おい!!」
老婆は体を激しく揺らすと、顔をゆっくりと上げた。
「話が違う!!」
叫びながら机を叩き続けると、老婆は目をぱちくりとさせた。
「血気お盛んやのう。元気でええことや」
「怒ってんだよ!」
荒れる呼吸をなんとか立て直すと、精一杯張っている足を震わせながら、
もう一度声を張り上げた。
「夢が叶うんじゃなかったの?!ずっと!」
老婆は悪びれた様子一つ見せなかった。
「…ずっとなんて都合のいい言葉使おうてへんし、うちはそんなこと言うてへんよ」
「…え?」
- 18 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 14:03
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「夢が思い通りになる薬があったら、オモロイと思うやろ?」
「夢が…叶うってこと?」
Youナカザワは静かに皺くちゃになった口元に霞んだ三日月を作ると、
「これを飲め」
机の上にビンを若干大袈裟な音を立てて置いた。
「…薬?」
「せや。これで夢が思い通り」
少しだけ悩んだけれど、その魅力的な言葉にあたしは耐え切れなかった。
「…いくら?」
「10万」
「銀行行ってくる」
「副作用があるで!」
早歩きで銀行に向かうあたしを止めようと、老婆は枯れた声を張り上げた。
「疲れがダイレクトに来るで!」
疲れがダイレクトに…。意味がよく分からなかった。
振り向いて老婆に一言「構わない」と言い残すと、あたしは銀行へと急いだ。
- 19 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 14:05
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***
「お前さんは勘違いしとるっちゅうことや」
「何が」
話が見えない。何が勘違いなのか。
頭に血が登って何も分からない。
「何が!」
地面に落ちている新聞紙を踏みつける。
そこには亀井の笑顔が映っていて、もう一度あたしはそれを蹴った。
膝に痛みが走るのはもう気にならなかった。
「その新聞見てみぃ」
「え?」
ぐちゃぐちゃになったスポーツ紙の一面を拾い上げる。
昨日の試合の記事。
亀井の大活躍ぶりが報じられていて、
あたしなんてまるでそこに存在していないくらい…
- 20 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 14:06
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「……え?」
まるで、ではなく、本当にいなかった。
「お前さんが思うとった夢は、「夢が叶う」の夢やな。“夢”違いじゃよ」
意味を理解した瞬間、
あたしの膝は崩れるようにバランスを保つことを忘れた。
地面にひれ伏して、絶望感と喪失感に同時に襲われる。
あまりのことに、涙すら流れなかった。
頭の片隅には、昨日見た夢と、
今日あたしを心配して部屋に訪れた梨華ちゃんとごっちんの姿が、
フラッシュバックしていた。
「嘘だ……」
そんな言葉を呟くことくらいしかできない。
再起不能になった日のように、あたしは地面にひれ伏した。
「うちが言うとったのは、寝るとき見る夢やったからのう。ホッホッホッ」
いつものように汚い裏路地には、
老婆の汚らしい笑い声だけが、いつまでも響き渡っていた。
- 21 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 14:06
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- 22 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 14:06
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- 23 名前:40 昨日見た夢 投稿日:2005/02/11(金) 14:06
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