26 パンツ刑事

1 名前:26 パンツ刑事 投稿日:2004/09/28(火) 22:37
26 パンツ刑事
2 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:38

午後11時30分──。
夜のとばりがすっかり降り、家々はまるで指折り数えるように、
ひとつ、またひとつと明かりを消し、静かに眠りについてゆく。
うっすらと空に架かった雲が、穏やかにきらめく三日月を呑み込もうとしている。
遠くに聞こえる犬の叫びが、虚しく響く。

そんな中、障子を通じて煌々と漏れ出し、隅々まで手入れの行き届いた芝生を照らす光──。
とぽとぽとぽ‥‥注がれた水でいっぱいになった鹿威しは、ゆっくりと倒れる。
カン、と乾いた音が松の枝葉をすり抜け、肩を並べる岩の間にこだました。

ここは京都・太秦にある料亭。
障子に映るのは、互いに向かい合った男と男の影。
「ささっ、先生。こちらをお納めくださいませ」
「おやおや会長さん、どうされましたか? そんなにかしこまって」
部屋の中で交わされる白々しい会話。

『会長』と呼ばれたのは、すっかり禿げ上がったシミだらけの頭の男。
脇に置いたカバンから真っ白い包装紙に包まれた中身を取り出すと、上目づかいに相手を見る。
対する『先生』と呼ばれたのは、ポマードの男。
ねちっこい視線と口調で「ほほう」と小さく笑った。
3 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:38

「わざわざ永田町からご足労いただきまして、その御礼にございます」
「いやいや、いつも会長さんにはお世話になっておりますのに、さらにそのようなご迷惑を‥‥」
「何をおっしゃいます。先生が全力でわれわれの利権を守ってくださっていることに対する
 感謝の気持ちでございますよ」
「最近は会員の歯科医の皆さんも思うように動いてくださらないようですが、
 会長さんは精一杯やってくださってますしねぇ」
「ぜひとも、今後とも引き続きお力になれますよう、どうかひとつこれを‥‥」
そして、下座のハゲが上座のポマードに白い包みを差し出す。
細い目をさらに細めて、ポマードは後ろに控える会計係に向けてうなずいた。

会計係は「失礼します」と包みを受け取ると、再び後ろに下がってそっとその中身をあらためた。
ハゲもポマードも一部始終を固唾を呑んで見守る。やがて会計係は顔を上げ、うなずき返した。
「わかりました。これからもぜひ、我が派閥とおたくとの関係を──」
「そこまでよっ!」
日本庭園に響き渡った声。それは鹿威しの乾いた音色ではなく、若い女の叫びだった。

上座のポマードの奥に控えていたSPたちが、慌てて障子を開ける。
板張りの回廊に立っていたのは、3人の若い娘たちだった。
4 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:39

「な、何奴ッ!?」
動転したハゲが裏返った声をあげる。
しかし3人はそれに答えない。
無言のまま懐から良い具合に半分溶けたパピコを取り出すと、それを口元へと運んだ。
「ちゅーちゅーちゅるりらちゅるりららー♪」
かかとを上げ下げ、3人の娘たちは高らかに歌い出す。

そのうち、呆気に取られていた男たちは気がついた。

真ん中の娘は上半身がセーラー服なのにもかかわらず、スカートを穿いていない。
その下半身は、純白のパンツ一丁なのである。
胸には「松浦」と書かれたネームプレートが安全ピンで留められている。

右の娘はそれと正反対。上がブラで、下は制服のスカートである。
ところが、ブラの両カップからは乳房の下半分が露わになっている。
そしてご丁寧に、そのブラには「紺野」とネームプレート。

左の娘はスクール水着姿だった。
その胸にはでっかく「3-A 藤本」とマジックで書かれた白い布が縫い付けられていた。
5 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:39

3人の娘はパピコを最後の一滴まで吸い上げると、かかとの上げ下げをようやく止めた。
そして、真ん中の娘から戦隊モノのヒーローよろしく自己紹介をはじめる。
「警視庁捜査一課所属・パンツ刑事こと松浦亜弥!」

すると今度は右のブラジャー娘がそれに続く。
「同じく捜査一課所属・ハミ乳刑事こと紺野あさ美!」

最後に左のスクール水着が叫んだ。
「同じく捜査一課所属・ハミ毛刑事こと藤本美貴!」

そしてそれぞれにファイティングポーズをとると、再び真ん中の娘が言った。
「元首相・橋本龍太郎! 収賄の現行犯で逮捕する!」

「ふんっ、こんな小娘ごときが警察官だとぉ? 大人をバカにするんじゃない!」
下座のハゲが、顔をしかめて一喝する。
パンツ刑事こと松浦亜弥はそれを涼しい目元で受け流すと、威勢よく声をあげた。
「‥‥成敗ッ!」
空に輝く三日月を背に、高く、高くジャンプする。
そのまま空中で一回転すると、穿いていたパンツを空中で脱ぎ、橋龍に飛びかかろうとする──が!
6 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:40

「ああっ!」

ハイソックスに学校指定の革靴を履いていたのがマズかった。
パンツは足首で引っ掛かり、途中で止まってしまった。
そのまま、檜張りの縁側に倒れ込んだ格好で着地する。
「もうっ! うまく脱げない!」

動けなくなってしまったパンツ刑事こと松浦亜弥。
「曲者じゃ! 出あえ出あえいっ!」
これはチャンスを見た橋龍とハゲは、急いでSPやら秘書やらを呼び寄せて3人を捕まえるように命令する。
「パンツ刑事、危ないっ!」
同僚のピンチにブラジャー姿のハミ乳刑事こと紺野あさ美がダッシュした。
脱げないパンツと格闘しているパンツ刑事こと松浦亜弥の前に立つと、両手を広げて彼女をガードする。

ハミ乳刑事こと紺野あさ美に魔の手が伸びる。
SPやら秘書やらハゲの部下やらがその体を捕らえようとする──。

7 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:40

──ぷるんっ!

ああ、なんということだろう!
必死で同僚を守ろうとしたハミ乳刑事こと紺野あさ美のおっぱいが、美しく揺れる。
それは激しく揺れる。
それは悩ましく揺れる。
この世のすべての運命と不条理と情熱と解放を受け止め、おっぱいは今宵も艶やかに揺れる。

しかし、その見事な美乳がショックを吸収して揺れるたび、ブラからハミ出る面積がどんどん増えていく。
「ダメっ! このままじゃ、ハミ出るどころかポロリになっちゃう! ハミ毛刑事、おねがい!」
ハミ乳刑事こと紺野あさ美が悲痛な声をあげた。

「わかった!」と勇ましい返事で今度はハミ毛刑事こと藤本美貴がふたりの前に出た。
ハミ毛刑事こと藤本美貴は、自らのスクール水着の中にその手を突っ込む。
そして痛みに顔を歪めながら下の毛を何本か引き抜くと、ふっと息を吹きかけた。
そのまま、SPやら秘書やらハゲの部下やらの目の前に投げつける。

次の瞬間、ハミ毛刑事こと藤本美貴の下の毛は、ポンッ!と小さく爆発した。
そしてその光の中から現れたのは──
8 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:40

「「「「「「「「ちねちねっ!」」」」」」」」
節子(by 火垂るの墓)のウザいモノマネでお馴染みの鼻声の裏声で、
チビハミ毛刑事こと藤本美貴の分身が、次々と敵に向かって襲いかかる。
そしてチビハミ毛刑事こと藤本美貴の分身は、敵の髪の毛を思い切り引っ張って攻撃する。
息もつかせぬ波状攻撃によって、しだいに形勢が逆転していく。
おかげで、ハミ乳刑事こと紺野あさ美のブラジャーも、残念ながら元のハミ乳レベルにまで戻ってきた。

一方、パンツ刑事こと松浦亜弥は、ゴロゴロと回廊でのた打ち回りながら、
「脱げないよぉっ!」
足首で引っ掛かっているパンツとまだ格闘を続けていた。
ハミ乳刑事こと紺野あさ美とハミ毛刑事こと藤本美貴は、彼女の逮捕の準備ができるまで粘らないといけない。
9 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:40

「ハミ毛攻撃・パート2!」
ハミ毛刑事こと藤本美貴は、再び自らのスクール水着の中に手をやる。
そしてもう一度下の毛を何本か引き抜くと、今度は敵に向かってそのまま投げつけた。
空中でちぢれっ毛はピンとまっすぐに伸びきり、そのまま毛針ミサイルとして敵の目をめがけて飛んでいく。
「目が‥‥目があっ!」
SPやら秘書やらハゲの部下やらは、毛針が刺さった目を押さえてその場に倒れ込む。
そしてついに、残すところは橋龍とハゲのふたりだけとなった。

「ううっ‥‥」
ハミ乳刑事こと紺野あさ美の防御と、ハミ毛刑事こと藤本美貴の攻撃。
絶妙のコンビネーションを見せ付けられ、橋龍とハゲはじりじりと後ずさる。
「そこまでよ! 観念しなさい!」
声のした方を見る。
そこには、転がってもがいていたはずのパンツ刑事こと松浦亜弥が、すらりと背筋を伸ばして立っていた。
10 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:41

おごそかに、パンツ刑事こと松浦亜弥は、手にしたものをみずからの胸の前に差し出す。
「この紋所が、目に入らぬか!」
叫ぶと同時に広げられたのは、純白のパンツ。
お尻の部分のちょうど真ん中のところに、警察を象徴する桜の紋様が大きくプリントされていた。

「それは‥‥まさしく、桜の紋所!」
ポマードは目ン玉をひん剥いて、隣のゲーハーも口をあんぐりと開けて、茫然とパンツを見つめる。
やがてふたりは我に返ると、慌ててその場にひれ伏した。
それに続いてSPやら秘書やらゲーハーの部下やらも、急いでその後ろで正座する。
全員、おそるおそる上目づかいにパンツ刑事こと松浦亜弥を見つめる。

「午後11時51分。橋本龍太郎、収賄の現行犯で逮捕する!」
高らかに宣言すると、パンツ刑事こと松浦亜弥は自らが脱いだパンツを橋龍の両手に通していく。
右の穴から右手を通し、左の穴から左手を通し、逮捕は無事に完了した。
11 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:41

「パンツ刑事、お疲れさま!」
パンツ刑事こと松浦亜弥のもとに、ハミ乳刑事こと紺野あさ美とハミ毛刑事こと藤本美貴が駆け寄っていく。
笑顔でそれに応えるパンツ刑事こと松浦亜弥。
それは、特殊任務を専門とする彼女たちが『ふつうの女の子』に戻る瞬間でもあった。

「それじゃ、署まで来てもらいますよ」
できる限りの柔らかい感触で、パンツ刑事こと松浦亜弥が声をかける。
しかし橋龍は、固く目を閉じたままそこを動こうとしない。
不審に思ってよく見ると、橋龍は、泣いていた。

「この手錠のぬくもりは‥‥、母のぬくもりだ‥‥。
 わたくしは、知らず知らずのうちに誤った道を歩んでいたのかもしれません。
 これからは立派に改心して、罪をつぐなっていきます‥‥」
橋龍の涙がパンツ──いや、手錠の上に落ちた。桜の御紋にじわりとシミが広がっていく。
12 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:42

パンツ刑事こと松浦亜弥は、そっと橋龍の背中に優しく触れる。そして、小さく耳元でささやいた。
「もしまた悪いことをしそうになったら、このパンツを見て今日のことを思い出してね。
 もうこんなことしちゃダメだよ」

ガクガクと首を縦に揺らせてうなずく橋龍に、パンツ刑事こと松浦亜弥は微笑み返してみせた。
その笑顔の真ん中で細められた瞳は、まるで今宵の夜空に浮かんで一部始終を見守っていた三日月のようだった。

橋龍やらゲーハーやらSPやら秘書やらゲーハーの部下やらが、捜査員に連行されていく。
一段落ついたのを確かめると、抜いたハミ毛を再生すべく、ハミ毛刑事こと藤本美貴は股に育毛剤を塗り始めた。
そして適度なハミ乳具合を維持すべく、ハミ乳刑事こと紺野あさ美は真剣にブラジャーを調整する。
パンツ刑事こと松浦亜弥は、露わになった桃尻を覆うため、新しいパンツを胸ポケットから取り出した。
13 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:42

──こうしてまたひとつ、この世の悪を懲らしめた。
だが、浜の真砂は尽きぬとも、世に悪人の種は尽きない。
この世に悪のある限り、パンツ刑事は戦い続ける。
がんばれ、パンツ刑事! 負けるな、パンツ刑事!

【パンツ刑事・つづく】
14 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:42

15 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:42

16 名前:26 投稿日:2004/09/28(火) 22:42


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