真野ちゃんが行く!!
1 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:38
そんなこんなで今日もまた

真野ちゃんは行く!!
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:38
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:39
01 マノソング
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:39
全国的に梅雨明け宣言が出されていた、そんな初夏の快晴の日差しの下。
真野ちゃんは走っていた。
マノシャツをまくりあげ。マノスカートをたくしあげ。全力で走っていた。
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:39
一方その頃、真野ちゃんのマネージャーさんは待っていた。
クーラーがガンガンに効いた涼しいCDショップの片隅で待っていた。
体も寒いが心も寒い。今はただ、店の関係者の視線が痛かった。
マネージャーさんは物陰に隠れるようにして店の隅で小さくなっていたが、
それでも店の担当者は目ざとく見つけて声をかけてきた。

「マネージャーさーん。本当に大丈夫なの? 間に合うの?」
「大丈夫です・・・・・さっき携帯から連絡ありましたし・・・・・」
「まあ、こっちは時間に間に合えばそれでいいんだけどさあ」
「すみません・・・・・・ホントもう・・・・・」

マネージャーは首から下げたカードホルダーをいじいじといじる。
そこには大きな字で印刷された『真野恵里菜』という文字があった。
そしてその下には下手な字で手書きされた『マネティ(見習い)』という文字が。

落書きなどという可愛い行為が許されるのは何歳までだろうか。
いつまでだ。会社的にはいつまで我慢すれば。マネティは頭の中でぼんやりと考えた。
ああ、ダメだ。安倍なつみは29歳だ。真野よりも10歳も年上なのだ。

すると自分はあと10年以上も、こんなくだらない悪戯を我慢しなければならないのだろうか。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:39
真野ちゃんは走る。
「タクシーを使え」というマネティの指示は無視した。
東京の街並みはやたらと信号が多い。道路も信じられないくらい混み合っている。

真野ちゃんは信号を無視し、渋滞する車の列の間を縫って、
鋭く低空飛行をする燕のように、軽やかに走り続ける。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:39
CDショップの中は既にインストアライブの準備が整っていた。
店のスタッフの手によって機材の音合わせも完璧に済まされている。
狭い店内に並べられたパイプ椅子は既に真野ちゃんのファンの人達で埋まっている。
椅子に座りきれない人達は立ち見だ。
そういった人達は皆、既に真野ちゃんの最新シングルを購入している。
中には10枚、20枚と大人買いしてくれているキチガ・・・・もとい熱心なファンもいる。

「インストアライブは中止でーす」とは口が裂けても言えない。

IDカードへの落書きくらいなら笑って済ませるが、仕事に穴を空けるとなれば話は別だ。
そんなことはあの安倍なつみや藤本美貴ですらやったことがないはず・・・・・・
あれ? あったっけ? えーっと。どうだったっけ。
盗作騒動のときは。岩盤浴騒動のときは。

マネティは決して高性能ではない脳味噌の中身をひっかきまわす。
過去の記憶を探るのは一種の現実逃避だったが、
そんなことをしても今のこの窮境を救ってくれるような考えは何一つ浮かばなかった。
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:40
真野ちゃんは走る。
陽炎がゆらめく炎天下の街並みを全力で駆け抜ける。
まるでポカリスエットのCMのワンシーンのようだった。

肩がぶつかった小学生に向かってガンを飛ばす真野ちゃんの表情を除いては。
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:40
いよいよインストアライブが始まる時間となった。
ステージの中央には真野ちゃんのために設置されたキーボードが置かれている。
そういえばあの子は今でもきちんと楽器の練習をしているのだろうか?
マネティには楽器演奏の専門的な知識はない。
真野ちゃんがどれくらい上手くなっているのかどうか、イマイチよくわからなかった。

いや。下手でもいい。なんでもいい。来てくれればそれでいい。
ていうかどうして遅刻なんだ。まさか男か。あれだけ可愛ければ男の一人や二人。
いや真野ちゃんに限ってそんなことはないとも言いきれないしあの子はでも。
そういう時に比較対象としてマネティの心に浮かんでしまうのは、いつだって藤本美貴だった。

ああ、やっぱりもっと厳しく躾けておけば。マネティは悔いる。
でも今はもう「美勇伝送りにするぞ」という脅し文句は使えなくなったし。
「スマイレージのバックダンサーをさせるぞ」と言おうとしたことはあったけど
「スマイ」まで言ったところですげえガン飛ばされて黙らされたし。
あんな怒らなくても。真野も昔はあんなに可愛いかったのに。いや今も可愛いけど。

マネティが真野ちゃんとの楽しい時間の記憶に浸っている間にも時間は進む。
司会のお姉さんは滞りなくイベントを進行させていく。
ああ、ハロプロじゃないタレントの人ってどうしてこんなにも司会進行が上手いんだろう?
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:40
真野ちゃんはついにCDショップが入っているビルの前に到着する。
20階建のビルのエレベーターの前には黒山の人だかり。

真野ちゃんは階段を駆け上る。
まるで地下アイドル界のスターへの階段を駆け上るかのごとく軽やかに。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:40
「それでは真野ちゃんの登場を願って、ファンの皆さんで真野コールを・・・・」

さすがに司会の人もそろそろ時間をつなぐのが難しくなってきたようだ。
マネティはある覚悟を決めようとしていた。
おそらくこれをやってしまったら会社からは首を言い渡されるだろう。
だが。しかし。ファンの期待を裏切るわけにはいなかない。
もし真野が到着しなかったら。

あたしが歌う。

新曲は完全に頭の中に入っていた。歌おうと思えば歌えるはずだ。
あたしだってツイッターとかでファンの間ではそこそこ有名なはず。
最悪の場合、あたしの歌で引っ張るだけ引っ張って「続きはツイッターで!」とやれば。

「真野ちゃん! 真野ちゃん! 真野ちゃん! 真野ちゃん!」

ファンの大歓声を前にしてマネティは完全に冷静さを失っていた。理性を失っていた。
人間は死期を悟った時にそれまでの人生が走馬灯のように流れるという。
マネティの頭にそのとき浮かんだのは、
なぜか真野恵里菜の歌ではなくプッチモニVの歌だった。

パラピラポラポラッポ ポラパラピレポラッポ パラピラポラポラッポ
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:40
真野ちゃんはついにCDショップの関係者入口にたどり着く。
猛ダッシュで廊下を駆け抜けると、奥の扉の向こうからファンの声援が聞こえた。

「真野ちゃん! 真野ちゃん! 真野ちゃん! 真野ちゃん!」

汗だくの真野ちゃんは、無邪気に遊ぶイルカのように飛躍し、扉を蹴破った。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:41
もうこれ以上ファンを待たせるわけにはいかない。
マネティは意を決してステージに駆け上がった。
ファンの真野コールが一瞬止まる。

おいおいあいつ誰? なに? 関係者の人? なにするつもり?
あれってもしかしてマネティじゃない? えー、あの人が?
でもなんで? ていうか真野ちゃん出てくるの遅くない?

ファンのざわめきをマネティは手で制する。
司会に向かって思わせぶりな目配せをしながら、マネティはマイクで語り出した。
「実は今回の新曲はですね、一つの趣向として・・・・・・」

マネティがそこまで言った瞬間、奥の扉を蹴破って真野ちゃんが飛び出てくる。
真野ちゃんに思いっ切り蹴り飛ばされたマネティは観客席に頭からダイブした。
主役の登場を待ちわびていたかのように曲のイントロが流れ出す。
その一番美味しい瞬間を司会は見逃さなかった。

「では歌って頂きましょう! 真野恵里菜さんの新曲で・・・・・」
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 20:41
15 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/12(木) 20:43
はい。
そういうわけで真野ちゃんのお話です。
興味がある方は最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします。
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 23:05
真野ちゃんの小説!
しょっぱなからすごいですがこれは楽しみ!
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/13(金) 04:01
やばいです。初回からめちゃくちゃ笑えます。
ネタバレになっちゃうからいえないけどツッコミどころ満載です!
続きを楽しみにさせてもらいます。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/14(土) 01:41
わろたw
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:45
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:45
02 マノハンド
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:46
マネティの体には日に日に生傷が増えていった。
なにがどうなったのかはよくわからないが、とにかく今回の新曲のイベントでは
「真野がマネージャーをぶっ飛ばして登場する」という趣向があるように思われてしまったのだ。

2回目のイベントのときはそんな趣向はなかったのだが、ファンからは痛烈なブーイングが飛んだ。
何が何やら訳がわからなかったのだが、ツイッターで確認したところ
「1回目は面白い趣向があったのに、2回目はなかった。おかしい。不公平だ」ということらしい。
仕方なしに3回目のイベントでは同じような趣向を取り入れたら大うけだった。
もっとも一番受けていたのは真野ちゃん本人だったのだが。

そんなわけで今日のイベントでも、真野ちゃんが登場する前にマネティがステージに上がる。
それだけで会場はもう大盛り上がりだった。
(真野のファンが喜んでくれるならそれでいい・・・・・あたしはどうなっても・・・・・)

そんな殊勝なことを思うマネティの頭に向かって、
ターザンロープにぶら下がって勢いよく登場した主役のマノキックが炸裂した。
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:46
「もうこんな演出やめようよ!!」

頭に包帯を巻いたマネティの訴えは切実だった。
両腕には青痣がそこかしこにできていたし、腰にはびっしりと湿布を貼っていた。
イベントはこれで終わりではない。
これからも西日本に向かって延々と続いていくのだ。

ネット上のファンの評判は上々、というかすこぶる良い。
だがマネティにはそれが怖かった。ファンの要求はどんどんと過激になる一方なのだ。

「のこぎりで上半身と下半身を切断してほしい」
「真野ちゃんに口から火を吹いてほしい」
「巨大扇風機の中に放りこんでほしい」
「蹴られ役は矢口にしてほしい」
「後藤真希を復帰させてほしい」

切断マジックは次回のイベントで採用された。火を吹くのは消防法の関係で無理だった。
巨大扇風機はかなりのスペースが必要なので無理だった。
矢口はスケジュールが埋まっていた。
後藤真希への復帰要請は相手事務所との契約が完了した後でということになった。

全部律儀に検討するこの事務所は少しおかしいんじゃないかとマネティは思った。
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:46
真野ちゃんは何も言わずにニコニコと笑っている。

新曲を歌った後は、少し休憩を挟んで握手会が行われる予定だった。
まだ開始時間まではあと10分ほどあった。
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:46
「真野!! 笑ってないであんたもなんか言って!」

マネティは怒声を飛ばすが、真野ちゃんは動じない。
薄手の白のワンピースに身を包んだ真野ちゃんは相変わらずニコニコ笑っている。
白い生地のスカートの部分には薄いブルーのストライプが入っていた。
実に夏らしい清楚で涼しげな衣装だった。
だがマネティはそんな衣装には目を向けず、真野ちゃんの足元に視線を向ける。

「ていうかなんで今どき厚底ブーツなんか履いてるんだよ・・・・・・」

真野ちゃんは、高さ20cmはあろうかという極厚のブーツを履いていた。
きっとそれは愛だろう。マネージャーに対する真野ちゃんの愛だろう。
マネティはその厚底ブーツでの蹴りがいかに衝撃的だったかを滔々と語る。
だがそれでも真野ちゃんの笑顔は変わらない。

真野ちゃんはステージ上でも舞台の裏でも、仕事中でも私生活でも、性格は変わらない。
どんなときでも素の真野恵里菜だった。
一切裏表がないという稀有なアイドルだった。
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:46
握手会が始まる時間となった。
もはやUFA名物となった感のある、高速握手会だった。

係員につかまれたファンは、物凄い勢いで右から左へと流されていく。
それでも真野ちゃんはファンの手をしっかりと握りしめた。
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:46
「噂には聞いてましたけど、すごいですねこれって」

会場の関係者が言っているのが、真野の人気のことではないことはすぐわかった。
高速握手会のことだろう。初めて見た人間は誰だって驚かされる。
マネティは真野ちゃんが側にいないときにだけ見せる表情と口調で答えた。

「一応、より多くのファンの人と触れあいたいということで」
「それもすごい建前ですね」
「仕事ですから」
「そりゃそうですけど。でも他の事務所のアイドルさんは・・・・・」
「うちにはうちの方針がありますんで」

この高速握手会を見せられて好意的な印象を抱く人はおそらくいないだろう。
タレントだって、ファンだって、第三者だって、みんな変に思っている。
それでも、こういった握手会はおそらく今後もなくならないのだろう。
こういった会がある度に、不思議とCDは飛ぶように売れていく。
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:46
真野ちゃんは本当に楽しそうな顔をしながら握手を続ける。
その笑顔に偽りはない。
付き合いがそれなりに長いマネティにはそれがよくわかっていた。
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:47
「終わったみたいですね」

イベントスタッフが素っ気ない口調でマネティに告げる。
さすがにファンの耳目が残っている場では、あからさまな侮蔑の言葉は出さない。
それでも男の言葉には隠しようのない棘があった。

「握手一回でCD一枚ですか」

もしかしたらこの男の目にはファンの姿がお金そのものとして映っているのかもしれない。
ただお金を払ってくれるだけの存在。ビジネスライクな関係。
きっと彼は真野ちゃんもそういう目でファンを見ていると思っているのだろう。
そんなスタッフの軽い言葉を、マネティもまた
軽く受け流す。

こんな男の相手をしている暇はない。
マネージャーの仕事はそんなことではない。タレントの管理だ。
どうやら脱糞したファンはいなかったようだ。よかったよかった。
真野のことを無視して通り過ぎるファンもいなかったようだ。よかったよかった。

そんなことが起こらないとも限らないのがこの握手会なのだ。
29 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:47
真野が愛情をもってファンに接すれば、ファンもまた真野に愛情を持って接してくれる。
もし真野がファンのことを金づるとしか思っていなければ、
ファンもまた真野のことをただの一過性の消費の対象としか見てくれないだろう。
理想論と言われようが綺麗事と言われようが、マネティはそう信じていた。

高速握手会と揶揄されようがなんだ。そこに愛情があればいいじゃないか。
あたしらはあたしらで与えられた機会の中で一生懸命やるしかないんだ。

マネティは仕事の愚痴を表だって言うのが嫌いだった。
だが同じ会社には、そういった愚痴を堂々とこぼす人間も多い。
「辻がブログでYouTubeを見てる画像をうpしやがった」
「石川の舞台のチケットが全然売れない」
「安倍に新しい仕事が入らない」
「亀井がバカすぎて困る」

そんな愚痴をこぼすことに何の意味があるのだろうか。
担当タレントの仕事を調整するのがマネージャーの仕事なのだ。
マネティには彼らが「僕たちはバカでーす」と自己主張してるようにしか見えなかった。
まあ、亀井がバカだということに関してだけは、担当者に心から同情するのだが。
30 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:47
「さて。今日の仕事も終わったし、次の会場へ向かいますか」

マネティは荷物をまとめ、重い鞄を持ちあげた。
次の会場は少し遠い。気合いを入れて車を運転しなければ。
この仕事は気合いと根性。それがない人間はタレントもマネージャーも成功しない。

「行くぞー、真野」

マネティが声をかけると真野ちゃんはにっこりとほほ笑んだ。
白魚のような両手には、鋭い刃が刻まれたノコギリが握られていた。
次の会場での切断マジックに使うものだろうか。いつの間にそんなものを。
真野ちゃんは裏表のない笑顔を見せながら、ノコギリをぎーこぎーこと引いて遊ぶ。

(こ、この仕事は気合いと根性・・・・・・・)

愚痴をこぼしている暇はない。会場ではファンが待っているのだ。
頭頂部に膨らんだタンコブをさすりながら、マネティは歩き出した。
その後ろからはノコギリを手にした可憐な少女が追いすがる。
つかず離れずの間合いを保ちながら、不自然な元気さを醸し出しつつ、二人は歩き続ける。
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 00:47
32 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/17(火) 00:49
>>16
ありがとうございます。
しょっぱなだけがすごかったとならないように頑張ります。
楽しみにしていてくださると嬉しいです。
33 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/17(火) 00:50
>>17
ありがとうございます。
初回だけと言われないように(ry
遠慮なく突っ込んでください。気の済むまで繰り返して。
34 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/17(火) 00:50
>>18
わろとけわーろーとけー
35 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/17(火) 00:51
書き始めた日からいきなりレスがついて嬉しいです。
レスが一つもつかなかったら書くの辞めようかと思ってました。
うそです。
次も頑張るので読んでくださる方は
もう少しの間お付き合いください。
36 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 02:56
今回もぶっとんでますねー(褒め言葉です)
とりあえずマネティが心配ですw
37 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/18(水) 01:17
マノちゃんズゲー!
38 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:48
39 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:48
03 マノレター
40 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:48
白いレースのカーテンの向こう側が一瞬光った。
気のせいかな、と思い始めたときにゴロゴロという低い音が響く。
そんな雷の音に共鳴するかのように、雨音はどんどん激しさを増していく。

マネティは机の向かい側に座った真野ちゃんに「よかったねえ」と声をかけた。
真野ちゃんはこくりとうなずいて窓の外を見る。
二人はつい数分前に事務所に帰ってきたところだった。
帰るのがもう少し遅れていたら、この嵐に巻き込まれていただろう。
窓の外が一気に暗くなる。
季節外れの台風のような大雨が、激しく窓を叩き続けていた。

マネティは狭い一室の奥にある自販機にコインを入れてボタンを押す。
真野ちゃんは机に突っ伏したまま両足を伸ばしてパタパタと上下に振る。
今日も一日歩き通しだった。ふくらはぎが軽く張っている。喉も乾いた。
だがマネティが机の上に置いたのは、お茶でもジュースでもなく、栄養ドリンクの瓶。

真野ちゃんはそれを見てちょっと嫌な顔をする。
41 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:48
「さあ、真野。気合い入れてもう一仕事するよ!」

真野ちゃんは死んだ魚のような目で栄養ドリンクの瓶を見つめた。
疲れているわけではない。仕事をする気がないわけでもない。
真野ちゃんはそんな貧弱な人間ではなかったが、
乙女らしい繊細さと、子供のような天の邪鬼さを持った人間ではあった。

世の中には反比例の法則というものがある。

民主党が支持を伸ばせば自民党が支持を失う。
すき屋の業績が上がれば吉野家の業績が下がる。
ヲタが熱心に応援すればするほど一般層はひく。
事務所が新たな方針を打ち出す度にヲタが減っていく。
ヲタが金を貢げば貢ぐほど事務所はヲタを裏切る。

そしてマネティのテンションが上がれば上がるほど真野ちゃんのテンションは下がるのだった。
42 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:48
真野ちゃんは顔を傾けて机に頬を乗せ、眠たそうな顔をする。
冷房がほどよく効いていることもあって、机までひんやりと冷たかった。
真野ちゃんは長いまつ毛をそよそよと揺らしながら眠気に身を委ねようとする。
その1センチほど前に、マネティはどん!と紙の束を乱暴に置いた。

「はい、ファンレター。今週もすっごいたくさん来たから」

色とりどりの便箋が机の上に広げられる。
便箋は色だけではなく大きさや形も様々なものがあった。
少しでも目立とう。真野ちゃんの気を引こう。そんなファンの気持ちが微笑ましい。
熊井ちゃんへのファンレターと勘違いしたのだろうか。
中には1メートル近い封筒に入れられたものまであった。

「こんなの読めねえよ」

マネティは苦笑しながら巨大ファンレターを捨てようとした。
だが真野ちゃんはすっと手を伸ばし、マネティの手からファンレターを奪い取る。
43 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:48
「そうね。大事なファンレターだもんね。捨てられないよねー」

マネティはニヤニヤと笑いながらわざとらしい口調で真野ちゃんを煽る。
本当にこの子は扱いやすい子だ。
マネティは心の中で一方的にそう思っていた。
なんて可愛い子! この天の邪鬼な性格を利用すれば、簡単に操れるわね!
暢気なことに、マネティは真野ちゃんのことをそんな風に思っていた。

自分の掌の上で踊るスーパーアイドル真野恵里菜。
マネティの中で、自分は三蔵法師で真野ちゃんが孫悟空というイメージがわきあがる。
イメージはさらなるイメージを呼び、連想がつながっていく。
次に浮かんだのは沙悟浄の愛理だった。その次に浮かんだのは猪八戒の梨紗子だった。

マネティは空想にひたりながらにやにやと表情を崩す。
裏表のない可憐な少女真野ちゃんは、そんなマネティを冷ややかな目で見ていた。
44 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:49
「さあ、真野! 返事書こうか。今すぐに」

それでもまだ真野ちゃんは手紙をいじいじといじりながらもじもじしている。
どうもマネティのテンションが上がると、真野ちゃんとしては仕事がやりにくいようだった。
唇を尖らせて頬を膨らませる真野ちゃん。
だがそんな姿を目にしても、マネティは容赦することなく真野ちゃんを叱咤する。

「ファンの人達はね、一分一秒でも早くあなたからの返事を読みたいんだから」

その言葉を聞いた瞬間、真野ちゃんの中で一つのひらめきが電流のように走った。
一秒でも早く。この返事をファンの下へ。
真野ちゃんの中に熱い思いが湧きあがる。
手紙を握り締めた真野ちゃんは熱い眼差しをマネティへと向け、無言で頷いた。
マネティもその視線を真っ向から受け止める。

「わかってくれた? よし、じゃあ書こうか」

真野ちゃん手にした封筒を開け、一通目のファンレターに目を通した。
45 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:49
雨はまだ降り止まない。
横殴りの風に乗って雨粒が窓にぶつかる音が静かな部屋にこだまする。
真野ちゃんは無言でファンレターを読みふけっていた。
その速さがまた尋常ではない。
まるで辻希美が老けていく時のような速さでファンレターを読みあげていく。

「ちょっとちょっと。ホントにちゃんと読んでるの?
 読みもしないでテキトーな返事を書いちゃダメだよ?」

真野ちゃんはマネティの言葉には答えず、今度は真っ白な便箋を手に取る。
そして黒のボールペンと三色のカラーペンを右手に挟むと、
マジシャンのような華麗な手つきでイラスト付きの返事を書き上げていく。
完成した返事の一つに目を通し、マネティは絶句した。

「ちゃんと返事になってる・・・・・・」

真野ちゃんの書いた返事は、ファンレターに目を通していなければ書けないような、
きちんとした受け答えが含まれたものだった。
46 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:49
「やるじゃん真野」

マネティはそういって真野ちゃんの頭をごしごしと撫でた。
真野ちゃんはそんなマネティの手を、面倒臭そうに払いのける。
返事を書くのを邪魔すんじゃねえよ、ということらしい。
机の上には、書き上げられた返事が山となって積み上がっていく。

マネージャーが煽ると、タレントが発奮する。
これもまたマネティの計算通りだった。
(わかりやすいなあ、真野は・・・・・・。素直な子だね)

自分の掌の上で踊るスーパーアイドル真野恵里菜。
やはりまたマネティは、自分が三蔵法師で真野ちゃんが孫悟空というイメージを浮かべた。
真野ちゃんが孫悟空ならつんくは亀仙人だった。藤本美貴はピッコロ大魔王だった。

マネティがそんなことを空想している隙に、真野ちゃんは携帯電話を取り出す。
右手で返事を書きながら、机の下では器用に左手でメールを書いて送信する。
メールはマネティの上役へと送信されていった。
47 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:49
小一時間ほど経っただろうか。
真野ちゃんは見事に全てのファンレターに目を通して返事を書き上げた。
それを見てマネティも満足気に頷く。
これで今日の仕事はもう何も残っていない。後は家に変えるだけ。
雨もますます激しくなっていることだし、タクシーで真野ちゃんを送ればお終いだ。

マネティが椅子から腰を上げたところで、マネティの上司が部屋に入ってきた。
真野ちゃんはその男を見上げてにっこりとほほ笑む。
男も真野ちゃんと机の上の封筒の山を見比べて、にっこりとほほ笑んだ。

「どうやら全部書けたようだな。丁度タクシーも下に来たから」

真野ちゃんは弾けるようにスキップしながら部屋を出ていった。

「あ、真野! 待って。あたしも行くから」

真野ちゃんを追いかけようとするマネティを、男が呼び止める。

「おいおい。忘れ物忘れ物。肝心のこれを忘れてどうすんだよ」
「は?」
「これだよ、これ。今日中に持っていくんだろ?」
48 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:49
男は机の上に積み上がった封筒を指差す。

「これ、絶対に今日中に郵便局に持って行くんだろ? 真野がメールでそう言ってたぞ」
「は? 真野が? メールで?」
「ファンの元に一分一秒でも早く届けたいってマネージャが張り切ってるって」
「そんなことを? いつの間に」
「しっかりしてるよな。経費が勿体ないからタクシーも一台でいいですって言ってたぞ」
「げ。あいつ」
「だから早く行って来いよ。真野と。今日はそれで上がりでいいからちゃんと出して来いよ」
「あ! 真野待て!」

あの真野の笑顔。あのスキップ。猛烈に嫌な予感がマネティの胸に走る。
封筒の束を乱暴に鞄に押し込めると、マネティは猛ダッシュで階段を駆け降りる。
ビルの入り口の向こうには横殴りの雨。吹き荒れる猛嵐。
その前に止まっていたタクシーに真野ちゃんの後姿が吸い込まれていく。
駆け寄るマネティの眼前で無情にもドアは閉められ、タクシーはゆっくりと走りだす。

「えええええええ。待ってよぉ! ちょっと、もう、この嵐の中・・・・どうしろってのよ!」

早くもずぶ濡れになりつつあるマネティに向かって、真野ちゃんは笑顔で手を振った。
TVカメラの前でだってなかなか見せないような、無邪気で無垢な笑顔だった。
そう。真野ちゃんは裏表のない性格なのだ。だから笑う。会心の笑顔で。
なぜならば。
49 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:49
世の中には反比例の法則というものがある。

マネティのテンションが下がれば下がるほど、真野ちゃんのテンションは上がるのだった。
50 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/19(木) 20:50
51 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/19(木) 20:51
>>36
過分な誉め言葉ありがとうございます。
今後もそう言ってもらえるように頑張って更新していきます。
マネティのことは心配しなくてもいいような気がします。
52 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/19(木) 20:52
>>37
真野ちゃんはすごいよ(まさる風に)。
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/20(金) 01:19
今回も面白かったw
54 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/20(金) 20:59
真野さんに興味が湧きました
それ以上にマネティが愛しくなりました
配慮はあっても遠慮はないそんなネタ小説って素敵だな
55 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/21(土) 17:19
マネティ頑張れw
56 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:23
57 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:23
04 マノバンク
58 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:23
世間一般の企業では25日を給料日にしているところが多い。
20日や月末にしている企業もあるだろう。
とは言っても、一般企業に勤める人間で、給料日に極端にテンションが上がる人間は少ない。
そんなものは漫画やドラマの中だけのお話であり、
普通の世間ではそれぞれ個人の中でひっそりとほくそ笑む程度だろう。

だが「世間一般」に該当しない人間ではそんなことはないわけで。
あるいは「漫画やドラマの中」のような生活をしている人間はそんなことはないわけで。
そういった世界では、給料日になると極端にテンションが上がる人というのは実在する。

そんなわけで今日のマネティは、いつも以上にじっくりと、
真野ちゃんの書いたブログの下書きをチェックしていた。

「こら、真野! お給料の話は書いちゃダメって言ったでしょ!」
59 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:23
かつては芸能界の長者番付リストをモーニング娘。のメンバーで占めていた時代もあった。
そこから「UFAは給料が良い」という都市伝説だって生まれたものだった。
だがそれはもう昔の話。
今のUFAは業界内でも「人件費をかけない」ことで定評のある事務所となっていた。

そういうわけで真野ちゃんの給料は安い。
そしてそれに輪をかけてマネティの給料は安かった。
ブログでネタにできる額ではない。本当に薄給なのだ。

給料を全額下ろしたとしてお札を積み上げたとしても、厚みが見えないくらい薄いのだ。
矢口の本音トークと同じくらい薄っぺらだった。
田中と亀井の友情のように薄っぺらなのだ。
もしくはスマイレージが大ブレイクする可能性のように。
あるいは藤本のおでこのように・・・・・とにかく薄いのだ。

真野ちゃんの次の新曲の衣装もこれくらい薄かったらいいのに。
ペラペラだったらいいのに。可愛いし。夏だし。健康的だし。
マネティはそう思わずにはいられない。マネティの思い描く「健康的」は、
もはや完全におやじの抱くイメージと一致しているのだった。
60 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:23
マネティはそんな卑猥で健康的な想像を膨らませながら、
給与明細が入った封筒で真野ちゃんの頭をポンポンと叩く。
真野ちゃんは頭上に両手を伸ばし、真剣白羽取りの格好で封筒を受け取る。
満面の笑みで封筒をつかむと、ダッシュで部屋の隅へと駆け込み、うずくまって封筒を開ける。

真野ちゃんは本当に裏表がない。嬉しい時は嬉しいという表情を決して隠さない。
そして喜んでそのことをブログに書こうとする。
何から何まで書こうとする。
そんな真野ちゃんを必死で止めながらも、マネティは少し羨ましい気持になってくる。

(無邪気だなあ・・・・・・いいよなあ・・・・・)

そういうマネティも今日が給料日だった。
だがマネティの薄給はそのほとんどが、滞納している家賃と公共料金の支払いに消えていく。
実家暮らしの真野ちゃんとは給料の使い道が全く違うのだ。
お金が入ってくる日だというのに気持ちは複雑だった。

そうなのだ。マネティにとっては、給料日は決して楽しいだけの日ではない。
だがマネティはそんな軟弱な気持ちを振り払う。
なぜならマネティは真野ちゃんのマネージャーなのだから。

(バカかあたしは。マネージャーがタレントを羨んだりしてどうすんのよ)
61 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:24
唇をへの字に曲げるマネティ。
真野ちゃんは携帯電話を向けて、そんなマネティの姿を撮影する。

「なにしてんのよあんた」

ずかずかと近づき、真野ちゃんの手から携帯電話を取り上げるマネティ。
その時には既にブログの下書きにはこう書かれていた。

『ふびん・・・・』

そう書かれたタイトルの下には俯き表情を歪めるマネティの画像。
そして恐るべき速さで既に本文も半分以上書かれていた
62 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:24

今日は
マネティのお給料日...
です(●´∀`●)



でもね
お給料が出てもマネティには
「晩御飯連れってって!」とか言っちゃいけないの(・ω・`)



なぜなら
マネティには公共料金の振り込みと
カードの支払いとローンの返済が...(pω・。)



返済を続けるマネティが
けなげすぎます(ノд<。)゜。



でも
そんなマネティは
ファン思いのとっても良い人です(*^ー^*)



真野はそんなマネティがだーい
63 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:24
「『とっても良い人です』じゃなーい!! 全然フォローになってなーい!!」

真野ちゃんが書いた文章を消しにかかるマネティ。
がしがしと親指で携帯のボタンを押すのだが、
慣れていないこともあって、文章を消すのに数分の時間がかかる。
その間にも真野ちゃんは左のマノポケットから素早くもう一つの携帯電話を取り出す。

甘い! 甘いぞマネティ。
タレントが一つしか携帯電話を持っていないと思ったら大間違いだ!
世の中には二つや三つの携帯電話を使い分けている人間だっているのだ。
真野ちゃんが尊敬している松浦だって二つや三つのキャラを使い分けて芸能界を生きているのだ。
ちなみに作者は松浦が使っている三つのキャラは全部嫌いです。

それはともかく。
真野ちゃんはマネティがもたもたと携帯をいじっている間にも、
超光速のマノフィンガーを駆使して新たな文章を書き上げていく。
速いぜ真野ちゃん。
64 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:24
今日は
マネティのお給料日...
です(●´∀`●)



でもね
お給料が出てもマネティには
「晩御飯連れってって!」とか言っちゃいけないの(・ω・`)



なぜなら
マネティには公共料金の振り込みと
カードの支払いとローンの返済が...(pω・。)



だから今日は思いきって
真野の方からマネティを晩御飯に誘っちゃいます!



ちょっぴりどきまぎ。
冷静なお顔をしてますけど。
内心キャーキャーだわ!((o*>∀<)o
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:25
「コラ! 真野! だから・・・・・・」

もう一つの携帯の存在に気付いたマネティは素早く真野ちゃんから奪い取る。
その瞬間、クラリスになってしまう真野ちゃんと、ルパンになってしまうマネティ。

マネティはとんでもないモノを盗んでいきました。
真野ちゃんの携帯です。

だが恋する乙女の顔になったのはクラリスではなくマネティの方だった。
携帯画面に表示された新たな文章を目にして、マネティは目を白黒とさせる。
顔がみるみるうちに真っ赤になる。耳まで赤くなったマネティは声まで裏返った。

「こらあ! い、今どき、美勇伝ネタなんて、誰が、よろこぶのよ!!」

確かに誰も喜ばないことは確実だ。そういう意味での美勇伝ネタは鉄板である。
それでも真野ちゃんは全く動じずに懐から財布を取り出す。
天使のような笑顔で財布を開く真野ちゃん。
その中には現ハロプロメンバーの人数よりも多い数の一万円札が。

マネティは言葉に詰まる。困った顔をした、ふりをする。
66 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:25
「しょうがないなあ。確かに金欠だからなあ。たまには真野に誘われるのも・・・・」

急に饒舌になったマネティは、何かを誤魔化すかのようにペラペラと喋り始める。
エッグメンよりも遥かに棒な演技を続けるマネティを、真野ちゃんは眩しそうに見つめていた。

「よし! じゃあ今日の晩飯は真野の払いで! 一緒に行こっか!」

真野ちゃんはマネティが持っていないものをたくさん持っている。
美貌。強運。財力。スター性。
プロのマネージャーであるマネティはそんなものを羨んだりしない。
だけど。真野ちゃんが持っている素直な優しさはちょっと羨ましいと思う。
こんな自然な優しさは、裏表のない優しさは、普通の人間はなかなか持てないものだから。

この子の優しさを世界中に届けるのがあたしの仕事だ。
マネティは真野ちゃんの手を引いて扉を開ける。
きっと世界中のファンが真野ちゃんのことを待っている。だから。さあ行こう。
いつでもどこでもあたしがついているからね。
67 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:25
真野ちゃんは裏表のない性格である。
嘘がつけないという、天使のような清らかな心を持った子である。

だから真野ちゃんは「晩御飯に誘っちゃいます」とは書いていたが
「晩御飯をおごっちゃいます」とは一言も書いていなかった。

その夜、マノバンクのマノクレジットを利用したマネティは
長く、長く、長く、マノローンに苦しめられることになったとか、ならなかったとか。
68 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/23(月) 22:25
69 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/23(月) 22:26
>>53
毎度どうもありがとうございます。
次回も面白がっていただけると大変うれしいですが・・・・・どうかなあ。
70 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/23(月) 22:28
>>54
>配慮はあっても遠慮はないそんなネタ小説って素敵だな

なんという名言。
ていうか私の小説はそんな域にまで達してないですよ。
でもその評価に負けないものが描ければと思います。どうもありがとうございますです。
71 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/23(月) 22:29
>>55
マネティは真野ちゃんのために頑張るべきだと私も常々そう思っています。
死ぬ一歩手前くらいまで頑張れば丁度良いのではないでしょうか。
72 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 00:53
物言わぬ真野さんの雄弁な行動におしっこちびりそうです
73 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 08:44
なるほどおもしろいです
74 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:48
75 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:48
05 スマノレージ
76 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:48
コンサート会場の出演者控え室には一つも窓がなかった。

熱心なファンやマスコミの目を避けるためにも、当然のことなのかもしれない。
そんな控え室にも、換気設備はきっちりと整っているはずなのだが、部屋の中は妙に暑い。
閉ざされた部屋の中には、8月という季節とは無関係の澱んだ空気が漂っていた。

部屋の中にいる人間の放つ熱が、汗が、体臭が、
化粧品の匂いと混ざって独特のむさ苦しさを醸し出している。

同性の人間が数人固まると、なぜこんなにも甘酸っぱい匂いになるのだろうか。
そこに一人でも異性がいれば、また違った、ごく普通の空間になるのかもしれないが。
女だけの空間では、女が女の触媒となり、女の匂いをよりすえたものにしていく。

Hello!Project 2010 SUMMER 〜ファンコラ!〜。
ステージの幕が上がるまであと一時間ほどの時間があった。
77 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:48
出演者は出演者同士でじゃれ合ったりはしゃいだりしているが、
担当のマネージャーはマネージャー同士で膝を突き合わせて情報交換をしている。
お互い現場を飛び回っていることもあって、こうやって一同に会する機会は貴重だった。

「ちょっと。ねえ。真野ちゃんまた太ったんじゃない?」
「そういうそっちこそ熊井ちゃんまた大きくなったんじゃない?」
「それはマネージャーの責任じゃないでしょ」
「じゃあ雅ちゃんの顎は」
「知らないわよ。伸びる理由なんて。それならそっちの光井の顎はどうなるのよ」
「光井はまだこれからじゃん。そっちの梨沙子の方が深刻なんじゃないの」
「梨沙子は素材が違うから。あの子は本気を出せば」
「出さないじゃん」
「本気にならないじゃん」
「違う意味で本気じゃん」

ただの愚痴の言い合いだった。責任のなすりつけ合いだった。
なぜか一番発言しているのはMCのまことだった。
同じMCの吉澤は、湊かなえの「告白」を読みながらニヤニヤと笑っていた。
78 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:48
マネティは集中砲火を受けたのが自分ではなくベリの担当だったことに少しホッとした。
マネージャーとしての立場は、担当するタレントの実績によって上下する。
今の真野恵里菜は、タレントとして絶好調と言えるような状態ではなかった。
地盤沈下を続けるハロプロの中にあってさえ、相対的に勢いが落ちている。

このままではいけない。なんとかしなければいけない。
そんなことを考えながらもマネティは、全体的に暗い雰囲気の中で、
一人エネルギッシュに喋っている人間がいることに気がついた。

溌剌とした表情で「今が一番大変な時期で」などと言っているのはスマイレージの担当だ。
デビューした彼女らの前には洋々とした前途が広がっている。
きっと彼女らの担当の目には、それが無限の水をたたえた大洋のように見えるのだろう。
マネティはその姿に一年前の自分の姿を重ねてしまう。

娘。の担当も、ベリキューの担当も、スマイレージの担当を冷やかしたりはしない。
心にもない慰めの言葉をかけながら、顔には追従の笑みを浮かべていた。
まことでさえスマイレージの担当にはお世辞めいたことを言う。
吉澤は飴村行の「粘膜蜥蜴」を読みながらニヤニヤと笑っていた。

マネティはなんとなくその場に居づらくなって部屋の外へ出た。
79 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:48
三年前。エッグの中で抜きんでた輝きを放っていた一番星が真野恵里菜だった。
二年前。エッグの中で先頭を切ってソロデビューしたのも真野恵里菜だった。
一年前。初の単独コンサートを見事に成功させたのも真野恵里菜だった。

スマイレージの四人よりもずっと先の方を走っていたはずだ。
圧倒的に引き離して独走していたじゃないか。
ハロープロジェクトの最後の希望の星。それが真野恵里菜ではなかったのか?
それなのに今のこのもどかしい気持ちは、一体どこから来るのだろうか?

マネティはもやもやとした気持ちを引きずりながら廊下を歩く。
これからコンサートだというのに、なぜか泣きそうな気持ちになってきた。
マネティはつま先を浮かせて、かかとのローラーですーっと滑る。
今、マネティの中ではローラー靴がマイブームだった。

廊下の奥にある大きな扉をつかんでマネティは思い切り開けた。
最も大きいその部屋は出演者全員の控室になっていた。
だだっ広い部屋の中には家具や調度品のようなものは何もない。
熊井ちゃんが立っているのが目立つ程度だった。
80 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:48
部屋の中では、まだ子供といってもいいような年齢の子たちが遊んでいた。
本番前だというのに、緊張した様子は微塵も感じられない。
この子たちは良い意味で図太い。
きっと厚底ブーツでマネージャーに蹴りを入れたり、嵐の中を郵便局までパシらせたり、
お金を貸し付けておいて法定外の高金利をかけたりしたって平気なのだろう。

いや、それだって芸能人としては良い意味で図太いと言うべきだろう。
悪い意味で図太いというのは、男と岩盤浴に行きながら・・・・・
そこまで考えたところで、マネティは真野ちゃんの姿を見つけた。
無理に探す必要はなかった。
50人近くいる人間の中で、一番輝いているその子こそが、マネティの担当なのだ。

真野ちゃんもスマイレージの四人とじゃれ合っていた。
それを見てマネティはどことなく温かい気持ちになる。
81 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:49
真野ちゃんとスマイレージ。
この5人は本当に仲が良い。いつ見てもこうやってじゃれ合っている。
まるで子犬同士がじゃれ合っているかのようだ。
ファンの人が見たら悶絶して萌え死ぬのではないかとマネティはちょっと心配になる。

よく考えれば、この子たちは小学生の頃からずっと一緒にいるのだ。
大人が裏でどう張り合おうが、この子たちは仲間なのだ。敵じゃないのだ。
ライバルとは言え、コンプレックスに感じるようなものは何もないのだろうきっと。
そう思ってマネティは五人に声をかけた。

「こら。本番前にそんなはしゃがないの! 衣装が汚れるでしょ!」

マネティの声を聞いて、和田彩花は真野ちゃんにかけていたキャメルクラッチをパッと解いた。
小川紗季はつかんでいた真野ちゃんの右手を離して脇固めを解いた。
前田憂佳は持っていた猫じゃらしを離して、真野ちゃんの太腿をくすぐるのを止めた。
福田花音は中身だけ抜いて、空になった真野ちゃんの財布を投げ捨てた。

蜘蛛の子を散らすようにスマイレージの四人は退散していったが、
ぜえぜえと荒い真野ちゃんの息はなかなか整わなかった。
82 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:49
「もーう、真野ちゃーん。遊ぶのはいいけど興奮しすぎだよー」

マネティは真野ちゃんの乱れた髪を手櫛で整える。
せっかくのメイクアップが台無しだ。彩花ちゃんには後でちゃんと説教しなければ。
マネティは真剣な顔でそう考えていたが、真野ちゃんの顔はそれ以上に真剣だった。
真剣というよりも、溢れる感情を抑えきれないといった面持ちだった。
眼光の強さが尋常ではない。

真野ちゃんの顔つきは、マネティがどこかで見たことがあるような表情だった。
マネティは記憶を探る。そして思い出す。
それは石川梨華のギャグを聞いたときの、藤本美貴の表情だった。
「菅谷梨沙子さんは今日の握手会は欠席です」と聞いたときのヲタの表情だった。
真野ちゃんも、コンサートを前にして気持ちが高ぶってきたのだろうか。

「お。真野も気合い入ってきた? もう本番前だからね」

真野ちゃんは裏表のない性格だ。思っていることが全部顔に出る。
だから今も真剣になってコンサートに集中しているのだろう。マネティはそう考えた。
だが真野ちゃんは部屋を出てとことことステージとは逆側へと歩いていく。
そして、なぜかセットを組んでいた裏方さんの鞄から大きな金槌を取り出した。
83 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:49
あれ? あんなもの持ち出して、一体何に使うんだろう?
マネティが真野ちゃんを問い詰めようとしたときにオープニングの音楽が鳴った。

「ヤバイ真野! もう始まっちゃう! 急いで!」

大慌てでマネティは真野ちゃんの襟首をつかむと、
駄々をこねるように嫌々をする真野ちゃんを引きずり、
廊下を駆け抜け、問答無用でぽいっと真野ちゃんをステージに放り投げた。

真野ちゃんは金槌を腰に差したまま「ALL FOR ONE & ONE FOR ALL」を歌い踊る。
やがて曲が終わると、次に歌うスマイレージだけを残して、他のメンバーはステージから去る。
スマイレージの四人は、曲に入る前に、ステージ上で簡単なトークをしていた。
そのスマイレージの次に歌うことになっている真野ちゃんはそれを舞台袖で見ている。

真野ちゃんの右手には金槌が。そして左手にはいつの間にかノコギリが握られていた。
真野ちゃんは、人を殺すときの熊井ちゃんのような表情をしながら、四人のことを凝視している。
金槌を握り締める右手は、よく見ると細かにプルプルと震えている。
あの真野ちゃんであっても今のスマイレージの後に歌うのは、緊張することなのだろうか。

(真剣だなあ真野ちゃん。やっぱりあの四人のことをライバル視しているのかしら)

そんな真野ちゃんを、背後からマネティは微笑ましい気持ちで見守っていた。
84 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:49
そして、いよいよMCのまことの曲紹介でスマイレージの新曲が披露されることとなった。
「ではスマイレージの新曲で、『○○ がんばらなくてもええねんで!!」

へんてこりんなタイトルが紹介されると、これまたへんてこりんなイントロが流れる。
それに合わせてスマイレージの四人は極めてへんてこりんなダンスを踊った。
(こ・・・・これは・・・・・さすがにちょっと・・・・・)
それを見て絶句するマネティの前では、真野ちゃんが爆笑していた。

金槌もノコギリも取り落として、真野ちゃんは腹をかかえて笑っていた。
真野ちゃんは素直で裏表のない性格だ。自分を偽ったり抑え込んだりはしない。
だから真野ちゃんは笑っていた。
スマイレージの新曲を見て、両手を叩きながら大喜びして笑っていた。
もう金槌は必要ない。ノコギリも必要ない。必要なものは真野ちゃんの中に既にあった。

スマイレージの曲が終わる。
舞台からはける四人と入れ違えで、真野ちゃんがステージに登場する。
真野ちゃんはすれ違いざまに、福田花音の耳元で何事かを囁いた。
85 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:49
真野ちゃんは裏表のない子。素直な子。
だからスマイレージの新曲を見て爆笑していた。
それを見て思ったこと、感じたことを、そのまま包み隠さず花音に伝えた。

花音は真野ちゃんの言葉を受け取る。その耳でしっかりと。
だが真野ちゃんと違い、これ以上ないくらい裏表の激しい花音は、表情を変えなかった。
10歳に満たない時から芸能活動をしている花音は、真の感情を表情に出すことはまずない。
だからその時も、いつもファンに向けているような極上の笑顔を真野ちゃんに向けてみせた。

悪魔のように笑う真野ちゃん。天使のように笑う花音。
ほんの一瞬の交錯。
おそらくそれを見逃したファンも多かっただろう。
それは本当に一瞬で、そしてあまりにも非現実的で無機的な笑顔と笑顔の衝突だった。
だがマネティはそれを見逃さない。健全なライバル意識を露わにする二人をしっかりと見ていた。

(大丈夫。この子たちがいる限り、きっとハロプロは安泰だわ。きっと。きっとね)

ハロプロを代表する二人の美少女の笑顔を、マネティはうっとりと見つめていた。
86 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 20:49
87 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/26(木) 20:51
>>72
沈黙は金。雄弁は銀。
真野ちゃんの笑顔は千金の価値に勝るよ(推測)。
88 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/26(木) 20:52
>>73
なるほどありがとうございます。
もっともこの小説の面白さの95%くらいはリアルの二人のキャラによるものだと思われます
89 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/26(木) 21:47
案外一番図太いのはマネティだったりしてw
90 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/27(金) 01:05
マネティずれてるよw
91 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:11
92 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:11
06 マノガキサユミ
93 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:12
「みんなー、誰かスタッフさんの金槌知らなーい?」

コンサートが終わった後に、新垣里沙が楽屋を見回して言う。
大仕事を終えてテンションが上がりきっているハロメン達は大声ではしゃぎ回っていた。
それでも新垣の低い声は、瞬く間に部屋の隅々まで行き渡る。
ベリキューやスマイレージやエッグのメンバーが水を打ったように静まり帰った。

わいわい騒ぎ続けているのは空気の読めない亀井と田中と高橋だけだった。
空気が読めないといえば石川だったが、今回のハロコンには出演していなかった。
そして空気の読める吉澤は既に次の仕事場へと移動していた。

とにかく騒々しさも半減した楽屋の中から、真野ちゃんはそっと抜け出す。
見事なまでに存在感を消していた。男と夜遊びするときだけに使うマノウォークだった。
ハロプロでもこの動きを身につけているのは石川と嗣永と真野しかいない。
とにかく油断も隙もない見事な動きだったが、マネティの目はそれをしっかりと捕らえていた。

「コラ待て真野! どこ行く!」
94 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:12
実は真野ちゃんは足が遅い。
そしてマネティはそれに輪をかけて遅い。
シャープなルックスをしながら、のたのたと駆けていく真野ちゃん。
もっさりとした体形を揺らしながら、同じくのたのたと追いかけていくマネティ。
金槌があった場所に二人が戻ったときには、新垣も余裕で二人に追いついていた。

「ちょっと真野ちゃん! 金槌持ち出したの真野ちゃんだったの?」

新垣の声を聞いて、真野ちゃんは感電したヒキガエルのように飛び上がる。
もしくは感電したムカデのように飛び上がる。もしくは感電した矢口のように飛び上がる。
その時、真野ちゃんの手にはしっかりと金槌が握られていた。
つかつかと歩み寄って金槌を奪い取ると、新垣は事情も聞かずに説教を始めた。

「ダメでしょ、勝手にこんなもの持っていっちゃ! スタッフさんが困るじゃん!」

マネティは二人のやり取りをおろおろとしながら見つめていた。
真野ちゃんをフォローすべきか。それとも一緒になって説教するべきか。
それともこれを好機と「真野を田中会に勧誘するのは止めてくれ」と言うべきか。
田中本人に言ったとしても言うことを聞くとは思えないし、ここは新垣を通して。
いかに田中れいながうざいかということを説明して。いやそれは新垣もよくわかって。

マネティの思考はいつの間にか真野ちゃんではなく田中れいなで占められていた。
95 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:12
「ガキさん! 説教はそこまでよ!」

三人の斜め上からいきなり鋭い声が降ってきた。
マネティの目の高さに美しいくるぶしが映る。マネティはその視線を上へと滑らせていく。
セットの骨組みの裏側にあたる鉄骨の一角に、腕組みをしてモデル立ちをしている美少女が一人。
黒髪の美少女は背後からライトを照らされ、サテンの生地のドレスをキラキラと輝かせていた。

「とーう!」

美少女は戦隊ヒーローのように叫ぶと、一端そこにゆっくりとしゃがみ込み、
両手で鉄骨を抱え、そっと足を下に伸ばし、のそのそと鈍い動作で床に降り立った。
新垣は説教も忘れて、ポカンとした表情で美少女を見つめる。

「なんだ、さゆじゃん。なにしてんのこんなとこで」
「いやちょっとノコギリを探してたの。そしたらガキさんの声が聞こえたから」
「ノコギリ? なんで?」
「それがノコギリも見当たらなくってー。もしかしてそれも真野ちゃんが持ってる?」

真野ちゃんは素直にこくりと頷くと、ロングスカートの中からノコギリを取り出した。
96 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:12
「うふふふふ。さすが真野ちゃん。先回りされちゃってたのね」

新垣と真野ちゃんは道重の言っていることが全く理解できず、ただ茫然と立ちつくすだけだった。
道重はひゅんひゅんと音を鳴らせながらノコギリをしならせる。
何に使うというのだろうか。新垣と真野ちゃんは道重の目的がわからなかった。
だがマネティは一つだけ思い浮かんだことがあった。何も考えずにその言葉を口に出す。

「道重あんた・・・・・もしかして今から日曜大工を?」

マネティの言葉を聞いて、道重は恐怖と笑いがない交ぜになったような引きつった表情をした。
道重とそれなりに親しい関係にある新垣だけが、それが侮蔑の表情だということに気付く。
実際のところ道重は、れいなのごとく勘の悪いマネティに対して、軽くいらついていた。

「真野ちゃんもさあ。こういう人がマネージャーだと毎日が楽しいよね」

真野ちゃんはころころと笑って頷く。
マネティといると毎日が楽しいということに関しては、全く異論はなかった。
97 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:12
「さゆはね。さゆは世界で一番美しいの・・・・・・」

道重は銀色に輝くノコギリに映った自分の顔を見ながら、うっとりした目をした。
新垣は「また始まったか」といったうんざりとした顔をする。
だからなんでノコギリなんだ。早く結論を言えよ。話が長いんだよ。
話が長い。それはモーニング娘。の伝統だった。真野ちゃんには縁のない概念だった。

「だからさゆより美しいものは、ずったずたに切り裂くの・・・・・」
「ちょっと道重! あんた何言ってるのよ」
「あー、大丈夫ですよマネさん。さゆはいっつもこんなこと言ってますから」
「いっつもって・・・・・道重ってリアルでそんな危ないキャラだったっけ?」

TVでのトークを見ている限りでは道重のキャラは「作ったもの」だ。
ブログを読んでみても非常に常識的な考えをした女の子のはず。
それがマネティの持っている道重のイメージだった。
というかそれがアイドルというものだ。

辻のキャラだってそうやって作ったものだろう。子供まで作るとは見上げた根性だが。
98 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:12
マネティは、道重がいつになったら「なーんちゃって」と言うのかと、
ハラハラとしながら見ていたが、道重の危険な表情は一向に崩れない。
それどころか真野ちゃんと視線を合わせて、ニヤリと笑う。
慌ててマネティは道重と真野ちゃんの間に入った。

「えー、あのー、道重ってハロプロの子が好きなんじゃなかったっけ?」
「好きですよ。ハロプロが好きですし、可愛いアイドルが大好きです」
「じゃあ、真野ちゃんのことも」
「だーい好きですよ」
「じゃあ、ノコギリは勘弁してくれる?」
「え? なんのことですか?」
「いや、ずったずたに切り裂くっていうのはちょっと・・・・・」

道重は掌を口に当てて、ホホホホホホと上品に笑った。

「やだー。真野ちゃんにはそんなことしないですよー。私より美しくないしー」

真野ちゃんは金槌を握り締め、頬をぷうと膨らませた。
相手が花音だったら間髪入れずに殴っていただろう。だが相手は道重だ。そうはいかない。
真野ちゃんは素直で裏表もないし、空気も読めるし、そして人間関係にも聡い人間だった。
99 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:13
「わたしが許せないのは、わたしより美しい人。ハロプロにはいない、美しい人」

道重はマネティから視線を逸らし、扉の方に目を向けた。
その扉の向こうには道重が「自分よりも美人だ」と認める一人の女がいるはずだ。
年中行事のようにつっかかっている相手がいるはずだった。

「吉澤さん・・・・・覚悟して!」

道重はノコギリをケースに入れて背中に背負うと、楽屋に向かって歩き出した。
まるでギターを背負ったジローのようだった。今にもキカイダーに変身しそうだった。
だが新垣はそんな道重を見ても全く慌てない。何の反応も示さないのだ。
あのガキさんをしてノーリアクションとは! ガキさんがノーリアクション。あり得ない。
リアクションしない新垣なんて、まるで歌の上手い真野ちゃんみたいだとマネティは思った。

とにかく新垣は、「またか」と呆れたような顔をして、面倒臭そうに道重に言った。

「吉澤さんならもう帰ったよ」

道重は足を躓かせて、すってんころりと転がった。
100 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:13
真野ちゃんと新垣と道重。
三人連れ添って楽屋に戻る間にも、新垣は二人に説教を続けていた。
やれ芸能人としての自覚が足りないだの、社会人としての常識がないだの、
そんなボーっとしていい加減な気持ちで仕事に取り組んでいたら、
いつかきっと車を運転した時に右折しようとしてバイクにぶつかるだの、結構きつい説教だった。

真野ちゃんとマネティは神妙な顔で聞いていたが、
道重はそんな新垣の言葉など右から左に聞き流していた。
石川とのエコモニ活動で身につけた高等技術だった。
二人っきりでの仕事を生き抜くためには必要不可欠な技術だった。

道重は、先を歩く新垣から一歩下がると、真野ちゃんの肩をつかんで自分の方に引き寄せた。
むき出しになった肩と肩が触れあう。肌は汗で湿っていたが不快ではなかった。
ふうっと吐息を吹きかけるようにして、道重は真野ちゃんの耳にささやく。

「で、真野ちゃんは誰を狙ってたの? 誰を殺るつもりだったの?」

道重の表情は、TVや舞台でスポットライトを浴びているときよりも、百倍楽しそうだった。
101 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:13
道重はどんな際どい話をしている時にでも上品な笑みを崩さない。
触れたもの全てを洗練させてしまうような、魔法の笑みだった。

「まさか日曜大工をするつもりだったとかじゃないよね? 違うよねー?」

真野ちゃんもまたニコリと笑って首を縦に振った。
道重の笑みが血統書付きの洋犬であれば、真野ちゃんの笑みは原っぱで転がる雑種の子犬だろうか。
あるいは道重の笑みが揺るぎのないダイヤモンドであるのなら、
真野ちゃんの笑みはくるくると表情を変える万華鏡のようなものだろうか。

道重は自分に似ているようで全く似ていないこの後輩のことが結構好きだった。
完璧なキャメルクラッチを10分以上極められていても、ギブアップしないどころか、
涙一粒こぼさない、この強気で勝気で負けん気の強い後輩が好きだった。

「戦うんだよね。両手に武器を持って」

真野ちゃんは顔から笑みを消して首を縦に振った。
102 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:13
「コラ―! 二人とも何を言ってるの! 全部聞こえてるんだからね!」

いきなり至近距離から新垣に叫ばれ、真野と道重は思わず首をすくめた。
新垣は二人から金槌とノコギリを取り上げ、マネティに押し付ける。

「戦うって? 本気なの!? だったら武器なんかいらなーい!
 アイドルにとっての武器は金槌やノコギリじゃないんだー!!」
「じゃあガキさん、アイドルにとっての武器ってなんなの?」
「気合いと根性!」
「はいはい。そう言うと思った」
「違うっていうの? じゃあさゆにとっては金槌とノコギリなの?」
「まあ、違いますけど」
「じゃあなにさ」
「美貌と歌唱力」
「なるほどね。さゆは美人だし歌もメチャクチャ上手いし・・・・・っておい! 誰が上手いねん!」
「うわあ・・・・・ガキさん、その関西弁乗り突っ込みは・・・・・ちょっと」

頼もしい先輩二人の漫才を真野ちゃんはニコニコしながら見つめている。
その一方でマネティは「アイドルの武器ってなんだろう?」と本気でじっと考え続けていた。
103 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 21:13
104 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/30(月) 21:14
>>89
鈍感力ってやつですか
マネティは本当に芸能界向けの性格してると私もそう思います
105 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/08/30(月) 21:17
>>90
ずれてるずれてる。
いつの日かずれ過ぎて一周回って戻ってくると思います。
106 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/30(月) 22:36
更新お疲れ様です
リアルを感じます
107 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/31(火) 01:11
田中ボロクソw
108 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:32
109 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:32
07 桶狭マノ戦イ
110 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:32
「うわあ、真野ちゃん、すっごい似合ってるよ!」

真新しい衣装に身を包んだ真野ちゃんを見てマネティは喝采を上げる。
それはまんざらお世辞でもなかった。

確かにマネティは、マネージャーとしての業務に支障をきたすほど
担当である真野恵里菜のことを盲目的に溺愛しており、
猫にいたぶられるネズミのようにコロコロと転がされる頻度毎日のごとし状態だったが、
そういった問題点の理由がマネティの人間性にあるのではなく
真野恵里菜の美貌と素直な性格によるものであることは、
藤本美貴の担当だった頃のマネティが、
今とは違ってごく普通のマネージャーだったという事実からも容易に証明可能だろう。

要するにマネティが何が言いたいかというと、
鎧兜を身にまとった真野ちゃんの雄姿が、
凛々しい・美しい・神々しい、と三拍子揃っているぜ!

ということだった。
111 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:32
ハロプロは言うまでもなく女性アイドルに特化した集団である。
だがそんなアイドル集団にも時々時代劇の仕事がやってくる。
後藤真希がNHKの大河ドラマに出演していたのも、そんなに昔の話ではない。
といってももう五年も前のことになるのだが。

ちなみに五年前の真野ちゃんは普通にお客さんとしてモーニング娘。の文化祭を見に来ていた。
ステージの上に立つモーニング娘。の姿をキラキラとした瞳で見つめていた。
それも、もしかしたらそんなに昔のことではないのかもしれない。
すっと目を閉じてうつむけば、一呼吸のうちに思いだせる距離。
真野ちゃんの中では、それくらいの場所にある記憶なのかもしれない。

もっともマネティの中では五年前のことといえば、
矢口真里の熱愛発覚・電撃脱退が起こった年としか記憶されていないのだが。

とにかく今、真野ちゃんは時代劇の撮影の真っただ中にいた。
112 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:32
映画のロケ地は山梨の奥にある人気のない山間の一角だった。
今にも雨が落ちてきそうな分厚い雲が、途切れることなく空に覆いかぶさっている。
まだ昼間だというのに周囲は薄暗かった。

蒸し蒸しとする気候だ。
マネティは次のシーンの撮影までまだ時間があることを確認すると、
真野ちゃんの髪形が崩れないようにそっと兜を脱がせた。
結い上げられたマノヘアーがしっとりとした黒い艶を放っている。
マネティは鞄からヘアスプレーを取り出して軽く当てる。

「真野ちゃんは日本髪も似合うねえ。おでこが狭いからかなあ」

おでこが広い子を担当していたときは、時代劇の仕事は大変だった。
自分のおでこが広いことを棚に上げ、主演男優の頭を指差しては
「あいつのかぶってるズラ取ってこいよ。芝居用じゃねえ。普段からつけてるズラだよ」
とか逆ギレするような子を担当していたときは、本当に胃に穴が開いたものである。

学生時代の友人に愚痴ったら「そんな藤本美貴みたいな子がいるの?」と訊かれたが、
誰あろう藤本美貴その人こそが当時のマネティの担当だった。
そんな時代もあったねとマネティはしばし回想に浸る。
113 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:33
真野ちゃんは勿論、そんなことはしない。
おでこは狭いし、逆ギレはしないし、ブログで旦那とのラブラブな記事も書かない。
本当に手のかからない子だった。
藤本との唯一の共通点といえば、私のことが大好きということくらいかなあとマネティは思う。

その時、暗い林の中に銀の光が一閃した。マネティは我に返る。
本物そっくりに作られた模造刀を真野ちゃんが振り回していた。
実はこの模造刀はかなり重たい。重くないと迫力が出ず、安っぽく見えてしまうのだ。
だが真野ちゃんは鍛え上げられたマノマッスルをしならせて、流れるように模造刀を振り回す。
仕事柄、時代劇を見ることも多いマネティの目にも、その姿はなかなか様になっていた。

「おお。だいぶ上手くなったじゃん、真野」

マネティも余っている模擬刀を持って真野ちゃんの相手をする。
二人はしばらくの間、カンカンキンと切り合いの真似ごとのようなことをして遊んだ。
だが真野ちゃんと遊んでいてもマネティの心の中には大きな不安があった。
今回の撮影では桶狭間の戦いのシーンを撮ることになっている。
真野ちゃんはそこに登場する謎の女剣士というフィクションな役柄だった。
その登場シーンは、この映画においてはかなり重要な場面である。

そして真野ちゃんはその重要なシーンで、馬に乗らなければならなかった。
114 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:33
真野ちゃんが乗ることになっている芦毛の馬は、二人のすぐ後ろにつながれていた。
でかい。近くで見ると相当でかい。
そして背もかなり高い。この高さから落ちたらただでは済まないだろう。

この馬に真野ちゃんは乗る。

やはり素直にスタントマンをお願いした方が良かったのだろうか。
だが事務所は「スタントマンを使わなければ話題になる」と判断して映画の製作サイドに交渉した。
そんな無茶な条件が通るわけないと思っていたら、事務所の提案はすんなりと受け入れられた。
製作サイドとしても何らかの話題作りが欲しかったようだ。
こうなったら現場側が何を言ってももう無駄だ。上が決めたら下は従うしかない。

マネティは悲壮な覚悟で撮影に臨んだが、真野ちゃんはいつもと同じように朗らかだった。
乗馬クラブに通って腕を磨いたのはたったの一週間。ちっとも上達しなかった。
それなのに真野ちゃんの表情には一点の曇りもなかった。やる気がみなぎっている。
いつも以上にキラキラと輝いている真野ちゃんを、マネティは不思議そうな顔で見つめていた。

(なんでだろう? ギャラも二倍になったからかな? いや、そんなことでは真野ちゃんは・・・)

マネティが「まさかそんなことは」と思ったことは、実はズバリと当たっていた。
115 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:33
暗い森に、とうとう雨が落ちてきた。
だが撮影は中断するどころか、大急ぎで再開の準備が進められていく。
合戦のシーンには雨が欲しかったところだったのだ。慌ただしくスタッフが走り回る。
そんな中、真野ちゃんは白馬にまたがったまま、右へふらふら、左へとっとこと流されていく。
あまりにも頼りない動きだったのだろう。助監督らしき男が駆け寄ってきた。

「おいおいおい。ホントにこの子で大丈夫なの? 一応スタントも用意してるけど?」

真野ちゃんとマネティはまるでシンクロの選手のようにピタリと息を合わせて振り返る。
そして二人同時にキリッと表情を引き締めて、首を横に振った。

「やるときはやりますから。うちのタレントを甘く見ないでください」
「そっちこそ馬のことを甘く見てんじゃない?」
「大丈夫です。うちの真野は鍛えられてますから」
「こう言っちゃなんだけど頼りないんだよね。やっぱりスタントで」
「大丈夫ですって! 今更そんな、台本だって全部覚えたのに。できますよ絶対!」
「台本ねえ。馬は台本通り動かないよ。合戦のシーンになったら突発的なことも起こるし」
「突発的!? へえそうですか。あなたの言う突発的って、こういうことですか!」

売り言葉に買い言葉。
普段は温厚(というかビビり)な性格をしているマネティだったが、
こと真野の仕事のことになると人が変わる。
マネティは真野ちゃんを乗せた白馬のお尻を、思いっきり蹴り上げた。
116 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:33
白馬は飛び上がらんばかりに驚いた。
いや、実際に50cmくらいは飛び上がった。
助監督も驚いた。真野ちゃんも驚いた。
驚いた真野ちゃんの顔を見て、なぜかマネティはテンションが上がった。

真野ちゃんは振り落とされまいと必死で手綱にしがみついている。
馬はなかなか落ち着かなかった。助監督は馬を刺激しないように低い声で唸る。

「あんた何やってんだ。自分とこのタレントが怪我しても良いのかよ」
「真野はこれくらいなら全然平気ですから。鍛え方が違うんです。ね、真野ちゃん」

真野ちゃんは馬上で思いっ切り首を横に振る。首が千切れそうなほど激しく振った。
ちっとも平気ではなかった。正直言って死にそうだった。
だがようやく馬も落ち着いたようだ。
真野ちゃんもぜえぜえと必死で息を整える。
117 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:33
「ちっとも平気じゃないだろ! 合戦になったらもっと人も馬も入り乱れるんだぞ!」
「だから平気って言ってるじゃないですか」
「こんな素人の子が馬に乗ってたら周りが怪我をするんだよ!」
「なんで怪我するんですか?」
「思うように乗れてないだろ。落ちないようにするのが精一杯じゃないか」
「落ちないならいいでしょ!」
「だから突発的なことが起こったらどうすんだよ! この子じゃ対応できないだろ!」
「だ! か! ら! 突発的なことってなによ! こういうこと!?」

マネティは手にした模造刀で思いっ切り馬の太腿を叩いた。
かなり激しく叩いた。結構シャレにならない音がした。
それだけではない。マネティは間髪入れず、馬の目に向かってヘアスプレーを吹きかけた。
今度は50cmどころの騒ぎではない。馬はロデオショーの荒馬のごとく飛び跳ねた。
手綱を握り締めた真野ちゃんも右に左にと飛び跳ねる。真野ちゃんの顔から血の気が失せた。

「おいおいおい! 無茶すんじゃねえよ! てめえ馬を殺す気かよ!」
「あれ? これくらいでびびってるんですか? 怖がってるんですか?」
「バカかお前は! 危ない! 危ないって! 落ちたら怪我じゃすまねえ!!」
「大丈夫だよねー、真野ちゃん」
「・・・・・・・おい」
「・・・・・・あれ?」
「大丈夫なのか? あれで・・・・本当に・・・・・」
「うーんと・・・・多分・・・・はい」

いつの間にか真野ちゃんは、馬の首を両腕で抱えたまま逆立ちの状態になっていた。
逆立ちの状態で気絶していた。
118 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:33
「それじゃあ、シーン27! スタート!!」

監督の叫びとともにエキストラが津波のごとく湧き出てくる。
そこら中の草木を蹴散らして両軍の足軽達が躍り上がる。
雑草の下に埋もれていた水溜りは、瞬く間に泥の沼地と化していく。
おそらくこのシーンを撮り直すことはできないだろう。まさに一発勝負だった。

「真野ちゃんに何事も起こりませんように・・・・・・」
「何をいまさら」
「冷やかさないでください」
「まあ、無事に終わるといいけどさあ」
「嫌味もやめてください」
「バカ言ってんじゃねえ。タレントが怪我したらこっちも面倒なんだよ」

マネティは助監督の男とぐだぐだと喋りながら真野ちゃんの出番を待つ。
だが口にするほど心配はしていなかった。真野は本番に強い子。そう信じていた。
だから助監督の男が声を裏返して叫んだ時も、してやったりと微笑んだだけだった。

「おいあれ! あいつじゃねえの!? なんであんなところにいるんだよ!!」
「真野ちゃんですねえ」
「バカか。台本にねえだろ・・・・危ないって! 落ちる落ちる落ちる!」
119 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:34
切り立った崖の上に立つのは一頭の白馬。
それに跨るは白銀の鎧兜に身を包んだ黒髪の美少女。
なぜか少女は馬の首の上で逆立ちになりポーズを決める。
それが白馬への合図だった。人馬一体となったマノホースは転がるように崖を駆け降りる。

それを茫然と見つめる数百人のエキストラとスタッフ。
パニックになる一歩手前で、撮影現場は言いようのない興奮に包まれ沸騰する。
再びカメラが回り始める。人が動く。空気が変わる。真野ちゃんを中心にして。

その中で一人、マネティだけが冷静に真野ちゃんのことを見つめていた。
特に驚くようなことではない。これが真野恵里菜なのだ。
だからマネティは慌てない。
いつものように心の中で真野ちゃんに向かってエールを一つ送った。

(いけっ 真野! ここがあんたの見せ場だよ!)
120 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/02(木) 20:34
121 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/02(木) 20:35
>>106
ありがとうございます。
リアルに感じることができるあなたは立派な病気です。胸を張って下さい。
122 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/02(木) 20:39
>>107
この物語はフィクションです
田中会も田中軍団も実在しません
123 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/03(金) 00:50
このマネティの精神状態は何かの病気に当てはめられるはず
124 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/03(金) 17:14
この小説を読んで真野ちゃんに興味湧いてきた
けどそれ以上にマネティの虜になりそうw

そして正直この小説の本当の主役はマネティだと思ってたが
ここに来て真野ちゃんが盛り返してきたわー
125 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/05(日) 13:46
言葉を発してないのに一番真野ちゃんの表情が浮かんでくる不思議
126 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:32
127 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:32
08 マノデート
128 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:34
暦が九月に突入してもなお、東京は残暑厳しい。
そんな猛暑の中を一台の電車が通り行く。

日差しを照り返す線路は、無機質な鈍色をしているはずなのに、
どことなく赤黒く光る溶岩のように見えた。
瞳を閉じてもなぜか目の奥がチカチカする。秋はまだ果てしなく遠い場所にあった。

遠く山梨のロケ地から朝一番の電車で帰京してきた真野ちゃんとマネティ。
マネティが乗り換えを勘違いするというマネージャーらしからぬ失態を犯したため、
二人が東京に戻ってきたのは、そろそろお昼御飯でも食べようかという時間帯だった。

すっかり鬱モードに入った真野ちゃんは、マネティに説教をすることも忘れてどんよりとしている。
真野ちゃんがマネティへの説教を忘れる。
普通の状態であれば絶対に考えられない事態だ。
129 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:35
真野ちゃんは思ったことが全部顔に出る。
だが腹が立っているはずなのに、今の真野ちゃんの顔にあるのは疲労だけ。
とてつもない肉体的疲労と精神的疲労が真野ちゃんの体を押し潰そうとしていた。
まさに疲労困憊、しぼむぜマノパイ。
だが真野ちゃんにとっては、体の疲れよりも心の疲れの方がずっと大きそうだった。

真野ちゃんは手に持った大きな手鏡をじっと見つめている。
電車に乗っている人が、物珍しげにじろじろと見てくるほど大きな手鏡だった。
だが真野ちゃんはそんな周囲の反応にもまったく頓着しない。
ただ思いつめた表情でじっと鏡を見つめている。

いつものような鬼気迫るような厳しさもそこにはない。
ただぼんやりと鏡を見ているだけなのだ。
数々の修羅場をくぐり抜けずに巡り続けている修羅場の住人・マネティも少し焦る。

「ね、真野ちゃん。やっと都心に戻ってきたよお。よかったよかった」
130 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:35
真野ちゃんは怒っていない。全く怒っていない。
それがマネティは怖かった。怖いというより、不安な気持ちにさせられる。

真野ちゃんは素直な子だ。怒っていれば怒っていたで、怒りを全てぶつけてくる。
その真野ちゃんがこんな暗い顔をしているということはタダごとではない。
ただ疲れているだけではないのだ。真野ちゃんの心が完全に内側に籠ってしまっている。

とてつもなくテンションが上がったかと思うと、次の瞬間には暗く落ち込んでしまう。
まだ回数は少ないのだが、最近ときどき真野ちゃんにこういった事態が起こる。
マネティはいまだこの問題の解決方法を知らなかった。

こっちから怒ってもダメ。励まそうとしてもダメ。そっとしておいてもダメ。
煽ってもダメ。くすぐってもダメ。お金で釣ってもダメ。
一度など「世界は サマー・パーティ」を目の前で歌って踊ったのだが完全に無視された。
死にたいと思った。でも気にしない。そんな気分は年中行事だったから。

でもマネージャーが死にたいと思うことはちっとも構わないが、
タレントがそうなってしまったら芸能人として終わりだとマネティは思った。
131 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:36
一緒に落ち込んでいたって仕方ない。何でもいいから何かするべき。
それでもマネティには賢いやり方など一つも思いつかない。
ならば道化に徹すればいい。バカになりきればいい。行けるところまで行けばいい。
さて、どこに行こうか。
アメリカやオランダまでは行けないけど。行けるところまで行けばいい。

「さあ、真野ちゃん。ここで降りるよ。最後の乗り換えだからね」

マネティは真野ちゃんの手を引いてホームに降り立つ。
細くて柔らかい手をつかみながら、マネティは強引に真野ちゃんを引きずる。
いつもよりも幾分乱暴な手つきだった。
それでも真野ちゃんはリアクションらしいリアクションは全くしなかった。

だが新たに乗り込んだのがモノレールだと気付いた時は、さすがに顔を上げた。
このまま行けば羽田空港に着いてしまう。
今日はもう仕事はない。明日と明後日は仕事の予定は一つも入っていないのだ。
あとは家に帰るだけのはず。だがそれでもマネティは一向に引き返そうとしない。

怪訝な表情を見せる真野ちゃんに対して、マネティは白々しくつぶやいた。

「あ、しまった。また乗り違えたかな?」
132 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:36
「間違えた、間違えた。本当に間違えちゃったよー」

そんな言葉を歌うようにつぶやきながら、マネティはどんどん進んでいく。
引きずられるがままに付いてきた真野ちゃんも徐々に生きた表情が戻ってくる。
これから何が起こるのだろうか?といった好奇心がもたげてきたようだ。

マネティはカウンターで二枚の航空券を買うと、一枚を真野ちゃんに渡した。
真野ちゃんはいつも以上に素直にチケットを受け取る。
行き先は「南紀白浜空港」となっていた。

「さあ、真野ちゃん。電車を間違えてここまで来たのも何かの縁だよね?」

真野ちゃんは不思議そうな顔でマネティを見つめる。
その顔には完全に生気が戻ってきていた。そしてある種の険の強さも。
マネティが下手なことを言おうものなら説教の一つもブチかます。
それくらいの気概が真野ちゃんの瞳には戻ってきていた。
だが次の瞬間には、そんな強気な気持ちは夏の空の彼方に吹っ飛んでしまった。

「そういうわけで、これからちょっとあたしとデートしない?」
133 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:36
そして二人は南紀白浜空港に下り立つ。
西の大地もまた、東の都に負けず劣らず暑かった。
だが空気の質が微妙に違う。観光地独特の柔らかくて開放的な空気が流れていた。
そんな穏やかな空気が固く閉じていた真野ちゃんの心を少しずつ解きほぐす。

マネティは最初から予定を立てていたかのようなスムースさでタクシーに乗り込む。

仕事のときとは打って変わって手際のよい手配振りであった。
そして二人はパンダやイルカやペンギンや白クマが待つ夢の楽園、
南紀白浜アドベンチャーワールドへと突撃していくのであった。

いつしか真野ちゃんは、時間を忘れて遊び倒していた。
夢中になっているうちに気がつけば驚くほどの時間が経っていた。
二人は夢の楽園を骨の髄まで堪能すると、再びタクシーに乗り込み、
日が暮れようとしている海に向かって走り出した。
134 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:37
「ほな、お客さん。私はここで車止めて待ってますから」
「はい」
「気をつけてね」
「はい? 何に気をつけるんです?」
「いや。二人ともそんな格好しとるから。海に落ちたら面倒やで」
「落ちないですよ!」
「いやあ。たまにはしゃぎ過ぎて飛びこむ人とかいますんで」
「アハハハハ。そんなバカなことしないですよぉ」
「落ちたら、タクシー乗せませんで」
「はいはい」

タクシーの運転手が心配したのも無理はない。
二人はロケ地から着の身着のままここまでやってきた。
海で泳ぐような格好もしていないし、着替えも何も持ってきていない。
ただ勢いだけでここまでやってきたのだった。

二人は観光名所である千畳敷までやってきた。
マネティは真野ちゃんの手を引いてごつごつした岩場を歩いていく。
水平線の彼方にオレンジの太陽が沈もうとしているところだった。

そろそろ日が暮れる。
マネティは片手で器用に携帯電話を操り、
ここから歩いても行けるような近場のホテルを予約した。
135 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:37
「予約しておいたからねー、真野ちゃん」

真野ちゃんは答えない。
アドベンチャーワールドでは小学生のようにはしゃいでいた真野ちゃんだったが、
千畳敷に到着してからは、また黙りこくって自分の世界に入り込んでいた。

西日が眩しい。
マネティは真野ちゃんの姿を直視することができなかった。
逆光のその向こう側に真野ちゃんのシルエットだけがくっきりと浮かび上がる。
真野ちゃんが何を考えているのか、マネティには全然わからない。
でもそれでいいと思った。
心が通じ合っているなんて思わない。でもそれでもいいんだと思った。

真野が楽しければ私も楽しい。私が楽しければ真野もきっと楽しい。
真野が百回落ち込んだら、私は百回励まそう。
それが仕事だから? それでお金をもらっているから?

まあ、今はそれでいいや。今はね。
136 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:37
マネティは真野ちゃんの手を離すと、岩場の岩と岩の間をぴょんぴょんと飛んだ。
無性に飛び跳ねたい気分だった。歌って踊りたい気分だった。
真野ちゃんがそうであるように、マネティもまた裏表のない人間だった。
何も考えずに、やりたいと思ったことをそのまま実行する人間だった。

「なつ、なつ、なつ、ギラ、ギラ、ギラ」

マネティは口笛を吹くように軽やかに歌う。
その時二人の耳には、聞こえないはずのピアノの音が確かに聞こえていた。
勿論、その歌の持ち主ほど上手くはなかったが、気持ちのこもった歌だった。

「来い、来い、来い、ギラ、ギラ、ギラ」

マネティの歌に合わせて、真野ちゃんはPVのように手鏡を掲げた。
真野ちゃんの手鏡は大きい。
真夏の西日を思いっ切り弾き返すと、鋭い陽の光は
岩場の間を軽快に飛び跳ねていたマネティの目を直撃した。

「ちょ! まぶ!」

アドベンチャーワールドのイルカショーにも負けないような水しぶきをあげて、
マネティは白浜の海に豪快にダイブした。
137 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:38
「真野ぉ・・・・・一生恨むからなあ!」

タクシーは本当に帰ってしまった。さすが関西人はやることがえげつない。
真野ちゃんは一人だけでタクシーに乗ろうとしたが、
マネティは頑として予約したホテルの名前を教えなかった。
仕方なく真野ちゃんもマネティと一緒にとぼとぼと歩いてホテルを目指すこととなった。

ずぶ濡れになったマネティは、道連れにしてやろうとばかりに、真野ちゃんに抱きつこうとする。
真野ちゃんはそれをひらりひらりとかわしながら、
いつしか汗だくとなって、マネティと大して変わらないほど汗でずぶ濡れになっていた。
それでも真野ちゃんは絶対にマネティには捕まらない。寸でのところでかわし続ける。

ちくしょう。つかまえたら。こいつも一緒にずぶ濡れにしてやったら。
恨みも晴れるのになあ。この気持ちもチャラにしてあげるのになあ。許してあげるのになあ。

そんなことを思いながらもマネティは、
きっと自分は一生この子を捕まえることはできないんだろうなと、
ぼんやりとした頭でぼんやりとそう考えていた。
138 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/06(月) 21:38
139 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/06(月) 21:39
>>123
それは全くその通りなんですが、お医者様でも草津の湯でも治せないと思います
140 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/06(月) 21:40
>>124
真野ちゃんは天才でマネティは凡人です。
ですが時にその関係が可逆的なのがこの二人の面白いところだなあというのが私の感想です
141 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/06(月) 21:41
>>125
真野ちゃんは目で殺すよ
笑顔で殺すよ
142 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 19:57
この話好きだなあ
143 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:19
144 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:19
09 マノストライク
145 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:20
適度に広い幹線道路。途切れることのない車の列。
無機質な灰色のビル群。無駄にお洒落な装いをした小さな店の数々。
水道橋の駅を降りると、そこには東京によくあるごく普通の景色が広がっている。

だがそこからほんの数分歩くと、いきなりジェットコースターのレールが目に飛び込んでくる。
子供の声だろうか。それとも若い女性の声だろうか。
街中ではまず聞くことのないはずの甲高い歓声も、風に乗って彼方から聞こえてくる。
そして視界の大部分を占めるのは「ビッグエッグ」の異名を誇る大型ドームの白い屋根。
真野ちゃんとマネティも、顎を上げてじっとその光景を見上げたまま数秒間沈黙していた。

「真野ちゃん」

マネティは真野ちゃんに説教口調で語りかける。
それはまるで自分に言い聞かせているようにも見えた。

「今日はお仕事だからね。遊びに来たんじゃないからね」

真野ちゃんはキラキラした瞳を東京ドームに向けながら、
マネティの言葉を右から左へと華麗に聞き流していた。
146 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:22
水族館の入り口のような回転ドアをくぐり、二人はドームの中に入る。
試合開始まではまだ3時間以上ある。
グラウンドの上では選手たちがウォーミングアップで汗を流していた。

観客がほとんど入っていない客席がやけに広く感じられた。
その一方で四方を客席に囲まれたグラウンドは意外なくらい狭く感じられる。
真野ちゃんがいつも仕事をしているようなホールとは全く異質の空間だった。

数秒前に夢中になっていた遊園地の光景は、一瞬にして二人の頭から消え去った。
遊園地ではない。真野ちゃんが輝くのはそんなところで遊んでいる時じゃないはず。
それよりもここ。いつかこんな場所で、数万の観客を前にコンサートができたなら。
図らずも真野ちゃんとマネティは全く情景を想像していた。

勿論、今日の仕事はコンサートではない。
歌うことはないし、それどころか話すこともないだろう。
真野ちゃんの今日の仕事は、この試合の始球式に出ることだった。

「よーし。とりあえず着替えて準備しよっか、真野ちゃん」
147 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:22
試合開始まで2時間を切った。二人は狭い控室の中で準備を進める。
ホームチームのユニホームに着替えた真野ちゃんは帽子をかぶり、グラブをはめる。
白を基調としてオレンジのラインが入っているユニホームと黒い帽子は、
真野ちゃんのビジュアルに適度にフィットしていた。なかなか凛々しい姿だ。

「いいねー。真野ちゃん結構似合ってるよ。これなら遠目にも映えるかも」

真野ちゃんはそれには答えず、手にした薄給をマネティに投げた。

「真野ちゃん、違う違う。投げるのはそのハッキュウじゃないから」

マネティは真野ちゃんに給与明細の入った封筒を返す。
プロ野球選手が見たら「日当?」と思いそうな額だったがとりあえず今は関係ない。

改めて真野ちゃんは至近距離からマネティに白球を投じた。
ぎこちないフォームから勢いよく投じられた硬球は、
あり得ない角度で控室の天井に向かって一直線に伸び、見事に蛍光灯を叩き割った。
148 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:22
「練習はこちらでお願いします」
広報の人に連れられて、二人はブルペンの端に連れていかれた。
横ではTVで見たことがあるような人がビシバシ投球を行っている。

「本当にここでいいんですか?」とマネティは何度も確認したが、
担当者は生返事だけを残してさっさと引き上げてしまった。
何ともいい加減な扱いだったが、そんな扱いなど慣れっこになっている二人である。
気持ちを切り替えて二人はブルペンの隅っこでキャッチボールを始めた。

真野ちゃんはキャッチボールなどほとんどやったことがない。
我流のピッチングフォームから投じられる白球は、右に左にと大きく逸れていく。
それ以上に酷いのがマネティの投球だった。
「創作ダンス?」と言いたくなるような奇妙な動作から、あらぬ方向に球が飛んでいく。

真野ちゃんとマネティはキャッチボールの練習をしているはずなのに、
球を投げている時間よりも、球を拾いにいってる時間の方が圧倒的に長かった。
まるで飼い主が犬に向かってボールを投げて、取りに行かせて遊んでいるような感じだった。
横で見ていた人は「この二人は一体何をやっているのだ?」と思ったことだろう。
149 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:23
そして実際に、横で見ていたピッチングコーチらしき男が声をかけてきた。

「ちょっとあんたら、何やってんだよ。邪魔だよ、邪魔」
「はあ、すみません。今日ちょっとこの子が始球式をやるもんで」
「始球式? そういやそんなこと言ってたな。なんとかっていうアイドルの子だよね」

なんとかってなんだよ。この子には真野恵里菜っていう名前があるんだよ。
不満に思ったマネティだがそこはグッとこらえる。
「アイドル」と聞いて若手選手たちの間からは「おお」と小さな歓声があがる。
コーチが「コラお前ら」と咎める声を無視して真野ちゃんに群がる選手たち。

ムッと胸やけしそうなほど体育会系の臭いが濃い、むさくるしい男どもだった。
「手取り足取り教えてあげるよー」などと冗談を言いながらちょっかいをかけてくる。
それでもちやほやされると嬉しい。マネティもまんざら悪い気はしなかった。
選手たちのその一言を聞くまでは。

「それで、この子どこの子? AKBの子?」
150 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:23
真野ちゃんに反論の機会は与えられなかった。

「うっそー、マジ? やっぱそうなんだ」
「へー、初めて見たけどAKBの子って可愛いな」
「マジ? 本物? おれも見たことないんだよなあ」
「始球式? さすがだねえ。今すっごい売れてるもんね」
「そんじゃ今日はこの子目当てでファンも結構来るんじゃねえの?」
「ねえ後でサイン頂戴よ。俺のサインもあげるからさあ」
「お前のサインなんていらねーっつーの」
「お前ら! それくらいにしろよ! さっさと練習に戻れ! 時間ねえんだぞ!」

コーチにどやされて、選手たちは三々五々練習へと戻っていく。
真野ちゃんは一言も言い返せないまま立ちつくしていた。
マネティもきゅっと唇を噛み締めたままうつむいている。
コーチはそんな二人の様子には頓着することもなく、陽気に声をかけた。

「さ、あっちで練習しましょうか。一通りのことは教えますよ」

二人にできることは、黙ってコーチに向かって頭を下げることだけだった。
151 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:23
プロ野球のコーチという人種は、娘。OG並に暇な人種なのだろうか。
試合の直前だというのに、二人のコーチが真野ちゃんの相手をしてくれた。
一人が真野ちゃんのキャッチボールの相手をし、
そしてもう一人が真野ちゃんの横に立ってあれやこれやと投げ方を教える。

「ほーら、肘が下がってるよ」
「足はもっと前に踏み出して」
「目線は相手のグラブに」
「頭の中でボールの軌道をイメージして」

さすがにこれで飯を食っている人間という感じだった。
野球の素人であるマネティから見ても、コーチの教え方はかなり上手いように見えた。
真野ちゃんのピッチングフォームはみるみるうちに様になっていく。
最初は散らばっていたボールの軌道も、どうやら人並みになってきたようだ。

マネティは、真野ちゃんの投げるボールを受けているコーチの横にいた。
コーチは気安くマネティに話しかけてくる。
プロ野球の関係者は選手もコーチもみな似たような気安さが感じられた。
いかつい見かけほどは気難しい人間ではないようだ。

「なかなか筋がいいよ、あの子。女の子にしては上手いんじゃない」
152 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:24
マネティも如才なくコーチの話相手を務めていた。
だがこれだけはちゃんと言っておかなければならないだろう。

「あのー」
「うん?」
「あの子はAKBの子ではなくて・・・・・」
「ああ、選手がそんなことを言ってたねー。違うんだ。あいつらの勘違いか」
「そこのところ、ちゃんと誤解は解いておかないとと思いまして」
「そんなの気にしなくていいんじゃないの?」
「気にするんです!」

マネティは声を荒げようとして、それでも必死に声を抑えた。
こんな話は真野ちゃんには聞かせたくない。

「でもあの子も黙ってたじゃない。あの子は気にしてないんじゃないの」
「いえ。あの子はそういう子なんです」
「え?」
「言い訳しない子なんです」
「言い訳ねえ・・・・・。それはちょっと違うんじゃないの」
「違っててもいいんです。自分の口から言ったら負けなんです」
「ハハハハハ! 可愛いこと言うね。ふーん。女の意地ってやつ?」

マネティはそれ以上何も言い返せなかった。
153 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:24
「今日の始球式は、真野恵里菜さんでーす」

場内アナウンスが流れ、球場にはパラパラとまばらな拍手が起こる。
真野ちゃんは大きく手を振って場内の歓声に応える。
いつもの真野ちゃんだった。その顔に浮かぶのは会心の笑顔。

真野ちゃんはいつだって裏表のない子だった。
この瞬間が自分にとってこれ以上ないくらい大切で大事な時間だということを理解していた。
この瞬間が自分にとっては戦いの時。弱気な姿を見せるわけにはいかない。
だから笑う。戦いの場にいる自分が、愛おしくて、頼もしくて、そして何よりも楽しいから。

真野ちゃんはピンと背筋を伸ばして投球動作に入る。
そんな凛々しい姿をマネティはじっと見つめていた。
いつもの真野ちゃんだ。いつもの仕事モードの真野ちゃんだ。
その姿を確認して、マネティはホッと息をつく。

さあ行け真野ちゃん。その雄姿をみんなに見せつけてやれ!
154 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:25
真野ちゃんが放った白球は綺麗な放物線を描いてミットに収まる。
球審が高らかにストライクの声を上げた。
こうして始球式は滞りなく終わり、予定通りに試合が開始された。

真野ちゃんはグラウンドから去り、控室に戻る。
ちょっと興奮したのだろうか。ピンクに染まった頬が上気していた。
実は今日のこの子は、いつもよりも緊張してたんだな。
マネティは真野ちゃんの顔を見てそれに気付く。

女の意地?
それは違う。自分は同じ女だけど、何も言い返すことができなかった。
笑われても何もできなかった。
でも真野ちゃんは違う。立派に自分の仕事を果たした。
女の意地なんかじゃない。アイドル・真野恵里菜の意地だ。
マネティは真野ちゃんの頭から帽子を取ると、ピンクのスポーツタオルをそっとかぶせた。

「お疲れ、真野ちゃん! よくやった!」
155 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/09(木) 21:25
156 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/09(木) 21:26
>>142
僕も好きだなあ
ちょっと毛色が違う話かなあと思っていたので好きだと言って頂けると嬉しいです
157 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/12(日) 04:22
便乗して僕も好きです
今回もすごく良かった
158 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/12(日) 18:07
表面はおふざけ話だけど中身は熱いな
159 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/12(日) 21:56
ピンクに染まった頬からのくだりがなんかじ〜んときた
160 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 03:29
これはマネティと真野ちゃんのビルドゥングスロマンですね( ^ー゜)ъ
161 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:40
162 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:40
10 マノベスト
163 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:40



これは今から決してそう遠くない未来の話。


 
164 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:41
今日も真野ちゃんは元気に全国を駆け回っていた。
固く引き締まった腹筋に、溢れる力を込めて。
黒目がちな丸い瞳に、隠せぬ野心を宿らせて。
今日も清楚なお嬢様は、偽りのない笑顔を浮かべつつ、とことこと歩きゆく。

清楚は力。笑顔は力。そして美しさもまた力。真野ちゃんが持つ大きな力。
ただの布と糸の組み合わせでしかないはずの薄っぺらな洋服も、
真野ちゃんがその身にまとうと、魔法をかけられたように眩い輝きを放ち始める。
世が世なら魔女裁判にでもかけられてしまいそうな悪魔的な美しさ。
美は力。人を動かす力。世を動かす力。そう信じることは間違いだろうか?

間違いであろうとなかろうと、真野ちゃんはこの国を全力で駆け抜ける。
いつも以上に気合いが入っているように見えるのは、マネティの気のせいではないだろう。
残された時間は少ない。やるべきことは多い。
真野ちゃんに負けないようにと、マネティもまたいつも以上に気合いを入れた。

真野ちゃんのベストアルバム「マノベスト」。
二人はそのプロモーション活動の真っただ中にあった。
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:41
真野恵里菜というアイドルは―――
このベストアルバム発売をもって大きな転換を強いられることになった。

転換点と言っても、今後どのような活動が待ち受けているのか、二人はまだ知らない。
知ったとしても意味はない。なぜなら真野ちゃんが所属する事務所はUFAだから。
美勇伝美勇伝。ミニモニミニモニ。後藤真希後藤真希。
どんな方針が決まろうとも、どこに向かって転換しようとも、意味があるとは思えない。
二人は痛いくらいにそのことを理解していた。
とにかく今は、そんなことはどうでもよかった。他にやるべきことはたくさんある。

「よーし、真野ちゃん。今日はここでインストアイベントだよ」

控室に入ると、マネティは椅子に真野ちゃんを座らせ、メイクにかかる。
素肌にうっすらと浮かぶ汗を拭き取る。
肌の調子を見れば真野ちゃんの体調もよくわかる。
ここのところは移動続きでちゃんとした睡眠がとれていないからどうかと思ったのだが、
どうやら今日の真野ちゃんは心も体も絶好調のようだった。

問題らしい問題は一つもなかった。
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:41
観客の集まりはあまりよろしくなかった。
熱心に応援してる人も何人かいたが、全てマネティにも見覚えのある常連さんだった。
それでも真野ちゃんはいつものように面白おかしいトークをし、
危なっかしい歌を披露し、丁寧に握手をして、イベントしっかりと盛り上げた。

有象無象の女性アイドルを山ほど見てきたマネティの目にも、
それは一分の隙もないような完璧なアイドル振りのように見えた。
だがそこに微かな違和感のようなものを感じたことも確かだ。
よく考えれば真野ちゃんももう二十歳を過ぎた。
方向転換するという事務所の決定も、そんなに理不尽なものではないのかもしれない。

それとも長くこの事務所にいるせいで「理不尽」のハードルが下がってしまったのだろうか。
この子がアイドル歌手として成功しないのなら、
所謂「アイドル歌手」というジャンルでは、もう誰も成功できないのではないか。

「完璧」という言葉を体現してみせた真野ちゃんを前にして、
マネティはそう思わずにはいられなかった。
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:41
マネティの憂鬱などどこ吹く風。
真野ちゃんはテキパキと荷物をまとめ、元気に次の仕事場へと向かう。
残された時間は少ない。「マノベスト」発売は翌日に控えている。
もしかしたら真野ちゃんが「真野恵里菜」として活動するのはそれが最後かもしれない。
それでも真野ちゃんの顔に曇りはない。迷いもないし、嘆きもない。

マネティはそんな真野ちゃんに引っ張られるようにして仕事を進める。
最後だからやれることは全部やろうという方針でプロモーションは進められていた。
やらなければならない仕事は信じられないくらい多い。

CDショップにひょっこりと現れる真野ちゃん。
ラジオに飛び入りで参加する真野ちゃん。
雑誌で華麗なショットを披露する真野ちゃん。
そしてネットでフランクにファンに語りかける真野ちゃん。
真野ちゃんはいたるところに出没して「マノベスト」をアピールする。

どんなときも真野ちゃんは真野ちゃんだった。
笑いたいときに笑い、怒りたいときに怒り、
マネティに説教したいときは躊躇わずに説教する。

楽しい時間はすぐに過ぎる。真野ちゃんとの時間もあっという間に過ぎていった。
168 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:41
そしていよいよ「マノベスト」が発売された。
169 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:42
「アップフロントもさあ、最後に武道館とかでコンサートさせてくれてもよかったのにねえ」

マネティは無駄とわかりつつもそんな愚痴をこぼす。
日本武道館は、あの平家みちよがデビューイベントを行ったことでも有名な、日本の音楽の聖地。
いつかそこでコンサートをしてみたいというのが二人の夢だった。
だがその夢がかなうことは、おそらくないのだろう。

マネティは言ってしまってからハッと口をつぐむ。
「最後」という言葉は今の二人には禁句だった。

だが真野ちゃんはマネティの話など全然聞いていなかった。
耳にはイヤホンを突っ込み、携帯音楽プレイヤーで「マノベスト」を聴いている。
目を細めて、気持ち良さそうに音楽の世界に浸っていた。
声に出さずに、かすかな唇の動きだけで静かに曲を口ずさむ。

マネティはその真野ちゃんの唇の動きを見ただけで、
真野ちゃんが今、アルバムのどのあたりを聴いているのか理解することができた。
170 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:42
アルバムの最後の曲が終わった。
真野ちゃんはイヤホンを外し、すくっと立ち上がる。
ピンと伸ばした背中からは清楚な色気が漂っている。
そう。清楚は力。笑顔は力。美しさは力。
そして、音楽もまた力。真野ちゃんが持つ大きな力。真野ちゃんが与えてくれる大きな力。

真野ちゃんは笑う。
マネティはそんな真野ちゃんと目を合わせ、真野ちゃんに負けないくらいにこやかに笑う。
発売から一週間が勝負だ。この一週間で売れるだけ売り切る。
マネティはこのアルバムの売り上げに関して、真野ちゃんと一つの賭けをしていた。

「もしこのアルバムが一位になったら、たとえ瞬間的にでも一位になったら、
 あたし、モヒカンにして事務所に直談判してくるよ」

そう提案したのは一ヶ月も前のことだったろうか。
その時、真野ちゃんはつまらなさそうな顔をして、マネティの言葉を無視した。
だが勿論、今の真野ちゃんはその言葉を忘れてはいないだろう。忘れるはずがない。
マネティには絶対の自信があった。
なぜなら真野ちゃんは、思ったことが全部顔に出る子だったから。
171 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:42
「よーし、そんじゃ次の仕事場に行きますか!」

マネティがそう言うと、真野ちゃんはぴょんと小さくジャンプしてガッツポーズを作った。
その脇の甘いガッツポーズが何を意味するのかはよくわからない。
だが真野ちゃんの顔に浮かんだ笑顔の意味はよくわかった。
どんな言葉よりも雄弁に、真野ちゃんの心を映し出していた。

絶対に一位を取ると。

マネティは真野ちゃんほど裏表のない人間ではなかったが、
それでも真野ちゃんに対して嘘をついたことはない。ただの一度もない。
真野ちゃんもまた、そのことをよくわかっているのだろう。

マネティは苦笑いをしながらドアを開ける。
むわっと生温かい風がドアの向こうから吹きかけてきた。
湿った空気を跳ね返し、マネティの背中を追い越し、真野ちゃんは駆けていく。

どこまでも、どこまでも、真野ちゃんは駆けていく。
172 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:42
そんなこんなで今日もまた



真野ちゃんは行く!!
173 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:42



おしまい。
174 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:42
175 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 20:42
special thanks to





navy
176 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/13(月) 20:43
ご愛読ありがとうございました。
177 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/13(月) 20:43
この物語はこれにて完結です。
お付き合いいただいた読者の皆さんありがとうございました。
感想や質問などがあればこのスレに直接書いてやってください。
178 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/13(月) 20:44
>>157
便乗して僕も言いますが、このお話良いですよね。
毎回こういう素敵なお話が書ければよいのですが。とか言ってみたりして。
179 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/13(月) 20:45
>>158
的確な指摘ありがとうございます。
私の書く娘。小説はおおむねそういった毛色のものです。
180 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/13(月) 20:46
>>159
じーんときましたか。頑張ってる人を見るのって良いですよね。
ひたむきに頑張ってる人っていいですよね。私もそういう人が好きです。
181 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/13(月) 20:47
>>160
おお! 言われてみれば確かにそうですね。
まさか自分がそんなものを書いていたとは気付かなかったし意識もしなかったんですが、
一度そう言われてしまうと、もうそうとしか見えませんね。
182 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/13(月) 20:48
こんなオチにしておいて真野ちゃんがバカ売れしたらどうしよう。
でもそうなったら嬉しいな。そうなってほしいな。
183 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/13(月) 22:51
更新お疲れ様でした。完結おめでとうございます。
…えーもう終わっちゃうのーという気持ちでいっぱいなので
もう少し読みたいのが正直なところです。

あたたかな作品をありがとうございました。
次回作も期待しています。
184 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/14(火) 01:59
完結お疲れ様でしたというのと終わってしまって寂しいというのが
入り交じった気持ちです…

素敵な物語をありがとうございました!
185 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/14(火) 11:13
豊富なアイディアを土台としつつ、最後まで熱量の衰えない素晴らしい作品でした

三人称の語り口でなおかつこれだけ毒気も含んだ内容なのに、非常に読み味が
爽やかに感じられたのは、作者さんの愛情によるものだったのかなと思います
真野さんとマネティだけでなく、藤本さんや様々なメンバーたち、
果てにはUFAという事務所に対してまで作者さんの愛情らしきものを感じとれました
だから私もこの作品を愛して、更新をワクワクしながら待っていたのかもしれません

末筆になりましたが完結お疲れさまでした
この作品を書いてくださったことに心から感謝申し上げます
186 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/14(火) 19:55
いい締めだなぁ

公式のどんなプロモより
この小説がいちばん真野ちゃんを好きにさせるかも知れない

ただマネティも一緒に好きになっちゃうのが問題かもw
187 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/15(水) 04:22
ごめんなさい、185の感想に加えて質問させてください
この作品はどのようなプロセスで生まれたのでしょうか?

この小説にはいくつかのアイディアがあって、作品の骨組みを成していたと思います
主人公である真野さんを一切喋らせないこと、その代わり動きや表情を執拗に描いていくこと、
厳密には非ハロプロメンのマネティの視点を物語の軸とすること、
真野さんとの対比として事務所や娘OGへのキツい突っ込みを盛り込んでいくことなどですね
もちろん毎回の舞台やドラマの設定も非常に面白いのですがそれは置かせていただきます

アイディアが先に立つのか?それとも描きたい物語が先にあるのか?
作者さんはその「描きたい物語」だけでも充分読ませる力があるように思われます
しかし前述のような要素を描き込んで行くことをとても楽しんでいらっしゃるようにも見えます
それじゃいったいこの小説の出発点はどこ?それをどうやって形にしていったの?
完成した作品が成功しているという事実で充分なのでしょうが、どうしても興味をひかれました

長文ほんとにごめんなさい、差し支えない範囲でお答えいただければ幸いです
188 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/20(月) 19:29
>>183
ありがとうございます。
「えーもう終わっちゃうのー」と惜しまれるくらいで終わる方が美しい気がします。
次回作はあるんだかないんだかわかんないですけど
その時も「もう少し読みたい」と言われるようなものが書ければいいなと思います。
189 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/20(月) 19:33
>>184
寂しいですか・・・・・惜しんでもらえるのは嬉しいことです。
なんというか、この小説の最後の短編は「いかにもラスト」というお話だったので
ちょっとアレかもしれませんね(意味不明)。
最後まで読んでいただいて、こちらこそありがとうございました。
190 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/20(月) 19:34
>>185
愛情は大事ですよね。
惰性にならないように気を付けているつもりです。
作品からそういったことを感じてもらえたなら本当に嬉しいです。
191 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/20(月) 19:36
>>186
あなた良いこと言いますね。ちょっと誉め過ぎじゃないでしょうか。
というか書いてる私も、書く前よりずっと彼女のことが好きになったかもしれません。
これが俗に言う「ミイラ取りがミイラになる」というやつでしょうか。
ちなみにマネティのことは特に好きにはなりませんでした。
192 名前:誉ヲタ ◆buK1GCRkrc 投稿日:2010/09/20(月) 19:37
>>187
丁寧な感想ありがとうございました。
真面目に答えようとするとすっごく長くなりますので、ブログで書くことにしました。
よかったらこちらで読んでください。
ttp://m-seek.net/press/homare0510/2010/09/19/

ログ一覧へ


Converted by dat2html.pl v0.2