Live=Love

1 名前:ツースリー 投稿日:2006/03/19(日) 22:13
前スレが容量いっぱいになってしまったので、話の途中ですが、新スレを立てさせていただきました。

前スレ お隣さんの思い出
ttp://m-seek.net/cgi-bin/test/read.cgi/dream/1123494185/

吉柴を中心に書かせていただきたいと思います。
またお付き合いいただけたらうれしいです。
2 名前:ツースリー 投稿日:2006/03/19(日) 22:19
前スレ更新分>645〜673でちょうど第二話になります。

>前スレの643 名無飼育さん さま
いつもありがとうございます☆そうですね…今回は大人な感じですw
(O´∀`)<もう大人だYO!
引き続きアダルト吉柴どうぞよろしくお願いしますw

>前スレの644 名無飼育さん さま
いやいやいや!!こちらこそありがとうございます〜♪
川σ_σ||<22才の大人だミュン エッヘン
がんばって大人っぽく書きたいと思いますwまたよろしくお願いします〜
3 名前:TETRA 投稿日:2006/03/20(月) 01:04
OH!
久しぶりに来たら新作&新スレになってる!

今回もメッチャ引き込まれました!
タイトルからして、まさかよっすぃ〜は……なんか?
って思ったけどドーやら違うみたいですw
まだドーか分かれへんけど…
いや、違うと思っとこ!
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/20(月) 15:00
前スレ643でした!ワラ
ビックリしましたwハケーンできて一安心ですww

交信お疲れ様です〜
・・・・・・続きが!続きが!!(謎
次回も楽しみにしてます〜(´∀`*)
5 名前:名無し吉柴 投稿日:2006/04/12(水) 01:48
どうも。ツースリーさんの大ファンです!いつも見てます!ツースリーさんの小説大好きです!!!今回の物語もドキドキしながら楽しみに見ています。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/22(土) 01:38
待ってます。待ってますよー!
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/25(火) 23:33
楽しみに待ってます!!
あ〜続きが気になる!!
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/26(水) 19:35
大好きです。
いつまででも、待ってます。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/04(木) 20:21
待ってます!
10 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:07



赤く色づいた頬を、痛そうにさすりながら。
それでも彼女は笑顔で起き上がった。

屈託のない笑顔。
昔のあの人とはまるで、別人のよう。


突然の再会に。
私はこんなに驚いて、戸惑って、動揺しているのに。
あなたは平然と、優しい微笑を浮かべる。


…何を考えているんだかわからない。

そんなところだけ、結局あの頃のままで。


「…どうして…?」
「え?…どうして…って?」


質問に質問を返す彼女に。
…なにを聞きたいのか、自分でもよく説明できそうになかった。
だってありすぎて、どうしてって、思うことが。


…どうしてあの日、突然いなくなったの?
どうしてそんなふうに変わったの?なにがあったの?
そしてどうして…


…どうしてまた…私の前に現れたの…?



11 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:08


それ以上何も言わない、言えない私に彼女はすこし困った顔をして。

それとなく、左の手首を、時計を、見た。


「…あー…ごめん、その。うち今…ちょっと急いでて…用事があるんだ。
もう時間なくて…だから、その。」
「…ふぅん…」


露骨に、嫌な、不機嫌な声が。
私からにじみ出た。

「…デート?」
「まさか。…でも…遅れるわけにいかないからさ…ごめん。」


信じられない、耳を疑いたくなるような言葉。
あなたが、時間を気にしているなんて、約束を、守ろうとしてるなんて。


あの頃は、…私のときは。
さんざん待たせたくせに、そして、どんなに待っても…来なかったくせに。


…そんなに大切な用事?その用事とあなたが変わったことには…何か関係があるの?



12 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:10


問いただしたかったけど、そのための言葉を、気持ちを、
すぐに整理できそうにはなくて。

心を落ち着かせる、時間が少し欲しかった、だからちょうど都合がいいと思った。


「…また、この駅に戻ってくるんだよね?帰り。それまで、待っててもいい?」
「え?!んな、わ、…悪いよ、何時間かかるかわかんないし…」
「…別に、私は平気だよ。…慣れてるから。」
「………」


正確には慣れてたから、かな。


嫌味っぽく、わざと聞こえるように言ったけれど。

でも、本当に、本当にそうだったんだ。
あなたを何時間も、待つことなんて当然だった。


あなたに会えるそれ以外の方法を、私は知らなかったし、
あなたも教えてくれなかった。


そんなあの頃の、昔のことを、今の彼女はちょっとは悪かったと、
反省してくれているのだろうか。


苦い顔を見せて。
視線を落とし、口を開いた。



13 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:11


「…わかった。でも、何時になるか、ほんとわかんなくて…」
「うん。大丈夫だよ、気にしないで。」
「いや、気になるよ。だから…駅で、外で待っててもらうのは…やっぱ悪いから…」
「…いいって言ってるのに…」
「だから、さ。」


すると彼女は急に顔を上げて。
私を見つめた。
…それはあの頃みたいな、冷たさのない。
優しい、切ない瞳。


―――まるで許しを乞うような。


「…用事、済んだら…うちが…あゆみに会いに行く…家に、行っても…いい?」


…二年前。
もう、二度と私に会いには来ないと言った人だ。
この駅にも、そして家にも来ないと。


嘘つき、じゃあのときのあのセリフは、この二年間はなんだったの、なんて。
今の彼女に怒鳴り散らして、怒りをぶつける権利も、きっと私にはあるんだろうけれど。


なのに、答えはやっぱり決まってる。


「…いいよ…」


彼女はこんなにも変わったのに。
私はなんにも変わってないんだなって。


結局あなたを受け入れることしかできない、自分なんだって。
悔しいのに…でもどこか嬉しかった。



◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇




14 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:12


三時間後に、彼女からケータイに電話がかかってきた。
驚いたことは、ディスプレイに表示された、その名前だ。

…え…変わって…ないの?!…ケータイ…


疑う私を説得するように、そこには、間違いなくデーターに記録されていますと、アピールされていた。

うそ、でもだって…
二年前、あなたがいなくなってかけたときには確かに…つながらなかったのに…


混乱する記憶と頭を抑え。
電話を取る。


すぐ近くまで来ている、今から行くと。
やっぱりあなたはあなたらしくなく、そんな予定をいちいち教えてくれた。



15 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:13


「さてと…なにから…話そうか?」

部屋の中で。
彼女が自分につぶやいたのか、それとも私に聞いているのか。
わからなかったけど、それに答えることにした。

「…ケータイ。」
「え?」
「番号。…変わって…なかったんだね。」
「あぁ、うん。」
「でも…二年前はつながらなかったの。確かに…つながらなかった。何度かけても。」
「うん、ごめん。…止めてたんだ、ケータイ。一応番号は電話屋さんが好意で
残しておいてくれたから。…最近また、復活させたんだけど…」
「…どういうこと?」


やっぱりさっぱり、意味がわからない。
最近復活させたってどういうこと?
…そもそもどうして、ケータイを止める必要があったの?


謎を解く探偵のように。
必死で彼女の言葉の真意を探り、答えを待った。

そんな私に彼女は苦笑いで話す。



16 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:14


「…ケータイが、ね。使えない場所に…居たからさ…」
「使えない場所…あぁ、もしかして海外…?そっかそれなら…」
「ううん、全然国内。ていうか超、近いよ。ここから…ほら、その窓から見える。」
「は?窓からって、別に何も…」


そう、私の部屋の窓から見える風景なんて、たかだか普通の住宅街の町並みで。

せいぜい目に付くくらいの高さがあるものといえば、学校か病院…

そう、あの大きな病院くらい…え?

…病院…?


ここから…見えて。…ケータイがつながらない場所…まさか!!


はっとして振り返り、彼女を見ると。
そうそう、それ、なんて。
薄く笑みを浮かべていて。


でも私のこの動揺は、そんな微笑じゃとても収まらないくらいのもので。

けど、たどたどしい不器用な言葉をぶつけるしかできなくて。



17 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:15


「なん、な…病院?な、なんでそんなとこにいたの…え?ていうかそこの?
そこの病院に…いたの?ひとみ…」
「うん。そうそう、そうなんだ。ごめんね、内緒にしてて。」
「…ど、どうして…」
「んー…病気だったから?ちょっとね、まぁその。…いろいろ…手術とか。
あったからさ…」


簡単に言わないで欲しい。
たいしたことでもない、もう終わったことみたいに、言わないで。

…いや。
彼女にとってはきっと終わったことなんだ。
私にとっては、今日初めて知った私にとっては、こんなに驚くことであっても。


「で、でもまさか…二年間ずっと…病院にいたわけじゃ…」
「そのまさかなんだよぉ…マジつまんなかったぁ〜夜9時には消灯だしさ。
ドラマもお笑い番組も見れなくて、ケータイもダメだし。退屈なのなんのって。
…まぁ、そんな余裕…本当はなかったから、どっちでもよかったんだけどね。」


おどけた会話の中で。
最後につぶやいた彼女のその一言だけが、本当の真実。
本当の…気持ちなんだって、わかった。


一瞬あの頃のような、昔のような。
…色のない表情をしたから。



18 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:15


「…ねぇ。その…病気って…なに?手術…したって…」
「え?あぁ。なんかね、心臓系のらしいよ。うちもよく聞いてない…っていうか
聞いてもわかんないしね。ははっ。バカだから、うち。
まぁでも…詳しくなんて。聞きたくないし。聞かなかったんだけど。
そうらしい。うん。」


彼女本人ですらその病名は知らないようだけど、それはきっと軽いものでは
なかったはずだ。
手術をするほどの、そして…二年間、入院しなければならないほどの、なにか。


衝撃の事実にショックを隠しきれない私を、彼女は気遣うように。
やっぱり無理に明るく振舞う。

「でもほら、もう。大丈夫だから。…手術。うまいこといったみたいだからさ。
…だからもう、そんな心配しないで…ね?」


…その明るさが、優しい笑顔が。
私の心をかき回す。
…むかつく。
むかついて…腹が立って仕方がない。


私は、近くにあった壁を、ドォンと重く音を響かせるように、叩いた。
そして、それを見て驚いた顔をする彼女に、言った。



19 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:16


「…もう大丈夫?…ふざけないでよ!!だめだったら…うまくいかなかったら!
どうするつもりだったの?!そしたらもう…本当にもう、二度と。
会えなくて…私たち。…私は…なんにも知らないままだった。ひとみの病気の
ことも、なにも…
なんで?なんで何も言ってくれなかったの?!あのとき…なんで理由も言わずに
いなくなったりしたのよ…どうしていつもそうやって…」
「…ごめん、本当、ごめん。…けど…」
「結局ひとみは私のこと信用してないんだよ、好きじゃないんだよ。
だから何も言いたくなかったんでしょ?!」
「違う!!それは違うって!!」
「違わないよ!!いつもそう!!出会ったときから…あの…最後のときまで。
なにも教えてくれなかった…好きじゃないから…私のことなんて…だから…」
「好きだよ、好きだ。決まってるじゃん、そんなの。」


あまりに突然すぎて、一瞬なにがなんだかわからなかった。
彼女の言葉。
それはあの頃ずっと…今でも、今までずっと。
聞きたくて聞きたくて、なのに聞けなくて。
それをこんな簡単に聞くことができるなんて。
聞き間違いかもしれない、ううん、確かに言った、今。


…好きだって。


「…好きじゃないから…言わないんじゃなくて。好きだから。…言えないって
場合もさ…ほら。…ある…あるんだ…」
「…ひとみ…」



20 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:17


…ずっと言葉が欲しかった。
好きだって、そう言ってもらえたら、安心できる気がした、信じられる気がしてた。

…けど、彼女の行動には未だ解けないものが多すぎて。


言葉を貰った後でも、きっと難しい顔をしている私を見て。
彼女は困ったように笑った。


「…本当、だよ?…あゆみのこと…好きって、言うのは。まぁ、
信じろっていっても、無理な話かもしれないけど…
…ごめんね。あの頃ずっと…あゆみのこと振り回してばっかだった。
また会えたら。そんな日が来たら。ずっと謝ろうって思ってた。
謝りたかった。…ごめんね。」


すまなそうに頭を下げる彼女に、今度は私が困ってしまった。
そんな私を、やっぱり優しく笑いながら見て。


…彼女は、今までのことを。
…本当の、ことを。
話してくれた。



21 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:18



◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


―――自分に残された時間がけして多くはないこと。いつのまにか気づいていたんだ………



部活中にね?あぁ、うちバレー部だったんだけど。
激しい練習の後とか、ときどき胸がグーって、締め付けられるようなときがあってさ。
始めのうちはそんなに気にしてなかったんだ。痛かったけど。
でもまぁ、きっと。筋肉痛だろうって。胸の筋肉痛。そんなのあるんだか
ないんだか知らないけど。

で、試合の日になって。
結構接戦でさ。もう終盤になるにつれ盛り上がって盛り上がって。
うちもはりきっちゃってさ。
思いっきりスパイクを決めたんだ、決めた…はず、なんだけど。
わかんないな、そこから記憶がもうなかったから。



22 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:18


気がついたらなんか、理科室の匂いがした。
あの、微妙にくさい、いろんな薬品が混ざったみたいな匂い。

鼻をつまもうとして。つまめなくて。
口とか手を、機械に覆われているってことが、ようやくわかったんだ。


そしてそこが病院だと知った。
あぁ…自分は病気なんだと、知った。


始めに運ばれた病院は、小さな街医者だった。
精密検査をするためにって、紹介されたのが、ほら、そこの。
…あゆみの部屋の窓から見える、あの病院だった。

結構、心臓系とか、有名な病院らしくて。
しっかり検査をしてくれてさ。
んで、こりゃやばいと。


今日、明日というわけではないけれど。
郁々は、手術が必要だって言われた。
当分様子を見ながら、その日を決めよう、しばらくは通院してくれって。
言われて…それで、この駅に。
…来るようになったんだ。



23 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:19


学校へは行けなくなった、また万が一学校で倒れでもしたら、みんな迷惑だろうし。
なんの楽しみも、希望もなくなって。
ただ、不安だった。
…どうなるんだろう、どうしようって。
そればかり、一日中。考えてた。


でもある日、この駅に来たとき。
人とぶつかったんだ、…ていうかあゆみとぶつかった。


あゆみは覚えてないかもしれないけれど。

たぶん、癖でしょ?ケータイ見ながら歩くの。
あれ、危ないから止めたほうがいいよ、ほんと。


そして、ぶつかった肩が痛くて、手で抑えようとしたら。
…なんか別の場所が、胸が痛いって、気がついて。

一瞬ヒヤっとした、もしかしてまた発作かって。
…けど。


この痛みは、違うって。
いつもの、嫌な感じの痛みじゃなかった、苦しさはあったけれど。
でも…甘い痛みだったんだ。

壊れかけのうちの心臓でも。
ちゃんと、ドキドキできるんだって。
発作以外の胸の痛みを、感じることができるんだって。
うれしかった…あゆみが教えてくれた。


…なのにうちは。
なにもあゆみに教えてあげられなかったね。



24 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:20


その日からずっと、あゆみのこと見てて。
…ストーカーっぽいけど、でもずっと見てて。

ある日あゆみがケータイを線路に落とした。
うちはたぶん、体が勝手に判断したんじゃないかな。
…これはきっと、あゆみに接触する、チャンスだって。

走って線路に飛び込んで、そのケータイを拾った。
見上げるとあゆみが、超びっくりした顔してておもしろか…いや、うそ、
かわいかった。


あゆみ、あんとき言ったじゃん?死んだらどうするのって。
本当、うちも思った。死んだらどうすんだよって。

こんなまだピチピチのヤングマンなのに。
わけわかんない病気で、死んじゃったらどうすんだって。
みんなはどう思うだろう、家族は?友達は?

…あゆみは?


なに聞いてんだか、自分でもよくわかんなかったけど、気がついたら聞いてたんだ。
「うちが死んだらイヤか」って。


初対面…あゆみにとっては、初対面のこんなおかしいヤツ。
死のうがなにしようが、きっと関係ないって思われるのがオチだって。
…思ったんだけど。


でも、あゆみは言ってくれた、死んだらイヤだって。

だから、生きようと思った、例えわずかでも。
あゆみが…そう、言ってくれたんならって、思ったんだ。



25 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:21


病院に行くの、本当にイヤだったけど。
その日から、イヤでも行くようになった、だってあゆみに会えるから。


でも…最初は病院の先生、週に一度でいいからって、言ってたんだ。
なのにそのうち、週に二回来いって、三回来いって。
そんな、明らかに病状悪くなってますみたいなの、やめてほしいよね。


…恋をしてみても。
不安はやっぱり消えはしなかった、日に日に増していった。

たぶん、そういう不安定な気持ちを、うちは一番ぶつけちゃいけない人に。
…あゆみに。
ぶつけちゃってたんだよね、まじ最悪すぎ。


抑えようって、思うんだけど。
だけど、大切な人を大切にする当然のことすら。
あの頃のうちにはできなかったんだ。
…ごめん。



26 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:22


あゆみが言葉を欲しがってるのはわかってた。
こんな不確かな関係を、不安がっているのも。
だけどうちはいつどうなるかわからない体だったし。
なにもしてあげられないのに、言う資格もないって、思って。


それに、試してたんだ。
あゆみがうちを待ち続けていくれている間は、きっとうちのことを想っているって。
うちになにかを求めているってことは、うちのことが好きなんだって。


だから言葉をあげなかった。
もっと、もっと。
うちのことを考えてほしいって、必要として欲しいって、そう。
思っていたから。



27 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:22


とうとう、手術をする日が決まって。
それでキレイさっぱり治るっていうんなら、まだいいんだけど、確率は半々、
とか言われちゃってさ。

…とうとう死ぬんだって、思った。


今度の入院が最後なんだ、きっともう。
病院から…出られないんだって。

思ったとき、やっぱ人間最後になにをしたいかとか、考えちゃうじゃん?
思い残したことは何かって…あぁ、そうだ。
…最後に。あゆみを抱けたらそしたらもう、かなり。
満足いく結果だなって。
短いけど悪くない、一生かなって。
相変わらず自己中に考えて、あの日。
あゆみに言った、もう会えないって。
…抱きたいって。


いつもあゆみは、うちの身勝手に。
悲しそうな顔をして、泣きそうになって、でも答えてくれた。

…今度ばかりはさすがにダメかって。
思ったけど…でも。


許してくれた、それはたぶん。
うちの気持ちを信じてはいなくても…うちのことは。
信じてくれているって…ことなんじゃ、ないかって。

めちゃめちゃうれしかった、幸せだと思った。



28 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:23


もういいや、悔いはない、死んだとしても、かまわん!なんて。
あゆみのこと抱きしめながら、窓から見える病院に息巻いていたけれど。


…最後に、背中を向けたままのあゆみを。
振り向かせたいと思った…振り向いて、欲しいって。


でも、今はどんなに無理やりそうしようとしてもダメだと思った、こんな関係のままじゃって。

…だから…次こそはって。
…次?

…次が…うちにあるのかな。


だけど、今うちは。
その次を願った、死ぬことばかりを考えていたのに。

…生きるって、いうことを。
初めて、考えられたんだ。


可能性があるかはわからない、けど。
…がんばろうって。


もう一度君に会えると信じて。
さよならを言わずに、うちは扉を閉めた。



◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇




29 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:24



「…と、まぁ。ちょっとカッコよさげに言いましたが、そんな感じ。
手術もうまくいって…二年間、治療続けて。
だいぶよくなったんだ、それでもまだしばらくは通院しなきゃならないけど…
ま、軽いもんよ。今までのに比べたら…ねぇ。」
「…なんで?」
「え?」


彼女の説明は、今までの謎を、ほとんど解き明かしてくれた。
…私への、気持ちさえ。
信じさせてくれた、でも。


ただひとつ…ひとつだけわからない。


「なんで…そういうの。言ってくれなかったの?…入院、するとか。
言ってくれてたら…お見舞いとか…行けたし…二年も会わないままなんてことに…
ならなくて済んだのに。…どうしてひとみは。…私に…何も言ってくれなかったの?」


好きだったから、言わなかったと。
彼女はさっき言っていた。
でもそれは私にはなおさらわからない。

好きなら、言ってくれればいいのに、教えてくれたらよかったのに。
…どうして?



30 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:25


「…んー…巻き込みたく…なかったし。こんな、うちの。超個人的な都合でさ。
…まぁ、結果随分振り回しちゃったから、なんにもなんなかったかな。
でも。…生きようって、思ったけど。…うまくいかない可能性も十分…あったわけで。
…その場合は。忘れてもらいたかった。うちのことなんて。
…なにもしてあげられなかったのに。あゆみのこれからの人生の…ジャマする
ことだけは。避けたかった…から…」



最低だと思った。
…自分を。


私は今まで、なにをやってたんだろう、なんのために生きていたんだろう。
ひとみの辛さとか、痛みとか。
なにも知らなくて、なにもしてあげられなくて。


…ううん、もし知っていたとしても。
…なにができたの?



31 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:25


本当のこと、知りたいとずっと思ってた、でも知ったところで。
私になにができた?耐えられた?
…ひとみが苦しんでる姿とか、もしかしたらいなくなっちゃうかもしれない恐怖とか。

そういうのに…二年間。
耐え続けるだけの気力が…私にあったの?


辛い二年間だと思ってた。
彼女に置いてきぼりにされて、なのにまだ好きで。
どうして自分ばかりこんなに苦しむのかって…けど。


それは本当は、幸せな二年間だったんだ。
本当の意味でひとみを失う怖さを知らずに過ごせた時間。

…気づかないうちに…あなたに守られていた、二年間だった。


なのにバカみたい、私。
自分をかわいそうと思えることが、彼女を恨めることが。
どれだけ幸せなことかわからずに。


―――自己中だったのはひとみじゃない、本当は私だったんだ。


自分のことしか考えていなかった、だって、彼女が苦しんでるだろうなんて、
この二年。
一度だって…想像したことさえ、なかった。



32 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:26


「…ごめん…ごめん…なさい…」
「え?あ、あゆみが謝ることなんてなんにもないよ?悪いのは全部うちだよ。
いっぱい、いっぱい、傷つけて。…ごめんね、ほんと。
…許して、もらおうなんて。図々しすぎるって…わかってるけど。
こうして…もう一度会えたから。本当は、会わせる顔ないって思ってた。
会いたくてがんばって病気治したけど、でも実際には会いに行くなんてできないって。
…けど…会えた。またあの駅で、偶然に。
…だから…ほんと、都合よすぎるけど…できたら。
あの頃から…やり直したいって、思ってるんだ。今度は、もう。
…泣かせないように、うち、ちゃんとするから。だから…」


頬に優しく伸ばされた手を。
反射的に退けていた。


「…え?」
「…ご、ごめん…でも…」
「あ、あぁ。そうだよね、んな、いきなり。…こっちこそ、ごめん。
…あのさ。また、来週。うち病院に行くから。…だから。そのとき…また、
会えないかな。もう、待たせたりしないから。…どうかな。」
「………」
「…なんか。予定とか、ある?でも、そんときは、うち。待つよ、何時間でも。
…昔、あゆみが。ずっと、そうしてくれたみたいに。
うちだって…しなきゃね。…それじゃ、また。連絡するよ…ていうか。
気が向いたら…連絡ちょうだい?言えた義理じゃ…ないんだけどさ、うち。」



33 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:27


じゃあ、またと。

黙ったままの私の様子を、複雑な表情で、悲しそうに見つめながら。
彼女は帰っていった。


ごめんね…あなたに、触られることが。
イヤだったんじゃないの、本当はそうされたかったけど。

でも…そんな資格、私にはない。
ないんだって…気がついた。


あなたの全てを知りたいと思っていたけれど。
でも知ろうとはしなかった、教えてもらうのをただ待っていただけ。

してもらうことばかり考えてた、教えて欲しい、好きになってほしいって。
そのわがままさに…気づかないままで。



34 名前:Live=Love 投稿日:2006/05/14(日) 13:27


あの頃。
ひとみはずっと辛かったのに、苦しかったのに。
私のことを気にしてくれていたんだ、そんな余裕、とっくになかったはずなのに。


痛む体で、できる限りで…想ってくれていたのに。

…私は。



申し訳ないと思った、もう、あなたに会う資格なんてない、ないのは私のほう。

…彼女のために。できることはないかって。
そう、考えて、結果。



―――あの日のあなたと。同じことをするしか…ないと思ったの。





35 名前:ツースリー 投稿日:2006/05/14(日) 13:39
以上、第3話になります。
遅くなりすぎて本当に申し訳ありません…

>>3 TETRA さま
お久しぶりです〜新スレにもレス、ありがとうございます!
更新遅くなり申し訳ありませんorz
低速なスレですが…引き続きどうかどうかよろしくお願いします〜

>>4 名無飼育さん さま
急に新スレでびっくりさせてごめんなさい!そしてあまりの更新の遅さにごめんなさい…orz
いつも本当にありがとうございます。
こんなに遅くて読んでいただくのが申し訳ないくらいなんですが…でもぜひよろしくお願いします〜

>>5 名無し吉柴 さま
レスありがとうございます〜そしてごめんなさいorz遅くて本当にごめんなさいorz
せっかく読んでいただいているのに、本当に申し訳ないです…
どうかこれからもよろしくお願いしますorz

>>6 名無飼育さん さま
お待たせしましたーorz ごめんなさいーorz

>>7 名無飼育さん さま
あぁごめんなさいーorz ありがとうございますorz

>>8 名無飼育さん さま
本当にごめんなさいorz 大好きいただきましたorz

>>9 名無飼育さん さま
お待たせしましたorz 本当にすみませんー
36 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/14(日) 16:02
待っててよがっだぁ〜(T〜T)
37 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/14(日) 23:08
待ってました〜♪
なるほど、そうでしたか。
なのに、そうゆう決断?
そんなぁ、柴ちゃ〜ん・・・(T_T)謎
次回も楽しみに待ってま〜す。
38 名前:TETRA 投稿日:2006/05/15(月) 12:58
半分当たってた(謎

んみゃぁぁ〜〜(謎2
柴ちゃん何でそーなるんだ〜〜〜amjgmdquj(壊
39 名前:名無し吉柴 投稿日:2006/05/18(木) 01:43
ツースリー師匠、更新お疲れ様ですm(__)m自分を弟子にして下さい!w
待ってましたぁ!更新されている事が嬉しくて泣いてしまいましたw
二人にとって2年間は、特別に長い時間だったんだろうなぁと思いました。それに不器用な二人が思い合ってるからこそ、相手を大切に思い過ぎて、こういう不器用な態度や行動をとってしまった結果、すれ違いが生じてしまうんだなぁって染々感じました。
恋愛って甘酸っぺぇ〜w
続き待ってます!
40 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/01(木) 22:49
>>4でした。遅くなりましたが、お疲れ様です。

…今後の2人に更なる期待!
待ってます!!
41 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:12



5年以上使い続け、いつしか愛着を抱くまでに親しんだケータイ番号も、
解約してしまうのはほんの一瞬で。
そしてそこには何も残らなかった。


連絡先が変わったことを知らせなければいけない相手をリストアップしていると、
メモリーの数と友人の数がイコールではないことを思い知った。

以前より三分の二くらいに減らしたデーターの中に、あなたの名前はどこにもない。
…だってそのために変えるんだから。当たり前なんだけど、ね。



42 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:13


引越しはケータイの解約ほど簡単じゃなかったけど。
でも何も何百キロも離れた場所に行く必要はないんだし、
海を、山を越えるわけじゃないし。
けっこういろいろ無理をすれば、一週間で住所を変えることは可能だった。


…便利だなぁ…日本って。
すぐ近くに引越せば、さほど面倒な手続きや、生活環境の変化なんて
気にしなくて済むのに。
…通る電車が一本変わるだけで。
擦れ違う人達の群れを、全く変えてしまうことができる。


…だから、もう。
どんな偶然が起こっても。あなたにまた再び出会うことは…ない。


実は、すぐ近くにいるのに。
けどその姿は見つからないなんて。
…ほんと、二年前のあなたにそっくりな消え方だと思った。



43 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:14


突然の再会だったけど。
ずっとずっと、憎んでいたけれど。
でもどうしようもないくらいうれしかった。
うれしかった、会えてうれしかった。


言いたいこととか、聞きたいことが言葉にならなかったのは。
気持ちが溢れ出すスピードに追い付けなかったから。
文句とか怒りとか、そんなものより先に。…やっぱり好きって、思ったから。

どうしてか…わからないけど。
そんなのも、どうだっていいくらい。
やっぱり好きだ…どんなに会っていなくても。どんなに離れていても。
変わっていない、あなたはどんなに変わっても、私の気持ちは。
変えられない…変えられようないんだ…そう感じた。


だから、もちろん。
今、こうして、今度は私からだけど、また離れても。
この気持ちが薄れるはずもないことを、私は充分知っている。
だけど…だから。
だから、こそ。


やっぱり私はあなたのそばにいちゃいけないと思ったの、だって本当は。
一番…一緒にいなきゃいけないときに。

ひとみが一番つらかったときに。
…そばにいられなかった。



44 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:14


そんな私が、今更。

元気になった、つらい時期をもう乗り越えた、今の、これからのあなたの隣に
いたい、いようなんて。
…都合が良すぎて、自分でも腹が立つから。


あなたが手に入れた未来はあなただけのもので。
途中から、誰かに、…私に。
割り込む権利なんてない。


そう、思った。思ったけど…
…あのまま…あの街にいたら。
あなたに、会える場所にいたら。
あなたが、会いに来てくれたら。

それを拒絶することなんて、私には絶対できない。
そばにいちゃいけないと思っても、そんな資格ないと思っても。
…やっぱり甘えてしまいそうで…流されてしまいそうで。


それが怖くて、許せなくて。


あなたがまた来てくれる前に、今のうちに。
…自分から、いなくなろうと思った。


…逃げてるだけだって。
本当は心のどこかで、気がつきながら。



45 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:15


その日はやっぱり静かに過ぎていった。
あなたがまた、私に会いに来てくれると言った日。


今のあなたは、あの頃とは違うから。
きっと、本当にちゃんと、来てくれるんだろう。
来てくれたんだろう、もう私のいない、あの部屋に。

たったわずか一週間で突然姿を消してしまって。
驚かせてしまったかな、せっかく来てくれたのに、いないなんて。
…悲しんでいたらどうしよう。
…あなたが。


同じように消えるつもりだった、二年前のあなたと。
けど、そのうち一つ大きな違いに気がついてしまった。
だって…あなたはあの日、ちゃんと言ってくれた。…いなくなるんだって。
私がそれを信じなかっただけで、ちゃんと教えてくれていたんだ。
避けられない別れがすぐ近くにあることを。
なのに…私は。

何も言わずに、隠れるみたいに、逃げるように。
…最低。


引越したばかりの新しい、静かすぎる部屋の中で。
そういう罪悪感とか、自分がしてしまったことへの後悔とかに。
一人でうなされることが、一番いいんだ、あなたがあの頃味わった気持ちを、私も味わうことが一番。


…けど。
それは同時に、あの頃の私の気持ちを。今のあなたにさせていることだったなんて…。




46 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:16


◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


時間の流れがひどく遅くて、重たくて。
…これからの私の人生は、時間は、ずっとこんな風に過ぎていくのかなって。

なにもやる気がおきなくて、部屋の中にうずくまっていた。
…あの日から、さらに一週間。

ちょうど私が引っ越して、姿を消して、二週間後の、その日。

突然…インターホンが鳴った。


始めはどうせ新聞の勧誘かなにかだろうと思った、越してきたばかりだし。
…ここの私を訪ねる人は、まだどこにもいないはずだったから。

面倒くさい、無視しようと、そのまま、ベッドの中に潜っていると。
執拗に、何度も何度も。
ベルは鳴らされ続けた。

そのうちドアをドン!ドン!と、たたき出す音まで聞こえて。
うるさいと思うより、なんだか怖くなって。


…そっと起き上がって。
ドアにある小さな穴から、訪問者の姿を確認した。


…信じられない…けれど。

…あなたの姿を。
確認…した。



47 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:18


「…なん…で?」
「?!あゆみ?!!やっぱいるんでしょ?!ここに!!うちだようち!!
開けて!!」
「なん…で……どうして……ここ…」


見つけられなかったのに。
私は、あなたを、二年間。

なのに…どうして…
あなたは…


あまりのことに驚いて、腰が抜けたみたいになって。
私は冷たい玄関の床に、そのまま座り込んでしまった。


まだ閉じられたドアの向こう側から。
やっぱり本当に…ホンモノの、あなたの声が聞こえる。


「…一週間前。病院行く前に、あゆみに電話したら…つながんなくて。
嫌な予感がして、家に行ったんだ、直接。…そしたら…いなかった。
…いなくなってた…あゆみ……二年前の。…うちみたいに…さ。」


その声のトーンの低さに。
私は、彼女がとても怒っているんだと感じた。

だって、無理もない、二年前のあなたには。
やむを得ない理由があった、いなくなるしかない、重大な理由が。


…なのに…私のは。
今回の私には、そんなものなんてなかった、…ただの、ワガママだと。
思われてしまっても…仕方がなくて。



48 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:18


私は慌ててカギを開けて、彼女のもとに駆け出した。

「ご、ごめんなさい!あの…違うの…そんな。二年前の…仕返ししようとか、
今さら…思ったわけじゃなくて……その……え?」
「…ごめん…」


ドアを開けた、瞬間。
私は優しく、包み込まれるように、彼女に抱きしめられて。

…謝るべきなのは、私のはずなのに。
謝られ、て。

わけがわからない、混乱する頭の中に。
耳元から聞こえる声が、響く。


「…あゆみのアパートの、大家さんに。引越し先聞いたんだ。でもそしたら
知らないって言うから。だから、どこの引越し業者が来てたのか教えてもらって。
それで、そこの業者に問い合わせて。だけど教えられないって。そういうのは。
なんか決まりがあるんだって。だから。…そこのバイトの兄ちゃん、捕まえてさ。
ちょっと…お金渡して。無理やり、聞き出した。」
「そう…だったんだ…」
「…けど。それができたのって…うちは、元のあゆみの家、知ってたからじゃん。
…二年前は…あゆみは。本当に、何にも知らなくて…どうしようも、なかった
んだよね。…本当、ごめん…ごめん…」


申し訳なさそうに。
もう消えちゃいそうな声で話すあなたに、胸がつまって。



49 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:19


「い、いいよ…もう、そんな…」

そう言って、体を離そうとした。
そしたら、さっきとはまるで違う、強さで。
…痛いくらいにきつく…また抱き寄せられて。


「ひ、ひとみ…?」
「どうしようかと…思った。もう、会えなかったら…どうしようって…
怖かった…死ぬより。…病気で死ぬかもって…思ったときより。…怖かった。」
「………」


大げさなような、セリフだけど。
でもその腕の力と、わずかな震えが。

それがけして大げさなことでは、嘘ではないんだと。
私に必死に、伝えていて。


「…うちは。下手に、心配させるより、あゆみの人生、縛っちゃうより。
何にも言わずに消えるのが一番いいって、思ってた。二年前は。
けど…そんなのただの、自己満足だった。あゆみに何かしてやれてるって、
あゆみのこと守ってあげられてるって思いたいだけの、行動だった。
…あゆみの気持ち、考えてるフリして…本当は、全然。考えてなかった…
自分のことしか。
…残されるのが。こんなに。あり得ないくらい、ツライって。
知らなかったよ…ごめんね…あゆみ…」


優しい言葉が一つ一つ、心にしみるたびに。

涙が溢れて止まらなかった。



50 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:20


そのとき…初めて、わかったの。
自分の…本当の気持ち。


「…一緒に…いないほうが、いいって、思ったの。ひとみの…これからのために…」
「…うん。」
「…一緒にいられなくっても…ひとみが元気なら。それでいいって…だから…」
「…うん。」
「…ひとみと、会えない場所に行こうと思った…ひとみに、見つからない
場所に…でも、本当は…本当はね?」
「…うん。」


誰にも、自分にさえ気づかれないように、誤魔化していた本当の気持ちが。
…溢れ出しいく…あなたの優しさで。あなたの、その想いで。


「…見つけて欲しかったの…ひとみに。…見つけだして…欲しかった…」
「あゆみ…」


…この二週間。
本当はずっと、待ってたの。

見つからないように、姿を消しながら。
それでもあなたがきっと来てくれるって、来て、抱きしめてくれるって。


ねぇ…もしかして、ひとみも…そうだった?


「ひとみも…見つけて欲しかったの?二年前…私に、見つけて欲しかった?」
「………」
「…ごめんね?見つけて、あげられなくて…一人にして…ごめんね…?」



51 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:21


ひとみの目からも、涙がこぼれるのを見て。
ようやくわかった、二年前。

相手を一人にさせてたのは…ひとみだけじゃない。私だってそうだったんだ。


…二人とも。
寂しくて、悲しくて。
しょうがない二年間だったんだって。


「…自分が、二年前に。あんなこと…してる以上。今更、いなくなったあゆみ
捜す権利なんて…そんな資格なんて、ないってわかってた。
二年間、あゆみは待ってくれたんだから。うちも…待たなきゃいけないのかも
って…思ったんだ。…けど、さ。」


うなだれるように、私の肩に顔を埋めた、あなたから。
くぐもった声が、聞こえる。


「…あゆみと。いられないん…だったら。うちは…何のために。
…生き残ったの?」
「…ひとみ…」
「…好きだよ…好きだ…」


…私も、好きだと。
言葉を返す前に、唇は塞がれた。



◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇



52 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:21


…二年前は。

どんなにキスをしても、どこか虚しくて。
あなたの気持ちを信じられなくて、疑ってばかりで。

…けど。

不思議だ、同じ人とのキスなのに。

気持ちの伝わり方が違う。
…怖くない。


こんなに安心、できるなんて…


二人でベッドに横たわり、私の上にあるあなたの顔を、ぼーっと眺めていると。
鼻を軽くつままれた。

「…いったーい…もぉ、なに?」
「だってボーっとしてんだもん。あゆみ。注意力が足りん。」
「えー…そうかなぁ…」
「そうだよ。最初に、しゃべった日だって。ボーっとしてっからぶつかられて。
ケータイ線路に落としたりすんだよ。」
「あぁ…そういえば…そうだった…ね。」


二年前の別れの日より、もっと前。
初めて…あなたに出会った日。



53 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:22


「あのとき…ね?すごい、怖かった…ひとみのこと。ケータイ、拾っておいて
もらって、ナンだけど。」
「うーん…そう?」

そうだよ、だって。
…飛び込んだんだよ?今にも電車が来そうな…線路の上に。


「…この人には…怖いものが。ないのかなって。死ぬのが…怖くないのかなって。
そんな人、初めてだったから。すごくすごく、怖かった…」
「…怖いもの、だらけだった…よ。何もかも、怖かったんだ、あの頃、うちは。」
「…え?」
「…死ぬのが怖くて怖くて…でもその恐怖から逃れるには死ぬしかないと
思ってたんだ。って、死ぬのが怖いんだからそれじゃ意味ねー!って、感じだけど。…でも。それでも、死ぬのは怖いけど、死ねば死ぬのは怖くなくなるん
だって…ワケ、わかんなくなってて。あんなことが、できたのかも。」


今じゃもう、できないな、なんて。
胸の傷跡に、私の手を添えて、笑う。


「…この通り。病気、治っちゃったから、さ。ケータイくらいのためには…
今はもう。飛び込めないよ。」
「…うん…よかった…」
「…でも。ケータイじゃなくて…あゆみが落ちたっていうんなら、飛び込むよ。
そんで絶対、助けるよ?」
「…バカ。…せっかく助かった…命なんだから。ムダにしないで。」
「ムダじゃないじゃん、全然。」



54 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:23


…昔は。
あなたが、何を考えているのか、好きでいてくれているのかが、分からなくて
怖かったのに。

今は、これからは。
…あなたに想われすぎるのが、守られてしまうのが、怖いなんて。


二年前の私に言ったら蹴飛ばされそうだなぁ…なんて、笑ってしまった。



「あゆみ。…笑ってないで。ちゃんとうちの夢、叶えてよ?」
「夢?」
「そう、夢。」


そういうと、ずっと頭を撫でてくれていたあなたの手が、離れていって。
…代わりに、そっと私の胸に触れた。


「…ん!…」
「…今日は、ちゃんと。目、開けててね。…見てよね…ちゃんと、うちのこと…」
「自信…ないかもぉ…」
「ダメだよ、うちはちゃんとそのためにがんばって生き残ったんだから。
…今度はあゆみががんばる番でしょ…」
「うん…がんばる…けど…」



55 名前:Live=Love 投稿日:2006/06/18(日) 17:24


でも、昔とは違う理由でできないかも、だって。

…前みたいに、怖くてあなたを見れないなんてこと、もうないけれど。
今は見なくても、わかっちゃうから。


どれだけ優しくあなたが私を抱いていて、その瞳に映る自分が、
どれだけ幸せそうな顔をしているか。


…きっと照れくさくて、まともに見れないよ。



でも、なるべくがんばるね?
今日は無理でも、明日か、あさってか、いつかそのうちに。


あなたが私を愛するために生き残ってくれた、そのおかげで。


私たちにはありあまるほどの、大きな未来が生まれたんだから。





56 名前:ツースリー 投稿日:2006/06/18(日) 17:33
以上で「Live=Love」完結です。更新が遅れて申し訳ありません…
次回は短編を予定しております。

>>36 名無飼育さん さま
待っててもらえてよかったぁ〜(T〜T)

>>37 名無飼育さん さま
また更新遅くなってごめんなさいぃ〜orz
一気にラストを迎えてしまいましたが…もし気に入っていただけたらうれしいです。
これからもよろしくお願いします〜

>>38 TETRA さま
半分が気になる〜w
最後はこういう感じになりましたが…大丈夫でしょうかorz
これからもよろしくお願いします〜

>>39 名無し吉柴 さま
いやむしろ私を弟子にしてくださいorz
楽しみにしてくださっていたのに遅くなってごめんなさい〜orz
本当恋愛は甘酸っぺぇ〜甘酸っぺぇ〜で困ったもんですねw

>>40 名無飼育さん さま
こちらこそ遅くなってしまって…本当にすみませんorz
ご期待にこたえられていたらいいんですが…
いつもありがとうございます!またぜひよろしくお願いします〜!
57 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/18(日) 23:58
待〜ってましたよ〜♪
どっちの気持ちもわかるような、わからないような・・・
女心は、ふ・く・ざ・つ(笑)
でも、そんな所もかわいかったり。
胸がキュンキュンしちゃいました。
そして、ほんわか温かい気持ちになれました。
ありがとうございました。
次の、短編も楽しみに待ってます。
58 名前:名無し吉柴 投稿日:2006/06/19(月) 00:51
お疲れさまです!もう待ってましたよ〜!!とにかく良かったぁ。ハッピーエンドで。
この小説を読んで改めて愛の力って凄いなぁって思いました。気持ちが通じ合う事ほど素敵で幸せな事ってないですね。
59 名前:手虎 投稿日:2006/06/22(木) 01:33

ちょっと目から汗が…

会えなかった2年間がなければ
二人はこういう風にはなってなかったんでしょうね…





>>56
半分っていうのは
よっすぃ〜がゆうr(ry(バカww
60 名前:おいしいキュウリ 投稿日:2006/08/06(日) 03:17


みーんみんみんみん…

「ぶつぶつぶつぶつ…」

みーんみんみんみん…

「ぶつぶつぶつぶつ…」


…怖い。
怖いよ、怖すぎるよ。
…シカトしたい、できるなら。


…キュウリに話しかけてる人なんて。



61 名前:おいしいキュウリ 投稿日:2006/08/06(日) 03:18


あぁ、通りかからなければよかった。
っていってもそれは無理だ。
この玄関を通らずに、うちは外には出れないし。


気温が35度を軽く超えて、セミも鳴いてんだか泣いてんだか、みたいなある夏の日。

同居人と言うべきか、それとも…そういう風に言うべきか、今ひとつはっきりしない相手、
柴ちゃん、柴田あゆみさんが。

玄関のドアの外で、しゃがみこんで。
鉢に植えてある、成長中のキュウリに。
何かしきりに話しかけていた。


シカトしたいシカトしたいシカトしたい。
触れたくない、この件に関して触れたくない。
いや、触れちゃいけない、むしろそう思う。

…けど。
逃げようねぇー…逃げ道ねぇー…


「…何を。してる…の?柴ちゃん。」
「…ん?…あぁ。だってほら、高いじゃん?野菜。最近。」



62 名前:おいしいキュウリ 投稿日:2006/08/06(日) 03:19


んまぁ、ね。うん。
いやでも、なにが「だってほら」?
何にかかって、「だってほら」?

意を決して聞いてみると、そんな答え。


彼女の言葉にはいつも謎が多いっていうか…いや言葉だけじゃないんだけど、
まさに行動が今チョー謎なんだけど…


待っててもそれ以上彼女はその謎の行動を説明してくれそうになくって。
ていうか普通に、普通じゃないけど普通に、またキュウリに話しかけ始めちゃって。


あーやべぇな、これ。
暑さで頭がおかしくなったのかもしれん、いやむしろその方がいい、
そうであってほしい。

…まともな状態でこんなことしてるなんて…信じたくない、ないけど…


「しちし…」
「にじゅうはち。」
「はちし…」
「さんじゅうに。」


あぁ、できてるわ、九九。
てことはまともなんだ、まともにこんなことしてるんだ、あぁー…

もうすごいショック。あーあ。
ほんとセミより泣きたい、みんみん。



63 名前:おいしいキュウリ 投稿日:2006/08/06(日) 03:20


肩の力をガクッ、と落とし、空を見上げていると。
柴ちゃんが話しかけてきた、キュウリじゃなくて、うちに。


「…作った方が安いもんね、野菜。」
「へ?…うん、そうだねぇ、あぁ、そうだねぇ…」
「おいしいしね、自分で作った方が。」
「うん…だろうねぇー…。」


向こうはまともな状態でも、こっちはまともに対応してたらやってらんない。
適当に聞き流し、適当に受け答える。


にもかかわらず彼女にはうちのその適当加減は伝わらなくて、ちょっとは伝わってもいいのに、
伝わんなくて。

うちが話に乗ってきてるんだと、アゲアゲうえうえなんだと勘違いし、
ノリノリで会話を進める。


「こんなに話しかけてるんだから!絶対おいしいと思うんだ。たぶん。」
「…うんうん、そうだねそう…って、え?あ、あぁ!なんだそうなの?!そういう理由?!」


な、なぁんだぁ!!
そういうことね!うんうん、あるじゃんそういうの!!

聞いたことあるよ、人間の言葉が通じるって。
話しかけてあげた方が、おいしくなるってね。


はぁー!よかった!!意外とおかしくないんじゃん、柴ちゃん!!


ほぉっと、胸を撫で下ろし、今度こそ会話に乗る。



64 名前:おいしいキュウリ 投稿日:2006/08/06(日) 03:20


「おいしくなぁれ、おいしくなぁれって、話しかけたらおいしくなるんだよね。」
「らしいね〜!!うちもなんかで聞いたそれ!テレビだったかな〜」
「こう…褒めてあげたり、かわいがってあげるのが大事…なんだよね。」
「うん、うん。おいしいおいしいってね。」
「おいしいおいしい…って言えばおいしくなるんだもんね。」
「うんうん!いいねーいいことだ!!」
「…かわいいかわいいって。言えば…かわいくなるかもね。」
「うんうん…え?」


…ちょっと待って。
おかしくない?
その振り、おかしくない?


テンポのいい会話の中に、思いっきりつまずきたくなるポイントが。


…いや、人と野菜は違うじゃん。
おいしいとかわいいは違うじゃん。


…キュウリと柴ちゃんは違うじゃん…



65 名前:おいしいキュウリ 投稿日:2006/08/06(日) 03:21


むちゃ振りだ、むちゃ振りにもほどがある。
大体、なんだそれ。何を言わせたいんだ、いや、言わせたいことはわかるけど。


えーマジでぇー?
なぁんでそんな展開になんの?むちゃくちゃ過ぎない?


言いたくない、うちは言いたくない。
んなこっぱずかしーこと言いたくない。
言う理由もさらさら、ない。

…けど。


キュウリの黄色い葉っぱをつっつきながら、そわそわ、わくわくしてるのが
彼女の、背中からでも充分すぎるくらい伝わってきているので。残念ですが。

あー逃げられねー。今度こそ、逃げ道ねー。


仕方なく、しゃがんで後ろを向いている彼女の背中に話しかける。
たぶん彼女がキュウリに言ってたのと同じくらいの、小さな声で。


「…かわいいよ、柴ちゃん。」
「や、やだ。何言ってんの、よっすぃ〜。」



66 名前:おいしいキュウリ 投稿日:2006/08/06(日) 03:22


いや、何言ってんのって、そっちが言わせたくせに、言えとは言ってないまでも、
言わせる環境作ったくせに。

小さい声で言ったのにバッチリ聞いてて、待ってました風なのに。


はぁ?なんだよとぼけちゃって。
ったく、この暑いのに。


軽くうんざりしながら、でも赤くなった彼女の耳の後ろ側を見て、
軽くドキドキしちゃったりなんかしちゃったり、も、しながら。

…だってさぁ、まだビミョーな関係だからさぁ、うちら。


…ま、いっか、なんか柴ちゃん。
うれしそう、だし。


よし、とりあえず、今日のところはそんなもんで。
さてさて、そろそろ出かけさせてね?



67 名前:おいしいキュウリ 投稿日:2006/08/06(日) 03:23


「…んじゃ。ちょっと出かけてくるわ、かわいい柴ちゃん。」
「うん。いってらっしゃい。」


うんって。
認めちゃったよ?!おい。


暑さと彼女に苦笑いをしながら、歩き出し。


つーかキュウリはおいしいだろうし彼女もかわいいけど、
問題は彼女がおいしいかどうかなんだよなーそこんとこ大事だよなー…なんて思い。


気づかれないようにそぉっと、まだ玄関でキュウリの手入れをする彼女に。
おいしくなぁれ、おいしくなぁれと熱心に唱える、私ひとみちゃんなのでした。





68 名前:ツースリー 投稿日:2006/08/06(日) 03:39
以上短編でした〜
遅くなりまして本当に…申し訳ありませんorz


>>57 名無飼育さん さま
お待たせしました〜そして今回もお待たせをorz
温かくなっていただけて幸せです〜
今回もこんなに時間が空いてしまいましたが、もしも、もしもよろしければ
読んでいただけたら…と思いますorz
これからもよろしくお願いいたします!

>>58 名無し吉柴 さま
すっかり遅くなり、レスもずっと返せず本当にごめんなさいorz
今回の短編の二人は気持ちが通じ合っているのか…ビミョーですw
また読んでいただけたらうれしいです〜いつもありがとうございます!

>>59 手虎 さま
お待たせしております〜orz
汗かいてもらえてうれしいですw
あぁ、なるほど〜 その展開ならもっと手虎さんに汗をかかせられたのかも…w
またよろしくお願いします〜♪
69 名前:名無し吉柴 投稿日:2006/08/06(日) 09:45
おいしいキュウリ読みました〜。本当に最近野菜高いですよね〜じゃなくて、重要なのはキュウリのおいしさよりも柴ちゃんのおいしさって事ですねwよっすぃ〜が、柴ちゃんが育てておいしくなったキュウリと可愛くておいしい柴ちゃんの両方を早く食べられるように心から祈ってますw
70 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/06(日) 22:27
ほのぼのしていて、癒されます。
二人の関係を、…ぶつぶつぶつぶつ…(もっと知りたいよう)
71 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:32


「…やばいよね…これ。」
「うん…やば…ていうか…これ…何?」


落ち着いて、落ち着いて?落ち着こうよ、うち。

落ち着こうよ、柴ちゃん。


いや、とても落ち着けるような雰囲気じゃないけど。
お互い、顔真っ青だけど。

だけど落ち着いて、一回整理しよう、とりあえず今の、この、状況を。


「…えっと…ここは?」
「こ、ここは…あ!…私の家だ。あぁ、そっかよっすぃ〜。来たことなかったよね、
そういえば。どうもいらっしゃいませ。…とか言ってる場合じゃないね、うん。」
「うん、でもおじゃまします、いや、してます。」
「うん、いいえ。」


まず場所はわかった。柴ちゃん家なのね。
そっかー初めてだからわからないはずだよ、どうりで。



72 名前:恋は戦争!Do 投稿日:2006/09/16(土) 00:33


ほら、玄関がどっちにあるのかとかさ?
窓は南向きなのか西向きなのか、トイレやお風呂やキッチンはどこなのか…
…はたまた間取りは何Kなのかとかも全然わかんないのに。
なのに。


「…や、柔らかいね、この布団。」
「そ、そうかな?まぁ普通…だと思う…けど。」


ベットの寝心地だけわかるとか…まずいでしょ、明らかに。


あぁまずい、まずすぎるよぉ。
一つ一つこの謎を解くたびに、自分たちを追い込んでいく気がする…。


…けど、このまま何もなかったことにして、もう一度夢の世界へ ヒアウィーゴー 
…するわけにはとてもいかない。
いくわけない。それは二人ともわかってる…わかってますとも。


「…どこまで…?どこまで覚えてる…?柴ちゃん…」
「…た、たしか…昨日はフットサルの練習があったでしょ…?それで、
練習して…帰りにみんなでご飯食べよーって言ってたのに、
みんな仕事あるとか用事あるって帰っちゃって…それで…」
「…珍しくうちと柴ちゃんだけが空いてたんだよね。」
「そ、そうそう!」
「だから…たまには二人でご飯行ってみるかって…すかいらーくのタダ券あるしって…
それでさ、それで…」
「あの…よっすぃ〜?」
「ん?」
「とりあえず…服着ない?」
「…うん。…そうだね…」



73 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:34


お互い体を隠すため、掛け布団の端っこを引っ張りあいながら。
脱ぎ散らかしてある服を…こりゃまた随分盛大な脱ぎっぷりだわ…まぁとにかく拾い集め、
こっそりと着込む。あ、はい柴ちゃんパンツ。


ふぅ、よしこれで元通り。じゃ、そういうことで。また明日。
…って、わけにはいかないから〜、いやマジで。


「…は、話、続けようか…」
「…う、うん…」

取り乱す心を、逃げ出したい心を必死で抑えながら。
二人で昨日の夜のあってはならない出来事の記憶を手繰り寄せる。


「…それから。ご飯食べてから…?」
「…お酒。一緒に飲んだことないよね、って。よっすぃ〜ももう成人したのにねって…」
「あ、あぁ。そうだ。中々年下メンバーがいると飲む機会ないよねって、
それで、それで…」


…それだ。
間違いねぇ、原因は、それだ。



74 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:35


「…それで飲みに行こうってなってそれで…あれ?」
「…ないよね、そっから記憶。」
「…うん。」
「…うちも。」


そう…記憶はないけど…けどその先はわかる。

だってうちらもう子供じゃないんだもん、わかっちゃうもん、この状況。
ぐすん。

朝起きたら一緒に寝てたもん、抱き合って寝てたもん。
…ぴったりして…心地よく溶け込んじゃってたもん、お互いの体温。

絶対一晩中くっついてたんだもん、ぐすんぐすん。


これは…あれでしょ?その…
つ、つまりは…
――― お酒の勢い♪一夜のアバンチュールナイト♪ ―――


…やっちゃった。やってしまわれた…。



75 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:36


「あぁ…まずいよね…これ。」
「…まずいよ…私達はまずい。よっすぃ〜と美貴とかさ。よっすぃ〜とみうな
とかなら…まだありそうっていうか…あってもあぁそうなんだぐらいで
済むけど…私とよっすぃ〜は…ないよ。」
「や、そんな簡単に済んじゃうもん?!…ていうかこっちだって。梨華ちゃん
の許可もなく柴ちゃん家なんか来て…その上こんなことして…殺されても
文句言えないね…うち。」
「えー?別に梨華ちゃんは平気でしょ。私達そんなんじゃないもん。
むしろ梨華ちゃんはよっすぃ〜だよ、きっと。」
「いや、甘くみてる。柴ちゃんは梨華ちゃんの柴ちゃんへの愛を
甘くみすぎてる。アイツはマジで殺るよ。柴ちゃんのためならきっとうちでも
…6年連れ添った同期のうちでも…うぅ…し、死にたくないぃ…」
「…そんなこと言うなら私だって。…美貴やみうなにこんなことバレたら…
ぐ、ぐすん…」


迫り来る恐怖に、二人とも泣きながら抱き合う。
って、だからダメだって。抱き合ったら。

はい、離れて離れて。


あぁでもほんとどうしよう。
こんなことがヤツらにバレたら…タダじゃすまない…そうバレたら…ん?


「…って。そ、そうだよだからつまり…バレなきゃ。バレなきゃ…いいんだよ!!」
「え?」


そうだ、そうなんだ。
このコトが誰にもバレなきゃいいんだ、だって知ってるのは今のとこ当の本人のうちら
だけなんだし!!



76 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:37


「誰にも気づかれなければ…今まで通り。平穏な日々が過ごせるよ…命の危険を感じる
こともなく…ただただ、平穏に…」
「…よっすぃ〜…あ、頭いい…」


柴ちゃんとうちは、ガシィ!っと固く手を取り合う。


だって…うちらはともに同じ罪を犯したモノ同士…
いわば共犯者…

そして共に命を狙われるモノ…


「…裏切りはなしだからね、よっすぃ〜。」
「柴ちゃんこそ。」


いいかい?くれぐれも、 く れ ぐ れ も!!!


…このことが…昨夜のひとときのことがバレないように。

ともに最新の注意を払おう、あくまでも、今まで通り、今まで通り。


…お互いの身の安全のために。



77 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:38


「…で。今日も練習…だっけ?」
「うん。…試合、近いから…ね。」
「がんばろうね、がんばろうね柴ちゃん!!!」
「がんばるよ、がんばってよよっすぃ〜!!!」


明らかに間違った方向に気合を入れて、柴ちゃんとフットサルの練習場に向かう。
あ、…おじゃましましたぁー…


やけにスッキリした体と、反対に鉛のように重い心で。
いつ入ったんだかさっぱり覚えてない、柴ちゃんの部屋を。
二人で後にした。


そしていつもの競技場に着いたけど、やっぱりそこはいつもの競技場じゃないわけで。
…だって味方の中に敵がいるんだもん…ガッタスの中にいっぱいいっぱい敵がいるんだもん…ぐすんぐすん。


いや…何も怖がることはない。
そうだよだって誰も知らないんだ、うちらの過ちは…


だから今日だっていつも通り!いつも通り過ごせばいいんだよ!

柴ちゃんともう一度確認のアイコンタクトをし、二人で大きく息を吸い込む
…スーハースーハー。よし!
いざ…ロッカールームへ!


「「おっはよー!!」」



78 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:39


中には…おぉ、み、みんな早いなぁもう来てたんだぁ…いやぁ、感心、感心…

そこにはすでに勢揃いしている、我らがガッタスメンバー…ってあれ?


な、なに?なんでみんなそんな不思議そうな目で見て…?


全員から視線を向けられ、戸惑ううちと柴ちゃんに。

首を傾げたまいちゃんが、言う。


「あれ?…今日、二人一緒に来たの?珍しくない?」
「「!!!!」」


し、…しまったぁぁぁぁぁ!!!
やっちゃった…いつも通りじゃないこと、おもいっきりやっちゃった…


ありえない…うちと柴ちゃんが一緒に来るとか…ありえないじゃん!
…ていうかまいちゃん!
…なぁんでそんないきなり鋭いんだぁぁぁぁ!!


「違う違う違う!り、梨華ちゃん違うんだって!今、たまたま今一緒になっただけで…
家から一緒だったわけじゃないから!マジで!」
「違うの、美貴、みうな!本当、偶然今そこで…よっすぃ〜が…と、隣にいるなんて!
私全然気付かなかったし!!」

「…ちょっと〜まいが聞いたのにぃ〜二人ともまいちゃん無視?!」



79 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:40


しょうがないじゃん。
無視したってしょうがないじゃん。
だってまいちゃんにかまってる暇ないもん、梨華ちゃん笑ってるもん、でも目は
笑ってないんだもん。


あー…柴ちゃんの方も大変そうだなぁ…
ミキティとかいつも通り…いやいや、いつも以上に怖い顔してるし…
みうなとか超興味シンシンでうるさそうだし。
あー…大変だ。

「…よっすぃ〜…」
「?!!え、な、何?梨華ちゃん!!」


と、柴ちゃん達のほうにすっかり気を取られていると。
…梨華ちゃんの声が背後から…い、いつのまにバックに…


こ、ここは一つ…強気で!!ちゃんと…ちゃんと否定しなきゃ!!

「だ、だからね!!ち、違…違うんだよ、梨華ちゃん!!う、うち…柴ちゃんに
なにもしてな…」
「…早く練習しようよ。試合近いんだから。」
「そーだよね!!!そーだよ!!!!練習練習ね!!!」
「…変なの。よっすぃ〜。」


な、なぁんだぁ〜
別に疑ってるわけじゃないんだね?うちと柴ちゃんのことを。



80 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:41


そ、そりゃーそうだよね?!たまたま朝一緒に来たくらいで、まさかそんな
やましいことをしてるなんて思わないよね?!

ま…実際はしてるんだけど…


柴ちゃんのほうもひとまず問題なかったみたいで。
ミキティの怖い顔はやっぱりいつもの早朝による不機嫌さの表れだったんだな、きっと。

はぁ〜よかったよかったぁ!!


お互いまず第一の関門を潜り抜け、軽く指を立て健闘を称え合う。
気づかれないようにこっそりと…


っていうかあんまり意識しなくてもいいのかなぁ〜
よく考えたらそう簡単にバレるはずないだろうし…
バレたところで案外みんなそんな怒らないのかも…

…よしこったら心配しすぎちゃってたかしら?


なぁんだよかったぁ〜…っと、みんなとともにフットサルコートに向かおうとして。
…一つ、気がついた。


…梨華ちゃんって…あんなに声…低かったっけ?


あれ、おかしいな…あの子いっつも超ハイトーンボイスでキーキーうるさい…はずなのに。
あんな…美川憲一ばりの低音でしゃべってたっけ?


…ん?

…気のせい…?


それが気のせいではないことに、あちらこちらでメラメラと燃える炎のオーラに。
…うちと柴ちゃんは気がつかないまま今日の練習が始まった…



81 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:42


「でーさ!ここに敵が来るじゃん?!だからこーやってこーやってこーやってさ!!
ここをこう…ちょん!っと!よくない?これ、この作戦!!」
「いい!すごいいいよ!!よっすぃ〜!!」


フットサルメンバーみんなで集まって作戦の話し合い。
…いつも通りだ…バッチリだ!


まぁ、ちょっと柴ちゃんの相槌が大げさすぎる気もするけど…
ご愛嬌ご愛嬌。

これくらいなら気づかれたりはしないだろう…って、え?


な、なんで?
なんでまたみんなそんな…不思議そうな目で見てるの?!うちらを…


「あ、あれ?なんか…おかしい?この作戦…」
「…ううん。作戦っていうかさぁ…」


やはり首を傾げながら、まいちゃんが。
…言う。


「…なんでそんな二人…くっついてんの?」
「「えぇ?!!!!」



82 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:43


慌てて柴ちゃんと目を合わせ…って、ち、近!!!
い、いつのまに…うちらこんな接近してたの?!!!


『うわぁ!…ど、どうしようよっすぃ〜!!つい無意識に、…なんか昨日の流れで!!
初めての朝はくっついていたいの的な恋人モードに…』
『あーそうだよねぇ…やっぱ結ばれた朝はそうなるよね…って、お、落ち着こう柴ちゃん!!
へ、下手に離れるとまた怪しまれるかも…』
『えぇ?じゃあどうしよう…うぅ、美貴睨んでるよぉ…そうだよね、よっすぃ〜の隣は
いつも美貴のポジションなのに…いきなり私が取っちゃったから…うぅ…』
『あ、あぁ…睨んで…るねぇ…』


あ、明らかに不機嫌そうな顔で、ミキティはうちらを見ている…
梨華ちゃんは…あ、だめ、うち怖くて見れない…


はぁ、ま、まずいぞぉ…柴ちゃんも泣き出しそうになってるし。
なんとかうまい切り返しはないものか…
そ、そうだ…



83 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:44


「い、いやぁだってほら!キャプテンとキャプテン代理だからさぁ!!
しっかり作戦話し合わなきゃ。ね、柴ちゃん!!!」
「!!!う、うん!」

「…なぁるほどねぇ〜。やるねぇ、やる気だねぇ、二人とも♪」


…こんな答えで簡単に納得してくれて…ありがとう、まいちゃん。


「ま、まぁね!!ほらみんなももっとくっついて!!が、がんばるぞぉーおぉー!!」


…いっそみんなでくっついちゃえば、怪しまれないよね?
っと、無理やり円陣を組ませ、全員でがっちり肩を抱き合う。


梨華ちゃんやミキティはあからさまに不満そうだったけど、盛り上がる他のメンバーの
手前、一応はそのまま受け入れてくれたみたい。
ふー助かった。


その後もたびたび危ない場面が、気づくと柴ちゃんとくっついてたり、なんてことが
あったけど。
…まぁそれはマークの練習ということで。
なんとかごまかしごまかし、その日の練習を終えた。



84 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:45


「…疲れた…」
「うん…」


体力以上に精神力を使い果たしてロッカールームに戻り。
冷や汗でグショグショになったジャージを着替えていると。

…なにやらワイワイと楽しげなうちと柴ちゃん以外のガッタスメンバー。

…なんだ?どした?


するとうちらに気づいたののが、キラキラとした輝く笑顔で近づいてくる。
…あぁ…いいなぁのの、罪がないってステキ…

そんなののの手には、なにやら見覚えのある小さな紙が。
…ん?…あれは…


「ねぇよっちゃん、柴っこ。今日こそみんなで行こうよぉ〜すかいらーく!!
またタダ券くれたんだってー」


…あぁ、すかいらーくのタダ券ね。
そう…思えば昨日これがあったから…みんながドタキャンしたから…
だからうちと柴ちゃんがあんな過ちを起こすハメに…



85 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:46


柴ちゃんとうつむきながら目を合わせ、ガックリとうなだれる…

いや…すかいらーくグループさんには何の罪もないんだけどさ…


「…いいね。行こうか…」
「やったー!!みんなぁ〜よっちゃんと柴っこも行けるってぇ〜」


昨日のことを思い出し、重い気持ちになるうちと柴ちゃんに。
…やっぱりやっぱり首をかしげたまいちゃんから、余計な一言が発せられる。


「…あれ?そういえば二人。結局昨日ご飯行ったの?予定空いてたの二人だけだったよね?」
「「!!!!!!!!」」
「「………」」


…やばい…今…殺気を感じた…

気のせいなんかじゃないんだ…やっぱりうちら確実に…命を狙われている!!!
あのソルジャーたちに!!!!!



86 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:46


え、二人で行ったんですか?行ったんですか〜?って、ちょっと不満げに身を乗り出して
聞いてくるみうなや、顔を向けてくれているみんなはまだいい。
興味シンシン〜って感じなだけだから。


…怖いのは…なぜかこちらをちらりとも見ないあの二人…
…梨華ちゃん…ミキティ…


あぁ、や、やばい。
これはもちろん。
…本当のことを言うわけにはいかない…


うちと柴ちゃんは必死に弁解する、二人の超臨戦態勢のソルジャーに。


「い、行ってない行ってないよ。だって私とよっすぃ〜が二人で行ってもさ。
ビミョーじゃん〜。行くなら梨華ちゃんも誘っていくよ、ね?」
「…うん♪そうだよね〜やっぱ柴ちゃんは私がいないとご飯行きたくないよね♪」
「…キショ!」
「ひどい!!」

「い、いやミキティ、行ってないよ、うち!だってうちほら、あんま人とご飯とか苦手だし。
ミキティともまだ二人でご飯行ってないのに。柴ちゃんと行くなんてありえないってぇ〜」
「…そっか♪じゃあよっちゃん、早く二人で遊ぼうよ。お家に来るって言ってたじゃん。」
「い、行くよ行く行く〜♪もう今日にでも行っちゃうぞぉ〜」
「やぁだぁ〜♪」


…よし。
取り合えず二人の怒りの炎を静めることに成功した、グッジョブ。



87 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:47


はぁ〜よかったぁ〜…と、肩の力を抜き。
柴ちゃんともう一度大げさに芝居をする。


「ね!柴ちゃん!!ご飯なんか行ってないよね!!うちら!!」
「うん!!昨日はここでバイバイして帰ったもんね!!…って、よっすぃ〜。
シャツのボタン掛け違ってるよ?」
「え?うそ?…あー本当だぁ。直して、柴ちゃん。」
「もぉしょうがないなぁ…はい、貸して?」


よいしょよいしょっと…って、あれ?


おかしいな…なんか前よりももっと不穏な空気を感じてそのまま周りを見渡すと。

…さっき静めたはずのソルジャーたちの炎が…なぜか更に燃え上がって…って。
…え?


…あれ?


うち…柴ちゃんに何頼んでんの?
柴ちゃん…今うちに何してんの?


「「あぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!!」」



88 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:48


しま…しまった!!
やってもうたやってもうた!!


ソルジャーたちだけじゃない、他のみんなもすっごいビックリした顔で見てる!!
うちらを見てるぅぅぅぅ〜〜〜〜


柴ちゃんがうちのシャツの首もとを掴んだ状態で、二人とも固まり。
目で瞬時に話し合う!


『ど、どうしようよっすぃ〜!!これじゃ新婚ホヤホヤの朝、奥さんがダンナさんの
曲がったネクタイを直してあげてる図に…』
『あ、危うくいってきますのチューとか出るところだった…』
『恐ろしいね…無意識なのに…体の関係って恐ろしい…』
『本当だ…ってあぁ〜〜どうするの柴ちゃん!!このままじゃ嘘がバレちゃうよぉ!!』
『よ、よし…ま、まかせて!!』


意を決したような表情の柴ちゃんは、あえてうちのシャツから手を離さず。
恥ずかしそうに下を向きながら、それでもわざとらしく大きな声で言った。


「も、もぉ〜…ダメな子でちゅねぇ〜…よちこちゃんは。自分でできないんでちゅか〜」
「!!!!…ご、ごめんなちゃいでちゅぅ…ママぁ…よちこ悪い子でちゅぅ…」

「あっはっは!!なに赤ちゃんプレイ?!うける〜よちこちゃんだって〜かわい〜♪」


…うちとしては、まいちゃんに指差して笑われるとか、大変屈辱的なんだけど。
柴ちゃんもやった後ものすごい後悔っていうか自己嫌悪っぽくって、見るのが
かわいそうなくらい凹んでるんだけど。


…背に腹は変えられない…命あってのもんだよ…赤ちゃんプレイだって…



89 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:49


「ねぇ柴ちゃ〜ん。私もボタン間違っちゃったぁ〜直して〜」
「自分で直しなよ。いくつよ梨華ちゃん。」
「…ひどぉい…」

「よっちゃんボタンなら美貴が直してあげるって。はい貸して貸して。」
「え?!ちょ、み、ミキティ!!そんなひっぱったらぁ〜…ボタン取れちゃうよぉ…」

「はいは〜い。そこの4人遊んでないで早く行くよぉ〜ご飯ご飯♪みんなお腹すいてる
んだから〜。」

「「「「…はーい…」」」」


…まいちゃん。失礼だな。これは遊んでるんじゃなくてむしろ戦っているんだよ…?
命がけなんだよ…とほほ。


とりあえずお互いの隣をそのままソルジャー達にがっちりガードされながら。
それでもなんとかすかいらーくにたどり着き、ようやく落ち着いてご飯が食べられることに…


「あぁ、どうも!!昨日も今日もいらしていただいて!!ありがとうございます〜♪」
「「…え?…」」

…ならないのね。
あぁ、笑顔の店員さんが憎い…ちくしょぉ余計なことを…


ぐすん…お願い梨華ちゃん…ミキティ…
そんなに見つめないで…ていうかにらまないで…



90 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/16(土) 00:49


「柴ちゃん昨日ご飯行ってないって言わなかった?!よっすぃ〜と二人では行きづらいって…」
「…あー…言ったっけ?そんなこと。梨華ちゃんの聞き間違いじゃん?」
「そ、そんなはず!!!」

「…よっちゃん。人とご飯行くの苦手だって言ったよね。美貴ともまだ行ってない
のに他の人となんて行かないって言ったよね?」
「…い、いや…それはミキティ…日本語って難しいから…ちょっとした勘違いっていうか
ニアミスっていうか…」

「「「「「いっただきまぁ〜す♪」」」」」

…ねぇ、みんなシカトなの?


試合のときはあんなに頼もしいガッタスの仲間たちもこんなときは全く役に立たず。
ののがデザートのチョコパをおかわりするころになっても、うちらの話し合いというか
大討論会はちっとも終わらず。


フットサルコート外でのうちらの激しい戦いはまだ幕を開けたばかりのようです…





91 名前:ツースリー 投稿日:2006/09/16(土) 00:56
以上「恋は戦争!Do The フットサル!!」第1話です。
長い間更新が止まってしまい本当に申し訳ありません…

>>69 名無し吉柴 さま
いつもありがとうございます〜そして遅くなって本当にすみませんorz
ぜひぜひきゅうりと柴ちゃんをよっすぃ〜にたっぷり召し上がっていただきたいものですw
また新しい話を始めさせていただきました〜ぜひこれからもよろしくお願いいたします〜♪

>>70 名無飼育さん さま
レスありがとうございます〜お返事が遅くなって本当にすみませんorz
おいしいきゅうりの二人の続編もいつの日か書けたらいいなと思っております!
また新しい話を始めさせていただきましたので、読んでみていただけたらうれしいです♪
92 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/16(土) 23:35
二人の無意識の行動が笑えます。
会話もすごく、おもしろいです。
チーム内にも敵が?、大変だぁ。
がんばれ♪柴ちゃん&よっすぃ〜
続き楽しみにしてます。
93 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/16(土) 23:48
ワロスwwwwww
94 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:23



「要するに。よっすぃ〜が私と仲良くしなきゃいいのよ。それで解決するんだから。」
「…んな!う、うちだけが原因みたいなこと言わないでよぉ〜!!柴ちゃんが、うちと
仲良くしなきゃいいんでしょ?!!」
「そ、そんなこと言ったって!!どんなに気をつけてもつい、つい!!無意識に…
よっすぃ〜見たら…くっつきたくなっちゃって…あ、ねぇ。それならさ…」
「…え?」


明日のフットサル練習に向けて、柴ちゃんと深夜、電話での作戦会議。
…いや、内容はフットサルのことじゃ、ないよう。


全く記憶にはないんだけど、どうやらうちらはあの日、一夜をともにしてしまったらしく。
…そんなことが、あのツーソルジャーたちに。
…梨華ちゃんと、ミキティに。
バレたもんなら…あ、背中が寒い、寒い、ぞわぞわするぅ…


ってなわけで。
なんとかこのことを隠し通す計画を、うちらは必死に、リアルに命がけで考えているのだ。



95 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:25


「ね?この作戦はアリでしょ?」
「…えー…そんなんで…うまくいくのかなぁ…」
「いくよ!いく!!…あと、なるべくよっすぃ〜は私を避けてよ?作戦も大事だけど、
まず私たちのあの…無意識な…イケナイ行動を。無くしていかなきゃ意味ないん
だから!!」
「わ、わかってるよ!がんばる、がんばりますって。」
「それで…一日も、一日も早く。…元の私たちに…あの平和な生活に戻ろうね…?ぐ、ぐす。」
「な、泣かないでよ柴ちゃん!!うちだって…な、泣きたくなっちゃうよぉ…ぐすんぐすん。」


あぁ、どうしてこの平和な時代に、平和な国に、ジャパンに生まれたうちらが。
…こんなにも危険な生活を送らなければいけないのですか…?
悲しすぎる…


でも、いつまでも泣いてはいられないよね。ふぅ。
だって明日は来るんですもの、ソルジャーたちも来るんですもの。

よし。


「…明日に備えて。今日はもう寝ようよ、柴ちゃん。」
「うん。…そうだね。…じゃ、明日はくれぐれも。気をつけてね、よっすぃ〜!
この前みたいなことのないようにね!」
「だぁからわかってるって!!しつこいなぁ柴ちゃん。」
「ほんとにわかってる?作戦もちゃんと実行するんだよ?」
「はいはい。」
「じゃ、おやすみ。また明日ね!」
「へーいへい。」


全く、随分な言い方だよ。
さてはうちを信用してないな、柴ちゃん。
そもそも自分だって結構マズイ行動取ってるくせに…

よぉし、明日は見てろよぉ〜うちはバッチリ作戦成功させて、柴ちゃんに感謝と尊敬の
眼差しをさせてみせるからなぁ〜!!!


…って、あれ?
もしかしてまだ…繋がってる?



96 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:26


「し、柴ちゃん?」
「え?あ…うん。」
「…は、早く電話切りなよ。」
「…わ、わかった。じゃ、切るからね!!おやすみ!!」
「うん!おやすみ!!」

「……………」
「……………」

「や、やっぱよっすぃ〜が切ってよ!!」
「えぇ?!うち?!わ、わかった…じゃあおやすみ!おやすみ!」
「おやすみおやすみ!!」

「……………」
「……………」

「どどどど、どうしよう!!!うち切れない!!切れないよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「だ、だめだよ!!これじゃ…電話で愛を育む遠距離恋愛カップルみたいじゃん!!
私たち遠距離でもなければカップルでもないのに!!」
「で、でもでも!!柴ちゃん切れないよどうしよう?!」
「き、切ってよよっすぃ〜!!どうせ明日も会えるんだから!!!」
「んなこと言うなら柴ちゃんが切ってよぉ!!!」
「わ、私だって切れないもん!!」
「明日だって会えるんでしょぉ?!!」
「そ、それとこれとは…別なんだもん!!今日と明日は違うの!!…ってそうじゃなくて!
…お願いよっすぃ〜切って!!!」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜…で、できねぇーーーーーーーーー!!!!」


…フットサル以外にも戦いのある明日のために、たっぷり眠らなきゃいけないのに…
じゃなきゃ体がもたないっていうのに…


結局うちらはそのまま電話を切ることができず。
早朝うちのケータイの電池が切れるまで、そのやりとりは続けられた…



97 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:27


…おかげで案の定、いつもよりも体力も気力もない状態で練習場に到着。
そのうえ…あの作戦まで、実行しなければ…


そう、昨日柴ちゃんが思いついた作戦というのは、こうだ。

『うちと柴ちゃんが仲良くする。』→『梨華ちゃんミキティ怒りの戦士、ソルジャーへと変身』
『うちとミキティが仲良くする。』→『ミキティご機嫌、梨華ちゃん柴ちゃん独占、今まで通り丸く収まる。』

…つまりうちと柴ちゃんの組み合わせがまずいのであって、うちがミキティと仲良く
していれば、何の問題もないという。
なので、今まで以上に、この前柴ちゃんとくっついちゃったとき以上にミキティと
くっついて、ペッタリペッタリ仲良くしていれば。

いい、…そうなんだけど。


…果たしてそんなことでうちと柴ちゃんの関係の疑いが晴れるのだろうか…
この間のことも二人ともかなり気にしてたみたいだったけど、キレイサッパリ忘れてくれるんだろうか…


ビミョーだなぁ…よく考えたら。

…この作戦…ダメなんじゃないか?


…って。


「よっちゃん♪この後ご飯いこっか〜♪」
「え、あぁ、うん。…行こうぜベイベー♪」
「えへへ。やったぁよっちゃんと初ご飯♪」

「おぉーよかったね美貴。なんか今日は二人いつもにも増してカップルっぽいねー♪」
「ま、まぁねまいちん!!うちとミキティ…ラブラブだからさぁ!!!!」
「いやん♪よっちゃんったらぁ…」


うまくいっちゃったよ…簡単にうまくいっちゃったよ…
いいのかそれで、ミキティさんよぉ。



98 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:28


一日中、それはもうわざとらしくてありえないくらい、うちはなにかといえばミキティの隣にいき、ミキティにつきまとい。
いいかげんウザイとかミキティに言われるんじゃないかって、ヒヤヒヤしたくらいだったのに。

…ミキティはそれを上回るいちゃつきを、うちにしてきまして。
えぇ、それはもう、待ってましたとばかりに。えぇ、えぇ。


…なんだ、うちがちゃんと、ちゃんとっていうのも変だけどちゃんと、ミキティと
くっついていれば。
それで結構ミキティは満足してくれる…のかな?

かわいいもんだったんだなーミキティの怒りの炎なんて。よしよし。


うちがそんなふうにミキティとぴったりしていたおかげ…で?
梨華ちゃんも今日は柴ちゃんとずっと一緒にいられて、その笑顔の晴れ晴れしさったら、まぁ。


…以外といい作戦だったのかもなーこれ。

いやはや柴ちゃん、よくぞ考えてくれた。
…っと、少しくらいならバレないかなーって思って、柴ちゃんにいつものアイコンタクトを送ると…

…あれ?こっち、見てくれない?

…いつもなら…すぐ気づいてくれるのになーだって共犯のうちらだもの。


でも今日はダメか…ま、いいや。
また後で作戦成功って報告の電話すればいいし。
柴ちゃん、今日はうちがちゃんと切るからね。


「よっちゃぁん。早く行こうよぉ〜美貴お腹すいたぁ〜」
「おぉ、はいはい。んじゃ、うちら先帰るね〜ばいばい!」


笑顔で見送ってくれるガッタスメンバーと。
背中を向けたままの柴ちゃんにそう声をかけて、うちはミキティと練習場を後にした。



99 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:30


◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


…だめだ…むかむかする…

…自分で考えた作戦なのに。


昨日の電話…っていうか結局切れなくて今日の朝までかかった、あの電話の通りに。
私が言った通りに。

よっすぃ〜は美貴にぴったりくっついて、いちゃいちゃいちゃいちゃ、それはそれは
仲良くやっている。


…だけど私、なにもハグしろなんて、言ったっけ?
あんなに抱きしめあわなくても…いいんじゃない?


昔ならそんなの見ても、全然なんとも思わなかったのに。
むしろ試合中のハグとかさ、微笑ましいと思ってたくらいだったのに。

…だめだ。



100 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:31


今まではずっと美貴のポジションだったよっすぃ〜の隣が、
実は自分のものなんじゃないかって、思えてきちゃうなんて。

これって…錯覚?蜃気楼?


なんにせよ、このままあの二人を見ていたら、美貴の代わりに私が怒りのソルジャーに
なってしまう!


だから見ないようにしたけど、そうすると二人のはしゃぐ声だけがやけに耳に入ってきて、
余計に気分が悪い。最悪。


「柴ちゃん?どうしたの、なんか…顔色悪いよ?」
「…気にしないで。梨華ちゃんほどじゃないから。」
「ひ、ひっどぉい!!もぉ柴ちゃんのバカ!!ぷんぷん!!」


はいはい、キモイキモイ。

…でも…キモイ梨華ちゃんが言うとおり、私ってバカなのかも。


背中でよっすぃ〜と美貴が一緒に出て行くのを感じて、心からそう思う。


…あー!!!なんかむしゃくしゃする!!!スカっとしたいなぁ!!!!



101 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:32


◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


ミキティとのご飯も無事に終わり、うちは一人穏やかな帰り道。
いやはや…あれが浮かれモードミキティってヤツなんだね、
喜んでもらえたようでよかったよかった。

はーしかしこんな簡単なことであの危険な生活から逃れられるなんて、びっくりだ!!
食事中も、ミキティから一度も柴ちゃんとのことなんて、聞かれなかったし。


…ふんふん♪
これできっと平穏な生活が戻ってくるぞぉー
やったぁ!!

…あ、そうだそうだ、柴ちゃんに報告しなきゃ、今日のこと。
そして喜びを分かち合わなきゃ、うちらの罪は許されたと!


ポケットからケータイを取り出し、柴ちゃんに電話する。
少し長めに呼び出し音が鳴ったあと…柴ちゃんが出た。


「…もしもし?」
「あ!柴ちゃん?うちだようち!!いやぁ〜大成功だよ!!今日の作戦!!
ミキティもこの前の怒りっぷりがウソみたいにご機嫌でさぁ!!あーホッとした♪」
「…そうなんだ…よかったね…」
「そりゃーもう!!これで柴ちゃんもミキティににらまれたりしないよーきっと!!」
「…うん…ねぇ、よっすぃ〜。」
「ん?なに?」
「…今から…ちょっと、家来れる?」
「…へ?…柴ちゃん家?…いや、そりゃーもう場所わかるし大丈夫だけど…
あぁそっかお祝い?!祝勝会か!!うんうん、そうだね!!お祝いしなきゃね!!
行くよ行く!!」
「…じゃ、待ってるね…」
「はいはーい!!じゃあ後でね!!」


プチっと、思い切り良くうちは電話を切った。
うーん、この切りっぷり、やはり今朝までのうちとは違うねぇ♪



102 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:33


きっと柴ちゃんは家でうちらが安全な生活を手に入れたお祝いパーティがしたいんだろう。
んでやっぱり感謝と尊敬の目でうちのこと見ちゃったりなんかしちゃったり?

いやー照れますなぁ!!あっはっは!!


…っと、うちは今の柴ちゃんがどんな状況なのかも知らず、軽い足取りでるんるん
柴ちゃん家に向かっていった。


「…ピンポーン♪もしもーし!柴ちゃん?吉澤ひとみでぇ〜す!!」

…ガチャ。

中からは特別ノリのいい返事なんかは聞こえてこなかったけど、鍵の開いた音がしたので。
それを合図にうちは玄関のドアを思いっきり開いた。


「柴ちゃん?おじゃましまー…ああああああ?!!!」
「…よっすぃ〜♪」


うん、まぁ鍵を開けてくれたってことからドアの近くにいるんだろうなーって
予想はしてたけど、してたけど!!


な、なん…なんで!!なんで!!!
…だ、だ、だ…抱きついてきてんの?!柴ちゃん?!!!うちに?!!!!!!!


「ちょちょちょちょちょ!!!!!しばしば、柴ちゃん!!!なな、何してんの?!!」
「んー…?…ぎゅー…♪」


いや、ぎゅーじゃなくて、ぎゅーじゃなくて!!
ていうかそんなこと見りゃわかるっていうかされてりゃわかるから!!


そういうことを聞いてるんじゃないでしょうーが!!!



103 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:34


慌てて柴ちゃんの肩をつかみ、体を引き離す。
すると。


「んぅー…だめぇ…あと6回。…ぎゅー。」
「へ?!な、なんじゃそりゃ…ていうかなにその回数?!!」
「…だってぇ…よっすぃ、今日7回ハグしたもぉん…美貴に。」
「え?あ、そうそんなに?…って、なんで数えてんのよ?!柴ちゃん?!!」
「だからぁ…あと6回ぎゅーって、ぎゅーってしないと…ダメなのぉ…」
「いやダメなのはぎゅーの方だから!!しちゃダメだから!!」


と、言ってるそばからもう柴ちゃんはうちの背中に腕をまわして、すりすり体を寄せて
くる。


ちょっと待てちょっと待て!
おかしくないか?なんか柴ちゃんおかしくないか?

だってさっきからどうもろれつ回ってないし!!
顔も赤いし!
それに…やはり…このにおい…


「ねぇ…柴ちゃん…もしかしてお酒…」
「…飲んで…ないよ♪」
「いや飲んだよね飲んでるよね飲んじゃったんだよね?!!!!」


部屋の中を覗き込むと、床に空き缶が転がっている。
あぁ…あれ全部お酒なの?飲んじゃったの?飲んじゃったの…?



104 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:34


「…なんで…飲むのさ、お酒。この間すっごい反省したじゃん、うちら。
そのせいで命を狙われるハメになったっていうのに…」
「…だってぇ…寂しかったんだもん…悲しかったんだもぉん…」
「はぁ?なんで?」
「…よっすぃがぁ…美貴とばっか…いちゃいちゃするからぁ…」
「え?!だ、だってそれはそういう作戦じゃん!!ていうか柴ちゃんが決めた作戦じゃん?!」
「んぅ…そうだけどぉ…でもやなのぉ…他の子といちゃいちゃ…やだぁ…」
「…ぐっ!!!!!」


待ってよ、ちょっと待って。
うちはさぁ、この作戦によって柴ちゃんに感謝と尊敬の眼差しを向けられることを
想定していたわけよ。


な、なのにそんな…うるうる系は…困る!!!!弱い!!!!困るぅぅぅぅぅぅぅ!!!


「お、お願いだから、柴ちゃん。見ないで、そんな目でうちのこと見ないでぇ!!」
「…ぎゅー…」
「あぁ!!はいはい!!すりゃーいいんでしょ、すりゃー!!」
「…ぎゅー♪」


もうやけになって仕方なく腕を広げると、柴ちゃんは超幸せそうな顔で、ぎゅーをしてきた、
まぁつまり抱きついてきた。



105 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:35


やばい…これ全然、全然、フットサルでするハグと違いますよね?!!
まずいですよね?!!!

いや、今までにも柴ちゃんと試合中とか…盛り上がったときさ、ワーって、ワーって
ハグすることはあったよ?
でもこれは…まずい。


お酒のせいで熱を持った、ちっちゃくて丸っこくて柔らかい体とか。
髪の毛からするベタなシャンプーの匂いとか…こ、こいつさては風呂まで入りやがったな!!
人を刺激してどういうつもりだよぉ〜〜〜〜!!!!おい!!!!


いかん、なんとか、なんとか踏みとどまらなきゃ。
こうなったらうちだけでも気を確かに持たなきゃ!!


残り少ない気力を振り絞ってがんばっていると、…あーまたなんかジーって見てる。
うるうる見てる。こ、今度は…何?!!


「よっすぃ…」
「…な、何?!!」
「…ちゅー…」
「あぁ、ちゅーね。はいはい、ちゅー…ってだ、ダメだろう!!ちゅーは絶対ダメだろう!!」
「…えー…」


えーじゃねーよ、えーじゃねーよ!!!


自分は酔っ払ってるからいいかもしんないけどこっちはシラフなの!!まともなの正常なの!!!

そ、そんな状態でちゅーなんかしたら…それこそ大変な大罪だ…



106 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:36


こらえなきゃ…がんばれ…ひとみ…負けるながんばれっ……


と、うちが必死に絶えているのに。
柴ちゃんはちゅーちゅー言いながら人の腕の中でじたばた、おまけに抗議の意味か頭を
ぐりんぐりんうちの肩に押し付けてくる。


だから…ダメだってば…もう


「ちゅー…よっすぃ…ちゅー…」
「はい、ダメ。」
「…やだぁ…ちゅーしたい…よっすぃと…しゅーしたいよぉ…」
「しゅーじゃなくてちゅーでしょ。ほらもう言えてないし。
…そんな潤んだ瞳で見つめてもダメ。チワワじゃないんだから。しないものはしないの。」
「…ひゅー…してくれないのぉ…?」
「…し、してくれないの!ダメなの!!」
「…どぉしても…?」
「どどど、どうしても!!!」
「…じゃあ…しちゃおー…♪」
「えぇ?!!!」


ていうか、そんなの反則じゃん。
自分からしちゃうとか、もうカンペキうちの意見無視じゃん。


…もうこの酔っ払いに何を言ってもムダか…



107 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:37


「ちゅ♪ちゅ♪」
「あ、あのぉ…柴ちゃ…」
「んー…ちゅ♪ちゅ♪」
「………」


勢いづいた柴ちゃんは止まることを知らず。
人の口とかほっぺとか鼻とかあごとか顔中至る所に…ちゅっちゅちゅっちゅ…
わしゃペットか…


「…ほら。もう気がすんだでしょ…?はい、おしまいおしまい。」
「んーん!!だめぇ…もっとするぅ…」
「えぇ…まだ足りないのかよ…」
「だってぇ…」
「だって?」
「…よっすぃからしてもらってないもぉん…」
「!!!!!!」


いや、断ったよね。
しないって言ったよね、うち。


かなり何度もダメって言ったはずなんだけど…



108 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:38


「…なぁんでぇ…?なんでダメなのぉ…?」
「なんでって…そんなの…根本的な問題で…」
「…今日ずっと寂しかったんだよぉ…よっすぃ、美貴とばっかり…
私もいちゃいちゃしたかったのにぃ…よっすぃと、いっぱい一緒にいたかったのにぃ…」
「そそそそ、そのようなことを言われましても!!ワタクシも精一杯やった結果でして!!」
「…でも…みんなの前じゃ…よっすぃ〜の迷惑になると思って…我慢したんだよ?
いっぱい…寂しかったのに…ちゃんと我慢したの…えらいでしょぉ…?」
「あ、あぁ!!えらいねえらいね!!いよ!えらいぞ柴ちゃん!!!」
「だからぁ…」


あぁもうやばいマジやばい。
なに、なんなの?
酔っ払ってるくせにちゃんと人のツボを押さえてきやがって…この人!!!


弱いんだってば、ほんとに弱いんだって!!
そういう涙溜めた目で、しかも上目遣いとか、これまたベタだけど定番だけど
やっぱ抜群にやっばい!!

やばいって…言ってるのにぃぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜!!!



109 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:38


「…だから…我慢、いっぱいしたから…いい子にしてたからぁ…ご褒美にちゅーして…?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜!!!!!……ちゅ。」
「ん。…足りないよぉ…もっとぉ…」
「…ちゅちゅ。」
「…よっすぃ…もっとぉ…」
「あぁぁぁぁぁぁ!!!!もう!!!!!!!」


はいー…だめだこりゃ。
信じてたのに、うち、自分のこと信じてたのに。
裏切られた…ちくしょー吉澤のばかやろうー


「…よっすぃ〜♪」
「……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


唯一、味方の共犯者だと思っていた柴ちゃんからも攻撃にあい。
…耐え切れず、うちは泣きながらまた罪を犯すこととなった…



110 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:39



「………シクシクシクシク…」
「…ねぇ…」
「………シクシクシクシク…」
「…ちょっと……泣かないでよ、柴ちゃん…」
「………シクシクシクシク…」


いや…泣きたいのはね、…こっちなんですけども…


あの…その…そういうことが、終わる頃になると。
柴ちゃんの酔いもすっかりさめてきたらしく。


また再びのうちらのこの状況に気がつくと、サーっと顔を青ざめて。
そのままうちに背を向けて泣き始めてしまった。


はー…ひどい話だよ。
誘ってきたのは…そっちじゃんよー…
大体今回は柴ちゃんが原因なのよ?



111 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:40


「……そ、そうだったとしても…ど、…どうして…どうしてよっすぃ…止めて
くれなかったのよぉ…」
「…いや、うちだって必死に止めようとしたんだよ?…でも…結局その…」
「…なんでそんなに流されやすいの…?ばか…」
「だ、だって!!…んなこと言われたってさぁ…」
「結局よっすぃ〜は誘われたら断れないんだ…誰とでも…きっと誰とでもこの過ちを
犯してしまうんだ…それがたまたま…私だった…私だっただけで…」
「ひ、人聞きの悪いこと言わないでよ!!うちだってねぇ!!…その…
の、ののとか!!あさみとか…是ちゃんとかだったら!!もうね、きっぱりと!!
そりゃーきっぱりとお断りして…」
「謝って。その3人に謝って。土下座して謝って。」
「えぇ?!!ど、土下座?!!な、なんで…なんでそんな…」
「………」
「わ、…わかったよぉ…」


全く、おかしな状況だよ。
人を誘惑した本人が泣き出しちゃってさ。
…誘惑されたはずのうちが、今この場にいない3人に、土下座してるなんて。
すっぱだかなのに。あーひでー…ひでー…



112 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:40


人が土下座している間も、柴ちゃんのすすり泣きは止まらない。


「…シクシクシクシク…い、一度でも充分イケナイのに…に、二度もこんなこと…
あぁ…美貴、今頃包丁といでるよ…音が聞こえるもん…シュッ!シュッ!ってぇ…」
「き、聞こえないよ、そんなの。…まぁとにかく。…今回の作戦は失敗だなぁ…
途中までうまくいったと思ったんだけど…まさか柴ちゃんがヤキモチやいちゃうなんて…」
「や、やいてないもん!!ただちょっと…ちょっと…ムカってしただけで…」
「それがヤキモチっつーんでしょ?」
「そうなのかな…?」
「うん…また例の恋人モード入っちゃったんだよ…柴ちゃん…」
「…そっか…ごめぇん…」


二人ともがっくりとうなだれる。


はぁ…これじゃいくらうちがミキティのご機嫌を取ったところで、また柴ちゃんと
こういう関係を持っちゃったらさ、意味ないじゃん…

ん?そっか…それならさ…



113 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/09/24(日) 16:41


「ねぇ、柴ちゃん。今度はさ、逆にしてみない?」
「…逆?」
「そうそう、あのね…」
「…あ、…よっすぃ、そんなにくっついたら…ダメだよ、また…」
「え?…そ、そっか。…で、でもさ!!作戦会議は…小さな声でしないといけないじゃん?
だからほら、くっつかないと聞こえないし…」
「だ、だけど…」
「それにさ!!内緒話の練習にもなるじゃん!!現場で急遽打ち合わせしなきゃいけなく
なったときのために!!練習だよ!!練習!!」
「…練習?」
「そう、練習!!」
「れ、練習じゃ仕方ないよね!!」
「そうだよ!!だから柴ちゃん…もっとこっちおいで♪」
「うん♪」


えーそうそう、これはあくまでも作戦会議ですから。
別にその行為の後の余韻を楽しんでるとか、ただ肌が気もちいいからスリスリくっつきたいとか
そういうんじゃ一切ないんで誤解しないでね。
梨華ちゃん、ミキティ。


と、いうわけでして。
…こうしてまた一つ、うちらの罪の夜は更けて行くのである…





114 名前:ツースリー 投稿日:2006/09/24(日) 16:44
以上、第2話です。

>>92 名無飼育さん さま
レスありがとうございます♪あくまでも無意識ですから…w
笑ってもらえてうれしいです!またぜひよろしくお願いします〜♪

>>93 名無飼育さん さま
…テヘ♪
115 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/25(月) 00:12
柴ちゃん(ノ∀`)カワイー
風呂まで入りやがったな、にコーヒー噴きました。
次回も楽しみです。
116 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/25(月) 21:34
恐るべき、ツーソルジャー。
でも、よっすぃにとっては、柴ちゃんも・・・
柴ちゃんが可愛過ぎ!罪な女だな〜(笑)
よっすぃ、この後どうする?
117 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/26(火) 05:33
いいお話だ♪
2人ともガンバ!!
118 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/09(木) 00:34
全く見ることのない吉柴なので、楽しみに待ってます。
119 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/20(月) 03:59
まだかなぁ
120 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/26(日) 20:44
川σ_σ|| <よしこ(0^〜^)
川σ_σ|| <しばこ 川σ_σ||
なんだかつながり感じませんか? ガッタス万歳 ^^
121 名前:TETRA 投稿日:2006/12/09(土) 19:42
お久です^^;
よっすぃ〜に二人のソルジャー以上のソルジャーができちゃいらしたねw
122 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:27


カンペキだ。今度こそ、カンペキだ。

前回の作戦じゃー、柴ちゃんがさぁ。
…まったく、うちにぞっこんLOVEなもんだから、失敗しちゃってさぁ。…えへ。

まぁ、だからこれなら!!今回はカンペキなのよ!!なんたって!!


…攻守交替ですから!!!!


「…今さら。梨華ちゃんと仲良くしろとか言われてもなぁ…」
「いや、元々仲がいいのは分かってるよ、二人。だけどそのいつものサバサバした感じ
じゃなくて!!もっとこう…べったりと!!べったりねっちょりとした…
ライクアカッポーな感じで!!カップルっぽく!!
そうすりゃー梨華ちゃんは大喜びだし、周りのみんなも柴ちゃんと梨華ちゃんが
イチャついててもさ?うわ、梨華ちゃんキショイ!!…で、すむわけじゃん。
うちらに一切被害は被らないわけよ!!…ね?頼むよ柴ちゃぁ〜ん…」
「ううん…まぁ、またビミョーな作戦だと思うけどぉ…やらないよりは…ね。」
「やったぁ!!よし、これで今度こそうちらはツーソルジャーたちの攻撃から解放されるよ!!
自由を手に入れるんだよ!!イッツアアメリカンドリームだよ!!」
「自由はいいけど、よっすぃ〜自由すぎ。ほら、早く服着て。今日もまた練習行かなきゃ
いけないんだから。」
「…はーい。あ、柴ちゃん…シャツぅ…」
「んもぉ自分で着れるでしょぉ?…はぁい、これでよし♪」
「でへへぇ〜…ありがと〜…じゃあお礼のちゅー…って!!ま、また恋人モード入ってる
から!!!いかんいかん!!さぁ!!今日もはりきっていこー!!!」
「…ノリノリだったくせに…」


う、うるさいな…自分だってさー。



123 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:28


まぁ、とにかくとにかく。
いいこと思いついちゃったよ、天才かも、うち。

よし、今度の作戦こそうまくいくぞー!
だってうちは…
…ヤキモチ妬いたりなんかしないもんねー♪大人だもんねー♪

柴ちゃんが誰と仲良くしてよーがそんなの全然!!
全然どうでもいいわけですよ、どーでも。


だからどうぞどうぞ!!
梨華ちゃんといちゃついちゃってくださいよーやっちゃってくださいよー♪


そして今度こそ自由を手にいれるべく、うちらはまたいつものフットサルコートに向かい。
練習と例の作戦を実行した…わけですが。


「ねぇ柴ちゃーん。今日ご飯食べて帰ろうよぉー♪」
「梨華ちゃんしゃべり方がキショイ。…でもそうだね、最近行ってないし。ご飯行こうか。」
「きゃーやったぁ♪」


あーおかしい、おかしい。
いつもはただキショイだけの梨華ちゃんが、今日はキショむかつく。
なんだーおい。なんでそんなひっついちゃうわけ?
柴ちゃんだって変だよ。
なんで梨華ちゃんにベタベタされても嫌がらないんだよ。…あぁ、そっかそういう作戦なんだっけ…


しかしなんだ…?
なんだこのムカムカは…ダメだ…大田胃散飲まなきゃ…



124 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:29


帰りのロッカールームで、うちは背中ごしの二人の姿に神経を集中させていた。
いいや、ロッカーでだけじゃない、コートの中でだって。

…だって不必要にくっつきすぎなんだよ、梨華ちゃん。
いや、…石川。あえて呼ばせてもらおう、石川と。
いつもなら適当なところで柴ちゃんがはいはい、って適当にあしらうのに。
今日はそれがないもんだから、アイツ調子に乗りやがって。
…くそぉ…


「…よっちゃん?なんか元気ないね、練習で疲れちゃった?」
「え?いや…あぁ、うん、そうなんだ、ミキティ。だからうちもう、先に帰るね。
ミーティングはみんなでやっといてくれる?」
「え…大丈夫?一人で帰れる?そうだ美貴、送っていこうか?よっちゃん家まで。」
「へ?あ、い、いやぁ。大丈夫だよ、んじゃ、後はよろしく…」
「…っ。わかったぁ。気をつけてね?無理しちゃダメだよ?」
「…うん。ありがと。」


ミキティの優しさはうれしいけど、遠慮しておくよ。
だってさ、気のせいかもしれないけど送っていくって言ったときのミキティの目が、
ギラギラしてたような気がしたんだ。
一人で帰れるって言った時に、「ちっ」って舌打ちも、聞こえた気がしたんだ。

…怖いよ、ミキティ。


あぁもういいや、今日はもう身の危険のこともソルジャーたちのことも置いといて…
何も考えずに…さぁ、早く帰って休も…


「あ、よっすぃ〜待って!」
「…げ。」



125 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:30


そしてそちら側を見ないよう、見ないように、そぉっと帰ろうとしたところで。
そんなうちに気づいたらしいヤツが、石川が。
…きやがったぁ。


「…なに?梨華ちゃん。」
「うん、あのね。実はよっすぃ〜に謝ろうかと思って…」
「…は?」


な、なんだ?いきなり。
謝るってなにを?
いや、謝って欲しいことはソリャーたくさんあるけど。
いつもキモイこととか、うざいこととか。


…今日、柴ちゃんといちゃいちゃし過ぎたこととか。
…謝ってほしいけど。


怪訝な顔をする、うちとは反対に。
爽やかな笑顔で、そのまま選挙に出られそうなくらい、爽やかな笑顔で。
梨華ちゃんは話を続ける。


「私、最近柴ちゃんとよっすぃ〜が急に仲良くなったもんだからね?つい。妬いちゃって。
よっすぃ〜のこと影からこっそり睨んだり…よっすぃ〜が毎日下痢になりますようにって、
お星様にお願いしたりしてたの。」
「あぁ…うん、睨まれてるのは気がついてたけど…ってえぇ?!!ど、ど下ネタ?!!
そ、そういえば最近お腹の調子が…って、梨華ちゃんのキャラじゃないでしょ!!そーいうの!!」
「…うん、でもね?今日わかったの!!柴ちゃんの一番はやっぱり私なんだって!!
そりゃーそうだよね!もう6年以上親友続けてるんだもん!私たち。
その間いっぱいお泊りしたり、買い物いったりご飯食べたり、悩み事を相談しあったり。
楽しいこと、悲しいこと、たくさんの思い出を二人で作ってきたの!!
よっすぃ〜は知らないだろうけど!!よっすぃ〜は一生知らないだろうけど!!」
「…!!!!!」
「…だから、ね♪ヤキモチなんて妬いてごめんね?私がよっすぃ〜にヤキモチなんか
妬いて本当にごめんね♪それじゃ、これから柴ちゃんとまた新たな思い出を作りに行くから♪じゃぁね〜また明日♪」
「………」



126 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:30


そう言い放ち、力強く立ち去っていく、梨華ちゃんの後姿には。
メラメラと、闘志の炎が燃えたぎっているようで。
うちは何にも言い返せず、それを見送るだけだった。


…んだよ。
6年間が、なんだよ。

お泊りがなんだよ、こっちだってお泊りくらいしてんだよ、それどころかあんなことや
こんなことまでしちゃってんだよ!!もう、こう…どこをどうすると柴ちゃんが
気持ちよくなるかとか!知っちゃってんだよ!!石川知ってんのかよ!!えぇ!!
どうだー思い知ったか!!ハハン!!
ってそんなの…言えないけど…絶対、言えないけど…言ったらきっと人生終わるけど…


柴ちゃんとの秘密の関係を隠し通すための作戦だったのに。
自ら、それをバラしてしまいたくなる衝動にかられるなんて。
…この作戦は、失敗だ。
うちはヤキモチなんて妬くはずないって…思ってたのに。
柴ちゃんが誰と仲良くしてようが…悔しくないって…思ってたのに。


ダメだ…これは。
うちは…もう。


フラフラ、自分の足元が揺れるのを感じ取りながら。
うちは帰った。…帰りに、コンビニに寄った。



127 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:32


◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


あー…なんか疲れたなぁ…梨華ちゃんとご飯。
だってもう…今日はやけにテンション高いんだもん、あの子。

なんかいいコトでもあったのかなぁ?いや、あったとしたら真っ先にしゃべってきてる
よね、私に。うん、間違いない。
んー…じゃあなんだ?まぁ二人で遊ぶのも久しぶりだったし…喜んでくれてたってこと
かな?
よっすぃ〜が言う通り、あの子私のこと大好きなのかも。
もちろん、よっすぃ〜の言う変な意味じゃなくて。

…ふふん。ならまぁ、たまには構ってやるかぁー私も楽しかったしね。疲れたけど。
梨華ちゃんがうざすぎて疲れたけど。


そんなふうに、久しぶりのうざかわいい親友とのご飯をのほほんと想い返し、
家に向かって歩いていると。
本来の目的を思い出した。
…あーそうだ!よっすぃ〜に連絡しなきゃ。

メールを打とうとして、やめて、やっぱり電話をかけることにする。
…だって声が聞きたいんだもーん♪おやすみコールしたいんだもーん♪よっすぃ〜♪
…いかん、また恋人モード入ってるな、私。


おほんおほん、と二度ほど咳ばらいして、気持ちを切り替え、ノーマルモードに
戻してから。
ダイヤルする。



128 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:33


「…はい。」
「あ、よっすぃ〜?」
「うん…柴ちゃん?」
「うん、あのね、今日の報告しようと思って。梨華ちゃんとご飯いってきたよー
…っていうかさ、これ、この作戦意味あるのかなぁ?いつものことをしてるだけじゃない?
私が梨華ちゃんと仲良くしたところで別に…」
「…ご飯…いってきたの?」
「へ?うん、いってきたけど?」
「…楽しかった?」
「ん?まあ、それは…普通に。楽しかったけど…」
「うちと…いるより…楽しい…?」
「…は?」


…あれ…なんだろう…おかしくない?よっすぃ〜…
なんか、様子が…


「あのね、柴ちゃん…」
「?うん、何?」
「…お家、行ってもいい?」
「え、今から?」
「…」
「や、でも今からは…もう遅いし…」


それにほら…こういう時間帯は、あの…私たちには危険っていうか…


「…だめ…?」
「う、うーん…私がダメっていうか、世間がダメっていうか、つまり美貴が美貴が
ミキティがダメっていうか…」
「…でももう来ちゃったの…」
「ええええ!」


そんなばかな。そりゃーないよと、慌ててダッシュでフットサルで鍛えた脚力で
自宅へと帰ってみりゃあ。


「…よ、よっすぃ〜!いつからいたの!」
「…柴ちゃぁ…」



129 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:34


玄関の前で。
体育座りのよっすぃ〜の姿。

なぜかおめめはうるるんしてる。


「もーどうしたの?こんなとこで待ってたら寒かったでしょ?」
「…うん…寒かった…」
「かわいそうに〜…じゃあ、早く、中に入って…」
「…うん…あっためて…柴ちゃん、あっためて…」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!い、いや、そうじゃなくて!!ほら、あっためるのは
あの、こたつとか!!ストーブとかの仕事だから!!わ、私がするべきことでは!!」
「…だって寒いんだもぉん…体も…心も寒いんだもぉん…」
「?心も?…よっすぃ〜何言って…ん?」


おかしいと思ったの。
だって、寒い寒いと言いながら、よく見るとほっぺたはピンク色だし。
いつも大きい瞳が、今日はいつになくうるうるしてるし。

…ん?と、不思議に思って…よっすぃ〜の手元を見ると。
…ワンカップ。


「よっすぃ〜。それ、どうしたの?」
「んー?…買ったのぉ…コンビニで。」
「…飲んだの?」
「…飲んだの。」


…はぁ。

全く、お酒飲んじゃダメだって、散々言ってたじゃない、この間私が飲んだときは、
よっすぃ〜が言ってたんじゃない。
それを…しかもワンカップって…おっさんか。



130 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:34


「…ほら、よっすぃ〜。それこっちに渡しなさい。」
「…いや!」
「…ダメ!はい、渡すの。」
「…渡したら…あっためてくれる?」
「え、えぇ?!…いやまぁ…とりあえず、中入ろうか…」


まずいな…このままだと…またお酒の勢いパート3になりかねない…
どうにかよっすぃ〜の酔いを醒まさないと…

「って、おい。こらこらこら。」
「んー…」


と、考えながら、一歩部屋の中に足を踏み入れた瞬間。
この子ったら、抱きついてきちゃった。


「はいはいはい、離れてー離れてー…ダメでしょーこれ、ダメでしょー」
「…いやだぁ…」
「…んもぉ、よっすぃ〜。今日はどうしちゃったの?なんでお酒なんか飲んじゃったの?
この間、あれだけ失敗したじゃない、…私が。」
「…だってだってだってぇ…寂しかったんだもん…」
「…?なんで?」
「…柴ちゃんがぁ…梨華ちゃんと…一緒だったから…」
「え?!」


いやだってそれは…作戦でしょ?あなたの考えた…



131 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:35


「…けど…いやなんだもぉん…」
「なぁんでよ〜私と梨華ちゃんなんて。いつもの組み合わせじゃない。今までだって別に
それをよっすぃ〜が気にしたことなんか…」
「…柴ちゃんと梨華ちゃんがいつもどおりでも。…うちと柴ちゃんは…もう…
いつもどおりじゃ…ないでしょ…?」
「…え?…ま、まぁ…ここ最近はその…あ、新たな関係になりつつあるっていうか…
いや、なっちゃいけないんだけど…」
「うちはもう…耐えられないんだ…昔みたいに…柴ちゃんが。梨華ちゃんといるの…」
「…よよよよよよよよよよ!!!よっすぃ〜〜〜〜〜〜!!!!????」


やばい、まずい、超危険。

この子、酔っ払ってるはずなのに、いや、酔っ払ってるせいか、いつもよりなんか!!
妙に凛々しいっていうかキリっとしてるっていうか、あれおかしいな!!困ったな!!
さっきまでうるうるしてたくせにぃ〜〜〜〜〜〜!!ほっぺピンクだったくせに〜〜〜〜〜!!
なんで急にそんなになってんのよ!!!何スイッチが入ったの?!!
…かっこよくなっちゃダメ〜〜〜〜!!!!


「…悔しいよ…うちが知らない柴ちゃん…梨華ちゃんはいっぱい知ってるんだよね…」
「いやいやいや!!そ、そんなことないって!!そうでもないって!!!!」
「…けど…梨華ちゃんが知らない柴ちゃんを…うちは知ってるけどね…」
「え?…あ!あぁん!!」
「…耳。弱すぎ…ちょっと舐めただけで…これだもんね…」
「!!!!!」


し、知らなかった!!梨華ちゃんどころか私だって知らなかった!!
そっか私耳弱いんだぁ…って、そんなこと言ってる場合?!!!!



132 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:36


「まままままま、待って、よっすぃ〜、一回、一回離れようよ。そ、そうだお風呂は?!
お風呂入って…あったまろうよ!!ついでに醒まそうよ!酔いを!!」
「…大丈夫…体はもう…あったまってきたから…かなり…燃えてきた…興奮して…」
「だからだから!!そ、それがまずいんだって!!!燃えないで!!興奮しないで!!
お願いだから!!よっすぃ〜!!」
「…後は。心があったまればなぁ…協力してよ柴ちゃん…柴ちゃんが…かわいい声でさ。
よっすぃ〜よっすぃ〜って、もっと、もっとしてって、言ってくれればさぁ…いつもみたいに。」
「い、いつもみたいにとか言わないでぇ!!」
「そしたら…すぐ、あったまると思うんだ。…柴ちゃん、柴ちゃんのせいなんだよ…
うちが…こんな気持ちになるの…柴ちゃんのせいなんだから…責任。取ってよ…」
「…よ、よっすぃ〜…」


あぁ、まずい。
ダメだダメだと思っているのに、どうしてもこの体勢から抜け出せない。
だって気持ちよすぎなんだもん、これ。
よっすぃ〜がぎゅってしてくれると、キュン!ってなって。
あー…だめかな?これ。


「…柴ちゃん…」
「………」


うん、ダメだこりゃー。


やっばい、本当。

…耳気持ちいい。


◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇



133 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:37


「………シクシクシクシク…」
「…ねぇ…」
「………シクシクシクシク…」
「…ちょっと…泣かないでくれる?…よっすぃ…」
「…だ、だって……シクシクシクシク…」


ひどいよひどい、ありえないよ。
目が覚めたら、酔いがさめたら、またこの状況って。
サードタイムだよ、3回目だよ、ダメだって言ったじゃん。言ったじゃん。
1回目も2回目も言ったじゃん。そう誓ったじゃん、うちら。


「言ったよ?私は言ったよ、今回も。ダメだって。けどよっすぃ〜、もう酔っ払って。
話聞いてくれないんだもん。」
「…だ、だって…そ、そんなこと言ったって…な、殴ってでも、止めてくれればよかった
じゃない…柴ちゃんが…拒絶してくれればよかったじゃない…」
「え?…いやまぁ…それはその…耳が…耳触られると…私ダメみたいっていうか…
って、もう!!仕方ないじゃない!!やっちゃったものは!!今さら仕方ないの!!」
「や、やっちゃったとかそんなハッキリ言わないでよぉ…オブラートに包んでよぉ…
ミキティじゃあるまいしぃ…」
「…み、美貴…そうだ美貴に…ま、またこんなことが知れたら…うぅ…」
「…こっちだって同じだよぉ…り、梨華ちゃんにバレたりしたら…あぁ…」


…このパターン何回目だっけ?
ダメだ…本当に、このままじゃ…うちら…うちと柴ちゃん。
ツーソルジャーに負ける前に、プレッシャーに負けて灰になりそう…

あぁ、でも…
どうしたらいいんだぁ…


「…結局。周りがどうこう、っていうんじゃなくって。自分たちで食い止めるしかないんだよ。
梨華ちゃんと仲良くするとか、美貴と仲良くするとかじゃなくて。私たちが仲良くしなきゃいいんじゃない?」
「…それ、早く言ってよ、柴ちゃん。」



134 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:37


さらっと、言ってるけどさ。それかなり正統派な!素晴らしい作戦なんじゃないか?!!
そうだよそう!!そもそもうちらが………からまずいんだから、
うちらが………なきゃいいんだよ!!…きゃ、恥ずかしい。


「…とりあえず、お泊りとかなしにすれば。そう簡単にやれる状況なんかないし。
そういう行為さえしなければ…美貴たちも、命までは狙わないでしょ。」
「…だからそんなさっくりやるとか言わないで…柴ちゃん。うん、でもそうだよね。
よし、しばらくお泊りはなしにしよう。普段のフットサルの練習でも。
なるべくくっつかないよう心がけよう。」
「うん。そうすれば自然に…時間が解決してくれるよ、きっと。元に戻れるよ、私たち。」
「…元に…?」
「?うん。」


そう…だよね。
うん、元に戻ればいいっていうか、元のうちらに…戻るべき、なんだろうけど。
戻るための作戦を考えて…るんだけど。

でも、それでいいのかな?
…うちは本当に。
それを望んでるのかな…?


「よっすぃ〜?なに、どうしたの?」
「え?!…ううん、なんでもない!!よし、じゃあ早速明日からその作戦にでよう!!」


…うーん…
うちは…結局、本当のところは。
…どうしたい…んだろうなぁ…わっかんねぇなぁ…



135 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:38


モヤモヤする心ん中を抱えながら。
それでもとりあえずは、その作戦を実行するしかない、っていうか。


翌日の朝、なるべく柴ちゃんと目を合わさないように、接触しないように、家を出て。

到着したフットサルの練習場でも、もちろんそう心がけて。
…心がけ…始めた、そのときに。


うちらの決意を揺るがしかねない…
恐ろしい…知らせが入った。


「よっちゃん!よっちゃん!」
「…んー?なに?のの。」
「楽しみだねぇ!!久しぶりだねぇ!!」
「…?」


頭についたでっかいリボンをブンブン揺らしながら。
ののがはしゃぐ、その理由がわかんねぇ。

「なんだよ、どうしたの?なに浮かれてんのさー」
「だって、久しぶりじゃん!一緒に行くの!」
「?どこに?」
「ハワイ!!ハワイ!!」
「!!!!!!!!!!!!!!」


その声を、遠くで柴ちゃんも聞いていたようで。
ガタン!っと、ペットボトルの落ちる音がした。



136 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:39


「は、ハワイって…まさか…」
「ハワイツアーやるんだって〜ガッタスで♪のんすっごい楽しみなんだけどぉ〜♪」
「…ひ、日帰りじゃ…ないよね…?」
「えー!当ったり前じゃん!!よっちゃんはバカだなぁー。ハワイはね、外国なんだよ!
外国だから、日帰りは無理なんだよ、わかったぁ〜?♪」
「………」


いや、わかってるよ、わかってて確認してんだよ。
くっそぉ…ののにバカとか言われるなんて、超心外だ。
でも、それどころじゃ…ない…


「バナナボートまた乗ろうねぇー♪」
「のの、それはサイパンロケだよ…」


や、やばい…最大のピンチが、今まさに訪れようとしている…



137 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2006/12/16(土) 16:39


ぽんぽん、っと、肩を叩かれ、振り返ると。
後ろにはミキティが、そしてその先には柴ちゃんの肩を叩く、梨華ちゃんの姿が見えた。


「よっちゃん♪ハワイでもタイタニックしようね…♪」
「柴ちゃんとハワイなんてシャッフルツアー以来だねー♪あの頃を思い出して楽しもうね♪」


やべぇ…
この二人が一緒に行く…お泊りツアーなんて!!!
や、やっばすぎるぅぅぅぅぅぅぅ〜〜〜〜〜!!!!!


…果たして、うちと柴ちゃんは。
ハワイという海と太陽の開放感に打ち勝ち
なにもせずに…公式お泊り会を終えることができるのでしょうか…?


こ、怖いよぉ…柴ちゃぁん…




138 名前:ツースリー 投稿日:2006/12/16(土) 16:58
以上、第3話です。
ありえないくらい更新が遅くなりまして…本当にごめんなさいorz

>>115 名無飼育さん さま
遅くなってしまって本当にごめんなさいorzせっかく楽しみにしていただいていたのにーorz
こんな話ですがまたコーヒー噴いていただけるようにがんばりますのでどうかよろしくお願いいたしますorz

>>116 名無飼育さん さま
もう誰が敵かわかりません…むしろ作者の更新の遅さが一番のソルジャーかもしれません…orz
こんな調子ですがまた読んでいただけたら幸せです。どうかよろしくお願いいたしますー

>>117 名無飼育さん さま
レスありがとうございますorz二人のために作者もがんばりますorz
どうかまたよろしくお願いいたしますー

>>118 名無飼育さん さま
お言葉に甘えてこんなにお待たせしてしまって…本当にごめんなさいorz
これからもどうぞよろしくお願いいたしますー

>>119 名無飼育さん さま
まーだかなー…もういいよー…いやぁぁぁぁぁぁorz
ごめんなさい…取り乱して…
こんな話を待っていてくださる方がいるかぎり、がんばりたいと思います。
どうかまたよろしくお願いいたしますー

>>120 名無飼育さん さま
川VvV)<みきこ
( ^▽^)<りかこ
ガッタス本当に万歳です!あさみーみうなーorz

>>121 TETRA さま
おひさですーorzごめんなさいーorz
まだ読んでいただけていて…幸せです…ハッピーです…
これからもこんな作者ですが、どうかよろしくお願いいたしますー
139 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/20(水) 22:07
最初からまた読んでみました、すごくおもしろいです。
ふたりのやりとりも、周りの人達も。
これからの展開も楽しみです。
140 名前:ツースリー 投稿日:2006/12/24(日) 05:10

クリスマスイヴなので…ちょこっと短編を入れさせていただきたいと思います。
141 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:12


毎朝、寝不足で乗る電車の中は、私の第二の寝室のようなもので。
降車駅に着くまでの、30分の眠りは、本当に気持ちいい。やばい。


その日も、たっぷりとその眠りを堪能していたら、しすぎてしまったようで。
思いっきり、降車駅の扉が閉まりますアナウンスが聞こえてきた。


あぁぁぁぁぁ!!!!!し、しまった!!降りなきゃ!!!


慌てて立ち上がり、閉まりかけの扉へ向かって、猛ダッシュすると。
…何かにつまづいて。
ズッテーン!と。
…私は音を立てて、その場に転んでしまった。


痛い、恥ずかしい、そして降り過ごした…


最悪な朝だ、と。
そう思ったとき。


「ご、ごめん!!大丈夫?!!!」
「…え?」



142 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:13


床に倒れこんだままの私の目に、飛び込んできたのは。
すらっと白くてキレイな手。
…その先には、もっとキレイな顔。


か、かっこいい!!!!!!!!王子?!!!!!!!


あぁ、もしやこれは。
最悪な朝のフリをした、最高の朝、なんじゃないだろうかと。
運命の朝、なんじゃないだろうかと。
思った私が、甘かった。


「本当、ごめんね。うち…うち…足が…」
「足?…あぁ、そっか私あなたの足に…あの、いいんです。そんな…」


…お礼に…何かごちそうしますとか…そんなデートのお誘いなんていいんです…
いや、むしろ、私があなたの足につまづいてしまったおわびに、何か…
そうだとりあえず携帯の番号を…


と、私は一人で盛り上がり。
バッグから携帯を取り出そうとした瞬間。

…長い長い、夢から醒めた。醒めさせられた。


「うち足が!長くって!!…ごめんね♪」


コイツ…絞め殺したろか…?



143 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:14


「怖ぇ〜…初対面の人間に、いきなり殺意抱く?さすが柴ちゃんだなぁ〜あっはっは。」
「…初対面の人に。いきなり足が長いんでぇ〜とか言う?どんな自慢話?さすがよっすぃ〜だね、全く。」


その日から。
わたしの寝室だった電車の中は、言うなら喫茶店?
よっすぃ〜と、私を転ばせた長い長い足の持ち主のよっすぃ〜と、おしゃべりをする場所になった。


「だって、事実なんだから。しかたないじゃん。柴ちゃんと違ってさぁ、足長いんだもん。うち。
いやぁ困ったなぁ、参ったなぁ。」
「なに、私と違ってって、なに。」
「いやいや、なんでもないよ。」


…と、言いながら。
よっすぃ〜は私の足を眺めて、ニヤニヤ。
なによ…すっごい、感じ悪い。


初めてよっすぃ〜を見たときは。
薄茶色のショートカットのサラサラヘアーに、大きな瞳。
どうもはじめまして王子です、と。
言われても私はきっとそのまま、あーそうなんですかぁと、信じたであろう、くらい。
…ステキだなぁって、思ったのに。


まさかこんなにいじわるな、小憎たらしい人だと思わなかった。
でも…そんな人となんでかすっかり、仲良くなっちゃったんだけど。



144 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:14


「本当。詐欺だよね。よっすぃ〜、詐欺師だよ。顔と中身がこんなに違うなんて。
あやうく騙されるところだった。」
「はぁ?意味わかんないんですけどぉ〜。ていうか柴ちゃんこそ詐欺師でしょー
顔と体がこんなに違…」
「それ以上言ったらどうなるかわかってんでしょぉねぇ?!」
「いててててててて。」


私より頭一つ分上にある、その柔らかなほっぺたを。
ツネツネつねると。
大げさに痛がる仕草が、またむかつく。


ふーんだ…どうせスタイル…よくはない…ですよぉだ…
だけど、それを普通本人に言う?!
本人を目の前にして、へらへら笑いながら、言う?!!
あー本気でいじわるだ、この人。


ぷいっとそっぽを向いて、私が思い切り不機嫌さを前面に押し出してアピールしても。
よっすぃ〜は特別気にする様子もなく、会話を続ける。


「で?ときに柴ちゃん。今週末はどうすんの?」
「…週末?別に、いつもどおり。DVD借りてきて、お家でごろごろ…っは!!!」



145 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:15


…また意地悪くニヤニヤするよっすぃ〜の顔を見て、思い出した。
そっか今週の日曜って…クリスマスイヴ…


「お、お出かけ!!お出かけするの!!」
「またまたぁ〜。相手もいないくせにぃ〜。見え張っちゃってぇ〜wwww」


…この顔から、このむかつくセリフが放たれているとは、信じたくない。本当に。


ていうか、わかってるんなら聞かないでよ。それが人情ってもんじゃぁないの?!
…このいじわるよっすぃ〜め…


「…そんなこと言って。自分だって。予定なんてないんでしょ?どうせ。」
「まぁね。でもうちの場合は柴ちゃんと違って。誘いは山のようにあったけど、
断っただけだからさー。」
「どっちが見栄っ張りよ。でもそうね、よっすぃ〜一見、見た目がいいから。
初めはそれに騙されちゃう子もいるだろうね。でもみんなすぐ本性に気がついて。
逃げてっちゃうんでしょ。あー悲惨。」
「…はぁ。わかってないなぁ〜柴ちゃんは。」
「なにがよ。」
「うち。付き合ったらめちゃくちゃ優しいよ?恋人にはマジでありえないくらい優しいよ。
基本わがままとか、なんでも聞いてあげるし。いじわるなんて全然!!全然言いません
から。」
「…絶対うそ。想像できない。」
「本当だってばー。」
「うそうそ。」
「…なんで信じないかなー。」
「なんで信じれるかなー。」


そうよ、信じられるわけ、ないじゃない。
普段私はこんなにいじわるなことばっかり言われて、されて。


深く深く、傷ついているのに。



146 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:16


「柴ちゃんのどこが傷ついてんのよ。」
「ここが。」
「あぁ、その。小さくてあるんだかないんだか、わかんない胸が?」
「…ほぉらぁ!!!優しくなんてないじゃない!!!!!」
「だから、それは。柴ちゃんがうちの恋人じゃないからだって。
そうだ…一回、試してみる?この、クリスマスイヴに。」
「…へ?」
「イヴ限定で。ワンデー限定で、うちの恋人になってみればいいじゃん。
そしたら分かるよ。
うちの隠された優しさに。感動するよ、悔い改めるよ。柴ちゃん絶対。
…どうせお互い予定もないんだし。いいでしょ?それで。」
「ワンデー限定って…使い捨てコンタクトレンズみたい…」
「いいじゃん新鮮で♪CMでも使い捨ての方が目の健康にいいって言ってるし。」
「…ふむ。まぁそれとこれとは関係ないけど…」


…ちょっとおもしろそうかもしれない。
悔しいけど、よっすぃ〜が言うとおり。
予定はなんにもないし、どうせごろごろするだけで、このままだとせいぜい売れ残りの
クリスマスケーキを2割引で買うくらいの、イベントしかわたしにはないんだろうし。


…それに。
よっすぃ〜の見た目だけは、今でもホント、捨てがたいし。



147 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:16


「…いいよ?別に。」
「うし。じゃ、日曜の朝。柴ちゃんがいつも乗る駅の改札で待ち合わせしようよ。
…ふっふっふ。覚悟してこいよ…そこにはレオナルドディカプリオがいるくらいの心持で
来いよ…
さもないとメロメロになっちゃうぜ…柴ちゃん…」
「はいはい、期待しないで行きます。あ、よっすぃ〜!降りる駅だよ!!」
「おっと。んじゃ、日曜に!!アディオース!!かわいい子豚ちゃん♪」
「…それを言うなら子猫ちゃんでしょ?!!!!あぁむかつく!!!!!」


…こんな人に。
こんないじわるな人だって、わかった後に、今さら私が。
よっすぃ〜に…メロメロになるはずなんか、ないじゃない。


とりあえず、一人で過ごすよりは、いいかなくらいの軽い気持ちで。
私はその誘いを受け入れたんだから。
別に深い意味なんて、…ないんだから。



148 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:17


「やっばい!!ね、寝過ごしたぁ!!!」


前日が土曜日でお休みだったから、気が緩んで、ついつい夜更かししすぎちゃって。
日曜の朝、目が覚めたらもう、よっすぃ〜との待ち合わせの時間まで、数10分しかない。
うわぁ!!間に合わない、間に合わないぃぃぃぃ〜〜〜〜〜!!!!


取るものとりあえずで、私はざっとその辺に落ちていた脱ぎっぱなしの服をかき集めて。
寝癖頭を隠すために、去年か、おととしかに買った、真っ白い毛糸の帽子をかぶって。
慌てて家を飛び出した。ダッシュした。


うぅ〜〜〜〜い、いきなり遅刻だぁ…
絶対、よっすぃ〜に怒られる、またなんか嫌味言われるぅ〜〜〜〜〜


あぁ、やだな、なんかもう。
出だしからタイミングがはずれて、私の気分はすでに憂鬱になり。


駅が近づくにつれ、ますますその気持ちは大きくなった。


はぁ、っと、息を切らしながら、改札前の待ち合わせの人々の中で。
一番、怒っている顔の人を探す。
…けど、その人はよっすぃ〜じゃなくて。


あれ?って、思って。
もう一度、あたりを見回すと。
レオ様…と、まではいかないけど。
でも、この中で一番、ステキな笑顔を浮かべている人が、いて。


驚くことにそれが…よっすぃ〜だった。



149 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:18


「?よっすぃ〜…?…ご、ごめん!!ち、遅刻しちゃったぁ…」
「ん?あは。いいよ、別に。そんな慌てなくってもよかったのに。また前みたく
転ばなかった?」
「え?…う、うん。大丈夫…だった。けど…」
「そっか、ならよかった。じゃ、早速だけど行こっか。」
「へ…あ、うん。」


爽やかなその笑顔と言葉ともに。
スッと、差し伸べられた手のひらを見て。
私は戸惑う。


「え、あ、あのぉ…私は…この手を…どうすれば…」
「どうするって、握って?だってうちらは今日、恋人なんだよ?…ほら。」
「えぇ?あぁ…」


そういうとよっすぃ〜は柔らかく私の手を握り締めて。
また優しく微笑む。


「…よっすぃ〜…怒って、ないの?私…遅刻したのに…」
「そんなことで、怒んないよ。柴ちゃん、一生懸命走ってきてくれたじゃん。
あ、でも。転んでケガしたら大変だから。走るのはやめなさい。わかった?」
「…う、うん…」
「よし、あ、これ…帽子、かわいいね。」
「え?いや、それは…ただ…寝癖、隠すために…」
「ふぅん?でも、白くてかわいいよ。似合ってる。」



150 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:18


ポンポンっと。
その毛糸の帽子ごしに、私の頭を軽く叩いて。


…いつもとは違う、あのいじわるなニヤニヤとは違う、笑顔。


ど、どーしちゃったの?よっすぃ〜…
まさか、これが。
恋人には優しいっていう…よっすぃ…なの?

え、って、いうか。
今日一日、こんな感じのよっすぃ〜と、私はクリスマスイヴを過ごすの?

…それって…大丈夫?


いつもと比べ物にならないくらい、優しいよっすぃ〜に。
わたしは…変なことにちょっと恐怖にも似た不安を感じながら。
それでも手を引かれるまま、後をついていくと。


改札を通って、駅のホームへと向かう。



151 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:19


「…よっすぃ〜。今日、どこに行く…の?」
「んー。うちの家の…近くの駅。あのへん、結構飾りつけがキレイなんだ。
そんなに知られてないから、イヴでもあんまり混まないしさ。」
「…へー…。でも、それなら。待ち合わせ…よっすぃ〜の駅にしてくれて、よかったのに。
よっすぃ〜ムダに往復しちゃってるじゃない?いくら同じ路線の電車とはいえ…」
「いや、いいんだ。迎えに行きたかったの、うちが。ただそれだけだよ。」
「………」


…ねぇ、ちょっと、聞いた?
これがあの…いつも電車の中で…私をいじめてる…あの、よっすぃ〜?

あぁ…わかった、そうだよっすぃ〜はきっと。
電車に乗ると、いじわるになっちゃう性格なんだ。
今日、初めてだもん、電車以外の場所で会ったの。

そうだそうだきっとそうなんだ。
いや、そんな人いるのかどうか、わかんないけど。


でもきっと、電車がきたら、分かる。
電車に乗ったら、どうせまたいつものよっすぃ〜に逆戻り…


「柴ちゃん、おいで?」
「…はい…」


…電車の中でも。
優しいよっすぃ〜なんて。
あなた…よっすぃ〜じゃないでしょ?!!


私がきっと怪訝そうな顔で、疑うようによっすぃ〜を見つめていたからか。
よっすぃ〜は、苦笑いを浮かべながら。
繋いでいる手の指先を、トントンっと、叩いて。
私をあやすようにした。



152 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:20


「…うわぁ、すっごい。クリスマスー…って、感じ。」
「でしょ?」


よっすぃ〜が住んでいる街に降り立つと、そこはなんだか日本じゃないんじゃないかって、
くらい。
いや、よく見ると銀行のマークとか、コンビニの看板とかも見えるんだけど、
でもそんなの気にならないくらい。
ステキな景色が広がっていた。


「…おとぎの国に。来た…みたい。」
「はは。かわいいね、柴ちゃんは。」


…だって、本当にそんな気になっちゃうよ。
私の街から駅2つか、3つぶんくらいしか離れていないのに。
こんなにキレイな景色で。
…隣にいる、よっすぃ〜は、いつもから考えられないくらい、優しくて。


周りの子が、すれ違うたびに、自分の恋人そっちのけでよっすぃ〜を目にハートマーク
浮かべて見てるのを感じると、なんかすごい勝ち誇った気分になれちゃってさ。

…本当は…一人ぼっちの、負け組みクリスマス…の、はずだったのに。


断言できる。
今日の私は、夢を、みています。
これは絶対現実じゃぁ、ないはず。


「イルミネーション、始まるの。夕方だからさ…まだ、いっぱい時間あるから。
…うちに来ない?」
「…う、うん…」


夢だ夢だ、絶対、夢だ。
こんな優しくてステキなよっすぃ〜とか。
そのうえ家に誘われるとか…
…ねぇ夢…だよねぇ…?



153 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:21


…お家に着いてからも。
よっすぃ〜は手早にお茶を入れてくれて、寒くない?とか、いろいろ気遣ってくれて。
ソファーに座る私の足の上にさっとひざかけをのせて、自分も隣に座って、また手を繋いで。
これでよし、なんて、満足げに微笑む。


…なんか…いくら、恋人には優しい自分、っていうのを、私に思い知らさせるためだったとしても。
一日…限定の恋人の、私を。
普段は、ケンカのようなやりとりしかしない、私を。


よっすぃ〜は…こんなに本気に、本物の、恋人みたいに、扱ってくれて。
私は、自分が申し訳なくなった。


約束してたのに。
恋人として、よっすぃ〜と今日を過ごすって、約束してたのに。
寝坊して、お化粧も、ろくにしてなくて、服も適当で、寝癖すら直してなくて。
そのうえ、遅刻って…


いつものよっすぃ〜になら、きっと、めちゃくちゃつっこまれてるのに。
今日は、それがないから。
私はどうしていいのか、もうわからなくて。
ただ、なんとなく、小さくなっていると。


…そんな変化も、恋人のものなら。
よっすぃ〜は敏感に察知してしまうみたいで。



154 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:22


「…柴ちゃん?どうしたの?あ、帽子。とらないの?なんで?」
「…だ、だって。寝癖。…すごいもん…」
「んなの、気にしてたの?…気にしなくていいから。とりな?」
「…やだ…」
「しーばちゃん。」
「…やだぁ…」


もうなんか情けない気持ちと、なぜか恥ずかしさがこみ上げてくる。
いつもなら、電車の中で会う、よっすぃ〜になら。
寝癖頭を見られるのなんか、全然平気なのに。
…なんで今日のよっすぃ〜には…見られたくないんだろう、私。


必死に、帽子を取られまいと抵抗する私を。
よっすぃ〜はやんわりと静めて、さっと、腕を伸ばして。
私の頭から帽子を奪った。


「…う〜…」
「…全然。変じゃないよ?かわいいよ、柴ちゃん。」
「………」
「大丈夫。大丈夫だよ…」


こんなめちゃくちゃな頭を見ても、よっすぃ〜がかわいいなんていうから。
よっすぃ〜が、今日はどうしても優しすぎるから。
私はもう顔を上げることができなくなって。


うつむいたままでいると、ぐちゃぐちゃな髪を、よっすぃ〜が優しく手でとかしてくれて。
何度も、頭を撫でてくれて。



155 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:23


それが気持ちよくて、そのままでいたいなぁって、思う気持ちも確かにあった。
けど、ふいに、肩に腕をまわされて。
え?って、驚いていると、もう私の頭を、胸のあたりに抱え込むように。
…よっすぃ〜が、抱きしめてきたときに。


ハっと、した。
目が、覚めた。
夢から、醒めた。


「…よ、よっすぃ〜!!そうだ、そろそろ…い、イルミネーション!!見に行かなきゃ!!」
「…ん?」


ダメだよ、ダメだ。
流されちゃ…ダメだよ。


私がよっすぃ〜に流されそうになっているのか、それともよっすぃ〜が。
クリスマスの…雰囲気に。恋人のような…この場のムードに。
流されそうになっているのか、わからない。


ただ、でも。
こんなのが、おかしいっていうのはわかる。
だってやっぱり、わたしたちは。


…今日、限定の恋人のはず…でしょ?
いくら、恋人を装ったって、本当は。
…恋人なんかじゃ…ないんだもん。


…なのに…こんなこと、するの。
…やだよ。



156 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:23


「…イルミネーション。見に、行きたいの?柴ちゃんは…」
「い、行きたい!行きたい!!」
「…そう…でもうちは…いやだ。」
「な、なんでよぉ。よっすぃ〜、恋人には優しくするって…わがままだって、なんだって。
聞いてくれるって言ったじゃなぁい…」
「言ったよ、そのつもり、だったけど。…でもこれは無理。」


逃げようとする、私を。
よっすぃ〜はさっきまでとは全然違う、力の強さで捕まえて。

やっぱり抱きしめてくる。


それが、どういう意味でのものか、理解した、私は。
…涙が出るのを、抑えられない。


「…やだぁ…」
「…柴ちゃん…やだ?…」
「…やだよぉ…だって…今日だけじゃない…今日だけなのに…こんなことするの…
ずるいよぉ…ひどいよぉ…」
「………」
「今日しか…一日しか…よっすぃ〜は優しくないのに…よっすぃ〜の恋人で…いられないのに…
なのに…こんなの…こんな…やだぁ…」


泣きながら離れようとする私を、どうしてよっすぃ〜は抑え付けるんだろう。
なんで、その手を離してくれないんだろう。


それがなんで…私はうれしいの?



157 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:24


もう、わけがわからない。
いや、わかってる。


私はきっと、すっかり、完全に。
よっすぃ〜にまいってしまったんだ。
それが今日の優しいよっすぃ〜のせいなのか、それともいつものいじわるよっすぃ〜の
せいなのか。
どちらかはわからない、むしろ両方合わさって、なのかもしれない。


…好きになって。
このままどうしようもないくらい、夢中に、よっすぃ〜を、好きになったとして。
それに今、よっすぃ〜が答えてくれたとしても。
それは今だけのもので。
この先を約束してくれるものじゃない。


だから、いやだ。
絶対に、いやだ。



158 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:24


「…戻れなくなるもん…前みたいに…普通に、平気な顔で。…よっすぃ〜に会えなくなる…」
「…戻る必要…ないじゃん。うちは…はじめから。戻るつもりなんか…ないよ。
約束は…したけど、今日だけって…でも、本当は。うち、今日だけじゃなくて、
これからも…柴ちゃんと…」
「…うそだよぉ…よっすぃ、今日は優しいから…だから、そんなこと言うんだよぉ…
明日になったら…また、きっと。いつもの…よっすぃに戻って…私だけ…戻れなくなるんだぁ…
よっすぃを…好きになったまま、戻れなく…なっちゃうんだぁ…うぅ…」
「…そうじゃないよ。うちだって、もう戻れないよ。…ていうか、とっくに。
うちは柴ちゃんのこと…好きだったよ。柴ちゃんが…うちの足に、つまづく前から。
仲良くなる前からずっと…見てた、柴ちゃんの…こと。」
「…またうそぉ…」
「うそじゃないよ。柴ちゃんが電車で眠ってるときから、ずっと見てた。…寝顔、見てたよ。
…キス、したいなって。…見てた…」


そのとき、涙で滲む、視界の先に見たよっすぃ〜の顔は。
転んで…初めて、見た、あのときの顔よりも。
何倍も何倍も、キレイな気がした。


「…こんなふうに。」
「…ん…」


よっすぃ〜のキスは、明日からの不安とか、本当の気持ちとか、いろんなことを、
私に考えられなくさせるくらい。
犯罪的に、うまかった。



159 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:25


だけどそのキスだけに夢中になっていられる時間も、そう長くはなく。


「んーん!!やだぁ!!だめ!!だめ!!」
「え?な、なんで?今度はなに?!」


スルリと、これまたうまく、私の体の中に手を入れて。
服を掴んだよっすぃ〜の手を。
私はぎゅうっと握って、動かさせない、絶対に。


「なんでさ、なんで。ダメなの?え、いやだ?なんで?」
「…だって…」


…よっすぃ〜が一番…わかってるはずでしょ?
あなたが私に、いつも言ってたじゃない。


「…スタイル。悪いから…やだぁ…」
「え、えぇ?…なんだ。そんなこと。」


どうして、そんなことなんて、言えるのか。
…私はとても、悩んでいるのに。



160 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:25


よっすぃ〜が電車の中で、体のこと。
からかうたびに、怒ったふりをしていたけど。
本当はちょっと、結構、実はかなり。
…悲しかった。


だってそれって、よっすぃ〜にとって。
私は、好みの女の子じゃ、ないんだろうなって、
むしろ女の子と思われてすら、いないのかなって。

悲しかったんだよ、すごく。


いや私だって、よっすぃ〜の中身のこと。
いじわるだの最低だの、詐欺師だの。
いろいろ、言ってた…から。

おあいこと言われてしまえば、それまでなんだけど。


「い、いやうち。本気でそんなふうに…思ってて。言ってたわけじゃないよ?
ただつい、その、調子にのって。」
「…ううん、いいよ。…本当のことなんだし…」
「また、そんなふうに言う。」
「だってそうだもん。どうせ、そうだもん。どうせどうせ…」
「…んなことないってば、ほら。」



161 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:26


どんなによっすぃ〜が、服をまくり上げようとしても。
私は絶対その手を離さないようにして。


無言のやり取りが、もくもくと、何分か、続いた後。
よっすぃ〜は突然手を服から離して、そして私の頬に触れて。
あ、やっとあきらめてくれたのかなって。
安心して、気を緩ませる、私に。
甘く甘く、ささやいた。


「…ていうか、そもそも。興味のない子の体なら、見てないよ。」
「…騙されない、そんなの。」
「本当だよ。…今日だって。ずっと、うち…冷静なフリ、してたけどさ。
優しくしなきゃって、思ったから。優しくすれば、柴ちゃんが。
振り向いてくれるかもって、思ったから。
でも、本当はずっと。手、繋ぎながら。どうすれば、柴ちゃんに触れられるかって、
考えてた。
どうやって、柴ちゃん…抱きしめようって、考えてたんだよ?ぶっちゃけ、だから家に
誘ったんだし。」
「……だだ、騙されないぃ…」
「騙してないよ。本当だよ。」


だけど、それも、その告白もどうなんだろう?
そういうの、それが本当か、ウソかはこの際、置いておいても。
…普通、相手の子に、言うことかなぁ、こんなこと。



162 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:27


「…引かれるかもって、思ったよ、うちだって。でももう、てんぱってんだ。
いっぱいいっぱいだよ、うち。早く、なんとか柴ちゃん説得しなきゃって。
だって柴ちゃんが嫌がることなら、したくないから。…でも我慢できそうにも、ないから。
ねぇ、どうしたらいい?もうほんと、…無理やりにでも、しちゃいそうなんだ。
だけど無理やりには、したくないんだ。あぁ、どうしよう…柴ちゃん…」
「………」


自分の意志の弱さに、ほとほとあきれる。
さっきまで、絶対よっすぃ〜に体なんか見せないって、騙されたりしないって、
そう思ってたのに。


…もしかしたらこれ、罠なのかも、しれないのに。
私の体を見た後、またよっすぃ〜がからかうかもしれないのに、笑うかもしれないのに。


…なのに、なんで。



163 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:27


「…いいの?柴ちゃん。」
「…やだ!…やだけど…やだけどぉ…」


でももう、その手を止めることができない。


恥ずかしいけど、見られたくないけど。

でもよっすぃ〜が、触りたいって、言ってた、その言葉。
私も本当は思ってた、触って欲しいって。


…だから。


「…あるかないか。…わかんない、でしょ…」
「あるよ。…胸。思ってたより。」
「…ばかぁ…」


恥ずかしくて、顔から火が出そうだった。
…けど、ちょっとうれしかった。



164 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:28


一晩中、よっすぃ〜に抱きしめられて。

朝、目が覚めたら、やっぱりこれもそれもあれも夢…なんてことに、なってるんじゃないかと。

そんなオチなんじゃないかと。


恐る恐る、目を開けると。
大丈夫。


…ちゃんとそこに、恋人はいた。



「ふわぁ…」
「あー…ねむ。」


実は今日こそが、イヴじゃなく、本当のクリスマス、本番だというのに。
それが月曜日のせいで、わたしたちはそのままゆっくりもしてられず。


同じように、眠そうな顔を浮かべているカップルたちとともに、いつもの電車に乗った。



165 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:28


「ふー。あ、柴ちゃん。頭、寝癖すごいよ、超だせぇ。あはは。」
「…なによぉ…」


…やっぱり、よっすぃ〜のいじわるは。
恋人になっても、治らないんじゃない。
…さては、昨日の優しさは、口説くときだけのもの?
釣った魚に。絶対エサはやらないタイプでしょ。あなた。


と、釣られた魚の私は。
むすっと膨れながら、ぱぱっと、何度も髪をとかした。


「あーそんなんじゃ、とれないよ、ダメダメ。」
「…だけど、恥ずかしいもん。」
「うちに見られるのが?」
「いいえ。周りの人に、見られるのがぁー。」
「ふぅん。じゃあ。見えないように、してあげる。」
「え?」


って、ちょ!!!

待って、ストップ!と、言う暇もなく。
…私の頭は、よっすぃ〜の腕の中に、抱え込まれた。



166 名前:いじわるなメリークリスマス 投稿日:2006/12/24(日) 05:29


「ねぇ、これって…余計見られると…思うんですけど…」
「そう?ごめんね、うち。…腕も長いんだ♪」
「…ばかぁ…」


あなたのいじわるは、治らないみたいだけど。
でも、こんないじわる、悪くないな。全然。


そのまま、あなたが先に降りる駅まで。
私はいじわるな言葉と、温かい体温を。
たっぷりと堪能した。


あなたが、降りた後。

これからは、電車の中は。
私にとって、デートスポットになるのかぁ、なんて。


きっとデレデレの、甘い笑顔を。
私は浮かべていたと思う。




167 名前:ツースリー 投稿日:2006/12/24(日) 05:34
以上、クリスマスイヴ短編でした。

本編もろくに進んでないのに…申し訳orz

>>139 名無飼育さん さま
レスありがとうございます〜未だに読んでくださっている方がいらっしゃるとは…
更新が遅くて申し訳ない限りです…
本編の方は次回で最後になる予定なんですが、最後までお付き合いいただければ本当に幸いです。

年内の更新は、これで終了させていただきたいと思います。
また来年もがんばりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!
メリクリ&ハピニュー。
168 名前:名無し吉柴 投稿日:2006/12/24(日) 11:21
お久しぶりです。全部読んできました(>_<)
中でもクリスマスの短篇ヤバいです。グッと心を鷲掴みされちゃいました。
柴ちゃんが強烈に可愛いし、よっすぃ〜のギャップにやられました。
吉柴最高です!!
長編の続きも楽しみにしてます(∇〃)
169 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/02(火) 03:05
最初の作品から全て読ませていただきました。
甘くて甘くて切なくて、時におもしろおかしくて…とても楽しかったです!
ワクワクして待ってますので今後も頑張って下さいね(´∀`人)
170 名前:名無し? 投稿日:2007/01/02(火) 18:48
お久しぶりです。短編楽しませていただきました!
よっすぃーの軽く憎たらしく、でも憎めないキャラが素敵ですw
そして続き物のほうの2人に嵌まってしまっている私です。
これからの展開に期待してます!
171 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/28(日) 22:45
吉柴、大好きです。
作者さんの小説がきっかけで2人に興味を持って、今では虜(笑
2人とも魅力的ですよね。
その事に、気付かせてくれて、ありがとうございます。
短編も素敵でした。本編も楽しみに待っています。
172 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:44


「明日…うちに、来て?」
「!!!!!!!うううううううう、うん!!!!!」


きた。
キタコレ。


立ったでしょ、恋のフラグが!!!!
ずばりラブストーリーは突然に始まっちゃうでしょーーーーー!!!!



173 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:47


冷静に、冷静に。
落ち着こうと努力しても、やはりこの胸のドキドキとトキメキは隠せないわけで。
…いや、もう隠す必要はないんだ。


なんてったって…誘われたんだよ?家に。
それも…誕生日によ?彼女の。


これはもうつまりだから、そういうことなんだよ。
うぅ…感動です…あぁ、長かったなぁ〜これまでの道のりは。


友達の友達、から。
間を挟まずちゃんとお互いに友達ですと言えるであろう距離までは、わりとすぐに近づいた。
…けどそっから先の進展は、まるでなくって。


あぁ、もしかしてこれがうちらの関係のゴールなんだろうかと。
その先の未来なんて…想像するだけ、ムダってヤツなんだろうか、と。

悩んだものです。
淡い恋心をもてあましたものです。



174 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:47


しかし、しかぁし!!
いよいよ、報われる時がきたんだよ、恋心よ。
今日を境に…いや、今日からうちらは!!
うちと柴ちゃんは!!


さぁ新たなステップに!!!


「とうちゃ〜く!!!!!」
「「いらっしゃーい♪」」


ひとつ余計に聞こえてきた声に、うちの恋心と膝小僧は、もろくも崩れ落ちた。


「よしこ遅かったじゃん。まいなんかもう昨日から泊り込みよ?」
「?よっすぃ〜、どうしたの?」
「…いや。まいちゃんも。一緒だったんだね…。」


あぁ…30秒前の幸せな頃に戻りたい。
いや…いっそバブルの頃までタイムスリップしてしまいたい。
こんなむなしい未来が待っていたなんて、ちくしょう。



175 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:48


恋する柴ちゃんのお誕生日にお家に誘われたワタクシは、
ドキドキワクワクという、今となっては全く必要のなかった、高鳴る胸の鼓動を引き連れてやってきたのですが。

そこにはじゃまも…いえいえ、先客が。
そちらはうちと柴ちゃんの運命の出会いをコーディネートしてくれた人で、その名もまいちゃん。

確実にムードをぶち壊す危険要素の方が、すでにいらっしゃっていたので、うちのテンションはがた落ちです。


…っていうか。まいちゃん。
昨日の夜からって、言った?


「いや〜ほら、まいって常識人じゃん?待ち合わせには遅刻できないタイプっていうか
ざっと24時間前行動、ってヤツ?」
「その行動は迷惑以外の何物でもないと思うけど…?」
「…まいちゃん、昨日この辺で飲んでたらしいんだけど、電車なくなっちゃったみたいで
昨日うちに…まぁ今も飲んでるんだけど…」


なんてヤツだ。
聖なる柴ちゃんの誕生日イブ、そして当日まで酔いつぶれているなんて。
こいつ…



176 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:49


「あれぇ〜?なんかよしこ今日、おしゃれじゃない?ぎゃっはっは!!
なにはりきってんのよー主役はお前じゃないっつーの!!あっはっは〜」
「こいつ…シメていい?」
「個人的には許可したいけど…世間的に、ダメ。でもほんとだ、よっすぃ〜
すごいおしゃれ〜。どうしたの〜?」


い、いや…だってそれは…なぜなら。
あなたのお誕生日を、一緒に過ごすから、ですよ。
…それも二人きりでだと…思ってたから、ですよ。


「うんまぁ…別にね、深い意味はない…けどね。」
「えーでもすっごいいいよー。…ステキ♪」
「え、ほ、ほんとに?」
「うん!超いいよー」

「つーか、そんなことどうでもいいからそろそろ始めない?
パーティするんでしょ?ちゃっちゃとやろうよーちゃっちゃと。んで、早く飲もう♪」


一晩かかって完成したうちのファッショナブルなお洋服をどうでもいいとか。ほぉ。
あーほらほら。
だからシメた方がよかったんだよ、こいつは。


もうすでに飲んでいるくせに、まいちゃんがそんなことを言うので。
その言葉がきっかけになるのも悔しいけど、でもせっかくの柴ちゃんの誕生日だし、
そもそもそのための集まりな、わけだし。


…始めますか。

「柴ちゃん…お誕生日おめでとう。一緒にお祝いできて、うちは、とっても、とっても…」
「ハッピーバースデー!はいカンパーイ!!!」
「わぁい。二人ともありがとー♪」


…うん、柴ちゃんがいいんなら、いいんだけどね?
でも確実に飲むためだけに来てるヤツが一人、いるよね?



177 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:50


誕生日の人より早く、料理に口をつけ、酒をあおり。
空気の全く読めないまいちゃんは、まだケーキにろうそくフーもやる前から、
柴ちゃんがフライドチキンを食べて手がベタベタな状況にもかかわらず、
箱を無理やり渡した、ていうか押し付けた。


「はい、あゆみん。これ。誕プレ誕プレ。受け取って。ギブミー」
「…まいちゃん、英語間違ってるけど。」
「わーありがとー。何かなぁ…って、こ、これDS?え、こ、こんな高そうなのいいの?!」
「いいのいいの♪だって私DSライト買ったから♪」
「…おさがりかよ。」
「あ、でもうれしいよ!ゲーム好きだし!!ありがとう!!」


まいちゃんの使い古しをプレゼントとかありえねぇー…って、え?
し、柴ちゃん…うれしいのかい?
え、何?こういうゲームとか、そういう最新機器的な路線が正解だったの?
もしかしてうち…思いっきりしくじってる?


「さぁ、次はよしこ。よしこの番だよ。ごめんね、まい思いっきりハードルあげちゃったね?
こうなったらwiiかプレステ3は欲しいところだよね?ん?」
「ぐ、ぐぅ…」
「べ、別にゲームじゃなくてもいいから!!…ていうか。こうして、お祝いしてくれてるだけでも、
充分だよ。よっすぃ〜、今日は来てくれてありがとう♪」
「…柴ちゃん!!う、うちもね!!たいしたものじゃないけど…プレゼント用意して…」
「え?…ほんと?」



178 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:50


そうだよ。
おさがりのDSなんて、愛のないプレゼントとは、一味もふた味も違う。
うちからのプレゼントはもっと純粋な…そう、まるで愛の結晶のような、プレゼント♪


「こ、これなんだけど…」
「ちっせ!!箱ちっせ!!」
「もぉまいちゃんうるさい!!…開けていい?…わぁ。」
「き、気に入るか…わかんないけど…」
「…うれしい。」


おそるおそる柴ちゃんが開いた箱の中には…自分でいうのもなんだけど、中々かわいらしい、ピアス。
小さいけど、ちょっこっと光る石なんかもついていて…


「…し、柴ちゃんにきっと似合うと思って。たいしたもんじゃないけど…」
「そんなことない!!…すごいかわいいし…すごいうれしいよ?
よっすぃ〜が、私のこと考えて、買ってくれたんだもん。…大事にするね。」
「…柴ちゃん…」
「…よっす…」

「あーまたピアス?よしこ去年のまいの誕生日もピアスだったよねー。
もぉ、ワンパターンだぞ☆アイデア使い古しとか、よくないぞ☆」


…使い古しをプレゼントしたのは、どっちやねん。



179 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:51


と、まいちゃんの余計なちゃちゃは入ったけど、でもプレゼント渡せたし。
柴ちゃんも喜んでくれてるみたいで…お〜お〜そんなにピアス見つめちゃってぇ♪
むふふ。


「さ、柴ちゃん!!ぜひぜひつけてみて…」
「…も、お腹いっぱいになっちゃったね。片付けようか…」
「…へ?」


すると急に柴ちゃんは、スタスタ立ち上がって。
まいちゃんが抱えているワインのビン以外のテーブルの上のものを、ぱぱっと片付けだしてしまった。
まだケーキも食べていないのに。

え、え?

…え?怒って…る?
…Why?


その後、まいちゃんは一人陽気にお酒を飲み続けて。
いつしかつぶれ、柴ちゃんのベッドに勝手に横になり、眠ってしまった。

…念願の二人っきりに、やっとなれたわけだけど。

だけどその空気は重く、柴ちゃんの口はそれよかもっと重い。
一言も発せられない状況の中では、うちは帰ろうにもそのチャンスが、タイミングがなく。


…え、どうしたらいいの?
な、なんか言うべきなの?
うちが?うちが言うべきなの?そういう感じなの?



180 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:52


理由もわからず気まずい空気に、ものすごく戸惑いながらも。
うちは彼女に決死の覚悟で話しかけた。


「…柴ちゃん?」
「…なに?」
「な、なんか…怒ってる?」
「…うん。」


えぇ?!!!
ふ、普通、怒ってないよ、でしょ?
怒ってても怒ってなくても、『怒ってないよ』って答えるのが基本でしょ?!!

なんでそんな変化球投げてくんの?!!

打てない!打てないようち!!!
きゃー空振り三振しちゃう!!やばい!!!!


緊急事態におろおろ慌てるうちを、柴ちゃんはちらっと見ると。
…不機嫌そうに口を尖らす。



181 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:52


なに、なんで、どうして!!!!!
や、やっぱ…あれ?
あれからだよね…柴ちゃんの機嫌が悪くなったの。

あれを…渡してから。


「…ピアス。気に入らなかった?」
「…超、気に入った。」


んじゃーどうしてぇぇぇーーーー!!!!!
どうしてそんな怖い顔してるのぉぉぉぉぉ!!!!!


パニクル頭を抱えながら、なんとかその理由を探ろうと、言葉と顔とジェスチャーで必死に問い続けると。



182 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:53


そのうち…ポツリ。
柴ちゃんが、言った。


「…まいちゃんにも…あげたんでしょ…」
「へぇ?」


いや、そりゃーあげた…けど?
でも、たまたま、まいちゃんへのプレゼントと柴ちゃんへのプレゼントが同じピアスになっちゃっただけで。
面倒だったからとか、適当に選んだから、一緒になったってわけじゃ。
そういうんじゃ、全然ないんだよ?


「…適当とか、思ったわけじゃない。」
「あ、そう?それじゃ…」
「でも、いや。」
「えぇ?!な、なんで?!!ピアス、気に入ってくれたんでしょ?!!」
「気に入ったけど、いや。」


おーい!!誰か!!!通訳、通訳してくれぇい!!!
意味がわからねー!!!理解できねぇ!!!!これは本当に日本語なのかい?!!!


ぐったりうなだれ、悩むうちに、あきれたのか。
…それとも…自分の想いを、うちに分かってほしいと、思ったのか。


柴ちゃんは尖らせた口で続ける。



183 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:54


「…そーゆー…アクセサリー、とか。体に身に着けるものは…なんか、意味があるのかなって。
思っちゃう。思っちゃったのに、私は。なのに、よっすぃ〜はまいちゃんにもあげてて。
それがいや。」
「え?…あぁ。…で、でも!そんな意味をこめて、まいちゃんにピアスプレゼントした
わけじゃ絶対、絶対ないから!!ありえないから!!」
「…だから。私のピアスにも、意味はないんでしょ?…うれしかったのに。
期待、しちゃったのに。よっすぃ〜がくれる、ピアスには。
…私が望んでるような、意味はないんでしょ?」
「!!!!!!」


ちょっと待って、これはピンチなの?チャンスなの?どっち?!!!!
どうやら、それを決められるのはうち。


…うちに、かかっているのです。
…助けてください。


「ち、違うよ!!まいちゃんにあげたピアスと、柴ちゃんにあげたピアスでは!!
そらーもう、全く違う!!別物!!」
「…どう違うの?」
「え?そ、そうだなぁ…分かりやすくいうと、値段が!!値段が3倍近く違うんだ!!
もちろん柴ちゃんにあげた方が高いんだよ!!!えっへん!!!」
「…そういうことを、聞きたいんじゃないもん。」
「!!い、いや!!それだけじゃない、値段だけじゃなくて…その、き、…気持ち、も。
気持ちも…違う…」
「…どんな、ふうに?」



184 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:59


どうやらもう、思い切った回答を聞かないと、彼女は許してくれないらしい。


「だ、だから…まいちゃんのプレゼントには、意味はこもってないけど、柴ちゃんへの
プレゼントには、ちゃんとした意味があって…」
「…どんな、意味?」


言わせますか、それを。

…いやー言うのはいいんだけどさーていうか言うつもりだったんだよ?昨日までは。
フラグたったと思ったから、さ?

…けど…


「う、うちだって。柴ちゃんが…家に、来てほしいって。言ってくれたとき。
すごい、うれしかったんだよ。しかも柴ちゃんの、誕生日の日だし。
けどいざ来てみたらまいちゃんがいてさ?…それって、このご招待には、
特別な意味はない…ってことなんでしょ?」
「ち、違うよ!!」
「けど、まいちゃんも…」
「だ、だっていきなり二人きりで誘ったりしたら!!…よっすぃ〜…引くかなって…思ったから…」


んなわけないじゃん!!!引くどころか押し寄せるっつーの!!!!
そらぁもうグイグイ来ちゃうっつーの!!!!

え、でも、ということは…



185 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/22(木) 23:59


「ご招待。う、うちが。期待しているような…意味で、いいってこと?」
「…ピアス。…私が。期待しているような…意味でいいの?よっすぃ〜…」


その言葉を合図に。
そろりそろりと。
二人の距離がゆっくり縮まっていく。


そっと手が重なって。
互いに目を見つめあいながら、想いを伝え合う。


「…好きだよ、柴ちゃん。」
「よっすぃ〜…大好き。」


てへ♪



186 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/23(金) 00:00


あぁ…なんだか今日、いろいろあったけど。
予定通りに、行かないラブストーリーでは、あったけど。
でもまぁ、終わりよければ全てよし。


キラキラと輝く君の笑顔に、見とれながら。
うちは、手に入れたばかりの幸せをかみ締めるのであった…


「ぐぉ〜!!!がぁ!!…グゥ〜…」


と、おっとそういえば。
…寝ててもじゃまなやつが一人、いたんだった。


「あ〜…うるさいな、こいつ。」
「でも。…今日、勇気出してよっすぃ〜誘ってよかった♪すごい、いい誕生日♪」
「え〜…でも、うちはさぁ。もっとちゃんと過ごしたかったな、柴ちゃんのせっかくの
誕生日なんだから。」
「ちゃんとって?」
「ん?いや、だから…まぁその…ちゃんと…二人っきりで…ね。」


そういうと、柴ちゃんの頬が、ポっと、赤く染まる。



187 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/23(金) 00:00


あ、いや、そぉんなやましい気持ちとかじゃないよ?!
ただほら、できれば二人だけでお祝いしたかったなっていうか…
もっとこう、いろいろな形でお祝いを表現したかったなっていうか
ぶっちゃけ肌と肌で愛を確かめ合いたかったなっていうか…


…うん、リアル本音です。


「でもま、今日はちゃんと想いが通じ合っただけでも、よかったよ。
後は…来年のお誕生日の、お楽しみにでもしますか…ね、柴ちゃん?」
「………」


…おや?
なぜに、無言?


まさか、引かれちゃった?
うち、調子に乗って余計なことを、言い過ぎた?!


このままじゃ、せっかく掴んだ愛しの君が、ラブが逃げていきかねないと。
必死に、弁解しようと、うつむいた柴ちゃんの顔を覗き込むと。


淡く染まった頬で。
うるんだ瞳で。


彼女はうちの手をそっと掴んで、言う。



188 名前:ラブストーリーは誕生日に?!! 投稿日:2007/02/23(金) 00:01


「…まだ。今年の誕生日、終わってない、よ…?」
「…え?!!!」


それそれそれそれって!!!!それって、もしかして!!!!
…いいんですか?!!!!!


「し、柴ちゃ…う、うちならベッド空いて…っていうか!!だ、誰もいない…けど。
くくく、来る…」
「…来る。」


そうして、私たちは。
イビキをかきながら眠る、まいちゃんを華麗に部屋に残し。


いそいそと愛の逃避行へと出かけるのでした。
急げ!!!!誕生日終わっちゃうぞ!!!!


走り出せマイラブ!!!!センキュー!!!!




189 名前:ツースリー 投稿日:2007/02/23(金) 00:10
急げ!!急げ!!
…終わっちゃった誕生日orz
短編の更新終了が誕生日に間に合わず。柴ちゃんごめんなさい。

>>168 名無し吉柴 さま
お久しぶりです!!レスとってもうれしいです、ありがとうございます〜
せっかく本編の続きを楽しみにしてくださっているのにまた短編書いてしまいました。
柴ちゃんの誕生日ということで、どうぞお許し下さい〜
引き続き亀な更新ペースですが、これからもよろしくお願い致します!!

>>169 名無飼育さん さま
はじめまして!!全て読んでいただいたということで…どうもありがとうございます〜
お疲れになりませんでしたか?
これからもどうぞよろしくお願いいたします!!

>>170 名無し? さま
いつもありがとうございます〜すみません、また短編になってしまいましたorz
しかも更新がとてつもない遅さにorz
本編の方も、おそらく次で最終話になるかと思いますが、最後までお付き合いいただければ幸いです♪

>>171 名無飼育さん さま
ありがたいお言葉の数々…幸せですorz本当にありがとうございますorz
せっかく興味を持っていただいたのに、遅い更新で申し訳ありません。
これからもどうかよろしくお願い致します!
190 名前:TETRA 投稿日:2007/02/23(金) 00:20
きっと来ると思って張付いてて正解でしたw

まいちゃんww
ヤキモチ柴ちゃんかわいいw

191 名前:TETRA 投稿日:2007/02/23(金) 00:22
!!!
ごめんなさい…
ageちゃいました…
192 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/23(金) 22:40
マイマイだけに、マイペース?(笑)
ふたりのやりとりがかわいい。
素敵な誕生日を過ごせてるといいですね。
193 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/26(月) 23:12
わーなんていうかすごくいい拗ね柴ちゃんですねw
さとたんがまたいい味出してて好きです。
194 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:09


そろーり、そろーり。
ゆっくり後ろから近づく、もちろん、気づかれるように。気づいてもらえるように。
アピールしながら。


「…柴ちゃん♪」
「…なに?」


またまたぁ、分かってるくせにぃ♪

たぶんそれほど興味もなさげな内容のTVを、ぼんやり眺めていた彼女。
優しく腕をまわして、後ろから抱きしめる。


「だめ。…今、TV見てるの。」
「えー。」


このTV?この、格差社会がどうのこうのって、TV?
うそうそ、絶対、別に見たくないくせにー。


「そんなことより…ね、柴ちゅわぁん…」
「…や…」



195 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:09


彼女のあごを優しくソフトにつかんで、こちらを向かせて。
そっと、ちゅっと、ぶちゅっと。


2、3回それを繰り返して。
頃合を見計らって…服の中に手を…


「…も…やぁだっ…てば…」
「…柴ちゃーん♪」


うんうん、いつもながら嫌がるフリが上手だなぁ、柴ちゃん♪
こう、じらされると、余計に燃える、つーのがわかってるねぇ、ちみは♪


と、さらにうきうき、乗ってきたうちは。
いよいよ肝心な場所に手をすべらせ…


「…やだって!!言ってるの!!!!!」
「…へっ?」


…と。
気がつくとうちは突き放されて。
立ち上がった柴ちゃんに、怒りの目で見下ろされていた。


…え?!!!え、な、なに?!!!!
…なんで?!!!



196 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:10


全く、分からない。
どうして、拒絶されたのか。
しかもキレ気味に。


な、なに?
いつものあれじゃないの?嫌がる、フリ、なんじゃないの?


あっけにとられているうちに、冷たく言い放たれた言葉。


「いつも…よっすぃ〜は。…そのことしか、頭に。…ないの?」
「!!!!!!!!!!」


ガーン…ガーン…っと。
頭の中に、除夜の鐘が鳴り響く、一人行く年来る年の、間に。

柴ちゃんはさっさと、ベッドに入ってしまっていた。


…な、なに?
なんだって?



197 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:10


彼女に言われた言葉を、もう一度思い返す。

そのことしか、頭にない?
うちの頭には、…え、えっちしか、ないって?
そう言われたの?そう、言ってるの?柴ちゃん?


…なにが、悪い。
それの、なにが!!!…悪いんだぁぁぁぁぁぁ!!!!


愛し合うカップルが、そういうことをするのは!!!
当たり前のことじゃないか!!
大切なことじゃないか!!人生で一番重要なことじゃないかぁぁぁぁぁ!!!!


と、言い返してやろうと、うちもベッドに向かうと。
むすっと不満げに口を尖らせたまま、眠りにつく柴ちゃん。
…か、かわぇぇ…


そういうの、見せられると!!!
また、また!!!
…燃えてきちゃうじゃないかぁぁぁぁぁぁ!!!!!


ムラムラ、湧き上がる感情を、なんとかこらえ。
…っていうか、これを、こらえるのが、どれだけつらいか。
えっちで頭がいっぱいな状態っていうのが、どれだけつらいものなのかを。


こいつにも…勝手に眠ってしまった、柴ちゃんにも。
思い知らせてやる…!!!

…逆襲、してやるぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!



198 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:10


と、決意したうちは。
早速、次の日から、その作戦を実行に移した。

そう…目的は、柴ちゃんに。柴ちゃんの、ほうから。
うちとえっちしたいと思わせること、できれば、言わせることだ。


そこで、考えた。
どうすればそうなるのか、そう思わせられるのか。

つまり、うちと同じことを思わせたいんだから、うちと同じ状況にすればいい。
…うちが、柴ちゃんをじらしてじらしてじらし倒してやればいいのだ。


…確かに、今までは。
ついつい、自分の欲望を抑えられず。
柴ちゃんがそういうことを望む間もなく、望む必要もなく、してしまっていた。

…だから。
今回は、そうさせない。

…望ませてやる…うちを欲っすぃと、思わせてやるのだ…



199 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:11


「…怒ってるの?よっすぃ…」
「ん?どうして?…なにを?」
「…ううん。」


昨日のことを、やはり彼女も反省したのか。
それともいつものように夜になっても、何もしてこないうちを、不思議に思ったのか。

彼女は気まずそうにそう聞いてきた。


…ふっふっふ…いいぞぉ…
よし、攻撃…スタート…


「…柴ちゃん、もう。寝ようか。」
「え?…うん、いいけど…」



200 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:11


そのまま二人でベッドに入り。
彼女が目をつぶった頃に、そっと。
…手を繋いだ。


「…な、なに?よっすぃ〜…」
「いや。繋ぎたいなーって。ダメ?」
「いぃ…けど。」


これだけ。
今日は、これだけで、一日目の作戦は終了。

え?そんなんで効果あるのかって?
いいんです、最初はこんなもんで。


うちってね、実は。
じらされるのは好きだけど…でも、じらすのは。
…もっともっと、大好きなんです♪うひょ。



201 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:12


その後も、一週間くらいは。
どんなにいい雰囲気になっても、手を握るだけにしておく、まるで付き合い始めのカップルのように。


これが、この間の、柴ちゃん拒絶事件がきっかけだと思われないように。
うちが、怒ってそんなことをしているんだなどと、思われないように。


あくまで、笑顔で。
それまで以上に、優しく。
彼女に接することは忘れてはならない。


そうすると…ほぉら。
手だけでは、足りなくなってくる。


「どうしたの?柴ちゃん。」
「…ううん、別に。」


狭いソファーに二人で座ってるから、充分その間の距離は短いのに。
彼女は繋いだ手をギュっと強く握り締めて、ぴったり、うちにくっついてきた。


…ふむ…そろそろ、第二段階、かな。



202 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:12


「…柴ちゃん。」
「ん。」


ようやく、手だけではなく。
体全体を、うちに包まれた柴ちゃんは。
ほっと、安堵しているようだ。

…うーん、安心されちゃ、困るんだよなぁ。


ゆるい力で抱きしめて、髪の毛を優しく、撫でていると。
次を、予想したのか。
彼女は少しその体を起こし、目をつぶった。

そして当然うちは、そんな彼女に顔を近づけて。
…そっと。


「…も。寝ようか、柴ちゃん♪」
「…え?」
「だって。目。つぶってたよ、今。眠いんでしょ?」
「………」


ぐわ、この、なんともいえない表情。
キス待ちだったのに、それを分かってもらえなくて、不満なんだけど、でもキスしてとは
言えない、自分からは、言えない、みたいな。

キャーおもしろい!!楽しい!!!最高!!!!!


こういう意地悪を思いつくうちはなんて偉大なんだと、自分で拍手喝采を送りながら。
次のじらしを思い浮かべ、うきうきその日も眠りについた。



203 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:12


…次は、彼女の不意をつくことにした。

今日もぴったりうちにくっついてきた柴ちゃん。
望みどおり、抱きしめてもらって。
…だけど、どうせその次はないんだろうなって。
キスはどうせしてくれないんでしょ?って。
彼女があきらめ、離れかけた瞬間。


「…チュッ♪」
「…!!!!!!」


一瞬だけの、触れるだけのキスをしてやると。
彼女は驚愕の表情を浮かべる。


「よ、よっすぃ〜…今の…あの…」
「さ♪寝よう♪」
「………」


もう、一回。
その感触を確かめたいと、ちゃんとしたキスが欲しいと。
思わせるまでが、今度の作戦♪


というわけで、この段階も、終了。



204 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:13


手を繋ぎ、抱きしめられて、キスされる。
だけどそれ以上のことは、けしてされない。

この事実が柴ちゃんの中に叩き込まれたころ。

じょじょにその長さを変えていく。
一瞬だったキスを数秒に、そして、いつしか数分に。
なったころの、何日目かに。


とうとう彼女が動き出した。

とんとん、っと。
その柔らかい舌先で、うちの唇を叩いてきたのだ。


求めてきた、ごほうびに。
そぉっと、薄く唇を開けて。

望みどおり、その舌を受け入れてあげる。



205 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:13


今まで、自分がそれを受け入れる側だった彼女が。
仕方なくというか、必死に。
うちの舌を捕まえようと、自分のを暴れさせて。

それがなんだか、おかしくて。かわいくて。
舌先を軽く吸ってあげると、それに合わせてガクン!!と、彼女の腰が落ちた。
うわ…打たれ弱ぇー。この人。


んじゃ、ここまでね♪


その日も、当たり前のように「おやすみ♪」と告げると。
泣きそうな顔で、彼女は小さく頷いた。



206 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:13


もういつ、爆発してもおかしくないだろう。
だけど、だからこそ、ここからのじらしがおもしろいのだ、たまらないのだ。


ソファーの上でだったキスを、ベッドに入ってからにすると。
彼女の興奮度は、格別に上がった。


まぁ、それは当然、うちにも言えることなんだけど。
でもね、ほんと、すごいのよ、うち。
自分でもほんと関心しちゃうんだけど。
こういうときって、ありえないくらい、我慢強いの、ワタクシ。

最終的な目標のためなら、こんな盛り上がった状況でも、ピタっと、やめられるの。
すごいでしょ?


そして、わざと彼女に背を向けて。
眠りにつこうとすると。


「…どうした?柴ちゃん。」
「………」


ギュっと。
熱のこもった体で、うちの背中にしがみついてきた。


うーん…おしい!
無言で求めてくれてもなーまぁ、それもうれしいけど。
でも、これじゃあ、まだ、だな。



207 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:14


だけど、少しはエサも与えないと。

つーことで、背中にくっついてきたから、その背中に。
おかえししましょう♪


パジャマの中に、手をもぐりこませると。
少し、こわばった体に、彼女の期待が伝わってきた。
きた…けどぉ〜

まだ、答えてあげられないなぁ。


今日は、背中だけ、ね♪

ツーっと、そのなめらかな背中に指を一本、滑らせると。
びくんっ、と、大きく体がはねた。

大げさだなぁと、思ったけど。
だけどきっと、そんな刺激にももう耐えられないくらい。
…君の限界は、近い♪


何度も何度も、背中を撫でられて。
荒い息を吐き出す。
その姿を見ると、ついつい、もっといろいろしたくなっちゃうけど。
…我慢、我慢。
できる子、ひーちゃんはできる子だ。…よし。


その日も途中でうちに突き放された柴ちゃんの悲しそうな顔は。
過去ないくらい、色っぽかった。つーかエロかった。



208 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:14


今日も、背中までにするつもりだった。

だが、苦しそうに、つらそうに、うちに背中を撫でまわされる柴ちゃんの表情を、
うひょうひょ楽しんでいたとき。

…つるっと。
つい、手が滑って。


「…あっ!」
「おっと、…ごめんごめん。」


柴ちゃんの、胸の頂上をかすめてしまって。

慌てて元に、背中に手を戻そうとしたけど。
…とうとう、その刺激は彼女の限界のスイッチを押してしまったらしい。


「…柴ちゃん?」

柴ちゃんは、背中にまた逃げようとするその手を必死にぎゅっとつかんで。
これまでにない、潤んだ、熱をもった瞳でうちを見つめた。


「…やっ……触って…」
「………」


もう、我慢できないというふうに。
とうとう、声にだして、うちに求めてきた。



209 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:15


…実に、ここにくるまで、3ヶ月間。
うちの、しつこいじらしに、長い長い愛撫に耐えてきた、柴ちゃんは。

もう、ボロボロだった、プライドも、…体も。


「あれぇ、でも、柴ちゃん。いやなんじゃなかったっけ?えっちするの。」
「…お願い…」
「そういうことばっかり考えてるうちは、おかしいんでしょ?」
「…よっすぃ…」
「言ったよね?そう。…かれこれ。3ヶ月ほど、前にさ。」
「…したいよぉ…!!」


泣いている彼女を見ると、ちょっぴり罪悪感も生まれるけど。
でもそんなことより喜びとか、興奮が全然上にくる自分が、大好き♪


きっと、彼女だってとっくに分かってたんだ。
自分が、拒絶したせいで、うちにじらされていること。
だからこそ余計、求めるのが怖かった。恥ずかしかった。


…なのに。



210 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:15


「やっぱさー柴ちゃんだって。エロいじゃん。いや、もしかしたら、うちよりもずっと。」
「…あっ!あっ!!」
「今日だけじゃないでしょ?昨日も、その前も。毎日、触って欲しかったんでしょ?
ずっとずっと。うちに触ってもらうの、待ってたんでしょ?…こんなふうに。」
「…ふ…ふぁっ……あぁん…!」


胸を揉みしだきながら、そうささやいても。
もう、彼女には届いているのか、どうか。


今までのたまりに溜まった欲求不満から、解放された、柴ちゃんは。
それまでとは違う。
もうたぶん、気持ちよくなることしか、考えられない。


手を下に滑らせて、中に入れるとき。
いつもはフリなのかどうかわかんないけど、嫌がるのに。

今日はもう、全然抵抗しない。
だって抵抗して、入れてもらえなくなったら、困るから。
…入れて欲しいから。


気の強い彼女が。
従順に、うちの動きに従っている。

話すときも、笑うときも、結構声の低い彼女が。
信じられないくらい、高い、か細い声で鳴いている。

…もう、たまらない。


これ以上、じらすことは、うちにももうできなくて。
一気に攻め立てて、果てさせた。



211 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:16


ふーっと、肩の力を抜いて。
指を引き抜こうとすると。
また、うちの手をつかんで、首をふる。


「…ん?」
「…やぁ…もっと…もっとぉ…」


もうきっと、頭ん中、真っ白のくせに。
これ以上攻められたら、快感は快感じゃなくなる、体はもう、ここが一番やめて欲しい、
止め時のところだと訴えているはずなのに。


…今までじらされ続けた、心がまだ満足しないんだろうか。


もう一度、刺激を与え始めると。
君はすごく苦しそう、だけど本当に、うれしそう。


そんな顔見せられたら、うちだって。
もう止まらなくなっちゃうぜ、まいったな。


時間が経てばたつほど。
興奮しちゃうっていうのは困る。

結局、君が意識を手放すまで。
攻撃してしまいました。
だってうちだって今まで。
…我慢してたんだから、さぁ。



212 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:16


目を覚ました柴ちゃんに、ごめんねーって、謝ると。
ぶすっと膨れっ面になった。


「あれ、なんか怒ってる?」
「…怒ってたのは、よっすぃ〜でしょ?だから、毎日毎日。あ、あんな…
と、遠まわしな…意地悪なことばっかり…」
「いや、じらしと言ってよ。じらし。なんでーイヤだった?そのわりに喜んでたじゃーん。」
「………」


今頃になって恥ずかしさがこみ上げたのか、赤くなった顔を隠すように、彼女はうちに背をむけた。

その背中をつんつんつっつきながら。


「大体、元はといえば。柴ちゃんが拒絶するからいけないんだよ。あれだって、うち。
結構傷ついたのよー。『よっすぃ〜はえっちしか頭にない!』なんて言われて!」
「…はずれてないでしょ?」
「まぁね。って、おい。いや、まぁ、でも。それの。なにがいけないの?
うちそれが今でもよくわかんないんだよなー。いいことじゃん?気持ちいいことは。」
「…だって…そればっかなんだもん、よっすぃ〜。そればっかは、やだ…」
「うーん?」



213 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:17


相変わらずこっちを向かない、柴ちゃん。
仕方なく背中つんつんをやめて、頭をそっと撫でると。
ポツリポツリ。
話し出す。


「…すごい…不安なんだよ…いっぱいしゃべっても、キスしても。結局それは
よっすぃ〜にとってあんまり重要なことじゃないんじゃないかなって。
最終的に、そういうことがしたいから。だから、好きとか言ってくれるのかなって、
キスとか…してくれるのかなって。」
「えぇ?なんじゃそりゃ。」
「だって、そうなんだもん。いつもいつも。よっすぃ〜がしたいことは決まってて。
そういうの、することばっかり。…私が好きなんじゃなくて、そういうのが、
好きなんだって。そう思った。」
「うわぁ…うち、信用ねぇー…」
「…だけど。」


おっ。
ずっと、背中を向けていたままだった、彼女が。
くるりと、振り返り。
うちにギュっと、抱きついてきたので。
…それを優しく、受け止める。



214 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:17


「…だけど。されないのは。そういうの、全然。されないのは。もっともっと、不安だった。
どうしてちゃんとしてくれないんだろうって。きっとこの間、私が嫌がったから。
だからもう、よっすぃ〜は私のこといやになって。それで…してくれないんじゃ、ないかって。
思ったらすごい…不安だった…怖かった。」
「えぇ?そんなふうに思ってたの?」
「…ん。だから…今日。してくれて…うれしかった。すごい、悔しいけど。」


最後の言葉が、彼女らしくてかわいい。

ついつい、ふきだしそうになるうちを。
君はまだ、少し不安そうな瞳で、じっと見つめて。


「…私が、嫌がらないで。ちゃんと…そういうこと、すれば。よっすぃ〜は、私のこと、
好き?…好きで、いてくれる?」
「えー?」


なんじゃ、そりゃ。
どうも根本的に、あなたうちのこと、誤解しているような気がする…



215 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:17


「いや、別に。そんなのしなくても。うちは柴ちゃんが好きだよ。いや、するけど。
えっちが好きだからするんじゃなくて。柴ちゃんが好きだから、するんだよ。分かる?」
「…本当?」
「本当だよ、当たり前。っていうーか。じらしたりしたのだって。柴ちゃんが、
嫌がるから、つい。その気にさせたくなってさー。こう、えっち嫌いな柴ちゃんを、開花
させようと…」
「…私だって。…嫌いなわけじゃ、ないんだもん。よっすぃ、分かってて、
…言ってるでしょ…?」
「…えへ♪」


そりゃー嫌いな人は、いないでしょぉ!!!
好きな人が、想う人がいれば、誰だってねぇ!!!


結局、彼女は行為がイヤだったわけじゃなくて。
うちがちゃんと柴ちゃんのこと好きなのか、不安だったってことね。

なんだぁかわいいなぁ〜
いや、でもまぁ。
不安にさせたことは、ごめんね?


これからは、もう、そんなことのないように。
できるだけ、愛していくよ、たぶんきっと、アハーン。



216 名前:愛の逆襲 投稿日:2007/03/04(日) 05:18


「…するたび、うちは、柴ちゃんのこと。好きになるよ、絶対。今日とか、もう。
それはそれは、好きになったよ、うんうん。」
「…ばか。だけど。…私もよっすぃ〜のこと…たぶん。好きに、なった。前より。」
「でしょぉ、でしょぉ?いやぁ、やっぱり大切なことだよ、愛し合うことは。うん。
第一、好き以外の理由ってなによ。柴ちゃんとえっちするのに、柴ちゃんが好き以外の
理由なんてさぁ。思い浮かばなくない?だってまさか柴ちゃんの体目当てなんて、
そんな奇特な人、そうはいるはずな…はっ!!!!」


あぁ、バカん。
うちの、バカん。


どうして、いつもいつも、こう。
…正直なの、うち。


「……二度と!!!!しない!!!」
「えぇ?!!!そ、そんなぁ!!!」


かくして、うちのこれまでのじらしの日々は終わり。
またじらされ続ける日々が始まったのです。あーつらい。




217 名前:ツースリー 投稿日:2007/03/04(日) 05:24
また短編になってしまいました…ゴメンナサイorz

>>190 TETRA さま
よ、読まれてる…w行動を読まれているw
さすがですw だ が 今回はどうですか!…すみません、ムキになりましたw
どうぞまたよろしくお願いします♪

>>192 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!まいちゃんの最近の活躍ぶりは本当にうれしいです。
これからもどうぞよろしくお願い致します〜

>>193 名無飼育さん さま
拗ね柴ちゃんパート2、ですwまた短編を書いてみましたので、
読んでいただけたらうれしいです♪
218 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/04(日) 20:51
これぞツースリーさんの吉柴w
ニヤニヤしちゃう
219 名前:名無し吉柴 投稿日:2007/03/04(日) 21:51
誕生日と逆襲の短篇二つとも好きです大好きです!!
柴ちゃんかわえぇなぁ。超かわえぇわぁ。よっすぃ〜のSっぷりもイイ味出してますねぇ(笑)
ツースリーさんの小説を読むたびに吉柴にどっぷりハマっていきますです☆吉柴って良いですねぇ(∇〃)
220 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/09(金) 14:39
くはぁ
もう、強がり柴ちゃんが可愛すぎて堪らない!!
よっちゃんと同じように興奮して読んでしまいましたw
221 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:26


「絶対に!!私に迫ってこないでよ!私抵抗できる自信ないからね!!!」
「そりゃーこっちのセリフだよ!!うちだって柴ちゃんにまた『よっすぃ〜♪』とか
来られたら。…確実にやっちゃうからね!!!!」
「そ、そんなこと!!堂々と言わないでよぉ!!!」
「そ、そ、そっちだってぇ!!!」


ハワイ行きの飛行機の出発を待つ、空港のロビーで。
うちと柴ちゃんは回りに気づかれないよう、ヒソヒソ話をしていた。


あーやべぇよ、旅行とか、ハワイとか。
いや、むしろ柴ちゃんと二人っきりでとかっていうなら、それはそれで開き直って。
いろいろもう、思いっきり。
全てを忘れて…楽しんじゃっても、いいんですけどぉ…ぐへへ。



222 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:26


だが、そうはいかない、今回は。絶対いかない。
だって…ガッタスで行くんだもん、みんなで行くんだもん、
ツーソルジャーと一緒に行くんだもぉん…。


もしだよ?万が一。
また、これまでのようにうちと柴ちゃんがハワイであんなことをしちゃって…
それが同じホテルに泊まってるあの二人にバレたりでもしたら…

たぶんうちは…二度と日本の土を、故郷埼玉の土を踏むことはできないだろう…。
…そんなのいやぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!!!!


「よっちゃん♪そろそろ出発だって♪」
「柴ちゃん♪さぁ二人で楽園へ行こう♪」


頭を抱えていたうちと柴ちゃんに。
それぞれ、お迎えが来たようだ。


…さぁ、柴ちゃん。
ここからはもう、一切の休息は許されない。

せめて、せめて!!このハワイツアーが終わるまでは!!!!
…うちらを罪からお守り下さい!!ゴッド!!ゴッドォォォォ!!!!!



223 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:27


とぉ、意気込んで出発したものの。
いざハワイにつき、実際ツアーが始まってしまうと。
ファンのみんなとの交流や撮影や、なんやらで。
とても忙しくて、幸いなことに、うちらに油断できる時間など、少しも用意されていなかった。


…ほっ。
ま、スケジュールは体力的にかなりきついけど。
でもその方が危険な欲求を忘れられるから、安心かもぉ。


時々ふと遠くにいる柴ちゃんを見ても。
梨華ちゃんやののたちと楽しそうに過ごしているし。

…なんだ、案外ハワイツアーなんて。
結構楽勝かなぁ。むしろ日本に帰ってから、これからのことの方がいろいろ考えないと
いけないのかも…


「よっちゃん、よっちゃん。」
「ん?おぉ、どうしたミキティ。」



224 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:27


うーんと、考え込んでいたうちに。
気づけばピッタリとミキティがくっついていた。
なんだい、なんだい。


「あのね、なんかさっき荷物置きにホテルの部屋に行ったらね?すっごいおもしろいもの
見つけたの。だから後で美貴の部屋に遊びにこない?」
「お!なにぃ〜?おもしろいものって。」
「それは来てのお楽しみぃー。」
「よっしゃ。んじゃぁ、夜。遊びに行くよ。ミキティの部屋。」
「うん♪待ってるー。」


ほらね、ミキティだって結構ご機嫌だし。
梨華ちゃんは柴ちゃんといられりゃー当然ご機嫌だろうし。

このまま、ハワイツアーは簡単にクリアできると、そう。
思っていたんだけど…。



225 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:28


「ぎゃっはっは!!!!なんだこれ、くだらねー!!!!」
「でしょ!!でしょ!!」


ミキティの部屋で見せられたおもしろいものとは。
日本人向けに収録された、ハワイ観光のための英会話番組のビデオだった。

その中には、『エジプトにはどうやって行けばいいですか』だの、
『これは犬ですかそれともビルですか』などの、明らかにハワイで使う機会のない英語が
紹介されていて、ミキティと二人、それを見て腹を抱えて笑っていた。

あーおかしい。
と、ベッドに倒れこみ、天井を見上げていたうちに。
すっと、少しマジメな表情をしたミキティが。
上から覆いかぶさり、覗き込んできた。


「うおっ!!な、なに?!」
「…元気になった?」
「へ?!」



226 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:28


な、何が!!なんで?!!

いきなりのそのミキティの質問に。
うちはすげぇ動揺してしまい。
しどろもどろ。


それを見て、ミキティは優しく笑って。
だけど心配そうな顔で言う。


「よっちゃん、ハワイ来てからずっと。なんか悩んでそうな顔してたよ?」
「…え、そ、そう…かな。」
「そうだよ。似合わないよ、よっちゃんにそんな難しい顔。よっちゃんにはアホ面が一番。」
「だよねー、って、ちょっとミキティさん?それ失礼じゃねー?」
「えー、別に失礼じゃなくねー?」


あははと、ミキティと笑い合いながら、思う。
うーん…そっか、なんか気を使わせちゃったのか。
うちそんな難しい顔してたかなー、あぁ、してたのか。


「心配させてごめんね?ミキティさん。」
「いいんだよ、よっちゃんさん。」


うちを元気付けるために、きっといろいろ考えてくれた、ミキティに。
心から感謝だ、やっぱり、ガッタス愛だ。



227 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:29


さぁて、元気になったから、うちはそろそろ自分の部屋へ…と、起き上がろうとするも。
うちの上にはミキティが乗っかっていて。…起きれない。


あのぉ、み、ミキティ…うち、そろそろおいとまを…


「泊まっていけばいいのに。」
「いや、あの、…か、帰ります…帰らせて…」
「…ちっ。」


ちって、なに。だから、ちって、なに。


少し不満げなミキティを残して。
うちはやっとこさ、部屋から脱出した。



228 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:29


そしてふーっと、大きく息を吐きながら、扉を閉め廊下に出ると。
ガタンっ!!と、何かが倒れる音がして。
振り返ると、窓際に飾ってあったハイビスカス入りの花瓶が倒れていて。
その側には。
…柴ちゃんが、しまったと、気まずそうな顔をして、立っていた。


「え?ちょ、ちょ、し、柴ちゃん?…何してんの、こんなとこで。」
「べ、別に。」
「や、別にって。」


だってもう、結構遅い時間だよ?うちも今気がついたけど。
どうやら随分長い間、ミキティの部屋にいたらしい。


だからもう、みんな寝ていてもおかしくないのに。
どうして、柴ちゃんはこんな時間に出歩いてんの。
ていうか、なんでそんなとこ、立ってたの。


理由を聞いてもぶすっと、膨れたまま。
何も言い返してこないので、ちょっと頭に来て。
だってそんな顔されるようなこと、うちなんもしてないと思うのに。


彼女のその態度に、むかついたから、ただおやすみとだけ言って。

自分の部屋に、急いで戻ろうとした。
すると。



229 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:29


ギュっと、手をつかまれて。
驚いて振り返ると、泣きだしている柴ちゃん。

…えぇ?!!な、なんで泣くの?!!


「ど、どうしたの!!な、なにがあったの?…柴ちゃん?」
「………」


もしかしてさっき何も言ってこなかったのは。
涙をこらえていたからだったのか、だとしたらちょっとうちひどい対応しちゃったかも、と。

急に心配になって。泣いている彼女が心配で。
いけないこととは、知りつつも。
そっと頭を撫でると、静かに彼女は話し出した。


「…あ、朝まで。…出てこないかと思って…怖かったの…」
「へ?」
「よっすぃが…美貴の、部屋から…このまま…ずっと…」
「…柴ちゃ…」



230 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:30


…もしかして。
うちが、ミキティの部屋に行くって、話してたの。
…聞いてたの?

それで、その、そういうことを、心配して?
うちがミキティとどうにかなっちゃったらどうしようって、不安で?

…ずっとここで、廊下で。泣きそうなの我慢して、一人っきりで。
うちのこと…待ってたの?
うわぁ…


「…やめてよ、そんな。そういう、かわいいことされると、言われると、また。
…なんかしそうになっちゃう。柴ちゃんに。つーか今、すごいしたい。」
「………」
「…お願いだから、誘わないでって。言ったじゃん…。」
「誘ってる、わけじゃない…」
「誘ってるよ、充分。そっちはその気じゃなくても。」
「だって…私…」
「あぁ。もう、いいよ。わかったから。早く、部屋戻りなよ。もういいから。」
「…なんで。そんなふうに言うの?」
「えぇ?だって。こんなところ…二人で、いるところ。見られたらまずいじゃん。
…特に、梨華ちゃんに見られたりしたら…」
「…いけないこと?」
「は?」
「私と…よっすぃ〜が。一緒にいるのって…そんなに、いけないことなの…かな。」


え?!!
そ、それは、そうでしょ。
今さら、そんなこと。
…聞かないでよ。



231 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:30


露骨にうちは困ったそぶりをして、目をそらし、言葉を濁しているのに。
柴ちゃんはそんなのおかまいなしで、むしろどんどん詰め寄ってくる。


「なんで、どうして…いけないの?」
「だ、だってそれは。…うちらが、こんなことになったのは。そもそも、お酒の勢いで…」
「…だけど、今、私。…酔ってないよ?酔ってなくて、よっすぃ〜と一緒にいたいって、
思ってるよ?」
「いやそれは、余計。その、まずいっていうか…いけないでしょ…」
「どうして?だって、よっすぃ〜。美貴と…付き合ってるわけじゃ、ないでしょ?」
「んなの、当たり前じゃん。」
「私だって。梨華ちゃんと。付き合ってるわけじゃないよ?当たり前だよ。」
「…そうかもしんないけど。それ言ったら、うちらだって。うちと、柴ちゃんだって。
付き合ってるわけじゃないんだから。そういうのをするのは、いけないでしょ。」


自分が言っていることが、間違っているとは思わなかったけど。
でも、それを柴ちゃんに言ってしまうことは、間違っているって、思って。


はっとして、そらしていた目を、君の瞳に合わせると。
よりいっそう、洪水のように溢れ出す涙に遭遇してしまった。


うわぁ、やべぇ。
謝らなきゃ、弁解しなきゃ。

そう思うのに。


うちから出てくる言葉は、逆効果なものばかり。
むしろ、君を責めるような。



232 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:31


「…だ、大体。ハワイに来る前は。柴ちゃんだってうちに迫ってこないでよーなんて。
言ってたじゃん。そういうこと、しちゃいけないって。わかってたはずでしょ。
やめようとしてたじゃん、こういう関係。それを、急になに。また、ヤキモチ?
だけど前も、ミキティにヤキモチ妬いて、うちのこと誘って。んで、そういうことしたら、
終わった後、超後悔してたじゃん。同じだよ、また。ちょっと、落ち着こうよ。
冷静になろうよ、学習。…しようよ。」


なんとか、この状況を誤魔化そうと必死だった。
だって、ここハワイでまた過ちを繰り返して。
そんで日本に帰ってから、後悔するなんて、させるなんて。
いやだったし。それいろいろ怖いし。


うちのこんなひどいセリフを聞いて。
柴ちゃんは口をぎゅっと結んだ。
それでもこらえ切れない涙を流したまま、眉間にしわをよせた、怒りの表情で。

手を振り上げたから、うわ、叩かれると思って。
目を閉じると。


…その手は強く、うちの首に回されて。
結ばれた唇はそっと、うちに重ねられていた。



233 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:32


あまりのことに、呆然と。
ただ、君が離れていくまで、立ち尽くすしかできなかった。


強張る体を、混乱する感情を。
抑えきれないうちを、彼女は真っ直ぐに見つめた。


「…私は。どんなに酔ってても。好きでもない人と、ああいうこと…しないよ。
恥ずかしいもん。キスとか…裸を見せるとか…。…好きな人とじゃなきゃ、できない。
…よっすぃ〜もきっと、そうだって。どっかで安心してたの。言わなくても、
ふざけてても。同じ気持ち…だって。
でも、今日。よっすぃ〜が美貴の部屋に行って。ずっと、出てこなくて。
もしかしたら、美貴としちゃうのかもって、思ったら。美貴とでも、よっすぃ〜は
できるのかもって、そう、思ったら…もう何も。考えらんなくて。
こんなふうに待ってるところ、誰かに見られたらどうしようとか。
よっすぃ〜とのこと、バレたらどうしようとか。そんなのどうでもよくって。
ううん、よくないんだけど。…わかんないんだけど、これからどうなるかとか。
日本に帰ってからのこととか。梨華ちゃんや美貴に、どう思われるのかとか。
だけど、でも。気持ち隠して、お酒のせいにして。よっすぃ〜としたことを、
過ちだとか、そういう風に誤魔化すの、もうイヤなの。だから、言う、よっすぃ〜。」



234 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:32


固まったままのうちに、彼女はもう一度近づいてきて。
今度は腰にそっと腕を絡ませ、体を密着させて。

その動きに、背中がぞくっとするくらいの、色気を感じた。
ありえない、あの柴ちゃんに、そんなこと感じるなんて。
Hしたときでさえ、こんなふうに思わなかったのに。
でも。


「…好きだよ、私。…よっすぃ〜のこと。」


キスをされながら、そうささやかれて。
うちももう、さっきまでのバレたらどうしようなんて、気持ち。
すっかり忘れてしまっていた。



235 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/08(日) 19:33


気がついたら一人、その場に腰を抜かして、座り込んでいた。
あー…やべぇな、こりゃ。


今日の彼女も、酔っ払ってくれていたなら。
まだまだいろんなことを誤魔化して、逃げることができたのに。


試合が始まってしまった以上、もう。
逃げることはできない、戦うしかない。
結果は…勝つか、負けるか。
引き分けは…ないんだろう。

…ろ、ロスタイムは…ありますか?

とりあえず、ハワイツアーは、まだ終わってくれそうにない。




236 名前:ツースリー 投稿日:2007/04/08(日) 19:40
以上第4話です。
今回で終わらせる予定だったのですが…もう一話、続きます。次回こそ、最終回で。

>>218 名無飼育さん さま
218さんのレスを読んで私もニヤニヤしてしまいましたw
またニヤニヤしてもらえるようにがんばります!

>>219 名無し吉柴 さま
かわえぇなんてうれしいです〜。Sっぷり気に入っていただけてよかったです!!
…ちなみに作者はドMですwまたどうぞよろしくお願い致します〜

>>220 名無飼育さん さま
くはぁ。うれしいレス、ありがとうございます!!
次回は本編も最終話の予定です。また読んでいただければ幸いです♪
237 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/10(火) 21:08
こうゆう柴ちゃんもイイ!!  胸キュンしちゃいました(笑)
次回が、最終回でも最終回じゃなくても、楽しみに待ってます。
238 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:35


あー…頭痛い、クラクラする。
こんな寝不足の体に、朝からハワイの太陽は刺激的すぎる。


結局あの後自分の部屋にフラフラと戻り、ベッドにうずくまってはみたものの。
ちっとも寝つけやしなくて。

窓からは日差しが容赦なく差し込んできて、それはまるでうちを責め立てているようで。
無駄な抵抗と分かっていても、布団を引っ張り、頭までかぶった。

くそぉ…一体、何で、こんなことに。


日本をたつ前は。
とりあえずこのハワイツアーの何日間かを乗りきれば。
梨華ちゃんとミキティから逃れられればいいと、思っていたのに。

…なんで、どうして。
柴ちゃんに、まで。
追われてるの…うち。


急にあんな、真剣に。
キ、キスとか…好きだ、とか。


え、何?どういうことなの?そういうことなの?
うちと柴ちゃんって、その。
…なんか、答えを、出さなきゃ、いけないような。
そんな関係…だった、の?



239 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:35


確かに、あの、ああいう、行為は。

あったっちゃー…あったんだけど。
何回か、あったんだけど。


だけどそれだってなんていうか、その場の勢いというか、…過ち、といいますか。

好きとかで、してたわけじゃ。
ないって。思ってて。


うちと柴ちゃんは同罪で、周りにバレたらマズイから、やばいから。
隠すための、逃げるための。
共犯者のようなものだと、思っていたのに。


なんだよ、これじゃあ。
うちだけ…悪者みたいじゃないか。

うちだけ…梨華ちゃん、ミキティ、そして…柴ちゃん。
みんなから、責められる立場なんて。


んなの、ないよ。
…カンベン、してよ。



240 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:37


もう、日本を出たときより、重い足取りで。
うちは部屋を出て、ガッタスメンバーの集まるホテルの集合場所へと向かった。

そりゃーそうさ、今度はもう誰も。
…うちの味方は、いないようなもんなんだから。


肩を落としながら、トボトボ歩いて集合場所に到着すると。
そこにはもう、うち以外の全員、集まっていて。
みんな適当に並んでるジュースやらパンやらで、簡単な朝食をとっていた。


「あ、来た。よっちゃんおそーい。こっちー。」
「あぁ、うん。ごめんー。」


ミキティに手招かれて、一つだけ空いていたスペースに座ると。

斜め前に、梨華ちゃんと一緒のテーブルにいる。
…柴ちゃんと。
早速目が合った。


じっと見つめられて。
うわどうしようとか、なんか言わなきゃ、とか。
いろいろ考える前に、無意識にその視線を思いっきりそらしてしまい。


あ、やべぇ…。
慌てて顔を上げて、柴ちゃんをもう一度見ると。
悲しそうな顔で、うつむいていた。


…はぁー。
まずい、一番最悪な対応を、うちは今。
おそらく、とってしまった。


逃げてたって、解決しないのに。
でも逃げることしか考えられなくて。


ハワイの晴れやかな気候とは裏腹の、もんもんとした気持ちを抱え。
なんかよくわかんないけど、近くにあった変な色のジュースを、ぐいっと飲みほした。



241 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:37


ツアーも終盤に差し掛かり。
ファンのみんなの前で、フットサルをするため、まずはユニフォームに着替え軽く準備運動。


そうだ、とりあえず今は、余計なことは、考えず。
ツアーに集中しなきゃ、仕事だし、ファンの人に失礼だし。


よいしょっと、地面に座り足を広げ頭を倒し、柔軟をしていると。


「…ねぇ、よっすぃ〜。」
「へぇ?」


上の方で声が聞こえたので頭を起こす。
すると。


…ガァンっ!!!


「いってぇ!!!!」
「キャー痛い!!!…ちょっと、よっすぃ〜!!!何するの!!!」
「な、何するのじゃないよ!!!なんだよ梨華ちゃん変なとこに居ないでよ!!
っていうかあごが出すぎなんだよ!!あごが普通の人より出てるからぶつかるんだよ!!」
「ひ、ひどーい!!そんなの生まれつきなんだからしょうがないでしょ!!!!」


うちに呼びかけていたのは梨華ちゃんだったようで。
しかもおかしなところにあごを、いや、頭を出していたから、ばっちりうちとぶつかって。



242 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:38


「あーいてぇ。だめだ、頭ん中の脳細胞が。何匹か死んだかも。」
「うそ!!やだよっすぃ〜。それ以上おバカになっちゃうの?!!!」
「…おい。」
「冗談よ。」


くそぉ…このアゴんめ。


むすっと睨みつけてはみたものの、なんか逆に睨み返されて。
ちょっと怖くなった。…こういう自分、すごい嫌い。


「な、なんだよ。言いたいことでも、あんのかよ。」
「あるわよ、だから話しかけてんじゃない。ていうかなんでそんなケンカごしなのよ。」
「べ、別に。んなこたーないけど?」
「あやしい。なんかやましいことでもあるわけ?ううん、あるでしょ?
私に怒られるようなこと。あるでしょ。」
「え、えぇぇぇぇぇぇ?!!!!!!」


ちょちょちょちょ!!!!!!
ど、ど、どうして?!!!!
ま、まさかバレたの?!!!
うちと柴ちゃんのことが!!!

はっ!ま、まさか柴ちゃん…
梨華ちゃんに言っちゃったの?!!

そ、そんなぁ!!ひどぉいよぉ!!!


「よっすぃ〜…柴ちゃんと…」
「いやぁ!!ご、ごめんなさい!!」
「ケンカ、してるの?」
「はい!!は、…はい?」



243 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:39


まさに、予想GUY。
予想外な、梨華ちゃんの発言に。


へぇ?っと、拍子抜けするうちに、梨華ちゃんは続けた。


「だって。なんか空気悪いじゃない。二人。今日一言もしゃべってないし。」
「え?そ、そう?い、いや、一言くらい、しゃべって…」
「ない。だって私が柴ちゃんから目を離すはずないもん。」

ひぃ。
ほらね、だからいやなの。
怖いの、この人。柴ちゃんに対しては人が変わるんだもぉん…


柴ちゃん本人は梨華ちゃんとはそういうんじゃない、とか言ってたけど。
絶対違うよぉーこの人本気だよー好きすぎだよー柴ちゃん好きすぎだよー。


おびえるうちに、梨華ちゃんは眉毛をぐっと寄せたおそらく本人の一番怖い顔であろう
ものを作って、迫ってきた。


「は、はい。わかりました、ごめんなさい、ごめんなさ…」
「仲直り。…してあげて?」
「は、はぁ?え?」

てっきり怒られるか殴られるかされるのかと、思ったら。



244 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:39

梨華ちゃんから聞こえてきたのは、仲直り。
仲直り、しろって言葉。柴ちゃんと、仲直りしろって…


え?な、なんで…


「事情は、知らないけど。どっちが悪いのかも、わかんないけどぉ。でも柴ちゃんね?
あれで結構頑固だから。たぶん自分からは謝ったりできないと思うの。だけど絶対。
仲直りしたいと思ってるはずなんだ。よっすぃ〜と。だから、お願い。ここはひとつ、
よっすぃ〜が大人になって?」
「い、いや。そ、それはあの、いいんだけど、ていうかうちが謝るべき…だとは、
思うんだけど。でも、い、いいの?梨華ちゃん。」
「?何が?」
「だって、うちと、柴ちゃんが。…な、仲直り…仲良く、して。…いいの?」
「………」


だって、梨華ちゃん。
柴ちゃん、大好きじゃん。
…軽く、ストーキングしてるじゃん。

それなのに。そんな、大事な人なのに。
うちと…仲良く、させちゃって…



245 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:40


「…確かに。柴ちゃんは大親友だし。その歴史はもう長いわ、重いわ。あぁ、そうそう。
そういえばね?そもそも柴ちゃんと仲良くなったのはここ、ハワイだったなぁ…
なつかしいなぁ…ふふ、青色チームでいっしょになってね?それから…って、いいの。
そんな話はまた別で。外伝で書けばいいの。まぁないけどそんなの。ってそうじゃなくて。
…要するに。そりゃー私だって正直柴ちゃんを他の子にとられるのはヤよ?けどね、
よっすぃ〜。」


あ、い、いることようやく思い出してくれたんだ…。

なんて、ぼぉっと梨華ちゃんを見上げていると。

ふと、それまでの眉毛をよせたしかめっ面から。
…優しい、表情になって。
うちに言った。


「…よっすぃ〜だって。私の大切な。同期よ。仲間だよ。大切な人同士が。
ケンカしてるの、見過ごせないよ。二人に仲良く、してほしいんだよ。」


…なんだよ、なんなんだよ。
昨日の、ミキティと、いい。
梨華ちゃんと、いい。


なんでそんなこと言うんだよ、うち、ずっと怖がってたのに。
梨華ちゃんのこと…
柴ちゃんとの、関係がバレたら。
どうしようって、怯えてたのに。



246 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:40


だって梨華ちゃんにとって柴ちゃんはめっちゃ大切な人だとわかってたし。
きっと怒られるのは、責められるのは、うちになるだろうって。
そう、思ってたのに。


「…くっさい、セリフ。」
「もう。よっすぃ〜すぐそういうこと言うんだから。うれしいくせに。」
「べ、別にうれしくねーですよー」
「うわ、照れてる。キャーかわいい。って、そう、だから。頼んだよ、よっすぃ〜。
仲直り。…ね?」
「…へいへい。」


もぉ、なんて言いながら。
コツン、とうちの頭を軽く叩いて。
梨華ちゃんは笑顔で立ち去った。


あー、もう、全く。
修行…足んねーなぁ…うち。


うちにとって、どんだけガッタスメンバーが大切か。
それで、うちも、みんなにとって…どんだけ大切な仲間に、思われてるかって。


やっと気づいた。わかった。



247 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:40


やばいな、かなり。
感動…してるぜぇ。


こりゃー、もう。
決めるしか…ないな。
ちゃんと、柴ちゃんに。
シュートを、決めるしか。


試合中、柴ちゃんとまた目が合ったから。
今度はそらさず、笑いかけた…んだけど。


彼女は困った顔で、不安げに。うちから目をそらして。
やっぱりまたうつむいた。



248 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:41


…ファンのみんなとの、交流が無事に終わり。
ホテルでは、メンバーやスタッフさんで、打ち上げをしていた。


明日には、また日本だ。
どうやら、うちは無事にツーソルジャーたちから生還し、
またさいたまの土地を踏むことができそうだ、けど。


このまま…日本に帰っては、いけないと思うんだ。


逃げたい気持ちもまだある、正直。
けど。


今…逃げたら。
ミキティが心配してくれた、気持ちとか。
梨華ちゃんが大切だっていってくれた、言葉とか。

君が…キス、してくれた、好きだって言ってくれた、あの勇気とか。


全部無駄に、してしまうような気がして。
そんなの絶対、イヤで。
…だから。


まいちゃんとののと一緒にフルーツを食べていた柴ちゃんのところへ向かい。
二人に言った。



249 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:41


「ごめん、まいちゃん、のの。ちょっと、柴ちゃん借りていい?」
「…え…?」
「あぁ、なに?仲直りすんの?どうぞどうぞー♪」
「しっかりやれよぉ、よっちゃん。」


…ねぇ、なんでそんな当たり前みたいに。
うちと柴ちゃんがケンカしてることみんな知ってんのよ。
ていうか全員でこっち見てんなよ、見すぎだよ、遠慮しろよおい。


こうして、なぜかみんなに見守られながら。


うちは柴ちゃんに話をすることになった。


「…柴ちゃん。今朝、ごめんね?目、思いっきりそらしちゃった。」
「…ううん、そんなの、私も。試合中。…そらしちゃったから。」
「いや、いいよ。…それと、その昨日も。うち、柴ちゃんが…あんな、一生懸命。
言って…くれてんのに。誤魔化すようなことしか返せなくて。逃げちゃって。
…ごめんね?」
「………」
「でももう…ちゃんと。話すから。…答え。出すから。」


この場で、まさか、答えを出されるなんて。
思っていなかったんだろう、柴ちゃんはきっと。


250 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:42


驚いた顔で、周りを見渡して。
そして小さく後ろを。
後ろで…こっちを見てるミキティと、梨華ちゃんを。
指差した。


その手をうちは、ぎゅっと、つかんで。
言った。


「…いいよ、見られても。聞かれても。昨日の柴ちゃんと同じ気持ちだよ。見られたって
平気。うちらが、一緒にいて。いけない理由なんか何もないよ。うちだけ、
それに気づいてなかったんだ。ミキティも、梨華ちゃんも。うちが思ってる以上に、
うちのこと、うちらのこと。大切にしてくれてたのに。」
「美貴と…梨華ちゃん?」
「うん。ごめんね、うち。怖くて。周りの目とか、意見とか。すごい実は気にしちゃう
タイプでさ。…けど、そんなの気にして。失いたくないから。…柴ちゃん。
なかったことに、したくないから、柴ちゃんとの…関係。だから、ちゃんと、答え出す。
昨日の、柴ちゃんみたいに。」
「え?」



251 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:42


わけがわからないと、いうふうに。
動揺したままの、柴ちゃんを、グっと抱き寄せた。
うん、マジで、昨日と立場逆転だわ。


ていうことは。
やっぱ、これしかないっしょ。
答えは。


そっとキスをして、君に言った。昨日の君と、同じように。


「好きだよ、柴ちゃん。柴ちゃんのこと、大好きだ。」
「よっすぃ〜…」
「日本に、帰ったら。これからは。ちゃんと、堂々と一緒にいよう?もう、逃げたり、
隠れたり。うち、しないから。お互い、酔ってないときにちゃんと。…抱き合おう?」
「…ん。」


そして堅く抱き合ううちらに、周りのガッタスメンバーから、キャーという、歓声が。
祝福の声が、送られて。

…いるのかと。


…思った、ら。
あれ?

これ、よく聞くと…悲鳴?



252 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:43


「ちょwwwwよっちゃんwwwwなにチューしてんの?!!いくら仲直りでも!!
やりすぎじゃん?!!ハワイだからって!!欧米か!!!!」

っと、まいちゃんからのツッコミが入り、周りを見回すと。

…な、なに?なんで驚いてんの?

だ、だってみんなうちらのこと…知ってたんじゃ、ないの?


「いやケンカしてるのは分かったけど。まさか二人がそんな関係だとはねー。まいも
びっくらこいたよ。だってよっちゃんには美貴がいるし、柴ちゃんには梨華ちゃんが
いるのにねー。」


…え?
まさ…か。


急に背中に華厳の滝をかけられたかのような寒さを感じて。
柴ちゃんを見ると、顔中真っ青。


これは…や、やば…
そして、おそるおそる。
振り返りたくないけど、おそるおそる。
…振り返ると。


わぁお、ツーソルジャー…復活♪



253 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:43


「ねぇ、美貴。聞いてないんですけど。なに、これ。どういうこと。」
「よっすぃ〜♪私、仲直りしろとは、言ったけど。…キスしろなんて、
一言も言ってないんですけど?ん?どうしたのかな、なんなのかな?これ。」


おかしい、明らかにおかしいよ、二人。
フォークを持つ手に、血管が浮いてるよ、ダメだよそれはご飯を食べるためのものだよ。


にじり寄る二人に後ずさりするうちと柴ちゃん。
すると、急に柴ちゃんがうちの後ろに隠れ出して。
あろうことか、とんでもないことを。


「違うの、違う。あの、い、いきなり…今、よっすぃ〜が突然キスしてきて…」
「はぁ?!!ちょ、何言ってんの柴ちゃん!!ひ、一人だけ生き残ろうだなんて!!!」
「だ、だって!!キスしてきたのはよっすぃ〜だもん、嘘言ってないもん!!」
「そ、そりゃー今はうちからしたけど!!昨日は柴ちゃんからしてきたじゃん!!
なんかすごい熱っぽくしてきたじゃん!!」
「ひ、ひどい!!みんなの前でそんなこと言うなんて!!!」
「ひどいのはどっちだよ!!!」

「うん、事情はゆっくり聞こうかな。あ、ミキティ。よっすぃ〜捕まえて。
私柴ちゃん捕まえるから。」
「了解。」


254 名前:恋は戦争!Do The フットサル!! 投稿日:2007/04/22(日) 18:43


と、あっというまに拘束されて。
ずるずるツーソルジャーに引きづられていく、うちと柴ちゃんを。

さっきまであんなに見ていたはずのほかのメンバーたちは、
まるで何事もなかったかのようにスルーして、再び料理をつっつきだして。


おぉい!!!み、見てみぬフリ、すんなよぉ!!!
ガ、ガッタス愛は?!!チーム愛はどうしたんだよぉ!!!

お願い、
た、助けてぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜!!!!


やっぱり、恋は戦争なんだと。
思い知った、そんなハワイの夜だったのです。




255 名前:ツースリー 投稿日:2007/04/22(日) 18:48
以上で完結です。

>>237 名無飼育さん さま
レスありがとうございます♪なんとか無事、最終話にできましたぁ〜
このお話はこれで終わりですが、また新しいのを始めたいと思います。
どうぞこれからもよろしくお願い致します!!
256 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/22(日) 20:53
完結おめでとうございます♪そしてお疲れ様でした
よっすぃ大胆だなぁ、暴走?(笑) ガッタス愛は?ラストのオチも笑いました
よししばが大好きなので、ここでふたりの話を読める事がうれしいです
ありがとうございます。新作も楽しみに待ってま〜す♪
257 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/23(月) 02:52
この4人が4人らしくあって楽しかったです
次も楽しみにしてます
258 名前:名無しメガネ 投稿日:2007/05/05(土) 01:05
初めまして&完結おめでとうございます!!
ツースリーさんの吉柴…大好きですvv新作楽しみに待ってます。
259 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:19


その夜。
告白をされた。突然だった。

相手は、もう何年も友達付き合いをしている人で。


「ちょっと…何、言ってんの?」
「…何って。好きだって、言ってる。」
「…誰を?」
「誰をって、柴ちゃんを。」
「…今さら?」
「今さら。」


…5年前に、私を振った人だった。


260 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:20


「飲みすぎたね、帰ろう。」
「いや、全然飲んでない。」
「酔っ払いすぎだよ。」
「酔ってないよ。」


さっきもテキーラをぐいっと口に流し込んでいたような気がしたけど。

それでもあなたが酔っていないと言うのなら、私が酔ったんだろう。
そして耳がおかしくなったんだ、そういうことにしておこう。


「じゃ、私は帰るね。」
「待ってよ、なんで怒ってんの?」
「怒ってるわけじゃないけど。」
「じゃ、なんで帰るの?」


立ち上がろうと、イスを引くと。
強く手首を掴まれて、掴んできたその手のひらはとても熱い。

…やっぱりこの人かなり酔ってるな。


261 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:21


「よっすぃ〜は、覚えてないかもしれないけど。」
「うん。」
「結構、昔。私よっすぃ〜に告白したことあるんだよ。」
「覚えてるよ、当然。」
「そのとき、よっすぃ〜がなんて答えたかも?」
「『柴ちゃんのこと、そういうふうには見れない。ごめんね?』って。」
「うわ、やめて、同じセリフ、同じ人に言われると。また傷つく。思い出して、また
泣きそう。」
「泣かないでよ。」
「泣かないよ。当たり前でしょ。」


どうして今さら私が。
泣かなきゃいけないの。


何年も、友達をやってきた時間は無駄じゃない。
あの頃は、部屋に閉じこもってわんわん泣いたけれど。


262 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:22

今は、よっすぃ〜を好きだった自分が、自分じゃなかったみたいに。
私が好きだったよっすぃ〜は、よっすぃ〜じゃなかったみたいに。

思えるようになった。
そう思うことで、側にいても、友達でいても、つらくなくなって、むしろ楽しくなって。


私がそうやって作り上げてきた、関係を。
どうして全部粉々にするようなことが、この人にはできるんだろう。
いくら酔った勢いとはいえ、あまりにも。


「ひどくない?」
「だって、仕方ないよ、好きなもんは好きだし。」
「そういうふうに見れないんじゃなかったっけ?」
「そういうふうに見れるようになったんだよ。むしろ、そういうふうにしか見れない。
ここ、一、二年くらいは。柴ちゃんのこと、ただの友達だなんて思えなかった。」
「…ほー…」
「酔ってないよ、言っとくけど。」


263 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:22


はっきりとしたその声に反応するように。
私は顔を上げて、久々によっすぃ〜の瞳を覗き込んだ。

ここ何年も友達で、二週間に一度くらいは会ってご飯を食べたり、大人になってからは
お酒を飲んだりしていたのに。

よっすぃ〜の目を、しっかり見つめるのは久しぶりだった。
ずっと避けていたのは、その目に映る自分が。
昔の、甘ったるい惚けた顔になるのが怖かったからだ。


…まだ、大丈夫そうだな。

ここ何年かの、強い、あなたの友達の私がいた。


「とりあえず、今日はこのへんで。」
「とりあえずって、何。」
「…帰るから。手、離してよ。」
「…怒んないでよ。」
「怒ってない。」


あなたの手を振り払った、私のその手首には。
薄い痕と、濃い熱が残っていた。



264 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:22


いろいろ、話したいことがあったのに。
愚痴とか、相談とか、その夜聞いて欲しいことがたくさんあった、友達のあなたに。
なのに突然、あんなことを言い出すから。
恒例の、お食事会も台無しで。
その上、次の日の朝から、呼び出されたりしたら。
私の機嫌が最低なのも仕方がない。


こんなに長く一緒にいて、私がされてうれしいことも、いやなことも全て知ってるはずの
あなたが。
そもそも初めから、人の扱いが、特に女の子の扱い方が異常にうまいあなたが。


こんな初歩的ミス、タブーを犯すなんて不思議だ。
おかしい。


やっぱりいつものあなたじゃない。


「…で?何。」
「まだ、怒ってるの?」
「せっかくの休日で気持ちよく寝てるところ起こされたら。大抵の人はそりゃあ怒るよね。」
「今日のことじゃなくて昨日のことだよ。」
「私は今日のことを怒ってるんだけど。」
「昨日のことは?」
「昨日のことは怒ってない。何度も言ってるじゃない。そもそも覚えてない。もう忘れた。」
「好きだよ、柴ちゃんのこと。」
「…何言ってんの?!…こんなとこで。いいかげんにしてよ。」
「だって覚えてないっていうから。もういっぺん言ったほうがいいかなーと。」
「よっすぃ〜ってコーヒーでも酔えるんだね。」
「人間、コーヒーじゃ酔わないよ。酔ってないよ。昨日も今日も。」


265 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:23


私の家の近くの少し古いお店。
カフェと言うより、喫茶店という名がふさわしいだろう。


呼び出された私は、本当は眠ってなんていなくって。
ひどい睡眠不足だった。
お酒を飲んだ、休日の前の日の夜は、普通ならとてもよく眠れるのに。
昨夜は、あなたにあんなことを言われたせいで。


寝不足と、あとよく分からないけど、別の理由のせいで。
なんだかとても頭が痛い。


テーブルに肘をついて、その手の先に痛む頭を乗せるようにうなだれると。
ふわりと、優しく頭を撫でられた。


「頭痛?」
「そう。」
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど。離して。」
「怒んないで」
「怒ってない」


口から出る言葉とは裏腹に、自分の感情が荒れているのが分かる。
全く何に、こんなに腹を立てているのか。


266 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:24


「昨夜は。うちは酔ってなかったけど、でもお酒の席だったし。信じてもらえなくても
しょうがないと思って。今朝なら。昼間の状態でなら、信じてもらえるかなって思って。」
「だからって、次の日の朝に。別れて何時間かしか経ってないのに。呼び出す?普通。」
「来てくれないかと思ったけど。来てくれるもんだね。」
「友達だからね。」
「うれしいよ、それでも。」


あぁ、分かった。
私はこの人に、この人の、私に向けるこの笑顔に。
腹を立てているんだ。


「人を振っておいて。よく言えるよね。好きだ、なんて。」
「好きだからね、実際。」
「振ったじゃない。」
「昔はね。でも、今は。」
「そんなの、おかしい。」


ありえるんだろうか。
昔、私があれだけ想っていても、私に全く興味を示さなかった人が。
…私を好きになるなんて。

ここ数年で、それほどの劇的な変化が、自分にあったとは。
到底思えないんだけど。


267 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:24


「じゃあ柴ちゃんじゃなくて、うちが変わったんだよ。」
「へぇ、どんなふうに?」
「柴ちゃんを好きなふうに。」
「アホらし。」


どんな言葉を聞いても、後付のようにしか思えない。
だってどうしたって、信じられない。
急に、突然。
そんなことを言われたって。


「突然だって言うけど。柴ちゃんが気づいてなかっただけだよ。うちは、結構前から。
自分の気持ち、アピールしてるつもりだったけど?」
「そんなの気がつくわけないじゃない。優しくされようが、何されようが。
よっすぃ〜が私を好きになることは、絶対ありえないって。5年前に言われたんだから。
本人に。」
「そんなことは言ってないじゃん。ありえないなんて言ってないよ。ありえたし。」
「ずるい。」
「ずるくないね。」


私の気持ちを封じ込めさせておいて。
5年後にそれを無理やり開けようとする。
それのどこがずるくないの?


「私は。受け入れないよ、よっすぃ〜の気持ち。」
「どうしても?」
「どうしても。」
「ちょっと歩こうか。」
「外?」
「そう、いい天気だし。」
「うん。」


話を逸らされているような、誤魔化されているような気もしたけど。
窓から差し込んでくる日差しは、とても気持ちが良さそうで。
つられて、あなたと一緒に立ち上がった。


268 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:25


少し歩くと、目立たないけれどとてもいい景色の、公園に出会った。
中々気がつかれにくいんだろう、休日なのに誰もいなくて。
近くに住んでいる私でさえ、知らないような、こんな素敵な場所を。
フラっと見つけてしまうのが、この人の生まれ持っての一つの才能で。
私を惑わせる魅力なんだと、改めて感じた。


「私、この季節が一番好きだなー。」
「そう?」
「うん。だって、暑すぎないし、寒すぎなくて…」
「うちは柴ちゃんが一番好きだよ。」


ベンチに腰掛けながら、平気でそんなことを言う。
やっぱり、さっきの私の言葉は誤魔化されていたんだ。


「受け入れないって。言った。」
「言われた。」
「じゃあ、もう。」
「やーめない。」


269 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:25


段々、痛みよりも怒りが頭にくる。
なんなの、この人。
これじゃ告白というより、ケンカを売られているみたい。


「よっすぃ〜、あのね、」
「覚えてる?」
「はっ?」
「5年前。柴ちゃんが、うちになんて言ったか。」


何を言い出すのかと思ったら。
なんてことを言い出すの。


「なんのこと?」
「柴ちゃんがうちに言った、告白のこと。」
「言ったっけ?」
「言ったね。」
「言ったかな?」
「覚えてるでしょ?」
「言われたことは覚えてるよ。柴ちゃんのこと、そんなふうに見れないから…」
「言われたことじゃなくて、うちに言ったこと、覚えてるでしょ?」


それは当然だ。
忘れるわけなんてない。


私の人生で、初めてで。
そしてきっと最後の、自分からの告白だった。

砕け散ったけれど。


270 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:26


「『…よっすぃ〜のことが、好きで。』」
「うんうん。」
「『頭が、痛くて。眠れない。』」
「おや、一緒じゃないか、今日と。」


そんなの、ただの偶然だ。
偶然だ。
偶然だと…思いたい。


「今日、頭が、痛いのは。寝不足で。」
「眠れなかったんでしょ?」
「眠れなかったのは、別に、そういうことじゃなくて。」
「じゃあ、どういうこと?」
「なによ、大体、人のこと振ったのはそっちのくせに…」
「うちにもね、プライドってものがあるんだ。」
「はぁ?」


急に腕を組んでえらそうにふんぞり返って。
やっぱり言う言葉がどこかおかしい、この人は。

ちゃんと私の話聞いてくれてるのかなって、顔を覗き込むと。
その目に映る自分の顔に、いやな気配がした。


271 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:26


慌てて目を逸らす私に、止まらないあなたの声が聞こえる。


「自分が振った子に。自分から告白するなんて。ちょーダサくない?」
「ダサいね。」
「ダサいよね。ごめん、とか言っといて、いや待てよ、やっぱ好きだわ、とか。」
「最低だね。」
「だべ?」

なにがそんなに自慢げなんだろう。バカ?
呆気に取られていると、そのうちに。

さらりと、肩に腕がまわされた。


「だから、ためらわれたんだよ。うちだって。今さら、言いにくいなーって。」
「なに、この手。」
「そもそも、5年前に。一度結論が出た関係じゃん?それを、ひっくり返すのは勇気がいるしね。」
「だから、なに、これは。」
「柴ちゃんはもう、うちへの気持ちなんて。すっかり失くしてしまったんだろうか、
いいや、それでも。この気持ちを抑えることなど、できはしないぞ!!それで、まぁ。」
「まぁって。」
「でも、本当。言ってみてよかった。」
「どうよかったの。」
「うまくいって。よかった。」
「いってませんけど。」
「昔はね。」


272 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:26


段々と距離を近づけて。
私の目を見ようとするあなたの目から、必死に逃げ続ける。

もうそろそろ、捕まるだろうと分かっていながら。


「昔は。柴ちゃんのこと、そんなふうに思えなかった。それに、柴ちゃんに、
そんなふうに想われてるとも、思えなかった。」
「私は、ちゃんと。…告白したのに。」
「だけど、それこそ突然だったよ。思い当たることなくってさ。どっちかっていうと、
柴ちゃんうちに突っかかるし。気が合わない、ような。感じしたじゃん。うちら。」
「私は、そうは思わなかった。」
「そうなんだよね、実際、友達として付き合ってみると。柴ちゃんいい子でさ。
うちが振る前より、振った後の柴ちゃんの方が、いい子でさ。
それ、おかしくないか?って。そういえば柴ちゃん。そもそも告白してくる前から、
うちには冷たかったけど。他の子にはいい子だったんだよ。
おいおい、待てよ。柴ちゃんって、もしかして。好きな子には意地悪しちゃうタイプの子
なのかって。」
「…男子小学生か。私。」
「いやでもあながち違うとは言えないね。でもさ、じゃあそんな子が。あの日、うちに
どんな想いで、好きだなんて、言ったんだろうって。…すげー後悔したよ。
あの日の柴ちゃん、めちゃくちゃかわいいじゃんって。すごい、愛おしいじゃんって。」
「うるさい。」
「で、またさ。昨日から。昨日のうちの、告白から。あの男子小学生の柴ちゃんが
帰って来て。うち今ちょーうれしいんですけど。」
「はぁ?」


言葉では、そんなこと言いながら。
次第に熱を帯びていく自分の正直な顔が、頬が、大嫌い。


273 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:27


カギをかけたはずだった。
あの日、よっすぃ〜に振られた日、私は自分の心にカギをかけた。

なのに、最悪、そのカギは。
私じゃなくて、よっすぃ〜が持っていた。


よっすぃ〜はいつでも、どこででも、私のカギを。
自由自在に、開けられる状態にあったんだ。

なのにそれを5年間もそのままにしておいて。
今さら、私の事情や気持ちは無視で、いきなり開けるなんて。
やっぱり、ひどい。


「あの日の柴ちゃんと、うちは今。同じ気持ちだよ。眠れない、柴ちゃんのこと考えると。
興奮しちゃって。」
「わ、私は!!興奮して眠れなかったわけじゃないもん!!!!」
「似たようなもんだよ。」
「違うでしょ、全然!」
「もうたまに、抑えきれなくて。無理やりなんか、しちゃいそうになったこともあるけど。
我慢してきてよかった。やっぱ同意の上のほうが。いいもんね、こういうのは。」
「どういうのが?!待って、そもそも。同意してないけど!」
「好きだよ、柴ちゃん。」


そう言われて自然と目を閉じてしまう私は。
一体、どれだけ素直なんだろう。


よっすぃ〜は、コーヒーじゃ。
人間、酔っ払ったりしないって、言ってたけど。

私は充分、よっすぃ〜から伝わる、その味で。
クラクラと、酔わされた。


274 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:27


「今。」
「ん?」
「絶対、自分の顔。見たくない…」
「かわいい顔してるよ。5年前より、うちが好きだって、顔してる。」
「最悪。」
「なんで。」


情けなくて、恥ずかしい。
自分を過去に、振った人に。
今だこんなにも、心を乱されて。


5年間。
私はなにをやってたの。
やっぱり、なにも。
やれていなかったの?


「いや、この5年の間に。うちをこんだけメロメロにさせたんだから。大丈夫、大丈夫。」
「信じない、そんなの。バカ、最低。」
「おぉ、いいよ、もっともっと突っかかってきて。もう今のうちには分かるから。
それが柴ちゃんの好きの、裏返しだってこと。」
「バカ。」
「はいはい。」
「最低、最悪。」
「うんうん。」
「…好き。」
「うちも。」


275 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:28


よっすぃ〜に抱きしめられたら、昨日から。
続いていた頭痛が。
すーっと消えていった。


心のむかつきは、やっぱり収まらないけれど。


それでも、私はこの人が。
好きで、どうしようもないなと。
5年ぶりに、気が付いた。


「5年分。愛してあげるからね。」
「うわ、どういう意味よ。」
「そういう意味だよ。」
「…引く。」
「うれしいくせに。」


その言葉に唇を尖らせると、またキスをされて。

あぁ、そっか、キスして欲しいときは。
これから私は、唇を尖らせて、すねればいいんだと。
一つ良いことを学んだ。


276 名前:5年分 投稿日:2007/05/27(日) 17:28


5年前に振られた傷は、完全には癒えていなくって。
また、それは頭痛となって、時々痛み出すかもしれないけれど。


でももう、それに怯えなくてもいいんだ。
その痛みを取り除ける、たった一人の人が。
これからは、ずっと。
一緒にいてくれるらしい、ので。


その日から、私は毎日。
5年分の愛を、あなたにたっぷり注がれ続けている。




277 名前:ツースリー 投稿日:2007/05/27(日) 17:34
以上、短編です。

>>256 名無飼育さん さま
レスありがとうございます!笑っていただけてうれしいでありんす〜
新作も早く始められるよう…がんばりますのでどうぞまたよろしくお願いいたします〜♪

>>257 名無飼育さん さま
ありがたいお言葉…ありがとうございます!
今回は短編ですが、読んでいただけたらうれしいです♪

>>258 名無しメガネ さま
初めましてですが私ももちろんメガネさんが大好きです。すみません変なことを言っております。
レスありがとうございます〜♪これからもどうぞよろしくお願いいたします!
278 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/28(月) 01:57
すんごく良いです。
279 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/28(月) 10:56
柴ちゃんを見るといつも、うさぎとねずみを思い出すのは自分だけ?
ごっちんみたいに前歯を治したら凄い美人さんになるのになぁ〜って
思う。
でもこの小説は好きですよ!。
280 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/29(火) 21:49
柴ちゃんの不器用な愛情表現がかわいいです
それを、ど〜んと受けとめちゃう、よっすぃもさすが(笑)
時間をかけて恋人になるのも、悪くないかなって思いました
まったりと待ってますので、新作ものんびりどうぞ
281 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/26(木) 22:11
暑いですね〜、夏休み=冒険王⇒ガッタス!!
この暑さに負けないくらい、熱い2人の物語をお待ちしています(笑
282 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/29(水) 22:16
吉柴・・・
もっとプリーーーズ!!!
283 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/07(日) 15:11
メロンのX'masライブ東京3公演行き決定♪♪
それまでにここで柴ちゃんの充電出来たら嬉しいなぁ(´ω`)
284 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/29(木) 19:54
いつまでも待ってます。
285 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/02(日) 20:41
吉柴が大好きで全部よんでます。

そろそろ・・・

禁断症状発令!!!

待ってます(>0<)
286 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/25(火) 19:57
メリークリスマス♪
いつまででも待っています。
287 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/27(木) 18:53
h
288 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/01/06(日) 01:28
あけましておめでとうございます。
今年もステキな吉柴待ってます…

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