伴走者 2
- 1 名前:電 投稿日:2012/10/06(土) 02:59
- 性懲りもなく、いしよしオンリーの短い駄文スレです。
10レスほどで完結する、似非リアル文が殆どかと思われます。
続きものはありませんが、以前更新していたスレは以下。
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/grass/1334368527/
お時間があれば、お付き合い下さいませm(__)m
- 2 名前:Sweetest Come Again 投稿日:2012/10/06(土) 03:01
- この時期にしては比較的暖かい夜、吉澤が日課であるランニングに出ようとすると、メール着信の知らせが鳴った。
石川は一日オフだったらしく、家で過ごしたらしい。
おそらく上機嫌なのだろう。珍しく長めの文章だった。
添付写真には、毎度お馴染みとなった愛犬が石川の膝で気持ちよさそうに眠っている様子が写っている。
(ま、いっか。明日はそんなに早くないだろうし。)
少し考えて、いつものコースではなく石川の家へ向けて走ることにした。
いつもあまり考え事をせず、淡々と走る吉澤だが
心なしかその足が軽く感じられるのは、多分目的地があるからなのだろう。
「お疲れ〜。ランニングしてきたの?」
「うん。ついでだからさ。」
「そっか。ゴハンはもう食べた?」
「んー、軽くつまんだ程度。」
「じゃあ先にお風呂入ってきなよ。今日は久し振りにちゃんと自炊したんだっ♪」
「おー、いいねいいね。じゃあお風呂借りよっかな。」
「うんうん、私もう済んでるから、ゆっくりしといで〜。」
「ありがと。」
- 3 名前:Sweetest Come Again 投稿日:2012/10/06(土) 03:01
- 脱衣所のドアを閉めたところでふと、吉澤は動きを止めた。
(な、何か今のって……新婚さんみたいじゃね?)
考え始めると照れくささで体が石化してしまいそうになる。
せっつかれたようなスピードで服を脱ぎ、風呂場へ向かう。さっとかけ湯を滑らせる。
温かな湯船にはどうやら入浴剤が入っていて、柔らかな香りが疲れた体に染み入るようだった。
(誰からもらったのかな……これ。)
石川自身はあまりこういったグッズを買わないほうなので、贈られたものだろうと考える。
もちろん、吉澤は贈った覚えがないものだった。
こういった職業に身を置く手前、何かを贈られること自体はさほど珍しくない。
入浴剤は種類も多く見た目も可愛らしいものが多いので選びやすいのか、もらう機会も多い。
(いちいち気にするほどじゃないって分かってんだけど、さ。)
ほんの少しだけ、心にささくれが立つ。
自分ではない誰かの香りに、石川が染められるような気がしてしまう。
無論そんなはずはないという自信があってもだ。
同じものでいいと言っても律儀に買い置きしてくれてある、
吉澤が普段使っているシャンプーの香りに風呂場の空気がうつろう。
コンディショナーを手にしたところで、脱衣所から石川の声が響いた。
「ひとみちゃん、タオルと着替え置いとくねー。」
「サンキュー。」
先ほどの空想が再び吉澤の頭の中をよぎり、
恥ずかしいような、くすぐったいような気持ちで、わざと大きな声で返事をした。
- 4 名前:Sweetest Come Again 投稿日:2012/10/06(土) 03:02
-
寝巻き替わりのTシャツとスウェットを身につけてダイニングへ戻ると、
石川はちょうど、コンロの火を消したところだった。
「こないだママが新ジャガを持ってきてくれたから、ポトフ作ったんだー。」
そう言いながらスープボウルによそう。
吉澤は足元にじゃれついてきた石川の愛犬、ひめを抱き上げて、石川の傍らから鍋を覗く。
「いい匂い〜。うまそーじゃん。」
「明日も食べるつもりでたくさん作ったから、いっぱい食べてもいいからね。
ひめ、ひとみちゃんご飯食べるから、ママんトコにおいで〜。」
吉澤に座るよう促すと、石川はひめを抱き受ける。
ダイニングテーブルに向かい合わせに座り、吉澤はスプーンを手に取った。
「あ〜〜〜、染みるね〜。」
「フフフ、おいしい?」
「うん、うまい。」
お互いスッピンで、昔のままの表情で笑い合う。
テレビのバラエティー番組をBGM代わりにして
熱いスープをゆっくりと口に運ぶ吉澤の前で、石川は先日まで連日足を運んでいたドラマの現場の話や
メンバーのブログの話、ひめの日々のイタズラなどをとりとめなく喋る。
吉澤は時折相槌を打ったり、ツッコミを入れたり、言葉少なに反応を返す。
普段外食をするときは隣同士に並んで座ることが多いが、こうして正面に顔を見ながら食事をするのも
たまには悪くないな、と吉澤は思った。
- 5 名前:Sweetest Come Again 投稿日:2012/10/06(土) 03:03
- 「ごちそーさまでした。」
「おそまつさまでした。」
吉澤が食べ終わると立ち上がった石川を押しとどめて、吉澤が台所に向かった。
石川は愛犬の相手をしながら、洗い物をする吉澤の背中に向かって話を続ける。
濡れた食器を立てかけて、伸びをする。
石川の膝から飛び降りたひめが、吉澤の細い足首にじゃれついた。
「あはは、梨華ちゃんに飽きちゃったか? じゃあ今度はアタシと遊ぼっか。」
「も〜っ、ママは私なのに〜!」
ひめも初対面ではキャンキャンと吠えていたものの、何度か顔を見せるうちに
すっかり懐いたようで、今では尻尾を振って駆け寄るようになっていた。
石川も口では悔しそうにしているが、嬉しそうに新しいアイフォンで写真を撮っている。
「えへへ。機種変してから初めてのWひーちゃんツーショットだぁ。」
「そうだっけ?」
「そうだよぉ。ひとみちゃんがウチ来たの、けっこう久し振りじゃん?」
「……そうだっけ?」
そう言われるとそのような気もするし、つい数日前に遊びに来た気もする。
吉澤も自分の新しいアイフォンを取り出して、石川とひめのショットをおさめた。
石川お気に入りの淡いピンクのソファに、2人と1匹で並び、手を伸ばして3ショットも撮る。
吉澤の腕に、石川のそれがふわっと絡まる。
指を絡めて遊んでいると、そこへひめがじゃれついてきて
白く長い指とほんのり小麦色の細い指に、赤い小さな舌がちろちろと行き来した。
「くすぐってー。」
吉澤が笑うと、ひめは悪びれた様子もなくソファを飛び降り、オモチャ箱からボールを咥えて戻ってくる。
- 6 名前:Sweetest Come Again 投稿日:2012/10/06(土) 03:06
- 「ひとみちゃんに投げてもらいたいって。」
「ひめと梨華ちゃんと、どっちの相手しよっかなー。」
吉澤はそう言ってニヤッと笑うと、左腕は石川に預けたまま、吉澤はボールを転がしてやる。
「私は見てるからいいもん。」
石川は少し口を尖らせて、絡めた腕の袖をめくり、両手で吉澤の掌をマッサージするようにさすった。
「くすぐってーってば。」
「だってひとみちゃんの手、気持ちいいんだも〜ん。」
筋肉のついた身体の割に女性らしく柔らかなその掌を、石川は何度もさする。
ひめはボールと吉澤の右腕を行ったり来たり、忙しそうにしている。
「梨華ちゃん、それってさ。」
「なぁに?」
「誘ってんの?」
「どうかな〜。」
「あんだよー。」
石川はフフフと笑うと、吉澤の瞳を覗き込んだ。
「ひめがオネムになったら、今度は私の相手してくれる?」
「……そりゃもう、存分に?」
そんな2人の会話を知ってか知らずか、ひめはボールに飽きたようで
子犬にしてはやや大きな体を伸ばして、あくびを一つした。
深いキスをしながら、そんなひめをちらりと見やる。
長い睫毛が触れて離れて、僅かに上がった息が耳を掠めた。
吉澤の手がシャツを捲りかけると、それを石川が遮る。
「ひめが見てるからダメ。」
「見てるから燃えるんじゃん。」
ゆっくりソファに倒れ込んで、もう一度深くキスを交わす。
と、軽快な足音を立ててひめが石川の後頭部に飛びついた。
「痛い痛いっ! こら、ひめ! ママの髪の毛引っ張らないでって言ってるでしょ!」
甘いムードが一転、石川の甲高い声が上がる。
「ひめ〜、ちょっと空気読んでくれよぉ。」
吉澤も苦笑しながら起き上がる。Tシャツに絡んだ唾液が落ちる。
「しょーがねぇなぁ。ひめ寝かしつけないと。」
「だいぶ眠いみたいだから、ゲージ入れちゃおうかな。」
「んー、しばらく遊んでてもいいよ。アタシ明日の入り遅いし。」
「そう?」
「でも最近ソファでシてないから、結構燃えかかってたのになー。」
「ひとみちゃんのエッチ。」
「梨華ちゃんには言われたくねーよ。」
すっかり2人の間に居座ったひめが、キャンと一声鳴いた。
「はいはい、もーちょっとだけひめのママで居させてやっから。」
「何それ〜。」
「なんだかんだ言って、梨華ちゃんをアタシに取られんのが悔しいんじゃね?」
そう言った吉澤の両手が、石川とひめの頭をポンポンとなでた。
「ま、続きは子供が寝たあとでかな。」
END
- 7 名前:電 投稿日:2012/10/06(土) 03:09
- 本日の更新は以上です。
白くてもちもちした肌っていったら、ねぇ……
と、書く気満々で挑んだのに中途半端でスミマセン。
いつか、いつかリベンジしたい……という希望だけは捨てずに取っておきたいところ。
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/07(日) 04:04
- 新スレ待ってました!ありがとうございます!
ひめちゃんになりたいっす。
- 9 名前:電 投稿日:2012/10/28(日) 23:39
- おっと、気付いたら20日も経ってました。遅くなりました。
>8様
こちらこそ、有難うございますm(_)m
ひめちゃん、もしくはケメちゃんに憧れる今日この頃です(w
きっとひめちゃんは私たちの知らない何かを知っている…はず。
それでは、本日の更新に参ります。
- 10 名前:台風一過 投稿日:2012/10/28(日) 23:40
- いつものベッドルームに僅かな維和があるとすれば、それは外の天気のせいだ。
がたがたと窓ガラスを叩く強い風と雨、水を撥ねて駆ける自動車の音。
石川の胸に顔をうずめながら、吉澤の耳がそれらを捉える。
息をするのもまどろっこしい速度で、血が巡る。
いくらか久し振りの行為に飲まれていく。
それは石川も同じらしく、既に呼吸が乱れ始めていた。
「なに、考えてたの……?」
甘ったるく上ずんだ声で、石川が問う。
「今、違うコト考えてる目してた。」
「ん……外、すごいなって。」
「台風が来てるんだよね……ンッ。」
している行為とは裏腹の会話に、少し滑稽さを覚える。
目の前の果実を口に含んで、言葉を切る。
どれだけ眺めても、この身体はとても綺麗だ。
とりわけこの柔らかい胸の触り心地は、もはや麻薬に匹敵すると吉澤は思う。
口に含んだまま、もう一方を指で弾く。
石川の高い声が、もうワントーンあがった。
吉澤のそれよりも一回り小さな手が、金髪の中を滑る。
「キスがしたいよぅ……。」
控えめなボリュームで、石川が囁いた。
甘い声に抗わず、よじ登って唇を重ねる。
嵐は激しさを増す一方のようだ。
- 11 名前:台風一過 投稿日:2012/10/28(日) 23:42
- 舌を絡ませている最中に薄目を開けると、ちょうど視線がぶつかった。
カーブを描いた石川の二重が不敵に光ると、体制を逆転される。
「梨華ちゃ、ン……。」
引き締まった腹筋をなぞるようにしてから、その上の緩やかなカーブを掌が覆う。
キスの合間に息をしながら、互いの体を指が犯してゆく。
二人の眉間に皺が寄る。
快楽の波に沈んでいく過程は、嬉しいのに少しだけ寂しくなる。
愛しい人との愛に飲まれているのか、それともただの肉欲に溺れているのか、解らなくなるから。
石川の手が吉澤の腿を撫でると、細い体が震えて眉が寄せられた。
少し低めの吉澤の声が、僅かに甘く高くなるその瞬間が、石川はとても好きだ。
その声を聴けるのは、自分だけに許された特権だと強く実感出来るから。
「ひとみちゃん、かわいー……。」
「ン、はぁ……ッ。」
「ひゃっ、ちょっとぉ……ッ。」
「ん? どした……?」
「……ちょ、……あ、ぁ、あ、ンッ……。」
食い込む指に伝って、蜜が外気に触れる。
呼びかけた石川の声も、応えた吉澤の声も既に掠れている。
先程よりも大袈裟に音を立てるガラス戸が、密やかに響く水音を邪魔する。
「ね……、梨華ちゃんのえっちい声、聴きたいな……ッ。」
「や、だ……あ、ぁ、ちょっと、待って……ッ。」
「台風がウルサイからさ、もっとおっきな声出して……。」
石川の細い髪が、白い頬にしっとりとまとわりつく。
イニシアチブを奪い返した吉澤が、不敵な笑みを浮かべながら再び石川の上に被さる。
下唇を噛んで堪えていた石川の口から、声が上がっていく。
恥ずかしいと言ってあまり声を出したがらない石川だが、
こうして煽られて、結局は吉澤の思うがまま乱されていく。
「ンッ、はァッ……ぁ、あん……。」
「かわいー、りかちゃん……。」
すっかり動くのを忘れてしまっていた石川の指を、吉澤が一方の手で絡め取った。
いつもつけっぱなしにしているキッチンの小さな灯りが、僅かに漏れてくるだけの暗がり。
ほんのり甘いボディバターの香りと汗の匂いが混ざる。
高い声と荒い呼吸、体がぶつかる鈍い音と、スプリングが軋む音。
大きな渦に巻き込まれそうな感覚と、それと対をなすような、白く深く尖っていく全身の快楽。
背中から、足の先から、体の中心から、大きな波が2人ごと飲み込んでいく。
- 12 名前:台風一過 投稿日:2012/10/28(日) 23:42
- 「台風、まだすごいね。」
「んー、そうだねぇ。」
漸く汗の引いた体を寄せ合いながら、久し振りに外の世界の音を聞く。
「でもさ、台風のときってちょっとワクワクしない?」
「え〜?」
「何つーかさぁ、部屋ん中にいると、どっからも遮断されたみたいな気分になったり、
窓から見る景色もさ、普段と全然違うじゃん?」
「あぁ〜、そだねぇ。」
くったりとした疲労感は心地よく、寝巻きを着るのが少しばかり億劫になってしまう。
素肌のまま眠るのも、たまには悪くないかなぁ……という気分で、2人は毛布を首まで引っ張り上げた。
「久々だったしさぁ、いっぱい声が聴きたかったの、アタシ。」
「……もーう。」
口元を緩ませながらそう言った吉澤の両頬を、石川の指がつねる。
「ま、私もひとみちゃんの声聴けたからいいけどさ〜ぁ。」
「んっとに負けず嫌いだなー。」
「ホントのことだもーんっ。」
くすくす笑い合って、とろりと眠りに落ちていく。
ごうごうと鳴る嵐も、明朝には関東を抜けているだろう。
変わる季節の朝をともに迎える予感が、遠くに見える気がした。
触れる寝息に安堵しながら、2人は目を閉じた。
END
- 13 名前:電 投稿日:2012/10/28(日) 23:46
- 短いですが、本日の更新は以上です。
書き始めから時間がかかってしまって
すでに時期ハズレになってしまいました……。
エロは難攻不落の苦手分野なのですが、少しでもニヤニヤして頂ければ幸いです。
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/29(月) 03:21
- 寝る前に読んでしまいました。興奮して眠れません!
- 15 名前:電 投稿日:2012/12/01(土) 03:25
- いつの間にやら1ヶ月経ってました……ノンビリすぎてすみません(汗)
現実が空想の遥か上を行く今日この頃ですが、
マイペースに書いていければいいな〜と思います。
>14様
あらら、申し訳ないことをしました(w
今回のものは寝る前でもマッタリ読んでいただけるはずです(^^)
それでは、本日の更新に参ります。
- 16 名前:師走は目の前 投稿日:2012/12/01(土) 03:34
- 久々によっちゃんから来たメールを開くと、ちょうど今日から私の出番がある
お昼のドラマの画像が添付されていた。
『圭ちゃ〜ん、見てるよ〜!
さすが女優魂だねー! 一瞬圭ちゃんだって分かんなかったよ(笑)
この調子でキスシーンも楽しみにしてるぜいっ♪』
よっちゃんらしいさっぱりした文章だったけど、
何故か私の頭にはニヤニヤと含み笑いをしたよっちゃんがパッと浮かぶ。
全くも〜、中学生じゃないんだから、キスシーンなんて楽しみにしないでよねっ。
とかいう返信を打ちつつも、やっぱりメンバーが自分のドラマを見てくれるのはすごく嬉しかったりして。
それにしてもよっちゃん、私にもキスシーンがあるなんてこと知ってくれてるんだ。
……あ、もしかして。
私には一つ思い当たるフシがある。
よっちゃんに返事を送信すると、絶妙なタイミングでメールの着信。
やっぱりグルだったのね、あの2人……。
『圭ちゃ〜〜〜ん、私も見てるよ〜〜〜o(^▽^)o
ねぇねぇキスシーンはいつやるのー?
楽しみすぎて待ちきれな〜いっ(笑)』
梨華ちゃん、見てくれるのはすっごい嬉しいんだけどさ……
これ、私……完全に遊ばれてるよね……。喜んでいいのか複雑なんだけど。
- 17 名前:師走は目の前 投稿日:2012/12/01(土) 03:35
- はぁ〜。ったく、しょうがないんだから。
アプリを開くと、小憎らしい後輩達に向けてチャットを送信してみる。
『ちょっとアンタ達ー! また私をネタにしてー!
いちおう私のが先輩なんだからねーーー!』
『保田センパイの演技を参考にさせて頂きたくって見てるんですぅ〜。
で、圭ちゃん、キスシーンいつやるのっ?』
『そうそう、センパイの勇姿を見守るべく! 吉澤はバッチリ録画までセットしましたよ!
ってかさーこれカゲキなドラマって話題なんでしょ?
ベッドシーンないの、ベッドシーン?』
よっちゃん、あんたって子は……。
『ちょっとよっすぃ〜、圭ちゃんだっていちおーアイドルなんだから!
え、あるの? 圭ちゃんのベッドシーン?』
あのねぇ梨華ちゃん、フォローになってないわよそれっ!
『人をおちょくらないのっ!』
『でも圭ちゃんの演技、すごく自然だったよ〜。出番もちょっとずつ増えるのかな?』
『うんうん、主人公にこれからどう絡んでくるのか楽しみだよー。』
……ま、ちゃんと見てくれてるのは本当に嬉しいんだけど、ね。
- 18 名前:師走は目の前 投稿日:2012/12/01(土) 03:36
- 『私の色っぽいキスシーンを見てクラクラきても知らないわよー!』
『大丈夫よ圭ちゃん! ちゃんと正露丸買ってあるし!』
せ、正露丸って……。ラッパのマークがなくちゃ見られないってのかっ。
梨華ちゃんが若干真面目な顔してそう言う横で、ニヤニヤしているよっちゃんが頭に浮かんだ。
『放映されたら記念に梨華ちゃんちで上映会しなくちゃね!』
『あっ、せっかくだから久し振りに圭ちゃんちで集まってさー、3人で見ようか?』
『それいい! ケメコハウスで上映会しよーよー!』
『勝手に人んちに来る計画進めないで欲しいんですけどーーー!』
どうせ人んちに来て私を目の前にしてゲラゲラ笑い転げて、
「オエーーー!」って言いたいだけなのは目に見えてるんだからねーッ!
『まぁまぁいいじゃーん。ホントに久し振りに遊びたいしねっ。』
『圭ちゃんの顔でもしばらく見てないと寂しいよー。』
でもって何よー、でもって。
- 19 名前:師走は目の前 投稿日:2012/12/01(土) 03:37
- 『も〜! 私だって舞台の稽古で忙しいんだからねー!
まっ時間があったら構ってあげるから期待しないで待っててね! チュ?』
『オエーーーーーーー!』
『オエーーーーーーーッ!』
結局2人がやりたいであろうやり取りを振っちゃうんだけどね、私も。
なんだかんだ言って、私のことを気にかけてくれてる後輩達。
遊ばれすぎてる気もするんだけど、ま、そこは先輩の余裕ってヤツで許してあげるわよ。
色々と大変な思いをしてきたこの子達だから、たまにはこうして気を抜くことも必要なんだろう。
ま、最近は私が心配するまでもなく楽しそうにしてるみたいだけど?
短いけど折に触れてメールをくれるよっちゃん。
不精者だけど多分私のことをメンバーいち気にかけてくれている梨華ちゃん。
懐いてくれる後輩がいるっていうのは、そのまま私の誇りでもある。
個性溢れるメンバーの中で私という人間を育ててくれた、輝くような想い出の中から
『まだ終わってないよ、まだ先があるんだよ!』
そんな笑顔で二人一緒に未来の扉を切り開く……頼もしい後輩二人。
調子に乗り過ぎないように、たまには説教でもしてあげちゃおうかな!?
あったかく灯った心をそっとアプリに閉じ込めて、私もまた次の舞台へと足を向けた。
END
- 20 名前:電 投稿日:2012/12/01(土) 03:39
- 本日の更新は以上です。
うぅ、またしてもやらかしてしまった……orz
投下ミスしてしまった板の作者様、申し訳ございませんでした。
- 21 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/12/01(土) 21:27
- ケメコさんの知ってるいしよしネタはまだまだあるはず.......
- 22 名前:電 投稿日:2013/01/19(土) 23:14
- 石川さん生誕祭に滑り込みセーフ!
ぎりぎりだけど間に合った!
>21様
圭ちゃん、まこっちゃん、ひめちゃんの2人と1匹は
私達の知らない何かを絶対に知っているはずですよね(w
羨ましすぎる……(w
それでは、本日の更新に参ります。
- 23 名前:リトル・ダーリン 投稿日:2013/01/19(土) 23:16
- 誰よりも憧れる、あなたの隣にふさわしい人間になりたくて。
弱くてネガティブな自分を変えたくて。
無我夢中でここまでやってきた。
今なら、胸を張って言える。
『私はアナタの相棒なのよ』と。
我ながらぶきっちょで、たくさんのコトはいっぺんに出来なくって、
空回りしちゃったり、みんなに迷惑を掛けてしまったり、
それでまた落ち込んで、泣いてばかりだったあの頃。
そのたびに何気ない顔をして傍に来てくれて
『大丈夫だよ、梨華ちゃんは悪くないよ』
『頑張ってるの、分かってるから』
って言ってくれたよね。
その言葉に私がどれだけ助けてもらったのか、きっとひとみちゃんは知らないんだ。
ううん。知らなくっていいの。私はきっと、ずっと忘れられないから。
- 24 名前:リトル・ダーリン 投稿日:2013/01/19(土) 23:16
- 年下なのにやけに落ち着いているし、クールっぽくて何を考えているのか分からなくって……
それまで私の周りにいた、どんな友達ともタイプが違う子だった。
オーディションのとき『この子、絶対受かる』って一目見て思ったけどさ、
『もしも私も受かったら、この子とうまくやっていけるかな』って……ほんの少しだけ思ったもの。
なーんて、今だから言えるんだけどね。
長い脚を組んだひとみちゃんのほうを見ると、
うつらうつらと舟を漕ぎ始めていて、長い睫毛が大きな瞳を覆っている。
彼女の膝の上で開かれたままの雑誌を閉じて、テーブルの上に載せる。
「疲れてるのに顔を見せに来てくれて、ありがとう。」
そっと声を掛けて、柔らかい髪の毛に触れる。
今でもドキドキする綺麗な横顔を、そっと自分の肩に乗せた。
いつも私ばっかり寝顔を撮られているけど、
私だってこうしてひとみちゃんの寝顔を見てるの、好きなんだよ。
恥ずかしがるから、言わないけどね。
だってからかったら、ひとみちゃんは意地張ってこうしてくれなくなっちゃうもん。
それぐらいお見通しなんだから。
- 25 名前:リトル・ダーリン 投稿日:2013/01/19(土) 23:17
- ふふっ、私……ちょっと強くなりすぎちゃったかな……?
でもいいよね。
疲れてる時は、私に寄りかかってほしいんだ。
人一倍気を遣う人で、なかなか弱みを見せられない人だから。
私の隣に居る時ぐらい、気を休めてほしい。
ひとみちゃんの傍に居たいから、たくさん頑張ったんだもの。
ひとみちゃんはいつだって私を助けてくれるけど、
私ももう、ひとみちゃんを支えてあげられるよ。
3ヶ月だけ年下の、誰より綺麗で可愛くてかっこいい、私の大好きな人。
一人じゃ見られなかった景色、これからも2人でたくさん見に行こう。
臆病になっちゃうような時は背中を叩き合って、一緒に乗り越えていこう。
離れてる時だって、大きくって優しいその瞳を思い出すだけで、私は頑張れる。
ひとみちゃんにも、少しでも私のことを思い出して欲しいなぁ。
そういう存在に……なれていると思っていいよね。
END
- 26 名前:電 投稿日:2013/01/19(土) 23:22
- 短くて申し訳ないのですが、本日の更新は以上です。
ダイバー絡みで書くかどうかたいへん迷ったのですが、
もはや現実が色々と想像を越えすぎている気がしてしまい
どこから書いていいやら解らなくなってきています(w
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/01/19(土) 23:43
- こういうのも良いですね
本当にこんな関係なんだろうなぁ
ダイバー絡み待ってます!
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/01/20(日) 01:19
- いしよしは油断出来ませんから立て続けにネタがくるかも
素敵ないしよしをありがとう
- 29 名前:電 投稿日:2013/04/12(金) 23:35
- お久しぶりになってしまってスミマセン。
>27様
有難うございますm(__)m
ダイバー絡みどころか季節すら変わってしまいましたorz
お二人の『お互いが唯一無二』感は本当に良いですよね。癒されるし元気になれます。
>28様
有難うございますm(__)m
今年に入ってからは比較的落ち着いていますが
ガッタス情報も入ったし、そろそろ何か来る……といいですね〜。
それでは、本日の更新にまいります。
- 30 名前:手のひらの恋人 投稿日:2013/04/12(金) 23:42
- 朝起きると、隣に寝ていたはずの梨華ちゃんの姿がなかった。
おっかしいなぁ。今日はアタシも梨華ちゃんもオフだったはず。
だから昨日はちょっくら夜更かししちゃってたわけで。
そうでなくたって眠るの大好きな梨華ちゃんが起きるには、まだ早い時間だと思うんだけど。
「ひとみちゃん、ひとみちゃん!」
あれ、梨華ちゃんの声がする。
「ひとみちゃん、ここーーー!!」
確かに近くから声がするんだけど、いないなぁ。
まだ眠いから、ボーッとしてんのかなぁ。
そう思いながら起き上がると、隣に梨華ちゃんがいた。
……まるで人形みたいに小さくなった、手のひらサイズの梨華ちゃんが、枕の影からちょこんと出てきた。
「ひとみちゃん、やっと起きたぁ! いくら呼んでも全然起きてくんないんだもん!」
「……はぁッ?!」
アタシは素っ頓狂な声を出した。夢じゃ、ないの?
「叫びたいのは私の方だよ〜。」
小さな梨華ちゃんは眉間に皺を寄せながら、がっくりとうなだれた。
- 31 名前:手のひらの恋人 投稿日:2013/04/12(金) 23:43
- 「……マジっすか?」
「マジっすよ。」
見たとこ14、15センチってとこ。
着ていたはずのパジャマはもちろん脱げていて、でもシーツを持ち上げて前は隠していた。
非常事態なのに、そういうトコはしっかりしてんのね。
「どうしよう、ひとみちゃん。私どうして小さくなっちゃったのかな。」
「さぁ……ってかさ、何かこういうの、ドラマか何かであったよね。」
「あー、あったね。昔やってたよね。」
「うんうん。あれって最後、どうなっちゃうんだっけ?」
……あれって確か、小さくなった女の子って……。
首をかしげている梨華ちゃんには言えない。
かと言って原因も何も分からないのに突然こんなふうになっちゃって、
アタシだってどうすればいいのか分かんない。
フツーの病院に行ったって、きっとどうしようもないだろうし。
それにアタシ達いちおう芸能人だから、こんなことになったってバレたら
ぜってーあることないこと言われるに決まってるじゃん。
「うーん、どうすっかなー。」
「元に戻れるかな、私……。」
「んー、分かんねー。」
「そんなぁ。」
たちまち泣きそうになる梨華ちゃん。おっと、これは困った。
何だかんだアタシは、昔っから梨華ちゃんに泣かれるのが一番弱いのだ。
- 32 名前:手のひらの恋人 投稿日:2013/04/12(金) 23:44
- 「でっ……でもさ、いきなり小っさくなったんだから、いきなり元に戻るんじゃね?
何とかなるんじゃん?」
「明日からはお仕事だってあるし、戻らなかったらどうするのよぅ……。」
「それはまぁ、そうだけど。」
「きっと私、実験台とかにされちゃうんだよ。どうしよう、ひとみちゃん……。」
「だーいじょーぶだって!
とりあえずさぁ、今日一日様子見てさ、明日になってもこのままだったらそんとき考えようよ。ね?」
アタシだってどうすればいいか分かんない。だから怖い。
こういう非常事態のとき度胸が据わってるのは、ホントはいっつも梨華ちゃんの方なんだけど。
その梨華ちゃんが不安がってるんだ。アタシがしっかりしなきゃ。
「とりあえずゴハンでも食べようよ。ね?」
そう言ってアタシは勢いをつけてベッドから飛び降りた。
「きゃーっ!」
そうだった。
小っさな梨華ちゃんはベッドが軋んだ反動で、ころんと倒れ込んだ。
小さくなってもやっぱりナイスバディーだねぇ、うんうん。ヒップラインがエロくてたいへんよろしゅうございますよ。
「も〜っ、お洋服も何もないんだもん! ひとみちゃん、ハンカチかハンドタオル取って!」
「へーへー。」
アタシはタンスをテキトーに開いた。
……おぉ、ビンゴ。
アウターにひびかないような地味なベージュのやつばっかりだけど、色味があるのもチラホラある。
お、これアタシ見たことないような気がするな〜。今度リクエストしちゃお。どーせ脱がしちゃうけど。
「ひとみちゃん、いつまでソコ見てんのよっ! ハンカチは上から2段目って知ってるでしょッ!」
「へーへー。」
- 33 名前:手のひらの恋人 投稿日:2013/04/12(金) 23:45
- アタシは寝間着替わりのジャージとTシャツのまま、梨華ちゃんはハンカチを体に巻きつけて、寝室を出る。
梨華ちゃんはアタシの肩に乗って、ビクビクしている。
「私のおうちなのに、知らないトコみたいだよぉ……。」
「そんなもん?」
「だっていつもと全然違うんだもん……。」
力のない声でそうつぶやいた梨華ちゃんは、本当に悲しそうで。
あぁ、アタシが何とかしてあげられるんなら、どうにかしてやんなきゃな。
素直にそう思った。
「あ! ひめ! ひめに朝ゴハンあげないと!」
……へーへー。分かりましたよ。
大事な大事な一人娘ですからね。
キッチンの棚の一角に収められたドッグフードを専用の器に盛ってあげて、ゲージを開いた。
「ひめー! ママのこと分かる?」
朝イチで腹ペコだったらしい梨華ちゃんの可愛い可愛い一人娘は、梨華ちゃんの呼びかけに少し反応しつつも
無情にも空腹を満たすことを最優先と判断したみたい。
「うぅっ……。」
「あはは、朝ゴハンのときシカトされんのはいつものことじゃん。」
「そうだけどー。」
「それよりアタシ達は何食べよっか。何もないんでしょ、冷蔵庫。」
「ヨーグルトがまだあったかなぁ。ママからもらったイチゴもあるから、それでいい?」
「有難く頂戴いたします。」
- 34 名前:手のひらの恋人 投稿日:2013/04/12(金) 23:47
- イチゴのへたを取ってヨーグルトと絡める。
っと、梨華ちゃんはさすがにこのサイズじゃ食べられないか?
肩の上の梨華ちゃんを見ると、同じことを考えてたみたい。
「無理!」
ですよねー。
ってかスプーンだって持てないよね。ほとんど同じ大きさなんだし。
しょうがないから自分の分だけ用意して、ダイニングテーブルに置いて、梨華ちゃんもそこへ下ろした。
「ねぇ私、どうやって食べればいいかなぁ。」
「しょーがねぇなー。はい、あーん。」
ティースプーンの先に少しだけ掬ったヨーグルトを差し出した。
梨華ちゃんはハンバーガーを食べるようにスプーンを掴んで、ヨーグルトを口にする。
なんか動物に餌付けしてるみたいだけど、どことなくエロい。
「ひとみちゃんに初めてあーんってしてもらっちゃったぁ。」
……。ごめん梨華ちゃん。
梨華ちゃんがそんな無邪気に喜んでくれてるのに、ひとみはイケナイ想像をしていました。
to be continued
- 35 名前:電 投稿日:2013/04/12(金) 23:50
- 本日は以上です。
せっかくのお誕生日更新なのに、分割になってしまって情けなやorz
ファンタジー(?)は不得手なのですが、
なるべく早くに後編も書き上げたいと思います。
- 36 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/04/13(土) 08:45
- 更新ありがとうございます。
こういうお話大好きです。
続きを楽しみに待ってます!
- 37 名前:電 投稿日:2013/04/26(金) 23:31
- >36様
こちらこそレス有難うございますm(__)m
そう言っていただけると嬉しいです。
楽しんでもらえれば良いのですが。
それでは、本日の更新に参ります。
- 38 名前:手のひらの恋人 投稿日:2013/04/26(金) 23:33
- 今日一日だけで元に戻れればそれが一番いいんだけど、万が一そういかなかった場合
いつまでもハンカチ一枚でいるわけにもいかない。
梨華ちゃんは梨華ちゃんでたぶん寒いだろうし、アタシの精神衛生的にもよろしくない。
ってなワケで、アタシ達は梨華ちゃんの服を買うことにした。
バッグの中に入っててって言ったのに、梨華ちゃんはどうしてもイヤだと言って譲らない。
ほんっと頑固なんだよね。
結局アタシのジャケットの胸ポケットに収まった。
幾ら小さいって言ってもフツーの人形よりは重いわけで、ジャケットが変なふうに歪む。
しかも梨華ちゃんがアタシを見るときは必然的に見上げてくるわけで、どうも落ち着かない気分だ。
まぁ梨華ちゃんはご機嫌だし、さっと行ってすぐ戻ってくればいっか。
女の子向けのオモチャ売り場なんて、どれぐらい振りかなぁ。
アタシはもともとこういうので遊ぶより、外で遊ぶほうが好きだったけど
梨華ちゃんは三姉妹だし、懐かしい〜とか思ってんのかな。
メンバーや友達の出産祝いに何かを選ぶことはあっても、まさかこの歳で、
しかも自分の恋人に贈るものを選ぶ羽目になるなんてねぇ。ある意味、貴重な体験だよ。
しっかし今のリカちゃんは豪華なんだねー。
アタシ達も職業柄、色んな服を着させてもらえるけど、ナントカ屋さんだのナントカごっこシリーズだの
たくさんありすぎて、何から選べばいいのかさっぱりだよ……。
ふと下を見ると、ポケットのふちからちょこんと顔を覗かせた梨華ちゃんは、案の定目をキラキラさせていた。
(たっくさんあるねぇ〜!)
(そうだねぇ。)
小さな声でやり取りする。
平日だからごった返してはいないけど、それなりに人がいるのは小さな子供連れが多いからかな。
まだ学校や幼稚園なんかに縁のない子達だもんね。
大人に見つかるのも厄介だけど、子供に見つかるのは別の意味で厄介になりそうだから
(動く人形だなんて、アタシが子供だったら間違いなく放っておかないもんね)
なるべくちゃっちゃと済ませて帰らないといけないな。
- 39 名前:手のひらの恋人 投稿日:2013/04/26(金) 23:34
- しかし小さい割に手が込んでるというか、意外とちゃんと出来てるんだねー。
下着とか靴下なんかもあるよ。
でも靴下はともかく、下着は大丈夫なのかなぁ。
ウチの梨華ちゃん、よそのリカちゃんよりもボリュームがあるんだけど、こんなんで足りるのかな。
あ、そういやリカちゃんのアメリカ版?みたいなヤツもいたよね。あっちのほうなら足りるかな?
まぁ最悪、下着はなくてもいいよね、きっと。
「ねーねーひとみちゃん、色んなお洋服があるねぇ!」
「そーだねぇ。ま、とりあえずフツーっぽいの2、3着あればいいよね?」
「え〜っ、私あっちのとかも着てみたいな〜。」
そう言って梨華ちゃんが指したのは、ちょっと予想はしてたけど、やっぱりナントカシリーズだった。
梨華ちゃん、コスプレっぽい衣装ホントに好きだよね……。
「でもさぁ、梨華ちゃん仕事でだいたいの服は着たことあんじゃん。」
で、だいたいアタシのトコにも写メが送られてきてるから、だいたい見たことあるし。
最近だとセーラー服とか婦警さんとか、舞台で着てた和服とかね。
何着てもかーわいいよね〜。って、今はそうじゃなくって。
「でもこれ、普段着になるかもしれないんだよ。」
「そーだけどー。でも普通のお洋服買うより全然安いじゃん?」
「まぁ、そうだね。」
「ひとみちゃんもさぁ、こういうの着てるの見たくない?」
「……。」
そうだね、ちょっとくらいアソビゴコロがあっても悪くないよね。せっかくだしね。
何だか言いくるめられてる気がしないでもないけど、梨華ちゃんが言うことも最もだし。
色々考えすぎるとネガティブになっちゃうかもだし、ここは一つ梨華ちゃんの要望を叶えてあげたいよね。
結局色々と手にとったものの、普段着っぽいセットになってるのを幾つかと、梨華ちゃんが希望したコスプレ衣装を幾つか、
それと『なくてもいいわけないでしょ!』と怒られたので(当たり前か……)、下着も購入決定。
普通の洋服よりは全然安いけど、そこそこ良い値段なんだね……。一つ勉強になったよ。
- 40 名前:手のひらの恋人 投稿日:2013/04/26(金) 23:34
- そそくさと家(って言っても梨華ちゃんちだけど)に帰って、梨華ちゃんは着替えタイム。
アタシはランチの用意に取り掛かる。
あっ、食器とかも買ってくればよかったかな。
まぁ餌付けしてるのも楽しいから、このままでもいいか。梨華ちゃんも嬉しそうにしてたし。
我ながら順応が早いことに驚く。
「じゃ〜んっ! 見て見て、ひとみちゃん!」
テンション高めな梨華ちゃんの声に振り向くと、真っ赤なシャツにキャップを被った、
ピザ屋の店員の格好をした梨華ちゃんがくるっと回ってポーズを取った。
おー、似合う似合う。
「これなら私も、桃子と一緒にCM出られるかしら?」
さー、それはどうだろね。とりあえず写メを撮ってニヤニヤしてたら、パスタを放り込んだ鍋がグツグツと合図してきた。
「パスタもうすぐ出来るから、とりあえず着替えな?」
「はぁ〜い。」
大人しく返事をしたのは、きっと新しい洋服を早く着てみたいからなんだろな。
アタシがペペロンチーノを完成させてお皿に盛る頃には、ボーダーのワンピを着てちょこんと座っていた。
うんうん、そういうワンピよく着てるから、あんま違和感ないよ。いつもと一緒の梨華ちゃんだ。
ご飯を食べながら、ふと『何で突然こんな風に小さくなったんだろう』という話をする。
昨日は2人も比較的早く仕事が終わって合流して、一緒に飲みに行ったから、食事が原因ってわけじゃなさそうだ。
お酒……は、全部が全部同じものを飲んだわけではないか……。
梨華ちゃんちに来てからは、まぁ2人で色々シてたわけで、梨華ちゃんだけ何か特別なコトをしたってことはない、はず。
じゃあお酒が原因なのかなー。初めて行ったお店じゃなかったし、ヘンなモンは出されてないと思うんだけど。
「お酒を飲んだら元に戻るかなぁ。」
「冷蔵庫に何か入ってる?」
「缶チューハイくらいならあったかも。」
「どれどれ。」
お、あったあった。プシュッと小気味いい音を立てて、プルタブを開ける。
せっかくだからアタシも一口もらっちゃお。昼間のお酒って美味しいよね〜。
「ひとみちゃーんっ。」
「わーかってるって。」
スプーンにチューハイを注いで、梨華ちゃんに飲ませる。
「どうよ?」
「うぅ〜ん、特に変わらない。」
「ダメか〜。それとも、寝てるあいだに縮んだから、寝れば治るとか?」
「そうだったらいいんだけど……ほかに何かあるかなぁ?」
確かに寝てみるのは後回しでもいっか。
と言っても、ホントに原因が分からないから、治し方だって思い浮かばない。
それは梨華ちゃんも同じだったみたいで、また眉間に皺が寄る。
時計を見ると、もう午後2時半を指していた。
朝起きて気付いたから、いつ頃小さくなったか正確には分からないけど
少なくても気がついてから6時間以上は経ったことになる。
- 41 名前:手のひらの恋人 投稿日:2013/04/26(金) 23:35
- 「どうしよう、ひとみちゃん……。私このまま、元に戻れないのかな。」
「んなことないっしょ。」
「そんなの分かんないじゃん! このままだったらパパやママにだって会えなくなっちゃうし、
ひめにだってうかつに近寄れないし、お仕事だって出来なくなっちゃうし……」
「大丈夫だって。アタシがいるじゃん。」
言ってから気が付いたけど、だいぶ小っ恥ずかしい。
でも梨華ちゃんの一大事だから、そんなこと気にしてる場合じゃない。
「ひとみちゃんだって、そのうち私のこと嫌いになっちゃうかもしれないじゃん……。」
「そんなことねーし!」
「分からないじゃない。このままずっと小さかったら、ずっと私の面倒見なくちゃいけないんだよ?
ご飯だって一人で食べられないし、一人じゃ何にも出来ないもん……。」
たちまち梨華ちゃんから負のオーラが立ち上ってくる。マズい。どうにかしなきゃ。
「でっ、でもさ、今までみたいに目立たないから、一緒に外には行けるようになるんじゃない?」
「それは、そうだけど……。」
「それに小っさいんだから食費とかだってアタシ一人分と変わんねーしさぁ、
意外と便利なこともあるかもよ?」
「でも、私はひとみちゃんが風邪引いたって面倒見てあげられないし、
落ち込んだ時にギュッてしてあげることだって出来ない。
……エッチだって、出来なくなっちゃうんだよ?」
「風邪なんか引かないようにすればいいだけだし、ハグは出来なくても慰めてはくれるんでしょ?
そ、それに、別にエッチ出来なくなったって、梨華ちゃんのこと嫌いになんかなんねーし。」
「そんなの絶対信用出来ないわよー!」
「ンだよ、人を変態みたいに言いやがってよー!」
「実際そう思われるようなことばっかしてるからでしょー!」
人が心配してるのにこの言われようって。どう思われてんのアタシ。
「だから……ッ、別に、そういうの抜きにしたって、梨華ちゃんのこと離せるワケないっつーの!」
えぇい、こうなったら黙らせるにはコレしかないっ。
アタシは腰を思い切り屈めて、テーブルの上でベソをかきそうになっている梨華ちゃんにキスをした。
……実際のところ、キスっていうよりは寧ろ、顔に唇を押し付けたって感じだったけど。
「きゃーーーッ!」
「うぉーーーっ!?」
ビックリしていると、目の前にはもう元通りの大きさの梨華ちゃんがいた。
着ていたはずのボーダーワンピは当然ながら破けてしまっていて、あられもない姿のまま
テーブルの上に座っているという、何ともヘンな光景だ。
「な、何だろ?」
「う〜ん、何だろね?」
「……夢だったのかな?」
「何かバチでも当たったんじゃね?」
「なによーもー!」
可笑しくなって、2人で笑った。
あぁ、良かった。ホントに良かった。
- 42 名前:手のひらの恋人 投稿日:2013/04/26(金) 23:37
- 「あ〜っ、ビックリしたぁ。あのまま死んじゃったらどうしようかと思ったァ。」
「ホントだよもー。何かのドッキリかと思ったし。」
ふと横を見るとテーブルの上にはまだ小さな洋服セットが残っていて、
さっきまでのアレは夢じゃなかったんだと確認させられる。
「あ〜っ、これ〜! せっかくひとみちゃんに買ってもらったのに、全然着られなかったぁ〜!」
「いいじゃん、戻れたんだから。」
「そうだけどぉ。でもさー、ひとみちゃんもコレ着た私、ちょっと見たかったでしょ?」
ま、確かにね。フリフリドレスはともかく、看護師さんは見たかったかも。
「もー、思いっきり顔に出てるんだからね?
そんなんだから変態って思ってもしょうがないじゃんよー。」
「いやーだって、ねぇ。看護師さんはやっぱこう、イイじゃん?」
「ひとみちゃんなんか知らな〜いっ。さ、お洋服着ようっと。」
そう言って梨華ちゃんはひょいっとテーブルから降りると、軽い足取りでクローゼットへ向かう。
あぁ、いつもどおりの梨華ちゃんだ。当たり前の事なのに、何だかちょっと感動した。
時計を見ると、まだ3時前。
たった6、7時間のことだったけど、何だか無性に疲れてしまった気がした。
「はぁあ、何か疲れちゃったね。お昼寝しよっか?」
梨華ちゃんはひめを抱っこしながら、嬉しそうにソファへ凭れる。
「梨華ちゃんが昼寝すんのはいつもと変わんねーじゃん。」
「今日は特別に疲れたのっ。」
「へーへー。」
アタシもソファへ移動して、梨華ちゃんの頭のほうへ腰掛ける。
すぐにひめが寄ってきて、アタシの膝の上に乗ると、梨華ちゃんがさらにその上におでこを乗せようとする。
ひめはそれを慣れた仕草で避けて、逆に梨華ちゃんを下敷きにする。
「ひめぇ〜。ママ今日は疲れてんだから負けてよぉ。」
「イヤだってさー。諦めな。」
アタシがひめを抱きかかえて、梨華ちゃんの頭を膝に乗せてやると、梨華ちゃんは満足そうに微笑んだ。
「は〜、幸せっ。」
「へーへー。おやすみなさいませ。」
「これで起きたら、今度はひとみちゃんが小さくなってたりしてねっ。」
「げっ、それはマジ勘弁。」
「いいじゃーん。看護師さんの服、ちゃーんと写メに撮ってあ・げ・るっ。」
「げーっ、ぜってー着ねえし!」
小さくなるのは、嫌だけど。
ハプニングがあっても、何とかなるもんだね。
伊達に2人で色々乗り越えてきてないってカンジ?
スゴイ経験しちゃったな。そう思うと、ちょっとだけ嬉しくもある。
午後のぬるい日差しと、梨華ちゃんの規則正しい寝息が気持ちよくって、アタシも目を閉じた。
END
- 43 名前:電 投稿日:2013/04/26(金) 23:41
- 本日の更新は以上です。
アンリアルというかファンタジー設定(?)は初挑戦でした。
難しかったですが、書いていてとても楽しかったです(w
因みに、ピザ屋かハンバーガー屋かの着せ替えで大変迷いました(w
- 44 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/04/27(土) 02:41
- 面白い!実写化希望!
- 45 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/04/27(土) 07:38
- 面白かった!
次はよっすぃバージョンも読んでみたいですw
- 46 名前:電 投稿日:2013/06/17(月) 22:36
- 久々のステージはアツかった〜。
というわけで最近ちょこちょこありましたがご無沙汰でスミマセン。
鮮度がウリだったはずなのですが。
>44様
私も是非実写化して欲しいです(w
>45様
よっすぃバージョンですか!?
うーん、機会があったらやってみたいかも…当てにはしないでください(^^;)
それでは、本日の更新に参ります。
- 47 名前:雨粒パール 投稿日:2013/06/17(月) 22:37
- 夕方まで降っていた雨を含んだ空気は、少し冷やりとしている。
アルコールを覚ますにはちょうど良いと、そのまま歩いている。
「圭ちゃんの旦那さん、いい人そうだね。」
「うん、お料理も美味しかったでしょ?」
「なんで梨華ちゃんがドヤ顔してんだよ。」
「だって私が幹事やったんだもん。」
「そりゃそうだけど、なんか違くね?」
軽く頭を小突いて、フハハと笑いながら大股で踏み出した。
「そっか。もう圭ちゃんは『保田さん』じゃないんだね。」
「圭ちゃんは圭ちゃんだよ。」
「うん……。でも、さ。」
「まぁ、ね。」
あっという間に数歩先を歩き始めた吉澤の揺れる髪をぼんやり眺めながら、石川は考えていた。
(あぁ、昔もこんなことあった気がするな。)
- 48 名前:雨粒パール 投稿日:2013/06/17(月) 22:39
- この世界に飛び込んだ、右も左も分からない頃から隣に居た人を
いつ頃から“そういう意味で”好きになったか、なんて、まったく思い出せない。
在り来たりだが、気が付いたら好きになっていたんだと思う。
最初は男の子みたいでカッコいいけど、ちょっと取っ付きにくそうで、ちょっと怖そうで。
少し喋れるようになってみると、意外と抜けているところもあって、面白くて。
性格も趣味も考え方も全然合わないから、新鮮で。
でも自分よりも繊細でロマンチストだったりもすると日々小さな発見をしたり。
幾年か前の緑の濃い、雨上がりの夜だった。
ビニール傘を手に持って、ブラブラとかったるそうに歩く吉澤を、少し後ろから見ていた。
並んで歩いていたのを踏み出したのはおそらく、照れくさかったのと悲しい顔を見られたくなかったのだと、今なら思う。
『みんな卒業してっちゃうね。』
「みんな結婚してくね。」
そう言って雲の切れ間から覗いた月を見上げた横顔が、ダブる。
子供のような寂寥と、大人のような諦観の入り混じった顔。
「私がいるじゃない。」
咄嗟に出た言葉は、まるで過去をなぞったままだった。
『私がいるじゃない。』
『梨華ちゃん?』
『……わ、私はずっと、よっすぃ〜の隣にいるよ。居たいって思ってるよ。』
『……なんだそれ。告白かよ。あいっかわらずキショいな〜。』
『なにそれ〜、ひっど〜い!』
『梨華ちゃんに励まされるようじゃ、アタシもまだまだだな〜。』
『も〜、よっすぃ〜!』
あれから倍以上の時が過ぎた。
年齢を重ね、取り巻く環境も変わり、モラトリアムはとうに終わった。
- 49 名前:雨粒パール 投稿日:2013/06/17(月) 22:40
- 水たまりを揺らして、風が通り過ぎた。
白い手を取って握ると、お互い少し冷えていたのを自覚する。
「私はずっと、ひとみちゃんの隣にいるよ。居たいって思ってるよ。」
気が付いたときから一生、口にしないはずだった。
思いがけず手にした温もりだけど、いつでも手放す覚悟もしているつもりだ。
時折こんな表情を見せる彼女が愛おしくてたまらないのに、繋ぎ留めておきたいのに、
そうすることは彼女から自由の翼を奪ってしまいそうで、怖かった。
それでも、こんなに寂しそうな顔をしたまま一人で帰すなど、石川には出来なかった。
なるべく重くならないように、やはり過去の言葉をなぞるだけにとどめた。
出来るだけ高い声で。
意識的に、何も考えていない表情で。
さらっと、自然を装って。
キュッと握る手だけ、僅かに力を込めた。
吉澤はその大きな瞳をゆっくりと閉じて、ゆっくり息を吐いた。
「……梨華ちゃんは、変わんねーなぁ。」
気が付いているのか、それとも単なる軽口なのか。石川には判断できなかった。
寝静まったマンションの脇に並んだツツジの葉に乗った残滓が、鈍く月光を反射していた。
- 50 名前:雨粒パール 投稿日:2013/06/17(月) 22:41
- 「ンな顔すんなって。眉間にめっちゃ皺寄ってるし。」
照れ隠しなのか、少し乱暴な口調になって吉澤が笑う。
「だってぇ。」
「だってぇ、じゃねーよ。」
「…………。」
「まぁ、でも、ありがと。」
モカシンブーツの踵を蹴って、また一歩前へ踏み出したその耳が赤くなっていた。
解かれるかなと思った手は、けれど緩く繋がれたままにされて、
それがひどく石川の胸を安心させた。
「あぁでも、最近ちょっとアレだよね。目方がヤバいでしょ?」
「ちょっとなにそれー!」
「事実を言ったまでですぅ〜。」
「ここんとこ頑張ったから、ちょっと減ったもんっ。」
「フハハッ。」
「何よ何よ〜、人がせっかくぅ〜。」
「ま、アタシは別に目方が増えててもいいけどさ。」
「へっ?」
「べーつにー。ただ柔らかいほうが触り心地もイイっていうかー。」
「……も〜〜〜ッ!」
耳の奥に残った畳みかけるような雨音のメロディーと、仲間の笑い声を思い出して、互いの顔を覗き込む。
もう少し、もう少し。
雲間に隠れたがる月を追いかけながら、干渉に浸る夜を過ごすのも、悪くはない。
END
- 51 名前:電 投稿日:2013/06/17(月) 22:43
- 本日の更新は以上です。
明日の大阪公演に行かれる方は楽しんで下さいね〜!
私はお留守番組ですが……(涙)。
- 52 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/06/18(火) 03:29
- 更新ありがとうございます!
やっぱりいしよしっていいなって実感しました。
- 53 名前:名無飼育さん 投稿日:2013/10/18(金) 15:04
- 更新待ってますよ〜
いしよし読みたいです!
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