Love IS so cute!2
1 名前:セツナ 投稿日:2008/12/27(土) 03:31
スレの容量超えてしまったので、スレ立てさせてください。

前スレ
ttp://m-seek.net/test/read.cgi/grass/1196890941

ttp://m-seek.net/test/read.cgi/grass/1196890941/170-
の続きです。
2 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:33

「んじゃあ、それあえず量少なくして色入れてみたらどうかなぁ?」
「あ、はい。お願いします。」
「はい。わかりました。」
「あ、でも、あまり明るいのは校則にひっかかるので。」
「あ、そっか。それどこの制服だっけ?」
「九都です。」
「あー、そうだ。そうだ。でも、あそこ結構ゆるいほうだよね、校則。いやさぁー、おいらが現役の頃友達が
行ってたんだけどさ?おいらの学校厳しかったから、正直うらやましかったもん。」

お姉さんはとってもお話上手だった。
あたしは、時折笑うだけでよかったし、確認して欲しいときにはきちんとこちらに確認してくれた。

はじめてだったのに、お洒落な美容院とか。
でも、あっという間に時間は過ぎた。
自分が『変わりたい』って思ってここにきたことすら、忘れてしまっていたほどに・・・。

だから、シャンプーを終えて、ブロウしてもらっている鏡の中の自分を信じられない思いで見つめ返した。

「やっばい、梅ちゃんちょーかわいい。」

あたしの髪の毛の襟足をいじりながら矢口さんはそう言った。

「あ、自分でもちょっとそう思ったでしょ?今、思ったでしょ?」
「や・・・。」

実は、少しだけ思ってしまった。
なんか妙に高くて嫌だった鼻も、両親日本人なのに何故か濃い目元も・・・。
先ほどまでとは打って変わって、なんだかそう少し、自信に変わるくらいの・・・。


「あ、梅ちゃん、せっかくかわいくなったんだから、もっと顔上げて歩きな?」

レジで会計を済ませて出て行こうとするあたしに矢口さんがそう声をかけてくれた。
3 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:33
「それから、また来てねぇ〜。」
「あ、はい。」

商売上手なちっちゃなお姉さんにあたしも手を振り替えして店を後にした。
やだ。あたしなんか変なのかな?なんか、視線を感じる。

矢口さんは顔上げろって言ったけど、俯いて走りだした。

駅についたら、トイレに駆け込んで自分の顔とか体をチェックしたみたけど、どっこもおかしいところなんてなかった。
なんで見られてたの?
もしかしたら・・・。
いや、でも、まさか。や、でも、あるいは・・・。
4 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:34


次の日、教室に入るとクラスメイトがポカーンとあたしを見た。

「え、もしかして、梅田さん、だったりする・・・?」
「うん・・・。」

あたしは、顔から火が出そうだった。
昨日、美容院からの帰り道、なんとなく変わった自分に胸をときめかせたりしてみたけど、このことを考えると
不安でしょうがなかったんだ。
やっぱり、みんなに見られてる・・・・・・。

「やっべぇ、美人でね?」

クラスの中でもおしゃべりな方の女子が寄ってきて、あたしを見た。

「そうかな?」

ほんとに、不安だった。
からかわれてるだけかも、って、思っちゃってる。

「なんで今まであんなだったのか不思議なくらい。ね、ちょーいけてね?」

彼女は教室の後ろのロッカーの前にいた仲のよい友達に大きな声でそう投げかけた。
どうやら、嘘ではないっぽい?

あたしは、少し落ち着いて自分の席まで歩いた。

「あたしも髪の色変えようかなぁー。」

って彼女は自分の髪の毛のけさきをいじっていたけど、もう少し色は落とした方がいいような気がした。
いつも、注意されてるのに・・・。強いなぁ・・・。

5 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:34
見物客がきた。
しかも、わんさか。
とおりすがりにあたしを覗いていく人もいる。
っていうか、なんなの、これ・・・。
あたしって、そんなにみんなに知られてたの?
きつと違うよ。なんかすっごく変わった子がいるから見にいかない?的にのりだよ、きっと。
はやくいなくなってくれないかなぁ?

居心地悪くチラッと廊下側を見てみると、バチッと目が合ってしまった。
矢島さんに・・・・・・。

彼女は、ニコッとあたしに笑顔を見せて、それから教室に入ってきた。

「わぁー、ほんと誰かと思った。」

ニコニコとくったくのない笑顔。

「えりかちゃん、だよね?」
「うん・・・。なんでこんなことになっちゃったのかな・・・。」
「え、だってすっごくかわいいよ?」

また、普通に言われてしまった。
すっごく恥ずかしくなった。
思わず勢い良く顔を上げたら、彼女にニコッと微笑まれたから・・・。
もしかしたら、ほっぺた赤くなっちゃったかもしれない・・・・・・。

だめだ、ほら、本物の光と一緒にいると、あたしは昨日までのあたしとちっとも変わってないとやっぱり思い知らされる。

「ね、この前のあれ、さ。どうなったのかな。」
「ああ・・・・・・。」

どうなったんだろう?

「あ、ごめん。あの、ごめんね。思い出させちゃった?もしかして。」
「ん?」

あたしは、彼女が何故謝っているのかがさっぱりわからずにいた。
そうして、思い当たった。
あの不幸の手紙とやらを書いた自分が、どうしてそんなことをしたのかを・・・。
何故だか、すっかり忘れてしまっていた。
廊下で吉澤先生にすれ違っても、もう胸は痛まなかった。
6 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:35
「ああ、いいんだぁ。あたし、あれからなんかすっきりしちゃって。」
「え、そうなの?あ、だからイメチェン?」
「あ、ああ、まあ、そんなところかな?」

あなたとおんなじような光を浴びたかったなんて、いえるわけもなかった。

そんな後ろめたさを感じてはじめて、

「舞美、授業はじまっちゃうよぉー。」

友達に名前を呼ばれて、

「あ、もういかなきゃ。またね。」

そう言って笑った矢島さんの後姿を眺めながら。
あたしは、気づいていた。
彼女に抱いた自分の中の、特別な感情に・・・。

ドアの向こうに消えて行くその横顔を、思わず引き止めたくなってしまうほど、胸が急に・・・。
ギュッ、って痛んだ・・・・・・。

7 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:35

もしかしたら、思ってたんだ。
あんな風に、小さいけどなんかおかしいけど、秘密を共有したあたしに、彼女は翌日も笑いかけてくれるんじゃないかって。
期待したんだ。
笑いかけては、くれた。
偶然に、目が会うと。
でも、あの日みたいに、さっきみたいにあたしに向かって歩いてきてくれることはなくて・・・。

でも、来てくれた。
それが、何を意味するかに、あたしは今気づいた。
またコントロールがきかなくなる・・・・・・。
また、深い痛みを追うことに・・・・・・・きっとなる・・・・・・。

だって、もっともっと近づきたいって、思っちゃう。
思ってる。
暴れだしそうになってる。
あの笑顔をいつも傍で見ていたいって。

あたしは、彼女の特別には一切されていなかったのに。
いないのに・・・・・・。
あたしの中の特別だけが、大きくなっていく・・・・・・。

前髪が、太陽の日差しに透けて、あたしはまた後悔していた。
8 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:36


「マジだ。梅田さんだ。」

ちっちゃな黒髪ショートの女の子にそう言って両指で指された。

「ほんとだ。やばい。綺麗・・・。」

そう言ったのも、ちっちゃな黒髪を肩くらいまで伸ばした女の子。

「ね、綺麗だよね。ちょっとびっくりしちゃった。」

そう言って笑いかけたのは、やっぱり綺麗な黒髪をした矢島さんだった。
クラスにいても、なんだか落ち着かなくって、もしかしたら放課後あたしはまたあの美容室に行って
髪の毛の色だけでも戻してもらおうかなんて思ってた。
そんな放課後、三人の来訪者はあたしのところにやってきたのだった。

「あ、紹介するね。こっちが清水沙紀ちゃんで、こっちが嗣永桃子ちゃん。」
「ども。」
「よろしくぅー。」

ショートの子から順に矢島さんはあたしに彼女たちを紹介してくれた。

「やばいやばいやばい。モテそうだよねぇー。ちょっと嫉妬。」

清水さんは、早口でそう言って、嗣永さんはうんうん、とうなずいた。
あたしは、恥ずかしくなって顔を伏せる。

「あー、それでね?今日みんなでカラオケでも寄ってかえんない?って話してたんだけど、えりかちゃんも
一緒にどうかなあ?って。」

そう切り出してきたのは矢島さんだった。

「カラ、カラオケ?」

家族で行ったりはしたこともあるけど、こんな風に友達に誘われて放課後そんなところに行くのははじめて。
行くのは・・・?
やだ。あたし、行く気になってる?

「どう?もう六時過ぎちゃうと高くなっちゃうからはやめにいきたいんだけど。」

清水さんが急かすようにそういう。

「沙紀ちゃん、せっかちだよねぇー。ほんと。で、どうかな?」

嗣永さんがあたしを覗き込む。

「やっぱ、いきなりは嫌?」

矢島さんが困ったようにあたしに向いて笑ったので、あたしは首を横に振った。

9 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:37


嗣永さんと清水さんはおしゃべりな子達だった。
あたしと矢島さんの前を歩いてる。
なんだかひっきりなしに話す声が聞こえて、あたしから見ればずいぶん背の小さな二人は、なんだかとってもかわいらしく思えた。

「何笑ってるの?」

矢島さんに聞かれて、ヒヤッとする。

「いや、なんだかかわいらしいなぁ、って思いまして・・・。」
「ねえ、敬語やめようよぉー。」

矢島さんが明るくそう言って、彼女が押している自転車の車輪がカラカラと音を立てる。

「ねぇ、舞美。今日の順番じゃんけん。」

清水さんがこちらに向く。

「いーよ。ほら、えりかちゃんも、あっ、あたしは・・・。」

そう言ったとたんに、周りに少し不穏な空気が流れたことがすぐにわかって、あたしは、

「やります・・・。」

と手を差し出した。
10 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:37



一番なんて・・・、寄りに寄って、一番・・・・・・。
でもでもさ?よぉーく考えてみたらさ?
みんながうまく歌うの聞いてから歌うより、自分から行ったほうが・・・・・・。
やっぱり、無理があった。そう考えるのには。
あたしのこれまでの人生が、明るくポジティブになんて考えさせてくれなかった。

「えりかちゃん入れて入れて。」

駅前にあるカラオケ屋。
あたしたちは、部屋に通されて、そしてあたしには清水さんからリモコンが手渡される。
清水さんにリモコンを差し出される。
あたしは、あせって歌本をめくっていた。
どうしよう、何を歌ったらいいかわかんないよ。」

「SPEED?好きなの?どれでもいいから入れちゃいなよ。ほら、沙紀せっかちだから。」

矢島さんがあたしが覗いてるページを覗き込んで、そう促してくれた。
だから、あたしは決心して、一番好きなWHITE LOVEを入れる。
でも、結構古い歌だし・・・。
あたしは、ほんと最近の音楽とか知らない。
家族ときたときとか、みんながわかる曲を歌っちゃうから、むしろ演歌とかよく知っていたりする方の
人間で・・・。

どこかでやっぱりみんなに笑われてるんじゃないかな、って思った。

あたしは、無我夢中で歌っていた。
歌詞の乗っている画面以外は目に入らない。
右隣の嗣永さんが本をめくっているところとか、メロンソーダを飲んでいるところとかがチラッと視界に
入ったけど・・・、友達同士のカラオケってこんななのかな。
11 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:38

「かわいい声ぇ・・・。」

清水さんがぽつり、とそう言うのが聞こえた。
あたしの頬はボッと熱を持った。
どうしよう、なんかやばい。ちゃんと聞かれてる・・・・・・。

背中にじっとりと汗がにじんだ。

「えー、やばい。うまいうまいうまい。」

清水さんがそんな風に行って、

「どうしよぉー、あたしが一番音痴じゃない?」

矢島さんが笑ってそう言った。
嗣永さんは少し笑いながら、リモコンで曲を入れていた。

清水さんが入れた曲が流れ始める。

「はい。タンバリン。」

清水さんにそう言って、自分の持っていたタンバンリンを渡される。

「えー、じゃあ桃マラカスやる。」
「えー、マラカス!?マラカスやっちゃうのぉー?」

清水さんがそう言ってる間に、歌がはじまってしみずさんは歌い始めた。
これってどうすればいいのかな?
っていうか、うっまぁーい。
CMで聞いたことのある曲。

創だよね、最初はこういう盛り上がる系の曲入れたりしたほうがよかったのかな、きっとそうに決まってる。

タンバリンは手持ち無沙汰だったけど、隣の嗣永さんがそりゃあもうはちゃめちゃにマラカスを振っているので、
それに笑ってたら、自然にあたしの手はリズムに合わせてタンバリンをたたいてた。
嗣永さんのこと、楽しそうに眺める矢島さんが、とてもかわいかった。
12 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:38
「あー、やばい。あたしほんと音痴だけど笑わないでね?」

矢島さんの番がきて、あたしにその言葉が向けられる。

「まさか、笑わない。」

あたしは、素直にそう言って、そしたら矢島さんは満面の笑顔をあたしに向けてくれた。
やばいやばい・・・。ほんとにかわいいな、彼女は・・・・・・。

「あたしこれ好き。ドキューン!!!!」

嗣永さんが盛り上がって、矢島さんもそっちに目をやって少し笑ってから歌い始めた。

なんだ。別に音痴じゃないじゃん。
声が独特で、なんかちょっとかっこいい。
清水さんとおんなじようなちょっと低音で。
聞いてて心地いい声。

結構ハヤイリズムのその曲を必死な感じで歌う矢島さん見てたら、あたしの方にチラッと視線が向く。
歌ってる笑顔のままで。っていうか、ずっと笑ってるの。
あたしは、その目が画面の方に向き直ったのを見て、なんだか急にはずかしくなった。
結構、ガン見しちゃったかも。

「あつ、次、桃っ桃だからね、みんな心して聞くようにっ!!!!!」
「はいはい。」

嗣永さんの言葉に、清水さんがそう相槌を打つので思わず笑った。
笑った後、冷静に次の曲を選んでる清水さんに、急にまたあせり始める。

「ね、ねえ、演歌とかだめかなぁ?」

思わずあせりすぎて、一番なじんでる矢島さんに顔を近づけてたずねる。

「演歌!?」

はじかれたようにこっちを向いた矢島さんに、

「うつそ。演歌歌えるの?聞きたい。あたし聞きたい入れてよ。」

清水さんがすんごく乗ってきた。
13 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:39
「えっ、もうキャプテンっ!!桃の歌っ!!!あっ、はじまっちゃったっ!!!!!」
「ばかだ。出だし歌えてないよぉー。」

清水さんが楽しそうにソファーに仰け反って嗣永さんを指差した。

嗣永さんは、かわいいロックって感じの曲を歌った。タイトルの画面には、アニメの主題歌って
書いてあった。なんだか見た目どおり、かわいい系の曲が好きなのかな。
そんでもって、声もかわいらしかった。最初っから少し思ってたけど、なんだかとても高校生には
思えないくらい。
振りらしきものもところどころついていて、清水さんはその嗣永さんのちょっとだけぶりっこしたみたいな動きを
また笑ったりしていた。

「あたし、おかわり頼むけどえりかちゃんは?」

矢島さんにそういわれてみると、一番最初に頼んだウーロン茶がだいぶなくなっていたので、あたしはコーラを
一緒に頼んでもらうことにした。
必要以上にのどがかわいたせい。
それにしても・・・。矢島さんってコーラ飲んでたよね?もう空だとかやっぱりはやくない?
嗣永さんのメロンソーダと清水さんのミルクティーはまだ半分以上残ってるのに。

「あたしもなんかカラオケとかすんごくのどか沸いて大変なんだぁ。」

矢島さんはそう言って、受話器の方へと歩いて行った。
あたしは・・・、緊張して知らない間にがぶ飲みしちゃってただけなんだけどなぁ・・・。

演歌は以外にも好評だった。
だけど、やっぱり他のみんなが歌うときよりも盛り上がらない。
逆に真剣に聞かれすぎて、なんだか顔から火が出ちゃうほど恥ずかしく感じた。

「やばい。桃もこれ今度歌えるようになろう。」
「歌詞とかすごいよね、演歌って。」

みんなはそんなこと思いもしないように楽しそうに会話をはずませていた。
14 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:39
「えっ、もうキャプテンっ!!桃の歌っ!!!あっ、はじまっちゃったっ!!!!!」
「ばかだ。出だし歌えてないよぉー。」

清水さんが楽しそうにソファーに仰け反って嗣永さんを指差した。

嗣永さんは、かわいいロックって感じの曲を歌った。タイトルの画面には、アニメの主題歌って
書いてあった。なんだか見た目どおり、かわいい系の曲が好きなのかな。
そんでもって、声もかわいらしかった。最初っから少し思ってたけど、なんだかとても高校生には
思えないくらい。
振りらしきものもところどころついていて、清水さんはその嗣永さんのちょっとだけぶりっこしたみたいな動きを
また笑ったりしていた。

「あたし、おかわり頼むけどえりかちゃんは?」

矢島さんにそういわれてみると、一番最初に頼んだウーロン茶がだいぶなくなっていたので、あたしはコーラを
一緒に頼んでもらうことにした。
必要以上にのどがかわいたせい。
それにしても・・・。矢島さんってコーラ飲んでたよね?もう空だとかやっぱりはやくない?
嗣永さんのメロンソーダと清水さんのミルクティーはまだ半分以上残ってるのに。

「あたしもなんかカラオケとかすんごくのどか沸いて大変なんだぁ。」

矢島さんはそう言って、受話器の方へと歩いて行った。
あたしは・・・、緊張して知らない間にがぶ飲みしちゃってただけなんだけどなぁ・・・。

演歌は以外にも好評だった。
だけど、やっぱり他のみんなが歌うときよりも盛り上がらない。
逆に真剣に聞かれすぎて、なんだか顔から火が出ちゃうほど恥ずかしく感じた。

「やばい。桃もこれ今度歌えるようになろう。」
「歌詞とかすごいよね、演歌って。」

みんなはそんなこと思いもしないように楽しそうに会話をはずませていた。
15 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:40



「プリクラとるべ?桃。」
「撮る撮る撮ろう?」

二時間歌ってその後、二人ははしゃいで嗣永さんの最後の言葉はあたしに向いて放たれた。

「う、うん。」

プリクラかぁー。
ナンカスーパーとかで一人でこっそりとったこととかあるけど、やっぱりこういうのははじめてで。

「いつもね、新しい友達と遊んだときは撮るんだみんなで。」

矢島さんがそう言って、あたしは『新しい友達』と言われたその言葉にちょっぴり感動していた。
だって、携帯のアドレスも交換した。
すべてがはじめてのはこと過ぎて、なんだかいろいろついていけなくって、二時間の間に三回もトイレに
行っちゃったけど、みんなでプリクラに収まったあたしは、少しだけ笑顔をつくってあげると、なんだか

ほんとうにみんなの友達みたいに見えた。
16 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:40




「ねえ、お願いがあるんだけどいいかな?」
「え、何?梅田さんめずらしいじゃーん。」

次の日。あたしは、クラス一元気なあの子に話しかけていた。
すんごく迷ったんだけど、勇気を出してみることにした。
だって、昨日の帰り道『絶対また来ようね。』って嗣永さんがあたしに笑顔を向けてくれたから・・・。
社交事例かもしれないとやっぱりあたしはネガティブだったけど、やつぱりそんなままじゃいやだから・・・・・・。

「んで、なになに?」
「あ、あのカラオケで歌ったら受ける曲とか教えてもらいたいなぁー、って。」
「あっ!」

彼女は、そんな風に言って、あたしの顔を指差した。

「やっぱ男でしょ?男できたんっしょ?そうじゃないかと思ってたんだよねぇー。」
「いや、あの・・・・・・。」
「いーからいーから照れなくっても。わかった。ウチに任せといていい曲選ぶよ。
あんね、男受けを狙うならまずこれだね。」

彼女は、あたしにショッピングモールの携帯サイトみたいなところから、いろいろな曲のジャケットと
タイトルを見せてくれた。

「ダウンロードすんなら、アド送るけど?ここ無料だからちょーいいよ。」
「あ、うん。お願いできるかな?」
「オッケー。携帯貸し手。」
「あ、うん。」
「送信、とりゃ!!!!!!!はい。オッケー。登録登録。」

彼女は機種の違うはずのあたしの携帯をいとも簡単に操作して、自分のアドレスをあたしの形態に登録してくれた。
そしたら、すぐに彼女からのメールが届く。
サイトのアドレスが乗っていた。

「ありがとう。」
「無料だけど会員制だから、空メ送ってからなるといいよ。」

なんだか、少し前までちょっと怖いかなって思ってたその子は、なんだかとても親切な子だった。
あたしは、知らないことだらけな自分を少し恥ずかしいと重い、だけど、新しいことを知るのはこんなにも
楽しいことなんだ、って同時に思い始めていた。
17 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:41

『そうなんだ。新しい曲覚えるんだね。』
矢島さんのメール。
昨日の夜届いてた『初メール(キラキラ)今日は楽しかったまた遊ぼうね^^』ってメールに返信できなくって、
でも、やっと送ってみた。
きっと、笑われる内容かもしれなかった。最近の曲知らないから覚えます。なんて。
でも、あたしには、矢島さんには隠すことなんてもうないような気がしていたから、送ることができた。
用件もないのにめーる、なんてのはできる人ではないし。
それに少しだけ、もしかしたら、次も誘ってもらえるかもしれないな、なんて期待を込めなかったわけでもない。

例によって、そんなこと考えて送ったメールの後には、少しだけ落ち込むのだけれど・・・。

あたしは、クラスのみんなに自分から積極的に話しかけるように努力した。
なんだか一番話しかけやすかったグループのこたちは、なんだかすごい団結力で、あたしのこと簡単に
受け入れてくれなくって、ショックだったりしたけど。
それでも、あたしはめげなかった。
生徒手帳にこっそり入れているあの日四人で撮ったプリクラを眺めてたら、なんだかいつでも勇気っていうか、
やる気が沸いてきていた。

そのうちに、席の近い子達と頻繁に話ができるようになった。
お弁当も一緒に食べれるようになった。
きっと、あたしを友達だって認めてくれたんだ、って思えた。

メアドも交換して、いろんな子のメールとかから、絵文字の使い方とか、用事がないときのメールの打ち方とか
勉強した。でも、その子たちと仲良くなればなるほど、矢島さんから距離が離れていくような機がした。
だって、あたしたちは、クラスが違う。
それは決定的に悲しいことだった。

もしも、クラスが一緒なら、今頃きっと仲良くなってたのは彼女たちだったかもしれないのに・・・。
18 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:42

『そっかカラオケ行ったんだね。歌える曲増えたの?』
『うん。増えたよ〜。なんか矢島さんたちのおかげで、また一つ積極的になれたって感じ?』

たまに、矢島さんとはメールをやりとりした。
前にあたしが書いた内容について、矢島さんからどう?っていう探りのメールが入ってくるときもあれば、
あたしが思い切って自分からメールをするときもあった。

クラスが違うだけじゃなくって、教室がある階さえも違う。そんなに遠くなかったら、今頃あたしは彼女を
遊びに誘えてたかもしれない。偶然、廊下で会ったその拍子に。
そのくらい、あたしは変われていた。
きっと、ずいぶん明るくなったのだと思う。

だってクラスにいても、仲良くしているグループじゃなくっても、よく話しかけられるようになったし、
お母さんなんて、「何かあったの?」とか心配そうな顔して聞いてきた。これには少しだけ参った。
あたしにとっては、すんごく前向きなことなのに、何故かすごく心配されちゃったんだもん。
でも、「変わりたかったから、かわった。」そんな風にまっすぐ気持ちを伝えただけでお母さんはほっとしたように
微笑んで納得してくれた。
それどころか、休みの日には一緒に買い物に行こうなんて誘ってきたりする。少しだけ高級なお店に。
お洒落したいでしょ?なんて、楽しそうに誘ってくれたりするんだ。

それで、また一つ矢島さんに遅れるメールの話題が増えた。
買い物に行った日の夜、それを着て撮るのはなんとなく恥ずかしかったから『こんな服買っちゃった』と写メを
撮ってメールを送った。

そしたら、送り返されてきたメールにびっくりしてしまった。
19 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:42
『え、やばい。すごい似合うよ絶対ぃー。着てるとこ見たかったな。あっ、そうだっ!!!!!すっごく久しぶりだし、
今度一緒に遊びに行かない?その服着てるとこも見たいし、カラオケでどんな曲歌えるようになったかも知りたいよぉー^^。』

そんなメールだった。
・・・誘われちゃった!?
一緒に、遊びにいけるんだ!?
なんだか、感じていた小さなボーダーみたいなもの。
それは、ただクラスが違うというだけで。
それが簡単に今とっぱらわれてしまったようで、あたしはすっごく舞い上がった。
これ、一度きりじゃない。

これからは、きっとあたしも誘える。
そんな風に思えて、とても、それはとてもとても、嬉しかったんだ。
20 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:42
 
21 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:43
次の土曜日、あたしと矢島さんは駅で待ち合わせをしていた。
みんなで遊んだあのカラオケボックスのある学校に近い駅前だ。

「ごめん、待った?」

少し時間よりはやくきすぎたあたしに、矢島さんはニコニコしながら手を振って近づいてきた。

「ううん。っていうか、まだ時間前だし。」
「あ、そっかぁー。えへへっ。」

矢島さんと、なんだか自然に話せてしまっている。
前にあったときは、少しばかり緊張みたいなものをしていたのに。
あたしの肩の力はあのときよりもずいぶんとずいぶんと抜けていた。

「わぁー、やっぱ似合うよね。スタイルいいからかっこいい。」
「そう?」

こんな風にほめられることにも、それほど照れることなく対応できるようになった。
でも、やっぱり、矢島さんに言われるのはなんだかすごく特別で、嬉しいけど、それは見せない。出さない。

「え、ねえ、一人?」
「ん?」

あたしが尋ねると、矢島さんはキョトンとした顔をした。
あれ、もしかしたら、清水さんと嗣永さんも一緒かと思ったんだけど・・・え、なに!?二人っきり・・・!?

「ううん。なんでもない。」

アタシは俯いてそう言った。

「もしかして、やだった?デモさ、沙紀も桃も今日二人で映画行く約束しちゃってたらしくて、これないって。
だから、我慢してよ。」

矢島さんは、そう言いながらあの日のカラオケボックスがある方に歩いて行こうとする。

「や、違うんだぁ。やなんじゃなくて、一緒かと思ったから少し驚いただけだよ。やなわけない。」

あたしは、なんだかシヨックを受けちゃってる矢島さんに向かって、明るくそう言った。

「そう?なんだぁー、あせった。あたし嫌われてる?とか思っちゃった。」

えへへっ、と矢島さんは笑う。
22 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:45
「そんなわけないじゃん。」

そんなわけない。はっきり否定してあげたかったのに、あまり主っきり良くは言ってあげられなかった。
それでも、矢島さんは「そかそか。よかった。」とニッコリと笑顔を見せてくれた。
でもさ、矢島さんって結構すごい私服のセンスしてるんだね。
いや、ちょっと前のあたしなら思いもしなかったかもしんないけど・・・。
なんていうか、派手で、ちょっと独特!?

「ピンク、好きなの?」

ちょっとイメージになかったので聞いてみる。

「あ、うん。好き。え、変かな?」

それが服装のことだとすぐにわかったようで、あたしは目をそらしながら、

「ううん。すごくかわいい。」と、それだけやっと言った。

矢島さんと、なんだかすんごく自然に会話ができている気がする。
BOXに入るのもスムースで、会話も絶えない。

「それでね、その子がいうには男受けするにはこういう曲だって話で。あたしなんもわかんなかったから、
うながされるままに、練習したりして。」
「あはは。そーなんだ。」

男受け、とかあたしが狙ってないのはきっと矢島さんも知ってると思う・・・・・・。
だって、あたしと彼女が出会ったきっかけになったあの人は・・・、女性だから。

「えー、でもこれとかちょーかわいらしそうだよね、聞きたいな。」
「ほんとに?悪いけど、うまいよ?」

あたしが笑いながらそういうと、矢島さんはキョトンって顔をした。
23 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:46
「ん?」
「ううん、なんでもない。」

次の瞬間には、いつもの笑顔。
友達とカラオケ。それにはもうずいぶんなれてきていたし。
それに、こういうのは適当でもいいと知った。
なぜなら、曲を選んでいたりする子は、聞いてなかったりもするから。

でも、二人でカラオケってはじめてだな。
っていうか、これって、デート?
デートなのかなぁ・・・?

あたしは、かわいらしい曲をかわいらしく歌いながら矢島さんの様子をチラッとうかがった。
矢島さんは楽しそうに手拍子をしながら、あたしに笑顔をくれた。
デート、なのかなぁ・・・?

二人でガンガン曲を入れて、ガンガン歌いまくった。
気づいたことがある。
二人だと、フリードリンクにしといても、なかなかドリンクに手がつけられない。
トイレに立ちづらい。
というか、矢島さんの歌うの聞きたいから、出て行くのがもったいない・・・。

「なんかほんと変わったよねぇ、えりかちゃん。」
「そぉ?」

曲もそろそろつきてきて、疲れたなぁーって頃、矢島さんに急に言われた。

「うん。なんか別人みたい。」
「そっかなぁ?」

なんだか、最近はそういうことさえもあんまり自分で思わなくなっていた。

「なに、前の方がよかったかな?」

沈黙がなんとなく嫌で、そんな言葉を振る。

「ううん。そうじゃないけど、なんかちょっとなんか勝手に置いてけぼり感?みたいのちょっと感じちゃった。」

なにそれ・・・。

「あたしはっ、あのね、あの日、あの不幸の手紙の日?」

ばかみたいな過去を笑いながら話す。
思い出すとちょっぴり恥ずかしくて、でも、なんだかちょっと楽しかった思い出。

「あの日からずっと、矢島さんみたいになりたかったんだよ。」

彼女が少し寂しそうだったから、このくらい言ってもだいじょうぶかな?って思った。
24 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:46
「え?」

矢島さんは、キョトン、とした。

「えーえー、何言ってるのかなぁ?」

あ、照れた。顔、嬉しそうだよ?
なにそれ、矢島さんって結構単純だったりすんの?
かわいい・・・・・・。

「あたし暗くてどうしようもなかったから、矢島さんみたいな子になりたいなって思い切って髪の毛の色も
変えたんだよ。」
「マジなの?」

うん、とあたしがうなずくと「えー?そうだったんだぁ。」なんてまた彼女は嬉しそうに笑った。

「なにそれ。あたしとか、普通じゃん。」

何を謙遜をって思ったけど、彼女があまりににこにこ笑うからあたしもつられて思わず笑った。

「えりかちゃんの方が、モデルさんみたいでうらやましいよ。」
「は!?モデル!?」

思わずびっくりしちゃって声がでかくなる。

「うん。スタイルいいし、なんか外人さんみたいだし、かっこいい。」

なにこんなほめられてんのあたし。やばい、顔が赤く鳴っちゃう・・・・・・。

「ねえ、もしかして、どっかの血混ざってる?」
「ううん、純日本人。」
「へ?そうなのぉー?うらやましいなぁー。」

なんだか、彼女はほんとうにあたしのルックスに関して好印象を持ってくれているみたいだ。
そして、二人でこんな風に遊んだりもしてくれる。
あたしは、なんだか胸にいっぱいあったかい気持ちが広がっていくのを感じていた。
このままいったら、もしかしたら??

だめだめ。変に期待すると、傷つくよ。
そうそう。まずはじっくり仲良くなっていくことを考えたほうがいい。
25 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:47



そんなことを考えていたんだけど、そんな日々の終わりはいとも簡単にやってきてしまった。
二人っきりで顔を少しだけ寄せて撮ったプリクラを次の日の日曜日、散々眺めてニヤニヤしちゃったりしながら
すごしていたあたしに、その次の日の月曜日、矢島さんが話をしにやってきたんだ。

「ちょっといい?」

いつかみたいに、耳元に唇はよってこなかった。
少し期待しちやった自分が、ばかみたいだと思った。
26 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:50
「あの、あのね?ずっと思ってたことなんだけど、言っていい?」

はじめて会話した日と、おんなじ場所で、矢島さんは妙に神妙な顔をして、あたしに振り返って
そんな風に言った。

なんでそんなにびくびくしてんの・・・?

あたしののどはゴクリと音を立てた。

まさか、まさかそんなわけはないよね。
あたしって、いつからこんな楽観的になったんだろう。
きっとね友達とかできちゃったせいだね。

暗い自分を忘れちゃったせいだね。
でも、あなたを見るとほんとの自分を思い出すはずなのに。
なんでだか、今はもう、あの頃の自分は思い出せないよ。

「もう一回告白したらどうかなぁ、って。」

舞美の気弱い瞳かあたしに向いた。

「そのこんなこと言って、絶対うまくいくとかはいえないんだけど・・・、
そのなんていうかえりかちゃんかわいくなったし、明るくなったし、きっと
なんていうかだいじょうぶなんじゃないかなぁ、ってずっと考えてたんだ。」

彼女は、何故かうかない顔をしていた。
でも、それはあたしが勝手に見ている錯覚なのかもしれないと思った。
だって、あたしの気持ちはひどく落ち込んでいたから・・・・・・。

「それだけ、言いたかっただけだから。」

彼女はそれだけ慌てて言うと、ひどく慌てたように走ってあたしの前から姿を消した。
フワリといい香りだけを残して。
そう、あの日も確かこの香りがしていた。背中側に載せた彼女の髪の毛の辺りから・・・。
27 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:53



何故だか、それからのあたしは落ち着いていた。
ひどくしっかりと、考えていた。
自分がこれからやるべきことを。
落ち込むのなんか、いつだってできるって。
あの頃のあたしだって、できる。

『もう一回、告白してみたらどうかなぁ?って。』

彼女は、そう言ったんだ。
つもり、きっと、何度でもチャンスはあると、あたしは自分に言い聞かせていた。

その次の日の放課後、暗がりの中、あたしは携帯電話を開いていた。
名前を確認する。
『矢島舞美』間違いない。

なんか、やっぱりあたしは少し勇気が足りなくって、
面と向かっていうのは、やっぱりひどく怖くって、
だから、こうすることに決めました。

矢島さんの靴箱の前で、あたしは心の中でそう唱える。
そして、彼女を最初に見たときのような希望の色をした黄色い封筒を彼女の靴箱の中、
彼女の上履きの上に載せる。

「ふぅ・・・。」

止めていた息を吐き出すと、ずいぶんと気持ちが軽くなった。

傷つくの、少しだけ怖いけど、それより何より、あなたにあたしの気持ちを知って欲しかったから。
思ってるのは、彼女じゃないよ、ってあたしの心が悲鳴を上げるから。

きっと、あなたは驚いて、真剣に悩むのかもしれない。
もしも、困らせたら、ごめん。
でも、あなたもあたしを少し落ち込ませたから、おあいこってことにさせてね。

あたしは、自転車置き場に視線をやった。
そう、あの日も丁度あそこに舞美の自転車があって・・・。
あれ?あれって、矢島さんの自転車じゃない?

どうして?
28 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:54

「これ、間違ってないよね!?入れる場所っ!!!!!!」

大きな声が後ろから聞こえて、あたしの心臓はひっくり帰りそうになった。

うそ・・・。なんで、いるの・・・・・・。

振り返れずに、あたしはたちすくんだ。

「間違えてないよね?」

今度は静かな声だった。
あたしは、小さく深呼吸をして、うなずいた。
そして、振り返る。

「矢島舞美ちゃんへ、って書いてあるでしょ?」

思わず泣いちゃいそうだった。
彼女がなぜかないちゃいそうな顔をしてたからかな。

「書いてる・・・。」
「だったら、矢島さんへだよ。」
「でも、中に書いてあることも、嘘じゃないんだよね?」
「不幸の手紙じゃなかったでしょ?」

あたしはあの日を思い出して、少し笑った。
彼女にとって、もしかしたら不幸の手紙・・・??なんて、チラッと思い浮かんでたら、
矢島さんが真剣にあたしの書いたあの言葉を眺めているのに、気づいた。
29 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:55
「そんなに見ないでよ。」

思わず、そうつぶやく。

「えりだけ手紙とかずるいよね。」
「え?」

何を言われてるかぜんぜんわかんなくて、あたしはキョトンとしてしまった。

「じゃあさ、あたしも手紙でいい?返事。」
「え、ああ、うん。いいよ。」

気まずくならないのが不思議だった。
あたしは、告白をしたのかな?そんな風に思っちゃうほどだったけど、舞美がやっと顔を
あげてあたしにニコッとなんだか泣きたそうな笑顔を向けたとき、胸がキュンとしてそれから
ギュッと痛くなった。

まるで、あの日みたいだと思った。
該当に照らされる道を舞美を後ろに乗せて自転車で走る。
なんとなく前より少しだけ彼女の体が近くにあるような気がして、胸がドキドキするほど、
それはあたしが恋をしているせいかもしれない、と思った。

「じゃあ、明日、手紙書きます。」
「ああ、うん。わかった。」

彼女の笑顔はできそこないの笑顔だった。
でも、なんだかずいぶんかわいい笑顔。
それはやっぱりあたしが恋をしているから?だろうな、きっと。

「ばいばい。」

そう言って、小さく手を振るその仕草もこの前よりもずっとずっとかわいく見えた。

その日の夜、眠れないことを想定できてたら、きっと返事は口にしてくれって、あのとき言って
いたのになぁ。
30 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:56

次の日も、少しも落ち着かなくて。
びっくりするぐらい、舞美の姿は見かけなかったし。さっぱり。
といっても、いつもこんな感じなんだけど、今日はやけに・・・、さけられてる感じとかも
しちゃったりとかして・・・。
でも、覚悟ならできてるはずなんだ。
だいじょうぶ。

あたしは、舞美とおなじことをしていた。
放課後の教室。いつかみたいに。だけど、今日は一人で待つ。
舞美はいったいどんな思いで、こういう時間をすごしたんだろう。
あたしが、ちゃんと手紙書くのか心配だったとか?
心配性・・・。
優しい・・・。
あたしのために、いつか泣いてくれた、舞美・・・。

変だな、やばい泣けてきた。

「えりかちゃん。」

机に突っ伏した途端に、あたしにかけられた彼女の声に、あたしは幻聴でも聞いたかと急いで
顔をあげた。
でも、それは幻聴ではなかった。
やばい、こんなにはやいなんて思ってもみなかった。

苦笑いの彼女。
夕暮れのオレンジが染める教室。
31 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:56
「直接渡すなら、口で言ってもおんなじじゃない?」

歩いてくる彼女に、にじみかけた涙が気づかれないようにと願った。

「でも、恥ずかしかったから。」

彼女がそう言ったけど、目の前に差し出されたピンク色の封筒を受け取った瞬間、何を言われたか
わからなくなってしまった。

『梅田えりかちゃんへ』

ゆっくりと、封筒を開けて、中の便箋を取り出す。
ずいぶんと文字数が少ない気がした。
便箋を開いて中を見たあたしの心臓は、止まってしまったんじゃなかと思った。
うるさかったセミの鳴き声さえも、遠ざかる・・・・・・。
32 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 03:58
『あたしも、好きです。  矢島舞美』

思わず勢い良く彼女を見たら、昨日から何度もくれた苦笑いをしてた。
苦い笑いじゃないね、苦笑いじゃなかったんだよね。
それって、苦笑いじゃなくて、照れてるの・・・?

照れてるの・・・?
うまく、笑えなくなったのは、あなたも、私に恋をしているから・・・?

心臓が早鐘のように騒ぎ出す。
セミの声がコミンミンとうるさかった。

「こんなに長い一日なら、昨日伝えとけばよかった。」

なぜだか彼女は泣き出しそうに見えて、あたしは立ち上がる。
傍にいてあげなきゃ、って気がした。
そしたら、彼女があたしに寄りかかってきて、あたしの心臓は破裂するんじゃないかってぐらいドキリとした。

いい香りがする。
あたしの、大好きな香り。
何度も何度も思い出した香り・・・・・・。

矢島さんが顔を上げて、その目がひどくうるうるしてることに気をとられてたら、
目の前でまつげがゆれて、唇にはふわりと・・・唇の感触・・・・・・。
永遠みたいで、ほんの少しのはじめてのキスの後、真っ赤になっていたらしいあたしを、
真っ赤になっている矢島さんはおかしそうに笑った。

「夕焼けのせいだよ。」
「ほんとに?」
「ん、うそ。」
33 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 04:00



『矢島舞美ちゃんへ、


    好きです。


       梅田えりか』


34 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 04:01

 幸せレター。 −FIN−
35 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 04:03
容量が足りてないとは思わなかったです。
読みづらくしてしまって申し訳ありません。
前スレから続いてます。
36 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/27(土) 04:09
2スレ目キターしかもリアルタイムでキター
甘いなぁかわいいなぁ大好きです
37 名前:_ 投稿日:2008/12/27(土) 04:12
>>167 名無飼育さん
>>168 名無飼育さん
>>169 名無し飼育さん

レスありがとうございます。
励みになりますです。
お待たせいたしました。
期待に応えられていれば良いのですが。

長い話だった上に、間を開けて書いた話だったので、
呼び名が後半間違えたりしていたりするという・・・。
確認不足ですみません。
脳内変換で楽しんでいただければ幸いです。
38 名前:セツナ 投稿日:2008/12/27(土) 04:15
スレ分かれてるのに、いつものようにレスしてしまったw

↑のレス番は前スレのです。

>>36 名無飼育さん
リアルタイムで感想キターw
ありがとうございます。
こんな時間に読んでくれている方がいるとは・・・w
39 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/12/27(土) 22:16
二人とも可愛いすぎる(≧ω≦)
あ〜やじうめ好きだわw
感動をありがとうです!!!
40 名前:39 投稿日:2008/12/27(土) 22:18
ゴメンなさいm(__)mまたサゲるの忘れてたm(__)m
41 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/28(日) 01:49
草板は「2スレ目」とか「続きスレ」禁止ですよ
42 名前:真・スレッドストッパー 投稿日:停止
書けませんよ( ̄ー ̄)ニヤリッ

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