インデックス / 過去ログ倉庫

57 Obsession

1 名前:Obsession 投稿日:2003年09月23日(火)00時18分30秒
57 Obsession
2 名前:Obsession 投稿日:2003年09月23日(火)00時21分11秒
一人部屋にしては広すぎる空間の中で、
私はテレビを見ていた。
ベッドの上で、リモコン片手に布団を被って。

貴さんがなにか面白いことを言っているようだったけれど、
私の耳にはちっとも入ってこなかった。
少し前に吉澤さんから聞いた話が、延々と頭の中でリピートしているからだ。

「実はさ、このホテル、出るんだって」
「で、出るって何がですか」
「決まってんじゃん。オバケだよ」

食事を終えた私たちを捕まえて、彼女はそんなことを言った。
その時点で逃げ出せばよかったのだろうけど、
吉澤さんは私の腕をむんずと掴んで離さず、
そのまま私の顔を見ながら続けた。
3 名前:Obsession 投稿日:2003年09月23日(火)00時23分04秒
その話は要約するとこうだ。
太平洋戦争の頃ここは戦場で、多くの人が死んだ。
その霊が時々どこかの部屋に、音もなく入り込んでくるのだそうだ。

ふと、ガタン、と窓が揺れた。
思わず布団を掴む手にぐっと力を入れながら窓のほうを見た。
どうやらただ単に風のせいらしい。
(タイミングよすぎだよ…)
私は溜め息をつき、テレビに視線を戻す。

番組が終わった。時計を見るともうすぐ八時だった。
たぶんこの時間では、ニュースしかやっていない。
私はリモコンを左手に持ち替え、ベッドの上で充電していた携帯を拾い、
メモリーの一番上に表示された名前に電話をした。
4 名前:Obsession 投稿日:2003年09月23日(火)00時23分41秒
「もしもし…」
「れいなどうしたの?」
「うちの部屋来ない…?」
「えー、いま絵里とゲームやっちょるから無理」
「おねがい!もうキショイとか言わないから!」
「じゃあれいながくれば?」

「無理だよ…。廊下静かだし…」
「れいなまさかさっきの吉澤さんの話にびびっちょるの?」
「違う!いいよ!もういい!」

まったくなんて薄情なやつなんだろう。
お前は黙って私の言うこと聞いていればいいのに。
5 名前:Obsession 投稿日:2003年09月23日(火)00時24分17秒
他に頼れそうな人は誰だろう。
メモリーを見ながら探し、見つけた一人の人物。

「もしもし、紺野さん。お願いがあるんですけど」
「おお、どうした?」
「私の部屋に来てくれませんか」
「え?ど、どうしたの?」

「あの……、紺野さんの空手でオバケやっつけて欲しいんです」
「え、いくらなんでもそれは無理だなあ」
「おねがいします。一緒にいるだけでいいんです」
「ごめんね。ちょっと今忙しいの。あ、まこっちゃんやめてよぅ」
「……」
「あ、本当にごめんね田中ちゃん。じゃあね」
 
6 名前:Obsession 投稿日:2003年09月23日(火)00時25分58秒
諦めて電話を切った。
どうすればいいだろう。
このまま一人で夜を過ごすなんて怖すぎる。
今にも後ろから肩をつかまれそうで、冷たいものが背筋を這う。

再びさゆたちのところへ電話をした。
「お願い!誰か一緒に寝てよ!」
「無理だよー今いいところなの」
「バカ!さゆのバカ!キショ女!死ね!」

「キショクないよ。……あ、今絵里がいいこと言った!
 紺野さんに頼めば?」
「あのバカ、小川となんかしとった」
「そっか…」
「今はいいよ。でもさ、お願い!夜一緒に寝て!」
「うちらは無理だってぇ」
「そうかい…。もういいよわかったよ…。じゃあ…」 
7 名前:Obsession 投稿日:2003年09月23日(火)00時27分15秒


「じゃあ夜が来たら紺野を攫いに行くよ」


8 名前:Obsession 投稿日:2003年09月23日(火)00時31分44秒
9 名前:Obsession 投稿日:2003年09月23日(火)00時40分44秒
10 名前:Obsession 投稿日:2003年09月23日(火)00時52分54秒

Converted by dat2html.pl 1.0