you are my friend
1 名前:みら 投稿日:2009/06/07(日) 23:10

あいかん中心に短編を。
2 名前:have a break time 投稿日:2009/06/07(日) 23:13


「栞菜、もうすぐ誕生日じゃん」
「あー、そだねぇ」
「何か欲しいものある?」
「別に無いかな。しいて言えば、暇」


クッションを抱きながらベッドの上に佇む愛理をよそに、あたしは机に向かって宿題と格闘している。
自分の希望した高校に入学出来たのは良かったけれど、今では部活に入る余裕もないほど授業の予復習に追われている。

元々レベルの高い高校に進学するつもりなど毛頭無かった。
そもそもきっかけは、そこの中等部に通っている愛理のために猛勉強して合格したんだけど。
幼馴染みの愛理はあたしと違って成績明瞭、幼い頃から私立の学校に通っていた。
学校は違っていても家が隣同士だからしょっちゅう遊んだりしてて、別々に生活しているような感覚はほとんどなかった。
でも、

『栞菜が同じ学校にいたら毎日楽しいんだけどなぁ』

ある日そんなことを言うものだから、あたしはそれを目標にして受験を乗り切った。
学年は違っていても校舎は同じだし、一緒に登下校できる。愛理が寂しがるのを放っておくわけにはいかないから、ただそれだけのために毎日勉強していたようなもんだ。
3 名前:have a break time 投稿日:2009/06/07(日) 23:13


せっかく念願の学校に合格しても時間に余裕が出来ることはなくて、こうして愛理が学校帰りに遊びに来たとしても相手をしてあげる事もままならない。
愛理は文句ひとつ言わないであたしの部屋にある漫画や雑誌を一人で読んだり、それに飽きたら自分の宿題を片付けたりと、ひととおりそんなことで時間をつぶしている。


そんな愛理の一言で思い出した。
そうだ、あたしもうすぐ16歳になるんだ。


女子高生になったばかりだというのに、唯一の欲しいものが「暇」だなんて。
愛理は困ったような顔だ。そりゃそうだよ、あたし何言っちゃってるんだろう。
一緒にいても会話すら殆どせずに机に向かっているあたしに文句も言わないで、愛理は毎日のようにここにいる。

その理由を考える暇すら、あたしには無かった。

4 名前:have a break time 投稿日:2009/06/07(日) 23:14


「あー、愛理」
「…んー?」
「遊び行こう。そうだ、決まり。あたしの誕生日にどっか行こう」
「…宿題とかは?」
「どうにかなる。や、どうにかする」

ぱたんと教科書とノートを閉じて、ベッドにちょこんと座る愛理の隣へダイブ。
長い事横になっていなかったみたいに腰が痛い。愛理は眉を垂れて、なんだか情けない顔をしてる。まあそれもいつものことなんだけど。

思えば、最後に二人でどこかへ出かけたのはいつだっただろう。
高校に入学する手前、遊園地に行った。多分それっきりだ、愛理と手を繋いだのも。
それどころか、普通の恋人同士なら当たり前のスキンシップだって足りていない。


こんな風に寂しい顔をさせたのは、他でも無いあたし。
愛理のために、なんてでかいこと言ったわりに、自分のことだけで精一杯。
こんなのきっと、嘘をつくより酷い。
むくりと起き上がって愛理を抱き締めると、頼り無い声が漏れる。きっとびっくりしたんだろう。安心したように、抱き返してくれる。

こんなに可愛かったっけ?
腕の中でふにゃふにゃ笑う愛理は、小さな子供のようだった。

5 名前:have a break time 投稿日:2009/06/07(日) 23:15


「愛理、愛理ぃー」
「んぁ、ちょ、かんっ」


首に顔を埋めて甘える。ぱしぱしと腕を叩かれて止めると、照れてる顔を背けて何かぶつぶつ言い出す。


「…どこも、行かない」
「え?」
「…ずっと、こうしてたい」


成程、今まで放ったらかしにしていたあたしに決定権は無いようだ。
山積みにされた宿題より、今は制服の袖をきゅっと掴んで離さない愛理が何よりも優先。
甘い声に誘われて、目を閉じたらもう宿題のことなんか頭に無くなっていて、気が付いたら寝息をたててる愛理を抱きながらあたしも一緒に眠っていた。

まどろみの中で寝言を言う愛理に頬を寄せて、あと数日でやってくるあたしの誕生日にはとびきりの愛をプレゼントしてもらおう。久しぶりに感じる愛理のにおいに酔いながら、そんなことを考えていた。

6 名前:have a break time 投稿日:2009/06/07(日) 23:27
〜数分後〜



州´・ v ・)<…う?何でボタン外れて…(起きたら制服のボタンが3つも外れてる

ノk|‘−‘)<あはは…あ、愛理寝ぼけてたんだよ!きっとそう!

州´・ v ・)<…って、なっ、痕ついてっ…!(下着丸見え

ノk|‘−‘)<いやぁーあまりにも熟睡してるからつい(ごにょごにょ

州´・ v ・)<ばか、へんたい…(顔真っ赤でくねくね





ノk|‘−‘)<褒め言葉だかんな!



7 名前:みら 投稿日:2009/06/07(日) 23:27
ノk|‘−‘)<こんな感じで進んでくんだかんな
8 名前:みら 投稿日:2009/06/07(日) 23:29
栞菜の復帰を願ってAAのサービスry
なんだかんだで結局愛理のことしか考えられない栞菜が書きやすいです
9 名前:三拍子 投稿日:2009/06/08(月) 12:39
あいかんとなれば見るしかない!!
頑張って下さい。
10 名前:みら 投稿日:2009/06/08(月) 18:02
更新します。
ぼーのさんのセカンドアルバム収録曲を参照にひとつ。


>>9
三拍子さんが私のスレに…!ありがとうございます。
11 名前:-you are my friend -sideA 投稿日:2009/06/08(月) 18:04
自分の気持ちを、知らなければ良かった
12 名前:-you are my friend-sideA 投稿日:2009/06/08(月) 18:04



きっかけはほんの些細な事だった。
隣のクラスで、女の子の間ではわりと人気のある人。
でもあたしはその人の名前すら知らなかった。
放課後に呼び出されて、好きだと言われる前までは。

真剣な顔で言うものだから、笑ってかわすことなんて出来なかった。
少し間を置いて頭を下げた。顔を上げると、凄く悲しそうな顔をしてた。
初めて人に告白されたんだから、あたしだってもう少し愛想があっても良かったと思う。
でも、そんな気になれなかった。
『ごめんなさい』
あたしはたった一言で、彼が勇気を振り絞って言葉にした気持ちを片付けてしまった。

見かけによらず残酷だ、なんて陰で言われたりするんだろうか。
あたしを好きだと言ってくれたのが、彼じゃなくあの人だったら良いのに。
一人取り残された教室で、密かにそんなことを考えていた。
13 名前:-you are my friend-sideA 投稿日:2009/06/08(月) 18:05
それから数日後。
あの人はどこからその話聞き付けたのか、あたしの肩を抱いて興味津々で尋ねてきた。


「愛理、告白されたんだって?」

ぽきん、とシャーペンの針が折れる。
動揺しているのが伝わらぬよう、作業を続けたまま小さく頷いた。
どうか気付かれませんように。願掛けするみたいに、残り僅かの針で文章を綴る。
これが折れたら、ゲームオーバー。

「なんで振ったの?」
「…だって、好きじゃないし」
「でも、これから好きになるかもしれないじゃん」
「ならないよ。興味、ないもん」

つまらなさそうにふぅんと返事をして、窓の外を眺めてる。
少しは気にしてくれてるのかと思ったけど、それもまたあたしの勝手な期待に過ぎなかった。
幼馴染みなんて、ただの腐れ縁にしか過ぎない。皆は、そうは思って無いみたいだけど。

あたしが好きなのは、栞菜なんだよ?

何を考えてるのか分からないその横顔をただ見つめる事しかできないくせに、心の中では大胆なことばかり考えてる。
今だって、言えるわけない台詞をもう一人のあたしが吐きまくってる。
14 名前:-you are my friend-sideA 投稿日:2009/06/08(月) 18:06



しばらくの沈黙の後、なにかを思い付いたかのようにあたしの顔をじっと見つめて、頬杖をついてこんなことを言う。


「愛理にふられるなんて、あたしがその子だったら立ち直れないよ」
「…え?」
「なんつって。ま、ふって正解だったかもねー」


ぽきんと折れたシャーペンの芯は床に落ちて、どこに行ってしまったのか分からない。
栞菜のその一言で、あたしはいくぶん救われたように思う。
何も関心がないような態度のくせに、ふとした時にあたしの心臓を貫くんじゃないかと思うくらいの台詞を口にする。
期待、しちゃうよ。あたし以外の人に、そんなこと言わないくせに。


何事もなかったかのような顔でノートをぺらぺらめくる仕種はいつもと同じ。
なのに、微かにその指が震えてるような気がした。

15 名前:-you are my friend-sideA 投稿日:2009/06/08(月) 18:10

州´・ v ・)<次回は栞菜編ですよ?
16 名前:-you are my friend-sideA 投稿日:2009/06/08(月) 18:12

ノk|‘−‘)<…誰が渡すかっつーの(ノートめくりながら冷静を装う
州´・ v ・)<え?!
17 名前:みら 投稿日:2009/06/08(月) 18:13

you are my friend聴いてると切なくなります。
あいかんで書きたいと思っていたのでやってみました。
18 名前:みら 投稿日:2009/06/11(木) 06:45
朝から更新。
愛理はやっぱり天然誘い受け。
19 名前:good smell 投稿日:2009/06/11(木) 06:46


「愛理おそいー。置いてくよー」
「んー待ってすぐ行くからぁ」
「ったくもー。 …」


四つん這いになって探し物をしてる愛理の背中を見てたつもりが、スカートから伸びた白い脚から目線が外せなくなった。
なんていうか、この子はいつもいつも無防備すぎる。
手鞠歌の収録の時だって「あたしだけズボンなんですよー」とか言いながら司会者の前で太もも見せちゃうし。
舞美ちゃんが苦笑いしてたのにも、気付かないでさ。

狙ってやってるわけじゃないところが愛理らしいっていうか…
あ、スパッツ見えてるし。

「ないよーぅ」

探し物はカバンの中を探っても出てこないらしい。
ポケットをぱんぱん叩いてみるけど、あたしの顔を見上げて悩ましげに首をふるふると横に振る。
上目遣いかよ。無意識にそれをやっちゃう愛理はやっぱりどこか抜けてる。
もっとこう、ステージ上で愛理の放つオーラを楽屋でも見せて欲しいんだけどなあ。
20 名前:good smell 投稿日:2009/06/11(木) 06:47


「つーか、何探してんの?」
「ん、リップ」

朝使ってたじゃん。それ、どこやったの。
覚えてないぃーーー なんて変な動き、いや踊り?をしながらバタバタする。

すると、何か思い付いたようにあたしの着ているパーカーのポケットに手を突っ込んでまさぐり始めた。


「かーして」
「へ?あー…でも」

こら、と手を伸ばした時にはもう遅くて、リップの先端は愛理の唇にあった。
苺の香りがふわっと匂う。その香りに酔いながら、今度はその唇に目が行ってしまう。
間接キスなんて女の子同士じゃ当たり前だ。男だってするだろう。
しかもメンバーならなおさらなのに、今更リップを使われたくらいで動揺するあたしはどうかしてるんじゃないかと思う。
でも、ちゃんとした理由はあるんだ。

相手が、愛理だから。
21 名前:good smell 投稿日:2009/06/11(木) 06:47



からっぽになったふたつのポケットには、行き場のないあたしの両手。


「はい。ありがとー栞菜」
「あーうん。ちゃんと自分の見つけときなよ?」
「んはは、見つからなかったらまたよろしく」

それもそれで困るんだけど。そう抗議する暇もなく、てくてくと楽屋を後にした。
がばっと予告なく後から抱き着かれて、いや体当たりされて、愛理から苺の香りがするたびにリップを貸さなきゃよかったと後悔した。


結局愛理のリップは見つからないまま、というか本人は探すのを諦めて新しいリップを買った。
「おそろいだー」とかなんとか言って苺の香りを漂わせる愛理は、やっぱり無防備すぎる。


22 名前:good smell 投稿日:2009/06/11(木) 06:51
州´・ v ・)<メロン味のリップってないのかなー?
ノk|‘−‘)<さー…(愛理見てて上の空



23 名前:みら 投稿日:2009/06/11(木) 06:52
you are〜の栞菜編は次回に持ちこしorz
愛理は無意識に栞菜のこと悩ませちゃえばいいと思います。
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/14(日) 01:28
ここのあいかんめちゃくちゃ好きです!
引き続き頑張ってください(*^_^*)
25 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/17(水) 09:43
続きがとても楽しみです!
みらさんの書くあいかんは
読んでてなんか和みます(´∀`)
大変だと思いますが
更新頑張って下さいね♪
26 名前:みら 投稿日:2009/06/20(土) 10:22
更新します
27 名前:-you are my friend-side K 投稿日:2009/06/20(土) 10:30
愛理の横顔がいつもと違う風に見えたのは
うしろで輝いてる夕陽のせいだったのか、あたしの質問がいけなかったのか分か
らない
ただなんとなく寂しそうに見えたから、思わずその目から顔を逸らしてしまっ


ゴメン
そう言わなきゃいけない時に限って、言葉に詰まる
28 名前:-you are my friend-sideK 投稿日:2009/06/20(土) 10:33
愛理は学校の中でも顔が広い。あたしもそこそこなほうだとは思うけど、愛理
に比べたら全然だ。
だから、愛理の誰にでも気取らない態度と明るさに惹かれる男はたくさんいる。
それでも
愛理はそれをはねのける。
彼氏のひとりやふたりいても良いくらい可愛いんだから、なんて言ったらマズ
イかもしれないけど…
「興味ないから」の一言で一蹴されてしまう男子達が可哀想に思えるくらい。
29 名前:-you are my friend-sideK 投稿日:2009/06/20(土) 10:34
あたしが男だったら?
きっと、愛理を好きになるだろう。
でも、いまのあたしはどうだろうか。
30 名前:-you are my friend-sideK 投稿日:2009/06/20(土) 10:34
正直、愛理がOKを出さなかったことにホッとした。何故だか安心した。小さい
頃からあたしの横でひまわりみたいに笑う愛理が、他の誰かのものになるなんて
考えられない。
ほとんど毎日一緒に帰らなくなったり、休みの日に遊ぶ相手があたしじゃない誰
かに代わるなんて。
嫉妬に似た感情がふつふつとわき上がり、勉強どころじゃなかった。
31 名前:-you 投稿日:2009/06/20(土) 10:36
澄ました顔してるあたしを、愛理はどんな風に見ているだろう。

ねぇ、愛理
どうしてそんなに悲しい顔をするの?

もしその答えが分かっていたら、手を伸ばせばすぐに届くこの距離を埋められ
るのに。
あたしには分からない。自分の気持ちも、愛理のことも。

32 名前:-you are my friend-sideK 投稿日:2009/06/20(土) 10:37
白紙のノートをただ眺めてるだけのあたしに、愛理が不意に呟いた。

「栞菜がいるから」
「ん?」
「…栞菜と一緒にいるほうが、あたしは楽しいから」
「…そっか」


言葉とは裏腹な表情であたしを見つめる。
そんな目で見てほしくなくて、あたしはただ微笑むことしかできなかった。
ほんとうなら嬉しいはずの言葉がやけに胸に染みて、気の利いた一言も返せな
かった。
33 名前:-you are my friend-sideK 投稿日:2009/06/20(土) 10:39


そうだよ。
あたしと愛理は幼馴染みで、たった一人の親友だから。


愛理が泣いた時はどこにいても駆けつけて涙を拭ってやった。帰り道に自転車
で二人乗りをしながら河川敷を走って大声で叫べば、嫌なことすべて忘れられた。
いつだってあたしのなかで、愛理は一番の存在だから。

傍にいられるなら、このままでいいじゃないか。
もうひとりのあたしが囁いてる。

好きだなんて、知られたくない。

きっと、今までのことが嘘になる。壊れやすいこの距離を縮めることはできな
いから、だからあたしは―
34 名前:-you are my friend-sideK 投稿日:2009/06/20(土) 10:41


「愛理」
「ん…?」
「あたしも愛理と同じだよ」


それくらいのことしか言えなくて、帰る支度にとりかかった。
横で愛理が何かを呟いたけど、校内の下校放送に混じってよく聞こえなかった。
間違いじゃないなら、口元の動きできっと愛理はこう言った。


『ウソツキ』って。


「愛理、いま」
「…なんでもない!早く帰ろ、お腹空いちゃった」



誤魔化すように笑う愛理の腕をつかんだ。

嘘だって知ってるなら
確かめたかったから
35 名前:-you are my friend-sideK 投稿日:2009/06/20(土) 10:42
いつも隣にいて愛理の全てはあたしの中にあるのに
近づけなくて立ち止まってばかりで
こんなこと、願っても届かないことなのに
36 名前:-you are my friend-sideK 投稿日:2009/06/20(土) 10:43
下校を知らせるチャイムが鳴り、グラウンドにいた野球部がちりぢりに散って
いく。
愛理はあたしから目をそらしたまま時計を気にしていた。


もしこの気持ちが通じたらこの窓から見える風景も、愛理のしょうもない冗談
で笑う日々も
もっともっと、輝くのに
37 名前:-you are my friend-sideK 投稿日:2009/06/20(土) 10:47
いつもそばにいて
きみのぜんぶ知ってるのに
これ以上は近づけないから


あたしと愛理は友達だよ、きっと
38 名前:-you are my friend- 投稿日:2009/06/20(土) 10:49
ノk|‘−‘)<…えと、あのさ
州´・ v ・)<…う?
ノk|‘−‘)<…なんでもない
39 名前:-you are my friend- 投稿日:2009/06/20(土) 10:50
fin
40 名前:みら 投稿日:2009/06/20(土) 10:52
愛理編、栞菜編ともにこんなかんじで。
ほんとはつかずはなれずがあいかんであってほしい。

ちなみに33の「ほとんど毎日〜」の「ほとんど」脳内消去お願いしますorz
41 名前:みら 投稿日:2009/06/20(土) 10:55
>>33です ごめんなさい


レス返し


>>24
ありがとうございます。
栞菜の復帰まで妄想でry

>>25
基本的に片想いが好きです←
更新がんばりますねー
42 名前:三拍子 投稿日:2009/06/20(土) 18:47
更新お疲れ様です。
こういう微妙な関係好きです。ドキドキです(ノ><)ノ
また楽しみにしてます!!
43 名前:みら 投稿日:2009/06/22(月) 00:55
更新します。
べったべたな内容で良ければどうぞ
44 名前:what is this? 投稿日:2009/06/22(月) 00:58

物言わない動物なら、真直ぐに愛情表現を示して懐いてくれる。
たとえば犬なんて典型的だと思う。
構って欲しければぱたぱた尻尾振りながらすりよって、喉元をなでられては喜ぶ。
可愛がっていれば裏切ることはない。餌を与えて散歩をして、たまには一緒に寝たり。
約束された主従関係があれば、犬は絶対に主人を裏切ったりしないだろう。

あたしはそういう犬になりたい。
意味を変えれば今も「屋敷の犬」に変わりはないんだけど。

「有原、お嬢様がお呼びだ」

くい、と人さし指で執事長があたしを呼ぶ。
その顔はとても怪訝そうで、疲れきっていた。
近頃就寝の時間になるとたいてい「こういうこと」になるから、もう慣れっこだけど。


あたしは屋敷の犬
またの名を、執事
45 名前:what is this? 投稿日:2009/06/22(月) 00:58




「お呼びでしょうか、お嬢様」


ぱたん、と扉を閉めてそろそろとベッドへ向かう。
ちょこんとその上に座って眉を下げる表情は、まるで小動物のよう。


「今夜も眠れませんか?」
「んーん、そうじゃないんだけど…」
「何か心配事でも?」
「…えっと、栞菜と話したかっただけ。ごめんね、忙しいのに」

枕を抱いてそう呟く。
あたしの目は宙を泳いだ後、大きな瞳を見つめてにこりと笑った。
46 名前:what is this? 投稿日:2009/06/22(月) 00:59


大きな屋敷に一人きり。そりゃ、寂しくもなる。
おまけに奥様はしばらく家を留守にしているということで、心細いのだろう。
一人で眠るのが不安な夜はこうしてあたしが傍にいて、ゆっくりとその体が休まるまで寝かし付けるのがほぼ日課になっていた。

実際にまだやらなければいけない仕事がいくつか残っている。
それでも、この不安げな瞳で見つめられては断るわけにもいかなくて。

「かしこまりました」

そう返事をすると、嬉しそうに笑う貴女が好きだから。

47 名前:what is this? 投稿日:2009/06/22(月) 00:59


名前を呼ばれる度に、胸の奥がうずく。
あたしにとってこの人は、何よりも大切で特別な存在。

でもこの距離は、縮まらない。
繋がれた手を握りかえす事すら、禁忌であると分かっているから。

48 名前:what is this? 投稿日:2009/06/22(月) 00:59



「お嬢様、そろそろお休みになってください」
「えぇー…もう?ね、あと少しだけ!」
「私は構わないのですが、お嬢様は明日も学校がありますし。ね?」
「うー…」
「それに…お嬢様がお休みにならないと、私が執事長からお叱りを受けてしまいます」
「そ、それはダメ!」


すがるように腕を掴む力は弱々しいけれど、瞳は強く訴えている。
お嬢様があまりにもあたしに懐くので、他の執事から良く思われていないことをお嬢様も知っている。
あわよくばこうして会話をすることすら禁じられてしまうかもわからないということで、それを寂しがっているのか、不安げな表情で俯いてしまった。

冗談のつもりで言ったのに。
どうしてこうも愛しいんだろう、このひとのことが。

床にひざまずいてその顔を覗き込むと、今にも泣き出しそう。
安心させる方法はただひとつだった。
49 名前:what is this? 投稿日:2009/06/22(月) 01:00



「冗談です。お許し下さい、愛理お嬢様」
「…ばか」
「ほら、可愛いお顔が台無しですから。笑ってください」


あたしはこうして禁忌を犯していくんだろう。
あたたかな頬に触れて、繋がれていた指を絡める。

50 名前:what is this? 投稿日:2009/06/22(月) 01:00

「…栞菜」
「何でしょう?」
「敬語、やめて」
「…いえ、それは」
「愛理って、呼んで」

こんな時、飼い犬はどうするべきなんだろう。
尻尾を振って、素直に甘えられたらどんなに幸せか。
引き寄せられた体ごと抱き締めて、壊してしまいたくなる。

息を飲んだ。鼻先にぶつかる吐息を感じながら、目を閉じる。


「…愛理」

これ以上のひとは、どこを探してもいないから。



51 名前:what is this? 投稿日:2009/06/22(月) 01:01



「…かん、な?」
「…はい」
「ちかい…よぉ」
「…あああ!すみませんっ、あの、えっと…」

ふと我に返ると、唇が触れそうなほど近い距離にあたしはいた。

お嬢様は恥ずかしそうにあたしの肩をたたいて、離れてと促す。
それでも、絡めた手が離れることはなかった。

52 名前:what is this? 投稿日:2009/06/22(月) 01:01



「…誠に、申し訳ございません。あの、そういうつもりじゃ…」
「…だいじょぶだよ。栞菜だから、へーき」
「でも、あの…呼び捨てなんて、無礼なことをしてしまって」
「んーん。 嬉しかったよ、栞菜」


その笑顔はあたしを喜ばせたり、切なくさせたりもする。
今はそのふたつが混ざりあって重なりあって、答えを出せずにいるけど。

繋いだ手から伝わるあたたかな何かを信じることしか、今はできないから。
それが唯一の希望で、このひとを愛する証拠になっている気がする。


たとえあたしが、この屋敷の「犬」であっても、





53 名前:what is this? 投稿日:2009/06/22(月) 01:07
州´・ v ・)<…かんなぁ(ふとんから顔をちょこんと出す
ノk|‘−‘)<何でしょう?
州´・ v ・)<…おやすみ(手ぎゅって握ってくる
ノk|‘−‘)<?! あ、あの…手を…
州´・ v ・)<あとちょっとだけぇー…





結局栞菜の手を握ったままお休みしましたとさ
ノk|‘−‘)<一睡も出来なかったんだかんな!


fin
54 名前:みら 投稿日:2009/06/22(月) 01:08
たぶん両思いだけど身分の差とかでうだうだしちゃうんだよ
頭の中は常にありがち+あり得ない妄想でいっぱいです
55 名前:みら 投稿日:2009/06/22(月) 01:10
レス返し。

>>42
いやいや三拍子さんのスレいつも拝見しております。
あいかん、やじうめ共に楽しみにしてます。
56 名前:みら 投稿日:2009/07/12(日) 09:54
お久しぶりです
栞菜の脱退でちょいとショックを受けております
すぐに更新できたらいいのですが、しばしお待ちを…
57 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/12(日) 12:57
ぜんぜん待ちます。

ショックデスよね(┳◇┳)


あいかんは自分の中でゆずれないので応援させていただきます。
58 名前:みら 投稿日:2009/07/12(日) 20:20
とりあえず栞菜のさよなら小話を後日あげたいと思います
脱退という形で非常に悲しいのですが、栞菜が決めたことなら
応援していきたいです

愛理にもエースとしてさらに飛躍してほしいものです
とりあえず、残りのメンバーを精一杯応援していくことしかできないですね

59 名前:三拍子 投稿日:2009/07/12(日) 21:07
コメントありがとうございますm(__)m
お互い辛いですが、頑張って下さい。
60 名前:みら 投稿日:2009/07/12(日) 22:56
今夜更新してしまいます
思いのたけ、と言いますか…まあ所詮妄想ですが
あいかんは不滅です
61 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 22:57

「ゴメン」

もっと気の利いた言葉があったと思う
でも口をついて出たのはたったの三文字

たったそれしか言えなくて、沈黙になった室内に溜め息と不穏の色がたちこめた
マネージャーさんはあたしたちより暗い顔をして頭を垂れている
舞美ちゃんが「7人だけにしてほしい」と神妙な口調で頼み込んだ

7人
あたしもその中の1人であるということを噛み締めながら、それぞれ顔を見合わせた
みんなは悪くないのに、やたら申し訳なさそうな顔をしていて、余計に心苦しかった

62 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 22:59

「…あのさ、ほんと、ゴメン」


何度も同じような言葉を呟くあたしに、愛理が目に涙を溜めてあたしをじっと見ていた

あたしが数年間此処にいることが出来た理由は
他でもない君がいたからなのに

裏切った
逃げた
怖かった
自分を取りまくこの異世界から抜け出して、もといた場所に戻りたかっただけ

63 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 22:59

許してくれだなんて思わない
早くあたしのことを忘れてライブやイベントに励んで欲しい
ただそれだけだった
64 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:00

舞美ちゃん
えりかちゃん
なっきぃ
千聖
舞ちゃん


――愛理



「泣かないで」


無理を言った
もうその涙を拭うのは、あたしの役目じゃない

65 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:00

最後まであたしは無責任だ
あたしのせいで辛い思いをさせた
我慢をさせた
無理をしてでもステージに立たせてしまった


あたしはずっと、君を泣かせばかりだった

66 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:02

「っ―愛理!」



会議室から飛び出して行った愛理をただ呆然と見送った

千聖があたしの肩を強く掴んだ
その目は怒りに満ちていた

あたしに対するものなのか
はたまた、あたしたちの生みの親である事務所に対するものなのか分からない
なっきぃはそれをなだめて、穏やかにあたしの背を押す
舞美ちゃんもえりかちゃんも舞ちゃんも、うつむいていた顔を上げてあたしを見た

67 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:02

「栞菜、行きなよ」
「…でも」
「愛理は…栞菜じゃないと、ダメだと思う。
栞菜だって…もうあたしたちとは関係ないなんて、思ってないでしょ?」


なっきぃの言葉に、それまで一人我慢していた千聖がわあわあと泣き出した
舞ちゃんが小さく笑ってそれを拭ってやる

あたしが以前、愛理にそうしたように

68 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:03

もう逃げない
これが最後なんだから
69 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:04

「あーいり」


楽屋の片隅で縮こまっている愛理におどけた調子で声をかけた
それがいつものあたしだった
楽屋は飾らずにいられる場所だ
皆ともフツウの女の子同士でいられるから、好きだった

涙が渇いた代わりに声が枯れてしまったのか、愛理は返事のかわりに鼻をすすっていた
情けないくらい下がった眉がおかしくて思わず吹き出すと、むっとしたような顔でそっぽを向かれる
70 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:04


あたしは明日から此処にいない
なのにそんなことこれっぽっちも実感できないのはあたしだけじゃない、愛理もみんなもそうだ

でも
これまでもこれからも、間違いはひとつもない
そう思えることだけは確かだから

71 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:05

「あいり」
「…?」
「あたしと約束しよう」
「…なに、それ」
「まぁ、聞いてよ」


にこにこ笑ってるあたしを不思議そうに見ている愛理を他所に、白くてすべすべしたその手をとって深呼吸した


本当は忘れて欲しくなんてない
だからこの瞬間すべてをひっくるめて、君に覚えていてほしい

72 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:06

「ひとーつ」
「…」
「あたしがいなくても一人でトイレに行けるようにすること」
「なっ…い、行けるよそのくらい!」
「うそ、ホテルで夜中にあたし起こしたの誰さ」


にひひ、と笑って額を小突くとしゅんとしてあたしの手を握り返した

73 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:07

「ひとーつ、ギャグセン上げること」
「えー、難しいよぉ」
「いやいや、今のレベルが低すぎるだけだって」

君はやっと笑った
最初に会った時のように、無邪気な子どものような笑顔で

あたしはその笑顔が好きで、喜ばせたくて笑わせたくてずっと一緒にいた

74 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:08

「あとひとつ…これで、最後だよ」

伝えたいのはこれっぽっちのこと
あたしがずっとずっと願って止まない大切なこと

愛理は首をかしげてあたしを見ていた
涙が邪魔をしてかろうじてそれが見えただけで、どんな表情をしていたのか分からなかったけど



「この仕事、辞めないで」

違う道を歩く君を、あたしはずっと見ているから

愛理はあたしの涙を指先で拭って力なく笑った
何度も何度も強く頷いて、あたしを抱きしめた

75 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:08

「もうあたしはいないけどさ…愛理には歌っててほしいんだ、ずっとずっと」
「…ん」
「絶対、約束だかんね」


愛理は笑った
あたしも笑った
指切りをして、もう一度抱き合った

その約束がある限り、あたしたちは変わらない
あたしも愛理も皆も
きっと後悔もするし、寂しさのあまり真夜中に電話なんてしちゃったりするんだろう
でも、躊躇ったりするのはこれまでだ
76 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:09

君がくれたもの

7人だから得られたもの
7人だから出来たこと
7人で1つだったこと

全部ぜんぶ、あたしの宝物になるから

77 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:11

good-bye,my friends

78 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:12
79 名前:さよならのあと 投稿日:2009/07/12(日) 23:13
 
80 名前:みら 投稿日:2009/07/12(日) 23:16
誤字脱字等ありますがもうスルーして結構です←
変換お願いいたしますorz

>>57
参っています精神的に色々と←
ですが創作は続けていけたらなと思っているのでがんばります!

>>58三拍子さん
コメントありがとうございます。
あっち向いて〜の完結まで、ひとまずお互いがんばりましょう…
カプヲタの妄想から始まったものの、私も栞菜推し…というか7人みんな大好き
なので残念で仕方ないです
81 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/13(月) 01:28
泣けてきました。

栞菜の脱退を知った時は、頭が真っ白になって
涙さえ出てこなかったのに…。
これを読んで、なんか自分の中で気持ちの整理が少しついた感じです。
(気持ちの整理をする準備ができたという方が正しいかもしれませんが)

みらさん、ありがとう!

これからも℃-uteが活躍することと
栞菜がこれからの人生を
笑顔で過ごせることを願っています。
82 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/15(水) 20:10
この作品を読んで、ようやく前を向けた気がします
ありがとう
83 名前:みら 投稿日:2009/07/15(水) 23:23
>>81
普通の女の子に戻りたいとう気持ちは恐らく栞菜だけではなく
メンバー皆が一度は思うことでしょう
当たり前の生活が彼女達にとってどれだけ貴重なのか、考えさせられましたね…
しかし、新生℃-uteをこれからも変わらずに応援していきたいです
拙い妄想を読んで頂いてありがとうございました

>>82
DVDで栞菜の笑顔を見る度に、辛かったんだろうなぁと思ってしまいます
それでも今まで頑張ってきたことに「ありがとう、お疲れ様」と伝えたいですね
私もこれを書いて気持ちの整理がついた気がします
メンバー皆がこれからも笑顔でいられますようにと願うばかりです…


さて、栞菜がいなくなってしまったわけですが
このスレは続行していくつもりです
今までとはまた違った愛栞が書ければいいかな、と思えるようになりましたし
新しい変革を迎えた℃-uteの、新しい小説が書けるように努めたいです
のろま更新になるとは思いますが今後ともよろしくお願い致します
84 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/18(土) 05:34
小説の中だけでも愛栞見たいので嬉しいです!!
85 名前:みら 投稿日:2009/07/19(日) 08:11
おはようございます
前回の「さよならのあと」の続編とでも言いましょうか、
一応愛理視点のアナザーストーリーを書いてみました。
拙い文章ですが、どうぞ。
86 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:15
世界が変わってしまったのように、明日が見えない

ゴメンね栞菜
あたしはまだ、前に進めずにいる

87 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:16


「栞菜が決めたことなので、これからは6人で――」


舞ちゃんはそっと横目であたしに目配せをした
大丈夫だよ
そう言いたげだった
幸いにもあたしは笑顔のままイベントに臨むことができたし、ファンの人達も温かく迎えてくれた

本当は納得なんてしていないんだろう
怪訝な顔をして何か囁き合う一群れと目が合った

88 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:18

でも、そんなのあたしも舞ちゃんも変わりない
たかだか数日で、あのことを振りきれるわけないんだから


89 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:20


あたしは、最後に栞菜と約束した
その曇った目から視線を逸らすことなんてできなくて、あたしは強く頷いた

絶対に破ったりしない
そう自分に誓った
90 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:21


歌うことが何より好きで
ずっと夢だったから
あたしは簡単に諦めたりしない
けど、それは栞菜も同じだったはずなのに
本当はあの時、栞菜を責めたくてしかたなかった自分がいた

行かないで

そう言えたら良かった

91 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:23


「愛理、先行ってるね」


楽屋に戻ると脱け殻のようになったあたしに舞ちゃんがさりげなく気遣ってくれる
そんな優しさにすらうまく応えられない

こんな自分が大キライで、世界で一番可愛くない


92 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:25


あたしは栞菜のように大人になれなかった
だから分かってあげられなくて
話も聞いてやれなかった
一番近くにいて、栞菜のことは自分が一番理解しているなんて自惚れてただけだった

ばかみたいだ
いなくなってから分かる
あたしにいつもパワーをくれたのはほかでもない
栞菜だけだった

93 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:26

そうやってふさぎこんでいても仕方ないのは分かっていても、舞ちゃんのあとを追いかける気にはなれなかった
やけに広く感じる楽屋に一人ぽつんといるだけでもみじめに思えてきてしまう
すると、テーブルに置いてあった携帯がぴかぴかと光りだした
94 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:27
それが誰からの着信か、あたしにはすぐに分かった
震える手でそれを開いて、そっと耳に押しあてる


『やっほー、愛理ぃー』


着信ランプで誰だか分かるなんて、自分でも恥ずかしくなる
それは懐かしい、優しくあたしを呼ぶ声だった
悪戯っ子のような口調でそう言うと、雑音に紛れて栞菜の声がかきけされるのが煩わしかった

95 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:29



「…かん、な」
『うん、栞菜だよ。愛理、元気なくない?具合でも悪い?』
「んーん、そうじゃなくて…どうしたの?」
『いや、今日イベントだったなって思い出して。愛理、ちゃんと喋れた?』


高らかに笑う栞菜とは対照的に口ごもっているあたしは、何を話せばいいか分からなくて栞菜のペースにのせられたままぼうっとしていた

96 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:30

学校のことや家族のこと
友達のこと、勉強のこと
何ら変わりない栞菜の口調が、やけにあたしを苛立たせた


97 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:32



『…愛理、どした?』
「なんで…」
『え?』
「栞菜は…平気なの?」
『…あのねぇ、愛理、』
「どうしてあたしに電話なんかするの」



あたしの一言に、栞菜は黙って小さく溜め息を吐いた
あたしは最低だ
見送るって決めたのに、応援すると決めたのに
心の奥底で叫んでる
悲しくて寂しくて、栞菜を傷つけてしまいたいような衝動に駆られた
98 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:33

ゴメン
あの時栞菜は何度もそう言った
でも、そんなのどうでもよくて
あたしはただ、栞菜と一緒に歌いたいだけなんだよ

99 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:36




『…愛理、一人でトイレ行けるようになった?』


こんなときでもふざけるなんて、やっぱり栞菜は栞菜のままだ


「何言って…」
『あたしがいなくても、愛理は愛理で頑張らなきゃ』
「そんな、の…分かってるよぉ」


優しい声が耳にひびく
泣きそうになるあたしをなだめるように語りかける栞菜は、どこか落ち着いてた
100 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:37

愛理はコドモだから
そう言われて、ゴメンと一言呟いた



『あたしだって…寂しくて、皆に会いたくなる。
だからこうやって、電話なんかしちゃってるし』

車のクラクションにかきけされてよく聞こえなかったけど、多分栞菜はそう言った
外の喧騒であたしの泣いている声が聞かれないように、そっと願った


101 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:39



『あたし、愛理の歌好きだよ』
「…え?」
『…聞かせてよ。隣にいられなくても、愛理の歌、ずっと聞いてたい』


約束したでしょ?
あたしはずっと、忘れないから



栞菜はそう言って笑っていた
皆といた時も、こんな風に、明るく
それでもあたしは涙が止まらなかった
栞菜は前を向いて歩いている
なのにあたしは立ち止まったまま、ひとりで道に迷ってた
102 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:40
あたしの夢はまだ終わってない
栞菜がたどってきた道をこれからも歩かなきゃいけない

栞菜のいないこの道を、6人で
103 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:43



『じゃ、バイバイ』
「えっ、ちょっ」
『あんまり話してるとさ、あたしまで泣いちゃいそうなんだもん…だから、もう切るね』


あたしが泣いていることはやっぱり見通されていた
栞菜はふっと笑って、もう一度あたしにさよならを告げた
あたしはそれが名残惜しくて、電話が切れたあとも携帯を握りしめたまま栞菜のことを考えていた

でも、不思議と寂しさは薄れていた
栞菜は栞菜で、あたしはあたし
あたしには、此処しかない
104 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:44



「…ありがと、栞菜」


直接顔を合わせても、電話でも言えなかった言葉をひとり呟く
それでもきっと、伝わってるよね?


105 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:45

君の生きる世界が、どうか悲しい歌で溢れないように


good-luck,my friend


106 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:46

107 名前:君へ 投稿日:2009/07/19(日) 08:47

108 名前:みら 投稿日:2009/07/19(日) 08:50

栞菜の未来に幸多からんことを願います
電車内で一気に書き上げたのですが
あまりにも精度がなさすぎる…

>>84
あいかんこれからも書いていきます!
ありがとうございました。
109 名前:みら 投稿日:2009/07/25(土) 15:43
更新します。
今回はちょっと違った雰囲気のあいかんを。
110 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:45



「愛理さ、また背伸びたよね」
「え?そっかなぁ」
「うん。ちょっとだけね」
「…栞菜が縮んだんじゃない?」
「うるっさいな!気にしてんだからね!」


栞菜の手が伸びてきて、ぽんぽんと頭を撫でられた。
悔しそうなその表情が可愛くてわざと茶化したら、もっと拗ねた。
それが自然と繋がれた手にドキドキしたせいだなんて、栞菜は知らないだろうから。

栞菜の身長があたしよりも高かったら、この関係は少し違っていたかもしれない。
栞菜に触れられた箇所を指でなぞりながら、帰り道にそんなことを思った。

111 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:46






「へぇ、一緒に帰ったんだ」
「うん。部活早く終わったから、待っててくれてたみたい」
「愛されてんじゃん」
「そういうんじゃないよ、多分」
「なんか、じれったいよ。愛理と栞菜って」

みやはあたしの手にあったチョコをひょいと自分の口に放り込んだ。
もごもごとそんなことを言いながら、呆れ顔であたしの頭をわしゃわしゃとする。
栞菜が昨日、あたしにそうしたみたいに。

あたしにとって、栞菜は他の誰とも重ならない、特別な存在だ。
でもきっと栞菜はそうじゃない。
みやは違うっていうけど、あたしはそう思うことにしてる。
だってそれが本当だったとき、凄く辛いだろうから。
112 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:47

こうやって昼休みにみやに相談をしている間も、あたしの知らない栞菜が学校のどこかにいる。
一緒にいても知らないことだらけのあたしと栞菜は、はたから見れば本当にただの後輩と先輩ってだけなんだ。
敬語を使わずに話せたって超えられない壁がある。いくら仲が良くたって、会いたいなんて言っちゃいけないことくらい、あたしにだって分かってた。


113 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:48

そんなとき、みやはいつも不満そうな顔をする。
いつもポジティブなあたしが栞菜のこととなると悲観的になるのが気に食わないみたいで、大抵ため息を吐いては時々しかめっ面をする。
それでもチョコの代わりに手作りのクッキーを渡してくるみやは、やさしかった。

「あたしが栞菜だったら愛理と付き合いたいと思うよ」
「…そう言われても。今の、りーちゃんに聞かれたら大変じゃない?」
「いないから言ってるんじゃん。あ、梨沙子に言わないでよ?」
「分かってる」

自分で言ったくせに慌てているみやがなんだか可愛くて、二人してくすくす笑っていた。
こんなこと話せるのはみやしかいない。だって、小さいころからこんな感じだったから。
みやはあまり感情を表に出さない。
そのせいでクールに見られて一匹狼になりがちだから、大抵こうして昼休みは一緒に過ごしてる。
大勢でいるのが好きじゃないって言うけど、本当は素直になれないだけなんだと思う。
唯一みやの心の扉をぶち開けたのがあの梨沙子だっていうのも、なんだか不思議な話だ。

114 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:49
ま、たぶんあたしも人のこと言えない。
肝心なことはいつだって口に出せない。栞菜の前だと、尚更だ。

115 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:49




「クッキーご馳走様。おいしかったよ」
「どういたしまして。じゃーね」

みやはあたしに手を振って自分の教室へ戻っていった。
なんだかんだ言って、最近みやの笑顔がやわらかくなった。
それも梨沙子のおかげなんだろうか。デコボコした二人だけど、お似合いだと思う。

116 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:50

「…いいなー、みや」
「何が?」
「ちょっ…な、何で栞菜がここにいるの?!」
「外見てたら中庭に愛理と…雅先輩いたから、来てみた」



突然背後から栞菜が声をかけてきて、持っていたクッキーの袋を地面に落としてしまった。
栞菜はいつもいつも神出鬼没だ。あたしがぼうっとしているときに限っておどかしてきたり、からかってきたりする。
でも、今日はいつもと様子が違うのがすぐに分かった。

すでに遠くなったみやの背中をじっと見て、つまらなさそうな顔をしている。
するとあたしの手にあったクッキーの袋を取って、確認するまでもなくそれを食べ始めた。

117 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:50

「あ、おいしい」
「…それ、みやが作ったんだって」
「へー。意外と家庭的なんだね、あの人」
「うん。昔からよく作ってくれるよ」
「……ふうん」

クッキーを食べて機嫌が良くなったと思えば、あたしが口を開くとまた元の表情に戻った。
あたし、栞菜に何かしちゃったっけ。
よくよく記憶をたどってみても思い当たる節はひとつもなくて、あたしの横に立ったまま無言でクッキーを食べ続けてる栞菜をそっと見上げた。

そういえば、前にも似たようなことがあった。
数日前の朝、みやと一緒に登校している途中、自転車通学の栞菜と校門で出くわしたときのこと。
珍しく遅刻せずに来た栞菜におはようと声をかけたつもりだったのに、栞菜は目の前のあたしに目もくれずみやを見ていた。
どうしてか分からない。みやに尋ねても、苦笑いしてちゃんと答えてはくれなかった。

118 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:51



「…栞菜?」
「んー?」
「みやのこと、嫌い?」
「違うよ。…ちょっと妬けただけ」
「…え?」

空になった袋をポケットに突っ込んで、栞菜がやっとあたしの隣へ腰を下ろした。
ひざにあった手を握られて、栞菜の言った言葉の意味がようやく理解できた。
栞菜はいつも自分の教室からここを眺めてたことをあたしは知らなかったし、多分みやだって気付いていない。

みやに妬いてたってこと?
確かめるようにそう尋ねると、恥ずかしげもなくうんと栞菜が頷く。
あたしにはそれが嘘みたいで、栞菜に握られた手を強く握り返すことしかできなかった。
自惚れじゃないけど、それだけのことがうれしくて堪らなかった。

119 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:51

「なんか、雅先輩がうらやましいっていうかさ」
「…みやが?」
「幼馴染っていうのもあるし。あたしも愛理の先輩だけど、それとはまた違うじゃん」
「でも…そんなの、知らなかった」
「…あのね、愛理」

繋がっていた手を解いて、栞菜があたしの頬を撫でる。
そこに触れられたのはこれが初めてで、栞菜はじっとあたしの目を見つめていた。
まっすぐなその瞳はどこかみやに似ていて、小さいころあたしの憧れていた存在そのもののようだった。
そういえば、あたしの初恋はみやだったんだ。

この瞬間が夢で終わらないように、あたしも栞菜の目をまっすぐ見つめていた。


120 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:52



「あたし愛理のこと好きなんだ」


さらりとそう言いのけて、あたしの頬を指でつつく。
その言葉だけで、今まで溜め込んでいた寂しさや不安が取り除かれていくようだった。

「だから愛理が他の人といるだけでイライラしてたし…雅先輩には悪いけどさ」
「…今の、嘘じゃないよね?」
「そんなわけないでしょ。あたしは愛理しか興味ないもん」
「…っ」

恥ずかしげもなくそう答える栞菜に、あたしはやっと確信が持てた気がした。
思えば誰かに好きと言われるのもこれが初めだ。
みやに対して抱いていた恋心とは違う何かが栞菜にはあって、あたしはずっとそれに焦がれ続けていた。

121 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:52

大勢の中の一人だなんて、それだけじゃ足りなくて
栞菜のことを一番知りたいと思ってるのはあたしなんだよって、ずっと伝えたかったから。

122 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:52


「愛理だって、あたしのこと好きなくせに」

ほんとうは栞菜も怖かったんだって、重なった手の温度から伝わってくる。
そうだよ、って精一杯の勇気を出して答えると、目を丸くして笑ってくれた。
こんなに好きなんだって思い合えるのは、ずっとこうなることを望んでいたから。

昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴って、栞菜はちょっと怒ったような顔であたしの手を引いてずんずん歩いていく。
後ろから見えた栞菜の頬はあたしと同じで、赤く染まっていた。



123 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 15:59

ノk|‘−‘)<…あたしは雅先輩にはなれないけどさ、がんばるから!
州´・ v ・)<(何を…?) いーよ、栞菜は栞菜だもん…(後ろからぎゅー

ノk|‘−‘)<あああああもう!あいりのばか!


124 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 16:05

ノノl∂_∂'ル<…あの二人、やっとくっついたなぁ
州*‘ -‘リ<みや、あたしにクッキーは?
ノノl∂_∂'ル<あーはいはいあとでね(頭ぽんぽん

125 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 16:05
to be continue…
126 名前:ほんとのじぶん 投稿日:2009/07/25(土) 16:05
 
127 名前:みら 投稿日:2009/07/25(土) 16:07
愛理は片想いが書きやすいです。
ていうかこれ、みやあいりじゃ…

ご め ん な さ い


一応りしゃみやverも考えてます
128 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/25(土) 16:46
大好きです!!
なにがって出てくるCPがどストライクです!!!!!
愛栞はもちろんりしゃみやも大好きだし、みやあいりも大好きなんでw
続編楽しみにしてます!!
129 名前:ラビン、ユー 投稿日:2009/07/28(火) 20:37

愛理があたしの家に泊まりにきた日の翌朝、外は生憎雨だった。

早朝に目覚めてカーテンの隙間から空を見上げると、一筋の稲妻が音もなくぴかっと光るのが見える。
はっとして隣で眠りこけている愛理の肩を抱くと、まだ夢の中にまどろんでいたいようで眉間にしわを寄せた。
そんな顔も可愛く思えるのはあたしだからかな、なんて自惚れながらむき出しになった細いその肩にキスを落とした。

130 名前:ラビン、ユー 投稿日:2009/07/28(火) 20:40

ごごご、と雷の音が聞こえるようになるころにはあたしは二度目の睡魔に襲われている最中だった。
次第に遠ざかっていく視界と意識を手放す手前、あたしの右側でごそごそと何かが動いているのが分かった。シーツを体に巻き付けて、そって空の様子を伺っているようだった。

その時、ドガーンと空に戦慄が走る。

131 名前:ラビン、ユー 投稿日:2009/07/28(火) 20:41


「ひゃっ!」
「…んぁ、愛理…」
「雷。ねぇ栞菜、雷だよぅ」
「分かってるよ…」


その悲鳴に頭が痛くなって、あたしはむくりと起き上がる。
縮こまって不安げにする愛理が両手を伸ばしてあたしの体に引っ付いて、雷が小さく鳴るたびに情けない悲鳴をあげる。

そんなに怖いかなぁ。
あたしは幻想的で好きなんだけど、と言うと信じられないといった様子であたしの肩に顔をうずめる。
少し冷えた白いその肌をあたためるようにさすっていると、愛理とは対照的にあたしのほうがうとうとしてきた。
132 名前:ラビン、ユー 投稿日:2009/07/28(火) 20:44

昨晩は遅くまで愛理とお楽しみをしていたこともあって、今のあたしには雷より睡眠に気がとられている。そのことを察したのか、愛理はゆさゆさとあたしの体を揺らして寝させまいとする。
ひとりで雷雨の音に包まれるのが怖くて仕方ないようだった。


「ね、栞菜、起きて」
「むり…ちょっとだけ寝させて…」
「やだ、こわいよ」


泣きそうになるもんだから頭を撫でてやっても、愛理は首を横に振って駄々をこねる。
次第に雨足がひどくなる外の景色はとてもくすんだ色をしていて確かに不気味だった。
133 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/28(火) 20:46


「ねぇ栞菜ってばぁ!」


我慢できなくなった愛理が目を閉じたあたしの上に覆い被さる。
あたしはもう一度うすくまぶたを開いて愛理を見上げる。

不安げな瞳の中にはあたしが映っている。
それに気付く前に、何も身に付けていない愛理の上半身が視界を洗脳した。

「…あいり、風邪引くよ?」
「え…あ、え?わ、ちょっと!」
「朝からサカってるねぇ」
「ちがう!」


我に返った愛理はあたしの腹にかかってたタオルを胸元まで引っ張って、耳まで赤くしてぱしんとあたしの手を叩いた。
あたし、何もしてないのに。
134 名前:ラビン、ユー 投稿日:2009/07/28(火) 20:48

ことが終わったあと、疲れてすぐに寝てしまったせいで朝になっても愛理は素っ裸のままだった。
くすくすと笑っているとあたしに背を向けて、愛理が下着を身につけようとしたその時、落雷の音がひびいた。


それは愛理の悲鳴と同時だったかもしれない。
先に空に閃光が走ったのを見て、振り向いてあたしに飛び付いてきた体を仰向けになったまま受け止めた。

135 名前:ラビン、ユー 投稿日:2009/07/28(火) 20:50

「愛理、苦しい」
「だって、いま!」
「平気だって。家には落ちないよ」
「落ちるかもしんないじゃん」
「あのね、雷に打たれる確率なんて、宝くじにあたるより低いんだよ」
「…それほんとなの?」
「うそだけど」


鼻先を愛理の額にくっつけてにやにやしながらあたしがそう言った瞬間、ばしんと愛理に肩を思いきり叩かれた。

あたしも虫やお化けは大嫌いだけど、愛理ほどではないと思う。
下着もそっちのけであたしにしがみつく愛理はまるで子どものようで、背中に腕を回して抱き寄せた。

「これなら怖くないでしょ?」

愛理とあたしはぴったりとくっついて、少しの隙間もないくらいにベッドの上に横たわる。
すると目を閉じて、ちいさな声であたしの名を呼んだ。
136 名前:ラビン、ユー 投稿日:2009/07/28(火) 20:52


「…ありがと」
「うん。お礼にキスしてくれてもいいよ」
「なにそれ。栞菜がしたいだけじゃん」
「愛理はしたくないの?」

鼻と鼻をくっつけ合って、唇が触れそうな距離であたしは囁く。
右手は愛理の頬に、左手は長くてきれいな髪に添えながら。


「…したい」


そう言った愛理の唇にキスをした瞬間、空がぴかっと光って唸り出す。
愛理は悲鳴の代わりにとびきり甘い声を出して、あたしと一緒にシーツの中へ沈んでいった。

137 名前:みら 投稿日:2009/07/28(火) 20:55
昨日の雷雨を思い出してガーッと即興で書きました。
愛理が机の下にもぐってるのを想像してもらえばいいかとww
138 名前:みら 投稿日:2009/07/28(火) 20:56
>>128
ありがとうございます!
りしゃみやは次回更新になるかと…
レスありがとうございました。
139 名前:みら 投稿日:2009/07/28(火) 20:58
>>133タイトルミスです
お目汚しすみませんでした
140 名前:みら 投稿日:2009/08/05(水) 18:39
性懲りもなく暗い話でごめんなさい
更新します
141 名前:turning point 投稿日:2009/08/05(水) 18:41

肩にもたれかかった愛理の頭を撫でて頬を突くと、照れたように笑って腕を伸ばしてくる。
愛理は遊び疲れて眠たげな瞳を揺らして、あたしの体ごとベッドに倒れた。
カーテンの隙間から覗く満月が綺麗で、胸元で静かに呼吸をする愛理の背をぽんぽんと撫でながら、漏れてくる光を浴びて目を閉じる。
ぐるぐると頭の中に巡るのは遊園地ではしゃぐ愛理の姿と、おそろいで買った色違いの携帯ストラップのこと。
二人で撮った写真を早速携帯の待ち受けにしたあたしに倣って、愛理も同じようにそうした。

「来年もまた行こうね」

眠ったと思った愛理があたしの胸でそう言った。
重い体を起して隣のベッドに移るよう促すと、首を振ってあたしの横に倒れる。
しかたなくその体を抱きしめるようにして再び目を閉じた。

この日のことを忘れてしまわないように
あたしが愛理と過ごした時間を、永遠に記憶するために




142 名前:turning point 投稿日:2009/08/05(水) 18:42




「栞菜、また明日ねー」
「うん、バイバイ」


平穏な日々。
あたしが求めていたものは、こんなにも鮮明に目の前に広がっている。

友達は増えたし人目も以前ほど気にならなくなった。
というか、気にしても仕方がない環境になった、と言ったほうが良いのかもしれない。
友達に手を振って地元の駅で下車すると、電車は警笛を鳴らして出発して行った。
夕暮れてオレンジ色に染まった空の色がとてもきれいで、あたしは暫くその場に立ち尽くしていた。
降りたホームからは、昔どこかで見たような景色が広がっていた。
あの時、あたしは此処よりもっと遠い場所にいて、違う世界を生きていた。
今いる友達はその世界にはいなくて、この目に見えているものすべては違う色をしていたような気がする。
143 名前:turning point 投稿日:2009/08/05(水) 18:42


きっとこの感覚は錯覚じゃない。
そう思えたのは、オレンジ色の夕焼けにあの子の笑顔を思い出したから。

点滅する遮断機の赤色を見つめながら、手のひらで唸る携帯を強く握りしめた。

どうしようもないくらい好きだった
もう届かない存在だと気づいたのは、あたしがこの世界に戻ってきてからのこと
全部遅すぎた
あたしの決断もこの想いを自覚したのも、あの日見た空を懐かしく思うことも

144 名前:turning point 投稿日:2009/08/05(水) 18:43

電車が通り過ぎて遮断機が開く。
行き交う人の中に紛れて肩をぶつけながらのろのろと顔を上げると、あたしとは違う制服を身につけた同年代の子達とすれ違った。
身なりも使う言葉も大して変わらない。でもどこかで引っかかる。

あたしは、この子達と同じ女の子になれたのかな。
誰からも「普通」の女の子だって見てもらえるのかな。

145 名前:turning point 投稿日:2009/08/05(水) 18:43

震える携帯を耳に押し当てて、周りの雑音から逃れるようにして雑踏を潜り抜けた。
オレンジの夕焼けを背中に浴びて蒸し暑い夏の匂いが香る。

「あーもしもし、愛理?」

ねえ愛理
結局、何も変わらなかったよ
変わったのはあたし自身じゃなくて、この環境だけなんだよ

聞こえてきたのは調子っぱずれな千聖の鼻歌と舞美ちゃんの高らかな笑い声だった。
携帯を代わる代わる奪い合って、ようやく持主の情けない声が聞こえる。
予定よりも早く仕事が終わったようで嬉しそうな声色をしていた。


146 名前:turning point 投稿日:2009/08/05(水) 18:44



『栞菜、そら、きれいだよ』


千聖の笑い声に混ざって掻き消されそうな愛理の声の通りに、空を見上げた。
ホームで見たときは薄明るかった色が、気づけば濃く深い色に変わっていた。

「あたしも見てたよ、ずっと」
『本当?へへ、なんか嬉しい』
「…ほんと、きれー」

君のいる場所からでも、この空が見えてるなんて思ってなかった
あたしにはオレンジに見えている景色でも、もしかしたら向こうの世界じゃ青色に見えてるかもしれない
それでも構わなかった

きれいなものをきれいだと分かち合えることだけで、幸せだよ


『かんなー!元気?久しぶりー!』
『ちょ、今舞がしゃべってんの!ちさと邪魔!』
『あーん、舞ちゃん次うちに貸して!』
『えりさっき代わったじゃん、あたしだよー』






147 名前:turning point 投稿日:2009/08/05(水) 18:45
 
148 名前:turning point 投稿日:2009/08/05(水) 18:45
149 名前:みら 投稿日:2009/08/05(水) 18:48
完全にやっつけですね。
正直最後のところは思いつかなくて台詞締めとなりました。
中途半端なものですがお許しください。
このあとの展開はどうとでも想像してもらえれば良いかと。
こういうネタはもう書くまいと思っていたのですが傷心気味でなかなかそうもいきません。
不快に思う方もいらっしゃると思いますので、栞菜の脱退モノなんてもう見たかねーよって思う方はご注意下さい。
150 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/08/30(日) 00:32
次はいよいよ『はしかん編』が始まるんですねわかります
151 名前:みら 投稿日:2009/09/02(水) 21:51
>>150
彼についてはあまり知らないので書けないかとw
152 名前:みら 投稿日:2009/09/02(水) 21:54



ネタが尽きてきたのでちょっとアンケートでもとろうかと思います。

・りしゃみや
・やじうめ
・あいかん
・みやあいり
・ももあいり


出来たものがお気に召すかわかりませんが、どれかひとつ選んでみてください。
今はどのカプが人気なんでしょうかw






153 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/02(水) 22:31
個人的には最近みやあいり。
ボーノやあぁ!など意外と長いな。
154 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/02(水) 23:32
ももあいりがいいですね。
155 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/02(水) 23:48
あいかん、みやあいりのどちらかがいいです
156 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/02(水) 23:58
やじうめが好きです
157 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/03(木) 00:22
ももあいりハァハァ
158 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/03(木) 00:36
最後だしやじうめかな
159 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/03(木) 01:51
全部好きですけど、りしゃみやかなぁw
でも、みやあいりもィイなぁw
ってかりしゃみやあいりがィイな(笑)
160 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/09/03(木) 04:51
どれも好きだけど、やじうめが一番ですかね
161 名前:名無し飼育 投稿日:2009/09/03(木) 07:06
りしゃみや・みやあいりが読みたいです^^
162 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/09/03(木) 07:08
みやあいりはほとんど見た事ないので、みやあいりが見たいです。
163 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/03(木) 15:52
やっぱりあいかんでしょう!!
‥‥でもりしゃみやも見たかったり(笑)
164 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/03(木) 20:19
一番読みたいのは「あいかん」です!!
でもみらさんが書く小説なら、どのカプでも読みたいです(笑)
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/04(金) 02:14
やじうめも読みたいけど…断然あいかん!!
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/04(金) 03:57
みらさんの書くあいかんが好きなのであいかんが見たいです
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/04(金) 08:10
やじうめ。
ご本人がやっつけと表現なさってる、衝動みたいなパワー感が素敵でした。
168 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/04(金) 15:38
それでもあいかんが好きだあああああ!
169 名前:みら 投稿日:2009/09/04(金) 22:39

アンケートにご協力いただきありがとうございました。
予想以上の反響にかなり驚いてますw
あいかんはもはや廃れてしまったのでは、と思っていたのですがそうでもないようなので嬉しい限りです。

意外にもみやあいりがわりと人気のようですが、とりあえずあいかんを先にあげておきます。
もちろんやじうめ、りしゃみやなども用意してありますのでまずはどうぞー。

もしこのスレがいっぱいになってしまった場合には、夢板の「バケツの水」にそのまま投下する
つもりなので宜しくお願いします。
170 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:42


それは多分無意識で、特に何の目的があったわけじゃない。
ただ目の前にいる栞菜の視線や、本のページをめくる指先の動きを目で追っていただけのこと。
それなのに、体の奥が妙に疼く。
じんわりと熱い感覚がこみ上げてきて、読みかけの雑誌も内容が頭に入らない。

テレビを見ながら小説を読むなんて中途半端なことをしている栞菜は思ったより勘が鋭くて、あたしの異変にすぐさま気がついたようだった。
171 名前:dedicate 投稿日:2009/09/04(金) 22:42
テレビのスイッチを消して小説を机に置く。
見上げていた姿がすっと床に降りて、栞菜はベッドの下に跪いた。
指先を握られて、いつもの意地悪な笑みを返される。

「愛理、何考えてたの?」

分かってるくせにその口調はあたしを試しているものだった。
何も言わずに俯くと、追いかけるように頬に手が添えられる。

172 名前:dedicate 投稿日:2009/09/04(金) 22:43

「目がやらしかった、愛理」
「そんなこと、」
「あるよ。今もそうじゃん」

耳元に唇を寄せられて肩をすくめると、跪いた栞菜にぎゅっと体を抱きしめられる。
それは待ちわびていた感覚で、あたしが期待していたものに違いなかった。
それでも栞菜の言葉に素直に肯定することはできない。だって、本当に無意識だったんだもん。

栞菜の細くて綺麗な指が、妙にいやらしく見えて視線が離せなかった。
まるであたしの体に触れる時のようで、偶然それを目にしてしまったせいで体が意思とは関係なく熱くなっていく。
勿論あたしはそういうコトのために栞菜を家に招いたわけでもなければ、こんな感覚に体が支配されることも予想していない。
173 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:44


ただ、好きな人に触れられるよろこびを知ってから、あたしは少し変わったのかもしれない。
よく言う人間の三大欲求のひとつのソレに、今まさにあたしは支配されてしまっている。

174 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:44
人間の本能なんだから仕方ないよ。
栞菜は以前あたしにそう言った。
だから今だってその言葉の通りに、栞菜の指の動きに体中が敏感になる。
ただ抱きしめられているだけなのに、背中を撫でられるだけであらぬ声が出そうになる。
栞菜は静かに笑ってあたしの頬に唇を押し付けた。

「愛理、欲しいの?」

その言葉にあたしが素直に頷くことは滅多にない。
でも、今なら従うことが出来た。栞菜は嬉しそうに笑って、あたしの唇をぺろりと舐める。
唇を割って入ってくる舌の感触にあたしを抱く栞菜の腕を強く掴む。
スカートの中に侵入する手が太ももを這う感覚に、あたしは思わず唇を離した。
175 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:45


「じゃ、ゆっくりしてあげる」


耳たぶを甘噛みされて、胸元のリボンとボタンを外されて徐々に素肌が外気に晒される。
あたしに触れる栞菜の手つきはひどく優しくて、普段のがさつさからはかけ離れている。
栞菜とこういうコトをするような仲になったのはそう昔のことじゃないし、そもそも知り合ったのもごく最近のことのように感じられる。

「あ、いいよシャツ」
「え?」
「着たままで」

全てのボタンが外された後、暗くなった室内でシャツを脱ごうと手をかけると栞菜にそれを制される。
理由の代わりに首筋にキスをされて、栞菜は目を細めて笑う。

176 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:46

「そー言えば、制服でしたことないじゃん」
「…なに?」

シャツを着たままのあたしから下着を器用に取り払って、胸元に舌を這わせて栞菜は言った。
その言葉の意味を理解するのに時間はかからなかった。
学校帰りに栞菜を家に招いたせいで、あたし達二人は制服を着たままだ。
つまるところ、あたしにこれを着せたまま行為に及ぶ気らしい。
それなら裸になるよりよっぽど恥ずかしい気がしたけれど、栞菜の舌の動きに段々意識が鈍くなっていく。
抗議の声を上げる暇すらもらえずに、栞菜は床に跪いたままあたしの胸の突起を舌で弄び続ける。
くすぐったいのにびりびりと走る快感が思考回路を狂わせて、うまく言葉が発せられない。
177 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:47

はやく、早く触って。
栞菜にそう訴えるように、動かない栞菜の右手を催促して握ってみる。
分かっているのかいないのか、栞菜は何も言わずに舌を動かし続けるだけだった。

「んっ…栞菜、ねぇ、」
「んー?」
「さっきから、そこ、ばっか…んっ!」
「やなの?」
「じゃなくて、も…あたし、」

すぐにでも触れてもらえると思っていた場所は自分でも分かるくらいに濡れていて、栞菜もきっとそれに気付いている。
今与えられている刺激だけじゃ満足できないあたしの体が、栞菜を求めていた。
膝が痛くなってきたのか、あたしをベッドに横たわらせて栞菜もその上に覆いかぶさる。
溶けるようなキスをされて、疼いているあたしの下半身に栞菜がやっと指を這わせる。
178 名前:dedicate 投稿日:2009/09/04(金) 22:48


「っや、ん!」
「愛理、しーっ」

小さな子どもに注意するように、栞菜はあたしの耳元でそう囁く。
ぞくぞくとする快感にそろそろ声も我慢が利かなくなっているのを、栞菜は感づいたようだった。
焦らすように動く栞菜の指は下着の上を行ったりきたりしているだけで、深く分け入っていくようすはない。

179 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:49



「ね、栞菜、も…はやく」
「何を?触ってんじゃん、愛理のここ」
「そ、じゃなくて、もっとして」
「もっとって、こう?」

下着の中に沈んだ栞菜の指が敏感な箇所を突く。
声にならない声を上げるあたしに、栞菜は満足そうに微笑んでいた。
恥ずかしさも躊躇いも忘れて何度も頷いて見せると、下着を一気におろされる。


「愛理、スカート汚さないようにね」
「だったら、脱がしてよ」
「んー。なんかもったいないから、いい」

正直言って、汚さない絶対の自信はなかった。
悪戯な声色の栞菜はあたしの様子を楽しんでいるようで、あたしの下着をベッドの床にはらりと
落とす。
180 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:50


「これ、欲しいんでしょ?」


指を目の前に持ってきて、ちょんと唇をつつかれる。
返事をする暇も与えずに、その指が奥へずくんと突くように入ってきた。
何の抵抗もなく滑り出す指が待ち焦がれていた快感へ変わって、あたしははしたない声を上げ続ける。
栞菜は構わずに顔をそむけたあたしの頬にキスを落として、愉快そうに次々と愛の言葉を囁く。

あたしには、栞菜のような余裕はこれっぽっちもない。
荒くなった呼吸を整えることも、頭上で囁かれる言葉に返事をすることも出来ない。
ただ考えていたのは、明日も身につけなければならないスカートの安否のみだった。



181 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:51




「なんかムードないよね、愛理」


ことが済んだ後、栞菜に背を向けて一目散にスカートを下ろして汚れを確認した。
怖れていた事態は免れたようで、プリーツに少しシワが寄った程度の被害で済んだことにほっと胸を撫で下ろす。
栞菜は幾分不服そうにしながらベッドに寝そべって、文句を漏らしていた。

「あたしよりスカートが大事?」
「もう、そうじゃなくて」

栞菜は子どもじみた態度で、身なりを整えたあたしの背中に抱きついてくる。
ついさっきまで見せていた意地悪な瞳は消えて、無邪気ないつもの栞菜だった。

182 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:52


「にしてもさ」
「?」
「愛理のやらしー顔見すぎて、こっちまで変になっちゃいそうだった」

頬に手を添えられて、栞菜があたしにキスをする。
その言葉に、あたしが栞菜に行為を催促したことやいつもならば絶対に口に出来ない数々の我侭を言ったことを思い出す。

突如沸いてきた恥ずかしさに、触れられている頬が熱い。
もしかしたら、余裕たっぷりに見えている栞菜でも、本当はあたしと同じように緊張しているのかもしれない。
気のせいかもしれないけど、真顔になった栞菜の頬も赤く染まって見えた。

183 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:53


「ほんとはさ、愛理がおねだりしてくれるの待ってたんだよね」


唐突な栞菜の言葉に、あたしは目を丸くする。
耳元に感じるくすぐったさと栞菜の吐息に、あたしはまた目が眩みそうになった。
やっぱり栞菜には適わない。唇から割って入ってくる栞菜の舌に自分のを絡めながら、そう思った。



184 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:54
185 名前:dedicate to you 投稿日:2009/09/04(金) 22:55
州´・ v ・)<ちょっとえっちでごめんなさい
ノk|‘−‘)<もっと脱がせばよかっry
186 名前:みら 投稿日:2009/09/04(金) 22:59
鈴木さんが最近大人な表情を見せるのでなんかたまらなくなって書いてしまいました。
結局彼女は誘い受け顔だと思います。ええ。

完全に私事ですが、ブログではみやあいりみやあいり騒いでるくせに飼育だとやっぱりあいかんが
書きたくなるものです。
アンケートにご協力いただいた皆様、ご意見ありがとうございました。
そのうちアップすると思いますので、しばしお待ちを。
187 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/06(日) 22:39
ィイと思います!!
188 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/06(日) 23:39
あいかんをリクエストさせてもらった者ですが…
大満足です!!!
やっぱあいかんイイわぁ〜(*´∀`*)

確かに、鈴木さんは誘い受け顔だと思います。
そして、有原さんはその魅力の虜になっているんだ思います。
でもそれに鈴木さん本人は気付いていなくて、
積極的な有原さんにドキドキしているんだと思います。
…と、2人の関係性を
1人で勝手に妄想しています(笑)

…キモイですよね(笑)


「バケツの水」も楽しみにしてます!
気になったんですが
夢板じゃなくて幻板じゃないですか?
間違ってたらすいませんm(_ _)m
189 名前:名無し飼育 投稿日:2009/09/07(月) 23:14
無類のあいかん推しですが…

ここのあいかんめちゃええわ〜

あいかん書き続けてください、お願いします。
190 名前:みら 投稿日:2009/09/10(木) 19:08
更新します。
栞菜は猫好きだって話題が上がったラジオを聴いて書いたものです。
191 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:09

それは、ペットショップで売っている高価な猫なんかじゃない。
あたしは先日、雨の中で道端で捨てられているかわいそうな猫を拾った。

ひどく痩せこけていて毛並みは悪く、力ない泣き声でダンボールの中に横たわって
いた猫はすがるような瞳であたしを見つめていた。
おばあちゃんの家で飼われているマサムネとは違って、どことなく弱弱しい。
肉付きの悪い体をそっと腕に抱くと、にゃあと一声鳴いたきり体を揺らしても動かなくなった。
192 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:10

あわてて猫を抱いたまま傘を片手に家に帰ると、案の定お母さんはしかめっつらをして
お父さんと顔を見合わせた。
それでも二人はあたしの腕の中でじっとしている猫の様子を見て、悩ましげな声を漏らした。
きっとあたしがこの子を拾わなければ、あの雨の中で飢え死にしていたことだろう。
マンションに住んでいるといっても犬猫の飼育は禁止されていないし、自分で面倒が見られるならという条件つきで、あたしはその猫を飼うことを許された。


―――…で、この人一体誰なの?



193 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:11



「…えっと、お母さん。部屋に知らない女の子がいるんだけど」
「えぇ?何言ってるの、栞菜」
「だって、だってだって!誰、あれっ」
「栞菜、どうしちゃったの?愛理に決まってるでしょ」


愛理。 愛理って、あたしの飼ってる猫の愛理?

そう訊き返すと、お母さんは当然のごとく頷いた。
何言っちゃってるんだろう。愛理は人間なんかじゃないし、ふわふわとした白毛の猫だ。
足がすらっと長くて背筋がぴんとしていて、それはあの女の子とそっくりな姿だけど。

194 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:11

「どうなってんの?!」

部屋に戻って、あわててベッドの上に座り込んでいる…愛理、じゃない、見知らぬ女の子に向かって叫んだ。
びくっと肩を震わせて、あたしの枕を抱えて分からないといった風に首を横に振る。
その姿も仕草も、どこをとってもあたしの可愛い飼い猫の愛理にそっくりだということは否定できない。
だからって、こんな非現実的なことがあっていいわけがない。

学校から帰ってきたら、飼い猫が人間になっていた?
そんな茶番は漫画だけで十分だ。第一、何でお母さんはこの子を愛理だなんて言うんだろう。
あたしの知っている愛理はふわふわの毛並みをしていて、頭が良くて素直でよく言うことを聞いて――

195 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:12


「…ね、愛理なの?」

おそるおそる尋ねてみると、声は出さずに静かにこくりと頷く。
そうだと信じたくない。
けど、目の前で怯えている女の子に向かって、これ以上感情を高ぶらせてはいけないと思った。

もしこの子が、あたしの知っている猫の愛理だとしたら。
すごく可愛い女の子にしか見えないけど、雰囲気としてはほんとうにあたしのイメージ通りだ。
眉が下がってちょっと頼りなく見えるけど、目が大きくてさらさらとした黒くて長い髪が凄く綺麗。
もしかしてこれって、本当に。

196 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:12


「…頭いたい」
「大丈夫?」
「…大丈夫じゃない。じゃ、あなたは愛理…なんだよね」

バッドで後頭部を殴られたような衝撃に、あたしもベッドに腰をおろす。
ちょこん、とそばに寄ってきたその子からは他でもない、猫の愛理の匂いが鼻をつく。
先日お風呂に入れたばかりのその体からはバラのシャンプーの香りがただよって、頭痛に拍車をかける。
同じ質問をしてみると案の定頷くその姿に、あたしは大きく溜息を吐いた。

197 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:13

えーと、とりえあず状況把握。
いつものように学校から帰宅したあたしはリビングのソファに座って、いつものように膝に
飛び乗ってくる愛理を待っていたんだけど、なぜか今日はあたしの部屋から出てこなくて。

不思議に思って部屋のドアを開けると、見知らぬ女の子がベッドの上にいて
…それで、えっと…


「愛理」
「なに?」
「愛理は猫だよね?なんであたしと同じ…人間の姿なの?」

なんの異変も感じていないのか、愛理は不思議そうな顔をしてあたしを見る。
そして五本の指がついた自分の手のひらをまじまじと見つめては、あたしの体をつまさきから
てっぺんまで舐めるように眺めた。
198 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:13

この子、自分が人間になったって自覚がないのかな。
ってことは、猫だったときの記憶もないのかもしれない。

「じゃ、じゃあ…昨日、お風呂入れたじゃん。覚えてる?」
「うん。気持ちよかった」
「…お風呂上りにあたしのアイス舐めたことは?」
「うん。おいしかった」

えへへ、と言って笑う愛理はやっぱりあたしの知ってる愛理のような気がしてならなかった。
猫は笑ったりしないし、表情を出すことはない。
でも、目の前でふにゃふにゃと笑う愛理を、あたしは昔から知っているような気がする。
猫のくせにきゅうりが好きで、どんくさくて高いところから降りられない猫。
たまには悪戯もして、昨日だってあたしの食べていたアイスを横からつついてきたりして。

猫の等身大――それがこんな現実味溢れた女の子だなんて、どんな漫画にも描いてなかった。

199 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:14

ためしにのど元を指で撫でてやる。
すると目を細めて、気持ちよさそうにくいっと首を上げる。
もっとして、と言わんばかりに倒れてきた体を抱きとめて、体がぞくぞくとした。

猫のくせに大きくて、あたしより背も数センチ高い。
腕やら腰やらは猫らしくすっとしていて、長い手足がとても綺麗に見えた。
普段と違う愛理の重さに思わずまとわりついてくる体を引き剥がすと、愛理は不満そうに唇を尖らせる。

――…かわいい


200 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:15


「ちょ、だめだって!」
「なんでよう」
「だって、だって愛理は」
「栞菜、抱っこ」

あたしの可愛がってた小さくて華奢な猫が急に人間になれば、付き合い方だってそりゃ変わる。
いつもと違うあたしの態度を感じ取ったのか、甘えた声でごろごろと鳴く。
抱き上げて欲しいなんていわれたって、あたしとほぼ同じような体をした猫なんて抱っこしたことあるわけない。

愛理は腕を広げて飛びついてくるけど、少しは自分の体の大きさも考えて欲しい。
なんで猫のくせにこんなに良い匂いがするんだろう。まあ、昨日お風呂に入れたせいもあるかもしれない。

だからって、普通の女の子みたいな匂いをぷんぷんさせてまとわりつかれたら、その…


201 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:15

「うあっ!」

愛理はかぷっ、とすがりついたあたしの肩に噛み付いた。
ぞくぞくとしたよく分からない感覚が体中に走って、あたしは愛理の体から離れようとする。
頬に湿った感触がして驚いて愛理を見ると、舌をぺろりと出してふにゃふにゃと笑っていた。

愛理はいつもの要領で甘えようとしている。
暇さえあればあたしの体のどこかで触れていて、挨拶程度に手や腕を舐めたり甘く噛んでくる。
でもでも、そんなこと人間同士でやることじゃないし、それに今の愛理にそんなことをされたら。

――理性、とんじゃうでしょ

202 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:15


「…あのね愛理、そういうことしたらだめ」
「なんで?」
「…どうして猫のくせに、そんなにやらしい顔出来るかなぁ」

あたしの肩にすりすりと頬を寄せて、ぱっと顔を上げた愛理に上目遣いをされる。
やばい、すごくかわいい。
単純にそう思うのはあの白毛の愛理だからなのか、可愛い女の子を目の前にしているからなのか、どっちなんだろう。

誘われるように半開きになった唇から、目が離せなくなる。
薄い唇の間から覗く舌が艶かしく動く。あたしの体が動く前に、愛理の舌が伸びてくる。

「…んっ」

ぺろりと舌を舐められて、閉じていた瞳を開く。
ざらついた猫の舌じゃなくて、あたしと同じ人間の舌の感触がした。

203 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:16


「栞菜」
「…な、に?」
「もっと舐めていい?」

言葉が話せることが便利なことだと知っているのか、愛理は恥ずかしげもなくそう尋ねてきた。
猫の愛情表現が人の体を舐めることだなんて、どの生物辞典に書いてあるだろうか。
少なくともあたしはそんなこと知らないし、ふつうの猫は人を舐めたりなんて滅多にしないはずだ。

返事をする間ももらえず、愛理の小さな舌が唇を這う。
唇でそれを挟み込むと、悩ましげな声が上がる。堪らなくなって唇を押し付けると、首に腕を回された。

あたし、愛理とキスしてるんだ。

砂糖のような甘い愛理の味に、さっきの頭痛が嘘のように消えていく。
息継ぎの度に熱っぽい瞳があたしを見つめて離さない。その表情が猫とは思えないくらい、色っぽい。
唇が離れてやっと我に返ると、愛理がきょとんとした顔をしてもっと身を寄せてくる。
首筋にあたしの唇が触れると、愛理はくすぐったそうにして身を捩った。

204 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:16

「ふにゃあ」

試しに喉にキスをしてみると、今度は猫のときと同じような鳴き声が聞こえた。
くすくすと笑いながらあたしの首に腕を絡めて、愛理はなんだか楽しそうだった。

膝の上でゴロゴロと喉を鳴らして甘えるときの愛理とは違って、本当に生身の人間に触れていることを実感する。
白くてすべすべとした肌は触れていてとても気持ちが良くて、白毛の愛理に触れるのと何の変わりもない。

205 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:17

そうだ、そうだよ。
人間だと思うからやらしく見えるんだ。

それにしたって、さっきのキスは訂正だとか取り消しが出来ないくらいに…リアルだった。


「ねえ、愛理」
「んー?」
「そこに寝てみて」

ころん、と体を横たわらせて、あたしを見上げるくりくりとした瞳。
頬をなでてやると嬉しそうに笑って、両手を伸ばしてあたしも横になるように促される。
その手を握って下におろすと、不満げな顔をする愛理と視線がぶつかる。

ちょっとした好奇心。ほんと、ほんとにそれだけ。
やましいことなんて考えてないし、単純に不思議に思っただけ。
そう自分に言い聞かせて、愛理の身につけていた白いブラウスに手をかけた。

人間の愛理はどんな体をしているんだろう。
一度見たら、すぐに服を着せる。そのつもりだった。
206 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:17


「栞菜、なにするの?」
「あー、えっと…すぐ終わるから大丈夫だよ。ちょっと待っててね」

首を傾げる愛理をよそに、ひとつづつボタンを外していく。
次第にあらわになる白い素肌が猫の愛理を彷彿とさせる。
時折愛理がじゃれてきてなかなか脱がすことが出来なかったけど、やっとのことでブラウスを取り払った。

ちょっと待って。
これ、なんかすごい。

いや、下着はつけていないだろうとは思っていたけど。
やっぱり何もつけていないその上半身は想像以上にいやらしくて、引き締まった体をしている。
女の子の象徴的部分であるそこは…まあ、発達段階って感じだったけど。
猫じゃない、人間なんだ。
分かり切ったことがぐるぐると頭の中で駆け巡って、床に落としたブラウスを拾い上げた。
207 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:18

「栞菜、栞菜」
「…え?あ、なに?」
「なんかへんなかんじする。それ、着たい」

今更になってもじもじしだした愛理はあたしの腕を引っ張って、ブラウスを指差した。
たとえ猫でも恥じらいの感情はあるのか、物足りなさを感じてくいくいとブラウスを引っ張る。
人間になったせいで、いつもとは違う体のつくりに慣れていないのかもしれない。

もうちょっと、もうちょっとだけ。
そんなあらぬことを考えながら、拾ったブラウスを畳んでベッドサイドにぽんと置いた。
代わりにその体を抱きしめてやると、初めて愛理が小さく暴れだした。

208 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:18

「なんかへんだよ、栞菜」
「大丈夫だって。良い子だから、じっとしてて」
「…それも脱ぐの?」
「うん。ほら、足開いて」

罪悪感がちくちくと胸を刺す。
何をするのかよく分かっていないのか、愛理は仕方なく腰を浮かせてショートパンツに手をかけた。
あたしのちょっとした好奇心はだんだんと歯止めが利かなくなって、目の前にいる愛理に
対してふつふつといけない感情が湧いてきた。

だめだめ、だめだって。あたし、猫相手に何しようとしてるんだろう。
あたしの中の天使と悪魔が口論を繰り返す。


――どうせ何も分かってないって、やっちゃいなよ
――いやいや、そういう問題じゃないから!相手は猫だよ?何も分かってない赤ん坊と同じなんだから!


209 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:19

どきどきと鼓動する心臓を抑えて、ふかふかとしたベッドの上に横たわる愛理に覆いかぶさる。
愛理は顔の横にあるあたしの手に噛り付く。八重歯が刺さって、少しだけ痛む。
わざと顔を歪めてみせると不安げな瞳があたしを見上げて、噛んだ箇所をぺろりと舐めた。
痕もなにも残っていないただの甘噛みが、知らず知らずのうちに快感へ変わっていく。

お返しと言わんばかりに胸元に噛み付いてやると、予想外のことに愛理が猫のように鳴いた。
にゃあ、とびっくりしたような声に顔を上げると、愛理は唇を噛み締めて体を起こそうとする。
それを制して額に唇を寄せると、途端におとなしくなった。
手のひらで胸に触れると、今度は甘い鳴き声を上げる。

「かん、なっ…だめ、それっ」
「どうして?いつも触ってるじゃん、愛理のこと」
「けどっ、こんな風に触らないよぉ…んあっ、ひゃうっ!」

愛理は恥ずかしいのか、あたしから目を逸らして枕に顔を埋めようとする。
その間も刺激を与え続けていると、愛理はくねくねと体を動かして悶え始めた。

気持ち良いんだ。
猫にも性感帯があると知って意外だったけど、愛理の体を見れば納得出来る。
愛理があたしにするように、胸の突起に舌を這わせてみると大きく体が跳ね上がる。
210 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:19


「…愛理、それやらしい」
「な、に…?」
「えっち、ってこと」
「…?」
「…あはは、わかんないか。ねえ、もっと触っていい?」

愛理の体を見たら、すぐに服を着せるつもりだった。
それなのにあたしはこんなに愛理に触れたがっている。猫じゃない、人間の愛理に。

目が点になっている愛理にあらぬことを問いかけると、もじもじした愛理が小さく頷く。
唇を舐められて小さく微笑むと、愛理も嬉しそうに笑った。
驚くほどに華奢な体は、抱きしめていてもなんだか腕がすかすかしていて落ち着かない。

じっとしていられないのか、もぞもぞと腕の中で愛理が動く。
おそるおそる下のほうに指を近づけると、腕をがっしりと掴まれて爪を立てられた。
211 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:20


「ふ、あっ」

突然の刺激にたまらずに声を上げる愛理の喉元に噛み付く。
一度離れると、みみず腫れになったあたしの腕の箇所を愛理がぺろぺろと舐める。

驚いたことに、あたしの触れたそこはびしょびしょに濡れていて、指先はすでにじっとりと
湿り気を帯びている。
それをすくって目の前に持っていくと、呼吸を乱しながら愛理は不思議そうにそれを見る。
当然、これが何であるかなんて猫の愛理が知るはずもない。
説明してあげるのもなんだからもう一度指でそこに触れると、びくびくと愛理の腰が動き出す。


212 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:20

「あっ!な、んかっ…へんだよ、栞菜ぁ」
「気持ち良い?」
「良い…けどっ、こんなの、したことない」
「あたしだって、したことないよ」
「…じゃどうしてするの?」

ぺろりと頬を舐められる。あたしはどうして愛理を愛でているんだろう。
ただの可愛い猫相手に、こんなはしたないことはしないはずだ。けど今は、愛理は人間の姿をしてる。

あたしはもともと可愛い子とか、良い匂いには弱いわけで。
まして自分の大切にしていた猫がこんなに可愛い女の子に変化しちゃっても、それはそれで良いかな、なんて今になって思い始めている。

こんなの不純すぎる。
自分でも十分分かってるけど、腕の中にいる愛理を手放すことなんて、出来ない。

213 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:21

「愛理が好きだから」

耳をぱくっとくわえて、下のほうにある指を動かす。
すると今までで一番甘い声で鳴いた愛理の体が一瞬強張って、次の瞬間にはくたりと抜け殻のようになってしまった。
愛理は落ち着かない呼吸を整えようと、苦しそうにあたしの肩に額をこすりつけてくる。
まだ熱の残ったそこをなぞってみると、猫らしい鳴き声を上げて今度は本気で肩に噛み付かれた。

「ちょっと、愛理…痛いっ!」
「栞菜、いまの、なに?あたし、へんだったよ」
「あたた…変じゃないよ、可愛かった」

噛まれた肩をさすりながらそう言うと、ようやくおとなしくなった呼吸とともに愛理が吐息を漏らす。
あんな場所、誰にも触られたことがないんだろう。実際、あたしだって始めて触れたんだから。
それも、飼い猫のそれに触るなんて。
214 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:21

考えたら非常識なことこの上ないけど、そんなことがどうだってよく思えてしまうくらい、愛理が可愛くて
仕方が無い。
不安げに揺れる瞳を覗き込むと、ぐっと頭を引き寄せられる。


「…いまの」
「ん?」
「今の、もっかい、したい」


そう言った唇に溶けるようなキスをして、愛理の体のあちこちに触れた。
ねだるような甘えた声に誘われて、愛理が猫だなんてことも忘れてしまうほどに行為に没頭する。

…きっと朝になったら、これが夢だって思えるよね?




215 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:22
216 名前:like a girl 投稿日:2009/09/10(木) 19:22
217 名前:みら 投稿日:2009/09/10(木) 19:27

州´・ v ・)<またまたえっちな話でごめんなさい



栞菜が変態すぎてごめんなさい。
どっちかをこんな風に置き換えると、妄想って尚楽しいですよね!←


>>187
ありがとうございますー。あいかんはやっぱり不滅です。

>>188
あああごめんなさい幻のほうですorz
これからも私の下らない妄想にご支援いただけるとありがたいです!

>>189
ええ、℃が解散するまで書き続ける所存です。…多分。
レスありがとうございました。
218 名前:みら 投稿日:2009/09/10(木) 19:29
今回のあいかんは上で愛理ちゃんが言った通りエロい上にちょっと獣入ってます。
不快な方はスルーでお願いします。

えーっとアンケートで好評だったみやあいり、やじうめ等については
次回以降の更新とさせていただきます。
レスを下さった方々、お待たせして申し訳ないです。
219 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/09/11(金) 22:55
愛理がかわいすぎる!
こういうあいかんも良いと思います!
220 名前:みら 投稿日:2009/09/19(土) 21:52
更新します。
今回はももあいりを。
221 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 21:54


それは一瞬の出来事で、単純な一過性の行為に過ぎなかった。
ほんとうに、ただそれだけのこと。

222 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 21:55



「ももっ、ねえ、今っ――」


肩を強く押し返すと、桃子の体がぐらりと揺れた。
桃子はバランスを崩して後へ下がる。たいした衝撃ではなかったせいか、すぐに笑みが返ってきた。
その微笑が何を意味するものなのか、愛理には分からない。
誰もいない教室に響いた悲鳴に近い声は、目の前にいる桃子以外の誰にも届かない。

突き飛ばされた衝撃で、桃子の足にあたった机の位置が歪む。
無言でそれを直す桃子に、愛理がやっとのことで次の言葉をかけた。

223 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 21:56


「もも、ねえってばっ」
「聞こえてるよ。なあに、愛理」
「なにじゃないよ。だって今っ、ももが、」

何が起こったのかわからなかったのは、ほんの僅かな間だけだった。
桃子が愛理にしたこと。それは紛れもなく愛理の定義上では許しがたく、有りえないことだった。
平然とした顔の桃子に対して普段より強い口調になってしまったが、今はそんなことに構っている
余裕は少しもない。
机と一緒に桃子も元の位置へつくと、自分よりも背の高い愛理を見上げた。

224 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 21:56


「もも、愛理にキスしただけじゃん。何でそんなに怒るの?」


悪びれた様子もなく、桃子は面倒くさそうに答える。
その声の調子に愛理の中で苛立ちに似たものが込み上げ、居場所を失う。

怒っているのか驚いているのか、沸き起こる感情が何であるのかすら自分でも分からない。
桃子の顔を見ることが出来なくて、愛理は桃子の上履きを睨んだ。
ひたひたと音もなく目の前に近づいてきた桃子の姿に思わず身を引くと、強い力で手を引かれる。
こんなに小さな体のどこに力があるのか。そう問う暇もなく、先ほどと同じように桃子の唇が近づく。

225 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 21:57

「もしかして、はじめてだったの?」
「そんなことっ」
「あるんだ。あいりん、まだ中学生だもんね」

咄嗟のうそはすぐに見破られ、桃子のおどけた口調が神経を逆撫でする。
嘘をつく必要などないはずだった。

こんなところで自分のプライドが邪魔をするなんて、愛理自身でも予期していなかった。
だったら桃子はキスをしたことがあるのかと、瞬時に言い返す言葉が浮かぶ。
けれど、それを尋ねる気にはなれなかった。

226 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 21:57


「ごちそうさま」

腕を解放されたかと思えば、満面の笑みを浮かべた桃子にぽんぽんと頭を撫でられる。
文句なら山ほどある。喉まで出かかったそれは声に出されることなく、しゅんと愛理の中で消えてゆく。
愛理は手をひらひらとさせてすたすたと教室を出て行こうとするく背中を掴んで、桃子はゆっくりと振り返る。

227 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 21:58


「もも、なんでこんなことするの」

自分でも驚くほど、声が震えていた。
桃子の言うとおり、愛理はキスをしたことなど今まで一度だってなかった。
それをいとも簡単に奪われて、桃子に何の思惑があるのか愛理には分からない。だから尋ねたのだ。

228 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 21:58

「しちゃだめだった?」
「当たり前だよ、もものばか」
「その言葉、愛理にそのまま返す」
「なっ…」

桃子の平然とした口調が自分を挑発しているようで、愛理は拳をぎゅっと握り締めた。
五時を知らせるチャイムが鳴って、桃子は垂れていた頭を上げて時計を見上げた。
それを一瞥すると、桃子は愛理の瞳を覗き込むようにして愛理とのわずかな距離を埋める。

悪戯にしては度が過ぎる。普段の桃子なら、ここまで愛理を困惑させるようなことはしない。
だから愛理には分からなかった。
それでも桃子の口調は、冗談とは違う何かをはっきりと伝えようとしているようだった。

229 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 21:59

「意味わかんないよ、もも」

愛理の語気に桃子が眉をひくつかせる。
愛理が感情をむき出しにする姿を見たことがないためか、驚いているようだった。

「じゃ、教えてあげる」
「教えるって…っちょ、もも!」

耳を澄ましていないと聞こえないほどの声で桃子が呟いたと同時に、両手首を掴まれて
愛理は窓際に追いやられる。
愛理の強気な態度も長くは続かず、桃子はそれを見抜いて愛理にぐっと顔を近づけた。

230 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 21:59
自分よりも小さな桃子を相手にしているのに、掴まれている手首を振って桃子から逃れることが出来ない。
近すぎるのだ。桃子の顔が、声が。

そう思っているうちに、数分前と同じ緊張が体に焼き付けられる。
桃子の匂いと柔らかな唇の感触を感じて、愛理は思わずぎゅっと両目を閉じた。


「好き、愛理」

桃子は愛理の耳にかかっていた髪をとくように撫でる。
愛理が目を丸くしているうちに、強く掴んでいた愛理の手首をゆっくりと離した。


231 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 22:00



「…え?」
「だから、好きなんだってば。あいりんのこと」
「好きって…」

何度か桃子の言葉が頭の中で再生された後、やっとその意味を理解することが出来たのは
桃子が愛理の体に抱き着いてからのことだった。
幼い子どものように愛理の体に縋り付いてくる桃子はキスをしていた時とは全くの別人のようで、愛理は肩に感じる桃子の吐息に体が熱くなる。

まったく、桃子はいつでも突然すぎると思う。
愛理の気を知ろうともしないのはいつもと同じなのに、一度触れたことのない場所に触れられただけで体中が今までに感じたことのない熱を持った。
不意に顔を上げた桃子と目が合う。先ほど言われた言葉を思い出して、愛理はどこを見て良いのか分からずごつんと桃子の眉間に額をぶつけた。
232 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 22:00


「…振るなら早く振っちゃってよ。もも、愛理に色々しちゃったし。ごめん」
「そんなの、今更言わないでよ」
「ごめん」

平謝りする桃子は床に目線を落としたまま小さく溜息を吐く。
桃子の顔には今になって自分のしたことが何であるのかを知ったような、後悔の念が浮かんでいた。
愛理は桃子の体をそっと引き離すと、壁に張り付いていた自身の背中にわずかな痛みを感じた。

この小さな体の何処にあんな力があるんだろう。
そんなことを考えながら、愛理は手首に残っている桃子の手の痕を眺めながら口を開いた。


233 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 22:01


「もも、ずるいよ」
「分かってる」
「急にキスするし、手痛いし」
「…ごめん」
「振るかどうかくらい、あたしに決めさせてくれたっていいじゃん」

愛理の言葉に、桃子が俯いていた顔を上げる。
ほとんど独り言のように聞こえた愛理の呟きは、しっかりと桃子の耳に届いていた。

234 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 22:02



「…あたしが、もものこと好きになったら」
「え?」
「そしたら、ももとキスしたいって思える…と、思う」


愛理が慌てて付け足した言葉に桃子の硬直していた表情が和らいで、苦しそうに笑った。
自分の言った言葉に責任を持たなければいけないとは思うが、この先桃子を好きになる保障はどこにもない。
でも、桃子を嫌いになる理由は何処を探しても見つからなさそうだ。それだけは愛理にとって確かなことだった。

235 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 22:03


この曖昧な感情に、名前は付けられない。

愛理は熱くなった頬を手の甲で押さえて、落ち着かない左胸の鼓動を抑えようと
胸元のシャツを握り締めた。
桃子の指先がおそるおそる愛理の頬に触れる。今度はそれに抵抗する気にはならず、愛理は恥ずかしさから目を閉じてしまわないように、じっと桃子の目を見つめていた。

「…分かった」
「いつになるかなんて、わかんないよ?」
「それでもいいよ。じゃなきゃ、愛理とキスできないし」

恥ずかしいのは自分だけではないと、桃子の薄赤く染まった頬を見て愛理は気がついた。
それが一連の出来事が嘘ではなかったと物語るようだった。
視線の先には他でもない桃子がいる。明日になれば、桃子のことを好きだと思えるだろうか。
その答えを知るためにも、愛理は桃子のことを今まで以上に知る必要がある。

236 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 22:03

それに、桃子が高等部を卒業するまでにそう長い時間は残されていないのだ。
けれど桃子はそんなことをちっとも視野に入れているようには見えないし、まっすぐに愛理のことを
好きだと言い切った。

それなら、信じるしかないと愛理は思った。
一方的な愛情を持たれることは相手によっては迷惑だと感じるだろうし、鬱陶しいはずだ。

それでも、愛理は桃子を突き放す気にはなれなかった。
自分だけに向けられた愛情に嘘がなければ、桃子に対する気持ちも変わっていく。そう思えた。

237 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 22:04


「もも、しぶといから」


打って変わって強気な桃子の声に、愛理はその小さな体を軽く小突いた。
もし桃子を好きになることが出来なかったら。そうすれば、桃子を裏切ることになるかもしれない。
それでも今の愛理には、そんなことは微塵も考えられなかった。

目の前にいる桃子のことを、どうすれば好きになれるか。
ぶらぶらと揺れていた桃子の手を強く握ってみたが、答えはまだまだ見つかりそうになかった。

238 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 22:04
 
239 名前:キスの理由 投稿日:2009/09/19(土) 22:06
 
240 名前:みら 投稿日:2009/09/19(土) 22:11
毎度のことですが、自分の書く愛理が乙女すぎるorz
なんでこうなっちゃうんだろう。


州´・ v ・)<今回はえっちなしですよ?


って愛理ちゃんが言ってるので、多分ノーマルなももあいりでしたー。


>>219
ありがとうございますー。栞菜にかかれば愛理は簡単にえろくなりますね←



241 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:02



この手を伸ばせば、君はあたしの届く所にいるのに
どうして、あと一歩が踏み出せないんだろう



242 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:03


「えり、どこ見てんの?」


舞美に一緒に観ようと誘われた映画は、前からあたしも観たいと思っていたのに。
それが今になって、スクリーンに映るそれに全く集中出来ない。

どこか落ち着かない様子で上の空になっているあたしに気付いた舞美が、肘掛に
だらしなく置かれていたあたしの手を優しく握る。
周りのお客に聞かれないくらいの小さな声が耳に届く。
近くで香った舞美の髪の匂いがすっと鼻腔をくすぐって、すっかり意識を奪われる。

そんな舞美の所作にいちいち過敏になっている近頃のあたしは、どうやらちょっとおかしいみたいで。

243 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:03


「もしかして、つまんない?」

遠慮がちにそう尋ねる舞美は少し上目遣い気味で、あたしの手を握る力が少しだけ強くなった。
焦って何度も首を横に振って見せると、不安げな舞美の表情がぱあっと明るくなる。

――ああもう、何でだろう

舞美の顔も、ちゃんと見れないなんて。


244 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:04

スクリーンが落ちて、周りの照明が点灯する。
結局最初から最後まで、あんなに楽しみにしていた映画の内容はちっとも頭に入らなかった。
舞美の手はあたしの手と繋がれたままで、向こうから解かれる様子はない。
立ち上がった拍子に腕をぶらぶらと揺らしてみせても、「次どこ行く?」と聞かれたっきりで、さらに
強く握られた手がどんどん熱くなっていくのが分かった。


あたしと舞美の関係なんて、そんなに特別なものなんかじゃない。
同じクラスの、仲の良い友達。
それ以外にあたし達の関係を形容出来る言葉があったら、教えて欲しいと思う。
245 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:04


こんな感情、誰にぶつけたらいいんだろう。多分、誰にも言えやしない。
あたしと舞美は親友で、それ以上でもそれ以下でもないとそう信じて言い聞かせてきたのに。


246 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:05
日曜の昼過ぎ、雑踏の中で行きかう人に紛れて、あたし達が手と手を繋いでいることなんて誰も
気付かない。
新しくオープンしたばかりの流行の店が立ち並ぶ通りを、舞美に手を引かれるがままに歩く。
いつもならウインドウショッピングを楽しんだり、プリクラを撮ってるはずなのに。

隣にいるのが舞美じゃないなら。こんなに心臓が押しつぶされるほど、苦しくなんてならない。


「あ、そーだ。えり、クレープ食べたい?」


どうして今更、舞美のことが好きだなんて気付いてしまったんだろう。


247 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:05

「えり、えりってば」
「…へ?」
「もー、前見て歩かないと危ないよ。クレープ、食べるでしょ?」

くいくいと服の袖を引っ張られて、舞美の指差すクレープの屋台にやっとこくこくと頷いてみせた。
甘い香りに誘われて自然と笑みがこぼれる。すると、舞美もあたしと同じように目を細めて笑った。


248 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:06


「えり、甘いもの好きだもんね」
「あ…いいの?舞美、食べないでしょ、クレープ」
「いいのいいの。えりが食べてるとこ見たいから」

一度離れた手がまた繋がる。その仕草に深い意味なんてないんだろうけど。
舞美の笑顔があったかくてくすぐったくて、それになんだか恥ずかしくて仕方が無かった。

思えば二人きりで休日に遊びに出かけたことなんて一度も無かった。
舞美を意識しだしてからは自分から誘う勇気もなかったし、行きたい場所はあってもなかなか
声に出すことはできなかった。
それがひょんなことから映画を観に行くことになって、まるでこれじゃあたしの期待してた…

「えり、おいし?」

それこそ、デートみたいなもの。


249 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:06
舞美は生クリームの上にたっぷりかかったチョコレートソースを眉をしかめながら眺める。
食べられないくせにチョコへの憧れはあるみたいで、やたらニコニコとしながらあたしの食べる
クレープをただ見つめていた。
どうせ一緒にいるなら舞美の食べられるようなものを選べばよかったと後悔したけど、舞美は
そんなことちっとも気にしていないようだった。
お人好しというか、人一倍気遣いの出来る子だと思う。

誰にでも優しくて真面目で、友達も多い。
あたしとは全く違う女の子なのに、舞美はあたしを誰よりも仲の良い友達として接してくれている。

それに嘘をついていること自体が、舞美に悪いことをしている気がして苦しかった。

250 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:06



「えりー」
「ん?」
「さっきの映画、やっぱり面白くなかった?」

口に含んだクリームの甘さと同時に、なにやら苦いものを感じた。
舞美はしょげた子犬みたいな表情をして、あたしに問いかける。


251 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:07

「な、なんで?」
「だってえり、全然画面見てなかったし」

舞美はトッピングのイチゴを指でつまんで口に含むと、ちょっと不満げにそう呟いた。

あたしはどうしたって嘘をつくのが下手らしい。
すっかり映画に夢中になっていると思っていたのに、舞美はあたしの異変にすぐに気がついていたようだった。

252 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:07


「何考えてたの?」


舞美はテーブルに肘をついて、やけにかわいく尋ねてくる。
そんなずるい表情、誰にも見せないで欲しい。癖のある舞美の声が優しく耳に響いた。



253 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:07

映画なんてただの口実で、本当は場所なんてどこだってよかった
舞美のそばにいられることが、どうしようもなく嬉しかったんだよ


…なんて、言えるわけないんだけど。


254 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:08


「いや、早くクレープ食べたくてさー。実はそればっか考えてて」
「…もー、えりってば」
「ごめんごめん。でも、楽しかったよ」
「そっか。あたも、えりと一緒で楽しかった」


そう言って立ち上がった舞美に手を引かれて、再び街中を歩き出した。
温かい手のひらからこのどきどきが舞美に伝わってしまいそうで、ちゃんとその手を
握り返すことはできなかった。


255 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:08

いつになったら伝えられるだろう。
そんな焦りばかりを感じていたのに、舞美の笑顔を見たらどうでもよくなってしまった。

この先がどうなるかなんて、誰にも分からない。
今この瞬間だけでも、あたしと舞美の気持ちがぴったり重なることが出来ればそれでいい。
たとえば、さっき観た映画の溶けるほど甘いラブストーリーのように上手くはいかなくても、あたしは
それで満足だった。


256 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:09


「次、どこ行く?」
「んー、舞美に任せる」
「じゃあ、うち来る?」
「…え?」
「ルーキーがえりに会いたいって。ね、行こう!」
「わ、ちょっ、舞美!」


急ぐ理由なんてないのに、舞美はあたしの手を引いて駅へ走り出した。
もしかして、舞美もあたしを――なんて空想をめぐらせながら、あたしも息が切れるまで走った。
繋がれたままの手は一度も離れることなく、一層強い力で手を包み込まれる。
あたしが初めてその手を握り返すと、舞美は照れくさそうに微笑んだ。

257 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:09


神様、もう少しだけ。
あと少しだけ、このままでいさせてください。




258 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:10
 
259 名前:J'irrite 投稿日:2009/09/28(月) 18:11
从・ゥ・从<ガーッとやっつけだよ!
260 名前:みら 投稿日:2009/09/28(月) 18:15

やじうめでしたー。
タイトルは仏語で「もどかしい」だそうです。
期待されてたような話じゃないと思うので謝りますごめんなさいorz


やじうめは普段べたべたしてない分お互いが深いところで繋がってるんだとおもいます。
从・ゥ・从<とか言って




261 名前:みら 投稿日:2009/09/28(月) 18:16
あとちょっとお知らせでも。

りしゃみやを消化し切れてないのでそれプラスあいかんをあっぷしたら
このスレを終了させていただこうかと思っています。

いつになるかは分かりませんが、とりあえずご報告。

262 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/09/28(月) 22:08
あれ?みやあいりも書くって話は・・
263 名前:みら 投稿日:2009/09/29(火) 03:17
>>262
あわわわミスりましたすみません。
週明けで頭が弱ってるようです。
みやあいりも更新しますのでしばらくお待ちを州´・v・)
264 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/09/29(火) 23:46
終わっちゃうなんて残念・・・
今までのお話、みんな楽しませていただきました。
もし可能なら、また次回作に出会いたいです。
265 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/08(木) 17:24
あいかん大好きだし
みらさんの書くお話が大好きなんで
ここのお話はどれも大好きです!
終わっちゃうのは寂しいですが
最後まで読ませていただきます!


ちょっと前のお話ですが
「like a girl」の愛理は可愛すぎです!(*´∀`*)
愛理が猫とか…反則です(笑)
栞菜の思考がおかしくなるのも当然です(笑)

次のお話楽しみにしてます!
266 名前:kiss you 投稿日:2009/10/10(土) 14:28


「ね、みや」


甘えた調子の声が耳元を掠め、首元にぞくぞくとした感覚が走る。
雅はくすぐったさに身を捩って、愛理のほうを振り向くことなくクローゼットの扉を静かに閉めた。

もう一度名前を呼ばれてゆっくりと振り向くと、雅は愛理の細い腰を抱いてベッドに腰掛けた。
長い髪を指ですくってそのさらさらとした感触を楽しんでいると、手を愛理の口元に引き寄せられる。
ちゅ、と音を立ててそこへキスをする愛理に、雅は白い歯を見せて笑う。
伏せた瞳がこちらを向く。それを無視することなど、雅には出来なかった。

「なに、愛理」

指先にキスを繰り返す愛理にそう尋ねると、突然肩を押されて雅はそのままベッドへ倒れる。
雅は上に跨る愛理を見上げて苦笑する。
雅の顔の横に肘をついて、愛理が雅の頬に口付ける。
頬に触れた温かさを実感する間もなく、雅はゆっくりとその肩を押しやった。


267 名前:kiss you 投稿日:2009/10/10(土) 14:29


「愛理、苦しいからおりてよ」
「重いってこと?」
「そうじゃなくって。逃げたりしないから、早くおり…」

続く言葉をキスで奪われる。
愛理の長い髪がはらりと頬にかかって、雅は眉間を寄せて愛理の背をぽんぽんと叩く。
唇を割って入る舌に心地よさを感じながらも、雅はこれ以上愛理のペースに乗せられるわけにはいかなかった。

雅は愛理と付き合うようになってから、年上の威厳というものが音をたてて
崩れていくのを感じていた。
素直に甘えてくる愛理のことを可愛いと思う反面、こうして主導権を握られてしまう
ことがなんだか悔しいのだ。

268 名前:kiss you 投稿日:2009/10/10(土) 14:29
雅は離れていく唇を舌で捕らえて、愛理の髪を撫でる。
驚いたような反応を示す愛理に微笑んで、愛理がしたキスよりも激しく舌を絡める。
小さな舌が逃げるように雅の口内を這い回る。雅は上体を起こして唇を離すと、目の前に
ある愛理の喉元に口付けた。


「…欲しかったの、これでしょ?」


愛理の欲しいままにさせるには、雅のプライドが許さない。
それなら、こちらからしてしまえばいい。
愛理の赤く染まった頬を撫でてそう尋ねると、雅は濡れた自身の唇を指先で拭った。

269 名前:kiss you 投稿日:2009/10/10(土) 14:30

「みや、顔真っ赤」
「愛理だって」
「みやのせいだよ」
「先にしたの愛理じゃん」
「…そーだけど」

起き上がった拍子に乱れた前髪を整えて、愛理は呟いた。
膝の上に跨る愛理の体が重いわけではないが、だんだんと腰が痛くなってくる。
倒れそうになる体を支えるために雅が愛理の肩につかまると、愛理は途端に電池の切れた
おもちゃのように固まってしまった。

肩に顎を乗せて、愛理の名前を呼ぶ。
声にならない声で返事をされて、雅は微笑むことしかできなかった。
270 名前:kiss you 投稿日:2009/10/10(土) 14:31

近付こうとするほど、愛理は離れていく。
愛理から近付いてくることはあっても、気の向いたときに雅が触れようとすると、不思議
と愛理はそれを拒もうとする。
抱きしめた体は動かない。あからさまに拒否するようなことはしなくても、雅の腕の中にいる愛理は
先ほどとは何かが違っていた。


「…みや、ずるいよ」

愛理が何を言いたいのか。尋ねなくとも、雅には分かっていた。


271 名前:kiss you 投稿日:2009/10/10(土) 14:31
二つ年下の、可愛い妹。
そんな愛理が、いつの間にか雅にとって特別な存在に変わっていた。
甘えてくる体を受け止めて、頭をひと撫でしてやれば愛理は満足する。そう思っていた。

「ごめんね、ずるくて」

思っていたより、愛理のことを好きだと気付いたとき。
自分から愛理に近付くほど、その気持ちの大きさを知った。
抱きしめるのも、キスをするのも愛理から。
雅はその当たり前に甘えて、逃げていた。
272 名前:kiss you 投稿日:2009/10/10(土) 14:31


「なんか、だってこういうの恥ずかしいじゃん」
「…そんなの、あたしだってそうだよ」
「じゃ、お互い様だね」
「うん」

そう相槌を打って、愛理が雅の体を強く抱きしめる。
苦しいよ、と言っても愛理が離れるわけがなく、雅は観念してゆっくりと体をベッドに沈めた。
心なしか、愛理の体が熱い。それと同じくらい、愛理に触れている雅の唇も熱を持っていた。


たまには、こういうのもいいかもしれない。
愛理の薄く開いた唇から零れだす愛情に溺れて、雅はその白い素肌に触れた。



273 名前:kiss you 投稿日:2009/10/10(土) 14:32
274 名前:kiss 投稿日:2009/10/10(土) 14:32
275 名前:みら 投稿日:2009/10/10(土) 14:41
>>274
あわわミスりましたごめんなさい


へたれみやびちゃんを書くのは楽しいです。
毎度毎度愛理が乙女すぎてごめんなさい。次回はりしゃみやかなあ。


>>264
単発で書くことが好きなので喜んでいただけて嬉しいです。
ありがとうございましたー。

>>265
like a girlは書いててやたら楽しかったですw
以前ラジオで、梅さんか愛理どっちに飼われたいか質問されて、梅さんを
即答していた栞菜を思い出しましたw
ご希望であればいつか続編でも書いてみたいと思います。
ノk|*‘−‘)<いつになるかは未定だかんな


いつになるか分かりませんが、新しいスレを立ててリクエスト形式で
短編を書こうかと思っています。
ベリキューオンリーになることだけは確かですw
その時はまた宜しくお願いします。

リl|*´∀`l|<でもその頃に飼育が存在してるか分からないんだよ

276 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/10(土) 17:54
やったー!!みやあいりだぁ〜!!
みらさんのみやあいりが読めて幸せですw
また新作待ってますw
277 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:29

「みやさあ」
「んー」
「好きな人とか、いるの?」


梨沙子の唐突な質問に、雅は数学のテキストを閉じて俯いていた顔を上げた。


「は。何、急に」
「いるの?」
「いても梨沙子には教えないよ」

雅はきっぱりとそう言い放って、再びテキストのページを開いた。
明日までに提出の課題だ。突然家に押しかけてきた梨沙子の相手をしている場合ではない。
すると梨沙子は唇を尖らせて、ふて腐れたように雅を睨む。

帰れと言っても梨沙子が素直にそうするとは思えず、仕方なしに適当なお菓子や漫画を与えて
大人しくさせておいたのに、おしゃべりな口はそう簡単に黙ってはくれない。
分からない問題があっても年下の梨沙子では話にならない上に、はかどらない課題の邪魔を
されては雅が苛立つのも仕方がない。

だから、都合の良いことを言っておけばいい。

278 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:30


「なんで教えてくれないの?」
「いろんな人にべらべら喋りそうなんだもん、梨沙子」
「そんなことないしないもん!」
「…どーだか。じゃあ、梨沙子はいるの?」

梨沙子のペースには乗らないつもりだった。が、一応尋ねてみる。
思えば梨沙子の口から好きな人の話を聞いたことがなかった。
だから、好きな人がいるのかも知らない。

「…いるよ、そのくらい」

少しの沈黙の後、か細い声で梨沙子は答えた。
背伸びをしているような口調に、雅は数学のことも忘れてくすくすと笑った。
相手をするつもりはなかったのに、目の前にいる梨沙子がなんだか可愛く思えてくる。
それは勿論、梨沙子を年下の可愛い妹のように思っているからだ。

279 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:30


「ふーん、誰々?」
「あたしのことはいいの!ほらっ、課題やらなきゃいけないんでしょ?」
「こんなのあとで出来るよ。ねえ、教えてよ」

雅は数学のテキストを机の脇に乱暴に置いて、ベッドの上にいる梨沙子の横へ移動する。
梨沙子は慌ててテキストを盾にして、顔を近づけてくる雅から逃れようとする。
その頬は心なしか、赤く染まっていた。

気になる。この話題なら、数学を解くより断然楽しい。
優先すべきは課題のはずが、梨沙子の照れた顔を見ると雅は真相を聞かずにはいられなかった。
課題をそっちのけにして珍しくはしゃぐ雅の姿を見て、梨沙子は決意したかのように大きな
溜息を吐いて、テキストを雅の胸に押し付けた。

280 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:30


「…教えるから、先にみやから言って」
「うち? いないいない」
「本当に?」
「うん」
「うそ、ついてない?」
「ついてないよ。だから、早く教えてよ」

急かすようにそう答えると、梨沙子は安心したように胸を撫で下ろす。
それに対し、雅は梨沙子の反応に興味津々といったところで押し付けられたテキストを
机へぽんと置いた。

雅は自分に恋愛への関心が無いせいか、他人の色恋話を聞くのは嫌いではなかった。
特にそれが自分の幼馴染だというなら、さらに気になってしまう。
雅に好きな人がいないという話は本当だ。仲の良い友達は大勢いても、恋愛対象として
考えられる人物は誰一人いない。
梨沙子が本当にそのことを信じるかどうかは別として、今は梨沙子の話が気になって仕方が無い。

281 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:31



「それって、うちの知らない人?」
「ううん。よく知ってる」
「えー。誰だろうなあ。ね、ヒントは?」
「…知らないっ。あとは自分で考えて」
「えー、そんなぁ」

つれない返事をされて、雅は膝を抱えて考え込む。
机に置いたアイスティーの氷がカランと音を立てて、あることを思いついた。



「それってさ、うちだったりして」


冗談のつもりだった。

ベッドに置きっぱなしだった漫画をぺらぺらとめくりながら、雅はふざけてそう尋ねた。
こんなことはよくある。梨沙子とならくだらない会話で盛り上がれるし、一緒にいて楽しい。
それは、梨沙子も同じ気持ちだと思っていた。
何も言わない背中へ近寄ってその頭を軽く小突くと、梨沙子がゆっくりと雅の方を向く。

282 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:31



「とか言って、んなわけないよね。 えー、誰だ…」
「だったら、どうするの?」
「え?」
「あたしの好きな人がみやだったら、どうする?」


振り向いた梨沙子は今まで見たことがないくらい、大人の表情をしていた。
無邪気な笑顔ではなく、雅を試すような笑みだ。

それは、雅の知っている梨沙子ではなかった。
視線を宙に泳がせて返答に困っていると、梨沙子の腕が伸びてくる。
梨沙子は戸惑う雅の体を抱きしめて、その肩に額を押し付けた。

283 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:32



「ど、どーするって…梨沙子、な、なに?」
「…みやが聞いたんじゃん」
「そうだけど!そうだけど、それって」
「あーもう、こんなこと最後まで言わせないでよ。みやのばか」

どん、と胸のあたりを拳で打たれる。
決して強い力ではなかったが、雅の胸には今までになかった感情が植えつけられた。

――梨沙子の好きな人って、うち?

もう一度それを尋ねれば、今度は軽いパンチでは済まされないだろう。
そう思った雅は梨沙子の体を引き離して、しっかりとその目を見つめる。
何故だか悔しそうに唇を噛んで雅を見上げるその瞳には、嘘がない。

「…ほんと、ばかだよ、みや」

ベッドに放り出された雅の手を握って、梨沙子は小さな声で呟く。
責めるような口調に、雅は何も言い返せなくなる。

開いた口がふさがらないとはこのことだと雅は思った。
確かに梨沙子は最近大人びて、年下だとは思えないほどの容姿になった。
それでも中身はほとんど変わらずに、まだまだ子どものままだと思っていた。

雅はいつまでもそのままの梨沙子でいてくれると信じていたのだ。
梨沙子が誰かを好きになることがあっても、まさかそのベクトルが自分に向いていることなど気付きもしなかった。

284 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:32


「えっと…あの、うち」
「いーよ。返事しなくて」
「なんでよ」
「分かってるから、いい。みやはあたしのことなんて好きにならないもん」
「…誰もそんなこと言ってないし」
「じゃあ好きになってくれるわけ?」
「知らないよ、そんなの」

何かを言い返す権利などない。
そう分かっていても、梨沙子の挑発的な発言が妙に神経を逆撫でする。

梨沙子は雅にとって唯一無二の存在であることは確かだった。

だから、梨沙子を好きになれなくてもその存在を誰かに置き換えることなど出来ない。
それで梨沙子が悲しまずに済むというわけではなかったが、こんなことで梨沙子との
関係が崩れてしまうことだけは免れたかった。
梨沙子の手を強く握り返すと、曇った表情が僅かに歪んだ。

285 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:33



「もういいから、みや」
「良くないし。好きになるかどうかは別としてさ…梨沙子のこと、今更嫌いになんかなれない」
「…でも、あたし」
「嫌いになれないんだから…あとは、好きになるしかないじゃん。梨沙子のこと」


それがいつになるかなんて、期限をつけることも約束を交わすことも出来ない。
それでも梨沙子が自分の隣からいなくなることを選ぶより、この選択が何よりも正しいと雅は思った。

急かされても困るし、催促はしないで欲しい。
それでもいいなら、梨沙子の気持ちに応えたい。

286 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:33

「…いいの?」
「いいもなにも…付き合うわけじゃないんだから、いいんじゃない」
「そうじゃなくて。あたし、みやのこと、諦めなくていいんだよね?」


遠慮がちに尋ねてくる梨沙子の顔は、どこか嬉しそうだった。
腕を掴んでくる手がやけに熱く感じる。これ以上触れられたら、雅はどうにかなってしまいそうだった。
ただ、今は素直にものを言うのが、なんだか悔しい。

本当に、いつか梨沙子を好きになってしまったら――


「…もー、好きにすれば」


今は、そう答えることしか出来ない。
いつか梨沙子の気持ちに素直に頷ける日が来たら、もっと梨沙子が喜ぶような
ことを言ってあげたい。
腕を掴む手軽く叩いてを解くように促すと、その手はさらに強く雅を抱きしめて離さない。
ふわりと梨沙子から香る匂いは、昔とは少し違っていた気がした。
287 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:33
288 名前:only 投稿日:2009/10/11(日) 20:34
289 名前:みら 投稿日:2009/10/11(日) 20:44
これでリクエスト消化かな?りしゃみやでしたー。
りしゃ→みやのつもりが、これじゃ中途半端だなあorz
実際、二人とも結構ドライな関係っぽいからちょっと難しかったです。


>>276
いやいや、そんなことを言っていただけて嬉しいです。
ありがとうございましたー。



えー、突然で申し訳ないのですが今回の更新でこのスレを終了とさせて頂きます。
その代わりと言ってはアレですが近々新しく短編集でもやろうかと思っています。
前回の通りリクエスト形式で進めて行こうと思いますので、その時はまたよろしくお願いいたします。
カプに関してはベリキューオンリーで。
とは言ってもわたくし、ベリに疎いもので雅ちゃん桃子梨沙子以外のベリメンの絡みは書けませんorz
エッグもほとんど知らないので、書ける範囲は狭いと思いますが何かあればリクエストしてみてください。


スレを立てるまでの間、こちらにご希望のCPとシチュ等等書いてくださって構いません。
消化に時間がかかると思いますが、長い目で見てやってください。


今まで読んで下さった読者の皆様、たくさんの温かいご意見御感想ありがとうございました。
栞菜の脱退、梅さんの卒業など慌しい時期の中くだらない妄想に付き合っていただいて本当に
書いた甲斐があったと思いますw

では、また。
290 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/14(水) 13:47
みらさんの書くあいかんが好きなので
あいかんを希望しますw
291 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/16(金) 14:58
みやあいり初めて見ましたがすごく良かったです!
えろっちぃみやあいりも見てみたいです!
292 名前:みら 投稿日:2009/10/18(日) 10:48

>>290
了解でーす。森のほうにあげときました!
あんなんでよかったのか不安です

>>291
おっ、みやあいりに良い反応が!w
了解ですー


これにてこのスレを終了致します。
新たなリクエストは森の-BQ-でお願いします!

293 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/10/18(日) 11:04
みやあいりはなんだかドキドキしました!
2人が実は姉妹という展開はビックリして
ドキドキ度が増しましたw

りしゃみやは揺れ動いてる2人がかわいいですね

>>265で感想を書いた者なんですが
続編書いてもらえるんですか!?
すっごい嬉しいです!!
是非よろしくお願いします!!m(_ _)m
いつになっても構いません
いつまでも待ちます!w

新スレでまた
みらさんのお話に出逢えるのを
楽しみにしてます♪

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