2 沈んだ世界
- 1 名前:2 沈んだ世界 投稿日:2004/04/16(金) 02:20
- 2 沈んだ世界
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 02:20
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青い空が、水平線の果てまで拡がっている。
雲一つなく、太陽はトチ狂ったみたいに光と熱を放射し続けていて、水面
からはうっすらと水蒸気があがり霧になっていた。
これからずっと、こんな夏みたいな気候が続くわけだ。
クリスマスとか、どうするんだろう。
わたしは釣り糸を垂らしたまま、顔に麦わら帽子を掛けて横になっている。
ゆるやかな揺れが、眠りに誘う。
「あさ美ちゃん、どう? 調子は」
声をかけられて、わたしは少し帽子をずらして目を向けた。
藤本さんが同じような船に乗って、同じように釣り糸を垂らしながら、呑気に
昔の雑誌を捲っていた。
「秘密です」
「なんだよそれ。ていうか見れば分かるし」
藤本さんは笑うと、ゆらゆらと遠ざかっていった。
こんな状況になったら嘘なんて通用しないってもんだ。
波は気まぐれだ。これがひょっとして今生の別れになるかも?
そんな恐い話、考えないのが吉だ。でもわたしはふっと上半身を起こすと、
藤本さんの遠ざかっていく背中を見送っていた。
舳先近くに置いてあるラジカセがカタカタと揺れた。
いま流れているのはaikoさんの花火って曲。まだ当分は電池は持つだろう。
なくなったら、釣れた魚とかと交換すればいい。なにより、食べ物が一番
貴重なんだから。
※ ※ ※
全世界のテクノロジーを結集したはずの気象操作衛星。
どこのバカが使用上の注意をあやまったのかは分からない。太平洋をひっくり
返したような豪雨が数年続き、その後しばらくは全地球をカンカン照りの
晴天が覆ったのだった。
わたしはぬるいビールを一口含むと、また帽子をかぶって横になった。
いまはただ暑さに耐えながら、来ることのない斜陽を待つだけだった。
「けど自転まで止めちゃうなんてねえ……」
失敗に終わった気象の再編成。
この波では、地球の裏側に到着するのはいつごろだろうか。……
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 02:21
- オ
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 02:21
- ワ
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/04/16(金) 02:21
- リ
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