21 クリスタルボール

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 18:55
21 クリスタルボール
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 18:55

 「うわっ!ホンマに浮いとる!姉ちゃんこれなんや!?」
 「だから宙に浮く水晶玉ですってー。すごいでしょう!」
 「うわごっつ素敵やんこれ。感動したわー」
 「どうですか?お友達にも自慢できますし。今なら特別価格でなんと10万円!」
 「10万?!お買い得やん!買う!ていうか売ってくれ!」
 「おお、キャッシュで10万出るんですか。すごいですねー」
 「当然や、俺を誰や思うとんねん」

3 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 18:56

 つーか誰?

 でもこの男が誰かなんてあたしには全く関係のないことだった。金さえもらえれば誰だって同じだ。
 この男も、今まで騙してきた数多くのジャガイモ達の一つにしか過ぎない。
 「ありがとうございましたー!」
 「おおきにー」バッカじゃねーの?

 男は電話をしながら慌て気味に去っていった。
 それを確認すると、あたしは駅への一本道をゆっくりと歩いた。
 まだ空は明るいけれど、もう獲物になりそうな人はいなかった。帰り時だろう。
 実際、あんな下品で悪趣味なネックレスをしているような男と出会える事自体、稀だし。
 本当に品のない男だった。男爵イモならもっと紳士になりやがれ。

 「はぁ……」
 ため息はあたしを嘲笑っているかのように青い空へ溶けていく。
 あんなに透き通るように青くて雲ひとつなく幸せそうなら、その幸せを少しだけ分けてくれればいいのに。
 空にさえ八つ当たりをかましてしまうほどブルーだった。
 どんなに青くても、あたしの目には汚くしか映らない。

 道を行く二人組の女が口の中からトランプを出す仕草をして談笑していた。
 それが目に入った瞬間、すごい不快な気分に襲われて、ため息を一緒に言霊を吐き出した。

 「マジックブームのバカヤロー……」
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 18:58

 マジシャン藤本美貴。
 知ってる人なんて、少なくともこの街には誰もいないだろう。
 逆に言えばだからこそやりやすいんだけど、悲しすぎる。
 世の中は空前のマジックブームだというのに、仲間は次々にテレビ出演依頼が飛び込んでくるというのに、
 なんで、なんで。
 「なんで美貴にだけ売れないんだよ!」
 本当に叫んだら周りに変な人扱いされるから、心の中で大空に向かって叫んだ。

 この前だってそうだ。
 あたしともう一人、むさ苦しい男のマジシャンどっちをテレビに出すかの話になって、
 お偉いさんはむさ男を持っていった。絶対にあたしの方が画として映えるのに、どうして。
 あそこで出ていれば美人マジシャン藤本美貴が一世風靡間違いなしだったのに……それはないか。

 でも手品を使った詐欺で変な物を売りつける商売が楽なのは確かだった。
 さっきみたいに金を持ってそうなおっさんか熟女を適当に捕まえれば、大抵は買ってくれる。
 でも気をつけて、足だけはつかないようにしないといけない。
 気を抜いたら一夜のうちに株価大暴落、社長が行方不明になっちゃったどっかの会社みたいに、
 あっと言う間に転落人生を歩む破目になるだろう。
 マジシャンとして売れないのも勘弁だけど、それはもっと勘弁だった。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 18:59

 切符売り場でいつものように一番安い切符を買うと、三台並んでいる自動改札を抜けてホームまで歩いた。
 昼の三時という微妙な時間のせいか、あまり人がいなかった。もしかしたら座れるかもしれない。

 横で電車を待っている人の新聞を覗き見する。社長が行方不明になった会社の話が大きく載っていた。
 あたしが捕まってもこんなに大きく扱われないと思うと、また悲しくなった。
 当たり前のことだけど。
 『一番線、電車が参ります』
 白線の外側で待っていると、急に改札の辺りから地面を激しく蹴りつけるような音が聞こえて、
 あたしは視線を時刻表からそっちへと移した。

 肌の白い、人形みたいにきれいな女の子だった。タッチパネルに財布を当てて、駆け足で改札を通り抜ける。
 その動きの素早さに、思わず驚く。女の子はあっという間にこっちまで来ると、あたしの後ろに並んだ。
 彼女はあたしを一瞥して曖昧に笑うと、改札を指差した。

 改札の後ろに怪しい格好をした男共が三人くらい、走ってきた。
 三人の目線から、どうやらこの女の子を追いかけてきたらしいことが分かる。
 でも三人ともかなり必死の形相だ。

 「バイバイ」
 横の女の子がそう笑うと、人差し指を追って地面に落とした。

 この子頭大丈夫かな?ちょっと引きながら、到着目前の電車に視線を移した。でも、
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:00

 ピンポーン、ピンポーン。ピンポーン、ピンポーン。ピンポーン、ピンポーン。

 改札から聞こえた、鋭い警告音。
 別に特に珍しいことじゃないけれど、騒がしい音に釣られてあたしは条件反射のように首をそっちへと傾けた。

 「……え?」
 あたしは視線の先で繰り広げられている光景に唖然とした。
 警告音は、三つの自動改札全てから放たれていた。
 全ての改札に同時にトラブルが起きて、三人とも改札を通り抜けられなかったのだ。
 
 驚きのあまり口から声が出てしまった。いくらなんでも、運が悪すぎやしないか?
 まさか……。

 横に並んでいた女の子は平然とした顔で、
 「ドア開きましたよ」
 「え、……あ」
 彼女は既に電車に乗っていた。
 気づくと電子音のアナウンスの声と共に、電車は間もなく発車というところだった。
 また遠くでドタバタと足音が聞こえたけどそれ所じゃない。慌てて乗り込む。
 ドアは静かに閉まり、男達を置いて、電車は発車した。

 横で立っているほくろの多い少女の顔を見上げる。その表情を見てあたしは確信した。

 こいつ、なんかしたな。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:01

 電車は思ったほど空いてなくて、あたしが座るための席なんて当然のようになかった。
 まるでマジックブームの席にお前の座る場所なんてない、と全否定されたような被害妄想。
 またムカついた。

 横の女の子はボーっとした顔で品のない中吊り広告を眺めていた。
 なんとなくサバサバとした印象を受ける。でもその表情の裏に潜んでいる何かが、同時に浮き上がって見えた。

 一体こいつ、なにをしたんだろう。少し迷った挙句、あたしは彼女に話しかけた。
 「ねぇ、さっきのどんなトリック使ったの?」
 「……あたし?」
 「そ、あんた。
  切符使ったならガムつけといたとかいくらでも方法あるんだけど、
  あんたSuica使ってたでしょ?悔しいけど、全然分かんない。どうやったか、教えて」
 マジシャンとしてのプライドよりも、好奇心が勝ってしまった。マジシャン失格かもしれない。

 女の子はあたしを凝視すると表情を緩ませた。そして「あはは」と声を上げて笑うと、
 涼しい顔で言ってのけた。

 「魔法だよ」
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:03
 
 「魔法?」
 「そ」
 「そっか魔法かー」
 「そーそー」
 「アハハハハ!」
 「アハハハハ!」
 「……は?」
 「え?」
 あたしの予想外の豹変ぶりに驚いたのか、彼女は本能的に身構えた。
 冗談だと分かっていても、あたしはその冗談が嫌いだった。魔法だとか、夢みたいなことを言うのが。
 「んなもんこの世の中に存在しないんだよ」
 これはあたしの、手品師としてのプライドだった。
 ついさっき今月五回目のゴミ出しに出したばっかりだけど。

 しかし予想外の反応を見せたのはあたしだけじゃなかった。
 彼女もまた、あたしがおそらくそうあったであろう表情を見せて、先程の彼女と同じように体の前に構えてしまった。
 彼女は少しだけ低い声で、言った。

 「じゃあ見せてやるよ」
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:04

 そう言われて次の大きな駅で降ろされ、出てすぐの交差点まで連れてこられた。
 ここに来て、彼女は一体何をするというのだろう。全く分からないけど、顔はマジだった。
 ホクロの彼女は本気だ。

 すっと長い手を伸ばすと、その繊細そうな指先で道を行くキノコ頭の男を指差す。彼女は笑った。
 「10秒後、あの男が不幸になる」
 言っている意味がよく分からなかった。
 「……どういうこと?」
 「10…9」
 彼女は既に数え始めていた。指を指したまま、男が描く軌跡をなぞる。
 「8…7…6…5」
 あたしは視力の悪い目をよく凝らして男の動きを追った。男は青になった横断歩道をゆっくりと渡っていく。
 何も起こるはずがない。何も。
 「…4…3…2…1…0」
 「あ!!」
 岩が砕けるような音。それと共に、男の右足が横断歩道の真ん中でめり込んで埋まった。
 引っ張り出そうとするもびくともしない。男は助けを求めて叫んでいた。

 嘘だ、ありえない。
 でもそれは間違いなく目の前で起こっている、現実だった。

 「……あんた何者?」
 「あたし?」
 彼女は平然と、へらへら笑っていた。
 「あたしは吉澤ひとみ。あんたは?」
 「……藤本……美貴」

 衝撃のあまり、自分の名前を思い出すのに時間を要した。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:06

 「あたしさ、生まれつき人の運気を左右、っていうか上下させる力があるんだよね」
 吉澤ひとみは間の抜けた顔で笑った。
 あたしは目の前で起こった信じがたい現象を、それでもマジシャンとしてのプライドで疑った。
 ついさっき、またもや捨てかけたけど。
 「あ、あれは……偶然。絶対偶然だから。ていうか偶然だし」
 偶然を連呼する時点でプライドを捨てたも同然かもしれない。
 「まあそう言われちゃったら無理に信じろとは言わないけどさ」
 わっさわっさ揺れるマッシュルームヘアーとハイパーレスキュー隊の横を通り越し、駅を離れ二人歩いていく。
 どこへ向かうわけでもなく、なんとなく。
 おそらくあたしが観念するか、魔法を認めるまで続く。って、一緒じゃん。

 「もし本当にあんたにその力があるなら自分に使えばいいじゃん」
 「あ、それは無理。自分には効かない」
 「じゃあ……」
 ふと、頭の中にすごく汚い妄想が膨らんだ。
 一瞬我慢したけどすぐに耐え切れなくなって、吐き出してしまった。

 「美貴をマジシャンとして大成功させてみてよ」
 「…………へ〜。美貴ちゃんマジシャンなんだ」
 「馴れ馴れしく呼ぶな」
 「じゃあみきちゃんさんで」
 顔を真っ赤にするあたし。それに対して彼女は皮肉っぽく笑っていた。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:07

 「みしてよ」
 「え?」
 「マジック。マジシャンなんでしょ?」
 「……分かった。やったげる」
 何やってんだ……と自分自身の行動に疑問符を打ちながら、あたしは今日の営業道具をポケットの中から取り出した。

 ただの、なんてことのない変哲な水晶玉。それを自分の右手の掌に乗せると、掌をゆっくりと返した。
 しかし、水晶は空中に浮かんだまま静止して、動かない。
 「おー、パチパチパチ」なんて人をバカにしたみたいなリアクションをされたから、
 あたしはすぐに水晶を拾ってポケットの中へと返した。

 本当になんてことのない、手品ともいえないような代物。
 こんなにちっぽけだからむさ男に負けたのだろう。知りつつも、認めたくなくて。
 このマジックで人を騙し続けていた。あたしはあいつに負けていないぞ、というただの負け惜しみから。
 自分のプライドくらい安っぽい、この見せ掛けの水晶玉で。
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:08

 真正面の彼女はバカの一つ覚えみたいに未だ拍手を繰り返していた。
 あたしがにらみつけると慌ててその動きを止める。でも反省の色を全く見せない顔で、ポツリとこぼした。
 「テレビ出ればいいのに」
 「出たくても出れないの!じゃあほら、出演権獲得のために運勢上げてみてよ」
 声を荒げると、途端に彼女の顔は真剣な色に染まった。
 目が合う。
 大きくて、その瞳に吸い込まれるような感覚を覚えたけど、あたしは目を逸らすことなくその瞳を見つめ続けた。
 沈黙。
 この世界のこの空間から、二人以外がいなくなってしまったみたいに、何も聞こえない。
 いつまでも続きそうな静けさ。
 彼女の瞳の中に、弱弱しい自分の顔が見えた。

 「あ!!」
 突然聞こえてきた大声によって、あたし達の沈黙は破られた。
 「いたぞ!」
 さっき改札で引っかかっていた男達が、更に増えてこっちへと走ってくる。
 「逃げるよ!」
 彼女に手を引かれて、一緒に走り出した。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:09

 ほぼ全力疾走で道を駆け抜けながら、あたしは横を走る彼女に訊ねた。
 「ていうかなんで逃げてんの?」
 「……寺田物産って知ってる?」
 「知ってる。てかニュースになったばっかじゃん」
 「あそこのバカ社長にあたし捕まっちゃってさ、
  運気を常に最高の状態にさせられてたのよ。代わりにいい暮らしが保障されてて」
 「……マジで?」
 「だけど嫌になったから、運勢どん底まで下げて逃げ出してきちゃった」
 「ということは……」
 株価大暴落の原因ってそれ!?

 ありえない。ていうかありえねぇ。
 人差し指一本で人の人生を左右できるなんて、ありえねぇ。

 でもここまで証拠を並べられると、流石にあたしも信じざるを得ない。
 それに能力が本当なら、なんで全員が車やバイクを使わずに、走って追いかけて来ているかの説明もつく。
 エンストとか、パンクとか、何かしらの不幸に確実に襲われるから。
 だから走って追うしかない。

 「んで」
 彼女は終止普通の表情で和やかに話していた。
 「あれが社長」
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:10

 彼女の指が狙う先を走っていたのは、
 品性を全く感じられない長い金髪をたなびかせて、汚らしいネックレスをぶら下げている、
 物凄く見覚えのある男だった。喉元まで出てきてるけど、思い出せない。
 すると男もあたしの視線に気づいてか、真正面に顔を向けてきた。
 ……。

 「「あーーー!!」」
 二人同時に声を上げる。

 こいつ、ついさっき騙した男じゃねぇか!!

 「どうかした?」
 「なんでもない」
 向こうも完全に気がついたみたいだ。後ろから無駄にいい声を張り上げて叫んでいる。
 「お前さっきの水晶ニセモふぐぇ!噛んだ!舌噛んだ!」
 どこまでもバカでどうしようもない男だ。
 でも、どうやらあたしにも逃げなければならない理由ができたみたいだ。

 「だからあんなに簡単に騙せたのか……」
 「え?」
 「なんでもない!」
 あたし達は疲れた体に鞭打って、スピードを上げた。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:11


 「これからどーすんの?」
 あたし達が寺田と愉快な仲間達から逃げ切ったのは、空が黄昏色に染まってからだった。
 逃げるのに飽きてきた頃、突然向こうの先頭が転んだと思ったら、次々と後続の男達がそれに引っかかり、
 なにかと思って横を見ると大爆笑していた。

 理由は違えど、寺田物産を敵に回した。株価大暴落したから心配ないとは思うけど、安心できない。
 あたし達は最早、運命共同体だ。
 「……そうだ、こんなのどう?」
 「なに?」
 「美貴の運気を高めて、宝くじとか買って生活する」
 
 要は寺田のやったことと、全く同じ。
 言い終わってから気づいて、自分で自分の発言に嫌気が差して、吐き気がした。

 横を歩く彼女は夕陽のお陰でオレンジに顔を染めていた。
 「もうこれっきり、使わないって決めたんだ」
 「……」
 「人の運命を指一本で左右するなんて、やっぱダメだよ」
 「そっか……」
 「みきちゃんさんさ、自分の仕事にもうちっとプライド持ちなって。あの拍手は本気なんだから」

 あたしの最低な発言に対して彼女は嫌な顔もせずに返して、更に励ましの言葉までくれた。
 なんだか恥ずかしくて、でも嬉しくて。体が熱くなった。

 彼女がどんな人生を歩んできたのか、今の言葉でなんとなく分かった気がした。
 なんとなく、だけど。
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:12

 ビルの谷間に消えていく太陽が眩しい。
 あたしは手で太陽を遮ると、彼女の方へと顔を向けた。

 「実はね」
 「なに?」
 「美貴も魔法使えるんだ」
 「さっきんなもん存在しないって言って」
 「黙って聞け」
 「はい」
 彼女はびっくりした顔を見せたけど、すぐにおとなしくなった。
 「しかも自分にも使える分、あんたより高性能」
 「どんなん?」
 あたしは手を後ろに組んで、斜陽に赤くなった顔を隠しながら、彼女とは反対方向を見て言った。

 「人と人を繋ぎ合わせて、離れなくするチカラ」

 光を浴びて自らを落陽色に染めることで、熱くなった首の裏を隠した。
 彼女はどんな顔であたしを見ているのだろう。
 たまらなく恥ずかしくて、その感情が悟られたくなくて。
 視線を戻せない。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:12

 「……へぇ〜」 
 「へぇ〜ってなによ」
 あたしが抗議すると、彼女は思い出したような顔で、冗談っぽく笑った。
 「ていうかみきちゃんさん、なんでさっきからついてくるの?」
 「いいじゃん別に。っていうか美貴が行きたい方向をあんたが行ってるだけだから」
 「そっか……じゃあそういうことにしといてやるよ」
 彼女は豪快に笑ったけど、すぐに表情を絞めなおして、
 グッとあたしに顔を近づけた。

 「でも、これだけは言わせて」
 「な、なに?」
 「いい加減あんたってやめてくんない?」
 「あ」
 そう指摘されて、彼女のことを「あんた」としか呼んだことがないのに気がついた。
 あたしは少しだけ考えてから、

 「よっちゃん」
 「馴れ馴れしく呼ぶな」
 「じゃあよっちゃんさんで」
 笑う。
 すると彼女もまた、微笑んだ。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:13

 ついさっきまで恨めしかった青い空は赤くその姿を変えて、幸せを少しだけ分けてくれた。
 八つ当たりしたあたしを、優しく包み込んで、照らし出して。
 もしかするとこれも、彼女の魔法なのかもしれない。なんて考えて。

 「で、どうしよっか」
 両手を後頭部に乗せて、こっちも向かず彼女は聞いた。

 当のあたしは、さっきよっちゃんさんに言われた言葉を、一人思い出していた。
 ポケットから水晶を取り出して、夕陽に当ててみる。ピカピカと光った。

 「プライド持ちなって……」

 あたしのマジックに対するプライド。
 今まで何度も捨てては拾いを繰り返してきた、この水晶玉みたいにニセモノで安っぽくて、
 ちっちゃなもの。
 「え?」
 本物になれるように、そしてもう二度と捨てないように。
 しっかりと持っていられるようになってから。

 「なんでもない」
 これからどうするかなんて、それから考えても遅くないはずだ。きっと。

 「……そっか」
 間もなく消え入る灼熱の光を浴びて、優しく微笑むよっちゃんさん。
 狭められた視界の中、あたしは彼女に微笑み返した。
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:13
(0^〜^)/.(VvV 从
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:14
テジナ~ニャ!!(0^〜^)/.(VvV 从
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/02/04(金) 19:14
ナンデダYO!(T〜T0)\(VvV 从ヨシヨシ

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