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14 end of the orange

1 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時40分44秒
14 end of the orange
2 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時41分34秒




「じゃあ夜が来たら紺野を攫いに行くよ」
3 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時42分24秒
そう書かれた一枚のFAXが、わが警視庁捜査一課の元に届いた。
一見、甘い囁きのような言葉。

だが、これは立派な強盗予告だった。
4 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時43分42秒
先頃制定された法律により、日本の通貨の単位が円の他にもう一つ、増えた。
紺野。
1紺野なら100億円、10紺野なら1000億円。
1紺野はただ単に紺野と称されることが多かった。
つまりだ。
犯人は紺野を人物名に見立て、さらに攫うという表現を使う事によって、それだけの大金を盗み出すという大胆な犯行予告をやってのけたのだ。
5 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時44分27秒
しかしながら犯人は、紺野という途轍もない額の金を一体どこから盗み出すというのか。常識的に考えて、一個人が現金の形で紺野を所有しているとは考えにくい。
となると、銀行などの大規模の金融機関。
どこの金融機関が狙われるのか。
金庫のセキュリティーの問題や、警備員の常駐している人数などの、複雑な条件。
犯人はなるべく自らの負うリスクの軽い場所を選ぶだろう。
それを特定するのは、我々警視庁の敏腕刑事の仕事だ。
6 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時45分34秒
無論みすみす犯人の思惑通りにことを済まさせてしまえば、かつての三億円事件、今の言い方だと3/100 紺野事件以上の失態になるだろう。
それだけは、それだけは何としても避けなければならない。
今回の事件には、我が警視庁の威信と面子がかかっていた。

ともかく「紺野が攫われる」のは、今夜。
我々の長い夜は、はじまったばかりだ…
7 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時48分40秒






8 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時50分24秒
手に汗握る展開を書こうとした瞬間、わたしのシャープペンシルが空を切った。
「紺ちゃん、何してるの?」
壮大なプロットを頭の中で練っている隙に、加護さんに大学ノートを奪われてしまったようだった。
「え、あさ美ちゃん何書いてたの?」
さらに辻さんが、呆気にとられているわたしの右手からシャープペンシルを奪い取る。
「何これ、もしかして小説!?」
「これってあさ美ちゃんが全部書いたの? へーすごーい!」
二人が、わたしの珠玉の小説を目にして騒ぎ出す。とても嫌な予感がした。
この二人からノートを奪い返さないと、とんでもないことになる。
わたしの第六感はそう訴え続けていたけれど、仮にも二人は先輩、指を咥えて見ているしかなかった。
そんなわたしに、更なる悲劇が訪れた。
「ののにあいぼん、何見てるの?」
「どれどれ、見せてみな」
石川さんと吉澤さんが、騒ぎに気づいて二人に近づいてきたのだ。
9 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時51分23秒
TV番組の収録の合間の、空き時間。
暇つぶしに、と思って何となく書き綴っていた文章。それが思いがけず「完璧ですっ!」と言いたくなっちゃうような出来栄えになる予感がしていたのに。
辻さんたちに見つかる事で、大いなる助走はストップをかけられてしまった。
わたしが恨めしそうな視線を投げかけているにも関わらず、四人はノートを前にして、それこそわいわいきゃっきゃっといった感じではしゃいでいた。
10 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時52分19秒
しかし。
まるで純粋な少女のように輝く、八つの瞳。
もしかして私の生み出した物語が、彼女たちの心を鷲掴みしているのではないだろうか?
一瞬でも貴重な読者を邪険に扱おうとした自分を恥じた。
これから世界のアサミ・コンノとして祭り上げてくれる彼女たちだ。そう、わたしたちモーニング娘。だって例えキショいヲタでも大事にしているではないか…
11 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時53分29秒
「あーちゃうやろ、ここで正義の味方セーラーあいぼんの参上やって」
サラサラサラ。
「でもここで主人公が八段アイス食べてた方が絵になるよ」
かきかきかき。
あのう、あなたたちは何をやっておられるんですか?
「だめだってば、ここはやっぱり褐色の肌の美少女が主人公と結ばれてえ…」
「オエー」
「オエー」
「オエー」
「何よそれ!」
「やっぱここで頑固一徹の登場が一番盛り上がるって。つーかそっちのほうが絶対かっけーから…だからこの部分は全部書き直して」
ゴリゴリゴリゴリ
あっ…そこは物語の大事な複線だったのに…
「て言うか、ここのページ丸々いらんやろ」
バリバリバリ、グシャグシャ、ポイ
あ、そ、そんな…
「ここにのんがうさぎの絵、書いてあげる」
「えーっ、うさちゃんはあたしが書くんだからあ!」

12 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時54分33秒



久しぶりに、ジャンピングスクワットがやりたくなった。
13 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時57分07秒


こうして、アイドル初の直木賞受賞の可能性すらあったわたしの話は、未完に終わった。

                                    おわり
14 名前:14 end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時58分01秒
15 名前:14  end of the orange 投稿日:2003年09月15日(月)00時58分57秒
16 名前:14  end of the orange   投稿日:2003年09月15日(月)00時59分45秒

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