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なつのおわり
- 1 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時35分19秒
「一人でしか見せないものや見れないものはたくさんあると思うので
自分なりに表現していきたいなと思って…頑張ります」
洪水のようなフラッシュに目が眩む。
目の前にいる彼女は臆することなく用意されたセリフを垂れ流している。
ヒョーゲン。笑える。そんな言葉普段絶対使わないくせに。
映画の制作発表のはずが一転して卒業会見。
こういう事務所のやりかたにも感心しちゃうよ。感心。ていうか完敗だね。
無邪気な五期メンが泣きじゃくり始めた。つられて何人かも泣き始める。
彼女はふいにこっちを振り返ると綺麗な涙を一滴だけ零した。
随分綺麗に泣くんだね。
いつから。いつからそんなふうに大人みたいに泣けるようになった?
あたしは。
泣けなかった。
泣かないよ。ごっちん。
- 2 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時36分49秒
- ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
さいたまスーパーアリーナで行なわれたライブの日。
二万五千人のお客さんの歓声はまるで嵐の中にいるみたい。
地元でのコンサートだからいつもより少しだけ張り切っていたあたし。
ごっちんの様子がおかしいってことに気づいたのは2公演目の夜の部のときだった。
あきらかにやる気が無い。笑顔がひきつっている。
プッチの待ちの時、舞台袖でさりげなく聞いてみた。「なんかあった?」って。
ごっちんは自分から悩みや愚痴を言い出すタイプじゃないから。
あたしもそんなタイプだからよくわかる。
言いたくないわけじゃなくって相手のことを考えると言えなくなっちゃうんだよね。
いつもならふにゃーって顔崩して「よっすぃーっ」て
泣きついてくるはずのごっちん。今回はちょっと様子が違う。
「べつに…」
なんて呟いてあたしから目を反らした。
- 3 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時37分34秒
- あたしはなんとなくいつもとは違う不安を感じたせいか
「だっておかしいじゃんごっちん」なんて、つい食い下がってしまった。
いつもなら絶対そんなシツコイことしないのに。
ごっちんはふっと無気力に笑って、低い声で呟いた。
「あのさあ、あたし、娘。やめるから」
「…は?なにゆって…」
「で、ひとりでやってくの」
「え…。それもう決まってるの?なんで?」
「だってひとりでやりたかったんだもん、ずっと」
「そんな。突然そんなこと…」
「ずぅっと考えてたよ。ごとーは。やっとだよ。チャンス到来ってやつだね」
「…いつから」
「だからずっと。よっすぃーたちが入ってくるずーっと、前から。最初から」
最初から。その言葉があたしの胸をえぐった。
それに。どうしてあたしの目を見ないの?ねぇ。
はぁ。そいじゃ頑張って。もごもごと呟いてあたしはごっちんから目を反らした。
タンポポの曲が終わってあたしたちはスタンバイする。
- 4 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時38分42秒
- 頭の中がぐるぐるする。
ショックだった。
むかついた。
わかってる。ごっちんとあたしたちが違うことなんて。
ごっちんが前に進んでいくべきだってことも。
けどあんな喧嘩ごしな言い方はないだろ。
あたしはごっちんのことメンバー、先輩とか言う前に親友だと思ってたよ。
なのに。なのにさ。
イントロがはじまる。
「プッチモニいっきまーーーす!!」
二万五千人の歓声はもうあたしの耳に届かない。
隣で踊るごっちんのことが気になって仕方ない。
なんだよ。なんなんだよ。ほんの少しだけ嫉妬心も、あったのかもしれない。
とにかくあたしは頭に来てしまって気がつかなかった。
口止めされてる筈の事をごっちんがあたしに伝えたこと。
あたしにだけ、伝えたこと。
- 5 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時39分39秒
- 「なんか最近ごっつぁんやる気あるよねー」
ハロモニの収録後、矢口さんが嬉しそうにはしゃいでいる。
誰よりも後輩想いな矢口さんはあたしたちの微妙な変化にもとても鋭い。
「よっすぃーは一体どうしちゃったわけ?」
え。あたしっすか。なにがっすか。
「その…。だいじょうぶ?」
ああ。そっか。ありがとう矢口さん。あたしはムリヤリ微笑んだけれど
それは頬の筋肉がひきつったくらいにしか見えなかったかもしれない。
最近のあたしは上手く眠ることが出来なくなっていた。
手当たりしだいにお酒を飲むことで自分のバランスってやつをぎりぎりで保っていた。
自分のこれからのこと、ごっちんのいなくなるモーニングのこと。
考えたくないのに考えてしまうから、ついついお酒に頼ってしまう。
これって17歳のすることじゃないよなぁ。しかも一応アイドルだってのに。
- 6 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時40分48秒
- その結果あたしは不規則な生活のせいもあってぶくぶく太った。
メンバーの誰もが気にしてるのが伝わるんだけれど誰一人はっきり言えないみたい。
その視線と雰囲気がよりいっそうあたしを苛つかせて。
シャッフルユニットの衣裳がまたキツかった。
衣装合わせの時、自分で鏡見て吹き出しちゃったぐらい。
「うわー。よっすぃー妊婦さんみたい」
あ、やっぱり?ってひっでぇーなー。あ…。
鏡越しに目が合う。そうだ。こいつだけは違った。
前ならきっと嬉しかった。そうやってまっすぐな目をして
思ったことまっすぐ言ってくるところ好きだった。
でもこの時のあたしはごっちんの表情に
本当は無かったはずの嘲笑めいたものを感じてしまった。
- 7 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時41分35秒
- かぁっと耳が熱くなる。
そりゃーあんたはいいよね。
娘。でもシャッフルでもセンターだしね。おまけにソロでデビューだもんね。
全く関係ないそんな汚い感情があたしの胸の中を渦巻く。
あたしってこんなに嫌なヤツだったかな。
「あんたに言われたくない」
口に出した瞬間、それが思いのほか大きな声であることに自分でも驚いた。
楽屋のなかが静まり返る。
「なぁに。八つ当たり?」と
笑顔を浮かべるごっちんから逃げるように楽屋を飛び出した。
あたし、逃げてばっかりだ。
でもそうでもしないとあたしは大声で叫んでしまいそうだった。
なんで置いてくんだよ。ばかやろうって。
…あたしはどこまでも、子供だ。
- 8 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時42分31秒
全ての収録が終わって事務所に戻る。
迎えの車を待っている時、梨華ちゃんが
「よっすぃー。今日うち来ない?あのね美味しい紅茶あるんだー」
なんて甲高い声であたしを誘ってきた。
ごめん、今日はちょっと…って言いかけて気がついた。
梨華ちゃん目が少しおかしい。そうだ。しばらく無かったんで忘れてたけど
梨華ちゃんが紅茶であたしを誘うときって
必ずと言っていいくらい、彼女が何か問題を抱えているときだった。
何を悩んでるのかは知らないけれどあんまり気分じゃないなーと思った。
けど、今のあたしは同期の梨華ちゃんに大きな秘密を抱えていて
少し罪悪感もあったせいかなんとなくその誘いを断れなかった。
- 9 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時43分20秒
「ひさしぶりだねー。よっすぃーここ来るの」
「そだね」
梨華ちゃんの部屋のソファにバッグを置いて、直にフローリングの床に座ってあぐらをかく。
いつものクセだ。いつもこのソファを占領するのはあいつだから。あいつだったから。
壁に貼ってある写真の一枚に目がとまる。
梨華ちゃんとごっちんとあたしが顔をぐしゃぐしゃにさせて笑ってる。
3人ともテレビや雑誌では見せない笑顔。あはは、ひっでぇカオ。
わりと仲良くやってたよね、あたしたち3人。
最初はあたしとごっちんが仲良くなって、それから梨華ちゃんも加わって。
喧嘩もした。たくさんした。それでもさ。
もうあんなふうに3人で笑う日は来ないのかな。
鼻の奥がツンとして慌てて写真から目を反らした。
梨華ちゃんは口実の紅茶を律儀に入れてカチャカチャと運んでくる。
「ハイどうぞ」
「ありがと」
紅茶をひとくち口に含む。…普通のダージリンじゃん。やっぱりね。
- 10 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時44分09秒
- 「で、どうしたの?」
あたしの唐突な質問に梨華ちゃんはいきなり俯いた。
肩が小刻みに震えている。うわこりゃけっこう重症っぽい。
「どうしたの、梨華ちゃん」
テーブルの上に涙がぽたぽた落ちていくのをあたしはしばらく見つめていた。
「あの…あのね」
「うん」
「よっすぃーには話してもいいかなって」
「うん」
「あたし、聞いちゃったの」
そのあと梨華ちゃんがぽつりぽつり話し出した話の内容は
あたしの頭をガンと強く殴りつけてくれた。
- 11 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時44分51秒
『…留守番電話サービスセンターに接続します…』
くっそ。何度掛けてもつながらない。もう寝ちゃってるのかな。
時間はすでに夜の2時。さすがに自宅には電話しづらい。
もう一度リダイヤルを押して
「あ、あたし。ひとみ。ごっちんち近所の公園にいるんだけど。
会えないかな。ずっと待ってるから」
早口でそれだけ言って切る。
なんて我侭な行動なんだろう。わかってるけど今会わないと。
あたしは壊れてしまう。きっともう壊れ始めている。
どうやって梨華ちゃんちからここまで来たんだっけ。
がむしゃらに走って走って
タクシーに飛び乗って
走ったせいで胸が苦しくて
あいつの本当の気持ち気づいてあげれなかった
自分が悔しくて情けなくて
あの時きっとごっちんは言ってた。
助けてって言ってた。
- 12 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時46分47秒
どれくらいの時間あたしはベンチから動けずにいたんだろう。
ふいに暗がりから聞こえたぶっきらぼうな声に我に返った。
「…何やってんの。こんな時間に。ゲーノージンのくせにまずいでしょ」
ごっちんの姿を見た瞬間、あたしは泣いていた。
自分だってなんで電話じゃなくっていきなり来てんだよ。
しかもそんな短パンにつっかけサンダルで。
髪だってぐちゃぐちゃじゃん。
- 13 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時47分20秒
- 涙が止まらない。聞かなきゃいけないこと謝りたいこといっぱいあるのに。
「ひと呼び出してなに泣いてんの」
「…ごっち…んは」
「ん?」
「ごっち…んが娘。をやめ…るのは…」
「…」
「…じぶんの…いしじゃ…」
「言わないで」
ごっちんの声が一瞬固く強張った。
けどすぐに取り繕って明るい声を搾り出す。
「あは。誰に聞いたの?」
なんで笑ってんの?
ねぇなんで笑えるの?
「梨華…ちゃんが…会議室の前通ったときに聞こえちゃったって…」
あーかっこわるい。あたしの声は既に涙声だ。
- 14 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時47分59秒
- ふぅー、と大きく息を吐いたごっちんは
あたしのとなりに腰を下ろすとうーーんと伸びをした。
風に乗って微かにシャンプーのにおいがする。
いつもと同じ甘い香りなのに切なく感じるのはどうしてだろう。
ごっちんはひとさし指で髪をくるくるしながら話し出した。
「…そっか。事務所不注意すぎるっつーの」
「ほんと…なんだ」
「うーん。まああれだね。大人の事情ってやつはいろいろあるけどさ。
それでもあたしひとりでやりたかったってのは嘘じゃないよ。だから嬉しいぐらいだもん」
そう言ってにっこり笑うごっちんからあたしは目を反らした。
だってそれならどうして。
ごっちんの声は震えてるの。
どうしてその目は赤いの。
それに。
それに。
気づかなくってごめんね。目を反らしててごめんね。
いつのまに。
ねぇ、いつのまにそんなに痩せてた?
- 15 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時48分41秒
- 強がりな性格だってのは知ってたけどここまでだとは思わなかった。
あたしたちは似てる。やっぱり似てる。
あ。いや、痩せたり太ったりってのはね。逆だけどもさ。
こんなときなのにあたしは笑い出したい衝動にかられた。
わかった。わかったよ。何も聞かないから。
謝ったりもしないから。だからいっこだけ教えて。
「ごっちん。…ごっちんは娘。に入って良かった?」
「うん。よかった」
「そっか…」
「ねぇ。よっすぃー?」
「うん?」
「頑張れよ」
「…うん」
「負けんなよ」
「……うん」
なんであたしが励まされてるんだろう。あたしが言いたいこと全部先に言いやがった。
こんなときだけ先輩ぶっちゃって。かっこわるいけど涙止まんないや。
ごっちんの声の震えがひどくなる。
- 16 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時49分27秒
「それから…忘れないで…よ」
「…うん。」
「あたしと…よっすぃーがいた娘。…それに…プッチ」
「…うん。忘れらんないとおもう。強烈すぎて」
「なにそれー」
顔を見合わせて笑う。泣きながら笑う。
「梨華ちゃんなんつってた?」
「泣いてた。ずっと」
「そっか」
「けどそういえばほったらかして来ちゃった」
「うわー。ひでぇよっすぃー」
「だって…」
「よっしゃ。行きますか」
ごっちんは勢いよく立ち上がって振り返ると、にやりと笑った。
- 17 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時50分03秒
-
まだ泣いていた梨華ちゃんを引っ張り出して
マンションの前に待たせておいたタクシーに乗せる。
中にいたごっちんを見て
声を上げてふぎゃーと泣き出した梨華ちゃん。
ごっちんは照れくさそうににゃははと笑った。
「どちらまでー」
タクシーの運転手さんのだるそうな声にごっちんとあたしの声が綺麗にハモる。
『「海!」』
えーあしたもはやいよへんそうだってしてないし
まねーじゃーさんにおこられるよーふがふがががが
梨華ちゃんのぎゃあぎゃあ喚く口を両脇から二人でふさぐ。
- 18 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時51分01秒
- お台場の海は既にうっすら明るくなりはじめていたけど
さすがに人気は無かった。
うひゃーと叫んで波打ち際へ走る。
サンダルを勢いよく脱ぎ捨てるごっちん。
もぉーって言いながらきちんと並べ直す梨華ちゃん。
「あたしは娘。がだいすきだーーー!!!」
海に向かってごっちんが叫ぶ。
「だいすきだーーーーー!!!」
あたしが叫ぶ。
「あ、あたしもぉーー!!」
梨華ちゃんの声が裏返ってあたしとごっちんは大笑いする。
ごっちんなんか砂の上に転がって咳き込んで笑ってる。
「ひっどーい。なによーもう」
そう言った梨華ちゃんも笑ってる。
- 19 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時51分37秒
- あの写真の3人がココにいた。
大丈夫だ。あたしたちは変わらない。
砂のうえに座って黙りこんで、薄暗い海を見つめた。
ゆっくりと朝が近づいて、あたしたちの顔を照らす。
「ごっちん。負けないでね」
梨華ちゃんがぽつりと呟く。
「おーぅ。ごとーはやるよ。絶対負けねぇ」
わざとおどけるごっちん。
そんなごっちんを見つめる梨華ちゃんの表情はとっても優しくてすごく綺麗だった。
いつのまにか、おねえさんじゃん、梨華ちゃん。
「じつはけっこう張り切ってるんだよねあたし」
ごっちんはまっすぐに海を見つめて言った。
その言葉は嘘でも強がりでもないだろう。
ごっちんがひとりでやってみたかったってのも
もともと本当にあった気持ちかもしれない。
- 20 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時52分25秒
- あたしはごっちんがソロデビューして初めてひとりで
Mステに出たときのことを思い出した。
普段見せない強張った顔がブラウン管に映る。
あたしは梨華ちゃんや他のみんなと事務所でそれを見ていた。
マイクを持つ指先が震えている。
ごっちんがんばれ。ごっちんがんばれ。
あたしたちは祈るような気持ちで見つめていた。
辻加護が急遽、ミニモニの衣裳で応援に駆けつけて
ごっちんの表情がやわらかくなる…やっと笑った。
よく見ると指の震えも止まってる。
それを観たときあたしはくすぐったい様なあたたかい気持ちになった。
なんだかすごく嬉しかった。
- 21 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時53分03秒
- 「愛のバカやろう」のイントロがはじまったときあたしは圧倒された。
さっきまでの彼女の狼狽ぶりはなんだったんだろう。
テレビの中の彼女はいつもより何倍も輝いていた。
ごっちんの体全体から何か物凄いパワーが溢れ出ているのを感じた。
大げさじゃなくそう思った。
こいつはすげー、って。
あたしはすげーやつと友達だなって。
その時からなんとなくわかってたのかもしれない。
こんな日が来ること。
- 22 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時53分42秒
- いろんなことが浮かんでくる。
初めて会った時、深く被った帽子から覗いたごっちんのぶっきらぼうな顔。
初めてよっすぃーって呼んでくれたときのごっちん。
市井さん、中澤さんの脱退のとき子供みたいに泣いていたごっちん。
クールだって言われるたびに口をとんがらかせていたごっちん。
いろんなごっちんの笑顔、泣き顔、が
ぶわーーーって浮かんできて涙と一緒に溢れ出す。
隣りに座ってる梨華ちゃんも泣き出す。
ごっちんも泣き出す。
泣いちゃえ。ごっちん。無理すんな。
- 23 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時54分25秒
- いっつも一緒だったね。
ごっちんがいたからあたしは娘。に溶け込めた。
同い年のかっけぇ先輩がいたから
あたしはあたしでいられたよ。
深呼吸する。
ありがとう。ごっちん。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
口には出さないよ。
だから、もう泣かない。
- 24 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時55分21秒
- ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「23日がくるのがイヤなんですけど…それまでは後藤も
モーニング娘。の一員なので応援よろしくお願いします…」
コメントが終わる。さすが矢口さん、泣きながらもいい先輩っぷり。
梨華ちゃんと目が合った。あの時の表情だ。静かに微笑んでいる。
梨華ちゃんほんとに綺麗になったなあ。
前ならぴゃーぴゃー泣いてたはずの梨華ちゃんの笑顔。
ひとつ年上の同期の彼女をあたしはなんとなく誇りに思った。
半年後の圭ちゃんの卒業、それにユニットの再編。
これでもかっていう事務所の仕打ちにあたしたちはもう笑うしかなかった。
くっそーって思った。ふざけんなって思った。泣きたかった。
飯田さんや矢口さん、それに圭ちゃんの気持ち考えると泣けなかったけど。
それでもあたしはやっぱり思う。
娘。になれてほんとによかったって。なんでだろうね。
悔しいけど本当にそう思う。そしてみんなもそう思ってる。
それは事実だから。もうしょうがないっす。
時間はとまんねっす。よーちぇけらっちょー。
- 25 名前:第九回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)14時56分04秒
2002年、9月23日、横浜アリーナで。
後藤真希がいたモーニング娘。は終わる。
タンポポが終わる。プッチモニが終わる。
あたしたちの夏が終わる。
あたしとごっちんの夏が終わる。
その時、あたしたちはきっと、また少しだけ大人になる。
未来は笑っていられるように。強く笑っていられるように。
これからのモーニング。
これからのプッチ。
圭ちゃんとごっちんに見てもらうために。
よっしゃ、やってやろう。リーダー、安倍さん、圭ちゃん、矢口さん
梨華ちゃん、のの、亜依、小川、紺野、高橋、新垣。
そして。
がんばろうぜ、ごっちん。
がんばろう、あたしの愛する仲間たち。
おわり
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