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屋上とごとーさんと風と

1 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時40分46秒
 今日の仕事のスケジュールは雑誌のインタビューだけ。
 せやからこの後な、ごとーさんとアイス食べに行くんや〜♪
 
 あんな、秘密にしとってな?実はウチごとーさんのこと好きなんや。
 ほんでな、ほんでな、ウチこの前ごとーさんにな、
 ずぅっと一緒におってくれる?ってゆーたらな、
 ごとーさんな、うんってゆーてくれたんやで!
 ええやろ〜♪

 ま、それは置いといて――。
 
 集合時間になってみんなが楽屋にそろうと、
 マネージャーさんから仕事が終わった人から
 帰ってもええって言われた。
2 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時41分51秒
「…というわけで、明日は10時集合ね。
 分かった?特に加護と辻!」

「「は〜〜い」」

 分かっとるっちゅーねん。子ども扱いすんなや!
 これでも一応がんばってんねんで?…いろいろと。
 ののはどーなんか知らんけどな。

「モーニング娘。さーん。時間でーす」

 スタッフの人の声や。
 え〜と確か順番は…9番目やな。
 よっしゃ!いっちょやったるでぇ!
3 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時42分28秒
   ―――――――――――――――――
     ――――――――――――
       ――――――――

 ふぃ〜〜。インタビューだけゆーても、
 結構疲れんなぁ〜〜〜。
 でもアイスとごとーさんのためや!こんなん屁でもないで〜!

 楽屋のドア開けるとウチを待っとるのの…と
 4次メンバー以外のみんながイスに座っとる…?

「あれ〜?なんでみんな帰ってないんですか〜?」

 頭の上におもいっきりテレビ…やのーて、「?」を
 浮かべとると、

「ちょっと皆に話があるからさ、まだ帰んないでくれる?」

 って飯田さんに言われた。
4 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時43分03秒
 ウチは返事すると、とりあえずののの隣に
 座った。

「(はなしってなんれすかね)」

「(なんやろな?)」

 しばらくして、楽屋にはメンバー全員がそろぉた。
 でも飯田さんはしゃべろうとせぇーへんかった。
 また交信でもしとるんやろか?

「…カオリ、話ってなんだべ?」

 安倍さんが困ったような顔して飯田さんに聞いとる。

「うーんと…あのね?…その…」
5 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時43分41秒
 なんか飯田さん、泣きそうな顔しとるなぁ。
 って、あぁ!!泣いた!飯田さん泣いてもーた!

「ちょっ…どーしたの?!かおり!」

 おばちゃんが必死で飯田さんあやしとるわ。
 あ、矢口さんと安倍さんオロオロしとる。
 ごとーさんは…あれ?笑っとる?…っちゅーより、
 微笑んどるってゆーた方がええんかな?
 でも…なんか悲しそうやなぁ…。

「…ごめん、カオリ。やっぱりさぁ
 あたしから言わなきゃいけないよねぇ。こーゆーことって」

 ?…なんの話してんの?ごとーさん。

「ごめんね…ヒック…後藤…ごめん…」

「アハッ。いーのいーの」

 ごとーさんは飯田さんにアリガトってゆーた。
 っちゅーか、なんなん?
6 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時44分14秒
「ね、ねぇごっちん。なんなの?一体…」

 ウチが一番聞きたかったことを矢口さんは聞いてくれた。
 ナイスや!矢口さん

「実はね、ごとーモーニング娘。やめるんだよね。
 ごとーの誕生日の9月23日に」

 みんなはボーゼンとしとった。
 そんで…ウチは頭ん中が真っ白になった。
7 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時44分51秒
「なんで…やめるの……?」

 よっすぃ〜…声が震えてんで。

「あのね実はね、前からソロだけで活動っていう話が
 出てたんだ。でもさぁ、急にそんな事言われても
 困るじゃん?だから考える時間もらってたの。
 で、やっと決心着いたんだ」

 …ごとーさん…なんでそんな笑っとるんですか?
 なんで…なんでウチの顔見てくれんのですか?
 なんで…ナンデナン…?ゴトウサン―――。

「加護っ!!」
8 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時45分32秒
 気がついたらウチは楽屋から飛び出しとった。
 さっきの声はおばちゃんやろうなぁ。

 ろうかを走り抜けて、つきあたりの階段
 を駆け上った。
 そんでドアを開けるとそこは屋上やった。

 フワッ
 
 一歩ふみだすと、なんかウチを包んでくれるかのように
 風が吹いてきてた。その感触は柔らかくって…
 そんでもってなんか優しい感じやわ……ええ匂いもする。
 ―――――まるで…
9 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時46分05秒
「ごとーさんみたいやぁ…
 ウチは風のごとぉさんを抱きしめた。
 でも、ごとぉさんは抱きしめてくれひんかった。
 でもなぁ、なんか暖こぉて、こらえとった涙があふれ出よった。
 せやからウチはごとぉさんから離れた。

「なんでや…んぐっ…ずぅっと一緒におるってゆーたやないか…
 ごとーさんの…ヒック…ごとーさんのアホぉ…!!」

「ひどいなぁ。ごとーはアホじゃないぞ〜」

「えっ!?」
10 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時46分40秒
 振り向いたらドアんとこで、微笑んどるごとーさんが立っとった。
 追っかけてきてくれたんやろか?
 ごっつぅうれしいわ…でも…なんでやろ…悲しぃなぁ。

「立ち話もなんだし、とりあえずさぁ座ろ?」

 ごとーさんはウチの前を通りすぎると、古ぼけたベンチに座った。
 右隣をポンポンたたいとる。ココに座れってことやろーな。
 しゃーないから、ウチは渋々座った。
11 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時47分26秒




 …あのぉごとーさん…。自分から話しかけてきといて
 しゃべりださんっちゅーんはどーゆーことですか?
 しゃーない、ウチから…

「……ごとーさん…なんでやめてまうんですか?」
 一緒におるってゆーたやないですか…」

「………」
12 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時48分00秒
「ウチが飯田さんのゆーこと聞かんから?ウチが
 悪いことばっかするから?うちがワガママゆーから?
 ウチの…ふぇっ…ウチのこと…ぅぐっ…キライになったから…?」
 
「…ふふっ。加護…ごとーと同じこと言ってるねぇ」

「ふぁ…?」

「大丈夫だよ。ごとーと加護のオフが重なった日とかにさ、
 ごとーの家、泊まりに――」

「でも!でもいっつも一緒におられへんやんか!」

「……いちーちゃんから卒業するって聞いたときさぁ
 ショックでごとーもここまで走ってきたんだよねぇ」
13 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時48分32秒
 ごとーさんがウチの顔を見て「あはっ」て笑ぉうた。
 でもウチは笑い返さず、ごとーさんから顔を背けた。
 っちゅーか、なんやねん。急に話変えよってからに…。

「そんで、いちーちゃん追いかけてきてくれてさぁ
 うれしかったなぁ。…でもさぁ、よ〜く考えたら
 ごとーが勝手に楽屋飛び出したから、追いかけてきたんだよね。
 そう思ったらさぁ…悲しくなっちゃった」

 あ、ウチもや。ウチもそれと同じ感じになったんや…。

「でね、ごとー加護と同じこと聞いてたなぁ…

 『いちーちゃんはごとーのこと嫌いなんだ!!
  だから娘。やめるんだ!!』
 
 ってね」

「……」 
14 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時49分04秒
「でもごとーは、いちーちゃんのこと誰よりも好きだから…
 夢を叶えてほしかったからいちーちゃんと離れられたんだぁ」

 ごとーさん…目は笑ぉてない…。
 まだ吹っ切れてないんかなぁ…。

「…あの…」

「加護はごとーのこと好き?」

「…好き…」

「ごとーも加護のこと好きだよ?」

「………」

「ごとーさ、みんなのために歌いたいんだ。
 それがごとーの夢。加護はごとーに夢を叶えてほしくないの?」
15 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時49分34秒
 …叶えてほしいに決まっとるやん。ごとーさんのアホォ…。

「…叶えてほしい…」

「じゃあさ―――」

「でもいやや…ごとーさんと…離れとーないよぉ…
 ごとーさん…ウチ1人にせんといてぇ…ウチ…うぇっ
 …ひとりぼっちはいややぁ…さみしぃんはいややぁ…」

「加護…」

「ごどぉーざぁん…行がんどいでぇ…」

 フワッ
16 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時50分10秒
「あ…」

 あったかい……あぁ、ごとーさんギュッてしてくれてる…。
 さっきの風みたいで気持ちええなぁ…。

「加護は1人じゃないよ?
 なんでひとりぼっちなの?」

「…んぐっ…」

「みんながいるじゃん。
 辻でしょ?よっすぃ〜に梨華ちゃんにぃ、
 高橋、紺野、小川、新垣。
 んでぇ、やぐっつぁんになっちに圭ちゃんにカオリ。
 あはっ。いっぱいいるじゃん!」

「…うん」
17 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時50分49秒
「だからさぁひとりぼっちだなんて言っちゃだめだよぉ?
 みんな悲しんじゃうからさぁ」

「でも…ウチ…」

「あはっ。加護は甘えん坊だなぁ。
 子どもみたい。あ、実際子どもなんだけどさぁ」

 ズキッ

 子ども?ウチが?
 違う…ウチは子どもやない…。
 でもウチ甘えとる…ワガママゆーとる…。
 困らせとる…


                        
                      
 ―――ごとーさんを?
18 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時51分23秒
 好きやのに…ごっつぅ好きやのに困らせとる…。
 ………あかん…ウチだめだめやな。
 ごとーさんの気持ちも考えんと…何やってんねん。

「加護?」

「えへへ…ウチ演技上手やろ?ごとーさん騙されたぁ?
 …ウチが大好きなごとーさんのこと困らすわけ無いやん。
 子どもやないんやし。それにはじめっから見送る気やったよ?
 『また会う日までぇ〜』ってな!」

 ウチは溢れ出そうになる涙を必死で抑えて笑った。
 ごとーさんは一瞬、何もかも分かりきっとった表情を浮かべた…ように見えた。
 だってな、気付いた時にはごっつぅ笑っとったんやもん。
 見間違えやったんかなぁ?

「あはっ!じゃぁ加護に、ごとー様から特別に
 プレゼントをあげよう!はいっ!
 ごとーの胸に飛び込んでおいでぇ〜!」
19 名前:第9回短編バトル 投稿日:2002年09月17日(火)11時52分28秒
 ごとーさんは両手をバッと広げた。満面の笑みで。
 あはは、何ゆーてんねんごとーさん。
 手ぇ広げても意味ないで?今、ウチ子どもやないってゆーたやろぉ?
 そないなことできるわけないやろぉ!
 まったく…人の話ちゃんと聞いとったんかぁ?この人はぁ。

 ……でも…でもな?…最後に1回ええ…?
 甘えるのは…今日が…今日が最後にするから…
 だからええよな?今日だけは……


 今だけは…。


 ごとぉさんは、ウチらを包み込むようにに吹いとった。
 ウチらの絆を深めるように……ウチらの心を繋げるように……
 ずぅっと…ずぅっと…永遠に…。

 
  〜fin〜
 

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