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娘中隊(第3部)

1 名前:ま〜 投稿日:2001年12月07日(金)22時54分41秒
娘中隊 (金板倉庫)
http://mseek.obi.ne.jp/kako/gold/991500486.html

娘中隊(第2部) (青板倉庫の予定)
http://mseek.obi.ne.jp/kako/blue/index.html

そんでもって第3部れす。長くなってしまいました・・。スレ乱立のようで申し訳ありません・・。
( ´D`)<らって・・。こんな長くなると思わなかったんらもん・・。

まあ、1stガンダムの外伝みたいなもんです。
2 名前:ま〜 投稿日:2001年12月07日(金)22時55分49秒
飯田達はSフィールドと呼ばれる宙域に辿り着きつつある。
第1陣と第2陣の敵の防御陣を突破し、
苦戦しつつも辿り着いた宙域で待ち受けていた敵部隊は、
彼女達にとって忘れる事の出来ない敵であった。

最初にそれを発見したのは保田。
「圭織・・。あれ見て。」
「何・・?あっ!」
飯田だけでなく他のメンバー達も保田が指差した方向を見た。
そして気づいた。
青い塗装のゲルググ。

「あいつじゃん!!!」
真っ先に反応したのは矢口だった。
かつて苦渋を舐めさせられただけに当然の行動であったかもしれない。

「ここで会ったが百年目・・。圭織!」
「え〜・・。カオリ、あれと戦うの嫌だな・・。」
以前このゲルググが率いる部隊と戦った時は中澤がいた。
そして後藤も。
しかし、その中澤は今は亡く、後藤もいない。
もちろんの事、メンバーの士気も落ちている。
そんな状態で彼らと戦うのは無謀と飯田は判断した。
3 名前:ま〜 投稿日:2001年12月07日(金)22時56分21秒
「でも、あいつを落すのは裕ちゃんの宿願でもあったよ。」
「でも・・・。」
「でもへったくれも無いよ。あいつを落さないと通してくれそうに無いし。」

「・・。そうだね・・。よし!行くよ!みんな!」
「おっけ〜!!」
結局のところ保田や矢口に説得された飯田は、
宿敵とも言うべき青いゲルググ率いる部隊と戦端を開く決断をした。
もっとも保田の言う通り、ジオン側がこの戦線を維持できているのは
この部隊がここに陣取っている為もあり、
どのみち彼らを撃退しない限りこの戦線を突破できそうに無く思われた。

「辻!加護!」
「へい。」
「はい。」
飯田の号令と共に、二人が装備しているスナイパーライフルの先端から
出力の高いビームが迸った。
4 名前:ま〜 投稿日:2001年12月07日(金)22時57分07秒
二人が青いゲルググにロックオンした時点で敵も気づいたのであろう、
ビームが敵に近付くよりも早く、回避されていた。

「まあ、そんなに簡単に行く分けないし。」
保田が不敵な笑みを浮かべつつ呟く。

「狙いは、あくまでも青い奴ね。お互いバックアップを忘れないように!」
統率力のある強力な指揮官に率いられた部隊は、確かに強敵ではあるが、
得てしてそのような部隊は、指揮官を失うと一気に瓦解することが多い。
そのため、飯田の狙いとしては指揮官を倒すことであった。

「分かってるって!矢口!行くよ!」
「しょうがないな・・。ちょっと!待ってよ!」

青いゲルググを自分の宿敵と考える保田は、
矢口の返事を聞くよりも早く、フルブーストで突っ込んでいく。
5 名前:ま〜 投稿日:2001年12月07日(金)22時57分44秒
「今度こそは逃がさないわよ!!」
保田の射撃は正確を極める。
しかし、その正確こそが彼女の欠点でもあった。

「今まで通りには・・!」
彼女はわざと機体の自動照準機能をオフにする。
先ほどの辻と加護の射撃からも分かるとおり、
自分がいくら敵を照準内に捕らえても、
敵にロックオンの警報を鳴らしてしまう為、
逆手をとって手動照準で敵を捕らえることとした。

「もらったよ!!」
真っ先に彼女の餌食になったのは1機のザク。
彼女達の戦線への突入に気づいたザクが無謀にも単機で反撃に出た。
敵の行動を見越して、彼女はザクより少しばかり先に狙いを定めると
トリガーを絞った。
完璧にザクを捕らえたそのビームは、あっさりと機体を四散させる。
天性の才能なのか、彼女の勘は非凡ではない。
6 名前:ま〜 投稿日:2001年12月07日(金)22時58分15秒
「さすが圭ちゃん・・。ヤグチも!!」
射撃に専念する保田の隙を狙ったつもりなのか、
1機のリックドムがサーベルを振りかざし、保田の機体に迫る。
矢口はその機体に狙いを定めると、
サーベルを抜き去って、最大速力で背後からサーベルを突き立てた。

「油断はいけないね・・。」
爆発する敵機を冷ややかな目で見詰める。

爆発する敵機から高速で離れると、
今度は矢口に向かって、マシンガンを連射しながら迫るザクに対して
ライフルの照準を定めると、
トリガーを絞った。
7 名前:平家派 投稿日:2001年12月07日(金)23時14分25秒
ま〜さん、待ってましたよー。
もしかしてタイトル変わちゃったのかと思って、
探し回っちゃいました。
これからも頑張って下さい。
8 名前:読書の秋 投稿日:2001年12月08日(土)02時59分25秒
ま〜さんってごまゆう推進会長の方ですよね?
ガンダムの知識がまったくないので遠慮していたのですが
ま〜さんのごまゆうならば喜んで読ませていただきます。
・・・って中澤死んでる!!!かいちょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
9 名前:ゴマユウvv 投稿日:2001年12月08日(土)04時34分08秒
まってましたーーーっ!!!
ボクも探しまくってました(笑)。
ごまがもうちょっとで到着予定ですか??
これからもがんばって下さいっ!!!
いつもROMりながら応援してます!!!
10 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月09日(日)21時21分48秒
上に同じく。
常にROMですが応援してます!
11 名前:ま〜 投稿日:2001年12月12日(水)00時08分04秒
強力な味方が来援したことを悟ったのか、
味方のMS部隊の士気が上がる。
味方の機体の大半は通常量産型のGMであるが、
少数ながら彼女達が搭乗している機体と同様の機体も存在する。
それらの機体を中心に、数を頼りに次第にジオン軍を押し返す。

「みんな頑張ってるね〜・・。」
「うん・・。」
吉澤の言葉に石川が力なく頷く。

以前の連邦軍パイロットからすれば考えられないことであろう。
搭乗員の大半が練度が低く、士気も低かった。
しかし、今は違う。
勝ちに乗じているからか、我勝ちに敵機に突っ込んでいく。

しかし、安易に突っ込んでいったパイロット達は、
その軽挙に大きな代償を払うこととなった。
12 名前:ま〜 投稿日:2001年12月12日(水)00時08分50秒
調子に乗りすぎた1機のGMが、青いゲルググに突っ込んでいく。

「あっ!あたしの!!」
それを見た保田が大声を張り上げた。
無理も無い。
彼女が狙っていた敵を横取りする形で割り込んできたからだ。
しかし、彼女の心配は杞憂に終わった。

調子に乗ったGMがサーベルを抜き放ち、一気に突っ込んでいくと、
その青いゲルググは、あっさりと攻撃をかわして
正確にコクピットにサーベルを突き立てた。

「あ〜あ・・。言わんこっちゃない・・。」
味方に頑張って欲しいと言う気持ちもあったが、
彼女の心の中に、青いゲルググに落されないで欲しいと言う気持ちも存在した。
なぜなら、何度も彼女が苦汁を舐めさせられた相手は
自分で倒さないと気が治まらない。

彼女は戦死した味方のパイロットに悪いとは思いつつ、
安堵のため息を漏らした。
「やっぱ、あたしじゃないとね!!」
13 名前:ま〜 投稿日:2001年12月12日(水)00時09分31秒
フルブーストで青いゲルググに突っ込んだ保田だったが、
反応は敵の方が早かった。
ライフルを一斉射して保田を牽制すると、
彼女をあざ笑うかのように一気に彼女の前から立ち去った。

「あっ!!待ってよ!!!」
彼女の声も虚しく、高速で味方の編隊に突っ込むと、
サーベルを振り回してGMを破壊し始めた。

「舐めた真似してくれるじゃないの・・・。」
保田は、敵機との性能差を考えると、追い付くのは無理と分かっているが
最大速力で青いゲルググを追った。
14 名前:ま〜 投稿日:2001年12月12日(水)00時10分17秒
「やすらさんが突破されたのれす。」
「舐められとるね〜。」
辻と加護が、まるで傍観者のように会話をする。
普段はハイテンションな二人であるが、周りが冷静さを欠けば欠くほど、
それと反比例するかのように二人は時として冷静になることがある。

「ちょっと!二人共!なにぼけっとしてんの!!」
「こっち来るよ!!」
ハスキーボイスと、それの正反対とも言うべき甲高い声。

「一旦下がるのれす!!」
「何で、ののちゃんが命令してるの・・?」

辻の口調にやや不快感を持った石川達であったが、
彼女の進言は的を得ていた為、やむなく従った。
この時、彼女達が一旦後退していなければ、
彼女達は宇宙の塵となっていたかもしれない。
15 名前:ま〜 投稿日:2001年12月12日(水)00時10分56秒
彼女達が一旦交代すると同時に、青いゲルググがMS隊に突っ込んできた。
そして暴れまわった。
勇敢にも、そして無謀にも1機のGMがゲルググに勝負を挑むかのように
サーベルを突き立てて接近すると、
ゲルググは、いともあっさりとそのサーベルをシールドで跳ね除け
逆にサーベルを誤る事無くコクピットに突き立てる。

1機のGMを撃破しただけでは満足しないかのように、
すぐ脇でハイパーバズーカを構えるGMに接近すると
GMの頭部から一気に機体を両断する。
さらに新人パイロットなのか、怯えるかのようにシールドを前に出して
隠れながらビームスプレーガンを連射するGMを
シールドごとサーベルで切断する。
この間、僅か数秒。
恐ろしい程の腕前だった。
16 名前:ま〜 投稿日:2001年12月12日(水)00時11分52秒
「何やあれ・・・。」
「すごいれすね・・。ののと同じ位すごいれす。」

彼女達はその青いゲルググに勝負を挑まなかった事を
改めて正解であったと思った。
いくら百戦錬磨の飯田や安倍、そして保田や矢口でも
あのMSには適わないと、彼女達は思う。
それでも保田達は、そのMSに勝負を挑みたがっている。


連邦軍のMS部隊は、青いゲルググの力量に、すっかり浮き足立っていた。
もちろんのこと、彼女達を除いて。
次々と、その青い機体を撃墜するべく、
戦果に目がくらんだパイロット達が、そのゲルググに勝負を挑むが
それらすべては返り討ちにあっている。

そして、ある程度の戦果を上げて、MS部隊が浮き足立ったのを確認すると、
後は他のMS部隊に任せて、彼女達の前から去っていった。
17 名前:ま〜 投稿日:2001年12月12日(水)00時12分43秒
皆様・・。レスありがとうございます。

>>7 平家派さん
ちょっと仕事が忙しかったんで、新スレ立てるのが遅れてしまいました。
すいません。更新も遅れがちで・・。
これからもよろしくお願いします!

>>8 読書の秋さん
>>ま〜さんってごまゆう推進会長の方ですよね?
ぐはっ!!懐かしい言葉が!!!!
そうです。私がごまゆう推進派会長です(自称)
当時は副会長とか事務局とかいたような・・・藁。
話をガンダムにした理由は・・。単に作者(自分)が好きだからです。
ちょっとマニアックだったかな・・。

>>9 ゴマユウvvさん
ちょっとごま登場まで時間掛かるかな・・。
今後もよろしく!HPたまにお邪魔してます。

>>10 名無し読者さん
これからもよろしく!!
18 名前:ま〜 投稿日:2001年12月12日(水)00時15分53秒
すんません。間違いハケーン!
>>5 の最後の一行、
>>天性の才能なのか、彼女の勘は非凡ではない。
これ間違いですわ・・。非凡ではないじゃ、凡庸じゃん!!
>>天性の才能なのか、彼女の勘は凡庸ではない。
これが正しいです。
漢字間違いならまだしも、文章を間違えるとは・・。鬱。
19 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月12日(水)10時46分03秒
いいねぇ。これ(w
実ははじめて読みました・・・
最近娘のパロディー小説があるということを知ったばかりで機械物+娘の
小説読み漁っているんですがガンダムも外せないですね。

また読みに来ますんで頑張ってください。
20 名前:ま〜 投稿日:2001年12月13日(木)00時38分54秒
その頃、矢口はパートナーである保田と混戦の中、はぐれてしまい、
単機で戦っていた。

「まったく・・、圭ちゃん何処行っちゃったのかな・・?」
迫り来るMSを、得意の格闘戦で、
そしてある時はビームライフルで撃ち落している。
彼女は単機でも戦える自信があるし、
また、それだけの能力も十分に備えているが、
それでも単機で混戦の中を戦っているのが不安でないと言えば嘘になる。

「どこ行っちゃったのかな・・・。」
1機のザクをシールドで両断し、サーベルを構えながら呟く。

その時だった。
彼女の機体が、ロックオンされた警報を上げた。
「なに!?」

瞬時に彼女は警報がなった方を振り向いて後悔した。
彼女の視界に太陽が入ったのだ。
ヘルメットのバイザーは強烈な閃光を遮るようになっており、
モニターも光量を抑えてはあるが、
それでも太陽の閃光は強烈だった。
そのため、彼女は一瞬目がくらんでしまった。
21 名前:ま〜 投稿日:2001年12月13日(木)00時39分33秒
「しまった・・・!!」
彼女は自分の失態を悟った。
以前彼女は本で読んだことがある。
かつてレーダーが存在しない時代の空の戦いで、
太陽を背にして敵に攻撃をかけるのは常套手段であると。
現在レーダーはミノフスキー粒子と言うレーダーを無力化する粒子がばら撒かれ
レーダーは完全に無力化されていた。

「やばい・・!」
彼女は瞬時に機体を横滑りさせていた。
そして彼女の機体に衝撃が走る。
強烈な振動と共に、シールドごと機体の左腕を切断されていた。
あの青いゲルググによって。
22 名前:ま〜 投稿日:2001年12月13日(木)00時40分07秒
彼女の戦い慣れした勘が無ければ、
彼女はおそらくこの時戦死していたであろう。

「くそっ・・!油断したのは矢口だったよ・・・。」
矢口は自分の死期を悟ったような気がした。
先ほど敵の油断を嘲笑したばかりなのに、
まさか自分が油断によってやられるとは思ってもみなかった。

「ふん・・。矢口真里・・。ここで戦死か・・。」
一人呟いた。
モニターには、止めを刺すべくサーベルを振り上げるゲルググ。
「裕ちゃんの所に行くのかな・・。」

彼女自身、戦っている以上、何時かは戦死するかもしれないと思っていた。
しかし、これほど早く戦死することになるとは・・・。
そう思って目をつぶった。

迫り来るビームサーベル。
「もう・・・。ダメ!!」
23 名前:ま〜 投稿日:2001年12月13日(木)00時40分52秒
「なんでビームがサーベル状になるんだろ・・?」
矢口は、ふとそんなことを考えていた。
おそらくすぐに来るであろう強烈な衝撃に備えながら。

しかし、彼女の視界の中に、敵の物とは異なるサーベルが
横合いから突き出されるのに気づいた。
そしてそれは青いゲルググのサーベルを跳ね返していた。
「誰・・・!?」


「矢口!あんたらしくないね!!」
それは先ほどから彼女が探していた声の持ち主。
「圭ちゃん・・・。」
「悪いね。ちょっと見失っちゃって・・!」

明らかに狼狽する青いゲルググ。
どうやら彼は矢口を撃墜することに夢中になっており
保田の接近には気づいていなかったように思われた。
24 名前:ま〜 投稿日:2001年12月13日(木)00時41分42秒
「あんたも油断するんだね・・。」
保田は宿敵とも言える青いゲルググを見詰めると、不敵な笑みを浮かべる。

「行くわよ!!」
保田は再びビームサーベルを敵に向かって構えなおすと、
一気にゲルググに向かってダッシュする。
「あたしだってね、そんじょそこらの人より格闘は上手いのよ!!」

彼女の操るサーベルが、強烈な衝撃と共に青いゲルググのシールドに打ち付けられる。
保田は、矢口や飯田に比べれば、決して格闘戦は上手いとはいえない。
それでも連邦軍の一般的なパイロットに比べれば
比較にもならなかった。

再び保田のサーベルがゲルググに向かって振り下ろされる。
繊細と言う言葉とは無縁であり、また雑でもあるが
その分大胆かつ豪快な剣捌き。
「今度は逃がさないわよ!!」
25 名前:ま〜 投稿日:2001年12月13日(木)00時42分14秒
この時の保田は張り切っていた。
これほど彼女の調子が良いことは無いと思われる程、
彼女は抜群の勘を見せている。
よって集って彼女達が倒せなかった敵を、保田一人で圧倒している。

「圭ちゃん・・。すごい・・!」
それは長い間ペアを組んでいる矢口から見ても
過去に見た事が無いほど、保田の動きは冴え渡っている。

しかし、彼女は忘れていた。
矢口の機体が損傷していることを。
そして知らなかった。
矢口の背後から迫るMSのことを。
26 名前:ま〜 投稿日:2001年12月13日(木)00時42分52秒
「きゃあああああ〜〜〜!!!」
青いゲルググを圧していた保田のレシーバーに
矢口の悲鳴が響き渡った。

「矢口!?」

迂闊だった。
保田も、そして矢口も。

矢口の機体に、背後から迫った1機のザクが放ったマシンガンの弾丸が
火花を上げて命中した。
「・・!!」
「矢口!!!!」

気体のコクピットの中で破片が散らばり、容赦なく矢口の体を襲う。
「痛いっ!!!」
それでも矢口は力を振りしぼってザクに向かって振り向くと
ライフルを放ち、そのザクを破壊する。

そして、保田が矢口に気を取られている間に
青いゲルググは隙を見て後退していった。
27 名前:ま〜 投稿日:2001年12月13日(木)00時43分44秒
「矢口!!矢口!!!」
保田は自分の機体を矢口の機体に接近させると
モニターで矢口の機体の損傷を確かめる。

「矢口??!」
「・・・・。大丈夫・・。ちょっと怪我しただけ・・。」
わき腹を押さえる矢口の手の指の間から
少量ながら真っ赤な液体が球状になってコクピットを彷徨う。

「大した事・・無いよ・・。それより圭ちゃん、青い奴逃しちゃったね・・。」
「そんな事どうでもいいわよ!!」
「ごめんね・・。」

背後から命中した弾丸は、幸いにも急所を逸れており、
爆発する恐れは無さそうであった。
しかしながら矢口は負傷している。

「まずいわね・・・。」
保田がうめき声を上げた。
28 名前:ま〜 投稿日:2001年12月13日(木)00時45分43秒
>>19 名無しさん
レスありがとうございます。
>>機械物+娘の小説
結構あると思いますよ。
自分も1年ぐらい前にここで書いたの幾つかあるし。
各板の倉庫とか見るといいですよ。
これからもよろしく!
29 名前:ま〜 投稿日:2001年12月16日(日)23時56分49秒
「なっち!!うしろ!」
「わ!分かってるべさ!」

安倍は瞬時に機体を最小半径で反転させると
彼女の背後から迫りつつあったザクに向かってライフルを放つ。
しかしながら1発目は偶然なのか、
それとも敵のパイロットの腕がいいのか避けられてしまった。

「くっ!生意気だべさ!!」
再び彼女がトリガーを引くと、
今回は誤る事無くビームがザクの胸部に命中し、
大きな閃光を放って爆発する。

「やっと・・・、3機目・・・。圭織!!!」
安倍は肩で息をしながら、
飯田の下方から迫るザクを発見して、飯田に注意を促す。
30 名前:ま〜 投稿日:2001年12月16日(日)23時57分47秒
「分かってる!!」
飯田は機体を上昇させると、下方に向かってライフルを放った。
ビームはザクの左腕に命中したが、
そのザクは諦める事無く、損害をものともせずに突っ込んでくる。

「何?!こいつ!!」
死を恐れないようなザクの機動に、飯田は軽い恐怖心を覚えつつ
さらに遠ざかるように機体を上昇させ、ビームを連射した。
「このっ!このっ!!」

3発目で、やっとザクのコクピット部分をビームが捉え
貫通したビームがバックパックの動力分を爆発させる。

「はぁ・・、はぁ・・・。」

「圭織・・。敵の数が多いよ・・。それに、こいつら狂ってるべさ・・。」
31 名前:ま〜 投稿日:2001年12月16日(日)23時58分45秒
ア・バオア・クーに配備されているジオン側MSの大半が、
あたかもこの戦域に投入されているかと思われるほど、
敵の数が尋常ではなかった。
それだけではなく、敵のパイロットは練度が低い者も数多く見られ、
闇雲に突っ込んで来る者もいる。
それだけに、その機動は彼女達の想像の範疇を越えて、
味方を混乱に陥れていた。

「圭織!来たよ!」
下手な鉄砲も数撃ちゃあたると言わんばかりに、
バズーカを連射しながら突っ込んでくるリックドムに向かって
飯田がライフルを構える。
敵の弾丸を避ける為に、機体を横滑りさせながら
リックドムに狙いを定めると、躊躇する事無くトリガーを絞った。

「なんだか・・。敵が下手なんだけど、カオリ、それだけに怖い・・。」
32 名前:ま〜 投稿日:2001年12月16日(日)23時59分29秒
ジオンの現在の窮状を物語っているかのように、
ベテランパイロットと、新人パイロットの腕前に開きがありすぎる。
そういった状態は連邦軍も同様なのであるが、
ジオン軍のこれまでの優勢は、
練度の高いパイロットを集中して用いることによって
数の劣勢を補っていた。
しかしながら、立場が同様ならば数が多いほうが勝つ。

「多分・・。この戦い勝てると思うけど・・・。」
安倍が表情を曇らせる。
それは決して自軍が優勢とは思えない表情だった。


保田から矢口が負傷したと言う連絡が入ったのは、丁度そんな時だった。
33 名前:ま〜 投稿日:2001年12月17日(月)00時00分43秒
「え〜!!矢口さん!!大丈夫ですか!?」

真っ先に反応したのは吉澤だった。
自分の先輩として、教育係として、
そして矢口に対して少々特別な感情を持ち合わせていると思われる吉澤が
誰よりも先に反応したのは、至極当然の事だったかもしれない。

「ちょっと待ってよ!よっすぃ〜!!!」

常にペアで行動することを言明されていたが、
吉澤はそれを破って、石川や辻、加護を置き去りにして矢口の元へ向かう。
そして見た。
矢口の機体がぼろぼろに損傷している状況を。

「だ!誰だぁ!矢口さんにこんな事したのはぁ〜!!」

すっかり興奮状態に陥っている吉澤は、
矢口の仇討ちと言わんばかりに、手当たり次第
視界に入った敵に対してライフルを連射し、サーベルを振りまくった。

「よっすぃ〜・・。大丈夫だよ・・。」
「矢口さん・・!!」
矢口の力無い口調に、かえって吉澤は心配してしまう。
34 名前:ま〜 投稿日:2001年12月17日(月)00時01分40秒
結果的に、混戦状態の中で散らばっていたメンバーが
矢口の負傷と言う事態に集合することとなった。
戦況は当初ジオン軍が有利に進行していたが、
何故か一時を境に、形勢が連邦軍側に有利になりつつある。

「矢口・・。大丈夫?」
心配して近寄ってきた安倍が、怪訝そうな顔をして
矢口に声をかけた。

「うん・・。大丈夫・・。」
頼りない口調ではあるが、声ははっきりとしており
彼女の傷が生命に支障は無いようである。
「良かったべさ・・。」


相変わらず吉澤は張り切って敵と交戦していた。
そして彼女は見た。
巨大な高出力ビームが彼女に向かって迫ってくるのを。
35 名前:ま〜 投稿日:2001年12月17日(月)00時02分20秒
「うわっ!!!!」

吉澤がその太いビームを避けることが出来たのは
たまたま敵との距離が遠かった為だったのかもしれない。
これが1月前の彼女であったなら、
おそらくこの場で彼女は宇宙の塵となっていたであろう。

「何!?」
安倍と飯田が即座に反応して、ビームが迫って来た方向を見る。
そこで彼女達が見たのは、これまでに見たことが無いMS。

「あっ!足が無い!!」
彼女達が見たMSに脚はついていなかった。
しかしながら、戦闘する場所を宇宙と限るならば、
確かに脚は不要かもしれない。
その点では、極めて効率的なMSなのかもしれない。

「みんな・・!気をつけて!!!」
そのMSから放たれるビームは、余りにも巨大かつ高出力であり
彼女達のある意味貧弱なMSが1発でもそのビームを食らおうものなら
一瞬にしてこの世から消え去るであろう。
36 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月17日(月)00時40分26秒
おお,ジオング登場ですか。
盛り上がってきましたなぁ〜。
それにしてもごま遅いぞ。早く来い!
37 名前:ま〜 投稿日:2001年12月17日(月)23時55分48秒
「辻!加護!それから石川は矢口を援護して後退して!!
 吉澤は圭ちゃんとペアを組んで!」

危険を察知した飯田が矢継ぎ早に命令を出す。
辻や加護たちも、これまで出合ったことの無いMSの登場に
普段の元気は何処へ行ったのか、顔を青くして命令に従った。

「来る!!」
安倍と飯田がそのMSに向かって可能な限りのスピードで
ライフルを連射した。
普段の彼女達ならば冷静に対処するところであろうが、
矢口が負傷したこと、そして初対面の敵、
しかもおそらく強力であろう事を本能的に察知したのか
冷静さを欠いていた。
そしてそのMSは、その図体に似合わないほどの機動性で
彼女達の放ったビームをことごとく避ける。

「まじ?!!」
38 名前:ま〜 投稿日:2001年12月17日(月)23時56分48秒
無謀にも数機のGMとボールが、
そのMSに向かってビームスプレーガンとキャノン砲を放ちつつ
近寄っていった。

「無謀だよ!!」
そう叫んだ保田の危惧どおり、それらのMS隊は脚の無いMSから放たれた
巨大なビームに木っ端微塵にされる。

「バカ・・。」
血気にはやり散っていった名も無い味方パイロットに向かって
吉澤が呟くが、一歩間違えれば、彼女自身が
あのGMのようになっていたかもしれないと思うと
自然と彼女の顔も青くなる。

「保田さん・・。どうします・・。」
「とりあえず動きながら撃つしかないでしょ・・。」
吉澤に相談された保田だったが、彼女とてそれ以上のことが言えない。
彼女も今まで一度も吉澤とペアを組んで戦ったことが無い為に
あまり複雑な機動を取ることは出来ない。
それどころか、保田と吉澤の腕前も違いすぎる。
39 名前:ま〜 投稿日:2001年12月17日(月)23時57分24秒
「行くよ!なっち!!」
「わかってるべさ!!」
1機の味方が破壊されたのを見せ付けられて、
ただ闇雲に射撃しても、全く命中しないことを悟った二人は
バーニアをフルブーストさせてつつ、
ライフルを構えて再び突っ込んでいく。
同時に保田と吉澤も同様に突っ込む。

「圭ちゃん!挟み撃ちするよ!」
「オッケー!」

保田のコンビは左から、そして飯田達は右側から
敵を挟撃する為に高速で移動する。
40 名前:ま〜 投稿日:2001年12月17日(月)23時58分02秒
「もらったよ!!」

まず保田がライフルを放って先頭の口火を切る。
保田の動きに連動するかのように、
飯田と安倍が敵の右側から回り込むように移動した。

保田が立て続けに放ったビームは、
ことごとく回避された。
もちろんの事、安倍と飯田は
敵が保田の射撃を回避するのを見計らったように撃ちまくるのだが、
彼女達の射撃も、あっさりと回避されている。

「なんなのよ・・・。」

安倍がペダルを踏んで敵の攻撃を回避する。
飯田がスロットルを全開にして敵の上方から攻撃をかける。
保田がトリガーを引いてライフルを放つ。
41 名前:ま〜 投稿日:2001年12月17日(月)23時58分39秒
「みんな・・。早い・・。」

彼女達は全員、同じ機体を用いている。
もちろんの事、機体の整備及び調子によってバラツキはあるのだが、
基本的には性能は変わらない。
異なるのはパイロットだった。
吉澤は必死に臨時ではあるが、ペアを組んでいる保田に付いていこうとするが
どうしても腕前が違う為、保田に遅れをとってしまう。

「待ってくださいよ・・。保田さん!!」

彼女は一人、編隊から離れてしまった。
そしてそこを狙われた

「え!?」

側面から、彼女の機体に巨大なビームが襲い掛かった。
敵のMSは彼女の前方にいるにもかかわらず、
突然彼女の横から、しかも至近距離からビームが飛んできた。

「きゃぁぁ〜〜!!!!!」
42 名前:ま〜 投稿日:2001年12月17日(月)23時59分29秒
先ほど彼女が敵のビームを回避できたのは、奇跡に等しかった。
そして、その奇跡は2度は続かなかった。

彼女の機体の脚部にビームが命中し、
あまりの高熱の為なのか、機体の両足が溶け去ってしまった。
胴体に命中しなかったのは、彼女が危機を悟った瞬間に
咄嗟にバーニアを吹かした為であり、
一歩間違えば、彼女自身がその高熱に溶かされていただろう。

「うわぁぁぁ〜〜!!!!」


「よっすぃ〜〜!!!!!!」
3人の視線が吉澤の機体に注がれた。
幸いにも、命中したのが脚部であり、
機体のエンジン等は無事であった為に爆発する心配は無さそうであったが、
それでも機体のバランスを失った吉澤は、
ビームの命中の衝撃もあり、フラフラと彷徨っている。

そして、彼女達の注意が吉澤に注がれた時、
敵に格好の隙を与えてしまった。
43 名前:ま〜 投稿日:2001年12月18日(火)00時00分17秒
飯田達の攻撃を回避して、敵の脚無しMSは
吉澤に止めを刺すつもりなのか、全速で吉澤の機体に迫っていった。

「よっすぃ〜!!!逃げて!!」
「よっすぃ〜!!」

安倍と保田が悲鳴を上げる。

そんな事は言われなくても吉澤は分かっている。
しかしながら、機体の両足を失った彼女は、
自分の機体を満足にコントロールできることはできなかった。
もっとも、彼女の機体が五体満足であっても、
敵から逃れることは出来なかったであろう。
44 名前:ま〜 投稿日:2001年12月18日(火)00時00分48秒
「やばいよぉ〜!!!死ぬぅ〜〜!!!」

彼女は叫び声を上げていた。
今までに何度か、彼女は死にそうになったことがあったが、
その度に、誰かが彼女を助けてくれた。
しかし、この状況では、誰がどう見ても、
彼女を助けることができる人間はいなかった。

彼女の機体に迫る敵MS。
脚の無い、巨大な機体が
彼女のコクピットのモニター一杯に映し出されている。

敵MSの両手指先の部分にある、ビームの砲門が
正確に彼女に向けられている。

彼女の、元々大きな瞳が、驚愕のために一杯に開いていた。
「ダメだ・・・!!」


その瞬間、吉澤の機体と敵MSの間に、ビームが飛んできた。
45 名前:ま〜 投稿日:2001年12月18日(火)00時01分18秒
「誰・・!?」

あらぬ方向から狙われたことを悟った敵MSは、
吉澤に止めを刺すことを諦めたのか、一旦後退した。

吉澤を含めた、彼女達全員の視線が、
ビームが飛んできた方向に注がれた。

そして彼女達は悟った。
この場に絶対に現れるはずの無い『彼女』がこの場に現れたことに。

「よっすぃ〜!!みんな!!大丈夫!?」


「ごっちん・・・。」
46 名前:ま〜 投稿日:2001年12月18日(火)00時02分21秒
>>36 名無し読者さん
レスありがとうございます。
ジオング登場です!
そしてごまも・・。
47 名前:コリン 投稿日:2001年12月18日(火)02時31分55秒
待ってました!
ごまの復活
48 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月18日(火)04時26分09秒
後藤登場っすね!
待ってましたよー!!!
49 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月19日(水)01時15分39秒
ちょっと関係ないレスを・・・すいません。
ま〜さんこの話が終って手がすいて・・・もし書く気になったら
続続後藤と中澤を書いてもらえませんか?(w
卒業前後の痛めで・・・なんかこの時期のゆうごまを・・・
元祖ゆうごまの・・・ま〜さんに書いて欲しくなった今日この頃

もちろんこのスレも楽しみに読ませていただいています。
でも・・・姐さんが(泣
50 名前:ま〜 投稿日:2001年12月23日(日)00時54分10秒
「みんな!ごめん・・!」

「ごっちん・・。大丈夫なの?」

彼女達が出撃する前の後藤の状態を知っている飯田は、
後藤が出撃して来たことが信じられない。
自分のせいで中澤を失って、完全に塞ぎ込んでいた後藤は
廃人と言っても過言で無いほどに引き篭もっていた。
その後藤が出撃してくるとは・・。


「みんな・・。遅れてごめん・・。よっすぃ〜、大丈夫?」

「あははは・・。大丈夫大丈夫。」

後藤にその身を心配された吉澤だったが、
機体は大幅に損傷したものの、負傷はしていない。

「あんた達!そんなにぼんやりしてる場合じゃないよ!!」

保田の怒声が彼女達のコクピットに響き渡る。
51 名前:ま〜 投稿日:2001年12月23日(日)00時54分45秒
再び敵の脚無しMSが、先ほど不覚を取った過去を
あたかも消去したいかのように、ビームを撒き散らしながら迫ってくる。

「ゴトウが突っ込むから、皆は援護して!」
「う、うん・・・分かった!」

本来リーダーは飯田であり、命令する立場にあるため
この時の後藤の命令的な口調に、やや不快感を覚えていたが、
それでも後藤の気迫に圧されたのか、そのまま従った。

しかしながら、損傷した状態の吉澤をほったらかしにする訳にもいかず、
保田が彼女の護衛をして、一旦戦域より後退するように
飯田が命令を下す。

「行くよ・・!!なっち!圭織!!」
「おーけー!!」
52 名前:ま〜 投稿日:2001年12月23日(日)00時55分31秒
後藤が迫り来る敵MSにライフルを放つ。
その射撃は正確を極めたが、
それでも敵のパイロットの反応は尋常ではない。
後藤の射撃を回避しただけではなく、
その隙を狙った飯田と安倍の射撃すらも回避してしまう。

「なんなんだべさ・・。こいつ・・!!」
「当たらない!!」

安倍と飯田は動揺していた。
無理も無い、敵が単なる通常のMSならば
これほど動揺しなかったかもしれない。
未知の敵、そして巨大な敵、そして巨大な出力のビーム。
今のところ、彼女達が攻勢に出ているために
あたかも優勢に見えるが、一旦彼女達の攻勢が途切れた時、
敵の反撃がどうでるか?
そのプレッシャーが、彼女達を動揺させる。

「やばいよ・・・。」

安倍と飯田は、たった3人でこの恐るべきMSと渡り合っていることに
少しばかりの満足感もあったが、それよりも恐怖の方が先に立つ。
53 名前:ま〜 投稿日:2001年12月23日(日)00時56分08秒
『右やで・・。』

「えっ?!」
『右から来るで・・。』

後藤は誰かの声を聞いた。
そして、彼女はその声の通りに行動していた。
彼女が『誰か』の声に従って回避行動をとると、
それまで彼女が存在していた空間を、ビームが通過する。

『次は左やで・・。』
「えっ・・・!?」

再び声に従って回避する。
先程と同様にビームをかわすことが出来た。

『上出来や。』

「裕ちゃん・・?」
54 名前:ま〜 投稿日:2001年12月23日(日)00時56分58秒
『ええか・・、ごっちん。敵を感じるんや。』
「裕ちゃん・・?!」

『よく敵を見て、感じるんや。敵を。』
「裕ちゃん・・。分かった!!」

後藤は大胆にも、敵と交戦中であるにもかかわらず、
突然目をつぶると、精神を集中させた。


「・・・・!!!見えた!!」

彼女は目を見開くと、ペダルを踏み込んで一気に機体を上昇させる。
すると、彼女がいた場所をビームが通過した。

『そうや・・。さすがごっちん。』

「うん!見えるよ!」
55 名前:ま〜 投稿日:2001年12月23日(日)00時57分30秒
正面から、そして左右から襲い掛かる敵の猛烈な射撃を
後藤は確実に回避しつづけた。

敵は後藤の動きに何かを感じ取っているのか、
後藤以外の飯田や安倍達は相手にしていないと言わんばかりに
後藤に攻撃を集中してくる。

彼女は以前ジャブローで赤い水陸両用のMSと戦った時の感覚を
思い出していた。

「何だろう・・。この感覚・・。前に会ったような・・。」
56 名前:ま〜 投稿日:2001年12月23日(日)00時58分43秒
皆様。レスありがとうございます。

>>47 コリンさん
>>48 名無し読者さん
へい!やっと( ´ Д `)の登場です!

>>49 名無し読者さん
懐かしいですな・・。後藤と中澤ですか・・・。
あれをまだ覚えてくれてる人がいるとは!
何もかも皆、懐かしい・・。
そうですね。書く気になったらまた書きましょう!
でも、ごまゆうネタになるような事が無くて。
ちょっと考えてみましょう!
57 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月23日(日)03時09分08秒
なぜか涙が・・・。
中澤いいっすね。
さすが会長!
58 名前:ま〜 投稿日:2001年12月26日(水)00時36分59秒
「ごっちん・・。すごい・・。」

安倍は自分も戦いに参加しているにもかかわらず
後藤と脚無しMSだけで1対1の戦いを見ているような気がしていた。
そして、後藤の機動に舌を巻いている。

安倍はこれまで後藤と供に戦ってきたが、
彼女がこれほどの動きを見せたのは初めてだった。
彼女の機動は、荒削りで大胆なものであったが、
現在の後藤の動きには、恐ろしいほどの切れがある。

まるで敵の攻撃を予測しているかのように確実に敵の攻撃を回避していく。
59 名前:ま〜 投稿日:2001年12月26日(水)00時37分58秒
「ねえ、なっち。」

安倍と同様に、戦闘に参加しているのだが、
殆ど援護射撃程度しか参加していない飯田から
安倍に通信が入る。

「何?」

「カオリさぁ、後藤の動きが裕ちゃんの動きとダブって見えるんだけど。」

「そう言えば。」

中澤の動きには、切れがあった。
そして、現在の後藤の動きは、確かに中澤の動きに近かった。

「まさか!そんな事がある訳・・。」

安倍は思わず動きを止めて考え込んでしまった。
60 名前:ま〜 投稿日:2001年12月26日(水)00時38分34秒
「裕ちゃん・・!行けるよ!!」

後藤は、自分と一緒に中澤が戦ってくれているような感じがしていた。
心強かった。

彼女達の攻撃は、確実に敵の脚無しMSを圧している。
後藤の動きに翻弄され、
そして安倍と飯田の射撃に回避するのに精一杯に見えた。

「見える!」


『あかん!なっちが!!!』

突然彼女の耳に、中澤の悲鳴が聞こえたのは、
後藤が敵に照準を定めて、まさにライフルを発射しようとした時だった。
61 名前:ま〜 投稿日:2001年12月26日(水)00時39分09秒
「なっち!!止まったら危ない・・!!」

思わず考え込んで動きを止めてしまった安倍のコクピットに
飯田の悲鳴が響き渡る。

「えっ・・!!」

迂闊だった。
正気に戻った時には、彼女のモニター一杯にビームが迫りつつあった。


「きゃあああああ!!!」

強烈な衝撃が、安倍を機体ごと襲った。
62 名前:ま〜 投稿日:2001年12月26日(水)00時39分58秒
「なっち!!!」

彼女の機体の頭部と左腕は既に消え去っている。
不幸中の幸いなのか、コクピットには命中していない。
もし、コクピットを直撃していたならば、
その時点で、彼女は一瞬のうちに炭化して
何も残らなかったであろう。

「痛たた・・・。」

既にモニターは機能しておらず、
動力が損傷したのか、レバーを引いても押しても
全く機体が反応しない。

「なっち、ピンチだベさ・・・!!」

「なっち!!脱出して!!!」

幸いにも、通信は生きており、飯田の悲鳴が彼女の鼓膜を刺激する。
63 名前:ま〜 投稿日:2001年12月26日(水)00時41分10秒
「言われなくても!!逃げるベさ!!」

彼女の機体は各所から火花を散らしており、
さほど時間が経たないうちに爆発することは明らかであった。
その事が安倍には充分分かりきっている為、
独り言を呟きながらも、必死にシートベルトを外そうとする。

「痛いっ!」

彼女の体に激痛が走った。
彼女はシートベルトをしていたが、先程の被弾の衝撃で
体を周辺にしたたかにぶつけていたのだ。

「右腕が動かない!?」
自分の右腕がおそらく骨折しているであろうと悟った時、
彼女は冷静ではいられなくなった。
腕が満足に動かすことが出来なければ、脱出すらままならない。

「なっち死ぬの!?いやだ・・・!!」
コクピットの中でもがけばもがく程、
余計にシートベルトは彼女の体に食い込み、用意には外れなかった。

「いやぁぁぁぁ!!」
64 名前:ま〜 投稿日:2001年12月26日(水)00時41分58秒
>>57 名無し読者さん
レスありがとうございます。
会長ですか・・。久しぶりに聞いた。
ちょっとセンチメンタル南向きって感じです。(?
65 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月26日(水)03時00分32秒
いやだぁぁぁぁぁぁぁ
なっち死なないでよぉぉぉぉぉぉ
66 名前:ま〜 投稿日:2001年12月27日(木)00時47分18秒
『なっち。』

突然安倍の耳に、聞き馴染んだ声が聞こえてきた。

『落ち着くんや。大丈夫。脱出できるで。』

「え!?誰?!!」
『うちの声を忘れたんか?』

「裕ちゃん?」
『落ち着くんや。左手が動くやないか?』

「そ、そうだね!!」

安倍は、ぎこちないながらも必死に左手だけを用いて
なるべく慌てないように、それでいて急いでシートベルトを外そうとする。
67 名前:ま〜 投稿日:2001年12月27日(木)00時47分57秒
「なかなか・・。外れない。」

シートベルトは両肩のあたりから出ており、
腰の両脇のあたりで止めるシステムになっている。
利き腕である右手が使えない為、
左手一本でベルトを外すのだが、左のベルトは容易に外れたが
右側のベルトが、自分自身の体が邪魔をしてなかなか外れない。

「もおっ!!」
『落ち着くんや。ゆっくりと。』

安倍は自由にならない体を横にずらして
右側のベルトに再び手を掛ける。
カチャっと小気味いい音がして、ようやくベルトが外れた。

「やった!」

ほんの僅かな時間なのだが、彼女にとってその時間は数時間にも感じられた。
68 名前:ま〜 投稿日:2001年12月27日(木)00時48分36秒
「急がないと・・。」

彼女の機体は依然として火花を散らしており、
今すぐにでも爆発しそうだった。

どこからとも無く聞こえてきた言葉により彼女は冷静さを取り戻している。
体をチェックしてノーマルスーツが破れているかどうかを確認した。
これを確認せずに宇宙に飛び出すと、
空気や、傷口から血液が宇宙に吸い出されてしまい、
下手をすると死亡してしまうケースがあるからだ。
幸いにも、破れている部分は小さかったので応急テープを張る。

安倍はシートから立ち上がると、緊急脱出用のボタンを押して
コクピットのハッチを強制的に開放する。
内部の空気が一気に宇宙空間に向かって吸い出される為、
彼女もその流れに乗って、あっと言う間に外に放り出された。

「おっとっとっと・・。」

彼女が宇宙空間に飛び出して数秒と経たないうちに
彼女が搭乗していた機体は、大爆発を起こして四散した。
69 名前:ま〜 投稿日:2001年12月27日(木)00時49分20秒
安倍は宇宙空間に、ただ一人彷徨う。

「脱出したのはいいけど、拾ってくれるのかな・・?」

先程までは爆発に巻き込まれないために必死に脱出した。
しかしその後は考えてなかった。
もしその後の事まで暢気に考えて脱出をしていたら、
おそらく彼女は機体の爆発に巻き込まれて、この場にはいなかったであろう。

「圭織・・。ごっちん・・。」

何時の間にか敵の脚無しMSは去っており、
付近に敵の機体どころか、味方の機体も見当たらない。

「このまま一人ぼっちで死んじゃうの?」

不安だった。
70 名前:ま〜 投稿日:2001年12月27日(木)00時50分06秒
冷静になって来ると、次第に右腕に激痛が走り始めた。
無理も無い。
彼女の右腕は完全に骨折している為に
酷い激痛と高熱を発している。

「痛い・・。痛いよ・・。」

安倍は左手で右腕の上腕部分を握り締めた。
あまりの痛さのために気が遠くなりそうになる。
いっその事、このまま右腕をもぎ取ってしまった方が
遥かに楽になるような気がしてならない。

突如、一機のザクがマシンガンを連射しながら
彼女の脇を通過していった。

「何なのよ!!!」

いっそのこと、一思いに殺して欲しいという感情が
彼女の心の中から湧き上がってくる。
同時に、自分を助けてくれた筈の中澤に対しても
陰湿な感情が湧いてきてしまう。
なぜ助けたのかと。

「もう・・。死にたい・・。」
71 名前:ま〜 投稿日:2001年12月27日(木)00時50分43秒
激痛と、宇宙空間に一人ぼっち取り残された孤独感。
このままでは、激痛に苦しんだ上に、
所有している酸素も使い切って、苦しみながら死を迎えることになる。

「もう嫌!!!」

一思いにと、安倍は自らの命を絶つべく、
拳銃を入れてある腰のホルスターに手を伸ばした。
そして気づいた。
拳銃自体をコクピットに忘れてきてしまったことを。

涙が溢れてきた。
その塩分を多量に含んだ液体は、彼女の瞳から離れると、
球状となってヘルメットの中を漂い、
強化プラスチックのバイザーに当たって分裂する。


「もう・・。だめ・・。痛い・よ・・・。お母・・さん・・。」

激痛と絶望感に、次第に彼女の意識は薄れていった。
72 名前:ま〜 投稿日:2001年12月27日(木)00時51分44秒
>>65 名無し読者さん
レスありがとうございます。
さて、(● ´ ー ` ●)はどうなるか・・。
73 名前:名無し読者4649 投稿日:2001年12月27日(木)03時44分32秒
俺もま〜さんのごまゆう信者です。(w
確か・・・ちょっとうる覚えですが・・・
続々後藤と中澤で・・・脱退ネタ最終回(続々続?)やってくれるんじゃなかったですか?(w
待ってまーす!会長!!4649!
74 名前:ま〜 投稿日:2002年01月05日(土)21時48分38秒
安倍の被弾に彼女達は気を取られてしまったため、
後藤があと一歩まで敵の脚無しMSを追い詰めていたが
その隙に逃げられてしまった。
だが、彼女達には、より困難な事態が待ち受けている。
安倍の捜索。しかも敵味方の弾丸が飛び交う戦場で。


「なっち!何処!?」

宇宙空間で脱出した人間を探すのは至難の業である。
それこそ、太平洋でメダカを探すのに等しい。

「なっち!!なっち!!何処!?」

安倍が脱出したことまでは確認していたが、
彼女が何処にいるかまでは分からない。
それこそ生きているか死んでいるかも。

同郷で、しかも常に一緒に戦ってきた安倍が行方不明になり
飯田はいても立ってもいられなかった。

「圭織!なっちは!?」
「分かんないよ!!」

後藤の問いかけにも乱暴に答えてしまう。
75 名前:ま〜 投稿日:2002年01月05日(土)21時49分18秒
「何処にいるの?!なっち!!」

飯田は安倍と同郷であり、これまで辛い戦いにも
共に戦ってきた仲だった。
時には色々な面でぶつかり合うこともあった二人だったが
死線を越えた仲間だからこそ、言いたいことを言える友。
同い年であるにもかかわらず、安倍は少々子供っぽいところがあるため
生きているならば、きっと一人で不安に押し潰されてしまうであろう。

「なっち!!返事して!!」
「なっち!何処!?」

後藤も必死になって捜索するが、
広大な宇宙で一人彷徨う人間など、早々と見つけられるものではない。

「なっちぃ!!」
76 名前:ま〜 投稿日:2002年01月05日(土)21時49分57秒
『圭織・・。圭織・・。』

「え?!誰?後藤、呼んだ?」
「呼んでないよ。」

『圭織。』
「え?」

飯田は周囲を見渡してみるが、彼女に話し掛けてくる人間は
後藤以外には見当たらない。

『なっちなら行きとるで。』
「裕ちゃん?!」

『上や。上。』
「えっ?!」
彼女は指示された方を見るが、そこは漆黒の闇が広がるのみで
とてもじゃないが、安倍の姿など見当たらない。

「何処?!」
77 名前:ま〜 投稿日:2002年01月05日(土)21時50分56秒
『圭織なら分かるはずや。なっちが何処にいるか。』
「何処?なっち・・。」

飯田はゆっくりと機体を上昇させる。
しかしながら、付近には敵のMSも存在している為に
あまりゆっくりとした機動はとる事が出来ない。
事実、1機のザクが彼女に向かってマシンガンを連射してくる。

「それどころじゃないのよ!!!」
彼女はものすごい形相で敵を睨みつけるとトリガーを絞り
一発でザクを破壊する。
さらに迫り来るリックドム。

「ごっちん!!敵を何とかして!カオリはなっちを探す!」
「分かった!!」
78 名前:ま〜 投稿日:2002年01月05日(土)21時51分43秒
敵を任された後藤だったが、
彼女とて安倍の安否を気にせずにはいられない。
たとえ短期間とは言え、共に戦ってきた仲だ。
助けられる可能性が有るにもかかわらず、
むざむざ死なせたくはない。

「邪魔だよ!」

3機編隊で迫って来たリックドムを故意に隙を作って引き付けると
横の旋回に持ち込んで、まずは正確な射撃で1機を破壊する。
リックドムが放ったバズーカの弾丸を
余裕を持ってかわすと、1機をライフルで、
そしてもう1機をサーベルで切断する。

「圭織!なっちは?」

「だめ・・。見つからない・・!見つからないの!!」
79 名前:ま〜 投稿日:2002年01月05日(土)21時52分43秒
『圭織。落ち着きや。あんたなら見つけられる。』
「分かんないよ!!」
『大丈夫や。集中するんや。自分を信じて。』

飯田は言われた通りに、ひたすら周囲に気を配って
安倍の存在を探す為に気を集中する。

「だめだよ・・。分かんないよ・・。」
『良く見るんや。近くにおるで。』
「何処?」
『もうちょい上や。』

「なっち・・、なっち・・。」

彼女は思い切って目を瞑って動きを止めた。
戦場でそんな事をするのは危険だと分かっているが、
賭けに出た。安倍を探す為に。
80 名前:ま〜 投稿日:2002年01月05日(土)21時53分32秒
「ん?!」

飯田は何かを感じた。
常に一緒にいた感覚。
懐かしくもあり、自分にとって必要な感覚。

『見つけたようやな。』

飯田の視界の中には、少しばかり離れた場所に漂う
ノーマルスーツを纏った一人の少女が入っていた。

彼女は自分の機体をその人影にゆっくりと寄せると、
携帯型のバーニアを背中に付けて、外に出る。

「なっち?なっちだよね!?」
81 名前:ま〜 投稿日:2002年01月05日(土)21時54分07秒
自分の機体から離れて宇宙を遊泳することに対して
少しばかりの不安があることは否定できないが、
それでもただ一人で宇宙を彷徨っている安倍のことを考えると
そんなことは言っていられない。
思い切って外に出た飯田は、背中の携帯式バーニアを噴射させて
十数メートル離れていると思われる
一体のノーマルスーツ姿の人影に近寄る。

「なっち・・?」

見慣れたノーマルスーツ、そして見慣れた体型。
その人影が安倍以外の何者ではないことを彼女は瞬時に理解できた。
飯田はそのノーマルスーツの両肩を掴むと
ヘルメットのバイザー越しに、その顔を確認する。

「なっち!!なっち!!良かった!!」
安倍を見つけることが出来た喜びからか、
彼女は思いっきり安倍を揺すぶった。

「なっち!なっち!なっち・・・?」

しかしながら安倍の瞼は開かれない。
82 名前:ま〜 投稿日:2002年01月05日(土)21時54分41秒
「なっち・・?!ウソでしょ?!生きてるよね!?」

彼女は必死になって安倍を揺さぶるが、
一向に瞼が開かれる気配は無い。

「ちょっと!なっち!!変な冗談はやめてよね!!」

やっとの思いで安倍を見つけることが出来た為、
幾分か冷静さを取り戻していた飯田だったが、
瞼を開かない安倍を見て、最早冷静ではいられなくなっていた。

彼女にとって安倍とは、ある意味肉親以上の関係なのかもしれない。
常に共にいて、生死をともにした仲。
そんな安倍が自分の前から消えてしまうなど、
考えただけで発狂しそうになる。

「なっち!!お願いだよ!!目を開けて!!!」

彼女は安倍がムチウチになってしまうのでないかと言うほど
必死になって揺さぶった。
それだけではなく、安倍のヘルメットも必死に叩く。
何度も何度も。
83 名前:ま〜 投稿日:2002年01月05日(土)21時55分46秒
遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

>>73 名無し読者4649さん
レスありがとうございます。
>>俺もま〜さんのごまゆう信者です。(w
ありがとござんす。数少ないごまゆう作者ですから・・。
それから『後藤と中澤』シリーズですけど、
ネタがなかなか思いつかなくて。
ちょいと考えてみますよ。
84 名前:ま〜 投稿日:2002年01月07日(月)23時19分43秒
「ん・・・。痛いべさ・・。」
「なっち!?!なっち!?!」

飯田が十回以上安倍のヘルメットを叩いた時、
やっと安倍の目が開かれた。

「良かった〜!!!!なっち!生きててくれて・・。」

安倍が生きていてくれた喜びからか、
彼女の目からは、涙が止め処なく溢れると
球体となってヘルメットの内部のあちこちにぶつかっては弾ける。
彼女は、安倍の頭部を自分の胸に抱えるように思いっきり抱きしめた。

「良かった・・・。本当に良かった・・。」
85 名前:ま〜 投稿日:2002年01月07日(月)23時20分32秒
「痛い・・べさ・・・。」
「大丈夫?!どっか怪我してるの!?」

安倍の言葉に、彼女はハッとなって、
両腕を安倍から離すと、安倍のヘルメットを両手で掴んで
自分のヘルメットに押し当てる。

「怪我・・してるけど・・、圭織の力が強すぎだよ・・。」
「あっ、ごめん。でも、嬉しくて。」

「うん。ありがとう。なっちも嬉しいよ・・。」

安倍も、動かすことができる左腕で、ゆっくりと飯田を抱きしめた。

後に冷静になって考えると、もし安倍があのまま瞼を開かなかったら、
飯田自身、自分の酸素がなくなるまで、
ずっとあの場所で必死に安倍を揺さぶっていたのではないかと思った。
86 名前:ま〜 投稿日:2002年01月07日(月)23時21分18秒
彼女達は一旦集合した。
機体が大破している矢口は石川に、そして同様に大破した吉澤も機体を捨てて
保田の機体にそれぞれ収容されている。

「まったく・・。石川。あんたはいいわね。収容しているのが小さい矢口で。」

「でも、狭いです・・。」

収容するとは簡単に聞こえるが、
ただでさえ狭いコクピットの中で、人間が二人も入ろうものなら
狭すぎて満足に操縦もできない。

「あたしなんか吉澤がいるのよ!狭くてしょうがないわ!」
「ごめんなさい・・。」

保田の膝の上に乗って、メンバーの中でも背が高い吉澤が
小さくなって申し訳無さそうに言う。

「しょうがないじゃない。あんたを捨ててく訳にはいかないでしょ。」
87 名前:ま〜 投稿日:2002年01月07日(月)23時22分12秒
「文句言わないの!!仲間でしょ!!カオリだってなっちがいるんだから!」

怒鳴り声を上げる飯田だったが、
実際のところ、このままの状態では戦いどころではない。
事実、彼女の膝の上では、安倍が骨折による発熱からか
顔を赤くして息が荒くなっている。

「大丈夫?なっち?」

彼女は安倍の後ろから覗きこむようにしてバイザー越しに安倍の顔を見た。

「大丈夫だべさ・・。」

飯田を心配させない為にか、必死に作り笑いをしながら答えるが
額から溢れ出ている汗が、彼女の体調を物語っていた。
88 名前:ま〜 投稿日:2002年01月07日(月)23時23分09秒
「まずいね。一旦帰ろうか?」

とりあえず安倍の治療もしなければならないうえ、
矢口も重傷という程では無いが怪我を負っている。
それにこのままの状態では、飯田だけでなく
保田と石川も満足に戦える状態ではない。

「後藤と、辻加護だけか・・。よし、一旦帰還しよう!」

怪我人等だけでなく、ライフルのエネルギーが乏しいこと、
そして機体の推進剤も不足し始めている為、
彼女は一旦部隊を後退させ、ゼティマに帰還させることとした。

丁度そんな時だった。

「圭織。簡単には帰して貰えそうに無いね。」

彼女達の目前に、青いゲルググが率いる部隊が迫る。
89 名前:ま〜 投稿日:2002年01月07日(月)23時23分53秒
「どうする?圭織。」
「どうするも何も、逃げるしかないでしょ?」

保田の問いかけにそう答えはしたが、
すんなり全員が逃げる事ができるとは思えない。
付近に味方のMS部隊がいることはいるが、
到底彼らがあの部隊に立ち向かえないであろう。
満足に戦えるのは後藤と辻、加護だけ。

指揮官として、時として多くの部下を救う為に
少数の部下を切り捨てる事も必要なのだが、
彼女達を置き去りにして自分が撤退するほど
飯田は冷徹には徹しきれない。
その点では、彼女は指揮官失格なのかもしれなかった。
もっとも中澤が指揮官であっても同様だったかもしれない。

飯田はほとんど覚悟を決めていた。

「みんな、拙い指揮でごめんね。」
90 名前:ま〜 投稿日:2002年01月07日(月)23時24分48秒
後藤はこの時、決心をしていた。
自分がここに残って時間を稼げば、おそらく全員が助かるであろう。

『ごっちん・・。』
「裕ちゃん。ゴトウが残るよ・・。」

『ごっちんには貧乏くじを引かせてしもうたかもしれんが、
 それがおそらく最善の策やろうな。』
「分かってる。」

『それでこそ、うちが愛したごっちんや。』
「うん。」

『一人や無いで。うちが一緒におる!』
「うん!!」

後藤の顔は澄み切ったように晴れ晴れとしており、
その笑顔からは決して悲壮感は感じられなかった。
91 名前:ま〜 投稿日:2002年01月07日(月)23時25分22秒
「ごっちん。誰と喋ってるの?」

後藤がコクピットで話していたのが、
通信に乗ってメンバーに聞こえていた為、
不信に思った保田が後藤に問い掛けた。

「何でもない。」

後藤は笑顔で答える。
そして言った。

「あたしが・・、ゴトウが残る!みんなは逃げて!!」
92 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月07日(月)23時47分08秒
えっ!? せっかくなっちが助かったのに、今度は後藤が・・・
まさか、まさか・・・
93 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月08日(火)01時29分48秒
天国でごまゆう…
そんなのいや。
94 名前:ま〜 投稿日:2002年01月09日(水)00時30分00秒
「そ!そんな事できるわけ無いでしょ!!!」

真っ先に反応したのは当然のことながら飯田であった。
確かにこれまでの戦い振りを見れば、後藤をこの場に残して
殿軍とすれば全員が逃げきれるに充分の時間を稼いでくれるであろう。
しかし、例え味方のMS部隊が付近にいるとは言え、
彼女一人で戦わせるには、あまりに酷ではないかと飯田は思う。
できれば後藤と一緒に自分も残り、時間を稼ぎたいが、
何ぶんにもコクピットには安倍を収容しており
満足に戦える状況ではない。
彼女を別の機体に、例えば加護や辻の機体に収容する手もあるが
そんな暇があるとは思えなかった。

「それ以外に何か良い方法がある?」
「・・。」

後藤の指摘に飯田は答えられなかった。
95 名前:ま〜 投稿日:2002年01月09日(水)00時30分50秒
「うちと・・、ののも残ります!!」
「そうれす!ののも残ります!」

それ以上の会話が続かない飯田と後藤の間に入って
加護が突然大声を上げた。
そしてそれに追従するかのように辻も口を開く。

そんな二人を見ると、彼女達も数多くの戦いを経験して
一端のパイロットになった事を改めて認識し
飯田はこんな状況におかれているにもかかわらず、
ついつい頬が緩んでしまう。

「だめだよ。」

後藤も飯田と同様の心境なのか、優しい口調で諭すように言った。

「何でですか?!」
「そうれす。何でれすか!?」
96 名前:ま〜 投稿日:2002年01月09日(水)00時31分26秒
「だって、他のみんなは満足に戦える状態じゃないんだよ。
 もしゼティマに帰る途中に敵に襲われたら、誰が皆を守るの?」

「・・・。」

後藤の指摘は的確だった。
確かにここに戦えるメンバーが残ったならば
他のメンバーを護衛する者がいなくなってしまう。
下手をすると、帰還するメンバーと、
この場に残るメンバー両方の全滅の恐れさえあった。
ならば、最終的な手段は一つしかない。

「大丈夫。ここはゴトウに任せて。」

全員が黙り込んでしまった。
もしかすると、後藤の命と引き換えに
自分達が生き残ることとなる。



「後藤・・。危なくなったら逃げるんだよ・・。」

飯田の言葉が最終的にその場の会話を決定付けることとなった。
97 名前:ま〜 投稿日:2002年01月09日(水)00時32分18秒
「決まったね・・・。」

保田が力なく呟いた。
彼女とて後藤一人をこの場に残して撤退するなど、
本当ならば彼女のプライドが許さない。
ましてや敵は、彼女にとっての宿敵とも言える青いゲルググ。
戦いたいのは山々であったが、この状況ではどうにもならなかった。

「みんな。気をつけてね。」
「それはこっちのセリフだよ!」

微笑みながら言う後藤に、半ば本気で保田は怒っていた。
全員が後藤の心配をしているのに、
彼女の方から心配するようなセリフを吐くとは。

「・・礼は言わないよ。ごっちんが生きて帰ってきたら言ってやるよ。」
「圭ちゃん・・。」

「さあ!圭織!時間が無いよ!」

保田の言うとおり、敵は目前まで迫っていた。
98 名前:ま〜 投稿日:2002年01月09日(水)00時33分04秒
「行くよ、みんな。」
「はい・・。」
「わかったよ・・。」

リーダー飯田の命令に力なく全員が答える。
しかしながら全員がその場を離れようとしない。


迫り来る青いゲルググが率いる部隊が、味方のMS部隊と激突した。
連邦側は数が多いにもかかわらず、
優秀かつ勇敢な指揮官に率いられた敵側のMSに圧倒されている。
早々にも先頭に飛び出したボールに
バズーカの弾丸が直撃して爆発四散する。
GMの射撃をあっさりとかわし、薙刀状のサーベルを叩きつける青いゲルググ。
今にも彼女達に戦線が飛び火しそうな勢いであった。

「時間が無いよ!早く!」

後藤は叫びながら、味方のMS部隊を突破して迫るザクに対して
ライフルを放って撃墜する。

「後藤・・。ごめん!行くよ!」
99 名前:ま〜 投稿日:2002年01月09日(水)00時34分24秒
飯田達は出発した。
後藤を一人残して。

「ごめんね・・。なっちが不甲斐ないばかりに・・。」

安倍は思う。
もし自分が被弾して負傷していなければ、
後藤を一人で戦場に残すことなどしなかったのに。
安倍の流した涙は、決して負傷の痛みから来る物ではなかった。

「それは・・。カオリも同じ心境だよ・・。」

もし中澤がまだ生きていたならば、この状況をどのように解決したであろうか?
『飯田は飯田のやり方でやればいい』
寺田が言った言葉が頭の中で響き渡る。
自分のやり方は果たして正しかったのであろうか?
中澤から受け継いだこの部隊を満足に機能させることが出来たのであろうか?
彼女の頭の中で数多くの疑問が沸いて起こる。

戦争であるからには犠牲は付き物だ。
事実彼女も多くの仲間を失ってきた。中澤や福田を始めとして・・。

「カオリは・・、リーダー失格なのかな・・・。」
100 名前:ま〜 投稿日:2002年01月09日(水)00時35分05秒
「そんなことないべ。圭織は立派に戦ってるよ。」

飯田の独り言が聞こえていたのか、安倍が力なく言った。

「ありがとう・・。ありがとう。なっち・・。」

飯田の瞳からは、とめどなく涙が溢れてくる。
理由は分からないが、涙が止まらない。

「なっちありがとう・・・。」

彼女は、ただひたすらその言葉を繰り返していた。
101 名前:ま〜 投稿日:2002年01月09日(水)00時35分54秒
皆様、レスありがとうございます。

>>92 名無し読者さん
>>93 名無し読者さん
さて、後藤はどうなるんでしょうか?
作者の気持ち次第ですなぁ〜。w
102 名前:ギャンタンク 投稿日:2002年01月10日(木)10時56分36秒
「なっちありがとう・・・。」
この2ch用語ともいえる言葉がこんなにも効果的に使われるとは・・・
改めて作者さんの力量に感動。
北海道コンビの強い絆を感じる描写も最高です。
今後とも(メール欄も含めて)楽しみに読ませていただきます。
103 名前:ま〜 投稿日:2002年01月11日(金)00時52分40秒
「なあ。のの。」
「なんれすか?」

次第に遠ざかり、数多くの光点の一つとなりつつある後藤の機体を見ながら
加護が辻に話し掛ける。

「うちには、後藤さんが中澤さんとダブって見える・・。」

すでに戦死してこの世にいないはずの中澤であるにもかかわらず
加護には、何故か彼女が近くにいるような気がしてならなかった。
特に後藤と一緒に。
理由は分からない。ただなんとなくそんな感じがしていた。

「中澤さんは、後藤さんと一緒れすよ。」
「どういう意味や?」

辻の思わぬ返答に、彼女は自分から中澤の事を言い出したにもかかわらず
不思議そうな顔をしている。
104 名前:ま〜 投稿日:2002年01月11日(金)00時53分41秒
「中澤さんは、いつものの達と一緒れすよ。」
「そうか・・。」

理屈ではなく、辻にはそのような感じがしていた。
別に彼女から中澤が見えるわけではない。
それでも彼女は感じていた。
中澤の存在を。

だからこそ後藤は戦えるのであろう。
一時中澤を失って以来、廃人と化していた後藤に何があったかは分からないが
その彼女が今、ここで自分達を守って戦っている。

「やっぱり中澤さんなのかな・・。」

感謝すると共に、少しばかりの嫉妬心が沸き起こってしまう加護だった。
105 名前:ま〜 投稿日:2002年01月11日(金)00時54分38秒
「みんな、無事に逃げれたみたいだね・・。」

後藤は去り行く5つの光点を見ながら呟いた。
寂しい気持ちが無いと言えば嘘になるかもしれない。
もしかするとこの別れが永遠の別れになるかもしれないにもかかわらず。

例えほんの2ヶ月程度共にいただけかもしれないメンバー。
それでもこの2ヶ月は、一緒に生死を共にした仲間達だ。

『ごっちん。元気出しや。』

何処からともなく聞こえてくる声。
彼女に勇気を与えてくれる声。

「うん・・。」

彼女は一人ではなかった。
その声で一気に気持ちが引き締まる。

「ここから・・・、ここから1機も通さないよ!!」
106 名前:ま〜 投稿日:2002年01月11日(金)00時55分38秒
撤退しつつある飯田達を追撃しようとしているのか
3機編隊のザクが彼女達が撤退していった方向に向かって突き進む。

「通さないって言ってるでしょ!」

後藤はスロットルを折れよと言わんばかりに叩きつけると
出しうる最大の速力で敵を追う。
1機のザクを正確無比な射撃で撃ち落す。
すると残る2機が彼女の存在に気づいたのか、方向を変えて後藤に迫る。

連射されるマシンガンの弾丸を、いともあっさりと避けると
猛スピードで接近し、1機のザクにサーベルを突き立てた。

僚機を落されて激怒しているのか、
無謀にも残りの1機が接近戦を挑んでくるが、
後藤は機体の頭部に装備されている60mmのバルカン砲で迎え撃った。
ザクの機体にバルカン砲の弾丸が炸裂し
機体のあちこちに火花が散る。

「無駄なんだよ・・。」
107 名前:ま〜 投稿日:2002年01月11日(金)00時56分16秒
『ごっちん!上!』

後藤の隙を狙ったつもりなのか、
彼女の上方より1機のリックドムがバズーカを放つが、
何故か後藤には敵の動きがスローモーションのようにゆっくりと見えた。

「うん!見えるよ!裕ちゃん。」

余裕の表情で敵の攻撃を避け、返す刀で敵を撃ち落す。

『まだまだ来るで!ごっちん!』

「うん!大丈夫!」

後藤は微笑んでいた。
別に彼女は戦うことに喜びを感じているわけではない。
ただ、彼女にとって大事な人が近くにいてくれる。
大事な人が近くで彼女を守ってくれている。
それが嬉しかった。
108 名前:ま〜 投稿日:2002年01月11日(金)00時57分48秒
>>102 ギャンタンクさん

お久しぶりです。レスありがとうございます。
恐縮です。
そんなに誉められても何も出ませんよ。
出るのはウン・・

( ^▽^)<しないよ!

メール欄は連続投稿を避ける待ちの暇つぶしで書き込んでます。
そこまで見てくれるとは・・。
109 名前:レク 投稿日:2002年01月19日(土)00時26分53秒
保全sage
110 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時36分28秒
味方のMSが破壊される。
敵のMSもが巨大な閃光を放って消滅する。

数多くの味方に混じって、後藤もただ一人奮戦していた。
この戦いが始まった当初、圧倒的に戦局を有利に運んでいたジオン軍だったが
ある一時を境に連邦軍が有利な状態になっていた。
彼女達にその理由は分からなかったが、それは事実であった。

しかし例え戦局が有利になっても、
彼女が一人で奮戦している事実に換わりは無い。
確かに数多くの味方MSも頑張っているものの、
彼女ほどの活躍を期待するのは酷であった。

そんな乱戦の中、後藤は敵に向かってトリガーを押し敵を破壊し、
操縦桿を押し込みペダルを踏み込んで敵弾を避ける

「みんな・・。無事に帰れたかな・・。」
111 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時37分51秒
『ごっちん。他人のことより自分の心配せいや。』

どこからとも無く声が聞こえてくる。

後藤は咄嗟にペダルを踏み込みつつ、操縦桿を引き付ける。
瞬間、彼女の体を凄まじいGが襲い掛かる。
後藤が歯を食いしばってそのGに耐えると、
ほんの1秒前に彼女が存在していた宙域を
煙を吐きつつ流れ飛んできた弾丸が空を切った。

「そんな簡単にはやられないよ!」

そのままペダルを踏み込んで一気に敵に向かって突っ込むと
彼女のモニター正面に先程彼女に向かって弾丸を放った敵機が
すっと滑り込むように入ってくる。

「いただき・・。」

操縦桿の先に付いているトリガーを押し込むと
正確にビームが一閃し、敵機が消し飛ぶ。
112 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時38分19秒
『ごっちん!来るで!奴や!』

後藤の頭脳にいつもの声が響き渡る。
そして彼女の視線の先に存在しているのは
彼女達が忘れもしない、寄って集っても倒せなかった、あの青いMS。

「あいつだ・・。」

彼女が見ている目の前で、あたかも見せ付けるかのように
味方のMSを次々破壊していく青いMS。

『ごっちん。大丈夫や。うちが着いてる。』

「うん!」

後藤は元気そうに声を上げると、その敵の部隊に突っ込んでいった。
113 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時39分12秒
敵の1機が彼女の接近に気づいたのか、
彼女の方を振り向くと、マシンガンを連射する。
後藤はその弾丸を左右に横滑りしながら回避すると、
瞬時に上昇に入る。
彼女のその動作があまりに急であった為か、
敵機は追従する事が出来なかった。
その隙を見て、後藤は敵機にビームを撃ち込む。
この日、何機目だか分からない彼女の戦果。

そんな後藤を、容易ならん敵と悟ったのか、
敵部隊の指揮官とも言うべき、青いMSが彼女の正面に出てくる。

「・・・来た・・・。」

後藤はその敵機が持つ、細長いライフルから放たれたビームを
すんでのところで回避した。
114 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時39分51秒
『ごっちん・・。』
「大丈夫!見えるよ!」

後藤はその問いかけとも言える言葉に、健気に返事をする。
中澤達が全員で襲い掛かっても倒せなかった敵。
そんな敵を相手にするのに少しばかりの不安が無いと言えば嘘になるが
今、彼女には心強い味方がいた。
現にここに存在しているわけではないが、
心の中に、そして彼女の近くに『それ』は存在する。

『ごっちん。気をつけや。』

「うん!」
115 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時41分20秒
後藤は操縦桿の先に付いている60mmバルカンの発射ボタンを押す。
機体を通じて軽い衝撃が後藤に伝わり、
弾丸が正確に発射していることを認識する。

射線は誤る事無く敵機に命中した。
青いMSの機体の方から胸のあたりにかけて
炸裂弾頭を装備した弾丸がいくつか火花を散らす。
しかし、それは機体の塗装を幾分か剥がし
表面に僅かに傷をつけたに過ぎなかった。

「まあ、そんな簡単にいかないか・・。」

強力な敵機と戦っている実感は後藤には無かった。
付近の味方機が功に早って返り討ちにあうなか、
彼女は冷静に敵機に対処している。
116 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時42分10秒
あの青い指揮官機を排除しなければ、
この付近の連邦軍の戦線は崩壊してしまう。
後藤は冷静に分析していた。
もしこの戦線を突破されれば、先程離脱を図った
飯田達の部隊が全速で追撃を受け、ともすれば彼女達が危ない。
もちろん彼女達の母艦でもあるゼティマにも危機が迫るであろう。

「あれを・・、倒さないと。」

近付きつつ、敵の指揮官機目指してライフルを連射するが、
敵はあたかも後藤の行動を読んでいるかのように
右に左にと簡単に回避する。

「もう・・・・!」

次第に後藤もいらつき始めていた。
117 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時43分00秒
思い切って突っ込んでいった後藤に対して
付近にいた側近と思しき敵機が、後藤に向かってくる。

「じゃまだよ。」

そんな敵機を後藤はいとも簡単にライフルの連射で排除する。
この時になって、ようやく敵の指揮官機が
彼女が容易ならぬ敵と認識したのか後藤に向かってくる。

「来た・・。」

後藤と敵の指揮官機と壮絶な一騎打ちが始まった。
118 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時43分50秒
後藤がトリガーを押し込んでライフルを放つ。
一方、青いゲルググもビームを迸らせる。
時には接近し、両者のサーベルがぶつかり合って火花を散らす。

後藤が振り下ろしたサーベルを
シールドで弾き返すと、そのままシールドで後藤の機体を弾き飛ばす。
華奢な後藤の機体は、その勢いで跳ね飛ばされる。

「きゃん!」
強烈な衝撃が後藤を襲い、シートベルトが否応無く彼女の体を締め上げる。

敵機はそのまま後藤の機体に接近し、
サーベルを振り上げる。

「まだ・・!!」

彼女はペダルを踏み込むみつつ、
敵機に向かってバルカンを連射して牽制すると
フルブーストで一旦敵機から遠ざかる。

いつしか敵味方とも彼女達の戦いに見入っていしまっていた。
119 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時44分38秒
再び2機の間でビームの浪費とも言える応酬が始まる。
両機ともバーニアを全開にして
互いのビームをかわしつつ、お互いにビームを撃ち合う。
2機の戦いはこのまま永久に続くかのように思われた。

均衡が破れたのは横合いから放たれた一筋のビームだった。
後藤に集中していた敵機に対して
味方のGMが接近しつつビームを放ったのだ。

今なら敵の指揮官機を倒せると思ったのかもしれない。
その考えは間違っていなかったかもしれない。
ただ、その味方のGMのパイロットには
それだけの腕前が無かった。
そして運も無かった。
不用意にビームを放って接近したGMが
指揮官機である青いゲルググのサーベルに真っ二つに切断される。
120 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時45分11秒
『ごっちん!!』
「うん!分かってる!」

一瞬の隙であった。
しかし後藤にはそれで充分だった。
後藤のトリガーを押すと、一筋のビームが迸り、
青いゲルググの右腕をビームライフルごと吹き飛ばす。

「当たった!!」

中澤や保田達が寄って集って傷をつけることが出来なかった敵機を
後藤が撃破することに成功した。

この時後藤がこの青いゲルググに止めをさせなかったのは
付近の敵機が指揮官機を守るべく集まり、
また連邦軍のMS部隊も殺到してしまった為に
混戦状態に陥り、青いゲルググが何時の間にか戦場から
姿を消してしまった為であった。

もしこの時後藤が止めを指すことに成功していたならば
後の歴史が大きく変わっていたかもしれない。
120 名前:ま〜 投稿日:2002年01月20日(日)01時47分56秒
>>109 レクさん
レスありがとうございます。
はじめまして。
保全sageとは・・。seekではあまり見ない言葉を・・。
でもちょっと嬉しいっす!
もっともここでは直ぐにdat逝きが無いですから
マターリと逝けます。
121 名前:レク 投稿日:2002年01月21日(月)00時20分58秒
はじめまして。いままでずっとROMってましたのですが・・・
面白いっすよ。これからも期待してます。
まぁそろそろ終了の匂いも漂ってますけど・・・・・
122 名前:ま〜 投稿日:2002年01月23日(水)00時48分53秒
後藤が敵機と壮絶な戦闘をしていた頃、
Nフィールドと呼ばれる戦域から
ア・バオア・クー宙域に侵入したゼティマを始めとした連邦軍艦隊は
ジオン軍の猛烈な迎撃により、すでに半数近い艦艇を撃沈されていた。
残った艦艇も無傷な艦は一隻も無く、
すべての艦は爆炎に撫でられた無残な姿をさらしている。
それはゼティマとて例外ではなく、
主砲搭や高角砲等、三分の一が破壊されて
戦闘能力は激減していた。

「左舷ムサイ級巡洋艦!発砲しました!」

戦闘艦橋の中でオペレーターの前田の悲鳴が響き渡る。
数秒後、激しい振動と衝撃がゼティマを襲い
立っていた者はもちろんのこと、座っていた者まで
吹き飛ばされて全身を強打する。

「上部1番砲塔使用不能!」

ムサイ級巡洋艦の放ったメガ粒子砲は
誤る事無くゼティマの艦首にある主砲搭に命中し
強烈な閃光と破片を撒き散らした。
爆炎が去った後には、2つの砲身はすでに消え去っており
ささくれ立った竹のような残骸が、
砲身がかつてそこに存在したことを物語っている。
123 名前:ま〜 投稿日:2002年01月23日(水)00時49分37秒
「くそっ!反撃や!目標左舷のムサイ!」

寺田は舌打ちをしたが、それで状況が改善するわけではない。
矢継ぎ早に命令を出して反撃の体制をとる。

上部と左舷にある砲塔がそれぞれ目標を定めてゆっくりと旋回する。
わずか数秒の時間ではあったが、それが寺田には数時間にも感じた。

「まだか?!」
「照準OKです!」
「撃て!」

前田の返事が聞こえるや否や、寺田の怒号が艦橋に響き渡った。

太い砲身から迸ったビームは、一直線に誤る事無くムサイを捕らえた。
まず最初に命中した一弾が、背負式に配置された主砲搭をごっそりと削ぎ落とし
吹き上がった破片が艦橋を襲う。
続いて命中したビームは後部のエンジンを直撃し、
艦の動力源である核パルスエンジンを吹き飛ばした。

「目標沈黙。」

艦橋内に安堵のため息が広がっていく。
そしてこれがゼティマがこの戦いに上げた最後の戦果となった。
124 名前:ま〜 投稿日:2002年01月23日(水)00時50分42秒
「艦長。飯田隊長の部隊が帰還してきます。」

前田の声に釣られたかのように、正面のスクリーンを見て、
寺田は愕然とした。
当初出撃した彼女達は8機であった。
後から出撃して飯田達を追いかけた後藤を含めても9機。
しかし現在彼の前に現れたのは、たったの5機。

「他は・・・。他の連中はどうしたんや・・?」

不断あまり動揺するような表情を見せない寺田であったが、
この時は流石に動揺していた。
今まで彼が指揮下に置いた部隊で、半数近くも未帰還機を出したことは無かった。
それだけ彼の部下が優秀であったのは事実であるが、
そんな彼女達が半数近くも帰ってこないとは・・・。
125 名前:ま〜 投稿日:2002年01月23日(水)00時51分34秒
しかしそんな彼の不安も、続いて入った連絡によって杞憂と化した。
全員が、中には怪我をしているものもいるが、無事に帰還できたからだ。
ただ一人後藤を除いて。


「なっち・・。なっち。帰ってきたよ。」

着艦したMSデッキの中、コクピットで意識が朦朧としている安倍を
飯田が揺さぶりながら起こす。

「ん・・・。着いたの?」
「うん。」

彼女の顔色の悪さが彼女の調子を物語っている。
そんな安倍を飯田は狭いコクピットの中でゆっくりと抱き上げると
そのままコクピットの外に出た。

「ん!!」
激痛に安倍の顔がゆがむ。
「あ!ごめん。」
126 名前:ま〜 投稿日:2002年01月23日(水)00時53分02秒
「ん・・・。大丈夫だよ・・。」

言葉とは裏腹に安倍のその表情はお世辞にも良いとはいえない。
それでも自分が足を引っ張ったことに対してなのか
それともただ単に飯田を気遣ってのことなのか、
痛みのために引きつった笑顔を見せる。

「それより、ごっちんは・・?」
「ごっちんは・・、大丈夫だよ。」
「・・・・。」

飯田の腕の中、飯田の心を読み取ったかのように安倍が力なく笑う。
二人の付き合いの長さを考えれば
少々のウソなど簡単に見破られるのが関の山だった。

後藤と別れて以来、大した時間が経っていなかったが
あれだけの敵、しかも彼女達にとって天敵とも言える
あのMS部隊を相手に、いくら後藤と言えども苦戦は免れえないであろう。
そんなこと位、意識が朦朧としている安倍でさえ分かることだ。

「それよりなっち!怪我してるんだから医務室行かないと!!」

彼女達が帰還したMSデッキには、誰が連絡を入れたかは分からないが
すでに医療班が担架を持って待機していた。
127 名前:ま〜 投稿日:2002年01月23日(水)00時54分20秒
「なっち。後はカオリ達に任せてゆっくり怪我を治しな。」

担架にベルトで固定されている安倍が
彼女達の方を見ながら微笑みつつ、無事な方の手を振りながら
医療班の手によって運ばれていった。
同様に怪我をしている矢口も、そして軽傷ではあるが
怪我をした吉澤も運ばれていく。

そんな彼女達を飯田は笑顔で見送った。
しかしながら心はここに無いといった感じの笑顔。

彼女は安倍達がMSデッキから消え去ると、
何かを決心した様にデッキから飛び出していく。

「圭織!何処行くの!!?」
「飯田さん?!」

保田や石川の叫び声は、MSデッキの喧騒に包まれて
飯田の耳には届かなかった。
128 名前:ま〜 投稿日:2002年01月23日(水)00時57分36秒
>>121 レクさん
レスありがとうございます。
もうすぐ終わりと言ってながら1ヶ月も経ってしまった・・。
どうも最近筆(キーボード)が進まなくて。
まあこれからもよろしくお願いします。
これ終わったらまた何か書くかもしれないし。

それにしても、何でこのスレのレス番号120が2つもあるんだろう?
129 名前:七誌作車 投稿日:2002年01月23日(水)02時26分57秒
初レスです。でもずっと読んでました。
怪我人も増えていよいよ…って感じですね!
なんで120が2つあるんでしょう…

( `.∀´)< 圭織!リーダーなのに目立ってないけど無理しないで!
130 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月23日(水)21時31分53秒
( ´D`)<レスにレスするのれす。へいへい。てへてへ。
今回これ↑じゃなかった(メール欄)のは何か
意味があるんでしょうか??
120も不思議です。
終盤もどんどこ進み…終わってほしくないため微妙な感じです。
131 名前:ま〜 投稿日:2002年01月30日(水)01時04分49秒
「どこ行ったんですかね・・?」

石川の、ともすればその声自体が超音波兵器にでもなりそうな
甲高い声で保田に問い掛ける。

「・・。知らないわよ!」

別に怒鳴るつもりなどなかった。
戦い続けた事による疲労なのか、それとも
後藤を置き去りにしてしまった後ろめたさから来る物なのか
彼女は少しばかりいらついていた。

「まったく・・。」

保田は憮然とした表情で呟くと、右手で頭を掻きながら飯田の後を追う。
132 名前:ま〜 投稿日:2002年01月30日(水)01時05分37秒
「きゃー!!」

廊下を急いでハンドグリップを用い移動している飯田を
激しい衝撃と振動が襲い掛かり、体を強かに壁にぶつける。
思わずハンドグリップから手が離れてしまい、
バウンドするように反対側の壁にも体を打ちつけた。

艦の重要部に被弾したのか、艦内に焦げ臭い匂いが立ち込め
煙が廊下にも漂ってくる。

「痛たた・・。」

彼女は必死に壁から離れると、強打した左半身を右手で形ばかり撫でる。
そして起き上がると、長い髪を鬱陶しそうに掻き揚げて
再びハンドグリップを掴む。

「急がないと・・。」
133 名前:ま〜 投稿日:2002年01月30日(水)01時06分42秒
「艦長!もう1回出撃させてください!!」

喧騒に包まれる艦橋の扉が開くや否や、飯田の声によって一瞬の静寂が訪れ、
そこにいた乗組員の全員の視線が彼女に集中する。
息を切らせて肩を上下させる彼女の表情は、切羽詰ったよう見受けられ、
自慢の長い髪も、汗にまみれて慣性の法則に従って大きく揺れていた。

「艦長!!」

飯田は、例え後藤の腕前が良かろうとも、
あれだけの敵を相手にして無事で済むとは思っていなかった。
指揮官として時として部下を見捨てなければならないときもある。

しかし、今現在後藤に比べれば比較にならないほど安全な場所にいて
それでいて自分が厚い装甲の中でのほほんとしていいられるほど
彼女は無神経ではなかった。
134 名前:ま〜 投稿日:2002年01月30日(水)01時07分35秒
再び機体の補給を済ませれば出撃できる。
しかしながら、出撃するには上官の艦長の許可が必要であった。
もちろん勝手に機体に乗り込み、出撃は出来ることは可能だ。

だが、現在他のMSも整備中であり、数多くの整備員は
デッキでヘルメットのバイザーを下ろしておらず、
人によってはノーマルスーツすら着ていないものもいる。
そんな中で飯田が勝手に出撃しようとMSデッキのハッチを開こうものなら
彼らは外に吸い出されてしまうであろう。
それを避けるためにも、艦長からの直々の再出撃の許可を得なければならない。

「艦長!後藤は今1人で闘っているんです!!
 お願いです!カオリ1人でも良いです!助けに行かせて下さい!!!」

彼女は必死に懇願した。
しかし、艦の多くの部分が被弾し、応急修理の指示、
そして敵への迎撃の指示、艦長のやることは多く、
飯田1人に構っている暇などはなかった。
現に彼は指示を出すのに忙しく、彼女には見向きもしない。

「艦長!聞いてるんですか!?!」
135 名前:ま〜 投稿日:2002年01月30日(水)01時08分34秒
いくら呼んでも無視される形となった彼女は、とうとう業を煮やして
艦橋の中央部にある艦長席に飛びつくように近づくと
寺田の左腕に掴みかかって訴えた。

「艦長!!再出撃を・・・。」

飯田の必死の願いも空しく、
寺田の次の一言が彼女に絶望を与えることとなる。

「だめや。」

「何でですか!?理由を教えて下さい!!」

「後退する。」

飯田は絶句した。
おそらく後藤は、飯田たちが再び戦場に戻ってくることなど
期待してはいないであろう。
それでも彼女は後藤を助けに行きたかった。
彼女を部下とする指揮官としてでは無く、
短いながらも共に激烈な戦場で生死を共にした仲間を、
そして彼女達の為に自らの命を危険にさらせて
味方を脱出させた仲間を救いたかった。
にもかかわらず、このまま母艦が後退してしまっては、
後藤を助けに行くことなど、完全に不可能となる。
136 名前:ま〜 投稿日:2002年01月30日(水)01時09分36秒
「で、でも・・、後藤が・・。」

「後退する!」

憮然とした表情で寺田が言い切った。

すでにゼティマは艦の多くの場所に被弾しており
戦闘能力はおよそ3分の1程度になっている。
その時、一際大きな衝撃がゼティマを襲うと同時に
オペレーターの前田の悲痛な声が乗組員の鼓膜を刺激した。

「機関部被弾。出力30パーセントに低下しました・・・。」

「ここまでやな・・。後退する!!」

報告を受けた寺田が完全に決断を下した。
機関部が被弾しなければ、戦闘が不可能ではなかったかもしれない。
しかし、もはや出力が低下して、戦闘能力の過半を失った艦艇など、
所詮大きな金属の箱に過ぎなかった。

「でも!でも後藤が!!」
137 名前:ま〜 投稿日:2002年01月30日(水)01時10分49秒
指揮官として、艦長として、熟練とは言えパイロット一人と、
指揮下にある百名を超える乗組員とを天秤にかけたならば、
後者に針が振れるのは、自然なことであったかもしれない。

「後退するんや・・。もう、ゼティマは戦えへん・・。」

「そんな・・。」

「すまん・・。すまん・・。」

寺田が言った謝罪の言葉は、
飯田に言った言葉なのか、それともこの場にはいない後藤に言った言葉なのか
彼女には、そして寺田自身も判断できなかった。

ただ、寺田の副官である戸田が、飯田の背後から近付いて
彼女の肩に手を置くと、ゆっくりと首を左右に振った。
138 名前:ま〜 投稿日:2002年01月30日(水)01時12分32秒
皆様、レスありがとうございます。

>>129 七誌作車
いよいよ終わりに近付いてまいりました。
半年以上もお付き合いをいただけるとは・・。
光栄です。

>>130 名無し読者さん
>>( ´D`)<レスにレスするのれす。へいへい。てへてへ。
>>今回これ↑じゃなかった(メール欄)のは何か意味があるんでしょうか??
すいません。クキーとJAVAをONにしてたのを忘れてたんです。
意味はありません・・。

最近仕事忙しくて、更新が遅れ気味ですまんのれす。
139 名前:130 投稿日:2002年01月30日(水)03時54分23秒
更新おつかれさまです。
意味無いのならいいんです(w
何かを予知してるのかと思って…
後藤・・・どうなるんでしょ?
がんばってください。
140 名前:ま〜 投稿日:2002年02月13日(水)00時20分04秒
自分でも気づかないうちに艦橋を後にしていた。
絶望的な、そして呆然とした表情で飯田は廊下に佇んでいる自分に気づく。

自分は隊長として何が出来たであろうか?
今は亡き中澤から受け継いだ物を維持できたであろうか?
そう考えてから、長い髪の毛を振り回して
首を大きく左右に振った。

戦果を上げるどころか、数多くの怪我人を出し、
あまつさえ後藤を戦場にただ一人残して自分は逃げ出した。
たとえ自分が盾になることを後藤が望んだにしても、
最終的に決断したのは、飯田自身であった。

「カオリは・・、リーダー失格だね・・。」

まるで精根尽き果てた人間のように、ぐったりと壁に凭れ掛る。
頬が壁に触れると、その冷たさが彼女の皮膚に伝わってくる。

「カオリの心は、この壁よりも冷たいよ・・。」
141 名前:ま〜 投稿日:2002年02月13日(水)00時20分59秒
「裕ちゃん・・。」
今は亡き中澤。
自分を次のリーダーにと言い残してこの世を去った。
自分はリーダー失格であったかもしれないかもしれないが、
それでも皆は信頼してくれ、自分に付いて来てくれた。

「後藤・・。」
自分達を逃がしてくれた時の後藤の表情が脳裏に思い出される。
凛々しくもあり、頼もしかった。

「後藤・・後藤・・・・。」
重く圧し掛かる自分の決断に対する責任。
決して安易に決断したわけではない。
しかしながらその判断で、後藤は現在多くの敵と戦い
苦しんでいる。彼女達のために。

「後藤・・。助けに行かないと。」
飯田の足は自然とMSデッキへと向かっていた。
142 名前:ま〜 投稿日:2002年02月13日(水)00時21分34秒
「待ちな!圭織。」

彼女は突如、背後から自分を呼ぶ声を聞いて正気に戻った。
振り向くと、不敵な笑みを浮かべているよく知った人物。

「圭ちゃん・・。」

「あんた、一人で行くつもり?」

飯田に話し掛けた彼女は、ゆっくりと近付くと
飯田の肩を軽く叩いて、顔を覗きこむように見詰めた。

「まさか・・。圭ちゃん・・。」
「一人で行かせると思う?」
「じゃ・・、じゃあ、圭ちゃんも?!」

保田の返答に期待を寄せつつ、飯田は笑顔で保田の両肩を掴んだ。
143 名前:ま〜 投稿日:2002年02月13日(水)00時22分05秒
もし保田が一緒に出撃してくれるならば、これほど心強いことは無い。
確かに飯田自身、類稀なる腕前を持つパイロットだ。
そこいらにいる一般のパイロット10人で寄って集っても倒せないであろう。
安倍や、今は亡き中澤たちの最強チームならば、
彼女達を撃墜するのに、数十人の敵パイロットに死を強制することになる。
それ程の腕前を持つ飯田ではあるが、
さすがに一人で敵陣に突入するのは無理ではないかと、飯田も思う。

しかしながら、彼女の出撃に保田が加わってペアを組めば
飯田も安心して背後を任せることができる。
もっとも、他のメンバーを残して聞くのは気がかりだが、
現在待機室で待機している平家や、
ゼティマの直援をしているココナッツ隊に任せて大丈夫であろう。
そう、飯田は思っていた。

「圭ちゃん・・。行こう!!」

「・・・・。」

「圭ちゃん・・?」
144 名前:ま〜 投稿日:2002年02月13日(水)00時22分44秒
てっきり二つ返事で出撃するであろうと思われた保田が
突然黙り込んで俯いてしまった為に、彼女は余計にムキになってしまう。

「どうしたの圭ちゃん。一緒に後藤を・・、ごっちんを助けに行こうよ!」

「・・。」

「ねえ!圭ちゃん!」

黙り込む保田を、飯田は両肩を掴んで揺さぶった。

「ねえ!」

そんな飯田に対して、保田がゆっくりと口を開いた。
ゆっくりと、そしてはっきりと。

「圭織を・・、行かせる訳には行かない。」
145 名前:ま〜 投稿日:2002年02月13日(水)00時24分38秒
久しぶりの更新。

>>139 130さん
レスありがとうございます。
別に意味は無かったんですよ・・。
すいません。
まあ、これからもよろしくお願い致します。
146 名前:某さくしゃ 投稿日:2002年02月15日(金)23時24分43秒
ヤッスーどうして?
助けてあげなよ!
続き気になりまする。
147 名前:ギャンタンク 投稿日:2002年02月15日(金)23時53分58秒
更新うれしいっす。今後も更新楽しみにしてます。
エンディングも近いみたいですが、作者さんがんばってください。
148 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時17分03秒
「ちょっと・・・。どういう事?圭ちゃん?まさか圭織を置いて一人で・・?」

「ふっ・・・、まさか。」

飯田の、いつもながらの少々ピントがボケたような返答に対して
保田は軽く鼻で笑うと、嘲笑するような口調で、そう言った。

「ちょっと・・。圭ちゃん。どういう事?」

「だから。圭織に行かせない。もちろんあたしも行かない。」

「え?!」

保田の思わぬ返答に、飯田自身絶句してしまう。
先程まで、あたかも保田が共に出撃してくれるようなセリフを吐きながら、
彼女自体出撃しなければ、飯田にも出撃させないと言う。
しかしながら、次の保田の言葉が、飯田にショックを与えた。

「誰も・・、後藤の助けには行かせない。」
149 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時17分50秒
「ちょっ!圭ちゃん!後藤を見捨てるつもり!?!」

もし自分が保田に対して、後藤を助ける為に出撃すると言えば
喜んで彼女は付いて来ると思っていた。
例え、ほんの数ヶ月とはいえ共に死線を超えてきた仲。
その後藤が、自分の体を盾にして、皆を逃がしてくれた。
そんな後藤を助けに行くのは、義理堅そうな、
そして仲間を信頼していそうな保田ならば、
きっと共に出撃してくれるであろう。そう、飯田は思っていた。
にもかかわらず、出撃しないどころか、
飯田も出撃させないとは・・・・。

「後藤は、カオリ達を助ける為に残ったんだよ!!
 今度はカオリ達が後藤を助ける番じゃないの!?!?」

普段は、あまり感情的にはならず、
どちらかと言えば冷静に物事を見るタイプである飯田が、
艦長命令を無視してまで後藤を助けに行くつもりであったその彼女が、
この時は、やや感情的になりつつある。
150 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時18分27秒
一方の保田は飯田が感情的になるに反比例するように冷静になる。

「今、あたし達が後藤を助ける為に出撃して、
 それで、もしあたし達に何か有ったならば、後藤は喜ぶと思う?」

彼女の言葉は、飯田にとって衝撃的だったかもしれない。
普段冷静ではあるが、やや好戦的な保田。
その彼女が、このようなセリフを吐くのは飯田にとって意外であった。

「そ・・、それは・・。」

黙り込んでしまった飯田から、わざと視線をそらし
遠くにいる誰かに話し掛けるような素振りで保田が口を開いた。

「あたしは、ごっちんと約束したの。帰ってきたら礼を言ってやるって。」

「で・・。でも!」

抗議の声を上げようとする飯田を、右手を上げて遮る。

「あたしは信じてる。ごっちんが帰ってくるって。
 だから、圭織もごっちんを信じてあげて欲しい。リーダーとして。仲間として。」
151 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時19分06秒
「でも・・。ごっちんは、後藤は、たった一人で・・。
 カオリは助けなければいけないの・・。それがカオリの・・。」

この時、飯田は幾分か冷静さを欠いていたのかもしれない。
普段ならば比較的冷静な彼女ではあるが、
にもかかわらず、否、だからこそなのか、彼女は興奮していた。

「圭織。行くつもり?」
「・・・。」

保田の最終確認とも言える言葉に、彼女は無言で頷く。

「そう・・。」

半ば諦めかけた保田の脇を、ゆっくりと
そして決意を持った眼で、飯田が通り過ぎようとしている。
そんな時、保田の背後から声がした。


「いいらさん!いかせません!!」
152 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時19分39秒
「辻・・・。それに加護も。」

保田が彼女達の存在に気づくのと、
飯田が気づくのは、ほぼ同時であった。
てっきり二人共まだMSデッキに残っているであろうと思っていた。
例え多くの戦いを切り抜けてきたとは言え、
このチビッコ二人組みのことだ、パイロット待機室で遊んでいるだろう、
そう二人は思っていた。
その二人組が、今この場にいる。
そして、飯田の再出撃を阻もうとしている。


「二人共・・。なんで?」

小さい二人組みに突然声を掛けられたからなのか、
やや冷静さ加減を取り戻した飯田が、二人の視線に合わせるかのように
両手を膝に当てて中腰の姿勢をとり、二人に話し掛ける。

「後藤さんが言ったからや・・。」
153 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時20分14秒
「え?いつそんな事言ったの?」

飯田はコメカミに指を当てると、この二人組が
後藤としていた会話を自分の記憶を探って確認しようとした。
『残る』『残らない』
そのような会話をしていたのではないか?
当時の会話の中に、飯田を後藤の戦場に戻してはいけないなどという
そんな会話は無かった。

にもかかわらず、彼女達二人組は、
何時に無く真剣な表情で、背の高い飯田の顔を見詰めている。
はっきりとした信念の元に。

「さっき・・、言ったのれす。」
154 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時21分02秒
「さっきって・・?」

飯田は怪訝そうな表情で二人の顔を覗きこむ。
それはそうであろう。先程後藤と別れて以来、飯田はもちろん
二人共後藤と会ってもいなければ、話もしていない。
にもかかわらず、辻は言った。『さっき』と。

「つぃには・・、辻には聞こえたのれす!!後藤さんの声が!」

普段は舌っ足らずな離し方をする辻ではあるが、
この時は、自分の意思を主張したかった為であろうか、
はっきりとした口調で言い切った。

「加護にも聞こえました。」

加護も辻に同調するかのように同じ事を言う。

飯田には分からなかった。
遥か遠くにいる後藤の声が、彼女達には聞こえているのだと言う事が。

「どうして・・?」

自分には理解できない。そう思ったときだった。
155 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時21分44秒
『圭織。ゴトウは大丈夫。安心して。』

何処からとも無く聞こえてきた声。
耳からではなく、直接頭に響いてくる聞き覚えのある声。

「ごっちん!?!!」

飯田はきょろきょろと周りを見渡した。
もちろんの事、彼女の近くに声の主がいるわけは無い。
それは分かっているにもかかわらず、ついそうしてしまう。

「圭織。あんたにも聞こえたようだね。」

突如、それまで辻と加護の話を聞き入っていた保田が
沈黙を破ってそう言いながら、飯田の肩に手を置いた。

「圭ちゃん。今、後藤の・・、ごっちんの声が聞こえた・・。」

無意識のうちに自分の肩に置かれた保田の手に
自分の手を重ねると、呆然とした表情で口を開く。

「そう言うことなんだよ。」
156 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時22分28秒
「なっちにも聞こえたべさ・・。」

突如背後から聞こえてきた力ない声に、飯田が振り向くと
そこには片手を三角巾で吊るした上に松葉杖をついている安倍が、
頭を包帯で巻いている矢口が、
ホクロの数と同数とも言える程、多数のバンソウコウを顔に貼っている吉澤が、
そして、石川もが立っていた。

「みんな・・。」

「皆にも、ごっちんの声は聞こえてきたべさ。逃げてって。」
「だから飯田さんは行っちゃいけません。」
「これでも圭織が出撃するなら、矢口が後ろから撃っちゃうよ、きゃは。」

皆が次々に口を開く。

「みんな・・。」

「後藤を、ごっちんを信頼してあげて。」

最後に言った保田の言葉は、飯田にとって止めの一撃であったかもしれない。
157 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時23分05秒
「わかった・・。わかった・・。」

飯田はそう言うと、重力が無いにもかかわらず
床にゆっくりと崩れ落ちた。

「ごめん・・。後藤・・・。ありがとう・・。」

そんな飯田の肩に、ふくよかな、そして暖かい手が置かれた。
彼女が見上げると、涙で滲んでぼんやりと見える信頼している人物、
同郷で、常に一緒にいた人物が、彼女を見詰めて微笑んでいた。

「圭織。立ち上がって。さあ、待機室に行こう。そして待つべさ。
 後藤の、ごっちんの帰りを。」

その言葉にゆっくりと、そしてはっきりと頷くと、立ち上がった。

「さあ・・・、行こう。」
158 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時23分53秒
目前に迫る宇宙を覆い尽くさんばかりの光点。
それらが一斉に彼女のいる方向に迫ってくる。
すでに戦いの趨勢は連邦軍の圧倒的優勢になっており、
多数の味方MS部隊が、ア・バオア・クーに取り付き制圧している。
一部のジオン軍は、すでに投降した部隊もおり、連邦軍の勝利は決定的であった。

そんな中、降伏を潔しとせず、本国や他の基地に脱出しようとするジオン軍が
連邦軍の包囲を突破しようと、彼女の正面に迫っていた。

「みんなは無事脱出できたみたいだね。」

彼女の機体はいたるところに被弾しており、
すでにシールドは無く、ライフルの残弾も数発分しか残っていない。
また、機体の推進剤も帰還するには決定的に不足していた。
にもかかわらず、彼女はそんなことは気にも止めていなかった。

ただ、自分の信頼すべき仲間達の安否が心配であった。
案の定、飯田が暴走しそうになったが、どうやら他のメンバーが押さえてくれたようだ。
159 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時24分45秒
「ゴトウも裕ちゃんの所に行くのかな・・。」

なんとなくそんな感じがする。

「あは。」

誰に対してではなく、なんとなく微笑んでしまった。

目前に迫り来る、敵の大部隊。
そんな物は関係なかった。彼女は平然としていた。
そして、一言、呟いた。

「後藤真希、行きます!!」

ペダルを踏み込み、操縦桿を押し込んで、突っ込んでいく。
圧倒的な敵に対して。




宇宙世紀00801月1日。
この戦い終了後、地球連邦政府とジオン共和国との間に終戦協定が結ばれた。
160 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時25分53秒
後に1年戦争と言われた、
地球連邦軍とジオン公国軍の間に行われた戦いが終了した後、
彼女達は戦後処理、主に残敵掃討に多大な苦労をすることとなる。

そんな中彼女達は1人、また1人と、新たな任務を与えられ、
次の任地へと旅立っていった。
こうして彼女達の中隊は、自然と消滅することとなった。


一方の彼女達の指揮官であった寺田は、
最後まで准将への昇進を頑なに拒否した後に、自らの意思で軍を退役することとなる。
彼の退役に関しては、いろいろな噂が立った。
『部下の女性に手を出した』
『中澤の戦死がショックであった』
『後藤を見捨てた事を後悔していた』等々・・・。
しかし、彼はそのことに関して、生涯語ることは無かったと言う。

ただ一人、彼の意思が分かったかも知れない彼の副官、戸田少尉は
寺田の退役と同時に軍を退役し、ジャブローの喫茶店で働いていた
あさみと言う女性、そしてその後出会った里田と言う女性と共に
遠い親戚が経営する北海道の牧場で汗を流している。
161 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時26分59秒
彼女達の中隊が消滅して間もなくして、書店に1冊の本が並んだ。
それは自分達の日記や記憶、そして加護が艦の戦闘日誌を勝手に持ち出し
資料を寄せ合って書き上げた、自分達の戦いを著したものだった。
男が中心として戦っている戦争の中で、女達がどのように戦ってきたか、
それを知ってもらいたく、彼女達が必死の思いで書き上げた。

しかしながら、戦後の混乱期であり、
しかも、この時期、似たような本が多数出版されたこともあり、
彼女達の本は、決してベストセラーになることは無かったと言う。


そして、その本の最後はこのように記されてあった。

『結局、後藤さんは帰ってきませんでした。』と。
162 名前:ま〜 投稿日:2002年02月24日(日)00時28分12秒
皆様、レスありがとうございます。

>>146 某さくしゃさん
もうすぐ終わりですけど、今後もよろしくお願いします。
またゆうごま(ごまゆう)書くか分からないですけど
その時は、よろしくお願いします。

>>147 ギャンタンクさん
おひさしぶり。
もうすぐエンディングです。
あと1回更新で終わるかな?

いや〜。仕事で地方出張行って、帰ってきたら39度の熱出して寝込んでしまいました。
そんな訳で、更新遅れてすんません。
163 名前:ギャンタンク 投稿日:2002年02月24日(日)03時54分53秒
びっくりした〜(石川)161で終わりかと思いましたよ。
あと一回でENDですか。読者としても感慨深いです。
体調を崩されたそうですが、お大事に。
次の更新を楽しみにしております。
164 名前:某さくしゃ 投稿日:2002年02月24日(日)14時42分25秒
後藤の最後の言葉でなんか…もう…ダメでした(涙
痛い系読んでも泣かないのに…。
こんなに続きが気になるのは初めてです。
165 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月24日(日)22時38分06秒
後藤の最期(!?)がガトーの最期とダブって見える…(涙
最終回に期待!
166 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月24日(日)22時38分12秒
後藤の最期(!?)がガトーの最期とダブって見える…(涙
最終回に期待!
167 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月24日(日)22時38分20秒
後藤の最期(!?)がガトーの最期とダブって見える…(涙
最終回に期待!
168 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月26日(火)01時49分16秒
ああ,後藤が,後藤がぁぁぁ!(号泣
最後に頼りになるっていうか,なぜか後藤はこういう役が似合うね
169 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時12分40秒
後に1年戦争と言われた、あの激しい戦いから約1年半がたったある日、
彼女は日本の地方都市、福知山と呼ばれる場所に来ていた。
理由はただ一つ。

すっきりと通った鼻筋、やや離れた目、そして緩んだ口元。
当時肩までであったその栗毛色の髪の毛は、
すでに肩甲骨のあたりまで伸びている。

彼女は目の前にある、純和風の墓に向かって
現在では余り使われなくなった線香を手向けると
静かに目を閉じて両手を合わせた。
170 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時13分16秒
この戦争で出た多くの戦死者のために、
連邦政府も全戦死者に政府が所管する共同墓地を立てた。
しかしながら、地上でならいざ知らず、宇宙で戦死したり行方不明になった者は
遺骨をはじめ、彼らの「一部分」がその墓に入ることは稀である。
なぜならば、彼らの部分自体が行方不明なために、
その墓には名前が刻まれるだけで、存在した証は何も入っていない。

しかし今現在彼女の前にある墓は、それらのものとは大きく異なる。
この墓は戦死した中澤のために、彼女が己の私財を投げ打ってまで
中澤のために立てた墓。
そしてその中には彼女の生きた証が、しっかりと入っている。

そう、それはあの時、
彼女が廃人同然となり、何事にもやる気を失っていた時、
語りかけた『彼女』が残していった頭髪、
ほんの数本ではあるが、その頭髪が
『彼女』の存在した証としてそこに埋まっていた。


「裕ちゃん・・。やっとだね・・。」

彼女は合わせていた両手を離すと、
ゆっくりと両目を開いて、その墓に話し掛けた。
171 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時13分50秒
「ごめんね。迷惑かけた上に、こんなに遅れちゃって・・。」

彼女の目が次第に潤んでくる。
懐かしい日々が思い出される。
ともに過ごした日々、ともに最前線で戦った日々。
すべてはとっくの昔に過ぎ去った出来事であるにもかかわらず、
彼女は鮮明に覚えている。

「懐かしいね・・。」

あれから約1年半。

再び両手を合わせた。

ちょうどその時、背後から彼女を呼ぶ声が聞こえて振り返った。
172 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時14分29秒
「やっぱりここだったね・・。」

やや小柄な体形に、ボーイッシュなショートカットの髪型。
彼女にとって、忘れられない人物。
彼女がまだひよっこであった頃、パイロットの何たるかを
叩き込んでくれた女性。
ルウム戦役で重傷を負ったにもかかわらず、
驚異的な速さで復帰を果たし、教官として多くのパイロットを育て上げた彼女。


「市井ちゃん・・・。」

「後藤・・。」


彼女には何故市井がここに居るのかわからなかった。
173 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時15分18秒
激しかったア・バオア・クーの戦いの末期、
後藤はすでに戦う力を失っていた。
否、正確には彼女の機体がすでに戦力足りえない状態であった。

傷つき、残弾も少ない機体。
それでも後藤は敵機の群れに突っ込んでいった。
すでに死ぬ気であったのかも知れない。
それは当の後藤本人にもわからなかったが、勢いのままに敵機の群れに突っ込んだ。
敵機に囲まれ、逃げるついでの駄賃と言わんばかりに、敵機は後藤に弾丸を浴びせた。

まさに窮地に立った、そんな時だった。
彼女の付近に存在する敵機の群れにビームの乱射が加えられたのは。

「お〜い!そこのパイロット!あんた死ぬ気?」

後藤がビームが飛来した方向を振り向くと、そこには5機のGMスナイパーカスタム。
そして懐かしい声が後藤の鼓膜を刺激していた。
174 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時16分20秒
「まさか後藤だったとはね・・。」

市井が率いるGMスナイパーカスタムの小隊は、
最後方からの最後の出撃部隊であった為、ア・バオア・クーへの到着が遅れていた。
彼女としては一刻も早く戦場へ辿り着きたかったのだが、
彼女の司令官が、病み上がりであり、しかも戦場から遠ざかっていた市井を気遣ってか
最終次の攻撃隊に編入していた。

市井が戦場に到着した頃には、戦いの趨勢はほぼ決定しており、
欲求不満状態の彼女の目の前に現れたのが、
後藤を集中攻撃しつつ、逃走を図る敵の残存部隊であった。

「まさか市井ちゃんに助けられるとは思ってなかったよ。」

「こら!いい加減『ちゃん』付けはやめなよ!」

「う〜ん・・。」
175 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時16分53秒
結果的に市井に助けられた後藤ではあったが、
彼女はなぜかゼティマに生存しているという連絡を入れなかった。
一方の市井も、てっきり後藤本人が連絡を入れていると思っており、
また、市井の母艦からも1パイロットの為にあえてゼティマに連絡をとることはしなかった。

市井もてっきり帰還後に原隊に復帰するものだと思っていた。
しかし彼女たちの母艦がルナツーに帰還した直後、後藤は行方不明になる。
いつの間にか、市井に一言も告げることもなく、
そして飯田たちに連絡を入れることもなく、
ただ一人、静かに姿を消していた。



「あんたね・・・。どんだけ人を心配させたと思ってんの!!!」

過去を回想していた後藤は、
市井の怒鳴り声によって現実の世界に引き戻される。

「ごめんなさい・・・。」
176 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時17分50秒
「ごめんなさいで済むと思ってんの!!?後藤もこれ見なさいよ!」

後藤の目の前に差し出された本は、戦後に飯田たちが自分たちの戦いを纏めた物。
彼女はその本を受け取ると、ぱらぱらとページをめくる。

「最後のほうを読んでごらん。」

少しばかり怒気をはらんだ市井の指図どおり、
後藤は文章の最後のページを探すと、読み始めた。

「結局、後藤さんは帰ってきませんでした・・?」

「みんながどれだけ心配したか・・!!!わかってんの!?」

「ごめんなさい・・。」
177 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時20分14秒
「ゴメンじゃ済まないわよ!!!!!」

再び後藤の背後で懐かしい声が響き渡った。
振り向いた彼女の視界に入った人物は、
高い身長と、やや茶色がかった綺麗な長髪が良く似合っている
ぱりっとしたな連邦軍士官の正副に身を包んだ人。
襟元にはいつの間に昇進したのか、少佐の階級章をつけている。

「か・・、圭織・・?なんでここに・・。」

突然の飯田の出現に、呆然としているのは後藤だけではなかった。
彼女の目の前に居る市井も動揺を隠せなかった。
後藤がおそらくこの場に出現するのが、飯田に分かる筈はないのに・・。

「すいません・・。あたしが連絡を入れました・・。」

最初、その彼女達の存在に後藤は気づかなかったが、
市井の背後に居たやや顔がふっくらとした女性が口を開いた。

「なんで紺野が・・?」
178 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時20分53秒
後藤は市井の背後にいた4人の女性の名前を必死に思い出そうとした。
あの時市井の小隊に所属し、後藤の命の恩人でもある。

『ストレートの髪をしたのが高橋・・?
 顎が出てるのが小川・・、小さいのが新垣に
 ぼけっとしてるのが紺野・・、だっけ?』

後藤が自分の記憶を必死にまさぐっている間にも、
彼女たちと飯田との会話は進行している。

「いえ・・。なんとなく教えたほうがよろしいかと・・。すいません・・。」

すこし出過ぎたまねをした紺野に対して、
少しばかり怒った目つきで彼女をにらむ市井を差し置いて
飯田は、紺野に近付くと優しい目つきで彼女の頭をなでる。

「よく教えてくれたね〜。上官と違っていい娘だね〜。」

「な!なんだと〜!」

飯田と市井は、今は配置が異なるとはいえ、
戦争当初には共に機体を並べて死線を潜り抜けてきた仲だ。
口では色々と言い合うが、気心は知れている。

「それよりも・・。」

飯田は再び後藤の方を向き直って口を開いた。
179 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時21分47秒
「なんで連絡入れなかったの!!!心配したんだよ!!!」

後藤に詰め寄ると、飯田は後藤の両肩をがっしりとつかんで
自分の顔を近づける。

なぐられる!
後藤はそう思った。
そうされても仕方ないことを後藤はしたのだ。
信頼すべき仲間に、尋常では無いほどの心配をかけた。
殴られても何も言えない。そう思って歯を食いしばった。

しかし、後藤の予想は見当違いであったのかもしれない。

飯田の腕は、後藤の顔に向けられるどころか、
後藤の体をゆっくりと、温かく包んでいた。

「ばか・・。本当にばか・・・。」

後藤より長身の飯田が、後藤の肩に顔を埋めて嗚咽している。

「どれだけ心配したか・・・。」

「ごめん・・。」

「良かった・・。本当に良かった・・。生きててくれて・・。」
180 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時22分59秒
「これ、裕ちゃんのお墓?」

後藤をしばらくの間抱きしめて、その感触に満足したのか、
飯田は視線をずらして、彼女の目の前にある一つの墓を見詰める。
その墓にははっきりと『中澤裕子』と記してあり、
それは中澤の墓であるのは明らかであったが、あえて飯田はそれを確認した。

そしてその問いかけに後藤は無言で頷いた。


「そうか・・。」

飯田は一言そう言うと、墓の前にしゃがみこんで
静かに両手を合わせて目を閉じた。

「ごめん。圭織・・。」

「まあ、無事で生きて帰ってきてくれたから許してやるよ・・。」

後藤の謝罪の言葉に、飯田は目を開いて立ち上がると、
後藤のほうに振り返ってそう言った。
181 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時23分34秒
「他のみんなは・・、元気かな?」

飯田以外の当時のメンバーは、彼女とは異なる部署についている。
その大半が宇宙におり、ある者はルナツーに、
ある者は、地球軌道艦隊や月軌道艦隊に、
そして現在コンペイトウ鎮守府と名前を変えたソロモン要塞に
それぞれ働く場所を移してパイロットをしている。
何人かは地球の連邦軍基地で教官をしている者もいる。

紺野から連絡を受けた飯田は、すぐに安倍達に連絡を取ったが、
今日この日にこの場に来ることが出来たのは結局飯田ただ一人。
そう飯田が説明した。

「そうか。みんな元気でやってるんだ・・。」

「どう?後藤もまた軍に戻らない?」

ぼんやりと空を見上げた後藤に、
飯田が軍に戻ることを勧めてみる。
その言葉に対して、後藤はゆっくりと首を2回ほど横に振った。
182 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時24分16秒
ある意味、後藤は軍を勝手に脱走したとも言ってよく、
もし軍隊に戻れば、おそらく軍法会議が控えているであろう。
確かに彼女は卓越したパイロットであり、
現に多くの戦果を上げてはいるが、
脱走した者に対しては厳しいのが軍隊だ。
例え飯田や市井、そして退役した寺田達が弁護をしてくれたとしても
何らかの刑は受けるであろう。

「そっか・・。」

「もう戦いはいいよ・・。」

残念そうに俯く飯田に、後藤ははっきりとそう言った。

「そうだね。」
183 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時25分05秒
「これからどうするの?」

それまで黙っていた市井が、後藤の肩に手を置いて問い掛ける。
軍に帰らずにどうするのか?

「わかんない・・。でも、ここには裕ちゃんがいるから・・。」

「そっか・・。」

後藤のその言葉に、飯田と市井は納得したように頷いた。
後ろにいた4人達には分からなかったが、
彼女達にとっては、それだけで充分だった。

「大変だね。」

後藤の決意を考えると、自然と飯田の口からそんな言葉が出てくる。
今後、たった一人で中澤の墓を守り通していく。
後藤の普段はぼんやりとしたやる気の無さそうな目が
この時ははっきりとした光が宿っていた。
184 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時25分42秒
「後藤はいつでも裕ちゃんと一緒だから・・。」


6月19日。初夏の風が後藤の髪と戯れていた。





185 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時26分20秒
そんな訳で、娘中隊終了です。
金板に最初にスレ立てたのが、去年の6月3日。
それ以来、9ヶ月間最初から最後まで、
金板→青板→青板と、
途中からでもお付き合いいただいた方には大変感謝しております。

( ´D`)y-~~<ケッ!ガンヲタが!

いやね、別にガンダムじゃなくても良かったんですよ。
ストーリー的にね。
ただ色々ガンダムのビデオとか見てて、
『なんじゃこりゃ?なんでガンダムがいっぱい・・。
 量産型はGM(某モーヲタ掲示板ではない。作者も行ったこと無いから知らんが)だろ!』
単に作者がGM(しつこいが某掲示板ではない)が好きなの。
それで主人公がGM乗ったらな〜、と思ってストーリーを考えたりして・・。
そんで行き着いたのが、モーヲタ&ガンヲタ小説となりました。

モーヲタ&ガンヲタ・・、世間様に顔向けできない・・・。
( ゚∀゚)アヒャヒャヒャヒャ!
186 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時27分00秒
それから、最後に全員の戦死報告を入れようかなと思ったんですよ。
例:
飯田圭織:戦後地球連邦政府の横暴に嫌気が差し反地球連邦組織エゥーゴに入隊。
     MSA-003ネモに搭乗し、ジャブロー降下作戦後は
     エゥーゴ支援組織カラバに所属を移す。
     その後、キリマンジャロやダカールの作戦に参加。
     宇宙世紀0088年10月31日、ネオジオン軍のダブリンへのコロニー落しの際、
     RGM-86R GMVで安倍と共に最後まで民間人の避難に尽力を尽くした後、
     コロニー落着時に安倍と共に行方不明になる。

こんな感じに。
でも何となくやめました。
表向きは読者の想像に任せます。( `.∀´)←ティターンズかな〜とか。

な〜んて、単に作者が面倒だったからかも知れません。

そんな訳で終了いたします。

作者の文才の無さ、やる気の無さと言う強烈なライバルがおりましたが、
挫折しそうになった時、読者からのレスが何よりもの作者の戦力でした。
放置はしたくなかったんで・・。

おかげさまで終了いたしました。
本当にありがとうございました。
さて・・、次は何書こうかな・・・・・・。
187 名前:ま〜 投稿日:2002年03月02日(土)21時30分20秒
皆様、レスありがとうございます。

>>163 ギャンタンクさん
作者としても半年以上費やしましたから
ちょっと感慨深いかな・・。

>>164 某さくしゃさん
ありがとうございます。
ご希望どおり後藤は生きてます。藁

>>165
>>166
>>167 名無し読者さん
なぜ同じレスが3回も・・。
3回・・、3・・?3倍!?通常の3倍!?
ま、まさか・・奴が・・、奴が来たんだ!!

>>168 名無し読者さん
なんだか後藤はこういう役が合いますよね。

しまった・・。最後の更新分はエピローグのつもりだったのに・・。
エピローグって言葉入れ忘れた・・。鬱。
188 名前:波紋 投稿日:2002年03月03日(日)06時04分21秒
ま〜様、楽しく読ませていただきました。
やはり戦記モノは最後にその後があったほうが良いと思うのですが?
個人的には161で終わりというのもアリだと思いました。
189 名前:某さくしゃ 投稿日:2002年03月03日(日)12時56分25秒
お疲れさまでした!
最高です。生きててよかった…(涙
戦死報告の例の飯田編だけでまた切なくなったわけなんですが(w
次は続×3後藤と中澤を見たいとか言ってみるテスト
190 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月03日(日)15時52分27秒
終了お疲れ様でした。
途中で裕ちゃんが死亡してどうなる???っておもっちゃいましたが・・・
あーいうふうに登場してくれるとは・・・
出来たら・・・おいらも後藤と中澤の続き書いて欲しいです。
ムリなら新たにゆうごまの恋愛ストーリーを読みたいです。ごまなっちゅーなんかも読んでみたいな?(w
っとりクしてみる読者であった。
191 名前:石川記念日 投稿日:2002年03月03日(日)20時01分22秒
また一つ名作が終わりましたね〜。
お疲れ様でした。
192 名前:ギャンタンク 投稿日:2002年03月03日(日)22時29分45秒
ま〜さん本当にお疲れ様でした。
長い連載の間、ずっと更新が楽しみでした。
エピローグの6月19日って・・・裕ちゃんの誕生日ですね。
いやあ本当に面白かったです。ありがとうございました。
次回作にも期待してます。
193 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月04日(月)19時30分44秒
ま〜さん、ありがとう。
楽しませてくれて、ありがとう。
194 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月04日(月)23時35分09秒
他メンの戦死報告も見てみたいです
195 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年03月17日(日)15時11分41秒
いや〜面白かった!!

これは確かに名作ですね
後藤が生きてて良かった・・・
自分は涙もろいほうではないのですが
中澤が死んだときに泣きましたよ・・・
またごまゆうを書いてくださいね

続続・中澤と後藤の続きはないんですか?
加護が中澤を好きになった後とかは?
196 名前:ま〜 投稿日:2002年05月18日(土)22時45分53秒
ものすごい遅ればせながらお返事をさせていただきます・・。
ちょっと短編を書こうと思って。

>>188 波紋さん
たしかに161で終わらそうかとも思いましたが、
最後に市井を登場させる予定だったんで・・。

>>189 某さくしゃさん
>>戦死報告の例の飯田編だけでまた切なくなったわけなんですが(w
その辺を短編で書かせて頂こうかと・・。

>>190 名無し読者さん
死んだ人があのように登場するのは
ヤマト&ガンダム世代には当然なのです。(藁


>>191 石川記念日さん
>>また一つ名作が終わりましたね〜。
名作なんて・・。迷作です・・。

>>192 ギャンタンクさん
特徴のある固定でありがとうございました。
これからもよろしくお願い致します。
197 名前:ま〜 投稿日:2002年05月18日(土)22時46分54秒
>>193 名無し読者さん
こちらこそありがとうございました。

>>194 名無し読者
>>他メンの戦死報告も見てみたいです
そのへんは、また後ほど・・・。

>>195 うまい棒メンタイ味
やっぱり私はごまゆうがないと・・。


それから「後藤と中澤」の続編ですが、
なかなかネタが思いつかなくて・・。なにしろ絡みが最近少ない!
あれだけ好評頂いた物の続編だけに適当に書けないし・・・。
思いついたら書きますよ。(何時になるか分からないけど・・。)
198 名前:ま〜 投稿日:2002年05月18日(土)22時55分53秒
とりあえず、ちょっと番外編を書きます。
これを書き終わった当時から頭には合ったんですけど、
なにしろ面倒で・・。
PS2ギレンの野望も一段落したから、とりあえず書こうかと。
一応、sage進行で。
199 名前:ま〜 投稿日:2002年05月18日(土)22時57分28秒
アクシズのハマーン・カーン率いるネオ・ジオン軍が
北欧の都市ダブリンにコロニー落しを敢行しようとしていた宇宙世紀0088年10月30日。
一機の大型飛行艇がその都市に向かって飛行していた。
その飛行艇の名前は『アウドムラ』。
ガルダ型と言われるその飛行艇の艇長は、
かつて一年戦争で名を馳せたパイロットであるハヤト・コバヤシ。

その飛行艇の内部にはネオ・ジオン軍に対抗すべきMS、
RGM-86R GMVが所狭しと並べられていた。
そして、その1機のコクピットに彼女はいる。


「全MS隊、出撃用意!」

彼女のレシーバーから直接彼女の鼓膜に響き渡るような怒声。
その声を聞くと、彼女は長い髪を纏め上げてバイザーの降りていないヘルメットを被った。

ヘルメットがしっかりと装着できていることを確認すると
彼女がレバーを操り、ペダルを踏み込む。
するとその意思にそってGMVがゆっくりと動き出す。
200 名前:ま〜 投稿日:2002年05月18日(土)22時58分10秒
一年戦争と呼ばれた壮絶な戦い当時、まだ二十歳であった彼女は、
現在は二十代後半の年齢に相応しいといって良いほど落ち着いていた。

常に最前線におり、地球連邦軍を同僚である安倍なつみと共に脱退した後は
ゲリラ的な戦いを繰り広げていた為に、
異性との交流が無かったわけではないが、多忙に追われていまだ独身の身。

自分で選んだ道にもかかわらず、
彼女の置かれたそんな状況をふと自嘲気味に笑う。
もちろんのこと、自分が誘って動揺に連邦軍を抜け出した安倍に対しても
少しばかり悪いことをしてしまったような気がしてならない。

もっとも安倍も自ら望んで彼女に付いてきたのであるから
自業自得ではあるのかもしれなかった。
201 名前:ま〜 投稿日:2002年05月18日(土)22時58分52秒
先発隊の指揮官を命じられている彼女は
自分の機体をゆっくりとドダイ改と呼ばれているMS用の大気圏飛行ユニットへと導いた。

飛行ユニットの上部に装備されているMSとの接続装置に
自分の機体、GMVのマニュピレーターを接続させると、
機体のコクピットのモニターに接続を完了したランプが点る。


冷静に、そして正確に自分の出撃準備を完了した彼女に
同様に出撃準備を完了させた彼女の同僚、安倍が声をかけた。

「圭織、今日は無口だね」
202 名前:ま〜 投稿日:2002年05月18日(土)22時59分32秒
「うん・・。今日は大仕事だから・・」

飯田の言葉は事実であった。
おそらくネオ・ジオン軍はコロニー落しを確実な物とするために、
つまり、ダブリンの住民を殺戮する為に、
住民を脱出させようとする彼女達を妨害しようと
間違いなく攻撃をかけてくるであろう。

そして彼女達はその攻撃を排除しながら、
ダブリン市の住民を脱出させなければならない。
彼女たちの当面の目標は、敵を撃破することよりも、
住民を助け出すことに重点が置かれている。
その為、ただ戦うだけではなく、彼女たちの双肩に
何万と言う人命が掛かっているのだ。
203 名前:ま〜 投稿日:2002年05月18日(土)23時00分10秒
『はぁ〜・・・。戦いか・・』

飯田は一人ため息をついた。
あの一年戦争に参加して以来、彼女の人生は戦争そのものと言っても良かった。

新たな仲間を得たと思えば、仲間の戦死。
福田、ダニエル、中澤、そして・・・・。

彼女は戦いに出る時に、いつも思い出す。
あの『仲間だった』人間の壮絶な死を。
204 名前:名無しです 投稿日:2002年05月19日(日)01時23分18秒
おおっ!?レス数が増えてたのでもしやと思って来てみたら…
期待してます。頑張ってください。
205 名前:ま〜 投稿日:2002年05月19日(日)22時09分07秒
* * * * * * * * * * * * * * *


魂をも引きずり込むような強力な重力。
エゥーゴのMSパイロットである飯田圭織は
心地好くもあり、また不快でもあるその重力に身を任せていた。

大気圏突入。
それが現在の彼女に置かれた状況であった。

「これが重力・・・」

何度も何度も大気圏と宇宙とを行き来した彼女であったが、
MSを用いて大気圏突入をするのはこれが初めてである。

彼女の周囲には数多くの味方MSが同様に大気圏突入を図っていた。
MS用の大気圏突入システム、バリュートシステムを用いて、
80機にも達する彼女達が所属するエゥーゴのジャブロー攻略部隊が
一気に大気圏を突入したのだ。
206 名前:ま〜 投稿日:2002年05月19日(日)22時10分04秒
宇宙世紀0085年7月。
地球連邦軍の内部に存在する、ジオン軍残党殲滅組織ティターンズが
サイド1の30バンチに毒ガスを用いて住人を虐殺した。
地球連邦政府の横暴に対してのデモを鎮圧する、
ただそれだけの名目で、数多くの一般住民が
毒ガスに苦しみながら死んでいった。
この事件は後に30バンチ事件と呼ばれ、多くの宇宙に住む人々が
地球連邦政府から離反することとなる。

地球連邦軍MSパイロットである飯田圭織少佐、
同、安倍なつみ大尉はこの事件を境に地球連邦軍から離反、
反地球連邦組織であるエゥーゴに参加した。


そして宇宙世紀0087年5月、
エゥーゴは明確に地球連邦軍に反旗を翻し、
数多くのMSを用いて地球連邦軍の拠点ジャブローに対して攻勢を開始した。

そのMS部隊の中に飯田圭織は存在していた。
エゥーゴの新型MS、MSA-003ネモに搭乗して。
207 名前:ま〜 投稿日:2002年05月19日(日)22時10分38秒
味方のGMUやネモが次々とバリュートシステムを切り離して
空中でバーニアを噴射させる。
大気圏さえ突破してしまえば、あとはMSをパラシュート降下させるのと
大して変わりはない。

もっとも大きな違いは『敵』が存在するかしないかだ。
単なるパラシュート降下なら訓練すれば出来る。

案の定、ジャブロー基地からカタパルトが競り上がると
まず迎撃戦闘機の部隊が出撃し始めた。
しかしながら直線的な機動しか出来ない戦闘機に対して
多種多様な行動が可能なMS、ましてやMSが登場した1年戦争時代に比べて
格段に性能並びに汎用性とが上昇したMSでは勝負にならなかった。

次々とジャブローからカタパルトを用いて出撃してくる
セイバーフィッシュやTINコッドといった一世代前の戦闘機。
それらをエゥーゴのMS部隊は
バルカン砲やビームライフルを用いてことごとく撃墜していく。

さらに基地から打ち上げられる数多くのミサイルも破壊されたり
シールドで防がれるなど、連邦軍側の反撃は
あまり効果があるとは思えなかった。
208 名前:ま〜 投稿日:2002年05月19日(日)22時11分25秒
それでも地上からの猛烈な反撃と、大気圏突入時にティターンズの襲撃を受けたことにより
彼女達のエゥーゴMS部隊は編隊を組むこともままならなかったため
飯田は発進時に彼女のすぐ近くで編隊を組んでいた安倍と
完全に離れ離れになってしまった。
それどころか、彼女の部下も現在はどこに居るかも分からず
さすがの飯田も部隊の掌握に手間取っている。

「まったく、みんなどこ行っちゃったのかな?なっちも・・」


出撃したMS部隊の大半が難なく地上に降りるなか、
彼女もその例外に漏れず、バーニアを噴射させて、ゆっくりと地上に降り立った。


「敵は・・?」


おそらく迎撃に出てくるであろう敵である連邦軍のMS部隊に対抗すべく
彼女達が所属するエゥーゴのMS部隊が着地するなり戦闘体勢をとる。
209 名前:ま〜 投稿日:2002年05月19日(日)22時12分02秒
「来たっ!!」

彼女の正面に現れたのは、かつてジオン軍が使用していた
グフ飛行試験型と呼ばれるMS。
ジオン軍が終戦間際に完成させたMSであり、
優秀な性能を所持していた為に、戦後連邦軍に接収されて使用されている。
そのMSが装備しているバズーカを放ちながら迫ってくる。

確かに敵のMSは高性能であったが、それは一年戦争、
つまり7年も前の話であり、彼女が現在搭乗しているネモから比べれば、
一世代も二世代も前のMSなため、所詮は彼女に歯が立つ物ではなく、
飯田に撃墜スコアを稼がせるだけのものでしかなかった。

それでも、味方も全くの無傷とはいかず、
不意を疲れたGMUやネモが、バズーカの破壊力によって撃破される。
210 名前:ま〜 投稿日:2002年05月19日(日)22時12分36秒
味方の損害は大した数ではなく、
地球に降下したばかりで、不慣れな地上であるにもかかわらず、
数の優勢と、機体の性能を生かして次々と連邦軍のMSを撃破しつつ
アマゾンの森林を掻き分けてジャブローへと向かう。

すでに先行したガンダムmk-Uや百式を始めとしたエゥーゴのMS部隊は
ジャブローの洞窟内へと新入を開始していた。


「なっちは・・、何処行っちゃったんだろ?」

地上に降りてからの混戦の中で、僚機である安倍のネモを見失ってしまったばかりか、
彼女の部下達もはぐれてしまい、現在飯田に同行している味方機は
彼女の部下同様に指揮官機から逸れてしまったMSだった。
まさかばらばらに行動するわけにも行かず、
やむを得なく飯田がとりあえず彼らの指揮官として
ジャブローに突入することとなった。
211 名前:ま〜 投稿日:2002年05月19日(日)22時14分32秒
わずか数十分後、彼女はジャブローのエリア1と呼ばれる地区の最北端にいた。
味方の主力隊は最前線で戦っているが、攻撃部隊の左翼隊を任されている飯田は、
当初の作戦どおりその場所に到着していた。

「とりあえず来たけど、どうするんだろ?」

飯田は思う。

ジャブローの抵抗が余りに薄いのだ。
この場所は地球連邦軍の司令部があり、最重要拠点にもかかわらず、
全くといって良いほど反撃が無さ過ぎる。

かつて彼女は連邦軍のパイロットとして、この場所で侵入してきたジオン軍、
それも赤い彗星が率いる部隊と戦ったことがある。
その当時、連邦軍にはMS部隊がほとんど存在していなかったにもかかわらず
優秀なMS部隊を装備したジオン軍を撃退したのだ。
それほどの抵抗力と戦力を持つジャブローのエリア1に、
彼女はあっさりと侵入できたのだ。
212 名前:ま〜 投稿日:2002年05月19日(日)22時15分10秒
「なんか・・・。変だな・・」

同僚の安倍が付近におらず、また現在彼女に従ってついてくるMS部隊のパイロットも
彼女が知らない人物ばかりであった為、
話す相手もおらず、ただ一人呟く。

味方のパイロットの中には、一年戦争を経験した者が少なく、
この抵抗の無いジャブローを侮っている者もいるであろう。
そんな味方のパイロットに対して、飯田は一言言ってやりたい心境であるが、
この反撃の少なさを見ては、飯田の考えも説得力があるとはいえなかった。

「でも・・、絶対来る!激しい抵抗が・・・」

それは、もしかしたら彼女の願望であったのかもしれない。
一年戦争開始以来、戦いつづけてきた彼女にとって、
戦争とは切っても切れない縁がある。
彼女の長い髪と、そして体に染み付いた血と硝煙の匂い。
いくら香水を振り掛けても、シャンプーと石鹸で流したはずにもかかわらず
全く落ちることの無い匂い。戦いの匂い。

それが彼女の本能に戦い求めさせているのではないか。
そんな風に考えてしまう。
213 名前:ま〜 投稿日:2002年05月19日(日)22時16分01秒
「カオリも、変わったな・・・」

思わず自嘲してしまう。
自分達を助けてくれた後藤を救おうとした純情な心。
中澤の戦死に涙した人の命を大切に思う心。
それらをどこかに置き忘れてきてしまったのではないか?
戦いの中でしか自分を表現できないのか?

もうすぐ三十路を迎えようとしている自分。
これでいいのかとふと思う。

「裕ちゃんも、こんな感じだったのかな?」

戦場、しかも最前線であるにもかかわらず、飯田は考え込んでしまった。
よく同僚が、そんな状態の飯田を『交信している』という。
そんな同僚に、『機械じゃないんだから!』そう言い張ってきた。
もっともこの状況では、満足に突っ込んでくれる人物もまわりにいなかったが。


そこへ、高出力なビームが飛んできた。
214 名前:ま〜 投稿日:2002年05月19日(日)22時18分13秒
>>204 名無しですさん

レスありがとうございます。
もしかしたら誰も気づかないかなぁ〜とか思ってましたが、
早速のレスうれしいです。
短い話のつもりですが、どうぞよろしくお願い致します。
215 名前:ま〜 投稿日:2002年05月22日(水)00時23分17秒
飯田のネモの直ぐ脇にいた1機のGMUに、そのビームは誤る事無く
コクピットを直撃すると、機体のバックパックが誘爆を起こし、
木っ端微塵に砕け散った。

「敵!?」

『交信中』とはいえ、付近にいるどのパイロットよりも実戦経験が豊富な飯田だ。
すぐさまに反応し、大型のシールドを前面に出し、機体を身構えさせた。
彼女が臨戦体勢を取るまでの僅かな時間の間にも味方のMSが破壊される。
まさに実戦経験の差が出たと言っても良いだろう。
敵の攻撃があってから、反撃体勢に入るまでの一瞬の差が生死を分ける。

事実、飯田が機体を横にずらした瞬間に、彼女の機体が存在した空間を
高出力のビームが通過した。

「危ない危ない・・。意外と正確だね・・」
216 名前:ま〜 投稿日:2002年05月22日(水)00時24分02秒
飯田は敵の射撃の正確さに舌を巻いた。
当初、敵の位置を把握できなかったが、ビームが迫ってくる方向を探索してみると
数機のGMスナイパーカスタムの存在が見て取れる。
そしてその中心にいる機体から放たれるビームは正確無比であった。

もたもたしながらも、味方の機体が反撃体勢に入る。
敵との距離は500mは離れていると思われた。
これだけの距離が離れていると、彼女達が装備している小型のビームライフルでは
敵のスナイパーライフルに比べていかにも分が悪い。

それにしてもと飯田は思う。
敵機の機動、そしてその射撃の腕前。
あきらかに実戦経験者だ。
それが分かっただけでも彼女のアドレナリンが嫌が応にも増してくるのが感じられる。
217 名前:ま〜 投稿日:2002年05月22日(水)00時24分52秒
ここに辿り着くまで戦ってきた敵機は、明らかに実戦経験が不足しているように思われた。
たしかに一年戦争が終わって七年が経とうとしている現在、
世の中はジオン軍の残敵掃討をはじめ、幾つかの反乱が起きたことは確かだが、
連邦軍全体が動員されるような大きな戦争は起きておらず、
平和とは言えないが、まずここ数年は割と平穏であった。
その間、パイロット達も訓練を積んではいるであろうが、
訓練をいくら数多くつんでも、実戦経験を積んだパイロットに適わないのは明白であった。

彼女の付近にいる味方のパイロットは実戦経験が不足しているが、
それは敵も同様だと思っていた。
しかしながら、現在彼女の目の前にいるGMスナイパーカスタム、
その中心にいる一機は、明らかに実戦を多く経験しているパイロットであろう。

「なかなか・・手ごわそうだね・・でも、行くよ!!」

飯田は、敵が手強そうだという現実に直面すると、
気分が高調してくる自分の感性に嫌気を感じながらも
味方のMS部隊に命令を下す。
もっとも、MS部隊と言っても、彼女の周りには数機しか存在しないが。
218 名前:ま〜 投稿日:2002年05月22日(水)00時26分15秒
飯田の命令が合図となり激しい戦いが始まった。

敵のベテランパイロットが搭乗するGMスナイパーカスタムが放つ高出力なビームが
正確に味方のGMUを破壊する。
遠距離な為に正確な射撃が出来ないが、
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると言わんばかりに飛び交うビーム。

飯田も必死に敵の射撃を交わしながら、ビームを放つ。
レバーを押し込み、ペダルを踏み込み、トリガーを引く。
激しい衝撃とGが彼女を襲い、
シートベルトがノーマルスーツの上から彼女の体を締め付ける。

「まだまだ・・!!」

味方のネモが破壊される。
敵のGMスナイパーカスタムが四散する。


わずか数分の後、付近で稼動しているMSは、
飯田のネモと、敵のベテランと思われるパイロットが搭乗した
GMスナイパーカスタムだけとなっていた。
219 名前:ま〜 投稿日:2002年05月22日(水)00時26分56秒
「はぁはぁ・・・」

飯田は肩で息をする。
これほど緊張したのは何時以来であろうか。
もともとここ最近、MS部隊同士で壮絶なMS戦を展開したことは無かった。

ここ数年繰り広げたMS戦といえば、残敵掃討レベルの戦いであり、
そのパイロットも彼女のレベルに比べれば
足元にも及ばないパイロットばかりであり、さして苦労をした記憶は無い。
そのために戦い自体を舐めていたのかもしれなかった。

「迂闊だったかな・・・」

彼女はモニターに写る一機のGMスナイパーカスタムを見詰めていた。
そして気づいた。

そのGMスナイパーカスタムの機動が、彼女の記憶にあるものだということを。
220 名前:ま〜 投稿日:2002年05月22日(水)00時27分41秒
「飯田・・さん・・ですか?」

突如彼女は話し掛けられた声の主を探してしまった。
よく考えれば、この付近にいるのは、彼女以外では
あのGMスナイパーカスタムだけであり、
その声の主があのパイロットであるのは明白であった。
そして飯田はその声の主を良く知っていた。
忘れもしない彼女。

「つ・・辻・・なの・・・?」

「そうです」
221 名前:ま〜 投稿日:2002年05月22日(水)00時28分43秒
一年戦争当時、辻はまだ新米パイロットとして飯田がいたMS中隊に配属された。
まだ右も左も分からない新米。
とりあえずMSの操縦方法だけは知っているが、
数多くの実戦をくぐりぬけて来た彼女達に比べれば、
辻の動きは明らかに『下手』だった。

そんな彼女を鍛えたのは他ならぬ飯田。
当時中隊長をしていた、今は亡き中澤が当時入隊したばかりの
石川、吉澤、加護、そして辻にそれぞれ教育係をつけて鍛え上げた。

まさに飯田にとって一番の弟子。

その辻が彼女の前に立ちふさがっていた。
美しく成長して。
222 名前:ま〜 投稿日:2002年05月22日(水)00時29分24秒
「お久しぶりです。飯田さん」

二十歳も半ばに達した辻は、
あの鼻が詰ったような、それでいて舌っ足らずな特徴のある声は無くなり、
すっかりと一人前の女性になっていた。

そんな辻の口調に戸惑いながらも、かつての彼女の弟子に話し掛ける。

「元気だった・・?」

「はい。おかげさまで」

大人らしい、そして何所か余所余所しい他人行儀な口調。
223 名前:ま〜 投稿日:2002年05月22日(水)00時30分14秒
「辻・・こんなところで何してるの?」

飯田が思わず発した言葉は、後から考えると
甚だしくその場にそぐわなかったであろう。
辻は明らかに敵意を持って飯田と戦っているからだ。

しばしの静寂。
そして辻が口を開いた。

「戦ってるんですよ。飯田さんと」

はっきりとした口調。
その言葉に飯田は少なからず衝撃を受けた。
辻は相手が飯田と分かっているにもかかわらず戦っているのだ。

「な・・、何言ってるの?辻・・。あたしだよ、カオリだよ」

「そんな事は分かっています。そして、辻の敵だと言うことも」


「辻・・・・?敵?カオリが・・?」
224 名前:(´ー`●)@Dr.マルッチ 投稿日:2002年05月24日(金)12時09分07秒
いままでROMってましたが、初レスです。
遅ればせながら、本編お疲れ様でした。
番外編が始まってうれしく思います。
期待してます、頑張ってくださいね。
225 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時51分28秒
「飯田さんは分かってるんですか?自分達が反乱軍だということを?」

「反乱軍・・・?」

辻の口から発せられる言葉は、飯田にとって衝撃の連続だった。
あの可愛かった、そしてここ最近は交流が無かったものの、
彼女にとっては一番弟子とも言える辻が
飯田を否定するような発言を繰り返している。

「そうです」

辻の口調はまたもはっきりした物だった。

「そ・・、そんな・・、だってカオリ達は正義と自由の・・・」

「何を言ってるんですか?この地球圏を治めているのは地球連邦政府です。
 飯田さん達はそれを、その平和を脅かす反乱軍なんですよ」

飯田の言葉を遮るように、辻は明確な敵意を持った口調で言う。
226 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時52分19秒
確かに辻の言っている事は正しいのかもしれない。
それでも地球連邦政府の圧制に対して、
宇宙に住む人々の開放を求めて決起したのが彼女達が所属しているエゥーゴだ。
飯田は自由と正義を求めてそれに参加している。
しかし、辻は彼女の言葉をはっきりと否定した。

「カオリが反乱軍・・・?」

「そうです。悪いのは飯田さん達です。平和を脅かす敵です!」

「辻・・・」


飯田にとっては意外だった。
あの幼く可愛い辻がこのような言葉を吐くとは。
もしかして洗脳でもされているのかと考えてしまうが、
彼女は頭を左右に振ってその考えを否定する。
彼女は当時確かに幼かったが、頑固で一直線な性格であった辻が洗脳されるとは思えない。
つまり、辻は自らの意思で戦おうとしている。
彼女の師とも言うべき人物と。
227 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時52分51秒
200メートルほどの距離を置いて対峙する二機のMS。
その間を流れるしばしの静寂。

「あたしは・・、カオリはそうは思わない。カオリは自由のために戦うの!」

静寂を破って飯田がはっきりとした口調で言う。
しかし辻はその言葉を意に介さない。

「どうしても戦うって言うんですね?辻と」

「・・・・・」

飯田は黙り込んでしまう。
これではどちらが年上で、どちらが師であるか分からなかった。
228 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時53分31秒
「返事が無いですね?じゃあ行きますよ!!」

戦端を切ったのは辻の放ったビームであった。

「くっ!!」

飯田は全く辻との戦いに乗る気ではないが、
もたもたしていると辻に撃たれるのが分かりきっている。
そして彼女の気持ちとは別に、体が明確に反応する。

すぐさまシールドを前面に押し立てつつ
ジャブローの鍾乳洞の柱や建築物等の障害物を利用して辻に近付こうとした。
このような障害物の多い場所での戦いでは
大型のスナイパーライフルよりも
飯田が装備している小型のビームライフルの方が使い勝手がよい。

感性でそれを瞬時に判断した飯田は
障害物を利用しつつも辻に反撃を繰り返す。
229 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時54分43秒
ageちゃった・・・・。間違えた・・・。嗚呼・・。
230 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時55分16秒
かつて飯田に鍛えられた辻にとって、飯田の行動は読めていた。
もちろんのこと、辻の天性の勘と
実戦で鍛えられたその能力が遺憾なく発揮されたといっても過言ではない。

「飯田さん。そんな戦い方じゃ辻は倒せませんよ」

辻は、かつての師を挑発しながらも機体を大きくジャンプさせる。
並みのパイロットならばこのような障害物の多いところ、
そして大きいとはいえ洞窟内でジャンプするなどもっての他であろう。
しかし辻は並みのパイロットではなかった。

機体をジャンプさせ天井すれすれでバーニアを逆噴射させ
上方から一気に飯田に襲い掛かる。

「くっ!!」

辻の放ったビームが誤る事無く飯田に向かって一直線に飛んでいく。
231 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時55分58秒
回避は不可能。
そう悟った飯田は、大型のシールドをもって身構える。

直後、飯田を激しい衝撃が襲った。
高出力のビームが飯田のネモのシールドを吹き飛ばす。

「きゃぁ!!」

シールドが無ければ飯田はおそらく飯田はこの場で
自らの弟子に倒されていたことであろう。

「さすがですね、飯田さん」

その言葉は飯田にとって屈辱的であった。
確かに表面上は飯田を誉めているかのような言葉。
しかし、それは飯田が辻の攻撃を回避できることを
シールドで防御できることを確信しつつ攻撃したと言うことだ。
飯田は完全に辻に舐められていた。

「辻・・」
232 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時56分35秒
「どうしました?飯田さん。もう終わりですか?」

「・・・」

「返事がありませんね?でも行きますよ!!」


再び辻の機体が大きくジャンプして空中へと舞う。
かつての弟子に挑発され、舐めれられ、飯田にとって屈辱以外の何物でもなかった。
しかも辻は同じ機動を再びしたのだ。
避けてみろと言わんばかりに。

「二度も同じ攻撃が効く訳無いでしょ!!」

飯田は咄嗟にビームライフルを掲げ、辻に向かって発射する。
もっともその飯田の動きも、
辻にとっては予測の範囲を1ミリもはみ出る物ではなかった。

辻は空中で機体を左右に横滑りさせて飯田の攻撃を回避する。


「飯田さん!これで終わりです!!」

迫り来る辻のスナイパーカスタム。
233 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時57分15秒
辻の装備するライフルの先からは、唸りを上げてビームが連射される。
あたかも飯田のことを狙っていないかのように、
否、明らかに狙っていないと思われるビームは、
次々と飯田の機体の周りに着弾し、砂煙をあげる。

その砂煙は煙幕のように飯田の機体を包み込んだ。

「やばい・・!!」

飯田に戦慄が走る。
彼女から辻の機体を見ることは不可能であるが、
辻から見れば、飯田の機体は確実にその砂煙の中に存在する。
飯田からは見えないが、辻からは見える。

しかし飯田は落ち着いていた。
このまま砂煙の中から飛び出たならば、
狙い撃ちにされるのは明らかであったからだ。

「来る・・・はず!」

飯田は機体の腰の部分に装備されているビームサーベルを抜き放って
迫り来るであろう辻の攻撃に備えた。

わずか数秒程度が、飯田にとって数時間に感じるほどの緊張感。
234 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時57分55秒
背中を冷たい液体が流れるのを感じたその時だった。
消えつつある砂煙の中から、飯田の目前に突然ライフルが飛び出してきた。

「来た!!!!」

飯田の目の前に突き出されたスナイパーライフル。
彼女の体は、考えるよりも早く反応していた。

『殺らなければ殺られる!』

頭では『まさか辻が』と言う考えが無かったわけではないが、
頭脳よりも、戦いの中で研ぎ澄まされた神経、
そして体が真っ先に反応したのは当然の結果だった。


そして、飯田のサーベルは貫いた。
辻の機体を、完璧なまでに。
彼女の意思に反して。
235 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時58分32秒
瞬きつづける火花。
どこからか吹いてきた風によって、砂煙が段々と薄くなっていく。

飯田の突き出したビームサーベルは、
辻の機体の胸部を見事なまでに抉っていた。

「辻・・・・・・」

辻のスナイパーライフルは、
正確に飯田のコクピットに向かって突き立てられている。
もし、辻が引き金を引いていたならば、
飯田のサーベルが辻の機体を貫く前に、
飯田を瞬時にこの世から抹殺していたであろう。

しかしながら、辻が引き金を引くことは無かった。
飯田を倒すことを目前にしながら。
撃つことが可能であったにもかかわらず。
236 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時59分03秒
「辻・・・、なんで撃たなかったの・・・?」

撃とうとすれば撃てたはず。
飯田を倒そうと思えば倒せたはず。
にもかかわらず、あれほど飯田を舐めきって、
あれほど飯田を罵倒した辻は、飯田を撃たなかった。

「辻・・・?」

「だって・・・」

辻が口を開く。

「らって・・、つぃに、いいらさんを撃てるわけないじゃないれすか・・・」

それが飯田が聞いた辻の最後の言葉。
その口調は、あの懐かしい舌っ足らずな口調。
出会ったばかりの時に戻ったような、懐かしい辻の笑顔。

その辻の言葉が終わるのを待っていたかの様に、
辻の機体は、激しい閃光と、凄まじい衝撃と轟音を伴って爆発四散した。
辻と共に。
237 名前:ま〜 投稿日:2002年05月24日(金)23時59分46秒
「辻・・?辻・・・?」

僅か一瞬の出来事。

飯田のサーベルは辻の機体を抉り、もうすでにこの世に辻は居ない。
わずかほんの20分程度の時間の間に起こった出来事。

取り返しのつかない出来事。


「辻・・・・・」
237 名前:ま〜 投稿日:2002年05月25日(土)00時00分27秒
『いいらさん、いいらさん!』

『辻ぃ〜!乗るなって!重いだろ〜が!』



『いいらさん、いいらさん♪』

『辻ぃ〜!!お菓子ばかり食べ過ぎだって!だから太るんだよ!』



『えっく、えっく・・、いいらさん・・・』

『泣かないの、辻、あと10回やろうね、あと10回・・・』





『らって・・、つぃに、いいらさんを撃てるわけないじゃないれすか・・・』
238 名前:ま〜 投稿日:2002年05月25日(土)00時01分50秒
「辻・・・、辻ぃ・・・、つじぃ〜〜〜!!!!!!!!!!!!」

ヘルメットを我武者羅に脱ぐと、彼女のその長い髪が大きく揺れる。
コクピットを開いた飯田の足元には
かつて辻が搭乗していた機体の破片が、広範囲に散らばっていた。

「カオリは・・カオリは取り返しの付かない事をしちゃった・・・。
 カオリは・・・・・カオリは・・・。
 ごめんよぉ〜!!つじぃ〜〜〜!!」


辻はおそらく飯田を殺すことなど全く考えていなかったのであろう。
彼女の素直な性格からは、
『裏切る』『脱走する』などは彼女の念頭には無かった。
ただ単に命令に従っただけ。
辻が本気で飯田に挑んできたのは
自分を鍛えてくれた飯田に対しての感謝の意味も含まれていたのだろう。

そんな辻に対して、飯田は・・・・。
239 名前:ま〜 投稿日:2002年05月25日(土)00時03分00秒
「辻・・・・ごめんね・・・ごめんね・・・・」

飯田は呆然と立ち尽くした。



飯田はその後の事は良く覚えていない。

ただ、気がついた時には安倍の機体のコクピットに回収されて小さく蹲っていた。
戦場には似つかわしくない、美しい彼女のメイクをめちゃくちゃにして。

ただひたすら魂が抜けたように呆然と。
240 名前:ま〜 投稿日:2002年05月25日(土)00時04分06秒
1回くらい間違えてageちゃうかと思ってたら
やっぱりやっちゃったよ・・。
241 名前:ま〜 投稿日:2002年05月25日(土)00時05分03秒
あれ?スレッド圧縮?
242 名前:ま〜 投稿日:2002年05月25日(土)00時06分06秒
>>224 (´ー`●)@Dr.マルッチさん
レスありがとうございます。
短いんでもう直ぐ終わりますけど、今後もよろしくお願い致します。
しかしレスが増えたのに気づいていただけるとは・・。
243 名前:ま〜 投稿日:2002年05月26日(日)00時26分41秒
* * * * * * * * * * * * * * *


「圭織・・・・?圭織・・、圭織!!」

「ん!?!」

飯田は自分の名前を呼びつづけている声によって我に返った。

「あれ?」

周りを見渡して自分がコクピットの中に居ることに気づく。
GMVのコクピットに居ることに。
そして自分が出撃までの僅かばかりの時間に夢を見ていたということも。

「どうしたの?また交信してたの?」

懐かしいような声。
いまだに訛が抜けていない。
そんな声を聞くとつい安心してしまう声。
常に自分が共に同じ道を歩んできた
腐れ縁と言ってもいいような、それでいて信頼している友人の声。

「まったく!なっちはいつもカオリのことを馬鹿にして!」

「バカになんかしてないべさ!!」

「・・・・」
244 名前:ま〜 投稿日:2002年05月26日(日)00時27分17秒
「あれ?圭織?どうしたべさ?」

突然黙り込んでしまった飯田に対して
少しばかり安倍は動揺する。

「なんでもない・・。ちょっと思い出してた・・」

安倍のコクピットのモニターに写る飯田の目には
何か光る物があったように安倍には感じられた。

「もしかして・・?」

「うん・・、ちょっと思い出してた、辻の事・・」

「そっか・・」
245 名前:ま〜 投稿日:2002年05月26日(日)00時28分16秒
「なっちもちょっと裕ちゃんの事思い出しちゃうべさ・・」

「そうだね・・・。もう人が死ぬなんて嫌だね。」

「うん・・。でも今回は人を助けるのが仕事だしね!!頑張るべさ!!」

戦いを前にして辛気臭くなってしまっている飯田を元気付ける為なのか
安倍が明るい口調で言った。

「うん・・。カオリ頑張る!」



「全MS部隊発進!!!」

彼女達はアウドムラ内部に響き渡る突然の放送で我に帰る。
246 名前:ま〜 投稿日:2002年05月26日(日)00時29分02秒
「さあ!圭織!行くべさ!!」

「うん!なっちもね!!」

「おう!」

飯田が操縦桿を操りつつ、ペダルを一気に踏み込んだ。
ドダイ改のエンジン部分が明るい閃光を放って
彼女の機体に強力な推力を与える。

「飯田圭織、RGM-86R GMV行きます!!」

彼女の機体は一気にアウドムラの射出口から空中に飛び出した。


『辻・・。待ってね。カオリもすぐに行くからね。
 その時には、ちゃんと謝ることが出来ると思う・・・』


飯田圭織と安倍なつみ。
これが生涯最後の出撃となる。




番外編 完
247 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)01時25分50秒
お疲れ様でした。
最後の1行がとても切なく感じました…
他メンの番外編も期待しちゃっていいですか?(w
後藤の復活とか…
あと、ちょっと気が早いかもしれませんがゆうごま新作も期待してます。
248 名前:(´ー`●)@Dr.マルッチ 投稿日:2002年05月31日(金)06時36分50秒
お疲れさまでした。
ちょっと泣いちゃいました。

>>247さんと同じで最後の一行、切ないですね。
余力があれば他メン期待しちゃいます。

とにかく、お疲れさまでした。
249 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)01時23分07秒
お疲れ様でした。
感動でした。

それにしても( `.∀´)が気になる。
ティターンズだとヤザンあたりといいコンビに(w
250 名前:ま〜 投稿日:2002年06月05日(水)00時33分29秒
遅ればせながら皆様レスありがとうございます。

>>247 名無し読者さん
他メンの番外編はまだ考え中です。
もし思いついたら書こうかな〜って思ってます。はい。
ゆうごまも思いついたらで。藁

>>248 (´ー`●)@Dr.マルッチさん
余力があれば・・ですね。藁

>>249 名無し読者さん
( `.∀´)←確かにティターンズっぽいですよね。
ヤザンと名コンビになりそうですけど、
なかなか思いつかない・・・。
251 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月01日(月)11時40分59秒
ま〜さんのゆうごまが無償に読みたい今日この頃。
ま〜さんのスレが無くなるのは淋しいので下げカキコ。
252 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月03日(水)17時05分56秒
番外編期待してます
矢口のその後なんてのは・・・・・
253 名前:きーあん 投稿日:2002年07月30日(火)13時40分17秒
1部から全部よませていただきました。
途中何回か涙もでてしましました。
ガンダム世代には、懐かしい感じがしました。
このような小説が書けるのはすごいですね。
僕も頑張って執筆中ですがいつできることやら。
あと、今度僕のHPで小説のコーナー作ろうとおもってます。
そこで、この小説を文章つないで、何話かにして、
掲載させていただきたいのですがよろしいでしょうか。
254 名前:ま〜 投稿日:2002年08月01日(木)23時49分52秒
レスありがとうございます。久しぶりにレスを返させていただきます。

>>251 名無し読者さん
ごまゆう・・・、中澤に続いて後藤も脱退になってしまいましたね。
いつかこんな日が来るかと思っていましたが
こんなに早いとは・・。寂しいですね。

>>252 名無し読者さん
矢口のその後も考えてはあるんですが、
書くのが面倒で・・。しかもこんな事態に・・。

>>253 きーあんさん
ありがとうございます。
ガンダム世代ですか。これからもよろしくお願いいたします。
最初はこんな長編になる予定は無かったのに、
書いてるうちに長くなってしまったんで・・。
HP作ったらぜひ教えてくださいね。(このスレが生きてたらだけど)
掲載はかまいませんよ。
ただ文章的におかしいところが幾つか・・。
255 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月12日(月)20時56分02秒
禿しく続きが読みたいです
256 名前:きーあん 投稿日:2002年08月21日(水)16時33分42秒
お言葉に甘えまして、掲載させていただきます。
全部で60話くらいになりそうですが。
<番外編>他のメンバー分、ぜひ読みたいです。
気長におまちしていますので。
257 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月23日(月)22時33分11秒
続き気長にお待ちしてます。
258 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月30日(月)21時23分38秒
E中隊
259 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月06日(金)19時05分22秒
ま〜さんのゆうごまがまた読みたい今日この頃
260 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月13日(月)23時47分34秒
保全
261 名前:トモフミ 投稿日:2003年02月03日(月)11時03分52秒
まぁぁぁだぁぁぁかぁぁぁぁぁぁ!
262 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月06日(木)17時54分51秒
まだ待ちます
263 名前:楽しみにしてる読者 投稿日:2003年03月21日(金)16時03分22秒
hozen
264 名前:AKILAN 投稿日:2003年03月23日(日)23時43分15秒
期待してしまったじゃないか(泣
265 名前:ギャンタンク 投稿日:2003年04月04日(金)00時53分34秒
実はまだまだ待ってたりするんぞなもし。

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