girlish
1 名前:331 投稿日:2007/12/28(金) 00:57

ベリキューメインの短編をいろいろ書かせていただきます。
DDでCPDDなので色んなカップリングが出ると思われますが、そこんとこ気ままに許してください。
2 名前:_ 投稿日:2007/12/28(金) 00:58

「一緒にいたいなら、いればいいのに」

呆れたような息をつかれた。
本当だよね、と言おうとしたけど、形にならなかった。

3 名前:メルトダウン 投稿日:2007/12/28(金) 00:58

__メルトダウン__

4 名前:メルトダウン 投稿日:2007/12/28(金) 00:59

梨沙子に好きと伝えて、同じ言葉をもらってからもう2ヶ月が過ぎようとしていた。
一緒にいればいるほど気持ちは止まらなくて、抑えられなくなっていく。
見ればかわいいなと思うし、そばにいれば触れたくなる。
他に誰もいなければ抱きしめたくて、キスがしたくなる。
許される限り、ずっとそうしてたい。そう思うようになるともう駄目だった。
あたしの中の5割を、7割を、9割を梨沙子が占めるようになってしまった。
いつだって梨沙子のことを考えて、想ってしまう。
ひとりの時も、他の誰かといる時も、もちろん梨沙子といる時も。
あたしの世界が梨沙子を中心に回るようになってしまった。
梨沙子がどこに行きたいか、梨沙子が何を食べたいか、梨沙子がどうしたくてどう思ってるのか。

5 名前:メルトダウン 投稿日:2007/12/28(金) 00:59

梨沙子があたしを好いてくれてることはよくわかった。
痛いほど、嬉しいほどによくわかった。
だからあたしは喜んでその手を握った。臆することなく握ることが出来た。
その握った手から、触れた唇から、愛とかいろんな感情が流れ込んできて。
まるで風船みたいにどんどん膨らんでいくのがわかる。
このままだと破裂しちゃう、壊れちゃう、って思うのに。
あたしは梨沙子の身体から肌を離すことが出来なくなってしまってる。

愛する人の手はこんなにもあたたかいものだったのか。
愛する人の唇はこんなにもやわらかいものだったのか。

知らなかった。
知らされた。
離れられるはずがない。
6 名前:メルトダウン 投稿日:2007/12/28(金) 01:00

気付けばあたしの携帯のメールフォルダは梨沙子で溢れ、それはあたしの梨沙子への気持ちのようなものだった。
"梨沙子"という文字の羅列。あたしの心にも、同じように溢れかえってる。
梨沙子が、梨沙子に、梨沙子を、梨沙子と。

あたしは、梨沙子なしでは、生きていけないんだろうか?

デビュー曲じゃあるまいし、とそんな考えに自分で笑った。
でも、存外笑えない話だった。
7 名前:メルトダウン 投稿日:2007/12/28(金) 01:00

*
8 名前:メルトダウン 投稿日:2007/12/28(金) 01:00

「………うん」
「何でそんな悩んでるのかよくわかんない」

隣のベッドに寝転びながら梨沙子が言う。
ごめんね、と謝ると、何が? と首を傾げた。
こんなに好きで、と言うと、意味わかんないと膨れてしまった。

「何でそこで謝るの? ていうか謝るとこ?」
「だって、なんか…」
「ももはあたしのこと好きなんでしょ?」

好き。好きだよ。
ちゃんと形にしたいくらい好き。
毎日、いつ、どんな時だって言いたいくらい好き。
9 名前:メルトダウン 投稿日:2007/12/28(金) 01:01

「じゃあ何で悩むの?」

好きならそれでいいじゃん。
あたしも好き、ももも好き。


「何が悪いの?」

10 名前:メルトダウン 投稿日:2007/12/28(金) 01:01


何が悪いんだろう。


この恋愛という複雑で厄介な感情の交錯だろうか。

あまりに純粋で真っ直ぐで真っ白なこの子だろうか。

あまりに弱くて脆くて救いようのないあたしだろうか。


全部?

どれも違う?

それとも――――

11 名前:メルトダウン 投稿日:2007/12/28(金) 01:02


「…なんだろうね」


意味わかんないと梨沙子はもう一度言うと、ごろんと向こうを向いてしまった。
その背中には理解不能と書かれていて、その隣に、抱きしめてよとも書いていた。
でもあたしにはその背中に手を伸ばすことが出来なかった。
どうしてこんなに愚かしいんだろうと嘆くことさえいけないことのような気がした。

12 名前:メルトダウン 投稿日:2007/12/28(金) 01:03

___end.
13 名前:331 投稿日:2007/12/28(金) 01:03

14 名前:331 投稿日:2007/12/28(金) 01:04
しまった、カップリングとか何も言ってなかったorz 早速の失態orz
というわけで、りしゃももでした。
こんな感じでつらつらと書いていければいいなと思います。
試行錯誤してるので色々と具合が変わるかもしれませんが、どうぞよしなに。
15 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/28(金) 11:39
331さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!!
16 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/28(金) 23:40
続き期待してまーす
17 名前:CPヲタ 投稿日:2007/12/30(日) 22:05

やっばい萌えましたっ!!
この二人いいですよねー。
18 名前:331 投稿日:2007/12/31(月) 01:42

※ほんの少しですが、エロ表現あり
19 名前:_ 投稿日:2007/12/31(月) 01:42

ねえ

どうして

うそつくの?

20 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:43

a burden___

21 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:43

冷たい手が、細い指が、湿った舌が。
今日もあたしの身体を這い回る。
肌にはやわらかい熱を、耳には恥ずかしい言葉を。
あたしの身体はあっという間に導かれてく。
22 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:44
「や、もも、」

「佐紀ちゃん…」
「あっ、も…、だ、めっ…」
「いいよ、佐紀ちゃん」
「や、あっ、も、もっ、あっ!」
「…かわい…」


全て追い立てられていく。
全てで、追い立てられていく。


空っぽの愛があたしたちの間にあるのに、

気付かないフリをして。

23 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:44

*
24 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:44

暗い部屋の中、桃はすぅすぅと静かな寝息を立てている。
それに耳を傾けながら、起こさないようにそっと髪をなでる。
ふわりとした柔らかな感触が、桃がここにいることを感じさせる。
幻でもなんでもない、ほんとの桃がここにいることを。
25 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:45


ねぇ、桃。
あたし、知ってるんだよ。

26 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:45

『ちょっ、だめ、こんなとこで…』
『誰も来ないよ』
『でも、あ…』
『そんなこと言って、みーやんもほんとはほしいんでしょ?』


みやにもそうしてるの。
27 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:45

『なっ、ももっ…!』
『しーっ。…声、聞かれちゃうよ?』
『なっ、ちょ、やめ…っ』
『すぐイカせてあげるから…ね』



梨沙子にもそうしてるの。
28 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:46

わかってるんだ。

桃はまだ、子供だから。
自分を許してくれる全ての人に甘えたいような子供だから。
抱いてくれる人なら、抱かせてくれる人なら。
自分にやさしくしてくれる人になら、誰にでも許しちゃうんだよね。
心も、身体も。


きっと桃は知らない。あたしが知ってるってこと。
知らないから、平気で、笑顔で、あたしのこと好きなんて言うんだ。
あたしは知ってるから、笑顔ではいれても、好きなんて言えない。
29 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:46

あたしは、桃のこと好きなのかな。

ふと自分に問う。



裏切られて、騙されて、その度に傷ついて。

あたしが逃げ出すことは簡単で、崩すことはとてもたやすい。

30 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:47

言えばいいだけのこと。

知ってるんだよって。

桃が他の子ともそういうことしてるの、見たことあるんだよ、って。


でも逃げないのは、きっとその時君は傷つくだろうから。


あそばれてまでも、君の心配をするくらい、あたしは溺れてしまってるらしい。

31 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:47

「…ばかみたい」



隣で眠る桃にぽいと投げかけた言葉は、力なく闇へとけた。
32 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:48

もう、逃げることも、許すことも、何も出来やしないのだ。

少しの快感と幸せと、たくさんの苦しみと痛みの上で。
あたしはいつまで笑顔を貼り付けていればいいんだろう。


感情が麻痺してしまったように思う。

色んな気持ちをおしとどめて、
色んな気持ちでふたをして、
色んな気持ちから逃げて隠れて誤魔化してたせいなのかもしれない。
33 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:48

ねえ、桃。

桃はあたしのこと好きなのかな?

あたしは、桃のこと、好きなのかな?
34 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:49

寝てる桃が答えてくれるはずもなかった。
起きててもおんなじだってこともわかってる。
わかってるから、きっと、あたしはここにいる。

35 名前:a burden 投稿日:2007/12/31(月) 01:49

___end.

36 名前:331 投稿日:2007/12/31(月) 01:49
37 名前:331 投稿日:2007/12/31(月) 01:54
あまり幸せでないしみももでした。
ご、ごめんねキャプテン…
次は幸せな話が書けたらいいなと思います。

>>15さん
Σぬお!私をご存知の方ですか!びっくりしましたw

>>16さん
実はりしゃももの続きは予定になかったという…orz
でも考えてみます。しあわせにしあわせに。

>>CPヲタさん
 C P ヲ タ さ ん だ ー ! !
わわわスレ見てますファンです握手してください(ここで)
ありがとうございます、りしゃももはなんかこう、順調には進まない感じのもどかしさが好きです。

それではよいお年を。また来年。
38 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/02(水) 13:43
331さんはほかにスレを持ってるんですか?
39 名前:_ 投稿日:2008/01/22(火) 02:42

「わ、動いた!」


窓に手を当てながら、まだ離れたばかりの地上をきらきらした目で見下ろす。
そんな舞美を見ながら、あたしはこの先十数分、平常でいられるかどうか不安であり、楽しみでもあった。
40 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:43


____君となら

41 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:43

観覧車に乗るなんて久しぶりだ。
というか、高所恐怖症のあたしにとって観覧車は天敵みたいなもので。
自分から乗ろうなんて今まで生きてきた中で一度も言ったことがなかった。
今日までは。
42 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:43

仕事が終わって、駅へ向かう途中。
ゆっくり流れる景色の中に、くるくると光りながら色を変えていく観覧車が見えた。
暗くなり始めた空の中に咲くそれを見ながら、隣の舞美がぽそりと呟いた。

「…乗りたいなー」

その呟きはすぐに風にとけてしまうくらいに小さくて。
それでもあたしはそれを流してしまうことが出来なかった。
43 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:44

「…観覧車?」
「え? あ、うん、あたし高いとこ好きだからさー」

恥ずかしそうに笑いながら、でも舞美はそれ以上話を続けようとしなかった。
暗くなるの早くなってきたね、と違う話題へ持っていきながらも、
目はまだその観覧車を追ってるのにあたしは気付いてた。
44 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:44

思えば舞美が観覧車に乗りたいと明確に伝えてこなかったのは、
高いところが苦手なあたしを案じてだったんだろうと思う。
それは一緒に乗ろうとしてくれてるっていうことなのかな、と思うと嬉しくなる。
ただ一人で乗るのが淋しいだけなのかもしれないけど、それでも嬉しくなる。

でもあたしは見たかった。
舞美が喜ぶ笑顔を。
自分が高いところが苦手だとしても。
たとえ怖い思いをしてでも、見たかったから。


「乗ろうよ、舞美」
45 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:44

*
46 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:44

後悔してないと言えばちょっとウソになるかもしれない。
やっぱり高いとこは怖いし、今日は風も強いからいつ揺れだすかわからないし。
でも、舞美はやっぱり嬉しそうに笑ってたから。
それさえ見れたら、もういいかなって思えた。

「えり、ごめんね?」
「え、なんで」
「高いとこ苦手なのにさー、付き合ってもらっちゃって」

舞美はやさしい。
人のために、自分の感情を抑え込むことが出来る。
最後のひとつを人に譲るやさしさを持ってる。
でも、あたしと一緒にいる時くらいは、我慢なんてしないでほしい。
見せてほしい。自分の好きなことをして、楽しんでる笑顔を。
47 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:45

「いいよ、下見なかったら大丈夫だし」

高いとこ、と言っても、普通に座ってる分には遠く離れてく地面は見えないわけで。
視線をなるべく下に落とさなければ、見えるのは綺麗な景色だけだ。
うっかり窓の下を覗き込んだりさえしなければ、なんとかなりそうな気がする。

それに、景色より見たいものがすぐ近くにあるから。
いつもはゆっくり見れないけど、今は誰にも邪魔されない。
風にも、音にも、誰にも邪魔出来ない。
あたしが舞美を見ることを。
48 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:45

そんなあたしの思いにはまったく気付かないまま、舞美は子供みたいに窓の下を見てはきゃいきゃいはしゃいでる。
車がミニカーみたいだとか、人がごみのようだーとかふざけるその笑顔は、まさにあたしが見たかったものだった。
おもちゃみたいな街並みよりも、色が変わってく空よりも、その笑顔が、一番かがやいて見えた。
49 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:45


「あ、てっぺんだ!」


気付けばもう地上から離れることはしてなくて、
オレンジとか赤とか紫とか紺とか色々まじった空が平行に流れていっていた。
ビルの間に隠れていく太陽よりも高い位置にいる。
反対側の空にはもう一番星がいた。
50 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:46

「…きれー…」
「うん…」


まるで夕方から夜へ移動してるみたいな感覚だった。
その時ばかりは舞美じゃなくて、空を見てた。
ふと視線を戻すと、いつからか舞美の視線はあたしを捉えてて。
ど、どうしたのと少し戸惑いながら聞くと、へへ、とちょっとだけほっぺたを赤くしながら。


「空見てるえり見てた」


あぁ、もう。ずるいよ舞美。
51 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:46

「…うちじゃなくてあっち見なよ」
「えーいいじゃーん」
「いいけどさ…」
「えりもさ、あれだよ、下見るの怖かったらさ、あたし見ればいいよ」

とか言って、と恥ずかしげに付け加える舞美に、もうずっと見てたんだよとは言わないでおいた。
言えばきっと、向こうの空よりも赤く頬が染まるだろうから。
52 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:46

風の音が響く小さな箱の中で、

ゆっくりと遠ざかってく空を見ながら、

そっと手を握ってきたのは舞美の方で。


あと少しで終わってしまうんなら、

もっと早く握っておけばよかったと思ってたら、

「もっと早く繋いどけばよかったね」なんて、

嬉しいことを言ってくれたのも舞美だった。

53 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:46

____end.
54 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:47
 
55 名前:君となら 投稿日:2008/01/22(火) 02:49
もう年が明けて3週間も経ってしまいましたがあけましておめでとうございます。
しあわせじゃないの続きだったので、一発目はしあわせっぽいやじうめにしてみました。
観覧車シリーズはちょっと続きそうな気がします。

>>38さん

いえ、スレは持ってませんよー。
サイトは持っていますが。
56 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/22(火) 18:31
癒されました(*´Д`)ポワワ
57 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/22(火) 21:42
サイト教えください!
58 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/23(水) 00:33
和んだぁ
59 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:21

__君だから

60 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:22

「観覧車とか久しぶりだぁ〜」
「ディズニーってないもんね」
「そうそう、それが残念」

遊園地に来るのは久しぶりだった。
中でも観覧車に乗るのはもっと久しぶりで、子供の頃はよく駄々をこねて乗りたがってたのを思い出す。
今思えば何にそんなにあこがれてたのかはわからないけど、
花火の〆がせんこう花火であるように、あたしの中で遊園地の〆は観覧車だった。
どんな遊園地に行っても、必ず最後に観覧車に乗りたがり、乗れないとふくれて泣いた覚えがある。

少しずつ、ゆっくりと離れていく地上を窓に張り付いて見下ろす。
高いところは得意でもないけど、これくらいならまだ平気だ。
何より観覧車に乗っといて下を見ないのは損だと思う。
せっかく高いところに連れてってくれるんだから、小さくなってく世界を見るのが筋だと思うんだ、なんて。
61 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:22
「ねえ栞菜、あれ見てあれ!」
「んー?」

色とりどりに並ぶ車を指差す。
栞菜がいつのまにかあたしのすぐそばにいて、肩にあごを乗せながらそれを見下ろしてた。
その距離に一瞬どきっとする。

「車?」
「へ、あ、そう、なんかさ、クレヨンみたいじゃない?」
「あーなんかわかるかも」
「でしょでしょ? 巨人になったみたいだぁ」
「そうだねぇ」
「ひゃっ!?」

なんの前触れもなく突然ほっぺにキスされた。
思わず身体をおしのけると、「危ないよ愛理」と平然と揺れる箱の心配をする。

62 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:23

「なっ、急にっ」
「いいじゃん別に」
「よっ、よくないよぉ!」
「もう下から見えないよ?」
「でも隣とかっ」
「大丈夫だって、ほら」

栞菜が指差す両隣の個室には誰の姿もなかった。
そういえば観覧車は人が並んでなくて、すぐ乗れそうだねという理由で乗ったんだった…

「だから大丈夫」

にっと笑った栞菜の顔が近付いてくる。
明らかに次に狙ってる場所がわかって、あわててその肩を押す。
63 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:23

「ちょっ、だっ、だめっ!」
「何で?」
「だだだって一応外だよ?」

個室であるとは言え、一応ガラス張りなわけで。
絶対に見えるわけでもないだろうし、どっちかっていうと見えない可能性の方がはるかに高いだろうし、何より観覧車の個室を凝視する人ってあんまりいないと思う。
でもだからって絶対っていう確証はないわけで、一応私たちも一般人ではないわけで、まあつまりは簡単に言えば恥ずかしい。


少し、沈黙が流れた。
観覧車はゆっくりゆっくり空へ向かってのぼってく。
64 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:24

「見えないって」
「で、でも」
「愛理、したくない?」
「え」
「キス。したくない?」


それを言われてしまうと、困る。


だってしたくないわけ、ないんだもん。

65 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:24

「……し、したくなく、ない…けど…」
「じゃあいいじゃん」
「ででででもぉ!」
「ほら、時間なくなっちゃう」


観覧車はもう4分の1を過ぎたとこまで上がってた。
街がどんどん小さくなってくのが見える。


これが最後の抵抗だ。

66 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:25

「…そ、そういうのってさ」
「そういうの?」
「だから、キス!」
「うん。何?」
「……一番てっぺんでやるもんじゃないの?」


よく聞く話。
観覧車の一番てっぺんでキスをしたカップルは幸せになるとか末永く続くとか。
キスをしたくないわけじゃない、でも恥ずかしい、というあたしの気持ちをもっともらしい理由をつけて伝えてみる。

けど。
67 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:25


「てっぺんでしかしないとか、もったいないじゃん」


68 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:25


当たり前かのように言いのけた唇は、容赦なくあたしのそれに触れてきて。

もう反論も抵抗も出来ないまま、あたしはそっと目を閉じた。

次に目を開いた時は、もうきっと外の景色は元のサイズに戻ってるんだろうなと思いながら。



やさしく触れてくる唇から逃げ出すことなんて、最初から出来ない。

多分ここが観覧車じゃなくっても。
69 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:26

__end.


70 名前:君だから 投稿日:2008/02/02(土) 21:26
71 名前:331 投稿日:2008/02/02(土) 21:31
観覧車シリーズ第二段はあいかんでした。
愛理は栞菜に振り回されまくってればいいと思います。

>>56さん
ありがとうございます!(*´д`*)

>>57さん
メル欄をご参照くださいませー

>>58さん
和んでくださって私も嬉しいです(*´▽`)
72 名前:_ 投稿日:2008/03/04(火) 23:43

観覧車に乗ろう、と突然ももが言い出した。

73 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:43

イベントのリハーサル会場のすぐそばにある観覧車を見上げてると、乗ろうよなんて言い出したのだ。
その時、まだ観覧車も動き出したばかりで、しかもリハーサルまで時間はまだ1時間以上あった。
ていよく断る理由がすぐに見つからなくて、あたしは渋々ももの手に素直に引っ張られてくしかなかった。

誰ひとり並んでない通路を小走りに走るももについていく。
この観覧車はよく見るけど、乗るのは初めてだった。
辺りをきょろきょろと見回してるうちに、ももが乗車券を買ってくれたらしく、
お金はあとでいいから、と渡してくれる。
待つことなく乗り込んだとこを見ると、どうやらうちらがお客さん第一号らしい。
74 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:43

「すごぉーい、観覧車とか久しぶりー」
「うん、うちも」

赤い箱がうちらを乗せてゆっくりと空へのぼってく。
そういえば誰にも観覧車に乗るって言ってこなかった。
ポケットを探って携帯を取り出すと、その手を制された。

「な、なに」
「だめだよみーやん、せっかく二人っきりなんだからぁ」
「はぁ?」
「携帯禁止」

取り上げられることはなかったけど、その手はまたポケットに押し戻された。
別にそんな勝手なルール無視することだって出来たけど、なんとなく携帯を離してからポケットから手を出した。
それを見てももは満足げにうなずいた。

75 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:44

なんだか近い気がする。
4、5人は乗れそうなこの観覧車の個室の中で、明らかにももとの距離が近い。
そのせいかちょっと傾いてるようにも感じる。
なにより不自然なまでにくっついてくる肩や腕が気になってしょうがない。

「……あ、あのさ」
「ん? あ、見て飛行機!」
「あ、うん……あの…」
「どしたのみーやん?」

ももが不思議そうに首をかしげる。
さっきリップを塗ってた唇が、太陽の光を受けててかって見える。

―――何でそこに目が行くんだろ。

76 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:44

「みーやん?」
「え、あ、何でもない」

顔ごと目を背けて、視線を小さくなってく風景に移す。
へんなの、と呟く声がしたけど、聞こえないフリをした。
景色も空も全部きれいだったけど、全然心に残らない。
それもこれも全部もものせいだ。
急に観覧車乗ろうとか、ヘンに近くに座ってるもものせいだ。

(……ばか…)


やつあたりだってわかってるけど、そう思わずにはいられなかった。

77 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:44

*

78 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:44

「観覧車ってさー、てっぺんすぎると淋しくなるよね」
「え、何で?」
「だってさぁ、もう降りてくだけじゃん。なんかつまんない」
「ふーん…?」
「そう思わない?」
「え、わかんない。うちあんま観覧車乗らないし」
「うっそー、みーやんそれ人生損してる」
「何それ」
「こんな楽しいの乗らないなんて駄目だよ!」
「高いとこ苦手なくせに」
「…それとこれとは別なんですぅー」


さっきまでももはてっぺんに近付くにつれて、「こわいこわい」と言いながらうちの腕にしがみついてきてた。
目を閉じながらもちらちら外を見る姿がなんだかおかしくて、それまで感じてたどきどきはどこかへ飛んでってしまって。
「ここで止まったらどうする?」なんて意地悪言う余裕も出来てた。

79 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:45

もうあと少しで、地上についてしまう。
最初はそうでもなかったけど、ちゃんと観覧車のダイゴミってやつ、堪能できたと思う。
でもなんでだろう、どこかなにか物足りない。

係員さんの姿が見えた。
もうここから降りなきゃいけない。

ドアが開かれた。

立たなきゃ。
降りなきゃ。

腰をあげようとしたその時。
80 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:45

「みーやん、まだだよ」
「は?」

81 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:45

係員さんは笑顔で会釈してくれた。
ももがそれに同じものを返す。

状況がさっぱりわからない。


「……え、なんで」
「2周分買っといたの」
「へ!? 聞いてない!」
「言ってないもん」
「何それ!」
「ほら、まだ時間平気だし」
「そういう問題じゃなくて!」

82 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:45


なんで、なんで。

こんなの、――――


「1周だけじゃもったいないじゃん」


ずるいよ。

83 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:46

ももの手がするりと手の甲をなでてきた。
それに、と意地悪そうな笑みを浮かべながら続ける。

「みーやん、キスしてほしそうだったから」
「…はぁっ!?」
「もうちょっと待ってね、まだ見えちゃいそうだからさー」
「ちょっ、なっ、何言ってんの!」
「照れなくてもいいのにぃ」

くすくすと笑う声が個室の中に響く。
うちはと言うと、観覧車には風通しの窓が開いてるのにすごく熱くて。
しっかりと絡んでくる指を振りほどけないままでいた。

84 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:46

「一周で何回出来るかなぁ」
「…知らないし」

85 名前:君にだけ 投稿日:2008/03/04(火) 23:46

___end.

86 名前:331 投稿日:2008/03/04(火) 23:47
 
87 名前:331 投稿日:2008/03/04(火) 23:48
ほぼ一ヶ月ぶりの更新となってしまいましたが生きてます。
今回も観覧車シリーズ、みやももでお送りしました。
最初にタイトル入れ忘れた(Z)orz

観覧車はぜっぷとーきょーのあれです。
88 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/05(水) 00:42
最近仲良さそうな二人ですねw
89 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/22(土) 00:06
このスレも終わりか…残念。

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