hoLIc
1 名前:高津 投稿日:2013/03/29(金) 21:06
娘。現メンベースの短編。
鞘石メイン、たまにぽんぽん。

前スレ
dis-communication
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/grass/1354380999/
2 名前:hoLIc 投稿日:2013/03/29(金) 21:08

「ヤキモチ?」

そう言ってニヤニヤと笑う。
まったく、この人は…。

「ハイハイ」
「なんだよぅ」
「鞘師さんに付き合ってるといつまでもしつこいんですもん、それ」
「ぐぬー」

今度はソファーの上で体育座りをしてくる。
そのまま私の膝に頭をごろん。

「もぉ、本読んでるから」
「もー、かまってよー」
「さっきから話してるじゃないですか」
「亜佑美ちゃんうちにも本取って」
「あーもう、自分で取ってくださいよ」
「手がたわんけ、取ってほしーなぁ」

まったく…。
雑誌を取って、鞘師さんの頭にボンッ。

「あたっ」
「めんどくさがるからです」
「んひひ」

何故か嬉しそうなのにも、たまに出る方言にも慣れた。
慣れるだけ一緒にいるような気がする。

でもいくら一緒にいてもどうにもならないことがある。
最近本当にそう思う。

「…ヤキモチ、ねぇ」
「ホントのとこはどうなの?」
「そうなのかもしんないですね」
「へぇー」
「まったく…聞いてきたくせに」

実際そうなんだと思う。
ヤキモチやいてんのかもしれない。
3 名前:hoLIc 投稿日:2013/03/29(金) 21:08

「いや、まぁそうだとは思います。やっぱり譜久村さんの方が鞘師さんと一緒に過ごしてる時間は長いと思いますから」
「愛は時間じゃないよー」
「ですけど。実際ね、鞘師さんが親に甘えるとか結構見るけど…それをずっと私が入る前から知ってるわけだし」
「まぁそうだけど…」
「なんていうか…どうやっても追いつけないところってあるじゃないですか」
「そう…だけどさぁ」
「譜久村さんは大好きですけど、そういうのは…妬いちゃいますね」

そう答えると、鞘師さんはムッとしたような表情をあからさまにしてくる。
ホント、分かりやすいなこの人。

「他の子のこと今好きって言わなくていいじゃん」
「ツッ…鞘師さんこそヤキモチじゃないですか」
「そうだよ!しかも大好き、だよ?もぉ…。……ちゅーしたら許すけど」
「鞘師さんが一番ですよ……んっ」

唇が離れると少しくすぐったそうにして身体を捩る。
鞘師さんが嬉しいときって、少し身体が暖かくなるのがなんだかかわいいなって思える。
ちっちゃい子みたい。
って言ったらきっとまたほっぺた膨らませるんだろうなぁ。

「なんかさぁ…」
「なんですか?」
「うちってさぁ。亜佑美ちゃんがいないとなんもできん」
「まぁ…なんていうか…鞘師さん日常生活がまともに出来ない人だと思ってなかったんですよね〜」
「いつもスミマセン…」
「いや、それはまぁ…いいといえばいいですけど。それで?」

すごくいいにくそうに目を泳がせる。
いつもやってること以上に言いにくいことって一体なんなんだろう。

「こないだ英語の授業でね?」
「英語ですか」
「ホリックって言葉を先生から聞いたんよ。別に教科書に出てくるわけじゃないんだけど」
「ホリックですか?聞いたことないですね」
「それだけだったら聞いたことないって思うじゃろ?でもさ、ワーカーホリックって言ったら、あ!って思わん?」
「あぁ、なんかそれならうっすらとなら…聞いたことあるような…気がします。うん。えーと…で、どういう意味なんですか?」
「中毒っていう意味なんだって。だからワーカーホリックは仕事中毒」
「中毒ですか…」

口を尖らせながらまた体育座りをする。
なんだかそれが様になってるっていうか、似合ってるっていうか。
ちょっと面白い。
4 名前:hoLIc 投稿日:2013/03/29(金) 21:08

「うちね、亜佑美ちゃん中毒だなって」
「中毒って、またぁ…」

何を言い出してるんだか。と思ったけど。
真剣に悩んでる感じの鞘師さんを見てたらちょっとこっちまで切なくなる。

「だって亜佑美ちゃんのこと好きすぎるんだもん。いないと苦しいし、いたら嬉しいし、いてくれないと困る」
「そんなのその人が好きだったら、普通なんじゃないですかね?」
「そ、そうなのかな。だって…こんなに好きで、自分大丈夫かなって思っちゃうし…」

あぁ。
そんなことで悩んでたのか。
なんだかやっぱりかわいいな。

私だって恋愛得意ですって言えるわけじゃないけど、こういう場面で悩む…みたいなそういうのがなんだかかわいいなって思える。

「ていうか亜佑美ちゃんなんか余裕すぎじゃない?」
「そうですかね?」
「そういうのがー!なんか、ほらぁ、私余裕ですーみたいな感じするんだもん」
「うーん…」
「亜佑美ちゃんは…あんまり表に出さないから。重要なこと」

なんか前にも言われたことがある。
自分では結構表に出してたつもりだったけど…人から見ると違うのかな。

「自分ではそうでもないと思ってたんですけどねぇ」
「溜め込んでたりとかしないよね?」
「そんなことないとは思いますけど…」
「うち、亜佑美ちゃんの力になりたいから。何かあったら絶対言ってね?」
「ありがとうございます」

嬉しくて、鞘師さんの頭を撫でる。
くすぐったそうに、嬉しそうにしてくれたけど、すぐに表情が曇って今度は腰に抱きついてくる。
私の服で口元が塞がってるのか、篭った声で亜佑美ちゃんが好き…って聞こえてきた。

切ないなぁ。
なんでこの人はこんなに私のことを好きでいてくれるんだろう。
好きだって言われるたびに思う。
胸のあたりがぎゅってなる。
今日みたいな日は、涙も出そうになる。
5 名前:hoLIc 投稿日:2013/03/29(金) 21:09

「私だって好きですよ、鞘師さんのこと」
「じゃないと困る」

そのまままた私の膝を枕にして、お腹に顔を埋める。
と思ったら着てたシャツを捲ってきた。

「コラコラ、なんで捲るかな」
「ふへへ」
「しまって、ほら」
「ん」

亜佑美ちゃんのおへそが好きとかお腹が好きとか、甘えた声で言う鞘師さん。
ホント、ステージ上のあのかっこよさはどこいっちゃうんだろう。

甘い声に行動、最近の鞘師さんは砂糖でいっぱいみたいな感じに甘ったるい。
それでもドライな会話やケンカみたいなちょっとビターな感じもあったりして、これが恋愛なんだって思えたりする。

だからこそかもしれない。
その甘さがやっぱり恋しくなる。
私こそ鞘師さんに甘いのかもしれない。

「亜佑美中毒の鞘師さん?」
「お、おお。なんですか」
「私も鞘師さん中毒かもしんないですよ」
「えっ、嘘ぉ!ホント?」
「どうだろねー」
「なんで言ったん!もぉ!」

そういうところがかわいいんですよ。
クセになっちゃうんですよ。
こういう年相応のところをもっと見たい。
甘えてくるのをずっと味わってたい。

だから、なりかけてるのかもしれない。
鞘師里保中毒に。

6 名前:高津 投稿日:2013/03/29(金) 21:10
新スレたてました!
また鞘石ですがよろしくお願い致しますw

ホントはaddictionの方がよかったかもしれないですが、いっかと思いこちらにしましたw
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/04/01(月) 03:48
新スレおめでとうございます。
読んでる側もすっかり中毒です。
8 名前:Mornig call 投稿日:2013/04/08(月) 23:33

9期さんのブログを見て、冷や汗が走った。
そして思わず、ヤバッとか言ってしまった。

そして…ソッコーメール。

"鞘師さんすみません!ブログ先に写真載せちゃいました…"

数分待ったら返事がきたようで、携帯が震える。
画面を見て息を呑んだ。

"次からは気をつけてね"

たったそれだけの文章がすごく重く感じた。
どうしよう…鞘師さん超怒ってる。

文章からそれが感じられて、どうしようどうしようとなってしまう。
め、メールだけじゃダメだ!

深呼吸をして電話をかける。

コール音は…3回。

『もしもし』
「あっ、鞘師さん」
『うん。どしたの?』
「あの、あの…ごめんなさい」

そういうと、電話の向こうで溜め息のような音が聞こえる。
あぁ…やっぱり怒ってる。
9 名前:Mornig call 投稿日:2013/04/08(月) 23:34

『あのさ、亜佑美ちゃん2回目だよね?こういうのさ』
「え?2回…ですか?」
『変顔の時!もう忘れたの?』
「あっ、あっ…!」
『信じられん…』
「ごっ、ごめんなさい!」

しまった…なんてことを忘れてたんだ。
あの時はそんなに指摘があったわけじゃなかったから、頭の中から抜けてしまってた…。
…最低だよ私。

『まぁ…やってしまったものはしょうがないけ、次からはうちにメールしてね?』
「わ、わかりました…。鞘師さんホントごめんなさい!!」
『もういいよ。大丈夫。怒ってないけぇ」
「ハイ…ホントにごめんなさい」

落ち込む…。
こういうことでバカしてしまう自分がダメだなっていつも思う。

髪型や衣装なんてもしかしたらなんてことがあって当然だったのに。

『あ』
「えっ?」
『亜佑美ちゃん』
「は、はい」
『今鞘師はですね』
「は…い」

やっぱり怒ってるのかな?と思いつつも、そんな言い回しの時はなんかあるときだと構えてしまう。

『激おこぷんぷん丸です。ぷんぷん鞘丸です』
「えっ?は、はいっ」
『罰としてだな、うちの言うことを週末まで聞きたまえ』
「あ、いいですよ!なんでも言ってください!」

なーるほどね。
これが言いたかったんだな。

ていうか激おこぷんぷん丸って。

『とりあえずは朝にうちに電話を入れて、起こしてください。そういう係です』
「わかりました!」
『イヒヒ!頑張りたまえ』
「あっ、はい!」
10 名前:Mornig call 投稿日:2013/04/08(月) 23:34

というわけで…
朝に鞘師さんを起こすためにモーニングコールの係を仰せつかった私。

鞘師さんに電話したら(×5回)ごそごそもぞもぞ音がした後、はぁいという返事をされて。

「大丈夫ですか?起きてますかー?おはようございますー石田ですよー」
『あゆみちゃん…んぅぅ……』
「5回目にしてようやく出ましたね。もう起きられますか?」
『うん…うん、だいじょぶ…』

寝起きの鞘師さんはホントいつも思うけどぽわぽわだなぁ。
かわいい。

「ホントですか?」
『だいじょぶ…起きた、起きたので』
「じゃあ電話切りますよ?」
『あー、うん…あー、ダメ』
「ツッ…ちょ、どっちですか」
『ダメなほうで』
「なになに、どうしましたー?」
『あゆみちゃん、おはよう…ってしてなかった…』

うっ…。かわいい。
まだ声が寝てる声だから余計に思うのかもしれないけど。

ツアー中に一緒の部屋のメンバーが毎度これを見てるって思うとちょっと嫉妬。
なかなか私たちって一緒の部屋にならないし。

「あはは、おはようございます、鞘師さん」
『んふー。ん…もう起きた。大丈夫。鞘師いけます』
「分かりました。じゃあちゃんと準備してくださいね。イベントですもんね」
『うん。遅刻すると和田さんに申し訳ないし』
「頑張ってきてくださいね」
『うん。亜佑美ちゃんありがとね』
「いえいえ。それじゃまた」
『うん。じゃーね』

鞘師さんとのモーニングコールはちょっと甘酸っぱい感じになってしまった。
主に私が。

なんとなく切り際って寂しくなってしまう。
それはそれでいいのかもしれないけど。
電話ってこんな感じだよねって今更思う。

それに、これは罰だ。
って言っても私にとっては繋がらない4回のもどかしさぐらいで、たいしたことはないし。

とにかく、今後は気をつけよう。

…でも、モーニングコール自体はちょっと続けてもいいのかもしれない。
朝から鞘師さんの声が聞けるし、ね?

 
11 名前:高津 投稿日:2013/04/08(月) 23:36
更新しました!
某所で頂いたネタを使わせて頂きました!ありがとうございます!
ネタ元の方には許可頂戴してますw

鞘師もっと寝起き悪そうですが、このまま続けると延々といきそうなのでちょっと短めにしましたw

>>7
ありがとうございます!
中毒もありがとうございます!w(?)
頑張らせて頂きます!
12 名前:ヤキモチとやさしさと。 投稿日:2013/04/17(水) 00:12

「ねえ亜佑美ちゃん」
「なんですか?」
「ちょ、ちょっと…いい?」
「えっ?えっ?なになにー?」

譜久村さんから袖を引っ張られて、小声で話しかけられる。
今度は身体を寄せてきて、耳元で…

"亜佑美ちゃんって、里保ちゃんと…もうしたの?"

「え…」
「…どう?」
「えっ、えーー!?」
「ね、ね、教えてっ」
「あー…うー…えっとーですね」

目がキラキラしてます、譜久村さん。

とりあえず周りを確認して、誰も入ってこなそうだったけど一応部屋の隅に寄った。

「なっ、なんで急に…どうしたんですか?」
「だって…気になっちゃって」
「い、いやぁ、あの…えーっと…そ、そうですねぇ。と、とりあえずなんでそんな…」

もごもごしつつ聞くと、どうやら生田さんとは全然進展していないらしく。

「だって…なんにもないんだもん。えりぽん」
「手は?」
「繋ぐ」
「抱きしめられるとかは?」
「それは普通にあるから。仕事でも」
「ちゅ、ちゅーは?」
「ない」
「えっ…」

生田さん…。
まさかこんなことになってるとは思いもしなかった。
てっきりラブラブで幸せなのかなって思ってたんだけど…。
13 名前:ヤキモチとやさしさと。 投稿日:2013/04/17(水) 00:12

「だから知りたいの!亜佑美ちゃんたちはどうなのかなって…」
「いやぁまぁなんといいますか……一応…」
「やっぱり…そうなんだぁ」
「は、はい…一応」
「里保ちゃん優しい?」
「ちょ、もぉ…そんなことまで!?」
「だってぇ…」
「ん、んー、まぁなんというか鞘師さんはいつも優しいですよ。そういうときじゃなくっても」
「そっか…」

小さな声で、いいなって聞こえた。
別に生田さんだって優しくないわけじゃないっていうか…生田さんは私から見ても気遣い屋さんで優しい人だと思う。

「生田さん、譜久村さんのこと大事にしたいんじゃないですか?」
「そうなのかな…」
「だと思いますよ。うちは…割と早めでしたけど…。鞘師さんそういうの好きな人だから」
「そうなの!?意外!」
「だからって大事にされてないわけじゃないですけどね。優しいですし、鞘師さん」
「そっか…」
「だからね、生田さんはちょっと譜久村さんの反応見つつも、もうちょっとって思ってるのかもしれないですよ」
「……そっか。そうだったらいいけど。聖、焦ってるのかな」

そうなのかもしれない。

私は焦りはなかったけど、動揺は結構多かったから…むしろ鞘師さんの方が大変だったかもしれない。
色々迷惑かけちゃったし。

「それに、生田さんヤキモチ焼きだし、そんなに心配することないと思いますよ?」
「えっ、そうな…」

「聖ー!」

廊下で生田さんが叫ぶ声が聞こえる。

「噂をすれば、ですよ」
「ホントだね。……えりぽーん!聖ここー」

ドアががちゃっと開いて、嬉しそうな生田さんの顔。
でも一瞬表情が固まる。
譜久村さんのすぐ隣に私がいるからだろうな。しかも2人っきりだし。
ちょっと生田さんかわいいかも。
14 名前:ヤキモチとやさしさと。 投稿日:2013/04/17(水) 00:13

そういえば、あの時もきっとそうだったのかもしれない。

"里保は意外と嫉妬深いけん、すぐヤキモチ焼くっちゃん、気をつけないかんよー?"

すごく鮮明に思い出される。
あの時はまだ2人は付き合ってなかったんだよね。
だからあんなこと言ったんだろうなぁ。

「生田さん」
「ん?何、亜佑美ちゃん」
「大丈夫ですよ。私、鞘師さんのこと好きですから」
「へっ?急に何言いようと?」

何のことか分かってなさそうな表情。
そりゃそうだよね。
でも、安心させたかった。

「だから、譜久村さんのこと取ったりしませんよ」
「なっ…なんっ…」
「へっへっへ」
「あ、えりぽん顔あかぁい」
「ちょ、もぉーーー!なんなの2人ー!」

そして、ちょっとだけからかいたかったのかもしれない。

譜久村さんものってきてくれて、生田さんをいじる展開になっちゃったけど。
なんか2人は私たちと2人の時間の進み方が違うのかもしれない。
そんな風に思う。

ゆっくりゆっくり。
そんな気がする。

うちらは猛スピードで進んだ感じはあったけど、間にちゃんと鞘師さんの気遣いがあって優しさもあってここまでこれてると思う。
年下とは思えない包容力っていうか。鞘師さんってちょっとすごいなって思っちゃう。

「亜佑美ちゃん」
「はいっ?」
「里保嫉妬深いっちゃろ?」
「ん、まぁそうですね」
「なんか余裕やね」
「んー、余裕っていうか…そうなのかな?」
「そう見える」
「ちょっとヤキモチかなってとこあるけど、もう最近はあんまりかなぁ。向こうが信じてくれてるって分かってますし、私もそう思ってますから」

言うには少し恥ずかしかったからちょっと俯いてたんだけど、顔を上げてみたら生田さんは頭をかいて少し困った顔。
15 名前:ヤキモチとやさしさと。 投稿日:2013/04/17(水) 00:13

「衣梨、今日勉強になった」
「へ?」
「嫉妬深いは衣梨の方やった」

そういうと、譜久村さんの頭を撫でて、ごめんね。の一言。
譜久村さんはなんで?という顔をしたものの、すぐににこっと笑いかけて。

なんかこの2人の独特の空気感がすごく幸せに感じる。
周りも幸せにしちゃう何かがあるのかもしれない。

「なんか、生田さんってさらっとカッコイイことしますよね」
「はぁ!?」
「そうだよ、えりぽんカッコイイもん」
「ちょっ、聖!」
「えへへ」

イケメンって言われる理由、よく分かるって改めて思った。
鞘師さんとはまた違う感じ。
鞘師さんは鞘師さんでカッコイイけど、生田さんとはまた違った感じだもん。

「あー、なんだかこの部屋あっつくなってきちゃったなぁ」
「原因は亜佑美ちゃんだと思うよ?」
「えっ、なんでですか!」
「だってなんだかんだで里保ちゃんとのことノロケてきたじゃん」
「えっ…?あれ?そうでした?」

あれ、そういう感じ?
なんかしかもニヤニヤされてる?

「そうよ!亜佑美ちゃん、私、鞘師さんのこと好きですから、とか言ってきたやん!」
「あれは聖もびっくりした」
「ちょ、やめてくださいよぉ。私は生田さんを安心させようと思っただけですからっ」
「鞘師さんのこと好きですから!んふふふ、里保にメールしよ!」
「ちょ、まっ!!待ってくださいよ!」
「えりぽんを止めても聖がいるのだー!ふふっ」
「あーんもぉ!やだぁ!」

ホントやだ!恥ずかしい!
とにかく2人を止めなきゃいけない。

私があんなこと言ったとかばれたら、絶対ニヤニヤされる。
そしてじわじわと追い詰められるんだ。

あーもう…ちょっと困るし、あのニヤニヤっぷりがくるって分かってるんだけど。

だけど…。

いや、いいんだ。
とにかくばれるのは困るから…必殺の一撃!

「鞘師さんに黙っててくれたら、おやつ奢りますからー!」

2人は顔を見合わせて、手をパンッと合わせた。

よしっ。
交渉成立みたい。
16 名前:高津 投稿日:2013/04/17(水) 00:16
更新しました。
ぽんぽんに見せかけた鞘石みたいになってしまったw

実は…前回の話の展開が前に書いた話みたいになったことをアップしたあとで気づいたという…
とんでもない失態をしでかしましたw
ま、まぁそういう感じのつながりのあるね、話だと思って貰えれば!www(言い訳)

あと、更新頻度が地味に落ち始めてますが…
怪我をしてしまい、激痛が頻度高く襲うので書き物に集中できる時間が格段に落ちてしまいました。
ですので、ちょっとしばらくはローペースになります。
ご了承くださいませ!
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/05/05(日) 19:28
ゆっくり待ってます。お大事に。
18 名前:MELT 投稿日:2013/05/09(木) 01:44
今日も鞘師さんが来ている。
休みの前の日はいつもそう。
もはや慣れたものだ。

うちに来てくつろいで。
でも、ただじゃくつろがせない。
宿題はやるのが苦手って言ってたので、一応持ってこさせてやってからくつろぎタイムにしてる。

「ふいー…」
「お?終わりました?」

うん、とそばに寄ってきて私の肩に頭を乗せる。

「あ、手ぇ汚くなってますよ?ここ」
「うわホントだ!ノートに書くとこうなるのヤなんだよー」

洗ってくる!と洗面所へ。
こういうの、ホントフツーの日常って感じになってしまったんだなぁと思う。

ちょっとニヤけてきてしまう。

「洗ってきたー……ん?」
「ん?」
「何で笑ってんの?」
「え?私笑ってました?」
「うん。笑ってたってかニヤニヤしてた」
「そんなつもりはなかったんですが」
「え?どういうこと?」

よくわからん、といいつつヒヒヒと笑い、また私の隣に。
19 名前:MELT 投稿日:2013/05/09(木) 01:45

「あーアイス食べたい」
「あー食べたいねぇ」
「とかいって準備のいい私は買ってあったりするんですよ」
「あ、嘘、ホントに準備いいね」
「でも一本しかないや…」
「いひひ、そりゃー準備よくないな」
「スミマセン…」

いいじゃん、亜佑美ちゃんが買ってきたし。と先輩のありがたいお言葉を頂いたので遠慮なく。
オレンジ色のパッケージを冷凍庫から出してきたら、急にあー!と叫ばれた。

「こないだ食べたやつじゃん!」
「おいしかったんで…」
「なんでうちのないの!」
「えええー!」
「亜佑美ちゃん準備よくない!うちも食べたい!」
「鞘師さん食べます?」
「いやでもほら、亜佑美ちゃんが買ってきたし…」

めんどくさい!
まぁ結局二人で食べることになったけど…。

「棒アイス二人で食べんの難しくない?」
「今更ですよ!とりあえず私ちょっとでいいんで」
「え?嘘いいよ、食べなよ」

ホントめんどくさいな、鞘師さんは。
まあこういうとこも嫌いじゃないんだけど。

あ、やば溶けてきて垂れちゃう。

「ほら、私の分食べましたから……な、何見てんですか?」
「い、いいいいや、なんでもない…うちも、食べる…」

なんか鞘師さんの視線が気になったけど。
向こうはアイス食べながらも私の方をチラチラみてくる。
20 名前:MELT 投稿日:2013/05/09(木) 01:45

何故か無言のままアイスをシェア食べした私たち。
相変わらず鞘師さんは何も喋らずに私の方を見てくるばかり。

「な、なんですかさっきから…」
「いやぁ…」

今度はもじもじして俯く。
と思ったら、すすすっと私の横に。

「あのね、あのね」
「はい…?」
「なんかさっきさ、アイス溶けるって思って舐めてたじゃん」
「まぁアイスは舐めて食べるものですし…」
「それがさぁ…なんかちょっと、あの。ちょっとあの、セクシーで」
「なっ…」

何を言い出してんだこの人は!
とはいえ…こうやって寄ってきたのを邪険にできるわけでもないし…。
それに…。

「あの、ごめん」
「わっ!」

上には鞘師さん。
あぁまたこのパターン…と思いつつも久々で、ちょっと嬉しかったりもする。
鞘師さんは鞘師さんで余裕がないみたいで、切羽詰った顔をしてたりするけど。

「まったくもぉ…少しは我慢できないんですか?」
「だって、だって…亜佑美ちゃんがかわいいんだもん」
「もぉ…しょうがないな」
「それ」
「え?」

急にそれといわれて何のことか分からなかった。
でも、そこから指で唇を撫でられて、体がぎゅうっと熱くなる。
21 名前:MELT 投稿日:2013/05/09(木) 01:45

「亜佑美ちゃんの、そのさ…あの、ニコって笑うと綺麗に口んとこがね、半円みたいになるの。それが好き」
「そ、そうですか」
「……亜佑美ちゃんが好きなんだよぉ…」

切なそうに言う鞘師さんがかわいくてふきだしてしまう。
頭を撫でてあげたら、ううーとか言いながらもくすぐったそうにする。

「ちゅーしたい」
「するつもりだったんでしょ?」
「ん」

わかってたことを伝えると、遠慮なくキスの雨。
くすぐったくて、愛おしくて。

余裕のない鞘師さんはすごくかわいい。
そんなこと考えちゃうとか、私やっぱりちょっとSかもしんない。

「あゆみちゃん」
「なに?」
「…しよ?」
「ここで?」
「イヤ?」
「イヤですよ。床だよ?」

そういうと口を尖らせて、だってだってとか始まる。
ホントめんどくさいなこの人は。
って分かってて付き合ってるんだけど。

「ベッド行きましょ?」
「う…」
「何ですか今度はぁ」

今度は背中を押してくる。
なんだなんだ。

そして、ベッドに……あぁ、そういうことね。
また鞘師さんが上になって。
22 名前:MELT 投稿日:2013/05/09(木) 01:46
「ほんっと、鞘師さんって自分の欲望に忠実ですよね」
「…だって」
「わかってますよ。…私のこと好きなんですよね?」
「うん…」

首元に頭をすりすりしてくる。
ホント、小動物みたいだ。
私の方が身長としては小さいかもしれないけど。

「ツッ…もぉ、ホントあまえんぼ。したかったんじゃなかったんですか?」
「…したい」

私の返事も聞かずに首筋に唇を落とされる。
啄ばむ音が聞こえて、ちょっと恥ずかしくなってしまう。

鞘師さんとのこういうことはホントにドキドキする。
頭の先まで気持ちいい感覚がぞわぞわってなる。

「いい?」

お腹辺りを撫でながら、今度はほっぺにチューされた。

「ダメって言うと思ってないでしょ」
「イヒヒ」

しょうがないな。

…でも、私だって好きだよ。鞘師さん。
したいよ。
いっぱい愛されたいし、愛したい。

このしょうがないなって感じがたまらなく好き。
自分に夢中になってくれてるんだって感じるから。
23 名前:MELT 投稿日:2013/05/09(木) 01:47

「鞘師さん」
「ん?」
「……今日、いっぱい愛してくださいね」

びっくりしたのか、口元を押さえてる。
でもすぐに。

「反則だよ」
「ふふ」
「もっと…好きになっちゃうじゃん」
「好きになってくださいよ」

耳元で聞こえた、好きになるに決まってるじゃんという声がスイッチになった。
鞘師さんもあのまっすぐ見る目で私を見てくる。
視線が熱い。

私だって、鞘師さんのこともっと好きになっちゃいますよ。
これからもずっと。

徐々に捲られる服。
伸びてくる手。

全部が熱い。

さっき食べたアイスなんてなかったことになったみたいに、溶けてしまいそう。

これからもっと、溶けて混ざるんだろうな。
そんなことを考えながら鞘師さんに身を委ねた。

 
24 名前:高津 投稿日:2013/05/09(木) 01:48
更新しました!

お待たせしたわりにはみたいな感じになりましたが…ちょいエロ?ですw
この先を書こうか書くまいか迷っていますw
いいのか悪いのかみたいな…w

>>17
ありがとうございます!頻度落ちても定期的にはアップするつもりなんでよろしければ見てやってください。
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/05/09(木) 12:55
キテタ━(゚∀゚)━!!

あっ、はじめてのコメです(>_<)
高津さんの作品めちゃくちゃ好きです!
dis-communicationの作品すべて何度読み返した事か…
リアル鞘石推しなので、いちいちツボっちゃって毎回心臓が大変な事になってますww
どうかこれからも、お身体をご自愛しつつ更新お願い致しますm(__)m

あっ!
今回の作品の続き、ぜひともお願い致しますです(シ_ _)シ
(;´д`)気になって夜しか眠れない(切実ww
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/05/09(木) 20:46
おおお!なんか久々に鞘師→石田好き好きSSが来てて、身もだえ起こしてしまったw(*´Д`)ハァハァ
自分は鞘師×石田が好きなんでありがたいですwやっぱ誘い受けだーちゃんは可愛いですな。
ちょいエロがっつき鞘師すん何気に好きです。いつもの余裕が何処かへwwwきゃわわ(・∀・)イイッ!!
27 名前:見えない部分 投稿日:2013/05/12(日) 23:52

今日も亜佑美ちゃんちでお泊まり。
まぁうちの部屋は大変なことになってるので、自動的に亜佑美ちゃんちになるだけで。

でも本当に最近入り浸ってる気がする。
少し自制しなきゃいけないかな…とか頭をよぎるけど、亜佑美ちゃんと一緒にいたい気持ちの方が優先になってしまう。

なんて考えるだけで…なかなかなー。
まぁでも今はほら、お風呂も上がって亜佑美ちゃんのベッドにぼーん!

「こらっ!」
「イヒヒ」
「もー、ホントしょうがないなぁ。…あ」
「んー?」
「鞘師さん…ちょっと、ほら」
「ちょまっ、アハハヒヒヒヒ!!何すんの!!」
「鞘師さん…ちょっとお腹プニってません?」
「え?」

そう言って亜佑美ちゃんがニヤニヤしながら人のお腹を指差してくる。

「お腹、ほら。プニップニですよ!」
「あぁん!」
「ちょ、ウケる!ホントくすぐったがり」
「うぅ…もぉ…」

う、うちだって自覚してないわけじゃないんだ!
先生に言われたけど…キツイわけで…。
ただちょっと…サボり気味というか…。
28 名前:見えない部分 投稿日:2013/05/12(日) 23:52

「あ、亜佑美ちゃんだって油断してる、かもじゃん!」
「あのねぇ、いつも見てるから知ってるじゃないですか。私お腹プニってませんもん」

意味不明な強がりをしてしまったら、亜佑美ちゃんのドヤ顔で返ってきた。
いや、ホントすいません。
貴女ホント鍛えてる感じですよね。自制もききますしね。

そう考えるとうちがホントだらしない子みたいだ。
実際お腹もだらしないし。
しっかりしてる亜佑美ちゃんとは大違いだ。

「落ち込んでます?」
「落ち込んでますよ…」
「私としては鞘師さんのプニプニしたお腹かわいいとは思いますけど…モーニングとしては、ねぇ?」
「うー…」
「よしよし」
「亜佑美ちゃんが言ったのにもー」
「おおかたサボってんじゃないですか?体幹がどうたらとか指摘されてませんでしたっけ?いつかのときに」
「よく聞いてんねぇ…」

そういうと、亜佑美ちゃんはお茶を淹れにキッチンへ向かった。
すぐに戻ってきて、暖かい紅茶をテーブル置くと、またうちの傍に寄ってきてくれて。

「今度はあれですね、宿題だけじゃなくうちに来たら筋トレもしてもらわなきゃいけないですねー」
「なんてこというんだっ」
「だってそうでしょー?家だとキツイからってちょっとでやめちゃうんじゃないんですか〜?」
「うっ…が、頑張ってる、もん」

見抜かれてる。
分かってるけど強がってしまうこの鞘師心。

そしてニヤニヤして鼻をつつかれる…と思ったら。

「頑張りましょうね?」
「うひゃははは!!ちょ、もぉぉ!お腹揉むの、やめてーー」
「だってかわいいんですもん。うりゃうりゃ!」
「あはははは!ダメーー!んひひひ!!」
「鞘師さんウケる!」
29 名前:見えない部分 投稿日:2013/05/12(日) 23:53
しばらく笑かされて、はあはあと息が上がって気づく。

「……」

先に気づいたのはうちだったけど、それを受けるように亜佑美ちゃんもすぐ気づいた。

「なんで見るん…」
「見えちゃいましたもん」
「胸も見たじゃろ」
「…それどころか」
「なんで見るんー!」
「見えちゃったものはしょうがないじゃないですか!」

久々の感じ。
亜佑美ちゃんを上に見るなんて。

もうスイッチ入っちゃってるのが分かる。
自分も一度スイッチが入ると…ちょっと感覚が変わる。

「んっ…」
「鞘師さんが悪いんですから」

ニッと口角を上げて、目を細める。
亜佑美ちゃんはこういうとき本当に大人だ。

うちが悪いって言われると、ごめんなさいって気分になる。
でもなんというかゾクゾクする。
体中の感覚が何倍にもなったみたいに。

「こういうとき、プニプニなのすごくいいですよね。触り心地良くて」
「意地悪言わないでよ…」
「ふふ、そういう顔、好きです」
「もぉ…」
30 名前:見えない部分 投稿日:2013/05/12(日) 23:54

言われるたびにゾクゾクぞわぞわ。
顔と体が熱い。

目の前の相手がこんなに恋しいなんて。

「寝るときつけないからすごい触るの楽」
「ムード!」
「すいません…」

右手で内腿をすりすりされて、左手で胸を撫でられて。

あー…ダメ。
ホントもうダメ。

好き。
このままどうなってもいいぐらいに。

「ねぇ」
「…ん?」
「はやく」
「……やらしいですね」
「…ごめ、んなさい」
「なんで謝るの」
「だって…」

なんだか謝らなきゃって気になってくるんだ。
亜佑美ちゃんにされてると。

うちはどんな顔してたんだろう。
少し困った顔をして、キスをくれた。

「鞘師さんは私が上になるといつも謝りますよね」
「あの、あの…あのね…」
「うん」
「なんか、あの…前に叱られたいとかいうの言ったと思うんだけど…そういう、感じ」
「あ、あぁ〜…なるほど」
31 名前:見えない部分 投稿日:2013/05/12(日) 23:54

そう言って亜佑美ちゃんはニヤッとする。
ああ、うちのおかしい部分がどんどん亜佑美ちゃんに知られていく。

変態じゃない、変態じゃないって言ってたけど…うちってホントやばい気がする。
こんな子、いないよ。普通。

それでも亜佑美ちゃんが上の時は…なんとなく。あの。
虐げられたいっていう…そういう気分になってしまうんだ。

「鞘師さん、息上がってますよ?どうしたの?」
「あ…あ…」

にっこり笑う亜佑美ちゃん。
亜佑美ちゃんも『そういう素質』あるのかもしれない。
それにつられるように、うちのそういう部分を内側から引きずりだされている気がする。

そう思うとさらにドキドキする。
わけわかんなくなる。
口がぱくぱくとしか動かない。

「か、からださわ、られて」
「触られて?」
「っ…あ……嬉しくて…」
「よくできました」

頭を撫でられる。

あぁ…。
亜佑美ちゃんが好き。

すき。

早くどうにかして。

ください。


声に出ていたかもしれない。
亜佑美ちゃんはまた、にっこり笑ってうちにキスをくれた。

そのあとは…もう、わかんない。

だからただ、ぎゅっとシーツを握り締めた。


 
32 名前:高津 投稿日:2013/05/12(日) 23:59
更新しました。
やはり踏ん切りがつかないので、この先は皆さんのご想像にお任せみたいな感じで今後も書いていきますw
すみませんw

しかしこの鞘師。どうしてこうなった…w

>>22
前スレも!ありがとうございます!
ツボって頂けるというのは本当に嬉しいですw

続きはすみません。期待させたみたいで申し訳ないんですけど、やっぱり年齢的なもんでちょっと躊躇してしまいました。
すみません!

>>23
鞘→→石の展開が好きなので、もっと増えないかなぁといつも思ってますw
ので自分で書くしか…w
誘い受けでも受け全開じゃないほうが好きなので、今後もそういう感じで書いていこうかなと思ってますw
33 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/05/13(月) 08:15
更新お疲れ様です。そして、有難うございます!
高津さんの鞘石、いつも楽しく読ませていただいております。 リバ至上主義の私には本当ご褒美でした。お礼を言いたくなって初コメントです。
お怪我されてると知りまして。執筆活動ご無理なさらずに。これからも楽しみにしてます!
34 名前:10 YEARS AFTER 投稿日:2013/05/22(水) 01:12
「喉渇いちゃった」

そう独り言を呟いて自販機の前へ。
りほりほの真似してサイダーでも飲もうかなって思ったけど、やっぱりお茶でいいやってボタンを押す。

自販機の前にはちょっとしたソファーみたいなのがあって、さゆみはそこに腰を下ろした。

――もう明日かぁ。

今更思うことなんてない、…とは言えない。
たくさん考えることもあるし、たくさん言いたいこともある。

ただ、時間が足りない。
二人だけで過ごす時間が圧倒的に足りない。

これはもう仕方のないことなのかな。

微妙な距離で何年もやってきて、ここ最近でようやく彼女のすごさや優しさ、そして改めて感じる意外と気が合うってこと。
それをたくさん知った。

でも。

「遅すぎるよね」

そう呟いたすぐあと、後ろの方に誰か腰掛けた感触。
振り向こうと思ったけど、すぐに分かった。

「何が?」
「…何やと思う?」
「分からん」
「だよねぇ。…れいなと仲良くなるのが遅すぎたなって、今思ってたとこ」

何も言わず、ふっと息を吐く音だけが聞こえる。
35 名前:10 YEARS AFTER 投稿日:2013/05/22(水) 01:12

「れーなもちょっと思う」
「だよね」
「もうちょっと分かってればと思いよったけど、でもこれでいいのかもしれんね」
「…そうやね」

そうやね、本当に。

「こうなるように出来てたって思う。今となっては、やけど」
「詩人やん、れいな」
「詩人はさゆっちゃろ」
「それは将来の夢やろ」
「そうそう」

お互いに笑って。
お互いに背中合わせになって。

あぁさゆみたち今すごいいい空気。

でも、これがもう明日で終わってしまう。
さゆみとれいなの時間がもうなくなってしまうんだ。

絵里がいて、藤本さんがいて。
そしてれいながいて。

さゆみたち6期は本当に本当にすごかった。
あらゆる意味で。

スイもアマイも味わった。

この気持ちを共有できるのはれいなしかいない。

だからこうやって笑い合えるんだと思う。

「…寂しいねー」
「嘘やろ」
「嘘に聞こえた?」
「聞こえんかった。ふふ、言ってみただけ」
「ひどぉい」
「なんかうれしーね。こういうの」
「そっか…」

さゆみたちは背中合わせ。
もちろん正面から見るのも好き。

でも、背中が頼りになるってとっても大事だと思う。

あぁ…。もう。
36 名前:10 YEARS AFTER 投稿日:2013/05/22(水) 01:12

「さゆみ、いつまでもここにいたい」
「明日はくるよ」
「…そうやね、………ホント、そうやねぇ」
「じゃあれーな戻るから。さゆも早くこんと」
「ん」

れいなの感触が消えた。
香りは少し残ってて。

この香り徐々に消えていくのかな、そう思った。

そう思ったらやっぱり悲しくなっちゃって、胸の奥がじわってなった。

れいなのいた感覚だけが残って、伝説みたいなのになって。
田中さんすごかったって後輩が語りついでいって、さゆみはそこにでもれいなはね…って茶々を入れるんだろうな。

「やば、泣ける」

メイクが崩れちゃうから、ずるいけど目じりの涙をシャツで押さえる。

でもウケる。
バカみたい。
そんな妄想とかしちゃって。

すべては明日。

明日で終わる。

私たちの10年が。

でも、それはさゆみがいる限りまだまだまだいけるはず。

そう思いながら明日頑張らなきゃ。

「よっし!」

気合を入れてちっちゃいペットボトルをゴミ箱に。
ガコン!と大きな音を立てて落ちるそれを、今後がなんだかうまくいく気がしてちょっと笑えた。

頑張ろ。


――れいな、明日だよ。


37 名前:高津 投稿日:2013/05/22(水) 01:15
更新しました。
いいライブでした。

今回の話はライブ前夜の話。
いいコンビだなぁと思います。本当に。

れいなおめでとう!ありがとう!

>>33
ありがとうございます!初コメありがとうございます!
最初はリバいけるかなー?と思ってたんですが、意外と書いたらいけましたw
今後はそんな感じでいこうと思います!
怪我はたぶん大丈夫になってきましたw ありがとうございますw
38 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:15

…憂鬱だ。

憂鬱って漢字書けるかって聞かれたら絶対書けない。
でも、今の私の気持ちを文字で表すのなら…この言葉と、罪悪感だ。


目の前から図ったように、来る。
やらなきゃいけない。

私は意を決して声をかけた。

「さ…鞘師さん、今、ちょっといいですか?」

私に気づいた鞘師さんは、嬉しそうに私に向かってきてくれる。

胸が痛い。

「なにー?亜佑美ちゃんっ」
「こっち、こっち来て下さい」

なんだなんだ?と言うも私についてきてくれる。
いつもは手を繋ぐのが当たり前になってたけど、今日はそれがない。
というか、できない。

短い間だけど無言の私。
そのまま誰もいない部屋へ鞘師さんを通す。

「なに?なんか相談事とか?それとも、えへへ…」

私と二人っきりになれたのが嬉しかったのか、はにかんでちょっと不思議な動きをする。

かわいい。

でも、私は今から…

「鞘師さん」
「んー?なぁに?亜佑美ちゃん」
「……私たち、別れません?」
39 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:15


――言った、言ってしまった。


「え」

その一言と、凍りついた顔。
こんな顔見たくなかった。

「な、なんっ、え?う、うち亜佑美ちゃんに何かした?どうして?うちのこと嫌いになったの?」

堰を切ったように鞘師さんが話し出す。

「…ごめんなさい」

自分の口から出る言葉が嫌だ。
鞘師さんを傷つけることしかしない。

正面から向き合うことなんてできなくて、顔を反らす。

「亜佑美ちゃん!!」

私の両腕を掴んで、鞘師さんが必死になってる。

「ごめんなさい…」

「…やだぁ…やだよぉ…亜佑美ちゃん、うちのこと…嫌いにならないで…」

「鞘師さん…」

「やだぁぁぁあぁ!!!うわああああああんっ!!いやだいやだいやだぁぁっ!!」

普段泣くことのない鞘師さんが、子供みたいに大声を出して泣いて。
私にしがみついて…。

もう…。


「鞘師さん、私っ…」


 
40 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:15
 
41 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:15

42 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:15
 
43 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:16


『やだぁぁぁあぁ!!!うわああああああんっ!!いやだいやだいやだぁぁっ!!』



「何!?」

大きな悲鳴とも言えるような声にざわざわとなる楽屋。
さゆみと生田はまさかと思いながら顔を見合わせた。

「道重さん…」
「生田ちょっとまずいかも、行くよ」
「はいっ」

「みにしげさんどこいくんですかぁー!」

佐藤が後ろから叫んでるけど、今はごめん!


当たり前だけど生田の方が足が速くて、さゆみなんか追いつけない。
それでも走って行った先のドアを開けると…

石田に抱きついて大鳴きしてる鞘師がいた。

さゆみたちに気づいたのか、石田が睨んできた。
こんなこと今までなかったぐらいの表情。

「だから私嫌って言ったんですよ!鞘師さんのこんなのみたくなかった!…ごめんね鞘師さん、別れるなんて嘘ですから!ごめんね…」
「ぅぐっ…な、なに…?」
「私、鞘師さんのこと大好きだから。ね?別れたりしないから、大丈夫ですよ。ホント…ごめんなさい…」
「ぅん…亜佑美ちゃんっ…」

呆気に取られた。

まさか鞘師がこんなに泣くなんて。
なんてことしちゃったんだろ…。

石田にぎゅうっと抱きついて離れない鞘師を見て、これは引き剥がしちゃいけないと実感してしまった。
元々そんなつもりはなかったんだけど…まさかここまでとは思わなかった。

キッとさゆみと生田を見てくる石田。
これは本当に怒ってる。
そして怒っても仕方ない。
44 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:16

「道重さん!生田さん!!!」
「は、はい…」
「ご、ごめん…」
「私嫌って言いましたよね?」
「はい…ほんっとごめん…」
「亜佑美ちゃんごめん…」
「鞘師さんにも!!!」

石田が怖い。
鞘師もだけど石田がこんなに怒ったのは佐藤に向けてぐらいしかみたことなかった。

「みっしげさん…?えりぽん?」
「ごめんね鞘師…石田のことけしかけたのさゆみだから。本当にごめん」
「里保、ごめん!ほんとにごめん!」
「みっしげさんとえりぽんが亜佑美ちゃんに言えっていったの…?」

まだ涙をぼろぼろと流してる鞘師。

「ごめんね…。そのあとに誕生日お祝いしようと思ってたんだよ?驚かせてからの流れにしようかな、みたいな…」
「実は嘘でしたー!って言って連れてきてもらってハッピーバースデー!しよって相談しとったっちゃけど…ごめん」

そうしたら、鞘師にじとーって目で見られて。

「えっ…と鞘師?」
「みっしげさん」
「は、はい」
「えりぽん」
「うん」

じっ、とさゆみたちを見つめてくる。
涙が全然止まってない。
睨んでるとも、また違う感じ。

少し怖くなる。

と思ったら…

「べーっっだ!!」

ちょっ…、やだ何この子!
嫌いってこと?
でもなんかちょっと嬉しいんだけどさゆみ!
45 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:16

少し笑ったように見えた…と思う。
ちょっと安心。
そして鞘師はまた石田の肩のところに顔を埋めた。

石田は石田で鞘師に弁明をしてて。
抱きしめながら背中を撫でてて、あーあー恋人同士っていいわねとか思わされるような構図だった。

「生田どうする?」
「どうするってー、どうしましょう?」
「とりあえずりほりほには嫌われちゃったし、ふふ」
「まぁでもほらぁ、それは衣梨たちが悪いんで」
「そうやね。…石田、鞘師本当にごめんね。でもみんな待ってるからさ」
「里保も亜佑美ちゃんもホントにごめん!!そろそろ聖たちも戻ってくるけん、あとで来て?」

石田は理由が分かっているからか、わかりましたと返事をくれた。
鞘師は…ちらっとさゆみたちの方を見て、頷いてくれた。

なんかそれがすごく嬉しかった。
恋人を巻き込んでやってしまったことには本当に申し訳ないとしか言えないけど。

さゆみと生田はまた一言謝って、楽屋に戻ることにした。


「ねえ生田」
「なんですか?」
「鞘師ってあんな風なんだね」
「衣梨奈もびっくりしました。里保はあんまり泣かんから…」
「よっぽど石田のこと好きなんだね…」
「里保は…自分を好きって思われたいんだと思います」
「どういう意味?」
「なんていうとか…難しいですけど、里保、愛されたいんだろうなって衣梨は思ってます」
「ふぅん」

生田結構考えてるんだ。

「里保、寂しがり屋だから。センターやし、頑張ってるって分かるし。でもそういう…なんていうとかいな、えっと逃げ場?じゃない、家みたいのが亜佑美ちゃんっていうか」
「なるほどね」
「だから、ノリでやっちゃいかんかったなって。里保に悪い。亜佑美ちゃんにも」
「そうやね…。まぁでもやってしまったものは仕方ないし、みんな待ってるし」
「ですね!切り替えんと!」
46 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:17

そのあと、石田と鞘師は揃って来てくれて、みんなからの誕生日おめでとうは無事成功。
目が真っ赤の鞘師を疑問に思った他のメンバー(特にフクちゃんに)怒られて、さゆみは年上だからかもしれないから道重さん!ぐらいで済んだけど、生田が大変なことになってた。
そこを空気悪くしちゃいけないと思って、飯窪がフォローして何気滑ってくれたのでどうにかなったけど。
サブリーダー、頼りになるなぁ。
リーダー自らメンバー傷つけちゃいけなかった。
反省。

そして鞘師は石田の隣にくっついて離れなかった。
佐藤がやすしさんどうしたの?お腹痛い?とか聞いてたりしたけど、そんなことないよといつものポーカーフェイスで答えてたけど。
やっぱり行動に出ちゃうんだね。

でも本当によかった。
さゆみはホント反省しなきゃいけないけど、結果的には喜んでくれて。

なんかいいな。
こうやって後輩がキャッキャ言って育っていくのを見るって。

さゆみ、まだいるつもりだけど…頑張んなきゃな。
ダメリーダーだけど、がんばろ。

「鞘師」
「は、はい」
「誕生日おめでとう」
「ありがとうございますっ」

さっきとは違った満面の笑みだった。

 
47 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:17
 
48 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:17
49 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:17
 
50 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:18


「寝れないんですか?」

「ん」

「楽屋ではべったりだったのに、なんでこっちこないんですか?」

「だって」

「だって?」

「……なんか怖いんだもん」

「なぁに言ってんですか。怖くないですよ」

「うちのこと…嫌いじゃないんだよね?」

「嫌いになんかなれるはずないじゃないですか」

「ん…」

「おいで」

「うん」


「んっ…」

「っふ……鞘師さん…」

「何?」

「ホントに今日はごめんなさい」

「いいよ」

「好きですから、本当に」

「うん。うちも、好き」


51 名前:devotion 投稿日:2013/05/28(火) 00:18

「…亜佑美ちゃん気持ちいい」

「私筋肉質だから気持ちよくないですよホント」


「気持ちの問題だよ。亜佑美ちゃんに抱きついてると嬉しくて…泣きそうになる」

「泣かないでくださいよ」

「亜佑美ちゃんはそういう風にならないの?」

「私は、嬉しくなります。ぎゅうってなりますよ。ニヤニヤしちゃう。幸せで」



「イヒヒ。いいにおい」

「ツッ…鞘師さんもでしょ」



「ね、もっかい…」


「ハイハイ」

 
52 名前:高津 投稿日:2013/05/28(火) 00:20
更新しました。
さやし誕生日おめー!!
よい15歳を!

ちょっとネタとしてどうなのかなとも思いつつも、話が進むにつれてマイルドになってきたのでアップしました。
鞘師の子供っぽさを出したかったんですが、うまくいったかどうかは分かりませんw
53 名前:名無し飼育さん 投稿日:2013/05/28(火) 00:24
おー誕生日に1本来ましたね。
実は密かに楽しみにしていますww

イベント行くならその絡みで何か…。
54 名前:ねこがいぬ 投稿日:2013/06/11(火) 23:52

「あゆみちゃんっ」

どうっと音がしそうなぐらい勢いよく抱きつかれる。
最近の鞘師さんはこんな感じだ。

申し訳ないことに、やっぱりこないだの誕生日のアレが効いてるらしく前より甘える頻度が増えた気がする。
それも見せてもいい人の前では結構多い。

おかげで後ろではこそこそされてる。

「まーまた抱きついてますわよ、石田の奥さんったら」
「ねーえ、毎日お盛んなことですわねぇホホホ」

「ちょっとー、あんたたち聞こえてるっつーの!てか私が抱きついてるんじゃないし!」

どぅーとはるなんがニヤニヤしてる。
まったくもう。

と、鞘師さんの方に向き直ると…眉を八の字にして…。

「亜佑美ちゃん抱きつかれるの嫌なの?」
「いやっ、嫌とかじゃないんです!どぅーがね、抱きついてるとかいったから、体勢的にほら、なんか違ったかなってそれが言いたかっただけで!」
「んふー、よかった!」

頬ずりされてるし。

いや、かわいいんですよ?
鞘師さん。すごく。

でも、思う。
あんなに普段ストイックで頑張ってる人だし、しかも加入前から最近までの鞘師さんの映像を見せてもらったりとかしたけど…
どうにもこんな人だって思えはしなかった。

ふいっといなくなったり、シャキシャキ頑張ってたり、時には寝てたり。
猫みたいな人だなって思ってたんだけど。
55 名前:ねこがいぬ 投稿日:2013/06/11(火) 23:52

「鞘師さんって犬ですよね」
「へ?」

ブーーッ!!と音がしたと思ったら、はるなんが横でお茶を噴出してた。

「汚っ!!!ちょっと何してんのよ!」
「いや、ちょっとゲッホ…エッホ…ゴホゴホゴホッごめ、拭く、拭くっ」
「何してんの!?大丈夫?」
「むしろそっちが、ゲホッ、何言ってんのだよ!びっくりしたよ!」
「え?私?」

頷きながら床を拭くはるなん。
まったく…とか言ってるし。
私そんな変なこと言った?

「ねえねえ」
「は、はい?なんですか鞘師さん?」
「うちが犬ってなに?」
「え?あ、あぁー」

なるほど…それかさっきのは。
とりあえずはるなんの方を向いて一言。

「はるなんのヘンタイ!」
「バッ、突然そんなこと言い出したほうが悪いでしょ!」
「別に変な意味なんてないもーん」
「もぉーー」

「ねえねえー、亜佑美ちゃんっ」
「あ、ごめんなさい。なんか鞘師さんは猫っぽいなぁと思ってたんですけど、意外と犬っぽいというか」
「そう?」
「結構懐いてきますよね」

床を拭き終わったはるなんが、椅子に座りなおして笑う。

「でも分かりますそれ、鞘師さん子犬みたいですよね」
「そ、そうかなぁ?」
「ハルもそれ分かる!好きな人だから甘えたいみたいなのあるんじゃないッスか?信頼してるっていうか」
「くどぅーにまで言われるとは…うちそんなに分かりやすい?」
「はーい、結構。あゆみんが来るとシッポ振って、わーい!ご主人様がきた!みたいな感じしますもん」
「ご、ごしゅじんさま…」

なんかみんな結構同じこと考えてるんだなー。
なんてしみじみ。

鞘師さんが複雑そうな顔をしてるけど、なんかそれもちょっと面白かったり。
その日は鞘師さんがどんだけ甘えてるように見えてるかっていう話をはるなんとくどぅーがご丁寧にも説明してくれて、鞘師さんはタジタジだった。
56 名前:ねこがいぬ 投稿日:2013/06/11(火) 23:52
 
57 名前:ねこがいぬ 投稿日:2013/06/11(火) 23:52
58 名前:ねこがいぬ 投稿日:2013/06/11(火) 23:52
 
59 名前:ねこがいぬ 投稿日:2013/06/11(火) 23:53

「うち、亜佑美ちゃんに甘えるのやめる」
「えっ?いきなりどうしたんですか?」
「だって…」

唇を尖らせながら、ベッドに座って足をぶらぶら。
今日のがよっぽど尾を引いてるんだなぁ。

隣に座って頭をなでなで。
ちょっと口が嬉しそうになったけど、すぐにまた唇を尖らせる。

「ううう〜」
「別に甘えていいのに」
「だってさぁ…あんな言われたらさぁ…」
「子犬かわいいじゃないですか」
「そうだけどぉ」

きっとみんなにばれてたのが悔しいんだろうなぁ。
別に気にしてないのに。
かわいい。

「私は鞘師さんが私のことだけを見てくれるの、嬉しいですよ?」

そういうと、口をぱくぱくさせてる鞘師さん。

「なんっ、なん、急にさぁ、もう…やめてくれるかなっ」
「じゃあもういわなーい。好きも言わなーい」
「えっ!やだ!やだやだやだ!!うち亜佑美ちゃんが好きって言ってくれないと死んじゃう!」

もう、こういうところが犬っぽいっていうか。
飼い主に嫌われたら泣いちゃいそうなそういう感じっていうかね?

「あーもう!かわいいかわいいかわいいっ」
「わうっ!いひひひっ、くすぐったいーー」
「ほえたし!」
「え!?びっくりしただけだよー」
「わんって言ってみて、鞘師さん」
「…わん」
「ツッ〜〜〜!!」

私から抱きつくと、鞘師さんは嬉しそうな顔をしてくれて。
ほんっとかわいい。
どうしたらいいのか分かんないぐらい。
60 名前:ねこがいぬ 投稿日:2013/06/11(火) 23:53

「ねえ亜佑美ちゃん…ホントに好き、もう言わないの…?」

ベッドに二人で寝っころがって、向き合って。
鞘師さんは私の手を握ってくる。
ちっちゃな暖かい手。

「嘘に決まってるじゃないですか」
「亜佑美ちゃん、もう嘘はヤだよぅ」
「あー、ごめんごめんっ、ごめんなさい!もう言わないから、ね?」
「ん…」

そうだった。
それで失敗したんだった。
ダメだ、もっとちゃんとしよう。

「うちは亜佑美ちゃんがこんなに好きなのに…」
「私だって鞘師さんのこと大好きですよ。だからもう、悲しい顔しないでください」
「うん…」
「もっと甘えていいから。大丈夫ですよ」
「うん…」

頭を抱えてあげて、私の首のあたりで頭をなでなで。
くぐもった搾り出すような声で、亜佑美ちゃん好きだよぅ、と聞こえて愛おしくなる。

私だって好きです。
ドキドキがぎゅうってなって、目の奥が熱くなるぐらいにはあなたのことが好きですよ。

「顔上げて」
「ん」

綺麗なラインの唇。
うっとりしてるみたいな潤んだ目がどうしようもなく私の心を揺さぶる。

今日は少しだけ荒っぽくキスをした。

それだけ、あなたのことが好きだって伝わるように。

61 名前:高津 投稿日:2013/06/11(火) 23:54
更新しました!
なんか鞘師は犬っぽいかもしれないというそのまんまのネタからの話でしたw

>>53
生憎その日はイベント参加できずでしたw
期待にお答えできなくてスミマセン!
62 名前:名無し飼育さん 投稿日:2013/06/13(木) 03:16
>>61
レスありがとうございます。
そうだったんですか…逆に申し訳ないです。
でも、高津さんの書く文が好きなのでこれからも楽しみにしています!
63 名前:past story:トラジックヒロイン 投稿日:2013/06/16(日) 00:09


夢を見る。
好きな人と結ばれる夢。
心地よい夢。
その夢の中に浸って、ゆらゆら揺らめく。

ぼんやりと夢から覚める時が来る。

「はぁ…」

それは夢だったと悟る。
そして現実はそうではなかったことを改めて実感する。

今日も胸がいっぱいになる。
早くあの子の隣を手に入れたい。

横にある鏡が目に入る。



――私、今恋してる。



64 名前:past story:トラジックヒロイン 投稿日:2013/06/16(日) 00:09


今日も聖は幸せだった。
亜佑美ちゃんと手を繋いだ。

これが女の子の特権だと思う。
男女の恋愛だとこうはいかないから。

手繋ごうっていうわけでもなく引き寄せ合うってすごくいいなって思う。
聖女の子で本当に良かった。

でも同時に女の子だからこそ難しいとこがあるのだって分かってる。

だからこの思いは秘めるだけ…にしたい。
きっかけがあれば、って思うけど…きっとそんなのは訪れることなんてないだろうから。


きっかけって言えば。
そもそも何がきっかけだったんだろう。

同い年だからっていうのはあったのかもしれない。
一緒のお仕事も多いし、運命かなってちょっと思えたぐらいには一緒にいられた。

亜佑美ちゃんと同い年で本当によかった。
それだけでこんなに嬉しいのはなんでだろう。


――あぁ、そうだ。


『譜久村さん、がんばりましょーね!』

にっこりと笑って、聖の手を両手で握ってくれた。
…あれがきっかけだったんだ。

65 名前:past story:トラジックヒロイン 投稿日:2013/06/16(日) 00:10

ちょうどあの時、すごく落ち込んでた。
色んなことが重なって、ストレスも溜まってて。

中間管理職、っていう言葉を聞いたことがあったけどそんな感じなのかな?
聖は会社にはいるけど、フツーの会社員とは違うだろうし。

9期の中でも一番年上だし…。でも聖はみんなをまとめられるようなそんな器じゃなくて。
でもやっぱり立場上、みたいなそういうところがある。

そんな時、亜佑美ちゃんが聖のことを見てくれた。
聖を見つけてくれた。

嬉しかったんだぁ、あの時。

たぶん二人の曲歌う前だったと思う。

ちょっと落ち込んでたんだ。
でも気合入れなきゃって思った瞬間のことだった。


『譜久村さんっ』
『あ…亜佑美ちゃん、どうしたの?』
『譜久村さん、がんばりましょーね!』

いつもの亜佑美ちゃんスマイル。
だったはずなのに。

完全に心を奪われたって思った。
人間弱いところに優しい気持ちが降りてくるとどうしても心動いてしまう。

恋に落ちるってこういうことを言うんだね。

『なんだか元気なかったですから。へっへっへ、石田がいれば10倍…いや5倍ぐらいかな?そんぐらいは元気になりますよー!』
『アハ、減ってるじゃん!…でもありがとう。嬉しい』

そういうと、へへへと笑って隣に座ってくれた。

隣にいるとこんなにそわそわしちゃうんだ。
恋に落ちる速度ってこんなに速かったっけ。
気づいてしまったらきっとそうなのかもしれない。

亜佑美ちゃんが好き。

心にそう決まってしまった。

だからあの曲は、亜佑美ちゃんへ向かって想いを飛ばした。

66 名前:past story:トラジックヒロイン 投稿日:2013/06/16(日) 00:10
それからと言うもの、聖は亜佑美ちゃんばかりを目で追ってしまっていた。
胸に秘めるだけでいい、なんてなかなかうまくいかない。

もちろんそれも分かっていた。

だから聖はいつも通りの聖でいるしかない。
今日の聖もいつも通り。
うん。

「亜佑美ちゃんおはよー」
「おはようございます!譜久村さん!」

亜佑美ちゃんは髪を下ろしてノーメイク。
かわいいなぁ。
うっかり眺めてしまいそう。

「…あ、昨日言ってた香水の!置いてた試供品使ってみたんですけどー」
「うん、どうだった?」
「高かったから買えなかったけど、すっごいいい匂いでした!次は買うっ」
「だよねー!聖は買っちゃったけど」
「いいなぁ。あんなんいきなり手ぇでなくないですか?」
「聖お金貯めてたから。ふふ」
「あ、そうなんですかぁ。私もそうしよっかなぁ。譜久村さんもですけど、鞘師さんもいつも超いい匂いしますもん。石田あんまいい匂いしなくないですか?」
「そんなことないよ、亜佑美ちゃんいつもいい香りするよ?」
「うそぉー!またまたぁそんなこといってー」

亜佑美ちゃんって、自分がどう見られてるかすごく気にしてるところがある気がする。
気にしなくたってかわいいよ、って言いたいけど。
なかなかそんな台詞、えりぽんでもない限り表には出せない。

でもやっぱり亜佑美ちゃんはかわいいし、いい香りもする。
亜佑美ちゃんの香り。
くらくらしそう。
67 名前:past story:トラジックヒロイン 投稿日:2013/06/16(日) 00:10


でも少し冷静になれる部分があった。


やっぱり…相手は女の子だから。

聖は何度となく女の人に恋をしてきた。
その思いは…一度だって伝わったことがない。

だから自分の中で消化してしまうしかなくて、もういいかな…って思えるところで諦めてきた。

今回もきっとそうなるのかもしれない。

手に入れたいって思っても手になんか入らないんだ。


でも分かってる。


この思いはなかなか消えてはくれないってこと。

けど、恋は慣れたもの勝ち、だって聖は思ってる。
しばらくは想ってるだけで楽しいから。

声をかけて貰えるだけで嬉しい。
触れられるだけで嬉しい。

「次は一緒に行ってみません?」
「あ、嘘ー、嬉しい!行こ行こっ」
「じゃあそのうち時間決めて行きましょ!」
「うん!」

しかもおんなじグループ。
聖、得しちゃってる。

ほら、亜佑美ちゃん嬉しそうだもん。
やっぱり聖女の子でよかったよ。

うん。しばらくこの感じを楽しんでいこう。



―――きっと、いつかこの恋は終わってしまうのだから。



68 名前:高津 投稿日:2013/06/16(日) 00:12
更新しましたー。
前にアップしたイヤなオンナという話とちょっとリンクさせてみました。

>>62
ありがとうございます!好きと言ってくださるのは本当に嬉しいしありがたいことです!
というか申し訳なくなることはないのですよ〜
単に行ってなかっただけなのでw
69 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/06/16(日) 17:53
あゆみずきたー(;´Д`)ハァハァ
鞘石も大好物ですがあゆみずきもすげー好きなんで嬉しいです!
フクちゃんセツナス…(´・ω・`)
70 名前:名無し飼育さん 投稿日:2013/06/29(土) 00:12
>>68
そういえば、鞘石のとんでもないものが投下されましたねww

…という訳で、そのネタで更新楽しみにしています(*^-^)ゞ -=☆
71 名前:ふたりのふたつ 投稿日:2013/07/01(月) 23:35
部屋に着信音が響く。
画面を見て顔が濁ったのが分かった。

「ちょっと…すいません」

亜佑美ちゃんは寝室の方に向かって扉を開けて、そこにもたれかかるようにして電話に出た。
…出る前にスッと聞こえるような息を吸って。

「もしもし?」

「すっごい久しぶりじゃない?…うん、うん、アハ、ウケる!ホント?」

亜佑美ちゃんの顔は普段でも見せない引きつり笑顔。
でも声はしっかり演技していて、女優石田亜佑美だなってちょっと思ってしまった。

意外にもその電話は長くて、うちはそれを眺めながらサイダーを飲んでなんてことを30分もしていた。
おかげで後半は炭酸が抜けてちょっとおいしくなかった。

「…失礼しました」
「長かったね」
「いやぁ…地元の子がなんか久々に電話かけてきて」
「地元の子、ねぇ」

そういうと、亜佑美ちゃんは鞘師さんには分かっちゃいますよねと苦笑した。

「友達?」
「…違う、と思います」
「だよねぇ」

うちは手元のペットボトルをマグカップに換えて、コーヒーを淹れることにした。
インスタントだけど、お湯を入れると部屋に香りが広がる。

「亜佑美ちゃんは?」
「あ、大丈夫です」
「そか」

テーブルにマグカップを置いて、一息。
72 名前:ふたりのふたつ 投稿日:2013/07/01(月) 23:35
「なんか、こないだのインタビューでも思ったんですけど」
「うん」
「私って友達いないなーって」
「そう書いてたよね」
「というか、そう呼んでいいのかなって。地元の子とかまぁ仲いいかなって子とかいましたけど」
「うん」
「そうじゃない子とか、手のひら返したみたいに連絡してくるじゃないですか」
「いるよねぇ」

そう。
うちら地方出身組はそういうのが多い。
まったくめんどくさいよホントにさ。
うちはメールとかも適当だけど。

「ちょっと…めんどくさくないですか?」
「うちは適当にかわしてる」
「さっすが」
「流石とかじゃないよ。だってさ、ホントに結構いるもん。正直付き合ってらんない」
「私、未だにどうしたらいいか分かんないですもん。シカトしたらあいつ調子乗ってるとか言われるのもなんかヤだし」

亜佑美ちゃんは優しいなぁ。
うちはそういうとこ自分でもドライだなぁと思ってしまう。

「言いたいやつには言わせておけばいいんだよ。別に気にしないけぇうちは」
「鞘師さんってホントカッコイイですよね、そういうの」
「そう?冷たいだけじゃない?」
「割り切れるってすごく強いと思いますよ。…私はまだなんとなく慣れてないっていうか」

伏し目がちに苦笑する亜佑美ちゃん。
場にそぐわないかもしれないけど、その顔がすごく綺麗だと思ってしまった。
うちって…ホント亜佑美ちゃんが好きなんだなぁ。

「まぁ、あれだ、あれだよ。気を悪くさせない程度に相手しとけばいいんじゃん?結果的にはさ。波風立てないようにっていうか」
「そうですよね、もうそれしかないですよね」
「うん」

ちょっと元気が出たみたい。
よかった。

「ねえ亜佑美ちゃん」
「なんですか?」
「うちキスしたいんじゃけど」
「ツッ!なんですかいきなり」
「な、なんかさぁ、さっきの亜佑美ちゃんの顔がちょっと綺麗っていうかセクシーっていうかさぁ…」
「ハイハイ、しょうがないなぁもう」
「しょ、しょうがないとか!亜佑美ちゃんホント、ひひ、もうなんか手馴れてるよね、うちの扱いにさぁ」
「だって鞘師さん結構分かりやすいですもん」

そんな嬉しそうに微笑まないでよ。
本当にうちのこと理解されてるみたいで少しくすぐったくなる。
73 名前:ふたりのふたつ 投稿日:2013/07/01(月) 23:36
「うー、あゆみちゃーん」
「ハイハイわーかったから。ちゅーしよ?」
「うっ…その顔やめて、弱い」
「ハ?」
「いや、なんでもないですスイマセン。しますっ、しますちゅーしますっ」
「ツッ!!なんだぁ?」
「わーん、ウケないでくれぇ」
「もう早くこないとちゅーしませんよ?」
「今すぐいきます!」

真顔で言って亜佑美ちゃんにダイブしたら、笑いながらちゅーしてくれた。
おでこをごっつんして、笑い合って。

「鞘師さんって、ほんっと別人」
「へ?」
「さっきみたいなカッコイイ鞘師さんもいて、今みたいなへらへらした鞘師さんもいるんだもん」

なんだとう!心外だなっ!

「へらへらしてるとかっ」
「フェイみたい」
「うちはあんなに怖くないもん」
「どうかなー?ホントは怖い人なのかもー?」
「もぉー!亜佑美ちゃんだってクリアみたいにガサツかもしれんやん!」
「私ガサツじゃないですもんっ」
「うちだって怖くないもんっ」

「「プッ…あははは」」

「ウケる」
「ウケるね、やばい。何言ってんだろうねホント」
74 名前:ふたりのふたつ 投稿日:2013/07/01(月) 23:36
ホント、いつもみたいなくだらないやりとり。
楽しいなぁ毎日。

でも、楽しいばかりが毎日じゃない。
さっきみたいな微妙なこともあるし、もちろんいやなこともある。
そういうのがあっても余りあるぐらい毎日が充実してるし、楽しい。

だからやっていけるんだと思う。

もちろん、亜佑美ちゃんの存在はそれ以上だ。
お互いを高めあっていけるパートナーとしても、…恋人としても。

「亜佑美ちゃんが好きー」
「なんですか突然!…まぁ私も?好きですけど?」
「ふふ、ひひひ」
「鞘師さんキモーイ」
「ひどーい!なん、君はもう、なんでそういうことを言うんだ!」
「鞘師さんがニヤケるからですよ」
「だって亜佑美ちゃんが好きじゃけ、しょうがないじゃろー」
「もぉ、分かりましたからー」
「んひひ」

こうしていつもみたいに時間が過ぎていく。
明日もまたお仕事だ。

亜佑美ちゃんと一緒に寝て、亜佑美ちゃんと出発する。
たまにだけど特別な日。

これからも色んなこと乗り越えてやっていけたらいいな。
そんなことを願いながらちょびっと冷めたコーヒーを、少し笑いながら口につけた。
75 名前:高津 投稿日:2013/07/01(月) 23:39
更新しました!
更新しない間に色々ありましたがww

>>69
あゆみずきいいですよね!みずき→あゆみは切なくてナンボ!というスタンスで書いてますw

>>70
いつもありがとうございますw
とんでもないものにつきましては確認しましたw
偶然に希望に合致することはあるかもしれませんが、基本は書きたいものをだらだら書いてるので、
すみませんが自由に書かせてくださいw
76 名前:名無し募集中 投稿日:2013/07/02(火) 01:29
>>75
何か押し付けてしまってすみません…
自由に書いてもらって良いです!!
77 名前:甘い悩み 投稿日:2013/07/13(土) 01:09

――まただ。

また、こうだ。


「はー」


うちの感情に大きな波があるのは自分で分かっていた。
別に不機嫌とかどうとかそういうことじゃない。
たくさん考えてしまうだけだ。

今日も亜佑美ちゃんはえりぽんとおでかけ。

そして鞘師はこうやってうだうだヤキモチを焼いているのです。
何にもないって分かってても。

フクちゃんはどうなんだろう?
亜佑美ちゃんにヤキモチ焼いたりするのかな?

…でも、前は亜佑美ちゃんが好きって言ってたし、今はえりぽんと付き合ってるから…。
うーん、分かんない。

「分かんない分かんない」

うー、うー。

うちは何故こんなにも亜佑美ちゃんが好きなんだろう。

とか考えてたら、携帯が鳴って亜佑美ちゃんからのメール。

「……ぺっ!」

なにが生田さんとアイスー!だ!まったく!

悔しい。
うちも亜佑美ちゃんとアイス食べたい。
デートしたい。

デートしたいよう!
78 名前:甘い悩み 投稿日:2013/07/13(土) 01:09
なんでうちは高校生じゃないんだ…。
亜佑美ちゃんと時間が合わない。

最近したのだって夕方の公園で手を繋いで歩いたぐらいだ。
…それだって幸せだったけどさ。

でも、もっと一緒にいたい。
いっぱい楽しいことしたい。

そんで、いっぱい思い出増やしたい。

というか…亜佑美ちゃんがいないと、ちょっと怖い。
こないだの誕生日の出来事をちょっと今も引きずってる自分がいる。

亜佑美ちゃんに甘えてないとダメになってる。

裏切ることなんてないって分かってる。
あんなの嘘だったって。
でも、怖い。

ベッドに転がってタオルケットを抱きしめる。

「はー…」

うちってダメだなぁ。
何にも出来ないのにエースって言われて、でもそれに見合うようには頑張ってるつもりだけど…。
元々が上手にできないから余計に悩む。

亜佑美ちゃんの隣にいていいのかな、とか。
頼りにされてるのかな、とか。

愛情は伝わってくる。
伝わってくるけど、自分がそれに相応しいのか悩んでしまう。

また携帯が鳴る。

"今から帰りますよー!待っててね、鞘師さんっ"

う…。
油断できない。
名前なんか出されたらときめくじゃないか。

「亜佑美ちゃんってずるいなぁ…」

顔がニヤニヤしてしまう。
こういうメールくれるから、裏切らないってちゃんと分かってるんだ。

「亜佑美ちゃん…」

大好きな亜佑美ちゃん。
早く帰ってきて欲しいな。

うちの頭、撫でて欲しい。
そんで、鞘師さんって言って欲しい。
そんでね、ほっぺにね、ちゅってして欲しい。

いっぱいして欲しいことがある。
うちもしたいことがいっぱいある。

あゆみちゃん…。
79 名前:甘い悩み 投稿日:2013/07/13(土) 01:09
 
80 名前:甘い悩み 投稿日:2013/07/13(土) 01:10
81 名前:甘い悩み 投稿日:2013/07/13(土) 01:10
 
82 名前:甘い悩み 投稿日:2013/07/13(土) 01:10

「ただーー…いま?鞘師さん?」

何の物音もしない。
もしや…

「…寝てる」

まぁそうだよね。
しょうがないか。

せっかくお土産買ってきたのになぁ。
うちのお姫様は待ちくたびれて寝てしまったんだろう。

あまりに無防備でかわいい寝顔。
ちょっと写真撮っちゃおう。

「寝顔げっつー」

ストレートの黒髪を撫でる。
あ、ちょっと汗かいてる。

「鞘師さん」

もちろん起きる気配はない。
かわいいなぁ。

「ちゅーしちゃお」

ぷにぷにのほっぺたにちゅーした。

鞘師さんはむぐむぐと唇を動かして、目を擦り始める。
起きちゃったか。

でもきっと分かんないよね。ふふ。
私だけの秘密にしよう。
83 名前:甘い悩み 投稿日:2013/07/13(土) 01:11

「…あゆみちゃん?」
「うん、ただいま、鞘師さん」
「おかえりー…うち、ねちゃってた?」
「そうみたいですね。タオルケット抱きしめて寝てたよ?」
「うん…」

まだちゃんと目が覚めてないみたい。
頭をちょっと撫でて、着替えようとしたら、くんっと裾を引っ張られる。

「ん?」
「もっと」
「へ?」
「なでなで」
「ふふ、いいですよー」
「んふふーひひ、ふふふ」

かわいい。
寝起きは抜群にかわいいなぁと思う。
自分だけのものにしたいけど、この人は油断と隙だらけだから現場でもこういうのを容赦なく見せてしまう。
ホント、もったいない。

「早く目ぇ覚ましてくださいね?ご飯作りますから」
「あー…うんー。ふへへ」

しばらくはあのまんまだろうな。

とりあえずご飯作ろう。
最近ちょっと上手になってきたし!
もっと頑張ろっ。

「あゆみちゃーん」
「はーいー?」
「おなかすいたぁ」
「はーいはい、今作りますからねー」
「んー」

これはお腹を空かせていつもよりも早く目が覚めるかもしれない。
今日は簡単なのにしよう。
そんなことを考えながら冷蔵庫を開けた。

84 名前:甘い悩み 投稿日:2013/07/13(土) 01:12
更新しました!

ちょっと休憩みたいな感じというか…更新頻度高くないのでいつも休憩みたいな感じですがw
とりあえずこんな感じで!

>>76
いえいえお気になさらずに!
85 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/07/17(水) 04:06
(*´Д`)ニヤニヤ♪
86 名前:おんがく 投稿日:2013/08/09(金) 22:27


「ふふん、ふーんふんふん♪」

――私は今ご機嫌だ。

鼻歌なんて歌いながら歩いてる。


「小田ちゃん今日楽しそうだね!」

「ハイッ!」

「オダー!何歌ってんのぉ?」

「ふふふっ、内緒でーす!」

「小田は歌うまくて羨ましいよー」

「えへへ、そんなこともないんですけど…ありがとうございます!」


歩きながら歌うとみんな笑ってくれる。
私は今幸せだから。

くるくると回って踊ってしまいたいぐらい!

ふふふっ。
たぁのしーなぁ!

「さくらちゃんどうしちゃったの?めっちゃ楽しそうやけん、気になった」
「あ!生田さんっ!」

今日も素敵な音楽が頭の中を流れる。

大好きな先輩に会えると心も頭も素敵なことだらけだ。

もちろん目の前の先輩も素敵。
87 名前:おんがく 投稿日:2013/08/09(金) 22:27

「ふふふ、今日はすごく楽しいんです!」
「えー、何ーなんかいいことあったん?」
「たくさんありました!でも、内緒ですっ」
「秘密主義やん」
「ふふふっ」

生田さんは笑って手を振って向こうに行ってしまった。
今日もいいことひとつあったぞ。

楽しいなぁ。

さて、今日もレッスン。
レッスン部屋に戻ると、先輩たちが談笑。

あっちも、こっちも、なんとなぁくくっついてる。

外に出てても思うけど、世界はなんて愛に溢れてるんだろう!

いいね、世界中愛で包まれれば幸せだよね!
私の心もワクワクする。ぽわぽわする。

「ふふふーん、んーんーんーふーん♪」


「また小田ちゃんが歌ってる」

「さくらちゃん、歌声ホント綺麗だよね」

混ざる笑い声の中に心にストンと落ちる声。

この方のことは、大好きだ。
大好きなんだけれど。

羨ましいな、っていつも思う。

そんな時私は少しだけ、ほんの少しだけ悲しい色になってしまう。
ラベンダー色に青色が少し入ったように。


パンパン、と手を叩く音がする。


さあレッスン開始だ。
今は切り離して、ラベンダー色に戻ろう。

 
88 名前:おんがく 投稿日:2013/08/09(金) 22:27
 
89 名前:おんがく 投稿日:2013/08/09(金) 22:27
90 名前:おんがく 投稿日:2013/08/09(金) 22:27
 
91 名前:おんがく 投稿日:2013/08/09(金) 22:27

「「「お疲れ様でしたー!」」」


一斉に挨拶。

挨拶は基本デス。

さぁさ帰ろう!今日も元気いっぱいで帰ります!

「さくらちゃん、お疲れ様!」
「ハイ!お疲れ様です!」
「お疲れ様!あ、えりぽん待って」
「お疲れ様ですっ」

そう言って手を振る二人。

あ…うん。
分かってる分かってる。


―ー世界は愛で溢れている。


溢れて広がっていればいい。
広がればいいのだけど。

私の愛は零れそうになってしまう。
むしろちょっと零れてしまっているかもしれない。

だから、愛を歌に乗せる。



「――――!」



…涙と一緒に、零れてしまわないように。


 
92 名前:高津 投稿日:2013/08/09(金) 22:29
久々の更新です!

ちょっと不思議な話を書いてみたかったのでこういう内容になりましたw
切ない系でしょうかね。

>>85
ニヤニヤありがとうございます!ww
93 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/08/17(土) 18:57
さくらちゃんの淡い気持ちが切ないですね…

失礼ですが作者さんはご自分のサイトとか持ってらっしゃいますか?
書かれる話が好きすぎて気になって!
94 名前:eternity 投稿日:2013/08/19(月) 23:17

永遠を誓うというのはどういうことなんだろうか。
と、ふと思う。

愛を疑っているわけじゃない。
でも、それは永遠なのだろうか。

人の心は移ろいゆく。
だから、永遠なんて本当はないんじゃないか。


「里保ちゃん」
「…あ、フクちゃん」

気づけば隣にフクちゃんが立っていた。
いつもみたいに優しい顔が少し心配そう。

「どうしたの?難しい顔してる」
「いやぁ、別になんでもないんだけどさ」
「けどさ?」

フクちゃんの優しい声に揺らぐ。
話してしまいたい。
自分だけでは解決できない、そういう問題な気がしていた。

でも、…いいのかな。

椅子を引いて、隣に座るフクちゃん。

本当に綺麗な人。
目を奪われてしまう。
こういうところをえりぽんは好きになったんだろうな。

「あ、分かった。亜佑美ちゃんのこと?」
「…鋭いね」
「分かるよ」

悟ったみたいな言い方が少し気になった。
95 名前:eternity 投稿日:2013/08/19(月) 23:17
「だって聖…今恋してるし。えりぽん、好きだから」

微笑みながら言うフクちゃんを見て、少し恥ずかしくなった。
確かにフクちゃんは亜佑美ちゃんのことが好きだったみたいだけど、今もなんて…ちょっと驕りすぎてたかもしれない。

「すごく変なこと言うかもしれないけど…」
「うん?」
「永遠の愛とか…あると思う?」
「わ、ずいぶんと深い話だね」

そういうと、そうだなぁ…って少し考えるような顔をする。
こういう顔もかわいくて、美人で絵になって。
羨ましいなぁ。

「聖たちはさ、まだ子供だからそういうとこまで考えがいかないっていうか…難しいけど」
「うん」
「あったらいいなっていう夢を持つぐらいはしたいかな、って聖は思うかな」
「あったらいいな?」
「うん。だってさ、永遠にその人を一途に思うってすごく大変なことだと思う。ケンカだってあるし、もしかしたら別れちゃうぐらいすごく衝撃的な出来事があるかもしんない」
「うん…」
「それでもその人を思い続けていけるぐらい好きってことでしょ?やっぱり永遠はあると思いたいな。死ぬまで好きってことでしょ。素敵なことだよ」
「そうだね…」
「最近は途中で挫けちゃう人多い感じだけど。離婚とかよく聞くし」

なんか、フクちゃんに大人を感じた。
すごいなぁ。

死ぬまで好き、ってすごい言葉だ。
重みを感じる。

「うち、亜佑美ちゃんをそんな風に好きでいられるかな?」
「ふふ、それは分かんないよ、聖も」
「…だよねぇ」
「でも、そうでいたいって気持ちは持てるんじゃない?亜佑美ちゃんへの好きに自信がないわけじゃないんでしょ?」
「それはそうだよ!うち、…亜佑美ちゃんのこと、すごく、好きで…大事だから」
「あははっ、熱いね里保ちゃん」
「茶化さんでよー」
「そんなつもりないよ。でも…聖が諦めたんだから、里保ちゃんにはそうであってほしいかな。聖的には」

スッ、とさっきとはまた違う言葉の重みを感じた気がした。

フクちゃんが欲しかったものを手に入れてしまった。
もの、っていうとちょっと違うかもしれないけれど。

でも諦めたんだから大事にして欲しいって、そうだよねやっぱり。
96 名前:eternity 投稿日:2013/08/19(月) 23:17

「そうだよね。…うん。そうだ」
「何か辿り付いた?」
「うん」
「そっか」
「うち、亜佑美ちゃんのこと、好きで大事にしたいから、ずっとずっとそうでいられるように…自分も努力しなきゃなんないなって、思った」

そういったうちの頭をフクちゃんは優しく撫でてくれた。
なんか、先を行かれてる気がしてちょっとだけ悔しかったけど、ちょっと気持ちよかったし嬉しかった。

「聖も、そうだといいな。ずっと…報われなかったけど、ようやく掴んだから。まだ永遠とか早いけど…そこまでいけるように暖めていければいいかな」
「フクちゃん…」

少し寂しそうな顔をしたけどすぐにいつものにっこり笑顔のフクちゃんに戻った。
亜佑美ちゃんだけじゃなく、もしかしたらもっと前からフクちゃんはつらい恋愛をしてきたのかもしれない。
だからって今までどうだったの?なんて聞ける雰囲気じゃない。
だって今、すごく幸せそうだし、絶対にえりぽんを手放したりしないってのがすごく伝わってきたから。

「恥ずかしいね。なんか」
「そ、そうかな?」
「里保ちゃんは亜佑美ちゃんに一生懸命だからね、羨ましい」
「フクちゃんはえりぽんに一生懸命じゃないの?」
「んー、一生懸命だけどぉ、なんかやっぱ恥ずかしいじゃんこういう話っ」
「そっかぁ。うち、割とこういうの真面目に話したいタイプなのかも」
「里保ちゃん真面目だもんね」
「そうでもないけど…やっぱりそうかな?」
「そうだよー」

こういう話、ホント好きなのかもしれない。

きっとこれからも何度となくこんな話を繰り返していくんだろうな。
そして自分が成長していけたらいいなって思う。

そんで、永遠を目指していけたらいいな。

「頑張らにゃーいかんね!早く大人になりたいなー」
「ふふふ、そうだね!」

なんかこんな話してたら亜佑美ちゃんに会いたくなってきたぞ。

スマホ取り出して、メールを送る。
97 名前:eternity 投稿日:2013/08/19(月) 23:18

「亜佑美ちゃん?」
「うん。なんか急に会いたくなった」
「ラブラブだね」
「う、うん」

なんか急に恥ずかしくなってきたぞ。
そうか…こういうのが恥ずかしいのか。さっきのフクちゃんの言うことが分かった気がした。

集中してたから今気づいたけど、フクちゃんが何か言った気がした。
隣を見るとなんだかちょっと嬉しそうな、そういう顔。

「ん?フクちゃん何か言った?」
「んーん、なぁんでもない」
「そー?」
「うん。……じゃ、里保ちゃんのお悩みも解決したみたいだし。聖はそろそろ帰ろうかな」
「あ、待ってうちも帰るっ」

ドアに向かうフクちゃんを追いかけながら、バッグにスマホを突っ込む。

と、急にフクちゃんが振り向いた。

「わっ、と」
「里保ちゃん」
「ん?」
「頑張ろうね?」
「ん、あ、うんっ!」

そう言ってフクちゃんはまた笑った。

なんかワクワクしてきた!
頑張れる気がする。
うん。亜佑美ちゃんとこれから一緒に頑張っていかなきゃ。


それにはまず亜佑美ちゃん分が足りないので、うちはバッグの中のスマホをポケットに移し変えて震えるのを待った。

 
98 名前:高津 投稿日:2013/08/19(月) 23:19
更新しました!
通常営業とは言いがたいですが、少し真面目な感じの話になりましたw

>>93
小田ちゃんは切ない系が似合うので語弊があるかもしれませんが、書いててとても楽しかったです。

サイトについてはちょっと考え中ですw
99 名前:名無し飼育さん 投稿日:2013/08/20(火) 00:49
いつのまに増えてたーΣ(゜∀゜ノ)ノ

相変わらずセンスの良い文に脱帽です。
100 名前:結局のところ。 投稿日:2013/10/31(木) 23:55

鞘師さんからメールが来た。


"今すぐ会いたい"


文字の少なさと直球さに思わず噴き出してしまった。

きっと何かあったんだろう。
だから一応聞く。


"何かあったんですか?"


相手が絵文字とか顔文字少ないとこっちも使い方が分からなくなっちゃうから、鞘師さんとのメールはいつも簡素だ。
語尾に少し何か入れるぐらいで。


"今すぐ会いたいんだよ!"

返事はすぐにきた。

「2回言われたよ」

これは会って話したいやつだな。
今日は譜久村さんと撮影の仕事って言ってたから、一緒にいるのかな。
101 名前:結局のところ。 投稿日:2013/10/31(木) 23:56

う…。
仕事だと分かっていても、頭がそう認識すると軽く嫉妬を覚えてしまう。
ダメだ、ダメだぞ亜佑美、仕事仲間なんだ。先輩なんだから。

特に今日は2人だけの撮影だって言ってたから余計に気持ちを駆り立ててしまう。

「ダメだなぁ…」

こんなことでヤキモチとかホントバカみたい。

会いたいと焦る恋人。
その人と一緒にいるのは先輩。

あーあ。
なんなんだろうなぁ。何にもないって分かってるんだけどなぁ。


"どこにいるんですか?"


会社での用事を済ませて、そのまま入り口から出る。
当てもなく歩くのは好きじゃないけど、今日はなんだかそんな気分。


"今あゆみちゃんどこ?会社?"


"今出たとこです。鞘師さんはどこにいるんですか?私、行きますよ"


"じゃあいつものとこで!"


なるほど。
いつもの駅で待ち合わせか。
102 名前:結局のところ。 投稿日:2013/10/31(木) 23:56
あー、調子いいなぁ私。

会える!っていうことが決まった途端に、気持ちが晴れるみたいになる。
そして鞘師さんもきっと携帯見ながら嬉しそうにしてくれてるのかなって思うと、胸が暖かくなる。

ホントつまらないことで落ち込んだり、なんでもないことで喜んだり、恋愛って忙しい。

スカートの裾を直して、地下鉄への階段を下りる。
自分の足音が響く。
それがどんどん早くなるのが分かる。

電車に乗り込んで、駅に止まるごとに携帯をチェックする。

会えると思うとドキドキするのは未だに治ってくれない。
仕事の時は仕事だから!って抑えてるけど、今は違う。

あーダメダメ。
顔がにやけるのが抑えらんない。

今度は電車を降りて、お目当ての人を探す。
いつもの場所にいないなと思って歩きながら周りを見渡してるけど、全然見つからない。

「ヒッ!!!!」

変な声が出てしまった。
後ろから抱きつかれて……ってこんなことするのは

「鞘師さぁん、あー…もうすっごいびっくりした…もぉー!」
「きょろきょろしてるからかわいくて抱きついた。へへへ」

まったく悪気ゼロのニコニコ顔にこっちもびっくりの感じが消えちゃったよ。
そしてすっと手繋いできて、横で会いたかったんだよぉとか甘い声で言うから、まともに顔見れなくなってしまった。

と思ってたら、今度は鞘師さんがきょろきょろし始めた。

「亜佑美ちゃん、こっち!」
「へ?」

手を引かれてつれられた先は、なんか柱の陰。たぶんきっと他のところから見えにくい、そんな感じのところ。
まさか…。
103 名前:結局のところ。 投稿日:2013/10/31(木) 23:56

「ごめん、どうしても!ね?」
「えっ、ちょっ、駅ですよ?」
「ごめんね……」

耳元で好きだよ、って聞こえて。
そのまま隠されるみたいにキスされた。

体の力が抜けるのが分かる。
こんな状況でもこうなっちゃうんだから…ホント、どうしようもないな私も。

でも。

「もうっ」

鞘師さんの胸辺りを押して距離を取る。
ニヤニヤしてるし。まったく…。

「あー、終わっちゃった」
「いくら!人が少ないからって!!もぉ!」

私が小声で叱るといつもみたいにイヒイヒ笑ってた。
ホント、しょうがない人だ。

まぁでも…そういうところも好きになってしまったんだからしょうがない。

「で?どこ行くんですか?」
「どこでもいいー」
「えぇ?どっか行きたいとこがあったんじゃないんですか?」
「亜佑美ちゃんと会いたかっただけだから。行くとこはどこでもいーよ」

そんなピカピカの笑顔で言わないでくださいよ。
また好きになっちゃうじゃないですか。

嬉しそうに、んふーとか笑いながらまた手を繋いでくる。
鞘師さんの右手と私の左手。

「じゃあ歩いてデートしましょ」

そう私が言うと、笑顔がぱぁっとはじけるように、うん!と元気いっぱい頷いてくれた。

そして私はまたそれが眩しくて目を反らしてしまった。
手をぎゅっと握り返して。


 
104 名前:高津 投稿日:2013/10/31(木) 23:58
久々の更新はハロウィンまったく関係なしでしたw

>>99
気づいたら増えてる系ですw
センスがいいかどうかは分かりませんが、まだまだ勉強中ですw
でも、お褒め頂けるのは本当に嬉しいです!ありがとうございます!
105 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/11/01(金) 21:35
なんてスキャンダラスな!
106 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/11/02(土) 08:51
おい週刊誌仕事しろ!と言いたくなるw
107 名前:名無し飼育さん 投稿日:2013/11/05(火) 12:43
鞘石キテタ━(゚∀゚)━!!

更新ありがとうございます(つд;*)
ずっと待ってましたよ〜 高津さんっ!
高津さんのお話し大好きなので
今後も更新よろしくお願い致します(≧д≦*)゛

そこそこコンスタントに(笑)
108 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/11/24(日) 21:27
ここのちょっと強引な鞘師さんがツボですw
サイトを作ることも考え中とのことで出来るのを楽しみにしてます!
109 名前:SEVENTEEN 投稿日:2014/01/07(火) 00:38

スマホの画面に着信のメッセージが出る。

「流石」

にやける顔を抑えきれないままタップして電話に出る。

「もしもし鞘師さん?」
『亜佑美ちゃーん!誕生日おめでとーー!!』
「へへ、ありがとうございまーす」
『うち一番?一番?』
「そうですよ!0時ちょうどにかかってくるんだもん」

そう言うと、ひゃっっほーい!と電話の向こうで喜ぶ声が聞こえる。

『電話しようって構えてた!ひひひ』
「流石ですね、ホント」
『なんかこういうの手ぇ抜きたくないタイプなんだよね、うち』
「鞘師さんってホント…」
『ホント、何?』
「や、なんでもないでーす」
『なんだよぉ』

拗ねるみたいに笑った。
あー17歳になった当日に鞘師さんの声が聞けるなんて、もー、なんていうかすっごい嬉しい!

そう思った途端、なんかちょっと照れてきた。
顔あっついな。

『てか亜佑美ちゃんさ、早く開けて!』
「え?」

開けて?って、どういう…。

『寒いんだよぉ!外がさー!』
「ちょっ、えぇ!?」

慌てて玄関に向かって扉を開けると、白い息を吐きながら寒そうに足踏みしてる鞘師さんがいた。
110 名前:SEVENTEEN 投稿日:2014/01/07(火) 00:38

「寒い!寒い寒い寒ーい!早く中入れて!」
「お、おぉ…」

バタバタと靴を脱いだと思ったら、一瞬抱き締められて、唇に軽くチュッとされた。

「いやー、寒かった!今日ホント寒いねぇ」
「な、え、えー、いきなりすぎてついていけないんですけど私!」

ちょっと待って、聞きたいことが色々ありすぎて頭が追いついていかない。
何でここにいるの?明日学校は?ていうか夜中だし!

「何でいるんですか…」
「え、だって誕生日じゃろ」
「いや、そうですけどね?」
「うん。だから来た。会いたかったんだもん。日付が変わって一番はうちがよかったし」

コートをソファーにぼーんってしながら、さっきまで私が座ってたとこに座ってるし。

ホントなんていうか、この人は自然体でこういうことするから驚く。
きっと男の人だったらすごくモテそう。

モテて貰っても困るけど。

「やっぱオフモードの亜佑美ちゃんかわいいよね」
「は、はあ」
「ふわふわの茶髪にさー、眼鏡でしょ、かわいいよ」
「ちょ、うわ、やめてください」
「なんで?」

真顔でこういうことする!
生田さんよりかずっとチャラいと思うんですけど!

「…恥ずかしいからですよ」
「っは…、亜佑美ちゃんさぁ」
「な、なんですか」
「誘ってるとしか思えないんですけど」
「は、はぁ?」
「……いや、なんでもない」

ちょいちょいと手招きされて、ここに座ってと促された先は鞘師さんに背中から抱き締められる体勢だった。
111 名前:SEVENTEEN 投稿日:2014/01/07(火) 00:39

「んー」
「ん?」
「いい匂い。亜佑美ちゃんのいい匂い」
「お風呂入ったからじゃないですか?」

そういうと、うなじのあたりに顔を擦りつけたみたいで、んーんーとか言ってる。

「そうなんだけど、亜佑美ちゃんの匂い」
「まぁ…人それぞれ匂いありますしね」
「あとこのふわふわの髪も大好き。眼鏡も好きだよ。亜佑美ちゃんは嫌いかもしれないけど、うちは似合ってると思う」

あー、やっぱり勝てっこないのかなぁ、って思う。
勝ち負けなんてないはずなのに。

鞘師さんの愛情をこんなにも感じて、何を思っているんだろう。
胸が苦しい。

私を包む鞘師さんが、あまりにも自然すぎて。

「あ…ありがとうございます」
「うん。だから、うちの好きな人のこと、嫌いって言っちゃダメだからね?」
「え?」

反応した瞬間に、ぎゅっと背中から強く抱き締められた。
鞘師さんのあったかい体温が伝わってくる。

「うちの好きな人」

 
112 名前:SEVENTEEN 投稿日:2014/01/07(火) 00:39

あ…。

そういうことか。

…嬉しい。

なんか、抱き締められてるのも嬉しかったけど、どうしても鞘師さんの顔を正面から見たくて体勢を変えた。

「鞘師さん」
「ん?」
「ありがとうございます」
「へ?え?いやっ、うちの思うままの気持ちを言っただけで…うん」

照れる鞘師さん、かわいいなぁ。
眩しくてドキドキして、やっぱ私鞘師さんと付き合ってホントによかったなって今実感した。

「鞘師さん」

だから、もう1度名前を呼ぶ。

「何?」
「キス、しましょ」

びっくりしたみたいに、顎を一瞬引いたけど私の表情を見てなのか、照れたように笑った。
それがホントにかわいくて愛おしくて。

これからもずっと居て欲しいって願いをこめて、17歳初めての私からの口付けをした。


 
113 名前:高津 投稿日:2014/01/07(火) 00:42
だーちゃん17歳の誕生日おめでとう!!
ということで久々の更新になってしまいましたw

>>105
アイドルにスキャンダルはつきものですが、見つかってないので大丈夫です!w

>>106
週刊誌にはお仕事をお休みして頂いてですね…

>>107
ありがとうございます。好きといわれるとホント照れますがw
コンスタントかどうかは状況次第なのでご容赦!

>>108
どうしても強引キャラっぽくはしたいんですよね。気質がどうやら姫っぽい感じですしw
サイトはまぁ色んな意味で考え中です。
114 名前:名無飼育さん 投稿日:2014/01/07(火) 21:18
ナチュラルにタラシな鞘師さんがツボですw
115 名前:名無飼育さん 投稿日:2014/01/16(木) 02:06
久しぶりの更新嬉しかったです。
116 名前:大切にするよ 投稿日:2014/02/27(木) 22:29

たまに、夢を見る。

今の生活ががらっと変わってしまって、聖はただの高校生のままでいる。

そんな生活。


みんなはいなくて、ただ毎日が続く。

そんな夢。


そんな夢を見ると、聖はいつも朝からぐったりしてしまう。



「…やだな」


今日もそんな日だった。


 
117 名前:大切にするよ 投稿日:2014/02/27(木) 22:29

「聖どうしたと?」
「んー、なんかまた夢見ちゃって」
「あー、前にも見たっていってたやつ?」
「うん」

移動のバスでえりぽんは聖の隣が定位置。
だからかもしれないけど、すごく落ち着く。

「なんか悩みあるっちゃろ?衣梨に隠したりしてない?」
「してないよぉ」

そういうと、微妙な顔をした。

「な、なに?」
「なんでもないけどさ」
「けど?」
「なんでもない」

そう言ってそっぽを向いてしまった。

えりぽんは若干気分屋なところもあるから、こういうことよくある。
拗ねる、みたいな。

教えて貰えなかったみたいになったのがやっぱり嫌だったのかな。
…そんなつもりはなかったんだけど。

それから、マネージャーさんの着くよーという声を聞くまで、えりぽんとはずっと無言だった。

撮影は問題なく終わって、自分たちが少しずつではあるけど注目される存在になってきたなって実感する。
たくさんの人たちの助けがあって、今の自分たちがいる。

頑張ろう。
そう意気込んでいた時。
118 名前:大切にするよ 投稿日:2014/02/27(木) 22:30

「聖」

振り向くと、えりぽんが立ってて。

「ちょっといい?」
「いいよ?どうしたの?」

聖の手を引っ張って、みんなから離れた場所に連れてかれた。

「さっきのさ、ホントになんもないと?」
「え?」

ない、ってわけじゃないんだけど。

そんな、言えるはずもない。


――もっと、積極的になって欲しいなんて。


でも、でも。
聖だって、もう少し2人きりでぎゅってされたいし、ちゅーだってしたい。
…わがまま言うんなら、その先だって、したい。

「はっきり言ってくれん?」
「な、なんでそんな怒ってるの?」
「怒っとらん。怒ってはないけん…」
「じゃあ…」

どうして?って言いかけると。

「やって、聖が何か悩んでて、衣梨が力になれんとか…かっこ悪すぎっちゃん」

嬉しいけど、なんかなんだろ。
こう、ちょっとだけイラッとした。

もう、なんなの!なんなのえりぽん!
何にも分かってない!
 
119 名前:大切にするよ 投稿日:2014/02/27(木) 22:30

「えりぽんは何にも分かってない」
「はぁ?」
「聖のこと、何にも分かってくれてない」
「ちょっと、いきなり何!?」
「だって、聖…ずっと悩んで…」
「やっぱり悩み事あるっちゃろ?」

なんでそんな自信満々!

「ドヤ顔しない!あのねぇえりぽん。聖ずーっと待ってるの。えりぽんはみんなの前では抱きついてくるけど、2人の時はしないでしょ!」
「え、あー…」
「それに…ちゅーだって、してくれないし…。聖、ずっとずっと待ってるのに…」

そう言い切ってなんだか落ち着いてしまった。
向かいではえりぽんががっくりと項垂れてて、…少し言い過ぎちゃったかもしれない。

「……大事にしたかったと」
「え…?」
「衣梨、チャラいチャラいって言われるけん、聖とのことはちゃんとしよって決めたっちゃけん…急ぎすぎんようにって。でも…」
「えりぽん…」

顔を上げて、困ったみたいな笑顔。

「なんか…ほっとした。我慢、しなくてもよかったっちゃんね」

ちょっと、心奪われてしまった。
そんなに思われてたんだ。

やっぱり亜佑美ちゃんが言ってたこと、ホントだったんだ。

「聖」
「ん?」

一歩、えりぽんが足を踏み出した。

「ごめんね?」
 
120 名前:大切にするよ 投稿日:2014/02/27(木) 22:31

そして、ぎゅうっと抱き締められる。

すごく、ドキドキした。
なんだか、思いの強さが抱き締められる強さなのかな、って。

「聖も、ごめんね」
「なんで?」
「だって…ちょっと言いすぎちゃったかなって」
「大丈夫」
「ん…」

えりぽん、大好きだよ。
大好き。

だから、もっともっと聖に近づいてきて。

もっと焦っていいんだよ。
こんなに好きにさせておいて、ずるいじゃん。

えりぽんの心の中を聖でいっぱいにして。

もう、聖の心の中はえりぽんでいっぱいなんだから。


聖はそのまま目を閉じて、えりぽんの背中から手を離した。
スッと息を吸う音が聞こえたと思ったら、肩に少しだけ震える手が乗ったあと。


ずっとずっと待っていた、唇に柔らかくてあったかい感触が訪れた。


ねええりぽん。

聖だって、えりぽんのこと大事にするから。


そんなことを考えながら、触れるだけの感触に身を委ねた。


 
121 名前:高津 投稿日:2014/02/27(木) 22:32
更新しました。
久々のぽんぽん!

>>114
タラ師は書くの楽しくて実は好きですw
うちの鞘師はタラ師でこれからも行きたいと思いますw

>>115
ありがとうございます!お待たせ致しました!w
122 名前:名無飼育さん 投稿日:2014/05/05(月) 01:22
飼育の存在をつい先日まで知らなかったのですが
流れ辿り着いた前スレから一気に引き込まれもう虜です
鞘石目当てでしたがぽんぽんも他のメンバーの関係性全てひっくるめて大好きになりましたー!
更新期待してもいいでしょうか?待ってます>_<
123 名前:Re:hoLIc 投稿日:2014/05/24(土) 00:52

「で、言ったんだ」
「んっ……はい」
「ふーん」


鞘師さんにまさぐられながら、答える。
なんか嬉しそうな微妙な顔してるけど。

「うち優しいんだ」
「あっ…んんっ…私は、そう思ってました、けど…」

そのあとのことは正直あんまり覚えてない。
ただ、鞘師さんがいつも以上に優しくて、いつも以上に時間をかけてたみたいで……当然のように私は気持ちよくなってしまって。
私はしばらく起きなかったそうだ。
124 名前:Re:hoLIc 投稿日:2014/05/24(土) 00:52



 
125 名前:Re:hoLIc 投稿日:2014/05/24(土) 00:53

「あ、起きた」
「……鞘師さん」
「遅いお目覚めでー」
「…な、何時間ぐらい寝てました?」
「…んー、ざっと2時間ぐらいかな」
「そんないっぱいでもないか…」

そう呟くと、拗ねたように口を尖らせる。

「うちはちょっと寂しかったよ」
「す、すいません……って鞘師さんがその、何回も私のことっ…いかっ…ああぁ恥ずかしい!」
「いたっ、いたいいたい何で叩かれてるのうち!」
「あっすいませんつい……いやいや、鞘師さんやりすぎですから。もう…」
「だ、だって亜佑美ちゃんがかわいいんだもん…」

ぴとっとくっついてきて、こっちがドキドキする。
ていうか鞘師さん服…

「なんで脱いだままなんですか…」
「だってうちだけ着るのはおかしいじゃろ」
「別に着ててもいいのに」

眉を寄せてほっぺにチューされる。

「だって…亜佑美ちゃんが目覚ました時、うちだけ服着てたらなんか寂しいでしょ」
「あ…」

この人のこういうとことが好きだって実感する。
優しいっていうのはこういうとこだ。

だからこっちも。

「んっ」
「…っはぁ、ど、どしたの急に」
「いやぁ、へへへ。鞘師さん好きだなぁって優しいなぁって」
「お、おう。んひひ」
 
126 名前:Re:hoLIc 投稿日:2014/05/24(土) 00:53

突然チューするの、すごい好き。
鞘師さんのびっくりまん丸お目目がかわいいから。

それだけじゃない。

すごくしたくなってしまった。
すごく愛しくなった。

こういう、じんわりと心にくることをこの人はいつもさらっとやってのける。
そういうところを好きになったのも事実だし、それだけじゃないのも事実。

この人と一緒にいたいって思える。
それってすごく大事なことなんじゃないかと思う。

「あー…」
「どうしたんですか?」
「裸で抱き合うのすごい気持ちいい」
「もぉー…バカ」
「あたっ!…んひひ」

で、こういう雰囲気ないこと言っちゃうとこも…ホントは好き。
ちょっとはしゃいで、いちゃいちゃして。

恋愛ってこんなに楽しかったのかって今更思う。

「鞘師さん」
「んー?」
「私のこと、ずっと好きでいてくださいね?」
「ん?えっ…いきなり何?どうしたの?」
「やぁ、なんとなく…へへ。だって、好きってこんな気持ちいいって思わなかったなぁって」
「なんか亜佑美ちゃんが嬉しいこと言ってる気がする…」
「そうですよー、アッハ、なんか照れるぅー!」

私がまたバシーンと鞘師さんを叩くと、困った顔しつつも笑ってくれた。
うちだって照れるよ、って言ってくれた。
 
127 名前:Re:hoLIc 投稿日:2014/05/24(土) 00:53

「前にさ、中毒の話したよね」
「はいはい、ホリックの話ですか」
「そうそう。やっぱそうだなーって今実感してたとこ」

耳元でこそこそ話するみたいに囁かれるとまた変な気分になりそう。

「亜佑美ちゃんがいないと、うち生きていけないよ」

ゾクッとして、鞘師さんの顔を見ると嬉しそうな切なそうな顔してて。
あぁ、私この人好きだって思える。

私のことを考えてそんな顔して、そんな気持ちになってくれて。
自分が重要な位置を占めてるんだって嬉しくなって。

いなくなってしまう時のことなんてきっと考えられない。

「私だって…そんなの、そうですから」
「中毒なってくれた?ひひ」
「そうですねぇ。自分が思うより、鞘師さん中毒かもしれないです。こんなに好きになるとか」
「んふふー、嬉しい」
「そうですよぉ。まさかねぇ、こんな甘えん坊でなーんにも出来ない先輩だと思わなかったんですもん」
「あっ、ひどい!…でも一緒にいてくれるんでしょ?」

もちろん、その答えには頷いて、答えのつもりで唇を重ねた。
いつも以上にそれは気持ちよくて、心臓がドキドキと鳴り響く。

だから、貴女の心にいつも私がいて、私の中にももちろん貴女がいて。
それがずっとずっと続くことを願った。

願いながら、またキスを続けた。

大好きと思いを込めながら。


 
128 名前:高津 投稿日:2014/05/24(土) 01:00
更新しました。
巷ではホリックの人ふくさやに流れたって噂が流れていたそうでw
あながち間違ってはいませんがw

そしてhoLIcについてはここで完結となります。
日常を切り取る話ですからいつ終わってもよかったので、だらだらと間を空けつつも書いていたのですがちょっとここで一旦終わりにしようと思います。

スレの残りについては何か思いついたらアップしていこうと思います。
他にも飼育以外でも書いてたりするので、見つけたら読んであげてください。(ここにURLとかは貼らないです)

お読み頂きありがとうございました!

>>122
せっかく見つけて頂いたのにここで終わっちゃって申し訳ありません!
でも読んで頂けて本当にありがとうございます。
色々な可能性があるので娘。カプはホント楽しいですw

129 名前:名無飼育さん 投稿日:2014/06/10(火) 01:09
高津さんの作品好きです
また飼育で読めるのを楽しみにしています
130 名前:恋するカップケーキ 投稿日:2014/07/03(木) 12:20

王子様、という言葉がある。

それを特別意識したことはなかったけど、ある時から頭に残るようにはなった。

…まぁ確かに、この人みたいにカッコよく生きようみたいな漠然とした目標はあったのかもしれない。
それだって別にこうだって決めてかかっていたわけじゃない。

ハルはカッコいい人になりたくて頑張ってる。
ただ、それだけだった。

131 名前:恋するカップケーキ 投稿日:2014/07/03(木) 12:21
「あっ…!」

…まただ。
最近よくこうなる。

和田さんがハルのことをよく思ってくれている。
と一緒に舞台をしているメンバーとスマのメンバーから教えて貰った。

正直ハルの何がいいかはわかんない。
わかんないけど、急に逃げ出されるとこっちは困ってしまうわけで。

「参ったな…」
「何が参ったって?」

ちょうど曲がり角のとこから福田さんが出てきた。

「あ、まぁなんていうか…ははは」
「あぁ〜彩ちゃん?今逃げてったもんね。ホントしょうがないよねー」

福田さんは笑いながら髪をかきあげた。
何故かその姿に大人の人だなという感じがして、少し恥ずかしくなった。

「ま、まぁ…ありがたいですけどね」
「おぉ〜。結構余裕なんじゃん?くどぅーも」
「いやっ、そんなことないですよ!なんつーか、逃げられちゃうとこっちもどうしたらいいかわかんないっていうか」
「まーね。私も彩ちゃんのあんな姿初めて見たし」
「そうなんですか?」

そう問うと、ちょっとそこ座ろ?と自販機の前の椅子に促された。

「彩ちゃん色々あるっていうか、少し不安定な感じっていうか。繭期みたいな?アハハ、そういう感じかもしんないけど、感覚として」
「あ。はあ…」
「でもさ、あんなかわいいとこ見たのってホンット私たちも初めてなんだよね。だから、仲良くしてあげて欲しいかな。私としては」
「そりゃもちろんそうしたいですよ!」
「じゃあホントに仲良くしてあげてね。彩ちゃんデートとか誘ったら喜ぶと思うよ」
「で、デートっすか?」
「ただどっか買い物とかでもいいからさ。ね?」

なんか一方的に主張されて、手をひらひらさせて福田さんはどっかに行ってしまった。
132 名前:恋するカップケーキ 投稿日:2014/07/03(木) 12:21
「デートって…」

どうすりゃいいのさ…。
いや、待て。とりあえず頭切り替えて稽古に集中しなきゃ。

稽古場に戻り、稽古が再開された。

もちろん皆当たり前だけど真剣に。
何人かいないメンバーもいたけど、代役を立てたりして滞りなく終わったように思った。

…もちろんハルに対するダメ出しの数は多かったけど。

「やべー!どうすんだよこれ」

つーわけで、何気困ってる。
今回の役は課題が多すぎる。
選んで貰ったんだから期待には応えたいけど、やっぱ難しい。

頭をガシガシしてたら、頭の上の方になんか気配。
上を見ると、譜久村さんがニコニコして立ってた。

「お疲れ様ー」
「譜久村さん。お疲れ様です」
「ねえねえどぅー、カップケーキ食べる?」
「え?どっかの店のですか?食べますよ!」
「どっかってっていうか…まぁいいや。どーぞっ」
「いただきまーす!」

うめぇ。
アーモンドがいい感じにアクセントになってるし。
結構がっつりいっちゃったな。
バクバク食べたらもうなくなっちゃった。
133 名前:恋するカップケーキ 投稿日:2014/07/03(木) 12:22
「譜久村さんご馳走様でした!すげーうまかった!」
「ホント?よかったぁ…」

なんかやけにニコニコしてるなぁ。
なんだ?

「実はね、それ聖が作ったの!どぅーがおいしいって言ってくれてよかった!」
「あ、手作りなんですね。おいしかったですよ。ハルもこういうの作れるようになりたいなぁ」
「ふふ」
「…ん?あぁー、ナルホド。生田さんか」
「え!?えっ、違うよ!?」
「いやいやー、違わないでしょ絶対。どーせ生田さんに作るのをハルが毒見みたいな感じ?」
「ど、毒見じゃないよぉ。失礼だなぁ。でもちゃんとおいしくできたかな?っていうのを試したかったのはホントかな?ふふ」

この先輩は本当にかわいいと思う。
好きな人のために一生懸命になれるっていいなって思う。

なんて話してると、

「聖ちゃん!」
「あれ?和田さんに呼ばれた。じゃあどぅーまたね!はーい!なんですかー?」

ぱたぱたと駆けていく譜久村さんを見送る。

なんか珍しい組み合わせ。
…そうでもないか。
エッグで一緒だったし。

少し向こう側眺めてると、こっちに背中を向けて何か相談し始めた。
どうやら内緒話みたいだ。

ハルも課題が山積みだし、とにかくそれをどう解消するか考えるとしますか。
134 名前:恋するカップケーキ 投稿日:2014/07/03(木) 12:22
次の日稽古場に来たら、なんか先に来てたメンバーがニヤニヤしてる。
かななんとめいめいが特に。
な、なんだよ。

「くどぅーくどぅー」
「な、何?なんか企んでる?」
「企んでるわけないやん、こっちこっち」
「え?え?何よ」
「さぁどうぞー!」

かななんとめいめいに背中を押されて、連れてこられたのは和田さんの前。

…なるほど。企んでないとか嘘じゃん!
まったくもう。
別にいいけどさ。

「ほら和田さん」
「う、うん…」
「じゃあめいたちは退散しますのでー!」
「あっ、ちょっと待ってよ!一緒にいてよぉ!」
「ダメダメ、ちゃぁんと自分でやらんとー」
「あぅ…」

落ち込む和田さんをよそに、かななんとめいめいは行ってしまった。
残されたハルと和田さんの間に微妙な沈黙が訪れる。

「あのね、あのねっ」
「は、はい?」
「これ、どうぞ!!」
「はい…?」

手渡されたかわいい包み。
なんだろう。

「これ、なんですか?」
「あの…くどぅーに食べて欲しくってね、彩、頑張ったの」
「食べて…?食べモンかなんかですか?」
「うんっ」
「開けていいですか?」
「うん…いや、嘘!ダメ、開けないで!」
「いやいや、開けないと食べられないでしょう?」
「あ、うん。そうなんだけど…恥ずかしい…」

ほっぺたに手を当てて照れてる和田さんを見たら、こっちまで恥ずかしくなってしまう。
…正直めっちゃかわいい。
135 名前:恋するカップケーキ 投稿日:2014/07/03(木) 12:23

「あああ〜〜ダメ!恥ずかしい!た、食べてね!彩もう行くから!」
「あ、和田さん……行っちゃったよ」

ダッシュで逃げ出されてしまった。
なんだかなぁ。

オレンジ色の包みを開けると、中にはカップケーキが入っていた。

「あ…」

少しイビツな感じがすごく頑張ったのかなって思えて嬉しかった。

鈍感なハルでも分かる。
昨日きっと譜久村さんに聞いたんだろうな。

ヤキモチとか焼いたのかな、とかそんなこと考えたりして。

やべ、ハル何考えてんだ。自意識過剰じゃん。

カップを剥がして、かぶりつく。

「……うま」

昨日食べたのとはまた違って、なんかこう、嬉しさが一緒にあるっていうか。
食べててドキドキするお菓子なんて初めてだった。

おいしくて一気に食べてしまった。

なんとなく包みもそのまま捨てるのが嫌で、綺麗に折り畳んだ。

ハルの色。
オレンジ色。
意識、してくれてたのかな?

顔を上げたら、戻ってきたのかちょうど和田さんと目が合った。
びっくりしたみたいに肩を揺らしてるのがかわいい。

少しずつ近づいて行くと、一歩だけ後ろに足を下げる。

いやいや、なんでですか和田さん。
顔がニヤけてしまう。

目の前についたらついたで何故かもじもじしてる。
136 名前:恋するカップケーキ 投稿日:2014/07/03(木) 12:24

「ご馳走様でした」
「ど、どうだった?」
「おいしかったっすよ。すっげえ」
「ほ、ホントっ?ホントに?嘘じゃない?」
「はは、嘘じゃないっすよ。ちゃんとおいしかったです。袋とかもオレンジ色だったの、嬉しかったですし」
「あ…うん」

嬉しそうにはにかむ。
なんか、ホントこっちまで顔が熱いな。

だからカップケーキのお礼をしなければいけない。
お礼になるかは分からないけど。

きっと……

「和田さん」
「な、なぁに?」

「今度デートしましょうか?」

ピタ、と和田さんの動きが止まる。
と思ったらそのままへなへなと崩れ落ちる。
寸でのところで、手を掴む。

「だ、大丈夫ですか?」
「う、うん…あの、デート、って」
「ハイ、今度行きましょう?」

顔を見ると、何かこう…ぼーっとしてる感じで、目が少し潤んでた。
でも頭をふるふると振って、深呼吸をしてて。

ホント、仕草のひとつひとつが少女漫画の乙女みたいだ。

そして口を開いて、

「……ハイ」

って、そう答えてくれた。

ハルの右手は離されることなく、少し弱めに握り返されたのがすごく嬉しかった。


「王子様みたい…」

呟く和田さんの声に笑ってしまった。

「ハルは王子様なんてカッコいいもんじゃないですよ」

でも、そうなれたらいいな。
いつかなれるのかな?

その一歩として、


――さて、どこにお姫様をエスコートしようかな?


 
137 名前:高津 投稿日:2014/07/03(木) 12:25
hoLIcは終わったので雑多にたまーに何かをということで、ハルちょでしたw

>>129
ありがとうございます!
ちまちまと何か書くかもしれませんw
138 名前:名無飼育さん 投稿日:2014/07/03(木) 15:22
んはぁぁああああああああん!!どぅーちょ!どぅーちょ!
照れるあやちょが堪らなく可愛いです。
ごちそうさまです。
139 名前:運命の轍 投稿日:2014/11/26(水) 01:23
「早いなぁ」

誰もいない舞台の上で1人呟く。
それはそれは小さな声で。

干支が一回りしてしまうぐらい、ここにいたんだと長くて短い時を思う。

思えば前にも後ろにも必ず誰かがいないといけない人生だった。
それが、藤本さんがいなくなって、絵里がいなくなって、そしてれいながいなくなって。

さぁ、私の前と横には誰もいない。
私が先頭に立たなきゃいけない。
後ろには私を目標に走る子たちがいる。

そもそも、先導できる人間ではなかったのだ、私は。

それが結果的にこういう形になってしまった。
ううん、なるべくしてなったんだろうと思う。

それが私に用意された運命だったんだ。

140 名前:運命の轍 投稿日:2014/11/26(水) 01:23
こつ、こつ、と靴の音が響く。

もっとここにいたかったと言えばそれはもちろん嘘じゃない。
けれど、賞味期限はいつの時代も訪れる。

私のポジションはうまくズレてしまっていても、いつも安泰でいさせてくれた。
出し抜いて自分だけ目立つことだってできたはず。

でも、それは上がいてのこと。
そうせざるを得なかったわけじゃない。

私だって、後輩がかわいい。

もう世代交代の時期が迫っていた。

もちろん、かわいい時期を過ぎる、なんてのは嘘じゃない。
別れと出会いがいつもあるこの船に乗っているのももうそろそろいいかな、ってのはあった。

もう大丈夫だよ。
私はやることをすべてやった。

あとは、任せるだけだ。
141 名前:運命の轍 投稿日:2014/11/26(水) 01:23
目を瞑るとたくさん思い出される。

入った頃、厳しかった頃、慌てた頃、気を張った頃。
すべてが楽しい出来事と一緒に巡る。

このキラキラの舞台で、私は明日卒業する。

「よし」

舞台の中央に踵を返そうとすると

「みっしげさん」
「鞘師」
「みんな待ってますよ」
「分かった、今行く」


そしてもう1度振り向く。

初めて立ったあのステージへの自分へ、もう1度。


「モーニング娘。を選んでくれてありがとう。…頑張って来るけぇ」


11月26日だ。

あの子たちが待ってる。


さぁ、行こうか。
142 名前:高津 投稿日:2014/11/26(水) 01:24
さて、明日です。

>>138
溢れ零れんばかりの悶えありがとうございますw
お粗末様でした!
143 名前:名無飼育さん 投稿日:2014/11/26(水) 01:30
見届けましょう
144 名前:高津 投稿日:2014/11/26(水) 01:57
寝るまでが25日だと思っていた仇がこんなとこに!ww
145 名前:高津 投稿日:2014/11/26(水) 01:57
寝るまでが25日だと思っていた仇がこんなとこに!ww

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