就職活動が早くも暗礁に乗り上げてる件
1 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/03/11(木) 14:58
3週間くらいスーツ着てないやる気出ない死にたい
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/03/11(木) 18:25
削除依頼が出てるので消えるまでちょっと書きます
3 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/11(木) 18:31
就職活動をはじめてもうかなり経っているというのに
れいなはこれと言った結果を出せずにいた。
どこの会社に行っても門前払い同然の扱いを受けるのだった。

「はじめまして田中れいなです」
「あ、はい。田中さんはなんで金髪なの?」
「似合っとるって絵里がいっちょるけん」
「その絵里って子は?」
「れいなの親友っちゃ」
「胸は?」
「れいなの?それとも」
「もちろん絵里ちゃんの」
「なかなかのもんやけん。れいなうらやましか」
「絵里ちゃん良さそうだね。写メある?」
「れいなを斜目とか言いよったけんね!」
「ぐぎゃあああああああああ」
そして面接時間が終わるのだった。
4 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/11(木) 18:39
「また駄目やったけん」
れいなはもう成人しているので煙草をくわえた。
それをいぶかしげに通行人が見る。
れいなは精神年齢も子供だったが見た目も子供だった。
絵里はそれは楽しそうな表情で見ていた。

れいなの吐き出す煙が夕焼けの空に吸い込まれていく。
絵里はれいなを励ますでも元気付けるでもなく
横に立って見ているだけだった。

れいなと絵里が出会ったのは高校の頃だった。
札付きのワルだったれいなとお嬢様の絵里が出会ったわけは
あの事件が起きたからだ。そうあれは高2の夏。
絵里はふとそんな事を思い出してまた微笑んだ。
「もうやる気が出ん」
れいなは煙草を叩きつけるように地面に投げた。
音もなく地面を転がり赤い火を散らしたその姿が
まるで自分のようで死にたくなった。
きっと車道に飛び出せば赤い血を飛ばして
どこまでも転がっていけるだろう。
5 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/11(木) 18:45
実際れいなは生きていても仕方なかった。
両親なんてずっと前から居ない。死んだのか逃げたのか
それすられいなには知らされてはいなかった。
友達はほとんどいないしこの世に執着なんてなかった。
ただ絵里が、絵里が悲しむと思うと死ねなかった。

「バイトじゃ駄目なの?」
絵里が言ってるのは就職なんてしなくても今やっている
ガソリンスタンドのバイトを続ければいいじゃないかという話だ。
ガソリンスタンドなら今まで通りの金髪でも怒られる事は無い。
だがれいなはガソリンスタンドで働くのはもう懲り懲りだった。
もう20歳だしいつまでも油を売っているわけにはいかない。

「もし…もしれいなが良いなら面接を受けて欲しいんだけど」
絵里の顔を見た。妙に生真面目な顔だった。
6 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/11(木) 18:55
絵里について行った先は喫茶店だった。
喫茶店については大体知っている。メイドがいるのだ。
中に入ると絵里は来ちゃったと言った。
店員はあら、いらっしゃい。とクールに返した。

辺りをみわたすとメイド喫茶では無いようだった。
照明のたぐいはピンクを基調としていていたが
テーブルや椅子は本格的な喫茶店のものだったし
メイドらしき格好をした女中はいなかった。
「この子は?」
「あ、この子は友達のれいな。れいな、この子が私の親友のさゆ」
「はじめまして」
え?れいなは耳を疑った。友達のれいなはよしとしよう。
だが親友のさゆという言葉の意味がわからなかった。
友達と親友には何か違いがあるのだろうか。
7 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/11(木) 21:01
そわそわしながらテーブル席に座り待っていると
さゆと呼ばれた少女、いや自分と同じくらいの年だろうか?
はコーヒーをコトリと音を鳴らしてれいなの前に置いた。
「れいなちゃんはおいくつですか?」
れいなは20と素っ気なく答えた。さゆは笑みを浮かべて
角砂糖をコーヒーに落としてゆく。
砂糖をひとつ落とすとコーヒーの黒い水面は上にあがり
白いカップの縁が少なくなっていく。
20個角砂糖を入れたところでOKゲームをしようじゃないかと言った。

ゲームは簡単なものだった。
コーヒーの中に交互にコインを入れるのだ。
一度に何枚入れてもいい。ただしコーヒーをこぼすと負けだ。
表面張力によって案外コーヒーはなかなかこぼれない。
さらに言うと液面に触れ熱いと言っても負けになるので覚えておいて欲しい。

先手はれいなだった。
いきなり10枚のコインを掴むと絵里は驚いた。
「れいなはじめてでしょ?大丈夫?」
れいなは大丈夫だと言ってコーヒーカップに手をよせていく。
絵里とさゆはにこやかに笑っていた。
8 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/11(木) 21:13
「れいな!大丈夫!」
「うわっ」
絵里の思わぬ大声に思わずコインを落としそうになる。
うっかりコインを落としてコーヒーを跳ねさせてももちろん負けだ。
「絵里・・・うるさか」
「ごめーん。れいなが心配で」
絵里の屈託のない笑顔。れいなはその笑顔にいつも癒されていた。
あの高3の春の悲劇も絵里がいなければ乗り越えられなかっただろう。

「さて入れるっちゃ」
硬くて大きなあれを入れるのはいきなり入れてはいけない。
コーヒーの面にコインをゆっくりと沈めコインとコーヒーが一体化
した瞬間に音も無くコインをカップの底に沈めなければならない。
それはまるで挿入の時に似ていた。

れいなの初めての経験は中学の頃だった。
君が大切なんだ。君しかいない。甘い言葉を繰り返す
その男にいつしかれいなは気を許していた。
入れるよ…。男の囁きにれいなは抗えなかった。
だが何度も入れると言いながら男は最後まで入れずに笑っていた。
おかげで他の部にも入れず3年間帰宅部で終わった。
そのせいで部活は出来なかったし友達も出来なかった。
卒業の段階でもしかして騙されたのかと気付いた時には遅かった。
あ、これはれいなの騙されてはぶられた経験の話。
9 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/12(金) 03:59
黙々とれいなとさゆがゲームをしている間、ずっと絵里は
見守っていたが途中で飽きたのか席を立った。
そして忙しそうに店の中を動き回る少女に声をかけた。
「あ、どう桃ちゃん慣れた?」
「あ、はい。でも3時くらいは忙しくて大変なんですよお」
最近この店のシフォンケーキが美味しいと雑誌に載ったせいか
女のお客さんが増えた。
最初はドタバタして落ち着きのなかった桃子だったが次第に慣れて
男性のお客さんからお小遣いを貰えるまでになっていた。

桃子の白く透き通るような腕の先には5本の指がついていて
テーブルに差し出すコーヒーカップはそれよりも白かった。
桃子の尻にも触れておきたい。身体のわりに大きく発達した尻は
前かがみになるとより強調された。
時々男性客にお尻を触られるとぼやいていたがそれはそれで
仕方ないのではないかと絵里は思っていた。
10 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/12(金) 04:12
桃子の尻をしばらく眺めてから絵里はれいなとさゆが
ゲームをしているテーブルに戻った。
「あれ?どうしたの?」
「卑怯ったい!この女!卑怯たい!」
どうやられいなは手持ちのコインを使いきったようだ。
言い忘れていたがコインは自分で用意してください。

「れいな…お金は計画的に使わないと」
「うるさか!大体この女はいくらでもお釣りのお金を使っとぅ」
「えー駄目なの?絵里?」
「いいよ。だってさゆのお金だし。あ、両替してあげなよ」
「お金なんてもう無いっちゃ!さゆはずるいけんね!」
れいなは泣きそうだった。ようやく気付いたのだ。
ここがアウエーである事に。自分が貧乏な事に。
「じゃあれいなの負けだよ。いい?」
れいなは返事をしなかった。
11 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/12(金) 04:13


今日はここまで。思い出したら続きを書きます
あ、乗っ取れたようです。


104 名前:顎オールスターズ★管理DD [] 投稿日:2010/03/11(木) 20:44
>103
とりあえず乗っ取られてるようなのでそのまま放置で
12 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/12(金) 18:51
ゲームで負けるとどうなるのか?
なんと勝った人の言う事を聞かなければなりません。
そんな話をしていなかったじゃないかと言われそうですが
ちゃんとこの喫茶店「しすたぁ」の入り口の黒板には書いてあります。

という訳でれいなはさゆの言う事を聞かなければならない。
さゆは緑色の粗末な布をれいなに手渡した。
「なんこれ?れいなこんな色すかん」
広げて見るとナルトの模様があるだけのシンプルな布だった。
「これは唐草模様。泥棒と言えばこの模様なの」
え?泥棒?れいなは思わず大きな声を出してしまった。

お店の中の他のお客さんがれいなの方を見る。
「れいな…はやく鳥のマネをして」
「え、絵里意味わからん」
「いいから早く」
仕方ないのでホロッホーと何度か鳴いてみると
なんだ鳥かとれいなへの視線は桃子の尻へと戻った。
「ふう。危ないところだったの」
13 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/12(金) 19:01
しばらくしてお客さんが切れた時間を見計らって
店の立て札をクローズの方に変えてドアの鍵を締めた。
「じゃあ、説明するから聞いてね」
絵里はいつもは今日のセットメニューを書いている黒板に
白墨を使って何かを書き始めた。

「はい。読んでね」

絵里の好きな物が見つかる→れいなが盗りにいく→成功
→れいなにお給料を渡す→暇な時はここでバイトね→おしまい

読んでも意味がわからなかった。まず絵里の好きなものって?
「もしかしてれいなの事?」
「いやそれはないから」
絵里はとてもそっけなく言った。
「あ、じゃあこの盗りにいくってもしかして…」
「こっそり貰ってきてくれたらいいから」
「泥棒?」
「うん。犯罪者」
14 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/12(金) 19:12
れいなの頭の中で走馬灯は回っていた。
昔から悪い事ばかりしていた。
盗んだバイクで夜の校舎の窓を割ってまわった。
安いダンスホールでシェリーを飲んで心のハーモニーを奏でた。
悪い事は大体した。カンニングとか。
だがもう20歳だし逮捕されれば実名が出てしまう。
恐らく同姓同名の女優さんにも迷惑をかけてしまうだろう。

「無理…っちゃ」
そう言おうとした時絵里の顔がれいなとは別の意味で
とても残念な表情になった。悲しげな瞳がまるで宝石のようだ。
「れいなちゃん。いやされいなちょっといい?」
さゆがコーヒーをコトリとれいなの前に置いた。
「ちょっと落ちついて聞いて欲しいの」
れいなはコーヒーにそっと鼻を近づけた。
貧弱な味。これは一番安いものに違いない。
「あ、あの…れいなもキャラメルマキアートがよか…」
「ちょっと落ちついて聞いて欲しいの」
15 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/12(金) 19:23
仕方ないので飲もうとするとさすがは喫茶店、熱々のコーヒーだ。
れいなは猫舌なので舐めるように飲んでみた。熱かった。
それにしてもこのさゆという女は何者なのだろうか。
絵里とは長い付き合いだがれいなはこの女の事は何も知らなかった。
ましてこの後にガキさんや岡井ちゃんやなっちが出てくることも
今は知る由もなかった。

半分くらい飲んだところでれいなは眠くなってきた。
店の中で流れているクラシックがまるで学校に居るみたいで
反射的に眠くなってきたのか?いや違う。
なんとれいなのカップの中には睡眠薬が仕込まれていたのだ。
左右で違う目を同じように閉じようとしていると
絵里が覆いかぶさってきた。そしてうへへと笑った。
れいなはこんな人前でいやらしい事をするのは初めてだったので
非常に興奮した。絵里が馬乗りになってれいなの手を押さえつける。
さゆがゆっくりれいなの短いスカートに手を入れて下着をおろす。
その様子を桃子がビディオカメラで撮影する。
その手慣れた様子かられいなはしまった。ハメられた。
そしていやらしい意味でハメられてしまうんだろうなと思った。
16 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/12(金) 19:24




お腹がすいたんで今日はここまでです


17 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/03/12(金) 22:52
おもしろいだろ絶対このスレ
いろいろ欲望満たしたら続きかいてください
18 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/13(土) 21:59
目を覚ますと見知らぬ天井が目に入ってきた。
「ここは?」
「あ、れいな起きた?コーヒーあるよ」
絵里のやさしい声が聞こえる。
どうやら床にずっと寝かされていたようだ。背中が痛い。
よいしょと言いながら立ちあがると絵里とさゆが楽しそうに
お茶を飲んでいた。
「れいなのは?」
「あるよ。さあ召し上がれ」

掛け布団も無しに寝ていたせいか身体が妙に冷えている。
ふらふらと浮浪者のように歩くうちに下半身が寒い事に気付いた。
スカートの上から陰部を押さえると下着の感触がなかった。

「どうしたのれいな。早く飲まないともっと冷めるよ」
れいなは寝ぼけ眼でカップを掴んで飲んだ。とても冷たかった。
「れいなが寝たくらいに入れたんだけどぬるかった?」
「コーヒーは眠気覚ましに効果があるけどれいなが
寝る前に入れてあげるべきだったね」
さゆは失敗しちゃったなあという感じで頭をこつーんと叩いた。

コーヒーの芯まで冷えるようなその冷たさが自分の寝ていた時間の
長さを感じさせずにはいられなかった。窓の外はもう真っ暗だ。
「めっちゃ冷たいけどこれはれいなの事をアイスてるのサイン?」
「全然違うよ」
絵里のカップから上がる湯気が幸福な家庭を思わせた。
19 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/13(土) 22:12
絵里とさゆみの手元には計画書と書かれた白い紙があった。
何を計画しているんだ?もしかしてさっきの泥棒の話か?
れいなの怪しい視線に気づいたさゆは黙ってそれをれいなに渡した。

「…今夜2時SDを盗みにいきます…絵里SDって何?」
「れいなの好きなMDみたいなものだよ」
「べ、別に好きでMD使ってるわけやなかと」
「れいなの初仕事だよ。おめでとういえい」
絵里が拍手するとさゆも拍手した。
泥棒は犯罪だ。それはわかっている。
だからと言って断れない。絵里の頼みは断れない。
絵里がその財力をもってしても手に入れられないものを
どうにかして手に入れて絵里に渡す。
喜ぶ絵里。抱き締められるれいな。甘いくちづけ。
それは今まで死んでるみたいに生きてきた自分には
とてもやりがいのある仕事のように思えた。
20 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/13(土) 22:26
緊張感で汗ばむ。身体がふるえる。これが武者奮いか。
れいなは気を落ちつかせるために立ちあがった。
「ちょっとトイレ」
「あ、そこのドアを開けたら便器があるから。あ、こぼさないようにね」
れいなはわかっとう!と声を荒げてトイレに向かった。

「ねえねえ絵里。名前何にする?」
「うーん怪盗れいにゃで良くない?」
「でもそれを盗むのはまずくない?」
「あー、じゃあ窃盗団れいなで」
「駄目駄目。単独犯にしないと足がついた時に」
「そっかー。絵里たちまで巻き込まれたら面倒だもんね。さゆは?」
「盗人れーなは?盗人ジョージみたいな感じで」
「なにそれ?」
「キン肉マン。知らない?」
「うん。知らない」
21 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/14(日) 02:40
トイレから出てきたれいなはさっきまでのれいなではなかった。
体重が200gくらい減っていたしそれ以上に気持ちが変わっていた。
「あれ?どうしたのれいな?何かあったの?」
「毛が…れいなの毛が」
下着ははいていないのは薄々感じていたしそれなりに快適だったが
陰毛が一切無いのには弱った。
「え、今ごろ気付いたの?」
絵里は呆れていた。
「しばらくしたら生えてくるから安心すればいいの」
安心しろと言われても困る。
生まれたてのようになった下半身はれいなを確実に不安にさせた。
もしこんなところを写真に撮られたら児童ポルノ扱いされて
撮影者が逮捕されてしまうかも知れない。
合法ロリだと警察に説明するのは面倒臭いし。
「あ、これ地図だから見てね」
22 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/14(日) 02:52
地図を見るのは苦手だったが幸いこの喫茶店の近所のようだ。
近所というか歩いて5分くらいのコンビニだった。
「ここで焼きそばパンを買ってきたらよかばい?」
「買ってきちゃ駄目だよ。それに盗るのはSD」
「エスデーってれいなわからんけん」
「知らないの?SDカード。それの容量の大きいやつ。
えーとSDHCってのを盗ってきて。32Gくらいのやつ」
「…それって怪盗やなくて万引きっちゃ」
「うん。ちょうど今欲しいからお願い」

強引に押し出されてれいなは店の外に追い出された。
「捕まっても絵里やさゆの名前出しちゃ駄目だよ。じゃあね」
ドアは閉ざされて北風がれいなの下半身を容赦なく冷やした。
やるしかない。今日から私は怪盗れいにゃなのだ。
スカートを押さえてれいなは今駆けだした。
23 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/14(日) 02:52




眠いんで寝ます

24 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/25(木) 00:15
愛理が寝ていると携帯に電話がかかってきた。
いつもこの時間はマナーモードにしているのだが
同級生の菅谷と長電話してそのまま寝たので
マナーにするのを忘れていたのだ。
「…はい」
「あ、愛理?。私、石川」
やっぱり石川警視か。仕事熱心なのはいいけど
受験生なので活動を休止しているというのに困ったものだ。
「なんですか?」
「事件、怪盗があらわれたの」
「え?まさかピーチッチですか?」
「ううん。怪盗れいにゃって名乗…あれ?」
愛理は電話を切った。れいにゃになんて興味はない。
25 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/25(木) 00:22
やれやれ。
愛理は携帯の電源を丁寧に切ってまた布団にもぐりこんだ。
しばらく目を閉じるとドンドンドンドンとドアを叩く音がした。
そしておい出て来いてめえ携帯切るんじゃねえよ。と下品な声がした。
おかしいうちには借金なんて無いはずなのに。
仕方ないので外に出ると石川が居た。

「おはようございます」
「おはよう」
石川の手には一枚のファックスがあった。
「これは…A4サイズですね」
「さっさと読みなさいよ」



警視庁の屑どもへ

今日の深夜2時に杉並区のコンビニで犯行を行うので
逮捕しないで!絶対に逮捕しちゃ駄目ですよ

怪盗れいにゃ



「なんですかこれ?」
「犯行声明に決まってるでしょ」
26 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/25(木) 00:29
愛理はしばらく考えた。この事件に関してではない。
どう石川を言いくるめるかを。
「あの…」
「なに?」
「わたしピーチッチ専門なんですけど」
「知ってるけどいまピーチッチは仕事してないし暇でしょ」
受験生で暇じゃないし。寝てたし。河童姿だし。

寝ぼけまなこでぼんやりとファックスを見ていたが
なにか妙な感じがする。この文字は…
「この文字ってピーチッチの筆跡と…」
「え?あ。そうそうよく気付いたねさすがアイリーン!」
石川はパチパチと拍手をしてくれた。

どうでもいい犯罪と思っていたがそうではないかも知れない。
もしかして裏でピーチッチが動いているのか。
愛理の名探偵魂がいま燃えあがろうとしていた。
27 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/26(金) 22:55
れいなは夜の住宅地をふらふらと歩いていた。
さすがは深夜。れいな以外誰も歩いていない。
これだけ人が居ないのだからコンビニも商売にならないだろう。
人件費や電気代がもったいないので今日は諦めて
店を閉めたに違いないと思ったが
目の前に迫ったコンビニはいつものように明るかった。
時計を見た。深夜1時半。微熱まじりの憂鬱。
どうやら計画通りに任務完了しなければいけないようだ。

入口は幸か不幸か自動ドアではなかった。
自動ドアはあまり早く開かないしたまにマットの上に載っても
平気で無視をされるので用心が必要だ。
もし万引き、いや間違った。怪盗している最中に店員にバレてしまい
慌てて逃走する際にドアで立ち往生しないように確認しなくては。
「引く」と書いてあったので試しに押してみたが問題なくドアは開いた。
28 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/28(日) 08:38
中には店員がひとり。間の抜けた大学生風の男。
客が来たというのに挨拶すらしない。無視されたのか?
いや満足に接客も出来ない駄目人間なだけに決まってる。
これなら簡単に奪えるかも知れない。
客はこれまたひとりだけ。高校生くらいの女の子。
呑気に何かの雑誌を見ている。

今回の標的は黄金のSDHCカード。32Gくらいの。
いや本当は黄金ではないかも知れないがそれっぽくしないと
気分が乗ってこない。
とりあえず商品があるかどうか確認しなければ。
れいなは歩きながら日用品の棚をあまり見ないようにして
でも見落とすと二度手間なので真剣に見た。無かった。
もし本当に無ければ単に店に置いていない可能性もあるが
店側がれいなの行動に気付いている恐れもある。
29 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/03/29(月) 21:49
どういう事かというと仲間にスパイが居るかも知れないという事だ。
いや仲間なんて自分には最初から居なかったのだ。
もしこのミッションを成功させるとどうなるか。
「SDカードゲットっちゃ」
「きゃあ。さすがはれいな凄いわ。ちゅっちゅ」
「絵里。下の口は駄目やけん。ああん」

こうなって困るのは誰か。あのさゆという女である。
恐らくあの女も絵里を狙っている。そうに決まっている。
成功させるわけにはいかないから先回りしてこのコンビニに
連絡しておいたのかも知れない。

れいなは店員に23番と言った。
そして店員が差し出すバージニアスリムと引き換えに340円手渡した。
まだ時間はある。落ちつこう。
30 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/03/31(水) 16:46
わくてか
31 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/04/06(火) 18:09
外で煙草を2本吸うとれいなは店内に戻ってきた。
そしてわき目も振らずに店の奥へと突き進んだ。
目指すはトイレ。長い間外に居て身体が冷えてしまったのだ。
店内はさっきと同じ女の子が本を読んでいる。

れいなはトイレのドアノブを掴むのは少しためらった。
指紋を残すのは怖い気がしたのだ。
しかし今はそんな事を考えている余裕はない。
まずはおしっこだ。指紋とおしっこを漏らすのでは
おしっこのほうが特定される危険が高い気がする。
指紋は後で消せばいい。ドアノブをひねる。硬い。動かない。
こんな時にも非力な女の子を演じてしまうなんて
生まれつきのれいなって小悪魔っちゃねえへへ。
なんて事ではなく。どうやら中に誰かがいるのだ。

れいなはドアを叩いた。真夜中の午前1時。苛立ちがドアを叩く。
そして蹴った。
「はよう出てきんしゃい!」
もはやいつものれいなではなかった。
どこの方言を使ってるのか自分でもよくわからなくなっていた。
32 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/04/06(火) 18:25
何度もドアを叩いていると中からノックが返ってきた。
「無駄な抵抗はやめてさっさと出てきなさい」
れいなは犯人を諭すように優しい口調でいった。
しかしその後、返事どころかノックすら返ってこなくなった。
「君は完全に包囲されている。おとなしく出てきなさい」
「あの…お客様。どうなさいました」
出来れば関わりたくないと思っていた店員が慌てて近寄ってくる。
れいなは説明した。はやくおしっこをさせろと。
店員は内部から鍵がかかっている状態ですので鍵を持ってまいりますので
しばらくお待ちくださいと丁寧な口調で言ってその場を離れた。

駄目だ漏れる。れいなは選択を迫られていた。
ここでおしっこを漏らすのか。それとも手洗い場でおしっこするのか。
幸いな事に大きめの洗面台なので洋式便器に座るようにして
放尿する事が出来そうだ。
気になるのは目の前にある大きな鏡で上手くおしっこしないと
れいなの恥ずかしい場所が見えてしまいそうだった。

そもそも座れると言っても10pに満たない狭いスペースだ。
もし体勢を崩せばV字開脚のような体勢になり
自身がおしっこまみれになってしまうかも知れない。
33 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/04/06(火) 18:33
では和式にようにまたがってするのはどうか。
洗面台によいしょとあがれば後は簡単だ。
これも有力だが普通の和式よりも水溜の場所が広いので
脚を開き目でおしっこしなければならない。
そして後ろからはれいなのれいにゃが丸見えになるだろう。
それでは反対向きになって鏡に背を向ければ見えずに済むだろうか。
いやその場合は鏡にれいにゃが映ってしまうかも知れない。
そうこうしている内に店員が来てしまう。
外に出て駐車場の隅でおしっこしてしまおうか。
この時間帯なら通行人はいないはずだ。
しかし店内の暖かい状況でこれなら外に出れば一気に大爆発で
漏らしてしまう恐れがある。
「すいません。お待たせしました」
店員だ。店員が戻ってきた。
34 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/04/06(火) 18:41
店員は恭しい手つきで鍵を取りだした。
「入れるよ…」そして焦らすように硬くてさほど大きくないあれを
中に入れると中をかき混ぜるようにした。
「ああん」れいなから思わず声が漏れおしっこが少し漏れた。

ガチャリと重い金属音が静かに響き鍵穴の周辺にある
赤い入っていますのサインは青く変わっていた。
れいなは店員を押しのけてドアを開いた。
天国だ。とれいなは思ったがそうではなかった。
そこは地獄だった。地獄絵図だった。

中には大きく黒い物体が横たわっていた。
そして酷い異臭がした。
「これは…うげっ」
その様子を見た店員は嘔吐し、れいなはおしっこを漏らした。
35 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/04/06(火) 18:52
さっきまで本を呑気に読んでいた愛理だったが
騒ぎを聞いてコンビニの外に逃げた。
名探偵は警察ではないし救急隊でもない。
外に出ると息を切らした石川警視がいた。

「ごめん。愛理待たせちゃって」
「あ、うん。別にいいけど時間が」
時計を見ると犯行の予告時間がとっくに過ぎていた。
「しまった!怪盗れいにゃにやられた!」
「あ、でもまだ盗まれたって決まったわけじゃ」
そう。石川警視がここだと推理してこのコンビニに入ったが
ここである可能性はゼロではなかったがかなり低い確率だ。
なぜなら犯行予告された杉並区のコンビニは他にも無数にあるからだ。
「せめてファミマとかまで教えてくれたらねえ」
「そう考えるとピーチッチは親切ですね」
そう。ピーチッチはSDカードなんてチャチな物は盗まないし
時間と場所と狙っているお宝を明示して犯行を行う。
そう考えると今回の事件にはピーチッチは関わっていないのではないか?
ではなぜ今回の犯行予告の字がピーチッチの字だったのだろう。
36 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2010/04/06(火) 18:59
愛理は考えたが謎が多すぎてまだわかりそうにない。
とりあえず盗んだならまた警察に連絡するに違いない。
今回は負けたかも知れないがまあ仕方ないだろう。
「あ。」
「どうしたの愛理」
「すっかり忘れてたけど今このコンビニで…」
「え?また事件?」

石川の車に積んでいた対テロ用の簡易のガスマスクで
口と鼻を覆い中に入る。
店員が倒れていた。そういえばもうひとりヤンキーの
姉ちゃんが居たなと思い見ると鼻に煙草のフィルターを突っ込んで
なんとか生きているようだった。
37 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2011/04/23(土) 22:56
書き間違えました
38 名前:聖の青春 投稿日:2011/04/23(土) 22:56
聖の青春
39 名前:聖の青春 投稿日:2011/04/23(土) 22:57
桜が散るか散らぬかという時に新しい季節が始まる。
少女はぼんやりと桜を見上げて思った。
私もこの桜のやうに花咲く時が来てやがて散ってしまうのか。
何のためにこの桜は咲いているのか。それはこの樹も知らぬだろう。
少女は暮れかけている太陽の気配に気づき時計に目をやった。
16時半。もうそろそろ門限だ。この年にもなって17時が門限など
学友に知られては笑われるかも知れない。だが馬鹿にはしないだろう。
なぜなら彼女は譜久村家の箱入り娘なのだから。

「これ、聖」
静かな食卓を母の叱責の声が波立たせる。
譜久村家の末っ子の聖は静かに答える。
「はい、なんでしょうかお母様」
いつからだろう母とふたりきりでの食事が当然になったのは。
譜久村財閥の長である父親は寝食を忘れ仕事に没頭していた。
ゆえに家に帰る事すらまれであった。
同様に聖の上に長男と二男がいるがこれも支配者階級にふさわしい
人間になるために勉学にあけくれていた。
聖は食事の手を止め、母の言葉を待った。
母は口に出すのも汚らわしいというような表情で言った。
「あのような行為はおやめなさい」
聖は今日一日を思い返してみたが思い当たるような事はなかった。
少なくとも譜久村家の恥になるような行為はしたつもりはない。
「あんな低俗な歌謡曲を聞くのはおやめなさい」
あ。聖はほんのり顔を赤くした。
40 名前:聖の青春 投稿日:2011/04/23(土) 22:57
「お耳に入りましたか」
「ええ、あなたの調子の外れた歌声も全て」
聖は顔を伏せた。もう食事はのどを通らない。
「あなたはもう来期は高等学校に入る年頃です。
それなのになんですかあの気が触れたような掛け声は」
それは聖も同意せざるを得なかった。イエイだのウォウウォウだの
とても分別のある大人が作ったとは思えない歌詞。
だがそれが聖は不思議と魅力的だったのだ。
だが聖は何も言わず貝のように黙った。

聖が愛してやまない音楽。それはモーニング娘だった。
クラシック以外は雑音かのように譜久村家では扱われていて
聖はシューベルトを子守唄にして育った。
なのにどこで間違えたのかモーニング娘。
低俗の極みの音楽をやっと生まれた実の娘が聞いているなど
母親には信じられなかった。しかもその上歌い踊っているのだ。
「聖、レコードはどのように手に入れたのです?」
「あの…同級生の鈴木さんからお借りしました」
「明日お返しなさい」
「お、お母様まだダンスのほうの習得が…」
ぎょろりと母親の厳しい視線が聖を貫いた。
聖はわかりましたと小さな声で答えるしかなかった。
41 名前:聖の青春 投稿日:2011/04/23(土) 22:57
翌日、母の言うとおりに鈴木にモーニング娘のアルバムを返した。
鈴木は少し驚いた表情を見せた。
普段、同級生と会話をしていても春の風のように微笑むばかりで
特別口を挟まない聖があの時は違っていた。
鈴木が古本屋でモーニング娘のCDを105円で買ったと言った時の
聖の顔を鈴木はきっと忘れないだろう。

「え、本当にそのようなお値段なのですか?」
かつて聖を魅了したモーニング娘の代表曲である「ラブマシーン」
「恋のダンスサイト」が収録されているのに105円とはありえない。
そもそも聖や譜久村家は中古で購入という行為は骨董品以外には
行った事などなかったのである。
「うん。三枚目はなんかどこでも安いよ」
アルバムであるからには代表曲2曲以外にも10曲近くは
収録されているに違いない。それが105円。
「よろしければ他の曲目を教えていただけませんか?」
「えーとレバニラとか愛車ローンでとか」
「れ、レバニラですか?」
聖は食した事はなかったがレバニラは知っていた。
レバーとニラを中華風に炒めたものだったはずだ。
それが歌になるなんて…。聖の胸は高鳴った。
そして愛車ローンで。月賦払いしなければいけない事情を
想像すると小説好きの聖は早くその答えを知りたかった。
「よほどの家庭の事情がおありなのですね」
「ふんだ!105円のCDを買って悪かったね!」
「ああ、そうではないのです」
それから鈴木の誤解が解けるまでしばらくかかった。
42 名前:聖の青春 投稿日:2011/04/23(土) 22:58
鈴木からCDを借りた聖は母親が留守の隙を狙い
英語習得用の速度を変更できる再生装置を使いCDを聞いた。
聖はその全てを受け入れた。まるで卵から生まれたヒヨコのように。
レバニラの素晴らしさを理解しようと努めた。
学校から帰り母親が買い物から帰ってくるまでの時間を
聖はモーニング娘のCDと過ごしたのだ。
音楽を流し記憶の限りモーニング娘の踊りを踊り足りぬ部分は作った。
聖は心から自分が好きなものを見つけたのかも知れない。
歌い踊る時間は聖の魂を解放したのだ。だがそれももう終わった。
鈴木にCDを返さねばならなくなったのだ。

聖の手からモーニング娘のCDを受け取った鈴木は
「え、いらないんだけど」と言った。
「あの…それはどういう意味でしょうか?」
聖は驚かずにはいられなかった。
聖はお小遣いで月に数冊の本を買うのが習慣となっていたが
その本を売ったりあげたり、ましてや捨てる事はありえなかった。
それなのに鈴木はその所有権を放棄しようとしているのだ。
「だって糞じゃんそのアルバム」
聖は顔を赤く染め目を伏せた。
目の前で自分と変わらない年頃の娘が汚い言葉を
平然と使った事に対する恥じらいもあったがそれ以上に
聖の顔を赤くした理由は怒りであった。
自分が愛するものを貶される事がこれほどに悔しいとは
聖は知らなかった。知らずに済んでいたのである。
譜久村家の娘である以上、この町の人間で聖を傷つけるような
人間は居ないと言っても良かった。
だが今ここに現れてしまったのだ。
43 名前:聖の青春 投稿日:2011/04/23(土) 22:58
「あんまりですわ」
聖はそっと涙した。ああ、なんと無力なのだろうか。
このアルバムの素晴らしさを説く事はたやすい。
しかしそのような事をすれば今度は鈴木を傷つけるだけだ。
そのような不毛な争いをして誰が喜ぶというのだろうか?
「失礼!」
「あ、譜久村さんどこに!」
聖は次の瞬間には廊下を走っていた。これまでそんな蛮行はしなかった。
だが今はそうしなければ胸が、心が張り裂けそうだった。
そして気づいた時には音楽室に居た。

静まり返った音楽室にあるピアノ。安物だ。
それでも聖は弾かずにはいられなかった。
あの大好きな曲のイントロを。
44 名前:聖の青春 投稿日:2011/04/23(土) 22:58
「お上手ね。悲しみトワイライトかしら」
小さな拍手とともにかけられた声。
誰も居ないと思っていた聖は驚きを隠せなかった。
「でも、少し間違えてたわあなた」
「ごめんなさい。実は1度聞いただけなんです」
一度聞いただけにしては大したものだ。
こんな曲をわざわざ覚えておくなんて。
「あなたはもしかして娘ヲタ?」
聖はしばらく考えてモーニング娘は好きですと答えた。
「そうなんだ。私は憂佳。高等部2年よ。あなたは?」
聖が譜久村です。中等部3年と言うと憂佳は意外そうな顔をした。
無理はない。聖の成熟しつつある身体はとても中等部には見えなかった。
「あ、あの憂佳さんはモーニング娘は好きなんですか?」
憂佳は蓮っ葉な感じで別にと答えた。
「どうして?だって悲しみトワイライトを知ってらっしゃるなら」
「勘違いしないで!憂佳はね、恨んでるの。モーニング娘を!」
憂佳はピアノに手を叩きつけて不協和音を出した。
「ど、どういう事なんですか?」
「聞きたい?」
聖はこくりとうなずいた。
その日から聖の人生が大きく揺らぐことになったのだ。
45 名前:聖の青春 投稿日:2011/04/23(土) 22:59
つづくお
46 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/04/24(日) 21:35
面白い
続きが楽しみです
47 名前:聖の青春 投稿日:2011/05/03(火) 03:29
「憂佳はね、アイドルになりたかったの」
ピアノの鍵盤に目を落としたまま憂佳は呟いた。
右手の人差し指だけで弾いている曲に耳を澄ませる。
聞き覚えのない曲だ。モーニング娘の曲なのだろうか。
聖は記憶を紐解きながら憂佳の横顔を見てみたら
記憶なんてどうでも良くなった。嗚呼なんてかわいいのだろう。
透き通るほど白い肌に艶やかな黒い髪。そしてアニメのような声。
こんなかわいい女の子が高等部に居るとは知らなかった。
この子がアイドルになれないのなら誰がなれるのだろうと思うほどだった。
「あの…アイドルになるのは…あきらめたんですか?」
聖は憂佳の心のかさぶたをめくるような質問なのではないかと
一瞬躊躇したがそれでも聞かずには居られなかった。
もしかすると譜久村家のようにアイドルの曲を聴くのすら禁じるほど
厳しい家庭なのかも知れない。
憂佳の気品のある姿は上流家庭のものであろう。
自身が上流家庭の箱入り娘である聖にはそれがよくわかった。
48 名前:聖の青春 投稿日:2011/05/03(火) 03:30
「アイドル…ふふっ。憂佳はアイドルに飽いとる!あははははっ」
聖はその瞬間なにが起きたのか理解できなかった。
目の前で美少女が意味不明の事を叫んでひとりで笑い始めたのだ。
聖は愛想笑いというものを大人の処世術として既に身に着けていたが
それでもこれは一緒になって笑っていいものか判断できなかった。
「あ…飽いとる。って方言ですよね。飽きたって意味の。
私、生まれも育ちも東京なんですよ」
出来る限り平静を装ってみたが目の前で人が狂ったのだ。
未知の体験にまだ中等部である聖は動揺を隠せない。
「また整い前田!東京は良いとっきょー」
憂佳は叫んでから、あ、良い所って意味だよと注釈してくれた。
良かった。まだ人の心は残っているようだ。
そして彼女が言葉遊びに興じていた事に気づいた。

そういえば敬愛する祖父は俳句や短歌を楽しんでいた。
ああ、やはりこの憂佳さんはハイソサエティなのだ。
この可憐な先輩に聖は憧れの気持ちを抱かずにはいられなかった。
「あら?いけませんわ。もう次の授業が」
憂佳に言われ聖は我に返った。
聖はもっと憂佳と話をしたかった。モーニング娘の話や
言葉遊びについて…いやこの人のそばに居るだけで十分かも知れない。
それほどまでに憂佳には聖を魅了する何かがあった。
しかし学業を疎かにする事はいかなる事があってもありえなかった。
聖は深々と頭をさげて失礼しますと言った。
憂佳はほのかに微笑んで別れの挨拶の代わりにピアノできれいな和音を弾いた。
49 名前:聖の青春 投稿日:2011/05/03(火) 03:30
夕刻になり手芸部の活動に勤しんだ聖は普段であれば
このまま寄り道する事なく家路につくところであったが
今日はふと音楽室に寄る事にした。
ひょっとすると憂佳が居るのではないかと考えたのだ。
放課後の音楽室は吹奏楽部が活動を行っている。
迷惑になるかも知れないと思ったが好奇心はおさえられない。

悲しみトワイライトを知っているだけで憂佳は只者ではない。
普通の人間が普通に生きていれば知るはずのない曲だ。
聖もこの曲は本屋の店内のBGMで偶然聞いたのが最初で最後だ。
それを聖のピアノでの拙い演奏だけで当てたのだ。
もしかすると憂佳は聖のまだ知らない世界の扉を開く鍵なのかも知れない。
気がつくと聖は楽しい気分になって笑っていた。
さっきは泣きながら走った廊下を今はまたの出会いに期待して
心を弾ませて歩いている。その事がおかしくて聖はまた笑った。
「おい、笑ってんじゃねえよ」
凍りついた。3階の西廊下を歩いている生徒は自分だけだった。
更に言えば今自分でも自覚があるくらいに笑っていたのだ。
聖は恐怖に身をすくめながら声のほうを見た。
「…あ、なーんだ小川先輩ですか。もう驚いてしまいましたよ」
今年から高等部になった小川紗季がにやにやと笑ってそこに居た。
去年の中等部の委員会などで面識がある先輩だ。
50 名前:聖の青春 投稿日:2011/05/03(火) 03:30
紗季はクチャクチャとガムを噛んで聖のほうに歩いてくる。
食べながら歩くなんて行儀が悪いと少し思ったが
立食パーティのようなものかも知れないと思い直した。
「ごめんごめん。ビックリした?何してんの?」
「あの、音楽室に少し…あ、すいません憂佳先輩をご存じですか?」
「憂佳?知ってるよ。前田憂佳でしょ?黒髪で可愛らしい声の」
良かった。聖はほっと胸を撫で下ろした。
こんなに早く憂佳に辿りつくとは微塵も考えていなかった。

紗季に先導されるように音楽室に向かう間、後ろから
紗季を紗季を観察してみたがどうやら聖の知っている紗季と
今の紗季は少し違ってしまっているようだった。
校則でスカートの長さは厳密に決まっているのだが
紗季は平然と短いスカートに仕立て直してはいていたのだ。
無防備に露出した2本の足は妙なエロスを醸し出している。
もちろん校則を破る生徒は少なくはなかったし
生徒手帳に記してある数値のとおりにはいているのは
中等部の1年生か聖くらいだった。
しかし紗季のスカートの短さは度を超していた。
これでは何かの拍子に簡単に下着が見えてしまうだろう。
先生によってはこれだけで不良の烙印を押し内申点を下げるだろう。
もし同級生であれば忠告するのだが紗季は1年先輩だ。
いくら正しき事でも年下から言われれば気に障るだろう。
聖は黙って紗季の後を追った。

「さあ、ここだよ」
ここは?そこは音楽室の横の音楽準備室だった。
授業では使わない楽器や運動会で使う和太鼓などが入っているだけで
普段は誰も使わないはずだ。本当にここに憂佳がいるのか?
聖は期待と一抹の不安を胸に準備室のドアをノックした。
51 名前:聖の青春 投稿日:2011/05/03(火) 03:31


つづきはまた今度
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/01(木) 05:01
わっふるわっふる
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/11/18(金) 17:16
聖ちゃんイイヨイイヨー

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