1 待ち人

1 名前:1 待ち人 投稿日:2004/09/25(土) 02:16
1 待ち人
2 名前:1 待ち人 投稿日:2004/09/25(土) 02:16

「マコトはさ、将来何になりたい?」

 「そういう質問をするときは自分の方から言ってくれなくちゃウソだよ」

「へへへ、ごめんごめん、ののはねー、お嫁さんになりたい」

 「えー、そんな夢、今時小学生だって言わないよー、のんちゃん今年いくつ?」

「うるさいなー、16だよ。文句あるー?」

 「アハハ、ごめんごめん。痛い痛い!許して許してー」

「2回ずつ言ったからって許してやんねー、覚悟しろ!」

 「ギブ!ギブ!お願い、ホント痛い、あー、イタタタ」

「じゃあマコトの将来の夢、でっかい声で言ってみろー」

 「アイタタタ、私はイテテ、将来画家にイテテテテ、なりたい、です!」
3 名前:1 待ち人 投稿日:2004/09/25(土) 02:17
4 名前:1 待ち人 投稿日:2004/09/25(土) 02:19
少女は目を覚ました。

大きく伸びをすると、壁にもたれて、絵に描いた空をぼんやりと見上げた。
真四角の部屋の中で。真っ白な壁の中で。
ただそこだけやたらに青く透き通った空の絵を見つめていた。
空調が整っていないのか、少女はほんのり汗ばんでいた。短めの髪の毛が、
それでも額に張り付く。だが少女はそれを気にするでも無く、ぼんやりと、
ただただその真っ青な空の絵を見つめていた。

ふいに誰かに肩を小突かれたかのように横を向いて驚いた顔をすると、
次の瞬間には顔をくしゃくしゃにして笑った。その顔のまま、また絵を見上げる。

「なんだか、ここ最近涼しくなってきたね」

絵に向かってそう言う。そして少女は少し声色を変える。地声よりほんの少し丸い声。
少女は表情も入れ替える。さっきの笑顔よりほんの少しだらしない顔。

 「そうだよね、ほんのついさっきまで真夏だったのにね」

そしてまた声色を戻して受け答えを続ける。
5 名前:1 投稿日:2004/09/25(土) 02:19
「今年は暑かったね」

 「そうだね、ほんとに暑かった」

「何か変わったこと、あった?」

 「ううん、何も」

「そう、ののは、あったな」

 「何?」
6 名前:1 待ち人 投稿日:2004/09/25(土) 02:20
「好きな人が、いなくなった」

 「そう、残念だったね」

「うん……」

 「どうかした?」

「ううん、なんでもない」

 「そう」
7 名前:1 待ち人 投稿日:2004/09/25(土) 02:20
「ねぇ、また、会えたらいいね」

 「そうだね」

「また会えたらいいね」

 「うん」

「また会えるかな」

 「会えるよ」

「また会おうね」

 「うん」
8 名前:1 待ち人 投稿日:2004/09/25(土) 02:21
「ののはさ、ののだよ、って言うから、マコトはピーマコです、って言ってね」

 「アハハ、なによそれ、でも、悪くないね」

「そうでしょ」

 「だね」

「あーあ」

 「うん」
9 名前:1 投稿日:2004/09/25(土) 02:22

「また会えたらいいね」

 「また会えたらいいね」
10 名前:1 投稿日:2004/09/25(土) 02:22
少女は絵を見つめたまま、笑い声を口の中で転がすようにして笑った。
それっきり何も言わなくなった。

しばらくして眠たそうにゴシゴシと目をこすると、そのまま閉じた。
それっきり目を開けなくなった。

少女の唇から零れ落ちた赤い命の雫は、真っ白な床を美しく汚した。

透き通るように青い空の絵は、一瞬もやをかけたかのように曇ると、
それからはずっと相変わらず透き通るように青いままだった。

待ち人、来たらず。少女はただ、会いに行っただけ。
11 名前:1 投稿日:2004/09/25(土) 02:25
−了−
12 名前:1 投稿日:2004/09/25(土) 02:27
ぽよん
13 名前:1 投稿日:2004/09/25(土) 02:27
ちょ
14 名前:1 投稿日:2004/09/25(土) 02:27
ぷに

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