7 チープトリック
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/25(土) 14:55
- 7 チープトリック
- 2 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 14:58
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夜空に浮かぶ月は、冬の寒さを紛らわすように美しく輝いている。
寒そうにマフラーに顔を埋める梨華ちゃんもまた、きれいだった。
同姓の自分でも惚れちゃうくらい、きれいだった。
梨華ちゃんが声を出すと、当然のように口から白い吐息が漏れる。
「どうしたの?こんな遅くに呼び出して。」
「ちょっと見せたいものがあって。」
「え〜、何〜?」
少し期待しているような言い方で笑う梨華ちゃんの顔を暗闇の中確認すると、
「かっけーから。」
指を弾いた。
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/25(土) 14:58
- パチンッ。
- 4 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 14:59
-
◇
「パチンってやったら、ゴー。」
「花火ドッカーン、ってか!」
「かっけー!それかっこ良過ぎ!」
「まあまあ。でもこの合図聞き逃さないでよ、決まらないとマジかっこ悪いから。」
『はーい。』
◇
- 5 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:00
-
って言ったのに・・・。二人のバカヤロー。
何度もパッチンパッチン指を鳴らすのを、梨華ちゃんはものすごく
不思議そうに見ている。でも花火が発射するまで続けないといけない。
これじゃようやく指パッチンを覚えたガキが人に見せびらかしたくて
連発してるみたいじゃないか。
やっているうちに段々恥ずかしくなってきた。それでも孤独な戦いは続く。
指から響く無機質な効果音を、サインとして。
- 6 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:00
-
◇
「そろそろ梨華ちゃんの誕生日じゃん?」
「うん。」
「ちょっと驚かせてあげようよ。演出とかしてさ。」
『演出?』
◇
- 7 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:01
-
「ハハ、ハハハハハハ・・・・。」
思わずごまかし気味に笑う。
梨華ちゃんは一瞬ぽかんとしたけど、つられてか、気を使ってか、
笑ってくれた。
冷たい風が頬にぶつかりながら通り過ぎていく。
髪と髪の間から流れていくそれを冷たく想いながら、
ちょっとだけ感覚が鈍っている指をまた鳴らす。
寒さで頭も少し鈍ってしまいそうだ。
パチン、パチン、パチン、・・・・
- 8 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:02
-
◇
「難しいな〜。遅くなってきたし、そろそろ帰ろう?寒いよ。」
「なんかいいアイディア出そうな気がするんだよ〜。」
「あ〜11時の鐘が鳴った!もう遅いっすよ!」
「もう一度鐘聞くまでは粘るぞ〜!」
「え〜!」
「明日講義早いのにー!!」
「そんなの知るかー!!」
◇
- 9 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:02
-
突然梨華ちゃんが近づく。
梨華ちゃんは自分のはめていた手袋を外し、差し出した。
「え?」
「手。」
言われるがままに自分の手を眺めると、中指が摩れて血が少しだけ出ていた。
気づくと同時に鋭い痛みが走る。
「痛!」
思わず口に出すと、それを見た梨華ちゃんはくすくすと笑って手を口に当てた。
- 10 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:03
-
◇
「どうにかして驚かしたいよな〜。」
「サプラーイズ!」
「じゃあプレゼント箱入ってみたら?」
「やだよ!てかそれどういう意味?」
「ごめんごめん。」
◇
- 11 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:04
-
「どうしたの?」
梨華ちゃんの顔がものすごく近い。
ボーっとしていたから突然気づき、思わず後ろに飛んでしまった。
またも笑う梨華ちゃん。
もういい、いくらでも笑ってよ。
いつまで経ってもサインに気づいてもらえずに、
パチンパチン鳴らし続けるバカな女を、いくらでも笑ってよ。
・・・覚えてろよ二人とも。
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/25(土) 15:04
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パチパチパチパチパチパチ・・・・
遂に両手をパチパチと鳴らし始めた。
正真正銘のバカだ。
でも鳴らさないと、もう時間がない。
早く気づけ・・・・早く気づけ・・・・気づいて・・・・。
- 13 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:05
-
◇
「いよいよ明日だね。」
「花火は?」
「プロの花火師に頼みました。」
「ああ圭ちゃんか。近所迷惑だから1回勝負だからね、フライングしないでよ。」
「そっちの心配はなうぐっ。」
「?」
「ううんなんでもないよ、アハハハハ!!」
◇
- 14 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:06
-
やばい、やばい、やばい!!
いつの間にやら大時計の長針は12に届きそうな所まできていた。
待って、パチンッ、動くな、パチンッ、早く!!
でもそんな願いも神様は聞いちゃくれなかった。見事なシカトを食らった。
針は時を告げるために、ゆっくりと短針の上に重なる。
- 15 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:06
- ♪
- 16 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:07
-
終わった。
12時の鐘が鳴った。
今日と言う日が終わりを告げた。
梨華ちゃんの誕生日が、終わった。
- 17 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:07
-
「あ、もうこんな時間だ。私帰るね。」
嗚呼・・・間に合わなかった・・・。
梨華ちゃんは止めていた足をゆっくりと動かして歩き出す。
差し出したままだった手袋をバックの中にしまって。
本当に帰っちゃうのか・・・。バカみたいじゃん。てかバカだよ。
パッチンパッチンパッチンパッチン指鳴らし続けてさ、はぁっ・・・。
- 18 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:08
-
梨華ちゃんは真横で急に立ち止まった。
こっちの方へとゆっくりと体を向けて、
「そうだ忘れてた。これ。」
なぜか声が上ずってる。
梨華ちゃんは鞄から4つ折りの紙を取り出すと、差し出した。
「・・・・?」
寒さと摩擦でボロボロの指で紙を手に取ると、静かにそいつを開いた。
- 19 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:08
- ヒューンッ・・・・ドン!!ドン!!
- 20 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:09
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紙を開いた瞬間、突然の爆音。
私は思わず空を見上げた。冬の夜空に美しい華が見事に咲いている。
順に現れていく七色の輝きは、広がって、散って、次第に薄れていく。
薄れゆく光の中に、薄命な美しさを感じた。
きれいだ・・・一日遅いけど。
少し溜息をついて、もらった紙を覗き込んだ。暗くてよく見えない。
携帯のスポットライトを紙に当てて文字を読んだ。
- 21 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:09
-
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「じゃあね〜。」
梨華ちゃんはわざとらしい笑顔でおいらを見ると、体をくるっと回して走り出した。
「・・・こらぁ待てぇぇ!!後ろに隠れてるよっすぃ〜!ごっつぁん!お前らもじゃ!!」
『げっ!!』
叢に隠れていた二人は慌てて飛び出して、梨華ちゃんと一緒に逃げ出した。
全速力でその後を追う。でも頬は緩みっぱなしで、
「待てぇぇ!!!騙したなぁ!!」
口から出る言葉には説得力のカケラもなかった。
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/09/25(土) 15:10
- 『矢口さん誕生日おめでとう!! by石川・後藤・吉澤』
- 23 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:10
- パチン
- 24 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:10
- ヒュン(予定)
- 25 名前:7 チープトリック 投稿日:2004/09/25(土) 15:10
- バン(予定)
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