12 時の鎖

1 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:23
12 時の鎖
2 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:23



「アタシ、待ってるから。ずっと、ずっと待ってるから……。」


3 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:23
  ◇  ◇  ◇


1日目。

目がサめた。
オきアがりカタをオモい出す。
だんだんカラダの動かしカタも思い出してくる。
立ち上がってみた。
声の出し方も思い出した。
コトバもだ。
振り返って今まで寝てた場所を見る。
ベッ……ド、そうベッド。
モノの名前も思い出してきたみたいだ。
ベッドの脇にコレは……ノートがあった。
開くと何か書いてある。

―――モジはまだ読めない。


2日目。

文字の読み方を思い出した。
引き出しに入ってたお金で買ったパンをかじる。
ノートに書かれている文字を読む。
古ぼけた紙になぐり書きだからちゃんと読めない。
どうやらアタシは12日間ごとに記憶を失くしちゃうらしい。
せっかくノートなのに1ページの半分しか書いてなくて、
わかったのはそれと、アタシの名前だけ。
これは……そう、ローマ字。
ローマ字でさらに見にくい汚い字。
いい加減だ。

「え、と……ミ、キ? ミキ=フジモトか」

―――ミキ。
それがアタシの名前だ。
4 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:24
3日目。

ミキは自分のコトをミキと呼ぶことにした。
その方がなんか安心できる。
鏡でミキはミキの姿を映してみた。
ケッコー、美人だ。
長く眠ってたのかな、瞳が心なしか緩んで見える。
あ、なんか髪もずいぶん伸びちゃった気がする。
やっぱ結構長いこと眠ってたみたいだ。


4日目。

食料の買出し以外で初めて外へ出てみる。
レンガ造りの建物。
足元で擦れる石畳。
この街並を眺めて散歩をするのが好きだったと思い出す。
賑やかな声に誘われて、商店街の方に出てみた。
果物屋のオジさんが声をかけて来る。
どうやらミキの知り合いらしい。

「久しぶりだなぁ。最近来ないから心配してたんだぞ」
「うん。ちょっと用事があって、ごめんね?」

やけに素直じゃねーか、そう言ってオジさんは笑った。
適当に話を合わせて、お金を持って来てなかったのでそのまま離れようとしたら
オジさんは持ってけと言って真っ赤なリンゴを投げ渡してくれた。
ありがたくもらうことにする。
同時にようやくそのオジさんが誰だか思い出せた。

不意に、悲鳴が人波の中から上がった。

女の子が人の群の隙間を縫うようにして駆けて来る。
その背後に男達が迫っているのが視えた。
5 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:24
「おい!?」

オジさんの声を背にして女の子に駆け寄る。
腕を掴むと女の子は一瞬ギョッとしたけど、
ミキに引かれるまま一緒に路地裏へと駆け込んだ。
間を置かずに黒い法衣に身を包んだ男達が追ってくる。

「追い詰めたぞ! 時の魔法使い・アヤ=ゴトー……!?」
「――――――っ!」

ミキは唱えた。
失われた言語、魔経を確立しない常人の聴覚では捉える事さえ出来ない呪詛を。
手元のリンゴに口づける。
赤面したリンゴを投げつけると、それは先頭の男の頭蓋と同様に真っ赤な炎を上げて吹き飛んだ。
男たちの中心に落ちるように投げた筈なのに。
それに気づいた2番目の男が先頭の頭ごと手元の銃で撃ち抜いたんだろう。

逃走を再開しようと思った時。
左手に握っていた温もりが消失した。
女の子が硝煙に飛び込んでいく。
テープの早送りでも見ている……いや視ているのか、そんな映像だった。
その女の子にだけ、時間が何倍も速く流れているような。
目にも映らないような疾さと正確さで。

女の子は黒の法衣を全て薙ぎ倒した。


5日目。

ゆうべはアヤちゃんの家、とゆーか研究室に泊めてもらった。
昨日思い出したコトは2つ。
果物屋のオジさんの事と、ミキは魔術師だと云う事実。
アヤちゃんはまだ寝ている。
あれからまた色々と文献を漁ったらしい。
まだ訊いてない事はあったんだけど、急にあの家に帰りたくなってそっと部屋を出た。

家はもう亡かった。
レンガ造りだから外装は残ってたけど、中は真っ黒だった。
いつか見た、外側は精巧なのに中身が空っぽの不出来なヒトガタを連想した。

どういう原理か、あのノートだけは炎を寄せつけなかったかのように残っていた。

また商店街の方に出てみた。
ミキを呼び止めてくれる人は誰も亡かった。
6 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:25
6日目。

一晩中歩いて疲れた。
途中、見回りの兵士が小銃を片手に襲ってきたので何人か焼いた。
お腹が減って試してみたけどダメだ、星と隔絶した霊長は不味い。

さらに歩き続けて。
辺りは堕落した赤色に染め上げられていた。
オレンジの太陽が境界を告げる。

風が吹いた。
視線を上げると、アヤちゃんが箒に腰掛けるようにして浮かんでいた。
ミキが笑うとアヤちゃんも笑ってくれた。
嬉しかった。


7日目。

ミキは記憶の事を話した。
アヤちゃんにまだ思い出せない部分の記憶を補完してもらうため。
この星が教会と云う組織に支配されていること。
教会が魔女と称して魔法使いと魔導士を厳しく取り締まっていること。

魔法とはニンゲンに成し得ない神秘を行う業。
魔導とは魔界との契約で魔法を手に入れる業。

昔は魔法使いも教会の機関で受け入れられてたのに。
アヤちゃんは生まれる前の筈の30年以上も前の事を、懐かしむかのように笑った。
歳をごまかしてるんだろうか、大人びているし。
ミキは魔術師。
魔法使いとは違うのかと訊いてみた。

魔法に到達した魔術師を魔女と呼び、魔導に踏み入った魔術師を魔女と呼ぶ。

けど、教会は教会の自由にならない魔術師を嫌う。
たぶん教会にとってはミキたんも魔女だよと、アヤちゃんは事も無げに告げた。
アヤちゃんは魔法使いだった。
7 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:26
8日目。

アヤちゃんの研究を手伝う。
時間と空間に関する研究だ。
幸い、ミキの専門もそっちらしくてミキの知識はよく役立った。
研究はよく進んだ。

アヤちゃんは可愛い。
栗色の髪、ブラウンの大きな瞳。
太陽みたいに元気な笑顔で。
話す言葉もこっちまで元気にしてくれる心地良い響き。
そんなアヤちゃんの姿がやけに愛しかった。

夜、アヤちゃんはベッドの中で泣いていた。


9日目。

「実はマツーラにも思い出せない事あるんだぁ」

ミキたんと一緒で。
何日か毎に記憶が失くなっちゃうらしいミキとじゃだいぶ違うと思うけど。
口には出さずに先を促すと、アヤちゃんは初めて悲しそうな表情になった。
いや顔は笑ってたけど、それ以上に泣いていた。

――――アタシ思い出せないんだ、お母さんの顔……。

その夜も、アヤちゃんは泣いていた。


10日目。

違和感を思い出した。
魔術とは神秘。
秘匿性を失っては神秘たりえない筈だ。
なのにその研究を協力者とは言えミキに見せるなんて。
共同研究は確かに在り得る。
けど、一蓮托生。
相応の契約や手続きを踏まないと後々面倒なコトになる筈。
見逃してくれる程に森羅万象の代弁者は易くない。

何代目かは知らないけど魔法を持つ魔術師がそんなコトを知らないわけが無い。
ミキがそちらの専門じゃなかったらどうするつもりだったんだろう。
まさかミキを――――。

また、アヤちゃんは泣いていた。
8 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:26
11日目。

ミキは内側に何かを貯めるのが好きじゃないらしい。
どうせ今のミキは明日には居亡くなるんだ。
そう思って昨日の疑念をアヤちゃんにぶつけてみた。

アヤちゃんは今度こそ本当に涙を流しながら唇を震わせた。
なりふりをかまっていられないんだ、と。

アヤちゃんは本当は此処の人間じゃないらしい。
別の時間の流れから紛れ込んだ異端。
正確には32年前から、28年の時を超えてこの時間に飛んできた。
もう4年近く、こちらでの研究を続けてるんだ。

32年前と云うと、丁度教会が魔法使いを取り締まり始めた時期に重なる。
魔法は血に血を重ねて魔術師が何代目かで到達できるものだ。
アヤちゃんのお母さんは8代目で、初めて魔法を手に入れた人らしい。

マキ=ゴトー。
ミキもそっちの専門だからだろう、その人の名前にどこか聞き覚えがあった。
ちなみにアヤちゃんは今、マツーラと名乗っている。
ゴトーの家系は戸籍上、潰えているから。

炎に囲まれながら、お母さんはアヤちゃんを一月賭けて完成させた魔法陣に乗せたという。
離れたくないと喚くアヤちゃんの頬を、初めて叩いて。
優しい顔で、言ったという。

「大丈夫。アタシ1人なら逃げられる。
 それにアタシ、待ってるから。ずっと、ずっと待ってるから……。」

そして、アヤちゃんは1人で此処へ辿り着いた。
でも、この世界にお母さんはいなかった。
もしかしたら違う次元に飛んできたのかもしれない。
過去に戻れば成長した自分にどうにかできるかもしれない。
その一心で、アヤちゃんは研究を続けている。

28年で、この星から魔法は殆ど失われた。
特に攻撃系統の中にはもう、魔法と呼べる代物が存在する余地すら無い。
魔術に科学が追いつき、追い越してしまったんだ。

ゆえにアヤちゃんと言えどいつ死期がやってくるかわからない。
だから、生き急ぐんだ。

夜、アヤちゃんは泣かなかった。
9 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:27
12日目。

辺りは暗い。
ミキは走っていた。

アヤちゃんが帰って来ない。
今日で最期かもしれないからと。
ごちそうを作ってあげるからと。
特別な食料の供給ルートがあるんだと笑って。
研究室を出たきり、帰って来ない。

雨でも降ったんだろうか。
石畳が黒く光っている。

悪寒が走った。
脚が勝手に動く。
見慣れない道を迷い無く、ミキは其処に辿り着いた。
そして其処に、何か居る。

群だ。
死神の衣を連想させる。
黒い法衣の、群。

「――――――っ!!!」

風を纏って群を蹴散らす。
群の中心にはヒトガタが在った。
外側は精巧なのに、中は空っぽな、ヒトガタが。
アヤ=マツーラという、ヒトガタが。

石畳の間を走る溝を、紅い線が流れていく。
何かの回路を走る電気みたいに、アヤちゃんが網のように拡がって行く。
その様は何かに似ていた。

「貴様、魔術師だな。教会に刃向かう者は容赦無く葬らせてもらうぞ」

なにかを喚いて、法衣の1人が銀色の銃口を向けて躊躇わず引き金を絞った。
回転による安定、運動と停止という矛盾の内包。
命中精度を手に入れた弾丸がミキの思考回路を焼き切りに来る。

ミキの眉間に銀の魔弾が突き刺さった。
紅い脳漿が逆流する。

視界の隅でアヤちゃんは拡がって行く。
その様は何かに似ている。

―――あぁ、そうか。

想い出した。
初めから憶えていたんだ。
ミキは……ミキじゃない。

その紅い網は、ヒトの脳髄を縛る細い血の鎖に似ていた。
10 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:28
  ◇  ◇  ◇


『また随分と手荒いんだね』

血煙を見つめてマキが云った。
まぁ、見つめるという動作の主語はアタシだけど。
視界の端で何かが蠢く。
金属が弾ける音。
アタシの背中に鉛が喰い込んだ。
時間を逆さに動かす。
傷口から巻き戻されるかのように飛んだ銃弾は、そいつの片目に突き刺さって停止。
アタシの傷も血の一滴すら残さず塞がった。

ん、まだ生きてたかぁ。

『わざとらし。生かしといたの自分ジャン』

そう言いなさんなって。
コイツにゃ眉間撃ち抜かれた恨みがあんだよ。
真っ直ぐに視線を向けると、無事な片目で元気に睨んできた。

「がっ、、、か、神の、御名に、おいて、、、貴様を――――」
「ふぅ、―――――――。」

どんっ、と大きな音を発てて、地面から十字架が生える。
ヒトの強度の許容速度を遥かに超えたそれは、罪人を磔どころか粉々にしてしまった。
石畳はすっかりニンゲンの塵で埋め尽くされて、紅い線は海になっていた。
足元に2本ほど指の足りない人の手首とそれに握られたロザリオが堕ちた。
こんな処刑用具に祈るなんて何考えてんだか。
んなもん良くて魔力の増幅装置がせいぜいだろうに。

中の回路を踏み潰されて火花を上げるロザリオを他所に、アタシはアヤちゃんに視線を移した。
11 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:28
「で、どうすんの。死んじゃってるよ、アレ」
『何、まだちゃんと思い出せて無いの? ミキちゃん』
「だぁっ、ちょっと"Maki"と"Miki"読み間違えただけでしょ!つーか字が汚すぎんだよ!」
『書いたのアンタでしょーが』
「うっさぃ。んで何、死体でも親子の対面したいなら手伝うよ?」
『ごめんだね。悪魔と取引なんて極力減らしたいし、もう払うもん限られてるし』

悪魔じゃなくて魔人だ、なんてツッコミは知ってて言ってるだろうから不要だろう。
てか実際ミキとマキ間違えたアタシのせいで実は計画遂行ギリギリだったわけで。
少しくらい悪いと思って好意で言ってやってんのに。

『アタシの顔と名前でアヤのアタシの記憶を戻し、その反動でこっちの記憶も戻すってのが無理だったんだよ。
 森羅万象の代弁者はそんな綻びを見逃しちゃくれない』

ま、そうだね。
それでもこの、ここの次元の世界だけは違う時間の流れの異端を嫌ってウチらに協力してくれたみたい。
アヤちゃんが魔術師の理も守らずに必死でいてくれたのが幸運だった。
12 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:29
しゃがみ込んでアヤちゃんの顔に触れる。
徐々に温もりが亡くなっていくけど、表情は眠るみたいに静かだ。
マキの意識が流れ込んでくる。
初めから、32年も前からそのつもりだったとは言え、実の娘の死に顔なんて気持ちいいものじゃない。
それでも、愛しいんだ。
マキのカラダを使い始めて随分経つ。
そのせいか最近、ニンゲンの感情に理解を持つ自分がいた。

―――魔界の住人、爵位級の魔人ともあろう者が。

『始めるよ』

失われた言語でマキが云った。
返事はせずに、アタシは空間に手を突っ込んだ。
研究室に繋いで取り出す。
あの古ぼけたノートを。

ノートを投げ上げる。
バッ、とページの一枚一枚が中空に浮かび、辺りに光が満ちた。
あの1ページ目の上半分を残して、隠されていた文字が光と共に浮かび上がったんだ。
アヤちゃんのカラダから柔らかな光が漏れる。
浮かび上がって球体を成したそれを、ノートの群が取り囲んだ。
13 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:29
「では訊くぞ、魔導士。汝は何を望む」
『娘の、幸福』
「よかろう。代償は何だ」
『我が一族の到った魔法、その全て』
「了承した」

お互いに低い声でのやり取り。
アタシは魔界に魔経を繋いで、チカラを放った。
紙の群の中心で時空が歪む。
歪みは二重三重に重なり、やがて小さな穴を開けた。
アタシはもう1枚、新しく紙を取り出した。
紙の上に読むことのできない文字を刻む。
書き終えた紙を光の球体、アヤちゃんへと投げつけた。
紙に押されたかのように、アヤちゃんは穴の中へと消えていく。

そうして、歪みは消えた。
跡にはただチカラを失って堕ちるノートの群と、空っぽのヒトガタだけが残った。

「ホントにこれで良かったの? 蘇生の魔法ならアタシ持ってるのに」
『いーの。それにほら、ゴトーは時の鎖に縛られちゃってるし』
「詩人だねぇ。だから自分といても幸せにゃなれない、と」

自らのカラダと時の鎖による永遠の束縛。
12日間ごとの記憶の喪失による永劫の循環。
それが、アヤちゃんを此処へ逃がしたマキの代償。
記憶云々に関してはアタシも巻き込まれるんだけど、カラダ貰ってる以上。
14 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:30
『で、これからどうする? ミキ』
「ミキゆーな。まぁ、飽きるまでアンタと一緒にいたげるよ」
『そらどーも。でも明日にゃまた全部忘れてるからねぇ』
「あっ、とりあえずあの名前書き換えないと」
『いーじゃん、ケッコー似合ってるよ? ミキちゃん』
「……アンタ魔人を舐めてるでしょ?」

そうして、ミキたちの物語は廻って行く。
ぐるぐる。
ぐるぐると。
永遠に。

「あれ?」
『どうした?』
「名前書いた部分の紙……無いんだけど」
15 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:30
  ◇  ◇  ◇


「――――やちゃん、亜弥ちゃん!」
「……ふぇ?」

目が覚めると、ミキたんが顔面どあっぷでこっちを睨んでる。
相変わらず悪魔じみた鋭い瞳。

「あれ、アタシ今、寝ちゃってた?」
「寝てたよぉ。そらもうぐっすり」
「てかホラ、早くしないと収録始まるよっ」

対照的に緩んだ瞳でごっちんが云うと、ミキたんは急かすようにアタシの腕を掴んだ。
そうだ、今日はさんまさんの特番で歌収録だった。
慌てて鏡で顔に寝痕がついて無いか確認するけど、不自然なほどいつも通りにキレイな肌。
さっきまで突っ伏してた所に視線を映すと、折り重ねたタオルが頭の大きさに凹んでる。

「これ、ごっちん?」
「うん。寝痕ついちゃうといけないから」
「何、ミキは候補から削除ですか?」

ごっちんのこーゆー細かい気配り、お母さんっぽくて好きだ。
ていうかウチのママよりよっぽどお母さんぽいよ。
そんなコト思ってるとADさんが呼びに来て。
16 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:31
楽屋を出る時、足元に紙切れが落ちていた。
屈んで取ろうとして、ドアの角におでこをぶつけた。
まだ寝ぼけてるらしい……。
うわ、血ぃ出てるし。
前方で急かす2人を引き止めて、
ノートの切れ端らしい紙に書かれたローマ字を見つめる。
乱暴な字で書かれてるからちゃんと読めない。

「えーと、マ…?いやミかな、ミキか」

乱暴な字だし、ミキたんのかな。
失礼なことを思いながら紙を裏返すと、こっちは消えかかりそうな薄い字でまた何か書かれてる。
ん? 知らない文字だ。
でも、読め……る?

「――――――?」

声に出して読んだ。
すると、前方にいた筈の2人が後ろ向きにスゴイ速さで戻ってくる。
ADさんも同じような動きで戻ってきて、部屋の前まで来てこんどは後ろ向きに帰っていった。

「うわっ!?」
「え?」

背後の声に驚いて振り向くと、椅子に座ったミキたんとごっちんが驚いたような目で見つめてくる。
なんか、さっきまでアタシが寝てた机とアタシを交互に見て、指差してる。

「えっ?あれ?亜弥ちゃん?今ここに寝て?超能力!?魔法!?」
17 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:32




おでこの血は、止まっていた。



18 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:32
19 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:32
20 名前:12 時の鎖 投稿日:2005/02/02(水) 13:32

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