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50 Purple Haze

1 名前:名無し 投稿日:2003年09月22日(月)23時20分21秒
50 Purple Haze
2 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時21分03秒


「じゃあ夜が来たら紺野を攫いに行くよ」

3 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時21分25秒

頭の中がモヤモヤしていた。
だけど、前後の脈絡を省いてその言葉だけが鮮明に頭の中に残っていた。

私は自分が何をしているのか良く分からなかったけれど、
自分が走っていることと、私が誰かと手を繋いでいることは分かった。
そして、チラリと右手の方を見ると紺野が居た。目が合った。

その紺野がふいに立ち止まると、私もつられて立ち止まる。
そして、紺野はなんだか腑抜けのような顔をして言った。

「この頃の吉澤さん、なんだか変です。」

「うん、自分でもなんだか良くわかんないんだ。」

私が笑顔でそう言うと、紺野は困ったような顔をした。
そんな紺野を横目に見ながら、私は空に向かってキスをする。
紺野は私のその行為を、また困った顔をして見ていたけど、
紺野もまた、私の真似をして、空に向かってキスをした。
それを見て私は笑った。紺野も笑った。

そうして、私たちはまた暗闇の中へ走り出す。

私の頭の中は相変わらずモヤモヤしていた。
4 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時21分51秒

紫。

ふいにモヤモヤの正体が紫のけむりだと私は悟った。
この私の行為が正しいのか、紫のけむりに巻かれて、
私にはまったく分からなくなってきた。

「ねぇ、紺野。」

「なんですか?」

「これから、どうしたい?」

立ち止まって私が尋ねると、紺野はまた困った顔をした。

「やっぱり、この頃の吉澤さんはなんだか変です。」

「知ってる。」

紺野は笑った。そして私も笑った。
夜の暗闇を背負った紺野が、やけに頼もしく見えた。
5 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時22分12秒

紺野を攫った。

この事実が私のモヤモヤとした頭には、まだ現実として認識されていなかった。
言ってしまえば、私のこの行為は全て夢の中の出来事と同じことだった。
だけど、紺野とこうして走っている内に、段々段々とそれは認識され始めた。

なんで紺野を攫ったんだろう?

その単純にして全てである疑問がようやく私の頭に浮かんだ頃には、
辺りは明るくなっていた。

「やばいです。」

紺野がやけに冷静な口調で言った言葉がふいに私のモヤモヤした頭に突き刺さった。

「何が?」

その私の問いかけに、紺野は顔を俯いたまま、無言の返答をした。
私は冷静になって立ち止まると、辺りを見回した。

確かにやばかった。
6 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時22分34秒

道行く人々の視線が私たち二人に突き刺さっていた。

「ねぇ、紺野。」

「なんですか。」

「これから、どうしたい?」

紺野は笑いを堪えるようにしてククッと笑った後、
私の右手を振り切ると、道行く人々に向かって走りながら、大声でこう言った。


「誰か!助けて下さい!」


終わった。よく分からないけど、そう思った。

そうするとすぐにまた私の頭はモヤモヤして来た。
私はふいに右脇腹に違和感を感じて、そちらに意識をやろうとしたが、
私の頭が完全に紫のけむりに乗っ取られる前、最後に覚えているのは、
大勢の人が私に向かって駆け寄ってくる場面だけだった。


だけどこれだけは言える。全部あんたのせいだ。紺野。
7 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時23分13秒



8 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時23分37秒

吉澤さんは、この頃なんだか変でした。

妙にハイテンションなのはいつものことでしたけど、
この頃は特に、そのテンションの浮き沈みが激しかったのを覚えてます。

いつだったか、さっきまですごいハイだったのに、
急にすっごいテンションが低くなったのを初めて見た時は、
「吉澤さんでもそういう事があるんだ。」とか言って、
ちょっと失礼ですけど、ちょっと感動しちゃったこともあります。

けど、それが続くとなんだか私とか他の娘。のメンバー達も、
ちょっと、心配、とかするじゃないですか。

それであの日にみんなで、吉澤さんを元気づけたげよう、
悩みとかあったら、何でも聞いたげよう、ってことになったんです。


あの日もなんだか吉澤さん、変でした。
9 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時23分57秒

あの日、吉澤さんの家にみんなで遊びに行ったんです。
ちょうど丸一日オフだったんで、ちょうどいいじゃん、って。

それで、吉澤さんに何の連絡もしないでみんなで押しかけて行ったんですけど。
計画としては、吉澤さんの家の前にズラッとみんなで並んで、
吉澤さんが出てきたら、クラッカー打っておめでとう、って。
その日ちょうど吉澤さんの誕生日だったんですよね。
だから、吉澤さん喜ぶだろうなぁ、って、みんなで言ってたんですよ。

で、それやったんです。
そしたら、吉澤さん何て言ったと思います?
「なんだよお前ら、今日はオフだろ?休ませろよ!」
って言って、バタンッて戸を閉めたんですよ。

私たちみんなは、最初ボーゼンとしてたんですけど、
飯田さんが「カオリ、こういうのすっげーむかつく。」とか言って、
なんか本気で怒っちゃってて、私たちで止めたんですけど。
全然飯田さん聞いてくれなくって、吉澤さんの家の扉ガンガン叩きながら、
「吉澤!お前いい加減にしろよ!出てこないとぶっ殺す!」
ってすっごい大きい声で叫んだんです。
10 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時25分30秒

そしたら吉澤さんが今度はすっごい笑顔で出てきて、
どうしたんだろ、って思ったら、飯田さんの頭をバットで殴ったんです。
飯田さんのことは、私は興味ないからその後のことは知らないですけど、
それから、吉澤さんがまたすっごい笑顔で言ったんです。

「じゃあ夜が来たら紺野を攫いに行くよ」

さすがに、私もちょっと固まっちゃいました。
ちょっと嬉しかったんですけどね。ちょっと恐くもありました。
11 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時25分49秒

実は私、前々から知ってたんですよ、吉澤さんが悩んでること。
異常にハイテンションなのも、空元気って奴で、
下手に直接顔に出さない分、石川さんよりも性質が悪いと思いますけど。

で、私も私なりに、吉澤さんに根っから元気になって欲しかったんで、
クスリあげたんですよ。元気になるクスリ。バイアグラとかじゃなくて、
精神的にすごい元気になる奴です。
私もたまに使ってるんですけど、最近の吉澤さんほどじゃないです。

ちょっと余談なんですけど、私が思うに、吉澤さんって、
実は私のこと好きだったんじゃないかなー、って。
なんかそんな気がするんですよ。

私も変なんですかね?

あはっ、やっぱそう思います?

あー、なんだか頭がモヤモヤしてきたんで、
これぐらいで失礼させてもらっていいですか?
12 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時26分39秒

なんですか?最後に質問?

どうぞ。

殺害容疑を認めるか?

しつこいですね。認めませんよ。


だって、私も吉澤さんのことが好きだったんですから。当然です。




−了−
13 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時27分58秒
Purple haze
14 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時28分18秒
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15 名前:50 Purple Haze 投稿日:2003年09月22日(月)23時28分31秒
in my brain

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