07 特効薬

1 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:24
特効薬
2 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:24

「オラーッ。てめーらぁ、気合入れろよッ!!。整列ッ!!。」

私達モーニング娘は、ダンスレッスン場の壁を背にしながら
直立不動の姿勢で1列に並ばされている。

目の前には軍服姿にサングラスをかけて仁王立ちする二人の女性。
右手にメガホン、左手に竹刀を持ち、朝から大声で怒鳴りまくっているのだ。

あーあ、うっとおしい。
ってか、どうしたんだ?。この人達は?。

私の知る限り、二人とも昨日までは優しい先輩だった筈。
それが、一夜明けたらこのイカれた鬼軍曹に大変身。
ハロプロ内とそれ以外とでは態度が全く違う中澤さんも真っ青の豹変ぶりだ。

何か変な薬にでも手を出したのか?。
それとも怪しいエロ催眠術師に、タチの悪い魔法でもかけられたのだろうか。



今日は1月31日。
長かったハロプロコンサートツアーも終了し、新たなモーニング娘として
再出発する記念すべき日でも有る。

そう。
昨日は思い出すのも辛いくらい、涙涙の飯田さん卒業スペシャルコンサートだったのだ。

そんな昨日とは打って変わり、突然訪れたこの修羅場。
ツアー終了の達成感も卒業の余韻も、一気に吹き飛んでしまった。

3 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:25

「なあ、ヨッシー。取り合えず、お前の言う通りにこんな格好までして来たけどさあ
 別にオイラたち軍隊じゃないんだから、こんな事しなくても……」

「駄目っすよッ!!。リーダーの矢口さんがそんな弱気でどうするんすかッ!!?。
 こういうのは最初が肝心なんです。ビシッとしないと、ビシッと。
 オラッ!!。このカス共ッ、良ーく聞きやがれッ!!。
 この私がサブリーダーになったからには、今までみたいなお遊び感覚は許さねえからなッ!!。
 おう、1番右のヤツ。お前誰だっけ?。え?、新垣?。こんなヤツ居たか?。
 まあイイや。じゃあ、お前からだ。番号始めッ!!。」

「えっ。…イ、イチ。」

「ちっがぁぁぁぁぁうッ!!。」
ガラガラガッシャーーン。

いつ用意したのか、吉澤さんは部屋の隅に置いてあった小さなちゃぶ台の所まで走り寄ると
勢いに任せた見事なヘッドスライディングでひっくり返した。

「コラーッ。てめえナメてんのか?。誰がそんなもん口走れっつったんだバカヤローッ!!。
 ここでの番号は、娘番号に決まってるだろーがッ!!。
 加入した時に貰っただろ?。おニャンコクラブの会員番号みたいなやつ。アレだよアレ。
 ちなみに国生さゆりは8番な。末広がり。…まあ、アイツの未来は全然広がんなかったけどよ。
 っつう訳で、やり直しぃッ!!。」

再び、吉澤さんの鋭い視線がメンバーを見据える。

条件反射なのか、散らかった箸やら茶碗やらをせっせと元通りに片付けている黒い人が居るが
深くは追求しないでおこう。

4 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:25

(ねえ、亀ちゃん。ウチらにそんな番号なんて有ったっけ?。…で、私って何番?。)

(……さあ?。)

となりの小川さんが小声で話し掛けてくる。

そんなの知るかっつーの。
絵里の番号だって知らないのに。

「おい、ソコッ!!。ブツブツうるせーぞコラッ!!。」
ズン、ズン、ズン。

ヒソヒソ話がよほど気に障ったのか、吉澤さんが私の目の前に歩み寄ってきた。

顔と顔がくっつきそうな距離。
色白顔の大アップ。

うーーんと、……132個か。
こんな状況でもホクロを数える余裕が有るなんて、我ながら結構オチャメ。

「あん?。ナニ笑ってんだ貴様ッ!!?。文句有んなら言ってみろオラッ!!。」

顔中にツバが飛ぶ。

汚い。
っていうか、ブクブク菌とかに感染したらどうしてくれるんだ。
後でキッチリ消毒しておこう。

「あ、あのう…文句とかじゃ無くて、絵里は娘番号なんて聞いた事ないんですけど…。」

ツバが飛ばないように口を手で覆いながら喋る私。
勿論、礼儀とかエチケット云々じゃなくて、カワイイ菌の無意味な流出を防ぐ為だ。
これ、常識。

5 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:25

「なにぃぃーーッ、知らねえだぁッ!!?。ケッ、これだからヒヨッコはなってねーんだよな。
 お前何年娘やってんだ?。そんなのも知らないでテレビ出てたのかよ。
 基本だぞ基本。どこの会社だって社員番号ぐらい有んだろーがボケッ!!。
 ちなみに国生さゆりは8番な。末広がり。広がったのは下半身オンリーだけどよ。
 ま、イイや。よし、矢口さん。この小娘に教えてやって下さい。
 さあ、どうぞッ!!。」

「娘番号。…何だソレ?。」

「正解ッ!!。いやあ、流石は矢口さん。ヨッ、新リーダー。ヒューヒュー。
 偶然っすねえ、私もそんなの貰った覚え無いですもん。これっぽっちもね。あはは。
 勘違いでした。ドンマイひとみ!。……っつう訳で、番号終わりッ!!。敬礼ッ!!」

……やっぱり薬だ。
こんな危機迫る空回りっぷりは、薬の副作用が変な方向に現れたとしか考えられない。

新しくサブリーダーになるプレッシャーに耐えかねて、駅前でニコニコ忍び寄って来た
怪しい外国人の誘惑に負けたのか。
自分の体重を棚に上げて、そんな重圧に苦しんでいたなんて
吉澤さんも結構カワイイとこ有るじゃん。



「コホン。では改めて。新リーダーの矢口さんから一言、就任のご挨拶を。」

吉澤さんは両手両膝を床につけ四つん這いになると、矢口さんを振り返った。

目が背中に乗れと訴えている。
どうやら、この小さい大人の為に、人間朝礼台になるつもりらしい。

この人、忠誠心の出し方を完全に間違えてる。

6 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:26

「いや、別にそこまでしなくても……。
 あーハイハイ、解かったよ。乗る乗る。乗らせてもらうから、そんなに睨むなよ。
 はーあ、この先大変だなコリャ。………ヨイショっと。…ふう。
 ……えーっと、今日から…」

「ハイッ!!。有難うございましたーーッ!!。」
ドサッ。

本当に一言喋っただけで、背中から新リーダーを振り落とした吉澤さん。
可哀想に、尻餅の矢口さんは目が点になっている。
目に余る有言実行ぶりだ。

「では続いて、新サブリーダーの私からも抱負を述べさせてもらうぞ。
 さっきも言ったが、これからは甘えや妥協は一切許さん!!。
 毎日、地獄のレッスンで鍛えまくってやるから覚悟しとけ。
 年末の目標は紅白じゃねー。K−1だ!!。打倒、からくりボビーだ!!。エイエイオー!!。
 念の為に言っておくが、お前達に拒否権など無い。我々には絶対服従しろ。解かったな?。
 それからもう一つ。もう私に馴れ馴れしく『ヨッシー』とか『吉澤さん』なんて声掛けんじゃねーぞ。
 今日からは鬼のサブリーダー。『保田2世』と呼んでくれ。…っつーか、呼んだらブッ殺す!!。
 以上ッ!!。」

どこをどう決めたのか知らないが、スピーチを終えた吉澤さんは小さくガッツポーズ。
……今度、いい病院を紹介してやろう。

「では哀れな兵隊どもよ。コレ読んどけ。今後のモーニングにおける個人別の課題だ。
 よーく心に叩き込むように。じゃあ、10分休憩な。」

吉澤さんは一人一人に手紙を手渡すと、矢口さんを連れて満足そうに部屋を出て行った。

7 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:26

「……何だか訳が解かんないけど、取り合えず読んでみよっか?。」

余りの展開に戸惑いながらも、渡された手紙に目を通す。


【吉澤より目立つべからず】
私の手紙には、こんな理不尽な文字が踊っていた。

これが今後の私の課題?。
ハイ、却下!!。秒殺で却下!!。

こんなの、ただ自分が前に出たいだけじゃん。
そろそろエースの称号を頂く予定の才能溢れる若きスーパースターを潰そうとは何事だ。プンプン。
こんな言いつけを守っていたら、全国のキャメちゃんファンが暴動を起こすに決まっている。
あー、危ない危ない。

でも、他のメンバーには、どんな事が書かれているんだろう?。
気になって横を覗き込む。
と。

「ん?。何コレ?。【カメラが回ったらトーク禁止】って。」
小川さんが首をひねる。

「私のは【隅で歌ってろ!!補欠のクセに】だそうです。」
紺野さんが涙ぐむ。

「そんなのまだマシよ。私なんか【卒業まであと少し。あー、待ちどおしい】だよ?。
 既に課題でも何でも無いでしょ?。ただのイヤミな感想でしょ?。
 それに高橋なんて【愛よ。こっちは大豊作で大忙しじゃ。早う、後を継いでけれ(ゴホッ、ゴホッ)。】だもん。
 田舎モンのほがらかさにつけ込んだ新手のオレオレ詐欺よ?。ドサクサに紛れてメンバー減らす気よ?。」
石川さんと高橋さんは、抱き合ってお互いを慰め合っている。

【エッセイ集出せ。そしてパクれ】
【生放送で喫煙!!】
  ・
  ・
  ・

次々と手紙が捨てられる。

ワイワイ、ガヤガヤ。

泣き叫ぶ者や怒り出す者。
一瞬にして、部屋は大騒ぎに。

8 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:27

「ちょっと今日の吉澤さんオカシイよね?。正気を取り戻すように、みんなで説得してみない?。」

「でも、あの様子だと何を言っても無駄なような……。」

「そうだよね。………じゃあ、どうしよっか?。」

リーダーとサブリーダー抜きで、即席の娘ミーティングが始まった。
お題は、『ヨッシンデレラの魔法を解け。』

トチ狂ったサブリーダーの目を覚ます方法。
諦めているのか、みんなは俯いたままで何の意見も出そうにない。

もー、しょうがない。
ここは一つ、天才軍師絵里様の作戦を発表してやるか。

「みなさん。絵里にイイ考えが浮かびました。
 こうなったら最後の手段。実力行使です。
 吉澤さんが部屋に入って来た瞬間、ヤツの頭を思いっきりブン殴りましょう。
 当たりどころが良ければ、元の吉澤さんに戻ってくれるかもしれません。
 思わぬ反撃を顔面に食らってアイドル生命を絶たれる可能性も有りますが
 そこは大所帯のモーニング娘。一人ぐらい消えても誰も気付かないんで大丈夫です。絵里以外ならね。
 という訳で、もはやその奇跡のショック療法にかけるしか道は無いと思いますよ。」

みんなの視線が突き刺さる。
笑顔のまま固まる私。

……あれ?。おかしいな。
大歓声に包まれて胴上げされると思ってたのに。
9 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:27

「……まあ、しょうがねえな。他にイイ案も無さそうだし、やるだけやってみるか?。」
藤本さんが、呆れたように呟く。

「問題は殴り役ね?。誰がやる?。」

メンバー全員がお互いの顔を見渡す。
が、みな首を横に振るだけで、立候補者が現れない。

「言っとくけど、美貴はダメだよ?。ほら、美貴や田中ちゃんが殴ったら、何か妙にリアルじゃん?。
 BUBUKAとか朝日芸能の思うツボじゃん?。ここはやっぱ、同期の梨華ちゃんに大役を……。」

「ナニ言ってるのよ。私、指輪ハメただけで手が上がんないほど力弱いのに。
 こんな力で殴ったって全然効かないに決まってるでしょ?。
 それより、格闘技の経験者が居るじゃん。紺野、出番だよっ。」

「いや、それこそシャレに成りません。私、手加減出来ませんから、あの人死んじゃいます。
 三流雑誌のキナ臭い噂コーナーを飛び越して、一気に新聞の社会面1面トップじゃないですか。
 ここはやはり、新参者の六期辺りで……。」

「あっ、さゆは無理ですよ。だって可愛いもん(ニコッ)。………と、言う事は?。」

ジロッ。
みんなの視線が突き刺さる。
笑顔のまま固まる私。

「よおし、みんなぁ。勇気有る亀井を胴上げだッ!!。バンザーイ、バンザーーイ……。」

オカシイ。オカシすぎる。
この団結力も、辞退者の理由も。……特にさゆ。

多分、絵里は世界で初めて人を呪いながら宙に舞った人間だろう。

10 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:27

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ダンスレッスン場は不気味な緊張感で静まり返っている。

ドキドキ、ドキドキ……。
ドアの正面で身構える私。

さっき、吉澤さんは『10分の休憩』と言って出て行った。
そろそろ、そのくらいの時間が経つ。
もう、戻る頃だろう。

大丈夫。
絵里はヤレば出来る子なんだ。
そう自分に言い聞かせながら、静かに時を待つ。

多分、野生の熊と戦った大山倍達もこんな気持ちだったに違いない。
フッ、流石は絵里ちゃん。英雄は英雄を知る。か。
……大山倍達って、あんまり知らないけど。


コツ、コツ、コツ………。

どれほど待っただろうか。
やがて、ドアの向こうから足音が忍び寄ってきた。

来た。
酔いどれアマゾネスが遂に来やがった。

こうなったらヤケクソだ。
一世一代の化け物退治。

渾身の一撃を決めてる!!。
11 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:27

ガチャ。
「おーい。もう安心してイイ…」

「てやぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!(バシッ!!)。」

決まった。
見事に決まった。………矢口さんに。

目の前には、白目を向いてぶっ倒れている厚化粧のチッコイ大人。
吉澤さんの姿など何処にもない。

「やっ、矢口さーんッ!!。」
メンバー全員が心配そうに新リーダーの元へ駆け寄った。

「絵里、ナニしてんのよバカッ!!。」

「相手が違うだろ。よく見てから殴れよ。」

皆、口々に勝手な事をホザいてくれる。

まさか、矢口さんだけが帰って来るなんて思ってないもん。
こっちだって必死だったんだ。
そんな余裕なんて有る訳ないじゃん。
12 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:28

その時だった。

ガチャ。
「オッハー、吉澤でーす。みんなゴメン。私、プレッシャーでテンパってたみたい。
 休憩室で矢口さんに一発殴られてさ、やっと我に返ったよ。
 これが本当の私だからさ、さっきまでの事は忘れてね。
 心配かけたかもしんないけど、これからもみんなで仲良く頑張ろうーー。」

シーーン。

衝撃の事実発覚。
やってしまった。

私の行動は全て無意味だったんだ。
無意味どころか、名誉の犠牲者まで……。
しかも、その犠牲者はこの騒動を片付けた最大の功労者。



「あれ?。ところで矢口さんは?。私より先に戻った筈なんだけどな。
 って、うわぁぁーッ!!。や、矢口さんッ!!。どうしたんっすかッ!!?。」

「……アイツです。全部アイツの仕業です。
 恐らく新リーダーの座を狙っての犯行かと。」

全員が私を指差す。

えっ?。
いやいや、確かに私だけど……理由が違う理由が。

「あーあ。大事な新体制初日だってのに。ヤッてくれるよなあ、ったく。
 つんくさんに何て説明すりゃイイんだよ。」
吉澤さんが溜息をつく。

何だよ、そのお手上げポーズは?。
元はと言えばアンタのせいだろーが。
13 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:28

「あの、吉澤さん。そんな事より、チョットいいですかね?。」
場の空気も読まず、いきなり新垣さんが喋り出す。

「さっきの手紙なんですけどね、みんなには一応
 『これ以上出しゃばるな』的な事が書いてあったじゃないですか?。
 自分より人気有る奴はスッ込んでろ、みたいな空気プンプンだったじゃないですか?。
何ですかね、私のコレは?。【好きにしてヨシ!!】ってのは。
 興味ゼロですか?。最初っからアウトオブ眼中ですか?。
 字が同じだからって、SPEEDの新垣(あらがき)さんと同じ扱いなんですか?。
 逆にちょっと軽く傷付いたんですけど……。」
一人黄昏モードの新垣さん。

「いや、すまん。っつーか、ソレ考えたの矢口さんだから。
 昨日は矢口さんも卒業の寂しさを紛らわす為に酔っぱらっててさ
 お互いイッちゃってたから歯止め効かなくて大変だったんだよ。
 お豆ちゃんの存在を『SPEEDの新垣』か『シブがき隊のフッくん』かで揉めてちゃって揉めてちゃって。
 でも、最後は結局『ミニモニのミカ』って事に収まったから。
 まあ、どうであれ無意識で考えたスパイス強めのブラックジョークだ。あんま、気にすんな。」

いや、気にするよ絶対。

新垣さんは顔を真っ赤にして立ち尽くしている。
目に浮かべた涙で今にも発芽しそうな雰囲気だ。
14 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:28

「…う、……うーーん。」

「あっ、矢口さんが意識を取り戻したよ!!。」
突然、介護をしていた石川さんから嬉しそうな声が上がる。

そうこうしているうちに、当の矢口さんも息を吹き返したようだ。

不本意だけど、取り合えず謝ろう。
それで全て丸く収まるのならば、すすんで泥を被ろうではないか。

堀内監督に頭を下げた清原選手の気持ちが痛い程よく解る。
やっぱり、スターの気持ちはスターにしか解らないのだ。
……で、清原選手って何やってる人?。


「あ、矢口さん。ごめんなさい。あのう、不慮の事故というか何というか。」

「……………」

返事が無い。
まだ後遺症でも残っているのか、矢口さんは頭を押えたままフラフラと立ち上がった。

「あ、あの。お怪我は有りませんか?。」

「……(スーハー)。」

問い掛けにも反応せず、ゆっくりと深呼吸する矢口さん。

やがて、うつろな目つきで私を見つめると、おもむろに口を開いた。
15 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:28

「ゴルァァァァッ!!。土下座して謝らんかいボケーーッ!!。
 リーダー様のオイラに奇襲かけるたぁ、いい度胸じゃねーかッ!!。
 取り合えず小指で勘弁してやる。小指だけ残してあと全部詰めてもらおうかッ!!。
 それで腕立て一万回なッ!!。おうッ!!。てめーーらも連帯責任だッ!!。
 全員でウサギ跳びグランド500周ッ!!。その後、片足だけで800周なッ!!。
 勿論、ヨッシーもだ。お前は特に入念にやっとけよッ!!。いや、色んな意味で!!。
 えっ?、何処のグランド?。そんなもん、ヤンキーススタジアムに決まってっだろうがッ!!。
 泳いで渡れ、泳いで!!。オイラはボートだ。ヒモ付けとくからちゃんと引っ張れよ、このトナカイ共ッ!!。
 ちなみに、息継ぎ禁止ッ!!。ちょっとでも顔上げたら焼肉にして食っちまうから覚悟しろッ!!。
 ブハハッ、リーダー最高ッ。権力者マンセーッ!!。オラッ、日の出と共に出陣じゃッ!!。
 みなのもの、着いて参れーッ!!。ヒィーーーーッ!!。ギャハハハハーーーッ!!。」

窓を開け、太陽に向かって絶叫する矢口さん。

今度はコッチか。
よほどイイ角度で入ったのか、私の一撃で別の愉快なパンチドランカーが
誕生してしまったようだ。

きっと、この責任も絵里が取らされるに違いない。

16 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:29

(亀井っ。今回だけは許してやる。……やれッ!!。)
吉澤さんに背中を押される。

やっぱりね。

はいはい。
解かりましたよ。
殴ればいいんでしょ、殴れば。

矢口さんの背後に、そっと近づく私。
憂鬱な気持ちで固く拳を握る。

(元に戻って下さいね。)
願いを込めて振りかぶったその時だった。

「勘違いハワイアンと一緒にすんなぁぁぁッ!!。」
ドスッ。

光のような速さで私の横をすり抜けた一つの影。
さっきまで落ち込んでいた新垣さんが、矢口さんに見事な眉毛アタックを決めたのだ。

「よおく考えよう、おマメは大事だよー♪。ヒッ、ヒッ、ヒッ。
 もう今日という今日は怒ったぞ!!。みんなで私をバカにして!!。
 次は誰だ?。オマエかーーッ?!!。」

「うわーーーっ、豆がキレたーッ!!。」

逆襲の眉毛。
新垣さんによる八つ当たりと言う名の無差別攻撃が始まった。

あれを食らったら多分……。
逃げ惑うモーニング娘達。

きっと、今の衝撃で矢口さんの魔法も解けただろう。

でも、矢口さんが目覚める頃には、新たな無法者が出現しているに違いない。
それがもし私だったら……。

(出来るだけ優しくしてね。)

そう心に祈りながら、私は部屋を飛び出して行った。
17 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:29
18 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:29
19 名前:特効薬 投稿日:2005/02/01(火) 12:29

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