好意と敬意
- 1 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:39
- 2012年6月以降の娘。をメインにしたCP短編集になる予定です。
前の短編スレ
情状
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/grass/1271076840/
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:40
- 柔軟シンメトリー
- 3 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:41
- ウチねー、誰かと寝るのが好きかもしんない。
鞘師が唐突にそんなことを言ったので、彼女を背負っていた石田は
膝から崩れてしまいそうになった。
ふたりはストレッチでペアを組んでいた。
背中合わせで腕を組んで担ぎ上げる動作を交互に行っていて、
背負われる方は割と気が楽だ。
だからと言ってこのタイミングで自分の性癖を告白するルールは
存在しないし、独自に作られてもたいへん迷惑である。
精一杯踏ん張ってなんとか鞘師をおろした石田が、今度は浮いた。
「何、言ってんですかっ、こんな時にっ」
真面目にやっ
言いかけたところで交代の時間が来て、また着地。
「枕にさ、頭のせるじゃん。それがさ」
鞘師も言いかけたところでこの体操は終了し、二人は離れた。
- 4 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:45
- 「みんな顔の位置がおんなじで、目の高さも一緒で、なんか嬉しい」
これを聞いた石田が誤解していたことを自覚するのと、
鞘師がなにかを思いついたタイミングがほぼ同じで、
戸惑った表情の後輩の腕を取って床に座らせた先輩、という構図は
外野から見れば不穏なことの前触れのように見えたかもしれないが、
そのまま一緒にゴロンと床に寝そべったので、一連の流れを見ていた
田中は、あ、捻るやつまたやるんやね、真面目ねー、などと思った。
鞘師が先に片膝を立ててそれを両手で抱え、腰を横に捻る。
そしてその捻った方向、つまり石田の方に顔も向けた。
でも本当は逆の方を向かなくてはいけないのだ。
石田はその違和感に気付いて、思わず向かい合うように動いてしまう。
ペアじゃない柔軟でシンメトリーになる。
「ほらこれ、こういう目が合うのがさ、なんかいいよね」
「……」
「よくない?」
とても嬉しそうに目を細めて言われると、
「……そうですね」
と相槌を打つしかなかった。
- 5 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:46
- 何となく思っていたことだが、鞘師は自身の急成長を
心の中では良く思っていないようだ。
メンバーが何人か集まって写真を撮ろうとすると、
ウチしゃがむからー、と先手を打ってきて、
本当に屈んで写ろうとする。
最初に聞いた時は喧嘩売ってんのかと思ったが、
ほとんどのメンバーに対してそう言っていた。
(道重や田中がいる時は遠慮していたと思う)
比べてこちらは身長が伸び悩んでしまって、
同期にまで追い越されて悔しい思いをしている。
せめて、今の鞘師くらいは伸びて欲しいのに。
これが『ないものねだり』ってやつかー。
- 6 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:48
- 「意味はわかったんですけど、
もうちょっとちゃんと言ってくださいよ。
あと顔の向き逆ですよ」
石田は忠告を添えて顔をそむけ、数秒経ってもう一度反対側、
と姿勢を変えたら、やっぱり鞘師がこっちを見ていた。
シンメだったから当たり前だけれど。
「まっすぐ目を見ることができて、注意してくれる相手がいるって、
ほんと素晴らしいね」
なぜか満足そうだったので、負けじと言い返す。
「いっつも唇見てるわけにはいかないですもんねー」
「なんてことを言うんだ」
「あ、じゃあまばたきしたら駄目じゃないですか?
そんなに素晴らしいならパチパチしたらもったいないですよ」
「それはむりだ」
「ええ〜?」
「……眠気には勝てないので……」
そう言って鞘師がわざと寝たふりをしたので、石田はその時初めて、
コラ寝るな、と年下の先輩にタメ口をきいた。
- 7 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:49
- >>2-6 柔軟シンメトリー
- 8 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/23(土) 12:05
- 新スレおめでとうございます。
これから後輩な亜佑美お姉さんと妹・鞘丸先輩の付かず離れずなお話がたくさん読める(?)と思うと
感無量ですっ><
- 9 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/23(土) 21:24
- うむ
年上後輩と年下先輩がこうもよいものだとは
- 10 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/24(日) 20:18
- 前スレに引き続き素敵な鞘石小説が読めて嬉しかったです。
更に、作者さんの描く今の娘。たちに出会えるということで、本当に嬉しいです。
これから楽しみにしてます。
- 11 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 20:34
- トーク
- 12 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 20:37
- 最後の購入者だったので、みんな寄ってたかってあーだこーだ
言っていて、寄り合いの中心人物はそれにうろたえながらも、
なんとか言われた通りにスマートフォンを操作しようとしていた。
「もうさぁ、
買ったばっかで早速しっかりシート貼るのはいいんだけどさ、
覗き見防止だから見えなくてちゃんとアドバイスできないんだよ」
いち早く状況を客観視できる鈴木は、そう言って石田を囲っている
集団からすぐに離れる。鞘師も、そうだそうだと言ってそれに従って
一歩引いた。
生田は根っこが親切なのでずっと傍にくっついて石田に
説明しているのだが、たまに画面を触りそうになって後輩に、
あっ駄目! と拒絶され、それが三回ほど続いたのでとうとう諦めた。
そうして俯いて無言でディスプレイを凝視し続けている同期の姿を、
飯窪は
「なんか、なんか二宮金次郎の銅像みたいになってるよ」
と言いあらわした。
「まあ真面目なのはいいことだよ」
まとめに入る鈴木の言葉はいつもどこか優しい。
その後石田は椅子に座ったものの、前のめりになってずっと
端末をいじっていた。
再び飯窪氏、曰く。
「今度は考える人になったね」
- 13 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 20:39
- 結局のところ、使ってみないと慣れないものだとみんなわかっていた。
だったら協力してあげよう、鞘師は仕事が済んでから石田に
当たり障りのないメールを出してみる。
即返ってくることは期待していなかったのだが、
意外と早くに着信があった。
まず自分の名前を十秒以内に打てるように練習し、すぐにマスターしたのだ、
という石田らしい自慢話が目に入って、ちょっと感心していたら、最後は
【なにより、こんなにはやくへんじがうてました!】
と、とても目に優しい一文で結んであった。
そりゃ早いよね絵文字も何もついてないんだから!
心の中で突っ込むと同時に、何とも言えない高揚感が襲ってきて、
鞘師は自分の部屋で思わず身を捩って悶えてしまった。
- 14 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 20:40
-
なんなの!
かわいすぎる!
おばあちゃんか!
自分なんかに「鞘師伝説」とかいう捏造があるんだったら、
石田こそこういうのが現実にあるんだから伝説化されるべきなのに。
鞘師はテンション爆上げに伴い妄想に拍車がかかってしまい、
都市伝説シリーズ「亜佑美伝説」がコンビニの雑誌コーナーに
並べられるところまで想像した。
おまけは絶対に実寸サイズのキスマークのシール。これ。決定。
実際奪えないんだから、印刷物くらいくれてもいいじゃんね。
道重(さん)も、きっと五冊くらい買ってくれる!
- 15 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 20:42
- あー。
ウチにだけはずっとひらがなメールくれないかな。
無理だよなーすぐ「ですます調」の後輩メールになっちゃうだろうなー。
ちぇ。
…………
これ、返さなければ漢字で返ってこなくなる……?
ていうかメール自体が来なくなるか、もともとあんまり返さないけど。
そうだ、この際電話しよう!
ちゃんと出られるかテストだよーとか言って。
鞘師は名案だとばかりにおばあ……石田に電話をかけた。
コール何回で出るか回数も数えるつもりだった。
結果として四回目で出た。割と普通で里保がっかり。
「はい、もしもし?」
「おつー、鞘師ですー」
「おつかれさまで、す……え? なんですか?」
「うん、メールありがとう。
これは電話に出られるかどうかの抜き打ちテストです」
「あ、そういうことですか。
どうですかちゃんと出られましたけど」
「素晴らしい、合格ー」
「へへっ、やった!」
「やだかわいい」
「はい?」
- 16 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 20:46
- 「あ、なんでもないよ。こっちの話」
「もうマスターしたも同然ですよ!」
「いや、そうでもない。なにあのメール最後全部ひらがなじゃん」
「あれはスピード重視で! 意味わかればいいんです」
「確かに意味はわかったし超癒されたから、鞘師的にはアリでした」
「ほらー!」
「だから次もひらがなで送ってよ」
「嫌ですよもうやりませんよ、せっかく憶えてる途中なのに」
「ええーいいじゃーん、イヤサレタイノニ・・・」
「どんだけ癒されたいんですか? それならまーちゃんがいるじゃないですか」
「あの娘は頼み込んでやってもらう系じゃないと思う」
「確かに。
あ、鞘師さん知ってます? 明日雨降りらしいです」
「マジで!? レッスンあるじゃん着替え持って傘とかヤなんだけど」
「……もし嫌じゃなければ、私の服余分に持っていきましょうか?」
「えっ(なにそれチョー便利ー)!? いや、いいよ。悪いよ」
「ハーパンならそんなにかさばらないしTシャツは畳めば」
「うん、その気持ちだけで嬉しい。ありがとう。
でもそれは他のメンバーに“自分も先輩に同じことをしなきゃ”
って思わせるから、やっぱ駄目だよ」
「……すいません! 余計なこと言ってしまいました」
「いいって。さっきも言ったけど気持ちは嬉しいから」
「鞘師さん、明日も赤いの着ます? レッスン着」
「え? あ、そーだね。そうしよっかな」
「じゃあ私は青いのにします。……駄目ですか?」
「なんで!? いいよ全然!
……なんかウチが基準になってたのに驚いた」
「基準はメンバーカラーですけどね」
「うん、自惚れてた。ゴメンナサイ」
「いや、赤こそ自分って自覚を強く持つのはとっても正しいことだと
思うので、自惚れてください。ぜひ!」
「ねえ、なんかさあ、ウチのことからかってるでしょ」
「へへっ、話すのが楽しくって、ちょっと調子に」
「一応楽しいって思ってくれてんだ?」
「鞘師さん自分で気付いてないみたいですけど、メールあんまり
返さないし電話も短い方だから」
「いや、それは自覚ちゃんと持ってるもん」
「ほんとですかぁ〜?
でも今日もう結構長く喋ってて、だから嬉しいんですよっ」
「そっかー、じゃあこれからもたくさん喋ろうね」
「それいいですね!
でもこっちから話しかけてばっかりじゃなくて、
鞘師さんからもなにか話題振ってほしいです」
「だからそれはさっ、さっきの話に戻るけど、
ひらがなメールちょうだい、ってさぁ」
「あ、それがありましたね。
……うーん、全文は無理だけど、一部ならいいですよ」
「それでいい! 欲しい!」
「じゃあそういうことで、今度送ります」
「やった! 期待してるから!」
- 17 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 20:49
- それからも他愛ない話に花が咲き、通話を切って記録を見たら、
なんだかんだで約三十分は話していたようだ。
確かに自分にしては長く喋ったな、と鞘師は思った。
ひらがなメールの約束も取り付けたし、本当に楽しい時間だった。
今度無料通話ができるアプリのこととか色々教えてあげよう、と
閃いたが、とりあえず「おばあちゃん」から若返ってもらわないと。
明日の身支度をしながらついさっきの会話を反芻してみる。
話題を振ってくれたのはほとんど向こうだったから、
そういうところはやっぱり年の差が出てるんだな、と思う。
電話だったせいか「鞘師さん」と何度も呼ばれて、耳のいい鞘師は
その電話の声でのアクセントをすっかり憶えてしまった。
自分もたくさん名前を呼んであげたらよかったかな、そんな反省もしつつ。
- 18 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 20:50
- さて、楽しみにしていたひらがなメールだが、
実はまだ一度も送られてきていない。
鞘師が最初のひらがなメールに返信をしていないからだ。
勿論、先輩がメールを返してくれれば、石田は約束を果たすつもりでいる。
けれど、今となっては。
電話で話すことの方が多くなった、今となっては。
- 19 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 20:51
- >>11-18 トーク
- 20 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 20:57
- レスありがとうございます。
>>8
その予想をいい意味で裏切ることができたらいいなって思いますっ><
でも、お約束っていうのも大事だよねっ><
>>9
鞘師先輩は近頃年下であることを意識していない気がします。
反対に、年上後輩な石田はかなり意識している節がありますし、
だからこそ鞘石いとをかし。を出せたらいいなと。
>>10
前スレといえば、亀JL卒業時にいったん更新を終わらせてから、
自スレよりは多くの方に九期と十期のキャラを把握してもらえそうな
夢板フリースレで何作か書かせていただきました。
全てが910期ではなく、中には「あ、これも自分だったわ」というのもw
すでにお読みになったものもあるかもしれませんが、
カラオケ
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1251815658/213-215
りんご
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1251815658/233
およそ九分くらいの出来事
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1251815658/257-261
ひとまわり
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1251815658/633-646
金くどぅー
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1251815658/717-732
ホテル 炭酸
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1251815658/743-747
あまいひみつ
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1251815658/759-766
を、書きました。
- 21 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/27(水) 21:00
-
- 22 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/28(木) 03:18
- 心の声(?)が半分くらい漏れちゃってる鞘師が可愛くて仕様がありません。
そして>>20大好きなお話が作者さんのだと知って、うれしくてたまりません。
愛里保(っていうのかな?)もっと欲しいです><
- 23 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/28(木) 16:34
- フリースレの小説も振り幅があって素敵れす。
鞘師石田は勿論なんですが、他のメンバーの動きと発言が各々らしくて面白い。
特に今回のすーずきさんは素晴らしかったと思います。
- 24 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/28(木) 22:03
- おお!金くどぅー好きだ!
- 25 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/29(金) 00:57
- 金くどぅーの作者さんでしたか!
何回も読み返すほど本当に大好きです金くどぅー
- 26 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 21:25
- に、なぞる
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 21:27
- 「二股だ」
「え」
二の腕の青筋のことだった。
水色の半袖からほつれた糸のように覗いていたので、
気になっていたらしい。
ちゃんと見るために腕を掴まれて。
じっと確認したらそれが枝分かれしていたので、
ついそう言っちゃったらしい。
鞘師は言葉だけに留まらず、二の腕を掴んでいた手の親指で、
その肌の下の青い枝分かれを交互になぞる。
何の意味があるのか、時には緩急をつけて。
なんだか延々続けられそうだったので、気を逸らすために
「問題です。これはなに脈でしょうか?」
そう問いかけると、思惑通り鞘師が驚いたように顔を上げる。
「…………ふ、ふたつくらいあったよね」
「お、いいとこに気付きましたね〜。
そのどっちかです。これ大ヒントですよ!」
「えっと、えええーっと、ど、動、脈……?」
「ブッブー。静脈ですよ静脈」
「あああそうだそれだったああア」
「駄目だなあ〜」
空いていた方の手で頭を抱えた先輩のことを、年上の後輩は
勝ち誇った表情で眺めた。
ところが腕を掴んでいた手は離されなくて、そっちの方の思惑は
外れてしまった。
まあ、勝負に勝ったので良しとしよう、石田はなんとなく肩の力を抜く。
鞘師はそれに敏感に気付いて、支えるようにもう片方の手を添え、
大事そうに石田の腕を持った。
- 28 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 21:29
-
ご先祖様も、鞘を持つ時はこんな風だったのかなー。
亜佑美ちゃんも実は石田光成の子孫だったりとか……そんなの無いか。
自分の手元に目をやると、相手の手首も一緒に視界に入り、
鞘師はそこにも青い筋を発見した。
一本の腕の両端に、細いけれどその人を生かすために存在する
血液の道が、途中まではっきりと見えている。
直前まで先祖に想いを馳せていた鞘師は、それが両方とも“血筋”と
言われることに気付いて心が躍り、二の腕側の二本に分かれて途切れている
脈の上に、それぞれ人差し指と中指をのせた。
肌の上でくねくねさせながら、手首のそれとを繋ぐように、なぞる。
肘の関節を通って半分くらい過ぎたところで、
ふたつの指を重ねて一本道になると、あっという間に旅が終わる。
「オワタぁ」
「繋がりましたね。ゴールですか」
「よく見るとこっちは色が薄いぞ」
なんて呟きながら、今度は手首の静脈をさすり始める鞘師。
「ただの触りたがりじゃないですか!」
無視された気がして、正論を強めの口調でぶつけてやったつもりだが、
言い返してこない。
肌フェチってこうなのか、と石田は呆れた。
- 29 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 21:32
- すると次の瞬間、肘から向こう側が鞘師の黒髪にすっぽり覆われて、
石田の目から隠されてしまう。
え? なにしてんの?
理解しきれないうちに黒いものはするすると上昇していって、
隙間から再び自分の腕があらわれる。
「ちょ、何やらかしたんですか?」
顔をあげた鞘師を見て追及したが、あっけらかんとしている。
そして何も言わない。
「すぅわぁやしさんんん」
「ぬわぁんですかあああ」
「……いやっ、だから!
今なにかおかしなことしましたよね? 絶対しましたよね?」
「してないけど……?」
- 30 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 21:34
- 「嘘だ嘘だ、絶対嘘だ!」
「なんだよ、じゃあ見てみなよ」
それまで大事にされていた腕を強引に突き返されて、石田は少し
怯んだが、手首と言わず自分の腕には何の異変もなかった。
「……」
「ほら、何もないじゃん」
「…………」
「あ、それとも、何か“あること”にしたかった?
する? 今から“あったこと”にしちゃう?
いいよ、どういう状態が見たかったのか言ってくれたら、ウチやったげるよ。
思い通りが嬉しいんだよね。気持ちいいんだよね。
裏切ったみたいになってごめんね」
予想が外れて悔しくて言葉を失っていたところに、
よくわからない誘いと冷静な分析と謝罪、という三連弾を食らって
「鞘師さん、逆にそういうのはプライドが傷つきます……」
そう口答えするのが精一杯の石田だった。
- 31 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 21:37
- 「……じゃあ、自分の部屋に帰っちゃう?」
ところが今度は不安そうに尋ねられ、その意外な反応に、
そこまで傷ついてないですけど、とついフォローを入れてしまう石田。
「ていうか、ここは私の部屋なのにそういうこと言うんですか」
「うん、ちょっと被害者ぶってみた」
「もー、鞘師さぁん?
じゃあ、さっき何してたんですか? 急に頭下げて」
「青筋の近くのとこがポコポコ動いてた気がして、
顔近づけ過ぎちゃっただけ」
「……それも脈じゃないですか」
「なに脈?」
「そっちは動脈。あれ、やりませんでしたか? 体育の時に」
「えー、わかんない」
「走った後に自分の脈を測るって、やりましたよね?」
「……やったっけ……?」
「やってますよ、憶えてないんですか」
まさか体育の時まで走りながら寝ているなんてことは、
石田は冗談交じりに言ったが、鞘師は神妙な面持ちで
「そうかも……」
なんて言う。
この人中学を卒業できるのだろうか、と心配になった。
もしかして、授業中寝てばかりで五教科もやばいのかも……
実は佐藤のことを全く笑えない成績だったりするのだろうか。
かなり気になるところだが、一応先輩なので失礼にあたると思い、
聞くことはできなかった。
- 32 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 21:41
- 「あ、思い出した」
そんな感じで石田の中に少し芽生えはじめた、
“心配の種”こと鞘師里保(広島県)さん。
突然、素朴な記憶の開花を迎えたらしい。
「何をですか」
「脈って心臓の音と一緒なんだよね?」
……まあ、大筋で言えばそうなる。
脈だけに。
「例えば君が意地を張って緊張してないって言っても、
手首を持ったら本当のことがわかるってことじゃない?」
これを聞いた石田は咄嗟に、ダンスのキレを発揮するが如く
自らの両腕を天に向けて伸ばし、鞘師から遠ざけた。
「なにしとるんじゃ、急に」
「危ねェと思って」
「で、バンザーイ?」
「はっ」
言われて取っているポーズのおかしさに気付いたものの、なんていうか
引っ込みがつかない。
どうにもできないので、鞘師が何かきっかけをくれるのを待つしか無かった。
そしてそんな期待の星だが、真顔になった自分を見るなり、
腹を抱えて笑い出してしまって。
ますます逃げられなくなった石田は、ステーシー化したフリをして、
彼女に襲い掛かった。
- 33 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 21:42
- >>26-32 に、なぞる
- 34 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 21:47
- レスありがとうございます。
>>22
多分、きっと、わざと漏らしてるような部分も……w
高橋さんと鞘師関係は、なにか本人たち発のネタがあれば
意欲的に書きたいです。
>>23
鈴木師匠の空気おまとめ能力は本当に高くて高くて。
そりゃKY生田と対立するわって話です。
>>24
ハo´ 。`ル<照れるぜ
>>25
これも偏に光井さんのネタふりのおかげです。
金太郎と十期の親和性は異常。
- 35 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 21:48
-
- 36 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/01(日) 23:04
- な、なんか物凄くエロイ
この二人の話ってエロク出来るのが素敵
- 37 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/02(月) 20:07
- 金くどぅー良かった!
今の娘。は興味なかったのですが、鞘師、石田の関係がこんな感じなのだとするとテレビ等の出演を追ってみようかなと思いました。
リアルの彼女たちを知っているほうがよりこのお話を楽しめそうですし。
鞘師さんはキス魔かなにかなんですかね。
- 38 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/07(土) 18:08
- 器物破損、並びに窃盗の疑い
- 39 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/07(土) 18:10
- 後ろから軽く引っ張られる感覚があり、鞘師は立ち止まって振り向いた。
一瞥しただけでは何が起こっているのかよくわからなく、理解した途端
喉から出た音は、自分が出したとは思えないほどの低い呻き。
石田は並んで歩いていたのだが、鞘師が立ち止まったことに気付かず、
数歩先にいた。
背後から工藤のような低い声? そう思って石田も振り向く。
廊下を歩いていたのだが、その壁にあった社内掲示板のポスターの前で、
鞘師が呆然と立ち尽くしていた。
ポスターと鞘師との間に、彼女の鞄が宙ぶらりんに近い状態で浮いている。
その鞄と、ポスターの末端が繋がっていた。
「あっ!」
石田は状況の理解と共に鞘師の元へ戻った。
ピンで留められていたはずのポスターと鞄のどこかが引っかかって、
歩行の勢いでそれが派手に破けてしまったのだ。
- 40 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/07(土) 18:11
- 「うあああ、やっちまったぃ……」
「なにやってんですか鞘師さぁん」
数センチならともかく、紙の横幅半分くらいは裂けてしまっているではないか。
石田は先輩の失敗を少し嬉しそうに実況したが、動転したその先輩は
なぜか両手を震わせてどうしよどうしよとうろたえている。
それを見て、瞬時に頭が切り替わった。
鞘師の鞄から引っかかったポスターの端を取り除こうとしたが、
取っ手とジョイントしている金属部分に食い込むように入り込んでいて、
少し力を入れたら紙が破けて鞄に紙片が残ってしまい、
「やべっ」
思わず素の声が漏れた。
「これ、これさ、ほっといてもまずくない?」
視線を落としていた石田の上から、臆病者の声がする。
残ってしまった紙くずを取るために格闘していたので、少し投げやりに
「いいんじゃないですか外しちゃって」
と答えた。
- 41 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/07(土) 18:13
- 「えええ、でも」
「破けたまま放置してる方がまずいですよ。もっと破けると思います」
「あ、そうか。そうかも」
その頃やっと、金属の隙間から皺だらけの紙片が抜けた。
「よし、こっちは取れた」
そして改めて壁の方を向く。鞘師もありがとうと壁を見たまま言ったが、
まだ心配事は尽きない。
「急に無くなったらさ、何か言われないかな……」
「言われませんよ、私たちだけに聞かれるとか有り得、なー……」
突発的な“何か”が起こった時の石田は忙しい。
廊下の左右を素早く見渡して、誰もいないことを確認したら、
「い! うん、誰も見てない大丈夫。
私が持っておくんでさっさと剥がしましょ」
「え、いいの?」
「いいから早く」
後輩の行動力に屈した鞘師は、促されるままにポスターの両端のピンを
取り外しにかかる。
あっという間に剥がされたそれは四つに畳まれ、石田の鞄の中にスッと
差し込まれた。
「折って入れちゃったらポスターだってわかんないね」
「そうですね。仕事の資料と間違って出しちゃったらマズー」
「ウヒヒ、ねえ、それどうすんの? 持って帰っちゃうの」
「その方が安全だと思うので」
「大きいから、ビリビリに破いたら楽しそうじゃない?」
- 42 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/07(土) 18:16
- さっきまであんなにうろたえていたのに、鞘師の中ではもうそれは
ゴミ同然に認識されていて、処分の仕方に興味があるようだった。
石田は自分の鞄を覗き込みながら少し考え、こう答える。
「超楽しそうですけど、例えばですよ、それが自分が描いた
学校の課題のポスターだったりしたらやっぱ嫌じゃないですか」
「えー、普通そこまで考えなくない?」
「今ね、ちょうど学校の友達が、美術部なんですけどその友達が、
学校祭のポスター描いてるんですよ。コンテストがあるんですって」
「おー、なるほどね」
「これもお金をかけて作ってるものだし」
鞘師が感心しきりといった様子で頷いていたら
「ていうか逃げましょ! 鞘師さん」
石田はその鞘師の腕を引いて、突然走り出した。
廊下に反響する、まだらでテンポの速いステップ音。
それを聞きながら、共犯でもないし、よく考えたらたいした悪事を
働いたわけでもないのにな、と、主犯の癖に鞘師は笑ってしまった。
誰にも見つかりませんように!
と、
誰かに見つかってみてもいいかな?
そんな二つの思いが交錯する、一本道の廊下であったお話でした。
- 43 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/07(土) 18:17
- >>38-42 器物破損、並びに窃盗の疑い
- 44 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/07(土) 18:18
- レスありがとうございます。
>>36
衝撃! 鞘石は正直なEROSだった!
というか、そんなつもりはなかったんですが……
滲み出ているのなら、嬉しい誤算で。
誤算で思い出しましたが、三成を光成表記にして赤い娘の
ちょっと抜けてる感を演出したつもりでした。
ノリ*´ー´リ<でもそうはならなかった
普段の行いのせいで、自分で読んでもただの誤変換だわこれ。
>>37
鈴木師匠にチューしかける、石田の唇つい見ちゃう発言、
フクちゃんの肌フェチ発言を鑑みると、鞘師はいつでも
キス魔にレベルアップできそうな気配があります。
師匠へのチューの時なんか、引き金が粘土を捏ねてる最中
だったりして面白いですよ。今度のセンターさんは。
- 45 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/07(土) 18:18
-
- 46 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/07(土) 21:47
- だーいし可愛いですね。真面目さがかわいらしい。
セリフの書き方が好きです。「やっちまったぃ」とか。
言いそうだもんなあ。
- 47 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/09(月) 05:08
- メンバーの声で台詞が再生されるくらい言葉のチョイスが絶妙!!
次も楽しみにしてます
- 48 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/17(火) 21:15
- 水の手錠
- 49 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/17(火) 21:17
-
鏡越しに見えていた後ろ姿の石田が突然席を立ち、長い髪を靡かせて
メイクルームを颯爽と出て行った―――
髪を梳いていた鞘師は、それに誘われるように思わず腰を浮かせてしまい、
やむを得ずと言った体で鏡台にブラシを置く。
「ねえ今亜佑美ちゃんが」
「突然出て行ったね」
隣では譜久村が薄い前髪を整えていて、前を見たまま鞘師の呟きに答えた。
同じ様に正面の鏡で石田の動きを見ていたらしい。
「なんか、どうしたんだろ」
「気になるんなら見てくれば?」
言われなくてもそうするつもりだったけれど、鞘師はまさにその一言が
欲しかった。
その気持ちが通じたからかどうかはわからないが。
「……じゃ、ちょっと見てくる」
「いってらっしゃーい」
譜久村と話すと、ほんの少し家族と会話しているような気分を
味わうことができる。
これは彼女の徳のひとつなのだ。
- 50 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/17(火) 21:20
- メイクルームを出たものの、廊下に石田の姿は無かった。
左に行けば階段、右に行けば他の部屋やエレベーター、
もっと奥にトイレがある。
やっぱりトイレかな、そう思って鞘師は右の道を選んだ。
近くまで行くと、ドアに嵌め込まれたガラスが光っていて、
灯かりが点いていることがわかる。
普段は消灯しているから、中に誰かがいるのは確かだ。
辿り着いて扉を開けた途端、水の跳ねる音が耳に入ってくる。
音のする方を見ると、洗面コーナーに小柄な女性が一人。
そう、石田だった。
気配に気付いた石田が、首だけ捻ってこちらを振り返る。
その動きが、普段の機敏な後輩のそれとは違って、
ロボットダンスでもしているかのようなぎこちなさだったので、
思わずストレートに問うてしまった。
「亜佑美ちゃんどうした」
「鞘師さん、やっちゃいました。ヘアアイロンでジュッて」
「えっ火傷したの!? 腕?」
「手の、甲の方」
「でソッコーで冷やしに来たんだ」
「見てたんですか? 恥ずかしいっ」
鞘師は近づきながら個室の様子を見る。
ドアが全て開いていて誰も入っていない。
そして、すぐ傍に来て見たら、蛇口から大量に流れる水の下に、
華奢な両手が翳されていた。
甲を上にして、指先は少し下を向いている。
- 51 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/17(火) 21:23
- 「両手ともやっちゃったの?」
「いや、左だけですけど?
……あ、確かに変ですね。どうして私は両手を冷やしてるんだ?」
急に飛び出したボケに、知らないよ! と笑う鞘師。
いいんですよちょうど暑かったから! とムキなる石田。
「あ、亜佑美ちゃんもさ、ボケることあるんだね」
「そりゃーありますよ! 人間だからあるに決まってます!」
「最近本当に暑いしねぇ」
「そう、頭の何かがとけてもおかしくない、……って、
早速とけちゃった人が」
こっちが動けないと思って。
と、石田は急に背後から抱きついてきた鞘師に毒づいた。
「ウチも手冷やしたいー」
「隣ありますよ。くっついたら汗ばんで気持ち悪くないですか」
「むしろきもちい」
「駄目だ、ちょっとマジっぽい!」
慌てたのか強引に仰け反られて、鞘師は押し返されてしまった。
自動水洗のセンサーが離れたことを察知して、水もピタリと止まる。
- 52 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/17(火) 21:30
- 「なんだよぅ、手冷やしたいって」
「駄目です」
水の滴る両手を鞘師の手になすりつける石田。
「はい! もうこれで我慢してください」
「タオルにしないでよ」
「とか言って、嬉しいくせに」
「…………ひひ、うん、嬉しぃひひ」
鞘師は歯を見せて笑った。
単純に触れ合いたいだけでした、と顔に書いてある。
こっちの顔にも何か書いてあるんだろうか、
石田もつられてへへっと笑いながら思う。
そんなことをしつつも、しっかりとエアタオルで残りの水滴を
吹き飛ばしてから、石田はトイレのドアを開けた。
濡れた手を丸めて胸の前に翳した猫のような(と指摘したら、
「にゃん」と普通に鳴いた。許さなくていいのかと突っ込んだら、
ごまかすように「にゃん?」と小首をかしげた)鞘師がドアをくぐる
のを待って、その手が乾くまで、ゆっくりと一緒に廊下を歩いた。
- 53 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/17(火) 21:31
- >>48-52 水の手錠
- 54 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/17(火) 21:35
- レスありがとうございます。
>>46
「言いそう」と思っていただけるのはすごく嬉しいです。
スレたててよかった。
>>47
これもまた嬉しいお言葉で。
お察しの通り、台詞はかつてどこかでメンバーが発した言葉、
に近いものを選んでいます。
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/17(火) 21:35
-
- 56 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/18(水) 03:58
- 声にだして読ませたい名スレ100選に認定します
カレーライスの女ばりに「わかってます」感を漂わせる譜久村さんが良い
- 57 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/18(水) 11:03
- これはいわゆるひとつのらぶらぶというやつですね><
- 58 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/21(土) 20:25
- 背後を狙うとは鞘師め。
性格を分かり合っている感じがいい。
- 59 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/22(日) 22:19
- ――二人で買い物に行ったりはするの?
「二人だけっていうのは、実はこの間初めて行ったんですよ。
洋服を買いに行ったんですけど、亜佑美ちゃんと私は好みが近いので
“これ、いいね”って言ったのが似たようなデザインだったり」
「鞘師さんはいいと思ったものをすぐキープするんですよ!
それでだんだん持ってる腕のところに服の層ができて」
「(笑)」
「気付いたら、私が何枚か持ってました」
――それは、自分のじゃなくて?
「そう、この方(と言って、隣を見る)のを」
「やめてよ!(笑) あの、私が命令して持たせたんじゃないですから!
持ってくれたんですよ、気を遣って」
「そうでしたっけ? ちょっと持ってて、って言われた気が」
「嘘だ!」
「ごめんなさい嘘です(笑)」
「最近こうやってからかわれちゃうんですよ。
でもそれは表向きで、普段は静かなお姉さんで」
「いや、裏の話はしなくていいです!」
「焦ってるの?」
「焦ってません!」
- 60 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/22(日) 22:20
- ――からかい返しですね(笑) 亜佑美ちゃんの「裏」の話は、また今度改めて
聞こうと思います! それで、結局その服は全部買っちゃったんですか?
「二着に絞りました。かなり考えて」
「財布の中身じっと覗きこんで、その真剣さが、失礼ですけどすっごく
可愛かったんです。本当に『財布と相談』って感じで」
「そうなの、これ以上軽くなったらあと何日地獄だぞ、って説教されたの」
「(爆笑)」
「フッフフ。これも嘘なんですけどね」
「いや、わかりますから!」(まだ笑っている)
「名残惜しかった……」
「あぁ〜って言いながらハンガーかちゃかちゃ戻して」
「まだ残ってたら、次のお小遣いが出た時に買いに行きたい」
「でもそしたらシーズン終わってますよね」
「そうなんだよね!」
「私は最初から買うの決めてたので……あっ!」(と言って突然手を叩く)
「どうしたの」
「素敵な先輩エピソードひとつ思い出しましたよ。
会計しようとしたら、それも一緒に出そう、って私の靴下のお金まとめて
払ってくださいました!」
- 61 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/22(日) 22:22
- ――おお、さすが!
「レジで時間かけたくないから」
「クール!」
「クール?(笑) いや、友達同士でまとめ払いってしますよね?
レジに行列とか、ああいうのが我慢できなくて」
「確かにそうなんですけど、実際に言ってくださったので
すごく感動しました。しかも、お金出そうとしたら、
だいたいこのくらいでいいよ、って、
2円か3円か忘れちゃったんですけどそれを切り捨てた金額で言われて。
クールだけじゃなくて太っ腹だなあ、って」
「2円3円でそこまで言われると、逆に不信感が……」
「信じてください私を!」
「うん、わかった(笑) あ、亜佑美ちゃんは結局きっちり正しい金額で
払ってくれた事をご報告しておきます」
「私も11期が入ったら同じ事しようと決めました」
「当然、奢ってあげるんでしょ?」
「……モチロン!」
「今の間はなんだ(笑)」
- 62 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/22(日) 22:23
- .>>59-61 ※このインタビューはフィクションです
- 63 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/22(日) 22:24
- 名前 セリフ〜
みたいな形式にしたかったんですがうまくいかなかった。
レスありがとうございます。
>>56
これはまた名誉な……って、よく読むと「読ませたい」なんですね!
それはちょっと遠慮したいですw
>>57
せっかくらぶらぶなのに場所がトイレですまん><
>>58
それでも真のターゲットは唇だと思うと……鞘師……
今のところ石田の方が相手の性格を把握しているイメージで書いています。
- 64 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/22(日) 22:24
-
- 65 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/24(火) 20:09
- 青春ど真ん中(Saya Ishi Ver.)
- 66 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/24(火) 20:12
- 椅子に座ってスマホのディスプレイを磨いていたら、
隣の鞘師が自分の座っていた椅子を引き摺りながら寄って来た。
先輩ならいつもはもう少し遅い時間に楽屋入りしてくるのだが、
今日は先に一人の仕事を終えて来たので、誰よりも早い入りに
なったそうだ。
二番手だった石田は入室した直後、中に鞘師しかいないとわかって、
多少の覚悟をしていた。
「ねえねえ」
「なんですか」
「今日こそちゅーしようよ」
「またぁ。駄目です!」
「えー!?」
もう何度このやり取りをしたことか……
わかっている、全部自分のせいだ。
石田は以前、鞘師とツアー先のホテルで同室になった時に、
眠れない年上の後輩を救うつもりで、ちょっと手助けをしたことがある。
リラックスしてもらうつもりだったのだが、それと同時に、
鞘師は開眼してしまった。
いや、唇だけなら前から狙われていたのかもしれないが、
こんな風に露骨に求めてきたりはしなかった。
- 67 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/24(火) 20:14
- これまでは、ファーストキスを済ませてからにしてくれ、
と言って逃げてきた。
石田にしてみれば一瞬で済むことだからそんなにおおごとではない。
でも鞘師は別だ。なにより、浮かれて誰かにポロッとこぼして
しまうんじゃないかという懸念があるのだ。
「お若い鞘師さんにそういうことすると、興奮さめやらぬままに
誰かに言っちゃうんじゃないかなって思うんですよ」
そして、初めてその懸念を暴露すると、鞘師は明らかにムッとした。
「お若いってなんだ、お若いって」
「経験とか知識とかを、すぐ口に出してしまいそうな気がするんです」
「しないって。前にあったことも誰にも言ってないよ」
「あれは、本当に暴露したらヤバイことだってご自分でもお分かりだと
思いますけど」
「……亜佑美ちゃんがやったんじゃん」
「…………ずれてます、話。
ちゅーだけはほんと好きな人とやってくださいね」
「だから、ウチは亜佑美ちゃんのこと好きだよ?」
石田はスマホをテーブルに置いて、鞘師の方に体の向きを変えた。
はっきり言って、本気で迫られたら抵抗しないつもりでいる。
それでも鞘師はちゃんと聞いて来るから、こちらは拒否することができる。
何だかんだ言ってこの娘は受身だし、嫌われたくないと思っているに違いない。
- 68 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/24(火) 20:18
- 「結局そうやってガキ扱いしてさ、実はウチのこと嫌いなんでしょ」
そら、とうとうカマをかけてきた。
石田は思っていたことが正解だとわかった途端に思わず噴き出してしまった。
「笑うんだ。やっぱりきらっ」
「てないです! すいません。何かとツボが浅くて」
嫌っていない証拠だと右肩に手を添えると、
鞘師はその手に自らの手を添えて少し握ってくる。
「可愛らしくて笑ってしまったんです。失礼しました」
「…………」
無言で、また唇を見てるのかと思えばそうではなく、
自分の目を真っ直ぐ見つめてきた。
石田は視線を逸らし、鞘師の唇をまじまじと見た。
「……いつも見られてるから、
いま仕返しにちゃんと見てみたりしてるんですけど」
「……なんかやだ」
「ふふ、でしょ?
わかってくれます? この、見られる気持ち!」
「でもウチは亜佑美ちゃんみたいにプルプルしてないし、
別にフツーだもん」
「そうでもないんだなあ、ここの」
すぐ近くにあるほくろ、これとセットでとっても魅力的に見えますよ。
唇の左端の傍にある、小さな黒い点を指で示す。
そのまま頬に触れると鞘師は動揺して、
「……ご、ゴミ付いてるみたいて言われたことあ、ある」
早口な上に少しどもっていた。
- 69 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/24(火) 20:19
- 「ひどいこと言う奴がいますね」
「あれ、ち違ったかな? ゴマだったかな」
「アハハ、うん、そっちならわかるかも……」
……あ、ゴマなら味とかします?
ここぞとばかりに口角の辺りを狙って味見してみたが、
もちろん味なんてするわけがない。
ていうか思った以上にやってることが変質的だった、と気づいた
このタイミングで、なんと神様の気まぐれが起こって石田の腹が
鳴ってしまった。
ナンテコッタ!
大慌ての石田は思わず歌いだしてしまう。
「っお、おーなーかーがー、ぐぅー↑」
「…………」
「エッヘヘッ」
「……わあああどう受け取ればいいんだあああア!」
声をひっくり返しながら顔を覆った鞘師に対して、
こちらは更に声をあげて照れ笑いするしかなかった。
恥ーずーかーしーすーぎー↑るー↑↑
- 70 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/24(火) 20:22
- >>65-68 青春ど真ん中(Saya Ishi Ver.)
……いつかやると思っていたのですが、
>>66「年上の後輩」って書いちゃってましたすいません逆でした……
脳内補完お願いします……
- 71 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/24(火) 20:25
- うわ、動揺のあまりまた過ちを犯してしまった
- 72 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/24(火) 20:26
- (再まとめ)
>>65-69 青春ど真ん中(Saya Ishi Ver.)
- 73 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/24(火) 20:27
-
- 74 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/25(水) 22:48
- 続きキテタ━━━━━━( *´Д`)━━━━━━ !!!!!
おなかがグーされて動揺しちゃう鞘師がカワイイ><
亜佑美お姉さんもひとおもいに召し上がっちゃえばいいのに…
と思いつつもこの距離感が大好きです><
- 75 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/29(日) 02:46
- ツッコミ体質
- 76 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/29(日) 02:47
- 鼻に詰め物をした鞘師が会社に現れた。
来る途中で鼻血を出してしまったらしい。
マネージャーやメンバーにひとしきり笑われ、本人も照れ笑いをしていたが、
書き物の仕事をするためにテーブルに着席して、真剣に紙に向かい始めたと思ったら、
突然怒り出した。
「あんなに笑うことなくない?」
石田は急だなーめんどくせーと思いつつも、同じテーブルの自分にしか聞こえない
ほどの小声で不満を漏らされると、心を開いてくれているようで憎みきれない。
それにひょっとしたら、他に何人も居たのに自分に対してだけ怒っているのかも……
思わず口角が上がる。
喜怒哀楽に関わらず、面と向かって感情を曝け出されることは、石田にとっては
ある意味喜びだ。
例えば同期の中で軽い言い合いから本気の口喧嘩に発展したとしても、
それをどこか楽しんでいる自分がいたりするのだ。
とは言え、鼻に詰め物をしたまま、手に赤いペンを持ったアイドルの姿は、
初見にも増して大変シュールに見える。
しかも、相当お怒りのご様子だ。
- 77 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/29(日) 02:50
-
これは一体なんのコントだろう?
おとずれた二度目の爆笑を堪えようと、石田は即座に下を向いた。
でも肩の震えだけは抑えられず、笑っていることはすぐにばれて、
更に機嫌を損ねた鞘師にペンを投げつけられる。
そのペンは、蓋が外れたままだった。
放った本人がそれに気づいた時にはもう遅く、幸い石田にペン先は当たら
なかったものの、跳ね返って白いテーブルに歪な赤い線がついてしまった。
「あっ」
慌てた鞘師は、即座に自分の鼻から詰め物のティッシュをスポッと抜いて、
あろうことかそれでテーブルを拭こうとした。
もっと慌てたのはペンをぶつけられて顔を上げたばかりの石田だが、
咄嗟の判断で鞘師の暴挙を阻むためテーブルに勢いよく手をついた。
それによって消そうと思っていた赤線が隠され、鞘師の動きが止まる。
「……鞘師さん、せめて、新品!」
「っわ、な、ナンダコレ!?」
「ナンダじゃないですよ!」
自分の手元を見て現実を知った先輩が、驚きのあまり持っていたものを
凝視したままかたまっている。
また血が出たらと思うと、先輩だからって遠慮している場合ではない。
- 78 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/29(日) 02:52
- 「ティッシュまだ持ってますよね!?」
「あ、う、うん、あるある」
「早くしないと血が」
「待って待って」
強く言う石田の言いなりになって、鞘師は空いた椅子に置いていた鞄から
慌ててポケットティッシュを取り出した。
更には、はい、と言ってこちらに渡してくる。
石田もそれに一切疑問を持たず、素早く中央の切込みから一枚引き抜くと、
それを半分に裂いて片方を丸め始めた。と思ったらあっという間に鞘師は
顎を持たれて、新しい詰め物を鼻の穴に突っ込まれる。
「……よし!」
ちょっとした救助活動に、石田はとても満足げだ。
一方鞘師の方はというと、くいっと持ち上げられた顎にまだ感触が残っていて、
思わず自らの手でそこを撫でながら
「亜佑美ちゃん超頼もしい」
と賞賛の言葉を送った。
……のだが、その相手は今、さっき裂いたティッシュの残りでテーブルの
インクを消すことに夢中になっている。
- 79 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/29(日) 02:54
- 「くそ、取れないな」
せっかく褒めたのに、と文句を言いそうになったが、よく考えればこれも
自分の失態のせいなのだった。
「もういいよ、ありがと。それ油性だから多分取れない」
「油性なんですかっ、道理で」
「ウチ、言いに行ってくる」
鞘師は誰かに指摘される前に謝ろうと思って、席を立ってマネージャーに
自己申告をしに行く。
それを見に来たマネージャーが何か言うよりも早く、
「これ、“鞘師さんがやりました”って矢印つけて書いたら、
皆さん許してくれませんかね〜?」
石田がふざけたフォローを入れて、代わりに怒られてくれた。
- 80 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/29(日) 02:55
- 後日鞘師がこのことについて訊ねたところ、ちょっとあなたのことを
笑いすぎたからバチが当たっただけ、だそうだ。
これだけなら素直に感心したのだが、彼女は更に
「自分でよく人に突っ込む体質だとは思っていたんですけど、
咄嗟のこととはいえ、まさか鼻の穴にまでツッコむ時が来るなんて……」
と続けたので、鞘師は耳を赤くして石田の肩をどついた。
テーブルのインクは“掃除の人”が消してくれたらしく、
今は跡が残っていない。
- 81 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/29(日) 02:56
- >>75-80 ツッコミ体質
- 82 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/29(日) 02:57
- >>74
レスありがとうございます。
いったん「食べ物」と認識したらあっという間に完食してしまいそうです><
なにぶん短編スレなので、突然距離感が狂ってしまう可能性があります……
- 83 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/29(日) 02:57
-
- 84 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/07/30(月) 00:39
- 耳を赤くした理由を原稿用紙に赤ペンで200字以上で提出してください鞘師さん!
名前は黒ペンで書いてください!
あー、一度は見てみたい、ご立腹さやしさん。
- 85 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/05(日) 12:10
- ありがとう〜妹たちにカンシャ!〜
- 86 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/05(日) 12:11
- 「見て見て! これ妹たちが送ってきてくれたの!」
鞄から、じゃーん! と言いながら鞘師が取り出したのは、
大きめの紙皿のような物体だった。
石田は最初、茶色い面が見えたので、それをグラタン皿か何かかと思った。
しかし、鞘師が片手で翻してその茶色い面をこちらへ向けた時、
まったく別のものであるとわかると同時に、プッと噴き出してしまう。
「……リ、リ○ックマ?」
「の、お面だ!」
しゃきーん、また鞘師は効果音を口に出してお面を顔に装着しながら、
右手を斜め上にシュッと伸ばしてポーズを取った。
石田はもう耐えられなくなって、自分のベッドの上で笑い転げる。
その下の床に座布団を敷いて座っていた鞘師。調子に乗って
しゃきーんしたまま膝立ちになり、石田の顔面に迫って遊んでいた。
どさくさに紛れてお面越しにキスされたがカウントしないでおこう。
- 87 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/05(日) 12:13
- リホックマは語る。
これは広島にいる妹と弟が夏祭りに行った際、互いのお小遣いを出しあって、
東京にいる姉のために買って送ってくれたとても大切なものである、と。
「え、それすごい。泣ける話じゃないですか……」
でもお面を取ってくれたらもっと感動的だったかな、
声が篭って聞き取りにくいです。石田は突っ込みを忘れない。
「だって嬉しすぎて! 外したくないんだよ」
「っくく、今日一日それのつもりですか? いや勘弁してください」
「だったらどこでつければいいんじゃ」
「……あー、お祭り行きたいですね」
「行きたい行きたい行きたいなー」
狭いから暴れないで、と天井を見ながら真横でじたばたする先輩に注意する。
するとリホックマはこちらを向いて動きを止め、低い声で囁いた。
「……そして、鮎の塩焼きを食べるのさ」
「!」
反射的に鞘師の顔を見るが、お面のせいで表情が見えない。
きっと得意げな顔してるんだ、見てやろうと思ってお面に手をかける。
でもいざ取ってみたら、唇を突き出して蛸師の顔だったので、
石田はそっとお面を元に戻した。
- 88 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/05(日) 12:15
- >>85-87 ありがとう〜妹たちにカンシャ!〜
- 89 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/05(日) 12:16
- >>84
だーいし乙
- 90 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/05(日) 12:16
-
- 91 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/07(火) 21:16
- 作者さんのレスの方にも吹き出してしまった…
いちいち鞘師さんと石田さんが面白くて悔しい。
- 92 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/07(火) 22:09
- これはホテルの奴の続きと考えていいんだろうか…
すごい色々考えれて面白い
- 93 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/09(木) 05:30
- 可愛いー!癒されたッス
- 94 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/18(土) 20:33
- おんとれー
- 95 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/18(土) 20:35
- 「ねー聞いて聞いて、まーねぇ、まだ自由研究やってないさ」
二人でケータリングのおかずを選んでいたら、左手に持っていたトングを
顔の前でカチカチ鳴らしつつ、佐藤がそんなことを言い出した。
工藤は隣でどの肉を選ぼうか真剣だったので、あーそうなんだ、と適当に返す。
「なーんもidea出てこないっ、もう諦めちゃおっかなぁ〜」
昔英会話を嗜んでいた名残で、アイディアという単語が正しい発音で飛び出している。
最初は珍しくていちいち褒めていたが、最近はそれがかっこつけてる風に聞こえて
しまうようになり、工藤はスルーしていた。
「くどぅーはもう終わらせたの?」
選ばれし鶏肉をトレーの皿にのせたあたりで、ちょっと構ってやるか、と思い、
「……さあ? 教えないよー」
と答える。
すると案の定佐藤は、
「終わらせたか聞いただけだよ!?」
と大きな声を出して、トングを振り下ろした。
「危ないからやめな」
「くどぅーが悪い! 教えないよーとか言うから」
「だって何やったのーって聞かれて教えたら、まーちゃん絶対真似するじゃん。
それ使わないなら貸してよ」
- 96 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/18(土) 20:37
- 「…………どれ取るのさ」
工藤がフライドポテトを指差すと、佐藤は聞いたくせにそれを無視して、
隣のレタスをトングでごっそり掴んで工藤の皿に、しかも肉の上に落とした。
「おい!」
「野菜も食べなさい!」
「だからポテト! ポテトは野菜だろ!」
「他のも食べろー!」
次いで、千切りキャベツやミニトマト、大きいスプーンですくわれた
スイートコーンが、大量にのせられていく。
「いや、もういいって、もうやめろって……」
工藤は野菜が好きではないので最初こそ怒鳴ったが、どんどん他のものが皿に
盛られていくと青ざめて抗議の声も小さくなり、ついには何も言わなくなった。
あっという間に大人しくなってしまった同期に気付いた佐藤。
慌ててその皿をトレーごと工藤から奪って、自分のトレーを押し付けた。
「ごめんごめん、こっちはまーちゃんが食べる用にするから! ねっ?」
「……あったりまえだろバカ、でもお前に持たせたら零しそうなんだよ」
肉の上に山盛りになった野菜は、佐藤のMCみたいに不安定で。
特にスイートコーンは一粒が小さいから、少しの揺れで皿から飛び出しそうだ。
二人はまたお互いのトレーを受け渡し、結局元通りになる。
- 97 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/18(土) 20:40
- そこへ、田中があらわれた。
「さっきから見とったら何回も交換し合って、二人ともなんしよーと?」
佐藤は愛想笑いをして誤魔化した。
しかし同期にあっさりチクられてしまい、慌てて、
ちがうんですーちがうんですーと喚く。
「ちょっと静かにして」
田中がそれを嗜めると、唇を尖らせて黙りこくった。
工藤はそれを見てザマミロと思った。でも今度は自分に向かって、
あんたも野菜は食べんと、と忠告してくる。
それを聞いて思わず
「だからってやりすぎじゃないですか!? こんなにですよ」
と口答えをした。
田中は愉快そうに笑って、佐藤に向かってトレーを貸せと言い、
のっていた空の皿に肉と野菜を盛り付け始める。
佐藤はすぐその意図に気付き、田中の横にくっついて、
あれもこれもと注文を出す。
「でも最初は少なめにしとかんとさ」
「あーそっかー」
しばらくして、盛り付け終わった皿 on トレーを工藤に見せ付ける田中。
「工藤、今日はこの、れいなランチを食べなさい」
そんな田中の言葉を、佐藤が真似た。
「食べなさーい」
- 98 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/18(土) 20:43
- 工藤は驚いて、持っていたトレーをひっくり返しそうになった。
なにをしているのかと思ったら、憧れの大先輩が自分のために盛り付けを
かって出てくれていたのだ。
どうして途中で気付かなかったのか! 冷や汗をかきながら
「そそそそそんな、悪いです!」
首を大きく左右に振って遠慮するのだが、佐藤がまた工藤の持っていた
トレーを取り上げて、すかさず田中がそこにれいなランチを持っていくと、
つい素直に受け取ってしまう。
「盛っただけやけど、れいな特製よ? 断るのは許しません。
まあそんなに野菜入れとらんし、苦手なら肉と混ぜて食べり」
「……はい……」
「じゃっ、さっさと戻んな。
まーちゃんもそれ、がんばって全部食べるんだよ」
「はーい、くどぅー行くよー」
「……あ、アリガトウゴザイマシタっ!」
楽屋に戻って食事をする段になっても、工藤にはまだ信じられない。
目の前の皿に手をつけることが出来ず、同期が食べはじめてもずっと見つめたままだ。
「くどぅー、もう食べなよぉ。食べないとまた田中さんに怒られるしょ」
そう佐藤に言われてはじめて、食べないのも失礼であると気付いた工藤。
それでもやっぱり勿体なくて、スマホのカメラで記念写真を何枚も撮っていた。
一方、佐藤の方のサラダ特盛りランチ(自業自得添え)だが、
野菜は完食できたものの、案の定それでお腹が一杯になってしまった。
もともとは工藤が食べたくて吟味した鶏肉だけが残っていたので、
工藤は佐藤に文句を言いながらそれを……本音は、口の中に残っていた
野菜の味をかき消すために、食べてあげたのだった。
- 99 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/18(土) 20:45
- >>94-98 おんとれー
- 100 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/18(土) 20:49
- レスありがとうございます。
>>91
悔しい
という言葉は書き手さんじゃないと出てこないと思うのですが……
もったいないお言葉、恐縮です。
>>92
こんなことを書くと考え無しと思われるかもしれませんが、
書きながら探りながら関係を作っていますので、
基本的には更新した順番の時系列だと思っていただいておkです。
ちなみに>>85-87の舞台は、大都会の石田の部屋です。
>>93
ノリ=・囚・)<いやあそんなそんな 照れますなぁ
- 101 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/18(土) 20:50
- ノリ*´ー´リ<100ひゃっほーい!
- 102 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/18(土) 20:51
- ノリ;´ー´リ<と思ったら過ぎてました……
- 103 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/19(日) 01:44
- たなさたん自分の偏食は差し置いて…従順チワワかわいいよ
>>100
|∀’)<m9(^Д^)プギャー
- 104 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/20(月) 02:07
- |∀’)<プギャーは>>102でした…(汗)
- 105 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/20(月) 22:32
- れいながもうただの優しいお姉さん><
- 106 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/08/28(火) 23:33
- まーちゃんを見てて自分が思う「なんか腹立つんだけど、この子」ポイントを突いていたので、読んでいて軽くイラッとしました。(それだけ話に入り込んでいたこと、描写が上手いってことです)
くどぅーが、<<96で、声を出せなくなる所が非常にかわいい! どぅーの絶望している顔が目に浮かんでしょうがないですね。
遅レスですが、○ホッ○○で爆笑してしまったよ。
- 107 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:16
- 三匹の娘。
- 108 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:18
- 石田はひとり、木陰にいた。
左右を緑地に挟まれた歩道があって、内陸側には道に沿うように一定の間隔で樹木が
植えられている。
その木の下に佇んでいた。
反対側、海側の緑地をこえれば砂浜に出て、少し歩けばすぐに波打ち際にたどり着ける。
しかし、今の石田にはやわらかそうな緑地に足を踏み入れることすら躊躇いがあった。
メンバーは今、近くで個人の撮影に入っていて、見学することもできたが、
心が痛むのを恐れて石田はここに逃げてきたのだ。
俯いて灰色の地面を見ていると、たまに歩く人の足元が目に入り、
同時に楽しげな声が聞こえてくる。
マネージャーも飛んでこないし、退屈で寂しくて死にそうになって、戻っちゃうか、
と顔をあげたら、視界の右側から突然誰かの手が現れて、耳元に鼻にかかった
幼い声が囁かれた。
- 109 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:20
- 「ヤアヤア猫サン、ゴキゲンh(ごほっ)……いかがだい?」
でも実は高い声を出すのが苦手なのか、咳き込んですぐ地声に戻る。
「…………猫さんって、私ですか」
「君は猫さんで、(んっ、ぅん)僕は狐だよ」
顔の前に翳された手の形は、アロハサインとは違うなあ、と思ってはいたが。
よく見ると、小さい頃にやった指あそびの狐の顔をつくっていたのだった。
「あ、それでその、指の」
「指ではない! 僕のどこが指だというのか」
「いや、どっからどう見ても指ですから」
「断じて違うから!」
「あーはいはい、いいですよそれじゃそういうことで」
「アロ〜ハ〜猫さん、ひゃっほーい!」
右手狐が、ぐっと自分の目の前に寄ってくる。
「SA〜Y?」
「…………あのスイマセン、私は同期のハニーとは違うんで」
「なんだ、猫ってノリが悪いなあ。僕やんなっちゃう」
ツーン!
と、最初の幼児ボイスに戻って、狐の手はそっぽを向いた。
石田は思わずそのリアクションで噴き出してしまった。
- 110 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:21
- 「いひひ」
耳元に、つられて笑う声。
「き、狐ってそう笑うんですか?」
「そうだぞ」
「知らなかった。コーンコンコンじゃないんですね。
……撮影は終わったんですか?」
「うん」
「暑かったですか?」
「うん、まぶしいし」
「ならここ良いでしょ。私が見つけたんですよ」
「いいねー、落ち着くね。猫さんの傍だからね」
まだそれ続けてるんですか、とうとう石田は首だけ捻って背後を窺おうとしたのだが、
その右肩に鞘師が顎をのせてきたので動けなくなる。
仕方がないので、しっかり前を向いて海を見ることにした。
残念ながら、人々や近くを走る車の騒々しさで、波の音はここまで届かない。
肝心の海にはあちこちにヨットやボートやサーファーが浮いていて、
砂浜にもパラソルや人が、正直言って目障りなくらい多かった。
すぐ前をいろんな髪色の人が横切っていくし……
- 111 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:23
- 石田が想像していたハワイのビーチには、こんなに大勢の人は存在していなかった。
極端に言うと、
空
海
砂
の三層だけが、目の前に広がっているものだとばかり。
でも、これが真のリゾート地ってもんなのか。
そんな風に現実を受け入れつつ、なるべく海そのものだけを見ようと目を凝らすと、
どうしても自分の色だと騒ぎまくった佐藤の姿がちらつくのだが、……いやいや!
水平線に近づくにつれ青く変化していっているのだから、これは自分の色でもある!
なんなら、世界中の海はこの石田の色だ、と言ってもいい。
それを聞いた鞘師は、
「どこでも負けず嫌いなんだねぇ」
と笑っていた。
- 112 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:24
- 「……ああ、でもなんか、申し訳なくなってきた。
こっちが勝手に世界の色とか」
「えっ、すぐ反省しちゃうの?
いつもならもっと調子に乗ってない?」
「一言多いですよ!
多いといえば、ここもちょっと人が多すぎるけど……」
……やっぱり、海って綺麗ですよね。
亜佑美ちゃんも綺麗だね。
鞘師が間髪入れずにそう言い放ったので、
石田は一瞬何を言われたのか理解できなかった。
頭の中でもう一度鞘師が同じように言って、理解はできたものの……
生まれて初めてそんなことを言われたので、思わず松葉杖で上がっていた左肩と
同じくらい右肩をいからせて
「このキザ狐めっ! もう離れろ!」
と反発してしまう。
鞘師も、そこまでされると離れるしかなかった。
- 113 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:26
- 「場所に酔ってるでしょ! 心にも無いこと言って! バカ!」
杖を振り回しそうな剣幕で、石田はなぜか怒り出す。
「ちょっとちょっと、決め付けすぎじゃない? せっかく褒めてんのに」
「あんなの中二が言えるわけないし! 誰に習ったんだか!」
「いやいや習ったとかないって」
……そんな感じでちょっとした口論になりかけた所に、
第三者が悠々とした足取りで現れたのだ。
「あー、何を騒いでるのかね、キミタチ」
腕を後ろに組んで偉そうに声をかけてきたその人は、
強いて言うなら日本の“校長先生”の雰囲気を醸した鈴木だった。
騒ぎに気付いて様子を見にやってきたのだろう。
鞘師はその鈴木の姿を見た瞬間に思い出した。
ちょいと前に、同期の譜久村とこの鈴木が、衣装に着替えたお互いを
褒め合っていた現場に居合わせたことを。
- 114 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:28
- 「香音ちゃんって原色がチョー似合うよねー。
だから誰よりもハワイが似合うって聖思うんだ」
鈴木はいつも泰然自若としていて、鞘師がいくら褒めても多少鼻を高くする程度の
反応しかしないくせに、こうして譜久村に褒められると必ず
「聖ちゃんも綺麗だよ」
と褒め返すのだ。
同じような光景を、鞘師は日本で何度も見ていたが、ハワイでもそんなやり取りができる
二人の関係が羨ましくて、自分も好きな人に言ってみたいし、言われてみたかった。
そうしたら石田がタイムリーな言葉を発したから、思わずそっくりそのまま
口走ってしまったのである。
まさかキザだと文句を言われるとは思っておらず、かと言って鈴木の目の前で
そんな弁明をすれば、鈴石でタッグを組まれて自分が責められるに違いない。
- 115 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:30
- だったら、どうせ責められるんなら……
鞘師は覚悟を決め、しかめっ面の石田の耳元でまた囁いた。
――確かにさっきのは、あの“狸”のセリフをちょっと借りたけど
――ウチは本気だよ
- 116 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:31
- そして、相手から言い返される前に、寄ってきた鈴木に声をかける。
「ねぇねぇ香音ちゃん、亜佑美ちゃんって“綺麗”と“かわいい”のどっちだと思う」
「えーそうだなー、わたし的には“かわいい”」
「ウチは“綺麗”だと思うんだけど、それ言ったら怒るんだよ?」
「あーそれでなんか揉めてたのか」
「そうなんだよ。褒めてるのにさぁ、おかしくない?」
「亜佑美ちゃん照れるな照れるな、せっかくのハワイで怒ったらもったいないじゃん。
素直に受け取っととけばいいんだよ」
予想に反して、タッグを組んだのは自分と狸の方だった。
石田も状況が変わったことに気付いたのか、
「さ、鞘師さんは、ここがハワイだからそんなこと言って」
と、少し弱気になってきている。
「だってさ。じゃ里保ちゃんさ、帰国したら一番に言ってやんなよ」
「おー、いいね。金属探知機を走りながらやってもいいよ」
「どこの佐藤優樹だよ!」
- 117 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:33
-
…………
亜佑美ぃー! 綺麗だぞー!
野太い声でリハーサルをした鞘師にのっかって、鈴木は
かわいいぞ亜佑美ー!
と、海に向かって叫んだ。
そして二人だけで笑っている。
石田は紅い顔で悔しそうに、少し浮かせていた白い左足で、何度も空を蹴っていた。
後ろ足で砂をかける猫の動作に似ていたことと、その時の悲鳴が、
にゃあああああ! と聞こえたため、狐と狸は揃って彼女のことを、
ヒステリック・キャットと呼んだ。
- 118 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:34
- >>107-117 三匹の娘。
- 119 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:42
- レスありがとうございます。
>>103-104
偏食ですけど、田中っちの野菜スティックスキーな所だけは、
見習ってもいいと思います。
ノリ*´ー´リ<……気付くのに一日かかったの?
>>105
ちょっと個性足りませんでしたか><
まーちゃんマジックが強力すぎたかも。
今度書く機会があったら、もう少しキャラを厚くしますね。
>>106
深夜にイラッとさせてすみませんw
実のところ>>96らへんは口論するか押し黙るかですごく迷いましたが、
こっちで良かったみたいでホッとしています。
>○ホッ○○
ノリ=・囚・)<……
ノリ=・囚・)<ウホッとな?
遅レスは歓迎します。過去の話でも気にせず書いちゃってください。
- 120 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 20:43
-
- 121 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/01(土) 22:27
- 歯痒い2人w
はやく付き合っちゃえば良いのにww
- 122 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/02(日) 15:02
- 凹いしさんから照れいしさんまで全てがかわいいー
鞘まるるん絶好調すな!
オプショナルツアー一緒だったみたいで萌え妄想が益々広がりますな
- 123 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/10(月) 23:20
- 一・二・三
- 124 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/10(月) 23:21
- 一
「ウチが突然いなくなったらどーすんの?」
「へっ?」
「……」
「卒業する、ってことですか?」
「んーじゃあそれでいい」
「いや、じゃあ、って」
「どうする?」
「追っかけますけど、それが何か?」
「え!? ど、どういうこと?
一緒に卒業しちゃうってこと? それともなんか別の」
「うーん、そうですねえ……あ、どうしよう。あんまり言いたくないなあ」
「気になるから言ってよ!」
「じゃあ、誰にも言わないって約束してください」
「する! 約束するから」
「……それじゃ、お教えしましょう。
まず、一緒に卒業はしません。
でも、私が卒業するまで、競い合ってる相手のつもりでいます」
「いなくても」
「いなくても。常に意識していますから、覚悟していてください」
「お、ぉう」
「……なんか、新垣さんに対する生田さんみたいですけど、厳しいですよ私は。
新天地で手を抜いたら許しませんから」
「しんて、待ってそれはなんだ」
「ふふっ、わからないんですかあ?
わからないことばっかり、しょうがないなあ。新天地っていうのはですね……」
- 125 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/10(月) 23:23
- 二
「ウチが突然いなくなったらどーすんの?」
「なんですか? ほんと突然ですけど」
「人生何が起こるかわからないじゃん」
「それは私にも言えることなんですけど。
あ、逆に! 私が、石田がいなくなったらどうします?」
「えー、先に聞いてんのウチなんだけど!」
「まあまあ後でちゃんと答えますって! で、で、どうします?」
「……そりゃあ戻ってきた時のために、フリを亜佑美ちゃんの分まで憶えるよ。
光井さんがさ、そうやってたし。
休養する前も、した時でも、他のメンバーの分までフリを頭に入れてて」
「あ、それは、私も知ってます」
「そっか。じゃあウチはそれと同じことを、完璧にやっとくから」
「えー、探してくれないんですか?」
「そこはその道のプロの人が……」
「鞘師さん冷たーい!」
「だって、ウチが探しに行ったら、行方不明者が二人になっちゃわない?」
「あー、ま、確かに。
さすがですね、ご自分のことをよっく理解してらっしゃる!」
「それちょっと馬鹿にしてる……ほんとのことだからいいや」
「でも私は絶対に探し出しますけどねっ!」
「……そゆとこまで負けず嫌い出さなくてもさぁ」
- 126 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/10(月) 23:24
- 三
「ウチが突然いなくなったらどーすんの?」
「お、脱走ですか?
いいですね! 私も付き合います」
「……イヒヒ」
「……へへっ」
- 127 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/10(月) 23:24
- >>123-126 一・二・三
- 128 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/10(月) 23:25
- レスありがとうございます。
>>121
お付き合い!? ですか……
今後の二人の距離感次第では、考えたいところですが、
今の距離感も維持してもらいたかったりして。
>>122
石田さんがカメラの前で全身全力で感情をあらわす姿はとても魅力的なので、
この場でもつい様々なリアクションをさせてしまいます。
お買い物ツアーは、日程が出た時からワクテカチャンスだと思っていた
のですが……具体的な内容が見えなくて、ひとまずアロハロ待ちです。
- 129 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/10(月) 23:25
-
- 130 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/11(火) 00:03
- 三でおながいしますっ><
- 131 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/12(水) 22:00
- 構成の妙ですね。三で、乗り気なだーいしが可愛いです。笑い声に特徴があると、文字にしたときに活きますね。
- 132 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 20:38
- 行為と経緯
- 133 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 20:40
- 鞘師がひとつしかない枕を占領してしまったので、隣の石田はうまく昼寝ができなかった。
うっかり熟睡したらしたで仕事に遅刻してしまうから、体を休ませることができたんだ、
ということにしてベッドから起き上がる。
大切なものだと言っていたくせに、前回石田の部屋に置き忘れられてしまった鞘師のお面。
今日は、下校から仕事までの空いた時間がかぶったので二人で過ごそうという話になって、
部屋に招くのでついでにお面を持って帰ってほしい、と石田が提案したのだった。
仕事で会う時に渡しても良かったのだが、忘れて行ったのに気付いて手に取った時、
裏面に“妹たち”からのメッセージが書かれているのを見つけて。
石田は、安易にこれを持ち歩いてはいけない、と強く思った。
そしてそれを鞘師本人に話したのだが、こちらの言い分はうまく伝わっていないようだった。
でも、気にしないで持ってくればいいじゃん、とは言われなかったし、
実際こうして来てくれたのだから、良し。
- 134 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 20:42
- いつもの定位置である学習机用の椅子に座り、すっかり寝入っている先輩を
(めったに無いことなので)腕を組んで上から見下ろしていた石田だったが、
ずっと見ているのも悪い気がして、回転させて机に向かう。
仕事の“予習”と勉強の“復習”を天秤にかけて、今日は“予習”を選ぶことにする。
鞄に入れたままだった青いファイルを取り出した。
部屋を出る三十分前に、鞘師を起こした。
こちら側を向いていた彼女の肩を脅かさないようにそっと叩いた時、本当にわずかに、
睫毛が震えたのを見た。
一瞬の出来事だったのだが、心を鷲掴みにされる、というのはこういうことを言うんだろう。
素顔の鞘師は本人もよく口にしているが瞳が小さめで、睫毛だって決して長いとは言えない。
それだけにこの些細な変化を発見することができたのは、我ながら賞賛に値するほどの観察眼だ。
気づいたのは、自分だけ。
これはいいものを見つけた。
向こうがいつも唇を見てしまうというなら、こちらはいつだって瞳を見てやろう。
それに気付いていつも気まずい思いをしてればいいんだ。
- 135 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 20:45
- そんな睫毛が少しずつ上向いて、鞘師は目を開けた。
石田は微笑んで
「おはようございます」
と、“好きな言葉”を言うと、相手の反応を見る前にベッドから離れ、
さらには部屋を出て行ってしまう。
寝ぼけていた鞘師は確かにその言葉で起き上がったはずなのだが、
少しずつ意識がはっきりしてくると、室内には誰もいない。
発言者がいなくなったのか、最初からいなかったのか。
夢だったのか、するとここはどこなのか。
……なんだか体がだるい。考えたくない。
再びシーツの上に倒れた。
遠のく意識を呼び戻したのは、がちゃりという不快な金属音で、
「あれぇ」
今度こそ人の声が聞こえた。
- 136 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 20:46
- 「二度寝はまずいですよ? 起きれなくなる」
石田はおぼんにカップを二つ載せて部屋に戻ってきて、先輩が違う寝相でベッドに
転がっているのを見つける。
一方の鞘師は、やっと相手が石田であることを認識できた。
起きるのが嫌で目を開けてはいなかったのだが、嗅覚が反応して、つい
「……焦げくさい」
と呟いてしまう。
「コーヒー、淹れてきたんです。起きたと思って。目が醒めますよ」
石田が勉強机におぼんを置いた時になって、鞘師はようやく起き上がった。
コーヒーだと言われたら、急に“いいにおい”だと感じて。現金なものだ。
「先に砂糖とミルク入れてきちゃったから、味が合わなかったらすいません」
石田は断りを入れてから、ベッドサイドに座っている鞘師に白いカップを渡す。
鞘師はそれを両手で厳かに受け取り、独特の間を持たせた後、縁に口をつけた。
- 137 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 20:48
- 「あち」
「あ、熱かった?」
温度までは気がまわっていなくて、と石田は慌てて鞘師のカップを取り返そうとしたが、
鞘師は首を小さく振って平気だという意志をあらわす。
「いい。おかげで目醒めたよ」
「……なら良かった。それ、ハワイツアーの時買ったコナコーヒーなんです」
「じゃあお土産じゃないの? 飲んでいいの?」
「あ、遠慮しないでください。私もなんかノリで買っちゃった感じで」
「そうなんだ」
「実際飲んでみたら苦くって、いつも砂糖ガンガン入れてて。
飲みきるのちょっと大変だぞーみたいな」
言いながら石田は、神妙な顔をして自分の分を一口啜った。
うん、これは飲める、などと呟いている。
尋ねてみたら、今回は砂糖を大匙三杯入れた、とのこと。
「ええっ」
「ミルクは二杯」
「ええー……」
「……そんな引かないでくださいよ」
「……えらい甘そうな唇?」
「そういうのはもっと要らない」
“え”のつく古今東西じゃないんだから、としっかり突っ込まれた。
- 138 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 20:50
- 最初は引いたけれどだんだん好奇心がわいてきたので、石田のカップをせがむ。
「ねえ、ちょっとちょっと一口」
ほんと甘いですよ? とまた断りを入れて、石田はカップを自分のと交換してくれた。
飲んでみたが、コーヒー味の飴を一度に何個か口に入れたら近いかも、
という感想を持った。
もっとも上澄みあたりを口に含んだだけなので、底の方はとんでもない甘さを
秘めているのだろう。
「鞘師さん、もしよかったら、コーヒーいくつか持って帰りませんか?」
「飲みきれないの? でもウチコーヒー淹れるやつ持ってないよ」
「それは大丈夫です。一杯ずつ飲み切りの、お湯だけ入れればいいのなんで」
こう、紙に入ってて……
石田が指で空中に正方形を描き、鞘師がそれに、ティーバッグか、と問えば、
惜しい! と指を鳴らす。
「パカッと開いてカップにのっけるやつですよ」
「あー、わかった。なんとなく」
そう言いながら、鞘師は立ち上がって石田の傍へ近寄った。
テーブルが無いので勉強机にカップを置きに行ったのだが、すぐそこで石田に微笑まれると、
いつもの癖でつい唇に目が行ってしまう。
- 139 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 20:53
- ……唇といえば、実は今鞘師のそれには少し違和感があった。
最初の一口でやっぱり火傷をしてしまったのかもしれない。
「亜佑美ちゃんさ、熱いのは平気なの?」
「ん? あ、猫舌かってことですか?」
「そう。ウチやっぱ、さっきちょっと火傷したっぽいんだよね」
「……奇遇ですねっ」
自分もなんかちょっとそうみたいです、石田は上唇を掻いている。
「えっマジで? ひ、冷やした方がいいのかなこれ」
「いやぁ、ちょっとピリピリするくらいなんですけど、鞘師さんは?」
「ウチもそんくらい。……大丈夫だよね?」
「うん、きっと大丈夫」
そして机にカップを置いたところで、鞘師はある企みを思いつく。
椅子に座っていた石田の正面に両膝をついて、相手の左右の腕を掴んで撫でた。
「なーにしてるんですかぁ?」
「甘えてるんですう」
「しょうがないなぁ」
すると石田が保護者のような態度になったので、してやったり、と内心ほくそ笑む鞘師。
きっとこういうのが、互いの自然な態度に違いなかった。
石田は鞘師を見下ろしたいんだろうし、鞘師は石田の懐に潜り込んで、
ちょっと我侭を言うくらいがちょうどいい。
けれど、ほんとは見下ろしたいんでしょ、なんてとてもじゃないけど口に出せなかった。
- 140 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 20:55
- もう石田のプライドを傷つけたくない。
一度大きく傷つけてしまったことがあるから。
でも、本当はもっと親密になりたい。
「……亜佑美ちゃん、今ならキスしてくれる?」
上目遣いで尋ねると、石田は一瞬表情を強張らせた。
まだ早かったか、鞘師は後悔したがもう後には引けない。
それに、今ならあと一押しできる屁理屈もある。
「二人ともちょっと火傷してるから感覚おかしいしー、
これならいいと思うんだけどなあ?」
「……どういう理屈なのかサッパリ」
「イヒヒ、だめ?」
「…………」
いつもなら即座に返ってくるはずの『駄目です』が無くて、仕掛けたくせに鞘師は
緊張してしまった。
- 141 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 20:58
- 「……あ、ごめ」
謝ろうとしたら、石田はそのまま何も言わずに、鞘師の両目を手のひらで覆って目隠しをした。
直後、唇にも何か押し当てられて、すぐに解放される。
鞘師が視力を取り戻した時、そこには見たことのない表情の石田と、離れていく右手が見えた。
鞘師はまるで鯉のように口をパクパクさせ、あ、あ、と言葉にならない。
石田も様子が変だった。いつもなら笑って誤魔化すようなキャラクターなのに、
挙動不審な鞘師を黙って見つめている。
堪らずに目を逸らしてぎゅっと口を結んで、そうやってようやく話せるようになるまで、
時間がかかった。
顔を見られなくなった鞘師は今、石田の膝を見ている。
「……き、キスした?」
「したよ」
「そそ、そっか。イヒ、急すぎて全然わかんなかった」
「火傷のせいですよ」
そんなことはない。反論したいけど、言葉にはならず。
椅子の軋んだ音に驚いて肩を揺らし、恐る恐る顔をあげた。
姿勢を正した石田が自分を見下ろしている。
彼女はこんなに表情の読めない人物だっただろうか?
感情が表に出やすくてわかりやすいと思っていたのに、それは勘違いだったのだろうか。
- 142 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 21:01
- すこし
「こわい」
……鞘師は思わず本音を呟いてしまい、ハッとして口元をおさえた。
そうしたら、予想外に石田は笑みをこぼしたのだ。
「ふふ、そうですよ。実は怖いんですよ?」
「……あ、あのごめんね、本当にそう思ってるわけじゃなくてさ」
「いや、これも素ですから。別に傷ついてるわけじゃない」
慰めなのか髪を撫でてくれた。
手つきは優しいのに、どうしても恐れが拭えないでいる。
「あの、ずっと……遠慮とか……してたのかな」
「それは独り言ですか?」
「…………答えてくれるんなら」
「遠慮というか、距離はちょっとはかってて」
「……そうなの?」
会話を続けてみると、声の調子はいつもの石田だった。
少しずつ恐れがやわらいでいく。
「ハワイでいろいろ考えさせられてたとこだったんですよね」
「?」
急に話が飛んだ気がして、鞘師は首を捻る。
- 143 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 21:03
- 曰く。
向こうの国の人々の愛情表現はとてもオープンで、公然といちゃつくカップルを何組も
見かけたのだが、十期だけで夕食を摂りにレストランへ行った時、トイレに行ったら
とんでもない場面に遭遇した。
女子トイレに男女で入ってきた赤ら顔の白人カップルが、そのまま個室に向かっていって、
すれ違った時に男の方が
「ハァイ! ラヴリィガール! って声かけてきて。
そしたら女の方がそれに反応して超笑顔で、オゥヤスーミ! って」
酔っ払いの悪ふざけで済めばよかったのだが、場所や状況を考えると石田はゾッとして、
その場から急いで逃げた。
本当は走りたかったが、左足がうまく動かなくて、かなりもどかしかったと言う。
当然ながらこんなことはメンバーやスタッフの誰にも話すことが出来ず、
石田の心の中にしまわれることとなった。
「そ、そんなことがあったのか……」
「……今、初めて言いました」
鞘師はたまらず石田に抱きついて、なぜかわからないが一生懸命謝っている。
「鞘師さんは何も悪くないのに」
石田は苦笑しつつ、話を続けた。
- 144 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 21:06
- カップルのその後が想像できてしまうと、今度は吐き気をもよおすほどの嫌悪感に襲われた。
土地柄、恥という概念にとてつもない差があるのだとしても、日本人として、いや、
“石田亜佑美”として、許すことが出来なかった。
そして、自分は相当潔癖なのかもしれない、と思い始めた。
『亜佑美ちゃんも綺麗だね』
鞘師が石田に対してそう言ったのは、その事件の翌日。
鈴木と鞘師が結託して絶叫した時、羞恥というよりは怒りに近い感情がわいてしまった。
なぜなら、白人カップルの行動と少し似ていたからだ。
「わあああああああああ」
抱きつかれたまま鞘師が叫んだので、鳩尾あたりに声が反響してくすぐったい。
「だから、鞘師さんも鈴木さんも悪くないんですって!
でも、帰国直後に叫ばれなかったから、やっぱりあの場所のせいだったんだなって」
「そりゃあ……でも、でも綺麗だなって思ったのは本当だよ!」
「わかってますって、ありがとう」
……その後。
帰ってみれば日本で同じような場面に遭遇することは全くなくて、とても安心した。
けれどその代わりに、自分が鞘師にしでかしてしまったことは、彼らほどではないにしても
自制を欠いた行動ではなかったか、と、石田に猛省の時間が訪れる。
「そんなに遡んなくたっていいんだよ、亜佑美ちゃん……」
「そうなんですけど、やっぱり、ね」
- 145 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 21:08
- 何度も、
何時間も、
考えたが。
これは自分の中だけの問題で、鞘師が自分を嫌いにならない限り(予定では、
あの夜を越えた直後に嫌われるはずだった)、結論は出ないと思った。
「どうしてもこっちから鞘師さんのことを嫌いになんてなれない。
……私は、二人きりにならないと甘えてこれない不器用なあなたが好きです」
直後、鞘師は石田から体を離して、また最初のように腕だけ掴んで石田を見上げる。
石田はいつもの笑顔を見せて、腕を掴まれたまま椅子から立ち上がった。
導かれたように鞘師も立ち上がると、やっぱり背が高くて、自然と見上げる形になる。
それでも石田は笑みを絶やさずに、
「何かの“熱”の力を借りないと仲が深まらないのも、
私達らしくていいかもしれないですね」
そう言って、初めて鞘師を抱きしめた。
- 146 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 21:10
- 仕事を終えて一人部屋に戻った鞘師は、石田から返してもらったお面と
コーヒーの入った袋を鞄から取り出し、それを開けた。
――お面も一緒に入れちゃうんですか?
――うん、それ好きなんだ
あの時と同じ香りと、たった数時間前の出来事がそこから飛び出す。
急いでキッチンに行って、沸騰したお湯を使ってコーヒーを淹れた。
「あっツ!」
慌てていたので、ブラックのまま口をつけたコーヒーは想像以上に熱く、
鞘師は今度こそ火傷の危険性を感じて、すぐさま冷凍庫の氷を取って唇にあてた。
- 147 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 21:11
- >>132-146 行為と経緯
- 148 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 21:15
- レスありがとうございます。
>>130
脳内補完、ヨロ〜↑><
>>131
会話に行き詰まった時にだいだい三パターン思い浮かぶので、
それを逆手に取ってみました。
笑い声はほんと、たまに「逃げてるな〜」と思うのですが、
存分に活用させていただいております。
>>128
お前の発言はほんっとに信用できないな!
- 149 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 21:16
-
- 150 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/20(木) 22:45
- うおおおおおおおおおおついに!!!
おめでとうさやし!
素敵です!これからもっとイチャイチャしたのが見れると思うと困りますね←
- 151 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/21(金) 00:13
- ( *´Д`)
- 152 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/21(金) 15:29
- 石田の最後のフレーズに「うおぉぉ」ってなった
熱いねぇまったく
- 153 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/23(日) 23:11
- モーニングコーヒー(Saya Ishi Ver.)
- 154 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/23(日) 23:13
- 最初のアラームを寝ながら止め、
二回目のアラームも寝ながら止め、
三回目のアラームは少し苛立ちながら止めて。
四回目は無いから、ここからが時間と睡魔との勝負。
……の、はずだったのだが、iPhoneから突然音が鳴った。
初めて聴くコール音だったので、違和感に気付いて鞘師は仰向けのままディスプレイを
確認しようとする。
起きたばかりで腕に力が入らず、案の定顔面に端末が落ちてきた。
「ぅぶっ」
鼻を直撃したiPhoneは、それから更に転がって右の頬にぺたりと貼り付いて止まった。
スピーカーが耳に近くなったせいで知らない音の主張が強くなって、
鼻を手でおさえながら眉間に皺を寄せてしまう。
が、端末を頬から剥がして再度画面を確認した鞘師は、まるでどこかにスイッチが
入ったかのように飛び起きて、
「もしもしっ」
電話を取った。
「……あ、もう起きてたんですね」
落ち着いた石田の声が耳に入ると、慌てて出てしまったのが急に恥ずかしくなる。
「……ふ、ふはっ、ははは、当然ですよ」
「あれぇ、なんか焦ってます?」
「いやいや全然ぜんぜん」
「直前に怖い夢でも見てたとか」
「無い無い無い無い」
実際はもっと情けない目に遭っていたのだった。
「で、本題ですけども、大丈夫なら今からそっち行きますね?」
「うん」
「じゃあ、また後で」
「はーい、じゃねー」
通話を切って、ホッと一息。
- 155 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/23(日) 23:16
- 福岡のホテルで一人朝を迎えた、今日……から少し遡る。
昨晩のことだ。
例のコーヒーを二人とも荷物の中に入れていたということをお互い初めて知り、
ここは当然“モーニングコーヒー”の流れでしょう、という話になった。
「鞘師さん、明日何時に起きる予定ですか? ついでだしコールも」
「えっ、起こしてくれんの? マジで?」
「どっちかの部屋行くんなら、私が行くことにすればちょうどいいですよね」
「うわあーありがたやぁ〜。
ウチまだ朝弱いから、亜佑美ちゃんが起こしてくれるってんなら
めっちゃ安心して眠れる!」
「その代わり、行くまでにお湯沸かしといてくださいね? すぐ飲めるように」
「モチロン、任せたまえ」
「あ〜、急に強気になって。ふふ、かわいいところ見つけました」
上目遣いでそんなことを言われ、鞘師は思わず目を逸らしてしまった。
四回目の音は、そんな“モーニングコール”専用着信音として、
寝る前に鞘師自身が設定し直したものだった。
用心して普段の音と違うものに変えておいたのである。
以後、それは石田専用着信音として定着することとなる。
- 156 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/23(日) 23:18
- 鞘師は湯を沸かそうとしてテーブルのポットに目をやった。
すると、奥の鏡に寝起きの甚平姿の自分が映った。
腰紐が取れかかって、髪はぐちゃぐちゃで、戦に敗れた侍みたいだ。
まず身だしなみ! そう思って乱れを整えていると、すぐに石田が来てしまった。
「……あれぇ、鞘師さん? お湯は?」
「あっ、あのさっ」
鞘師は慌てて言い訳を始める。
石田はそんな鞘師を上から下まで眺めたあと、
「……まず髪を梳かしてあげるのが先だな」
と、顎に手をやりながら呟いた。
それから、お湯を沸かす間だけでもやりましょう、と宣言されて、
あれよあれよという間に鏡の前に座らされ、
「ちょっとブラシお通ししまーす」
朝から美容院ごっこみたいなことになってしまった。
「……でですねー? この後コーヒーをお出しするんですけどォ、
お砂糖とミルクはおひとつずつでよろしかったデスカー?」
「ぶっ」
石田の美容師のモノマネがおかしくて、鞘師はつい噴き出してしまう。
「こ、ここのお店、朝から超サービスいいですね」
「いやーんアリガトウゴザイマスぅ、……へへっ」
- 157 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/23(日) 23:20
- ポットを載せた機械から沸騰を告げる音が鳴ってごっこ遊びも終わり、
一日の始まりにして本日のお二人のメインイベント、モーニングコーヒー。
今度は火傷が怖いので、カップを持ったまま少しの待ち時間を設けた。
「ウチら実行に移したから、いつこの曲が来ても高いレベルでこなせそうじゃない?」
髪を梳かしてもらって上機嫌の鞘師が調子にのってそんなことを言うと、
「フッ、当然」
石田は高飛車な態度で返す。
「……負けねーぞ!」
鞘師が闘志を剥き出しにすると、
「こっちだって負けねーぞ!」
石田はやっぱり対抗してくる。
「アッハッハ! な、なに朝から熱血ぶりを披露してんだろ!?」
「えっへへ、お互い元気ですねっ! まったく」
「……そろそろいいかな?」
「……飲んでみましょっか」
そして、恐る恐る同時にコーヒーを啜って、ふうと息をつく二人だった。
- 158 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/23(日) 23:21
- >>153-157 モーニングコーヒー(Saya Ishi Ver.)
- 159 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/23(日) 23:22
- 昨日は一人部屋だったそうなので。
レスありがとうございます。
>>150
もうすでに困っています……
イチャイチャ難しい。
>>151
ノリ*´Д´リ
>>152
石田も鞘師にほだされて、だんだんキザに……?
なっていくかもしれません。
- 160 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/23(日) 23:23
-
- 161 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/24(月) 01:00
- あぁ何て素敵な朝の光景・・・
ヤシ子には早く何かの拍子に「あゆみお姉ちゃん」って言ってもらいたいですね><
そしてあゆみお姉ちゃんには何かの拍子に感情が高まって
うっかりヤシ子に抱きついてそのままギュってしてもらいたいですねっ><
- 162 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/09/26(水) 13:33
- 行為と経緯を読んだ後にフリースレと情状の鞘石、このスレを最初から読み直しました。
やっぱりとても良かったです。
これからどの様なテンポで二人が絡んで行くのかとても楽しみになりました!
とりあえず主導権の取り合いになりそうですがw作者のみぞ知るってやつですね。
スレタイはサブタイを見越してつけてたんですか?ちょっと感動しました。
行為と経緯を初めて読んだ時、石田の真情の吐露と在るが儘の自分を受け入れた様に少しだけ泣いてしまったのは秘密だw
- 163 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/08(月) 18:22
- CRAZY ABOUT YOU
- 164 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/08(月) 18:23
- おはよう、と挨拶をしたら、いつもなら即座に返してくれるのに、
この日の石田は反応するのが少し遅かったし、表情も暗かった。
毎日を過ごしていれば、誰にだって機嫌の悪い日もあるだろう。
これまでの鞘師ならそう思っていたが、今は特別な相手のことだ。
遠まわしに、具合悪いの? と尋ねてみたが、いえ別に、としか言われなかった。
二人だけのダンスレッスンが始まるまで気にかけていたが、いざそれが始まると、
フリを覚えるための集中と一緒に踊る楽しさで、そのこともすっかり頭から消え去っていた。
気が付けば石田の表情もいつもの明るさを取り戻していたから、本人からその話題を
持ちかけられなければ、とても大事なことを取り逃がす所だったな、
と後になって鞘師は思う。
「楽しかったですねっ」
スタジオの隅っこに座り込んで汗を拭いていると、隣で同じように座っていた石田が
満面の笑みで話しかけてくる。
「うん、めっちゃ楽しかったぁ」
週末のライブで一緒の曲をやると決まった時は緊張の方が強かったが、
一通りフリを入れてみると意識も変わって、今は本番がとても楽しみだ。
でも明日になればまた緊張感が出てくるかもしれないね、などと話していると、
顔にタオルをあてていた石田が不意に
「今日が鞘師さんとのレッスンで良かった、ホント」
とこぼした。
- 165 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/08(月) 18:25
- 「ん?」
「……へへっ」
「あ、なに、何だよぅ」
「ちょっとね、ちょっと昨日ヤなことがあったもんで」
「そうなんだ」
さて。
聞いてほしいのかな、と感じたので、鞘師は続けて
「で、どうしたぃ」
と様子を窺う。
「いやー実を言うとね、品の無いことを言われちゃって」
耳慣れない言葉だったので、思わず汗を拭く手が止まってしまった。
仕事の話かと問えば、そうだ、と答えが返ってくる。
背後を気にかけながら小声で、スタッフさん? と問えば、そうじゃない、と返ってきた。
「……だれ?」
「……ミズショーの男」
また耳慣れない言葉を聞いて、しかし、男と言われて察知できた。
それで品が無いとくれば、答えはだいたい決まってくる。
- 166 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/08(月) 18:26
- 「知らないかもしれないけど、生放送出てたんですよ」
「あ、知ってる。香音ちゃんとフクちゃんとでしょ」
「そう。そん時に視聴者生電話があって」
「あー……それで、下品なことを」
「ホンット! 信じられないと思った」
「……でもさ、その場で怒ったりはしてないよね?」
鞘師が石田の方を向いて、先輩後輩を意識しながら尋ねると
「そりゃあもちろん」
と言うが、目も合わせずどこか拗ねた口調だった。
石田は自分が潔癖であるという自覚があるし、鞘師もそれを本人の口から聞いている。
その場はグッと堪えて笑顔で対応したし、周りの助けもあったからやり過ごすことが
できたものの、仕事を終えて帰宅する段になってふつふつと怒りがわいて来て、
今日レッスンに来るまで最悪の気分を引き摺っていたそうだ。
そういうことか、と、会った時の違和感とこの理由が結びつく。
「でも今はもうどーでもいいんですけどねっ」
タオルを畳んで鞄に仕舞いながら吐き捨てる石田。
すると鞘師は咄嗟に
「待って、もうちょっとちゃんと拭いてあげるから」
そのタオルを少し強引に奪って、石田の頭に被せて髪を乱さないように優しくたたいた。
- 167 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/08(月) 18:28
- 「えーなんですか、……もしかして慰めてくれてます?」
「いや別に」
「えー嘘だ、鞘師さんこんなことする人?」
「する人だし。
亜佑美ちゃん話に夢中で、髪まだ濡れてたよ。
ウチは特別な人に風邪引いてほしくないから、するんだよ」
「えー……」
「またキザって言う?」
「えーやだなー、なんかずるいよ…………目も濡れそう」
少し俯いてしまった石田を見て、鞘師は床に手をつき、後輩の背中側にまわった。
そうすれば、小柄な彼女はおそらく自分の影に隠れる。
「亜佑美ちゃん」
「……」
「ちゃんと乾かしてから帰ろ」
「……はい」
タオルの端を掴んだ石田が、その手を目元に添えるのを背後から見て。
また少し小さくなった背中を抱きしめたくなる衝動を、鞘師は必死に抑えていた。
- 168 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/08(月) 18:28
- >>163-167 CRAZY ABOUT YOU
- 169 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/08(月) 18:29
- レスありがとうございます。
>>161
色気のあるけだるい朝とはかけ離れていますが、ってまだ中高生でした><
……どうなるんでしょう!
今のところ石田の方が上に立ちたくて焦って姉ぶって失敗するイメージがw
そして先に大人になる鞘師、のイメージがあります。
>>162
振り返っていただいたんですね! それなりに自分も高速で振り返ってはいるんですが、
実際にそう言われると熱くなります。
おたずねの件ですが、当然最初から決めていたんですよ、と威張りたいんだけど
実は違いまして、スレ立てて三つくらい更新した頃の寝る前です[ひらめき電球]
自分の文章には情緒が足りないと思っているので、最後の一文がとっても嬉しい。
- 170 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/08(月) 18:29
-
- 171 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/10(水) 22:42
- 若きサヤシリホの悩み
- 172 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/10(水) 22:42
- 嗚呼、出来るならば、ぜひ一度この手で触れてみたい。
この目の前にあるミルキー飴のような、あの……
石田の臍に。
- 173 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/10(水) 22:44
- 親密になって、じゃれ合うことが増えた。
もともと唇が好きだったから、二人きりの時はキスもするし、指先だけで触れてみたりもする。
笑顔で触らせてくれるので、時々調子に乗ってあちこちに手を伸ばしてみる。
だからこの夏は、私服で露出していた肌の、ほとんどの部分に触れることができた。
石田は筋肉質なので、正直言ってどこも弾力がありすぎて、某同期のようなふっくらしっとり感は
得られないのだが、それでも鞘師はいちいち幸せになっていた。
ちょっかいをかける度に聞いた「こらぁ」という、甘い声を思い出すだけでも……
「……鞘師しゃーん! ざざぁー!」
テーブルに両肘をついていた鞘師の目の前で、カラフルな粒がたくさん落下していく。
カラカラココカカカッ、ビー玉が硬いところに落とされた時のような大きい音にびっくりして、
鞘師は思わず下を向いた。
落ちてきたのは個包装された飴たちで、包み紙はとても馴染みのあるデザインだった。
白地にパステルカラーのピンクと水色が散りばめられている。
- 174 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/10(水) 22:46
- 「おおだまミルキー! 食べてくださーい!」
「……まーちゃんありがと。一個だけもらうね」
「二個でも三個でも四個でも食べてくださいっ!」
悪気のない押し売りを笑顔でかわしつつ、鞘師は飴をひとつだけ口に入れた。
口内に優しい甘みが広がっていく。
「……んまい」
思わず呟いてしまった。
そして、ひとつだけ、というのが急に惜しくなった。
「あ、やっぱ二個くらい持って帰ってもいい?」
左上を向いて尋ねると、そこから鞘師を見下ろしていた佐藤は、
大袈裟に両手をスッと前に差し出しながら
「どーぞ!」
と答えてくれた。
でも、礼を述べたらどこかに行ってしまった。
- 175 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/10(水) 22:48
- 「……おいおい、余りはどうすんだよ」
独り言を言いながら飴をひとつ摘み上げて、なんとなくその包み紙を開いて見る。
直径二センチ程度の乳白色のアメには、よく見ると手で丸めたような皺があった。
この大きさといい……
いろんな角度から観察しているうちに、脳裏に蘇る苦い記憶。
ホテルが同室になった日の朝に、着替えていた石田の、ちょっと個性的だった臍の形に
目を奪われてしまった鞘師は、好奇心に負けてそれに触れようとしたことがある。
すると、その手を強く叩かれた。
驚いて手を引っ込め、思わず石田の表情を窺う。
無表情で、目が合ってもこちらを睨むわけでもなく、艶やかな唇が言葉を発することもない。
母親から躾けられたような気持ちになると同時に、さあっと血の気が引いていくのを感じた。
ごめんなさい、と一言謝って、すぐに全く関係のない話題をこちらから振った。
石田はその話題には乗ってくれたものの、直前の出来事に関しては一切触れてこなかった。
以来それはタブーのひとつとして、鞘師の心に深く刻まれた……
- 176 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/10(水) 22:50
- コンプレックスだったのかもしれない。弱いところだったのかもしれない。
本当のところはわからない。
純粋に、どんな感触なのかを知りたかっただけ。
石田のことなら何でも知りたかっただけ。
けれど、彼女にとっては、知ってほしくないことのひとつだったみたいだ。
しょうがない。しょうがない。
でも。でもでも。
気が付くと鞘師は、飴を人差し指と親指の腹で転がしていた。
いったん包みから出したものを戻すのも気が引けてしまって、
まだ口の中に飴が残っているにもかかわらず、えいっとそれを口の中に放り込んだ。
……甘すぎてちょっと吐き気がした。
- 177 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/10(水) 22:51
- >>171-176 若きサヤシリホの悩み
- 178 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/10(水) 22:54
- ちょうど書ききった頃にちょっとした偶然が起こりまして。べっこう飴……
このワクテカチャンス逃すかーい!
- 179 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/10(水) 22:54
-
- 180 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/11(木) 21:50
- ノリ*´ー´リ<だーへそとだーびるは究極と至高!
- 181 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/17(水) 13:28
- 二作品続けて読みました やっぱし鞘石好きだー
クレアバよけい見たくなりました!DVDに入らないかな…
しかしだーちゃんはどんだけ萌ポイントを持ってるんだー!
- 182 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/18(木) 20:19
- でっかい宇宙に愛がある(Saya Ishi Ver.)
- 183 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/18(木) 20:21
- いいなー海外いいなー行きたいなー
ていうかとーくに行きたいなーいいなー亜佑美ちゃんはーズー↓ルー↑イー→
グッズにコメントを書きながら、隣の鞘師が聞こえるように独り言を言っている。
石田は最初苦笑いしていたが、いい加減しつこく感じるようになってきた。
何か言わないと喋り続けられるだろう、という確信もあった。
けれど、お土産を買ってくる、なんて当たり前すぎて、かえってこっちが言いたくない。
何か特別な、鞘師の心を捉えられそうなこと……
「……あ、じゃあ、帰ってきたらどっか遠いところに連れてってあげましょうか?」
「遠いとこって? どこ?」
「それはこれから考えます。けど、そんなに言うならちゃんと決めますよ」
「っうん! 連れてってくれるならどこでもいい!」
石田の提案に、鞘師はパッと表情を輝かせてこちらを見た。
思わず心の中で拳を突き上げる石田。
「アハハ! わかりました。考えときますね」
と言いつつも、“考え”は半分くらいかたまっていた。
- 184 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/18(木) 20:23
- そんなことがあって、出国前のある日、石田はまた自室に鞘師を招いた。
年下の先輩は、ある時から部屋に来ると真っ先にベッドサイドに腰をおろすようになった。
もう定位置になっていて、時間が経つと更に奥の壁に背をもたれて両足を投げ出すのだ。
石田は幸い、鈴木ほど自分のベッドに執着がない。
何せリホックマが初めて来室した時も、そのまま一緒に昼寝をしたくらいだ(ちなみに、
寝起きのリホックマは頬にゴムの跡が付いていた)。
だから着替えずに上にあがって寝転がろうと壁にもたれようと、相手は鞘師だし一向に
構わないのだが、ある時その壁に長い髪の毛が張り付いているのを発見して、
思わず壁を叩いて笑ってしまった、と石田が告白すると、鞘師は無言で背筋を伸ばした。
「あ、別に構いませんから」
「でも、気をつける。だらしないよね」
行儀の悪さを指摘したつもりではなかったのだが、本人がこう言っている以上、
こちらが他に何か言う必要もないだろう、と思った。
ただ、こういう切り替えができるなら部屋の掃除もできそうなのにな、
とはちょっとだけ思った。
- 185 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/18(木) 20:25
- それから、目ざとい彼女(そうまるで“彼女”みたい)に、机の本立てにあった
タイ語のハンドブックを発見されて。
すると、前にも見た“拗ね鞘師”が徐々に顔を出してくる。
いいないいな、と唇を尖らせて言う鞘師を見て、ここぞとばかりに問いかけた。
「この前、何て言ったか憶えてます?」
「……ウチなんか言ったっけ」
「帰国したら、遠くに行きたいから連れて行けって」
「……あー」
ちょっと発言を脚色したにもかかわらず、言ったねえ、と鞘師は大きく頷いていた。
石田は笑いを堪えながら続ける。
「それでね、ちゃんと考えたんですよ?」
「え、ほんとに連れてってくれんの?」
「もちろん」
そして自分の定位置だった勉強机用の椅子から立ち上がり、鞘師の隣に腰をおろした。
「それも今から」
「いまから?」
「今から連れてってあげます」
「ど」
どこに、と言いかけたところで、石田はその鞘師の太腿に手を添える。
- 186 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/18(木) 20:29
- 「…………」
「あ、あの」
「遠いところに」
目を見て言うと、真意に気付いてしまった鞘師はみるみる顔を紅くさせて、
石田からも視線を逸らした。
「そ、そういうことだったん……だ……」
「……すいません、騙すつもりじゃなかったんですけど。
結構会えなくなるから、と思って」
「いやっ、んなこと思ってないよ!? ただ、び、びっくりしちゃって」
鞘師はまだ自分を見てくれない。
「じゃあ、こっち向いてください?」
「ぅ……」
すると、時間をかけてゆっくりと視線を戻す鞘師。
それをじっと見守っていた。
多少抵抗されても押し切るつもりだ。
そう思って、次に何が起こっても迫る体勢でいたら、手元にぬくもりがおりてきた。
腿に触れていた手の上から、相手が自分の手を添えてきたのだ。
軽く握られて、次の瞬間、その力が強くなる。
段階をもって気持ちを訴えかけられ、ものの見事に石田の心も掴まれてしまった。
誰が呼んだか、策師里保。
- 187 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/18(木) 20:31
- 「……どのくらい遠いとこまで行けんの」
「え? っと……空の上、いや! それよりもっと上に」
「ほんと? 話盛ってない?」
「……前はどうでした?」
少し冷静になって、ちょっと意地悪な質問を投げかけてみる。
鞘師はまた唇を突き出して、憶えてない、と突っぱねた。
「だって、結構前の話じゃん」
「でしたね。あの時はすいませんでした」
「だから! 悪いなんて思ってないって。あ、でも」
「で、でも?」
「あん時キスしてくれなかったのは、超寂しかった」
石田は慌てて、強引に鞘師の唇を奪った。
離れると甲高い声で笑われて、しまった、と悔やむがすでに遅い。
鞘師の笑いがおさまるまでにひどく汗をかいて、手元もじっとりと湿ってくるのが
わかったので、やっぱりちょっと強引にそれを引いた。
それからベッドの上に跳びのって、
「あの! ……これからは、できるだけ寂しい思いさせませんから」
と、真剣に訴える。
年下の先輩は自分の真似をして、同じようにぴょんとベッドの上に跳んだ。
……気が付くと、どういうわけかお互い正座した状態で向かい合っていた。
「ねえ、なんかあれみたいだね。お嬢さんを僕にください! みたいな」
「うーん、ちょっと違うかな」
「ぶー、ものの例えじゃんか。ノリ悪いよっ」
「だってそんなこと言いませんもん。…………里保さんを、“連れて行きます”」
そして、その、行き先は……
きっと宇宙くらい遠くまで。
- 188 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/18(木) 20:33
- ◇
「……寂しい」
「えっ!?」
「臍に触らせてくれなかった」
「そ、そっちか……!」
「期待してたのに」
「鞘師さん、お願いですから聞いてください」
「……なに。てかもう里保でいいのに」
「さっきのはノリで言っちゃったんで。
あのね、痛いんです。ここいじられると」
「えっ、そうなの!? もっと早く言ってよぉ」
「前もって言うことじゃないじゃないですかっ」
「でもそういうことなら、触んなくて良かったんだ。
危うく嫌われちゃうとこだった」
「そんな、それくらいじゃ嫌いになんてなりませんよ」
「じゃあ、どれくらいじゃ嫌われるのか教えてよ。憶えておくから」
「えー……?
教えないから、いろいろ試してみたらいいんじゃないですかぁ?」
「な、何てことを言うんだ……」
「…………へへっ」
- 189 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/18(木) 20:34
- >>182-188 でっかい宇宙に愛がある(Saya Ishi Ver.)
- 190 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/18(木) 20:34
- レスありがとうございます。
>>180
ノリ*´ー´リ<だーeyeとだー筋は崇高と芸術!
>>181
私もクレアバ観たいです……
萌えポイントはきっと鞘師が一番詳しいはず、と思います。
更新した直後のラジオで筋肉萌え披露されて笑うしかない。
いいぞもっとやれ。そして触れ。
- 191 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/18(木) 20:34
-
- 192 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/19(金) 10:23
- ( *´Д`)( *´Д`)( *´Д`)
- 193 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/20(土) 00:55
- 「◇」………「◇」!!!
- 194 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/22(月) 14:31
- 更新きてた!!
ニコ動の一件は本当ヒヤヒヤしましたね。
そっちの鞘石もこっちの鞘石も、胸が詰まる感じにキュンとさせて頂きました。
- 195 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/10/29(月) 08:43
- ほほう「里保」呼びとな
現実で聞ける日は来るだろうか
- 196 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/03(土) 13:56
- 余熱
- 197 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/03(土) 13:57
- 『そういうの……これから増えるかもしれないですよ』
石田の言葉が脳裏に甦る。
あの時とそっくりなこの感覚の正体を、今は知っている。
鞘師は枕を抱きかかえて必死に堪えていた。
とにかく火照りが引いてくれるのを待った。
助けて欲しくても、石田はここにいないどころか、日本から飛び立ってしまっている。
寂しいからこんなことになってしまったんだろうか。
不意に、最初の旅立ちから帰ってきた彼女が、自分に教えてくれたことを思い出す。
「鞘師さんが入れてくれた曲、移動中にずっと聴いてたんですよ。すごく良く眠れた」
飛行機の中でも車の中でも、空腹でイライラしている時も。
「だから、フランス行く時も絶対持って行こう! って」
……今、石田はフランスのどのあたりで何をしているのだろう。
時差のことも聞いたが、すぐに思い出せなかった。
でも、きっと宣言通りに、向こうでも聴いてくれているに違いない。
イタズラで入れたイージーリスニングを。
自分も聴かなきゃ、と急に責任感のようなものがわいてきて、鞘師はベッドサイドの
iPodを手探りで掴み、イヤホンをつけて、曲を再生した。
すると。
例えるならグツグツ煮えたぎる熱湯のようだった身体の熱も、ぬるま湯程度に
落ち着いてくれた。
やがてそれは最も心地いいあたたかさに変わり、鞘師はいつの間にか眠りに落ちていた。
- 198 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/03(土) 13:59
- 「いやー音楽って偉大だわぁ」
「精神を落ち着かせてくれるからねー」
隣で飯窪が相槌を打つ。
石田も、初めのうちは物珍しさから車窓の外を眺めていたが、それも次第に飽きてきて。
日本での宣言通り、鞘師が勝手に入れたイージーリスニングを律儀に聴いていると、
あっという間に睡魔に襲われて、たった今目覚めたところだ。
頭がすっきりと冴え、次の仕事も難なくこなせる自信を持てた。
ただ……
海外遠征で酷使し続けてきたせいか、最近ちょっとプレイヤーの本体が熱を持ってきたのが
気にかかる。
フランスは気温が低いので、今に限ってはカイロがわりになってありがたいのだが、
タイに行った時は壊れるんじゃないかと心配だった。
なるべく長く使いたいから、がんばって持って欲しい。
もし壊れたりしたら……
SDカードを入れ替えるイタズラができなくて、あの娘が拗ねちゃいそうだから。
- 199 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/03(土) 14:00
- >>196-198 余熱
- 200 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/03(土) 14:01
- ノリ*´ー´リ<200! イヒヒ
- 201 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/03(土) 14:01
- レスありがとうございます。
>>192
ノリ*´Д´リノリ*´Д´リノリ*´Д´リ
>>193
そ、そこだけ抜きdああああああああああ
>>194
罪を憎んでシュンスケを憎まず。
でも、放送終了後に石田さん壁殴ってそうだなって思ったりはしました。
>>195
川c ’∀´)<違います! 「里保さん」ですよ!
川c ’∀´)<まあ「ノリ」で! 「ノリ」で言っちゃっただけですけど!
- 202 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/03(土) 17:12
- 熱を持て余す鞘師と熱を持ったプレーヤー
粋な対比で素敵です
- 203 名前:& ◆xX14F2N4nU 投稿日:2012/11/05(月) 20:32
- 純粋ですねえ〜〜。鞘師が悶々とした感じを味わってるのが可愛いです。
- 204 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/06(火) 20:25
- 寒さ知らず
- 205 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/06(火) 20:27
- 部屋の中も冷え込む季節になってきた。
二人はひとつのベッドで暖を取っていたが、退屈に耐えかねてそこから
抜け出したのは石田だった。
鞘師は空いてしまった一人分の隙間を即座に埋めて、冷たい空気を遮断しつつ、
「どーしたの」
と石田の背中に尋ねる。
「えー、じっとしてるのに飽きちゃって」
「そっかー」
「飽きません?」
「ぜんぜん」
そうですかあ、なんとなく残念そうに石田は言って、部屋の隅に置いてあった
フローリングワイパーを取って床を拭き始めた。
「掃除好き?」
「好きってほどじゃないけど、人並みにやりますよ」
「今度ウチの部屋も掃除しに来てよ」
「それは自分でやってください」
「ぶー」
見ていなくても、不満を漏らす鞘師の顔は想像に難くない。
石田は笑みを漏らしながらも掃除を続けた。
「……寒くなーい?」
「動いてればそんなでもないですよー」
「ふーん」
- 206 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/06(火) 20:29
- ふーん、ふーん、ふんふん、ふふーん。
鞘師の相槌にのっかって、石田は鼻歌を歌い始める。
だんだんと気分も良くなって、ワイパーを持ったままちょっとジャンプしてみたり。
とても楽しそうだ。
「踊っちゃってんの」
「なんかノッてきちゃってっ」
「イヒヒ、ライブより楽しそうだよ亜佑美ちゃん」
「楽しいですよー鞘師さんも踊りません?」
「えー」
ちゃっ、ワイパーの部品のどこかが音を立てて、石田はベッドの鞘師に向けて
手を差し伸べてくる。
「ぜひ、お相手を」
……そんな言葉、自分に向けちゃっていいんだろうか。
鞘師は急に照れくさくなって、いいよぉ、と拒否して布団に潜り込んでしまう。
「あっ、フラれた……悲しすぎる」
『いや、そういうんじゃ』
「じゃ出てきてくださいよ」
『寒いんだもん』
「だから踊りましょって」
『終わったら汗が引いて風邪引くじゃん』
「もー屁理屈ばっかりだなぁ。どうしたら出てきます?」
『……コーヒー飲みたい』
「はいはい」
母親みたいな相槌を打って、石田は部屋を出て行った。
- 207 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/06(火) 20:31
- 一人になった鞘師は、あれだけ愛していたベッドから起き上がり、更にそこから降りて、
勉強机と壁の隙間から小さな折り畳みのテーブルを引き出す。
「スマートフォンが便利すぎて!」
思わずネットショッピングで衝動買いです、と彼女が言っていた。
けれど、きっと自分のために違いない、と鞘師は思った。
いつかお返ししなければ、とも。
そうだ、ストーブとか買っちゃおうかな。
小さいのならそんなに高くない、はず。
そしたら一緒に踊れるし。
テーブルの足を広げながら、そんなことを思いつく。
仕事で出会った二人だけど。
仕事で踊っている二人だけど。
そうじゃなく純粋に、ただ相手のためだけに。
そういうダンスを、まだしたことがなかった。
- 208 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/06(火) 20:34
- そう思うと、照れくさくて石田の申し出を断ったのは失敗だった。
座布団をセッティングしながら強く決心。買おう、ストーブ絶対買おう!
と拳を固めたところに、石田が戻ってくる。
「あ、ありがとうございます」
目の前にテーブルが据えられていることに礼を述べつつ、おぼんごとカップをその上へ。
お互い座布団に座って石田はさっそくカップを持つが、鞘師はその彼女に
「ねえねえ、電気のストーブ欲しくない?」
と尋ねる。
今まさに飲もうとしていた動作をぴたりと止め、石田は
「すとーぶ」
と繰り返した。
「やっぱ寒いもん。ウチお金出すから置こうよ」
「えっ、本気で言ってるんですか?」
「もちろんだ」
「いやいや、ありますよちゃんと」
「えっ」
「まだ出してないだけで、ちゃんとありますから」
「あ、そーなの?」
「はい、実家から持ってきたやつが」
「な、なんだぁ、イヒ、恥ずかしい」
「もうちょっとしたら出すつもりで」
「うんわかった、もういい!」
あっという間に寒さ知らずになってしまった。主に顔が。
鞘師は慌てて、両手で頬をぴたぴた叩いてなんとか熱を散らそうとする。
それを見た石田は、咄嗟にカップを置いて両肩を震わせた。
- 209 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/06(火) 20:36
- >>204-208 寒さ知らず
- 210 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/06(火) 20:37
- レスありがとうございます。
>>202
前スレからの成り行きで熱に関することを扱うようになりましたが、
考えるのも楽しく、またそれがうまく嵌ると更に嬉しいものです。
>>203
鞘師さんには常に戸惑っていて欲しいなーと勝手に思っています。
(ただし、実際はドヤッていることが多い)
- 211 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/06(火) 20:37
-
- 212 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/09(金) 11:29
- 冒頭の振りだけでもおなかいっぱいでした><
- 213 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/13(火) 22:56
- 「み」
- 214 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/13(火) 22:58
- 石田が握手会にネコミミカチューシャをつけていくと知った鞘師は、
自分も何か一捻りした出で立ちでその場に臨もうと案を練っていた。
そうは言ってもバランスというものがある。
ちょっと目立つヘアアクセサリーをつけたりしたら、せっかくのネコミミがかすんで、
「鞘師さんがそんなのつけてくるから目立てなかったんですよっ!?」
なんて後輩に責められかねない。
基本、先輩をたてる石田でも、目立つことに関しては手厳しい気がする。
「あーどうする、うーどうする」
散らかった部屋のど真ん中をぐるぐる歩き回りながら鞘師は考えた。
もういっそ尻尾でもつけようかコスプレみたいだけど、と発想が斜め上にいってしまう。
「いやダメだ駄目だ」
ネコミミでギリギリなのに、尻尾なんかつけるのは、どちらかというと握手する
ファンの心理に近いじゃないか。
だから、それは置いておいて……
ひとまず髪に何かつけるのは諦めよう。
アクセサリーなら他にもある。と、鏡の前で持っているネックレスを片っ端から
胸元にあててみた。
残念ながらネコミミに対抗できそうな主張の強いものは見つからなかった。
- 215 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/13(火) 23:01
- 思い通りにならなかったことが悔しくて
「ネコミミネコミミ……み……み、みみ、みーっ!」
子猫っぽく鳴きながら髪をわしゃわしゃしていると、
「みー……あ、“三つ編み”」
天啓がおりてきた。
ただ下ろしているよりは目立つし、それでいてアクセサリーよりナチュラルでいい。
これだ、と思わず手を叩き、鞘師はすぐさま石田にメールを送ることにする。
この上髪型がかぶったら台無しなので、先回りしておこうと考えたのだ。
三つ編みで行くとだけ書いてみて、素っ気無い気がして絵文字をつけて送った。
石田からは、三つ編みいいですよね! とこちらを持ち上げる言葉が返ってくる。
まさかきっかけがネコミミカチューシャだなんて思いもよらないだろう。
もし聞かれたら理由を話すつもりだが、基本的には内緒にしておこうと思った。
石田のことだから、最初から話すと調子に乗っていじられる。
意識してるんですね、なんて含み笑いで自分を小突いてくるのが容易に想像できてしまった。
……正直、見てみたいし小突かれてみたい、気もする。
やっぱり、まったく気付かれないのも寂しいものだ。
当日になったら、それとなくヒントになりそうなことを言ってみようか……
- 216 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/13(火) 23:03
- 同期みたいに単純にお揃いにして思いを共有できないのは歯痒いけれど、
いっぱい考えて真相はこうだった、みたいな連想ゲーム。
気付かれたら嬉しいけれど恥ずかしい、連想ゲーム。
それを駆け引きというのだ、ということを、鞘師はまだ知らない。
- 217 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/13(火) 23:03
- >>213-216 「み」
- 218 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/13(火) 23:04
- >>212
レスありがとうございます。
念のため言っておきますが、ただ暖を取っていただけですからね><
でも手段や方法については言及しません><
- 219 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/13(火) 23:06
- お知らせです。
今更新をもって、このスレでの投稿を終了したいと思います。
>>1に「予定」と書いたものの、蓋を開けてみればほぼ特定CPメインになってしまいました。
興味のある関係は他にもあるのですが、リアルな出来事に即して思いついたものを
ガンガン投下していったら、こういう結果になりました。
ちょっとした思い出。
>>75-80を書いた直後に顔面流血したり、>>107-117の後に階段踏み外して捻挫したりしました。
怪我に関する話は書くべきじゃないな、と思わせてくれました。
今後も草板で短編スレをたてたいなーという願望はありますので、その際にはこちらにも
アナウンスしようと考えております。
例によって何かひゃっっほーい♪( ´θ`)ノなことが起きたら、割と早いうちに
お会いできるかもしれません。
それでは……
お付き合いいただきありがとうございました。
- 220 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/14(水) 02:07
- お疲れ様でした。とても楽しく拝見させて頂きました。
いろんな石鞘が見れて楽しかったです。
これからもいろいろな作品でseekを盛り上げていって下さい!
期待しています!!ありがとうございました。
- 221 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/18(日) 13:08
- 更新されてるかな?と何度も足を運ぶスレでした
作者さんの鞘石作品の大ファンなので
更新情報や新スレ待ってます!!!
- 222 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/23(金) 15:44
- 脱稿お疲れ様でした
楽しみにしていた更新が止まるのは寂しいですが
また別スレで拝読出来るのを楽しみにしてます!
- 223 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/11/29(木) 21:09
- レスありがとうございます。
新スレをたてました。
流動マーブル
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