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03 出窓から

1 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)20時49分56秒

03 出窓から


2 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)20時50分48秒

「じゃあ夜が来たら紺野を攫いに行くよ」




3 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)20時51分34秒

「嫌です」




4 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)20時52分32秒
月よりも冥王星のほうが大きく輝くような夜明けでした。
虫の声と蝉の声と戦車の音が聞こえてきます。
中世のお城の周りに生えていそうな憂鬱な杉の木の辺りから、それはやってきました。
ひら、ひら。
一枚の葉書くらいの大きさの紙があさ美の部屋の出窓から入ってきて、
それにはこう書いてありました。
5 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)20時53分49秒
――――

ボクは紺野さんが書いているお話の中に出てくる、マコト。
普通は物語の登場人物がこうしてこの世界にでてくるなんてないんだけど、
紺野さんの場合は特別だったんだ。
紺野さんが、そのお話に主役としてでてくるから。
で、お願いがあるんだけど、ボクと一緒に旅に出ないかい?
紺野さんも知ってるように、今ボクらの世界は大変なことになってるんだよ。
ぜひとも、お願いします。

――――
6 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)20時55分30秒
あさ美は混乱しました。
確かにマコトとあさ美と言う登場人物のいる小説もどきを書いてはいたのですが、
鍵をかけた引き出しに入っていたし、そもそも手紙が二回の窓から入ってくるのもおかしな話しです。
もしかして自分も誰かのお話の登場人物なのかとあさ美は疑いましたが、もちろんそんなはずはありません。

「どうしよう……」
思わずあさ美は呟きました。
はっきり言って、あさ美には本物の冒険には興味はなかったのです。
空想に耽ることだけで充分だったのです。
あさ美はそのことを、手紙の舞い込んできた出窓から外に向かって言いました。
するとどうでしょう。
再び手紙が危なっかしい動きで宙を舞い、窓から滑り込んできたのです。
7 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)20時58分06秒
――――

そうですか。そうでしょう。
けどよく考えてみてよ。
紺野さんの物語はもう始まってる。
ボクの頼みを断ることは出来ないんだよ。

――――
8 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)20時59分38秒
そうでした。
たしかあさ美の書いていたお話のはじめに、今の状況はそっくりなのでした。
このまま行くと、本当に今日の夜、あさ美はマコトの姉の中澤さんに連れて行かれるのです。

しかし、あさ美は気づきました。
あのお話の中ではあさ美は死にません。
多少の怪我しかしません。
死なないとわかっているのなら、楽しくなりそうです。

いやいや。あさ美はぷるぷる頭を振りました。
なによりも、あのお話はまだ書き終わってないのです。
9 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)21時02分07秒
そうでした。
たしかあさ美の書いていたお話のはじめに、今の状況はそっくりなのでした。
このまま行くと、本当に今日の夜、あさ美はマコトの姉の中澤さんに連れて行かれるのです。

しかし、あさ美は気づきました。
あのお話の中ではあさ美は死にません。
多少の怪我しかしません。
死なないとわかっているのなら、楽しくなりそうです。

いやいや。あさ美はぷるぷる頭を振りました。
なによりも、あのお話はまだ書き終わってないのです。
10 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)21時03分01秒
その、ちょうど途切れたところまで行ったときどうなるのか、あさ美には想像もつきません。
やはり、行くべきではないのです。

しかし。困ったことにこのままだと昼の十二時くらいにまた手紙が来て、
それで夜が来たらあさ美は攫われてしまうのです。

あさ美は悩みました。
打開策をひたすら考えました。

気づけば簡単なことでした。
その小説を今から書き換えてしまえばいいのです。
11 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)21時04分24秒
あさ美は鍵のついた引き出しを開け、ノートを出しました。
そして最初の一ページのみを残して後は破り捨てました。

最初のページはちょうど、今日の正午に手紙を貰ったあさ美が、
出窓の前に立ち、返答をする場面でした。
あさ美はその台詞を消し、「嫌です」とだけ書いて[終]マークをつけました。
これで大丈夫のはずです。
12 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)21時05分16秒
時が来て、手紙が部屋に舞い込みました。
「じゃあ夜が来たら紺野を攫いに行くよ」
とだけ書かれたその紙を一瞥して、私は窓辺に立ち
「嫌です」と言い放ちました。

次の瞬間あさ美の姿がパッと消えました。
おやおや、どうやら[終]はあさ美の存在そのものをも終わらせてしまったようです。


[終]
13 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)21時06分10秒
>>09二重投稿です。ゴメンナサイ。
14 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)21時06分40秒
15 名前:03 出窓から 投稿日:2003年09月13日(土)21時07分26秒

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