口端にキス
- 1 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/04(火) 12:36
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りーちゃん絡みを徒然と。
自分の書きたいものを適当に書いていきます。
りしゃみや、りしゃもも、りしゃゆりが中心になる予定です。
- 2 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/04(火) 12:37
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まずはスレタイの短編を。
りしゃみや、アンリアルです。
- 3 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:38
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ごろんと寝転がる。
屋上から見える空は近くて。
少し涼しくなった秋風が気持ちよかった。
- 4 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:38
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―口端にキス―
- 5 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:39
-
「梨沙子ー?帰るよ、ここにいるんでしょ。」
ガチャリと開けた扉は真っ青な空に続いていた。
塗装のはがれかけた床や錆付いたフェンス。
そんなものしかない屋上には誰も寄り付かない。
今、給水塔の上で寝ている雅の幼馴染以外は。
―なんでこんな所で寝るかなぁ。
今年から中学校に入った梨沙子ははっきり言ってサボり魔だ。
昼、一緒にお弁当を食べるために迎えに行けば教室に居ない。
聞けば屋上か保健室で寝ていると言う。
放課後、部活にいないと思えば体調不良で帰ったと言う。
実際は屋上で寝て雅を待っていることがほとんどなのだが。
一年生からこの調子で大丈夫なのか心配だった。
- 6 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:39
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「梨沙子、まだ寝てるの?」
しばらく経っても降りてこない梨沙子にため息が出る。
仕方がないのでハシゴを上り、給水塔の上に立つ。
スカートがひらひらしてくすぐったかった。
やはり梨沙子はまだ寝ていた。
―暑いなぁー、ここ。
じわりと汗が滲む。
赤くなった太陽がオレンジの光を屋上に差し込む。
雅の学校は四階建てだ。
その分、太陽がグラウンドより近く感じられた。
- 7 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:40
-
「いい加減起きてよ。もう、六時になるよ。」
雅は部活を終えて、体操着から着替えてそれからここに来た。
それなのに梨沙子は授業が終わった後からずっと寝ていて、しかも未だ起きない。
良く寝る子だとは思っていた。
雅の家に遊びに来ても、梨沙子の家で遊んでいても。
梨沙子は眠くなるとすぐ寝てしまう子なのだ。
膝を着き梨沙子の顔を覗き込む。
穏やかな寝顔。
白い肌は夕日に照らされて微かに赤く染まっていた。
そっとその頬に手を伸ばし、つーっと撫でる。
するとびくりと身を竦ませるようにした後、うっすらと目が開く。
- 8 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:41
-
「んっ……ぅ……?」
「梨沙子、起きた?」
「ふ…ぁー……み、や?」
ぼんやりとした眠そうな目が雅を見つめる。
暑かったのだろう。
広げられた胸元に少しドキッとした。
そこにいるのは幼馴染じゃなくて。
そこにいるのは梨沙子じゃなくて。
刹那、知らない少女のように思えた。
「どうしたの、みや。」
「もう帰る時間!追いてったら、うちがお母さんに怒られるんだから。」
―どうしたの、じゃないって!
こっちは部活終わりの疲れた体で探していたのだから。
雅は独り心の中で呟く。
へらっと力の抜ける笑顔で言う梨沙子に一気に疲れがきた。
- 9 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:41
-
「よくそんなに寝れるよね……。」
朝も早くはない。
低血圧の雅と同じ時間。
つまりぎりぎりまで寝ている。
朝だけは梨沙子が雅を迎えに来ているので、少しは早く起きているのだろう。
授業も余り真面目に受けていないようだし、放課後はこうだ。
起きている時間の方が短いんじゃないかと雅は真剣に思った。
そう思う雅を梨沙子は微かに首をかしげて見る。
「んー……そんなことないよ。たぶん。」
「寝てるじゃん。」
「眠りが浅いんだってゆりに言われた。」
「ゆり?なんで熊井ちゃん、梨沙子がよく寝ること知ってるわけ?」
「だってゆりもよくここ来るもん。」
起こしてくれるんだという梨沙子の声は半分しか雅には聞こえていなかった。
- 10 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:42
-
―熊井ちゃんが、ね。
そんな風には見えなかった。
友理奈がサボったなんて聞いたことがない。
雅のクラスには友理奈と仲の良い千奈美がいる。
お昼も一緒に食べているらしいが、梨沙子のようなことは一度もないようだ。
連れ立って梨沙子と友理奈を迎えに行くのだが、
千奈美が二年生の階から雅のように独りで帰って来た所を見たことがない。
さらに言えば友理奈は忙しい。
部活でも期待を掛けられているし、生徒会にも抜擢されていた。
そんな友理奈がわざわざ屋上まで来て梨沙子を起こすとしたら。
それは決して偶然ではない。
友理奈が梨沙子を気にかけている証拠だ。
- 11 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:43
-
「ゆりがいなかったら、あたし、たぶん全部の授業休んでた日もあったよ。」
「……どんだけ寝るのよ、あんたは。」
もうこの幼馴染にはため息しか出ない。
いつしか夕日も沈みかけていて、辺りは暗くなり始めていた。
幸い梨沙子の目は完全に覚めたようだし、やっと帰れると雅は思った。
側に放り投げてあった梨沙子の鞄も一緒に持って立ち上がる。
「ほら帰ろう。これ以上遅くなったら怒られるよ。」
「うん、ねぇみや。」
「何?」
やっと上半身を起こした梨沙子が雅を見上げる。
最後の一輝きとばかりに真っ赤な夕日が空を染める。
その中で梨沙子が微笑したのがわかった。
茶色い髪が日に照らされ黄金に近い色を出す。
- 12 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:43
-
「あたしが一番深く眠れるのっていつだと思う?」
「家のベッド?」
「違うよ。」
ぐいっと手を引っ張られて前のめりになった。
踏ん張ろうとしたが出来ずそのまま梨沙子の太ももに腰を下ろすような状態になる。
ぺたんと足を跨いで女の子座り。
―ちょっ!
焦る。
こういう時梨沙子の顔が人並み以上だという事に気づかされる。
目の前にあるそれは日暮れに見ると酷く大人っぽい。
そしてその雰囲気は抵抗する気を抑えてしまう。
- 13 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:44
-
「みやの側だよ、みやの側が一番よく眠れるの。」
「っ……!」
顔が近づき薄く梨沙子の唇が開かれた。
ヤバイと思ったときには遅かった。
止める間も無くぺろりと口の端、唇スレスレを舐められる。
目を閉じることも出来ない。
ただ見ているだけ。
だが体は確かにそこに触れられたのを理解した。
その瞬間に雅の体がかーっと熱くなる。
理路整然と事実を認めた頭が一気に混乱し始める。
- 14 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:45
-
「え、あ、今、えぇっ、梨沙子!」
当然きちんとした日本語を話せるわけもなく。
雅の口から出たのは意味不明な単語。
唯一名前だけははっきりと言えた。
―告白?っていうかキスされた?
あれはキスではない。
唇が触れたわけではない。
ならばあれは何だ。
もう何を考えればいいのかさえ分からない。
ただ。
- 15 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:45
-
―みやの側が一番良く眠れるの。
梨沙子の言葉が繰り返される。
嬉しいと思った。
神経質な梨沙子が一番良く眠れる場所。
それが自分だという事は、梨沙子が一番安心できる場所だということ。
何故だか逆に安心した。
「みや、帰ろう。完全に日が暮れちゃった。」
「え?あ、うん。帰ろっか。」
慌てる様子もない年下の幼馴染。
確信犯なのか、自覚がないだけなのか。
どっちにしろ自分は振り回されるばかりだと雅は思った。
- 16 名前:―口端にキス― 投稿日:2007/09/04(火) 12:46
-
―嫌じゃなかった……。
触れられた所をなぞりつつ、そう考える。
あんな事されたのに思うのはそれだけで。
雅は楽しそうに笑う梨沙子に引っ張られながら帰ったのだった。
―口端にキス―終
- 17 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/04(火) 12:46
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- 18 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/04(火) 12:47
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続いて、りしゃもも。
上と繋がってるような、繋がっていないような話です。
- 19 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/04(火) 12:47
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- 20 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:48
-
「こんな事してていいの?みーやん、待ってるでしょ。」
「いいの!みやはあたしのことなんて待ってないもん。」
ぷいと拗ねるその顔が愛しくて。
ももはきっと離れられなくなったんだ。
- 21 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:48
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―イケナイ時間―
- 22 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:49
-
「りーちゃん、シャワー開いたよ。」
「もうちょっと、あとでいぃー……。」
「駄目だよ、結構時間も遅いしさ。」
布団に包まる梨沙子に桃子は声をかける。
くるりと器用に丸まって寝る梨沙子はかなり愛らしい。
桃子は僅かに出ている梨沙子の肩に手を掛け揺らす。
- 23 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:50
-
―可愛いんだけどなぁー。
今、ゆっくりできる時間はない。
ここは桃子の家で、梨沙子の家までは三十分は見たほうがいい。
そう考えるとこのまま寝かせてしまうことは出来ない。
余り遅くなると雅からメールが来るだろうから。
梨沙子、知らない?って。
素っ気無いメール内容まで予想できて桃子は少し笑えてしまった。
だけどそれが雅なのだから仕方ない。
- 24 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:50
-
「ぅー……ももちがキスしてくれたら起きる。」
「はい?」
何を言うんだ、この子は。
そう思いつつ拒めない、むしろ喜んでいる自分がいることを桃子は知っている。
欲しかったから自ら手を伸ばした。
だから望まれれば素直に嬉しい。
故にくすりと笑ってそうするしか桃子にはできない。
「止まらなくなっても、知らないよ?」
「別にいいよ、それにももちは困るの分かっててそういうのしないもん。」
布団から悪戯に見つめてくる梨沙子。
その顔は三つも下にはとても見えなくて。
まずは軽く頬に唇を落とした。
- 25 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:51
-
―……本当に止まりそうにないんだけど。
その柔らかい感触に酔いしれる。
そして止まりそうにない自分に苦笑する。
変な信頼をしてくれている梨沙子には悪いと思う。
だが桃子は自分の理性を梨沙子ほどに信用してはいなかった。
「んっ…ちょ、もも……くすぐったいよ。」
一つ、二つとキスを増やす。
頬や唇は勿論、段々とその場所は下がっていく。
口付けるたびに漏れる梨沙子のくすくす笑いが心地よかった。
布団はすでに剥いでいた。
梨沙子の上に乗り、肌着しか身に着けていない体に手を滑らせる。
- 26 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:51
-
―白くて、きれいな肌。
桃子自身も色白な方だが、また違う白さが梨沙子にはあった。
むき出しの肩から二の腕、掌と辿り右手をとり手の甲にキスをする。
この白い肌に痕を付けたくてしょうがなくなった。
梨沙子が例え短い時間でも自分といた証拠が欲しい。
このまま一思いに所有印をつけてしまいたい。
だが。
―りーちゃん、困るよね。
その思いが桃子を思いとどまらせる。
雅に見られたら、それこそマズイ。
間違いなく梨沙子が雅に突っ込まれることだろう。
そうしたら梨沙子は泣いてしまう。
その時、桃子はきっと側にいることができない。
梨沙子も桃子望んではいない。
歯がゆくて、悔しい気持ちが広がる。
- 27 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:52
-
桃子はそれを打ち消すためにも目の前の事に集中しようとする。
肌着をずり上げてふっくらとした丘を舐める。
にっと強気な表情を作って梨沙子を見る。
「りーちゃん。止まらないけど、いいよね。」
だけど梨沙子から出たのはそんな桃子の中を見たかのような言葉。
「ふっ……ぁ……いいよ、ももち。痕、つけても。」
「っでも、困るでしょ。」
桃子にしては珍しい、情けない顔。
そんな桃子を見て梨沙子が優しく微笑む。
温かい笑顔。
何でも許してくれそうな、許してしまいそうな表情。
- 28 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:52
-
「大丈夫だよ。もも、いつも我慢してるじゃん。」
さらりと桃子の髪に梨沙子の手が潜り、撫でる。
緩やかな動きに桃子は一瞬泣きそうなほど嬉しくなった。
―違う。
―泣きたくなるほど優しいんだ。
こつんと梨沙子の肩に顔を埋める。
そうでもしないと涙がこぼれそうだった。
ぎゅっと押し付ける。
まだ撫でてくれる梨沙子の手が気持ちいいと思った。
- 29 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:53
-
「ほら、さっさとつけちゃって。」
「うん、ありがとう。」
気恥ずかしいのだろう。
少し口早に梨沙子が言った。
耳元で聞こえる照れた声に少し余裕ができる。
手始めに今、くっついている肩に一つ赤い痕を残す。
許されたなら思いっきりやってしまおう。
そんな吹っ切れた考えが桃子を覆った。
次々に胸を中心に赤い色が広がっていく。
- 30 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:53
-
「ひゃ……ぅ、ももちぃ。」
「可愛いよ、りーちゃん。」
吸い付くたびに漏れる吐息。
ぴくりと跳ねる白い身体。
震える瞼。
全てを慈しみたい。
「ふぅ、んっ……ぁ。」
あらかた印をつけて、最後にキスをした。
柔らかい感触と熱い舌。
全てが溶けてしまえばいいと思った。
- 31 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:54
-
♪〜
- 32 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:54
-
それを壊したのは携帯の着信音。
『恋の呪縛』だ。
これがかかる相手は一人しかいない。
桃子は梨沙子の上から退くと机の上に放置してある携帯を取る。
画面には予想通りの人物、夏焼雅の名前が踊っていた。
「……誰?」
「みーやん。」
冷たい声が出た。
びくりと快感に惚けた顔をしていた梨沙子が反応を示す。
桃子はそれを苦い思いで見つめ、かなり逸れてしまっていた本題を思い出す。
- 33 名前:―イケナイ時間― 投稿日:2007/09/04(火) 12:55
-
「りーちゃん、シャワー。今度こそちゃんと浴びなよ。」
「ぅん、行ってくる。」
桃子が持ってきていたバスタオル一枚を巻いて梨沙子がお風呂場に向かう。
雅が関わると梨沙子は本当に素直だ。
桃子はメールに目を通しつつそう考える。
内容は桃子が予想したとおりだった。
帰りの遅い梨沙子を心配してのメール。
適当に梨沙子が寝てしまって起きなかったとでも送ればいい。
桃子には慣れた作業だった。
送り終えればぱちんと携帯を畳み、同じように机に置く。
一人ベッドに寝転ぶと梨沙子の体温が残っていた。
愛しくて仕方ないそれが今だけは悲しく感じられた。
―イケナイ時間―終
- 34 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/04(火) 12:55
-
- 35 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/04(火) 13:00
-
りしゃみや風味のりしゃももでした。
梨沙子と一緒の桃子が通常より白く見えるのは自分だけでしょうか?
りしゃもも、万歳(ボソ
一言。
カッコいい(黒い)梨沙子が見たかったんです!!
- 36 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/04(火) 13:00
-
- 37 名前:名無しなの 投稿日:2007/09/05(水) 00:19
- りしゃみや・りしゃももどちらも素敵でございます!
確かに梨沙子と一緒の桃子は通常より白い気が・・・白桃ですな!!
イケナイ梨沙子がもっと見たいのでまってます
- 38 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/05(水) 01:04
- りしゃももが良かった、もも手玉に取るりしゃがステキ
- 39 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/08(土) 11:10
-
ひそかにりーちゃんと一緒の桃子が一番好きです。
そんなCPヲタw
37>>名無しなのさん
白桃w
いい響きですっ!
うちの梨沙子は基本イケナイ感じです、きっと。
なぜならそれがコンセプトだからw
レスあっとうございました。
38>>名無飼育さん
うちのりーちゃんは桃子に対してだけ妙に悪女です。
桃子も分かっていながらりーちゃんには手玉に取られるのですw
そんな大人な桃子をCPヲタは推奨します!
と妄想ただ漏れの中、更新したいと思います。
- 40 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/08(土) 11:11
-
- 41 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/08(土) 11:12
-
一本目はゆりりしゃです。
- 42 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:13
-
その教室前を通ったのは偶々で。
中に人がいる事に気づけたのも偶然で。
ただそこが彼女の教室だと知っていたおかげなのだ。
- 43 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:13
-
―教室―
- 44 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:14
-
生徒会室から部活のある体育館への道のりを友理奈は急いでいた。
遅くなってしまったがまだ終わるような時間ではない。
奥にある生徒会室から一年生の教室の前を通る。
人気のない廊下は寂しくて。
張り出されている掲示物がさらにそれを増していた。
と教室の中に人影が見えた。
普通こんな時間に教室にいることはない。
だが友理奈にはこの時間にこの場所に居る人物に心当たりがあった。
「あれ、りーちゃん何してるの?」
「部活終わるの待ってるの、ゆりこそどうしたの?」
「あたしは生徒会から部活に行く所だよ。」
ふにゃふにゃとした笑みを浮かべる梨沙子。
機嫌がいいなと友理奈は思った。
まだ明るいが電気が消された教室はそれでもいつもに比べれば暗い。
その中で梨沙子の機嫌を良くする様な物は。
- 45 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:15
-
―みや、だよね。やっぱ。
梨沙子の後ろ、教室の窓の向こうにはグラウンドが見える。
その端の方に三面のテニスコートがある。
そこが雅の活動場所だ。
ほとんど人物の認識をすることなどできない距離。
しかし梨沙子にとっては十分なのだろう。
見ることが出来るだけで嬉しそうな梨沙子に友理奈はちくりと胸が痛んだ。
「バスケ部は体育館かぁ。……グラウンドだったら見れるのに。」
「えー、グラウンドだったら見てくれるの?」
- 46 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:15
-
唇を尖らせて言う梨沙子が可愛い。
ちょっと嬉しかった。
梨沙子は雅にしか興味がないと思っていたから。
見てくれる可能性があるだけで良かった。
「そりゃぁ、見るよ。あたし、ゆりのこと好きだし。」
「あー……ありがとね。」
さらりと言われた言葉が嬉しくて、悲しかった。
好きは好きでも方向が、レベルが違う。
梨沙子の一番は雅で、きっと次に桃子が来るのだろう。
友理奈自身が梨沙子の中でどの位の位置にいるか分からない。
意識していないから出た言葉は何よりも痛かった。
- 47 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:16
-
「なんか、みやが羨ましいな。」
「どうして?」
「りーちゃんにずっと見てもらえるじゃん。」
ぽつり零れたのは本音。
梨沙子の全てが欲しいわけではなかった。
ただそこまで誰かに一途に思ってもらえる雅が羨ましかった。
欠片でもいいからその真っ直ぐな目線が欲しかった。
―ももちはきっと違うんだろうな。
桃子が梨沙子を好きなのはなんとなく分かっていた。
誰にでも平等に接する桃子だが梨沙子を見る目だけ熱っぽかった。
桃子の視線の先には梨沙子がいて。
梨沙子の視線の先にはいつも雅がいた。
- 48 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:17
-
「あたしに見て欲しいの?」
きょとんとした顔で梨沙子が言う。
友理奈は分かっていない様子に苦笑する。
こういう時に友理奈は梨沙子の幼さを感じるのだ。
「そうかもしれないし、違うかもしれない。」
「何それー!」
「うん、あたしにも良く分かんない。」
友理奈にとっても“何それ”だ。
自分で言っておいて意味が分からなかった。
梨沙子じゃなきゃいけない気もしたし、別に梨沙子じゃなくてもいいような気がした。
この大人っぽい年下が自分を見てくれるのが嬉しい。
一途じゃなくてもいいから気にかけて欲しかった。
それが一途に自分を見てくれる誰かに勝るかは分からない。
でも今、友理奈が見て欲しいと思ったのは梨沙子なのだ。
- 49 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:18
-
「……試合、いつあるの?」
「え、見に来てくれるの?」
ぼそりと呟かれた一言に過剰に反応してしまった。
梨沙子が来てくれると思わなかった。
驚いて、まじまじと梨沙子を見つめる。
どんどん梨沙子の顔が赤くなるのが分かった。
これは来ると友理奈の胸は期待に膨らんだ。
「ゆりが見て欲しいって言ったんじゃん!」
大きな声が先程より暗くなった教室に響いた。
拗ねを含んだ声は何故か耳に心地よい。
梨沙子の爆発が嬉しい。
それは梨沙子が甘えている者だけに見せる感情の起伏。
初対面の人には意地でも見せようとしないもの。
- 50 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:18
-
―拗ねなくてもいいのに。
梨沙子は素直に行動するのが苦手だ。
良い事なのに、いや良い事だからするのが恥ずかしくて照れる。
それが梨沙子で、友理奈は今も赤い頬が可愛くて仕方なかった。
「うん、そうだね。ありがとう、りーちゃん。」
「……で、いつなの?」
「来週の土曜日。午後からだけど、一緒に行く?」
- 51 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:18
-
自分の肩ぐらいにある顔を覗き込みつつ尋ねる。
顔が赤くなっているのを自覚しているのかさっきから梨沙子は顔を背けている。
午後からなら梨沙子も辛くないはずだ。
学校でも寝ているのを良く見かけるこの後輩にとってそれは幸運だっただろう。
以前、三時間目の終わりに屋上に行った時があった。
梨沙子がよくここに来ているのは知っていた。
それに友理奈自身も何もない、けれど見晴らしの良いそこが好きだった。
だから息抜きだ。
梨沙子に会えたら何か話せるし、いなくても気分が向上するのは間違いない。
そんな風に考えて向かった屋上に梨沙子はいた。
起こして聞いてみると朝からずっといたという。
- 52 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:19
-
―あの時は驚いたなぁ。
小学校の頃はここまで酷くなかった。
友理奈は梨沙子と同じ小学校で家だって近い方で。
朝は雅と一緒に通学してくるのを見ていた。
昼には学年は違うが何故か一緒に遊んだりした。
放課後は同じクラブだった。
もっともこれは雅も桃子も千奈美も一緒だったのだ。
そのおかげで友理奈は今も年上の雅や千奈美を“みや”や“ちぃ”と呼ぶことが出来た。
- 53 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:19
-
覗き込んでいる友理奈の目に困ったような梨沙子の表情が飛び込んできた。
何をそんなに気にしているのか分からなかった。
「でも最初、練習なんでしょ?」
「まぁ、アップだけだからそんなに時間掛かんないけど。待ってるのヤ?」
「待ってるのは別にいいよ。ただ、邪魔じゃないかなぁって。」
ゆるゆると首を振り薄く笑う梨沙子。
邪魔な訳ないと友理奈は思う。
梨沙子は大人しい性格だし、友理奈にしてみれば見られていると意識するほうが練習に力が入る。
だから友理奈は笑って梨沙子に言う。
- 54 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:20
-
「平気だよ。むしろいてくれた方が良いし。」
「なら、一緒に行く。……迎え来てくれる?」
「いいよ、もちろん。りーちゃんの家に行くの久しぶりだなぁ。」
「そうだっけ?」
「そうだよ。」
まるでいつも遊んでいるかのように言う梨沙子に笑みが零れる。
実際友理奈が梨沙子の家に行ったのは友理奈がまだ小学校の頃だったと思う。
―ほんと、こういうところは忘れっぽいんだもんな。
そこまで話して、教室の外が薄赤くなってきているのに気づく。
マズイ、話しすぎたようだ。
あの赤さからして話していたのは十分じゃきかないだろう。
今から急いでも練習はすでに半分は終わっている時間だ。
だが行かないという選択肢は友理奈の中に存在しない。
サボりたくないというより、可愛がってくれている先輩の期待を裏切るのが嫌だった。
- 55 名前:教室 投稿日:2007/09/08(土) 11:21
-
「あたし、そろそろ行くね。……部活、半分は終わってるだろうけど。」
「うん、部活頑張って。試合楽しみにしてるから。」
一つ頷いて教室を出る。
軽く手を振ってから、廊下に出れば全力で走る。
ふと思うのは教室で一人待つ梨沙子。
友理奈がいなくなっても梨沙子はあそこで待ち続ける。
雅が部活を終えるまで。
無表情に、グラウンドを見つめながら。
雅を見つける度に心を軽くさせて。
梨沙子はずっと待ち続けるのだ。
夕日に染まる梨沙子を思い浮かべると友理奈はまた胸が痛くなる。
悲しいほどに綺麗過ぎると思ったからだ。
―教室―終
- 56 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/08(土) 11:23
-
- 57 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/08(土) 11:24
-
二本目、りしゃもも。
といいつつ梨沙子でてきませんが。
- 58 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/08(土) 11:24
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- 59 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:25
-
昼食を買いに来た売店。
目に留まったのは氷菓子。
彼女の好きな種類のそれ。
一瞬で繋がった自分に苦笑した。
- 60 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:25
-
―彼女の好きなもの―
- 61 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:25
-
「もも、どうしたの?」
固まっちゃってという佐紀の言葉に振り返る。
ぼーっとし過ぎていたようだ。
思考が飛んでいた。
暑さのせいかなと夏に難癖をつけて。
桃子はいつもの笑顔を浮かべる。
「あ、うん。アイスがおいしそうだなって。」
桃子の言葉にパンを見ていた佐紀の視線が移る。
ひょいと隣から覗き込まれたそこには色とりどりの風物詩。
おーっと小さく声を上げた佐紀に構わず桃子はある一つのアイスを見つめる。
- 62 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:26
-
「今日は一杯あるね、買うの?」
「ううん、今買っても溶けちゃうし……いいや。」
ふるふると頭を振り買わないこと示す。
別に自分が食べたいわけではなかった。
それを好きな彼女のことが頭に浮かんだだけで。
今ここにいない彼女のためにそれを買うのは無駄というものだ。
そう自分を納得させ、視線を外す。
がららと音がして購買に誰か入ってきたのが分かった。
- 63 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:27
-
「あれ、ももに佐紀ちゃんじゃん。何してるの?」
「みやっ、久しぶり!見ての通り、昼ごはんの調達。」
―……みーやん。
噂をすれば影、だろうか。
桃子は雅に軽く手を振りつつ、目の前のパンに夢中な振りをする。
だが購買はそんなに広くない。
聞こうと思わなくても隣での会話なんて聞こえてしまうのだ。
「あー、これ梨沙子の好きなやつだ。」
ぴくりと体が反応した。
ちらりと見た雅の手元にはさっき桃子の目に付いたアイス。
凝視してしまって、慌てて目を離す。
何故か胸の鼓動が激しくなる。
- 64 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:27
-
―知ってるんだ……そうだよね。
当たり前だ。
桃子が知っているくらいなんだから、幼馴染の雅だって知っているに決まっている。
あのアイスを食べているときの梨沙子の顔が浮かぶ。
幼くて、愛しい、満面の笑顔。
アイス一つで、子供っぽいとからかったら拗ねた表情まではっきりと思い出せた。
そして自分よりずっと多くその顔を見てきただろう雅が羨ましい。
- 65 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:27
-
「へ、そうなの?」
「うん、梨沙子、これ好きでね。いっつも買ってって言われるから覚えちゃった。」
「買ってあげちゃうわけだ、みやは。」
「まぁ、ね……買わないとうるさいし。」
ちょっと恥ずかしそうな雅の声。
自分が梨沙子に甘いことが恥ずかしいのだろうか。
パンを選ぶ気なんてとうに失せていた。
だけど急に話に加わることもできなくて、目をパンの上に彷徨わせる。
焦点などとっくの昔に合っていない。
今、桃子が意識を傾けるのは耳にだけ。
- 66 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:28
-
『りーちゃん、それ好きだよね。』
『うん!大好き。』
浮かんできたのは初めてそのアイスを梨沙子に買ってあげた場面。
桃子の家で遊ぶ事になって、行く途中のコンビニで買ったのだ。
梨沙子がそれを好きだと知ったのは今では覚えていない。
いつも梨沙子がそれを雅に強請っていて。
だからか桃子はいつの間にか梨沙子がそれを好きなのを知っていた。
『なんで好きなの?』
『ん?……これ?』
『いつ見ても、アイス食べてるなぁと思うとそれだし。』
- 67 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:29
-
ふと気になった。
何が好きでそれをそこまで食べるのか。
すると梨沙子は『笑わない?』と恥ずかしそうな顔で聞いたのだ。
『笑わない。』と桃子が答えると梨沙子は一端食べるのを止めた。
微かに開いた口。
梨沙子が言葉を捜しているのが分かった。
一分待ったかも分からない。
その位の時間で梨沙子は答えを見つけた。
- 68 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:29
-
『結構前にね、これ、流行ったじゃん。』
『あー、そうだったかも。』
『みやもこれ好きだったんだ。で、少し貰ったら美味しくて。』
『りーちゃんも嵌っちゃったと。』
うんと照れ笑いしつつ頷いた梨沙子を見て桃子は思う。
やっぱりなぁと。
ある意味予想通りだった。
梨沙子の興味の入り口は雅で。
雅がこれを好きだから梨沙子も好きになったわけで。
この時桃子は敵わないなぁと苦笑したのだ。
- 69 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:30
-
そして今。
梨沙子はまだそれが大好きなのだ。
雅が雅自身それを好きだったことを忘れても。
梨沙子の好きな食べ物として認識されていても。
梨沙子は変わらず好きなのだ。
それはなんだか梨沙子が雅を好きなのに似ていた。
- 70 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:30
-
「もも?ちょっと、大丈夫ですかー嗣永さん。」
今度は雅の声に引き戻される。
少し考えすぎだ。
梨沙子の好きなアイス一つでここまで考え込む自分に呆れた。
とんとんと肩を叩かれ、桃子は雅を見た。
すらっとした肢体、さらさらの髪。
梨沙子の長年の想い人。
―なんで、みーやんなのかな。
桃子の長年の疑問。
何故、雅なのか。
何故、自分では駄目なのか。
全てはきっと梨沙子にしか分からない。
- 71 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:30
-
「うん、大丈夫。暑くてぼーっとしてた。」
「今日暑いもんねー。体育もあったし。」
「えー、大変だね。三年生は今、なんなんだっけ?」
佐紀と雅の会話にまた意識が離れていく。
佐紀の手にも雅の手にも既に買ったらしいパンがあった。
ついでにあのアイスも雅の手の中にあった。
買ったんだとびっくりしている自分がいた。
- 72 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:31
-
「みーやん、それ、買ったんだ。」
「久しぶりに見たら、食べたくなっちゃって。」
ちょっと上に上げてそれに視線を落とす雅。
頬は緩んでいて、楽しそうだった。
桃子はそっかと返すしかできない。
何だか差が見えた気がした。
梨沙子が好きなのを知っていて買えなかった自分。
梨沙子が好きなのを知っていて買えた雅。
考えすぎだと分かっていても、嫌だった。
そんな桃子には当然気づかず、雅が声をかけてくる。
- 73 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:31
-
「ほら、ももも早く買いなよ。食べる時間なくなっちゃうよ。」
「うん、今買う。」
ぱぱっと適当にあるものを取った。
嫌いなものは特にないし、今の気分なら何を食べても一緒だ。
横目でアイスを見つつ購買のおばさんにパンのお金を渡す。
やはり買う気にはならなかった。
購買を出て二年の教室に向かう雅の後姿を見ながら苦笑が漏れた。
- 74 名前:彼女の好きなもの 投稿日:2007/09/08(土) 11:32
-
「もも、ほんとに大丈夫?今日ぼんやりしてるけど。」
「平気、平気!お腹が減っただけ。」
「そう?」
「そう!」
心配してくれる佐紀の手を取り、早足にそこを去る。
きっと、梨沙子の好きなものはしばらく変わらないのだろう。
―彼女の好きなもの―終
- 75 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/08(土) 11:37
-
- 76 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/08(土) 11:40
-
なんというか、気づいてると思いますが今までの全部微妙に繋がってます。
今回のりしゃももだけ時系列がずれてます。
基本りーちゃん中一、桃子高一、みや中三、熊井ちょー中二です。
が今回のりしゃももは桃子中三、みや中二です。
ただ単に桃子と雅の絡みが書きたかったというか。
りーちゃんを中心に巡る人間関係を露呈させたかったというかw
まぁ、そんな感じです(爆
ではまた妄想が溜まったときお会いしましょう。
- 77 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/08(土) 11:40
-
- 78 名前:名無しなの 投稿日:2007/09/09(日) 00:38
- 更新乙です。作者さん二つともストライクゾーンドカンなの!
気づきましたよっ!学年のズレ!!
ゆりりしゃの素直じゃない梨沙子が想像できてイイ!
雅にジェラシーな桃子と梨沙子の好物覚えてる白桃といい素敵です(*´Д`)
もう梨沙子が絡めば何でもキテー状態ですので・・・w
ふぅ、興奮してしまいますたw
- 79 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/09(日) 01:33
- 二人とも切ないね、熊井ちゃんと絡む梨沙子は幼くて…。
熊井ちゃん写真集発売オメデトウ!
- 80 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/11(火) 16:24
-
78>>名無しなのさん
ストライクゾーンでよかったです!
簡単に言えば現実どおりの歳の差なんですがw
あの歳の差があるから萌えるものもあるとゆいたい。
りーちゃん絡みが見たくて始めたスレなので、存分に楽しんでください!!
79>>名無飼育さん
熊井ちゃんと絡む梨沙子は幼い気がします。
歳の差が一番少ないせいか大人ぶることもなくw
歳相応の梨沙子を書くには熊井ちゃんです!(エー
レスあっとうございます!!
偏ったものしか書かない(書いてない)スレですがw
これからも楽しんでくださると幸いです。
では今日の更新。
- 81 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/11(火) 16:25
-
一本目、りしゃもも。
ありがちネタですw
- 82 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/11(火) 16:25
-
- 83 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:26
-
風邪を引いた日。
外では雨が降っていた。
窓から見える雨雲はただでさえ辛い気分をさらに重くさせた。
- 84 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:26
-
―熱―
- 85 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:27
-
「ごほっ…っ…ぁー、きついなぁ。」
熱と喉の痛みでかすれた声。
ベッドに寝ながら桃子はただ天井を見つめる。
額に乗せた腕と額が両方とも熱くて、熱い事しか分からなかった。
―風邪引くなんて、いつぶりだろう。
体は元々丈夫なほうではない。
だがこの頃は風邪を引いたとしても、ここまで酷くはならなくて。
熱で寝込むのも久しぶりだった。
じんわりと染み出てきた汗は既にぐしょぐしょになるほどパジャマを濡らしている。
共働きの桃子の家には桃子以外誰もいない。
だるい体でご飯を作るのは面倒だったし、着替えるのさえおっくうだった。
体を動かすことが嫌で、その為欠席の電話以外桃子はベッドから出ていない。
- 86 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:27
-
―……りーちゃんのご飯が食べたい。
荒い息を治めようとゆっくりと目を閉じる。
暗闇の中に唯一看病に来てくれそうな人物の顔が浮かんだ。
笑顔の梨沙子だった。
以前頼んで料理を作ってもらったことがある。
余り得意ではない桃子と違って梨沙子の作った料理は美味しかった。
その味を思い出しながら、寝返りを打ち壁と向かい合わせになった。
「雨、かぁ。」
桃子の部屋にはベッドの頭のほうに窓があり、寝ていても外の様子は辛うじて見ることが出来る。
勢いはないがしとしとと変わらず降り続ける雨粒。
ぼんやりと雨に打たれたら気持ちいいんだろうなと思う。
無理なことだし、仮にそうしたとしても悪化するのは目に見えている。
分かってはいたがそうしたいと桃子は思ったのだ。
- 87 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:27
-
寝苦しさにパジャマの袖で汗を拭う。
だがすぐにそれではもう意味を成さないことを桃子は理解した。
さすがにタオルくらい取ろうと桃子は上半身を起こす。
―今日、デートだって楽しそうだったのに。
ふと浮かんだのはまたしても梨沙子で。
楽しそうに笑っていた。
雅とのデート。
梨沙子にとっては何よりも大切なもの。
それが雨で潰れたのだろう事に安心している自分がいた。
- 88 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:27
-
「ぅ、ごほっ…けほっ、んっ…余計なこと、考えるんじゃないなぁ。」
ベッドの上に二つ折りになるようになって咳き込む。
息を吸うことさえ苦しい。
ぎゅっと掛け布団を握る。
梨沙子の楽しみが潰れたのを喜ぶ自分が嫌だ。
桃子は風邪の苦しさと梨沙子に対する心苦しさで自嘲気味に笑うしかできない。
―ピーンポーン
インターホンが鳴った。
こんなときに誰だろうと思いつつ、下の階に下りる。
廊下の寒さが肌に刺さる。
背筋を寒気が上ってきた。
力の入らない手でインターホンに出る。
- 89 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:28
-
「……はい、どちら様ですか?」
『あたし、梨沙子。』
「梨沙子?!なん…ぅ…ごほっ、けほっ。」
『何ってお見舞いだよ。だから開けて?』
飄々とした態度。
何故ここにいるのかという疑問も梨沙子が来てくれたという嬉しさに流される。
よろよろと安定しない足を動かし玄関に向かう。
とにかく顔が見たいと思った。
そして鍵を開け、開いた扉の向こうには確かに梨沙子がいたのだ。
片手には傘、もう一方には鞄。
ぽたぽたと滴る水が梨沙子が歩いてここまで来たことを示していた。
- 90 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:28
-
「思ったより酷そうだね、風邪。」
「え、そう?……とりあえず、上がってよ。」
熱で赤い頬を見て梨沙子が顔をしかめた。
伸ばされた手が額に触れて、ひんやりとした感覚が広がる。
―あー……りーちゃんの手、冷たくて気持ち良いやぁ。
そう思い気を抜いた瞬間にふらりと体が揺れた。
踏ん張ろうとしても力の入らない体でそんなことができるわけもなく。
桃子の体は膝から崩れるように落ちる。
- 91 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:29
-
「!……ちょ、ももちっ、大丈夫?熱ひどいし、寝てなきゃ駄目だよ。」
「うん、でも力が入んなくてさ。」
梨沙子が完全に座り込んでしまう前に桃子の体を引き寄せる。
すっぽり梨沙子の腕の中に収まる桃子。
熱でぼやける感覚に、ひんやりとした体温だけが明瞭だった。
浮ついた口調の桃子に前から抱きしめる形で桃子の体を支えていた梨沙子が動く。
「肩貸すから部屋まで行こう?」
手が取られて梨沙子の肩に回された。
桃子は何もせず、何も出来ずされるがままになっている。
うんしょと小さく声を上げてから梨沙子は立ち上がった。
一瞬体を包んだ浮遊感に驚く。
わずかに顔を動かし自分を立ち上がらせた梨沙子を見る。
- 92 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:29
-
「りーちゃん、力持ちだね。」
「もも、軽いから。それより二階まで頑張ってね。」
「……頑張る。」
ゆっくりとした歩調で歩き始める。
梨沙子も桃子にあわせてくれているらしく、歩きやすかった。
一歩一歩を慎重に進める。
地面を踏みしめている心地がしなかった。
間違いなく、朝より悪化していた。
ご飯も食べず寝ているだけだからそれも仕方ないかと桃子は思った。
もしくは梨沙子が来て、安心してしまったのだろう。
現金な自分に苦笑する。
- 93 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:30
-
「今日、みーやんと一緒じゃなかったの?」
「雨だし……風邪引いたももを放っておけないから。」
顔がいつもより近い。
耳元で聞こえる梨沙子の声がくすぐったかった。
微かな雨の音が遠くに響いていた。
―やっぱ、元気ないなぁ。
いつも通りを装う梨沙子だが桃子には分かった。
若干声が沈んでいることが。
そりゃ、そうだよねと桃子は思う。
梨沙子の大好きな雅との時間が潰れたのだ。
元気が出ないのも仕方ない。
そんな時なのに梨沙子が来てくれたことに驚きを隠せない。
だって外には行けないが家で二人きりで過ごすことは出来た。
自分で言っていて悲しいが、わざわざ看病に来る必要はないのだ。
- 94 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:30
-
「ももち、一人だと何もしそうにないなと思って。」
「でも………。」
「いいの!みやにも言ってきたし。」
「え?」
―言ってから、来たの?
梨沙子のさらりと出した言葉に目を見開く。
それは雅もびっくりしただろうなと桃子は思う。
雅も梨沙子が誰に一番くっつきたがるかは知っている。
その梨沙子が雅と一緒にいれる時間を蹴って桃子の家に行くと言ったのだ。
雅の呆気にとられたような顔が浮かんできて、桃子は梨沙子に視線を移す。
頬が赤くなった梨沙子の横顔が目に入った。
- 95 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:30
-
―無意識に、小悪魔なんだから。
雅が一番の癖に、桃子にも優しい梨沙子。
桃子が病気だから雅と一緒の時間をなくして桃子の家に来る梨沙子。
根本が凄く優しい子なのだ。
桃子はその純粋で不器用な優しさに惹かれた。
そしてきっとそれは雅も一緒で。
幾ら離しても一緒にいたがる梨沙子に救われた所もあるはずだ。
―……惚れ直しちゃうじゃん。
それは困ったなぁと思いながら、自然と頬は緩んでしまう。
結局は自分が梨沙子を好きなのは変わらぬ事実で。
桃子はどうしようもないなぁと思うのだった。
- 96 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:31
-
「えっと、ももち、一人で着替えられる?あたし、おかゆ作ってくるから。」
「うん……それくらいなら、できるから。大丈夫だよ。」
健康なときの倍以上の時間をかけて階段を上り、部屋に着く。
ベッドに桃子を座らせてから梨沙子が言った。
本当はもう動きたくもなかった。
パジャマを取るのも、それに着替えるのも嫌だった。
だが自分のためにご飯を作ってくれる梨沙子を引き止めることもできない。
桃子は熱で潤んでいる瞳で梨沙子に微笑みかける。
すると梨沙子がむっとした顔をした。
- 97 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:31
-
「ももち、嘘ついてる……。」
「吐いてないよ、ほんと、大丈夫だから。」
「ダメ。」
ばっさりと桃子の言葉を切った梨沙子がタンスに向かう。
桃子はそれをぼんやりと見るしか出来ない。
何度も来たことがあるからだろうか、梨沙子は迷う素振りも見せずパジャマとタオルを取り出す。
そしてベッドのほうに戻ってきたかと思うといきなり桃子のパジャマに手をかけた。
いつもは絶対しない行動に目が見開かれる。
「りーちゃん?」
「脱がす。動けないのに、動いちゃダメだよ。」
- 98 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:31
-
ぽいぽいと簡単に脱がされた。
素肌に空気が触れて、体が軽くなった。
改めてよっぽど汗を吸っていたんだなと思う。
下着だけになった桃子を気にせず、梨沙子はタオルで桃子の体を拭き始める。
だが邪魔なのかすぐに上の下着も取られて渡された。
反射的に胸元を隠すように下着をあてる。
丁寧に背中を動く感触が気持ちよくてとろんとした表情になる。
「とりあえずだけど……これ下着代わりに着て。それから、パジャマ。」
粗方拭き終わったのか梨沙子は下着の代わりにTシャツを渡し着せる。
普段の梨沙子からは考えられないくらいテキパキと動きパジャマも着せた。
桃子は自分の体が動かされるのを夢の中にいるように感じていた。
- 99 名前:―熱― 投稿日:2007/09/11(火) 16:32
-
「それじゃ、あたしはお粥を作ってくるから。ももは寝ててね。」
「うん……ありがと。」
言葉少なにお礼しか言えない。
汗を拭いてもらってすっきりしたせいか眠気が増していた。
桃子は素直にベッドに横になる。
梨沙子の柔らかい声が酷く心地よかった。
すっと目を閉じ、暗闇に身を任せる。
次に起きる時は梨沙子のおいしいご飯と可愛い笑顔が待っている。
それが嬉しかった。
―……雨、止んでいるといいな。
眠りに落ちる前に浮かぶのはやはり梨沙子のことで。
雨が止めばいい。
梨沙子のためにも、自分のためにも。
今なら笑顔で喜べると桃子は思った。
―熱―終
- 100 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/11(火) 16:32
-
- 101 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/11(火) 16:33
-
二本目、りしゃみや。
微エロちっく。
- 102 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/11(火) 16:33
-
- 103 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:33
-
潤んだ瞳も。
うっすらと赤くなった頬も。
キラキラと自分を見る視線も。
満面の笑顔も。
全てがうちの物だと思っていた。
- 104 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:34
-
―恋に浮かれる―
- 105 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:34
-
「んっ……みやぁ………みやぁ。」
「梨沙子。可愛いよ、梨沙子。」
目の前にあるのは白い身体。
部活をしていないからか透き通るような白さを持っていた。
ちゅっと頬に口付けれれば、すぐに真っ赤になって。
可愛いと正直に思った。
「恥ずかしいっ、から。」
そのまま続けて顔中に唇を寄せればくすぐったそうに身をよじる。
雅が身体に触れるたびに反応する身体。
本人の意思に反しているのだろう。
梨沙子の言葉は途切れ途切れになっていた。
- 106 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:34
-
「なんで?こんなに可愛いのに。」
「関係…っ…ぅ、ないもん。」
可愛いから止まらなくなる。
愛しいから愛したくなる。
雅は自分のしている行動になんの疑問も持っていなかった。
「関係あるよ、梨沙子が可愛いから止まんないんだし。」
「ひゃぅ、みやっ。な、何して……?」
髪を耳に掛け、わざと息を吹きかけるようにして言う。
するとびくりと今までで一番大きく身体が跳ねた。
梨沙子の腰の側に両膝をつけ、手は顔の脇にある。
雅の身体の下での動きは直接雅に伝わった。
- 107 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:35
-
「耳、弱いんだ?」
「ちがっ、みやが急にそこで話すから!っ…くすぐったっ……。」
梨沙子の言葉を雅は半分も聞いていなかった。
潤んだ目や赤さの引かない頬を見ればそれだけでないことが丸分かりだった。
雅はもっと可愛い梨沙子が見たくて。
もっと素直な梨沙子が見たくて体を動かす。
「ほんと、梨沙子って色白いよね。」
「そんなことっ。」
耳から首筋、首筋から胸と唇をつけたまま辿る。
胸の膨らみにたどり着くと一つ痕をつける。
白い肌にそれは映えた。
肌の白さも、痕の赤さも互いが互いを目立たせていた。
- 108 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:35
-
「梨沙子、いい?」
「………っ、う、うん。いいよ。」
柔らかい感触を楽しみながら、もう片方の手を下に伸ばす。
梨沙子は恥ずかしいのか顔を背けている。
雅はそんな梨沙子を見てまた可愛いなと思う。
そしてとうとう手が梨沙子の一番大切な場所にたどり着こうとしていた。
「みや、大好きだよ。」
梨沙子の言葉に笑みが溢れた。
- 109 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:35
-
ジリリリリリリリリッ!
- 110 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:36
-
突如、甲高い音が響いた。
雅は反射的に手を伸ばし目覚まし時計を止める。
かちりと感じなれた感触が手に伝わった。
その瞬間に理解する。
「っ〜〜〜ぅ!な、なな、なんつー夢をっ。」
―恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいっ!
雅はもう一度布団を被るとじたばたと中で暴れる。
とんでもない物を見てしまったという意識があった。
夢の中で、自分は何をした。
寄りにもよって梨沙子に。
朝一で会わなければいけない梨沙子に。
雅は自分が恥ずかしくて仕方なかった。
- 111 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:36
-
「ぁー、もう!梨沙子にどんな顔して会えばいいか分かんないっ。」
―うち、欲求不満?!
がばっと勢い良く布団を出る。
ベッドから掛け布団が落ちたが気にしていられない。
恥ずかしさが抜けなくて髪を掻き揚げる。
それでも落ち着かなくて八つ当たりに枕を叩いたら思ったより大きな音が出た。
ベッドの上に座り込んだまま頭を抱える。
ぎゅっと目をつぶれば鮮明に浮き出す夢の映像。
「………梨沙子、可愛かった。」
白い肌も。
赤く染まった頬も。
今にも泣き出しそうなほど潤んだ瞳も。
全てが可愛かった。
- 112 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:36
-
―って、駄目じゃん。これじゃ、うち本当に欲求不満みたいなっ。
言ってから気づく。
これでは夢を肯定していることに。
その事実に雅は再び恥ずかしくなってきて。
雅は枕を抱きしめ、そこに顔を埋めると呻る。
「梨沙子があんな事するからっ。」
ばっと顔を上げて、雅以外誰もいない部屋に叫ぶ。
あの屋上に梨沙子を迎えに行った日。
キスもどきをされた。
あの日から梨沙子の印象が変わった。
色っぽいと感じるときがある。
今までずっと一緒にいた。
だが色っぽいとか、色気に押されることはなかった。
それが今ではあんな夢を見るようになるなんて。
- 113 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:37
-
雅は再び頭を抱えたくなった。
一番困っているのは自分の気持ちが分からないことだ。
梨沙子が嫌いというのは決してない。
嫌いだったらあんな夢を見るはずがない。
しかし好きだかと聞かれれば首を捻らざるを得ない。
雅にとって梨沙子はずっと妹のようなもので。
恋とか愛とかそういうものと別にしていたのだ。
―分からないのにあんな夢見るとか……うち、最低じゃん。
とそこに枕元の時計が目に入る。
既に時間は七時を過ぎようとしていた。
- 114 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:37
-
「うわっ、七時過ぎてる!準備しなきゃ。」
恥ずかしさも、夢の映像もありありと残っている。
しかしそれで休もうとは当然思えなくて。
雅はベッドから降りると急いで準備を始めた。
「みや、遅いよ。」
「り、梨沙子。今日、早いじゃん。」
制服に着替えて階段を下りる。
朝食が用意されているだろうダイニングに足を進める。
するとそこには既に梨沙子がいて。
普通にしようと部屋の中で覚悟したのも無駄になった。
- 115 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:38
-
「うん、昨日、早く寝たから自然に起きたの。」
「そっかぁー。」
早起きはいいことだと知っている。
それに日常的に寝すぎな梨沙子が早く起きたのはいいことだとも思っている。
だが何故今日なのだろうと雅は恨まずにいられなかった。
気まずくて梨沙子の顔を直視できない。
とりあえずいつものように席に着くが目線を上げられなくて、机ばかり見る。
「みや?どうかした?」
「……なんでもないよ。梨沙子、ご飯は?」
「食べてきた。だからあとはみやだけだもん。」
見ることは出来ないが、どんな表情をしているかは想像できる。
今はきっと少し拗ねたような顔をしているのだろう。
それは長年の経験によるもの。
- 116 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:38
-
―なんで梨沙子のことは分かるのに、自分のことがわかんないんだろ。
正面から見つめられているのが分かる。
勿論、そんな状態で朝食をゆっくり食べることは出来ず。
雅は梨沙子を見ないですむようにかき込む様に食べる。
途中詰まりそうになったが飲み物で流し込む。
そして口早にごちそうさまを言うと鞄を掴み立つ。
梨沙子が雅の母親に挨拶をした後、無言で後ろを付いてくるのが分かった。
「みや?ほんと、今日どうしたの?」
靴を履いていたら後ろから声がかかった。
だけど雅は答えることが出来ない。
梨沙子の顔が見られないなんて言えない。
その理由はさらに言えないと思った。
雅はもう一度「なんでもないよ。」と言うしか出来ない。
- 117 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:38
-
玄関を出ていつもの通学路を歩く。
朝というのもあってか人通りは少ない。
ぱたぱたと足音が聞こえた。
置いてくるようにして出た梨沙子のものだ。
「一回も、顔、見てくれてないもん。なんでもないわけない!」
「なんでもないんだってばっ!」
顔を見ずに告げる。
梨沙子の言う事はもっともだったし、自分でも分かっていた。
―見れるなら、見てるしっ。
心の中で逆切れ気味にそう思いつつほぼ駆け足で歩く。
朝から何してるんだろうと自分に呆れつつ止まることはできない。
- 118 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:39
-
「っ……みや!」
ぐいっと引っ張られた。
腕をつかまれてはさすがに歩き続けるわけにはいかず、前を向いたまま雅は止まる。
静かな空気に梨沙子と雅の乱れた息遣いが広がる。
端に追い詰められて、顔を覗き込まれた。
一度ぎゅっと目を瞑ってから、ゆっくりと開く。
すぐそこに梨沙子の顔があった。
雅と目が合うと硬い表情が緩やかに解ける。
「やっと、こっち見てくれた。」
「……。」
「見たくないなら見たくないって言ってよ。そしたらまだ我慢できるから。」
- 119 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:39
-
―違う、違うよ。梨沙子。
見たくないんじゃない。
梨沙子が可愛いから見られない。
梨沙子がこんなに近くにいるから見られない。
それは全て雅のせいで梨沙子のせいでは決してない。
「無言が一番、辛いよ。みや。」
「なんでもないの、本当に。梨沙子のせいじゃないし、だから……ごめん。」
梨沙子の悲しい顔が胸に刺さる。
それでも雅は正直に言うことはできなくて。
ただ謝るしかできなかった。
- 120 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:40
-
「わかった、みやがそう言うならいいよ。」
「ありがと。」
言いながら思う。
梨沙子はいつもこうだ。
我侭で拗ねやすくて子供で。
大体雅が我侭を聞いてあげたり、慰めてあげたりしなきゃいけないのに。
時々どうしても雅が譲れないことだったり、嫌なことだったりすると梨沙子は引くのだ。
雅の心の中を分かっているかのように。
自分がいくら悲しくても、聞きたくても梨沙子は止めてくれるのだ。
- 121 名前:―恋に浮かれる― 投稿日:2007/09/11(火) 16:40
-
「……明日には見れるようになるから。」
「うん、分かった。」
「ごめんね、梨沙子。」
「いいよ、みや。」
無理に笑顔を作っているのがわかった。
梨沙子は雅の手を取ると再び歩き始める。
握られた手が温かくて、雅は嬉しくなる。
雅に気を使ってか梨沙子は雅のほうを見ない。
ただ引っ張っていくだけ。
そんな後姿を見ながら、雅はなんだか自分の方がよほど子供に思えるのだった。
―恋に浮かれる―終
- 122 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/11(火) 16:40
-
- 123 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/11(火) 16:45
-
一本一本がどんどん長くなって困ってますw
どんだけ妄想してるんだよ、自分(爆
りしゃももは本当に桃子が白くなって楽しいです。
そして雅ちゃんはムッツリだと思うCPヲタ!w
桃子と雅ちゃんの対比が書いてて面白かった!!
これは短編連作なのではないかと今更ながら思ったCPヲタっした。
ではまた妄想が溜まったときに。
- 124 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/11(火) 16:45
-
- 125 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/11(火) 20:39
- オレもみやはムッツリだと思うw
そのくせ、中々ほんとには手を出せないヘタレだとも思うw
そんなみやが最高に好きで、りしゃみや族の自分には最高の小説をありがとうw
- 126 名前:名無しなの 投稿日:2007/09/12(水) 00:31
- 更新乙です!
ぬはーツボをえぐられますなぁwww
無邪気な小悪魔(矛盾?)梨沙子がたまらんですたいっw
りしゃみやハァ━━━━ ;´Д` ━━━━ン!!!!
妄想溜まるの待ってますw
- 127 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/12(水) 00:35
- りしゃに弱いももが良いね、もものキャラと言えば黒が定着してて…
こんなカワイイももは読んだこと無いかもw。
- 128 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/19(水) 22:59
-
携帯からレスします。
妄想は溜まってますが、ネットに繋げない環境なのでもう少しお待ち下さい。
……いや、待ってる人がいたらの話ですが(爆
- 129 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/20(木) 01:02
- いるに決まってるでしょw!
マッタリ待ってるよ
- 130 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/22(土) 10:44
-
125>>名無飼育さん
最高っすか!あっとうございます。
みやはむっつり、これガチっすかね?w
自分もりしゃみや族ですよ〜。
というかりーちゃん絡みを書く上でみやは外せない存在です。
126>>名無しなのさん
うちのりーちゃんは天然悪女ですからw
あんなことされれば、ももちも惚れます!
りしゃみやハァーンしてもらえて嬉しいっす。
妄想溜まりました、お待たせしました。
127>>名無飼育さん
確かにももは黒が一般的っすね。
でもりーちゃんにだけ白くなるももがCPヲタ的に推せますw
弱くて可愛いももを見てやってください。
129>>名無飼育さん
お待たせしましたっ!
ネットに繋がりましたんで、更新します。
レスあっとうございました!
ふとした疑問何ですが……
名無し飼育さんにはさんをつけるべきなのでしょうか?
いや、気になったものでw
では更新します。
一本目、りしゃももです。
- 131 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/22(土) 10:44
-
- 132 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:45
-
初めて見たのは小六のとき。
みーやんの後ろにくっついて見学しに来た姿だった。
その時はまだももの方が大きいんじゃないかって位で。
でも何か違う感じがしたんだ。
何かが変わる予感。
きっとあれが運命の予感ってやつなんじゃないかな。
- 133 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:45
-
―キミの名前―
- 134 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:46
-
梨沙子の第一印象はただ可愛い子だった。
雅の後ろに隠れるようにしてこちらを見る姿は小動物のようで。
桃子は少しでも緊張を解してあげようと自分から近寄ったのだ。
「ももは嗣永桃子っていうんだ。あなたは?」
できる限り優しい顔で言ったつもりだったがすぐに雅の後ろに隠れてしまう。
人見知りする子なんだなと桃子は思った。
自分の後ろに隠れてしまった梨沙子を見て雅がすまなそうな顔で桃子を見る。
「もう、梨沙子ったら。ごめんね、もも。」
「全然大丈夫だよ、それより、その子なんていうの?」
「あぁ……ほら、梨沙子、もう一回。怖がらないで。」
雅に促されて、もう一度顔を出す。
そして恐る恐る桃子を見るとゆっくりと口を開いた。
手はぎゅっと雅の服を掴んでいて、可愛かった。
- 135 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:46
-
「すがぁ、りさこ……です。」
「菅、梨沙子?」
響いてきた音を聞いて桃子は首を傾げる。
すかさず雅が訂正してきた。
「違うよ、もも。菅谷梨沙子。」
「じゃぁ、りーちゃんだね!」
名前を聞いて声を上げる。
にっこりと笑って梨沙子を見ると目が合った瞬間にまた逃げられてしまった。
雅は苦笑している。
嫌われたかなと思うも雅の様子からしてこれが普通なのだろう。
- 136 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:47
-
「梨沙子、頑張ったね。ちゃんと言えてたよ。」
「うん!りー頑張った。」
―あんな顔もするんだ。
雅に頭を撫でられている梨沙子。
頭がくしゃくしゃになるのも気にせずに笑う、その表情。
雅から褒められて喜ぶ顔に妙に胸が高鳴った。
だから桃子はこの時から分かっていたのだ。
この子が自分の特別になることが。
- 137 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:47
-
次に覚えているのは梨沙子が小六に上がったばっかりの頃。
桃子は近づいてくる受験に嫌気が差して屋上にいた。
放課後になってしまえばこっちのもので、こっそり教室に行く道など桃子は熟知している。
最後のチャイムがなるまでの時間を桃子はただぼーっとすることで潰そうとしていた。
「あれりーちゃん……?」
屋上の端、校門に一番近いこの場所から見慣れた姿が見えた。
薄い茶色の髪と整った顔は遠目でも目立つ。
何より背中のランドセルと大人っぽい容貌とのギャップが梨沙子を目立たせていた。
―どうしたんだろ?
気になった桃子は授業中の校内をすり抜ける様に進む。
使われてない窓から外に出れば校門まではすぐだった。
一応周囲を確認してから梨沙子の元へと駈ける。
- 138 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:48
-
「りーちゃん、何か用?」
「あ、ももち。別に……学校終わって暇だったから、来てみた。」
ちらりと梨沙子の目が校舎へと向いた。
雅に会いに来たことは分かっている。
桃子も釣られるように校舎を見て、それから梨沙子へ向き直る。
まだ授業が終わるまで時間があった。
「ならさ、ももと一緒に来ない?教えたい場所があるの。」
「いいけど……何?」
「それは行ってからのお楽しみ。」
- 139 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:48
-
いつまでもここで話していてはさすがに見つかってしまう。
ランドセルを背負った子を中学校に招き入れるのだ。
桃子にも注意が必要だった。
梨沙子の手を掴み、桃子の知る限り一番目に付かない場所を進む。
職員室のある階さえ見つからなければあとは楽だ。
するすると呼吸を合わせ梨沙子と共に校舎を抜ける。
なんだかわくわくした。
それは梨沙子と一緒だからで。
桃子は無性に笑いたい気分になった。
「もう少しだよ、りーちゃん。」
「うん、そういえばももち、授業は?」
「ももの事はいいの。さ、早く。」
誤魔化すように言ってから梨沙子を引っ張る。
最後の階段を蹴って、屋上への扉に梨沙子を立たせた。
立たされた梨沙子は桃子が何をしたいのか分からずキョトンとしている。
- 140 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:49
-
「開けた瞬間が一番綺麗に見えるんだよ。」
「そう、なの?」
「そうなの。早く開けて?」
梨沙子の手がドアノブにかかり、扉が開かれる。
目の前が一瞬白に染まり、それから青に変わる。
桃子の一番好きな瞬間だった。
今日は天気も良くて、屋上でサボるには一番良い日和なのだ。
固まった梨沙子を追い越し屋上に出る。
涼しい風が吹いてきて桃子は目を細めた。
「驚いた……中学の屋上ってこんな風になってるんだ。」
「ふふ、いいでしょー。ももの秘密の場所。」
- 141 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:49
-
フェンスまで一気に歩き、周囲を見渡す。
後ろからやっと動き始めた梨沙子がこっちに来るのが見えた。
きょろきょろと忙しなくあちこちを見る梨沙子。
その楽しそうな顔を見て桃子は胸を撫で下ろす。
―良かったぁ、気に入ってくれたみたい。
佐紀にも雅にも教えたことのない秘密の場所。
梨沙子だから教えたかった場所。
そこを受け入れてもらえて桃子は嬉しかった。
- 142 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:50
-
「りーちゃん、来年から中学でしょ?ここ、使っていいよ。部活してるのとか良く見えるから。」
「んー、うん。使う。けどももちはいいの?」
「来年にはもういないし、ももが教えたことは内緒だからね。」
「みーやんに怒られちゃう。」と桃子はふざけ半分に付け足した。
来年、梨沙子がここに来るとき自分は高校だ。
三つの年の差はこれからすれ違いしか生まない。
梨沙子が中学に入れば、桃子は高校に。
梨沙子が高校に入れば、桃子は就職か大学だ。
それは仕方ないことなのになんだか無性に悲しくなった。
「……ももも、来ればいいじゃん。」
「え?」
「高校になっても来ればいいじゃん!どうせ、サボるんだろうし。」
勢い良く言い切るとぷいと横を見る。
梨沙子の言葉を一瞬理解できず、桃子は言葉が出なかった。
だが段々頭が働いてくると同時に笑顔がこぼれた。
- 143 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:51
-
―あー……好きだなぁ。
梨沙子が好きだ。
拗ねやすいけど優しくて。
他人の悲しい顔が嫌いで。
そんな梨沙子が改めて好きだと思った。
「来てもいいの?」
梨沙子の隣に立って見上げるようにして見つめる。
すると梨沙子は桃子の手を取って握り、照れくさそうに言った。
- 144 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:51
-
「ももちの場所だもん。好きにすればいいと思う。」
「そっかぁ……そうだよね。じゃあ、毎日来ちゃおうかな。」
「勝手にすれば。」
冷たい言葉だけど桃子は知っている。
梨沙子の性格を。
だからそれは桃子にとって冷たい言葉にはならくて。
嬉しい言葉に変わるのだ。
- 145 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:52
-
がちゃりと大きな音がした。
桃子は自分の嬉しさそのままに勢い良く扉を開ける。
「りーちゃん!遊びに来たよー。」
「もも……高校ってそんなに休んで大丈夫なの?」
ここを梨沙子に教えたのは一年くらい前。
梨沙子と出会ったのは四年前。
桃子は今日も愛しい子が待つ屋上へと足を進めていた。
「気にしない、気にしない。りーちゃんだっていつもいるじゃん。」
「中学と高校じゃ違うもん。」
「ももはきちんと考えて休んでるから大丈夫なんですぅ。」
梨沙子の定位置、給水塔の上へと移動する。
寝ていたのだろう、上半身だけを起こして桃子を見る梨沙子。
青い空に浮いているように見えるその場所は梨沙子によく似合っていた。
- 146 名前:―キミの名前― 投稿日:2007/09/22(土) 10:52
-
「っていうかよく誰にもばれないで来れるよね。みやもゆりも気づいてないみたいだし。」
「ももしか知らない道も結構あるからね。それにわざわざ高校から誰か来るなんて思わないから。」
くすくすと笑いながら梨沙子の隣に寝転ぶ。
目の前にあるのは青空と梨沙子の横顔だけ。
それはとても気持ちいいことだった。
「まぁ、いいじゃん。りーちゃん、寝よう。」
小さく梨沙子の制服の裾を引く。
頻繁にといっても週一だったし、桃子としてはこの時間を無駄にしたくはない。
二人揃って横になって役に立つとは思えない無駄話をする。
この頃の桃子の楽しみの一つだった。
「しょうがないなぁ、もう。」
穏やかに進む時間。
梨沙子と二人きりの時間は何よりも桃子を幸せにさせる。
小六のときに見つけた運命を手放す気は微塵もなかった。
―キミの名前―終
- 147 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/22(土) 10:55
-
りしゃもも、出会い編でした。
続いてゆりりしゃです。
- 148 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/22(土) 10:55
-
- 149 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 10:56
-
部活休みの日。
彼女に会いに屋上へ行った。
青い空が気持ちいい日だった。
- 150 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 10:56
-
―見える、見えない―
- 151 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 10:56
-
いつものように給水塔の上に上る。
そこにはやはり梨沙子がいた。
ちょこんと体育座りをしながらぼーっと空を見ている。
その姿さえ絵画の様な雰囲気が出ていて友理奈はわくわくした。
「んー……あれ、ゆり?どうしたの?」
「今日は部活休みだから。りーちゃんこそ、起きてるなんて珍しいじゃん。」
人の気配に梨沙子はゆっくりと視線を動かす。
そして友理奈の姿を見ると僅かに首を傾げた。
もっともな疑問だと思う。
友理奈は訳を話しつつ梨沙子に近づく。
狭い屋根の上では数歩歩くまでなく、隣に座ることができる。
- 152 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 10:57
-
「ショックなことがあって、眠くなんないんだもん。」
「何かあったの?」
「うん、ちょっと。」
隣に座った友理奈を見たかと思うとすぐに膝に顔を埋める。
落ち込むまではいかないが気落ちしているのは確かなようだった。
―へぇ、どうしたんだろ。
そこまで深刻じゃないのは梨沙子を見れば分かった。
だから友理奈もそんなには心配していない。
だけど沈んでいる梨沙子を見れば自然と慰めたくなるのだから不思議だ。
- 153 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 10:57
-
「あたしでよければ聞くけど。」
「全然大したことじゃないんだよ。ただショックだっただけで。」
早口の言葉。
照れているのか、恥ずかしいのか。
友理奈には分からなかった。
笑顔のまま頷いて梨沙子に先を促す。
すると横目でそれを確認してからおずおずと梨沙子が口を開いた。
「……身体計測、あったじゃん。」
「あったね。」
そういえば今日は午前中を全て使っての身体計測の日だった。
友理奈は去年、測ったときよりもまた身長が伸びていて複雑な思いをした。
伸びるのは嬉しいが高くなり過ぎてもなぁというのが友理奈の気持ちだった。
- 154 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 10:58
-
―身長じゃないだろうし、体重かな?
梨沙子の身長はあまり変わっていない気がする。
それにもう少し背が欲しいと言っていたのも友理奈は覚えていた。
ならあとは体重くらいしか友理奈は思いつかない。
そう考えながらまたしても黙ってしまった梨沙子を見る。
結われた髪が風に揺れて、ほのかなシャンプーの匂いを友理奈に運ぶ。
「でさ、視力も測ったでしょ?」
「測ったねぇ、あたし見えづらくなってたし。」
「ゆりも?あたしも結構悪くなってて……。」
ぼそぼそと話す梨沙子に友理奈は合点が行った。
視力。
今まで見えていたものが見えなくなる。
それは嫌な気分になることだろうし、メガネは邪魔だと目の悪い友達が言っていた。
- 155 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 10:58
-
「思ったより悪くなってて、ショックだったってこと?」
「うん。」
はぁとため息をつく梨沙子が可愛くて笑いが漏れる。
梨沙子の気持ちも分かる。
友理奈だって物が見えなくなるのは嫌だ。
しかもバスケ部に入っている友理奈にとってメガネは邪魔になりすぎる。
「教室だと問題ないんだけど、体育館やグラウンドだとやっぱね。」
「あー、みやが見えなくて落ち込んでたんだ?」
「……どうなんだろ。」
そこで梨沙子はやっと顔を上げて友理奈を見た。
顔には苦笑が張り付いている。
んーと考えるように呻ってから視線を空へ動かす。
- 156 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 10:59
-
「みやはね、見えるから気にしてないんだ。」
「そうなの?」
「うん、雰囲気で見える。」
―雰囲気で、見る?
友理奈にはその感覚が分からない。
人を判別するのは顔や背でだったし、まして雰囲気でそれをするのは無理だった。
そしてそれより雅が見えるというのに梨沙子が何に落ち込んでいるか分からない。
雅が見えるならそれでいいと納得しそうなものなのに。
そんな気持ちが顔に出たのか、梨沙子が友理奈の顔を見てくすりと微笑む。
「分かんないよね。あたしも何でみやがみやだって分かるか、分かってないから。」
そう言う梨沙子に曖昧に頷くしか友理奈には出来ない。
実際分かっていなかったし、適当なことを言える空気ではなかった。
だが梨沙子が雅だけを判別できる理由だけは何となく理解できた。
梨沙子がずっと雅を見ていたことを友理奈は知っていたのだから。
- 157 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 11:00
-
―知ってるよ、りーちゃんがみやを見つけるのが得意なことは。
梨沙子は昔から雅を見つける事が得意だった。
一昨年、まだ小学生だった友理奈と梨沙子は雅たちを見に中学校の体育祭に行った事がある。
徒競走や綱引きはまだ良かった。
一回の競技はそんなに大人数ではないし見つけやすい。
困ったのはお昼過ぎの応援合戦だ。
あれは完全にお手上げだった。
広いグラウンド全体にたくさんの生徒が散らばり、動き回る。
その中から雅を見つけるなんて、無理だと友理奈は思った。
だが梨沙子は見つけて見せた。
始まって間も無く、というか雅が出てきてすぐに梨沙子は雅を感知した。
雅を見つけてはしゃぐ梨沙子の隣で友理奈は感心するしか出来なかった。
- 158 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 11:00
-
「りーちゃんは昔からみやのことは見つけられたじゃん。」
「そうかな?」
「そうだよ、もう。」
自覚がない梨沙子に苦笑が漏れる。
自分の胸に苦いものが広がるのを感じた。
今まで何度も感じた気持ち。
嫉妬だと友理奈は思った。
「でもさ、なら何でショックだったの?」
「……あたしだってみやしか見ないわけじゃないもん。他にも見るものあるし。」
―嘘だぁ。
そう思ったが口に出せばどうなるかは分かりきっていたので出さない。
すると唐突に梨沙子がすっと立ち上がった。
そして腕を伸ばしてグラウンドを指差す。
人の顔を見上げるというのは新鮮な感覚だと友理奈は思った。
- 159 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 11:00
-
「例えば、あそこテニスコートでしょ。」
梨沙子の手の先を辿ってグラウンドを見る。
確かにそこにはテニスコートがあった。
今は模擬戦でもしているのだろうか、二人しか各コートに立っていない。
「真ん中のコート、遠いほうがみやだよね。」
「えー……あ!ほんとだ、よく見えるねぇ。」
少し目を細めてじーっと見る。
確かに雅らしき少女がいた。
友理奈は少し落ちたとはいえ両目共に視力はAAだ。
その自分が頑張ってやっと見えるというのに、梨沙子は普通に雅を当てて見せた。
本当は見えているんじゃないかと友理奈は疑いたくなった。
- 160 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 11:01
-
「で、あっち。走り込みしてるの、バド部なんだけど。」
テニスコートの隣のグラウンドで走っている集団がいた。
体育館の振り分けが今日はバレー部だから外を走っているのだろう。
バスケ部も体育館を使えない日にはよくする練習だった。
―ちぃ、いるかな?
脳裏に思い浮かんだ姿を探す。
友理奈ほどではないが背が高い千奈美はすぐに見つかった。
「ちぃもいるはずでしょ?でもあたし分かんないんだ。」
「えっ、テニスコートより全然近いじゃん。」
「うん、だけど見つかんないの。」
酷く悲しそうな声で梨沙子が言う。
ぺたんと足を投げ出すように梨沙子が友理奈の隣に座る。
寄りかかるようにしてきた体を友理奈はそのままの体勢で受け止める。
肩口で梨沙子が話すのが分かった。
- 161 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 11:02
-
「みやは分かるのに、ちぃは分かんないの。」
「……りーちゃん。」
「それがヤ、みやが分かるのは嬉しいよ。嬉しいけど、ちぃとかゆりが分からなくなるのは嫌。」
押し出されたような声。
梨沙子は戸惑っているのだ。
雅への想いが大き過ぎて。
雰囲気だけで分かってしまう位に好き過ぎるから。
友理奈や千奈美が見えないんじゃない。
雅のことが見えすぎるのだ。
それが分かってないから梨沙子は怖がっている。
- 162 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 11:02
-
―変な所で子供なんだもんなぁ。
だけど愛しい。
自分と雅と千奈美の区別が出来ない梨沙子。
特別とそれ以外を分けられない梨沙子。
好きなんだから特別に見えて当然と思えない梨沙子が好きだと友理奈は思った。
「じゃあ、こうしよう。りーちゃん。」
「ふぇ?」
「あたしがみやと同じくらい見えるようになるよ。そうすればきっと他の人も見えるようになるよ。」
―ずるいなぁ、あたし。
知っているのに、滑り込むために教えない自分。
梨沙子の特別になるために提案する自分。
何をすればいいか分かっていながらしない自分がとてもずるく思えた。
- 163 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 11:03
-
「だから、そんな顔しないで。何も変じゃないから。」
肩から離して正面に梨沙子の顔を見る。
今にも泣きそうな表情だった。
出来る限り優しく友理奈は梨沙子の背中を宥めるように撫でる。
「……ゆりが?」
「そう、あたしが。」
「期待しないで、待ってる。」
素直じゃないなぁなんて思っても言わない。
梨沙子は嬉しいほど照れるから。
この反応は期待されていると考えていいと友理奈は思った。
- 164 名前:―見える、見えない― 投稿日:2007/09/22(土) 11:03
-
―とうとう、あたしもかー。
屋上から見える青空に苦笑する。
気分は秘宝に触れた盗賊のようなものだ。
桃子が門番で宝箱が雅、中身が梨沙子。
桃子が守って、雅が持っている梨沙子を自分は貰いに行くのだ。
その中に入る気はなかった。
自分には荷が重いと思っていた。
だがこの梨沙子を見て友理奈は気が変わった。
―みやがいつまでも放っておくからだよ。
雅しか見えてない瞳。
いつかその瞳に映ってみせる。
友理奈はそう決心したのだ。
―見える、見えない―終
- 165 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/22(土) 11:04
-
- 166 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/22(土) 11:07
-
なんでこんな話になったのだろうorz
予定ではただ「視力悪くなったのにみやだけは見えるんだー不思議。」
となるはずだったのに。
なんか暗いし、熊井ちょーは出てきちゃったし……。
ままならんものです、駄文書きはw
ではまた、妄想は溜まってるんで早く更新できると思います。
- 167 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/22(土) 11:07
-
- 168 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/22(土) 11:07
-
ネ
タ
- 169 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/22(土) 11:08
-
バ
レ
- 170 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/22(土) 11:08
-
隠
し
- 171 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/23(日) 00:28
- 素直じゃないりーちゃんハァ━━━━ ;´Д` ━━━━ン
更新お疲れ様です!
白桃に熊さんに愛されてりーちゃんは愛されてる子ですね
ここの作品を読むと毎回癒されます♪
- 172 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/23(日) 00:41
- りしゃもものももはカワイイし
ゆりりしゃのりしゃはカワイイねぇ
不協和音を奏でそうな積極的な熊井ちょーに期待。
名無飼育のレス返しは番号だけで良いと思いますよ、
返してくれるだけで十二分です。
負担になるようならレス返ししなくても…
- 173 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/28(金) 17:50
-
171>>名無飼育さん
りーちゃんって実際、可愛がられてると思うんですよねw
一番下だし性格も甘えん坊だから。
というかそれが一番イイ!
そんな願望も多分に含まれたスレです(爆
でも熊井ちょーも参戦するのは予想外でしたw
172>>名無飼育さん
りしゃもものももは白い分勝手に可愛くなるんですw
熊井ちょーは何だかんだで男前。
これ以上りーちゃんの周りが複雑になると書ききれなくなりそうです(エ
アドバイスありがとうございます。
負担では全然無いですよ。
りーちゃん絡みの妄想を話せて楽しいですw
スレあっとうございます!!
では今日の更新です。
まず、梨沙子独白。
- 174 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/28(金) 17:50
-
- 175 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:51
-
眠い眼を擦って授業を受ける。
だけどすぐに瞼は下がってきてしまって。
時折震えるケータイだけが眠気覚ましだった。
- 176 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:51
-
―メール―
- 177 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:52
-
「ふ……ぁー……。」
小さく欠伸をして空を見る。
窓際の真ん中の席は余り目立たなくて梨沙子は気に入っていた。
今も先生は梨沙子の事など気づかずチョークを握っている。
―眠いなぁー。
屋上に行きたくなった。
こんな風に天気の良い日は空が近くなって好きだ。
だが抜け出してまでサボる気にはならなくて梨沙子は机から周りを見回した。
真剣にノートを取っている人、自分と同じように眠そうにしている人。
はたまた既に寝ている人といろんな人が見えた。
三時間目だからこの授業が終わったら抜けようと梨沙子は思った。
うとうとと眠気が任せるまま目を瞑る。
- 178 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:52
-
ブー、ブー。
びくりと体が反応した。
静かに教師の方を伺い、こちらを見ていないことに胸を撫で下ろす。
梨沙子のスカートのポケットに入っているケータイはそのままだと結構大きな音が出る。
バイブにしていても気づかれることもあるのだ。
そのせいでケータイを取り上げられた友達を何人か知っていた。
梨沙子には桃子から教えてもらった裏技があったので未だ一回も気づかれたことはない。
だがそれでもやはり気づかれないか不安になるのだ。
―誰だろ?
- 179 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:53
-
梨沙子にわざわざこの時間帯にメールするのは限られている。
雅か桃子か。
友理奈は真面目だから授業中はメールをしない。
千奈美や茉麻はメールより電話が多かった。
佐紀はまず余りメールをしない。
梨沙子は慎重にケータイを取り出すとゆっくりと両手で開く。
暗かった画面が一瞬で明るくなり、新着メールを知らせる。
親指を動かしメールボックスを開く。
「みやだ。」
小さく呟く。
名前を見た瞬間に顔が緩みそうになった。
慌てて引き締めようとする。
しかし嬉しいのに表情だけ真剣にするのは難しくて。
梨沙子は下を向いて誤魔化すことにした。
- 180 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:53
-
From:みや
Title:起きてる?!
梨沙子、寝ちゃ駄目だからねっ。
あんたはサボるのも多いんだから!
いる時位真剣に聞いてなさい。
っていうか今ちゃんと教室にいる?
昼ごはんになったら迎えに行くから。
その時いなかったら怒るよ!!
- 181 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:53
-
―……失礼だもん。
これでは四六時中寝ているみたいだと梨沙子は思った。
でも心の中で仕方ないと思う自分もいて。
それは確かに当たっているのだから。
サボりもするし、眠りもする。
中学校という新しい環境は梨沙子にとって退屈だった。
妙に厳しくなった上下関係。
雅や友理奈といるだけで騒ぐ別の学校からの友達。
分からない授業。
全部が面白くなかった。
- 182 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:54
-
―ももちと佐紀ちゃんもいないし。
梨沙子にとっての中学は去年の状態だった。
最高学年に桃子と佐紀がいて。
その下に雅と千奈美と茉麻がいて。
1個上の友理奈がいる。
それが梨沙子の楽しみにしていた中学校だったのだ。
実際は自分と入れ違いに桃子と佐紀は卒業してしまった。
小学校のとき同じクラブだった七人が集まることはもうないのかと思うと悲しくなる。
―……みやも来年にはいないんだよね。
当たり前だけど嫌だった。
小中高一貫のこの学校では敷地は全て隣り合っている。
だから登下校は変わらず一緒だ。
だがそんなことは梨沙子に関係ない。
ただ同じ場所に入れないのが嫌なのだ。
小学校のときもそう思った。
- 183 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:54
-
ブー、ブー。
そう考え込んでいた梨沙子の手の中でまたもやバイブが鳴った。
手の中にあるからさっきより大きい音が出て。
慌ててボタンを押しバイブを止める。
―びっくりしたぁ。
無意識のうちに止めていた息を吐き出す。
心臓が激しく波打っていた。
何回か深呼吸して心を落ち着かせる。
それからメールを見るため画面を切り替える。
- 184 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:55
-
―みや、なわけないし……ももちかな?
雅は続けてメールは寄こさない。
勉強は余り得意でない雅は今頃、真面目に授業を受けていることだろう。
ということは桃子からしかないと梨沙子は思った。
From:ももち
Title:今日だけど〜。
暇だったら家来ない?
今日、ももの親出張でいないんだぁ。
一人だと寂しいからさ。
ダメ?
- 185 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:55
-
暇なことは事実だ。
梨沙子は美術部だし、休むのは簡単である。
それがなければ放課後は雅を待つ時間だった。
しかし雅は大会が近いらしくいつもより遅い時間まで部活をしている。
日が完全に暮れるまですることも増えてきていた。
そのせいでこの頃梨沙子は雅と帰れていない。
雅が一人待っている梨沙子を気にして早く帰れというからだ。
梨沙子はケータイ片手に考える。
ここで大丈夫とメールを送ることはできる。
今日は金曜日だし、そのまま止まることも平気だ。
だが週末の約束を取り付けるためにも今日は雅と帰りたかった。
- 186 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:56
-
―……どうしよーかなぁ。
ちらちらと頭に浮かぶのは寂しそうな表情の桃子。
困ったような笑顔で自分を見上げる桃子の顔だった。
桃子は梨沙子に我侭は言わない。
常に我慢して梨沙子の願いを叶えてくれる。
それは梨沙子にとってとても心地よいもので、少し悲しいものでもあった。
だからたまのお願いくらい聞きたかった。
―ももち、だよね。ここは。
雅と帰れないのは心苦しい。
やっと一緒に帰れるかと思ったのだから。
金曜日なら次の日も休みだし、遅くなってもいい。
だけど梨沙子に桃子を放っておくことはできない。
それに雅は自分が帰ったほうが嬉しいのだろうと梨沙子は思う。
- 187 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:56
-
―みやはあたしのことなんてどうでも良いんだもん。
不貞腐れるようにそう考える。
梨沙子がいくら待っていても必ず振り返るとは限らない。
いくら追っかけていっても雅はすぐに離れていってしまう。
雅が好きで仕方のない梨沙子でも疲れるときはあるのだ。
特に今回のように一緒に入れる時間が短いと。
どうしても不安になる。
- 188 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:57
-
―梨沙子。
―りーちゃん。
頭に浮かんできたのは二種類の笑顔。
雅と桃子。
梨沙子はどっちの顔も大好きで、どっちの顔も切り捨てられない。
そんな優柔不断な自分に嫌気が差しながらメールを打つ。
桃子宛だ。
自分を求めてくれない雅より、求めてくれる桃子に。
今日の時間を上げることくらい良いんじゃないかと梨沙子は思った。
桃子のことだから今日泊まっても明日には帰れと言うのだろう。
純粋に自分のことを思ってくれる桃子。
- 189 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:57
-
―なんであたしなんだろ。
桃子だったら他に良い人なんて簡単に見つかる。
きちんと応えて上げられない自分じゃなくて。
桃子を大切にして、桃子しか見ない人が。
それなのに桃子は梨沙子を選んだ。
梨沙子には良く分からない。
だがこれだけは分かっていた。
―……気づいたら好きなんだもん。
- 190 名前:―メール― 投稿日:2007/09/28(金) 17:58
-
いつの間にかどうしようもないほど好きになる。
梨沙子にとっての雅。
桃子にとっての梨沙子。
結局は似たもの同士なのかもしれない。
梨沙子は今頃高校の教室で同じように授業を受けている桃子のことを想った。
―メール―終
- 191 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/28(金) 17:58
-
- 192 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/28(金) 18:00
-
りーちゃんの独白でした。
みやを好きなんだけど、ももちのことも切り離せない。
そんな揺れるりーちゃんでした。
- 193 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/28(金) 18:00
-
二本目、りしゃみや。
といいつつ梨沙子でてませんが。
- 194 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/28(金) 18:01
-
- 195 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:01
-
朝、手渡された手紙。
それを無視することは出来なくて。
雅は余り気乗りしない体を動かし屋上に向かっている。
- 196 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:02
-
―告白―
- 197 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:02
-
曇った空。
寂れた屋上。
目の前にいるのは雅に手紙を渡した張本人。
雅にとっては今日始めて顔を見た人物だった。
「好きです!付き合ってください。」
真っ赤な顔で告げられたのは予想していた言葉。
まるでドラマのような場面だと思った。
朝、学校に来て手紙を手渡されたときから分かっていた。
告白されるということを。
だからこそ雅は来たくなかったのだ。
- 198 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:02
-
「あー……ごめん。付き合えない。」
きっぱりと言う。
照れも嫌悪も入らない。
ただ雅は申し訳なく思うだけ。
「誰か好きな人、いるんですか?」
明らかに沈んだ顔をしながら聞く彼女。
断られることが分かっていたのだろうか。
気落ちしつつもやっぱりという感情が表情に見て取れた。
一つ下の彼女の問いに雅は首を振る。
- 199 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:03
-
「好きな人も付き合ってる人もいないけど、付き合う気にはなれないんだ。ごめん。」
「……そうですか。わざわざ来てくれてありがとうございました。」
ぺこりとお辞儀をした少女はそのまま雅の方を見ずに屋上を去る。
雅はそれをただ見つめていた。
扉が閉まり、屋上には雅ただ一人が残される。
その瞬間に雅は詰めていた息を大きく吐き出した。
―緊張したー。
フェンスに近づきそのまま寄りかかるようにして座り込む。
雨が降りそうな淀んだ空がそこにあった。
だがすぐに人ごみの中に戻る気はない。
今戻れば同じクラスの千奈美に色々聞かれることは分かっていた。
- 200 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:03
-
「付き合う、かぁ。」
雅にはその感覚が分からない。
中学に入ってから告白される回数が増えた。
男からも女からも。
その全てを雅は断ってきた。
―梨沙子がなぁ……。
なんとなく目の前の空に手を伸ばし握り締める。
元から付き合う気はないが、それよりちらりちらりと告白の度に頭を掠める映像。
梨沙子の泣きそうな顔が雅を止める。
それのおかげか、例えどんな人に言われたとしてもはっきり断れるようになった。
- 201 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:03
-
「相変わらず、もてるねぇ。みーやん。」
「っ!もも、いつからそこにいたのさ。」
「最初からだよ、ご飯食べようと思って。」
給水塔の影。
雅から死角になっている場所から桃子が現れた。
右手には購買の袋があって、本当にご飯を食べに来たんだと雅はびっくりした。
こんな天気の日に、こんな場所で食べることが信じられなかった。
しかも桃子は一人で、寂しくないのだろうかと人事ながら思う。
「たまには一人もいいもんだよ?気分転換。」
「そうかなー。」
顔に出たのだろうか桃子が笑って雅を見る。
雅は理解できなくて、首を傾げるも否定はしない。
人によって感じ方が違うこと位中学生になれば分かっていた。
実際生まれてからずっと一緒と言っていい梨沙子にだって分からないことがある。
- 202 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:04
-
「そうなの!で、どうすんの?」
「何が?」
「りーちゃんに言うの?」
桃子がその場に座る。
袋を開け、何でも無い様な風を装って聞いてきた。
雅は不意打ちに近いその一言にびくりと身を竦ませる。
それは雅が一番恐れていたこと。
桃子はそんな雅には気づかずサンドイッチをぱくついている。
- 203 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:04
-
「ももっ、お願いだから梨沙子に言わないで!」
「……いいけどさ、いずればれるよ?」
来年梨沙子が中学生になれば流石に隠し通せない。
雅にだって分かっている。
同じ学校で、今日みたいに手紙を渡されたらあっという間に広がることを。
だけど気持ちの問題で今、梨沙子に知られたくなかったのだ。
泣かれるのも、ふくれられるのも、拗ねられるのも嫌だった。
それが雅の自意識過剰かもしれなくても。
本当はあっさりと「そうなんだ。」の一言で終わったとしても。
とりあえず嫌なのだ。
- 204 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:05
-
「分かってるけど!けど言わないで。」
「まったく、りーちゃんのことになると……。」
桃子の顔に苦笑が現れる。
雅も釣られるように笑みを作る。
嫌だの一点張りで。
明確な理由を教えなかった。
というより雅自身分からないのだ。
それなのに「いいよ。」と言う桃子に頭が下がる。
「ありがと、もも。」
「気にしないで。でも、もしかしたら、もう気づいてるかもよ?」
ひらひらと軽く手を振る桃子。
だがその口から出た言葉に雅は動きが止まる。
- 205 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:06
-
「へっ?」
なんでという疑問を多分に含む視線を桃子に向ける。
さっぱり意味が分からない雅に桃子はまたもや苦笑する。
そんな雅には構わず桃子は言葉を続けた。
「だってみーやん小学校の時も告白されてたでしょう?」
「うん、まぁね。」
確かに今に比べればかなり少ないが、されたことはあった。
中二になった今考えると恥ずかしさがこみ上げてきて雅は頬を染める。
―なんか、かなり、ませてるよね。
小学生で付き合うとか。
今現在付き合うということが分からないのに。
その当時自分に告白した人を問い詰めたくなる。
- 206 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:06
-
「ってことは、りーちゃんだって中学校になったらもっと告白されるだろうなぁって予想できると思わない?」
「……あ。」
それもそうだ。
雅は今まで思いつかなかった自分に呆れる。
小学校の時は手紙だったり、直接だったり。
酷いと梨沙子の目の前で呼び出されたりした。
その度に梨沙子はランドセルのベルトをぎゅっと掴んで泣きそうな目で自分を待っているのだ。
怖がりの癖に、寂しがりの癖に。
校門の前で、暗くなっても待っている。
その姿が離れなくて雅は断ってきた。
何よりも梨沙子に泣かれることが雅には嫌だから。
- 207 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:07
-
「あくまで予想だし、実際に聞くのと想像するのは違うけどさ。」
「いや、そう考えると確かにそうかも。」
―っていうかむしろそう。
梨沙子は鈍い所やアホな所が多々ある。
だが自分に関しては鋭くて、敏感なことを雅は知っていた。
だから桃子の予想は十中八九当たっている。
片手にパンを、片手で頬を掻く桃子に頷いてみせる。
「あ〜、何で気づかなかったんだろ。」
「別に良いんじゃない。それでもみーやんは言いたくないんでしょう?」
「うん、わざわざ言うのも変だし。」
- 208 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:07
-
「やっぱ、泣きそうな気がするし。」と雅は小声で続けた。
それは答えと言うより独り言。
しかし桃子にはしっかりと聞こえていたようで。
外国人のように大げさに肩をすくめられた。
「そんなに大切なら言ったら?りーちゃんも喜ぶし。」
「付き合うとかそんなんじゃないから。ただ……。」
「泣き顔が見たくないだけ?それで十分だと思うけど。」
そう言われても雅には分からない。
好きで付き合う気持ちが分からない。
そんな雅を見て桃子が試すように笑う。
- 209 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:08
-
「なら一回誰かと付き合ってみればいいじゃん。」
「いや、それは。」
「りーちゃんが泣くから?できない?」
「うん。」
矢継ぎ早に出された言葉に頷く。
すると桃子ははぁと大きくため息をついた。
そして雅から視線を外すと俯く。
雅には桃子の表情が見えなくなった。
「……残酷だよ、みーやん。中途半端なりーちゃんが可哀想。」
ぽつりと言われた言葉はきちんと雅に届くことは無く。
桃子は自分の言った言葉など無かったかのような顔で雅を見上げる。
そこには仕方ないといった笑顔があった。
雅は頭を傾げる。
桃子の笑顔が分からなかった。
- 210 名前:―告白― 投稿日:2007/09/28(金) 18:08
-
「まぁ、ももには関係ないけど。りーちゃんを泣かせたら許さないからね。」
「だから泣かせないって。」
ふいと顔を逸らす。
泣かせないと言うのが妙に気恥ずかしい。
梨沙子を可愛がっている桃子にとってそれは重要なことなのだろう。
桃子は梨沙子に対してまさに猫可愛がりだった。
初めて会わせた時からそうだった。
だから別に変には思わない。
少し笑顔に見え隠れしている切なさが気になっただけだった。
―告白―終
- 211 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/28(金) 18:09
-
- 212 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/28(金) 18:12
-
雅ちゃんは鈍いです。
超絶に。
桃子の想いも、梨沙子の想いも気づいてません。
でも無意識に梨沙子は大切にしています。
……そんなりしゃみやが好きなんですw
ではまた妄想が溜まった時に。
- 213 名前:CPヲタ 投稿日:2007/09/28(金) 18:12
-
- 214 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/29(土) 00:19
- りーちゃハァ━━━━ ;´Д` ━━━━ン!!!!!
更新お疲れ様です。
確かにりーちゃんはメンバーに愛されてると思います!!
りーちゃんの独白良かったです!
白桃と鈍感雅ちゃんにムフフです♪
ふわぁ・・・癒されました。
- 215 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/29(土) 01:40
- うーん
ココではもも贔屓になっちゃうなぁ
- 216 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 22:42
-
214>>名無飼育さん
どぞ、もっともっとりーちゃんにハァーンしてくださいw
そのためのスレです!w
梨沙子視点を書くのは初めてだったんで、楽しんでもらったら幸いです。
白桃w
鈍感雅ちゃんw
そんな二人に二人でよかったら、癒されてやってください。
215>>名無飼育さん
書いてる人物が桃子贔屓なもんでw
りしゃみやが好きなのに出張るのは桃子です(爆
うーん、小説の摩訶不思議ですな。
一時の桃子ヲタ気分を楽しんでくださいw
では今日の更新です。
- 217 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 22:44
-
一本目、りしゃもも。
今までの設定とはまるっきり違うのでそれを理解してお読み下さい。
- 218 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 22:44
-
- 219 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:45
-
良い天気。
絶好のデート日和。
だけどももの気持ちは曇り気味。
それはやっぱ気になっていることがあるから。
―りーちゃんにとってみーやんって何なんだろう。
- 220 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:46
-
―遊園地―
- 221 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:46
-
「ももち!もう、遅いよー。」
「ごめんごめん。準備に時間掛かっちゃって。」
きょろきょろと周りを見回し探し人を見つける。
改札口を出てそんなに離れていない場所に梨沙子はいた。
桃子は駆け足で梨沙子の元に向かう。
ちょっと眉間に寄せられた皺が不機嫌さを現していた。
「いいよ、そんな待ってないし。」
軽く全身を見られ、ふいと顔を逸らされる。
最初は拗ねているのかと思った。
だけど微かに赤く染まった頬はそれだけでなくて。
ああ、心配してくれたんだと桃子は理解した。
その瞬間に頬が緩んだ。
- 222 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:47
-
「早く行こっ。混んだら嫌だし。」
目の前に差し出される手。
桃子は迷うことなくそれを取った。
「まず、何に行く?」
「うーん、近いのはお化け屋敷だね。」
梨沙子の持つパンフを隣から覗き込む。
千葉にある夢の国に比べれば小さな、それでも普通の遊園地にしては大きな場所。
まだ入ったばかりの桃子たちの近くには乗り物は余りなかった。
―ももはお化け屋敷大丈夫だけど……。
僅かに高い所にある梨沙子の顔を見る。
顰められた眉が嫌気を如実に表している。
相変わらず顔に出る子だなぁと桃子は思う。
梨沙子はお化け屋敷が駄目なのだ。
- 223 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:47
-
「無理しなくていいよ?」
桃子の言葉に考え込んでしまった梨沙子に言う。
今、自分の顔には苦笑が浮かんでいるのだろうか。
どうしても可愛がってしまう。
甘くなってしまう。
三つも年下だからというのもある。
だがどちらかというとそれは惚れた弱み。
ただ梨沙子の嫌なことは絶対したくないだけのだ。
- 224 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:48
-
そんな桃子を見て梨沙子は一瞬驚いた顔をしたかと思うとすぐにふっと気を抜くように笑う。
そして優しい顔のまま桃子を見て言った。
「あたしは大丈夫だから、ここ行こう。」
「でもさ。」
「大丈夫だってももちも一緒だもん。」
ぱたぱたと軽くパンフレットを畳むと桃子の手を取りすぐに歩き出す。
掴まれた手が温かかった。
目の前の背中を見ながら桃子は思う。
―気づいてないんだもんなー。
全身の体温が一度くらい上がった気がした。
あの表情とセリフはずるい。
惹き込まれて固まってしまう。
桃子は静かに深呼吸をすると駆け足の梨沙子に声をかける。
- 225 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:48
-
「りーちゃん、そんなに焦んなくても混んでないよ?」
「いいじゃん。その分一杯遊べるんだし。」
にっと梨沙子が笑う。
いたずらっ子のようなそれに仕方ないなぁと桃子も足を速める。
梨沙子は結構頑固で一度決めたら止めない。
「やっぱ、平日は空いてるね。」
「夏休みだからね、ここら辺なら千葉まで楽に行けるし。」
辿り着いたお化け屋敷は並んでいることもなく。
すぐに入れるようだった。
目の前まで来ると流石におどろおどろしい雰囲気が出ている。
本来そこまで苦手じゃない桃子でさえちょっと腰が引けてしまった。
- 226 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:49
-
「どうする?りーちゃん。」
「は、入るもんっ。怖くなんて無いもん。」
―意地張っちゃてぇ。
怖くないはずが無い。
証拠に顔は微妙に引きつっている。
だけどそう言うなら桃子に止める気は無い。
むしろ泣きそうな表情に嗜虐心がそそられてしまった。
「じゃ、行こう。」といって桃子は先ほどとは逆に梨沙子の手を引く。
- 227 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:50
-
・
・
・
・
・
- 228 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:51
-
「りーちゃん、大丈夫?」
「……うん、今度から……やっぱ、入んないようにする。」
梨沙子の顔は真っ青だった。
単純に怖かったのか、それとも叫びすぎたせいか分からない。
ふらふらの梨沙子をベンチに避難させ休ませる。
途切れ途切れの言葉をゆっくりと聞いて。
肩に感じる重みが心地よかった。
「みやからも、言われてたんだけどさ。」
「なんて?」
聞き逃せなかった。
表面は気にしてない風を装う。
だけど本当は一番聞きたかったこと。
- 229 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:51
-
「『梨沙子はお化け屋敷とジェットコースター駄目なんだから入っちゃ駄目だよ。』って。」
恥ずかしそうに梨沙子が笑う。
見慣れない上目遣いにくらっとくる。
可愛いと正直に思った。
「ももがいるから、平気かなって。……入っちゃった。」
その言葉は嬉しい。
梨沙子が自分を頼りにしてくれたということだし、甘えてくれたということだ。
嬉しいのだがどこか心の中がモヤモヤしていた。
- 230 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:51
-
―……なんか、悔しいなぁ。
何が駄目か分かるほど遊園地に来ていることも。
頑固な梨沙子が素直に言うことを聞くことも。
羨ましくて、悔しかった。
梨沙子の恋人は自分なのに。
梨沙子の話すことは八割がた雅のことで。
桃子はずっと聞きたかったのだ。
だから気づいたときには口からその疑問が飛び出ていた。
「ねぇ、りーちゃんにとってみーやんって何なの?」
時間が止まった。
ふっと肩が軽くなる。
何でかと思ったら梨沙子が少し赤みの戻った顔を離したからだ。
梨沙子は不思議そうに首を傾げてから桃子を見る。
そのなんでもない視線に心臓が激しく脈打ち始めた。
- 231 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:52
-
―ちがっ、聞くつもり、なかったのに……。
気持ちの悪い汗が背中を伝う。
ゆったりとした空間の中で桃子だけが焦っていた。
聞いてはいけないことだと思った。
自分が梨沙子と楽しく付き合うためには聞かないほうが良い。
きっと。
だがそんな桃子の様子にも気づかず。
ただきょとんとした表情で梨沙子は桃子を見る。
そして梨沙子の口がゆっくりと開いた。
「みやは……そうだなぁ、お姉ちゃんかな?小さい頃からずっと一緒の。」
「そう、なんだ。」
- 232 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:52
-
分かっていた。
梨沙子がどう答えるかなんて。
恥ずかしいような照れているような、または自慢げな表情。
そんな顔で言う答えがそれでは桃子は納得できない。
苦い想いが顔ににじみ出る。
しかし梨沙子はぴょんと元気良くベンチから立ち上がると桃子を見た。
眩しい笑顔がそこにあった。
「もも、観覧車乗ろう?」
その笑顔に抵抗できるわけもない。
桃子はこくりと頷くしかなかった。
- 233 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:53
-
「うわー、結構遠くまで見えるもんだね。」
「もともと高い場所にあるしね、この遊園地。」
乗り込んで一分も経たない内に梨沙子が歓声を上げた。
まだ四分の一進んだ程度だがそれでも十分に高さがある。
ゆっくりと動く景色は確かに新鮮なものだった。
―久しぶりだなぁ、観覧車。
最後に来たのはいつだろうと思い出す。
小学生の頃だろうか。
あやふやな記憶は年代が判別できない。
久しぶりであることだけが確かな記憶だった。
といつの間にかこちらを見ていた梨沙子と視線が合う。
- 234 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:53
-
「あたしさ、好きな人はももちだけなんだよ?」
「な、なに、急に?」
「だってさっき気にしてたじゃん。みやのこと。」
いきなりの告白に顔が熱くなった。
真剣な表情と声音。
そういう顔をすると梨沙子は歳相応の幼さが消えて、綺麗になる。
息を呑んでしまうくらいの美しさ。
それに押されて桃子は身動きが取れなくなる。
梨沙子に囚われてしまったからだ。
「みやとは、そりゃ、仲良いよ?……でも恋人じゃないし。」
動けない桃子を脇に観覧車はどんどん昇っていく。
対面に座る梨沙子はじっと桃子の目を見て話していた。
そこから読み取れるのは一生懸命さ。
桃子に必死に雅と自分の関係を教えようとする気持ち。
- 235 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:54
-
―でもっ、でもね。りーちゃん。
桃子の心にこびり付いて離れない思いがある。
梨沙子の言葉は信頼できる。
確かに桃子は恋人で雅は恋人じゃないだろう。
でも桃子が言いたいのはそういうことではなかった。
―ももとみーやん、単純に好きの度合いだったら。そうしたらみーやんの勝ちでしょ?
簡単な話だ。
昔からある吊橋の話。
吊橋から落ちそうになっている二人の人物のどちらを先に救うか。
梨沙子は多分雅を真っ先に救うのだろう。
それを示すために桃子は尋ねる。
- 236 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:54
-
「りーちゃん、正直に答えてね。」
「うん。」
「みーやんともも、死にそうになったたらどっちを先に助ける?」
終わったと桃子は思った。
固まった梨沙子を見たくなくて桃子は目を瞑り俯く。
梨沙子との恋人関係も、何もかもこれで終わりだ。
はぁと向こうから大きく息を吐く音が聞こえてきた。
暗闇の中ではそれは大きく聞こえる。
桃子は審判を下される罪人のような気持ちで梨沙子の言葉を待った。
「……ももちだよ。みやじゃなくて、あたしはももを助ける。」
「嘘。」
反射的に声が出た。
それほどまでに信じられないことだった。
- 237 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:55
-
「嘘じゃないよ。もしみやを先に助けようとしたら、あたし、怒られるよ?」
けらけらとさっきまでの雰囲気など吹き飛ばすように梨沙子が笑う。
それでも桃子の脳は納得してくれなくて。
泣きそうな顔になっているのが自分でも分かった。
「きっと『さっさともも助けて!で早くうちも助けてよねっ。』って言われる。」
「そうかな……?」
明るく言う梨沙子に視界が歪みだす。
頭より先に心が納得した。
雅は梨沙子に恋人である桃子を見捨てさせることは性格からして決してないと。
梨沙子にそう教えたのだろうということを。
そして梨沙子は雅がそう言うと信じているのだ。
梨沙子の言葉が嬉しくて、温かくなる。
- 238 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:55
-
「そうだよ。あたしの好きなみやはそういう人だもん。」
胸を張る梨沙子に笑いがこみ上げてきた。
きっと、そうなのだろう。
梨沙子が言うのだから間違いない。
―みーやんって凄いなぁ。
泣き笑いをしながら桃子は考える。
梨沙子をこういう風に教育したのは雅だ。
真っ直ぐで愛しい性格。
小さい頃から一緒の雅がいなければ、そうはならなかっただろう。
梨沙子と雅の間にある絆は固くて特別に見える。
それが桃子には羨ましくて、悔しかった。
だけど今の梨沙子になったのが雅のおかげならば、桃子は雅に感謝しなければならない。
- 239 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:56
-
「あー、ももっ。泣かないで?」
「なんか嬉しいのっ、とか…ぅ…びっくりしたのとかっ、混ざっちゃって…っ。」
景色なんて当然見えない。
梨沙子が隣に移動してきて、背中を撫でられる。
ぼろぼろと零れる涙はもう止められなかった。
「ももち!」
「え?……ぅ…ん……。」
名前を呼ばれて顔を上げるとすぐそばに梨沙子の顔があった。
不意打ちでのキス。
唇から離れたと思ったらそのまま目尻や頬に柔らかい感触が移った。
「ちょっ……りーちゃん?」
「泣き止むまで止めないもん。」
真面目な顔で言われる。
その間も梨沙子のキスは止まらない。
- 240 名前:―遊園地― 投稿日:2007/10/02(火) 22:56
-
―これもみーやんに教えてもらったの?
心の中でからかうようにそう思う。
くすりと微笑が生まれた。
いつの間にか観覧車の頂上は過ぎていた。
だが惜しむ気持ちは少しも無くて。
桃子の中にあるのはどこか吹っ切れた想い。
梨沙子がこんなにも愛してくれるならいいじゃないかという。
その想いだけだった。
雅との関係が、絆がいくら強くても。
今、愛されているのは自分で。
恋人なのも自分で。
好きと言われるのも自分で。
それで十分だと桃子は思った。
―遊園地―終
- 241 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 22:58
-
- 242 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 22:59
-
二本目、りしゃゆり。
またまた違う設定で、アンリアルです。
- 243 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 22:59
-
- 244 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 22:59
-
暑中見舞い。
葉書と一緒に来たのは本人で。
びっくりしたけど、嬉しかったんだ。
- 245 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:00
-
―葉書―
- 246 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:00
-
「ゆりゆりゆりーっ!」
玄関から響いた声に友理奈は呼んでいた雑誌を置いて部屋を出る。
誰の声なのかなどとっくに分かっていた。
友理奈のことを“ゆり”と呼ぶのは一人しかいない。
それにその明るい声を聞き間違うはずが無かった。
とんとんと僅かな音と共に階段を下りる。
すぐに目的の人物が目に入った。
「もう、そんなに叫ばなくても聞こえるよー。」
「だってゆり出てこないんだもん。」
ぷくっと膨れた頬に幼さを感じて友理奈は笑ってしまう。
急いで来たのか梨沙子の顔にはうっすらと汗が見えた。
友理奈は梨沙子の前髪を払い、額の汗をハンカチで拭う。
- 247 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:01
-
「汗かいちゃって……上がりなよ。ジュース、あったと思うから。」
「うん!ありがと。あ、あとこれ。」
廊下を歩き出す前に呼び止められる。
差し出された右手に、一枚の葉書があった。
友理奈はそれを貰うとぴらりと裏返す。
絵葉書だった。
表は普通の葉書と変わらなず、宛名しか書いていない。
見慣れた字で“暑中お見舞い申し上げます。”と書いてあった。
使わない字に苦労したのだろう。
縦書きのそれは段々斜めになっていた。
「……暑中見舞い?」
「ほら、あたし旅行行ってたから。そこで書いたの。」
「北海道だっけ?」
「そう、二泊三日。」
- 248 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:01
-
そういえばそんな事言っていたと友理奈は思い出す。
良く見れば上半分の絵はラベンダー畑のようで。
確かに北海道っぽい風景だなと思う。
自分の家だから足元など見なくても歩ける。
友理奈は葉書を見たまま台所へと向かった。
「りーちゃん、部屋先に行ってて。場所分かるよね?」
「大丈夫だよ。じゃ、待ってるっ。」
ルンルンと階段を上っていく梨沙子。
スキップをしそうなほどに機嫌が良い。
そんな梨沙子を見て首を傾げるもまぁいいかと友理奈は流した。
台所に着き、冷蔵庫を開ける。
それから適当にオレンジジュースを見繕いコップに注いだ。
コポコポコポと清涼感に溢れる耳ざわりのいい音が響いた。
- 249 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:01
-
「……一週間くらい、会ってないよね。」
なんとなく上を見上げる。
最後に会ったのは梨沙子が旅行に行く二日前。
その時も梨沙子は楽しそうにしていた。
―ちょっとくらい、寂しそうにしてくれてもいいと思うんだけどなぁ。
旅行に行く前も、帰ってきた今も。
梨沙子は変わらず楽しそうで。
それが少し気に入らなかった。
ならば悲しそうな顔をしていればいいのかと聞かれたら勿論違う。
どうせ旅行に行くなら楽しそうにして欲しい。
だけどその前に。
最後に二人で会ったときくらい、ちょっとはさびしい顔をしてもらいたかっただけなのだ。
友理奈はそう自分の中で結論付けた。
- 250 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:02
-
―楽しかったみたいだから、いいけどさ。
ジュースの入ったコップ二つをお盆に載せ、梨沙子の待つ部屋へ足を進める。
からんと氷の入ったコップが涼しげに鳴った。
「りーちゃん、ジュース持って来たよ。開けてー。」
扉の前に立ち、少し大きな声で言う。
すぐに部屋の中からとたとたと小走りの音が聞こえてきて。
開かれた扉の中には満面の笑みの梨沙子がいた。
「ゆりーっ!」
勢い良く抱きつかれる。
梨沙子が普段は見せない俊敏さでジュースの乗ったお盆を掻い潜ってきた。
友理奈と15p近く差がある梨沙子はすっぽりと腕の中に収まってしまう。
- 251 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:02
-
「もう、ちょっ、危ないよー。」
「んふふぅー。」
気の抜けるような笑い声が響いた。
とっさの判断でお盆を上げ、それ以上揺れるのを防ぐ。
内心はとても困ったが梨沙子の笑顔に釣られて友理奈の顔には笑顔が浮かんだ。
こうなった梨沙子に離れる気がないのはわかっていた。
「とりあえずお盆置くから。……一回、離れて。ね?」
慎重に、梨沙子の機嫌を損なわないように言う。
お盆を水平に保ったままの姿勢は思いのほか疲れる。
顔のすぐ側に梨沙子の頭があるため迂闊に体を動かすこともできない。
「んー……ヤダ。」
微かに首をかしげて、上目遣い。
その格好から我侭を放つ様子はこれ以上ないほど梨沙子に似合っていた。
- 252 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:03
-
―梨沙子って、ほんと、お姫様みたいだよね。
可愛らしい容姿も。
その性格も。
お姫様みたいだと友理奈は思っていた。
そんな梨沙子が友理奈は全部好きなのだ。
「じゃ、これどうするの?」
「あとで飲むから置いておいて。」
「このままじゃ、置けないよー。」
「離れないもーん。」
真下に見える梨沙子の表情に苦笑が漏れた。
まったく我侭なお姫様だ。
ずりずりと梨沙子を押すようにしながら進む。
こういった状況になったのは初めてでなく、友理奈も諦めがついていた。
数歩の距離をやっと歩き、ゆっくりと気をつけてテーブルにお盆を置く。
ふぅと知らず息が漏れた。
- 253 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:03
-
「ゆりー!」
「っ……りーちゃん、急に抱きついたら危ないから。」
「後ろはベッドだし、大丈夫だよ。」
にっこりと笑う梨沙子は確信犯だ。
ぼすんと二人分の体重がかかり、へこんだベッドに包まれる。
胸と背中に柔らかい感触。
背中はベッドだ。
そして体の前面に感じる柔らかさは梨沙子に違いなかった。
―これで、一つ下なんだもんね。
梨沙子は友理奈に重なったまま、首筋に頭を埋めている。
微かな芳香が友理奈の鼻をくすぐった。
- 254 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:03
-
「ゆり、顔真っ赤ぁー。」
耳元でくすくすと梨沙子の声が聞こえた。
悪戯な表情で自分を見る梨沙子。
それは幼い笑顔ではなく色のある笑み。
ぞくりと冷気以外のものが背筋を昇っていった。
何度目でも慣れない感情だと友理奈は思う。
時々見せる梨沙子のこの状態に友理奈は抵抗できない。
―ちゅっ。
固まる友理奈に梨沙子の顔が下りてきた。
最初、額に触れたとおもった唇は止まらず友理奈の顔を動き回る。
くすぐったさに背筋がぴくぴくと動く。
- 255 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:04
-
―ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ。
止まないキスに梨沙子の好きなようにさせておく。
一週間。
それは短いようで、長い時間。
その間に溜まっていた寂しさを友理奈は梨沙子の温もりで溶かす。
「あー……ゆりの体、久しぶりだもん。」
気が済んだのだろう。
五分程度経った時、梨沙子は唐突に頭を離す。
そしてぎゅっと友理奈の体を抱きしめて、マーキングのように友理奈の胸へ顔を擦りつけた。
- 256 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:04
-
「うん、久しぶりだね。こうしてるのも。」
「ゆりの匂い落ち着くー。」
友理奈の胸の上で梨沙子が言った。
友理奈はそれに応えず自分も梨沙子の体を抱きしめる。
この体勢に安心しているのは梨沙子だけではない。
重なった身体の布越しに感じる相手の体温が愛おしかった。
のんびりとマイペースな二人。
だからデートと称して家でまったりしていることも多くて。
並んでお昼寝することも珍しくなかった。
そんな日常が帰ってきたとこを友理奈は実感する。
- 257 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:05
-
―大げさかなぁ。
たかが二泊三日の旅行。
たかが一週間の触れられなかった期間。
それだけしか離れていない。
世の中には一週間どころか一ヶ月とか、半年とか会えない人たちがいるのは分かっている。
そんな人たちに比べれば自分たちは幸せだということも。
だが友理奈は恋しいと思ったのだ。
寂しいと感じたのだ。
梨沙子がいない事が非日常になるほど、いつの間にか一緒にいた。
- 258 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:05
-
「……あたしね、寂しかった。」
「うん。」
「旅行、楽しかったんだよ。でもゆりがいないと物足りなくて。」
「うん。」
「だから……。」
開きかけた口が思いとどまるように動かなくなった。
もごもごと恥ずかしそうに梨沙子は何回か口を開閉させる。
友理奈はそれをただ見つめていた。
段々と梨沙子の頬が朱に染まっていく。
何を言いたいのかは分かっていた。
だが友理奈は梨沙子に言って欲しいと思ったのだ。
優しく自分の胸の上にいる梨沙子の頭を撫でる。
- 259 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:06
-
「今度、一緒に……旅行に行こう?」
「うん、行こう。何処がいいかな。」
やっと出された言葉。
それに即答する。
嬉しさが抑えられなくて、抑える必要もなくて。
友理奈は満面の笑みを浮かべた。
「むー、なんか、すっごくバカにされてる気がするもん。」
「そんなことないよ!ただ、りーちゃんから言ってくれたのが嬉しくて。」
「……行きたいと思っただけだし。」
ぷいと顔を背ける梨沙子。
そんなことしても真下にいる友理奈から梨沙子の表情は丸見えなのだが。
可愛さに頬が緩む。
- 260 名前:―葉書― 投稿日:2007/10/02(火) 23:06
-
―幸せだなぁ、あたし。
外は決して過ごしやすいとは言えない暑さ。
だが部屋の中はクーラーのおかげでとても過ごしやすい。
昼の日差しが部屋に差し込み、梨沙子とまどろむ。
仄かに伝わる体温がとても心地よかった。
友理奈は半ば夢見心地になりながら思った。
梨沙子と一緒に入れる。
それだけで十分じゃないかと。
―葉書―終
- 261 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 23:07
-
- 262 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 23:09
-
りしゃももの講評
訳が分からなくなってしまったorz
色々突っ込みたいことはあると思います。
最初と最後キャラ違うくねー?!とか。
これ、りしゃもも?とか。
ですが一言だけ言わせてください。
お姉ちゃんに徹する雅ちゃんと甘いりしゃももが書きたかったんだー!!
りしゃゆりの講評
うん、甘いりしゃゆりが見たいと思ってこんなの作ってみたけど。
なんか凄まじく甘くなってしまったよorz
本気で今まで書いたものの中で一番甘い気がする。
攻めるりーちゃんもいいなぁと思った、今日この頃。
……りしゃゆりに萌えて悪いか、このやろー!!
- 263 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 23:14
-
と、そんなことを好き勝手に書き殴って今日の更新は終わりです。
また妄想が溜まったときにお会いすましょー。
とその前に連絡です。
書きたいものを好き勝手に書いたレスでしたが、いつの間にか容量が迫ってましたw
なので次回からは心スレに移行させてもらいたいと思います!!
おそらく森辺りに立てると思うんで。
また見たいという奇特な人がいたら見に来てくださいw
では一つスレを消化しても妄想が尽きないCPヲタっした。
- 264 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 23:15
-
- 265 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/02(火) 23:15
-
- 266 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/03(水) 00:35
- りーちゃハァ━━━━ ;´Д` ━━━━ン
作者様、今回もハァ━━━━ ;´Д` ━━━━ンな内容で更新乙でした!
梨沙子に甘い白桃が大好きです^^
りしゃゆりはほのぼのしてていいですね^^
次回新スレwktk
妄想沢山ためててくださいませ。
- 267 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/03(水) 01:01
- 違う話でも二人が報われて良かった
新スレも楽しみにしています
- 268 名前:CPヲタ 投稿日:2007/10/09(火) 19:13
-
レス返しのみっす。
レスあっとうございます!
266>>名無飼育さん
あはは、どうも、ハァーン毎回嬉しいですw
自分も梨沙子に甘い白桃が大好きです!!(爆
好きだから書くわけです!
りしゃゆりもしかりです。
267>>名無飼育さん
あまりに報われない二人のためにラブい話が書きたくなりましたw
りーちゃんの魔性に振り回されて大変な二人ですから。
この二人とも幸せになってほしくて
……ギャルゲーのようにそれぞれのエンドを作りたくなってきました(エ
新スレ予告どおり森版に立てました。
タイトルも変わってないんですぐ見つかると思います。
ではあちらでお会いしましょう。
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