インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板
幸・不幸
- 1 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時23分26秒
- この世はとても不条理だ。
- 2 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時23分54秒
- 加護と辻が非常になにやらやり取りをしていた。
「のの、問題や。
ごっちんを卒業させへんようにするにはどうしたらええと思う?」
「えー?そんなの無理だよー」
辻はほとんど即答で答えた。
一体何を考えたのか、辻の頭を覗きたい衝動に駆られたが、ぐっとこらえた。
- 3 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時24分24秒
- よく聞く話だ。
ごっちんを殺して卒業できなくさせるだとか、事前にモーニング娘。を解散しておくだとか、いろいろと解答はある。
しかし実際はどれもこれも正解であり不正解である。
理屈としては筋が通っているように見えても、それを実行に移せるかといったら、答えはノーに決まっている。
もしごっちんを殺してしまったら、ただ卒業するよりはるかに辛い思いをしなければならなくなるからだ。
つまりこの問題の裏には、「誰も不幸にならないで」という透明の前置きが記されているのである。
- 4 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時24分45秒
- しかしこれが厄介である。
一体「不幸」とはなんだろう。
そもそも「幸せ」とは何かもよく分かっていない。
嬉しかったり楽しければ「幸せ」、悲しかったり寂しかったりすれば「不幸」。
こんな簡単な線引きでいいんだろうか。
- 5 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時25分13秒
- 「わかった、事務所に頭を下げる」
「違うわ!そんな夢のないこと言うなや」
辻と加護は相変わらず問答を続けている。
そして辻は、妙に生々しい発言をしている。
しかし、「誰も不幸にならない」という前提から考えると、辻の答えは正解なのかもしれない。
頭を下げる人が誰かは知らないが、その人は悲しいとも寂しいとも思わないだろう。
それとも屈辱ではあるだろうから、それも「不幸」の枠組みに入ってしまうのだろうか。
- 6 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時25分42秒
- 加護は辻を見限り、今度は私に話を振ってきた。
「なぁ、よっすぃーはわかる?」
私のひざに乗りながら、下から私の顔を覗きこんでくた。
少し軽くなった気がする。
「わかんない」
私はわざとそう答えた。
「なんや、二人ともあかんなぁ。
22日までに地球を滅亡させればいいんや」
加護は自慢げに言い放った。
- 7 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時26分08秒
- 「何言ってんのあいぼん!
そんなことしちゃダメだよ!」
「アホか!
するはずないやろ、例えばや、例えば」
加護の答えに夢があるのか、私には分からない。
それに、私は加護の答えには賛同しかねた。
どう考えても数え切れない人数の人々が「不幸」になる。
- 8 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時26分34秒
- しかし。
私は加護の頭を撫でながら考えた。
この世の中、誰も「不幸」にならずに済む事があるのだろうか。
人それぞれ「不幸」の考え方が違うならまだしも、皆考えは似たようなものだ。
するといずれ、誰かが何がしかの「不幸」を得る事になってしまう。
そうすると、加護の質問自体が意味を成さない、存在する必要性のないものになってしまう。
- 9 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時26分58秒
- 「あ、矢口さんお帰りなさい。
どうなりました?」
私が妄想にふけっていると、辻が声を上げた。
意識を取り戻して楽屋のドアの辺りを見ると、疲弊しきった表情の矢口さんがいた。
「うん、とりあえずは決まったよ」
矢口さんは首をコキコキ鳴らしながら椅子に腰掛けた。
- 10 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時27分19秒
- そうだ。
私達は、「幸せ」や「不幸」がどうだなどと考える必要はない。
ただ言われたとおりに行動すればいいだけだ。
- 11 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時27分40秒
- 「今度の横アリは、やっぱり爆破予告だって。
そんでコンサート中止にして、つんくさんが会見開いて、ごっつぁんの卒業は取り消し。
そんで、ごっつぁんの卒業取り消しに伴いハロプロ改革も白紙に、だとさ。
まったく、つんくさんにもこまったもんだね」
矢口さんは大きくのけぞりながらそう言い放った。
- 12 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時28分08秒
- つんくさんと事務所の間にどんな手違いがあったのか、私には分からない。
矢口さんの口ぶりだとつんくさんが悪いようだが、それも分からない。
分かる事は、私達は突然の誤報に踊らされた上に、その尻拭いまでしなければならないということだけだ。
- 13 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時28分31秒
- 「辻」
私は辻を呼んだ。
そして、何故呼ばれたのか分からないままトコトコとこちらにやってきた辻の頭を軽く撫でた。
きっとつんくさんは事務所を含めいろんな人に頭を下げたに違いない。
するとつんくさんは「不幸」だろうか。
もう私には何も分からなかった。
- 14 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時28分55秒
- まったく、この世はとても不条理だ。
- 15 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時29分13秒
- おしまい
- 16 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時29分44秒
- …
- 17 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)02時30分25秒
- …
Converted by dat2html.pl 1.0