悪魔とその餌食と殺人鬼
- 1 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/03/21(月) 07:58
- どうなるか予測はつきませんが、とりあえず吉澤が主役です
勿論放置はしません
世界観は想像しながら読んでください
アンリアルっていうんですかね
- 2 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/03/21(月) 08:00
- では
- 3 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 08:03
-
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
うるさい
非常にうるさい
もう朝かと薄目を開けるも部屋は真っ暗
音のする方向に目を向けると暗闇の中で携帯が光っていた
こんな夜中にどこのどいつだと布団から這い出し、携帯を手に取る
待ち受け画面には 吉澤ひとみ と出ていた
はぁ・・・とため息をつきながら通話ボタンを押す
- 4 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 08:05
-
「もしもしぃ・・・」
『あ、矢口さん!?あたし、よしざーですけど!』
「よっすぃ・・・あんた今何時だと・・」
『殺される!』
「はぁ?」
『今から行っていいですか?っていうか行きますんで!』
「ちょ、ちょっと待ってよ!何がなんだか・・」
プツッ・ツー・ツー・・・
しばし呆然
意味がわからん
何なんだ?
嫌がらせか?
とりあえず寝ようと布団に潜るも眠れない
電気をつけた
「・・・殺される?・・まさかよっすぃまた・・・」
時計を見ると深夜2時半を回っていた
はぁ・・・もう一度深くため息をつくと湧き上がる怒りを抑えながら2人分のコーヒーの準備に立った
- 5 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 08:11
-
- 6 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 08:11
-
ピンポンピンポンポンポーン!ピンポーンピンポーン!ピピピピピピピーンポーン!ピピピ・・・
ガチャ!
「うるせー!」
ガッ!
「ごぁっ!」
「ったく、近所迷惑でしょうが何時だと思って・・・ってまた何て格好してんだよ」
玄関前にじんべぃ一丁で横たわる金髪を抱き起こす
走ってきたのだろう、シャンプーの匂いをプンプン放つよっすぃの鼓動は速く体温も高かった
そのままリビングに通しソファに座らせると私も向かいのソファに荒く腰を下ろした
「で?どーしたってのよ。だいたい察しはつくけど」
うつむき今しがた玄関の戸にぶつけた頭をさすっていたよっすぃは手を止め
「殺される」
と一言ぶつやいた
「誰に?」
「美貴」
- 7 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/03/21(月) 08:14
- こんな感じで。
ちょっと整理して夜また更新します
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/21(月) 08:35
- 面白そうですね。
楽しみにしてます。
- 9 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 19:59
-
はぁ・・・三度目のため息をつくと同時にコーヒーを入れにキッチンへ立った
アイスコーヒーのがいいだろうとカップをグラスに替え、氷をぶちこむとシロップを添えて出してやった
およそ私にできるだろう最後の優しさだった
「あのさ、ひょっとしてなんだけど、まさかとは思うけど、いや、うん・・・まさかねぇ・・・」
「・・・?」
「・・・ありえないと思うけど・・・まさかだよ?まさかなんだけど、また浮気した?」
よっすぃはこれ以上ないという笑顔で力いっぱいうなずいた
可愛い・・・と思ったのは0.何秒だっただろうか?
次の瞬間、私はこの可愛い後輩をソファに押し倒すとマウントを取っていた
「この前、ほんの1ヶ月前か?浮気して半殺しの目にあってた子って誰だっけ?」
「・・・よしざーです」
「な?で、そこであんたに泣きつかれてしぶしぶ立ち上がった仲裁人って誰だっけ?」
「・・・矢口さんです」
「ああそうだとも。矢口はよっすぃにミキティとの仲裁を頼まれた。で、矢口の血のにじむような努力のかいあって結果、見事解決してやった。だな?」
「・・・はい」
消え入りそうな声で返事をするよっすぃは顔をクッションに埋めてしまっている
だがこっちもそんなことではおさまらない
「つい1ヶ月前だよ?なんで?なんで今また同じ過ちを繰り返してんのさ!?ほんと馬鹿だね!あんたまだミキティの怖さがわからないの?自分で付き合うって決めたんだからいい加減・・・」
- 10 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 20:01
-
・・・ヒック・・・グスン・・・スン・・・ヒック・・・
「・・・ごめんなさい」
あれ?
手で顔をこちらに向けさせるといつのまにかよっすぃの目には涙が溜まっている
「ちょ、ちょっと、何泣いてんのよ・・・」
ウウウ・・・ヒ〜ン・・・ウワァァァァン・・・グスン・・・ウワァァァン・・・グスン・・・ヒック・・・ズヴァヴァヴァ・・・ジュル・・・
え?何?本泣き?ていうか今こいつクッションで鼻かんだ?
「・・・泣いても無駄だよ?矢口がミキティをなだめるのにどれだけの苦労・心労を擁したかわかる?」
「・・・あたし駄目なんです・・グス・ほんと、どうしようもない糞野郎だと思います・・エッ・自分でも情けなくて・・・正直あたしみたいな節操のないカスは死んだ方がいいんじゃないかって・・ヒック・」
「いやいやまぁそこまでは・・・」
「いーえ!死んだ方がいいんすよ、あたしみたいなクズは!ちょっと包丁借りていいですか?」
そう言って泣きながら立ち上がろうとするよっすぃを私はしがみついて抑える
「バカ!そういう問題じゃないでしょ!ちょっと落ち着きなって!」
こういった時はビンタの一発でもかまして落ち着かせるべきだろう
だが私はよっすぃに対してあまりにも小さかった
- 11 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 20:03
-
- 12 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 20:05
-
それ以降何がどうなったのかよく憶えていない
よっすぃと取っ組み合いになったのは憶えている
半狂乱になりながら罵倒し、泣きながらとにかくよっすぃを止めようとしていた記憶もある
こっちが泣きながら本気で押さえ込もうとしているにも関わらず、ちょっと半笑いだったよっすぃの顔に殺意を覚えた事も憶えている
だが今現在のこの状況だけはわからない
気がつくと私はなぜか裸でベットに寝かされているのである
なぜ・・・?
横を向くとそこには同じく裸の色白金髪ホクロ美女の最高の笑顔があった
「・・・なんで?」
「なんで?」
「私・・・なんでよっすぃと寝てるの?」
素直に疑問をぶつけてみた
「いや〜可愛かったなぁ、矢口さん。マジ。すんげー、ものごっつい可愛かったなぁ。」
よっすぃから繰り返される言葉に全身が硬直し、赤みを帯びるのが自覚される
体温もえらいことになってるだろう
「・・・え?私よっすぃと・・・?」
「憶えてないんすか?」
とため息をつきながらよっすぃ
「アンアンいってましたよアンアン。『フォォォォー』とも叫んでましたね」
「嘘つけー!」
と突っ込んだものの自信はない・・・
落ち着け、落ち着くんだ真里、落ち着いてよーく思い出せ
そう繰り返し心を取り戻そうとするも、錯乱状態の私によっすぃが覆い被さってきた
その大きな目に見つめられ頭の中を真っ白にされる
「あっ・・・」
ふいに首筋から耳元に沿って舐め上げられる
全身に快感という名の鳥肌が立った次の瞬間、この金髪の悪魔は口を開いた
- 13 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 20:09
-
「矢口さん、もう一度私と美貴との間に立ってもらえませんか?」
「・・・え?」
「そろそろウチにある家具はすべて破壊し尽くした頃ですし、もうすぐ落ち着きを取り戻して、殺人鬼としてここに来ると思います」
殺人鬼て・・・
「ウチから一番近い知り合いの家って矢口さん家ですし」
「む、無理だよ!ミキティは止められないよ。仏の顔は三度までか知らないけど、あいつに二度目はないよ!?ていうか、あぁ!思い出してきた!大体なんで矢口があんたらの・・」
反論すべく口を開こうとするも、よっすぃの長い指によって遮られてしまった
「えぇ、あたしもそう思いますよ。けどだからこそ仲間は多い方が戦いやすい」
そう言うとよっすぃは耳元から首筋へ唇を戻す
「あたしのキスマークって特殊なんですよ。美貴も気に入ってくれてます」
「まふぁか・・・(まさか・・・)」
よっすぃはニコッと笑って悪魔の一言
「断れば吸い付く。」
- 14 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 20:13
-
頭が真っ白に
ついさっきもなったのにまた真っ白に
脳内ブラウザの新規作成の早さに驚く
「美貴が来たらどうなるでしょう?アイツ感がハンパないからなぁ。あたしのキスマーク見たらどうなるでしょうね?殺意の波動に目覚めた美貴相手に冷静に説明できますか?」
答えは否である
「矢口さん小さいからなぁ。殺ってからの証拠隠滅もしやすいだろうなぁ」
殺(ヤ)るという言葉に膀胱が圧迫される
以前仲裁に立った経験上、悲しいことに殺意の波動に目覚めたミキティなら確実に私を消すだろうという確信があった
口を抑えられた上に悲劇以外の見出せない頭真っ白の私には頷くしか道は残されていなかった
「マジっすか!?やったぁ〜!やったね!さっすが矢口さん!私の尊敬する師匠なだけあるわぁ!」
と満面の笑みで感激しながら私を抱き起こすよっすぃ
「うっほほぉ〜い!!!!!」
という場違いに狂喜乱舞するよっすぃに一瞬気が緩む
その瞬間にキスをされた
と同時に カシャ という音
「いや、これはまぁ保険ですよ。矢口さんが裏切れないようにというあたしの為の、ね。まぁ気にせず」
と言い今撮った画像を保存する悪魔に私はもう涙目で笑うしかなかった
- 15 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 20:18
-
「で、どうしろってのよ」
自暴自棄になった私は服を着ながら問いかけた
もうどうにでもなれって感じだ
「とりあえず私はここに来たって『てい』で、適当に理由つけて追い返してください。来てないって言っても気付くでしょうし。あとは追って指示しますんで。こっちからの電話待ってください」
「ねぇ・・・よっすぃ・・・」
「わかってますよ。矢口さんにはあくまでも私の計画を手伝ってもらうだけなんで。率先して巻き込む気はありませんから」
十分だよ・・・
十分率先して巻き込まれてんだよ・・・
アフォがボケが・・・
という言葉は写メールを撮られている以上、声には出せなかったけど
- 16 名前:餌食第一号矢口真里 投稿日:2005/03/21(月) 20:21
-
「あたしだってもう被害者を出すのは嫌なんですよ」
とつぶやいたよっすぃにふと疑問が湧いた
「そういえばなんで浮気がバレたの?」
一瞬間が空く
よっすぃは硬直し、その大きな目は一瞬光を失った
「美貴、今日、帰ってこない、言った。だから、あたし、紺野、こんこん、呼んだ。美貴、帰ってきた。その後、記憶、ない。」
急にカタコトになったよっすぃが見た壮絶なビジョンを想像し紺野に十字をきりつつさらに聞く
「よっすぃはミキティ嫌い?」
今度の答えは間髪いれずに帰ってきた
「世界一愛してますよ?」
「ならなんで逃げるの?」
「世界一位タイがもう何人かいましてね。美貴は危険すぎる、最後に愛するべきでした」
あっけらかんとそう答えサンダルを履くと世界一の馬鹿は闇に消えていった
- 17 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/03/21(月) 20:25
- 更新終了
続きはまた今度
>>8
初小説なもんでとりあえず更新を頑張ります
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/21(月) 21:23
- ツカミからおもしろいですね期待してます
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/22(火) 00:33
- おもしろいですねってこんこおおおおおおおおおおおおおおおん・・・
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/22(火) 01:55
- おもしろい
- 21 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/22(火) 02:07
- タイトルからしてシリアスかと思いきや。。。
非常に面白いです。
てか、紺野ぉぉぉぉ。
- 22 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:15
-
死にたい
いや助かりたい
うわ意味わかんねー
それが今の私の心境
逃げ道は悪魔によって塞がれてしまった
もうすぐここに殺人鬼がやってくる
ヤツ相手にボロを出せば殺されるだろう
はぁ・・・
ため息をつくのは何回目だろうか?
姿見の方を見るとそこにはパジャマを着てベットの上に正座をしている素の自分がいた
- 23 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:17
-
嵐の前の静けさか、時計の秒針が時を刻む音のみが響いていた
と、出し抜けに携帯のコール音が鳴り響く
ビクッと大きく体をのけぞらせると恐る恐る待ち受けを覗き込む
そこには 藤本美貴 の名が表示されていた
落ち着いて、落ち着いて・・・
深呼吸をすると意を決して通話ボタンを押した
- 24 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:18
-
「もすぃもし」
あぁぁぁぁぁ〜声裏返ったぁぁぁぁ〜〜と心の中で絶叫する
しかももしもしの「もし」が「もすぃ」とか何かよっすぃの「すぃ」とカブってるぅぅぅぅぅ〜!
バレたかぁぁぁぁぁ〜?と意味不明な心配までしてしまう
『・・・』
「も、もしもし?」
『もしもし、起きてました?』
・・・以外に落ち着いてる
うん
逆に怖い
「ん、ん?なんで?」
『いや、午前4時近いのに声明るいなと思って』
見透かされてる感がハンパねぇ・・・
これはよっすぃの言うとおり、下手に嘘はつかない方がいいなと判断する
「うん、何かさっきよっすぃが来てね。喧嘩したんでしょ?」
できるだけ精一杯の明るさで問い掛ける
『・・・よっちゃん、行きましたか。・・そうですか・・カチャッ・・よっちゃん・・・あいつそっち行きましたか・・カチッ』
空気が重すぎる・・・
何かリボルバー的なものに弾を込めるような音が聴こえてるんですけど・・・
『行っていいですか?』
「は?」
『矢口さん家、行ってもいいですか?』
「え・・・、よ、よっすぃはもういないよ!?何かパッと来てパッと出て行ったし・・」
『いや確かめてみたいこととかあるんで』
「・・・う、うん。いいよ。お、おいでよ」
『夜分遅くにすいません、じゃあ』
そういうと電話は切れた
この2分程度の電話で役2ヶ月分の腋汗をかいた私はマッパになると悪魔に不審な烙印が捺されてないか全身を合わせ鏡に映すのだった
- 25 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:19
-
- 26 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:21
-
ピンポーン!
ついにきたか・・・
「どうぞ」と言う暇もなく我が家の玄関に設けられたヘブンズドアは開いていた
「おじゃまします」
「ど、どうぞ。何か飲む?」
「いえお構いなく」
顔や態度こそ平静を装っているものの、目を細めると青白いオーラを身に纏っていることが見て取れた
「・・・よっちゃん、どこ行くって言ってました?」
「いや、聞いてないよ。何も言ってなかったし。さっきも言ったけどパッと来てパッと帰ったんで私にも何が何だかわか・・」
「そうですか」
私の必死の工作を五文字で遮ると、ミキティは強烈なプレッシャーを放ちながら部屋の中をグルグル見回りだした
現場検証が始まったようだ
ふと何かブツブツとつぶやきだす
消す、潰す、撒くといったおよそ楽しい事を企む時には連想しないであろう動詞が聞き取れ出すと、私は家主に与えられている聞き耳を立てるという権利を完全に放棄した
何人も口出しすることが許されない一人戦略会議・・・
自分の部屋に高次元の結界を張り巡らされる状況に私はきをつけの体勢を取り続けることしかできなかった
- 27 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:22
-
「矢口さん!」
「矢口さんってば!」
はっと我に返るとベットに足を組んで座っているミキティが私を呼んでいた
「・・・え?な何?」
「何ぼーっとつっ立ってんですか?ここ矢口さんの家だしもっとくつろげばいいのに」
いやお前のせいだろとはつっこめない
「それで、すいません矢口さん。ちょっと服脱いでもらえますか?」
来た・・・
「は?」
「お願いします。下着はいいんで」
「いやいや待ってよ。それはちょっと・・・っていうか何でよ!?私を疑ってるの?この前あんたらを仲裁したのは私だよ!?」
とりあえず反抗してみる
「・・・ちょっと確かめたいだけなんです。何だったら美貴も脱ぎますよ」
言いながら薄手のジャケットを脱ぐミキティの腰にはコルトパイソン的なものがささっていた
今のミキティに反抗するのだけは駄目。
それだけは絶対に駄目なんだとここに来て私は一つ勉強する
「い、いいよ、いいよ!脱ぐよ!矢口脱ぐよ!矢口は脱ぐよぉ〜?ほ〜ら、パンツも脱いだよ!?」
「いやだからパンツはいいんで」
ちくしょう・・
自分のあまりのビビりように涙がこぼれそうになるのを必死にこらえながらパンツを履いた
- 28 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:23
-
「で?脱いだ(履いた)けど・・・おいら、何されるの?」
できるだけ可愛く聞いてみる
「ちょっといいですか?」
そういうとミキティはベットに私を横たえらせた
首筋、腰、内腿などなど、よっすぃが好んでマークを残すところなのだろう
しらみつぶしに体中を調べ上げられる
「ちょ、あの・・・結構恥ずかしいんですけど・・・」
「・・・」
ミキティの無言のチェックは続いていく
私は車検を見守る貧乏学生になった気分で不備なしを祈るしかなかった
- 29 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:24
-
チェックが最終段階に達した頃だろうか、私の背中を見ていたミキティの動きが止まった
全身に緊張が走る
落ち着いて、合わせ鏡に映った自分の背中を思い出してみる
セーフだ。絶対にセーフ。我ながら綺麗な背中だった
何かの痕ということに絞り込んでも昨日蚊に食われた痕が可愛く一箇所あっただけ
さっき爪で×と押した痕があるぐらいだ
その瞬間、戦慄が走った
よっすぃの言葉がフラッシュバックする
『あたしのキスマークって特殊なんですよ。』
よっすぃのキスマークってどんなのなんだろう?
まさか歯で何かしらしてバッテンマークみたいなものを付けるのではないだろうか?
それが今の私の背中のものと酷似していたらどうしよう・・・
先ほど見た黒光りするコルトパイソン的なものが頭に浮かんでくる
殺られる・・・?
- 30 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:25
-
そう思った次の瞬間に私は叫んでいた
「違うよ!?これは蚊だよ?虫喰い!昨日窓がちょっと開いてて今もちょっとほら鼻声(急に)なんだけど、そのキスマーク的なものとは全然違ってて、あのよっすぃに付けられた特殊なキスマークの痕に見えるかもしれないけど、うちの地方では蚊に噛まれたたらこうやって爪で×ってするのがならわしで・・」
無我夢中で弁解し背中を擦りながら振り向くと驚いた顔のミキティと目が合った
その耳には携帯電話が押し付けられている
「・・・あ、もしもし。おはよう」
・・・電話してただけ?
「ごめん。ちょっとさ、電話しといて何なんだけど、悪い。後でかけ直す。起きて待ってて」
背筋に冷たいものが走る
私はゆっくりと顔をうつぶせに戻すとシーツを涙で濡らした
- 31 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:26
-
「特殊なキスマークねぇ」
「・・・」
「うん。よっちゃんのキスマークは特殊なんですよねぇ」
「・・・」
「状況から考えてキスマークを探してるのはわかったでしょう。けど『特殊なキスマーク』って言葉はちょっと聞き捨てならないですねぇ」
「・・・」
「まぁ常識的に考えてこんな蚊に喰われた痕みたいなキスマークありえないですけどね。よっぽど焦っちゃいましたか?」
「・・・」
「で、どこでそのような単語を?・・まさか・・・よっちゃんに・・・何かされた?」
・・・返事がない。ただの屍のようだ
私がここのところ毎日楽しみにしているRPGゲームの一節が頭に浮かんだ
一瞬この状況を通り越して屍になれたらどれだけ楽かとも考えた
だが、まだだ!まだ終わらんよ!
そのRPGゲームを進めるためにも私はここでは終われない!
- 32 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:26
-
よし!と気合を入れ顔をあげると
「ち、違うよ!ミキティ、何か変な誤解しちゃってる!特殊なキスマークってそりゃあにょ・・」
殺人鬼の指が伸びてきて私の口を塞いでいた
皮肉にも悪魔がしてきたのと全く同じ塞ぎ方だった
「あのね、美貴の獲物は一匹。あいつだけでいい。けどそこに辿り着くまでにある障害物は排除しなきゃならないし気がすまない」
殺人鬼の目は完全に据わっていた
ただ鬼と呼ぶにはあまりにも美しかったけど
「よっちゃんが来てからのこと全部話してください。隠さずすべてを。あとは美貴が判断します」
いくらでも払うんでその判断基準を教えてください・・・
「それと一つ注意。美貴、あんまりわーっと言われるの嫌いなんで。落ち着いて話してください。さっきも一人、それでアレしちゃったから」
アレって何ですか・・・?
アレされた紺野を思い浮かべようとしたが、私の能はそれを拒絶した
- 33 名前:矢口、殺人鬼との対面、そして 投稿日:2005/03/23(水) 07:28
-
脳内を自分が生き延びることだけに切り替え、演算処理装置をフル稼働させる
悪魔に抱かれたということは口が裂けてもいえない
その瞬間に私は鬼の手によって紺野と涙の再会を果たしているだろう
賽の河原で。
かといって嘘は言えない
辻褄が合わなくなってバストした時に被害をこうむるのは自分自身だし。
いっそのことあること無いこと吹きつけて、悪魔を巨悪にしたてあげるか?
そうなると悪魔は保険をちらつかせてくるはずだ
私が得することは何も無い。
鬼に隠し事をした上で仲間になり、隙を見て悪魔の援護もしながらそれらすべての整合性を保つ?
この最凶最悪の難題に対し、私の脳内コンピュータが最初にはじき出した答えは「この件が片付いたらこいつら2人とは絶交しよう」だった
- 34 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/03/23(水) 07:34
- 早朝更新終了
続きはちょっと遅れるかもです
一週間以内にはかならず
>>18
掴めましたか?ありがとうございます
>>19
ありがとうございます。こんこん・゚・(つД`)・゚・
>>20
ありがとうございます
>>21
ありがとうございます
実はこの先どうなっていくのか全く決まっていませんw
どっちに転んでも見捨てないでください。紺野も・゚・(つД`)・゚・
- 35 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/03/25(金) 00:21
- 一気に読まさせて頂きました。 うわっ( ̄□ ̄;)ミキティ恐すぎです。 紺ちゃんに一体何がっっ?次回更新待ってます。
- 36 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/03/29(火) 02:59
- 深夜更新開始
- 37 名前:亀井絵里、悪魔の巣へ 投稿日:2005/03/29(火) 03:01
-
無視しても無視しても切れる様子のない、目覚ましのアラームと化したコール音に、わたしは手探りで携帯を探り当てると目をつぶったまま通話ボタンを押す
「もぉしもぉーし・・・」
『・・・あ、もしもし。おはよう』
「もぉしもぉーし。誰ですかー?」
『ごめん。ちょっとさ、電話しといて何なんだけど、悪い。後でかけ直す。起きて待ってて』
プツッ
電話は切れた
は?何だこりゃ?誰?
そこでようやく目を開け着信履歴を確認すると、そこには藤本さんの名前が。
ゆっくりと目を閉じる
ゆっくりと頭の中で状況を整理する
「うわぁぁぁぁぁ・・・」
思わず声が漏れた
午前4時過ぎという尋常じゃない時間、起きて待ってろというありえない内容、そして何よりも藤本さんの声がつい1ヶ月ほど前に聞いた二度と思い出したくも無い頃の声と同じだった
ぶっちゃけ、かなり嫌な予感が・・・
- 38 名前:亀井絵里、悪魔の巣へ 投稿日:2005/03/29(火) 03:02
-
- 39 名前:亀井絵里、悪魔の巣へ 投稿日:2005/03/29(火) 03:03
-
住宅の窓に明かりはない
ほとんどすれ違う車もない
暗闇の中を疾走するタクシーの中でわたしはぼんやりとさっきの電話でのやり取りを思い出していた
『もしもし、亀ちゃん?』
「・・はい」
『さっきはゴメンゴメン。でさ、悪いんだけどさ、よっちゃんの家に行ってみてくれる?』
「え・・・?吉澤さんの家ですか?」
『そ。よっちゃんの家。知ってるよね?』
「そりゃ知ってますけど・・・」
『けど?』
「いえ・・別に・・・今からですか・・・?」
『そ。今から』
「あの・・絵里今日ちょっと用事があるんで新垣さんとかさゆとかれいなに・・・」
『タクシーもうそっち回してるから。服着替えたらさっさと下降りてね』
「・・・。・・・あのまだ外真っ暗ですよ?」
『うん。そうだね・・で?』
「いえ・・別に・・・・・・行きます」
『ありがとう。あ、タクシー代は勿論私が払うから。領収書もらってて。じゃ着いたら電話してね』
- 40 名前:亀井絵里、悪魔の巣へ 投稿日:2005/03/29(火) 03:04
-
このモードの藤本さんに反論は許されない
そして藤本さんがこのモードになるのは吉澤さん絡みの時だけ・・・
ふいに1ヶ月前の記憶が思い起こされ、私は胸が痛くなった
――――――――――
――――――――――――――――――――
一ヶ月前、私と新垣さんは藤本さんに命じられるまま石川さんを連れて成田空港へと向かっていた
鬼と化していた藤本さんは「消す」と言ってたらしいけど、吉澤さんと矢口さんが手は出さないでやってくれと泣いて頼み込んだらしい
そこで半殺しの目に合っていた(合わせていた)吉澤さんに同情したのか、藤本さんが出した最終的妥協案が国外追放だったのだ
- 41 名前:亀井絵里、悪魔の巣へ 投稿日:2005/03/29(火) 03:05
-
そもそも浮気がバレていることすら知らない石川さんは浮かれていた
ピンクのスーツに身を固め、それは何の動物のどこなんだ?っていう毛だらけの帽子を被りながら
「よっすぃが旅に出ようっていってくれたの〜」とはしゃぐ石川さん
今から降りかかる出来事に同情はしていたものの、ただの馬鹿にしか見えなかったのを今でもはっきりと覚えている
わたし達が空港に着いた頃、それを見ていたかのような絶妙のタイミングで吉澤さんから電話がかかってきた
道が混んでてどうしても遅れる。私は次の便で追いかけるから先に行っててくれとの事
最初は顔を真っ赤黒にさせて怒っていた石川さんも、最終的には吉澤さんに丸め込まれたらしい
人目もはばからず携帯に対して「うん・・。私も・・。愛してる・・・。チュッ」とかやっちゃってる石川さんから私達は少し離れて他人のフリをしていた
「お豆ちゃ〜ん!亀ちゃ〜ん!いつ帰るかわからないけど、お土産買ってくるからね〜!!!」
そう叫びながら両手を振り満面の笑みを浮かべながらゲートへと消えていくピンク色の物体に苦笑いしながら手を振り返すと、新垣さんは藤本さんへ報告の電話を入れた
私は外に出てタクシーの手配をする
そのままぼーっと新垣さんを待っていると凄まじい轟音が。
空を見やると、モスクワ行きの便が大空に飛び立っていた
心の中で「アリーヴェデルチ」と呟くと、あれこれロシア語じゃなかったか?とぼーっと新垣さんを待っていた
- 42 名前:亀井絵里、悪魔の巣へ 投稿日:2005/03/29(火) 03:07
-
- 43 名前:亀井絵里、悪魔の巣へ 投稿日:2005/03/29(火) 03:08
-
それから数日起って吉澤さんの家に呼び出された
「いや〜色々悪かったね。こっちも死ぬかと思ったよ。ていうか一回死んだね」
と笑う吉澤さん
白い肌に縛られたような跡が点在し痛々しかったけど、顔は綺麗なままだった
石川さんの現状を尋ねると
「シナリオ通り進んでると、今サンクトペテルブルグでホームステイしてるんじゃね?」
とのことだった
それどこだよ・・・
「梨華ちゃんには悪いことをしたねぇ。美貴の隙をみてすぐにでも呼び戻すよ。問題はどうやって許してもらうかだよねぇ。梨華ちゃん完全にブチ切れてるぜ・・・」
と呟く吉澤さんに言葉を失った
まだ懲りないんですか?と驚嘆する私に吉澤さんは
「懲りてない?・・・懲りてないって何に?」
と真面目な顔をして聞いてきた
- 44 名前:亀井絵里、悪魔の巣へ 投稿日:2005/03/29(火) 03:09
-
「キャメイちゃんは大好物って1つ?」
は?
「ありえないよね?2つ3つとあるでしょ?しかも人生は長いよ。毎日同じものを食ってても仕方ない。どんだけ好きでも毎日食ってりゃ飽きるってもんだ。違うかい?」
何を言っているんだこの人は・・・
「うまいもんはうまい!!!!料理は心!!!!!」
と訳のわからないことを叫びながら立ち上がる吉澤さんを静めようと肩を押さえつける
と同時に吉澤さんの手が腰に回ってきた
そのままぐっと引き寄せられる
「ところで前から言おうと思ってたんだけど、キャメイちゃんって美味そうだよな」
・・・背筋が凍った
今これだけの事が起こっているのにそれに私を巻き込むつもりなのか?と絶句した
それと同時に、また別の感覚もあった
その感覚とは・・・
・・・大きな目に見つめられ何も言葉を発せられないまま凍りついていると、吉澤さんの携帯が鳴った
藤本さんだったらしく必要以上に慌てていた
私の腰を抱いたまま。
電話を切るとわたしはやっと解放される
「悪い。美貴から呼び出しかかった。あたし行くわ」
何か声をかけようと思ったけど何も言葉は出てこなかった
「ゆっくりしてってよ。鍵置いとくから。帰りポストにでも入れてって」
そう言うと吉澤さんはバイクのキーを掴み部屋を出て行ってしまった
- 45 名前:亀井絵里、悪魔の巣へ 投稿日:2005/03/29(火) 03:10
-
――――――――――――――――――――
――――――――――
それ以来、吉澤さんとは会っていない
だけど、あの時の事は今でも鮮明に覚えている
あの人間のものとは思えない、悪魔のような魅力的な目と言葉とあの感覚を。
あの感覚は何だったのだろう・・・
あの感覚は・・・
「つきましたよ」
はっと我に返ると窓の外の暗闇には見覚えのある景色が広がっていた
「言われた住所のところにきましたけど・・ここで当ってるんですよね?」
顔を2、3回軽く叩きぼーっとした頭をクリアにする
「・・・・・・・はい。ここです。ありがとう」
お金を払い領収書を貰うと外に出た
外はまだ肌寒かった
去っていくタクシーを見送ると、わたしは携帯を握り締めた
- 46 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/03/29(火) 03:15
- 更新終了
続きはまた一週間以内には
>>35 通りすがりの者さん
この話ではミキティは怖いですよ
こんこんは・・・次の更新にでも真相を
- 47 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/03/31(木) 00:51
- 面白い
これからも期待してます
- 48 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/03(日) 01:58
- 更新お疲れさまです。 うぁー、よっすぃー怖いもの知らずですね(;^_^ 亀井さんは一体どこに? 次回更新待ってます。
- 49 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/04/04(月) 06:58
- 早朝更新開始
- 50 名前:亀井、悪魔の巣にて。そこに 投稿日:2005/04/04(月) 06:59
-
・・・ ・・・ ・・・
吉澤さんの家を前に、わたしは一人立ち尽くしていた
家・・いや廃墟というべきか
鉄製の門はいがみ、玄関のドアは半開き。
ドアの横のガラスは粉々、その横に広がっていた植木鉢郡は明らかに蹴り割られている
上を見上げるとところどころ窓ガラスが割れ、そこから真っ赤なカーテンが血のように噴き出していた
吉澤家の敷地全体から呪詛が立ち込めているのが肌で感じ取れる
空き巣どころか中型のハリケーンに見舞われたかのようなありさまでたたずむこの建築物は、日の上がっていない暗闇には不気味すぎた
- 51 名前:亀井、悪魔の巣にて。そこに 投稿日:2005/04/04(月) 07:00
-
いがんだ門を通り、恐る恐る半開きのドアに手をかける
何らかの圧力を受けてドアの芯が歪んでしまったのだろう、ドアはギィー・・・という音を立てると途中で止まってしまった
中を覗き込むとそこには漆黒の闇が広がっていた
怖い・・・
「お邪魔しまぁ〜す・・・」
我ながらびっくりするぐらいの小さな声で断りを入れると靴を脱いで家に上がる
さてどうするか・・・
とりあえず・・うん。電気を付けよう・・
そう思い立ち、闇の中手探りでスイッチを探していると、壁に触れた左手が予想外の音を立てた
驚いて左手を開くと派手な音を立てて何かが落下した
はっとしてその場にしゃがみこみ、落としたものを確かめるとそれは携帯電話だった
- 52 名前:亀井、悪魔の巣にて。そこに 投稿日:2005/04/04(月) 07:00
-
思い出した
藤本さんからは「着いたら連絡して」と言われたんだった
さっきまで覚えてたのにこの惨状を目の当たりにして完全に忘れていたということまで思い出した
やるべき事がはっきりしたわたしは、しゃがみこんだまま夢中で携帯の呼び出し画面を操作する
藤本美貴の名を確認し、いざ呼び出さんとした瞬間に嫌な予感が頭をよぎった
これ・・・もしかして・・わたし・・後始末をさせられようとしてる・・・?
状況から考えて吉澤さんが藤本さんに対して背任行為をしたのは間違いないだろう
吉澤さんが荒ぶる藤本さんを抑えられたとは思えない
逃げたか、何らかの制裁を食らったはずだ
しかも今回は再犯。
吉澤さんとの電話越しに「次やったら殺すよ?」と真面目に話す藤本さんを見た事がある
わたしが吉澤さんになかなか自分から近づけなかったのはこのせいでもある
まぁ吉澤さんへの配慮というより、自分の身の安全を考慮した上での判断ではあるが。
まさか・・・殺ったんじゃ・・・?
この家に転がってる吉澤さんの死体を埋めろ的なことを命令されるんじゃ・・・
ゾクッ・・としたまま固まってしまった
いやありえないでしょ・・・いやありえないでしょ・・いやありえないでしょ・・
そう呪文のように繰り返し、心と頭を落ち着かせる
いやありえないでしょ・・・いやありえないでしょ・・いやありえないでしょ・・
いやありえないでしょ・・・いや・・・ありえるでしょ・・
そう結論が出た時、わたしは玄関に戻り靴を履いていた
- 53 名前:亀井、悪魔の巣にて。そこに 投稿日:2005/04/04(月) 07:01
-
- 54 名前:亀井、悪魔の巣にて。そこに 投稿日:2005/04/04(月) 07:02
-
気分がそう見せたのだろうか?
着いてまだ間もなかったはずだが、外は来た時より少しだけ明るくなっていた
とりあえずここは逃げよう
この場は一旦逃げて、藤本さんへ吉澤さんの家に行けなかった事に対する言い訳を考えよう
そう呟きながら門を出ようとすると、ふいに音が聞こえてきた
『ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・』
何の音だ・・・?
気になる・・・だが怖い・・・だが気になる・・・
『ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・』
音は家の裏側から聞こえているようだ
わたしは意を決すると息を潜め、ゆっくりと裏庭に足を進めた
- 55 名前:亀井、悪魔の巣にて。そこに 投稿日:2005/04/04(月) 07:03
-
裏庭に回った私は愕然とした
一人の少女が工事現場用の大きなスコップで穴を掘っている
薄暗闇の中、明かりも付けずに一心不乱に穴を掘り続ける少女
逃げ出すには十分すぎるほどの異様な光景ではあったが、わたしはその少女に見覚えがあった
・・・紺野さん!?
紺野さんが何で・・・
しかもあの穴・・・穴というより人一人が横たわる分ぐらいの大きさが・・・
さすがに堪らなくなってわたしは飛び出していた
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと、ちょっと!」
「うわぁぁっぁぁぁっ!!!!」
確かにわたしの飛び出しも悪かったです
驚くのも無理ないと思います
だからってスコップを投げつけることはないじゃないですか・・
スコップが私の数センチ横を凄まじいスピードで通り抜けていった
「うわぁぁぁぁぁっっぁっうぁぁぁっっあぁぁぁぁぅっ!!」
と叫びながら次に投げるものを探す紺野さんにわたしは抱きつく
「あぁぁぁぅぅぁっ!あぁぁぁぁ!?あぁあっぁぁ!」
この世の終わりのような顔をして叫び声を上げ続ける紺野さんの目を見ながら必至に訴えかける
「わたしです!亀井です!亀井!亀井絵里です!」
紺野さんの目は元から大きかったがさらに赤く腫れ上がっていた
「うわぁぁっぁぁっぁぁっ・・・あっ・・・かっ・・・亀・・・ちゃん・・・?」
その目がようやく私を捕えたようだ
「そう、亀井です。紺野さん何してるんですか?吉澤さんは?」
「・・・・・・・・・・・うっ・・・うわぁぁぁぁぁぁっっぁっぁぁぁ!!!」
紺野さんは私を強く抱きしめ返すと今度は泣き叫び始めた
- 56 名前:亀井、悪魔の巣にて。そこに 投稿日:2005/04/04(月) 07:03
-
- 57 名前:亀井、悪魔の巣にて。そこに 投稿日:2005/04/04(月) 07:04
-
そのまま5分ぐらい経っただろうか?
いや10分ぐらいだったか?
幸いにも吉澤さんの家は少し人里離れたところにある
近所迷惑は考えないで良いだろう
とりあえずわたしは抱きしめられたまま紺野さんのハンカチと化していた
胸元とか何らかの液体でビチャビチャなんですけど・・・
あぁ帰りてぇ・・・
と切に思っていた時、紺野さんが一枚のメモを渡してきた
泣き叫びながらだったが。
そのメモには見覚えのある筆跡でこう記されていた
『縦180cm横70cm深さ60cmの穴を2つ掘れ。掘れたらその1つに入って自分で埋まれ。』
私は紺野さんを抱きしめ返した
怖ぇ・・・怖すぎます・・・
どうやら今回の吉澤さんの相手は紺野さんだったらしい
しかもこの家の惨状から察するに、現行犯で見つかったっぽい
泣き叫び続ける紺野さんを改めて見ると特に目立った外傷はないようだ
鬼モードの藤本さんは手が付けられないが、ガン泣きモードの紺野さんも紺野さんで手が付けられない
恐らく藤本さんは紺野さんに何らかの強烈な精神的ダメージを与えた後、錯乱状態に陥った紺野さんにこの紙を突き付けて出て行ったのだろう
確実にわかっている事は吉澤さんに対する怒りがメーターを振り切っているという事だった
こうなってくると心配なのは吉澤さんの生死だ
とりあえず何とかなだめて吉澤さんの状況を確認しなければと、わたしは紺野さんの背中を高速で擦っていた
- 58 名前:亀井、悪魔の巣にて。そこに 投稿日:2005/04/04(月) 07:05
-
しばらくしてようやく紺野さんの発狂は治まった
まだ虚ろな目をしていたが。
「あの・・吉澤さんは・・?どこですか?」
そう聞いたが返事はない
すっと立ち上がるとフラフラと自分が投げたスコップの所へ歩いて行った
・・え?ちょっと待って・・・
紺野さんはスコップを拾うとそのまま穴の方へ向かっていた
「ちょ、ちょっと紺野さん、何やってるんですか!」
「・・・邪魔・・・しないで」
ぽつりぽつりとそう呟くとザッザッと穴を掘り出す
「こ、これ藤本さんの冗談ですよ?よくやるんですあの人。きっつい冗談好きだから・・・」
紙をヒラヒラさせながら必死に笑顔で取り繕うわたしの言葉は、紺野さんの目によってかき消された
何かを悟った死刑囚のような目によって。
黙々と穴を掘り始めた紺野さん
1つ目の穴はすでに完成していた。几帳面なことにメジャーまで用意されていた
まさか、紺野さんはこの穴に入るつもりだろうか?
いやさっきの目なら多分9割強の確立で入るだろう
どう止める?止まる?止まらないよ?ほっとく?このまま逃げる?
もしかしてここで逃げたらわたし捕まる?え、これ罠?夢?何これ?こっちからきたりして・・・
現実逃避しかけた瞬間、ガラス戸の開く音によってわたしは現実に引き戻された
ガラガラッ!!!
「こんこん!!生きてるか!?もう大丈夫!!助けに来たよ!!」
勇ましいセリフと共に勇ましい顔で登場した金髪のジャンヌダルク、いや諸悪の権化か
「・・ってあれ?キャメイちゃんじゃん」
呆然とするわたしにそう言った吉澤さんの手にはコンビニの袋とコーヒー牛乳がぶら下げられていた
- 59 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/04/04(月) 07:08
- 早朝更新終了
ageさしてもらいます
エロ無しではないということでsageで来ましたが、
不慣れなもので更新時に他の人の作品に誤爆しそうで怖いですw
まぁ「ど」エロ系ではないのでageても大丈夫かと・・・
>>47 名無飼育さん
ありがとうございます
嬉しいです。がんばります
>>48 通りすがりの者さん
ありがとうございます
よっすぃはミキティとは違う部分でかなり怖いですよ
- 60 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/04(月) 10:15
- うわーめちゃくそ面白い
どうしよ
- 61 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/04(月) 21:53
- 紺ちゃん…抱きしめてあげたいw
マジで楽しみにさせてもらってます作者様!
- 62 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/05(火) 13:14
- ちょーちょーおもしろい。
吉澤さん、いったい何者なんですか…。そして矢口さんの安否は。
更新お待ちしてます。
- 63 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/06(水) 01:48
- 更新お疲れさまです。 紺ちゃん怖かったでしょうね・・・いえ、もう『死』まで考える程だったでしょう(;-_-+ 考えるだけで背筋がゾッっとします。 よっすぃーお気楽過ぎませんか? 次回更新待ってます。
- 64 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/04/07(木) 23:22
- 更新開始
- 65 名前:亀井絵里、悪魔と再会する 投稿日:2005/04/07(木) 23:24
-
「・・・吉澤さん・・・生きてたんですか?」
そう聞くわたしに
「いや〜危なかったよ・・。MDコンポが耳をかすめたからね。まさかソフト無しでMDコンポ本体が奏でる音色を聴けるとは思わなかったよ」
と真面目に答える吉澤さん
「それはそうとキャメイちゃん何してるの?こんな時間にこんなとこで・・・・って、こんこんっ!!!」
そう言いながら紺野さんに視線を戻していた吉澤さんが叫んだ
「ちょ、これ持ってて!」
コンビニの袋とコーヒー牛乳をわたしに押し付けると吉澤さんは紺野さんの元へと駆け出す
駆け出した吉澤さんの先を見やると、紺野さんが出来上がっていた方の穴に下半身をすっぽりと埋め立てていた
- 66 名前:亀井絵里、悪魔と再会する 投稿日:2005/04/07(木) 23:24
-
「来ないでくださいっ!!」
顔面蒼白の紺野さんは手に持ったスコップを剣道の竹刀のように構えて吉澤さんを威嚇する
下半身を土に埋めたままの状態で。
「ど・・どしたの?も、もう大丈夫だよ?落ち着いて、こんこん・・・」
そう言いながらゆっくり近寄ろうとする吉澤さんに紺野さんはスコップを振り回し抵抗する
「駄目です!来ないでください!来ないで!来ないでぇぇぇ!!!!!」
そう叫びながらまた大声で泣き始めた紺野さん
泣き叫びながら高速でスコップを振り回す紺野さんはまるでスプリンクラーのようだった
「来ないでってお前・・・近づきようがねーよ・・・」
と力なく呟き佇む吉澤さんにわたしは例のメモを渡す
「これ・・・藤本さんから紺野さんに、らしいです」
「ん?・・・・・・・・・うわ・・・」
メモを見るなり吉澤さんは頭を抱えてしまった
「紺野さん、相当な精神的ダメージを負ってますよ。これを取り除いて助けるのはかなり面倒かと」
出来る限りの他人行儀でそう突き放してやった
これ以上吉澤さん・藤本さんに関わるのだけはゴメンだ
こんな抗争に巻き込まれでもしたら命が幾つあっても足りないだろう
「じゃ絵里はもう帰りますんで」
その場を立ち去ろうとすると吉澤さんの悲しそうな声に引き止められた
「キャメちゃん・・・ちょっと待って・・・」
・・・チッ・・・何なんですか・・・
「・・・何ですか?」
「これ穴2つ掘れってやっぱもう一個はあたしの分かな?」
流石に「そこかい!」と突っ込みを入れずにはいられなかった
- 67 名前:亀井絵里、悪魔と再会する 投稿日:2005/04/07(木) 23:25
-
「当たり前じゃないですか!何ですか?絵里が入るとでも思うんですか!?これだけのことをやらかしといて何を今更・・」
「馬鹿やどう!!今そんな事で言い争っても何にもならないじゃないか!今はこんこんを助ける事だけを考えるべきだろっ!ったく・・」
おいおい・・・逆ギレかよ・・・
言い争うってわたしが埋められる要素なんか1つもないじゃないですか・・・
信じられないぞこの人・・・
この思いをどう伝えてやろうかと言い淀んでいると
「うん。わかったら良いんだよ。一緒にこんこん助ける方法を考えようぜ?」
そう言うと吉澤さんはわたしの肩に手を掛けてきた
完全にニヤけているその顔を見て、肩の手を振りほどこうとした時だった
ガツッ!!!!!!!!
という金属的な音を立ててワンバウンドしたスコップが私にめがけて飛んできていた
振り回している最中に手が滑ったのだろう
「あっ」という表情のまま固まっている紺野さんが見えた
やばい!避けれない!当たるっ!!と目をつぶった
ガンッ!!!!
2回目のその音は1回目のそれより微妙に鈍く、なぜかシャンプーの良い匂いがした
- 68 名前:亀井絵里、悪魔と再会する 投稿日:2005/04/07(木) 23:26
-
どうやら体に痛みは無いようだ
恐る恐る目を開くと金色に輝く髪の毛が飛び込んできた
「痛てててて・・・」
その綺麗な顔は苦痛に歪んでいる
「よ、吉澤さん!大丈夫ですか・・?」
「大丈夫?」
わたしの問いを無視して吉澤さんは聞いて来た
「わたしは大丈夫ですけど・・・」
「そっか。よかった」
吉澤さんはニコっと笑うとまた顔を歪め、左肩の辺りを押さえながら紺野さんの元へと歩いていった
「あっ・・・あっ・・・」
紺野さんは完全にパニっくに陥っている
口をパクパクさせ、手は無意味に空を切っていた
その手を吉澤さんが優しく握る
「あっ・・私・・・ご・・ごめんなさ」
「ごめんね、こんこん」
そう言うと背中の方から紺野さんを抱きしめる
「ごめん。ホントにごめん。もう大丈夫だからね」
「うっ・・・うぅぅ・・」
嗚咽を上げ出した紺野さん
「うぅぅぅぅぅ・・・ごめんなさい・・ごめんなさい・・・」
それでも謝り続ける紺野さん。その口を吉澤さんは優しく塞いだ
自らの唇によって。
- 69 名前:亀井絵里、悪魔と再会する 投稿日:2005/04/07(木) 23:27
-
その光景を前に、わたしは両者に対し妙なムカつきを憶えていた
吉澤さんに対してはこの期に及んでまだやるか?というムカつき
紺野さんに対しては・・・紺野さんに対しては・・・なんでムカついているんだろう?
スコップから身を呈してわたしを守ってくれた吉澤さん
わたしの無事を確認するとニコっと笑った吉澤さん
紺野さんに優しくキスをする吉澤さん・・・
・・・何か面白くない・・・ムカつく・・・
気分を変えようと目をそらし、持っていた飲みかけのコーヒー牛乳に口をつける
甘くて美味しいコーヒー牛乳の味がした
と同時に「美味そうだな」と言われた時の事を思い出す
吉澤さんって、もしかしてわたしに気があるのかな?
あ・・・
ていうかこれってもしかして吉澤さんとの間接キス・・・?
ドキっとしたのもつかの間、藤本さんの顔がチラつき、慌ててストローを指で拭った
- 70 名前:亀井絵里、悪魔と再会する 投稿日:2005/04/07(木) 23:27
-
- 71 名前:亀井絵里、悪魔と再会する 投稿日:2005/04/07(木) 23:28
-
「さぁ、とりあえず出よっか。こんなトコ埋まってても仕方ない。次の万博にでも掘り起こされて展示されちゃうよ」
そう言いながら吉澤さんは紺野さんの脇に手を回す
「よっ!」と穴から紺野さんの下半身を引きずり出すとパッパッと土を払い、そのままお姫様抱っこして紺野さんを家の方へと運び出した
「こんこん風呂に入りなよ。汚れちゃったしね。何より落ち着くよ」
そう言う吉澤さんに紺野さんが目を見開いた
「ふ、藤本さんが!帰って来たら・・・」
「大丈夫。この時間だ。美貴は今日は矢口さんの家に泊まるよ。あいつは自分の欲求に忠実だからね。眠たきゃ寝るし、食いたきゃ食うし、殴りたきゃ殴るし、蹴りたきゃ蹴るし、殺したきゃ・・・」
「「吉澤さん・・」」
徐々にボリュームが下がっていく吉澤さんの辛辣な言葉にわたしと紺野さんはハモっていた
「とにかくだ、美貴は今日は帰ってこない。安心して入ってていいよ。ここにキャメイちゃんがいるのが何よりの証拠だよ。なぁ?」
そう笑いかけてくる吉澤さん。目は合わせられなかったが声的に何かを企んでるような声だった
聞こえてなかったふりをして何とか話を逸らそうと、質問をぶつけてみる
「自分の欲求に忠実ならすぐにでも吉澤さんを追いかけてくるんじゃないんですか?」
「違うんだな、キャメイちゃん。美貴には得意技があってね。あたしはそれを『怒りの布団圧縮袋』と呼んでいる」
「怒りの布団圧縮袋?」
「そう。美貴は一回爆発させたら怒りを真空状態にして保存できるんだよ。どんだけ月日が経とうが全然風化しねーの。いつでも事が起こった状態のクオリティでブチ切れれるんだぜ?超怖ぇだろ?」
得意げに話す吉澤さんに何でそんなのに逆らうんだと心の底から呆れた
しかも布団全然関係ないじゃん・・・。
単純にこの人は馬鹿なんだろうなと思った
- 72 名前:亀井絵里、悪魔と再会する 投稿日:2005/04/07(木) 23:29
- 更新終了
次の更新はやっぱ誕生日を目標に。
実は勢いで立てたもので初回以降ずっと小説のストックみたいなものはありません
ゆえに書き上げれれば、ですが。
>>60 名無飼育さん
うわーめちゃくそ嬉しい
どうしよw
>>61 名無飼育さん
ありがとうございます
様だなんて勿体無い
>>62 名無飼育さん
ありがとうございます
吉澤さんは悪魔です。矢口さんは・・・どうなるんでしょう・・
>>63 通りすがりの者さん
ありがとうございます
よっすぃとミキティは壊れてますからねw
- 73 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/04/07(木) 23:30
- >>72名前欄が・・・orz
- 74 名前:ぱっち 投稿日:2005/04/07(木) 23:47
- はじめまして
「怒りの布団圧縮袋」と
吉澤さんの「いつでも事が起こった状態のクオリティでブチ切れれるんだぜ?超怖ぇだろ?」
が完全にツボりました
めっちゃ期待の作品です、頑張って下さい
- 75 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/08(金) 09:43
- ↑ネタばれすんなや
- 76 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/08(金) 18:29
- 更新お疲れさまです。 よっすぃー誰でも道連れにしますね。 やっぐっつぁん大丈夫でしょうか?(ハラハラ 次回更新待ってます。
- 77 名前:ぱっち 投稿日:2005/04/08(金) 18:53
- すいませんでした・・・・
以後気を付けます
作者さんすいません
- 78 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/04/11(月) 23:52
- タイトルからハードボイルドかと思ってのぞいてみたら W
面白いね。紺ちゃんいたいたしいな〜
- 79 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/04/12(火) 02:05
- 誕生日更新開始
- 80 名前:亀井絵里に忍び寄る魔の手 投稿日:2005/04/12(火) 02:06
-
「しかし酷いな、おい」
紺野さんを風呂場まで運び終えた吉澤さんは改めてリビングを見渡すと、そう呟いた
確かに酷い。
外観も酷かったが、いざ家の中に入ってみると酷さのレベルが違っていた
とりあえず見渡す限り、まともに動きそうな電化製品は存在していなかった
というより物理的に折れるだろうものは折られ、割れるだろうものは割られ、破れるだろうものは破られていた
とにかく壮絶だった。壮絶な荒廃が広がっていた
「まぁ燃やされなかっただけでも喜ぶべきだねぇ・・っうぇうぇ」
と無理やり笑う吉澤さん・・・
返す言葉がありません・・・
「とりあえずお腹すいたなぁ・・あ、ゴメン袋ちょうだい」
「あ、はい」
持っていたコンビニの袋とコーヒー牛乳を差し出す
吉澤さんはずたずたになったソファ2つと、脚の折れたテーブルを何とか立て直していた
「ん、さんきゅ。キャメイちゃんも食うでしょ?本当はこんこんの分だったんだけど、まぁこんこんのは後で買いに行くわ」
そう言いながら袋の中身をテーブルの上にばら撒いた
オレンジジュース、ハム卵サンド、ベーコンレタスサンド、梅おにぎり、焼タラコおにぎり、月見とろろ蕎麦、冷やし中華、お線香・・・お、お線香!?
バッ!と吉澤さんの右手が動き、線香を掴むとその手はすでに背中へと回されていた
「ちょ・・・吉澤さん、今のは・・・」
「キャメイちゃんは月見とろろと冷やし中華どっち好き?」
吉澤さんはわたしの質問を流すと、そう聞いてきた
「紺野さん・・・危なかったですね・・」
吉澤さんはわたしの返答を待たずに月見とろろを選び、食べ始めた
「いただきます・・・」
わたしも冷やし中華を黙って食べた
- 81 名前:亀井絵里に忍び寄る魔の手 投稿日:2005/04/12(火) 02:07
-
そのまま無言でおにぎりも食べた
ちらりと吉澤さんの方を見やると、吉澤さんは何か考え事をしているようだった
俯き、目を閉じ、左手を顎に添えている
右手はしきりに左肩を擦っていた
「あ!吉澤さん、肩大丈夫ですか?」
顔を上げ、しばしポカーンとする吉澤さん
「あ、あぁ・・・ちょっと痛いかな」
そう言うと痛みを紛らわすかのようにして少し笑う
「あの・・・すいません。絵里の事を庇ったせいで・・・」
「何が?やだな〜、キャメイちゃんのせいじゃないじゃん。勿論、こんこんのせいでもない。まぁいわばこれは天罰だね」
心の中で激しく同意した
「キャメイちゃんもそう思ってるんだろ?」
「そうですね」
思わず口が滑った
慌てて撤回したが、心の中では撤回するつもりなどなかった
「おぉぉ・・・言うねぇ」
ニヤリと笑うと吉澤さんは立ち上がった
「まぁそれはそうと、シップ貼るの手伝ってくれない?ちょっとマジで痛いわ」
「あ、はい。もちろん」
わたしも慌てて立ち上がる
「これ、オレンジジュースとサンドイッチ要らないの?」
「もうお腹いっぱいです。ごちそうさまでした」
「そっか。なら少ないけどこんこんに持っていってやるか」
そう言うと吉澤さんは近くにあった綺麗な板(数時間ほど前までは何らかの家具のパーツであっただろう板)にジュースとサンドイッチを乗せると風呂場へと歩いていった
- 82 名前:亀井絵里に忍び寄る魔の手 投稿日:2005/04/12(火) 02:08
-
ガラガラガラガラ・・!!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ウホッ!相変わらずいい体してるねぇこんこん」
「うわぁぁぁぁぁっっっぁっ!!見ないでくださいっっっ!!!!」
「今さら恥ずかしがることもないでしょ?」
「いやぁぁぁぁ!!!恥ずかしいっっっ!!!見ないでぇぇ!!!!!!」
「そんな事言いながらも見られてると興奮するくせに」
「いやぁぁぁ!!!そんな事ない!そんな事ないっっ!!見ないでぇぇ!!!!!!!!!!」
「お腹すいたでしょ?これゆっくり湯船に浸かりながら食べなよ」
「いやぁぁぁ・・・あ、はい。いただきます」
風呂場から聞こえる何とも現金な会話に流石にわたしは笑いそうになった
この2人のそれぞれ女体、食べ物に対するデリカシーの無さは最早変態の域だなと思った
ニヤニヤと笑いながら風呂場から引き揚げてくる吉澤さん
「んじゃ、上行こっか?」
そう変態に肩を叩かれたわたしは、二階へと足を進めた
- 83 名前:亀井絵里に忍び寄る魔の手 投稿日:2005/04/12(火) 02:08
-
先にたって階段を昇る吉澤さんに話し掛ける
「吉澤さんって一人暮らしなんですよね?」
「ん。そうだよ。オヤジが仕事でオーストラリアに転勤することになってね。家族はみんな付いて行っちゃった」
「吉澤さんは何で一緒に行かなかったんですか?」
一応聞いてみた。
吉澤さんは足を停めると、
「モテるからね。みんなが離してくれないんだよ」
真剣な顔でそう言った
しかもわざとらしい演技とかじゃなく、リアルに髪の毛をかき上げながら。
「そうですか」
「マジだよ?」
「はいはい」
「いやマジだって」
「あっそ。よかったですね」
「あっ!糞こいつ、お前信じてねーな?」
「信じてますよ。そのせいで今殺されかかってるんですもんね?」
「う・・・」
「けどそれは自業自得ですよね?モテるモテるで調子に乗って、本能の赴くままに好き放題に立ち振る舞って、浮かれ果てた結果が今のこの悲惨な状況なんですもんね?」
「・・・」
決まった・・・勝った!
吉澤さんを黙らせた!
今までに間接的に吉澤さんから(藤本さんによって)喰らわされてきた迷惑、それに紺野さん等への嫉妬も織り交ぜて完璧に言い包めてやった!突き放してやった!
自然と顔がほころんでくる。
さぞ、悔しかろうて・・
どれ?顔でも拝んでやるか、とニヤける顔を吉澤さんに向けた私に戦慄が襲いかかってきた
吉澤さんの顔は私の3倍ニヤけていた・・・・・・
- 84 名前:亀井絵里に忍び寄る魔の手 投稿日:2005/04/12(火) 02:09
-
「な・・・何笑ってんですか?」
「いや〜・・・良いねキャメイちゃん。良いよ」
「何がですか?」
「いや、良いよ。うん。決めた。良いよキャメイちゃん。うん。良い」
何か良からぬことを企んでる率97%強の笑顔でそう繰り返す吉澤さんは、そう言いながら二階へと足を進め始めた
「ちょ、ちょっと、何がいいんですか!何を決めたんですか!」
「いや良いよ、キャメイちゃんは・・ってああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
突如吠えた吉澤さんに驚いて階段を踏み外しそうになる
「美貴め、あの野郎、あたしの聖域を!」
そう唸る吉澤さんの目線の先には蹴り壊されたドアがあった
吉澤さんの部屋なんだろう。わたしも入ったことはない
「あ・・・マズいぞ、まさか・・・」
怒りにワナワナと震えていた吉澤さんは急にそう呟くと壊れた扉の方へと駆け出した
部屋の入り口まで付いてきたものの、この聖域とやらに入っていいのかどうか迷う
2部屋分ぶち抜いたかのようにして広がる吉澤さんの聖域は、異様なまでに白と黒で統一されていた
唯一出窓には真っ赤なカーテンがかかっていて、その半分が割れた窓から外に飛び出している
一階ほど荒れ果てていないのには拍子抜けだった
窓が割れているぐらいで他には特に荒らされた形跡が無い
吉澤さんは大きなベッドを持ち上げていた
「ない!!!!」
そう叫ぶと吉澤さんはベッドを乱暴に下ろし、割れた窓を開いた
わたしは怒られるのを覚悟で部屋に入ると、そっと窓の外を覗き込んだ
窓の下はちょうど玄関だ。その先には例のいがんだ門がある
ここから見るとよくわかった
そのいがんだ鉄製の門は、何か硬いものをぶつけられていた
- 85 名前:亀井絵里に忍び寄る魔の手 投稿日:2005/04/12(火) 02:10
-
「何かぶつけられてますね・・・」
「金庫だ・・・」
吉澤さんの顔は蒼白だった
「すげーな。カーテンを巻き込んでるってことは、こっから投げたわけか・・・」
そう言うと窓から数歩下がって何か重いものを投げるモーションを取る
「何が入ってたんですか?」
「え?ま、まぁ大したもんじゃないよ、別にどうってことない」
声を裏返しながら痛々しくウィンクを返す吉澤さん
大したもんが入ってたようですね・・・
「ちょっとここにいろ、な?すぐ戻ってくるから」
そう言い残すと吉澤さんは部屋を出て行った
階段を慌しく駆け降りる音が聞こえる
窓の外を見るともうそこには吉澤さんがいた
吉澤さんは庭の内側を注意深く見渡すと門の外に出る
そこで足は止まり、一点を見定めていた
ゆっくりとその方向へと歩き出した吉澤さんは塀によってその姿を消した
- 86 名前:亀井絵里に忍び寄る魔の手 投稿日:2005/04/12(火) 02:10
-
- 87 名前:亀井絵里に忍び寄る魔の手 投稿日:2005/04/12(火) 02:11
-
一分後、姿を現した吉澤さんの胸には金庫らしきものが抱かれていた
ボコボコである。その扉はだら〜んと開いていた
吉澤さんは金庫を庭に投げ捨てるとパンパンと手と服を払い、玄関へと戻ってきた
トン トン トン トン と階段を昇る足音が妙に重たい
何故か怖い・・・何かへのカウントダウンのようだ
部屋に現れた吉澤さんは作り笑顔満開だった
「行こう。シップは三階だ」
そう言う吉澤さんのこめかみはヒクついている
わたしは勇気を振り絞って立ち上がった
「金庫、ありましたね・・・」
三階への階段を上がりながらわたしは吉澤さんに話し掛けた
「あったね〜。すぐ横の溝に落ちてたよ」
「金庫、開いてましたね・・・」
「開いてたね〜」
「何が入ってたんですか?」
「ん〜大したもんじゃないよ〜」
「お金ですか?」
「お金ならどんだけ嬉しかったかね〜。お金では買えない価値がある。プライスレス。うん。プライスレスだな。あえて言うならプライスレスが入ってた」
意味のわからないことを言い出した吉澤さんとこれ以上会話をするのはやめた
シップを貼ろう。シップを貼ったら即刻ここから立ち去ろう。と強く強く心に誓った
- 88 名前:亀井絵里に忍び寄る魔の手 投稿日:2005/04/12(火) 02:11
-
三階には部屋は1つしかなかった
「殺人鬼の部屋へようこそ〜」
そうおどけてわたしを誘い入れる吉澤さん
いや笑えませんから。
部屋は藤本さんのイメージ通りだった
10畳ほどの部屋はほぼ満遍なくちらかっている
部屋の角には各種酒・焼酎が完備されていた
ツマミ専用の棚もある
冷蔵庫まで設置されていた
吉澤さんは私をベッドに座らせるとウォークスルークローゼットへと入っていった
しばらくして
「うわっ!」
という吉澤さんの悲鳴にビクッ!となる
「ど、どうしたんですか!?」
その返事の代わりにウォークスルークローゼットのドアが開いた
な、なんと!シップを手に、上半身裸の吉澤さんが立っている
「な、何してんですかっ!!」
思わず顔を背ける
「何してんですか!ってシップ貼ってもらうだけだけど?それよりこれ見てよ」
「な、何も脱いで来なくてもいいじゃないですか!」
そう言いながら吉澤さんの方を恐る恐る振り返ると、吉澤さんは後ろを向いていた
その左肩は赤黒く変色していた
- 89 名前:亀井絵里に忍び寄る魔の手 投稿日:2005/04/12(火) 02:12
-
「うわぁぁぁ・・・」
思わず声が漏れた
「うわぁぁぁ・・・だろ?鉄板のとこがモロ当たったからなぁ・・」
そう言うと顔を歪ませながら吉澤さんが近づいてくる
わたしはまたしても俯いてしまった
「え?何?どした?照れてるの?あれ?顔赤いよ?っていうか何でお前クネクネしてんの?」
おちょくられ、ついつい声が大きくなる
「いいからさっさとここ座ってください!!シップ貸して!!!」
「・・・・う〜わ・・・超怖ぇ・・・すいません・・お願いします・・・」
シップとテープを渡すとわたしの前に素直に腰を下ろした吉澤さん
近くで見る内出血を帯びたその傷跡は痛々しかった
ちらりとそこから目を逸らすと透き通るほど真っ白な、綺麗な背中が展開されている
うわっ・・・白い・・・
さゆとかれいなより白いかも・・・
誰とも違うその何とも人間味を感じさせない白さに見入っていると吉澤さんから声をかけられた
「まだ?貼る時は貼るって言ってね。ヒヤっとするの心臓に悪いから」
「あ、すいません」
そうは言ったものの、すでに尋常じゃないぐらい心臓に悪い状況に陥ってるくせにと心の中で笑った
シップを貼り終え、上からテーピングしていると吉澤さんが嘆いた
「あ〜あ〜。いくら天罰か何か知らないけど、これじゃ商売あがったりだよな〜」
「何の商売ですか」
と笑いながらツッコむと吉澤さんは急に向きを変え、私を覗き込んできた
「今からここでやる事だよ」
その目はあの時と同じ、悪魔のように魅力的な輝きを放っていた
- 90 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/04/12(火) 02:14
- 誕生日更新終了
よっすぃ誕生日おめでとう
小説内では最低なヤツになってしまうかもしれないけど、ごめんね
何とかするからw
>>74 ぱっちさん
ツボりましたか?
ありがとうございます
>>75 名無飼育さん
特にネタバレではないかとw
確かにネタバレされるのはきっついですが、所詮はわたくしの駄文。
あまりカリカリせずに読んでいただければ幸いです
>>76 通りすがりの者さん
ありがとうございます
道連れにしますねw
今回は亀井ヤバスです
>>77 ぱっちさん
お気にならさず
嬉しかったです
>>78 名無飼育さん
ありがとうございます
確かにタイトルはそのまま付け過ぎた気もしますねw
- 91 名前:konkon 投稿日:2005/04/12(火) 12:49
- よっすぃこぇぇ・・・。
食べ物で一瞬で態度が変わる紺ちゃんにウケました♪
これからもがんばってください!
- 92 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/04/13(水) 18:05
- 更新お疲れさまです。 よっすぃー一日遅くなりましたがおめでとうございます。 よっすぃープライバシーの欠けらも無いですね‐o‐;か、亀井さんが・・。 次回更新待ってます。
- 93 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/04/15(金) 06:01
- 矢口の場面書いてただけにきっついですねぇw
私事ですが、矢口は4推しぐらいで交際発覚ぐらいなら大丈夫っていうか
わかりきった事だったのですが、もうすでに辞めてるってのが・・・ orz
ぶっちゃけ後藤卒業発表以来のショックを受けてます
とりあえず9人状態の娘。を見るまで時間をください
申し訳ないです
- 94 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/05/08(日) 06:54
- 復帰&更新開始
- 95 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 06:55
-
ベッドにドカッと腰をおろし、深々と脚を組む藤本美貴
私はその足元で正座をさせられていた
いや、自発的に正座をしていた
正座をして事情を説明し、その後永遠と今にいたるまで尋問を受け続けている
下着姿のままで。
「で?本当にそれだけ?」
アイスピックのような鋭い視線が突き刺さってくる
「よっちゃんに覆い被されて、協力しないとキスマークを付ける、と?本当にそれだけですか?」
この質問は何度目だろうか?
三回・・いや四回は聞かれたな
そう思いながらも目の前の鬼は決して、一瞬たりとも私をウンザリとはさせない威圧感を放っていた
「うん。そう。それだけ。ほんとにそれだけだよ!」
語尾を強めてみた
だが、ミキティの眼光は衰えない
じっとこちらを見つめ返してきやがる・・・
私も必死に見つめ返したものの、どうやら自前の混濁たる眼には荷が重すぎたらしい
無音の空間に鬼の溜め息が響き渡った
- 96 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 06:56
-
「あの理性の足りてない腐れ女ったらしが相手を組み伏せた、と。そこで止まる確立、何もせずに終わる確立、ご存知ですか?」
・・・低いだろうね・・・
「ゼロですよ?」
・・・ゼロですか・・・
・・・低いとは思ってたけど、ゼロですか・・・
「気持ちよかったですか?」
そう言うとミキティは自らの腰にささっていたコルトパイソンを抜いた
「ちょっ!ちょっとちょっとちょっとちょっとっ!!!!!」
立ち上がろうとした私の額に突きつけられた銀色に光る鉄の塊
「矢口さん」
「ミ、ミキティ・・・ちょ・・・っと・・・待って・・・話を・・・聞い・・・」
まさに蚊の鳴く様な私の声は ガチリ という撃鉄を起こす音によってかき消された
「美貴にだけは嘘をつくな。嘘は人を侮辱することになる。それは許せんことだ」
ビトー亡き後のマイケル・コルレオーネ並のオーラを放ち問い掛けてくるミキティ
「 抱 か れ た な ? 」
そこには鬼を越えた閻魔の顔があった
恐らくすべてを見透かされているだろう
だが私は知っている
ここで素直に答えたカルロはマイケルに殺された
認めちゃ駄目だ、認めちゃ駄目だ、認めちゃ駄目だ・・・
声が出ない。
目が泳ぐ。
私は目を閉じると最後の力を振り絞り、首を横に振った
- 97 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 06:56
-
- 98 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 06:57
-
目を閉じた暗闇の中で判決を待つ私
訪れた二度目の沈黙は唐突に破られた
「シャワー借りていいですか?」
「は?」
「シャワー。借りますよ?」
「う、うん。」
何が何だかわからない・・・
助かったのか?
とりあえず目の前のミキティからは殺気が消えていた
「信じて・・・もらえた・・・?」
「現場を見たわけじゃないですし。矢口さんがやってないっていうならいいですよ。信じます」
おし!よくやった、私!
どうやら凌いだようだ
「よかったぁ・・・。オイラの疑い、晴れたんだねぇ?」
念には念をと、同意を求めてみる
「よっちゃんを捕まえたらわかる事ですし。焦って決め付ける必要はないです。どんなことをしてでも吐かせますんで。まさかとは思いますが、まぁ覚悟はしといてくださいね」
うむ。どうやら疑いは全く晴れていないようだ
だって語尾あたりでチラッと殺気が復活したんだもの。
「お風呂!泡風呂が沸いてるよ〜モコモコだよ〜」
怪しすぎる雲行きを前に、私は話を風呂へと戻した
- 99 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 06:58
-
ぶつぶつと呪殺系呪文のようなものを唱えながらその場で服を脱ぎ出したミキティ
着ていたものがベッドへと放り投げられていく
その中に例の銀色に光る物体を見つけた
全くもって、これっぽっちも関わりたくは無かったけど、やはり聞かずにはいられなかった
「あのさ・・・これってその・・・本物・・?」
恐る恐る聞いてみた
最初は「?」って顔をしていたものの、質問の意図を理解したのだろう、ミキティは呪文の詠唱を止めた
「あぁ・・ニセモノですよ」
その言葉にホッとしたのもつかの間、
「まぁ何をもってニセモノとするかによりますけど」
という何とも聞き捨てならない言葉・・・
「引き金を引いたら弾は出ますし、それなりのモンを入れて撃ったら十分に殺傷能力はあるんじゃないですかね」
「ハハハ・・・要するにバリバリの銃刀法違反モノの改造エアーガンってヤツね・・・」
「え?銃刀法違反なんですか?」と聞き返してくるミキティ
だが私にはすでに説明する気力は残っていなかった
「ちなみに今、弾として中には麻酔のダートを仕込んでます。猪とかに撃つヤツね。よっちゃんの綺麗な体を破損させたくは無いですし。剥製にしてやろうと思ってるんです」
勿論、このブラックジョーク(だと信じたい・・・)に付き合う気力も私には残っていない
下着姿で「中に詰める綿買って帰らなきゃ」と構想を巡らすミキティを優しく、風呂場へと追い立てた
- 100 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 06:59
-
- 101 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 07:02
-
助かった・・・
収納からジャージを出して着込むと、その横に置いてあった等身大のプーさんのぬいぐるみを思いっきり抱きしめてみる
とりあえずは助かったぞ・・・
私は一時とはいえ、久々に訪れた平和を堪能していた
しかし耳を澄ませば風呂場からは小気味良いシャワーの音が。
浴びている人物の顔が浮かんできた私は、気がつくとプーさんにパワースラムをかけていた
くそっ・・・何で私がこんなことに巻き込まれなきゃいけないんだ・・・
ホールドした体勢のまま窓を見上げると、夜は明けかけていた
まあ今日はミキティにはこのまま大人しくここで寝て貰おう
そして寝付いたと同時に私はここを出て行こう
実家の母が倒れたとでもメモして置いていけば、起きてから素直に出て行ってくれるだろう、と。
そう思いつきメモを取りに立ち上がった瞬間、私の携帯が鳴った
メールが着たらしい
確認して思わず顔が歪んだ
そこには吉澤ひとみの名が記されていた
- 102 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 07:03
-
全身の毛穴が開いていくのを感じつつメールをチェックする
本文は一行だけだった
『 矢口さん、逃げて!!! (^o^;)』
おいおい・・・
何だこの意味深すぎる内容は・・・
何なんだこのふざけた顔文字は・・・
次の瞬間、全身の毛穴が開ききるのを待たずにベッドの上から聞きなれない「ピロロロロ〜」という着信音が流れた
ミキティのGパンが震えている
近づき、携帯を手に取ると吉澤ひとみからのメール・・・
震える指で操作しメールを開くと、そこには例のキス画像が添付されていた
「あの、ド畜生がっ!!!!!!!!!!!!」
思わず叫んだ
と同時にシーっと口に指を当てる
くっそぉ・・・あの糞ガキ、私を即行で売り飛ばしやがった!
このメールがあと10分早かった場合のことを想像すると、急激な尿意に襲われた
震えが止まらない指で何とかメールを削除することに成功した私は、自分の携帯で吉澤ひとみという悪魔へのコンタクトを試みた
- 103 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 07:03
-
『あれ?もしもし?矢口さん?』
「もしもしじゃないだろ馬鹿っ!!!!!!!」
『おはよざーす』
「おはよざーすじゃないんだよ、馬ー鹿っ!!!!何考えてんだよ!!!!!」
『は?あ、そうだ!逃げて!矢口さん、逃げてぇ!!』
うわ最悪だ・・・本当につくづくだよこいつは・・・
「あのねぇ・・・よっすぃ?いいかい?私を巻き込みたくないって言ってくれたのはよっすぃだろ?違うかい?何あのメールは・・・」
『あのですね・・・誤操作でミキティに例の画像が・・・』
「見たよ。しかも誤操作じゃねーだろ」
『見ましたか!?そうですね。誤操作ではないです。ごめんなさい。けど美貴はもう寝てるでしょ?』
ウンザリだよ・・・お前にはもうウンザリだ・・・
「今、風呂入ってるよ・・・あのねぇ・・・このメールがあと10分早かったら私どうなってたかわかる?」
『ははは・・・。けどそれは喜ぶべきですよ。矢口さんの運が美貴の殺意に匹敵してる証拠だ。素晴らしいことです』
もうこいつと話をするのはやめた
『そうですか。風呂に入ってますか・・・。ところで矢口さんは今どんな格好をしていますか?』
「・・・・・・・・・・・・何?」
聞き捨てならない言葉に思わず聞き返す
『できるだけ走りやすい格好をしていた方がいいです。靴も。あと原チャの鍵も忘れずに。次は美貴の電話が鳴ると思いますんでヨロシク』
「ちょっとちょっと!待って!何!?」
電話は切れていた
慌ててリダイアルを押そうとした私の指は、風呂場のドアが開く音によってピタリと止まった
- 104 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 07:05
-
「矢口さーーん。下着貸して〜」
ミキティの声が響き渡る
「は、早いねぇ!もっと湯船に浸かればぁ〜?」
「う〜ん。寝ちゃう。こんな眠たいのに湯船に浸かってちゃ溺れ死んじゃいますよ」
いっそのこと溺れ死んでくれと思ったがそんな勇気の無い私は素直に新品の下着を用意する
まずい事になった・・・
あの悪魔め・・・何かを企んでいるらしい・・・
ミキティの携帯の電源を切っとくか?いや、怪しまれる
せめてバイブ設定にする?いや、怪しまれる
いっそのこと拳銃だけでも処理するか?いや、殺される
結局さっさと寝かしつけて家を出ることしか考え付かなかった私は素直にミキティを待った
- 105 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 07:05
-
- 106 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 07:06
-
「あぁ〜気持ちよかった。あれ?」
驚くのも無理は無い、ミキティの眼前には完璧なベッドメイキングをされた部屋が広がっている
「疲れたでしょ?もう寝なよ」
満面の笑みでそう言いながら掛け布団を捲る私
ミキティの「ソファで寝ますよ?」という言葉を流し、ベッドへと追いやる
電気を消そうとするも「パイソンは?」という言葉にしぶしぶ畳んだ服の下から拳銃を取り出し、手渡した
「全く・・・何で交際に拳銃が必要なんだか」
思わず出た本音だったがミキティの顔は凍りついた
あれれ・・不味い事言っちゃったか・・・?
銃口に注意しながら再び電気を消そうとするとミキティは静かに語り出した
「元はといえば2人の共通の敵の為に買ったんですよこれ」
「・・え?」
「よっちゃんを狙う不届きな輩がいましてね・・。そいつを撃退するために金庫に隠してたんです。まさかよっちゃん相手に使うことになるとはねぇ・・・」
この極悪超人コンビを敵に回す?
そんな猛者が存在するのか・・・
「共通の敵って・・誰?」
私がそう聞いた時、その時のミキティの顔が忘れられない
そこには嫌悪感を丸出しにした殺人鬼の顔があった
これ以上関わってはいけない。
人間、矢口真里に備わっている本能が語りかけてきた
「ね、寝よう!今日は!ねっ!?」
慌てて電気を消すと寝室を出る
「おやすみ」
そう告げ戸を閉めた直後、扉の向こうから初めて聞く旋律で戦慄を奏でる着メロが鳴り響いた
- 107 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 07:07
-
一瞬、凍りついた
その後音速で家の鍵、バイクの鍵、財布、その他貴重品を身に付けた私は寝室の扉にへばりつく
この会話、一言一句聞き逃してはいけない。
そう本能が語りかけてくる
私は当たり前のように本能に従った
「もしもし・・・亀ちゃん?お疲れ、着いたの?遅かったね」
亀ちゃん?
よっすぃじゃない・・・どうやら相手は亀井らしい
少し安心はしたものの、依然として聞き耳は立てる
「裏庭にこんこん・・いる?悪いけど埋まってたら掘り起こしてくんない?」
常識では考えられない会話が聞こえてくる・・・
こんこん?紺野!ということは亀井はよっすぃの家に行かされてるって事?
「・・・あぁそう、うん、うん・・・」
相槌が聞こえてくる
しばらくこれが続いた
これでは内容が予測できない
より注意深く扉に耳を押し当てる
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あれ?あれれ?
会話が聞こえてこない・・。相槌さえも・・・。どうした?もう切ったのか?
と、急激に扉の温度が下がっていく感覚がした
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい」
その「おい」は私が知っている藤本美貴の声ではなかった
「そこに・・・いるのか・・・?・・・おい・・・・・おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
最早、扉に耳を押し当てる必要は無かった
「絵里・・・お前もそこにいろ、一緒に消してやるからな」
それが私の聞き取れた最後の言葉だった
抜けた腰を引きずって玄関へと這いずっていく私
その後方から凄まじい音を立てて寝室のドアは開かれた
- 108 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 07:08
-
「行きましょうか矢口さん」
「・・・・へ?」
「見せてあげますよ。人を殺める瞬間を」
「・・いりません・・・。勘弁して下さい・・・」
修羅と化したミキティにこの願いは聞き入れられるはずもなく、腕を掴まれると強引に玄関へと引きずられて行く
よく見るといつの間にか来た時のままの格好に戻っている
唯一、濡れてザンバラになった髪が来た時より一層狂気じみた雰囲気を醸し出していた
もしも生まれが惑星ベジータならば確実に金色に変色していた事だろうに。
部屋を出て鍵を閉めた私はエレベーターホールへとぐいぐい引きずられて行った
声もかけられない・・
まぁかけた所で止められないし、止まらないだろう
エレベーターはすぐに来た
先に入り「開く」を押してミキティの乗り込むのを待っていると、「ピロロロロ〜」っと聞き覚えのある着信音がホールに響いた
これは確か風呂に入ってる時に聞いたミキティのメールの着信音・・・
今回は本能ではなく反射だった
本能が働く前に脊髄反射で指が動いた
「開く」から指を離し、「1F」を押したかと思うと「閉じる」を連打する
エレベーターの扉が閉じるのとほぼ同時に携帯から顔を上げた藤本美貴
その口からは、はっきりと「 お い 、 お 前 」と言っているのが読み取れた
- 109 名前:矢口真里、疾走(失踪)する 投稿日:2005/05/08(日) 07:09
-
私の部屋は9Fにある
1Fまでに誰も乗り込んで来てくれるなと願った
鬼の獲物と化したからにはタイムロスだけは避けたい
それに私、今泣いてるんだもの
願いは叶い、無事1Fに着くと扉は開いた
と同時に非常階段からバタバタと駆け降りてくる足音と鬼の雄叫びが聞こえてきた
「絶対に許さんぞ虫ケラども!!!!!じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!!!!!!」
圧倒的な恐怖を前に涙を拭くのも忘れて駐輪場へと走り込む
そのまま愛車Dioに飛び乗ると最近乗ってなかったものの、一発でエンジンはかかってくれた
ちくしょう・・・憶えてろよ・・・吉澤ひとみ・・・・
私はフルスロットルで走り出した
鬼の声が届かなくなるところを求めて
- 110 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/05/08(日) 07:12
- 更新終了
矢口脱退のショックは消えたんですが、さすがに春先ちょっと忙しかったです
更新遅くて申し訳ない
石川も昨日で卒業してしまいましたねぇ
感慨深いですな
紺野も誕生日おめ
マターリ更新になるかと思いますが>>1でも書いてる通り放置はしませんのでよろしくお願いします
>>91 konkonさん
ありがとうございます
紺野は使い方が簡単なようで難しいですw
何とか考えねば・・
>>92 通りすがりの者さん
毎回レスありがとうございます
亀井さん・・・
ヤバいですw
- 111 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/08(日) 17:55
- こ、怖っ(;_;)!!
ミキティかなり怖すぎです、理性が完全に飛んでる・・・。
逃げてください!!誰でもいいから関わっている皆さん皆逃げて下さい!!
ってその時点にいたら真っ先に叫んでますね。
次回更新待ってます。
- 112 名前:ななしさん 投稿日:2005/05/08(日) 21:21
- 美貴帝=フリーザ!?
- 113 名前:K坊 投稿日:2005/05/09(月) 00:06
- 天敵って一体・・・?
- 114 名前:konkon 投稿日:2005/05/09(月) 01:48
- 笑いと恐怖が混同して読んでました。
マジ怖すぎっすよ、ミキティさん・・・(泣)
次の生贄は誰になってしまうんでしょうか?
- 115 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/13(金) 05:34
- ミキサマミキサマオシオキキボンヌ(*´Д`)
何て冗談でも言えませんね(汗
矢口さん、無事に逃げられてよかったです
- 116 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/13(金) 16:23
- ミキティ…恐っ!
でも、めちゃ×2面白い
- 117 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/05/16(月) 06:14
- 更新開始
- 118 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:16
-
「今からここでやる事だよ」
その目はあの時と同じ、悪魔のように魅力的な輝きを放っていた
妖艶さの中にスケベ心を82%ほど含んだ魅惑の眼差し
わたしはそのデビルアイの虜になっていた
ベッドに座るわたしの腰に手を回し、下から顔を近づけてくる吉澤さん
どんどん近づいてくる大きな瞳
唇が触れる瞬間、吉澤さんは目を閉じた
それはデビルアイの魔力から開放された瞬間でもあった
無意識に顎を引いていた自分に自我が戻った瞬間でも合った
「待って!待ってください!!!」
わたしはギリギリのところで踏みとどまった
顔を仰け反らせ、吉澤さんの肩を押さえつける
「何してんですか!!!」
高鳴る動悸を悟られまいと思わず声を張り上げた。
不思議そうな顔をしてわたしを見上げる吉澤さん
「何って・・・キス・・かな?」
「何でキスするんですか!!!」
「いや何でって・・・その・・・前々から味わってみたいなって思ってたっていうか・・・その・・うん・・・」
鼻の下に人差し指を横に当てて「へへへ・・」みたいな顔でそう言う吉澤さん
完全に人を馬鹿にしてやがる・・・
「今、吉澤さんが置かれてる状況を省みてください!!!」
そう一喝するとわたしは立ち上がった
- 119 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:17
-
「キャメイちゃんはあたしのこと嫌い?」
ドアへと歩いて行こうとした時、足元からそう問いかけられた
治まりかけていた動悸がまたもや早くなる
「何・・・がですか?」
「あたしの事。・・・嫌い?」
声を震わせながらそう問いかけてくる吉澤さん
その目からはあの厭らしい魔力は消えている
捨てられた子犬のようだ
「嫌い・・・じゃないですよ・・・」
「好き?」
「・・・・好き・・・好きです・・・」
言っちゃった!
どさくさに紛れて言っちゃったよ!
思わず顔がニヤけた瞬間、わたしの体は宙に浮いていた
ドサッとベッドに叩きつけられたかと思うとガバッと覆い被さられる
「んなら、いーじゃねーかよ〜。キスぐらいさせろよ、グッヒャッヒャヘップャッ」
目の前にはオッサンがいた
抵抗しようとするもすでに四肢は押さえつけられている
「やだっ!!」
「何がやなの?美貴が怖い?」
怖いよ!
死ぬほど怖いよ!
ていうか吉澤さんが一番知ってるでしょ!
「やだぁ!!」
「バレないよ」
そう言うと吉澤さんは顔を下げ唇を奪いに来る
「こんな吉澤さんは嫌いです!!!!」
目を瞑ったわたしはありったけの声量でそう叫んでいた
- 120 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:17
-
・・・・・・・・・あれ?
・・・・・・・・・・止まった?
目は瞑っているものの、ふいに目の前が明るくなった
両手、次いで両足が軽くなる
恐る恐る目を開け上体を起こすと、ベッドの下には座りこみうな垂れる金髪ヘアーがいた
「こんな吉澤さんは嫌いです、か・・・・・・・・・・ごめん・・」
そう呟いた吉澤さん
「ほんとごめん・・。あたし、疲れてるわ。何考えてんだろ・・・キャメイちゃんまで巻き込む所だった・・・」
わたしは黙ってその言葉を聞いていた
「キスするにしても、付き合うにしても美貴との事を終わらせてからだよね。」
付き合う?え・・?付き合う?吉澤さん・・・まさかわたしのこと?・・・そんな・・・
思わず顔が赤くなった
「いくら好きだからって、キャメイちゃんが可愛いからって・・・何の覚悟もさせずにこんなこと・・・許されないよね・・・」
好き!?可愛い!?・・・そんな・・・
「よ、吉澤さん?も、もういいですよ?え、絵里べ、別に気にしてませんから・・」
見ると吉澤さんの右手が震えている
泣いているのか?と思ったが、よく見るとベッドの下で携帯をピコピコやっていた
普通ならイラっときただろうが、完全に浮かれ、テンパってしまっているわたしにそれを不審行為と見抜く力はなかった
- 121 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:18
-
「とにかく、ごめん。頭冷やしてくるわ」
そこで初めて顔を上げた吉澤さんはわたしの顔を見てはっきりとそう言った
聖人のような曇りなき眼
「吉澤さん・・・絵里・・・ほんとはその・・」
「ん?」と顔を覗き込んでくる吉澤さん
思いっきり目が合ってしまい、緊張して言葉が出てこない・・・
と、いきなり鳴り響いた携帯のコール音にビクッとなる
その携帯の持ち主である吉澤さんは待ち受けを確認すると立ち上がり、ドアへと向かっていった
「落ち着いたら降りてきてよ。まぁ混乱させたあたしが言うのも何だけど」
そう言ってとニヤリと笑うと吉澤さんは部屋から出て行った
『あれ?もしもし?矢口さん? おはよざーす』
壁一枚を隔てて階段を降りながら吉澤さんの声が遠ざかっていく
電話の相手は矢口さんらしい
だけど、わたしにはそんなことはどうでも良かった
両手両足を広げてベッドに倒れ込み、溜まっていた息を吐き出すとしばらく天井をぼーっと見上げていた
「キスぐらいはされても良かったかな」
呟くと同時に先ほどの行為が思い出され、無意識に顔がニヤけてくる
いかんいかん・・と起き上がり、パンパンと顔を叩くと姿見で顔をチェックする
ニヤニヤが治まってるのを確認するとわたしは部屋を後にした
- 122 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:18
-
- 123 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:19
-
「あ、キャメちゃん!ちょっと、ちょっと!」
二階に降り立ったわたしは吉澤さんに呼び止められた
そのまま吉澤さんの部屋に連行されるとベッドに座らせられる
吉澤さんは机に備え付けの椅子を掴むとわたしの正面に逆向きに置き、ドカッと座った
「な、何ですか・・?」
「そんな怖がらないでよ。さっき拒絶されたばっかなのに何もしないって」
チクリと胸が痛んだ
拒絶・・・ですが・・・
「美貴の事なんだけど」
ドッカーンと頭を殴られたような衝撃が走った
忘れてた・・・
「忘れてた・・・って顔してるね」
そう言って笑う吉澤さんに笑い返す余裕は無い
「何しろって言われてきたの?」
一瞬躊躇ったけど、別に隠す理由は何もないことに気がつく
「吉澤さんの家に着いたら電話しろって言われてきました」
「それだけ?」
「それだけです。」
「ほんとに?」
「ほんとに。」
本当にそれだけだった
「そっか・・・」
吉澤さんは少し考え込む
「なら電話はした方がいいねぇ・・・で、そこで一つお願いがあるんだけど」
- 124 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:19
-
嫌な予感がした
「そんな嫌な顔すんなって」
いやしますよ・・・
「何てことはないよ。その会話をあたしにも聞かせて欲しい」
「会話?」
「そ。会話。美貴の今後の行動が知りたいしね。もちろん、それに伴って口裏合わせも頼みたいんだけど・・・」
少し不安がよぎった
だがまぁそれぐらいはしてあげてもいいだろう
何より、吉澤さんの事を拒絶していると思われたままなのが嫌だった
「・・・・いいですよ」
「マジで!?」
わたしの事を伺っていた吉澤さんの顔がパッと明るくなる
「ただその口裏合わせの内容によりますけど」
牽制するわたしに
「ははっ、安心してよ。キャメイちゃんのマイナスになるような事をあたしがどのツラ下げて頼むのよ?違う?」
と、笑う吉澤さん
一瞬、その顔を押さえつけて「このツラだよ」と言いたくなったが、今回はやめといた
いつも通りの関係に戻れたのが嬉しかった
- 125 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:20
-
- 126 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:20
-
左手に携帯を握り締めたわたしは目を閉じて、今言われた事を必死に頭に叩き込んでいた
一つ 吉澤さんとは会っていない(吉澤さんは帰っていない)
二つ 紺野さんは死んでいない
三つ 来た時、紺野さんは裏庭で穴を掘っていた
四つ その紺野さんをなだめるのに必死で電話をするのを忘れていた
五つ ・・・・・・
覚えるべき項目は十七項にまで及んでいた
こんなことならOKするんじゃなかったな・・・
そんなことを思いながら一人ぶつぶつと暗記し、整理していると吉澤さんが笑いかけてきた
「大丈夫だよキャメイちゃん。全部覚える必要なんかない。美貴から聞かれた事だけを答えたら良いんだから。それにあたしも横で聞いてるし。詰まったら小声で指示してあげるよ」
はっきり言って藤本さん相手に落ち着いて単に会話する自信さえなかったわたしに、この申し出は非常にありがたかった
「・・・お願いします」
「おう、まかしといて!」
吉澤さんはわたしの手から携帯を奪うとイヤホンを突き刺し、また携帯を握らせてくる
ドスン―――――
ふいに座っているベッドの後方への沈み込みを感じ、後ろにぐらついたところを抱き止められた
わたしの右脚の横に吉澤さんの右脚
わたしの左脚の横に吉澤さんの左脚
背中には吉澤さんの胸の膨らみが感覚されている
気付くとわたしは後ろから吉澤さんに抱きしめられる格好になっていた
「少しの間だから我慢してね」
そう言った吉澤さん
わたしは胸の高鳴りを悟られないようにするのに精一杯で、言葉を返す事はできなかった
- 127 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:22
-
そのまま、されるままに左耳にイヤホンを付けられる
指示を聞こえやすくするためだろうか、吉澤さんはわたし右耳にかかっていた髪を耳の後ろにかき上げた
うわ、絶対耳真っ赤になってるよ・・・
そう思うとますます耳が赤くなっていく・・・
それに気付いたのか気付いていないのか、吉澤さんはクスッと笑った
「覚悟できた?」
「・・・は?」
「覚悟できたらそろそろ電話しよっか」
あぁ・・電話の事ね・・
少し不安だった。藤本さん、怒ってなきゃいいけど・・・
「大丈夫です。かけますよ?」
「ん。」
アドレス帳を操作し、藤本美貴を出すと通話ボタンを押す
- 128 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:22
-
プルルルル プルルルル プルルルル プルル…ガチャ
「もしもし・・」
『もしもし・・・亀ちゃん?お疲れ、着いたの?遅かったね』
藤本さんの声自体は落ち着いている
どうやら最悪のケースは免れたようだ
「はい、ちょっと色々ありまして・・・」
『裏庭にこんこん・・いる?』
「はい。います」
『悪いけど埋まってたら掘り起こしてくんない?』
うわぁぁぁぁ・・・
「いえ、埋まってません。絵里が来た時には穴を掘ってました」
『あぁそう』
「えぇ。それでビックリして。紺野さん、もう大混乱しちゃってて。で何とか落ち着かして。今やっとお風呂に入れた所なんです。だから藤本さんへの連絡送れちゃいまっっちょいやぁっ!!!!!」
突然、信じられない事が起きた
解説しよう。
わたしは今、直に、胸を揉まれている・・・
「(ちょっと!!!何してんですか!!!!!!!!!!)」
できる限り声のボリュームを下げた大声で吉澤さんを怒鳴りつける
だが悪夢はこれからだった
- 129 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:23
-
「キャメちゃん!!おめぇーセックス中に誰に電話してんだよ!?」
大声で吉澤さんが叫びだした
「ほら、もうこっち来て。もっとゆっくり楽しもうぜ?」
そう言うと後ろから引っ張り、わたしごとベッドへと倒れていく
なぜ?
吉澤さん、何をしているんだ?
「ぃやっ!ちょ!!」
胸を揉む力が強くなる
「乳、寄せまっせーーー!!!」
必要以上にデカい声で叫びながら愛撫してくる吉澤さん
「うふ。かーわいぃーーチュッ」
頬にキスをされた
今、わかった・・・
こいつ最低だ・・・
ハメられた!!!!!!
左手にすでに携帯はない
何とかして電話、とりあえず電話を切らなければ!
「何よこれ〜。も〜。切っちゃうか?」
電話は最悪なやつの手に渡っていた
「返して!!」
「あぁ?誰これ?もしもーし?ハロ〜?マイ ネーミィーズ ヒトミヨシザワぁ」
狂ってやがる・・・
「返してっ!!」
取っ組み合うわたし達
ニヤニヤとわたしの腕を嘲笑うかのようしてかいくぐる吉澤さん
これはもう駄目だ。一発殴るか、と拳を握った時だった
『おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
- 130 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:24
-
イヤホンはとっくの昔に外れていた
携帯の受話音量をMAXに上げていたとはいえ、その声はスピーカーの如く部屋に響き渡った
シーン
と静まり帰った部屋
わたしも吉澤さんも固まっている
『絵里・・・お前もそこにいろ、一緒に消してやるからな』
空間に響き渡った無情なる最終通告
それはそれは、とてもよく、クリアな音質で、綺麗に聞こえましたよ、えぇ・・
最後の望みにかけるべくベッドに放置されていた携帯を取り上げ、叫ぶ
「藤本さん!違うんです!!ふじもっ・・・」
『ツーツーツーツー…』
電話はすでに切れていた
「いやぁ〜世の中って本当に何が起こるかわからないよね」
ヘラヘラと笑いながらこちらを見つめる吉澤さん・・・
ふつふつと、いや爆発的速度で湧き上がってくる怒り・・・
「よぉ〜しぃ〜ざぁ〜わぁ〜さん!!!!!!」
「そんな怒んなよ」
「はぁ!!!???」
「これで美貴の目を気にする必要はなくなっただろ?」
「ふざけないでください!!!!!!!」
「ふざけてなんかないよ。続きやろうぜ?」
そう言うと吉澤さんはわたしを押し倒した
- 131 名前:餌食第二号亀井絵里 投稿日:2005/05/16(月) 06:25
-
「ちょっと!話はまだ終わってませんよっ!!」
「この体勢で話すことなんかないでしょ?」
四肢を押さえつけられている
ベッドが変わっただけで見事に3Fの時と同じ体勢だった
「吉澤さんに無くても・・・こっちには山ほどあります・・」
「それはそれは・・心中お察しします」
何だか涙が溢れてきた
もうどうでもいい・・・どうなってもいいや・・・
わたしはただ一つだけ、どうしても確認したかった事を聞いた
「・・・わたしの事が好きだって言った・・・可愛いって言った・・・アレは嘘ですか?」
涙が頬を伝う
その時、吉澤さんの顔が微妙に変化した
すると急に思い出したように携帯を取り出し、何やらピコピコと操作している
「キスだけにしとこうと思ったんだけど、こりゃたまんねーわ・・・。矢口さん、ごめんね・・・・・・・・・っと。これで少しは時間稼げるだろ。」
携帯をしまい、再びわたしの方を見下ろす吉澤さん
「やっぱ良いよ、キャメイちゃんは。良い。最高だわマジで・・・。あ、あぁ!嘘じゃないよ。キャメイちゃんの事が好きだし、可愛い。これだけは決して嘘じゃない。断言する」
近づいてくる吉澤さんの大きな瞳
その目は例のデビルアイだった
「こんな吉澤さんは嫌いです・・・」
最後の抵抗を試みる
「こんな吉澤さんは嫌いです、か・・・・・・・・・・・・・・・。萌えるね・・」
そう言って笑うと吉澤さんは唇を重ねてくる
何もかもを諦めたわたしは欲望に従い、悪魔の舌を受け入れた・・・
- 132 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/05/16(月) 06:27
- 更新終了
「矢口真里疾走(失踪)する」の裏側です
話、進んでねーじゃねーか!というツッコミは勘弁して下さい・・
ここにきてやっとだいたいの話の大筋は決まりました
今後の配役は全く絞り込めてないですが・・・
>>111 通りすがりの者さん
逃げても逃げても追ってきます。それが帝クオリティ
>>112 ななしさん
戦闘力は530000です
>>113 K坊さん
宿敵(共通の敵)・・・次回、その名が明かされます・・・(次々回かも・・・)
>>114 konkonさん
ありがとうございます
次の生贄は・・・言えやしないよ・・・
>>115 名無飼育さん
お仕置き、一回目は半殺しで許してくれますよ
矢口さん、逃げ切れてるといいんですが・・・
>>116 名無飼育さん
ありがとうございます!
怖いですよぉおぉ・・
- 133 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/16(月) 09:27
- お疲れ様です
とうとう、亀ちゃんまで…
- 134 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/05/16(月) 13:08
- 作者さんの文体の巧みさはそこらのプロよりずっと上だと…
試しに人物名をハローから変えてもまったく質が落ちないという…
ほ ん き で す ご い ひ と だ
- 135 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/05/16(月) 16:41
- 作者さん 最 高
吉澤さん 最 低
こんな私は吉ヲタw
- 136 名前:konkon 投稿日:2005/05/17(火) 12:59
- ミキティのあの話しはここに繋がってたんですね。
そして、あのミキティを怒らせて・・・(怖)
よっすぃの本性が暴かれて、亀ちゃんは
どうなってしまうんでしょうか・・・?
- 137 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/05/17(火) 18:07
- 更新お疲れさまです。 なるほど、よっすぃーのしたかった事はこれだったんですね。 やぐっつぁんご愁傷様です。(コラ ていうかよっすぃーとミキティってやってる事がn(ry 次回更新待ってます。
- 138 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/05/31(火) 21:29
- 更新開始
- 139 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:31
-
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
呼吸音だけが響き渡る部屋
無惨にも裸に剥かれ、弄くり倒されたわたしは完全に脱力しベッドに横たわっていた
その傍らには吉澤さん
右脚を立たせ、ひじ置きにしてタバコを吸っている
吉澤さんの汗はすでに乾ききっており、呼吸の乱れなど皆無だった
悔しい・・・
心も体も、あなたに対しては開いていませんよと体で示すつもりだった
それが実際は心も体もガッツリと開いてしまった・・・
こういった行為をするのは初めてではない
さゆとキスをした事がある
ふざけて裸で抱き合った事もある
だが、たった今わたしが体験した出来事は、わたしの知りうるそれら常識を遥かに超越していた
「レベルが・・・違う・・・」
自失したままそう呟いた
- 140 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:31
-
「はぁ?・・・えっ何?キャメイちゃん、初体験じゃなかったの?」
と、タバコを消しながら何とも残念そうに吉澤さん
「けどオルガズムは初体験だっただろ?」
すでにその顔から残念無念は消えており、代わりにいやらしい笑みが貼り付いていた
「知りません!」
「えっえっえっ・・どこの馬の骨か知らねーけど、そのド素人とこの支配級<クエストクラス>であるあたしのテクの違いはわかってくれたみたいだねぇ・・・すんげー気持ち良かったろ?」
「・・・全っ然っ!」
強がるしかなかった
悔しい・・・あまりにも惨めすぎる・・・
「素直になれよ、絵里」
急に声のトーンを落とした吉澤さんの言葉にハッとなる
「可愛かったよ」
そう言って優しく髪を撫でてくる吉澤さん
またしても不覚・・・
騙され、はめられ、辱められた相手対して顔が紅潮していく・・・
「それでは素直になった絵里のために一曲歌います。聴いてください・・・」
「・・・何ですかそれ」
「あーちーちぃ〜あーちぃ〜♪燃えてるんだぁろぉーかぁ〜♪」
突然ゴールドフィンガー'99歌いだした吉澤さん
「あーちーちぃ〜あーちぃ〜♪感じたんだぁろぉーかぁ〜♪」
その細長い綺麗な指は何とも卑猥な動きをしていた
やっぱこの人は最低だ・・・
わたしは吉澤さんの顔面にフルパワーで枕を投げつけると脱がされた下着を探し始めた
- 141 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:32
-
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
だしぬけに響き渡った悲鳴
わたし達は一斉に音源地を見やる
と、そこにはバスタオル一枚を身体に巻きつけた紺野さんがうずくまっていた
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!不潔っ!!!!!不潔ですぅっっっっっ!!!!!!」
不潔って・・・
わたしも吉澤さんも素っ裸、弁解の余地はない
けど、不潔って・・・
紺野さん・・・あなたも騙されてヤられた口でしょうに・・・
「違うぞ!こんこん!!」
そう叫び、紺野さんの元へと駆け寄る全裸の吉澤さん
どうやらわたしが投げた枕の金具の部分が鼻に当たったらしい
いい気味だ。その顔は赤っ鼻の泣きっ面だった
「いやぁぁぁ!!!触らないでぇ!!!」
「だから違うって!誤解だよ!なぁ!?」
いや、わたしに振らないでくださいよ・・・
リアクションを取れずにいるわたしを置いて吉澤さんは一人芝居を続ける
「な?ほらキャメちゃんもそうだって。落ち着いてよこんこん」
それでも紺野さんは下を向いて嫌々をしている
この様子じゃ吉澤さんが藤本さんと付き合ってることすら知らないんだろうなぁ・・・
- 142 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:33
-
「いやぁぁ!!じゃあなんで2人とも裸なんですか!!!」
ごもっともです。
「馬鹿だなぁ・・・これはほらアレだよ。あたしってホクロ多いだろ?最近ちょっとそのことが気になってて。だから増えてないか数えてもらってたんだよ。」
いやいやいや・・・そんないいわけ通じないでしょ・・・
「じゃ!じゃぁ亀ちゃんが裸になってる理由は何なんですかぁ!!!」
ですよね。
「あのね・・・言いたくなかったんだけど・・キャメイってこう見えて実は極度の露出狂なんだよ。」
・・はぁ?
わたしは耳を疑った
「あたしは別に興味ねーっつってんのに、やれここのホクロ見てくださいだの、やれこっちのも見てくださいだのってうるせーんだよこれが」
おいおい・・・吉澤さん・・・おふざけがすぎますぞ?
「そーなんですか・・・」
いや紺野さん・・・お前も騙されんなって・・・
「ちょっと!何言ってんでっ・・」
叫んでる途中にいつの間にか近づいていた吉澤さんに脚を取られ、ベッドに転がされる
「こんこん、見る?こいつこんな恥ずかしいところにホクロあるんだぜ?」
「あ、見ます見ます」
「ちょ、やめて!」
みるみるうちに恥ずかしいポーズを取らされ、固定されるわたし・・・
やばい、死にたい・・・
- 143 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:33
-
「やめて!あぁっ!!」
「ほら見てよこれ!」
「きゃー!!可愛いっ!!」
「やだっ!・・あぁ・・・」
「エロいよね?」
「エロいですね」
あぁ・・・殺してくれ・・・
「写メール撮っとくか」
!!!!!!!!!!!!!!!!
全力で、もがく。
それだけはやめてくれ!
奇声を発しながらもがき、空を切ったわたしの右脚はそのままベッドへと叩きつけられた
見ると紺野さんが何かを見上げている
その紺野さんの目線の先を追う
立ち上がり、明後日の方向を向いた吉澤さんが目に入った
「みんなそろそろ服を着ようか」
そう言うと吉澤さんはわたし達に目を向けてきた
「強大にして明確な殺意の塊が近づいてきている」
- 144 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:33
-
- 145 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:34
-
紺野さんは藤本さんの服を借りに3階へと上がって行った
わたしは脱がされた服を一から着込む
視線を感じ目をやると、いち早く着替えを済ませた吉澤さんが携帯を弄る傍ら、わたしの方をニヤニヤと盗み見ていた
「何見てんですか!」
わたしの怒号に肩をすくませる吉澤さん
「怖いなぁもう・・・何で怒ってんのよ?」
説明するのも忌々しい
無視することにした
「おーい?」
・・・
「キャメイちゃ〜ん?」
・・・
「しかし、卑猥なホクロだこと」
「だあああああああっぁあああぁ!!!」
流石に飛びつく
飛びついたところをガッチリと捕まえられた
「嘘だよ。撮ってないってば。それより美貴って確かキャメイちゃん家知ってんじゃねーの?」
「あ・・・」
やばい・・・藤本さんはわたしの家をそれも住所まで、タクシーを回せるほどに知っている・・・
青ざめるわたしに吉澤さんは優しく語りかけてきた
「心配しないでいいよ。巻き込んだからにはちゃんと面倒見るってば」
ギュっと抱きしめられる
「おいで。またこんこんに見られたら大変だ」
そう言うと吉澤さんは一階へと降りて行った
- 146 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:34
-
吉澤さんの後に付いて降り立った一階のリビング
荒れ果てた部屋に朝日が差し込んでいる
しかしそれにしても凄まじい荒れようだ
「そうだ吉澤さん、これ・・・このまま出て行っていいんですか?」
「あ?あぁ〜大丈夫でしょ。盗られるようなもんないし。それにもうすぐガキさんが来てくれることになってるし」
「新垣さんが?」
「ああ。電話したけど出ねーからここに来る前にガキさん家行って直談判してきた」
可哀想に・・・新垣さんも何らかの絶対に断れない条件を突きつけられた事だろう
「とりあえず家に来てくれって言っといた。あとでハウスクリーニングと鍵屋とガラス屋を呼ぶからね。誰か居てくれないと困るし」
なるほど、よくそこまで頭が回りますねと言いかけてふと疑問が湧く
「今から来るってことは新垣さん、藤本さんと鉢合わせになるんじゃ・・・」
「あ・・・まあ大丈夫でしょ。ガキさんとはまだ肉体関係ねーし」
『まだ』って・・・
吉澤さん・・・
- 147 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:35
-
「あ〜それにしても遅ぇーなぁこんこん。美貴、着いちゃうよ」
ボロボロのソファに寝転がった吉澤さんが嘆く
「よく藤本さんの位置がわかりますね」
「わからいでか!」
急に上半身を起こした吉澤さんに怒られた
「キャメイちゃん、この近づいてくるごう然たる殺意の胎動を感じないようじゃヤバいよ?これが美貴じゃないならS級の快楽殺人犯だね。間違いない」
そう言いきった吉澤さん
関わりたくねぇ・・・
「あ〜でも、これを感じれる域に達するには美貴からトラウマになるぐらいのことされないと駄目かもねぇ」
うわぁ・・・その感覚絶対手に入れたくねぇ・・・
そう思っていると、ポンと肩を叩かれた
「キャメイちゃんは多分この感覚、覚醒すると思うよ。」
「え?」
・・・何だって?
「お!こんこん、来たか。お〜し、行くぞ」
そう言うと吉澤さんは紺野さんの肩を抱いてスタスタと外へと出て行った
わたしは一刻も早く『吉澤さんの位置を探る感覚』が覚醒することを願った
- 148 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:35
-
- 149 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:35
-
吉澤さんの家からはバイクでの移動だった
いわゆる、3ケツである。
途中で紺野さんの家に寄り、紺野さんを降ろした
吉澤さんの「また連絡するね」に対し笑顔で「はい」と返事をして手を振る紺野さんには呆れた
もはや先ほど埋められかけた事など完全に忘れているのだろう、ああいう単純な性格になりたいもんだと心の底から思った
そのままバイクは走り出し、知らない道をどんどん進む
わたしは吉澤さんの腰に手を回して広い背中に頬を当てている
走ってる最中にひょいと前を覗き込んでみた
吉澤さんの横顔は凄まじく格好良い
これぐらいの距離で付き合えたら最高なのになぁ・・・
しみじみとしていると急にガタンという衝撃にお尻が痛んだ
バイクは歩道を乗り越えると、コンビニの駐車場へと入って行った
- 150 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:36
-
「痛たたたたた・・・何か買うんですか?」
「キャメちゃんの食料だよ。あそこ米ぐらいしか置いてないだろうし」
わたし達はコンビニの中に入り、あれこれと食料を物色しだした
おかず、飲み物、デザート、お菓子、いろいろ篭に入れてゆく
「あ、そう言えばこれからどこ行くんですか?」
「梨華ちゃん家」
梨華ちゃん・・・石川さん?
「帰ってたんですね!」
「何が?」
「いや、石川さんですよ。吉澤さんがサンプトペテルなんちゃらに飛ばしたでしょ?いつ帰って来たんです?」
「・・・」
返事がない・・・
――――――――――――ガタン!!
篭を落とした吉澤さん
その顔は完全に血の気を失っていた
「吉澤さん・・・まさか・・・」
「はっ・・・ははははは・・・ま、まぁ大丈夫だろ・・・何とかなる・・・何とかなるさ・・・」
うわぁぁぁぁ・・・嘘でしょ・・・この人・・・・忘れてる・・・・・
吉澤さんはふらふらとレジへと向かっていった
わたしはその後姿を呆然と見つめるしかなかった
- 151 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:36
-
店を出ると終始無言で袋を分け合いバイクにまたがる
そのまま5分ほど走ると、バイクはお目当てのマンションの地下駐車場へと入って行った
ロックを解除しマンションに入るとエレベーターホールへと進む
エレベーターに乗り込み7Fを押すとエレベーターは上昇を始めた
そこでようやく吉澤さんが口を開く
「合鍵は持ってる。安心して。」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「へ?」
「へ?じゃない!!!」
「大丈夫だって。あたしを信じてよ」
――――――――プツン
何かがキレた
「信じろ!?どのツラ下げてそんなことを!!」
「梨華ちゃんの事はしょーがねーべが。忘れてたんだよ。美貴に毎日尽くしてた」
「だからそういう問題じゃないんです!!」
「たかだか1ヶ月じゃねーか。梨華ちゃんロシア語ペラペラになってると思うよ。あの体でロシア語喋られたらたまんねーぜ?帰ってきたら金髪にしてもらおう」
「ふざけないでください!!!」
チーンという音とともにエレベーターのドアが開く
「あぁもう・・わかったよ。とりあえず部屋に入ろ?まだ朝は早い。近所迷惑だよ」
「!」
わたしは奥歯をかみ締め、何とか怒りを堪えるとズンズンと歩き出した
「あ、おい、こっちこっち。」
・・・無言で振り返ると吉澤さんの踵を蹴るようにしながら後ろに続いた
- 152 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:37
-
703号室『石川』とある。
吉澤さんは鍵を開け、ドアノブに手をかけた
「驚くなよ?」
そう言って不適に笑うと勢いよくドアを開いた
――――――――ガチャ
「うわ・・」
思わず出た拒絶反応
何だこれは・・・
吉澤さんがわたしの為にドアを開いてくれているのはわかっていたが、足が進まなかった
「ふふふっ・・すげーだろ?」
「・・・凄いですね」
すっかり怒気を抜かれてしまった
ピンク。
ピンクの靴箱に並ぶピンクのスニーカー、ピンクのサンダル。ピンクの小物が乱雑し、ピンクの玄関マットの上にピンクのスリッパ。その後方にはピンクのカーテンが控えている・・・
目に映るものすべてがピンクだった
あ、これは赤かな?と思ってもよく見るとピンクだった
まさかこれはピンクじゃないでしょ・・・・・ピンクだった・・・
「そろそろ中入ってよ」
「あ、すいません」
お邪魔します、と靴を脱ぎ、カーテンをくぐる
そこもまた目に映るすべてのものがピンクだった・・・
もういいって・・・
「嫌になるだろ?」
そう言って笑い、わたしから袋を取り上げると吉澤さんはソファ(ピンク)へ座るよう促した
- 153 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:37
-
「梨華ちゃんって多分アレなんだよ。色彩の感覚みたいなのがDNAのレベルでバグってるんだと思う」
買ってきたものを冷蔵庫(ピンク)に詰めながら吉澤さんが話す
「でしょうね・・」
同意せざるを得なかった
改めて見渡すものの、何処もかしこもピンクピンクピンクピンク・・・
病的なまでのピンク主義。
普段着からピンクが好きなのは察することができたが、これほどまでとは思ってもみなかった
「エグい空間だけどここは美貴も知らないからね。安心して落ち着けると思うよ」
買い物の収納を終えた吉澤さんが横に座ってきた
「あ、そうそう。あたし今から出かけるから。たぶん丸一日戻ってこないと思う」
「え?ど、何処行くんですか?絵里も行きますよ」
ピンクの部屋に取り残されるのも嫌だったが、それよりも一人っきりになるのだけは避けたかった
「う〜〜ん。それ考えたんだけど、それはやっぱ無理だわ。連れてけない」
「何でですか!?」
「マナー違反だ。それは駄目だと思う。許されない行為だ」
この糞野郎・・・思いっきり次の女のところに行く気じゃねーか・・・
「お前にはマナーだのモラルだのを語る資格はないんだよ、ボケが」という趣旨を伝えるために、少し優しくした表現を探していると、
「キスしてよ」
と唐突に肩を抱かれた
「はぁ?」
「あたしら付き合ってんだよ?で、あたしが出て行くと。キス・・・するでしょ普通」
- 154 名前:亀井絵里、仮宿に移る 投稿日:2005/05/31(火) 21:38
-
・・・
「吉澤さん・・・ふざけてます?・・・絵里をおちょくって―――」
唇を塞がれた
5秒、10秒・・・20秒ぐらい経っただろうか、吉澤さんは満足そうに口を拭うとバイクのキーを回しながら玄関へと歩いていく
「別に軟禁するつもりはないけど、一応外には出ない方が身のためだと思う。ここゲーム・DVDと充実してるし、あたしが帰るまでそれでも見ててよ」
そう言うと玄関のドアを開ける
「大人しくしてろよ。帰ったらヒーヒー言わせてやっからな!ぶはっ!!!」
下品な笑い声とともにドアは閉まった
わたしはそこでようやく口を拭う
あまりの悔しさに唇を噛んだ
側にあったクッション(ピンク)を壁に投げつけるとダッシュして大きなベッド(ピン(ry)へと飛び込む
吉澤さんなんか死んでしまえばいい・・・藤本さんに殺されてしまえ!!
そう思う反面、
無事に帰ってきて欲しい・・・優しく・・・ヒーヒー言わされたくもあった・・・
この未曾有のジレンマと戦うこと数分、わたしはいつの間にか深い眠りの底へと落ちていった
- 155 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/05/31(火) 21:39
- 更新終了
何とか5月中に3回目の更新ができた・・・
せっかく読んでもらっている人に更新遅くて申し訳ないです
これからもどんどん最低さが増していく作品中の吉澤さんと同様、見捨てないでやってください
>>133 名無飼育さん
亀ちゃん・゚・(つД`)・゚・
>>134 名無飼育さん
私のようなモンに勿体無すぎるお言葉、ありがとうございます
保存しました
>>135 名無し飼育さん
作者も吉ヲタ(0´∀`)v
>>136 konkonさん
亀ちゃんは非常に危険な状態です・・・
>>137 通りすがりの者さん
ヨッスィとミキティ。
それぞれのベクトルこそ違えど、この2匹の異常者に振り回される人々を描いた作品ですからw
- 156 名前:konkon 投稿日:2005/06/01(水) 10:25
- 紺ちゃんも亀ちゃんもどんどんと・・・(汗)
この次は一体誰がどうなるんでしょうかね〜。
- 157 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/06/22(水) 07:16
- 更新お疲れさまです。 ていうか更新されて一ヵ月した後に気付きました。 よっすぃーに危機感というのは無いんでしょうか? ミキティ探知機はあるのに(ナンダトー!!ベキッ ギャー ごふっ!! い、命かながら次回更新待ってます。
- 158 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/23(土) 01:08
- そろそろ禁断症状でてきました(w
待ってますよ
- 159 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/08/23(火) 23:19
- 整理前更新開始
- 160 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:21
-
悪魔めが・・・
タクシーを降りた
そこに広がる惨状に私は言葉を無くす
吉澤さんから「荒れ果ててると思う」とは聞いていたものの、ここまで朽ち果てているとは思わなかった
今目の前で朝日に照らされている吉澤邸に昔の面影は無い
どうやら藤本さんは本格的にブチ切れたらしい
自分の中にある何らかのリミッターが解除されない限り、こんな事はできないだろう
自分達の愛の巣に。
面倒なことになったと深く溜め息をついた私は、いがんだ門へと近づいていく
腕時計を見るとその針はちょうどAM8:00を指していた
- 161 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:21
-
門をくぐった私はすぐに帰りたくなった
その理由は kawasaki ELIMINATOR-250V
藤本美貴の愛車である
新しいバイクを買うという吉澤さんに「なら今まで乗ってたそれ美貴が乗る」と無免で乗り回し、
「送り迎えするから、頼むから免許は取ってくれ」と吉澤さんが泣きついたという微笑ましいエピソード付きの藤本さんの愛機・・・
そのエリミネーターが門を入ったすぐ横に停めてあった
地面にはえげつなく後輪をスライドさせたブレーキ痕が刻まれており、
このバイクに乗ってここへ来た人物の足跡は一直線に玄関へと向かっていた。
いる・・・
藤本さんはこの家に帰っている・・・
だが私はここで帰るわけにはいかない
自分自身と自分の大切な人を守るために。
悪魔めが・・・
私は4時間ほど前の、吉澤さんとの寝起きトークを思い出していた
- 162 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:21
-
- 163 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:22
-
―――――
――――――――――
―――――――――――――――
ユサユサユサ・・・ユサユサユサ・・・・
体が揺れる・・・何だ?地震か?いやそれにしては心地いい
「起きて。ガキさん。起きてよ。ねぇ起きてってば。起きろおい、眉毛抜くぞ」
女の声がする・・・聴いた事がある声だ。だがお母さんではない・・・もっとこう聴きたくないタイプの・・・
うっすらと開いた私の目に吉澤さんの真っ白な顔が飛び込んできた
「うぉっ!!!ええぇえぇぇぇええぇぇぇぇ!!くぁwせdrftgy」
手で口を塞がれた
だが私は大きく見開いた目で相手に訴えかける
「何でいるんだ?」と。
吉澤さんがベッドに・・・私の横に寝そべっている・・・
「うるせーよ。朝からテンション高すぎでしょ」
そう言って笑いかけてくる吉澤さん
「そりゃ高くもなりますよ。ここ2階ですよ?完全なる不法侵入だし。ていうか何でいるんですか?」
何とか目だけでその旨を訴えかけていた私だが、
流石に無理を感じて吉澤さんの手をどけにかかった
- 164 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:22
-
その瞬間、「嫌な予感」がした
私の頭の中に浮かび上がった「吉澤ひとみ+ベッド=」という公式に纏わる様式美・・・
―――――やばい
頭の中で創造されていく最悪のシナリオに、私は口にあてがわれた手を全力で跳ね除けると布団の中へと潜り込んだ
私は布団の中で自分の全身をまさぐる
パジャマ上下、その下に付けている下着上下に異常はなかった
とりあえず「まだ」無事なようだ・・・
だが、どうやって逃げる?
この状態から・・・
大声を上げるか?
いや、布団被ってんじゃん・・・
このまま時間を稼ぐか?
いや、力比べでは明らかに分が悪い・・・すぐに引っぺがされるだろう・・・
よし!布団を引っぺがされた時が勝負だ・・
引っぺがされた瞬間に大声を出そう。一階で眠る両親が飛び起きるような大声で。
よぉ〜し、来るなら来い・・・よぉ〜し・・・来い・・・来い・・・来い・・・・・・・・・あれ・・・・・・・・・まだ?・・・・
いくら待っても何も起きなかった
「なぁ・・・ガキさん・・・聞いていいか?」
布団を通して吉澤さんの声が聞こえた
「・・・・おめぇさっきから何してんの?」
その声は心底呆れかえっていた
- 165 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:23
-
モゾモゾと布団から顔を出した私
私の目が捕えた吉澤さんの顔は明らかに不信感に満ちていた
「何してんの?」
私を真っ直ぐに捕え真剣に問いかけてくる吉澤さん
「・・・あれ?・・・いや・・・その・・・」
何この空気・・・
居た堪れなくなった私は思わず目を逸らした
「あ。・・・あぁ、そういうことか」
再び目を戻すと吉澤さんの顔はニヤニヤを帯びていた
「あれか?あたしがガキさんに手を出すってか?くっくっくっ・・・」
え?何?違うの?
「あのガキさんがねぇ・・・自意識過剰になっちゃってまぁw」
思わず顔が赤面する
これは恥ずかしい・・・やばい・・・この勘違いは恥ずかしすぎる・・・
「ち、違うんです!!いや!その!寝ぼけてました!はい!今起きました!目が覚めました!」
慌てて布団を放り投げ、正座し弁解する私
だが吉澤さんは私の熱弁を片手で制した
「そう謙遜するなよ。いいんだ。間違えちゃいない。確かに普通ならあたしはガキさんを襲ってるよ」
「いやいやいや・・・もうそういうフォローいいです・・・」
「はぁ?いや正直最近めちゃくちゃ可愛いってガキさんマジで。すっげー可愛いよ?」
「もういいですって・・・」
「恋をしてるんだろう?何処の馬の骨とかは知らんが。妬けるね・・・・・だけどだ!!!」
急に声を荒げた吉澤さんに一瞬ビクッとなる
「今は違う。あたしらは同盟を組んでるじゃないか。あたしがパートナーに手を出すと思うか?」
- 166 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:24
-
『同盟』・・・『パートナー』・・・
吉澤さんの口から出てきたこの単語に胸が痛くなる
私は現在、ある事故により不本意にも吉澤さんとパートナーを組んでいた
『アンチ藤本同盟』として・・・
「今日はあたしら二人で温めてきたあの作戦が実行段階に入った事を伝えに来たんだよ」
作戦が・・・実行?
その言葉に私は目を見開いた
「・・・本当ですか?・・・・っていうか実行する前に一言くださいよ・・・」
「あぁゴメン。でさ、いきなりなんだけど予定変更だ」
「・・・」
――――――――――
吉澤さんの絶望的な解説が始まった
何度だっただろうか?
シナリオを徹底的に無視した吉澤さんの行動に発狂しそうになった回数は・・・。
聞き終わる頃には私は眩暈と戦っていた
加筆修正されまくった計画に重度の吐き気を催していた
「・・・・・っちゅーこと。大体わかったでしょ?まぁ夜が明けたらウチに来てくれたらいいから。」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ・・・。計画が違いすぎませんか?」
私はそう言うとできるだけ落ち着いて頭を整理し直していた
- 167 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:24
-
「まず、最初からなんですけど・・・「紺野とベッドにいる所を美貴にみつかって〜」ってくだりがありましたけど、何それ?・・・コンコンを巻き込んだ?」
「・・・・巻き込んだっていうのかな?」
誰がどう聴いても巻き込んでいるだろうが・・・
「吉澤さん!!!」
「は?」
「私は藤本さんの圧制を止める為にこの作戦に加担したんですよ!?嫌だけど!皆を守るために!私が代表して!!それを・・・何この被害者第一号がコンコンとか・・・」
「・・・プロローグだよ」
相変わらず訳のわからない事をいう・・・
「なぜ・・・こんな事をするんです?」
「あ・・・もしかしてガキさんが恋をしているのはコンコンか?そいつぁ悪い事をしたね・・・」
反省の色を見せない吉澤さんに私の声のボリュームが上がる
「私が藤本さんの傍に張り付くという事が決定しているのに、なぜその対象をあえてブチ切れさせるのかを聞いてるんですよ!!!嫌がらせですか!?」
私の圧力に圧倒されたのか吉澤さんは無言で肩を竦めた
金色の髪の毛を垂らし、俯く吉澤さん
・・・何だそれは?反省してるってポーズか?
「・・・コンコンだけでしょうね?他にはもうちょっかい出してないですよね?」
俯いた吉澤さんはゆっくりと右手の人差し指を上げた
こ・・・こいつ・・・・・・
「・・・・・・その指は?・・・・もう一人巻き込んだって事ですか?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰?」
「矢口さん」
「ちょ・・・・・もーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
私の絶叫が響き渡った
- 168 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:25
-
「ガキさんうるさいよw おじちゃんおばちゃん起きちゃうって」
他人事のように振舞う吉澤さん・・・
矢口さんといえば石川さんの件で吉澤さんと藤本さんの間を取り成した最大の功績者じゃないか・・・
この人はそんな人までを・・・?
「ちょっと待ってくださいよ吉澤さん・・・・何でですか?」
「あたしは今から紺野を助けに行く。美貴に家にいられたら助けられないだろ?その為に、誘き出しとして協力してもらっただけだよ。」
ここに来てようやくもっともらしい事を言い出した吉澤さん
「本当に・・・それだけですか?」
「あぁ。我ながら良い判断だったと思うよ」
「なるほど・・・・・・。いや待って。だから最初からコンコンを巻き込まなけりゃいいんでしょうが!!!」
危うく騙される所だった
何なんだこの人は・・・
「もう・・・話がループしてんじゃん!あたしもうヤダ帰る!」
そう叫び、急に立ち上がった吉澤さん
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっ何で逆ギレしてんすか!!まだ聞きたい事が山ほどあるんですって!」
私は吉澤さんの腰にしがみついた
そのままグイグイ引きずられながらも吉澤さんに問いただす
「もうそれだけですよね!?コンコンと矢口さんだけですよね!?」
「さーね。」
「ちょっと止まって!もう責めませんから止まってくださいよ!」
吉澤さんがピタリと止まった
- 169 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:25
-
「ガキさんって寝るとき携帯の電源切るよね?まぁだからこそ今あたしはここにいるんだけど」
「はぁ・・・はい。」
「だから誰か美貴に呼び出されてるかもしんない。誰だろ?亀井あたりかな?」
確かに電源を切っていなければ私は藤本さんに呼び出されていただろう
そして私の次に呼び出される確率が高いのは亀ちゃんで間違いないと思う
もういいだろ?と私を一瞥した吉澤さんは入ってきた窓へと歩み寄って行く
私はその背中に問い掛けた
「吉澤さん」
「は?」
吉澤さんがこちらを振り向いた
「亀ちゃんには手を出さないでくださいよ?」
「・・・」
「ちょ、約束できないんですか!?」
「・・・ガキさんの恋の相手は亀井か?まぁ矢口さんじゃないよな?」
「・・・吉澤さん、聞いてますか?」
「あ?あぁ。OKOK。その条件は飲んだ。そっちも頼んだよん」
言い終わらない内に背中を向け、また窓の方へと歩み寄り始めた吉澤さん
そこで私は確信する
この人は亀井に手を出す、と。
そして私は確認する
私の取った行動は間違っていなかった、と。
- 170 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:26
-
―――数日前、私は吉澤さんが高橋愛にセクハラをしている現場に出くわした
吉澤さんは彼女のケツを揉みしだき、耳元で何か囁いていた
私には、藤本さんと付き合っているにも関わらず、浮気して半殺しにされた経験があるにも関わらず、そのことで周りの人間すべてに迷惑をかけたにも関わらず、未だに裏でそういうことをする神経が信じられなかった
だがそれよりも癇に障ったのがその相手だ。・・・・よくも・・・私の・・・・・・・・愛ちゃんに。
その日の夜、私はマコっちゃんを誘って吉澤邸に忍び込んだ
目的は勿論吉澤ひとみ
はしゃぎ過ぎた悪魔に釘を刺し、お灸をすえるつもりだった
だが手違いが起こり、マコっちゃんは藤本さんを襲った
本来の目的・作戦自体は失敗したものの、まぁ藤本さんに恨みが無かったわけではない
私達みんなは藤本さんにも怯えさせられていたわけだから。
哀れ不意を突かれた藤本さんはマコっちゃんによって縛り上げられていた
私は自分の存在を藤本さんに知られないように気をつけながらマコっちゃんを呼び、
さっさとその場を引き揚げるつもりだった
だがマコっちゃんの興奮は収まらず、彼女は藤本さんを責め続けた
どうやら景気付けにと飲ませた興奮剤がキまってしまったらしい
私は執拗に藤本さんを責め続けるマコっちゃんを見ている内に怖くなり、自分だけでもと逃げ出した
青ざめながら玄関へと辿り着いた私
そこで私を待っていたのはコンビニの袋をぶら下げた吉澤さんだった
- 171 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:26
-
正直、その瞬間「終わった」と思った
これから吉澤さんと藤本さんによって私とマコっちゃんは殺されるんだろうと確信した
私の腕を掴んだ吉澤さんは私を、マコっちゃんが藤本さんを縛り上げている風呂場へと連行する
風呂場の手前の扉を少し開き、何が起こっているのか中を確認した吉澤さん
私があぁ・・終わった・・・と観念した瞬間だった
「Good Job <グッジョブ>」
吉澤さんは満面の笑みでそう囁くと、私の肩を叩いてきた
そのまま風呂場の二人を放って、そっと家の外へと私を連れ出した吉澤さん
マコっちゃんに対して胸は痛んだが、私の取るべき行動は他に残されていなかった。
・吉澤さんの事が好きなマコっちゃんが藤本さんを倒しに行こうと言った
・私は止めたのに、最後まで止めたのに、マコっちゃんを止めきれなかった
・藤本さん可哀想・・・だけどマコっちゃんも追い詰められた被害者なんです・・・
そう言って泣きつく私にウンウンと頷く吉澤さん
そこで何と吉澤さんは「あたしも美貴のやり方にはウンザリしている」と持ちかけてきた
「この場はあたしが全力で治めてみせる、だからガキさんもあたしに協力してくれ」と。
まさかのリアクションに戸惑っていた次の瞬間、玄関の扉が勢いよく開き、私の心臓は止まった
マコっちゃんだった・・・今ここに来られるとヤバい・・・冷や汗が背中を伝う・・・
だが、マコっちゃんはこちらに気付くこともなく、そのまま走って逃げて行く
それを呼び止めようとする吉澤さんに対して、私は慌てて吉澤さんの手をガッチリ握り込むと、『アンチ藤本同盟』を組むことに同意した
「マコっちゃんを、いや藤本さんの暴力に怯えるみんなを救う為に」という大義名分を掲げて―――
- 172 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:27
-
吉澤さんはマコっちゃんが藤本さんを嫌ってこういう暴挙に出たと信じ込んでいる
私がマコっちゃんを救うために、藤本さんを倒すことに協力し続けると信じ込んでいる
私はこのまま吉澤さんについて藤本さんを倒す計画を遂行することになるだろう
だけど吉澤さん・・・
あなたにも消えて貰いますよ?
藤本さんが倒れた瞬間、あなたを止める人間はいなくなる
そして解放されたあなたが巻き起こす地獄絵図を想像することは決して難しく無い
その地獄に落ちる高橋愛・・・・
それだけは絶対に見たくない。いや、許さない。絶対に回避させてみせる
どんなことをしても、だ。
私は指で拳銃の形を作ると吉澤ひとみの背中に照準を合わせた
あなた達二人は私がまとめて葬ってあげますよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・BAN!
手首を起こし引き金を引くアクション
ふっふっふ・・決まった・・・思わず顔が綻ぶ
だが次の瞬間、吉澤さんが急にこちらを振り向いた
- 173 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:28
-
私は慌てて手を戻すと、無理やり腕の体操へと切り替える
「そうそう。忘れるところだった」
「ど、どうしたんですか?」
腕の屈伸運動をしながらぎこちなく返事を返す
「麻琴は元気?」
「あ・・・あぁ大丈夫ですよ。まぁ何か未だにあの時の記憶はないらしいんですけどねw。私も藤本さんには会わせないように徹底的にマークしてますし、元気ですよ」
記憶がない・・・。そう、
興奮剤の副作用だろうか?まこっちゃんにはあの時の記憶、藤本さんを襲ったという記憶が全くない
この事実を知った時、私は泣いて喜んだものだった
これですべてが旨くいく、と。
「そっか。良かった。あの興奮剤は副作用が強いからね。心配してたんだよ」
・・・私は吉澤さんから発せられた『興奮剤』という言葉に凍り付いていた
「ごっちんに貰ったんだろ?まぁあれは興奮剤っていうより覚醒剤スレスレだけどねw」
!!!
なぜだ?私は何も言っていないぞ・・・
「・・・あの?・・・吉澤さん?・・・話が全然見えないんですけど・・・何のことですか?」
「昔あたしもあれごっちんと一緒に飲んだことあるんだよ。気付いたら二人とも裸でしかも血だらけで抱き合ってたね。記憶もゼロ。体中が痛かったな。全く酷い目にあったよ・・・」
ウンザリしながらも嬉々として話す吉澤さん
だがリアクションに困り、パニックに陥っていた私にはそんな事はどうでもよかった
- 174 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:28
-
「私は・・・・何も・・・知らないですよ?・・あ、もしかしたら、まこっちゃんがその後藤さん?に貰って飲んだのかもしれませんね・・・」
何とか考え、絞りだしたいいわけ
だが吉澤さんはその言葉を打ち消すようにして口を開いた
「今から・・・・こんこんを助けた後に、久しぶりにごっちんの家に行こうと思ってるんだが」
行かないで・・・
「ごっちんはあたしに嘘はつかないよ?いや、つけないと言うべきか」
ここにきて明らかに吉澤さんの雰囲気が変わってきていた
場の空気に危険な、ヤバい「臭い」が漂っている・・
空気を換える!
「私が!・・・確かに私が後藤さんに貰いました・・けどそれをくれと言って飲んだのはまこっちゃんの意思ですよ?」
吉澤さんは笑い出した
「あっはっはっ・・我ながら冴え渡るねぇ・・・矢口さんとヤってきてよかった。感度ビンビンですわ」
たじろぐ私に微笑みながら吉澤さんが近づいてきた
「麻琴が自分で飲むわけないでしょ?効果も知らない薬を錯乱するほどの量摂取したあげくに発狂する?んな、お粗末な話はないよ。あいつもそんな馬鹿じゃない。しかもそこまでして麻琴が美貴を襲うわけないでしょうが。意味がわからない。どうせ襲うなら『あたし』だろ、と」
吉澤さんが何を言いたいのか、何を聞いているのかは痛いほどにわかった・・・
だが私は言葉を発することはできなかった・・・
「・・・さて、あの日ガキさんがあたしに話してくれた『吉澤さんの事が好きなまこっちゃんが藤本さんを倒しに行こうと言った』って動機が根本から崩壊したわけだが」
自慢のおデコに脂汗が浮かぶのが感覚されていた
その汗が勢いよく頬を伝う
私は完全に追い詰められていた
- 175 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:29
-
吉澤さんはベッドに座ったまま固まっている私に肩を組んできた
ビクッ!となる私に優しく微笑みかける
「あの件であたしが泣いて悔しがる美貴を見れたのもガキさんのおかげ。そしてあんな恰好の、あんな可愛い美貴を拝めたのも麻琴の、いやガキさんのおかげだよ。あたしは何も責めてるんじゃない」
私は完全にその大きな瞳に引き込まれていた
尚も吉澤さんは話を続ける
「あのガキさんが、心優しいガキさんがw、麻琴を利用してまで憎み、倒そうとしているのは美貴なのか?あたしなのか?そしてそれは何故なのか?・・・んなことはどうでもいいんだわ」
静かながらその圧倒的な迫力に――ゴクリと生唾を飲み込んだ私は、吉澤さんの言葉を待った
「あたしはね、今から始まる作戦に計画通りガキさんが協力してくれるのかどうかだけが知りたい」
「します!!!」
私は叫んでいた
「私が憎んでいるのは藤本さんだけです!本当に!あの吉澤さん・・・」
吉澤さんは私の目の前で長い人差し指を左右に振り、私の弁解を制した
「ガキさんは凄いね。いつでも正しい道を知っている。ガキさんが今まで進んできた道、厳しく険しい道のりだったけど、選んだ道はすべて正解だったよ。たいしたもんだ」
ニヤリと笑う吉澤さん
だがその大きな瞳の奥は笑っていなかった
「これからも進むべき道を見誤るなよ?ここに来ての踏み外しはガキさんだけじゃなく、ガキさんの大切な人まで不幸にしてしまうかもしれないやよ?」
- 176 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:29
-
語尾の訛に私の脳が活動を停止した
呆然とする私に吉澤さんの高笑いが降り掛かってくる
「またビンゴw キレキレだなあたしw ガキさんのお相手は愛ちゃんかね?いい趣味だ」
吉澤さんは、表情が完全に剥げ落ちデスマスクと化していた私のおデコの汗を拭うと、そこにそっと口唇を落とした
「大丈夫。ガキさんがちゃんと仕事をしたら愛ちゃんには手を出さない。あたしは愛ちゃんにそんなに興味ないんだ。んじゃね。幸運を祈る」
立ち上がり窓へと向かう吉澤さん
「電話待ってるよ」
そう言い残すと窓から外へと出て行った
「悪魔めが・・・」
私はそう呟くと吉澤さんが消えていった闇を見続けた
―――――――――――――――
――――――――――
―――――
- 177 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:30
-
- 178 名前:新垣理沙の受難 投稿日:2005/08/23(火) 23:30
-
悪魔めが・・・
目を閉じるとわずか数分前のように蘇ってくるこの悪夢・・・
何が「あたしは愛ちゃんにはそれほど興味がないんだ」だ!
あんたが愛ちゃんのケツを揉んでたのがそもそもの発端だろうが!
興味大アリの癖に私に気を使ったつもりか?
吉澤さんは私がちゃんと仕事をすれば愛ちゃんには手を出さないと言った
だがすでに私に迷いはない
最早私には、いや私たちには吉澤さんを消さない限り平和は訪れない
藤本さんを倒した瞬間、
あの悪魔は確実に愛ちゃん、そして私にも手を出してくるだろう
絶対に。
私は落ち着いてこれからの行動を見つめ直す
置かれている状況としては決して良くは無かった・・・いや最悪だった
吉澤さんに「弱み」を握られ、逃げるどころか些細なミスすら許されない
そしてこの荒廃した家の中にはブチ切れた藤本さんが待っている
ボロを出せばその場で即死である
普通ならやりきれない状態・・・
だが今こんな目にあっているのは、私がマコっちゃんを利用した天罰であると心を入れ替えていた
マコっちゃんの為にも私がここでしくじるわけにはいかない
私は今から降りかかって来るであろう様々なピンチに冷静に対応し続け、最善の道を歩めばいい
そして最終的に「私の形」に導けばいいのだ
私が密かに温めていた「吉澤ひとみと藤本美貴をまとめて消せる形」に。
問題は無い・・・
絶対にやり遂げてみせるさ・・・
私は意を決すると玄関のドアへと足を進めた
- 179 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/08/23(火) 23:33
- 更新終了
すいません思いっきり放置してました
続きを書き溜めたのがどう読んでもおかしかった&面白くなかったので全部消しました
それと共に虚脱感に襲われまして・・・
やる気を取り戻し「よし、書くぞ」と意気込んだものの、
狼の方で成り行きとはいえ超下品なセーラー亀vs吉藤小説を書いたがためにキャラがこんがらがってしまいました。
作風が少し変わっているかもしれませんが、気にせずに・・・
今まで放置しててなんですが放置はしません
完結はさせますのでよろしくまったり
>>156 konkonさん
ガキ愛マコでした
ただの餌食ではありませんが
>>157 通りすがりの者さん
よっすぃの代わりに私がスレッド整理という危機感に襲われていました
>>158 名無飼育さん
すいません
ありがたい事です。・゚・(ノД`)・゚・。
- 180 名前:名無し飼育 投稿日:2005/08/24(水) 00:08
- あれを書いたのは貴方だったんですか!!!!!!!
うわっすっげー!!!!!!!!!!!!!!!
是非ともエピソード1も書いてください!!!
あっ、いやこっちも好きで続きが楽しみなんですよ
しかしあっちも読んでみたいッス
是非ともダークサイドに堕ちるミキ=フジモトが見てみたいです
- 181 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/24(水) 02:14
- うわっ!!
あれを書いてたのあなただったんですか!
あれはすごかった、驚嘆ですよマジ。
こっちの作品も楽しみにしてます
- 182 名前:名無しさん 投稿日:2005/09/01(木) 18:04
- 更新ありがとうございます。次の更新も待ってます。
- 183 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/09/03(土) 01:29
- 更新お疲れさまです。
ガキサンの苦悩は耐えませんね。
この調子で次々と誰が出てくるか・・・(汗
次回更新待ってます。
- 184 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/09/14(水) 01:41
- 更新開始
- 185 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:43
-
玄関の扉を開けると中は異界化していた
靴箱から姿見まで、およそそこに存在していたすべての家具が、その有用性を全否定された姿で転がっている
いや、それら残骸は通路の両端へと寄せられており、「これが我々の新たな有用性だ!」と言わんばかりに、一本の獣道を作り出していた
その獣道の真ん中には一対の足跡。
表のエリミネーターから伸びているこの異世界の主の足跡は、ピタリと閉じられている奥の扉の向こう側へと続いている・・・
私は自分でいうのも何だが、吉澤さんと藤本さんに扱き使われてきた
そして今までに藤本さんが作り出す色々な地獄を目にし、傍で見てきている
それと共に私の頭の中には「藤本マニュアル」なるものが構築されていた
私は落ち着いて現在の状況をマニュアルと照らし合わせる
・・・・・大丈夫。
何とか想定の範囲内であるという結論を導き出した私は、マニュアル通り行動へと移った
- 186 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:43
-
「おじゃましまぁ〜す!新垣で〜す!」
こういう時は大声で自分の存在を脅威となる対象にアピールする
それはもう山菜取りのババァが熊に対して行うように。
靴を脱いで上がったものの、返事はなかった
まぁ「はぁ〜い。ガキさん、来たの〜?」なんて返事は期待していない
ただ熊を驚かすことだけは避けたかった
「誰もいないんですか〜!?」
なおも声をかけながら、私は奥のドアに手をかけた
金属製のドアノブ
握りこんだドアノブはいつもより確実に冷たかった
その冷たさに違和感を感じ取れた事を幸運に思うべきだろう
普段よりワンテンポ遅れてドアを引いた瞬間だった
- 187 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:44
-
―――――――――――ズドーン!!!!!ズドーン!!!!!!!
鳴り響いた発砲音
と同時にドアを握る手に衝撃が走っていた
「おわわわわっ!!!」
叫びながら尻餅を付いた
見るとドアにダーツのような針が2本突き刺さっている
普通のタイミングで中に入っていたら直撃していただろう・・・
――――――――――――――――ドスドスドスドスドス!!!!
扉の向こう側から近づいてくる足音
「うわうわっわっわっわっ!!!!」
必死に玄関へと戻ろうと這いずる
―――――――――バーン!!!!
すぐ後ろでドアを蹴破る音がした
恐る恐る振り返る・・・
そこには熊のような優しい生命体ではなく、荒ぶる鬼神の姿があった・・・
手には銀色の拳銃が握られている
その銃口は完全に私を捕えていた
完全なるマニュアルの想定の範囲外的出来事・・・
「お、おはようございます・・・新垣です・・・新垣ですよ・・?新垣です・・・」
私は弱々しく新垣であるということを繰り返し続けるしかなかった
- 188 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:44
-
- 189 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:45
-
30秒ほど沈黙が続いた
「ガキさんか」
藤本さんはようやく銃を下ろしてくれた
その場にしゃがみ込み、私に目線を合わせてきた藤本さん
「何しにここに?・・・って・・・よっちゃんの使いだわな」
その目が殺意の波動を放ってくる
落ち着け・・・落ち着くんだ・・・
「はい・・・何かガラス屋さんとか色々呼ぶから家に来てくれって言われまして・・」
事実だけを述べる
「ふーん・・・・」
藤本さんは据わった眼で私を値踏みするかのように睨みつけていた
動けない・・・何なんだこの禍々しいオーラは・・・
「・・・・まぁいいや。上がって」
そう言うと藤本さんは私の手を取って立ち上がらせた
- 190 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:46
-
藤本さんに続いて恐る恐るリビングへと入る
中は廊下と同じく、家具や電化製品の屍が転がっていた
その中心にはボロボロになったソファとテーブルだけが辛うじてその有用性を保ち、存在している
閉められたボロボロのカーテンからところどころ光が差し込んでおり、マフィアの隠れ家のようだ
これ元通りにするのいくらぐらい懸かるんだろ・・・
「座りなよ」
そう促されソファへと腰掛ける
「何か飲む?」
「お、おかまいなく」
「麦茶でいいよね?」
「はい」
そういったやり取りがあった後、藤本さんはテーブルに拳銃を置くと冷蔵庫へと歩いていった
私の目は当たり前のようにテーブルに置かれた拳銃へと釘付になる
なぜこんな危なすぎる人間がこんな危なすぎるモノを持っているんだ・・・
そう感じつつ銃身を読む
コルトパイソン357マグナム・・・
さっき扉にはダーツのようなものが刺さっていた
恐らく中身は麻酔針だろう
なぜこんなものが・・・・・・・・・まてよ・・
こ、これは・・・千才一隅のチャンスなのではないだろうか?
- 191 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:46
-
―――――私の体が反射的に動いた
拳銃を掴むと両手で狙いを定めトリガーを弾く
発砲音と硝煙を残し、麻酔ダートが藤本さんの肩口へと突き刺さった
ガシャーン!!
「ぐうぅっ!!!て、てめぇ・・・」
麦茶の入ったグラスごと藤本さんが倒れ込んだ
私は薄ら笑いを浮かべながら藤本さんへと近づいて行く
「さよなら藤本さん。あなた次に目が覚めたら地獄ですよ?」
「うぅぅっっ・・・」
床に這い蹲る藤本さんの髪の毛を掴むと私は詰った
「最後に言い残したい言葉はありますか?」
「聞いてんのかよ?」
・・・聞いてんのかよ?
その藤本さんの声色に驚いて髪の毛を離す
「え?」
「おい!」
―――――――
ふと意識が戻った
イカン、イカン。どうやら妄想していたようだ
さっさと行動に移さねばとテーブルに目をやるとすでに拳銃はなかった
目線を正面に戻すと目の前には闇が広がっている
その闇が突きつけられている銃口の中だと気付くのにそう時間はかからなかった
- 192 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:47
-
「なぁ?・・・聞いてんのか?」
焦点を奥にずらすと血走った目をした藤本さんが・・・
「うぉぉぉぉぉっっっ!!!!!!!す、すいません!!!!!!!!!!わっわっ!!」
何とか銃口を逸らしてくれるようにボディーランゲージを交えリアクションを取る
明らかにイライラしている藤本さん・・・
「・・・で?どうなの?」
「・・・・は?」
全く話を聞いていなかった私に答えられる質問ではなかった・・・
「もしかして何も聞いてなかったの?」
「・・・あの、その・・・・すいませんでした!!!」
土下座して謝った。マニュアルに沿って。
こんな時は下手に下手に出ないと駄目なのだ。殺されてしまうのだ
「いやそんなへりくだらなくていいから。頼んでるのはこっちだし」
「え?」
はぁ・・・と一つ溜め息を漏らした藤本さんは一気に捲くし立ててきた
「2回目だし端的に言うよ?・・・美貴の仲間になって欲しい。ガキさんのことは信頼している。よっちゃんがガキさんを信頼しているのも知っている。よっちゃんとは手を切って美貴の専属になれ。間をウロチョロするな。断れば殺す。どうかな?」
「はい、勿論です」
選択の余地はなかった
私が聞いた限りでは・・・。
「そう。・・・・良かった。これで話が前に進む。」
顔面に苦笑いを貼り付けて固まる私に藤本さんの表情は砕けた
- 193 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:47
-
「絵里がさぁ〜、あの馬鹿が美貴を裏切ったのよ。ありえないでしょ?」
糞っ・・・吉澤さんめ・・あの野郎、やっぱり亀井に手を出しやがった・・・
「亀ちゃんは悪くないと思いますよ」と言いかけた私は藤本さんの目を見てその言葉を飲み込んだ
口調こそ普段の藤本さんに戻ってはいるものの、その顔は殺意の塊と化していた
「あぁ〜イライラする・・・」
藤本さんの眉間がヒクつきを増す・・・うは帰りてぇ・・・
「美貴さぁ〜こう頭の中に色々怒りの袋をしまってるのね?まぁ勿論そこに今言った絵里の袋もあるんだけど。それがねぇ〜最近もう限界なんだよね。HDの容量的に。」
話の内容が何のことだかさっぱりわからない
「袋?何ですかそれ。」
「で、一つ一つ処理をして行こうと思ってるんだけどさ、その一番古い袋がね、麻琴の袋なんだよ」
私の問いを無視した藤本さん。そして続いて出てきた「マコっちゃん」の名前にギクリとなった
「ちなみに、ガキさんは知ってるよね?麻琴のこと」
「あぁ・・・まぁ、吉澤さんからそんなことがあったってのは聞いてますけど・・・」
「詳しくは知ってるの?美貴がどんな目にあったかとか?」
一瞬、藤本さんの語気が荒くなった気がした
「いえっ!詳しくは全然知りません。ホント聞いてないですし、吉澤さんも喋らなかったですし・・・」
「・・・そっか。良かった。知ってたら今この場で殺してたよ。」
平然と言い放つ藤本さん
私の直感はまだ冴えているようだ・・・
私は心を静めながら次の言葉を待った
- 194 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:48
-
「あの後ね、よっちゃんとも話したんだけどさ、どうやらロックを開けて麻琴を中に手引きした奴がいるんだよ」
「・・・」
ここでリアクションを取る必要は無い。状況が良くわからないって顔をしとけばいいはずだ
「よっちゃんな訳ないんだよね。麻琴を入れて一番危険が及ぶのはよっちゃんなわけだし。現によっちゃんのあそこまで焦った顔を見るのは初めてだった・・・」
「・・・」
「発狂した麻琴を巧みに操り、ロックを解除して我が家に招きいれる事が出来る人物。冷静に、計画的に。・・・・・・誰かな?」
藤本さんの目が私を捕えた
鋭利な刃物を向けられているかのような緊張感・・・
疑っている・・・?
私を・・・?
「・・・藤本さん?」
「ガキさんっぽいんだよね。いや美貴の直感なんだけどさ・・・ガキさんにはうちのスペアキーを持たせたりしてるし・・・どう?」
「いやどうって言われましても・・・違いますよ!!」
「証拠は?ないんだろ?」
証拠なんて・・・あるわけがない。不可能だ。だってその通り、私なんだから・・・。
「袋を整理するつもりが袋を作っちゃったってか?まぁその『処理』はこの場で済むことだけど」
藤本さんがリボルバーを回転させ始めた
イカン・・・・空気が悪い。換気とばかりに消されそうだ・・・
どう考えても証拠がないからって犯人だと決め付けるのは馬鹿げている。そして彼女もそれには気付いている。
だがそんな正論が通じる相手ではない。そしてその行動は彼女を怒らせるだけだ
―――ここだな
「吉澤さんが・・・マコっちゃんを招き入れるはずがないってのは・・・違うと思いますね」
私は直感を信じ、頭に思い浮かぶまま、たどたどしく言葉を発する
今まさに私の生き残るための戦い(作戦)が始まっていた
- 195 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:49
-
「・・・どういうこと?」
「私が聞いた話では吉澤さんは『運良く買い物に出てて悲劇を逃れた』と言ってました」
「いやありえないから。よっちゃんは上で寝てたよ」
「マコっちゃんが藤本さんに何をしたのかは知りません。けど、私は吉澤さんから『あたしは運良く買い物に出ていて麻琴の襲撃を回避することができた』と聞きましたよ?」
藤本さんは私から目を逸らした。効いてる効いてる・・・
「私は先程から吉澤さんじゃなく藤本さん側に付きました。だからあえて言わせて貰いますけど、吉澤さんは『そういう人』ではないでしょうか?」
私の発言に藤本さんが不快感とも嫌悪感ともとれるような表情を浮かべ睨んできた
だがそれも一瞬、すぐに表情を消すと藤本さんは俯き頭を振る
「ありえない・・・美貴を助けてくれたのはよっちゃんだったし・・・」
「藤本さん・・・辛いでしょうが思い出してみてください・・・麻琴が消えてから助けにきた・・・これタイミングが良すぎませんか?」
私は諭すように優しく藤本さんの頭頂部に言葉をなげかける
「その時の・・・吉澤さんの表情を見ましたか?笑っていませんでしたか?」
「・・・よっちゃんは・・・許さないって言ってくれた・・・怒ってくれた・・・悲しんでくれた・・・」
私は一つ大きく溜め息をつくと仕上げに入る
- 196 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:49
-
「怒りながら、悲しみながら藤本さんを助ける吉澤さん。その顔に少しでも喜び・快感にあたる表情は見当たりませんでしたか?1ミクロンもですか?」
藤本さんの肩が微かに震えている様子が見て取れた
私はその様を見て、ますます饒舌になっていく自分に酔っていた
「あの人なら混乱状態のマコっちゃんをお風呂に入っている藤本さんの元に導くのは物理的に可能ですよ!あの人の悪事に関しての発想、計画、キレはまさに天才的だ!!」
ついに叫び声になった
「・・・麻琴に・・・美貴を襲わせたのが・・・よっちゃんだと?」
「はい。私は間違いないと思いますね。だって―――」
「ちくしょぉぉぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!!!!」
藤本さんが吠えた
そして私は少しちびった・・・
「糞ったれめっ!!!あのビチ糞野郎がっ!!!ぶっ殺してやるっ!!!!」
勢いよくテーブルを蹴り倒す藤本さん
やりすぎた・・・火に油を注ぎすぎた・・・
「あのボケがぁっ!!!腐れ外道めがぁっ!!!ブチ殺してやらぁっっ!!!!!」
見る見るうちに粉々になっていくテーブル・・・
だが私にはこの破壊神の覚醒と開放を止める手立てはなかった
ただただ全力で彼女の死角に入り続け、暴行の矛先を回避することしかできなかった
- 197 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:50
-
ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・・
荒ぶる肩で息をする藤本さん
「お・・・落ち着いてください・・・まだそうと決まったわけじゃないですから・・・想定ですから・・・」
「・・・・・・あぁ・・・そうだね・・・・まだ想定だ・・・まだアイツが導いたって決まったわけじゃないし・・・麻琴を許してはいない・・・ていうか許すつもりもない・・・」
次の瞬間、藤本さんに喉を掴まれた
「ぅぐっ!!!」
「あと、お前だよ・・・・何で美貴が風呂に入ってるところだの縛られてるだのって詳しく知ってんの?」
あ・・・
「手始めにまずお前から死んどくか?」
私、終わっちゃった・・・
反省会をする間もなく目を閉じた私・・・
だが喉が解放され、バタンッ!―――という衝撃音に私は目を開けた
藤本さんが倒れている
「ふ・・・藤本さん・・・?・・・だ、大丈夫ですか?」
私は恐る恐る声をかけた
- 198 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:51
-
「・・・この件は話が長くなりそうだ。・・・とりあえず美貴はもう寝るよ。限界だ」
そう言いながらヨロヨロと立ち上がった藤本さんは階段に向かう
「起きた時に納得のいく説明をしてもらおうか・・・楽しみだなぁ〜・・・」
うわ言のように呟きながらゆっくりと階段を上がって行く
その様子をただ呆然と目で追うしかない私。そこで藤本さんの足がピタリと止まった
「起きた時にこの家の敷地外に出てたら逃げたと見なし、殺すから。手錠で繋ぐ事も考えたんだけど、ガキさんは放任していた方が役に立つだろう・・・・・・そうだよな?我が忠実なる右腕よ?」
踊り場に昇りつめた藤本さんは私を振り返っていた
そしてその眼が私を見据えていた
「納得のいく説明が出来ないなら代わりのものを差し出せ。アイツをおびき寄せる餌でもいい!何でもいいから作戦を練って美貴に提示しろ!!・・・・・もう何がなんだかわからない・・・・」
言葉尻・・・鬼がふいに見せた弱さ
俯き振り絞るようにして出した藤本さんは鼻声でグジュグジュだった
「藤本さん・・・」
元はと言えば私のせいでもある。良心の呵責に襲われた私は――――
- 199 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:52
-
―――――ドゴッ!!!
基、駆け寄ろうとした私の足は藤本さんの右手一本によって凍り付いていた・・・
藤本さんの右の拳が手すりを破壊した音だった・・・
「ふふふ・・・安心してよガキさん・・・殺しはしないさ。麻琴に何をされたかを知ってるぐらいでは」
「・・・」
「まぁ美貴的には手っ取り早く、ガキさんがすべての罪を被るってのでもいいんだけど?」
「・・・・いえ、それだけは・・・私、良い作戦、考えます。藤本さんはどうぞお休みになって・・・」
「まぁいずれにしてもアイツは殺すけどね・・・・」
藤本さんがこちらに背を向け階段を上り始めた
「おやすみ」
「おやすみなさいませ・・・」
私は藤本さんが見えなくなってからもずっとその場に立ち尽くしていた
- 200 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:52
-
失敗・・・いや、辛うじて成功だろ・・・
計画としては私が藤本さんを操る立場に立つつもりだった
それには失敗したが、何とか未曾有の大惨事は逃れた・・・多少強引ながら矛先も換えることができた・・・
これは・・・成功・・・だが、この平和も長くはない。
藤本さんが起きてからが怖すぎる・・・何とか手を打たなくては・・・
気がつくと私はグルグルと部屋の中を回っていた
改めて周囲を確認する。
破壊しつくされた部屋・・・その片隅に自分の持ってきたバックを発見した
そこで気持ちが一新する。
今の私は二重スパイ。あちら側にも筋を立てなくてはならない
とりあえず状況報告しとくかと携帯を取り出した
―――――プルルルル、プルルルル、プルルルル、ガチャッ!
『は・・・い』
「もしもし、新垣です」
『・・・・ガキ・・・・さん?・・・・・・・・あ・・・あぁ・・・』
吉澤さんの声が弱々しい
「どうしたんですか?声が元気ないですけど・・・?」
『うん・・・まぁね。あれだよ・・・あれ・・・セックス後の気だるい感じ?・・・あぁ・・・しんど・・・』
ははは・・・死んでくれ・・・
何なんだこの人は・・・
- 201 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:53
-
『今どこよ?』
「・・・・・・吉澤さんの家ですよ」
『へぇ〜・・・・・あたし今ごっちんの家・・・・・・・・で?・・・用が無いなら切るよ?』
「ちょっ・・・」
引きとめようとしたものの、特に話す事もなかった
「まぁいいですよ。あ、藤本さん凄い怒ってますよ。凄い危険です。それだけです。伝えましたから」
そう言って切ろうとする私に吉澤さんが声をかけてきた
『え、え、え、ちょっと待って。それで何で電話なんてかけてこれるの?』
「藤本さん今寝てます。てか、今寝ついたところです。」
『へぇ〜・・・・・・・・そっか・・・・・』
「凄い怖かったんですからね。私では止められませんよ?本当に。もう・・・逃げたい・・・」
『今からそっち行くわ』
私は耳を疑った
『ちょうどいい。美貴がそこで寝てるんでしょ?』
「は?・・・・あ、はい」
「美貴は昨日から寝てないからね。死ぬほど深い眠りにつくよ、アイツは。」
「・・そ、そうなんですか?」
『あぁ。ミッションコンプリートだよ、ガキさん。おめでとう。プレゼントでも持って行かないとね』
「は?・・・あ、はぁ・・・」
『一時間ぐらいしたらそっちにつくから。美貴を見張ってて。本当に眠ってるかチェックしてあたしにメール頂戴。んじゃね』
- 202 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:53
-
―――――プツッ!
電話は切れた
「ふふふっ・・・」
思わず含み笑いが漏れた
あぁ!!何て私はツいているんだろう!!
問題の解決に向こうから来てくれるだなんて!!
何この自分を中心に世界が回っているかのような風・・・最高に気持ちいい・・・
正直、どう考えても私では吉澤さん、藤本さんに太刀打ちすることは出来ない
だが勝ち馬に乗ることはできる
これで吉澤さんが勝てばその下につき、藤本さんが勝てばその下につけばいいだけだ
何とでも言い訳はつく
そして残った方は時期を改めてマコっちゃんにプレゼントすれば一丁上がりだ。
平和が訪れる・・・
みんな嬉しい・・・
「ふははっ・・・」
いくら噛み殺しても溢れ続ける笑いを堪え、私は3階へと足を進めた
- 203 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:54
-
3階へつくとスースーという規則正しい寝息が部屋から漏れていた
静かに扉の前に立ち、そっと扉を開けてみる
部屋の中にはGパンが乱雑に脱ぎ散らかされており、
ベッドの上にはTシャツとパンツ一枚でタオルケットに包まる藤本さんがいた
できるだけ慎重に時間をかけてゆっくりと恐る恐る近づいてみる・・・
その寝顔からは一切の怒りが消えており、とても可愛らしい
「これはまぁ・・・完全に寝てるでしょ・・・」
そう自分を納得させた私はゆっくりと入り口へと戻り、そーっと扉を閉めた
私は静かに階段を降りながら吉澤さんへとメールを打つ
『安らかに眠ってます』
送信完了とともに私は愛ちゃんへとメールを打っていた
『今日愛ちゃんち行っていいかな?まったりしようよ』
そこまで打って1階に降りついた私はソファに寝転ぶと続きを打ち始めた
- 204 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:54
-
- 205 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:55
-
――――――――――ブロロロロロロロロ・・・・
- 206 名前:新垣理沙の挑戦 投稿日:2005/09/14(水) 01:56
-
―――――入り口の方からバイクのエンジン音が聞こえた
どうやら、うたた寝をしていたようだ・・
時計を見ると一時間弱経過している。
はぁ〜〜〜っと一つ大きく欠伸をすると、私はソファに座り直し、背筋を整える
玄関の扉が開く音。そこから足音が近づいてきて、リビングのドアが開いた
彼女は現れた
金色に光る髪の毛をなびかせて悪魔はやってきた
「美貴は?」
「上で寝てます」
そう言って上を指差すと吉澤さんは嬉しそうに笑った
「ガキさんもおいで。面白いものを見せてあげるよ」
よく見ると吉澤さんの手には手錠が握られている・・・
「これ?美貴用の、な。借りてきた。ガキさんも手伝えよ?w」
そう言って笑い、階段へと向かう吉澤さん・・・
悪意の塊が動き出した瞬間だった
- 207 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/09/14(水) 01:57
- 更新終了
高橋誕生日おめでとう
レス返しをば
>>180 名無飼育さん
おぉ!読者が!
確かに藤本編は書こうと思って伏線を張ったんですが、
こっちの作品の為に色々残しといた方が良いと思い書けませんでした
亀井は一段落してるんで好き放題書けたんですけどね
>>181 名無飼育さん
ありがとうございます
ここではあまりに下劣なものは書けませんので書けたらまたいつか狼ででも書きます
>>182 名無しさん
ありがとうございます
頑張ります
>>183 通りすがりの者さん
ありがとうございます
ガキさん正念場です
どうなるかわかりませんけどw
- 208 名前:名無し飼育 投稿日:2005/09/14(水) 02:22
- そうですか!こっちのために残しておいたと・・・・・
えーーー!!!つーことは次回もしかしてもしかするの????
うわっ!!楽しみ!!!
更新待ってます!!
- 209 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/09/14(水) 07:01
- 更新お疲れさまです。
よっすぃーがまたヤバいことを・・・(ガタガタ
しかもガキサンまで引き込んでますよ。
この先一体どうなるのでしょう?
次回更新待ってます。
- 210 名前:名無し読者 投稿日:2005/09/16(金) 11:15
- なにこの毎回楽しみな展開は!
大好き!
- 211 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/10/03(月) 20:10
- 更新開始
- 212 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:11
-
吉澤さんの後に続いて階段を上っていた私は、急に足を止めた吉澤さんの背中にぶつかった
「美貴は?」
「は?」
「何階で寝てる?」
「あぁ・・・3階です。自室で」
吉澤さんは満足そうに頷くと2階へと足を進める
そして音も無く2階へと降り立つと「ちょっと待ってろ」と言い残して自分の部屋へと入っていった
私は吉澤さんから目を離すと3階に目をやる
いよいよだな・・・
いよいよ・・・最後の大一番だ・・・どっちに転ぶか・・見せてもらいましょうか・・・
私の心の準備はできている
大丈夫。どんな状況にも対処してみせるさ・・・
そう決心し、今一度3階を見やる私
ふいにその視界の端が吉澤さんを捕えた
- 213 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:12
-
「よっしゃ。行こう」
すぐに部屋から出てきた吉澤さんは私の肩を掴むと3階へと上り始めた
何をしに行ったのだろうか?吉澤さんに特に変わったところは見当たらない
だがよく見ると一つだけ重大な変化が。
私たちの立ち位置(ポジション)が入れ替わっていた・・・
「あの・・・吉澤さん?」
「何?」
「・・・前。・・・先に・・・前行ってくださいよ・・・」
「嫌だよ。美貴が起きてたらどうすんのよ?馬鹿じゃないの?」
「・・・」
「・・・」
「もしかして今部屋に入ったのってこの為にですか?」
「めっかっちゃった!」
うぜぇ・・・
バレたにも関わらず、吉澤さんは私の肩をがっちりと掴んで離そうとはしない
私を盾にする気満々じゃねーか・・・
「今の、さんまさんのマネ。似てた?」
はい、お前死ね
そう叫びたい
だがこれもあと少しの辛抱だ・・・もう少し、あと少しで終わるさ・・・
耳をすませば一時間前と同じように藤本さんの寝息が微かにスースーと聞こえてくる
「全然似てないですよ」
私はしぶしぶと盾役を引き受け、3階へと上って行った
- 214 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:12
-
―――スー・・・スー・・・スー・・・
3階につくとその寝息は薄い壁を通り越し、よりはっきりと廊下に響きわたっていた
「こりゃ寝てるねぇ」
吉澤さんが耳元で囁いた
「寝てますね」
「あぁ。寝てる」
3階に上りきったところで止まっていた私は―――ポン!と肩を叩かれた
嫌な予感にゆっくりと後ろを振り返る・・・
「・・・何ですか?」
「ドア開けてきて」
「嫌ですよ!!!」
―――ビシャッ!!
「馬鹿」
思わず叫んでしまった私は吉澤さんの手によって口を塞がれていた
「はい、ガキさん罰ゲームね。ドア開けてきて」
有無を言わさず背中を押され、ドアの方へと放り出される
私そんな罰ゲーム付きのゲームに参加した覚えないんですけど・・と振り返ると吉澤さんはすぐにでも一階へと走り降りれる体勢を取っていた・・・
心の中で「吉澤さんが階段を踏み外しますように」と祈ると、私はほふく前進でドアへと忍び寄った
震える手でドアノブを掴む
ドアノブは暖かかった
私は強く握り込むと、ゆっくりと、静かにドアを押し開いていった
- 215 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:13
-
―――――キィ
小さく軋みの音を残し、ドアは開いた
私の目は真っ先にベッドを追う
いた。
藤本さんは一時間前と同じようにベッドの上でタオルケットに包まっている
気持ち良さそうに目を閉じ寝息を立てるその姿に起きる気配はない
吉澤さんを振り返ろうとしてビクッとなる
すでに私のすぐ後ろに吉澤さんが立っていた
ゆっくりと、髪から良い匂いを放ちながらその綺麗な顔が私の顔の横にぴったりとくっつく
すっと右手がベッドへと向けられ、その細長い指が何かを指していた
「枕の横。見えるか?」
吉澤さんが囁いた
指先をたどるとそこには例のコルトパイソンが。
「見えます」
「あれをどけてくれるかな?その後は左腕を押さえろ」
「吉澤さんは?」
―――ジャラッ
吉澤さんはポケットから手錠を取り出す
私がそれを確認したのを見届けるとお尻をポンと軽く叩いた
私達は行動を開始した
- 216 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:13
-
私はベッドへと忍び寄り、藤本さんの顔に影をかけないように素早く回りこむとコルトパイソンを取り上げる
と同時に吉澤さんがベッドに飛び乗った
藤本さんに覆い被さると両手を掴み、強引にベッドへ仰向けの状態にして張り付ける
私はパイソンを放り投げると藤本さんの左腕を押さえた
―――ガチャ
吉澤さんは手錠を藤本さんの右手にはめると
―――――ガシャンッ!
反対側のワッカをパイプベッドの柵へと派手な音を立てて繋ぎ止める
―――ガチャ
同様に左腕に手錠をかけ、こちらも反対側をパイプにかけようとした瞬間だった
藤本さんの目が開いた
「おはよう美貴」
吉澤さんがニッコリ笑った
―――――ガシャンッ!
拘束は完了した
今までの躊躇が嘘だったかのように私たちの「狩り」は迅速に行われた
ハンティングにおけるセオリーを忠実に守った二人の行動が結果に結びついた瞬間だった
溢れんばかりの達成感とともに改めて獲物を見やる
本来ならば畏怖する心を映し出し、怯えの色を秘めているはずである獲物の瞳
だが、ベッドに横たわる藤本さんの瞳に怯えや戸惑いといった類の色は存在していなかった・・・
- 217 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:13
-
- 218 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:14
-
「会いたかったよ」
――――チュッ
吉澤さんはバンザイの状態で磔られている藤本さんに抱きつくと首筋にキスをする
「美貴もあたしに会いたかった?」
そう言いながら尚も首筋に唇を落とす。
藤本さんは微動だにしない
藤本さんはずっと―――無表情でずっと私を見つめていた・・・
動けない
藤本さんの目が私を捕えている・・・
その表情には怯えも戸惑いも怒りも憤りも何も無い
それでいて何かを訴えかけるような目だけが爛爛と私を捕えている・・・
ふいにその作り物のような顔がはじめて動き、口から言葉が発せられた
「外せ」
「!」
傍でじゃれ付く吉澤さんを完全に無視し、私にそう命令した藤本さん
「これを外せ」
ジャラジャラと両腕を動かしながらもう一度。
どうやら本気で言っているらしい・・・
さて、どうしたものかと返事に困っていると吉澤さんが口を挟んできた
- 219 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:15
-
「外すわけないでしょ」
吉澤さんは藤本さんの顔に両手を添えると強制的に自分の方を向かせた
「外すわけないだろっての」
もう一度そう言うと吉澤さんは笑い出した
吉澤さんの勝ちだ・・・私は確信した。
何というふてぶてしさ・・・
拘束してるとはいえ、藤本さん相手にここまで非道になれるのはやっぱりこの人だけだろう
私は勝ち馬に乗るべく薄ら笑いを浮かべた
「黙れ」
低く地獄の底から湧いて出てきたかのような声が響いた
私の頬が凍りつく
と同時に吉澤さんも笑うのをやめた
「お前に聞いてねーんだよ」
藤本さんは吉澤さんを睨みつけ声を荒げた
「そんな格好で怒ったって無駄だよ、全然怖くないね」
薄ら笑いを浮かべたままの吉澤さんがかぶりをふる
と、藤本さんの据わった目がもう一段階据わったような気がした
「お前さ、誰に何をしてんのかわかってんのか?」
- 220 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:15
-
「何をって・・・まぁ美貴を・・・磔にしてるねぇ」
おどけて見せる吉澤さん。だが藤本さんの表情が砕けることはなかった
「浮気して逃げ回り、途中に浮気を重ね、あげく美貴を拘束して煽ってるんだよ?」
「・・・まあ・・・そうだね」
「殺すよ?マジで。」
バッサリと、吉澤さんの目を真正面でバッチリ捉えてそう言い切った。真顔で。
さすがの吉澤さんも言葉に詰まる
藤本さんはさらにたたみ掛けるように喋り出した
「もう謝っても無理だよ?キレちゃってるからね。ただキレてるんじゃないよ?ブチギレてる。止めるなら美貴をこのまま殺さないと無理。今この場で。けどお前にできる?できないよね?ヘタレだもんな?できるわけがない。ていうことは最終的には美貴って解放されるよね?そしたらお前死ぬよ。どうすんのこれ?逃げ切れる自信があんのか?一生?」
圧倒的だった
確かに圧倒的な圧力だった
だがそれにしても、だ・・・何してんの・・・吉澤さん・・・
吉澤さんの目は完全に泳いでいた・・・
これではどっちが縛られているのかわかったもんじゃない・・・
不味い・・・またしても雲行きが怪しくなってきた・・・
だが、私はこの議論に口出しする勇気を持ち合わせていなかった
- 221 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:16
-
「お前は死ぬ。これはもう決定項だよ。変えようがない。可哀想に」
藤本さんが哀れみとも同情ともとれるような顔をした
「あたしは・・・もう・・・終わったってこと・・・?」
吉澤さんの声は心なしか震えている・・・
「そ。諦めて死ねよ」
藤本さんの情け容赦のない言葉が部屋に響いた
「・・・けど一つだけチャンス、いやチャンスともいえないか・・・あることはある」
「何?」
俯いていた顔をパッと上げた吉澤さんに、藤本さんが微笑みかけた
「さっさとこの拘束を解いて?まぁそしたら美貴はよっちゃんを殺すんだけどさw。その前にお仕置きをする。タップリと。お仕置きしてる最中によっちゃんの態度次第で気分が変わるかもしれないよ?よっちゃんもそれに賭けた方がいいでしょ?なら早くこの拘束を解くべきだよ。さ、カギ出して」
・・・
これでも私が今日初めて感じた藤本さんの吉澤さんに対する最大級の優しさだった
「ない・・・これ・・・カギ・・・ない・・・」
ポツリ・・・ポツリ・・・と吉澤さんが呟く
次の瞬間、藤本さんの表情から「笑い」が一瞬で一気にひいた
「ならお前はただそこで念仏でも唱えてろっっっ!!」
- 222 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:16
-
急変した藤本さんの叫び声に吉澤さんはビクッと体を振るわせた
これは・・・馬を乗り換えるべきかもしれない・・・
まさか藤本さんが押し切るとは・・・ありえなくはないとも思っていたが――
――――おい・・・おい!お前だよ!」
気がつくと藤本さんが鬼の形相で私を睨んでいた
「は、はいっ!!!」
「庭に行って物置の工具箱の中から糸ノコ取ってこい。で、これ切れ」
両手を振り、ジャラジャラと音を鳴らしながら命令する藤本さん
すぐその横を見ると吉澤さんはすっかりうな垂れてしまっている・・・
勝ち目は残されていそうになかった・・・
幸いにも、吉澤さんはまだマコっちゃんの件を喋っていない
藤本サイドに乗り換えることは物理的に可能だろう
この様子だと私が物置に言ってる間に喋るってこともなさそうだが、お仕置きされてる時に吐く可能性は限りなく高かった
吉澤さんに助太刀して助言することも考えた。
だが吉澤さんと同じように私も今ここで藤本さんを殺すような度胸はない
ここでどんだけ藤本さんを拘束し続けても最終的には殺されるだろう・・・
これはもう――
――――わかったの?・・・お前聞いてんのか、おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!」
「は、はいぃっ!!!」
そう叫んで部屋を飛び出ようとする私に後ろから声がかかった
「いや。・・・ガキさん、行かなくていいよ」
その声は久しぶりに聞く『悪魔』の声だった
- 223 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:17
-
「だからお前は念仏だけ唱えてろって言ってんだろーが!」
―――――ペッッ!――――――――ピチャッ!!!
突然、藤本さんが吉澤さんの顔に唾を吐いた
それを恐るべき反射神経により右手でガードした吉澤さんは自嘲気味にクスッと笑ってみせた
「何笑ってんだよ・・・お前、これ解けたらどうなるかわかってんのか!?」
感情をムキ出しにしてそう凄む藤本さん
「一瞬・・・それも良いかな?と思っただけだよ」
吉澤さんは手のひらに付いた唾をまじまじと見つめている
「あたしも根は完全にマゾだからね」
そう言ってまた笑うとそのままゆっくり右手を握り込んだ
手を開いた吉澤さんの指が唾液で濡れ糸を引いているのが見て取れる
吉澤さんはその右手を藤本さんの下腹部に這わせた
「っ!!!!!―――――お前っ!!!」
「ところで美貴はいつまで仮面を被るつもりだ?」
- 224 名前:新垣と鬼の泣く街 投稿日:2005/10/03(月) 20:17
-
「・・・・はぁ?・・・何言ってんのおま・・・手ぇどけろよ!話終わってねーんだよっ!!」
パンツの中に突っ込まれた手がモゾモゾと動いている
顔を真っ赤にした藤本さんは必死に脚でそれをガードしようとしていた
「そのお前ってのやめてよ。他人行儀な」
吉澤さんは笑みを浮かべながら藤本さんの脚を絡め取り、股を広げ、ガード不能に追いやる
パンツのモゾモゾが激しさを増した
「―――くっ!!!!!」
「美貴、もう演じなくていいよ。そろそろ見せてよ」
「・・・何をだよ・・・手ぇ・・・どけろって・・・」
息も絶え絶え、苦しそうに声を振り絞る藤本さん
「いつまでその女王様の仮面かぶる気なんだ?って聞いてるんだが。
真性マゾヒストの美貴ちゃんさんよぉ」
私は吉澤さんの言葉に耳を疑った
マゾ?藤本さんが?
ありえない。藤本さんとかサディズムの塊、結晶だろ・・・
もしくはサディズムとバイオリズムの合金じゃないか・・・何を言っているんだ吉澤さんは・・・
だが私はふと見た藤本さんの顔に目を疑った
初めて見た・・・
藤本さんの顔が見る見るうちに青ざめ、固まってゆく・・・・
「カサンドラへようこそ」
そう言ったウイグル・・いや、吉澤さん
その目は美しいほど混沌に満ち満ちていた
- 225 名前:猿酉犬猪 投稿日:2005/10/03(月) 20:18
- 更新終了
毎回更新分の本筋は即行で書きあがるんですが
ボキャブラリーの無さと、書きたい放題書いてきたツケ付けから微調整に時間がかかる・・・
正直自分では怖くてきちんと最初から読み返したことはありませんw
グズグズかもしれませんが最後までお付き合いお願いします
>>208 名無飼育さん
次ですね
次回もしかしてもしかするかしないかどうでしょう
わかりません
>>209 通りすがりの者さん
今回は完全に第三者でした
次あたりでガキさんも動かしたいです
>>210 名無し読者さん
ありがとう!
- 226 名前:名無し飼育 投稿日:2005/10/04(火) 02:32
- つぎぃぃぃーーーーーーーー!!!!!!!!
次回がっぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!
ヤバイ!めちゃめちゃ好みの展開
そうなんですよ!!
あの人はアレであの人もアレなんすよ!!!
でもあの人のアレとあの人のアレは微妙に違う種類のアレなんですよ!!!
次回までが長いよーーーー!!!
- 227 名前:通りすがりの者 投稿日:2005/10/04(火) 07:16
- 更新お疲れさまです。
衝撃的(?)告発が出ましたね。
なんだかヤバいことになりそうです。
次回更新待ってます。
- 228 名前:名無し飼育 投稿日:2005/10/04(火) 16:34
- すげえすごすぎるよ作者さん
- 229 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/04(火) 18:43
- こんなトコで止めるなんて…。
作者さんはサドですねぇ(笑)
更新、待ってます。
- 230 名前:ある日の名無しさん 投稿日:2005/10/12(水) 17:10
- はい。一気読みですw
次回まで長いなんてっ・・しかも意味深な言葉を残す作者さんw
気になります。。すごく。
- 231 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/05(月) 00:40
- まってますよ〜
- 232 名前:名無飼育 投稿日:2005/12/10(土) 03:18
- えらいこっちゃ天才や天才がここにおるでっ
セーラー亀リアルタイムで読んでたけどあれってどっかでまだ読めますかのー
- 233 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 03:41
- 突然失礼します。いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 234 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/29(木) 13:27
- 続き待ってます。
- 235 名前:猿酉犬猪 投稿日:2006/01/07(土) 19:28
- 更新開始
- 236 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:29
-
硬直している藤本さん
その隙を吉澤さんが逃すはずがなかった
神速でパンツを剥ぎ取ると高々と頭上に掲げる
「取ったどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
吠えた吉澤さん
頭上に掲げたパンツを指にかけるとブンブン振り回している
「スッポンポンの美貴ちゃんさん、きたーーーーーーーーーーーーー!!!」
叫ぶと同時にパンツの回転スピードが増した
どうやらテンションが上がっているようだ
それだけは誰の目にも明らかだった
「・・・・・・調子に・・・乗るなよ?」
正気を取り戻した藤本さんの威嚇
しかしその声は微かに震えていた
- 237 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:30
-
藤本さんの両脚は堅く閉じられていた
立たせた両膝をビッチリと閉じ、足首をクロスさせ踵を陰部にくっつける
ふくらはぎに走る筋肉の線を見てもその強固さが見て取れた
「なぁ?・・・・お前調子に乗りすぎだって」
両手を拘束され下半身を丸裸にされ、さらには両脚も使えない
にも関わらず、すでにその声から震えは消えていた
凄まじきかな鬼の自制心、数分前の眼光そのままに吉澤さんを睨みつけている
吉澤さんは藤本さんの抵抗を鼻で笑うと腕の回転を止めた
十分に遠心力の加わったパンツが勢いよく宙を舞う
「目指すは天」
高々と上空へと突き上げられた指に視線を向け呟く
うっとりと自分の指先を見つめていた吉澤さんは、腕を下ろすと人差し指にキスをした
今度はその指をゆっくりと藤本さんの口元へと近づける
「さぁ、舐めたまえ。美貴の中に入る指だ。痛いのは嫌だろう?」
―――――ガチッッ!!!
その指に藤本さんが牙を立ててかぶり付いた
「うぉおっっ!!!」
寸でのところで鬼の牙を逃れた吉澤さんは大袈裟に驚いてみせる
「怖ぁぁぁぁっ・・・ちょ・・・今の完全に指千切れてたって・・・ちょっとふざけただけなのに・・・」
ちらりと顔色を窺うも藤本さんの顔に変化は無かった
いや、当たり前のように悪化していた。先程にも増して憎々しげに吉澤さんを睨みつけている
その様子を察知した吉澤さんは溜め息をつくと同時に呟いた
「痛い方がお好みですか。本当に美貴は真性のマゾだな」
吉澤さんのその言葉に藤本さんの眉毛がヒクついた
- 238 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:30
-
「嫌なんだよね。嫌がってる相手を無理矢理やるのって」
「ワラタ」
明らかな嘘に、私は思わず口を挟んでしまった。慌てて口を塞ぐ。
「うん。ごめん、嘘。好きw」
あっけらかんと笑って取り消した吉澤さん
「ただ、相手を傷つけたりするのだけは本当に嫌なんだ。だから―――」
「さっきから何か勘違いしてるよね」
藤本さんが口を開いた
ここにきて藤本さんが初めて会話に参加してきた
「美貴がマゾ?」
「ん。それは間違いないでしょ」
「常日頃からよっちゃんをボコボコにしてきた美貴が?今まで美貴にされてきたこと忘れたの?」
吉澤さんが俯きながらフフフと笑った
「今でも殴りたくてイライラがピークに達してるんだけど?わけわかんねーこと言ってないでさっさとこの拘束を解いたら?マジで殺してやるよお前w」
怒りを通り越したのだろう、藤本さんは笑顔すら浮かべている
吉澤さんが顔を上げた
「――――麻琴に縛られてた時さ・・・美貴、感じてただろ?」
「感じてねーよっ!!!!」
一瞬にしてブチ切れた藤本さん
「ふざけたこと言ってんなよお前・・・」
「いや、感じてたよ。あたし見てたもんw」
「はぁ!!??おま何言って―――」
―――――パァーンッ!!!!
乾いた音が部屋に響き渡った
- 239 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:31
-
吉澤さんが藤本さんのお尻を横から叩いた
恐らく初めてではないだろうか?
吉澤さんが藤本さんに、お尻とはいえ手を挙げた
普段とは全く違う、考えられない吉澤さんの暴挙に藤本さんは言葉を失っていた
「いやいやいや・・・あたしも驚いたね。あれを見た時は」
吉澤さんは立てられた藤本さんの両膝に肘をつき、もう一方の手で叩いた箇所を優しく擦っている
「あたしは別に美貴が他の奴らと何をしようが嫉妬したりはしないよ?あたしもやってることだからね。そんなことで怒ったりはしない。」
藤本さんに言葉は戻らない。ただじっと吉澤さんを睨んでいる
「美貴は真性のサドだと思ってた。私はマゾだし、何の問題も無い。これが正しい形だと信じてた」
顎を上げ伏目となった吉澤さん
彫刻度が五割増した冷厳な目から冷徹な視線を藤本さんに突き刺す
藤本さんの瞳に初めて怯えの色が浮かんだ気がした
吉澤さんの右手、お尻を擦っていた方の手がピタリと止まった
―――――パァーンッ!!!!
さらなる追撃が下された
激痛に顔を歪ませる藤本さん
改めて吉澤さんを見る藤本さんの瞳の中には、明らかに負の光が宿っていた
- 240 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:31
-
「・・・そんな表情見たことなかったな。あたしの前では見せない顔がここまでなまめかしいとはね」
藤本さんは何かを言おうとして口を開いたものの、唇を微かに震わせながら口を閉じた
「―――つくづく、最初から愛されてなかったとしか思えない」
吉澤さんが無表情で言い放った
「ち、違う!」
藤本さんが叫んだ
―――――パァーンッ!!!!
「っひっ!」
藤本さんが小さな悲鳴をあげた
最早目を合わせることすらできないのだろう、吉澤さんから顔を背けている
こちらにも背を向けているため、表情を窺うことはできない。
だが確実に鬼の怒気は悪魔によって喰われていた
「もう問答はやめにしよう。あたしには時間がないんだ」
「よ・・よっちゃんが・・・悪いんでしょ・・・」
「何であたしが悪い?浮気性なことか?それと美貴が美貴そのものの本質、クラウンジュエルをあたしに見せないことと何の関係があるんだよ。おい、ガキさん!」
いきなり名前を呼ばれてビクッとした
「は、はい!?」
「ちょっとこっち来て美貴の足開くの手伝って」
「やめろっっ!!!!!!!」
- 241 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:32
-
藤本さんの怒号が響いた
最初に拘束した時と同じように藤本さんが私を睨んでいる
私はまたしても動けなかった
だが今回は恐れてのそれではない
藤本さんの目が赤く充血し、涙を湛えていることへの衝撃だった
怯えている・・・。あの藤本さんが・・・
「面白い事を教えてあげようか?」
その様子を見下ろしていた吉澤さんが私に話し掛けてきた
「あたし実は美貴を抱いた事がないんだよ」
「へっ?」
「美貴とは何十回とこういった行為を積み重ねてきた。だがそのすべての回で、あたしは何らかの拘束を受け、身動きが取れないまま美貴にされるがままだったんだよ」
それは意外だった
藤本さんの支配体質がそこまで徹底されていたとは・・・。
「これ3回ぐらい言ってるけど、あたしはマゾだからね。その事自体は全然不快ではなかったよ。けど不満はあった。1回と言わず何回か美貴に抱かせろと迫ったこともあった」
「・・・どうなったんです?」
「本気でキレられて本気で殴られたね」
うわぁ・・・普通じゃん・・・
「ただね・・今思うとその時の美貴は哀愁を帯びた何とも悲しそうな顔をしてたよ」
目を閉じ思いにふける吉澤さん。ウンウンと何かしら自分で納得し、頷いている
それもつかの間、不意に瞼が開かれその大きな目がカッと藤本さんを捕えた
- 242 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:32
-
「さて・・・・・ガキさん、早くこっち来て手伝ってよ」
そう言われたものの、私にはどうしても近づくことはできなかった
眼光の鋭さこそ衰えてはいるものの、藤本さんは相変わらず私を睨んでいるし、そのうっすらと涙を帯びた目が前以上に何かを訴えかけてくる
助けてくれ的な何かを私に伝えかけてくる・・
何とも死刑の執行を下すかのような決まりの悪さが、私の足をその場に釘付けにしていた
「どした?」
「いえ・・・私は・・・遠慮しときます・・・。近づきようがないですし」
そう言った私を吉澤さんは鼻で笑った
「目が怖いか?・・・・・ならこうすればいい」
―――――!!!!
吉澤さんが藤本さんのTシャツを捲り上げ、その顔をすっぽりと覆った
Tシャツの中から藤本さんの篭った悲鳴が聞こえた
「ブラジャーは着けていないようで。まぁいらないかw」
強烈な羞恥心が藤本さんを襲う
だが手は拘束されている、脚で胸を隠そうとすれば下半身の防御が崩れる・・・
藤本さんにはどうしようにも隠しようがなかった・・・
晒された形の良い小ぶりのおっぱい。その先端を吉澤さんが楽しそうに指で弄る
「さぁ、ガキさんもこっちきて一緒に弄ろうぜ!?」
「・・・・・・や・・・・ゃめて・・・・・・・・」
ゾクッとした・・・
その涙声は「どノーマル」と自負する私をもゾクッとさせた
凄まじい破壊力だ・・・これがふり幅か・・・
その破壊力に「ど変態」を自他ともに認める吉澤さんが耐えられるはずがなかった
サツキに貰った笠に雨粒が落ちた時のトトロかお前、という勢いで全身を振るわせた吉澤さん
一つ大きく深呼吸をした後
「上半身でも下半身でも、好きな方を守りたまえ」
そう言った吉澤さんは藤本さんの脚に手をかけた
- 243 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:33
-
「グスッ・・美貴が!」
藤本さんが声を上げた
「美貴が・・・体を許したら・・・よっちゃんは・・・私のすべてを奪うことになる・・・」
Tシャツの下から心境を吐露し出した藤本さん
その悲痛な声は完全に震えており、時々鼻をすする音も聞こえてくる
トランス状態に陥っているだろうにも関わらず、意外にも吉澤さんはその声に耳を傾けていた
「美貴の・・・身も・・・心も・・・支配したよっちゃんは・・・美貴の前から消える・・・グスッ・・・ウゥゥ・・・」
最後は声になっていなかった
藤本さんは全身を震わせている
吉澤さんが優しく藤本さんの顔にかかっているTシャツを手の方へと脱がした
現れた藤本さんの顔は涙でビショビショに濡れていた
「・・・心の底から・・・愛してた・・・。よっちゃんに・・抱かれたかった・・・。けど、美貴は・・・よっちゃんの・・・その他の女になりたくない・・・。それだけは耐えられない・・・。美貴は・・・ずっとよっちゃんの・・・一番傍にいたい・・・ずっと・・・だから・・・だから―――」
「言っただろ?」
吉澤さんの一言が藤本さんの涙の弁明を打ち切った
ハッとなり吉澤さんを見つめる藤本さん
「お前との問答はもう終わってるんだよ。黙れよ」
悪魔だ―――
間違いなく悪魔だった―――
そこはあやせよ、と。そこは優しい言葉の一つでもかけて関係の修復を迫るべきだろ、と思った
だって吉澤さん・・・このままじゃあなたが最低ってだけですよ・・・?と、正直思った
しかし吉澤さんの顔は冷徹に冷めきっており、酌量の余地を窺うことはできなかった
- 244 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:33
-
諦めだろうか?
藤本さんがゆっくりと首を左右に振りながら強く目を閉じた
目に溜まっていた涙が一際大きい塊となって頬を伝った
吉澤さんは藤本さんの膝の裏に手を当てるとガバッと股を開く
声にならない藤本さんの弱々しい悲鳴が響いた
最早藤本さんのその脚に力は感じない
吉澤さんにされるがままに体を二つ折りにされていく
「いい格好だな美貴」
「ぁぁっぁ・・・」
「そう。お前はただ喘いでいればいいw」
笑みを浮かべた吉澤さん
その目は心なしか潤んでおり、非情に徹してきた表情は悦に入った表情へと変わっていた
女性にしては発達したこの悪魔を象徴するかのような喉仏がゴクンと鳴った
「いただきマンモス」
部屋に吉澤さんの、まさかの、のりP語が響き渡った
- 245 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:34
-
- 246 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:34
-
これは・・・
見ていいのだろうか・・・
いや・・・見てていいわけがない・・・
だが・・・目が離せなかった・・・
吉澤さんが指や舌、時には言葉を巧みに使い、藤本さんの反応を確かめていく
そして少しでも反応があった箇所を執拗に責めた
泣こうが叫ぼうが関係なかった
乱れ、悶え狂う藤本さん
吉澤さんはその反応を楽しむように藤本さんの体を翻弄していった
凄い・・・
うわ・・・エロ・・・
見てるだけで赤面する恥辱現場・・・
吉澤さんが徹底的に藤本さんの自我を叩き壊して行く
だが全身を侵食されつつある藤本さんの口から「やめろ」的な言葉が出ることはなかった
- 247 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:35
-
エロすぎる・・・ヤバい・・・鼻血出てきた・・・
血を垂らさないようにと鼻をすすっていた私は
それではらちがあかないとふんで鼻の根本を押さえにかかった
だが2人の絡みは激しさを増していく・・・
うわぁ・・・おいおいおいおい・・・あぁ・・・うわぁぁ・・・・
それを・・それを・・・ええええぇぇ・・・入れたで、おい・・・
何してんの・・・うわ・・・ソフトオン○マンドみたい・・・何ビアンだよお前ら・・・
見てるだけで暑い・・・火照るわぁ・・・
そこは・・・それは・・・え・・おい・・・マジかよ、おい・・・
・・・・
・・・ん?
・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・おかしい
- 248 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:35
-
徐々に、だが確実に私の身をエロ以外の何か違う感覚が襲ってきていた
なぜだか私は今吉澤さんの藤本さんへの溢れんばかりの愛情を感じていた
先刻、藤本さんの涙の弁明を冷徹に打ち切った吉澤さん
その時は本物の悪魔に見えた。
だが今の吉澤さんはデリケートに、優しく、大切に藤本さんを抱いていた
エロを大前提として楽しみつつも、明らかに藤本さんを慈しんでいた。愛でていた
これが言葉よりも行動で示す、ってやつですか?
それにしてはやりすぎな気もしますけどね・・・
押さえている鼻の付け根が痛くなってきた
私は2人の関係がわからなくなってきていた
最中、吉澤さんは自分の服を脱ぐ際に胸元から鍵のチョーカーを取り出し、藤本さんの拘束を解いた
藤本さんに反撃されるのではと驚いたが、当の藤本さんにすでに抵抗する気力はなかった
弱々しく喘ぎ声を上げている
自由になった藤本さんは吉澤さんに抗いもせず、従順に従った
耳元で囁かれた通りの姿勢を取り、保ち、吉澤さんに言われるがままに感じていった
完全なる支配だった
だが双方明らかに数分前のいがみ合いはここにはない
吉澤さんの振る舞いは愛に満ちていた――
その愛を注がれるままに全身で受け取る素の藤本さんがそこにはいた――
吉澤さんは優しく、そして強く藤本さんを抱いた
藤本さんの喘ぎ声は大きくなり時に悲鳴となり部屋に響き渡っていった
私はいつの間にか正座をしていた
姿勢を正し、悪魔の食事を見守った
- 249 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:35
-
- 250 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:36
-
ベッドに全裸で横たわる2人
小さく丸まり、肩で息をする藤本さんを吉澤さんが後ろから包み込んでいる
耳元で何かを囁いているようだ
人が逝かされる様を見たのは初めてだった
エビ反り・・・っていうのあれ?
一人ジャーマンスープレックスみたいな体勢で果てた藤本さん・・・
その瞬間、鼻をすすりすぎた私の口の中には鉄の味がしていた
と同時に私は現実に戻っていた
私はここにいて良いんだろうか?
途中で帰っておくべきではなかったのか?
こんな恥ずかしい現場を見られる事を藤本さんが好むわけがなかった
起きた途端に何らかの制裁を受ける可能性はある
しかもこの場には仲直りした吉澤さんまでいる・・・
私の身にどんな不幸が起こってもおかしくはなかった
私は静かに立ち去ろうと痺れた足を説得しにかかる
しかしその時ベッドの上では吉澤さんが上半身をムクッと持ち上げていた
- 251 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:36
-
吉澤さんはパンツを履くと脱いだフレアジーンズをも身につける
左のポケットからタバコを取り出すとベッドに胡坐をかいて座り直し、咥えたタバコに火をつけた
思いっきりタバコの煙を肺に入れると勢いよくその煙を吐き出す
フーーーーーーーーーーー・・・・!!!!
その瞬間、私と目が合った吉澤さんは目を見開いて咳き込みだした
「ゴホッ!!ゴホッゴッゴッゴホッ!!」
吉澤さんは涙目になって私を見つめ直す
「ゴホンッゴホッ・・ゴホン!!あれ?・・・ガキさんまだいたの?何してんの?」
うわ何この人・・・
私の事を覗き魔を見るような目で見ている・・・
「嘘ウソw 冗談だってw すべて片はついたよ」
吉澤さんはそう言って笑った
確かに。
確かに片はついた
だが私はなぜか一刻も早くここを立ち去りたかった
「私、もういいんですよね?帰りますね」
そう言いながら立ち上がる
「え?もう帰んの?あれ・・・あたし何かガキさんに忘れてる気がするんだけど・・・」
「今度でいいですよ。もう帰ります」
「ん?そう?ん・・・んじゃまぁいいや。ありがとう。お疲れさん」
「どーも」
痺れた足を引きずって部屋を出ようとする私。
それを見て
「あたしも風呂入ろっ」
と、ベッドから立ち上がった吉澤さんに藤本さんが猛然と襲い掛かった
- 252 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:37
-
トップレス状態の吉澤さんの胸に顔を埋めた藤本さん
腕はがっつりと腰に回され、放そうとしない
私は死ぬほどビビっていた・・・が、吉澤さんは何かを悟りきったかのように落ち着いていた
「風呂だよ風呂。汗かいちゃったからね。美貴も一緒に入ろっか?」
優しく藤本さんの頭を撫ぜながら声をかける
藤本さんは吉澤さんの腰に回していた腕を解き、コクンと首を縦に振った
「美貴フラフラじゃんw 抱っこしてあげよっか?」
そう言いながら歩き出した吉澤さんに
「・・・ぃぃ・・・。よっちゃん・・・タバコ吸ってるし・・・」
と言ってその後をフラフラと続く全裸の藤本さん
おぼつかない足取りで壁に手をつきながら歩いている
私は廊下に出てその様子を見守っていた
吉澤さんが階段の一歩目を踏み降りる
「よっちゃん」
そこで藤本さんがポツリと呟いた
「ん?」
吉澤さんが笑顔で振り向く
咥えていたタバコを指に取り、肺の中の煙を一気に外へと吐き出す
- 253 名前:新垣理沙と天下分け目の戦い 投稿日:2006/01/07(土) 19:37
-
吐き終えた瞬間だった
新たな空気を吸い込む完全に無防備なこの瞬間に、藤本さんの脚が動いた
吉澤さんは反応したものの、タバコを持った手でのガードを躊躇ったのだろうか?
その一瞬の遅れが命取りとなった
俗に言う『前蹴り』が吉澤さんの腹に深々と突き刺さっていた
――ドゴォッ!!!―――――ガタッ!!!バタガタバタバタガダダダダダダッ!!!!!!!
凄まじい音を立てながら吉澤さんの体が階段を転げ落ちていく
「ああああああああああああ!!!!!!!!」
私は叫び声をあげていた
震える手で手すりを持ち、下を覗き込むと吉澤さんの脚らしきものが確認できる
ピクリとも動いてはいなかった・・・
「大好き」
そう言った藤本さんは階段をゆっくりと降りていった
- 254 名前:猿酉犬猪 投稿日:2006/01/07(土) 19:39
- 更新遅くてすいません
新年明けまして今年のマニフェスト:更新スピードを上げる・いいわけをしない
レス返しをば
>>226>>228>>232 名無飼育 さん
お待たせして申し訳ない
直接的な表現のあるエロは控えめにしました申し訳ない
セーラーマーズスレのログはギコナビが壊れたので持ってません申し訳ない
>>227 通りすがりの者さん
今回また吉澤さんえらヤバです
>>229 名無飼育さん
サドでは無いですよ。ただの怠惰な人間です。変態ですけど
>>230 ある日の名無しさん
はじめまして
一気に読んでもらっていてお待たせして申し訳ない
>>231 名無飼育さん
ありがとうございます。申し訳ない
>>233 名無飼育さん
sha la la とあの日のオルゴール(どっちもよしごま)が自分的にベストオブですね
この二つで飼育にrom専として嵌りました。どっちもかなり前の作品だと思いますが
>>234 名無飼育さん
ありがとうございます。読んでください
- 255 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 20:55
- うおぉぉぉぉ〜
面白い!!!
- 256 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/01/07(土) 21:33
- おもしろすぎます!!
途中吉澤さんに殺意さえ覚えましたがガキさんになだめられましたw
ますます更新が楽しみです。がんがってください!
- 257 名前:名無し読み手 投稿日:2006/01/08(日) 00:17
- すっげおもしろいっすわ!
言葉のチョイスに感動っすわ!
ありがとうございますって言いたくなりました。
- 258 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/08(日) 00:58
- エエデエエデ
- 259 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/08(日) 01:08
- 最高
ありがとう
- 260 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/08(日) 02:22
- いつもよっちゃんのつけている鍵のネックレスの謎が解けました
本当にありがとうございました
- 261 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/01/08(日) 02:38
- 更新お疲れ様です。
うわぁ。。。(汗
なんだかかなりヤバいですね。
次回更新待ってます。
- 262 名前:226 投稿日:2006/01/08(日) 06:52
- 今回もキターーーーー!!!
いやはやバイオレンスかつレロレロですな
そうそうセーラーマーズなら今回メインの二人の避難所から飛べますよ
.COMのところをクリックすれば
- 263 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/08(日) 11:14
- やばい…言葉で表し様のない気持ちが押し寄せてきました(笑
藤本さんはやっぱりこうでなきゃとか思います。
更新乙でした。
- 264 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/08(日) 19:22
- サイコーです!!!
思わず拳を振り上げながら立ち上がって『悪魔マンセー!』と言ってしまいました。実はこうやってカキコするの初なんです。基本どこでもROMらーなんで。とにかくそれだけボルテージが上がったってことです。
次の更新も期待してます。作者様のペースでマターリと更新して下さいませ。
- 265 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/08(日) 20:35
- うぅぅおれのあくまがあくまが〜〜
- 266 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2006/01/09(月) 12:22
- ちゃいこーです
- 267 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/10(火) 22:06
- (´д`)エェェェェ!?
大団縁で終わるのかと思いきや、どうなるんですか!?
続きがチョー気になりまくり!!
- 268 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/11(水) 15:38
- あほかお前ら!!ageんな
- 269 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/15(日) 21:14
- はやく続きが読みたい〜〜
- 270 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/01/20(金) 15:40
-
- 271 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/02/24(金) 15:55
- 続きを待ってます
- 272 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/18(土) 21:50
- もう続きないのかな・・・
- 273 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/21(火) 22:25
- 続き待ってます。頑張ってください
- 274 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/21(金) 00:44
- 続きなし?でも、まだねばります。
- 275 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/04/28(金) 04:21
-
- 276 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/17(水) 15:27
- ん〜・・・もうちょっと粘ってみます。
- 277 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/18(木) 02:54
- 本当にありがとうございました
- 278 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/18(木) 03:23
- なぜageる?言ってる意味が分らんがとりあえず落とします。
- 279 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/30(火) 03:36
- 待ってました!
- 280 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/30(火) 04:31
- ochi
- 281 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/31(水) 01:33
- >>280
ドンマイ!wwww
- 282 名前:猿酉犬猪 投稿日:2006/06/05(月) 23:09
- 更新開始
- 283 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:11
-
「ちょ・・・・・よ、吉澤さんっ!!?」
呼びかけてみたものの返事はなかった・・・
えらいことになった・・・
もう民事の域じゃない
どう見ても警察沙汰です。本当にありがとうございました
っていやだからそんなレベルの話じゃないってこれっ!!!
ヤっバいこれマジ・・・普通にヤバい・・・てか生きてんの・・・?
ハッとなり慌てて駆け寄ろうと階段を降りる私
しかし吉澤さんの元へと繋がる狭い階段、そこはすでに藤本さんの遊覧道路と化していた
- 284 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:11
-
吉澤さんのことは心配だった
手当てが必要だろうし場合によっては最悪のケースも考えられる
そして何よりも今、藤本さんを近づけるべきでないことだけは確かだった
だが、どこの世界に今の藤本さんを止める勇気のある者がいるだろうか?
藤本さんは吉澤さんを階段から蹴り落とした
何の躊躇もなく、本気で。
考えられない行為だ・・・ドメスティックバイオレンスの最高峰じゃないか・・・
しかし私は藤本さんが精神的に受けてきた苦痛、肉体的に受けた辱めを知っている
それがその怒りから来る行為なら、やりすぎだとしてもまだわからない事ではなかった。
だが彼女は蹴り落とした女に対して「大好き」と言ったのだ
考えられない・・・
こいつらヤバすぎる・・・
どういう事なんだよ・・・
現実が私の理解の範疇を軽く超えて進行して行く
何一つ共感できなかった・・・
ただ、藤本美貴という存在がこの場に置いて危険すぎるということだけは確かだった
私が藤本さんの横をすり抜け、吉澤さんに駆け寄ろうものなら
蝿を叩き落すかのようにして普通に私の事も蹴り落とすだろう。
その「絵」は考える事もなく一瞬で浮かんだ・・・
- 285 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:12
-
「あ、あのっ!・・あ・・・ふ、藤もっさん!?・・・あの・・・あのですねっ!・・・あの・・・」
何とか言葉だけで止めようと試みるものの、どう止めれば良いのかわからない
てか、止まるわけねーじゃん・・・
「よっちゃん・・・ありがとう・・・大好きだよ・・・今度は・・・美貴の愛を受け取って」
藤本さんは確実に壊れていた
そして着実に階段を降りていた
私の呼びかけは当たり前のように無視されている
というよりも、私の存在自体が無視されてる空気をヒシヒシと感じた
あ〜・・これは・・・無理だわ・・・
うん・・・私レベルが止めれるわけがないよ・・・ごめんなさいね、吉澤さんね・・・
私の思案が諦めという結論を導き出した時、藤本さんは2Fへと降り立っていた
私はそのまま踊り場付近で待機して状況を見守る
今さらだが、2人と同じフロアに立つ勇気すらないことに気が付いた
- 286 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:12
-
- 287 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:13
-
吉澤さんは左半身を下にして倒れていた
顔に腕がかかっているため表情を窺い知ることはできなかったが、ピクリとも動いていない
藤本さんが傍に落ちていた吸いさしのタバコを拾い上げた
そのまま口に咥えるとタバコの先端がオレンジ色に光る
フーーー!!っと勢いよく煙を吐き出すと同時に、藤本さんは吉澤さんの部屋へと消えていった
あれ?どうした? と思う暇も無く再登場した藤本さん
全裸だったその体が胸から太腿まで薄手のタオルケットで覆われている
口に咥えられたタバコの先端がもう一度オレンジ色に強く光った
ンフーーー!!今度は勢いよく鼻から煙を出す、と同時に藤本さんは吉澤さんの右肩を踏みつけた
フローリングの板の上をゴロンと音を立てて吉澤さんの体が仰向けになる
神々しいまでに白い胸と腹が上を向いた
目立った痣こそ無い様だが、顔にはまだ髪がかかっている
藤本さんの右足が一閃した
ブワッと吹き飛ばされる金髪
ただ眠っているかのようにして目を閉じるその顔には、奇跡的にも傷一つ見当たらなかった
「綺麗・・・・そう、この顔大好きw」
藤本さんは満足そうに笑みを浮かべると、タバコを中指で窓の外へと弾いた
- 288 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:13
-
そのままマウントポジションに収まった藤本さん
吉澤さんの左手を右手、右手を左手でガッチリと掴み、じっとその顔を見つめている
「一目見て惚れた。けどここまで好きになるとは思わなかった・・・」
20cmの距離で藤本さんが呼びかける
「よっちゃん・・・起きてよ・・・」
しかし吉澤さんに反応は無い
藤本さんはその首筋に顔を埋めた
「いい匂い・・・」
スンスンと鼻を鳴らす藤本さん
「首も真っ白・・・まさに静脈を噛み切られる為に生まれてきたかのようだね」
そう言いながら藤本さんは歯立てたのだろうか?
一瞬、吉澤さんの口元がピクリと動いた気がした
「あっ!」
藤本さんがサッと顔を上げる
「よっちゃん、あれだ。白雪姫みたい。肌の色も1回死ぬところもよく似てるよ。・・・では」
よくわからない独り言を呟くと、藤本さんは吉澤さんとの距離を縮めた
- 289 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:14
-
―――――チュッ
タオルケット一枚の王子が横たわる上半身裸の白雪姫にキスをした
この王子、毒林檎という名の前蹴りをぶちかまして永遠の眠りへといざなった魔女との二役である
配役的に完全に破綻している劇が私の目の前で淡々と進んで行く
―――――チュッチュッ
藤本さんが音を立てて吉澤さんの唇を舐る
―――――チュッチュッチュッチュ ―――ブッチュ!!
藤本さんが吉澤さんの唇をくわえ込んだ。
それぞれで押さえていた吉澤さんの両手を右手にまとめ、左手で吉澤さんの鼻を摘まむ
あ痛たたたたた・・・・・
ちょっ・・これ・・・・生き返らす気ないじゃん・・・完全に殺す気じゃないっすか・・・
・・・30秒経過・・・・うわ・・・40秒経過・・・・・・・・50・・・はい、死んだ・・・って、おぃいぃ!!!
流石に自分の目の前で殺人を起こさせるわけにはいかない
返り討ち覚悟でストンピングに行こうと階段を駆け下り出したその時、吉澤さんの脚がピクッと動いた
最初は微かだったその「動き」はすぐに痙攣へと移行し、最終的にのた打ち回りへと変化していった
- 290 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:15
-
「んばぁっ!!!」
猛烈に首をふって頭の拘束を解き、息を吸い込む吉澤さん
目に涙をため、真っ赤な顔でゼイゼイと息を荒げている
しかし藤本さんは落ち着いて左手でその頭を抱え込むとまたもや口付けを続ける
(20秒後)
「――――んんんんんっばぁぁっ!!!!!」
猛烈に首をふって頭の拘束を解き、息を吸い込む吉澤さん
目に涙をため、真っ赤な顔でゼイゼイと息を荒げている
しかし藤本さんは落ち着いて左手でその頭を抱え込むとまた口付けを続けする
(20秒後)
「――――んんんんんんんんんんっっばぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」
猛烈に首をふって頭の拘束を解き、息を吸い込む吉澤さん
しかし藤本さんは落ち着いて左手でその頭を抱え込むとまた口付けを―――
「―――ちょ!ちょっと待って!!いい加減にしてっ!?死ぬって!!!?」
吉澤さんの悲鳴が響き渡った
目から涙をこぼし、真っ赤な顔でゼイゼイと息を荒げている
「死ぬ?・・・・・違う違う。死ねって。」
落ち着いてそう言い放つと藤本さんはまたもや左手で吉澤さんの頭を抱え込んだ
- 291 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:15
-
「痛い痛い痛いっ!!!体がっ!痛いよっ!!!全身がっ痛いのっ!!」
一連の流れをどうしても変えたかったのだろう、
顔を思いっきり背けながら吉澤さんが叫び出した
「さ、さっき!落ちたじゃん!?階段から!い、いっぱい体打った!!!痛いっ!痛いよぉ!!」
悲鳴にも似た吉澤さんの叫び声が鳴り響く
「それがどうしたんだよ。知らねーよ馬鹿が」
しかし藤本さんには全く響いていない・・・
またもや藤本さんの唇が吉澤さんに迫る
「知らねーよって!美貴が蹴り落――――」「黙るか」
藤本さんのドスの利いた声が吉澤さんの声を打ち消した
「・・・・それとも・・・もう1フロア、1Fまで落ちるか?・・・・・・・・選ばしてやるけど?」
「・・・」
吉澤さんが黙った・・・
軽く頷いた藤本さん。そのまま吉澤さんに迫る
吉澤さんの唇を目前にして牙をむいた瞬間だった
「ちょっと待って!タイム!タイム!一言だけ言わせて?一言だけ!あのさ、何で怒ってんの?」
吉澤さんのありえない言い訳が飛び出した
- 292 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:16
-
一瞬、あっけに取られていた藤本さんは目を細めると
「ありえねぇこいつ・・・」
と、しみじみと言葉を発した。
私は深く同意した
第三者としてできるだけ客観的に考えてもありえなかった
何っていうか、なぜそんな事を平然と言えるのか意味がわからなかった
「あたしは美貴を抱いた!最っ高だった!あたし嬉しい!美貴も嬉しい!世界に平和が訪れた!愛が世界を救った!みんな嬉しい!違うの!?」
まだ言ってるし・・・その発想は無かったわ・・・
吉澤さんの作戦は見事に成功した・・・
だが、その作戦は藤本さんに通用しなかった・・・
・・・それだけの話だった・・・
藤本さんの右手が吉澤さんの拘束を解いた
と、そのまま今度は両腕で吉澤さんの頭を抱え込む
一呼吸置いて、藤本さんは吉澤さんの頭をゆっくりと抱き起こしていった
- 293 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:16
-
「それはあれか?」
吉澤さんの首に回していた腕を解き、両肩に手を置いた藤本さん
その目は少し高い位置からガッチリと吉澤さんをロックオンしている
「今までのことは全て水に流せ、ってことか?」
「違うとも!」
吉澤さんが即答する
「あれは必要なことだったんだよ!」
「・・・はぁ?」
「ゲーテの格言にも、苦悩を経て大いなる快楽に至れってってのがある!あたし好きなんだよその言葉!どういう意味かわかる?あたし馬鹿だから言葉通りの意味だと解釈してるんだけど、こう・・わかんじゃん!?ね?あの・・マラソンした後のポカリは美味いみたいな―――」
「もういい・・・」
藤本さんが俯いた
だが吉澤さんの熱弁は止まらない
「それに今回の件でやっぱ何事に置いてもフリ幅ってのは大事だと思ったね、あたしは!」
悪びれた素振りも無く軽快に訳のわからない持論を展開していく吉澤さん・・・
しかし私はその吉澤さんの顔に尋常じゃない量の汗が浮かんでいるのに気がついていた
「もういい・・・黙れよ・・・」
「さっきの美貴なんかまさにそうだろ?めちゃくちゃ可愛かったぞw 何あれ?w いつもはあたしにおっぱいすら舐めさせてくれないくせにさ?さっきの美貴w ちょww 思い出しただけでもうww おっぱいどころかお前wwwww 穴という穴ぐぅっぉをぅっ―――――――」
出し抜けに、藤本さんの左手が正面から吉澤さんの首を鷲掴みにした
「黙れっつってんだろうがぁぁあぁぁっっ!!!!!」
藤本さんの咆哮が轟いた
- 294 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:17
-
「っっるせーんだよらぁっ!いっつまでも訳わかんねーことブツブツほざきやがって!!おめぇフザけてんのか!?あぁ!?このガキ・・・!てめぇ美貴に何したかわかってんのかぁ!?えぇ!?おぃ!!目ぇ反らすなこらぁ!!さっさと答えろボケおらぁぁっっっ!!!」
4回・・・いや5回か・・・
ボロクソに蔑まれながら吉澤さんは殴られた。首を締められながら。
とりあえず私は往復ビンタというものを初めて生で見た・・・
「いや!!答えなくていい思い出せ!!今度浮気したら殺すって美貴おめぇに言ったよな!?思い出したか!?よし!!死ねっ!!!」
さらに2、3発殴った後、フィニッシュブローとも取れるブーメランフックが吉澤さんを襲った
終わった・・・私は目を閉じた・・・
・・・しかしインパクトの衝撃音は聞こえなかった
目を開けると吉澤さんの顔の5センチ手前で藤本さんの拳は止まっていた
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ごめん・・・ついカッとなっちゃって・・・」
吉澤さんの首から手を離し、肩で息をする藤本さん
吉澤さんは完全にグロッキー状態に陥っている・・・
ビンタされた時に歯で切ったのだろうか、吉澤さんの唇の端が血で滲んでいた
「OK・・・クールに行こう。話し合いだ。」
藤本さんが囁いた
「・・・素晴らしい・・・考えだ・・・」
生気のない顔で吉澤さんも同意する
「とりあえず今から裁くけど、よっちゃんは飲酒運転で人を轢いたあげく放置して逃げた運転手ぐらいのつもりで判決を聞いて欲しい」
裁判を傍聴した経験のない私にも情状酌量の余地がないことだけはわかった
- 295 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:17
-
- 296 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:18
-
「まぁ手っ取り早く結論から先に言うけどさ・・・よっちゃんに自由は必要ないよ」
藤本さんが物凄い重いことを物凄い軽く言った
すでに死人のような吉澤さんの顔がさらに凍りつく
「監禁。軟禁じゃないよ?監禁。部屋の中を動き回れるみたいな期待はするなよ?ベッドに縛りつける」
「・・・そいつは怖い・・・床ずれして・・・そのうち腐っちゃいそうだな・・・」
「安心しろよ。抗生物質を投与してやるし、あとパラマウントベッドも買ってやろう」
「・・・寝ててもお腹空いちゃうし・・・三日ぐらいで死んじゃうだろうな・・・」
「三色飯付き。毎日美貴が食べさせてあげるよぉ〜。まぁ拷問も付いてくるけどなw」
嬉々としてプランを発表する藤本さんに対して、心ここにあらずのような顔で返す吉澤さん
それに気付いた藤本さんが「何か不満でも?」という顔で吉澤さんの顎を掴んだ
「・・・一つだけ・・・質問・・・いいかな?」
顎をつかまれたまま吉澤さんが尋ねた
「勿論だよ。遠慮なくどうぞ?」
藤本さんが微笑を浮かべて許可する
「・・・なんで殺さないの?」
「好きだからだよ」
即答した藤本さん
「抱かれてみて改めて思った。美貴は・・・やっぱよっちゃん好きだわ」
「・・・そっか」
吉澤さんの口元に笑みが戻った
「・・・・ふっw あたしに抱かれて人生観変わったんだろ?w 自分のマゾの属性を思い知らされただろうに。おら、さっさとそこ降りてこっちにケツ向けろよ。ヒーヒー言わせてやんぜこのメス豚がw」
――――――――――!!!!!!!!
ちょ・・・・・馬鹿だこの人・・・・・死んだぞこれは・・・・・
私は藤本さんの咆哮に備えて耳を塞いだ
- 297 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:18
-
「よっちゃんの口はキス以外では使い物にならないねw」
・・・恐る恐る目をやると藤本さんは笑っていた
「今からの調教でその口も塞ぐ必要があるようだ。もっとも、そんなことでいちいち美貴は怒らないけどね」
―――――パーン!!!!!
あぁ・・ビンタ・・・
藤本さんキレてますよね・・・
藤本さんが両手で吉澤さんの顔を掴む
右手で頬を擦りながら左手をそのおでこに当てた
「それにさ・・・こんなに汗だくになってまで人を煽る必要がどこにあるの?w」
そう。
顔色こそ死人そのものなのだが、吉澤さんは先程から常に尋常じゃない量の汗をかき続けていた
「・・・」
吉澤さんが無言で唇を噛み締める
藤本さんが舌なめずりをした
「ひとみって素晴らしい名前だね。よっちゃんの目ってデカくて綺麗なだけじゃなくて覗き込めば何を考えてるのか手に取るようにわかるw」
その言葉に吉澤さんは目を逸らしたが、藤本さんによって強制的に戻された
「目は口ほどにものを言うって知ってるか? ふふっw 判るよw よっちゃんが何で自暴自棄になってるのか?w 本当は何を聞きたいのか?w」
藤本さんは満面の笑みを浮かべている
「『美貴の自我を徹底的に叩き潰すようにして美貴のことを陵辱したのに、なぜこいつは未だ理性を保ち、あたしに支配されないのか?』だろ?w」
吉澤さんが目を見開いた
その様子を見てまたもや藤本さんは笑い出した
- 298 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:19
-
ひとしきり笑い終えた後、藤本さんは吉澤さんに視線を戻す
「何か言いたい事はあるか?w」
「・・・・どうしてわかったっ!? 何がマズかった!?」
最早、吉澤さんには津川雅彦のモノマネをするのが精一杯だった
藤本さんはそのモノマネを当たり前のようにスルーすると吉澤さんの髪の毛を乱暴に掴んだ
「あともう一つ。よっちゃんは自分でマゾって言うけどさ、たま〜に美貴のアブノーマルな責めに対しては物凄い嫌な顔をするよね?お前本当にマゾか?w でもあれ・・・あの顔・・・美貴は物凄い好きだよw」
見る見る内に血の気の引いていく吉澤さんの顔を舐め上げると、藤本さんは吉澤さんの首にかかっているチョーカーを引きちぎった
「――ぐっ!」
痛む吉澤さんには目もくれず、藤本さんはそのままそのチョーカーを私に投げつける
――――ガゴッ!!
「うわぁあっ!!」
壁にめり込むかの勢いで私のすぐ横に投げつけられたチョーカー・・・
それを手繰り寄せると私は恐る恐る藤本さんの方を見下ろす・・・
「上行ってそれで手錠取って来い」
私にそう告げるとすぐに視線を吉澤さんに戻す藤本さん
賞味1秒ぐらいだったが私は藤本さんのその鬼の目に戦慄を覚えていた
こ れ は 逆 ら っ た ら 駄 目 。
これだけは確実に悟れた。いやマジで。
- 299 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:20
-
「さてと、」みたいな顔で藤本さんが吉澤さんに笑いかける
「・・・最後に教えて・・・・」
顔を最大限に強張らせた吉澤さんが藤本さんに訴えかけた
「・・・どうして・・・あたしの責めに・・・・・・・耐えれたの?」
両手で藤本さんの左手を掴み、そこに唇を押し当てて教えを乞う
藤本さんはじっとその光景を見つめ続けていたが、やがて左手を跳ね上げた
「徹しきれぬ者。それは弱き者―――。」
「定伊さんかよ・・・」
吉澤さんのツッコミを無視すると藤本さんは言葉を続ける
「自我を叩き潰すなら叩き潰す、陵辱するなら陵辱する、徹しきることだ。それが覚悟というものだ。優しすぎるんだよお前は。愛でてんじゃねーよ糞野郎w」
「・・・」
「・・・」
「・・・ははっw」
「・・・ふふふっw」
「はっはっはっはっはっwww」
「ふっふっふっふっふっwww」
二人が笑い出した
またしても常人には理解できない空間が広がる・・・
「wwwwwwなるほどねwwwっそれで?w あたしは?w 今から監禁されるの?ww」
「そうwwwwwwおめぇ馬鹿だからwwwwwww」
「wwwwwwwww」
「wwwwwwwwwwwwww」
- 300 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:20
-
「やだっっ!」
爆笑していた吉澤さんが急に叫んだ
その顔は目に涙を溜め、捨てられた仔犬のように怯えきっている
「・・・そんなのやだよ・・・や、やめてよ・・・・・美貴ちゃん?」
正直、誰の目から見ても今さらちゃん付けをしても遅かった・・・
藤本さんはまたしても吉澤さんの髪を乱暴に掴むと無理矢理窓の方に顔を向けさせる
「おら、見ろ。 よっちゃんが拝む最後の朝日だよ。綺麗だね〜」
そう言って愛想笑うとスクっと立ち上がり、吉澤さんのおデコにショウテイを喰らわせた
「んがっ!」という声を残して勢いよく後ろに倒れこむ吉澤さん
宙に浮いた吉澤さんの脚を掴むと藤本さんは部屋へと引きずり込みだした
吉澤さんは悲鳴を上げながらそれを拒む
うつ伏せに体を捻り、フローリングに爪を立て必死に無駄な抵抗を試みている
しかしそれは藤本さんに対して何の抵抗にもなっていなかった
自身の体を部屋に向けた藤本さんはさらに強大な力で吉澤さんを引きずり込んで行く
その時、私は引きずられていく吉澤さんとバッチリ目が合った
――――――――――――――――――――――
吉澤「ガキさんっ!!!!助けてぇっ!!!!!!」
私「はい、無理ぃぃぃーーーーーーー!!!」
――――――――――――――――――――――
すでに相手の言動の予測とそれに対するリアクションは出来上がっていた
吉澤さんが喋ると同時に「はい、無理」を被せようとタイミングを計る私
だが吉澤さんの口が私に対して声を発することはなかった
吉澤さんは悲鳴を上げながらしきりに「下」を、私に対して全力で「1F」を指差していた
- 301 名前:新垣、異次元の馴合いを目撃する 投稿日:2006/06/05(月) 23:21
-
- 302 名前:猿酉犬猪 投稿日:2006/06/05(月) 23:23
- 更新終了。
紺野小川が卒業してしまった・・・
レス返しをば
>>255-281
すいませんでした・・・
これだけレスを貰うと本当に嬉しいですし、同時に返す言葉もありません
言い訳はしないと決めたので言い訳はしません
そんなのは男の腐ったのがやることだと自覚してます
・・・本当に言い訳だけはしないと決めたんですが、FF12のせいなんです
ゲーム下手な自分に取って、やりこみ要素が多すぎた
あとこの時期のウイイレ10はやめられない
各カップ制覇とガッタス作るのに熱中して小説書けませんでした
まぁ色々と言い訳しましたが、放置だけはしませんので。
スレッド整理があった時の為に業務連絡スレだけは覗いてましたし・・・
今月は仕事とW杯と小説の三本柱で頑張ってまいります
今月中には第一部を終わらせたい
開始から一年以上経ってるのに作品中では一日経ってないってありえないですよね
マジですいません・・・マッタリとお付き合いください
- 303 名前:通りすがりの者 投稿日:2006/06/05(月) 23:57
- 更新お疲れ様です。
待ち侘びておりました。
。。。なんだか固唾を呑んで見守るガキさんの
心境が分かったような気がします(滝汗
次回更新マターリ待ってます。
- 304 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/06(火) 01:05
- お疲れ様です
半ば諦めてましたww
けどこれからも頑張ってください。待ってるんで!!!
- 305 名前:あお 投稿日:2006/06/07(水) 00:45
- お帰りなさい!
待ってました、この畳み掛ける様な笑いのセンス!心底嬉しいです。
- 306 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/10(土) 21:57
- うわぁぁぁwwwやばい!おもしろすぎるYO!
- 307 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/22(木) 20:07
- きてた!!!!!最高wwwwwww
- 308 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/07/07(金) 09:48
- 初めて呼んだけどマジ面白い
- 309 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/03(木) 22:27
- 激ヤバ!!wwこの二人はヤヴァイ!!wwww
- 310 名前:猿酉犬猪 投稿日:2006/08/15(火) 23:16
- 更新開始
- 311 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:17
-
吉澤さんの姿が部屋へと消えた
相変わらず悲鳴は聞こえていたものの、私は最後の吉澤さんの行動の意味を考えていた
私に「帰れ」ということだろうか?それは願ってもないことで、実際まぁ帰るわけだが・・・
吉澤さんが意味も無くそんなジェスチャーをとるとは思えなかった
また何か悪巧みでも・・と、恐る恐る1Fの方を覗き込んでみる
・・・しかしそこには薄暗い闇が広がっているだけだった
気になる・・・1Fに何かがあるのだろうか?なぜあのタイミングで吉澤さんは―――
「お〜〜〜〜〜〜〜〜ぃ」
ふいに声をかけられた私はハッとして声の方を振り返った
部屋の前に立つ、目を血走らせた藤本さんと目が合った・・・
私は手に握るチョーカーに目を落とす・・・うわぁぁ・・・忘れてた・・・
「お前さぁ・・・・・・・・日本語わかってる?」
「・・・はぁ?・・・はい・・・わかってます・・・」
耳をすませば、あれだけ叫んでいた吉澤さんの悲鳴がピタリと収まっていた・・・
吉澤さん・・・何をされたんだ・・・生きているのか・・・?
自然と大量の汗が噴き出してくる・・・
「・・・前から言おうと思ってたんだけどさ、行動遅ぇよお前。・・・・・・わざとか?」
藤本さんがこちら側に一歩踏み出してきた
次の瞬間、私は四段飛ばしで階段を駆け上がっていた
途中五段飛ばしでも上った
自己新だった
- 312 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:18
-
――――――ダン、ダン、ダン、ダン、ダン!
はぁ・・・はぁ・・・
瞬間的とはいえ自分のスペックを超えた運動をしたせいか息が上がっている
裏腿もちょっと吊ったっぽい・・・
3Fへ着いた私は少し脚を引きずっていた
藤本さんの部屋に入るとそのままベッドへと直行する
とりあえずダイブしようかと思ったが、何やらシーツの上にシミがあったので踏みとどまった
数分前にここで見た光景が思い出され、微妙に顔が赤面する・・・
頭の中に思わず浮かんできたその「絵」を振り払うと私はベッドに上がった
脚は吊ったこととは関係なく重かった
いや、脚だけではない。全身がダルい・・・
そのダルさの原因はわかっていた
病は気からとはよく言ったものだ
ダルさの原因、それは今すでに現在進行形で私を襲っている「絶望」だった
私はパイプに繋がれている手錠を外しながら頭の中で状況を整理していった
- 313 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:19
-
- 314 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:19
-
最悪だった・・・
最っっっっっっ悪だった・・・
何しに来たんだあの馬鹿(吉澤)は!
これが本当に練りに練った計画なのか?
い〜や、そんな訳が無い。そもそも出だしから最悪、めちゃくちゃだった
コンコンを抱き、矢口さんを抱き、亀を抱く・・・。
これらに何の必要性があったのか?
無いよ。ただ抱きたかったから抱いたんだろう。己の欲望のために。
んで、それによってブチ切れた肝心の藤本さんに対してはどうしたか?
拘束して詰って泣かせた・・・・・ここまでは素晴らしかった
藤本さんに対してこれだけの事ができるのは吉澤さんだけだろう
だが、その後どうしたか?
また抱いとんねん・・・欲望に駆られて。
拘束を解いて、慰めて、愛してのやりたい放題・・・
結局どうなったか?
藤本さん→復活。 吉澤さん→監禁。
馬鹿じゃん・・・ 逆に笑えてくる・・・
「救いようが無い馬鹿」 それが私が吉澤さんに下した査定評価だった
しかし、救いようが無い馬鹿は一匹ではない
むしろここまできたらもう一匹の馬鹿の存在の方が大問題だった・・・
こと異常性と危険性においては比べる余地もないだろう
藤本美貴の存在は私の生死に直接関わってくる・・・。
私は自分の置かれている立場を呪うと同時に目頭を押さえていた
- 315 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:20
-
これは希望的観測になるのだが、
吉澤さんを捕まえた今となっては藤本さんの頭から他の巻き込まれた人々の件は消え失せたはずである。
いや、そうであって欲しい・・・。
そうである事でマコっちゃんは救われる
マコっちゃんを巻き込んだ私としても少しは気が晴れるというものだ
考えてみればそれでこそ吉澤さんがここに来た意味があるということでもあり、吉澤さんも浮かばれるだろう
まぁあの人に他人を労わる心があればの話だが。
ともかくマコっちゃんを含めコンコン・矢口さん・亀と、何人かは救われるだろう
だが、私は違う・・・
私と他の巻き込まれた人間とでは決定的に立場が違っていた・・・
私は見てしまったのだ・・・
藤本さんが泣き叫びながら吉澤さんに抱かれるその一部始終を・・・
確かに本来藤本さんはセックスの際に限ってはマゾなのかもしれない
しかしそんな新事実は私には何の関係もなかった
なぜなら彼女の普段のスタンスは超ドSで確定しているのだから・・・。
「ヤバい・・・・・どうしよ・・・・・」
私は今しがた外し終えた手錠を見つめていた
これを藤本さんに渡す・・・「はい、お疲れさん。帰っていいよ」ってわけには行かないだろう・・・
むしろこの手錠は吉澤さんより私の手首にかかる可能性の方が高いのではないだろうか?
渡せない。普通には渡せない・・・
私は頭をかきむしりながら周りを見渡した
- 316 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:20
-
この状況を打破するモノ・・・
んなもん、あるわけがない・・・
いやあるはずだ。探せ・・・
ねーよwww
諦めるな里沙!!ある!・・・はずだ・・・
ねーっつーのwwwwwwwwwwwww
いや、ある!!!!!!!!絶対に・・・何かが―――
自問自答が発狂に達しようとしていたその時、私の目が銀色に光る物体を捕えた
「Yes.......... I found it.........」
ナイスな発音でそう呟くと、私はブツのグリップを握り締めた
- 317 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:21
-
- 318 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:21
-
藤本さんの部屋を出た
右ポケットには手錠、左のポケットにはチョーカーとその上から靴下を詰め込んでいる
裸足になった私のスニーキングミッションが開始されていた
ロウレディの射撃体勢をとりながら音を立てないように階段をゆっくりと降りていく
幸い、私の体重は軽い
階段が軋み、音を立てるようなことはなかったが心の臓がありえない爆音を放っていた
ヤるしかない・・・
撃つ・・・・私が撃つしかないんだ・・・
撃鉄を起こし・・・銃口を向け・・・引き金を弾く・・・
それだけだ・・・それで終了・・・あとは家に帰って旅に出よう・・・
そう自分に言い聞かせながら一歩また一歩と足を進めていく
しかし震える照準器越しに階段を降りていた私は、ふとした疑問に足を止めた
・・・ちょっと待てよ・・・ていうか、これ中身何入ってるんだ・・?
・・・こんなもん撃ったら私のがヤバくね・・・?せめて試し撃ちするべきだったんじゃ・・・
立ち尽くして考えていた私はハっとなりその場に這いつくばった
すでに2Fの扉が視界に入る寸前だった
今更もう後戻りは出来ない・・・いや、後戻りしても仕方がない・・・
意を決した私はそっと扉の方を覗き込んだ
―――2Fの部屋の前に藤本さんの姿はなかった
セーーーーーーーーーフ・・・
私は音も無く立ち上がると声を殺してため息をついた
- 319 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:22
-
そのままゆっくり、音を立てず、忍び足にも程がある忍び足で2Fへと降り立った私
相変わらず心臓の鼓動は工事現場の地均しのように体の中に響いている
だがその音の種類はド緊張から胸の高鳴りへと明らかに変化していた
イケる・・・
私は顔に笑顔が戻るこの懐かしい平和な感じに声を上げそうになっていた
銃を撃つ必要なんか無い・・・
素通りできる・・・キタコレ・・・
今私のすぐ目の前にある吉澤さんの部屋の扉は、来た時から蹴破られており開けっ放しだった
要するに廊下から中が、中から廊下が丸見えなわけである
とはいえ吉澤さんの部屋は広い
どうやら二人は部屋の奥にいるらしく、全く持って素通りに影響があるとは思えなかった
勿論、いまさら私に吉澤さんを助けるつもりなんてない
さよなら吉澤さんw 後はまぁ2人でよろしくやってくださいよw
少し回り道はしたものの、最終的に私の方は妥協できる「形」にはなりました
あなたは悪魔
悪魔の居場所は地獄です
まぁ今までに犯した罪を鬼の下で償えよ、とw
- 320 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:22
-
私はニヤける顔で部屋の方を見やる
ど〜れ、最後にどんな形で虐められてるのかだけでも見てやるかと―――
「赤でいい?」
―――――!?
突然の藤本さんの声に体が跳ね上がった
「―――って答えられねーかw」
・・・・・どうやら吉澤さんに言ったようだ
治まりかけていた動悸がまたもや爆音を上げ始める・・・
と同時に、吉澤さんがどうなっているのかを見てみようという好奇心が完全に吹き飛んでいた・・・
今の藤本さんの意味不明な独り言と、その言葉と共に漂って来たシンナーの臭いだけで十分だった
・・・うん・・・・・もうさっさとこの家から立ち去ろう・・・・・
私は慎重に行動を開始した
静かにコルトパイソンをパンツのお尻に突っ込むと、
目を部屋に向けたまま階段の手すりを手探りで掴む
次いで完璧な体重移動で体を1Fへと向けると足を今度は階段の方へと踏み出す
そして最後に顔を1Fへと向けた時、私は全てを台無しにする大声を張り上げそうになった
- 321 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:23
-
―――――――――――――!!!!!!!!!!!!!
なぜ?
1Fに私を手招きする人物がいる
逆の手では口元に人差し指を当て「しぃ〜〜〜〜〜〜」とやっているその人物・・・
「あ・・・・・・愛ちゃん・・・?」
声を出すこと無くそう呟いた私に彼女はより大きく手招きをする
間違いない・・・
いや、間違えるはずが無い・・・
どこからどう見ても高橋愛だった・・・
私は竦む脚を何とかコントロールしながら、静かに下へと降りていった
- 322 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:23
-
- 323 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:24
-
1Fへ着くと私は腕を引っ張られた
「ん」
とスリッパを進められた私は素直にそれを履く
「お疲れ」
そう言って私の肩をポンと叩き、家の奥へと歩いていく愛ちゃん
呆然としながらもその後について行っていた私は
丁度ダイニングへと差しかかったぐらいで正気を取り戻し、愛ちゃんの腕を掴んだ
「・・・何してんの?」
私の問いに え? という顔で振り向いた愛ちゃん
「何してんの?って・・・呼ばれたから来ただけやけど?」
「呼ばれたって誰に?」
「誰にって・・・・」
そこで愛ちゃんの目が一瞬泳いだ
漠然と脳裏に浮かびしは吉澤さんのジェスチャー・・・
嘘・・・でしょ・・・?
私は襲いくる眩暈に耐えながら口を開いた
「あ・・愛ちゃん・・・・・・まさか吉澤さんに―――」
「違うわ!!」
急に叫んだ愛ちゃんに 藤本さんが降りてくるだろが! という非難の目線を向ける
愛ちゃんはすまなさそうに口を押さえていた
「ごめん・・・違うんよ・・・よしざーさんは関係ない。・・・美貴ちゃんに・・・呼ばれて、ね」
そう言う愛ちゃんを見るものの、明らかにその目はキョドっている
「・・・藤本さんに何って言われて来たの?」
「いや〜・・・その・・・とりあえず来てって言われて・・・」
嘘臭い・・・こんな嘘臭い言い訳が通用すると思っているのだろうか・・・
私は愛ちゃんの肩を抱くとソファへと連行していった
- 324 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:25
-
愛ちゃんをソファに座らせると私はそのまん前にしゃがみ込んだ
と、愛ちゃんは慌てて脚を閉じ、股間を手で隠した
見れば愛ちゃんは必要以上に短いミニスカートを穿いている
かといってだ・・・私がスカートの中を覗き見るとでも思ったのだろうか?
・・・ぶっちゃけ、非情に気分が悪かった
あの人と一緒にするな!と怒鳴りつけたかったが、今は我慢した
「愛ちゃん?・・・何で、ここにいるの?」
私は愛ちゃんの目を覗き込みながらゆっくりと問いただした
「・・・」
無言で俯く愛ちゃん
この時点で藤本さんに呼ばれたってのが嘘だったと確信する
まぁ最初からわかってたけど。
質問に答えないばかりか顔を上げようとすらしない愛ちゃん
その左耳に変なコードのイアホンが付いているのを発見した私は質問を変えた
「それ何聞いてんの?」
「え?・・・あ、これ?これは・・・・」
「何かそれマトリックスみたい。エージェント・スミスじゃん。 いいねぇそれ―――」
そう言うか否や、私はそのイアホンをひったくった
愛ちゃんは慌てて抵抗を示したが私は力ずくでそれを制し、すでにイアホンを耳に突っ込んでいた
- 325 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:25
-
『―――地獄の闇から光に至る道は長く、そして険しい』
私は・・・耳を疑った・・・
『ミルトンの失楽園の一節だ。よっちゃん読んだことある?』
イアホンを通して私の耳に聴こえてきたその声
それは聞き間違えようも無かった・・・
完全に藤本美貴の声だった・・・
しかも会話から察するにこれは今現在をLive中継している・・・
「愛ちゃん・・・? どういうことか、説明して貰おうか?」
私が目だけでそう訴える
頭を抱えた愛ちゃんはため息を漏らした
「・・・よしざーさんのベルトのバックルに盗聴器が付いてるんやよ」
しぶしぶと愛ちゃんが説明を始めた
「それを何で愛ちゃんが聴いてるの?」
私も遠慮なく疑問をぶつける
「バックアップ」
「バックアップ?」
「そういう命令」
「そういう命令って・・・・・何で愛ちゃんが命令を聞く立場にあるの?」
「それは・・・」
- 326 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:26
-
私が知りうる限り、この高橋愛という人物は「異質」だった
本人自身が相当な変わり者だということと共に、周りからも一目置かれていた
とりあえず私の周りでは悪魔や鬼に対して臆する無くまともに会話が出来る唯一の人間であった
そのことを本人が理解しているのかしていないのかは置いといて、
愛ちゃんは2人に対して、決して第三者的な中立の立場を崩すことはなかった
どっちにも付かず離れず穏便に。
その愛ちゃんがなぜ片方の、吉澤さんの肩を持ち藤本さんを突き落とすような行為に走るのか?
やはり、私が目撃した吉澤さんが愛ちゃんのケツを揉みし抱いていた事と関係があるのだろうか?
それなら私は絶対に吉澤さんを許さないわけだが・・・
「・・・・・・・・。」
愛ちゃんは答えなかった
俯いたまま顔を上げようとすらしない
「ま、いっか! もうそんなことどうでもいい! ね!?」
愛ちゃんの沈黙の意を汲んだ私は論調を変えるべく笑顔を浮かべた
いや・・・違う・・・
正直、私は怖かった・・・
吉澤さんに何かをされ・・・まさか愛ちゃんは・・・吉澤さんに惹かれているのでは?と・・・
それはごめんなさい・・・・それは駄目です・・・それは立ち直れない・・・・いやマジで・・・
「も、もうそんなこと私達には関係ないじゃん!あ!メール見てくれた?今から遊ぼうよ?」
そう言うと私は勢いよく立ち上がった
- 327 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:27
-
・・・・が、愛ちゃんは立ち上がらない
依然として俯いたままソファに深く腰を下ろしている
「どーしたの?何?」
ちょっと半ギレ気味に私が問い掛けると、愛ちゃんはゆっくりと顔を上げた
「あーしは行けん・・・」
「・・・何でよ?」
「あーしには・・・まだやることがあるんやよ・・・」
「やることって何?」
「・・・・。」
またダンマリか・・・
答えない愛ちゃんに質問を変えた
「ここへは?一人で来たの?」
愛ちゃんはキョロキョロと辺りを注意深く見回してからポツリと呟いた
「ごとーさんと」
「ご、後藤さん!!?」
「おまっ!!ガキぃ!!声デカいわっ!!」
・・・お前の方がうるせーよと思いながらも軽く謝り、会話を続ける
「・・・後藤さんなんかどこにいんのよ?」
「帰った・・・さっきまでいたんやけど・・・」
辺りを見渡すもののそれらしき人影は無かった
「ていうか、何で後藤さんが?」
愛ちゃんは無言で立ち上がる
「・・・あの人は・・・よしざーさんの参謀・・・黒幕やよ」
そう言うとキッチンの方へと歩き出した
- 328 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:27
-
愛ちゃんは冷蔵庫を開けると麦茶を取り出す
「ねぇ、それどういう事よ?黒幕って・・・」
その問いには答えず「飲む?」と聞いてきたので遠慮した
愛ちゃんはグラスを1つだけ用意するとそこに麦茶を注いでいく
そこでウエストポーチをから何やら小瓶を取り出し、中の液体をグラスの中に数滴垂らしていった
「ちょ、何それ?」
「睡眠薬。後藤さん調合の特製品。液体状のやつやから即効性が凄いんよ」
私の質問に淡々と答えながらお箸で麦茶を掻き混ぜ出した
―――チン!チン!
「これを美貴ちゃんに飲ませるのがあーしの役目・・・」
箸でグラスを叩き、そう呟くと愛ちゃんは大きく溜め息を付いた
「ねぇ・・・・もう一回聞くけど、何で愛ちゃんがそんな役目を仰せつかってるわけ?」
「言いたくない」
私の質問に食い気味にそう答えると、愛ちゃんはグラスをお盆に乗せた
「ガキさんは帰りなよ。大丈夫だよ」
そう言って私を一瞥すると愛ちゃんはお盆を運び出した
私は反射的にその肩を掴む
- 329 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:28
-
「危なっ・・・何?」
中身の揺れるグラスを掴んだ愛ちゃんが私を睨む
「言いたくないなら聞かない。私も愛ちゃんが言いたくない事を聞きたくはないからね。
けどこれだけは答えて」
私の真剣な眼差しに、愛ちゃんは気圧され気味に私の目を覗き込んでいた
「吉澤さんの事どう思う?」
愛ちゃんの顔が真っ赤になった
私が「うそ〜ん・・・・」と言いかけた瞬間、愛ちゃんは口を開いた
「最低やと思う」
愛ちゃんの顔は真っ赤だった
だが、その口調ははっきりと断言していた
私の耳にはその声の響きから軽蔑の念が聞いて取れた
と同時にその赤面が怒りからくるものだと私は解釈した
瞬時にして、そう思い込んだ
私にはそれだけで十分だった
- 330 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:28
-
私は愛ちゃんからお盆とグラスを取り上げる
「ちょ、ちょっと何っ?」
「私が持っていく」
「はぁ?何言ってんの?」
「藤本さんに飲ませりゃいいんでしょ?なら私の方が適任だよ。愛ちゃんが出て行くのはどう考えてもおかしい。藤本さんも警戒するよ?」
「そりゃ・・・そうかもしれんけど・・・危ないよ。任せられんて・・・」
そう言って譲らない愛ちゃんに私は笑顔を返した
「大人しくここにいてよ。すぐに戻ってくる。これさえ飲ませりゃ愛ちゃんはそれで自由なんでしょ?」
「・・・・・・・そりゃまぁ・・・」
「そのスカート短いね。パンツ見えそう」
私の言葉に愛ちゃんがスカートの裾を押さえた
その隙をついて私が足早に階段の方へと歩き出す
慌てて追いかけてきた愛ちゃんは何か言おうと口を開いたが、私は「しっ!」と言って上を指差した
「大丈夫だよ。私はあの人の扱いに慣れてる。確認するけど、後藤さんはもう帰ったんだよね?」
「・・・うん・・・・・ごとーさんは・・・・基本的に人前に出て直接手を下すようなことはしない・・・」
私は階段を上り出した
「・・・ガキさ・・・・・里沙ちゃん・・・・・ゴメンね」
愛ちゃんの小さな囁きが聞こえた
その声は微かに震えているように思えた
「そのスカート・・・可愛いよ。それでどっか遊びに行こう」
愛ちゃんの方を見ずにそう返すと、私は2Fへと足を進めた
- 331 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:29
-
- 332 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:29
-
格好はつけた
正直、自分で言うのも何だがビッシィィィィッと決まった
愛ちゃんの中で私に対する評価は完全に最高値にまで上がっているはずである
だが、吉澤さんの部屋に近づくにつれて私の中には後悔の念だけがやたらと膨らみまくっていた
何で代わってしまったんだろう・・・・
超怖ぇ・・・・・・
今から会う藤本さん超怖ぇ・・・・・・・
手錠を取って来いと命令されてから明らかに時間が起ち過ぎていた・・・
最早どんな言い訳も通用しないだろう・・・
「喉乾いてると思ったんで、お茶持ってきました」に賭けるしかない・・・
怒らせない望み薄っ・・・
振り返れば愛ちゃんが私を見守っているだろう
ビビって足を止めたと思われるわけにはいかない私は、ついに最後の階段を上り終えてしまった
今更悩んでも仕方が無い・・・
飲ませりゃそれで終わる・・・
「液体状だから即効性が凄いんよ」愛ちゃんのその言葉だけが私の支えだった
ゆっくりと部屋の前まで来たが話し声は聴こえない
なぜか部屋は静まり返っている・・・
私はポケットから手錠を2つ取り出すとグラスの横に添えた
そこで大きく深呼吸をすると、私は覚悟を決めて部屋へと足を踏み入れた
- 333 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:30
-
「す、すいませ〜ん!!!遅くなりま・・・」
「遅っっせーよ!!!」
怒鳴られた・・・
しかし私は謝らなかった
いや、謝れなかったというべきだろう・・・
私の目に飛び込んできた光景
それはまともに会話を成立させるには少々突っ込みどころが多すぎた・・・
まず、吉澤さん
上半身裸でジーンズを穿いている。格好自体は変わってはいない
しかしその両手は荒縄で後ろ手に縛られ、両足もぐるぐる巻きにされていた
口にはボールギャグを詰められ、身体全体を「くの字」に折り曲げてベッドの上に転がっている
これもう死んでるかもしれない
だって動いてないんだもの・・・
- 334 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:30
-
はい次、藤本さん
ヤバイ。まじでヤバイよ、マジヤバイ。
藤本ヤバイ。
まず黒のレザーのボンテージみたいなの着てる。もうエロいなんてもんじゃない。超卑猥。
物凄いハイレグ。しかもアメリカンポリスみたいな帽子被ってるし、部屋の中なのにヒール履いてる
腰にトンファーみたいなのブラ下がってるし凄い。ヤバイ。殺される。
けどまだそんなの全然序の口。
極めつけ。はい、股間。見てみアレ・・・
何か付いてる・・・・・・。男性器的なモノが。
多分ペニバンとかいうやつ。黒光りしてる・・・
無理無理。直視できないから。
で、そんな格好でこっちに歩いてくる
怖い怖い・・。泣きそう・・・
手に持ったハケからペンキを滴らせながらこっちに近づいてくる
あ、ハケからペンキが垂れてるのに気付いて戻っていく
うわぁ・・・Tバック・・・・後ろ姿ほとんどケツ丸出し・・・
- 335 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:31
-
とにかく、卒倒しそうな光景が広がっていた・・・
部屋もおかしかった
入った瞬間から気付いていたのだが、奥の壁には赤のペンキで『SLOTH』と殴り書かれている
異様なペイントだったが存在する人間含め部屋全体が異様だった為、逆に絶妙だった
他にもまだまだ・・・
ベッドの周りには小瓶やらポラロイドやらと、こまごまとした道具が散乱している
お盆を片手で持ち、使用目的のよくわからない「器具」を拾ってはそれを眺めていた私は
「勝手に触んなよ」
無音で接近していた藤本さんに真横から声をかけられ、ヒィという悲鳴と共に器具を落とした
「おう、手錠取ってきたか」
そう言う藤本さんは笑っていた
・・・なぜか上機嫌だった。変に。
しかし上機嫌な事にこしたことはない
「ぁの・・・お、お茶!入れてきました!喉乾いてると思ったんで・・・」
藤本さんは私の言葉を無視して手錠を鷲掴むと、それを起用に両手で回転させ始めた
- 336 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:32
-
―――シュンシュンシュンシュン
笑顔で、まるで値踏みするかのようにして私の顔を窺う藤本さん・・・
マズい・・・
このままここで手錠をかけられる訳には行かない・・・
最後の手段として考えていたコルトパイソンを抜くことすらできなくなる・・・
何とかして話題を変えようと脳を高速回転させる私の目に、壁に施されたペイントが飛び込んできた
「あれ!!・・・あれ、何ですか?・・す、スロース?あれ・・・藤本さんが書いたんすよね?」
「あぁ?・・・あぁ〜・・・怠惰」
興味なさげにそう呟いた藤本さんが私の腕を掴んだ
「ど、ど、ど、ど、どういう意味っすか!?」
テンパりながら私が話へと注意をそらす
「言葉の意味なんかどうでもいいんだよ。セブンって映画観た事ないか?」
「な、な、な、な、無いっす!!ど、ど、ど、ど、どういう映画っすか!?」
「さっきからうるせーな・・・清画伯かてめぇコラ」
情け容赦の無い藤本さんの言葉が響いた直後、ガシャーンと私の左腕に手錠がかかっていた・・・
- 337 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:32
-
「な、な、な、な、何を!?」
そう叫んでお盆を持つ右手をできるだけ藤本さんから遠ざける
糞ったれめが! やっぱり私は許されてはいなかったか・・・
しかしこんな所で人生を終えるわけにはいかない
お盆をたたきつけてその隙にパイソンを抜こうと思いついた時、急に藤本さんの動きが止まった
「今から・・・こいつを裸に剥くんだが・・・」
藤本さんが吉澤さんを顎で指した
「グルグル巻きにしたからさ、一人では少々骨が折れるんだよね。途中反抗されても鬱陶しいし」
私はじっと藤本さんの目を見つめていた
「その作業を手伝う意思はあるか?」
「あります!」
私は当たり前のように叫んでいた
前も吉澤さんとこういうシーンあったなと思いながらも、目の前での裏切りには何の後悔もなかった
「良し」
そう言った藤本さんはグラスを取り、麦茶を飲み始めた
- 338 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:33
-
はいキタ・・・
飲んだ・・・
はいキタコレ・・・
神は存在した・・・
悪魔が存在するんだ・・・神が存在しないわけがない
今、私は完全に神を信じていた。ていうかもう神の子だろこの奇跡・・・
この瞬間からでも新垣"KID"里沙を名乗ろうじゃないか、と・・・
私は全身を使ってガッツポーズを取りたい衝動に駆られたが、全身全霊を込めてそれに耐えていた
藤本さんは2/3を飲み干すと、
―――ドン!と勢いよくグラスをお盆に叩きつける
「おし!やんぞ」
そう言った藤本さんはベッドに上がり吉澤さんの上に跨った
- 339 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:33
-
「机の上にある荒縄取れ。あとその引き出しにカッターがあるからそれも持ってこい。」
「はいっ!」
私は軽快に返事をする
後は時間の経過を見守るだけ。時間が来れば藤本さんは勝手にオちる
やるべき事をやった充実感が私に素直さをもたらしていた
「テキパキ動けよ?美貴を拘束した時みたいにな」
「・・・」
返事を返せなかった・・・
聞こえなかったフリをした・・・
そのまま、必要以上に派手な音を立てながら作業を急ぐ
机の上に用意した荒縄とカッターを掴むと、私は満面の笑みを浮かべて藤本さんを振り返った
「!」
・・・?
・・・私の目に飛び込んできたのは藤本さんのマヌケ面だった
- 340 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:34
-
「藤本・・・さん・・・?」
呼びかけたものの返事はない
ポケーっとして吉澤さんの上に座り込んでいる・・・。
薬が効いているのか?
だとすれば素晴らしい即効性だ・・・これは後藤さんに感謝だな・・・
などと思いながら藤本さんに近づく
「藤本さん!」
再度そう言って目の前に荒縄とカッターを差し出す
藤本さんは返事もせずにそれを受け取った
「怠惰ってのはね・・・」
「は?」
「何らかの対象に対する圧倒的な欲望を持ちながらも、その対象に辿り着く道を持たない絶望ということだという・・・」
急に語り出した藤本さん
全く意味がわからなかった私はその目線を追う
藤本さんは自分が書いた『SLOTH』というペイントを見つめていた
「だからこれはよっちゃんに対しての言葉じゃない。よっちゃんはその対象に辿り着く道を選ばないからね。この場合は・・・ふぁぁぁ〜・・・どっちかっふぅーと美貴へほ戒めみふぁいなもんかな」
欠伸を交えながら藤本さんが続ける
「へーそうなんですか」
適当に返した返事とは裏腹に、私は小躍りしたい衝動に駆られていた
効いてる・・・
確実に薬が効いている・・・
「まぁこれは映画の1シーンの再現だからね。監禁っぷりにインスパイヤされた。美貴がジョン・ドー、よっちゃんがリクターならそれでいいんだよ」
そう言った藤本さんは腰をあげ、吉澤さんをうつ伏せにする
「腕を押さえろ。まずは手錠でベッドに拘束する」
私が吉澤さんの腕を押さえると、藤本さんはその後ろ手に縛ってある縄にカッターを構えた
- 341 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:34
-
- 342 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:35
-
これは駄目だ・・・
私はおデコにポツポツと汗の塊が浮き出てくるのが感覚された
危なすぎる・・・
今まさに薬が効ききろうとしている藤本さんの手が、あり得ないほどに震えている
小型の座敷犬のようだ・・・
「・・・・・すっごい眠いんだけど・・・」
「だ、大丈夫ですか?・・・何か物凄い震えてますけど?」
藤本さんのプルプルが止まらない・・・
明らかに、カッターを切り込む場所を定めることすら出来ていなかった
さすがに危険すぎる・・・
場所が場所だけに吉澤さんへのリストカットになる可能性が・・・
「代わりましょうか?」と口を開いた次の瞬間、私の延髄に激痛が走った
「 て め ぇ 、 何 か 入 れ た な ? 」
藤本さんの左手が私の襟首を掴んで引きつけていた
- 343 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:36
-
「な、何ですか!!!?」
私は叫びながら藤本さんの右手を掴んだ
藤本さんの右手にはカッターが握られている
何もこのタイミングで・・・
「てめぇ・・・ふざけんなよ・・・・・?」
目を血走らせ、顔を引きつらせた藤本さんが私を睨む・・・
相当な眠気なのだろう、片方の目はほぼ閉じかけていた
「何のことですか!?私、知りませんよ!!!!!」
必死にシラをきり通す私
だが、お茶を飲んだ途端に襲ってきた強烈な睡魔・・・
ぶっちゃけバレバレだった・・・
お茶を用意した人間など私しかいない
しかしここで潔く認めて、藤本さんに火事場の糞力を出されても困る
現に藤本さんの力は弱まってきているのだから
「ぶっ殺す!!!!!!」
最早藤本さんの顔を直視することはできなかった
知らぬ存ぜぬを貫き通し、必死に藤本さんと格闘する私
もう少し・・・
もう少しで藤本さんはオちるはずなんだ・・・
あと、もう少しで―――――
「ヒッヒッヒッヒッヒ・・・」
突然、部屋に乾いた笑い声が響いた
- 344 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:36
-
私と藤本さんが一斉に声の方向に顔を向ける
うつ伏せ状態の吉澤さんが顔だけをこちらを向け目を見開いて笑っていた
―――――!!
この馬鹿が・・・
吉澤さんが私に対してヤレとでもいうように藤本さんに顎をシャクル・・・
「また、おめぇぇかぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」
藤本さんの咆哮が轟いた
藤本さんの攻撃対象が完全に吉澤さんに移った
私は全力で藤本さんを止めにかかった
これは確実に刺す・・・
放っておくと確実に刺殺体が出る・・・
後ろから覆い被さって藤本さんを羽交い絞めにする私
吉澤さんに暴言を浴びせながら猛然と私を振りほどこうとする藤本さん
完全にビビって泣きそうになっている吉澤さん
最後のアホは放っておくとして、
どちらかの体力が尽きるまで続くかと思われた私たちの争い、その決着は意外にも早く訪れた
- 345 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:37
-
突然、藤本さんの全身が脱力した
藤本さんは頭からつんのめってベッドへと倒れていった
私は急いで藤本さんの右手からナイフを外すと、傍に落ちていた手錠で後ろ手に拘束する
藤本さんは倒れたまま丁度真横にある吉澤さんの顔を睨んでいた
「おのれ・・・」
そう搾り出すように声を発した藤本さん
その目には涙がたまっているように見えた
それを眺める吉澤さんの目はランランと輝きを増していた
「・・・・・」
その目に吸い込まれるように、藤本さんは目を閉じた
- 346 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:37
-
- 347 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:38
-
はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・
私は床に座り込んだ
ヤバかった・・・・・今のはヤバかった・・・・・
だが、耐えたぞ・・・すべてが終わった・・・
肩を上下させ息を整えていると、ギシギシとベッドの上から音が聞こえてくる
音の方向を見やると縛られたままの吉澤さんが自力で体を仰向けにしていた
いや・・・まだ終わっていない・・・
最後の仕上げが残っている・・・
私は一呼吸置くと立ち上がり、吉澤さんの元へと近づいていった
- 348 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:39
-
私は吉澤さんの頭に手を回すと口に噛まされているボールギャグを取ってやる
「ぶはぁっっっ!!」
後ろの留め金を外すと吉澤さんが首を振りながらそれを吐き飛ばした
「あああああーーーーーー苦しかった・・・」
そう言ってしばらく口をパクパクさせていた吉澤さん
私の方を振り向くと笑顔で話し掛けてきた
「ありがとガキさん!助かったよ!さすが持つべきものは有能な相棒だな!」
私は答えなかった
無言で吉澤さんに背を向けて机へと向かい、お盆の上にあるお茶の入ったグラスを取った
「お茶に睡眠薬を入れたの?いやぁ〜考えたねぇ〜」
私はベッドの下にグラスを置くと、吉澤さんの上に跨った
「ちょw・・・・重いってw・・・・・・何?」
私はポケットからチョーカーを取り出すと自分の左腕にかかっている手錠を外した
その手錠を吉澤さんの左腕に嵌めると、片一方を横で寝ている藤本さん腕に嵌める
「ちょwwwwwwwwww 何してんの???w」
最初は冗談だと思ってふざけていた吉澤さんも私の顔を見て笑うのをやめた
「ガキさん・・・?」
「もうね、ウンザリなんですよ」
「・・・へ?」
「あとは2人でどうぞ。これはあなた方2人の問題でしょ?2人っきりで決着をつけてください」
そう言った私はグラスを吉澤さんの顔の前に掲げた
- 349 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:39
-
「あの・・・ガキさん?・・・どしたの?・・・ものっそ雰囲気変わってるんですけど・・」
「そうですか?」
言いながらグラスを吉澤さんに近づける
「ちょ、えっ?・・・それ飲ますんですか?・・あのあたし眠りたくないんですけど・・・」
丁寧語で話しだした吉澤さんに対して私は返事の代わりに冷笑を返してやった
「ど、同盟っ!ウチら組んでるだろ!?パートナーを見殺しにする気か!?」
叫んだ吉澤さん
そのあまりの見当違いっぷりに私の口元から歯がこぼれた
「何言ってんですか?吉澤さん、私にはあなたのパートナーになったつもりなんかありませんよ?w」
「・・・・・・。」
「いやじゃあ百歩譲ってパートナーだったとしましょう。でも今で解消ですw さようならw」
今まで様々な色に変わり、周りを混乱に落としめてきた吉澤さんの瞳
その目が今は点になっていた
「これは「元」相棒としての最後の優しさですよ。睡眠不足でしょう?寝てください。
これからが大変なんですからw 今は体を休めてくださいよ。続きは起きてからお2人でw」
私は吉澤さんの首に手を回すと飲ませやすいようにと頭を持ち上げる
「それが・・・ガキさんの進むべき道なんだな?」
- 350 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:40
-
吉澤さんの目を見た私に寒気が走った
先程まで点だったその目が、今は完全に感情を取り戻している・・・
今朝、我が家で体験したあの忌々しい記憶が鮮明に蘇ってきた・・・
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「これからも進むべき道を見誤るなよ?ここに来ての踏み外しはガキさんだけじゃなく、
ガキさんの大切な人まで不幸にしてしまうかもしれないやよ?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
くしくも、この場に高橋愛というピースは揃っていた・・・
しかし私は吉澤さんから目を逸らさなかった
私には確信があった
目の前の悪魔が全くの無力であるということに。
どの観点から観ても、私に対して何かができる状況にない
そしてここで吉澤ひとみを眠らせれば私と高橋愛は自由になる
それは確実だった
起きてから吉澤ひとみと藤本美貴がどうなろうが知ったことではない
2人がいるこの家に近づかなければいいだけなのだから!
「いいですか?吉澤さん・・・・・私達はあんたらの玩具じゃないっ!!!!!!」
吉澤さんを見据えて、吉澤さんに対して、はっきりと言い切ってやった
はりきりすぎて唾が飛んだが謝らなかった
「成長したんだね・・・嬉しいよ・・・」
吉澤さんは優しく笑うと目を閉じた
- 351 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:41
-
のも、つかの間だった
「ごっ、ごっちーーーーん!!!」
突然、目を見開いた吉澤さんが叫んだ
「来てーーーっ!!ヤバいヤバい!!助けてー!!!ごっちん、早く来てぇぇぇ!!!!」
ドアの方に向かって1Fへ届くような大声で叫んでいる
こ、こいつ・・・全然成長してねぇ・・・・
私は呆れ果てた目で吉澤さんを見つめていた
「後藤さんなら帰りましたよ」
「えぇぇ!?」
マジかよ?という顔で私を振り返った吉澤さんに、冷たく流し目を返してやった
「吉澤さんならわかってるでしょ?あの人は基本的に自ら進んで物事に関わってくるタイプじゃない」
「おぉ!? ・・・知った風に語るねぇ」
私はそこで引かず、愛ちゃんからの受け売りの後藤論を続ける
「後藤さん本人が言ってましたから。あと、全て聞きましたよ。
このベルトのバックルに盗聴器が仕込んでるんですってね?」
そう言いながらベルトを指でコツコツと突っつく
「よく考えつくもんですねこういうの。ともかく――――――」
「ごっちん、一人だった?」
「一人でしたよ」
突然の切り返しに、私はドキドキを悟られないように即答で嘘を返していた
- 352 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:41
-
もしかしたら、
吉澤さんはここに後藤さんと一緒に愛ちゃんが来ていることを知っているのかもしれない
私のこの嘘は無意味なのかもしれない
だが、そんな事はどうでもよかった
この場で愛ちゃんの名前を出したくなかった
「へぇ〜・・・・で、ごっちん帰ったの? マジで?」
「えぇ。マジで。私に睡眠薬入りのお茶を渡すと「おまめ、後は頼んだ」とか何とか言って
そそくさと帰っていきましたよ。何か急ぎの用でもあったんじゃないですかね?」
よくここまでポンポンと嘘が飛び出すものだ
私は自分のスキルアップに感動していた
「―――んなことよりも、さぁ!!早く飲んでください!!!」
突っ込まれたくない私は吉澤さんに反論を許さず急かしていた
吉澤さんが口を開こうとするたびに「飲んでください!」と言ってグラスを近づける
うわぁ・・・完全にスキルアップしてるわ私・・・自然と体が行動するもんだなぁ・・・
「わかったよ・・・飲もう」
突然、場の空気が変わった
吉澤さんは意外にも素直に従ってきた
「確かに。ガキさんのいう通りだよ。これはあたしと美貴の問題だわ・・・」
吉澤さんは急に湿っぽくなって続ける
「皆を巻き込むのは絶対に間違いだった・・・・・本当に・・・本当に・・・ごめんね・・・?」
「・・・・・・。」
俯き、声を震わせる吉澤さん
同情でも引こうとしているのだろうか?
だが、そんな事で同情がひけるほど私の怒りは浅くは無い
それどころか、マジかよこいつ・・・その手使うの何度目だよお前・・・という憤りすら覚えていた
「皆にも謝っといて・・・・」という吉澤さんの言葉を打ち消すような形でその唇にグラスを押し当てる
- 353 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:42
-
「あーーーーーーーっ!!!思い出したっ!!!!!!」
「チッ!」
唇にグラスが当たった瞬間にそう叫び、顔を直角に背けた吉澤さん
私はお茶をこぼさないように必死でグラスを持ち直していた
そしてその瞬間、私は完全に舌打ちをならしていた
こいつ・・・やっぱ素直に飲む気はねーのかよ・・・
半ギレでその頭を固定しにかかった私を制するように、吉澤さんは私に問い掛けてきた
「プレゼントだよ!プレゼント!」
「・・・・・はぁ?」
私は眉毛を釣り上げる
「さっき言ってたでしょ?何かガキさんに忘れてることがあるって」
「・・・・・・・あぁ・・・・・・3Fで?」
確かに言っていた
さっさと立ち去りたかったのを覚えている
「うん!そう!それ!―――――ガキさん憶えてる?」
「はぃ?」
「あたしここに来る前に電話したでしょ?その時ガキさんにプレゼントを持って行くって言ったよね?」
思い出してみる・・・
う〜む・・言ってたような・・うん?・・・うん・・・そういえば・・・
「・・・確かに。そんなこと言ってたような気もしますね。けどもういいですよ別にそんなの」
「あるんだわここに。」
その吉澤さんの声のトーンは悪魔色へと変わっていた
- 354 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:43
-
「あたし動けないからさ、ちょっと取ってくれる?右のポケットに入ってるんだけど」
何だか知らないが、とてつもなく嫌な予感がした・・・
チラリと吉澤さんの顔を見る
藤本さんとは正反対の静かな、だが決して反論を許さない目がギラギラと輝いている・・・
私はしぶしぶとグラスを持ち替え、左手を吉澤さんのポケットへ伸ばす
不安からか、私の手は明らかに震えていた・・・
「いやいやだからプレゼントだって。何でビビってんのよ?w」
吉澤さんが笑いながら声をかけてくる
あんたが私に真っ当なプレゼントをくれるわけないだろうが・・・
そう思いながらも私は無言でポケットに指を添えた
もう一度吉澤さんの方を見る
「大丈夫。噛んだりはしないよw」
私は全神経を指先に集中させた
指先から伝わってくるジーンズの裏地の感触を確かめながら、指を奥へと突っ込んでいった
―――――ピクッ
出し抜けに、腕の筋肉が反応した
私の指先が『それ』を探り当てていた
確かに生き物ではない・・・
そして硬いものでもなかった・・・
何か布のようなもの・・・
ただ明らかに、ジーンズの裏地とは素材感が違う・・・
「そ。『それ』」
吉澤さんが飛びっきりの笑顔を浮かべる
私はその顔を一睨みすると指先で『それ』を挟み、ゆっくりと引っ張り上げていった
- 355 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:43
-
第二関節、第一関節と私の指がポケットから出てくる
と、徐々に『それ』が姿を現してきた
私の指に絡み取られている『それ』・・・
『それ』は黒かった・・・
黒い・・・・・何これ?・・・・・・・下着?・・・・パンツ・・・・?
「・・・何ですかこれは?」
「見たことないか?それはパンティと言ってね、女性が身に付ける下着だよ。まぁ見てもらったらわかるんだけどそれ相当派手でしょ?もうパンティっていうかスキャンティ―――」
私は『それ』を勢いよく吉澤さんの胸元に投げ捨てた
「見たことありますよ。何やったら今穿いとるわ!それがどうしたのかを聞いてるんです!」
「もう一度聞くけど、ガキさんはこれを見たことがないのか?」
「だから・・・・・・もういいです。・・・はい、もう飲んでください」
私はグラスを吉澤さんに近づける
「それが誰のか、わかんないのか?」
吉澤さんの、その言い回しが少し引っかかった
「・・・誰のです?」
「下にいただろ?ノーパンの天使が」
私は今、目の前に、はっきりと悪魔を確認した
- 356 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:44
-
頭が真っ白になる
思考能力が明らかに消え失せていた
何?
・・・・こいつは今・・・・何って言ったんだ?
「ご・・・後藤さんの?・・・パンツ?」
気力を振り絞り、最後の希望にすがるような思いで問いかけた
だが悪魔は楽しそうに首を振る
「いやいやいや。ごっちんはシルク。シルクの白。それ以外穿かない。いやマジで」
どうでもいい情報が返ってきた・・・
何も考えることのできない私は焦点の定まらない目で悪魔を見る
「電話かけてきた時さ、あたし息荒かったでしょ?そん時その・・・まぁ最中でね・・・」
「・・・後藤さんの家に・・・いたはずじゃ・・?」
「ごっちんの家でヤった。それだけの話だが?」
「・・・少し黙ってもらえますか?」
「えぇ?何、聞きたくねーの?可愛かったよ『愛ちゃん』」
――――――プッ
私の中で何かが切れる音がした
「ああいう優等生タイプに限って派手なパンツを好む。見てよこの黒のレースw 正直ビビったねw」
「聞こえてますか?
私は頼むから そ れ 以 上 喋 っ て く れ る な と言ってるんですがね!?」
叫びながら右手を後ろに回し、お尻に挿していたコルトパイソンのグリップを握った
- 357 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:45
-
――――――――!!!
瞬間、膝がガクッと抜けた
ドン!と膝をついた私はベッドに顔を押さえつけられる
お尻からパイソンが引き抜かれるのを感じた
と同時にグラスを取り上げられ、ガシャン!と私は後ろ手に手錠をかけられた
「ヒーローは遅れて現れる!それがメキシコ式!」
すぐ後ろで聞き覚えのある声が響いた
最後の力を振り絞って全力で後ろを振り向いた私の目に、派手な目出し帽が飛び込んできた
目出し帽・・・いや、マスクマン・・・
この耐えがたい悲劇の中で一つだけ救いがあったとすれば、
それはこのマスクマンの中の人が高橋愛ではないということだろう
それだけだった
私はこの中の人物を知っている
「ミル・マスカラスっ!!!」
悪魔が嬉しそうに叫んだ
「違うよ、よしこ。私はドクトルワグナーJrだ」
そう言った後藤真希は私の脚にも手錠を嵌めると、ベッドの悪魔の解放に向かった
- 358 名前:第三の餌食と新垣とバラクラバ 投稿日:2006/08/15(火) 23:45
-
- 359 名前:猿酉犬猪 投稿日:2006/08/15(火) 23:47
- 更新終了。
また誓いを破ったわけですが、もう言い訳はしませんw
すいませんと一言だけ
ただコツコツとは書いてました
良い切りどころが見つからなくて長々と・・・
まだ思いっきり1部ですね
ていうか、1部・2部っていうくくりをやめました
とりあえずガキさん編は終了かな
これから終盤にかけて悪魔が悪魔の本性を剥き出しにします
吉澤さんを恨むのではなく、ジーコジャパンの弱さを恨んでください・・・
あの体たらくは本格的にヘコんだ・・・そして構想が少し変わりましたw
あとずっと里沙を理沙って書いてましたね
久しぶりにこのスレッドを読み返した時に気付きました
名前を間違えるとは本当に申し訳ない
- 360 名前:猿酉犬猪 投稿日:2006/08/15(火) 23:47
- レス返しをば
>>303 通りすがりの者さん
毎回ありがとうございます
ガキさんは報われませんでした・・・
ですが、まだまだ話に絡むと思います。どうなるか話を見守ってやってください
>>304 名無飼育さん
諦めないで完結を見守っていてください
いやマジでお願いしますw
>>305 あおさん
ありがとうございます
私自身、褒められて伸びるタイプだと思い込んでいる馬鹿なので心底嬉しいです
>>306 名無飼育さん
ありがとwwwwwwwwwww
>>307
どもwwwwwwwwwww
>>308
ありがとうございます
これからもよろしくどうぞ
>>309
ちょwwwww保全乙wwwwwwwwwwww
違う人なら許してwwwwwwwwwwwwwwwww
- 361 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/16(水) 00:27
- 神は読者も見放していなかった
ロナウジーニョ以上の天才乙
- 362 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/16(水) 04:06
- なんかガキさんが可哀想に思えてきたw
でも、おもろいwwもうヤヴァイッスwwww
- 363 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/16(水) 07:08
- 待ってた・・・待ってたよ!
更新ありがとう!
- 364 名前:名無し 投稿日:2006/08/16(水) 09:59
- ついにガキさあああああああああああああああんnがああああ!!!
- 365 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/16(水) 14:10
- 愛ちゃんは……愛ちゃんはぁぁ!?w
- 366 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/16(水) 19:57
- ガキさん天才。ある意味w
次回更新もお待ちしてます。
- 367 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/16(水) 22:11
- やべー本気でむかつくわぁwww
- 368 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/17(木) 09:39
- (0Ф∀Ф)<ヒッヒヒヒ・・・
最高なんですけどw
- 369 名前:あお 投稿日:2006/08/17(木) 17:29
- 期待を裏切らない面白さ、
期待を見事に裏切る展開。
ブラボーwww
- 370 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/08/22(火) 23:59
- あたしの愛ちゃんを!!!
でも、おもしろいなぁ〜
- 371 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/09/29(金) 23:12
- やぁ〜んww
メキシコ式サイコーー!!!ww
- 372 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/11/13(月) 12:45
- もう・・・終わりなのかな
- 373 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/10(日) 06:11
- えっ!ちょっとまだ終らないで!!
- 374 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/12/12(火) 05:37
- 待ってるよ俺待ってるよ
- 375 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/14(日) 22:40
- あけましておめでとうございます。
- 376 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/17(水) 11:52
- 放棄されるのは残念ですが作者さんにも都合はあるので仕方ないと思います
- 377 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/20(土) 11:26
- え、放棄宣言でもあったの?
- 378 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/21(日) 21:46
- いつやめるっていったんですか?!
止めるって言うまで待つのは自由ですよね。
- 379 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/01/24(水) 12:20
- そっとしとくべ
- 380 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/26(月) 23:30
- あ〜…や、でも待っていたいよ。うん。
作者さんには迷惑かもしれないけどさ。
- 381 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/29(木) 20:48
- 放棄されるのは残念ですが作者さんにも都合はあるので仕方ないと思います
- 382 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/30(金) 00:30
- そりゃぁね。でも、待ってるのは勝手だよね。
主役は作者さんでも、みんなの板だし藁
- 383 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/25(月) 14:23
- しぶとく待ってます
- 384 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/01(水) 03:05
- ho
- 385 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/03(金) 10:04
- ついに放棄宣言。。。
無念だ
- 386 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/04(土) 00:04
- どこで放棄宣言したの?
- 387 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/13(月) 20:24
-
- 388 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/24(金) 20:31
- 脳の無い厨房の発言はどーでもいいよ。
とりあえず、待ってますんで。
- 389 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/08/25(土) 22:38
- >>389
>>389
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