40 早とちり

1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/02(土) 10:50

40 早とちり
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/10/02(土) 10:51
『おかけになった電話は電波の届かないところにあるか電源が入っていないためかかりません‥‥‥‥』
「れいなの奴、遅れるなら遅れるでメールなり電話なりしろよ。
先輩、特に私を待たせるとはいい度胸だよあの子は」

ぶつぶつ言いながら、未だ姿を見せない彼女をなじっていた私。
そこへ、天からの無情な知らせが‥‥
3 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 10:52

「ちょっとまじ?今日降らないって言ったじゃん。
よし○みの役立たず」

本格的に降り出した雨に打たれた私は、近くにあったコンビニの前へと走り込んだ。
ここなら待ち合わせの場所も見えるし、れいなの傘は変な柄だから、来たのがわかれば、近づいていけばいい。
4 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 10:53
前方から学生の集団が走ってくるのが見えた。
突然降り出した雨は、私だけでなく、いろんな人を屋根のある場所へと導いた。
はっきり言って学生はウザい。
でも、この雨だし、でていくわけにはいかないし、傘買えばいいけど、遅れてくるれいなは傘持ってくるはずだし。
どーせ、あいつは携帯の電源切って寝てるんだろうし。

「まじかよ、雨とか聞いてねーよ。あれだ、よし○みの奴また天気外しやがった」

少し笑えた。
同じ番組見てるんだこの子。
5 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 10:56

「まぁまぁ、お天道様には逆らえないってやつよ」

お前は江戸っ子かよ。
声に出すことなく視線でつっこんだ。
しかし、こうして見るとみんなでワイワイして楽しそう。
そういえば、私とれいなが出会ったのもこんな雨の日だったかな。

と、人が回想に入ろうとした所で前の道路を救急車が通り過ぎていった。

「やっときたんだな、救急車」
「な、人混みがすごくて動きとれなかったもんな」
「けど、かわいそうじゃね?結構かわいかったよな、あの娘」

へぇー、かわいい子が事故っちゃたのか、かわいそうに。
6 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 10:57

「でも、両手の小指をくっつけてたのは、何か意味あるのかね?
なんか無理矢理くっつけてたように見えたけど」


ドクン

「ちょっとそれ詳しく教えてくれる?」

急に肩を掴まれた男の子は驚いてしまったため、代わりに近くにいた子が話をしてくれた。
地元でも噂の事故の多い交差点で女の子が飛び出してきた車にはねられたらしい。
それを帰り道に見ていた彼らは、雨が降り出したため、急いで走ってきたそうだ。
そんなことはどうでもいい。
7 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 10:58

「女の子は?どんな子だった?」

慌てて聞く私に少したじろぎながら、彼らはお互いの顔を見合わせながら、何かを確認していた。

「いや、どんなっていわれても、歳は俺らと同じくらいだったと思うよ」
「あ、あと変な柄の傘持ってたよな」

れいなだ。

「ありがとう」

素早く頭を下げると、雨の中を走り始めていた。
先ほど降り始めた雨は、少しずつその勢いを増していた。
8 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 10:59
___
「先パイ、指出してください」

そういわれ差し出した私の小指を掴んだれいなは自分の小指とくっつけてにやついていた。

「なににやついてんの?キモいんだけど」
「いいんです、私だけわかっていたら」
「はぁ?れいな頭打った?」
「そんなことはなか。れいなはいつも正常たい」
「正常なときは博多弁でないんじゃなかったっけ?」
「もうそんな細かいことはよか。とにかく私が小指出したら先パイも出してくださいね」
「はいはい」

___
9 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 11:00

頭の中では、昔のれいなとのやりとりがグルグルまわっていた。

「くそ、寝坊じゃなかったのか」

何人か歩いている人とぶつかったが、それでも止まることなく走り続けた。
次の角を曲がれば、交差点はすぐそこ。
勢いよく曲がると、道が雨で濡れていたため、滑って転んだ。

「いつつ‥‥‥‥」

擦りむいた膝をさすると、頭をあげた。
そこでは今まさに女の子が救急車に乗せられて、運ばれていくところだった。
素早く立ち上がると、急いで駆けつけた。
しかし、人混みに突入したところで救急車は行ってしまった。
10 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 11:01

「あの、女の子は、女の子はどうなりましたか?」

近くにいた野次馬のおばさんの肩を激しく揺すりながら大きな声で聞いた。
おばさんは、白い目でずぶ濡れの私を見た後に、残念そうに話し始めた。

「残念だけど、あたりどころが悪かったみたいよ。
救急車が来たときにはもうダメだったみたい。
あなたお友達?」
「そんな‥‥‥‥」

その後、私はおばさんが引き留めるのも聞かず、来た道を戻り始めた。
雨足はさらに激しくなってきていた。
11 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 11:03

「なによ、いつもみたいに寝坊してるだけでしょ」

「いつもみたいに電源切って寝てるだけなんでしょ」

「せっかくオシャレしてきたのに‥‥」

そんな言葉を吐き出しながら、そのまま道路に崩れ落ちた。
『おかけになった電話は電波の届かないところにあるか電源が入っていないためかかりません‥‥』
ダメもとでかけた電話はやはりつながらなかった。
知らないうちに頬をつたった涙も雨にまぎれてわからないなら問題なかった。
頭の中では順番にれいなとの思い出が蘇っていた。
12 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 11:03

「泣いとぉと?」

不意に雨が当たらなくなっていた。
誰かがそばに立っているのがわかった。

「泣いてなんかない」
「じゃ、こんな所でなにしとぉと?」

うるさい奴だな。
彼女がれいなが死んじゃったんだよ。

「あの、うるさいんでどっか行ってもらえます?」
「うるさいとはなん?れいなの話が聞けんと?」

だかられいなは死んじゃったんだよ‥‥ん?‥‥れい‥‥な?
その名に反応して顔を上げた。
13 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 11:04

れいなだ。
目の前にいるのは間違いなくれいなだ。

「れいな、交通事故にあったんじゃないの?」
「はぁ、何言っとぉと?」
「だってさっきそこで事故ってて、かわいい子がれいなで、おまけに変な柄の傘持ってて」
「ここにいるじゃないですか」

わけがわからなくなった私は、とりあえず自分の右手小指をれいなの前に掲げた。
目の前で止められた小指を見たれいなは、迷うことなく小指をくっつけた。

「やっと先パイからやってくれましたね」

れいなだ、間違いない。
14 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 11:05

少し不機嫌な時の博多弁と手に持った変な柄の傘。
思わず抱きしめたくなった私は、自分が濡れているにも関わらず抱きついた。

「ちょ、先パイどうしたんですか?」
「いいの、気にしなくて。れいなが無事なら私はそれでいいよ」

暖かいれいな。
いつものようにシャンプーのいい匂い。

「それより、早くデート行きましょうよ」
「うん」

降っていた雨はいつの間にか止んでいた。
15 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 11:06
___
「そういえば、私を見つけた時、なんで怒ってたの?」
「先パイがいつまでたっても来ないからですよ」

あら?

「今日の待ち合わせっていつもの時計の下じゃなかったっけ?」
「今日はれいなの家まで迎えに来るって自分で言ったじゃないですか」

あらら?

「じゃ、なんで携帯つながらなかったの?」
「何言ってるんですか、昨日変えたってメールしたじゃないですか」
「あ‥‥‥‥。」


そんな早とちりな一日。
16 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 11:06
ありきたり
17 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 11:06
18 名前:40 早とちり 投稿日:2004/10/02(土) 11:07
スマソ

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