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53 another

1 名前:53 another 投稿日:2003年09月22日(月)23時55分51秒
53 another
2 名前:53 another 投稿日:2003年09月22日(月)23時56分44秒
「じゃあ夜が来たら紺野を攫いに行くよ」

今日、私は紺野に声をかけた。
みんなと話していた紺野は周りをきょろきょろと窺ってたみたいだけど、
結局会話の輪の中へと戻っていった。
3 名前:53 another 投稿日:2003年09月22日(月)23時57分49秒
暗い。
辺り一面、真っ暗だ。
だけど、見覚えがある。
何度も見た、景色。
何度もたどった、道のり。
もう、何度目になるだろう。
足元で、ぴちゃり、と音がする。
赤い液体だ。暗いのに、その事が認識できた。
匂いだ。むせ返る程の、血の匂い。
近くに横たわる、人影。
今までのことを考えれば、もう吉澤さんしか残っていない。
それでも、顔を近づけてみる。
やっぱり、吉澤さんだ……
顔は血なんか通ってるように見えなくて、
吉澤さんが、生きてない事は明らかだった。
顔をあげる。
4 名前:53 another 投稿日:2003年09月22日(月)23時58分55秒
ナイフを持った人影がそこにある。
何度も見た。顔のわからない人。
手元にある、血まみれのナイフ。
光も無いのにキラキラと光を放っている。

「あなたは誰?」

私は毎回繰り返してきた質問を、繰り返した。
返事は分かりきってるのに。

「私? 私は――」

間が開く。
いつも、そこで私は目覚めた。
そう、これは夢。何も恐くない。

「私は、貴方。貴方は私。そういう事よ、紺野。
 貴方を攫うわ」
5 名前:53 another 投稿日:2003年09月22日(月)23時59分28秒
声と同時に、何かに包まれていくような気がした。
6 名前:53 another 投稿日:2003年09月23日(火)00時00分03秒
目が覚めた。なんだったのだろう?
今日に限って、夢の覚め方が少し違う。
ふと、昨日の昼間に聞こえた声を思い出す。

「じゃあ夜が来たら紺野を攫いに行くよ」

あの声と、何か関係あるのだろうか。
あれは、間違いなく夢の中の人の声と同じだった。
気にはなったけど、朝になっても私には何もない。
――問題ないよ。うん。
漠然とした不安を封じるために、自分にそう言い聞かせた。
7 名前:53 another 投稿日:2003年09月23日(火)00時00分35秒
私はベッドで目を覚ました。
どこだろう?
そばにいたマネージャーが、私が倒れたのだと教えてくれた。
覚えが無い。
今日、ここに来るのにタクシーに乗ったはず。
空はどんより曇っていた。
覚えている。
だけど……、いつこの建物に入ったのだろう。
マネージャーの話では、倒れたのは仕事を終えた直後だったらしい。
覚えが無い。
だけど、ここにいてもどうにもならない。
私は仕方なく楽屋に戻る事にした。
立ち上がると、ポケットに何か入っているのに気が付いた。
なんだ、これ? ナイフ……?
血にまみれたナイフが、私の手に握られた。
やはり覚えは、無い。
8 名前:53 another 投稿日:2003年09月23日(火)00時01分01秒
『モーニング娘。様』と書かれた扉を開けると、
そこには闇が拡がっていた。
もうとっくに上がりの時間だ。しょうがないか。
待っててくれるのを期待してたわけじゃないよ、うん。
一歩足を踏み入れると、その空間がいつもと違う雰囲気を帯びているのに気付いた。
みんながいないから当たり前だ。
でも……、でも、この匂いは。
最近何度も嗅いだ覚えのあるこの、血の匂いは。
恐る恐る、奥へと進んでみることにした。
頭の中にある楽屋の形を引っ張り出して、闇の中を進む。
ぴちゃり。
音が、響いた。
認めたくない、認めたくないけど、人が、いた。
血の海に、うつ伏せになって倒れている。
ほとんど意識しないままに、顔を見た。
驚くほど白い。どう見ても、生きていない。
そして、それは吉澤さんだった……。
顔上げる。そこに、例の人はいなかった。
私は、気を失った。
9 名前:53 another 投稿日:2003年09月23日(火)00時01分30秒
暗い。真っ暗で何も見えない。
また、ここ。
だけど、今度は何も無い。
歩き回ってみても、何も無い。
どれだけ時間が過ぎたんだろう。
数時間かもしれないし、数日かも。
相変わらず、何もない、暗いだけの空間だった。
なのに、気が狂いそうになる事が無いのが不思議だ。
目を開けているのか、閉じているのかもわからない。
たぶん、開けてたんだろう。
いつのまにか人が立ってるのが目に入ったから。
10 名前:53 another 投稿日:2003年09月23日(火)00時02分21秒
「誰?」

「私は貴方だと言ったでしょう? 紺野」

「わからない」

「そう? ようは貴方の別人格よ。学校でのいじめから逃げるための」

そのことは、あまり思い出したくない。
小学校は嫌な思い出ばかりだ。

「そして、吉澤さんを殺したのも、私。夢を見せたのもね」

「なんで、そんなこと……」

「なんで? 私が主人格になりたくて。最近、貴方強くなって、
 私なんか必要じゃなくなってたみたいだから、こうでもしないと出てこれないじゃない」

狂ってる。
11 名前:53 another 投稿日:2003年09月23日(火)00時02分50秒
「吉澤さんを殺したのは、貴方が好意を寄せてるみたいだったから。
 ショックが大きい方が、取って代わりやすい」

狂ってる。

「一言言っておくけど、私は貴方。貴方は私。
 貴方に罪を犯す気が無ければ、殺人を犯すような人格は生まれない。
 知ってるでしょ」

そういい残して、去っていく。
私の代わりに、この世界から抜け出していく。
うなだれるしかない。私が人一倍殺人願望が強いのはよくわかっているから。
12 名前:53 another 投稿日:2003年09月23日(火)00時03分30秒
紺野はいろんなものを私にくれた。
仕事や友達もそう。
だけど、だけどやっぱりこの身体。
紺野の意識を攫って、行動を起こす事で、
思いのほか、簡単に紺野の意識を希薄にできた。
これからは私が『紺野あさ美』だ。

「死にいたる病とは絶望の事である、か……」

昔の偉そうな人が残した言葉を思い出し、
よく言ったもんだな、と私は一人苦笑した。
13 名前:53 another 投稿日:2003年09月23日(火)00時04分20秒
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14 名前:53 another 投稿日:2003年09月23日(火)00時04分36秒
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15 名前:53 another 投稿日:2003年09月23日(火)00時04分53秒
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