インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

頑張りやさんのモノローグ

1 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時16分07秒


ほんの少しの間だったけど、
あなたの横に立てたこと、


イッショウ、ワスレナイ──


2 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時17分05秒


唄も踊りも下手。トークもダメ。
いつもボーっとしていて
眠そうとか、暗そうとか言われてしまう私。

別に運動神経が悪いわけじゃない。
別に頭が悪いわけじゃない。
なんでも人並み以上にこなしてきて、
勉強だって空手だって一生懸命やって。
どちらかというと、優等生だったはずなのに。

でも、モーニング娘。になって、私は劣等生というポジション。
つんくさんからもはっきり言われた、赤点のおちこぼれ。

ダンスも歌も抜群の愛ちゃん。
プロ意識が強くて、性格もいいまこっちゃん。
気の強くて、しっかりものの里沙ちゃん。
同期のみんなは、選ばれた時点ですでに私の何倍も芸能人してて。
3 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時17分55秒
私なんて、入ってそうそう怪我をして。
みんなよりさらに遅れて。
歌いだしはいつもNGで。
その後は当然隅っこで。
みんなの邪魔にならないように踊って。

一生懸命がんばったつもりでも、
やっぱり、2月の新曲は、歌うところなんてなくて。
いつものように隅っこで。
北海道の友達に、全然映ってないね、なんていわれたり。

完璧です。というのが決まり文句だったけど、
それが笑いになるということは、
やっぱり完璧でないというわけで。
それは自分が一番良く分かっていたんだけど、
ホントはその言葉を言うたびに、胸がじくじくと痛んで。

そして、あの人はいつもスポットライトを浴びて、
モーニング娘。の中心ににいた。
何もかもが違いすぎていて、そして、私の憧れでした。

どうやったらあの人に近づけるんだろう。
どうやったら、あの人の横に立てる日がくるのだろう。

そんなことを思いながら、毎日隅っこで踊るだけでした。
4 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時18分31秒


でも、突然機会は訪れることになって。
それは、私にとって初めてのミュージカルで。
その台本をもらって、私はびっくりして。

ソロパートももらえない、
ダンスも隅っこのおちこぼれなのに。
何でなんだろう?どうしてなんだろう?
なんで、私はあの人の恋人役なんだろう?

そして、メンバーたちの不安そうな視線が私に突き刺さりました。

本当にできるの?大丈夫なの?

口には出さないけど、みんなそう思ってるに決まっていました。

迷惑をかけたらどうしよう。
上手くできなかったらどうしよう。

あの人の横に立つことができるのはうれしかったけど、
それを上回るほどの重圧が、私の心を押しつぶしていって。
毎日毎日、不安で不安でたまらなくて。
それを打ち消すように、必死に台詞を覚える私。
だって、そうしないと、夜も眠れなくて。
5 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時19分05秒
練習では、当然あの人との二人だけのシーンが沢山あって、
私は、彼女の圧倒的な雰囲気にびくびくしてしまって。
台詞はなんとか全部覚えることはできたけど、
やっぱり大きな声がでなくて、体で表現することができなくて、
演出家の先生に怒られてばかりでした。
でも、あの人はただ黙って、私に付き合ってくれた。

みんなに迷惑をかけたくない。
そして、なによりあの人に迷惑をかけたくない。
必死でした。一生懸命やりました。
自分ではこれ以上できないぐらいまで、頑張ったつもりだったのに。
でも、私の頑張りは、全然足りてなくて。
6 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時20分01秒
それは第1部の通し稽古──

安倍さんの圧倒的な存在感。そして、軽やかに動く加護さん。
ほかのメンバーたちも、それに何よりも同期の、
愛ちゃんも里沙ちゃんも違和感なくとけこんいて、
感動的なストーリーと相まって、ものすごく心に響いてきました。

こんな舞台、私にできるの?

気が付けば私は泣いていて。
まこっちゃんも泣いていて。
もちろん、その舞台が素晴らしかったこともあるんだけど、
これだけやっても、彼女たちに追いつけないでいることが
情けなくて、悔しくて。

それはやっぱり、私のせいで。
あの人の横に立つ資格なんて、私にはなくて。

でも、あの人は黙って練習を続けていました。
だから、私は黙って彼女の横で一緒に練習を続けました。
7 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時20分43秒
あの日から、辻さんも泣きながら練習していて、
まこっちゃんも悲壮感を漂わせていて。
私なんかが普通にやっても、とても追いつけるものではなくて。
だから、一生懸命頑張った。

がんばること、努力すること。
それしか私にはできなかった。
そしてあの人に迷惑をかけたくない。
少しでも近づきたい。横に立ちたい。
ただそれだけでした。

そしてミュージカル直前まで練習はつづいて。
あの人は言葉数は少なくても、
必ず私を気にしてくれて。それがうれしくて。
落ち込んだ時は、やさしく頭をぽんぽんとたたいて励ましてくれて。
そのやさしい感触で、私はまた頑張れて。
8 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時21分22秒
そして、公演を重ねていくうちに、あの人との息も合いだして、
私が上手くできれば、彼女も喜んでくれて。
気が付けば、私は、男役の彼女の愛の言葉に、
実際にほのかな恋心を抱いてしまうほど、のめりこんでいました。

もちろん、彼女がそういうのはあくまでも台詞だからであって、
実際の私に言ってくれているわけじゃないんだけれども、
それでも、胸がときめいて、あの人に近づけた気がして、
そして、あの人の横に立つ資格が私にもあるんだということが、
うれしかった。
9 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時22分02秒


ミュージカルが終わると、休むまもなくシャッフルの収録が始まりました。

5期のみんなは、加護さんを中心にいろいろと
ネタあわせをやっていて、
まこっちゃんも、とっても張り切っていて。
みんな、やっぱり芸能人してて。
それを少しうらやましい気持ちで見つめていました。

でも、私は出番も台詞もほとんどなくて、
たくさんいる中で、自分はますます目立たなくなって。
いつものように隅っこで、歌うところもなく、
ただ邪魔にならないように踊るだけ。
いてもいなくても同じでした。

そして、あの人は、セクシー8の真ん中で、
当然のようにスポットライトを浴びていて、
なんか、遠くに行ってしまった感じがしました。

なにもできなくて落ち込む私を、辻さんはやさしく慰めてくれたけど、
あの人との距離が遠くて、遠すぎて、
ミュージカルのときに少しだけあの人近づけたと思ったことが、
やっぱり勘違いだったんだと、悔しくて、寂しかった。
10 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時22分47秒


そんな想いで、忙しい毎日はただ過ぎて、
いつものように、隅っこで、みんなの邪魔にならないようにしていて。
これが私のポジションなんだ。そんな風に考えていたある日、
また、私はびっくりすることとなりました。

新曲のパート割の発表──

愛ちゃんが安倍さんとのツートップで。
それは優等生の彼女からしたら当然で。

でも、あの人の横はなぜか私。
しかもソロパートまでありました。

なんで、また私なんだろう。
おちこぼれで隅っこがお似合いの私なのに。
愛ちゃんなんかと比べられたら、踊りも歌も
絶対かなわないのに。
惨めな想いをするのは分かりきっているのに。
11 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時23分19秒
それでも、辻さんも、まこっちゃんも喜んでくれて、
そしてなにより、あの人が、頑張ろうね、と笑ってくれたけど、
でも、ほかのメンバーの視線が怖くて、
それは、勘違いなのかもしれないけれど、
私は不安で不安でたまらなかった。

レコーディングではずっと居残りで、何回も何回も撮り直しをして、
ダンスの練習でも、やっぱり一人だけみんなより遅れてしまって。
一生懸命頑張たけど、あの人と二人で踊るところは、やっぱり難しくて。
安部さんと愛ちゃんの二人はは完璧に踊れているのに、
自分のところは、やっぱり彼女についていけなくて、
夏先生に止められて、怒られて。
12 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時23分56秒
まるで、ミュージカルの練習の時と同じでした。
私のせいで、またあの人に迷惑をかけていました。

あの人は嫌な顔一つせずに付き合ってくれたけど、
成長できない自分が悔しくて、
迷惑をかけているのが情けなくて。涙が止まらなくて。
そんなとき、彼女はぽんぽんと頭を叩いてくれて、
頑張ろう、とだけ言って、黙々とレッスンを続けてくれて。

その感触がやさしくて、そして、それがうれしくて、また頑張れた。

気が付けば、いつのまにか踊れるようになっていて、
後ろに下がって踊っているときに、ふっと笑いかけてくれる彼女が、
うれしくて、ミュージカルのときのように、また胸がときめきました。

ミュージカルのときの気持ちは勘違いじゃない。
このまま私が横にいても、いいんですよね?──
13 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時24分31秒


そんなときに、急にあの日がやってきました。
あの人の横にいる加護さんはいつもの明るい雰囲気じゃなくて。
辻さんもおとなしくなって、まこっちゃんはぼろぼろ泣いていて。
それが、事の重大さをはっきりと示していました。

私は、またまたびっくりするばかりで、
自分がタンポポに入ることも、そして、あの人が卒業してしまうことの
実感もまったくわかなくて、
ただ、あの人が、しゅんとしている加護さんを慰めているのを、
遠くから口をぱくぱくとさせて、見つめることしかできませんでした。
14 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時25分03秒
その後も、変わらずに忙しい日常は続いていたけれど、
やっぱり改変の影響はメンバーたちの間に小さな溝を作っていました。

ある日の楽屋、私はそのドアの前で、立ちすくんでいました。

タンポポは音楽性を追求したユニットじゃなかったの?──
──しょうがないじゃん。つんくさんがわるいんじなないよ。
ずっと、ずっと、大切なユニットだったのに──

矢口さんと、飯田さんのため息が聞こえてきて。
それは、どう考えても私のことで。
どれだけ頑張っても、どれだけ一生懸命やっても、
やっぱりおちこぼれは、おちこぼれ。
結局誰にもみとめてもらえなくて。
悔しくて、情けなくて、でも、なにもいえなくて。
15 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時25分37秒
私が楽屋に入ると、飯田さんと矢口さんは何事もなかったように普通にしていて、
それが大人なんだということは理解できたけど、
そして、彼女たちに割り切れない想いがあるのも理解できたけど、
やっぱり動揺してしまって、みんなが怖くて。
その後の収録でも、私はすこしカリカリしてる矢口さんに怒られて。
それで、ますます恐縮して、なにもできなくなって。

それでも、あの人はいつものように平然としていて、
いつも真ん中で、スポットライトを浴びていて。
私があの人のそばにいられるときは、唯一、新曲の踊りのときだけで。
それ以外は私はいつも隅っこから、遠くの彼女を眺めているだけでした。

あの人の横に立っていたことが、夢だったようで、
悲しくて、寂しくて。
しかも、もうすぐ彼女はいなくなるわけで。

もう、私はあそこには立てないのだろうか。
このままおちこぼれのままなんだろうか。

そんな寂しさと、自分の未来への不安が、私を襲っていました。
16 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時26分18秒
タンポポの新曲の収録もやっぱり、
いつもと同じで、何回も撮りなおしで。
石川さんも、柴田さんも、見えないプレッシャーで、余裕がなくて。

それを振り払うために、私も必死になって頑張るだけで。
でも、やっぱり失敗ばっかりで、
それをフォローしてくれる人もいなくて。
落ち込んでも、つらくても、もう、そこにあの人はいなくて。

そんな不安と寂しさに押しつぶされそうになったとき、私は決まって、
あの人の新曲のプロモーションビデオを観ました。
そこには、男役のあの人が微笑んでいて。
ミュージカルのときに、あの人の横に居られたことを思い出すことができて、
それは、現実逃避ということは分かっていたけど、
胸をときめかせながら、何度も何度も見返していました。

でも、あるとき、男役のあの人が微笑んでいる相手は、
当然、あの人自身であることに気付いて。
それがちょっぴりくやしくて、悲しくて。
やっぱり、私じゃダメなんだとさらに落ち込んで。
17 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時27分10秒
結局、私があの人の横に立てるのは、ライブでのわずかな時間だけで、
忙しい日々は、それを楽しむ時間も、惜しむ時間も与えてくれずに、
気が付けばあっという間に9月23日はやってきました。

そして、あの人の横に立てる、たった一つの曲は、
あっという間に始まって。

もちろんあの人には、たくさんの思い出の曲があって、
たくさんのメンバーが彼女の横に立って。
私のことなんて、ほんのこれっぽっちも考えてないかもしれないけど。

でも、私にとっては、この一曲だけで。
そして、これがあの人との最後のステージ。

最後、さいご、サイゴ。

寂しくて、悲しくて、やるせなくて。
せっかくあなたの横に立てたのに。
もう、おしまいなんですか?

そんなことを考えていたら、
その曲はあっというまに終わってしまって、
そのあとは、またいつものように隅っこで踊りながら、
彼女を眺めることしかできなくて。
それは、とても、とても遠くて。
18 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時27分48秒
ライブが終わるとあの人は案の定、泣いてしまっていて、
それをメンバーたちが取り囲んで話していて。
まこっちゃんが、またぼろぼろ泣いていて。
でも、おちこぼれの私はその中に入っていけず、
涙を流すことすらできずに、
ただ、呆然と遠くからそれを見つめることしかできなくて。

そのとき、背中に大きな衝撃を感じて、
よろけるようにあの人の前に押し出されて。
後ろをみると、辻さんが私の背中をおしてくれてました。
19 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時28分33秒
近くで見るあの人はやっぱり綺麗で、オーラがあって。
とってもかっこよくて。
でも、気持ちの準備ができてなくて、頭が真っ白になってしまって、
私はいつものように、ただ口をぱくぱくとしてしまいました。

あの人が、どうしたの?という表情で、私を見ました。
何かいわなきゃ。あの人に、私の想いを伝えなきゃ。
でも、頭は真っ白なままで、なにも思い浮かびませんでした。

そして、なぜか私の口から出た言葉。

がんばってください──

私はなんてことをいっているんだろう。
あの人が頑張っているのは、あたりまえで、
頑張らなくてはいけないのは、
おちこぼれの私なわけで。
情けなくて、恥ずかしくて。
顔がだんだんと赤くなっていきました。
20 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時29分11秒
でもあの人は、ありがとう、と、
私の頭にぽんぽんと、叩いてくれました。

その感触がいつもと同じで、とても優しくて、暖かくて。
ミュージカルや、新曲で、一緒に練習していたあの人との思い出が
走馬灯のように思い浮かびました。

つらかったけど、苦しかったけど、あなたがいるから、頑張れました。
あなたの横に立てたこと、一生忘れません。
21 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月21日(土)13時29分43秒
でも──

もっと、もっと、一緒に居たかった。
もっと、もっと、通じ合いたかった。
そして、もっと、もっと長い間、横に立っていたかった。

なぜだかあの人の顔が、そして周りの景色が、
ぼやけて、にじんできました。

また、この感触を味わうことができますか?
こんな落ちこぼれの私ですけど、
一生懸命頑張れば、いつかまた、
あなたの横に立つことができますか?

言いたかったことが、たくさん頭に浮かんできました。
でも、伝えたい想いとはうらはらに、
ただ、私は相変わらず、口をぱくぱくとさせていて、

気が付けば、ぽろぽろと涙がながれて、止まりませんでした。



おわり。

Converted by dat2html.pl 1.0