24 悲しきダメ人間

1 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:16

24 悲しきダメ人間
2 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:17
主演…高橋愛
   新垣里沙
3 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:18
自分がどんな人間なのか、どのくらいいい人なのか悪い人なのか、バカなのか利口なのか。そういうことはまず他人と自分を比べることから始まるのだと思う。
例えば地球上に私一人しかいないのだとしたら、私が世界一の偉い人であり、同時に世界一のダメ人間だということにもなりうる。

つまり、そういうことだ。

そして今私が身を置いている環境というのは、幸か不幸か、比べる対象だけはわんさかいる場所。
それも、とっておきの個性派揃いの女子の群れだ。


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4 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:20
「最近、インターネットとかするようになったんやけど。」
うまい棒の元祖たこ焼き味をかじりながら携帯をいじっていたガキさんの横に座って、ぽつりとそうつぶやく。
「ん?」
彼女は少し首を傾げてから、小さいビニール袋を私に差し出した。
「食べる?」
「………うん。」

私の持ちかけた話題をのっけからブッちぎって、ガキさんはうまい棒を勧めてくる。
『ガキさん』の名に恥じないフリーダムっぷりだ。
私は袋の中に残っていた5本のうまい棒の中からメンタイ味を抜き取ると、言葉を続けた。
「あたしはダメ人間かも知れん。」
「は?」
彼女はちょっと眉をひそめただけで、何も言わない。
多分、私の言いたいことがわかっていないのだろう。
「個性がないってことは、娘。でやっていくには相当ダメなことらしい。ほやで、あたしはダメ人間や。ダーメダメダメダメ人間や。」
「いや、何言ってんの。十分個性的だから。ってか最後のそれ、何の歌?」

あからさまに怪訝そうな様子でそうのたまう彼女に、私はアツアツのあんかけをかけてやりたい気分になった。
人が真剣に悩み事を語っているというのに、このガキは。
私は脳内で、彼女に頭からあんかけを流してやった。
熱いあんかけまみれになったガキさんは、『熱い!熱い!』とちょこまか走り回っている。
……ああ、それはそれでなかなか可愛らしい。
5 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:21
「ちょっと、愛ちゃん?何ニヤニヤしてんのさ?」
「……なんでもない。いや、そうでなくて、つまり言いたいのは、私にはキャラがないってことで。」
「キャラ?あるじゃん、訛りキャラ。」
またもあっさりと言ってのけたガキさんの眉毛を、私は無意識に指でつまんでいた。
「ぬわっっ!!」
「……訛りは個性か?違うやろ?……そもそもあたしはもうシチーガールやし。な?」
「いたたた!わかった、わかったよ!もー!!」
迷惑そうに私の腕を振り払ってから、彼女は仕方なく、といった様子でこっちに向き直った。
「…でも、じゃあどうしたいの?」
「そう、問題はそこやで。」
眉毛をさすりながら口を尖らせているガキさんに、私はぐっと顔を近づける。

「…今日、落ち込みついでに色々調べた。どうすれば、水面下のファンが増えるか。」
「すいめんか?」
回りくどい言い方をしたのが悪かったのだろうか。
私は考え直して、もう一度説明する。
「つまり、妄想系のヲタクやよ。」
胸を張ってそう言ってやると、ガキさんは少し下を向いて爪を噛んだ。
「………ええと。」

たっぷり10秒は間を置いてから、彼女は言った。
「…増やしたいの?それ。」
戸惑いいっぱいの顔に、私はやれやれとため息をつく。
これだから、マジヲタガキさんは困る。
「妄想系ヲタはあなどれん。吉澤さんが飼育で大人気なのも、王道のいしよしのおかげなんやで?」
「……飼育?いしよし?なにそれ??」
無邪気と言うよりは無知なその表情を見たら何も言えなくなってしまって、私は話を逸らした。
「わからんならええよ。…まあつまり何がしたいかって言うと、私たちはご主人様と犬になればいいと思うんよ。」
6 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:25
…そう、これこそが私のとっておきの秘策だった。
私は知っている。
『新垣(S)高橋(M)』スレが、ひっそり人気だったということ。
それから、ガキさんは意外とSっ気があること。

色よい返事を期待して胸をさくら満開にしていると、彼女は真顔でこう言った。
「…言ってる意味がわかりません。」 
真顔で。それはそれは、表情筋が微動だにしていないレベルでの『真顔』だった。
…あぁ、ガキさん。
物分りが悪いにも程がある。

「………あのね、ガキさん。ヲタはそういうのに弱いモンなんやって。ちょっと不健全なものに惹かれるのは、人として当たり前のことなんよ。背徳の美学ってやつで。」
「……そうかなあ。」
彼女はちょっと首をかしげて不安そうな顔をする。
これは雰囲気に飲まれて、気持ちが揺らいでいる証拠だ。
…もう一押しか。
「そうやぁ。美貴ちゃんと亜弥ちゃんやって、『真性ギリギリ』ってほど仲が良いことをアピールしてるからこそ、人気があるんやよ?」
これは事実。あやみき人気が止まらないということも、私はパソコンで知った。
「………そうなんだ。」
どこか納得したガキさんの顔。
完璧だ。
難しい理論に流されがちな彼女の性格と、ハローの先輩にはとことん弱い根っからのヲタ紺性を逆手に取った、私の作戦勝ちである。
「じゃ、さっそく明日からな。撮りが始まるキューが合図。カメラが回ってるトコでは、あたしが犬。ガキさんが飼い主ね。」
「…わかった。やってみる。」

戸惑いがちに頷いたガキさんに、私は心の中でガッツポーズをした。
…これでもう、狼で100冊以上も本を読まされなくてすむ。
そんな、ちょっぴり甘ずっぱいガッツポーズだった。

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7 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:26
それから、私たちの関係はちょっと変わった。

「(3、2、1…キュー!)」
撮影で、監督の合図が出るたびに。
「はい、目線くださーい!」
あるいは、ちょっとしたスナップのたびに。
「愛ちゃん、撮るよー。」
果ては、自分たちで撮るデジカメ写真まで。
私の隣にガキさんがいることが、かなり多くなった。

でも、なんか違う。
何かがおかしい。

てっきり女王様的な仕打ちをしてくるのだと思って身構えていたら、全然そうじゃない。
むしろ、ガキさんの態度が甘いのだ。
それはそれは、さながら初孫ができたおばあちゃんのような甘さで。

『愛ちゃ〜んv』
『ほら、もっとこっち来て!』
『可愛いなぁ、愛ちゃん。』

気づけばいつも横にいて、手を繋いだり、肩に触れたり。
ガキさんの行動は、およそSMとは程遠い振る舞いだった。

そのことを不思議に思いながらも、なんとなく日々は過ぎ、ハワイツアーも無事終わった。
そして、ひとつ気づいたことがある。

…ガキさんは、きっと何か勘違いしている。
8 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:27
「…なぁ、ガキさん。」
「ん?」
今日も今日とて私の頭を撫でながらニコニコしているガキさんに、思い切って聞いてみた。
「ご主人様と犬の話、したやろ?」
「?うん。」
「…実践、しとる…?」
私の質問に彼女は首をかしげ、いつもの通りあっさりとうなずいた。
「ずっとしてたよ?今だって、ほら。愛ちゃん、よしよ〜し。」

甘い声でそう言ったガキさんに、私は確信した。
ご主人様と犬。
その言葉から、彼女は、『ペットを溺愛する飼い主』を実践していたのだ。

…うかつだった。
彼女は最初から、私との話の中にSM的な匂いなど感じ取っていなかったのである。
私の脳内で、『ガキさんは純潔』というフレーズが烈しく飛び交った。

…ダメだ。これじゃ、当初の計画と全然違う。

そう思ったけれど、そのときの私は何も言えなかった。
頭を撫でてくれるガキさんの手が、ひどく心地よかったから。

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9 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:28
それから数日。
彼女の勘違いを指摘しないままでいると、再び変化が訪れた。
ガキさんが、カメラのないところでも私を可愛がってくれるようになってきたのだ。

…バカ女ギリギリのガキさんのことである。
多分、オンオフの使い分けができなくて、ごっちゃになってきているんだと思う。

しかしその段階にきても、やはり私は何も言わなかった。

「…ガキさんガキさん。」
「んー?なぁに、愛ちゃん。」
畳敷きの控え室にいた彼女に近づいて行って、そのままごろりと寝転がる。
「ひざまくらして。」
「ん。いーよ。」
なんの迷いもなく差し出してくれた膝に頭を預けると、ガキさんはすぐに頭を撫でてくれた。

…あー。ひざまくら気持ちいー…。
甘やかされるのって、サイコー。
もうすっかり、そんな思考に支配されるのが当たり前になってきてしまった。

「…なんかさぁ。最近ずっと愛ちゃんと一緒にいる気がする。」
「うん…そうやね。」
「なんでだろうねー。」
「…なんでやろね。」
10 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:29
ガキさんはすでに忘れているらしい。
あの日の会話も、合図の意味や存在も。
ただ、私をペットのように可愛がることだけが染み付いた日常。
しかし私は相変わらずそれを訂正しようともせずに、ただただ甘やかされている。

…こんな自分はもう、ものすごいダメ人間に違いない。
そして、何の疑問を持たずに私を甘やかしているガキさんも。

ダメ人間がここに二人。お互いを基準に比較しても、その違いなんてわからない。

「…ダメ人間、サイコ〜。」
「?何言ってんの、愛ちゃん。」
「なんでもなーい。…なぁ、もっと頭撫でて。」
「はいはい。」
11 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:29


−END−
12 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:30
川 °Д°)<♪ダーメダメダメダメ人間!!
 _, ,_

( ・e・)<♪ダーーメ!!
13 名前:24 悲しきダメ人間 投稿日:2004/09/28(火) 03:37
( ゜e゜)<♪ダーメダメダメダメ人間!!


川*’ー’)<♪ダーーメ!!

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