情状
1 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/12(月) 21:54
十枚目以降の娘。のCP短編がメインになると思います。
違うのもあるかも。
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/12(月) 21:55
もしかして『目頭』がわからないのか。
光井は気になって鏡の前に座っていたジュンジュンに声をかけた。
思った通りいまいち理解できていなかったようなので、
鏡越しに瞼のあたりを指差しして教えてあげた。

「お、やっさしーい」

ふざけた調子の褒め言葉は田中の癖だ。

「ジュンジュンは目ぇ腫れぼったいし目立ちますやん」

それにちょっと理屈っぽく嫌味っぽく答えてしまうのは、光井の癖だ。

「言うねぇ」

道重はそういう光井の物言いが割と好きだ。

「光井サンありがとー大スキだよー」

ジュンジュンの愛想の安売りは今日も健在である。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/12(月) 21:58
汗でマスカラが『にじだ』らしい。
ジュンジュンは、やや癖のある日本語で説明しながら化粧直しを始めた。

「いやさっき愛佳と当たったやん」

光井は即座に反応し、

「当たった?」

聞き返したのは田中だった。

「裏で靴履く時隣やったんですよ。んで靴コケたの取ろうとした時ガツンて」
「うわっ痛そう!」

これは道重の感想である。
そして、田中がまた疑問を持った。

「……え、ちょい待ち。滲むほど当たるってどゆこと?」
「キスされたんだもんねー」
「違うわボケ! 当たった言うてるやろうが!」

田中と道重が悲鳴をあげ、楽屋内は一時騒然となった。
ジュンジュンの一言が原因ではなく、光井の顔がみるみる
赤くなっていったことに過剰に反応したのである。

「れいなこれ知っとお! ウブ! 愛佳ウブっちゃろ!?」
「うぶーい! 愛佳ちゃんうぶーい!」
「いややや、やめ、やめてくださ、ああ、うぅ」

光井には、あの時ジュンジュンの瞼を舐めてしまった自覚があったのだった。
自分の顎に彼女の鼻先が下から当たって押し上げられて、唇が当たった……としたら、
だいたいその辺なのである。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/12(月) 22:00
楽屋の隅っこに逃げて両手で顔をパタパタと扇いでいるうちに、少し落ち着いてきた。
騒ぎを聞いてもジュンジュンは特に気にしていないようだったし、証拠も無いし、
自分が子供なだけ。
単純な経験不足だ。

高橋が手にプリントを持って光井の側に寄ってきた。

「仕事のですか」
「うん、これカンペな」
「あーありがとうございます」
「あんた」
「なんですか?」
「口に青ノリみたいなんついとるわ。取っといで」

光井はその名に恥じぬ光の速さで鏡の前に立った。つもりだ。
青ノリと言われたが、黒い。
指でぬぐってみると、簡単に取れた。
指先にインクのような痕がついている。

「……マスカラぁ」
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/12(月) 22:01
その瞬間、光井の心身は沈没した。
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/12(月) 22:02
>>2-5 タイトルなし
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/12(月) 22:02

8 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/12(月) 22:02

9 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/13(火) 02:49
素敵なスレの予感。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/13(火) 21:56
光純萌え
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/14(水) 15:34
光井のうろたえる所が可愛い
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/14(水) 21:58
ミツジュンジュワー
これは好き
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/14(水) 23:21
愛よ、愛を読め。
中学に入学した時、学校から自分用の辞書を買わされた。
真新しい紙の匂いに心が踊った。
手当たりしだいにページを開いて、よく知りもしない単語の意味を調べたことは
誰にでもあるはず。
光井はまずそれをやって、次に自分の名前の一文字を調べることを思いついた。
律儀に前のページから調べようとして、あ行だったので、『愛』を選んだ。
結局途中で挫折した上に、文字を追うことにばかり気が行ってちっとも内容を
把握していないのだが、有意義であった。

それなのに高校生の現在、現文の授業は寝てばかりいる。
真っ暗な映画館と、午後の明るい教室との間を、浮いたり(上が教室で)、
沈んだり(下が映画館だ)しているようなまどろみの中で、教師の口から、
博愛主義、という言葉を聞いた気がした。
夢だったのかもしれないが、作家の誰かについて説明していた記憶も
うっすらとあるし、久しぶりに意味が気になった。

「……愛に基づいて、平等」

奴みたいなものか。身近に見本のような人間がいる。
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/14(水) 23:25
自分よりいくつも年上だし、裏切られたことくらいあるはずなのだが、
問うても無いと言われる。

「ジュンジュン嘘ついてるやろ」
「なんで? ついてないよ」
「えー遊びの約束断られたり、色々あるやん?」
「憶えてないですな」
「あんたは愛佳の誘い断るよな」
「それは違うでしょ! いつも先に予定が」
「今のはわざと言った。
 ……じゃあ明日、愛佳と遊ぶ約束してるのに裏切って、こっちが
 田中さんと食事行ったりしたらな? あんたプライド傷つかへんの?」
「うんわたしPride大きいだから」

単語だけ流暢な英語と、日本人でもありがちな言い回しの間違いをして
おきながら、本人は中国人というインターナショナル・トリプルコンボ。
生意気だ。
十二分に伝わるのがちょっと腹立たしい。
そいつが琵琶湖ぐらいでかいとしたら自浄作用も相当なものだろう。
が、プライドを物理的に捉えるのは愚かだ。
プライド傷つかない? そんなことあれへんやろー。
そんな超人、名前だけ憶えたキン消しの中にもいないはずだ。

「もし愛佳がジュンジュンなんか嫌いやーってゆうたらどうなん」
「泣いちゃうかも」

ああ泣くだろうな。
泣きわめいて、なぜかこっちが殴られそうだ。
わたしが好きなのに! とか言って逆ギレだ。
博愛主義めんどくせぇ、そう思った。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/14(水) 23:27
>>13-14 タイトルなし(2)
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/14(水) 23:28
>>9
いつまでこの空気が保てるかわかりませんが、お付き合いください。

>>10
はうはうしますね。
字面も神々しい。邪神的な意味で。

>>11
恥ずかしがりと聞いてこうしました。

>>12
蜜井と潤子ですね。
どうもすいません。

みんなどこに隠れていたんだ……
無性に恥ずかしくなってきました。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/14(水) 23:28

18 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/14(水) 23:29

19 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/14(水) 23:29

20 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/16(金) 22:49
オフショット
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/16(金) 22:52
田中は、フージョン相手を探しているうちに得意の損得勘定が働いて
「でかいヤツ禁止」令を出した。

ひどくなーいそれひどくなーい、道重はすぐに被害者面及び味方確保を行い、
近くにいたガキカメを確保。
かくして、今最も輝いているブログメンがそれぞれ撮影会を開始。

どっちつかずのジュンジュンは自動的に田中側のカメラマンとなった。
最初のツーショットを終えて盛り上げ役に移行した光井は、同時に、
自らすすんで撮影監督となった。
ジュンジュンが撮った画像に、「あかん」とか「ええやん」とか言うだけの役である。
JJカメラマン、曰く。

「わたしもみんなと合体したいなあ」
「あんたじゃみんな飲み込まれてしまうわ」
「かわいいだもん〜ね〜」
「ケモノ的な意味だっつの」
「けもの、ん?」
「人を襲う系の動物。てかちゃんと撮れやブレブレやん」

光井は思わずジュンジュンから田中の携帯をひったくった。
その時指がどこかのボタンに当たり、二人の知らないうちにカメラは
動画モードに切り替わっていた。

「襲わないよ!」
「どーだか。迫られたらマジ逃げられへん……あ?」

液晶の表示が少し違うことに気づいて、光井はとっさにクリアボタンを押す。
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/16(金) 22:53
データを保存しますか?

はい
いいえ
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/16(金) 22:55
「勝手に消したらまずいよな」

とりあえず最終的には田中が選ぶのだから、データは多い方がいいだろう。
そう思って、保存した。

その夜、田中から光井にメールが届いた。
今日の保存データの中に動画データがあって、確認したら揺れる床と
光井とジュンジュンの声だけが入っている、と。
こいつはまずい、と思った光井はきちんと謝ろうと思い、田中に電話をかけた。

「あああの面目ないです。撮ってる時知らん間に動画になっ」
「バリえろいっちゃけどー! お前らマジなによ」
「え、なん……でしょう」
「お、襲う……とか! 迫」
「ぎゃああああああー!」
「ちょおおおおおお色々想像してしまった、ぞ!」

田中は本当に色々考えたようで、語尾に若干引いた気配が見られる。
この日の電話は誤解を解くのに数分、田中の妄想(やらしい系)に数十分を要した。
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/16(金) 22:56
>>20-23 オフショット
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/17(土) 03:30
タイムリーw
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/17(土) 06:25
実にいやらしい
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/18(日) 06:36
「あらリンリンどしたの」
「光井サンお風呂です、一人寂しいだからお邪魔します」

リンリンはアピールの仕方がわかりにくいが潜在的に構ってちゃんだ。
同室内に誰かがいても、自分の方を向いてなければ一人ぼっちと同義、
みたいなところがある。

「もう愛佳と一緒に入っちゃえばいいじゃん」
「狭い! と怒られた……」
「アッヒャ そうなのかー可哀想にー」
「うえーんお姉ちゃーん」

高橋はどっちかというと光井の方に共感したが、リンリンが自室を出てまで誰かを頼るほど、
寂しい、と言うなら当然受け入れる。
例え相手がお菓子持参で、長時間居座る気だったとしても。

「お菓子食べましょう!」
「あーしはこのグミだけもらうわ」
「アー他はいらない、ですか?」
「うん、あんたが食べな……だけど、もう十一時だから明日にしなよ」

リンリンは答えなかった。節制する気がないらしい。
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/18(日) 06:39
十二時をまわって、高橋が風呂に入ると言ったので、リンリンはしぶしぶ自室に戻った。
すると目の据わった光井に低いトーンで

「なんで無言で出て行った」

と聞かれて、正直に寂しかったと答えたら、こっちは裸で一人部屋に残されて
何かあったらお前どうしてくれんねん、とやっぱり低いトーンで責められた。

「服着ればイイジャン」
「風呂ん時の話や!」
「え、よくワカラナイ……」

光井はため息をついてもういいと即座にベッドに潜り込んでしまった。
リンリンはとりあえず自分も入浴することにしたが、風呂場で裸 なぜイケナイ?
結局光井の言いたいことはよくわからないままだった。

翌日、光井はリンリンに、出て行くならこちらが入浴する前にしろと命令し、
リンリンはそれに従った。
避難先はしばらくの間、高橋の部屋に。
こうして常に注意してくれる相手が出来、リンリンはダイエットを志すこととなった。
29 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/18(日) 06:40

そして、
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/dream/1251815658/152-160

30 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/18(日) 06:42
>>27-28 タイトルなし(3)

前レス29のリンク先は先頭hつけてください。
過去ログ行ったりで見られない場合は、
「作者フリー 短編用スレ 7集目」の152を探してください。
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/18(日) 06:43
前回ちゃんとフュージョンって書いたつもりだったのに抜けてました。

>>25
なるべくタイムリーにCP萌えを目指すスレです。

>>26
実に福山ボイスで再生されました。
あれで一番いやらしいのは勿論田中さん。
32 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/22(木) 20:25
虎のT(ティ)を着る
33 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/22(木) 20:26
大阪のおばちゃんやらなんやら言われていざ客観的に鏡を見てみると、
自分は虎のTシャツが似合っていないことを痛感した。
ライオンもヒョウ柄もだ。
獣柄は、自分の存在が「食われて」いるように見えてしまう。
顔薄いからや!

そういうわけで、光井はしばらくその系統のやめてみようかな、と思った。
シンプルなものを身につけると心が落ち着く、というのも大きかった。

「もったいない。家で着ればいいじゃん」
「家ではたまに着てますよ」

練習用に着てきた黒Tの布地をつまみながら光井は答えた。
高橋はドリンクを一口飲んで、そーなんだ、と返した。

「ていうか聞いてくれはります?」
「なーに」
「前に虎のでっかい顔入ったの着てたら」

リンリンが、光井サン虎が変顔してるよチョーウケルHAHAHA〜
と指さして笑ったので、いつものようにうるさい! と軽くキレたが

「家に帰ってめっちゃ凹んだんですよ」
「かわいそうにぃ〜」

相手の方が胸が大きいし、嫉妬とも取れずキレるしかなかったのだ。
34 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/22(木) 20:31
「それもありつつ」
「あの娘も悪気があって言ったんじゃないと思うよー。許したげてね」
「それもわかってますけど」
「あそうだ、重ね着すればいいじゃん」
「ぅ〜んああー、はい、そうですねえ」

レッスンスタジオに戻ってきたジュンジュンが、座っていた二人の前を通りかかる。

「ねえねえジュンジュン」
「はい」
「ちょっとここ座って」

急にリーダーの声色に変わった高橋に誘われて、ジュンジュンはすぐ側に座り込んだ。
光井は黙っている。

「リンリンにさ、人を指さして笑うのは良くない、って言ってもらえないかな」
「わたしが言うですか?」
「実は前に注意したことあんだよねー。忘れちゃってるみたいだから」
「そぉれマジっすかぁ!?」

初めて明かされた事実に光井はとても驚いている。
うん実はそうなんだよ、高橋はジュンジュンを見たまま答えた。

「いいですよ。後で言っておきます」
「お願いねー」
「……言われたの?」
「……そーやねん」
35 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/22(木) 20:33
そして残念なことに、光井は思い出してしまった。
ジュンジュンにも、同じ虎Tについて一言、なんか怒られているみたい、と言われたことを。
怒ってないで、と言ったことを。
言えなかった一休さんのことを。

頭がカッとなった。
逃げ場を探して座ったままくるっと壁の方を向いたが、背中側は鏡。
しまったここはレッスンスタジオ、完全に逃げ場を失った、と思った。
アウアウした結果、床に突っ伏した。

「あれどうしたん、寝たの」
「……すんません、ちょっとだけ寝さしてもらいますぅ……」

そして、弱々しく平手でペチペチ床を叩く。

「ジュンジュン、上着持ってきてくれへん……」

しばらくして、背中に暖かい布地の感触が降りてきた。
光井はすかさずそれを頭からかぶった。
が、またも残念なことに、それはジュンジュンの上着だった。
しかもさっきまで羽織っていた黒地に白の三本ラインのを、脱いで寄越しやがったのだ。
妙に温い上に自分と異なる匂いなのだから、いわんや光井をや。

ににニオイて、まるで餌やん!
ひょっとして、憧れのトラヒョウライオン様方に一歩近づけたんだろうか?
こんな形で?

……うガッ、思わず吠えた。
36 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/22(木) 20:35
>>32-35 虎のT(ティ)を着る
37 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/30(金) 21:36
シズル
38 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/30(金) 21:37
道重は最近悪ノリにハマっている。
毒を吐いて高橋にペシッとやられるのがなんか好きだからだ。

イタイのイタイの飛んでこい。
でも虫歯はいらないから!
39 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/30(金) 21:39
もうはっきり言ってしまうと刺激が欲しい。
自分で自分を鼓舞するのには限界がある。
あ、これは精神的な意味で。
あと都合のいいことに、冷え性なのでバシッとやられると
その部分が熱を持ってあったまってラッキー。

「運動しなよ」
「してるじゃないですかーダンスレッスンとかー」
「仕事以外でよ」
「それは難しい相談ですよ」
「一日十分くらいでヨガとかあ」

あれは一人で寂しいんです。組体操が好きなんです。
天下の往来で、それはちょっと言えなかった。
言ったら間違いなく隣の高橋に引っ叩かれるのにもったいない。
(ムッツリだから)
仕事の合間なので後ろにはマネージャーがついてきている。
この会話でもっとオイシイとこまで行きたいんだけどー。
どっか行ってほしい。
40 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/30(金) 21:40
何も無いところで高橋が躓いた。
結構頻繁にあることなのでスルー。
したつもりが、今度は自分が躓いた。
人の失敗だけ大げさに笑う高橋。

「あーあー伝染っちゃった。あーあー」
「あしのせぇやないもん!」
「足?」
「あたし!」
「いや絶対愛ちゃん、愛ちゃんのせいだー。諸悪の根源」

バッシ、やった叩かれた。
道重はにやけた。

『諸悪の根源』の、意味はよく知らないけどね。
41 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/30(金) 21:41
>>37-40 シズル
42 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/01(土) 02:07
ニヤニヤ
43 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/04(火) 22:21
栄養エりイヨぉ〜ウ
44 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/04(火) 22:22
うまいわ。うまいよ。
水もうまいね〜。

亀井が何度も褒めてくれるので、ジュンジュンは自分が食べるのも忘れて
幸せに浸っていた。

「てか食べなよー」
「あ、うん。の前にー、写真撮らせてください」
「ブログ用? だよね」
「中身が減る前に撮りたいだから」
「うむ」

ということで、亀井は白米をパクつきながら、ちらっと携帯越しの
ジュンジュンの顔を見た。

「ニヤニヤしてますけど」
「嬉しいだもん!」
「そーだ前から言ってたもんねえ」
45 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/04(火) 22:24
・独りの食事が寂しい、と言っていたジュンジュン
・誰かに「美味しい」と言ってほしい、と嘆いていたジュンジュン
・どうせ独りなのだから、と自分のための料理をしなくなったジュンジュン
・だけど、栄養の偏りだけは阻止したかったジュンジュン

亀井の脳内で箇条書きのJJヒストリーが流れた。
最後には、

チーン、正解はバナナでしたー!

陽気なアナウンサーの(でも限りなく亀井本人に近い)声が頭の中で。
46 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/04(火) 22:25
「もうさー、しょっちゅう誰か(モグモグ)呼んじゃえば?」
「それはちょっと……」
「週イチ月イチでお食事パーリィやっちゃえばー? パーリィ。
 絵里ちゃん行くよー?」
「んー、でもお金が……」

返ってきた答えがリアルすぎて、おかずを噴き出しそうになる。

「いやいやモチ割り勘で! そこは!」
「あ、お金くれるなら」
「だろ。てかさ、てか、フフ、今の超さゆっぽかった」

これを聞いたジュンジュンは怒った。

「違うし! 似てないし!」

あらまー。
亀井は動じない。
わかってたからだ。

わかってたけど、よっぽど似てるって言われるのがヤなんだねぃ。
47 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/04(火) 22:26
>>43-46 ノノ*^ー^)<栄養エりイヨぉ〜ウ
48 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/04(火) 22:27
>>42 さゆちゃん乙
49 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/17(月) 21:19
かぶりもの
50 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/17(月) 21:21
今日はホテルの一室が楽屋として用意され、田中・光井・ジュンジュンが同室になった。
待機の間、田中はブログの記事を書くための写真を何枚も撮り、すぐさま更新の準備。
ベッドにあがって壁に背を預け、携帯とにらめっこし始めた。
残りの二人はそれぞれ好きなことをしていた。
更新中の田中に声を掛けると、邪魔すんな、と怒られるからだ。

そのうちジュンジュンは鏡に目が留まり、髪型を整え始める。
窓の外を眺めていた光井が、それに気付いた。

「ジュンジュンええなー髪長いの」
「いいでしょー」
「長いと普段もいろいろ髪型楽しめるやんなあ。伸ばしたいけど怒られるし」
「ウィッグとかあるジャン。あれは?」
「そこまでするのは愛佳のルールに反する」
「そうなんだ」
「自分に嘘をつくことになんねん」
「光井サンかっこいいー」
「かつ、可愛くなりたいねん!」
「大丈夫大丈夫、充分カワイイだから」
「また! あんたのそれは聞き飽きた」
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/17(月) 21:22
携帯をいじっていた田中が噴き出した。
光井とジュンジュンが思わず彼女の方を見ると、

「聞き飽きるほど言うかあ!?」

田中は二人を指さして訴える。
光井には意味がよくわからない。
ジュンジュンは表情が読めない。

「ヤバーイとかよく言いようけど、ってかウチらのにつられてんのを」
「あー言ってる言ってる」

これにもつられ気味で答えるジュンジュン。

「かわいいとかそんな連発しとったっけ? ジュンジュンって」
「?」
「!」

光井の表情が強張った。
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/17(月) 21:24
連発されているのは、個人的に、だった。
そしてもってそしてもって、ジュンジュンはそのことを、馬鹿正直に答えてしまった。

「光井サンはたまに自信無くすだから、わたしよく言ってるだもん。ねー」
「いいい言わんでええええええ!」

光井は絶叫しながら、ベッド脇のサイドボード前にあった空間に逃げ込む。
ついでにシーツを頭から被った。

「ぅお何!? 愛佳、隠れんなら紙袋要るとー!?」
「……いらーん!」
「敬語忘れとーし、超ウケんだけど」
「光井サン光井サン、イリマセン、言わないと田中サン怒るかも」
「……イリマセン」

田中は怒るどころか、腹を抱えて笑った。
ジュンジュンはまた、ねー、とシーツの向こうの光井に向かって猫なで声を出した。
シーツは震えていた。
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/17(月) 21:26
>>49-52 かぶりもの
54 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/21(金) 03:51
かっ・・・かわいいい!
ウケてるれいなも素直すぎるジュンジュンもワロスw
55 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/26(水) 22:31
チーかま
56 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/26(水) 22:33
稽古の合間の食事に宅配ピザが振舞われた。
みんなでそれを和気藹々と食べていると、新垣が、

「あー酒が欲しい」

と言い出し、成人メンバー数人が、いいね呑みたいねーなどと同調した。

「ピザってそうなんですかぁ」

光井は年少らしく、初耳だ、というニュアンスを込めてまわりに尋ねた。
新垣はモチのロンとかなんとか答え、亀井がビール! ビール! と叫び、

「亀井さんここ居酒屋じゃないから」

道重はいつも通り単調に突っ込んだ。
田中は酒の話題にはついてこない。
高橋はいつの間にかリンリンとドリンクで乾杯していた。
ジュンジュンはピザを持ち帰っていいかスタッフに聞いた。
スタッフからは、残ったら持って帰っていい、という答えが返ってきた。

「あーずるいぞ持って帰って一人で呑む気なんだろ」
「正解でーす」

亀井は自分の推理が当たってご満悦。
ジュンジュンと見つめ合って二人でニヤニヤ。
57 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/26(水) 22:40
「ツマミはいつも何食べてんの?」

これは新垣。

「夜の残りとか」
「おーすごいじゃん、しっかりさんだ!」

道重が手についたチーズを舐めながら会話に混じってくる。

「サラミとかじゃないんだー」
「何もなければコンビニでおかず買います」
「おかずなんだーツマミコーナー見ないの?」
「あるのは知ってるだけど、いつも料理されてるの食べる」
「種類多いしヤバイよねコンビニ」
「あ、チーかま! ワタシ、チーかま大好きです!」
「リンリンいきなりー。あ、カメこぼすよ! ちゃんと持って!」
「むぁ〜い」
「チーかま美味しいジャン! 愛ちゃん嫌いデスカ?」
「そら好きよー」
「食べにくいだけど」
「剥きにくい、じゃない? ビニールうまく剥がせないんじゃない?」
「それだ! ワタシいつもイーってなりそうになります」
「そうそうイー! ってね。わかるわー」

高橋とリンリンが話し始めると、いつの間にか二人きりになっていることが多い。
58 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/26(水) 22:42
ジュンジュンは光井に尋ねた。

「チーかまて、なにですか?」
「え、知らんの?」

光井も頭の中で思い浮かべながら、チーズとかまぼこ混じってて、
魚肉ソーセージみたいなビニールに入ってんねん、と説明。

「魚肉ソーセージはわかるやろ? 赤いひょろっとしたの」
「あ、それはわかる」
「あれの白いのがチーかまやで」
「へー」
「白いっていうか肌色っぽいな」
「光井サンの腕みたいな? 道重サンっぽいですか?」

ジュンジュンの問いかけに光井は思わず自分の腕を見た。
道重もつられて腕を眺め、ついで光井の方を見た。
反応は道重の方が早かった。

「愛佳の方が似てる」
「そうですかあ?」
「あ、ピザの油塗ってみたらそっくりになるんじゃない?」
「なんつーこと言わはるんですか!」
「あれってビニールでツヤツヤしてるじゃん」
「も〜」
「ジュンジュン、コンビニのおつまみコーナーに絶対あるから見てみなよ」

ジュンジュンはピザに噛み付いたまま、うん、と頷く。
59 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/26(水) 22:45
「ちなみにこういう色ね」

道重は光井の腕を掴んで肌をつついた。

「ちょっとお」

やられた光井はえへらえへらしているが、内心苛立っている。
なんせ自分はまだ、ピザに手をつけていないのだから。

「美味しそうだね」
「あ、これは食べられないからね。あなたが食べるのはチーかまです」
「食べないし。いま口がベトベトだし」
「だって。良かったね愛佳」
「なんなんですかその会話……」

……人を食いもんにするたァ不貞ェ兎どもだ。
光井は心の中で毒を吐いた。

がしかし、ちょっと前ジュンジュンに喰われかけたことがあったのを思い出して、
また吠えそうになった。
リンリンが高橋の部屋から戻ってこなかったら、完食されていたことだろう。
心に虎を飼っている自分としては、獲物を捕らえる側になりたいのだ。

そういえばあの時も、腕がどうのこうの、という話が発端だった。
光井はもともと手が小さい。
ジュンジュンに握られたらすっぽりと、まさしく手中におさまってしまった。

もともと相手の体温で安心感が芽生えていたとはいえ、そこから伝わってきた
包容力と言うんだろうか、それが圧倒的過ぎて、これは太刀打ちできないと悟った。
心の虎にだって、動物的カンが備わっていたのだ。
田中という猫が、傍に彼女を置きたがる理由もわかるというもの。
60 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/26(水) 22:49
「光井サン、あ〜ん」
「……」

などと思っていることを知ってか知らずか、ジュンジュンは違う味付けのピザを持って
光井に食べさせようとしている。
出されたものは、とりあえず食べる。(チョコ以外)

「……辛っ!」
「えー全然だよー」

改めて見るとその生地には、パッケージに入っていた小袋の香辛料がたっぷり塗られていた。

「か、かアア、わざとやろ!」
「ちがうしー」

否定しながらもジュンジュンは水を渡してきた。
最初から持っていた気がする、
やはり、イタスラで食べさせられたのだ。
水を飲んだ直後、思わず怒鳴った。

「っ、マジムカつくわー! 子供か!」
「ニジュニ歳だもん。かわいいだけど大人よ」
「ぬぁ〜〜〜むぉお〜〜〜!」

あれは、あれはなんだったんだ。
あの時感じた包容力は、ただの脂肪だったのか!

心から安堵していたあの時の自分を恥じる光井だった。
61 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/26(水) 22:50
>>55-60 チーかま
62 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/26(水) 22:54
>>54
「恥ずかしがり」って可愛さ二割増ですよね。
で、リアクションが大きいと五割増くらい。
減ることはない!
63 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/27(木) 00:51
>>60
ワロタw
みっつぃは一回食べられちゃえばいいのに…

エーン><みんなかわいいよー
64 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/29(土) 19:08
愛ちゃんとリンリンは一体どういう関係なのか小一時間(ry
最後のレスで噴きましたw
65 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/31(月) 21:34
ぬる〜い
66 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/31(月) 21:36
「おおおジュンジュンがもう来てるぅ!?」

手に紙コップを持った光井が、部屋に入るなり大声を出した。
八期は仕事の集合時間が早いのだが、それでもいつもギリギリに来るジュンジュンが
一番だった自分の次に来ていたので、つい大げさに驚いてしまったのだった。

「おはよゴザイマース」
「おはよぉ。どーしたん珍しい」
「早く会いたいだから」
「誰に?」
「……フフ」

あ、そうか自分か。
すぐにわかったが、今はちょっと調子に乗れない。
片手に飲み物を持っている。

「何ニヤニヤしてんねん」

なので、自分もニヤケるに留まった。
周りに誰もいないと、割とすんなり喜べる。人目が気になるお年頃。
光井は手元に注意しつつテーブルにカップを置き、椅子を引いて腰掛けた。

「なにですか」
「カフェオレやで」

廊下の自動販売機で買ってきたものだ。
カップに口をつけた光井は、小さく唸った。
67 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/31(月) 21:38
「ん!? ……無くなった! 口が!」

ジュンジュンが背後から腕をまわしてきても、光井はカップの中身に気を取られたまま話す。

「今な、今口ついたら、一瞬口の感覚が無くなってん!」
「え〜?」
「ぬるいからか? てか全然“アイス”ちゃうやん」
「あ、わたし知ってる。あれはもともとホット」
「そうなん? 氷融かして冷やしてんの?」
「そうそう」
「薄なるやん」
「そういうものだヨ」

そっちの仕組みはわかったが、こっちの唇が消えたような感覚が不思議でしょうがない。
ジュンジュンに一口飲ませてみたが、普通に冷たい、と言われた。
ぬるくないと、同じように感じないらしい。

「今のもっぺんやってみたい」
「買ってくる?」
「や、そこまでせんでもええわ」
「じゃあ、じゃあチューしよう」
「なんでそうなるんや」

文句を言ったが、強引に首を曲げられてムチューとされてしまう。

「……これとちょっと似てない?」
「……似てねぇ」

感覚が無くなるどころか、倍に増えた。みたいな。
まあそれはそれで、と、このあと結局四倍くらいにまで増やしてしまった。
ごちそうさまでした。
68 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/31(月) 21:40
>>65-67 ぬる〜い
69 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/31(月) 21:41
ちょっと伝わりにくいかもしれませんが。
舌の感覚も消えて「無くなった!?」って慌てるのが楽しい。

>>63
こんな軽食なら何度か。

>>64
愛リンはちょっとべったり気味な姉妹で。
杭州と福井県も姉妹都市だそうな。
70 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/01(火) 05:48
ムハーッ!!!
71 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/20(日) 07:55
二人掛けのファッショナブルなソファ
72 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/20(日) 07:57
高橋が稽古場の白いソファで息抜きしていると、道重が傍に寄ってきた。

「あのぉ、今しかできないお願い聞いてくれますか」
「な〜に?」
「膝枕してください」
「ここ?」
「眠〜いっ!」

襲いかかりそうな勢いで隣に倒れ込んだ道重だったが、ソファの反動に自分でも
驚いたのか次の動作はゆっくり。
新しい枕を試すように、高橋の腿に頭をのせた。

「あ、下から目線失礼します」
「ヒャヒャヒャ」

こちらこそ上からで。
などと答えながら、高橋は垂れた髪を道重にかからないようにと、首の後ろに追っ払う。

「せくしー」
「なにがぁ」
「適度に疲れた女のうなじが」
「確かに疲れてるけど」
「さゆみも暇で疲れてます」

これには苦笑いするしかなかった。
道重もすぐフォローを入れた。

「まあブログ更新する時間があるけど」
「ずっと持ってるよね」

彼女の携帯は本人の腹の上にあり、カメラのレンズが天井を向いている。
73 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/20(日) 08:00
「でも今はすごく眠い」
「ちょっとくらいなら寝なよ」
「じゃ起こしてね」

そう言って、本当に目を閉じてしまった。
高橋は目を剥く。
冗談半分だったのに、ちょっと困ったことになった。
自分の休憩時間はあと僅かで、というか少し抜け出したようなものだ。
本当は今にもここを離れて、ココに戻らなくてはならない。
しかし、後輩を強く起こすのも忍びない。
内心焦ってしまって、妙な行動に出た。
道重の眉毛を指の腹で何度か擦ったのだ。しゃりしゃり。

「え、なに」
「あごめん」
「何したの? 今」
「いや、ほっぺ叩くのもあれかなって」
「びっくりした、どこ触られてるのか一瞬わかんなかった」
「ごめんさゆ、あたしすぐ行かなきゃ」
「えーやだー」
「ごめんってぇ。ほんとは抜け出してきたんだよ」

これを聞いた道重はしぶしぶ起き上がり、高橋はすぐに立ち上がる。
膝上にじーんと痺れがあったが気にする間も惜しい。
稽古中の皆のもとに、急いで戻った。

また暇になった道重はとりあえず携帯を開いてみたが、さっき高橋にいじられた
右の眉にまだ違和感があって、つい触ってみたりする。
こんなとこ触られたことってあったっけ。
自分はあまり書いたりしないが、亀井なら消えてしまうから静かに怒るだろう。
今なら新垣も怒りそうだ。

寝ていたとはいえ触ろうと思った高橋に対してと、自分で擦ってみて気づいた
触り心地の感想が、

「えーうけるー」

これだった。
74 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/20(日) 08:02
そしたら、行ったと思った高橋が帰ってきた。

「出番まだだった」

恥ずかしいのか髪をわしゃわしゃしつつ、またソファに着席。

「ねー愛ちゃん、なんで眉毛なの」
「へ?」
「さゆみ多分、あんな触られたの初ですよ」
「あんな?」
「あんな、あー、あんなでも初めてだったと思うよ」
「ヒャヒャヒャ、やって焦ってたんやって!」
「なにげに初体験なんですけど、ここ擦ると……結構気持ちいい」
「……ツボでもあるんじゃね?」
「……スビッと的な」
「……あったな、そんなの」
「ねー?」

妙な間があった。

「てか、さゆあぶねーよ」
「え、なにがですか? 触ったのそっちだよね」
「変な解釈せんでよ」
「あ、そういうこと言うんだ。思った方が負けですよ」

恒例の平手が背中にヒットした。

「もう、それすらもいい感じだから」
「やーだー!」
「言うよりやっちゃうタイプですよね、愛ちゃんは」
「なんやって!」

その時道重の携帯に振動があり、チェックすると姉からのメールだった。
相変わらずユニークだったが、タイミング悪く、なんか燻ってた感じの気持ちが
急速に冷めてしまった。

道重は心の中で叫ぶ。
――もう全部、「暇」が悪い!
75 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/20(日) 08:04
>>71-74 二人掛けのファッショナブルなソファ
76 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/20(日) 08:04
ちょっと遅れましたが、稽古の話。

>>70
こんなAAが思い浮かびました。
(*゚∀゚)=3
77 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/20(日) 08:04

78 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 21:41
開放
79 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 21:46
私としては、待つのは時に辛くなることもあるけど、一人でいること自体は
苦にならないし、割と自由にしているので、愛佳の部屋でも自室にいるのと
変わらない気持ちでいられる。
ただ今回は場所がHawaiiなせいか、仕事が終わってもテンションが上がったままで
おかしいと思う。
たぶん愛佳もそうなのだ。バスルームからずっと歌声が聞こえてるなんて初めてだ。
知らない歌だから一緒に歌えない。違うのにして、一緒に歌おうよ!
そんな気持ちが抑えられなくなって、バスルームに向かった。

「みっついサーンみっついサーン、そのお歌なにですかな〜?」
「じぇ〜ぽっぷやで〜」

浮かれたエコーがまたハッピー。

「知ってるのにしてほしいナ〜ジュンジュンは歌いたいよ一緒に」
「お断り〜」
「な〜ん〜で!」
「もう上がるもん」

そんな理由でばっさり。
知っている、愛佳は自己管理が徹底している人物だから。
入浴時間も湯の温度もきちんと決まっているのだ。

決めたことを守り抜くのはとてもすごいことだ、と、
いつもワガママだと言われる私にだって当然わかる。
でも自らの気持ちを押し殺してまで場に則したりしても、
だいたい自分が損をするだけなんだから、思ったことを
言っておかないといろんなチャンスを逃すばかりだ。
怒られたら次言わなければいい。私を私と知ってもらうには、
私の中から出るものを自分の言葉や態度で肯定することが大事。
これは愛佳だって一緒なのに、彼女は痛みを我慢する。
心身どっちの痛みも我慢してしまう。そんなことが何度かあった。
そのせいで、今も左足に負担が残っている。
ずっと耐えていることに気付けなくて、私は泣いた。
80 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 21:49
「はあ〜サッパリサッパリ」
「おかえり」
「ただいまぁ」

慣れたもので、愛佳のベッドに私が勝手に寝そべっていても彼女は文句一つ言わないが、
ちょっと奥に行け、という注文はもらった。

「広いから大丈夫」
「あ、ほんまや」

この国のベッドは広い。
愛佳は日本にいる時と同じように、ベッドの上で足を伸ばして入浴後の体の手入れを始めた。
日本で使っている化粧水を肌につけている。
私も日本の時のように話しかけた。

「今日何回も水入っただけど」
「そうやなあ海とかプールとか」
「ヤバイ楽しかたですよ」
「そうそう泳いだのも久しぶりやったわ!」
「体の重さ、どっか行ったよねー」
「ぶふ、愛佳はあんたと違ってそんな重くないしぃ」

いきなり面白そうなことを思いついて、私は飛び起きる。
愛佳は驚いて一瞬動きが止まっていて、ここだ! とばかりにその膝の裏に
腕を突っ込んでぐいっと上に持ち上げた。
81 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 21:51
「おわぁ!」

……失敗。
抱きかかえたかったのに背中がシーツの上に逃げたから、
片手が間に合わなくて上がったのは足だけ。
ストレッチしてるみたいな格好で終わってしまった。

「あー駄目ジャン!」
「なにがや! なにしようとした!」
「も〜光井サン持って重い! ってできないジャン! 早く起きて起きて!」
「それ聞いて起きる馬鹿おらんわバカ!」
「馬鹿じゃないし!」

皆さん心配しないで。これ、私たちの当たり前。

「わかったから足下ろせよ」
「一回、一回だけやらして」
「……重いって言うんやろが」
「言わないから!」
「ゆったらぶん殴るぞ」

珍しくノッてくれて(きっとHawaiiだから)愛佳が上半身を起こして
くれたので、私はワクワクしながら彼女を抱え上げた。
でもベッドの上は不安定ですぐにバランスが崩れて、私は愛佳の
胸のヒョウにキスしてしまった。顔から落ちて。

「あ〜このへったくそ!」
「I'm Sorry...」

……はい、全体的に私が悪いです。
82 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 21:54
「床に落ちたらやばかったぞ」
「それは大丈夫、私が先に落ちるだから」
「もう落としといて言うか」
「いやいや、ベッド以外もう絶対光井サン落とさないだから」

ここは誓う。

「なんでそんな自信たっぷりなん」
「誓います」
「……使いどころがオカシイで」

私は真剣なのに、愛佳は目を逸らしてしまった。
無視されたのだと思って肩を引いてこちらを向かせたら、子犬のような目をして私を見る。

「もしかして、わたし日本語間違ってた?」
「う〜ぃや、今のは、微妙」
「どう言うですか」
「ええ〜、っと、まずあんた、なにがしたいん……」

さっきまでの勢いがなく、急に声が小さくなった愛佳。
何がしたい? 私もその質問を不思議に思う。

「今? 先の話?」
「とりあえず、いま」
「なら、ちゃんと聞いて欲しいかな」
「なんか話あんの」

そんなの、そんなのたっくさんある!
まず私の早口言葉を理解してくれることに感謝したいし、大好きだし、痛い時は痛いと言って、
一人で我慢しないでほしいとも言いたいし、しなきゃいけないなら私を頼ってほしいし、
人に気を遣い過ぎてることあるし、でも買物でたまに横から口出すのはやめてほしいって言いたいし。
そういうのを全部伝えようとしたら結局早口になったけど、愛佳は一つ一つをちゃんと噛み砕いて
聞いてくれた。
83 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 21:57
「こらまた随分と……あんたこそ我慢しとったんや」
「でも光井サンほどじゃないと思う……」
「とりあえず我慢やめて何か飲むけど、ジュンジュンは?」
「あ、水」
「おっけ」

ああー駄目、だからそれは駄目!
今言ったばかりでしょ!

「待って私やるから!」
「いやこれくらいは自分でやるし」

結局取りに行ってしまった。
うまくいかない……

ミネラルウォーターのボトルを受け取って一口飲んでから、私も愛佳もしばらく
何も言わなかった。私は待っていたし愛佳は考えているように見える。
いやもしかしたらもう部屋に戻れって思っているのかもしれないけど、
このまま戻りたくなかった。いつも入浴の後は言われるまま戻ったりしていたけど
今日は従わない。ワガママと言われてもいい。

「いつも」

そんな時、愛佳が口を開いた。

「リンリンと同じ部屋で寝るやんかあ?」
「うん」
「なんか居心地悪いねん」
「そうなのか」
「そうなのだ」

初めて聞いた。
84 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 22:00
「お姉ちゃんっ子やから家でいつも同じ部屋で寝ててな」
「うん」
「仕事じゃなくても周りは年上ばっかで、もともと年下苦手っぽいとこあってん。
 リンリンには悪いんやけど」
「全然そんな感じしないジャン。舞ちゃんと仲いいジャン」
「舞は下って感じしなくて向こうから色々言ってくるからな。
 いつもは、あんたの嫌いな“我慢”してる」
「ああ。だからそれは駄目だヨ」
「うん、でな、これからちょっと愛ちゃんとこ行って、多分リンリンいるから、
 今日はそっち泊めてもらうようにゆって来て」

……きた!
私はすぐに愛ちゃんの部屋に行った。やっぱりそこにはリンリンがいて、荷物なら
私が運ぶからとまで言って承諾してもらった。
リンリン、結局愛ちゃんと一緒に荷物を取りに来たけど。

「お、今夜はトークバトルやるんかあ?」
「そんなんと違いますってえ」
「明日も早いからほどほどにな」
「承知してます。ていうかそっちも」
「ワタシたちはK-POPのDVD大会するだから」
「でも夜中に歌は」
「我慢して観るだけにするつもりやけど、頑張るわー」

もう今日は、我慢って聞いただけで考えてしまう日。
愛ちゃんと喋る時の愛佳は、我慢してないのだろうか……

ドアを閉めると、静かな時間が訪れた。

「よし、ジュンジュン」
「はい」
「こっからベッドまで」

絶対落とすなよ?
それを聞いて、私は飛び上がった。
85 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 22:02
>>78-84 開放
86 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 22:03

87 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 22:03

88 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/26(土) 22:07
ごめんなさい年下「キャラ」って抜けてました。
脳内補完をお願いします。
89 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/27(日) 02:02
( *´Д`)
90 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/06/30(水) 00:04
なんとなく補って読みました
みつジュンっていいバランスですね

…途中えらい態勢になってたような気がするような
91 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/13(火) 20:36
ブブゼラ。
92 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/13(火) 20:38
ブブゼラいいな、吹いてみたい。
と、サッカーを観戦していた道重は思った。
音程いらんし。

「愛ちゃんブブゼラって吹いたことあります?」
「ないー」
「ちょっと吹いてみたくないですか」
「えーそんなに。一回くらいやな」
「そう一回くらい、さゆみも欲しいってほどじゃないけど
 一回くらい吹いてみたいー」

だって息が音になるんですよ、と続けたら、吹く楽器ほとんどそうやろ、
と至極まっとうなことを言われた。

「音程いらずに音楽できるなんて、さゆみのためにあるみたいで」
「そんなぁ、そんなこと言うなよぉ〜」
「えーじゃあ、じゃあどんなこと言われたいですか?」
「へぁ?」
「そんなこと言うなって、じゃあどんなことなら」
「また急に」
「あ、わかった、嬉しいこと言ってあげます」
「いらん」
「永遠のさゆみのアイドル! たかh」
「いらんって!」
「またまた照れちゃって」

この程度では、まだ“愛の平手”は飛んでこない。
もっとたくさん言い続ければ飛んでくるはずだ。
けれど、毎回それじゃあ面白くない。ので。
93 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/13(火) 20:41
「愛ちゃん肩にゴミみたいの」
「え、どこ」

高橋が肩を見るために少し横を向いたその隙を狙って、彼女の耳元に
息を吹きかけた。

「ひっ」

命中したらしくビクッとしたのが可笑しくて、道重はいつもと逆に
高橋の肩をばしばし叩く。
口では謝っているが笑い声なので、からかわれたと思った高橋は当然怒って、
後輩の肩を掴んで押し退けた。

「もおおおおお!」
「ごめ、ごめんなさい。だってだってこんな、こんな簡単に」

引っかかるなんて。
あと。
こんなに簡単に自分の中のものが向こう側に届いて、しかも耳と
目鼻口はつながっているから、もしかしたら顔の中のどこかで高橋の
空気になって、高橋の二酸化炭素として外に吐き出されて。

つまりMCO2=TCO2になるのか、なったのか。
そうだ。声が出たなら、もうなったのだ。

「……意外な音が出る楽器ですね」

なんて挑発したら、今日は平手ではなく半身体当たりが飛んできた。
そんなに照れてても「体は攻めてくるんだ!」
思わず口に出てしまい、結局やっぱり最後には平手をもらってしまった
道重なのだった。
94 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/13(火) 20:43
>>91-93 ブブゼラ。
95 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/13(火) 20:44
>>89
( *´艸`)

>>90
お気づきでしたか。寝技です。
96 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/13(火) 22:15
www
さゆはほんと天才だなあw
97 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/14(水) 15:23
>>93の下から5行目
こういうことに思い至った作者さんが素敵だ
98 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/29(木) 22:44
よんだらいく
99 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/29(木) 22:45
「余ったの。食べに来ない?」

主語が抜けていたので詳しく聞いたら、宅配ピザの話だった。
冷蔵庫に入れてあるが時期的に不安だという。

「ほんまは飽きたんと違う?」
「……当たり〜」

他の誰かでは、まずここまでたどり着くことが出来ない。
さすが専属通訳といったところ。

そんな訳でその日の夜、光井はジュンジュンの家に招かれた。
冷蔵庫から半月状の(元)Mサイズピザが箱に入ったままで出てきて、
全部食べていいよ、と言われたが、さすがに量が多い。

「さらに半分で充分やー」
「全部いいよー」
「ふとるー」
「ふとればいいジャン」
「何やとぉ!?」
「あ、チーかまもあるだけど」
「いらん。両方チーズやん」

てきぱきと皿に移し替えた光井が、それをレンジに入れてスタートボタンを押すと、
突然室内が真っ暗になった。
100 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/29(木) 22:48
「!?」
「あ。ぶ、ブレーキかな」
「……ブレーカー! どこどこ、どこにある!? 早よ直せや!」
「ちょと待ってて」

その場で硬直していた光井の眼前に、突然白いものが浮かび上がる。
光井は悲鳴をあげた。
正体は携帯のディスプレイライトに照らされたジュンジュンの顔だったのだが、

「見てくる」

当の本人は異変の方に気を取られ、悲鳴をスルーして玄関へ向かった。

しかし、ブレーカーに異常は見受けられない。
おかしいな、と思ったところで部屋の明かりがついた。
とりあえず直ったので、部屋に戻ることにする。

「あれじゃなかったみたい」
「…………」

が、こちらも少しおかしいことになっていた。
光井が床に座り込んでいる。

「どうしたの?」
「……いや、別に」
「ピザ食べようよ」
「……ちょ、立たれへん……」
「何あったですか」

光井が無言で腕をあげたので、ジュンジュンはそれを掴んで引き上げた。
少しよろけたが、なんとか立ち上がることができた。
101 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/29(木) 22:50
「さっきの……停電?」
「テーデ、ン?」
「電気が勝手に止まるやつ」
「あ、うん、多分それ」
「もう大丈夫やんな?」
「だいじょぶだいじょぶ」
「……あーマジ心臓に悪ぃ」
「驚いた? ちゅごくじゃ結構当たり前」
「そうなん? マジビビったで、顔急に出るし」
「顔? ってなにですか」
「もうええっちゅーねん。ピザ! ピザ食う!」
「あーと、十びょダ!」

レンジの残り時間に注目した二人は、自然とカウントダウンを始める。
……さーん、にー、いち!

「デッキター」
「ていうか出来てたー」
「まーね昨日のだしネー」
「おー、ええ匂い」
「今日の方が美味しいよー絶対」
「まーた、適当なこと言うなや」
「ジュンジュンにはわかるだもん」

などとくだらないことを言い合いながら、テーブルに着席。
仲良く平らげた。
102 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/29(木) 22:52
食べ終わって思い出したが、光井はブレーカーのことをよく知らない。
電気を使いすぎると「落ちる」ので、それを元に戻す必要があるという
ことは知っていたが、その作業は家族の誰かがやっていて、自分が
やってみたことはなかった。

「なあ、ブレーカーってどこにあんの」
「玄関の上にある」
「電気消えたら、それをどうすんの?」
「レバーが下がってるだから、上に戻すだけ」

光井は席を立ち、玄関に出て実物を確かめた。

「えらい高いとこにあんなぁー」
「届くよ!」
「……愛佳は届かへん!」
「え、ウッソ」

今度はジュンジュンが玄関へ。
見てみると、子供が必死に背伸びしてレバーに手をかけようとしていた。
その様子に思わず噴きだしてしまい、背伸びしたままの光井に睨まれる。

「光井サン駄目か!」
「駄目とか言うな! これが高いねん!」
103 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/29(木) 22:54
「でもわたし届くだもん」

光井を壁に押し付けるようにして、ジュンジュンがレバーにタッチした。
難なく届いている。
壁に顎をつけて上を見ていた光井は、ブーと口から息を漏らして
不満をあらわした。

「おかしいー。絶対あんたんちのが高い」
「高くないジャン」
「これ届かんかったら愛佳は一生一人暮らしできんやんかー」
「ジュンジュン呼んだら行くよ、ひひっ」
「あー言ったな!? 外が停電で真っ暗でも絶対来いよ!?」
「うん、ケータイ持って行くだから」
「絶対かぁ!」
「うん、いいよ」
「向こう帰っててもか」
「うん、あ、それは無理」

そこは絶対って言えや、相変わらず壁とジュンジュンに挟まれたまま、
光井は後ろの脇腹をつねり上げた。
104 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/29(木) 22:56
>>98-103 よんだらいく
105 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/29(木) 22:56
>>96
略して天さゆ

>>97
変態的行為を正当化することに燃えます
106 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/07/30(金) 06:55

107 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 05:53
108 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 05:54
「今日くらい二人とも日本語やめたらええやん」
「まだ辞めてないし!」
「そですよー。まだ日本のモーニング娘。ジャン」
「……あ、ゴメン」
109 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 05:56
「割り切り」を、他人にも押し付けるのは良くない。

光井を除く八期メンバーは、一時的に母国に居られるとあってか
終始テンションが高く、二人で行動していることが多かった。
今夜は同じ部屋で色々話すらしい……と耳にして、ならいっそ気持ちも
全て地元に帰すべきではと考えて、でも言い方を誤った。
やめたら、などと言ってはいけなかったのだ。

自室で一人、風呂に入った。
少し前までジュンジュンに居てもらっていたのだがそれももうやめ、
いや、やめたは禁句だった。
居てもらわなくても、平気になったのだ、と。

体はさっぱりしたが、眉間のあたりが鈍く痛む。
さっさと横になろうと思い、シーツをめくって今まさに潜り込もうとした
その時、壁の向こうから笑い声が聞こえた。
二人分の。
ジュンジュンと、リンリンの声だ。

「……!!」

光井は額をベッドに叩きつけるようにして突っ伏し、シーツを握り締める。
間髪入れずに涙が溢れ、布地に染みていく。
110 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 06:00
いずれ同期がいなくなり自分ひとりだけになるということは、
予め知っていたこと、ではある。
とっくに覚悟は出来ていたのだが、二人は最後まで日本にいて、
そこから送り出すことになるのだ、と。
それ以外のパターンなど、思いつきもしなかった。
卒業が決まってから、まさかまたこの国を訪れるとは、思っていなかったのである。
笑顔の同期を見て、いずれ二人が帰る地にいる今の自分は、完全に余所者だ、
と思った。

「……何で、今やねん……アホか……」

当然、同期を責められない。
ただただ、今とても苦しく、寂しい。
誰かに打ち明けようにも、この身勝手な疎外感を共有できそうな相手も無く。
慰めてはくれるだろうが。

少し、特殊だと思うのだ。
「3」から「1」になっただけの話。
では、ないので。
111 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 06:09
中国での楽しそうな二人を見たことは前にもあった。
でも今は事情が全く違う。
どうしてこのタイミングでまた訪れることになったのか。

だんだん腹が立ってきた。

何にかといえば、第一に自分に対してだ。(覚悟決めたはずやろ)
第ニに、タイミング。(だいたい数カ月したら帰るのに、また日本に戻すんかい)
第三に、壁が薄いこと。(このオンボロホテルが!)

いよいよ怒りを抑えきれなくなり、飛び起きて電話の傍にある
メモスタンドからペンを引っこ抜き、メモ用紙に突き刺すようにして
力任せにペンを走らせた。
紙面を黒く塗りつぶしていき、スペースが尽きると破り捨てて、
二枚目にまたペンを走らせる。
次々に破って、丸めて傍の小さなゴミ箱に捨てた。

円筒のありふれたゴミ箱の中身は、どんどん嵩を増していく。
ホテルの照明で黄味がかって見えるそれは、映画館のポップコーンに
似ていた。
だがその内側にあるのは、黒くて苦い思いだけ。
112 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 06:10
だいぶ気が済んできた光井は、最後の一枚にだけ文章を書いた。



 DON'T EAT
食べられません



113 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 06:11
>>107-112 嵩
114 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 06:11

115 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/12(木) 06:11

116 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/16(月) 23:13
みっつぃ…
背中がハリネズミになってそう
117 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/17(火) 01:36
>>98-103 なんかしらんがめっちゃ萌えました
どうかここの中だけでもいい、愛佳を救ってやってください…
なんかものっすごい切ない。
118 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 06:20
ふっ と
119 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 06:22
真夏でも、素足でフローリングの床は冷たくて骨身にしみる。
ような気がした。

なので、床にうつぶせで雑誌を読んでいた光井、この時左足だけ
スリッパを履いていた。
部屋の主ジュンジュンはベッドの上で携帯をいじっていて、下にいた
光井の足元だけちらっと見てまた携帯に目を落としながら

「ていうかどうして両足じゃない?」

まるで最初から日本人のような唐突な話題振り。

「あー、これはこれでええねん」
「ふーん」
「ちょっとこっちだけ守っときたいだけやで」

光井はそう言いながらごろんと仰向けになる。

「……あ、ハイ。靴下とか使う?」
「ええわー。これで充分」
「でも心配ですよ」

ジュンジュンはベッドから降りた。
それから光井の足元に腰をおろして、左の足首にそっと手を添えた。

「ありがとぉ、けど悪いけど触らん方がありがたい」
「あ、ごめん」
「いやいやこちらこそ」

すぐに手を離したジュンジュンだが、明らかに残念そうだった。
暴露してしまった自分の方が責任を感じて、ついフォローを入れてしまう光井。

「体重かけたり圧迫とかされなきゃー問題ないねんけどな?」
「アッパクって?」
「ぎゅーって締め付けること」
「あー」
「あんたがいきなり誰かに抱きついてちゅーしようとすんのと一緒や」

うまい例えだと思ったのか、光井はニヤリと笑った。
ジュンジュンは噴き出した。
120 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 06:26
「で、でもあ、あ、あれはいいジャン! 愛情ですよ」
「何テンションあがってんねんこの変態がー」
「へ、変態ジャナイし! ひどいなひどい光井サン」
「いや間違いなく変態なんちゃう〜? 愛佳の周り被害者しかおれへんしィ〜」
「だから、愛情!」
「ほんまに愛情ならなんでみんな痛い痛い言うてんの〜? 手加減しィや〜」
「ちょ、ちょとちょと、じゃ起き、起きてください」
「何やねん実験か。痛いの嫌や言うてんの!」

ぱん! 光井は床に雑誌を叩きつけて抗議、のフリをして上半身だけ
起き上がった。

「足、足ジャマ」
「ジャマとか言うなや失、うわっ!」

文句言う前に強引に大開脚させられる、というデリカシーの欠片もない仕打ちである。

「お前! そういうとこ直せよマジで!」
「光井サンが悪い!」
「うるさい耳元ででかい声出すな!」

怒鳴っている割に、うまいこと優しく抱きしめてくれてはいた。

「ほら! ほら全然痛くないジャン」
「耳が痛い」
「文句ばっかりダメ!」
「黙ってればたいてい文句無いわ!」
「あ、それじゃ、今からわたし黙るワ」

そして唐突に訪れた沈黙。
121 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 06:29
クーラーが効いていて、密着していても汗ばむことはなかった。
それどころか、忘れかけていた春頃の心地良さすら感じる。
と言ってもその感じは長くは持たなくて、光井は口を開いた。

「……重い」

少し間を置いて、ジュンジュンは無言で体を動かした。
腰を抱えられてなにやらモゾモゾ動いていたが、こちらが協力してやらないと
何かまた痛いことが起こりそうな気がしたので、

「もうメンドイからそこ寝とけばええやん」

よっこいしょと自ら腰を上げた。
特にこうしたかったわけではないが、自然と自分が上にのる体勢になっていた。

そうなるまでの心境といえば、こいつ床に頭打ったりせえへんやろなー
などと呑気に心配していたくらいで、落ち着いていたし、
ぺち、と冷たい床とジュンジュンの肌が貼り付く音が聞こえて、
なんか生々しいな、と思う余裕もあった。

生々しい……

「……なんつー顔してんねん」

怯えているのか? 見下ろした同期の顔は何故かそういう雰囲気を醸している。

「もう喋ってもええよ」

許しを得たジュンジュンは、自分が着ていたTシャツを示した。

「これ、うさぎチャン」
「あ?」
「とらー」

それから光井の方も。

「……虎んなれ、と?」
「捕まっただから」
「また勝手なことを……」

でも通訳的には相手の要求を100パー理解してしまった。
いったいこいつはどこでスイッチが入ったんだろうか。
もう完全にキレキャラバイバイ状態で、まるで別人だ。

どうも何か違う気がするが、自分はやっと虎になれるらしい。
とりあえず、光井は左足のスリッパを脱いだ。
122 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 06:31
>>118-121 ふっ と
123 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 06:31
>>116
ハリネズミって、お腹のあたりガラ空きですよね……
なんか、似てますね……

>>117
お約束は出来ませんが、思いついたものを書けるだけ書きたいと思っています。
124 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/24(火) 06:32

125 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/08/29(日) 19:38
こ、これは次回ふじklp;
通訳の察しが良すぎてジュンジュワーです
126 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/14(火) 20:36
これも仕事だから、と、休憩している時にカメラのレンズを向けられることの
わずらわしさったら無い。
そんなことを言うと非難されるのは目に見えているので、理由を聞かれても
答えないようにしている。

この日高橋は、休憩時間に本当の「休憩」を取るために、一人で楽屋を出た。
人気のない非常階段の段差に腰かけてぼんやりしていると、後から来た光井に
見つかってしまう。

「おう」
「……」

光井は軽く会釈をし、高橋のいた階よりも下に降りていった。
どうしても足音が響くので、踊り場を曲がってから数段降りたところで
立ち止まって、そこで腰をおろしたような気配は分かってしまうが、
黙っていた。

こんな感じの遭遇は今までにも何度かあって、休憩が終わりに近づくと光井から
「そろそろ時間ですよぉ」と声がかかるのだ。

向こうも意図的に「オフにする時間」を作りたがる人間のようだった。
(ちなみに亀井も同じタイプだが、場所を選ばない所が決定的な違い)
127 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/14(火) 20:39
はじめの頃は、何か自分に言いたいことがあって探しに来たのかと思った。
声をかければちゃんと話にのってきていたし、相談に発展したこともある。
そんなある日の会話中にぽつりとこぼした

「ここは静かでええですよね」

この一言。
自分が一人の時に思っていたことが、光井の口から出た。
つまり、同じ目的を持って来ていた訳だ。

「そっか、あたしあっち行くから」
「あ、いや、そんな」

高橋は光井の頭をぽんと軽くたたいて、彼女から離れた。
向こうがこの行動をどう思ったのかは、聞いていないから詳しくは知らない。
ただ、次にばったり出会った時の光井には慌てる様子がなくて、
目が合った時、指先で方向を示すジェスチャーをしていった。
向こうに行っていますね、と。
ちゃんと伝わっている、と思った。
落ち着く場所が悉く同じなのか、そう思うと少し可笑しくもある。
128 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/14(火) 20:40
互いに一人の時、何をしているか、という話もしたことがない。
とりあえず今は下にいるようなので、のぞき込めばそれがわかるかも
しれないが、全くそんな気にならない。
自分なら、見られたくないから。

ほどよく腑抜けになれる時間と場所が、誰にだって必要だろう。

光井は自分より切り替えが早いようで、こちらから声をかけようと
思っていたこともあったが、いつも先に言われてしまう。

だから、高橋はすっかりそれを頼ることにした。
その分、わずかな無責任時間を満喫した。
129 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/14(火) 20:41
やがて階下から声がかかる。

「そろそろ時間ですよぉ」

と、今日も同じ調子で。
130 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/14(火) 20:42
>>126-129 タイトルなし(4)
131 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/14(火) 20:43
<DVD MAGAZINE Vol.31>

( ・e・)<なんで 愛ちゃんは全然映んないんだ!
            この人も>(’ー’*川つ Σ(´┴`=川
132 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/14(火) 20:44
誕生日更新だというのにご本人のブログが始動しちゃって、
いささかおサムい話になってしまいました。
おめでとうございます。

>>125
まさかそういうレスがくるとは……
えーと、緩く繋がるなにかは書くかもしれません。
133 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/16(木) 02:56
好きです、すごく好きです。
思い出したようになんども読み返してしまいます。
こんなにうまく彼女たちの個性をかみくだいて、
それをまた組み立てることができる>>1さんのこと恐ろしいとすら思いました。
うわーもう大大大好きです!!!

失礼を承知してうかがいますが、サイトやブログをお持ちでしょうか?
もちろん有無だけで充分ですのでよかったら教えてください……
企業秘密だったら本当すみません。
134 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/16(木) 21:34
>>133

とりいそぎレス。

本気で自分しか見ていないんじゃ、と思うことがあるんですが、
そうではないんですよね。
ありがとうございます。
毎回すごく緊張してます。特に口調は気になります。

おたずねの件ですが

☆サイト ありません
★ブログ あります 晒しは勘弁してください
135 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/17(金) 20:39
レスありがとうございます。
そうです、何が好きかってもう、
>>1さんの目のつけどころもそうなんですけど、
メンバーの口調のリアルさが!
勝手にみんなの声で再生されちゃうレベルですよ。
>>1さんの作品の、においとか温度とかも伝わってきそうな
生々しい感じが大好きです。

ブログお持ちなんですね……!
不躾な質問に答えてくださってありがとうございました。
がんばって探してみせます!ほんとありがとうございます!
136 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/22(水) 23:15
鼻にタグ/帽子に口紅/眼鏡にソフトクリーム
137 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/22(水) 23:16
『鼻にタグ』

愛佳さんと純さんが、渋谷へお買い物に行きました。
愛佳さん曰く、

「眼鏡! 伊達眼鏡が欲しい」

芸能人のマストアイテムです。
適当なお店で品定めをはじめた二人。

「やっぱ黒ブチやな」
「お、いいジャン」

これちょっと可笑しいけど、という意味で純さんは眼鏡の柄に
ぶら下がっているタグをちょいちょいと指でつつきました。
そのせいで鼻をくすぐられた愛佳さんが

「へっくしぃ!」

とクシャミをし、純さんはそれを思いっきり浴びました。
自業自得です。
138 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/22(水) 23:18
『帽子に口紅』

伊達眼鏡の他にも、芸能人御用達のアイテムがあります。
帽子です。

今日は愛佳さんだけグレーの帽子をかぶっていました。
(純さんはあまり帽子が好きではないそうです)

屈んで商品棚を見ていた愛佳さんが

「あ、これ安い」

と言ったので、そばにいた純さんはそれを覗き込もうとしましたが、
目測を誤って愛佳さんの帽子に鼻の下をぶつけました。

「!?」

突然どつかれたような衝撃に、頭をおさえた愛佳さん。

「ゴメン当たった」
「どこが!?」
「く、口……」

それを聞いて即座に帽子を脱いだ愛佳さんは、確認して怒りました。
口紅の跡が少し付いていたからです。
純さんは帽子をひったくるように取って言いました。

「洗って返す!」
「いいって!」
「だめよ! わたしのせい!」
「……あんたんちの洗剤のにおいがあんま好きくないねん」
「…………ソウカ」

価値観の違いです。

「光井サンわたしの服のニオイ嫌いだったか」
「着てる時はわからんくなってる」
「そうなの、どしてかな」

愛佳さんは答えてくれませんでした。
139 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/22(水) 23:20
『眼鏡にソフトクリーム』

「甘いもん食わせればええ思てんのやろ」
「ちがーう、お、オバ……リ?」
「……お詫び」
「それ!」

最悪です。見事言い当てられて大きなリアクションを取った純さんの指先が、
今度は愛佳さんの食べていたソフトクリームに突き刺さりました。
その勢いでクリームが跳ねて、買ったばかりの伊達眼鏡にほんの少し
付いちゃったのです。

「…………」
「あ、あ、あ」
「……指どけろ」

愛佳さんは怒るとよく怒鳴る人でしたが、それは序の口でした。
本当に怒り心頭になると、小声になるタイプなのです。
純さんは恐怖で少し混乱して、コーンを持っていた愛佳さんの手ごと
ソフトクリームを持ってしまいました。

「何してんねん」
「お、落ちる……だ」

それは傍から見たらちょっとほほえましい光景でしたが、
そこには噴火寸前の火山が確かに存在していました。

純さんは強く思いました。
いつも「我慢しないで」と言っているけど、この時ばかりはしてくれて良かった、と。

この日純さんが買ったのは、光井家で使っている洗剤と、眼鏡クリーナーの
二つだけだったそうです。
140 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/22(水) 23:21
>>136-139 鼻にタグ/帽子に口紅/眼鏡にソフトクリーム
141 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/22(水) 23:23
>>135
川*’ー’)ノシ
142 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/09/22(水) 23:23

143 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/01(金) 22:32
最後の秋
144 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/01(金) 22:34
いやあどうもすんません。薄着ですんません。
ちょっとほんとマジ寒すぎて、リーダーの申し出を遠慮全くナシで
受け入れさせていただきました。

たまらん。
あったけえっすウヘヘ

「お前何キャラだよ」
「後輩ッす!」
「ワタシたちみんな後輩ジャン」
「愛ちゃんリーダーだもんーね」
「お黙りキミタチ」

ジュンリンども料理を食べながら絵里にガンガン突っ込んでくる。
行儀悪いぞ、と愛ちゃん様がたしなめてくだすったぞよ。
絵里的にはまー別にいいんですけど。

もうね、久しぶりだったんだよ。
愛ちゃんから服借りたのが!
結構レッスン着のTシャツ借りたりとか普通で、絵里はついつい
忘れちゃって借りまくり……へへ、みんないつもありがとう。
それがね、服の趣味近い人だと内心ウキウキで。
このままくれないかなあ〜? なんてたまに思う時もあったりして。

しかも今日借りたこの上着、買った時に絵里も一緒にいた!

思わず、ただいま! って言いたくなったゼ。
仕事から帰ってきたダンナの気分だゼ。
でも尽くしときたい気持ちもちゃんとあるのヨ?
145 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/01(金) 22:37
お礼にビビンバ混ぜたり料理取り分けたり(全員分ね)、ジュンジュンの
相手したり、リンリンに料理の感想聞いたり。
今度はちょっとサブの気分。
愛ちゃんはだいたい、ウンウンって頷きながら聞き役に徹してた。

上着はいつの間にか借り物だったことを忘れるくらい馴染んでた。
外に出て空気がすっかり変わってしまったのを感じて、さむ、って、
思い出して、

「あの、愛ちゃん」
「ええよそんまま帰んな」

ですよねー。

「さすが。すんまっせん、お借りします」
「はいよ」

スムーズに済みそうなところで後輩J氏の横槍ing

「汚しちゃだめよ!」
「わかってるってか関係ないだろー。入ってこないでくれます?」
「やだーニガキさんみたいだ」
「HAHA、ウツったカ」
「仲良いってことだ」

そだねー。みんな仲良いよ。
何だかんだ言って、好きよ。
146 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/01(金) 22:40
今日のお食事会はね、実は、愛ちゃんによる早目の送別会みたいなのだった。
リーダーだかんね。
三人、均等にね。
リンリンいるから、ってアルコール無しにする徹底ぶり。
途中からJ氏が勝手に呑み始めちゃって、抑える一場面もあったけど。
あいつ酔ったらまわりのみんなが恋人に見えちゃうんだよ。
毎回れいなか愛佳のどっちかが酒臭いキスの最初の被害者になって、
あの二人はもうとっくに諦めてんだけど、それ見た他の皆が避ける、
っていうお決まりのパターン。
今日はどっちもいないからさあ、先手打っておかないと駄目だったんだよね。

まあそういったわけでして、楽しかった時間もあっという間に……
早すぎ。二時間じゃ全然足んない。
差別するわけじゃないけどさ、ジュンリンに比べたら何倍も一緒にいるんだよ
愛ちゃんと。
高橋さん、って距離から始まって、呼び方もお互い変わって……
ひとつ言ったらふたつ返って来るようだったのが、ひとつで済んだり、
あれソレでわかったり、たまに言わなくても通じるようになったり。

実は、愛ちゃんがじっとこっちの目を見てくるのが最初苦手だった。
怒られてばっかの頃だったから。何言われるんだろう、ってビクビクしてた。
って話、まだ言ったことなかったね。
147 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/01(金) 22:43
今……とにかく、思い出話がしたい。
そんなことあったねーって、一緒に笑いたい。
あと許可したい。上から目線だけどこう言いたい。
これからは、愚痴る相手の一人に、絵里を入れてもいいよって。
全部受け止めるから。

どんどん言えよー、ってガキさんと一緒に言ったりしたんだけどね、
今までも。
あの人、卒業してからじゃないとそういうカテゴリーに絵里のこと
入れてくれないみたいだからさあ。
水臭いってやつだよ、ほんと。
148 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/01(金) 22:45
ジュンリン二人がタクシーに乗って帰ってった。

「さ、行こうぜ愛ちゃん」
「え、どこ?」
「まだ時間あるよ」

愛ちゃんが笑った。
普通に笑ってるから脈アリ。

「眠くなるから程ほどに」
「絵里が連れて帰るからガンガン呑んじゃえよー」
「やだー」

はいはいとりあえず拒むんだよね。

「じゃあ、こりは人質だ」

でも今日は最終兵器の高橋服を装備してんだからー。
ちょっとゴリ押しさせてもらいましょう。

「人じゃねえし。今日じゃなくても」
「だめ。今話したいことあるんです!」

逃がさないよーと腕を掴んで絡めた。
寒い寒いとくっついた。

ブーツ解禁の季節です。
愛ちゃんと去年一緒に買ったブーツ、歩くとなんか楽しげに靴底が鳴る。
やがてこの足音はユニゾンになるのです。

「話ってなんだよ」
「ま、ま、とりあえずどっか入ってから」

はなすから、はなさないよ。
149 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/01(金) 22:46
>>143-148 最後の秋
150 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/01(金) 22:47

151 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/01(金) 22:47

152 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/03(日) 23:19
かがわけん
153 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/03(日) 23:19
「手に入らないものって魅力的ですよね」
「そーだねー」
「ずっとそれを追って生きていく事が出来るんですよ」
「あらすごい! 深いやん!」
「さゆみは奥の深い女ですから」
「アハ そうでしたね、道重さん」
「だからiPhoneが買えないのも受け入れます」
「まだお母さんにゆえてないんや」
「ああーあいふぉんほしいあいふぉんあいほん」
「最後アイホンつった」
「言うてました! そんな言うなら道重さん、愛ちゃんのちょっと貸してもらうのは
 あかんのですか」
「愛佳、わかってないなー。さゆみは自分のが欲しい」
「ですよねえー」
「愛ちゃんもiPhoneも自分のじゃないとやなの」
「あー聞こえないでーす」
「あっしワガママな奴やよ」
「愛ちゃんその返しもちょっと、あれ、酔うてませんよ……ね?
 この鍋に酒とか入ってませんよね? ウーロン茶も普通の」
「場に酔うってやつやない。今日、超笑ってるし、そろそろあくびするよ」
「しますね恐らく」
「……ふぁ〜」
「ほら流されやすい」
「流されやすいですね」
「いつかこれを利用して落としてやる」
「……ああーなんも聞こえへんわぁ」

この後リーダーはリンリンに膝枕をしてもらいました。
154 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/03(日) 23:21
>>152-153 かがわけん
155 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/03(日) 23:21

156 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/03(日) 23:21

157 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/05(火) 16:43
和むわー
158 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/15(金) 19:15
デジタル・ミルフィーユ
159 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/15(金) 19:17
田中と光井が楽屋の出入り口近くでお喋りをしていたら、
部屋の真ん中らへんで大きな歓声があがったので、
二人とも思わずそちらを見た。

何人かがかたまって騒いでいて、中からは

「ジュンジュンチョーウケル!」

という亀井の高い声。

「うっせー」
「なんでしょうね、あ、あれや」
「こっから見えんっちゃけど」
「あの、テーブルに全員分のiPhoneを重ねて積んではるんですよ」
「はあ〜?」
「あんなんやりだすのはジュンジュンでしょーね」

それで亀井がああ言ったのか。
田中は立ち位置を少し変えて人垣の奥をうかがう。
テーブルの上には、ピンクと黒が何層か積まれた重そうな塊が置いてあった。
色が違うのはカバーのせいである。

「あれやるとナントカアプリ出来ると?」
「知らないですけど、多分出来へんと思います……」
「ふーん」
160 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/15(金) 19:19
所持者だけの優越感からあんな遊びを思いついたか、
田中は心の中で冷静にそう分析した。

「同じもんいくつかあったら、並べてみたくなるんやろうなあ」

光井は少し違うことを思ったようだ。

「……てかさ〜」
「はい」
「五人って固まると結構小さくね?」
「あ〜、確かに五人ですね。あの集団は」
「この辺から見てても、モーニング減りよったナ〜みたいな」
「ちょっ、あの五人って」
「た・と・え・ば、の話」

例えば。
三人卒業したら、あんな感じ。
実際にはもっと小さくなった感じ。

「……いやっ、増えますやん一応」
「そうやけどれいなも五人は初体験やけんさー。
 あー、あんな風に見えるんかいなー的な?」
161 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/15(金) 19:20
その時楽屋のドアが開いて、弁当の容器を持ったリンリンが入ってきた。
そしてそのまま、部屋の中央で楽しそうにしている五人の下へ、
吸い寄せられるようにやってくる。

「リンリンこれ見てみ」

高橋が示したのは、もちろん積まれたiPhoneだ。
それを見たリンリンは、

「ミルフィーユか!」

すぐ食べ物に変換して、更にみんなを笑わせた。
162 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/15(金) 19:21
>>158-161 デジタル・ミルフィーユ
163 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/15(金) 19:23
>>158
元ネタ画像だけでも、強力な和みオーラでありました。
164 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/10/15(金) 19:25
アンカーミス>>157でした。ごめんなさい。



ところで、このスレですが、

(1)容量いっぱい
(2)今年いっぱい

の、いずれかの目標を達成したら更新を終了する予定です。
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/15(月) 21:46
タイトルなし(5)
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/15(月) 21:48
ジュンジュンが高尾山での写真をたくさん撮ってきていたので、
それらが保存された携帯をじっくりと見ていた。
一緒に行った新垣やリンリンと写りこんでいるものと、風景のみのものが
ちょうど半分ずつ、くらいの割合で残っている。
霧が濃かったらしくて、ものによっては上半分が真っ白で下半分が
白の間から見える木々の緑だけ。
それもまたオツであると思えた。

「オツって意味わかる?」
「ワカンナイ」
「よなあ」
「どいう意味?」
「う〜ん、味があるっちゅーか」
「景色、味しないジャン」
「旅先の出来事はなんであってもええもんですねーみたいな意味」
「うん、ラー油買えただから良かったワ」
「そっちかよ」

下を向いて携帯の小さいディスプレイを覗いていた光井は、
いつの間にかすぐ傍にジュンジュンの気配があることに気付いた。
少し頭を傾ければ鼻先が当たりそうな気がした。

「見えてる?」
「あんまり……」

それなら角度を変えようと、携帯を上に持ち上げてみる。
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/15(月) 21:51
「これで見れる?」
「見れるだけど、ちっちゃいね」
「しゃーないやん、あんたここ行ったんやしええやんかー」
「行きたい?」
「行ってみたい! 琵琶滝があるねんで!」
「あ、あったあった」
「まさか行ったん!?」
「行ってない。MAPに載っててみんなで、あー光井サンのーって話しただけ」
「えー!」

淡々と説明したジュンジュンに対して、大袈裟にのけぞる光井。
ジュンジュンはそれを見て、だったら一緒に行こう、と持ちかけた。
いつに、ということは言わなかったし、向こうも聞いてこなかった。
返事もされなくて、……できなかった、のも、ジュンジュンにはわかった。

寂しジャナイ。

嘘でもいいからこの場で約束して欲しい、と思った。

「行こうよー」
「……」

肩を引き寄せても返事が無い。
さらに押した。

「ねー」
「……まあまあ」
「意味ワカンナイ」
「ごめん、愛佳も行きたいよ」

正しく意志を伝えたい時は標準語が返ってくる。

「一緒だよ?」
「一緒に」

それは希望であって約束ではないけれど。
仕方の無いことだった。
168 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/15(月) 21:54
でも。

よくよく考えれば、例えばこれから先、世界のどこかでばったり
光井と出くわすとして(それが有り得ないことだとは少しも思わない。
なぜなら自分は、有り得ないはずの「日本のアイドル」になっているから)
そんな時昔交わした「約束」に何の意味があるのか。

もちろん恩は忘れないが、何年経っても場所がどこであっても、
変わらぬ態度で接することの方が大事だと思う。
その時のために「日本での自分」は捨てない。
一生心の中に持ち続ける。



『わたしは再びあなたと出会うこの瞬間まで、わたしのままで居続けたよ』



その時は、相変わらずだ、と言われたい。
それが最大の賛辞になる。
169 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/15(月) 21:56
「ジュンジュンなんか考え事?」
「ん、別に。今日も光井サンかわいいジャンって」
「すっかり誤魔化すこと憶えたな」
「誤魔化してない!」

証拠とばかりにジュンジュンは熱弁をふるった。

いま光井が手にしている自分の携帯は、ついさっき意外な使われ方をした。
先日落ちてしまったブレーカーを「元に戻す時はこうすればええ」と言って、
レバーを下から押し上げるための予行演習に使われたのだった。

前回と同じように背伸びした子供の姿がまた見られて、

「超かわいいと思った!}

と力いっぱい主張したら、光井は背を向けて縮こまってしまった。
当然それすらもかわいらしいので、堪らず背後から抱きついて
かかえあげようとしたら背中からひっくり返りゴロンどたーっ。

鈍い音が自室に響いた。
170 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/15(月) 21:57
>>165-169 タイトルなし(5)
171 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/15(月) 22:01

172 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/15(月) 22:01

173 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/21(日) 23:46
うえしたうしろまえ
174 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/21(日) 23:47
虎ちゃん大敗北。
光井の望みは叶わなかった。
相手はうさぎチャンとか何とか言って経験豊富なパンダだったが、
こっちはこっちで赤ちゃん虎だった。一人にされるとなにもできない。
結局、ジュンジュンの言いなりになってしまったのだった。
獲物に誘導されるとは。
なんたること。

仕事以外で自分の方が子供であることを思い知らされることは何度か
あったが、今回のことは、それまでで一番ダメージの大きい出来事となった。
175 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/21(日) 23:49
相手は間違いなく年上の、大人だ……

ノートに書いた数式を解きながら、紙の上に垂れている髪の毛の主、
李純先生(現在専属家庭教師)について再認識。
気持ちを切り替えようと学校の宿題をはじめたら、向こうが嬉々として
教えにきたのだった。
前に一度、自分を差し置いて何から何まで全部解こうとしたので、
為にならん、と怒ったことも。
それでもやっぱり勉強が好きらしくて、こうしてテーブルに広げた教科書や
ノートを、横とか背後から眺めている。
終わるまでは黙っていろと釘を刺してからは、忠実にそれを守っていた。

「よし終わった!」
「ハイ、せいか〜い」
「当然」

なんというか。
これに限って言えば、自分はなかなか恵まれている。
ジュンジュンは答え合わせもしたがるから、間違いがあれば即座に
わかって効率もいいと思う。
疑問点も、聞けば丁寧に教えてくれる。
うまく言葉に出来ていない時もあるが、自分が読み取ればいいだけだ。
176 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/21(日) 23:54
宿題が終わって一息入れていると、ジュンジュンが立ち上がった。

「あ、あのね、少し掃除したいだから、好きにしてて」
「手伝うかぁ?」

光井に背を向けたまま、ジュンジュンはひらひらと手を振る。

「おかまいなく」

この言葉、先輩に対する光井の口癖のひとつだ。
いつの間に憶えたんだろう。

ジュンジュンは台所の床に座り込んでなにかしている。
すぐ傍に、赤い輪ゴムが落ちていた。

「……輪ゴム落ちてんで」

放置されたような気がして寂しかった光井は、それを拾うついでに
自分も床に座り込んだ。シンク下の収納から鍋を出してダンボールに
詰めているところだった。
拾った輪ゴムを指に絡めて遊びながら話しかける。

「自炊やめんの」
「ちさいのだけ残す」

無意識のうちに右手をピストルの形にして、それに輪ゴムを装填。
当てるつもりはなくて、小指を動かしてゴムの伸縮を楽しんでいたら、
ふと、その形があることを思い出させた。
ピストルのままの右手を少しかかげて、

「なあなあ、これ」

左手の人差し指でジュンジュンの肩をつんつんする。

「中国の、八」
「……あ、ほんとジャン」

振り向いたジュンジュンは、少し笑って手を止めた。
177 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/21(日) 23:57
日本では、指を折って片手で一から五まで、両手を使って十までを数える
習慣があるが、似たような数え方が当然中国にもあって、今光井が作っている
輪ゴムピストルの形は、向こうで数字の「八」を表す。
その指に絡む輪ゴムを見て、彼女はひひっと笑った。

「わ、わ、輪ゴム〜?」
「知らんの。これでゴム飛ばせるねんで」

言いながらシンク下のドアに向けて輪ゴムを発射すると、何がツボだったのか
今度は大笑いするジュンジュン。
あまりにも受けが良かったので、輪ゴムピストルのやり方も教えてやる。
すると、

「ピュン!」

とか言いながら、嬉しそうに何度も輪ゴムを壁に当ててキャッキャと
はしゃいだ。子供のように。

眺めていてつくづく思った。
大げさでも、指導する喜び、みたいなものを実感することができたのは、
彼女のおかげだ。
九期なんかこいつに比べたらほとんど手間がかからないだろう。

中国人にとっては理解しがたい、上下関係やそれに関わる遠慮という名の
気配り、多少の我慢、全部とは言わないが多くのことを教えた。
最近ではジュンジュンなりのルールが出来つつあるらしく、光井の
気遣いや我慢は行き過ぎと指摘されて、それに対してまで遠慮をして
「いやいやそれほどでも」などと言ってしまった。

なんだか立場が入れ替わったようで、もっと自分を出せ、わたしのように
前に出ろ、と意見まで言われる始末。

やっぱり、本質は相手の方が一枚上手だ。
それは周りの評価も同じで、良く耳にするのは「お母さんみたい」という表現。
でも、光井はあまりそう思ったことがない。
自分に向けられる愛情の色が、他と違うことを知っている。
178 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/22(月) 00:00
与えられたものを帰るまでに返したい。

想いを溢れるほど注がれたと実感した時から、虎視眈々とそのチャンスを
狙っていた。
自分は最初寂しさから相手に歩み寄ったが、ジュンジュンははじめから
愛情を持って接してくれていた。若干即物的な面はあったけれど。
その最初の分だけでも、同じ気持ちで返したい、と。
……だけど、結果は大惨敗。

衝立に描かれた虎がいきなり「どうぞ」なんて誘い出されたら、
いかな虎といえども訳が分からなくて立ち往生するに決まっている。

それで、記憶がすっかり飛んでしまって……
ジュンジュンはあれを、どう思っていたんだろう。

「なあ、……昨日ゴメン」
「ん?」
「いろいろ申し訳ない」
「……え、ナニ?」

しばらく床に座り込んでいたせいか、少し足が痛くなってきた。
光井は思わず身じろぐ。後ろめたさもあって、座ったままジュンジュンから
少し遠ざかった。

「ナニ?」

ジュンジュンは、質問の答えが返ってこないので繰り返してきた。
顔を見ることが出来なくて手元を見た。輪ゴムが彼女の指に絡まっている。

「甘く見てた。勉強不足すぎて、今めっちゃ反省してんねん……」

情けなくて項垂れた。
ジュンジュンはそんな光井を抱きしめて、優しく背中を叩く。
慰めてくれている。

「どして? わたし何も気にしてないし、超嬉しかったですよ」
「うそやん……なーんも、できへんかった」
「やってたジャン」
「してない」
179 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/22(月) 00:03
口答えしたら突然グイッと引き離されて、光井の目の前に不機嫌そうな
ジュンジュンの顔があらわれた。

「……この手! これ使たデショ!」

持ち上げられたのは右手だ。相手の方が熱が高い。

「つ、使ったって……それ違う」
「どう違う」

言い間違いを正そうとして、思い浮かんだ言葉はストレート過ぎた。
でもこれ以外の言葉が見つからない。

「……さ、触った」

指が絡んだ。

「それ憶えてる」

真っ直ぐな声。
光井はしかし、それをも否定してしまう。

「で、でもな、あんたが色々こう、あ、アタシは自分でなんとかしたかっ」
「どしてそれその時言わなかったの。ていうか、ていうかね、聞いて!」
「き、いてる」
「自分で自分で言うの、それ、それわたしいる意味ないジャン」
「ぅ、あ」
「光井サンいつもそうだ、駄目!
 ……わたしいるの、見、みえて、ない?」

光井は即座に顔を上げる。

「……見えてる! ゴメン!」

手を握ったまま泣きじゃくるジュンジュンを、力いっぱい抱きしめた。
背中以外は全部くっついてしまいたかった。
見えている、だけじゃない。と。
180 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/22(月) 00:08
しばらくすると向こうから引く気配があったので少し力を緩めた。
再びご対面。泣き止んでいたが長い髪が乱れて顔にかかっている。
それをなおしてやろうとして、未だに手が繋がったままだったことに気付く。
あいていた方の手を使って、前髪を整えてやった。

「こっちの手ぇも汗すごいことんなってるよ」

そのことは言われて初めて気付いたらしい。
ジュンジュンが離そうとしたら、いつのまにか赤い輪ゴムが光井の
中指にも絡まっていて、お互いの手の間でみょーんと伸びた。
二人は揃って噴き出す。

「……これ、何のやつ?」
「ナニかな。食べる物のじゃない?」
「台所に落ちてたんならそうやろ」

曲げたり伸ばしたり少し引き抜いたり。

「ピーマンだたかな」
「あれとかテープやん」
「そうか」

いつの間にか、輪ゴムを落とさずに遊ぶという暗黙のルールができて、
最後は強く引っ張りすぎたせいで弾けてどこかへ飛んでいった。
それを見てたくさん笑ってスッキリした。のは、光井だけで。
気がつくと離したばかりのジュンジュンの手が、半袖の光井の腕を
蛇のように伝い昇ってきていた。
それが袖をくぐって肩を掴まれる。
笑顔が硬直し、一気に緊張してしまった。
181 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/22(月) 00:11
「今日はとらじゃないよネ」
「は?」
「わたしの服」

……真っ暗な部屋で渡された、借り物のTシャツの柄なんて憶えていないのだが。
目線を落としたジュンジュンがまた笑い出したので、光井は悪い予感がして
自分の胸元を見た。
その時顎にガサッと何かが。めくれ上がったタグだった。
後ろ前に着ていたのだ。

「!!」
「わ、わたしも気付かなかっ」

優しい同期のフォローの言葉は、Tシャツを大胆に脱ぎ捨てた時に
起こした音にかき消される。

「お前もよぉ見とらんかったやないか! もう、無し! 全部無し!」
「じゃ昨日のからやり直す〜の?」
「はあ!?」
「わたしやってあげるよ」
「いいいいやいやいや!」

全力で拒否。

「え〜? でもぉ〜……」

ジュンジュンはそのままにやけていた。
自ら諸肌を晒していたことに気付いたのは、結構見られてからだった。
よーく見られてしまった。

「……べ、別に今更やしっ」

言い訳をさえぎられるようにまた手が伸びてくる。
触れられたのは、紅い頬だった。

ここで観念。
心の虎が腹を見せた。
182 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/22(月) 00:13
……ズルイ。こいつ手ぇでかいねん。
体もでかいし重いっちゅーねん。

華奢な愛佳にとっては完全、分が悪い。
これや!
今の状況をピッタリ言い表せる日本語。
もう、トータルで勝てたらチャラってことにしよ。



そうしよ。
183 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/22(月) 00:14
>>173-182 うえしたうしろまえ
184 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/22(月) 00:20

185 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/22(月) 00:20

186 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/28(日) 21:47
ぐずぐず
187 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/28(日) 21:48
辛すぎんのやめてや、ってゆったら、ちゃんと味調節してくれた。

愛佳が麻婆豆腐を食べている間、ジュンジュンは向かいに座って
こっちの様子をじっと見てくる。
喋らへん。

食事中やから喋らん方がありがたいんやけど、どっか調子狂う。

「……好きにしててええんやで」
「してるよ」
「あ、そう」

っちゅうわけで、引き続き食べることにします。

結果、ジュンジュンの作る料理は、辛くなくても美味しいってわかった。
188 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/28(日) 21:49
「ご馳走様でした」
「ありがとごじゃいました」
「んーそれはちょっと違う」
「どして? 店員さんこう言うジャン」
「あ、そっちは合ってんねんけどな」

少し迷った。
お粗末さまでしたって言葉、説明してちゃんと通じるか?

「ここはジュンジュンのお店ーだー。
 食べてくれてありがとごじゃいますデショ」
「あーそのつもりなん? ならええんちゃうー」
「でも食べたの洗ってネ」
「当然するし」

愛佳はすぐに食器を持って流しへ行こうとした。
その背後でジュンジュンがぼそっと

「亀井サンはしなかった」

ってゆってた。
189 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/28(日) 21:55
食器を洗い終えて、ついでに自宅の癖で、お茶も淹れてしまった。
途中で断りを入れたけど、うちの家事の流れが染み付いてるんやなあ。

湯呑み無くてマグカップがあったからそれにした。
二つ持ってテーブルに戻って、そしたらジュンジュンはパソコンやってた。
傍にカップ置いたら顔をあげて

「ありがと。いいこいいこ」

ひょいと腕を伸ばして愛佳は頭を撫でられる。
正直こんなんされたの久しぶり。
姉ちゃんとも、最近距離取ってたし。

「……」
「怒った?」
「いや」

戸惑っていたんや。
っていう言葉も出ぇへんくて、お茶を一口飲んで誤魔化した。

ジュンジュンは、何かやってたはずやのにパソコンをぱたんと
閉じてしまった。
飲み物をこれに零したことがある、だそうだ。ナルホド。
190 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/28(日) 21:57
さっきと違ってこっちを向いてくれんのは嬉しい。
さっきのは、なんやろな、恥ずかしい感じしたし。
食べるとこじーっと見られんのって、なあ。
口ん中見られててもハズいもんやで。

そんなことを思いつつ、カップの曲線を指でなぞる。

「うー、お茶ぬくい」
「ヌクイ?」
「あったかい」
「ああ」
「水仕事が辛い時期んなってきた」
「お湯出さなかったの?」
「悪いな〜と思て」

自分的にもいけると思って真水で食器洗ったんやけど、終わる頃には
結構指先が……
カップをテーブルに置いてそう話してるうちに、愛佳の手は
ジュンジュンに取られた。
軽く揉みながら

「ありがとおてて。ありがと光井サン。ありがとー」

真剣に、何度もありがとうを繰り返す。
191 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/28(日) 22:00
そしたら

「ありが、あ……ふすん、ん、だめだ、ダメダメ」
「え、泣いてんの?」
「超、冷たいヤン、と思」

冷えた手がかわいそうやと思ったんか。
当事者としては全く予想外の事態で、けど自分の事を想って泣いて
くれてはるんやろなーってことは充分伝わってくるし。

「でもあんたのおかげでポッカポカんなったよ? もう泣くなや」
「ん、うん」

その後両手が解放されて、空気に触れた皮膚は一瞬だけ、
水に濡れた時よりも冷たく感じた。

立ったままやったから、今度は愛佳の方からジュンジュンの頭を
二、三度撫でてやった。
そしたらさっきの自分とは違って、遠慮なく縋り付いてくる。
ジュンジュンのこういうとこ、むっちゃ羨ましいねん。

なんでこう、すぐ……
愛してるーとかゆえんの?
192 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/28(日) 22:01
>>186-191 ぐずぐず
193 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/28(日) 22:04

194 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/11/28(日) 22:04

195 名前:名無し飼育さん 投稿日:2010/11/29(月) 01:01
上手く表現できないけど
全ての作品の雰囲気がすごく好きです
不器用な愛佳が可愛くて仕方ないです
196 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/18(土) 18:54
ノンストップ
197 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/18(土) 18:55
「止まったらああああああああ泣くうううううううう」

光井はでたらめな歌詞をつけながらかれこれ三曲分踊り狂っていた。
様子を見ていた亀井が、空腹に耐え切れず真横でラーメンを啜り
始めてもずっと。

「すげー」
「すげーですな」

他メンバーの振り付けすら完璧に踊りきるので、高橋とジュンジュンは
目が離せなくなっている。

「でもさ、愛佳泣いてるよねー?」

道重はカメラを向けながら言った。

「泣いてへーーーーーーんフゥーーーーーーーー!」

亀井もラーメンを食べつつ光井のことを気にかけていた。

「何の曲だよぉ。つか汗は涙と同じなんだよ。
 ……なんかこのラーメンしょっぱくね?」
「たぶん絵里の鼻水も涙と同じなんだよ」

道重のコメントに高橋が引き笑いする一方で、

「泣くの恥ずかしくないヨ」

ジュンジュンは真面目に答えた。
198 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/18(土) 18:58
「でーもー心に決めたこの思いー!
 泣くのは一日一度だけーなーのー!」
「歌って答えんのかあ!」

また笑う高橋。

「あ、あ、もしかして本音タイム?」

道重はこの隙をついて光井から本音を引き出そうかと質問を考えたが、
後で恨まれたら厄介なのでやめた。
ラーメンの汁に浸りそうになっている亀井の髪の毛も気がかりだし。

ところが、ジュンジュンも道重と同じことを考えたらしく、
光井に向かってこんなことを言った。

「光井サン! ジュンジュンとリンリンどっちが好きー?」
「っはあ〜〜〜〜〜? お・ま・え・は・ア・ホ・か!」

この質問は光井を動揺させて、完璧だった振りが滅茶苦茶になった。
その上、本人的には「こいつ何言ってんねん」という意味で指差した
つもりだったが、言葉の調子に合わせて七回も腕を振り下ろしたのが
仇になったのか、「ジュンジュンを選んだ」という意味に取られてしまった。
199 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/18(土) 18:59
「ヤッパわたしヨネー!」

ご満悦の同期。

「すごい必死に愛されてるじゃん。まあみんな知ってたけど」

さも当然のように言う道重。

「リンリンは!?」

プラスよりマイナスが気になる高橋。

「リンリンはリーダーにだけ愛されてりゃ幸せっしょ」

フォローする亀井。



光井の発狂と高橋の照れで、二つの絶叫が室内に響いた。
200 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/18(土) 19:00
>>196-199 ノンストップ
201 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/18(土) 19:02
>>195
すっと、このままです。
202 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/18(土) 19:15

203 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/18(土) 19:15

204 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:28
まるごとバナナ
205 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:31
「先輩の光井サン見るの楽しみダナー」
「……そうかあ?」
「帰るの先かもだったジャン」
「ああ、タイミングはな、けど」

そんなん言うてくれるのあんただけやで、愛佳は隣を見ずに続けた。
せっかく届けてくれた餃子だったが、食欲が無くて、一人だけ離れた
場所でみんなが食事している賑やかな様子を眺めていた。
それに純が気付いて傍に来てくれて、何となくそのまま話をする流れになった。

次のコンサートのリハーサルと、初めての後輩。
重いプレッシャーで今は食べ物を受け付けない、そんな弱音を吐いた時だった。

「だいじょぶ、ゼッタイいい先輩なるよ」
「うーん、とにかく今は、がんばらせていただきます」
「そうだガンバレ光井サン。ジュンジュンずっと見てるだから」
「……あのな、ひとつええかな」

そう言いながら斜め上の純を見上げる愛佳。
自然と顎を引く純。
206 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:33
「もう名前で呼んでもええで」
「ん? どして?」
「卒業したんやし、えっと、あー……」
「うん」
「あ、あんたのことちゃんと年上と思いたいやんかあ?」

言葉と一緒に手を振り出した愛佳を見て、純は意味を理解する。
その上で、出てきたのは否定的な言葉だった。

「別にいいヤン。わたし光井サンずっと尊敬してるだから」
「愛佳はヤなの!」

急に大きな声を出したので周りの何人かが二人の方を見たが、
当の本人達は気付かない。
振り向いた者達もすぐに向き直り、またもとの騒がしさが戻る。

「五個も上なんやで。そのつもりでいたい」
「んー、どういうの? 敬語使う? わたしにも遠慮するの?」
「使わん。遠慮もしない」
「じゃ何も変わらないージャナイ?」

困惑した純を見て、愛佳は痺れを切らしたようにその袖を掴むと

「……甘えにくい」

ひどく低い声でそう言った。
207 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:34
この一言を聞いた純は飛び上がるほど嬉しくなった。実際は飛び上がら
なかったけど、飛びついて抱きかかえてゆすったりして。
言葉にならない鳴き声みたいなのが鼻から抜けていく。
そんな一方的な抱擁を存分に堪能したところで解放したら、

「こっちが甘えたいのに……」

赤い顔で文句を言われた。
208 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:35
日本人ってどんな人?



……こんな人!
209 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:36
純は、今日ここに来て良かった、と心底思った。
卒業して遠くなってしまったと思った距離が、逆に縮まったから。

とはいえ急に呼べと言われてもすぐには対処できなくて、名前を
発するのに少し時間がかかってしまう。

「……あー……
 愛佳チャン。愛佳ッチャーン?」

慣れていないから言葉の調子が変になって、今度はムッとされた。

「呼び捨てでええって」

しかし、これには純にもちゃんと言い分があるのだ。

「年下はみんなこうデショ。教えてくれたの」
「……アタシがゆったのか」
「そだよ。偉いでしょーちゃんと憶えてるモン」

純は愛佳の頭を撫でながら答える。
まるでちぐはぐだが、当人達には違和感が無いらしい。
210 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:38
「で、あんたは何て呼ばれたい?」
「何でもイイ」
「えー」
「好きなのでドウゾ」
「求められないのも寂しいなあ」

聞こえていたのかいないのか、理解しているのかしていないのか。
純は答えなかったし、休憩時間もそろそろ終わりそうだった。

「戻ってくるまでに決めとけ!」
「いつ戻ってくる」
「いつ戻ってきてもええようにさっさと決めとけ!」
「わかった」

気がつけばスタジオの中央には再び人の集まりが出来つつあった。
純はそれに向かって走る愛佳の背を見ながら上機嫌に

「アー愛しい愛佳チャン、お昼ゴハ」

……食べてないし!

餃子どころかきっと何も口にしていないはずだ。純は、慌てて弁当や
果物のあったテーブルへ駆け寄り、バナナを一房まるごと掴み取って
愛佳の元へダッシュした。

トナカイの着ぐるみがバナナを持って突撃してくるその様は、
あとあとメンバーの間で語り継がれることとなる。
211 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:40
>>204-210 まるごとバナナ
212 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:42
これにて当スレの更新は終了です。

昔ここと良く似た雰囲気のスレを見た、と思った方がおられるかもしれません。
それもたぶん私です。
なにより自分の「焼き増ししている」感が拭えませんでしたので。
そこは深く反省。
213 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:44
タイトルはJJって略語から連想し、なおかつどこかに元ネタがありますよー
という意味も込めてつけました。

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若干記憶の歪みが生じているかもしれませんが、おおむねこんな感じでした。
215 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/12/27(月) 23:50
お付き合いいただきありがとうございました。
あー難しかった!
216 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/19(月) 21:07
遅ればせながら楽しませて頂きました
なんというか、愛佳への愛を感じました
217 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:28
石田が部屋から出て行ってしまった。
眠れずに寝返りを何度も打っていた鞘師は、ユニットバスより
明らかに重いドアの閉まる音に驚いて飛び起きた。
隣のベッドを見るがルームメイトは居ない。
やっぱりこの部屋から出て行ったのだ。

他人のすることなんて、わからないことばかり。
けれど、就寝時は特に寂しさが堪える鞘師にとって、例え寝ている間
(眠れていなかったけれど)でも、独りにされてしまうと見捨てられた
気分になる。

ところで、いつもは目を瞑れば即時就寝コースの鞘師が
今日に限って眠れずにいるのは、身体の異変が原因だった。
横になって下腹のあたりがじりじりしはじめたと思ったら、
いつの間にか熱を持つようになり、
それが気になって眠れなくなってしまったのだ。

自分が起きると石田を起こしてしまうと思って、
我慢して眠りに落ちるのを待っていたがそれも叶わず。
鞘師はついにベッドからおりて、立ったままTシャツの裾を少し
捲り上げ、パタパタ煽って腹部に風を通した。

皮膚から熱が引いていく。
少し楽になれた。
218 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:31
時計を見たら、深夜一時をまわっている。
もしかしたら自分の勘違いかと思って、部屋の中を軽く見てまわった。
と言っても、ワンルームにユニットバスがついているだけの普通の
ホテルの一室で、クローゼットも一応開けてみたが当然石田が
そんな所で深夜の一人かくれんぼを楽しんでいるわけもなく。

鞘師はどんどん焦っていった。
だいたい、夜中に部屋を出て行くことはマネージャーから
禁止されている行為なのである。
その禁忌を犯した後輩と自分が同室だと、とばっちりを食う
はめになるのだ。

悩んだ末、部屋のドアを開けて廊下の様子だけ窺うことにした。
通りがかった壁に部屋のカギをかけるホルダーがあることに、
この時やっと気付く。
カギはそのままだった。

これじゃ戻っても入れんじゃろ! 起こす気か!

明らかに頭にも血が昇り始めていた。

そのせいか少し乱暴にドアを開けた。
開いたドアの隙間から顔だけのぞかせて廊下を見ると、
石田が向こうから歩いてくるところで、目が合ってしまった。
219 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:33
「あ」

石田は驚きを隠しきれずに思わず声を漏らす。
鞘師は咄嗟にドアを閉めた。

向こうでパタパタと慌てて駆けてくる足音が聞こえ、そして止まる。
ドアの前で逡巡する石田の姿が容易に想像できた。



コン、コン



ノックされても無視。

カギは室内にあるので、こちらから開けなければ石田は
中に入ることが出来ない。
勝手に出て行ったのだから当然の報いだ。
向こうが謝るまで開ける気はなかった。

「あの、すみません。……開けてくれません……か」
「……」
「本当にごめんなさい。理由を話しますから、ちゃんと。
 だから開けてください」

……夜中のホテルは廊下の声がこんなに大きく聞こえるのか。
鞘師は周りに迷惑だと考えを改め、慎重にゆっくりとドアを開けた。
すると石田は、用心しているのかドアを手で押さえてから中に入ってきた。
正直、腹が立って顔も見たくなかったので、入ってきたのをきっかけに
振り向いて部屋の奥へ戻る。
後ろから小さく、すみません、ありがとうございますと言われた。

多分、石田の性格ならこれからつらつらと言い訳すると思うし、
不眠と熱の苛立ちの捌け口として、こちらも言いたいことを
言ってやろう。
明朝以降に引き摺らないために。
220 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:35
鞘師は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して一口飲み、そして

「で?」

と吐き捨てるように言った。
脱走犯はまた、ごめんなさいと謝る。

「どうしても、眠れなくて……
 歩き回ってなんとかしなきゃとしか思えなかったんです」
「それが理由?」
「そうなんです……」
「あのさ、ウチも眠れなくていっぱい寝返り打ってたんだけど」
「……起きてたんですか」
「そう。でも出て行こうなんて思わなかった。
 だって禁止されてるじゃん。知ってたでしょ?」

見下ろしていた石田の表情が強張った。

「ごめんなさい。正直そのことも忘れてて……」

残念な答えだった。
石田は普段とても真面目で、特に決め事に関しては真面目すぎて
同期を一喝して泣かせているほどなのに。
後輩だが、実際は二つ年上のしっかりしたお姉さんという印象で、
ルールを破るような人間じゃないと思っていたのに。

「あゆみんはそんなことする人じゃないって信じてたんだけどな……」

本心を零すと、石田は突然、大きな目を更に見開いてこちらに迫ってきた。
鞘師は驚いて少し後ずさり、片足が背後の冷蔵庫に当たってしまう。
221 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:36
「なに、急に。驚かせないでよ」
「何度もごめんなさい、あの!
 もっとちゃんと話すから聞いて! ……ください」

強い主張と同時に自分の腕を掴んできて、その行動にただならぬものを感じる。
結局鞘師は自分のベッドの方へ連れられて、そこに腰をおろすことになった。
石田は隣の、座った今となっては向かい側のベッドに腰をおろす。
そして、大きな瞳でじっと見つめられる。
いつもは唇ばかり見てしまう鞘師も、この時ばかりはその双眸に目を奪われた。

「実はですね……
 私は今までもこういうことがたびたびあって、急に暑くなったら
 汗をかかないと眠れなくなるんです。
 だから廊下に出てひたすら歩き回ってたんです。
 同じ部屋の子には断ってから出てました」
「え、みんなそれ黙ってたってこと?」
「はい。
 だけど今日は……ていうか今まではみんな起きてる時間で、
 言えたから良かったんだけど、今日は鞘師さんだから
 黙って出ようと思って」

今日は鞘師さんだから、というのはつまり、声をかけたくても
寝ているから、という意味だろうか。
……そこはまあ、いいとして。

「気を遣ったんだとして、カギも持たずに出るとかさ」
「それは、焦ってて……夜中だったから早く寝なきゃと思って、
 それで慌てていて」
222 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:38
と、深刻そうに告白する石田。
そこまで聞いて、「あつくて」眠れないところまでは自分と一緒だな、
と思った。
それでうっかり

「そういえばウチも、なんか今日お腹だけ熱くて眠れなくてさ」

と口を滑らせたら

「えっ、ほんとですか!」

予想外に食いついてこられた。

「う、うん、ほんとだけど」
「それじゃ……いや、違うかな。同じとは言い切れない……でも……」
「なにブツブツ言ってるの?」
「……鞘師さん、中二ですもんね」
「そうだけど……」

どのへんが熱いですか。

口調がまるで医者のようだった。
想像してみたら、あ、この人白衣似合うーなどと意識が脱線しつつ、
臍の下辺りをおさえてアピールしてみる。
石田はしばらく何か考えて、こう言った。

「じゃあ、そういうの……これから増えるかもしれないですよ」

……意味がわからなかった。
鞘師は、なんなの、と口を尖らせる。

すると石田は、
その尖った唇に手を伸ばして、
指先で触れてきた。

「……これ、びっくりしました?
 それとももしかしたら、
 もっと熱くなりませんか?」

……図星だった。
どうして、ばれたんだろう……
223 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:39
言っていいのか迷っているうちに、唇からおりた指は、
顎をなぞりながら上昇して耳の裏側を撫でていく。

「これは? 嫌な感じします?」

嫌な感じではない。とてつもなく戸惑ってはいるけれど。

奇妙なのだ。
触れられているのは顔なのに、同時に熱を持った下腹の方も
触られている感覚がある。
きちんと指の行く方向に肌が引きつって反応しているような。

たどたどしくはあったが素直にそんなことを話すと、
石田はベッドから腰をあげた。どうするのかと思っていたら、
隣に腰をおろして

「そっか、困りましたね……」

なんて言ってスリッパを履いた爪先をブラブラさせた。

……ひょっとして。
彼女はなにか自分に「わからせようとしている」のでは、
と鞘師は思い始める。
さっき突然学年を聞いてきたのも、きっとそれのせい。

隣と言っても距離はほとんど無かった。

何かの拍子に少し腿が触れ合うと、とうとう腹部の熱が別の生き物の
ようなうねりを起こし、鞘師は熱い息を吐く。
224 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:41
思った。

この熱は引くものじゃなくて、きっと外に出さないといけないものだ。

身体はそれを上下に吐き出そうとしていて、
心臓がこんなにどくどくしているのは、
熱源が胃腸をのぼり、食道を通って、肺の空気を混ぜながら
喉から出るためにがんばっているからじゃないだろうか。

次々起こる初めての感覚と、勝手な憶測。
鞘師はこの答えが欲しくて仕方なくなった。
そして間違いなく、隣の石田はそれを知っている。

「偶然みたいですけど、私と鞘師さんは今、
 同じ原因で眠れなくなっているみたいなので」

けれど、答えが欲しいと思ったはずなのに、
もういいから、もう何となくわかったからと、
鞘師は立て続けにその先の言葉を遮った。
まだ無知なままでいたい気持ちが急に沸き起こってきたからだ。

「……それじゃあ、一緒に廊下歩きます?」
「ええぇううぅ、やっぱわかんないわかんないよ。
 どうしたらいいの廊下とかぜったいだめだって禁止されてんだよ」
225 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:42
混乱して饒舌になる鞘師。
石田は黙ってそれを聞き届けてから、静かに言った。

「ここから出ないなら、……我慢するか、しないかになります」
「それってそれってさ……あの、あゆみんも一緒なの。
 我慢しちゃうのしちゃわないの」
「えっと、それは私も決めかねていて。
 ルームメイトで先輩の鞘師さん決めてください」
「ばっ」
「ってちょっと意地悪しちゃいました。
 へへっ、こういう時はね、甘えた方が得ですよ?」

はい、と上体を捻った石田が両手を広げて待ち構えている。
Tシャツから伸びたその両腕が、真っ赤になっているのを見てしまった。



こんなの我慢させられるか、って。



「見ちゃったじゃん、ああもうだめだあああ」

こうなったら、
もうだめだから、
おしえて。
226 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:44


ベッドから落っこちた鞘師のことを、石田はあえて放っておいた。
落ちたと言うより、自ら転がり落ちて床に蹲ったように見えたからだ。
嫌われて距離を置かれるようなことをしてしまった自覚もあったし。

ただ、鞘師なので、そのまま寝てしまうかもしれない。
そう思ったので、上から声をかける。

「駄目ですよ、そのまま寝たら」

すると突然、下から振り上げられた腕がベッドに叩きつけられた。
石田は殴られるかと思って身を縮こまらせる。

腕はシーツの上で何かを探すように彷徨い、ぴたりと止まった。
そして下から低い声が。

「……服どこ」

これを聞いた石田は急いで散らばった先輩のものをかき集めて、
アメフト選手のように両手で鞘師の方にそれを渡した。
ああ、それで下に逃げたのか、と納得しつつ。

そして、仕事柄着替えの時は時間をかけないようになるべく全員が
まとめてやるように、と教育されているので、習慣で石田も一緒に
服を着ることにした。
227 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:45
鞘師のいる反対側の床から拾った、
皺だらけのTシャツの襟首部分を探しながら……

あれから、だいぶ冷静になってきている。
寝る前に一言言っておきたい。

「鞘師さん、一応、言っておきたいことが」
「……なに」
「私、変態じゃないですからね。ああいうのは皆あることなので、
 誤解しないでくださいね?」

ウチだって変態じゃない、と、下から抑揚の無い声が返ってくる。

……どうだろうか。
前から唇が魅力的で、と聞いていたから、
来ることは予想できていて、
実際石田はさっき何度も奪われそうになって逃げていた。
一方的に性的な知識を植えつけておいてなんだが、
キスだけは好きな相手とやってほしい。

「でも正直、教えちゃった責任は感じています」
「……そうだぞ! 君のせいで」
「ただ私は、よく眠ってほしかったんですよ、鞘師さんに」

言いながら合わせた両手を顔の横に持ってきて、おねんね、
のポーズをした。
身振りを交えてでもしっかり伝えたかった。鞘師は見てくれただろうか。
確認したくても、今日はもう申し訳なくて相手の顔を見られない。
石田は振り返らず隣の自分のベッドに戻った。
228 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:47
「……じゃあ、おやすみなさい。電気、お願いします」

仰向けになるのも躊躇って、壁の方を向いて寝る体制に入る。

「……責任ってさ」
「はい?」
「責任感じてるって、言ったじゃん」
「あ、言いましたね」
「どういう意味」
「……えーと、また似たようなことがあったら、力になれたらと……」

ぼんっ、石田の背中に何かがぶつかる。
今度こそ殴られたかと思ったが、そうではなかった。

「そっち行くから退いて」
「え? え? はい」

石田は困惑しながらも鞘師側だったベッドのスペースを半分あけた。
そこに飛び込むように鞘師が入り込んできて、ぶつけられた枕も
隣に置かれて、どうやら相手はこちらで寝るつもりらしい。
困ったことになった。顔も見られないほどなのに向こうから距離を
縮められてしまった。
石田は壁の方を向いたまますっかり硬直してしまう。

「ど、どうかしました?」
「あっちのベッド、ぐちゃぐちゃで寝られなくなってる」
「……! あの、あ、どうしよう。今すごく土下座がしたい」
「やってもいいけどウチ見ないから。明日直してよ。今日はもう寝る」
「直します。てか、私向こうに移」
「いい、このまま寝る」
「あ、はい……」

そうだった、鞘師は本当は一人寝が苦手なのだ。
背を向けたままでもいいのだろうか。でもこれ以上何か言ったら
火に油を注ぎそうな気がする。
幸い、嫌われてはいないようだった。
そうでなければこちらに来ないはずだ。
229 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:51
無言の時が訪れて。
やってきました石田亜佑美ソロライブ、「It's 反省会」のお時間です。



先輩泣かせてしまった!(マジ泣きだった!) とか、
もっと色々気を遣うべきだった! とか、
そもそも自分後輩なのに、いっちょまえに深夜のお授業かよ! とかとか。



目が醒めて怒っていたら……全力で償わせていただこう。
それで奴隷同然の扱いにされても致し方ない、とまで思い詰めてしまった。

でも、その覚悟を決めたらあっさり眠りに落ちた。
230 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:52
翌朝石田は予定の時間より三十分早く起きて、鞘師が使っていた
ベッドをまるで未使用だったかのように綺麗に整えた。
いざとなったら職業に出来るとさえ思ってしまったほどだ。

そして、だいぶ後に起きだした鞘師に

「綺麗過ぎて逆にキモい」

というお褒めの言葉を頂いた。

その時の冷たい目は昨晩とのギャップがひどくて、そのギャップを
知っているのも自分だけだと思うとゾクゾクしてくる。
鞘師さんの冷たい視線で私のテンションMAX! と言いたくなった。

一方の鞘師はというと、起きるのが遅いのは毎度の事なのだが、
いつもと違って寝起きが良すぎて内心驚いているところだ。
朝イチで石田に華麗な毒を吐けたせいか、余計にスッキリしている。
窓を開けてひゃっほーい! と叫んじゃってもいいくらい気分が良かった。
231 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:53




『こんな自分がいるなんて』



二人ともこの部屋を出るまで、それぞれそういう風に思ったとか、
思わなかったとか。
232 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 22:54
>>217-231

川c ’∀´)<鞘師さん、これのタイトルなんですけどもう「深夜のお授業」で良くないですか?
ノリ;´ー´リ<やめてラジオがラジオが

現状、夢板のフリースレにおいて鞘石の連投が続いているため、
容量の余っていた元・自スレに投下いたしました。

>>216
レス有難うございます。
今もご覧になっているかわかりませんが……
光井さんも卒業してしまいましたが、SATOYAMAで密かに
推していた料理スキルを遺憾なく発揮してくれることを願っています。
233 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/13(水) 23:13
鞘石が気になるなー、となってるときにタイムリーすぎて禿げあがりそうなほど萌えました
234 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/14(木) 01:39
とんがり鞘師が非常にさやしい。
律儀な石田が非常にだーいしい。
まさにご馳走でございました。
235 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/14(木) 12:10
素晴らしい

の部分が見た過ぎる
236 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/14(木) 23:05
今、鞘石熱がキテルんでかなりテンションMAX!です。
ありがとうございました
237 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/16(土) 13:40
とりあえずあゆみちゃんには責任をとって欲しいw

そして、スレットの再稼動を所望します。
238 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:53
>>233
お力になれて光栄です。
私も今んとこ毎日「気になるなー」と思ってます。

>>234
素敵な形容詞に震えました。
私も皆さんのご馳走が食べたいですすごく食べたいです。

>>235
実は一週間くらいかけて書いたんですが、◇の部分だけは
心が全力で拒否してました。ごめん無理。

>>236
鞘石は熱いうちに打て!(間違い)正直飛ばしすぎたと
思っているのですが、喜んでいただけて嬉しいです。

>>237
責任ですか……考えはじめると国会で追及される与党議員の
ような気持ちになってきました。(答え)逃げたい。
239 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:53
SAYAISHI IN CAR
240 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:55
移動の車の中で、寝ながら音楽を聴こうと思った。
石田が鞄からプレイヤーを取り出すと、イヤホンのケーブルが
なんとも形容しがたい形にうねり、絡まっていて、このまま
両耳に突っ込むのは気持ちが悪い。
溜め息を吐いてから、あやとりのように解いていく。

ある程度解き終えて、右耳左耳♪ そんなリズムで先端を
それぞれの耳に嵌めた。
241 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:56
すると、聴いたことの無い音が聴こえてきて驚く。
ゆったりとした、所謂イージーリスニングというやつだった。
こんな曲知らない、石田は困惑して片耳をおさえる。
いったいどういうこと? 本体に表示されている曲名を確かめた。
じっと読み込むがやっぱり知らないタイトルだ。

そんな時、隣から二の腕をつっつかれた。
顔を向けると、鞘師がにんまりしてこっちを見ている。
さらに持っていたプレイヤーを指差していて……
石田は慌ててイヤホンを耳から外した。

「……犯人は鞘師さんですか」
「そうです。わたしだ」

うふふいひひ、いたずらが成功してご満悦、といったところ。

「……あー、苛めじゃないですか? これ。ひどいです!」

石田が大げさに嘆くと、鞘師はプレイヤーを持っていた手に
自分の手を添えてきて、

「ただわたしは、よく眠ってほしかったんですよ、石田さんに」

じっと目を見てそう言うのだった。
242 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:57
思わず目を逸らしてしまう。
それは、つい最近石田が鞘師に対して言った台詞だった。

今ここで言うのか、そのためにこんないたずらを仕掛けたのか、
石田の頭の中で疑問符が踊り狂う。

「えへへへ、あ、これ、できれば消さないで欲しいな、
 せっかく入れたんだもん。
 あーでも容量足りなくなった時は仕方ないし、いいや。
 好きにして」
「……大切にさせていただきます」

前の席の背もたれを見ながら、やっとのことで搾り出した言葉がそれで。
顔を見ていないが鞘師の嬉しそうな笑い声が聞こえて。

悪い気はしなかった。
243 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:59
鞘師の手が離れたので、まだ少し硬直していたが、
再びプレイヤーを操作することにした。

今のこの乱された気分に対して、選曲を運に任せたら、
どんな曲が自分に与えられるのだろう?
試してみたくなったので、石田は設定をランダムに変えた。
244 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/22(金) 23:59
>>241に戻る
245 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/23(土) 00:00
気が済んだ所でエンドマークを打ってください。



川c ’∀´)<いったい何曲入れたんですか……
ノリ*´ー´リ<十曲くらい?
川c ’∀´)<わお
246 名前:名無飼育さん 投稿日:2012/06/23(土) 00:02
お付き合いいただきありがとうございました。

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