34 Split Girl
- 1 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:23
- 34 Split Girl
- 2 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:25
- 朝起きたら、あたしは分裂してた。
いや、別にお腹の辺りずんばらりんの真っ二つーってなスプラッタシチュエーションではなく、
あたしの側にあたしソックリなあたしが寝てたってだけ、だけど。
正直ビビッタ。
思わず蹴りが入った。
あたしみたいなソイツはごろんごろん転がってベッドの縁から落っこちてった。
ふー、メデタシメデタシでもう一眠り、と布団に潜り込んでみる。
寝れるかっ、アホッ。
ハイ、自己ツッコミ入りましたー。
今日もあたしのヒドゥンなツッコミ機関は異常無しの模様ですラジャー。
何故ヒドゥン属性が着いてるかといえば、他人には滅多にツッコマないからデスネー。
困ったもんデスネー。
まーではそろそろ現場のパチモンれーなさん、冬の朝のフローリングはどーですかぁ?
- 3 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:25
- あたしが蹴っ飛ばしたせいでさっきから床でくたばったままだった(そのまま成仏すればいいのに!)、
クローンなあたしは目をショボつかせてのっそり起きる。
それからあたしの顔をマジマジ見てちょっぴり片眉が動いたように見えたけれど、
それ以上大して驚きもせずに口の中でモゴモゴとオハヨとかなんとか言っている。
驚きが無い。リアクションが薄い。ツマンネー。
あたしは思わず右脇えぐり込むように手を伸ばしあたしモドキのホッペタを捻りあげる。
そうするとモドキちゃんの右手もするする伸びてあたしのホッペタへたどりつきイテテテテッ。
右の頬捻りゃ左の頬捻られるってか。
違うじゃん。
あたしが右手でつねくっているヤツの頬は左だから二人とも左頬しか抓まれてマセーン。
仕方が無いので自分の左手で自分の右頬を掴むとヤツも同じようにする。
スゲー間抜けアンドスッゲー痛い。
まぁ痛いってコトは夢じゃないってコトだよね。
あたしはもうちょっと驚くとかどうよと我が分身に問うてみる。
「だって別にいーじゃんどーでも」
ウム鋭い。
あたしもちょっとそう思ってた。流石あたしなだけの事はあるねっ。
- 4 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:26
- んで、代わる代わる顔を洗ったり、急かし急かされトイレに行ったりしながらどうでもいいことをダベる。
朝っぱらから話し相手がいるってのは悪くないかもしんない。
あんね、この前ハロモニでパンダの着グルミ着たんだけどさ、あぁ覚えてる? あぁそうそりゃそうよね。
んでね思ったんだけどあたしっていわゆるマジレッサーなわけで、これってよーするに、
マジレッサーパンダ(しかもやる気なし)
くだらねー。
ねぇねぇチョーくだらないと思わん、あたしのアナタ。どうよこれ。
「うん、チョーサイアク」
まーそんなんで、あたし達はとりあえず食パンをかじった。もちろん生で。
たとえ普段と違う異様な今日でも、フツーに時間は過ぎるし気がつけばもう出なきゃいけない。
ていうかヤバイヤバイヤバイ。
ってんで、慌てて飛び出そうとしてれいなさんピコ閃いちゃいました。
この目の前にいるヤツはあたしなんだから、あたしの代わりに仕事に行ってもいーんじゃん?
試しに前日やったばっかの振りをやらせりゃアラ不思議、ちゃんと踊れるよスッゲー。
やるじゃんあたしのあたし。
とゆーわけでさ、今日はアンタが仕事行ってくんない? ビバ有給!
「ってゆーか超ダルイ」
アーソウ。
そーだった、コイツもあたしだから普段の疲れが溜まってるってコトなんだ。
仕方が無いので公平にジャンケンで決めようじゃないの、じゃんけんぴょんっ!
- 5 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:27
- 当然の如く負けて、あたしはいつもどおり仕事にぱぱぱだぴょ〜ん。
リーダーが代替わりした楽屋は何かちょっぴり雰囲気が違ってちょっと空気が悪い。
新リーダはやたらと張り切ってるし、サブリーダーはやたらとヘラヘラヘラヘラしてる。
石川さんはカッチョイイゼとうなされた様にブツブツ呟いていた。
部屋の中央では5期の面々が仲良さそうに遊んでる。
「出でよガキさん!」
愛ちゃんの掛け声とともに机の下から飛び出してポンちゃんに踊りかかるガキさん。
ポンちゃんは余裕を見せて手を振りかざす。
「フーヤオマコピー!」
キレのあるステップで突如登場したマコっちゃんが圧倒的な体格差でガキさんを抑え込んだ。
あっオチルオチルよっと思ってたらガキさんはカクリと動かなくなって、みんなアハハと笑う。
平和だねえ。
さゆと絵里は隅っこの方で何やらゴソゴソ喋ってる。
あたしは最近ちょっぴり絵里と折り合いが悪い。
ふと絵里と目が合ったので、渾身のてじなーにゃポーズを炸裂させる。
したら絵里の眉間はネジ巻きコイルみたいなってた。
ハイ失敗〜ハイ失敗〜。
フテ寝する。
- 6 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:27
- 帰宅してドアを開けた途端、ピンクの頭に遭遇。
あろうことかあたしの同志は貴重な休暇を使って髪の毛をショッキングピンクに染め上げたらしい。
趣味悪いしあまりの似合わなさにチョー受けてケタケタ笑う。
が、ピンクがあまりにヘーゼンとした顔をしているので、何か裏があるなと熟考黙考ゾワリと悪寒。
もしかしてオマエ明日も仕事行く気ないだろっと問い詰めると、ピンクは歯を出してニヒヒ笑い。
我ながらムカツク笑い方だ。
だがしかし、テーブルの上に取り揃えられている晩御飯のラインナップを見て、
あたしの機嫌はコロリと反転ピンク礼讃アンタはエライっ!
何せホットプレートに肉肉野菜肉野菜。
感動した。涙ウルウルガールになった。
何はともあれ二人でギャアギャア貪り食う。
何だか二人で食べる晩飯はいつもよりオイシイ気がした。
腹が満ちたのでそのまま寝る。
おつかれいな〜。
- 7 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:28
- 翌朝。
まどろみの中ユサユサと乱暴に揺すられる。
もう食べられないよ〜なんてお約束のボケをかましていたらゲシゲシと蹴りが入った。
覚醒止む無しとなってシブシブ起きる。
ピンクがベッドの下を指差している。
つられて下を見るとあたし3号と4号が床に転がっていた。
まぁそーゆーのも想像しなかったワケじゃないんだけどね。
ピンクのほうを見ると首をすくめてヤレヤレだぜというジェスチャーをしてる。
マッタクもって同感だね。
細かい対応は全部ピンクに任せてとりあえず出かける支度をする。
今日こそドッペルゲンガーちゃんに仕事任せても良かったんだけど、
どうせ面倒くさがるんだろうし、今日はなんだかやる気マンマンモードだった。。
やっぱ肉パワーが効いたのかしらんと、ルンルンで同胞達に別れを告げようと振り向いた時、
奴らは三つ巴でホッペタを捻り合っていた。
ヤレヤレだぜ。
- 8 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:29
- 相変わらず絵里の眉間は発作起してる心電図みたいなってて、困ったものだなあと思う。
昨晩のテンションを引きずって陽気なコミュニケーションを試みたら、患者の容態が悪化してしまった。
急患デース。急患デース。ナース服が似合いそうなさゆにバトンタッチ。
仕方がないので、ミキねえを探してみたけれどどうやらアヤヤの楽屋に入り浸っている模様。
退屈退屈。
あたしの退屈誰かもらってーとゆーワケでヘッドホンをごそごそ引っ張り出してゴートゥ無敵モード。
とうのトックにジョーブツしちゃったカート・コバーンの歌声が脳に突き刺さる。
Grandma take me home
Grandma take me home
Grandma take me home
Grandma take me home
I wanna be alone
ばーちゃんだったらあたしがいっぱいいても引き取ってくれるかな。
やっぱ一人の方が落ち着くってもんよねー。
バッグに突っ伏して出番が来るまで眠り落ち。
- 9 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:30
- 帰宅。
予想を裏切らず3号と4号はイイ感じに変貌してた。
3号はぶりぶりゴスロリ、4号は包帯ぐるぐるデスロリで自分のどこにそんな欲望が眠っているのかと、
しばし首をかしげる。そうこうしているとあれよあれよと着替えさせられたり化粧されたりで、
あたしも一躍アーパー軍団の仲間入り。
シャクにさわったので、お礼にド派手な化粧を仕返してやった。
自分の顔を客観的に化粧するなんてちょっとトーサク的だ。
本日の発見。
4人揃うと家族っぽくなる。
あたしは何故かピンクを妻に、ゴスとデスを出来の悪い娘に持った苦悩する夫になっていた。
あまりの発言力のなさに父のセツナサを思い知る。
もっとオリジナルは大切に扱うべきだと思いますっ!
なんて主張したらますますオマエラは父さんから生まれたんだぞーと説教してるみたいなって参った。
まぁさておき。
4人揃うとドンジャラが出来る。
コレはスバラシイ。
バカみたいに夜遅くまで遊び呆けた。
それドーーンっ! ヒャッホー!
- 10 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:31
- イヤな予感がしてパッキリと目が覚める。
ベッドの上は目も当てられないような惨状ていうか、乗り切らなくて既に床に落ちてる奴もいた。
とりあえず知らない奴を片っ端から蹴倒して、あれよあれよと8体の山が出来る。
その後不吉な気配を手繰り手繰り、トイレベランダ玄関押入れからあと4体発掘され、
計16人。
ナニコレもしかして2倍じゃなくて2乗ってヤツ?
もしかしてもしかすると明日の朝はえーと、256人になるってこと?
超ムリ。絶対ムリ。
ごめんよ皆、弱い父さんを許しておくれ。
あたしは隠し子がゴロゴロ見つかっちゃったパパみたいな気分で、逃げるように家を飛び出た。
飛び出たつもりがピンクママンに後ろ襟をつかまれて、轢きつぶれたカエルみたいな声をグエッ。
「自分だけ逃げるなんていー度胸じゃん」
おっしゃるとおりでゴザイマス。
仕方が無いので全員叩き起こして簡単な状況の説明をする。
訓示も垂れて、点呼も取る。
ちょっぴりリーダーの苦労を思い知る。
それから輪になってホッペを掴みあって、がんばっていきまっしょーいでチョンとちぎる。
痛いってバカ。
- 11 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:31
- いきまっしょーいとは言ったものの、今日は久しぶりのオフなのだった。
いつもなら部屋でマッタリ日々の労働の疲れをグダグダと癒すところだけれど、
癒されないどころか逆に悪化しそうな環境を見回してハァと溜息が出る。
やはりかくなる上は自分から外に出るしかないのだなと、仕方なく重い腰を上げる。
いっそのこと16人で何処かに出かけたろかとも思ったけれど、流石にそれは目立ちすぎるので却下して、
一人であても無くふらふらと出かけた。
毎日働いているときは休みたくて仕方が無いのに、いざ休みとなると休み方が分からなくて困る。
とりあえず洋服でも買うべえとショップを何軒か適当に回ってみた。
何処に行っても人が多いし、吟味してるだけで店員が高速で寄ってきて次第にウンザリしてくる。
だけど、適当に帰ろうと思う度、自分トコには自分入れて16人いることを思い出し、
段々ワケの分からないことを考え出す。
- 12 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:33
- ドキッ! れいなだらけのバトロワ大会! ポロリは無いよ。だって胸ないもん。
あー、なんてヒギャク的なんだあたしって。
れいなはすっかりダメになってしまいました。だから今日はちょっと殺し合いをしてもらいます。
なーんちゃってアハハハッ。
夕暮れ、仕方なくゆっくりと帰路についたあたしは、あたしはあたしであって、
あくまであたしでしかないのだということをすっかり忘れていた。
マイホームはドアを開くなり開けてビックリ、見てドッキリの安っぽいB級スプラッタみたいなってた。
アフォだアフォすぎる。
十五分裂美少女、今ここに全☆滅。
しばし呆然とグログロのヌルヌルなあたし達を見つめる。
でもいくらあたしの分身がアフォとはいえガチでバトロワごっこはしないんじゃないかと思っていた時、
後ろに人の気配を感じてビクって振り向く。
- 13 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:34
- 「あー、ゴメンゴメン」
そこで何かしんないけどいきなり謝っているのはミキねえだった。
ハテナマークを山ほど浮かべているあたしを制して、ミキねえは人差し指と中指を立て額に当てる。
よく見るとミキねえの胸には大きな五芒星のペンダントがぶら下がっていた。
「アテー、マルクト、ヴェ・ゲブラー、ヴェ・ゲドラー、ル・オーラム、アーメン」
聞き慣れない呪文のようなものを唱えつつミキねえは大きく十字を切る。
突如ミキねえの体から多量の光彩が放たれて、視界が白く染まった。
何コレ、てゆーかこんなのってアリ?
ワケがわからなくなって振り回した手をそっと掴まれる。
「あたしも……ごめーんねっ」
耳元で歌うように囁かれた。これはそう、さゆの声だ。
「いあ! しゅぶにぐらす! せんのこをはらみしもりのくろやぎ!」
さゆも聞いたことのないような文句をちょっと舌足らずな発音で朗々と唱える。
今度は圧倒的な闇が辺りを覆いつくす。
元々視界は奪われているんだけど、得体の知れないモノの咆哮、骨まで染入るような冷気が、
あたしを根源的な恐怖に突き落とす。
ひたすらさゆの手を握ってしばらく堪えているとようやく目が見えるようになって辺りを確認する。
あたしのレプリカ死体達はキレイサッパリ消えて無くなっていた。
- 14 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:35
- 「まぁ説明すると長くなるから端的に言うと」
呆けているあたしそっちのけでミキねえが勝手に喋り出す。
「アストラル体を魔力増幅することによって、仮想的に思念を実体化させることができんのね。
んで、あたしはあたしのアヤちゃんを作ろうとしたんだけど、ヤッパいきなり本人に試すのは抵抗あんじゃん。
そーゆうワケで、近くにいた丁度いい実験体にれいなを選んだんだけどさー、何ていうかちょっと選択ミス?
あたしとれいなの波動を合わせたら思ったより粗暴なのが出来ちゃったみたいで……うんそうホラ、
焼肉っ焼肉今度オゴったげるから、ねっ。うんそーしよ?」
何のことやらサッパリ分からない。
ミキねえは喋るだけ喋って満足したのか、次はさゆの番だと言わんばかりに話すのを促している。
「えーっと、あたしはやっぱりカワイクて、でもそのカワイさって毎日毎日ちょっとずつ変わるじゃない?
だからそのカワイイあたしを日々保存するためにバックアップを取っておこうって思いついたんだ。
でもね、ネクロマンス法って、とーっても危険でデインジャーだからまずれいなで試しちゃったの。
ごめんごめーーんねエヘッ☆」
謝ってるけどミジンコほども反省してないのがよく分かった。まぁさゆだし、しょーがないよね。
色々とよく分からないコトだらけだけど、とりあえずここ数日ヘンな目にあったのはコイツラのせい
だということでとりあえず妙な納得はできた。
でもアレ? 3回分裂したんだから、ヤッパ犯人も3人いるべきなんじゃないの?
あたしの疑問を察知したのか、さゆとミキねえは扉の影をホレホレと指差す。
そこからムッツリとした表情の絵里が現れた。
- 15 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:36
- オマエが真犯人かあああっ! とか問い詰めようと思ったんだけど、
絵里の顔つきがいつにも増してクライというかマジだったので慌てて飲み込み相手の反応を待つ。
絵里はぶすっとしたままでポツポツと話し始めた。
「あたしにはれいなの考えてる事がよくわかんない。真面目な話しようとしてもすぐ茶化すし、
ちょっと冷たくしてもヘラヘラしてるし、なんか根本的にヒトのことバカにしてる気がする。
だから、れいなのヒトガタを作ってみて、話したら何か分かるかなと思ったんだけど、
やっぱひねくれてる人のヒトガタもひねくれてるのかな、ちっともあたしの所に来やしない。
だからもーいいやって。今まで冷たい態度を取ってゴメンなさい。
それと、勝手にヒトガタを作ってゴメンなさい」
んなコト急に言われても困る。
あたしもマジんなって謝るべきなのか、茶化すべきなのかよくわからない。
まぁ絵里の性格を考えると真面目に謝った方がいいんだろうな。
よし謝るか……アレ、謝るってどーやるんだっけ。
うつむいたあたしは吐き出すべき言葉を思いつかなくてただぐるぐると思考が空回る。
絵里はそれ以上言葉を継がずに押し黙っている。
そこにあたしの罵声が響き渡った。
- 16 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:37
- 「バーカバカ絵里、何マジんなってんだよっ! んなコトでウジウジしてると、
どんどんブスになっちゃうぞおーっ!」
あたしはそんなこと言ってない。
驚いて振り上げた視界の端のほうにピンクの頭がチラっと見えた。
悪趣味なヤツだ。ヤッパ絵里が作っただけのことはある。
あたしはヤレヤレと肩をすくめて、絵里に状況を説明しようとしたら、
絵里さんは怒りに顔を白くして、怒髪天を突いていらっしゃいました。
そしてやおらビシっと指をこちらに向かって突き出すと、荒々しく宙に文字を描きながら、
またしても変な呪文を唱えだす。
「オンキリキリ・ハラハラ・フダラン・バサツ・ソワカ・オン・バザラ・トシャカク」
ヤベエ、と超反応でミキねえはあたしを突き飛ばす。
絵里から放たれた無形の力は轟音を立てて、あっさりとマンションの壁を打ち砕いた。
あたしは絵里に言い訳をしようとして、絵里のいっちゃってる目つきを見て諦め、
そそくさとミキねえの後ろに身を隠す。
それから、さゆとミキねえはブチ切れた絵里を相手に面白半分、いあいあとアアアテェーを
繰り返しぶっ放したので、マンションは半壊し、当然の結果としてあたしは住処を追い出された。
- 17 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:37
- そして今。
何故か絵里の所に世話になってる。
毎日のようにケンカしてるけど、物理的な距離が近い分お互いにちょっとは相手のコトが分かってきた
……ような気がしないでもない。
絵里に言わせれば、絵里が大分譲歩していると言うけれど、あたしだって絵里を怒らせないように、
ちょっとは気を遣っているツモリ。
そういえば一回だけピンクから連絡があった。
それは、携帯の留守番メッセージに発信元が何故か自分の番号のが残されていて、
再生すると頭の悪そうな短いメッセージが流れ出したのだった。
「もしもしパパァ? あたしパープル入れてストライプ頭になったよ。ママによろしくねっ」
絵里のヒトガタはヤッパリ趣味が悪かった。
しかもあたしとピンクは夫婦役だったのだから、絵里はサシズメ姑だと思うと妙におかしい。
だけど、世界にもう一人あたしがいるなんて、なんだかとっても不思議に贅沢な気分になれる。
だからあたしはこの気持ちを絵里にも味合わせてやろうと今日も魔道書を―――
- 18 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:39
- 「ちょっ、れーな、何こんな本読んでるのよっ!」
「コノウラミ……ハラサデオクベキカ」
「この前のことまだ根にもってるの? もー、れいなクラーイ。ムッツリスケベー」
「スケベは関係なかとねスケベは」
あたしは最近覚えたばかりの印をコッソリ結ぶ。
そして頭の中でゆっくりと呪句を唱える。
すると丹田からそっと吐いた息が、親指ほどの鬼の形を取って絵里へ向かう。
慌てた絵里が後ろに仰け反りながら剣印を結んで切り払おうとするけれど、
一瞬遅く、鬼は絵里の顔を軽くかすってから消えた。
「ちょっともー何すんのっ! 信じらんない!」
当然のように烈火の如く怒り出す絵里。
しかしその眉間は、あたしの鬼が塗りたくった墨によって一本に繋がれていて皺ひとつ見えない。
あたしはココロの底から笑って笑って笑い転げて、それから憮然としている絵里に素直に謝った。
- 19 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:40
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- 20 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:40
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- 21 名前:34 Split Girl 投稿日:2005/02/09(水) 02:40
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