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私と彼女の未来日記
- 1 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時19分11秒
- 『今日は大好きなごっちんとの初めてのキスシーン(未遂だけど)
人前でキスなんて恥ずかしいよ。いつも通りできるかな…』
収録前、控え室に一人になった私は、日記をつけていた。
私が2年前から毎日欠かさず、ずっと続けている日記。
私のモーニングの思い出が一杯つまった宝物だ。
- 2 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時19分57秒
- 私は日記帳をめくり始めた。
最近、特に昔の日記を見ることが多くなった。
まるで、ごっちんとの思い出を一つ一つ噛み締めるかのように…
ごっちんの脱退が決まった時、私の日記はこんなだった。
- 3 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時20分27秒
- 『7月28日 今日はハロプロコンサートラストだ!頑張るぞ!』
『7月29日 』
『7月30日 』
『7月31日 嫌だ。ごっちんと離れたくない』
『8月1日 今日会見がある。ずっと来なければよかったのに…』
- 4 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時21分09秒
- ふとページをめくっていた手が止まった。
いつのまにか最初のページにきていた。
日記帳の最初のページ。2年前の8月1日の日記だった。
まだ私たちが加入したばっかりで、上手く話せないでいた頃だ。
でも、私と対照的に、よっすぃーは同い年のごっちんとすぐに打ち解けていた。
プッチモニの加入も手伝って、二人は本当に仲良しだった。
逆に、私は年下なのに先輩で、しっかりしているごっちんが苦手だった。
よっすぃーから、ごっちんのことをよく聞いて、悪い人じゃないっていうことはわかってる。
ごっちんも私が年上なんて気にしてない。
でも、いざごっちんの目の前に立つと、ぎこちなくなってしまう。
- 5 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時21分57秒
- 「ねえ、梨華ちゃん。今度よっすぃーと一緒に遊びに行くんだけど、一緒に行かない?」
「え、ごめん。やめとくよ。ちょっと用があるんだ」
「ふーん。そっか」
「じゃ、また誘ってね」
逃げるように私はその場を離れる。
本当は一緒に行きたい。でも、言い出せない。
こんなやり取りをいつも続けていた。
- 6 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時22分52秒
- そしてその日。
私とよっすぃーは二人で一緒に帰る途中、マックに入った。
偶然、私たちがレジで並んでいるところにごっちんがやってきた。
まさかそこで逃げるわけにもいかないので、私たち3人でご飯を食べることになった。
そして、食事中も二人の会話に相づちを打つだけだった私。
その時、ごっちんが口を開いた。
「ねえ、梨華ちゃん、私って怖い?」
「え?」
急なごっちんの質問に思わずジュースを吹きそうになった。
「だって、何かいつも私を避けてるような気がしてさ」
こんな言いにくいことをズバッと言ってくる辺り、さすがごっちんだなと感心した。
「違うよ。そんなことない。ただ…」
「ただ?」
- 7 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時24分16秒
- ―――――――――
日記にはこう書かれていた。
『初めてごっちんとちゃんと話できた。よっすぃーの言うとおり、いい子だな。惚れちゃったらどうしよう…なんちゃって』
あれから2年。
あの時の私の予感が的中したとおり、私とごっちんの関係はそんな感じになっていた。
でも、もうすぐ離れなければならない。
ごっちんの決断なんだから、仕方ないよ。
大好きな人が、自分で決断したことなんだ。
きっとごっちんも私と離れるのはつらいに違いない。それでも、ごっちんは決断したんだ。
私が駄々をこねても、ごっちんを困らせるだけだよ。
だから、私は泣かないよ。笑顔でごっちんを送り出してあげたいから。
だけど、そう思えば思うほど、涙で視界がぼやけてきた。
もう何度一人で泣いていただろう…いくら泣いても、泣き足りなかった。
- 8 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時24分46秒
- 「梨華ちゃん、もうすぐ収録始まるよ」
控え室のドアが開き、ごっちんが入ってくる。
「わかった。先行ってて。すぐに行くから」
振り返らずに私は答える。
ごっちんに涙を見られたくなかったから。
私は急いで日記を片付け、涙を拭いてからごっちんの後を追う。
ごっちんは階段を上る途中だった。
- 9 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時25分21秒
- 「ねえ、梨華ちゃんは緊張してない?」
「うん、ちょっとしてる。ごっちんは?」
「私もしてる。いざ人前でやるとなると、やっぱ照れるよね…」
そう言いながら、ごっちんは私に軽く口づけた。
「もう、ちゃんとやる時は言ってよ」
怒りながらも、今度は私がごっちんに口づける。
そして、私たちは顔を見合わせて笑った。
「この調子でいこうよ。普段どおりの私たちで」
「うん」
いつの間にか緊張も無くなっていた。
二人でスタジオに向かって走り出す。
- 10 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時27分17秒
- 「ねえ、来年の8月1日も、こうしてキスできるかな?」
走りながら、私はごっちんに囁いた。
ごっちんは頷く。そして、こう言った。
「もちろん、場所は…」
二人の目線が交差する。
大きく息を吸い込み、二人の声が一つになる。
「「原宿で」」
- 11 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時28分06秒
- ――――――――――――
『8月1日 未来の私へ。今日はごっちんとの約束果たせましたか?
ごっちん、忘れてたら許さないぞ!!』
- 12 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月18日(水)23時28分38秒
- 〜fin〜
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