酒宴
1 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/29(水) 02:01
娘。OGはきっといつもいつも酒を飲んでいると思うのだ。
ここで酒絡みの話を一つ。
2 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/29(水) 02:01
保田は笑笑に行くといつも生ビールしか飲まない。
吉澤が「圭ちゃんは本当に生が好きだね」と言うと、
保田は笑って「だって原価率が一番高いのは生ビールだからね」と言い、
指を一本立てて「生一つ」と店員に声をかけた。
店員は「はい、ありがとうございます」きちんと礼儀正しく申し上げて、
保田のジョッキを下げた。吉澤は梅サワーを止めて、ジントニックを頼んだ。

二人は昨今の音楽業界のありかたという真面目な話をしていたのだけれども、
運ばれてきた生をさもおいしそうに美味しそうに飲む保田を見て、
吉澤がまた「圭ちゃんは本当に生が好きだね」と言うので、
保田は「だってゴムつけたら気持ちよくないでしょ」とつまらない冗談でそれに返した。
二人ともそこで押し黙っていたら「ジントニックになります」の声とともに、
確かにジントニックが来た。ライムが炭酸に揺れていた。
吉澤は箸を逆にしてぐるりとかき回すとそれを一口飲み「愛ちゃん呼ぼうか」と言った。
3 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/29(水) 02:01
「高橋?なんで?」
「だってなんか圭ちゃんがつまんないこと言うから」
「ごめんね、だって二回言うからなんか求められてるのかと思って」
「それにしたってつまんないよ、今時オヤジでも言わない」
「ごめんってば」
「じゃあ愛ちゃん呼ぶよ」
「いいよ、高橋は、忙しいでしょ?」
「そんなの連絡してみなきゃわかんないじゃん」

吉澤はすばやく携帯を取り出し、すばやく高橋の番号を探し出し、すばやく電話を掛けた。
保田は電話の間中お通しのおくらを箸で極めて緩慢にいじっていたが、
吉澤が電話を切るとすばやく口に入れた。
4 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/29(水) 02:02
「愛ちゃん明日仕事だけど保田さんがいるなら行きますだって」
「へー、かわいいとこあんじゃん高橋」
「愛ちゃんはかわいいよ、いつだって」
「まあねえ。私トイレ行ってくるから生頼んどいて」
「ホント圭ちゃんは生が好きだね」
「ゴムつけると気持ちよくないからね」
「またそういうことを言う」
「あんたが言わせてるんでしょ」
5 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/29(水) 02:03
保田がトイレに立ったので、吉澤はすばやく携帯を開いて、
すばやく高橋のアドレスを探し出し、すばやくメールを打った。

『何時頃着く?』
『そうですね、10時には着きます』
『りょーかーい。待ってるよ。気をつけて来てね』
『はーい』
6 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/29(水) 02:13
とりあえずここまで
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/29(水) 03:53
イイ感じの温度ですね。
つづき待ちます!
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/29(水) 07:11
保田と吉澤の絡みは落ち着くなぁ
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/25(木) 00:50
保田はトイレから帰ってくると勢いよく生を喉に流し込み、
「あー、またトイレ行きたくなってきた」と言った。
吉澤は「おばあちゃんか」と言った。

「うるせえ」
「トイレ近いのは歳の証拠だよ」
「あーあー、うるせえうるせえ」
「すいません!たこわさ一つとジントニック!」
「ジントニとたこわさは合わないでしょ、焼酎にしなさい焼酎」
「いーの、おばあちゃんはうるさいんだから。これが若者なの」
「そうですかそうですか、おにーさん、もう一個生ね」
「ばばくせえばばくせえ」
「うるせえなあもう」

などという微笑ましいやりとりをしていると高橋が来た。
「すいません遅くなっちゃって」と言うので、二人は時計を見た。
10時を10分ほど回っており、高橋の健気さに二人はむせび泣くフリをした。
10 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/25(木) 01:02
じゃあ場所を変えますか、と保田が提案し、吉澤はすぐに店を
変えたがるのは年寄りの証拠だとまた前の会話をほじくり出し、
高橋は私はここでいいですけど、と言うので結局そのまま、
笑笑で飲むことになった。
「いやまー、別にさー、いいんだけどさー、どこだって」
と言って保田はたこわさをつついた。吉澤もつついた。
高橋は割り箸を割っていいものかどうか逡巡していた。
吉澤が「高橋も食べな」と言ってからようやく、高橋はほっとした
顔で割り箸を割って、たこわさのわさびだけをより分けてつついた。

「高橋は何飲むの?やっぱ生だよね?」と保田は高橋の箸先を見ながら尋ねた。
高橋はギョッとした顔をして「いや、あの、ウーロン茶で」と言った。
「飲み屋に来て酒を飲まないなんて法があるか!飲め!」と保田は
その目をカッと見開いて叫んだ。高橋がまたギョッとした顔をした。

「すいません!ウーロン茶ひとつ!と、あとジントニックひとつ!」
「よしざわー!勝手に頼むなー!おにーさん、今のウーロン茶生にして!」
「いーの!年寄りは黙ってなさい!」
「うるせー!生だ生!」
「すいません、私お腹空いてるんで、ごはん食べていいですか?」
「待て!酒を飲んでからだ!」
「愛ちゃん何食べる?」
「あのー、キムチチャーハンを」
「待て待て待て!ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」
「いってらっしゃーい」
「ああ、はいどうぞ」
「生ね!」
「はいはい」
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/25(木) 01:11
「どうなの最近?」と吉澤はジントニックを飲みながら高橋の顔を見据えた。
高橋は「ええ、まあ色々大変です、本当に」と言って、ウーロン茶を飲み、
たこわさのわさびだけをまたつついた。吉澤はおしぼりでグラスを拭いた。
保田の頼んだ生は泡が消えかけている。

「何か、面白いことあった?」
「いや、特に何もないんですよね」
「じゃあ嫌なことは?」
「それも別にないんですよ」
「じゃあ何が大変なの?」
「そうですねー、よく考えると何も大変じゃないんですよ」
「ああ、うん」
「ただなんとなくつまらないというか、このまんまでいいんだろうかとか」
「あー」

保田がトイレから帰還。
「高橋!お茶なんか飲んでないで酒飲みなさい!で、何の話?」
吉澤「これウーロンハイだから」「ああ、そうなの、じゃあいいや、で、何の話?」
12 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/25(木) 01:12
何はさておき、ここまで。なんという更新ペースの遅さだろう。
13 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/02/28(日) 21:34
読む方もまったり読んでます
そしてまったり次を待ちます
14 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/03/07(日) 10:33
更新されてた!
保田さんがいい味出してますね
続き楽しみにしてます
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/17(土) 06:48
吉澤が答えて曰く「愛ちゃんのきんきょーほーこく」
保田は生を一口飲んで「男できたの?男!」と言い、高橋はくりくりと箸で
たこわさびをこねくりまわした。「手癖が悪いねこの子は」と保田が眉間に
皺を寄せると、高橋は「すいません」でも手は止めない。
吉澤がまあまあまあという顔をしてジントニックを一口飲み、顔をしかめ、
ライムをぽいと皿の上に捨てた。高橋はむっつりしていたのだけども、
「お腹空きました」とぽつり言って、「ご飯食べてないの今日?」と保田。

「お昼にあの、お弁当食べて、それから、えっと、アイスを夕方」
「アイス?」
「はい、ワンカップ」
「そりゃ日本酒でしょ」
「あ、えーっと、あの、100円の、バニラとかある、えーっと」
吉澤が助け舟「スーパーカップでしょ?」「ああはい、そうです」と高橋。
「アイス食ってる暇あったらおにぎり食えよ!」
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/17(土) 06:57
「圭ちゃん口悪い、乱暴、ガサツ、淫乱痴女」
「あんたもたいがいだよ!」
「圭ちゃんほどじゃないしー」
「私も吉澤ほどじゃないしー」
「いえいえ、どうぞどうぞ」と吉澤、右手を差し出しおどけた顔で
もう一回「どうぞどうぞ」保田がそれに応えて「何が、ダチョウ倶楽部?」
吉澤しつこくもう一度「どうぞどうぞ」保田も「どうぞどうぞ」右手を差し出し、
二人はちらりと高橋を見て「え?私?どうすればいいんですか?」
「ごめん、順番間違えた」と吉澤が笑いながらライムをいじって、
保田「俺が俺が、ってのがないとねえ、そりゃねえ」とひとりごち、
高橋はキョトンとした顔で「お腹空きましたねえ」と言った。
17 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/17(土) 07:07
運ばれてきたキムチチャーハン、ほかほかと湯気が立ち、
保田が我先にと自分の皿にそれを盛るのを見て吉澤、
「圭ちゃんもお腹空いてたんじゃん」
「私は別にお腹空いてないとは一言も言った覚えがございません」
「さようですか」
「そうです」
「あのすいません、ちょっと残しといてもらえますか、トイレ行ってきます」
「大丈夫、もうひとつ注文しとくから」
「ああ、はい」と名残惜しそうに高橋、席を立ち「トイレどこでした?」
保田はそれを聞いているのかいないのか、黙々とチャーハンを食べ、
「ああ、私も行くよ」と続けて吉澤席を立ち、
「ちょっと!あんたたちそんなに私のこと嫌い!?」と保田。
吉澤にっこり笑って「そんなこと、あるわけないじゃないですか、保田さん」
と妙に明瞭かつ快活に答え、「バカにしてる!絶対私のことバカにしてる!」と保田。
「バカにしてるわけ、ないじゃないですか、保田さん」
「ほらその敬語!やめろやめろやめろ!」
「先輩に敬語を使うのは当たり前です」
「ねえ、やめてよ、さみしいじゃん、圭ちゃんって言ってよ」
「いえ、保田さん、先輩にそんな馴れ馴れしい口なんて」
「やめろやめろやめろ」
高橋はテーブルの脇でもじもじし、ささやくように「漏れそう……」と言った。
18 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/17(土) 07:23
ところ変わってトイレ、鏡の前で手を洗う二人。濡れた手をジーンズのケツで拭って、
吉澤は鏡に向かって前髪を整える、高橋は念入りに手を洗っている。
「愛ちゃん明日早いの?」吉澤は言いながら、横目で高橋をちらりと見やるけども、
彼女はまだ念入りに手を洗いつつ「えーっと、明日はオフです、確か、うん、多分」
と上の空、のような感じで、続けざま「キムチチャーハン、残してくれてますかね、保田さん」
「そりゃ残してるよ、圭ちゃん、適当に言ってるだけだよ、全部、大体いっつもそうじゃん」
「そうですよねえ」高橋はふふっと鼻から空気が抜けるように笑い、ペーパータオルで手を拭く。

場面は戻ってテーブル保田、4人座れる席に一人、となると妙に寂しげで、
チャーハンを食べる手を止め、ちびりちびりとビールに口をつけるだけ、
それもほとんど飲んでいるのかいないのか、ちびりちびりと口をつけ、
携帯を手にとって開き、メールの受信箱をチラリと見てすぐに閉じ、
今度はメニューを開いて、次は何を飲もうかな食べようかな頼もうかな、
という風情でもなく、ただ漫然とメニューを眺めているような感じで、
最初のページから最後のページをゆっくりと数回捲って、
飽きちゃったなという顔して閉じた。頬杖ついて、またちびりちびり。
19 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/17(土) 07:25
たちまちここまで。レスありがとうございます。うれしいです。
20 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/19(月) 02:39
おもしろい。
高橋さん、ファイト!
21 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/19(月) 16:10
吉澤と高橋が帰ってくると、保田はまたチャーハンを猛烈な勢いで食べ始め、
「ちょっと!全然残ってないじゃん!」と吉澤、高橋は困った顔をして
「もう一個頼んでいいですか?」保田はもぐもぐしたまま「いーよ」と言った。

「高橋、飲みもんないけどいいの?ウーロンハイ?ウーハイ?頼む?」
「ええ、はい」
「愛ちゃんいいの?別にこんな先輩の言うこと聞かなくていいからね」
「こんな先輩とか失礼じゃない?ねえ?吉澤失礼じゃない?」

保田は箸を置き、もぐもぐ、ビールで流し込み、「敬語つかえよ!敬えよ!」
吉澤それを受けて「保田さんの言う通りにしなくていいんだよ、愛ちゃん」
高橋より一層困った顔をして、チャーハンの残りを取り皿に移すと
「じゃあ、ビールをください」「よく言った!それでこそ娘。だ!」と保田は手を叩いた。
22 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/19(月) 16:18
保田、大きな声で「すいませーん!」と店員を呼びつけ、
「キムチチャーハンもう一つと、生ふたつと、吉澤は?何飲むの?」
「ああ、じゃあ私はウーロン茶で」ジントニクをぐいと飲み干し、
グラスをテーブルの端に、保田はそれをチラリと見やると
「それ黒霧島の水割りで!」続けて「あと、とりからをください」
店員はちょっと困った顔をして、吉澤の顔を見、「よろしいんですか?」
吉澤、諦めた風で「はい、大丈夫です」テーブルの皿を重ねて寄せた。
「圭ちゃん、はやくそれ飲んじゃってよ」「ああ、うん、ごめん」
半分弱残っていたビールをすばやく飲み下し「はい、どうぞ」吉澤は
保田の手からジョッキを奪い取って、テーブルの端に寄せた。
「おそれいります」そう言って店員は颯爽と奥に消えた。

「ドリンク生2丁!クロキリ水!おねがいしまーす!」
「はーい!ありがとうございまーす!」威勢のいい声が聞こえた。
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/19(月) 16:27
テーブルの上からはほとんど何も無くなってしまって、あるのはメニューと
取り皿と箸とコースターだけ、しばしぼんやりとお互いの顔を見つめあう。
高橋はさーと保田がいきなり声を上げ、高橋は箸袋を折りたたむ手を止め、
ぴくっとして保田の顔を見、吉澤はメニューに伸ばそうとしていた手を止めて保田を見た。

「いや、そんなに注目していただかなくても、大丈夫だけど」
「照れんなよ圭ちゃん」
「照れてるわけじゃないよ」
「じゃあ何?感じてるの?圭ちゃん見られて感じてるの?」
「何言ってんだおめー」
「ふふふ」と高橋が笑って、おしぼりを鼻の下に当てた。
「高橋!何笑ってんの!下ネタだよ!今の!あいつ下ネタ言ったよ!アイドルなのに!」
「下ネタじゃないしー、圭ちゃんがスケベだからそう聞こえるんだよ」
「ああ?ふざけんな!今のが下ネタじゃなかったら何だよ!」
「ほんと、お二人とも仲良いですよね」
高橋そう言って、また「ふふふ」と笑って、おしぼりで指の間をふきふきした。
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/19(月) 16:34
そこで一端会話が途切れ、お互いの顔を見合わせて「ふふふ」と笑い合う、
などという奇妙な光景を10秒前後繰り返した後、吉澤口火を切り、

「で、高橋はさー、何なの?」「え?」と保田、ぽかんとした顔。
「だからさっきの話の続きだよ、高橋はさー、何なの?」
「ああ、えっとね、なんだっけ、高橋ね、うん、高橋は高橋だ!」
「何それ」吉澤冷めた目で保田を見やり、保田慌てて
「ごめん、そんな目で私を見ないで、お願いだから」と懇願、続けて
「いやなに、忘れました、何か言おうと思ってたんだけど、忘れてしまいました」
「おばあちゃんだね」「そうですね」「ばばあだよ」「そうだね、全くそうだね」
高橋またそのやりとりを見て「ふふふ」と笑う。
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/19(月) 16:42
とりあえず運ばれてきた生二つと水割りをそれぞれ手にして、
保田が「じゃあ仕切りなおして、乾杯!」とジョッキを高々と上げるので、
吉澤はダラダラと「かんぱーい」と続けて手を上げ、高橋はおどおどとしながら
小さな声で「かんぱい」と言った。保田、それ見て思い出したのか、
ビールを一口飲むと「いや、あれだよ、高橋はあれだね、女子力!そう言おうと思ってた」
高橋はビールに口をつけぬまま「女子力ですか?」と不思議そうな顔をし、
吉澤はメニューを捲って、シーザーサラダをじっと見つめている。

「そう!女子力!」「それってつまりなんですか?」
「女子力といえば女子力だよ!一杯目にウーロン茶!とか、笑い方とか、
 そのつつましやかなかわいらしい身振り手振りだとか、そういうの、ひっくるめて女子力!」
「はあ」
「高橋!お前モテるだろ!」
「いや、別にそんなことは無いと思いますけど」
「いやいや、絶対にモテるだろ!私を1とすると100ぐらいモテるだろ!」

高橋は困った顔をして、ビールを今度こそ一口飲んで、吉澤に目配せ、
吉澤はメニューに目を落としながら「ねえ、サラダ頼んでいい?」とつぶやき、
保田がそれに対してか、それとは関係なくか「女子力!」と叫んだ。
26 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/19(月) 16:45
ここまで。先を何も考えずに書いているので、更新が安定しません。
彼女らは何でまたこの三人で飲んでいるんだろうなあ。
でもそういうのを含めて飲み会とはきっとこんなものだろうなあ。
高橋さんはマイペースな先輩二人に挟まれて、大変な心労だろうけども、
頑張って欲しい、と僕も思います。レスありがとうございます。
27 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/19(月) 19:22
小説の外で饒舌な書き手、というのはどうも個人的に好きではないのですが、
いかんせんそういう欲求がある、それを包み隠したところでどうとなる訳でもないので、
正直に饒舌であろうと思うのですけれども、これを書きながら既視感のようなものを覚え、
思い返したところ5年ほど前にここ、草板で書いた「在りし日の事など」という奴で、
もしよろしければそちらもどうぞどうぞ、手前味噌ですが僕は結構これ好きなんですよ。
28 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/04/21(水) 07:59
やっぱりあの作者さんでしたか!
そうだったらいいなと思っていたら、まさか本当にそうだったとは。
また貴方の娘。小説が読めて嬉しいです。
続き楽しみにしています。
29 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/27(木) 22:55
さて、時を同じくして中澤と飯田も魚民で飲んでいた。
中澤は芋焼酎にこだわりがあるようで「赤霧島という焼酎があって」などと
アカキリシマのすばらしさを語るのだけれども、飯田はそんなこと上の空で、
グラスワイン(白)を飲んでいた。
「聞いてんのか」
「聞いてるよ、超聞いてる」
「あーそう、じゃあ言ってみ、うちが今何の話してたか言ってみ」
飯田、その白くて細く長い指をつっとあちら側に向け、
「ほらあの、あそこの店員さんのズボンがずり落ちてるって話でしょ?」
「ちゃうわ!」
中澤はワリバシで飯田の指を軽く叩いた。
「いったーい、ゆうちゃんひっどーい」
「ヒッドーイ、じゃあらへんわ、かわいこぶりっこくさりやがって、
 大体こんな居酒屋に来てワインとかアホか」
「いいじゃん別に、裕ちゃんはアカキリシマが好き、私はワインが好き、それだけじゃん」
30 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/27(木) 23:01
そこへ「ごっめーん」などと言いながら矢口がやってきた。
「おお矢口、こっち座り、ほら矢口、こっち座り」と中澤は自分の右隣をポンポンと叩き、
矢口は「おじゃましまーす」と言ってするりと飯田の隣に座った。
「なんで避けるねん」
「避けてるわけじゃないよ、裕ちゃん酒くせえ」
矢口、左手で鼻をつまんで、右手で中澤の顔をパタパタと扇いだ。
「飲んでんのやから、酒くさいのは当たり前!」
その言葉を聞き流し、矢口はメニューを開いて「何飲もっかなー」
飯田が「ほら、矢口の好きなカシスオレンジあるよ、カシオレ!」
「すいませーん!」とよく通る声で、矢口が右手を挙げて店員を呼んだ。
31 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/27(木) 23:07
矢口は実に手際よく生ビールとえだまめとほっけを注文して、
店員が「ありがとうございます」引いてから、メニューを閉じて
「ほんと久しぶり!」と言った。
中澤、ニコニコしながら「ほんま久しぶりやなあ、会いたかったで矢口」
飯田は極めて冷静な顔で「いや、三日前に会ったばっかっしょ」と言って、
おしぼりでグラスを拭いた。矢口はワリバシを割って、取り皿の上に置いた。
「ハシ割ったんなら何か食いーや」
「いや、なんか食べようと思ったけど、別に食べたいもんがなかったのさー」
矢口はアハハと笑って、おしぼりで手を拭いた。
「矢口、生来たらグラスワインの白頼んどいて」と言い残し、飯田は席を立った。
32 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/27(木) 23:16
「カオリンどこ行くの?電話?彼氏?」
矢口の言葉にやれやれという顔をして飯田、応えて曰く、
「結婚してるっつーの、ちょっとお手洗いに」
「お手洗いとか気取っちゃってさー、便所だろ!便所!」
「矢口、女の子が便所とかそんな大声で言ったらあかんで、せめてトイレと言いなさい」
「はーい」
ごちゃごちゃとそういうやり取りをしている内に店員が生を持って来たので、
飯田は「グラスワインの白を一つ」と店員に伝え、
店員は「はい、グラスワインの白ですね」と丁寧にそれを繰り返した。
「やぐちー、なんでお前はやぐちなんやー」と中澤が言って、
矢口が「ゆうこー、お前はなんでゆうこなんだー」と言った。
「バカなことやってんじゃないよ、トイレ行ってくるからね」飯田は早足で
トイレに向かおうとするも、店員と鉢合わせし「申し訳ありません」と
店員は実にすまなさそうに言った。飯田は「いいえ、どうも」と言った。
33 名前:名無飼育さん 投稿日:2010/05/27(木) 23:18
ここまで。「在りし日の事など」覚えててくれて、どうもありがとう。

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