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おばあちゃん

1 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)00時56分48秒
夜の空気が随分と肌寒く感じられるようになった頃。
矢口真里のお気に入りの場所である、海の見える公園で。
保田圭と矢口は、並んでベンチにもたれ、夜空の向うへと視線を泳がせていた。
2 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)00時57分41秒
「ごっつぁん、卒業しちゃったね」

「そうだね」

ミルクティーを啜っていた矢口が、遠くを見たままで言った。
保田もまた、遠くを見つめたままで返した。
3 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)00時58分17秒
「次は圭ちゃんの番、か……」

「まあね」

溜息をついて漏らす矢口に、保田は他人事であるかの様にさらりと応えた。
4 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)00時58分52秒
「二期もいよいよオイラ一人だし。寂しくなる、寂しくなるよ。また二人もいなくなっちゃうなんて」

「…………」

「なんか変な感じだよね、いつもそばにいて当たり前だった人がいなくなるのって。何回経験してもさ。
いつかはこんな日も来るんだろうって思ってたけど、やっぱ寂しいよ」

「…………」
5 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)00時59分31秒
「明日香にあやっぺ、紗耶香に裕ちゃん。そして今度はごっちんに圭ちゃん。
こうやって皆いなくなってくのかな……」

俯きながらボソボソと呟き続けた矢口が一息つくと、保田は穏やかな口調で話し始めた。

「そんなに暗い顔しないの。卒業したって二度と会えなくなるわけじゃないし、矢口らしくないわよ。
何人になったって矢口なら上手くやってけるから。大丈夫、二期魂を見せてやりなさい」

「圭ちゃん……」
6 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)01時01分50秒
保田は矢口の肩に手を回すと、優しく抱き寄せる。
正面から向かい合い、そして微笑み、消沈気味の矢口に保田は「おばあちゃんの顔」になっておどけて見せた。

「年寄りは遠くから見守ってるとしますヨ」

「おばあちゃんかよ!」

矢口が突っ込むと、二人は見詰め合ったまま吹き出し、いつもの様に大声で笑った。
7 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月22日(日)01時02分31秒
おしまい

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