あたらしい愛の詩
1 名前:あけそら 投稿日:2007/03/03(土) 19:58
こんにちは、あけそらと申します。
前スレ「Candy Apple Red」
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/test/read.cgi/grass/1159418651/

こちらの容量がぎりぎりになって参りましたので、新たにスレを立てさせていただきました。
前スレと同じく、メロン記念日の4人-主に村田さんと柴田さんのお話を書いていけたら、と思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
2 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 19:58
この冬は暖かいせいか、年明けからお店でちらほら見かけてはいたけど。
でも、どうせなら、やっぱりこの日に合わせて買いたいもの。
3 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 19:58
気の早いところでは、もう桜も売っている。
でも、今日は。その隣のバケツでのんびり出番を待つ桃の花を「おねがい
します」と包んでもらう。そして、だいすきなひとのところへ行く。ぴったりの
日が難しければ、前後のいつかで。そんな決めごとが、もう、何本か指を
折れるだけの回数を重ねているのが、胸をあったかくしてくれる。
4 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 19:59
「あと、10分くらいで着くからね。よろしく」
簡単なメールを入れて。そして、待ち人のところへ歩を進めた。
5 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 19:59
「いらっしゃい、あゆみん。」

チャイムを鳴らすと、程なく部屋の主がにっこり笑顔で迎え入れてくれた。
上下は普通の格好だけど、足下へ目をやると……うんうん、やっぱり「あの」
ソックスだ。
6 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 19:59
「あー、またあのソックス履いてる!」
7 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:00
おじゃまします、の前に。まずクチをついて出たのがこの言葉。
「Rockですよ!」の公演中もずっと一緒だったこのソックス。めぐちゃんに
とっては「癒しと安らぎのアイテム」なんだろうけど、さすがに年期が入って
るせいか、もけもけした毛玉も多いんだよね。
8 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:00
そのことをMCでつっこんだら、「こら、シバタ!」って、首根っこをつかまれ
ちゃった。普段ならともかく、舞台上でそんな風にされるのは珍しくて。
でもそれが嬉しくて。忘れられない光景の1つになっている。
9 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:01
「こらっ、あゆみ!」

にこにこした目はそのままで。そして、あの時と同じように、軽く首根っこを
つかまれちゃった。あの時と違うのは、「二人で居る時の」呼び方でいてく
れること。おとなしくなったテイはとるけど、でも、嬉しさと、おかしさが抑えき
れなくて。すぐに顔が崩れてしまった。めぐちゃんも笑いながら手を離して、
ぽんぽん、とアタマを撫でてくれた。
10 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:01
「いらっしゃい。そして、来てくれてありがと。」
抱えた桃の花ごと、そっ、と抱きしめられる。
普段とは違う、トクベツノヒ。
その時を「二人で一緒に過ごせること」。何よりも、それが嬉しい。
11 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:01
桃の花を活けて、リビングの棚の上にそっと置いたあと。
めぐちゃんがお茶の準備を始めた
12 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:02
「紅茶とコーヒー、どっちがいい?」
仕事でたまに「コーヒーを」と言うようになってから、この問いかけが増えた。
「ミルクティ」
「ん。じゃあ、ちょっと待っててね」
13 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:02
コーヒーも飲めるようになったもん、というと、まぁしいにはびっくりした顔をさ
れたけど。でも、めぐちゃんと一緒に飲みたいのは、やっぱり紅茶。そして、
牛乳を多めにいれるミルクティ。おなじみのポットと、一緒に買ったおそろい
のマグカップで。軽く乾杯するのが、いつもの習わし。
14 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:03
「おまちどおさま」
トレイに一式をのせたむらっちがやってくる。
「ありがとう。じゃ、こっちにもらうね」

普段はその後もまかせちゃうんだけど、さすがに今日は、ね。
最初の時には、お湯を沸かして準備するところからやらせてよ、と言ったんだ
けど。「でも、来てくれたんだから、そのおもてなしはしなきゃね」と返されて。
折衷案で「ポットからマグに注ぐところ」は、リビングのテーブルでやらせても
らうようになった。
15 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:03
マグはほのかにぬくもりがある。
本式な入れ方は出来ないけど。でも、出来るだけのことはしたいじゃない?
最初にめぐちゃんちに遊びに来たときに、渡された言葉。
そこからもう、両手両足の指じゃ数え切れないほどの数を重ねているけど。
このぬくみに触れる度、一番最初の時の気持ちを呼び覚まされる。
16 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:03
紅茶たっぷり、ミルク少々、のめぐちゃんには7分目。
ミルクをたっぷり入れたいわたしには5分目。

それぞれのマグにかわりばんこにお茶を注ぎ、濃さにムラがでないように
する。これも、めぐちゃんから教えてもらったことのひとつ。
17 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:04
「わー、おいしそう。ありがとね、あゆみ。」
ポットに淹れてくれたのはめぐちゃんなのに。カップに注いで渡すと、必ず
こうして声を掛けてくれる。なんだか妙な気分だけど、ツッコミストの性は
ぎゅっと抑えて、素直に言葉を受け取ることにする。
18 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:05
「じゃあ。めぐちゃんの、新しい歳に、乾杯」
「あゆみと一緒にこの日を過ごせることに、乾杯」

もう、アルコールでもいい歳なんだけど。二人でゆっくりする時は、たいてい
ミルクティ。最初にめぐちゃんちへお邪魔した時に、淹れてもらったものが
忘れられないから。
19 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:05
かつん、とマグを触れ合わせて。一口いただこう、と思った瞬間。めぐちゃん
の口から思いもよらぬ言葉がこぼれた。
20 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:05
「あゆみのお誕生日、その日に側に居られなくて、ごめんね」
21 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:21
や、ガッタスの練習もあったし、その後のお祝い会もあったし。その他仕事
時間のすれ違いで、2/21と2/22に「一緒に過ごす」ことは出来なかった。
でも、それは「お互い仕事をしているのだから、会えなくてもそこは我慢し
ようね」と決めてるはずだったのに。
22 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:21
「なんかね。ムラタだけ、今年は当日一緒に居てもらっちゃってるからなあ」
ちいさくため息をついて、めぐちゃんがマグに口をつける。

え、なにそれ。そんなこと、ひとっつも考えなかったし、そもそもどういう道筋
をたどればそんな言葉が出てくるのよ。
23 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:22
こりゃ、ちょっと聞き出さないとダメだな。
ゆっくり飲もう、と思ってたけど、方向転換。一口、呷るように飲んで。
マグを置いて、めぐちゃんをじっと見る。
24 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:22
「なに、めぐちゃん、変なこと考えてんの」

そして、ちょっとだけきつい口調で言葉を投げつける。
案の定、流し込むコントロールを逸したのか。あちちっ!なんてあわあわ
しながら、あわててカップを置いて顔を上げた。
25 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:23
「変なこと……?」
「そ。あの日、一緒に居られないのは前から分かってたし、そのことはお互い
納得したんじゃなかったの?」
「うぅん、まあ、そうだけど……」
26 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:23
なんだか普段とは立場が逆なやりとり。大抵はわたしがぐずって、それを
めぐちゃんが宥めてくれる、ってのが多いんだけど。今日という日に祝わ
れる当人がぐずるなんて、どうよどうなのよ。
27 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:23
「で、別に何もしてくんなかったわけじゃないでしょ?メールくれたし、その後
会えた時に、抱きしめて、キスしてくれたじゃない」
28 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:24
めぐちゃんてば、困惑した表情はそのままで。最後の言葉に、真っ赤に
なってた。たまにベッドで意地悪になるくせに。こういう時に、即座に
真っ赤になるのが、またなんとも面白いところ。
29 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:24
「今年は、ムラタの誕生日当日に、側に居てくれてるじゃない。嬉しいよ、
嬉しいんだけどね。でも、あゆみの時にそうできなかったのに、わたしは
してもらっていいのかなあ、って。そう、申し訳ない気持ちになっちゃったん
だよね。」

基本は目を見て話してくれるけど。さすがに後半は言いづらかったのか、
視線をテーブルの下へ落とし、消え入るような口調になってた。
30 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:24
……ほんとに、もう。
自分が人に与える分には全く惜しまないのに。自分がいざ「与えられる」と
なると、とたんに臆病になる。まあ、そこも含めてのめぐちゃんだし。そこが
大好きなんだけど、ね。
31 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:25
いつもわたしにしてくれてることの、たまにはお返し。
距離を詰めて。ぎゅっ、と、めぐちゃんのアタマをわたしの胸元に抱き込んだ。
32 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:25
「あ、あゆみっ?」

服に吸い込まれてもごもごした音になってるけど。あわあわしてるのは、トー
ンでよく分かる。ふーん、めぐちゃんが聞いてるわたしのあわて声って、こん
な感じなんだ。
33 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:26
「……わたしは、めぐちゃんみたいに、上手く言えないから。上手く言葉を
渡せないから。だから、出来るだけ側にいたいの。こうして、抱きしめて、
気持ちを伝えたいの。」

最後のヒトコトに、腕の中の身体がひくり、と反応する。
34 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:26
言葉だったり。経験だったり。どうしても、先をゆくめぐちゃんには追いつけな
いことがいっぱいある。
でも。同じことで「出来ない」と嘆くんだったら。別のことを重ねて、それで伝え
られたら、いい。転んで、泣いて。立ち上がって、また走って。その繰り返しで
身についた、大きな教訓。
35 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:27
「て、いうか。『仕事をおろそかにすることだけは、しないようにしようね』って
言ったのって、どこのどなたでしたっけね。」

にしし。こうやって、おねえちゃんぶってみる、ってのも。中々得難い機会
なのでね。でも、本当はめぐちゃんの誕生日。こうして意地悪を言って困らせ
るために居るわけじゃないんだから、ね。
36 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:27
「めーぐちゃん。顔、見せてよ」
とんとん、と背中を叩いて。顔を上げてくれるようにお願いする。
色白の顔が紅に染まって。泣き出す寸前の表情なのが、えらく艶っぽい
なあ、なんて思いながら。いつもめぐちゃんがそうするように、深く深くくち
づけた。
37 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:27
まだまだ、巧くはできないけどさ。
ここに居ること。こうして、深く触れ合っていること。
そのことが、なによりも「あなたへの気持ち」を表してるんだ、って。
分かって貰えると、いいなあ。
38 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:28
おぼろな思いをよぎらせながら。息をつないで、もっと、もっとと、
めぐちゃんのくちびるを求めた。

39 名前:ココニイルコト 投稿日:2007/03/03(土) 20:32
「ココニイルコト」<<END>>

おそまつさまでした。
村田めぐみさん。26歳の誕生日、おめでとうございます。
おもしろさや天然が先に受け止められがちなひとですが。誰よりも細やかで、
そして「一番的確な方法で」助けの手をさしのべられるひと、だと思っています。
これからも、ずっとずっと、4姉妹で-そして、末っ子ちゃんと-仲良く走り続け
てくださること、お祈りしております。

そして、誕生日なのに、ちょいと末っ子ちゃんにいぢめられる話なのを、
お許しください。前スレの「WOMAN・S」と、ホンの少し対にした…つもりです。
40 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/03(土) 23:30
前スレはいっぱいになったんですね。
柴田さんと村田さんの関係っていいですね
読んでるとドキドキするのに、何かほのぼのします。
41 名前:あけそら 投稿日:2007/04/16(月) 02:40
>>40 名無し飼育さん
 ドキドキでほのぼのとの、お褒めの言葉、とてもありがたく思います。
 これからもよろしければおつきあいいただけると幸いです。

 実は前スレも「極短編なら」まだ余地もあるのですが。ちょっとぎりぎりかな?
との思いもあり、僭越ながら新スレを立てさせていただいた次第です。

さて。次は今までと少し色味が異なる話を書かせていただきました。
柴田さんと村田さんは出てきますが。二人を「違う人から」見たお話です。
お気に召していただければ幸いです。
42 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:41
「……ん……寝て、た……?」
きょろりと辺りに目をやる。
えっと、確か、ここって楽屋で。まっつーとかと一緒にいたはずなんだけど。
誰もいない、ねえ。
43 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:42
うにゃうにゃしながら上体を起こすと、掛けられていたとおぼしきコートが滑り落ちた。楽屋だろうとど
こだろうと基本的にマイペースは崩さず、眠い時には丸くなって寝る性分。周囲がやかましかろうと
静かだろうと関係なし。でも、同室のまっつーたちはどうやら気を遣ってくれたのか、冷えないように
コートを掛けて、その後邪魔しないようにどこかへ行ってくれたらしい。
44 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:42
「悪いことしちゃったなあ……」
うーん、と伸びをしながらひとりごちる。かつては、上掛けくらいはしてくれたけど。そのまま後はみん
なそれぞれの過ごし方をしていた。それが普通だと思っていたけど、離れてもう数年。他の人たちは
違う気遣いを見せてくれるのだ、と、改めて感じさせられた。
45 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:43
ケータリングを覗きにいくか。それとも、想い人が居る楽屋に甘えに行くか。どうしようかな、と思って
いる時、こつこつ、とドアがノックされる音が響いた。
46 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:43
「ごっちーん、いるー?」
ノックの後に響いてきたのは、柴っちゃんの声。
「はーい、どうぞー」
コートをハンガーに掛けながら、いらっしゃいの声掛けをする。
47 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:43
ドアが開いて表れたのは、柴っちゃんと、そして彼女に手を引かれた村っちゃん。ハローの全員が
集まるコンサートで、この二人がこうしてやってくるのも、少し珍しい。エルダ組だけとかならまあある
ことなんだけどね。
48 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:44
「こないだ借りたCD、返しに来たの。ありがとね!」
部屋の半ばまで入って、袋を渡される。ああ、こないだ貸した、K-POPのCDか。韓国でツアーをや
る関係で、いろいろ現地のCDをいただいたんだけど。その中に柴っちゃんが聴きたくて探していた
ものがあった、と、何かの話の合間に分かって。じゃあ持ってくるねー、とやりとりしたやつだった。
49 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:45
「探してるんだけど、なかなかCD屋さんで置いてなくってさー。ホント、ごっちんが持っててくれて、
嬉しかったよ」
「ホント?やー、そりゃごとーもうれしいよお。」

知ったきっかけはお仕事だったけど。聴いてみて、「あ、なかなかいいかも」と思ったのね。だから、こ
うして柴っちゃんと「これ、いいよね!」の話がやりとりできるのは、ホント嬉しい。
50 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:45
自分の想い人は、いまひとつ食指が動かないみたいだし。
韓国「ドラマ」なら圭織がハマってたけど、でも彼女のそれは「冬のソナタ」限定。中々「音楽」それ自
体の話が出来る相手がいなかった。柴っちゃんもK-POP好きと知って以来、何か機会があるごと
にわいわい話をするようになった。ラジオの仕事がそこそこの頻度で重なるから、そこで加速したの
もあるかなあ。
51 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:46
最近の新譜の話や、お気に入りのアーチストの話。起きたら一人で、ホンの少し人恋しいモードだっ
たんだよねえ。柴っちゃんと二人で、あれやこれやとわいわいおしゃべりしてた。ら。

「ねー。そろそろ日本の話に戻ろうよー」

柴っちゃんにずっと手を握られたまま、一歩引いたところでにこにこしていた村っちゃんが。さすがに
話に入れないのに耐えかねてか、ちょっと眉をハの字気味にしてぽそっと呟いた。
52 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:46
そっか。幅広くモノを聴いてる村っちゃんだけど、さすがにここまでのK-POP話は分からないんだ。
ちょっと話題を切り替えようかな、と思った瞬間。
53 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:47
柴っちゃんが、村っちゃんに向き直って。ニッ、と悪戯っ子の顔で笑って。
それからぎゅっと手を握り直して、また、こっちに向いた。
54 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:47
「でさー、ごっちん。あのアルバムに入ってた曲ってさー」

そのまま話を続けてるよ。い、いいの、村っちゃんは?
柴っちゃんの話に相づちを打ちながら、そっと後ろの村っちゃんを伺ったら。
しょうがないなあ、って顔をしながら。でも、すごく優しいまなざしで、柴っちゃんのことを見つめてた。
言葉にするなら、「しょうがないなあ、もう」とか。そんなものになるのかもしれないけど。そういうのを
通り越して。そのままの彼女がいとおしくてしょうがない。そんな、慈しみに溢れた表情をしてた。
55 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:47
……やーっぱり、かなわないや。このおねえさんには。
56 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:48
柴っちゃんが普段わいきゃいとはしゃぐのは、メンバーならば斉藤ひとみん。そうじゃないなら石川
梨華ちゃん、と相場は決まってるんだけど。デビュー当初の頃や、一緒にお仕事を始めた頃。まだ
まだ緊張していろいろどきどきしてただろう時に、何かにつけて頼っていたのは村っちゃんだった。

その後、時が経って。二人が「おつきあいする仲なのだ」と知らされたけど。それもとても自然な着地
点だなあ、と思ったのね。
確か、ツアーに帯同してもらった時に、そっと言われたのかな?村っちゃんから。もちろん、ごとーも
同じ仲間のうちに想い人がいるから。その辺りの機微は分かるつもりだけど。これだけ「ああ、そう
なんだ」と、ごく自然に受け止められたのは、中々ないかもしれない。
57 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:49
「やー、でも、こんだけ話が通じるのって嬉しいよね。でも、CD、こんなに早く返してくれて、大丈夫
なの?MDに落としたりするの、大変じゃなかった?」
「パソコンに落としたから大丈夫。勝手に曲名も調べてつけてくれるんだよ」
「ふーん、そうなんだー。柴っちゃん、そういう新しい機械モノに詳しいんだねえ」
「うん、村っちとね、おそろいなんだ」
柴っちゃんは、握った手をぶん、と振る。村っちゃんも、にこにこ三日月の目をしてる。
58 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:50
ああ、もう。
こんな情景を見せられたらさあ。想い人に、会いに行きたくなっちゃうじゃんか。ごとーの想い人はな
かなか照れ屋さんで。いくら気心しれた仲間内とはいえ、ちょっとでも人前でべたべたしようものなら
恥ずかしがっちゃうし。あと、同室のメンバーたちがやいのやいのちょっかいだしたりからかうっての
もあるんだけど。



……でも。会いたい。
おねえさんのようで、どこかコドモっぽい。こちらがおねえさんな気分になるところもあったりした
けど。でも、どこかでこうして支えてくれてるのかなあ、なんて。恋しさが募ったんだもん。
59 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:51
「さて。ごとー、ごめんだけど、ちょっと出て来るよ」
「あー、長居しちゃってごめんね。でも、またK-POP話しようね!」

にこにこしながら、柴っちゃんが手を振って出ていった。勿論、村っちゃんと手はつながれたまま。
あーあ。こりゃ、久しぶりに柴っちゃんが「甘えたい」のか、何か緊張してるモードなんだかねえ。
60 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:52
さて、と。
ドアを閉めて、ひとつ深呼吸して。想い人の待つ楽屋に、向かうとしますか。



裕ちゃんとか、貴っちゃんとか。やぐっつぁんとか、圭ちゃんとか。やいやいからかわれるのも承知の
上で。想い人の-なっちの待つ楽屋へ、歩を進めた。
61 名前:(You are) more than paradise 投稿日:2007/04/16(月) 02:55
「(You are) more than paradise 」<<END>>

おそまつさまでした。
日本青年館公演(「Rockですよ!」)のMCから想を得た話です。
今までとは少し違う目線で、になりますが。お気に召していただければ
幸いです。
62 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/16(月) 19:30
うわー新しい感じですね。
なんかメロン以外の視点からだと新鮮だな…。
なんだか後藤さんのお話も気になってしかたないんですが。
63 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/04/25(水) 18:57
第三者視点ですか〜
こういうのも良いですね♪
実際に外から見たメロンて楽しそうですよね
64 名前:あけそら 投稿日:2007/04/30(月) 22:28
>>62 名無飼育さん
後藤さんの想い人を伏せようかどうしようか迷ったんですが。柴村2人の関係
性に引きずられて、ついと名前を出してしまいました。

またどこかで機会があれば、このひとたちのお話も書けたら、と思っています。
お言葉、ありがとうございました。

 >>63 名無飼育さん
ファンという第三者視点でも勿論楽しいのですが。メロン「の外」というメンバ
ーから見ても、この4人はとても楽しいひとたちなんだろうな、と思っていま
す。お気に召していただければ、これ以上の幸せはございません。
65 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:30
新曲「アンフォゲッタブル」発売イベント。4人それぞれが司会に立って回す、てなテイを取ったん
だけど。それぞれの司会の時に、各自が「忘れられないもの」の写真をお見せして、話をふくらま
す、てな企画がありましてですね。わたくしまぁしいは、「NY旅行」を軸に、自分の中にある「忘れ
られない」一枚をそれぞれ選んだわけです。
66 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:30
その中に、2枚ほど化粧もナニもしないすっぴんのものがありまして。打ち合わせ段階で真っ先に
ひとみんから「ほんとにいいの?」と突っ込まれてましてね。先のメジャーシングル「肉体は正直な
EROS」の宣伝ポスターと並んで取ったものに至っては、「信じられない」とまでのお言葉を頂く始
末。まあ、彼女の言わんとするところも、分からなくはないんだけど。まぁしいチョイスなんだから、
こういうのでもいいじゃん、と。むーむー言うのを、むらっちと二人でなんとかなだめ。そういう落とし
どころにしたはずなんですよ。
67 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:31
そして、イベント本番。すっぴんでお客さんをびっくりさせたかった、ってのもひとつだし。こういうお
ふざけもするんですよん、との紹介をしたかったのもひとつ。そういう点では想像以上に反響をも
らって、内心「よっしゃ!」とガッツポーズもしてた。もひとつ言えば、「化粧をしないすっぴん」を
見られるのは、そう恥ずかしくはないのね。むしろ、髪の色が落ち着いた単色-例えば暗めの茶色
一色、とか。そういう時の方が、なんだかあわあわしちゃうんですよ。
68 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:32
ま。いろいろ客席にも盛り上がってもらい、自分の選んだ曲と、そしてこの1年で「大きく育った」
曲を歌って、袖にハケる。この繰り返しも後一回で終わるのかと思うと、ほっとする部分もあった
り、ちょっとさみしくもあったり。
69 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:33



**********



イベントを掛け持ちするお客さんも慌ただしいんだろうけど、うちらも結構ばたばたとあわただ
しい。1回目と2回目の間は歌衣装でずっと通してたけど、さすがに疲れが出てきたからか、
ある程度「さっととっかえられる範囲内」で、みんな好きな格好をしている。あゆみんは上だけ
七分袖のシャツ。むらっちは……衣装の下にジャージ着て部屋履き(持ってきたらしい)って
あーた。まあ、彼女たちらしいっちゃそうだねえ。
70 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:33
うちのひとみんは、と見ると。もうあと1回だというんで、そのまま衣装を着込んだまま、楽屋椅子
2つを使って足を伸ばしていた。随分お疲れの模様。こういうイベントを開催させてもらう、そして
出演させてもらえるのはとても嬉しいけど。でも、身体の疲れとはまた別物だしね。
71 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:34
さすがにわたしもほぼ寝てない状態で、この4回目は厳しい。ケータリングで何か目の醒める飲み
物でも取ってきて、一休みしようかな、と思った時。へろん、としてたひとみんから、ぽそっと声が
飛んできた。
72 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:34
「……やっぱりさあ。あれ、やばくない?」
73 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:35
本番で言ってたのは、お客さんの前でのリアクションかと思ってたら。どうやら本気でお気に召さ
ないところがあったらしい。普段ならさらっと聞き流すところだけど、あいにく今日は強度の寝不
足。ひとみんの気持ちも分かるし、きついことは言いたくないけど。別方向にさらりと流すだけの
余裕、申し訳ないけど、ない。
74 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:35
「……なにがさあ。」
75 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:35
ぎりぎりのところで押しとどめたけど、どうしても声に不機嫌さのトゲが見え隠れする。ケンカする
ほど仲がいい、ってな物言いもあるけど。わたしは、ひとみんには基本的にきつい言い方はしたく
ない。我慢するとかじゃなくて。とても細やかにものごとを感じる人だし、多少行き違っても、その
後必ず一生懸命修復しようとするのも今までの習いだし。そんな相手に、不要な返しをするの
は、決して本意じゃない。
76 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:36
でも。ごめん、今日ばかりは、ちょっとコントロールが効かなくなってる。
自分の管理不備でしかないんだけど。ほとんど眠れていない状態の上で、4回イベント。
ついつい、脊髄反射な言葉を投げつけてしまう。
77 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:37
イケナイ、と、アタマの奥底で赤いアラームが鳴っている。
でも、きつめのボールを返してしまった。ああ、どうしよう、と思いつつ。次の言葉をくちびるから放
とうとした瞬間に。
78 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:37
「のおのお、犬谷くんよ。」
79 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:37
いつの間にやら近くに椅子を持って来て座り込んでいたペット村田が、のんびりした口調で話し
かけてきた。さっきまでちょいと離れたところであゆみんとなにやらこちゃこちゃふざけて遊んでたん
じゃなかったっけか?
そんなあゆみんは、と見ると。ひとみんの背中のそばに立ち、肩にそっと手を置いている。
80 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:38
「なんだよー、ペットー」

振り上げかけた拳を下ろすみっともなさに、ちょっと乱暴に返してみる。
そんな気持ちもお見通しのように、むらっちはのんびりゆっくり言葉を続けた。
81 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:38
「ひとみんはさー、こー、しっかりもので、『仕事』モードではきちんとしなきゃ、と思ってるからさ。
うちらのように『素も出してみまーす』ってのは、ひとつはふざけてる、とも取れちゃうんだよ」
82 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:39
「でもそれは!」

「ま、そんなこた、長年のおつきあいでお互い分かってることだよね。で、もひとつ。これはムラタの
ことなんだけどさ。例えば、ガッタスの時の試合とか、練習とか。あと、合宿か。あゆみが、違うお
仕事に行ってる時があるでしょ?」

「うん」

「その時にさー。まあ、試合の時は、多少メイクもするんだろうけどさ。舞台のそれとは違うわけ
じゃん?汗もかくし、それ相応の仕方、になるわけだよね。」

「だねえ」
83 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:40
「合宿の時なんて、そりゃハローのメンバーだけだけどさあ。寝る時なんかにはさすがにすっ
ぴんになるでしょうが。」

「うんうん」

「その時ねー。ちょーっとだけ、悔しかったのよねえ。わたしたちしか知らないあゆみんが、
他のコたちにも見られちゃう、って。」
84 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:40
「むらっち!」

相づちを打つ前に、ひとみんのところに居たあゆみんから強い声が飛んで来た。ありゃありゃ、
顔もちょいと紅くなってるよ、あゆみん。
85 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:41
そんなあゆみんに、むらっちはにっこり微笑んで。そしてまた言葉を続けた。

「ま、その時はまあ悔しかったけどねえ。その後で、考え方を変えたんですよ、ムラタは。すっ
ぴんは見られたかもしれないけど、『わたしだけしかしらないあゆみ』ってのも知ってるわけだから
さあ」
86 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:41
うわわわ。『わたしだけしか』のあたりでずんずんあゆみがむらっちのとこに来て、しぱこーん!と
遠慮会釈無くアタマをひっぱたいた。

「だからそういうことを人前で言わないでって言ってるじゃんむらっち!」
もう、あゆみんの顔は真っ赤。ぎゅっととむらっちの腕をつかんで、「ケータリングに行くから付いて
来て!」と、どんどん出口に向かう。


ドア際で「二人でいる時の寝顔のことだったんだけど、ナニ考えたの?あゆみは」なんて声と、もう
一度どこかひっぱたかれるような音が聞こえたけど。程なく姿は消えて、楽屋に残るはわたしと、
ひとみんの2人だけになった。
87 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:42
いつの間にか椅子を一つ使いにして、鏡台の前に、顔を覆う形でひとみんが座っている。普段な
ら一声掛けるけど。今回はナニも言わずに歩み寄って、静かに背中から抱きしめる。
88 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:43
「ひと。ひとの気持ちに気づいてあげられなくて、ごめんね。」

そっ、と耳にささやきかける。
89 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:43
ううん、と。声は出さず、彼女の柔らかい髪が左右に揺れる。感じやすいひとだから、きっと、いろ
んな気持ちで心が乱れてるんだろう。
その辺りも、知っていたはずなのに。ついついすくいそこねて、揺らしたままにしてしまう。
その度に、反省するんだけどね。
90 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:44
「ひとつは、おねえちゃんに撮ってもらったやつだし。もうひとつは、やっぱり……新曲が出たら、嬉
しいじゃん。だから、その気持ちを伝えたかったんだけどね。ひとの、別のところの気持ちに心配り
ができなかったのは、ホントに、ごめん。」

ちょっと体勢を変えて。自分の胸元に、ひとみんのアタマを抱きかかえるようにする。次の回に響
くから、泣いたりするのはぎりぎりまで堪えてるんだろうけど。だからこそ、より「ごめんね」の気持ち
もいや増すわけで。
91 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:44
「お客さんに見せたすっぴんもあるけどさ。あれは、普通に会社のひととか、あと、電車の中で通
りすがったどこかのひとも見てるわけじゃん。……でもさ。こういう顔とか。二人で居る時の顔
とか。ひとしか知らない顔だって、いっぱいあるんだから、ね。」

やっと機嫌をなおしてくれたのか。ちょっと涙声だけど、「もう!」っていう、笑い混じりの声が胸元
に響いてきた。好きな人の声を、胸に直接響かせてもらうってのも。なかなか、どきどきするもんだ
ね。
92 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:45
「今日のイベントが終わったら、さ。……久しぶりに、わたししか知らない、ひとの顔、見せてよ。
メルちゃんにはお邪魔虫になっちゃうけども」

そんな声を落としたら。「ばか!」と、軽く拳が胸に降ってきた。
93 名前:Only you can bring me Joy 投稿日:2007/04/30(月) 22:47
「Only you can bring me Joy」<<END>>
おそまつさまでした。
4/15「アンフォゲッタブル」新曲発売イベントの際の出来事(大谷さんが素顔
の写真を見せてくださった回がありました)から、想を得たお話しです。

柴田さんと村田さん。大谷さんと斉藤さん。そして、4人。彼女たちのそれぞれ
を思う気持ちが少しでも伝われば。そして、お気に召していただければ、幸い
です。
94 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/01(火) 08:28
更新ありがとうございます+おつかれさまでした。
タイトルからしてあったかいですね。
ケータリングに行ってしまった二人も気になるところですが、
作者さんのまた別の紡ぎで、
他の一面を見せていただけることを楽しみにしております。
おおたにさんかわいいよおおたにさん…。
あ。地がw
95 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/04(金) 02:32
更新お疲れ様でした
大谷さん、素顔も綺麗でしたね
ジェラシってる斉藤さんが可愛いです
96 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/05/08(火) 12:03
個人的に、あのイベアクシデントで入れなかったので助かりますw
裏側から覗いてる気分になりました。
いつか村田さんの頭は柴田さんに叩き落とされそうな気がします。
97 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/03(火) 17:32
待ってます
98 名前:あけそら 投稿日:2007/07/08(日) 02:04
 >>94 名無飼育さん
お褒めの言葉、ありがとうございます。
おおたにさんは私の中でもどんどん「かわいいひと」の位置づけへとシフト
して行っております。ライブを見るとまた「かっこいいひと」になるんですが。
ビリーに入隊したりと中々はりきってらっしゃるようなので、この夏が楽しみ
でございます。

 >>95 名無飼育さん
コメントありがとうございました。
わたしにとっての斉藤さんは「とても情の深い人」なので。ちょっとやきもちを
焼いていただきつつも、でも、それが可愛さにつながればな、と思っておりま
す。

 >>96 名無飼育さん
あららら。また悲しいことでしたね……。
次のコンサートかイベントには、是非とも入れますようにお祈りしております。
「柴田さんは村田さんをぱかぱか叩く」イメージですが。……すみません、一
度だけ見たパシフィックイベントでのそれが強すぎるのです。ごめんなさい。

 >>97 名無飼育さん
長らくお待たせして申し訳ございません。
やっとこ品出しが出来る状態になりましたので、おめがねにかなうものである
ことを祈っております。
99 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:05
久しぶりに一人だけ別の仕事が入った。しかも海外に一週間。
今までだって、毎日必ず会えたわけじゃない。部屋に泊まるのは仕事に響かない範囲で、と決めていた
はずなのに。それでも「この一週間は」会えないし触れられないのは確実。そのことが、こんなにも自分を
憂鬱にさせるなんて、全く想像出来なかった。
100 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:05
携帯だってあるし、メールの打てない場所に行くわけでもない。つながった空の下に居ることは変わらな
い。眠る前にひとことふたこと言葉を交わす程度の時間なら、お互いなんとかなるはずなのに。それでも
こんなに距離を恨んだことはなかった。
101 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:06
出発前に、めぐちゃんあてに「行ってくる。でも、さみしい」とメールを入れたら。即座に「いつでも連絡して
くれていいから。この仕事が終わったら、うちで一緒にミルクティを飲もうね。」と返ってきた。
102 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:06
うーん。嬉しいけれども。嬉しいんだけど。
なんだろ。この、微妙な熱の差。手で触れても、たぶんくちづけても、気づかないくらいの僅かな違いなん
だけど。それが故に、上手く自分の中で落ち着きどころを見つけられない。

とりあえず。帰ったら、まず会おう。それが一番早い。
103 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:07


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104 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:07
「今、成田についた。今晩、寄らせてもらってもいい?」
105 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:07
あゆみからもらう携帯のメールは、いつもシンプル。
テンキーで言葉をつむぐのはまだるっこしい、らしい。確かに、キーボードを使ってだと、二人で会ってい
る時とかわらぬ饒舌ぶり。これも、「どちらに先に慣れているか」によるのかな。
106 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:08
本人からも、マネージャーさんからも「この日に帰るから」と伝えられて居た日。手帳にそっと印を付け
て、指折り数えていた。そのことは、あゆみには内緒。まあ、まぁしいやひとみんにはなぜかばれてて
「空港に迎えに行かなくていいの?」なんて冷やかされた。


んなことしたら雷落とされますってばさ。仕事ですよ、その日のその時間は。
……その後に「4人で」の仕事も待ってますけどね。
107 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:08
「お帰り。今日は、一緒に帰ろう。約束通り、あったかいミルクティをごちそうしますよ」
108 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:08
こちらも簡潔に言葉を返す。
思いはずっと満ちているけど。それは、実際会った時に。二人だけが知る時間の下に表せばよいこと。

送信、とボタンを押す。
いとしい相手のところに、どうぞ早く届きますよう。あと数時間もすれば顔を合わせるというのに、ついつ
い急く自分に、ちょっとだけ苦笑した。
109 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:09


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110 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:09
時差ボケに悩む間もなく、ばたばたと帰国早々に仕事がひとつ。
でも、かっちり終わり時間が決まっていた上、「4人」である強みもあって、多少口数が少なくとも無事乗
り切ることが出来た。
111 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:09
仕事が終わってさあ解散、の時。ひとみんがハグと一緒に頭を撫でてくれた。「今日はちゃんと休むの
よ」のささやきつきで。うん、ありがと。
112 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:10
「で。むらっちゃん。あゆみにくれぐれも無理させないのよ!」

マネージャーさんには聞こえないように、でも、3人には届くボリュームで。
きちんと釘を刺す辺りがどうにもひとみんらしい。
わーかってますってー!とあわあわ返すめぐちゃんに、ちょいとからかい言葉を掛けるまあしぃ。うん。こ
のやりとりを見てると、「ホーム」に帰ってきたんだなあ、って、ほっと安心できる。めぐちゃんと一緒の時と
は、また違う感覚だけど。これはこれで、大事なひとつ。
113 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:10


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114 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:10
あゆみは荷物を抱えたまま、一緒にタクシーに乗りこんできた。
一度彼女を部屋に帰してから。少なくともその後で、と。理性は強く告げるのだけれども。一週間の距離
が一気に縮まったことで、つい自分のワガママを取ってしまった。勿論、明日一日オフ日だった、というの
も大きいのだけど。
115 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:11
「疲れてない?大丈夫?」
「うーん。ちょっと、きてるかも。」
ことん、と肩に頭を預けてきた。
「うちにつくまで、ちょっと目をつむってなさいな。少しでも違うからさ」
このやりとりなら、運転手さんにやりとりを怪しまれることもないだろう。
そっと手を取り、互いの身体の間で、指を重ねる「恋人つなぎ」にして。家路に向かった。
116 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:11


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117 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:11
「ただいまー!」

本当なら「おじゃまします」なんだけど。今日ばかりは、この言い方だって許してもらえるでしょ?

「うん、おかえり」

ちょっと苦笑混じりなんだろうな、というトーンで、靴を脱ぎかけてためぐちゃんの声が出迎えてくれる。
トランクを玄関先に置かせてもらって。そのまま一緒に、リビングへ向かう。
118 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:12
「さて、と。まずはお疲れ様。一緒にミルクティを飲む約束も忘れてないけど、先にお風呂張っておく
から、ゆっくり浸かっておいで。ね?」

外出着から着替えることもせず、めぐちゃんはさっさとお風呂の準備に立った。気遣ってくれてるんだろう
けども。そういや、帰ってから、彼女とまだきちんと触れていないことに気づく。

車の中でそっと手は握ってもらえたけど。もっと強く、多く触れたい。胸の奥底でじわじわと想いが存在を
主張する。発つ前の熱の差違を種火に、ずっとこの一週間、収まり場所を求めて惑っていたものが、よ
り大きさを増したように感じる。
119 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:14
「おまたせ。アラームが鳴ったら、お風呂に入ってね。ホテルのお風呂だと、あまりゆったりできなかった
でしょ。」

にこにこしながら、めぐちゃんが戻ってくる。
腰掛けたかどうかの時に、ぎゅっと首筋に抱きついた。
120 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:14
「おかえり。一週間ぶりに、会えて嬉しいよ。」
とんとん、と肩口に優しく触れたあと。髪と、背中を、あたたかい手がゆっくり動く。いつもの、めぐちゃん
のぬくもり。
普段ならそれですうっと凪ぐはずの波が、今日はまだ荒さを捨てない。
くちづけようと、首元に埋めた顔をつと上げた瞬間。無粋な音が部屋に響いた。
121 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:15
「……とりあえず、明日一日ゆっくりできるんだから。まずは、一週間の疲れを落としていらっしゃい。
ね?」

一度強く抱きしめてくれた後。やさしく言い聞かせる声音と一緒に、そっと腕をほどかれた。
ここで駄々をこねることも、無理矢理先を求めることも出来たけど。「明日の余裕」と、さすがに一週間分
の疲れも相まって。素直に言葉に従い、バスルームに向かうことにした。
122 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:15


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123 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:15
「……どうしよ。」
124 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:16
あゆみがバスルームに向かうのを確認した後、くたり、とソファーに身体が沈み込む。長旅が終わってす
ぐに仕事で、疲れもピークのはずなのに。そんな思いやりをはじき飛ばすのように。抱きつかれた瞬間、
自分の内にまず生まれたのは「欲しいと望む気持ち」だった。

一週間会えないくらい、別に今に始まった状況じゃない。一緒に仕事をしていても、部屋に泊まりに、は
また別の話だった。でも。この渇望は一体何なのだ。想像でしかないけど、まるで中学生男子のように、
直截が過ぎる希求。
125 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:16
越えた一線。それ以降も、何度も深く触れ合ってはいるけれども。
それでもまだ「自分の逸る望みに、あゆみを振り回してしまっているのでは」との不安は拭えずに居る。

こと自分だけなら、それ相応の覚悟もしているけど。
相手まで後戻りの出来ない場所へ引きずってしまっているのではないか。

自らの望みが深く、強く、そして業の色を併せ持つが故に。
それだけに、どこまでを赦してもらえるのか。その問いがずっと追って止まない。
126 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:17
「お先に。いいお湯、ありがとう」

あゆみの声が響いても、まだ答えは出ないままだった。
とりあえず、一旦その問いから手を離した方がいいかしら。
そんなことをぼんやりたゆたわせながら、自分の着替えを取りに行き、バスルームへ向かった。
127 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:17


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128 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:17
お風呂を頂いて。髪をタオルで拭きながらソファーに座る。
めぐちゃんちでの、わたしの指定席。
自分の家ではないのはどこも一緒なのに、ここは別格でくつろげる。
そうしょっちゅうお邪魔するわけではないのに。よそさま、という距離感でもなく。かといって、ずうずうしく
「自分だけの」バリアを張るわけでもない。
きっと、彼女が許してくれる距離感が。丁度心地よいのかもしれない。
129 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:17
しかし。さっきのタイミングは、ないよなあ。
素直にお風呂は頂いたけど。交代でお風呂に行っためぐちゃんも、なんだか心ここにあらず、みたいな
顔をしてた。
130 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:18
ああもう。


だったら、単刀直入に踏み込んだ方が、いい。
131 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:18


------------


132 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:18
「ベッドに行こう、めぐちゃん。」
133 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:19
お風呂上がりで久々に度入り眼鏡姿のめぐちゃん。
彼女がリビングに戻るや否や、ぽんと言葉を渡した。
一瞬動きがとまったけれど。黙って手をさしのべてくれた。
134 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:20
言葉のないまま、二人並んでベッドに腰掛ける。
いつもならもっとゆっくり話もするのだけど。
もう、いよいよ熱に抑えが効かなくなった。
めぐちゃんの細い肩をつい、と押し、覆い被さるように、両手をつく。
135 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:20
「あ、あゆみ……?」
136 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:21
「……イヤ?」
「ううん。イヤじゃないし、嬉しいけど。」
137 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:21
そっとめぐちゃんから眼鏡を取り、サイドチェストに置く。
138 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:21
私にだって、「触れられたい」って気持ちと同じく、「触れたい」って気持ちもあるんだから。
昔みたいに、キスだけで何も出来なくなるコドモじゃないんだよ。

衣服の合わせをはだけて顕れる、白い肌。
結構な部分は仕事でも目にしているけど。ベッドの上で、至近距離で。
自分の腕の内にしているという事実だけでも、熱がいや増す。

一旦目を合わせて。色素の薄い瞳が、穏やかに閉じられたのを合図に、くちづけを落としていった。
139 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:22
まぶた。頬。くちびる。首筋。鎖骨。胸。
触れる場所が増える度に、めぐちゃんの呼吸が深くなってゆく。
片手で自分を支えながら、もう片手でゆうるりとめぐちゃんに触れて、そして分け入ってゆく。触れていけ
ばいくほど、自らの内の熾火も熱を上げて。望むことの核が、より明確に浮かんできた。
140 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:22
自分が触れられる時なら、もう耐えきれずに声が出ているだろうに。
めぐちゃんは、桜色に身体を染めつつも、ずっとくちびるをかみしめたままだ。
触れる度に身体が跳ねる度合いは増しているし、喉元を反らせたり。はたまた顔をそらしたりすることも
ままあるというのに。
141 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:22
「……ねえ、めぐちゃん。もしかして、辛くしちゃってる?」
一旦手を止めて、そっと頬に添え、耳にささやきを吹き込む。
142 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:23
「……ううん。そうじゃないの。」

隠しきれない喘ぎ声をそれでもなんとか押し隠すテイで、言葉が返ってきた。
143 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:23
「……なんだか、自分がとんでもなく浅ましくなってて。それであゆみに嫌われそう、と思っちゃってね。」
144 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:23
自分がこっちにする時は「我慢しなくていいよ、声を聴かせて」とすぐ言うひとなのに。実際、我慢のタガ
なんてすぐにすっとばすようなことをしかけるくせに。こと自分が与えられる立場になると、なんて無理を
通そうとするんだか。
145 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:24
「嫌いだったら、そもそもこんなことしたいと思わないでしょ。」

ていうか。むしろそんなところで我慢強さを発揮されても困る。
こっちの焦る手が、めぐちゃんに悦楽ではなく苦痛を与えているのかと不安になったじゃない。
146 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:24
「……わたしが触れたんじゃあ、感じてくれないのかと思った。」

ちょっとへの字口で漏らした言葉には。
ごめんね、のささやきと。頬に添えた手を取り、そっと下へ導くことで、返してくれた。横たえられた時
から、もう、こうだったのだと。聞き取れるかどうかの細い声で、吹き込まれる。
147 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:25
ああ、もう。



身体を傷つけることはないように。でも、めぐちゃんに残る理性は全て剥ぐイキオイで。かみつくように、
もう一度胸元に唇と手を落とした。
中心部へ、そして下へ。指とくちびるを散らせてゆくにつれ、声が漏れてくる。
148 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:25
でもね。こちらの熱は、まだまだ取れないの。
この一週間、私がどんな気持ちでいたのか。
149 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:25
負けず嫌いならこっちだって相当なもの。
まだまだ、つたない手かもしれない。
でも。気持ちは次へ次へと逸る。触れたくて。より奥に、入り込みたくて。
溶けてひとつになれないと分かった上で、その際までは辿り着けないものかと。じりじり胸の奥底が焦げ
るように燃え立つ。
150 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:26
めぐちゃんの声を何度も口移しで受けて。そして彼女が何度も大きく身体を波立たせ、意識を手放すま
で。自分の熱をそのまま写し取らせるかのように、めぐちゃんの身体の至る所へ分け入って行った。
151 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:26

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152 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:26
いつもとは逆に。自分がいつ意識を手放したのかも分からないまま、うっすら覚醒がもたらされた。
あゆみは、穏やかな顔で眠りの世界に入っている。

正直。こんな風に求めて貰えるとは思わなかった。さっきの一瞬は夢ではなかったのかと。でも。自分の
身体に残る熱と、ちりばめられたしるしは。それが違えようのない事実と教えてくれる。
153 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:27
「……めぐ、ちゃん……?」

うっすら目を開けて名前を呼んでくれるのは、彼女のいつもの常。
ここにいるよ、と笑んで、頭をなでる。
154 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:27
「ごめんね。辛くなかった?」
いつもは私が問う側だけど、今日は逆。
「ううん。……嬉しかった、よ。」
こちらが望んでいたことを全て見透かされていたのかと。それでずっと声を殺していたけれども。
一番底にあるものは、望みを満たされた嬉しさで。
だから。きちんと伝えなきゃ。
155 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:28
「軽蔑されるかもしれないけど。あゆみに、こうしてもらえたら、って。一週間、ずっと思ってた自分が、
いたんだ。」
言い終えた瞬間、いつものように-いや、いつも以上の力で。ぎゅっ、と首筋にすがりつかれた。
「あ、あ、あゆみ?」
こちらの声があわあわするのなんて知ったこっちゃない、とばかりに、力は増すばかりだった。
156 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:28


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157 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:28
発つ前のメールのやりとりで生まれた、熱の差の正体。なんとなく、分かった気がする。
158 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:28
側に居て欲しい。ハグしたい。手を触れていたい。キスをしたい。
それも、確かにあった。
でも。それ以上に深く重なり合いたい。二人でしか出来ない、二人だけのゼロ距離感が欲しい。ううん。
めぐちゃんのことがたまらなく欲しい。
その熱を伝える言葉がそこになくて。だから、「温度の差」と感じてしまったのだろう。
159 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:30
なのに。結局そこには差なんてなくて。
むしろ、オトナノヨユウウで、めぐちゃんが隠してただけで。
160 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:30
だから、いつものように、首筋にぎゅっと顔をうずめて。
そしてこの言葉を投げるのだ。
161 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:30
「めぐちゃん、ずるい!」
162 名前:イケナイコトカイ 投稿日:2007/07/08(日) 02:37
「イケナイコトカイ」<<END>>
おそまつさまでした。

息すら出来ないほど、ものぐるおしく相手を欲するきもち。
本家本元のver.も好きなのですが、女性が歌うver.もまた好きで。今回は
そちらから想を頂きました。

積極的な柴田さんと慎重派の村田さん、が多めの当スレですが。基本的には
村田さんが一歩を踏み出していたので、柴田さんが一歩を踏み出したのはこれが
初めてかと思います。

お気に召していただければ幸いです。
163 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/08(日) 12:22
わぁ〜 パチパチパチ…(拍手)
2人の体温が伝わって来る様なお話ですね
柴田さん攻めは個人的に大好きなので嬉しいです
164 名前:名無し飼育 投稿日:2007/07/09(月) 01:10
相変わらずすばらしい村柴(柴村?)ありがとうございます。
ゴチでした

これは私事なんですが、
村田さんの顔で好きな部分が「色素の薄い目」なので、
その表現をされていたことが地味にツボりました。
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/10(火) 22:58
あぁ。ゼロの距離は「極致」。
最後の末っ子さんの台詞でニヤリとしました。
可愛いなぁ。
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/11(水) 00:45
本家さんしか聴いたことなかったです。

えー…、ドキドキしましたw
行為ではなく柴田さんの気持ちにシンクロしてしまったようで
村田さんを好きで溜まらなくなっている自分はキモかったですw
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/07/11(水) 20:41
めっちゃイイ!
めっちゃイイ!
これEEですわぁ〜
168 名前:あけそら 投稿日:2007/10/07(日) 23:17
 >>163 名無し飼育さん
 お褒めの言葉、ありがとうございます。
 このスレの柴田さん、気持ちの上では積極派なことが多いのですが。行動
面で先んじたのは今回が初めてでしたので、お気に召していただいてなによ
りです。

 >>194 名無し飼育さん
 いつもご愛顧ありがとうございます。
 先日近い距離で4人を拝見することが出来たのですが。村田さんの色味が
「抜けるように白い」ということをしみじみ味わって参りました。美人さんだった……。

 >>165 名無し飼育さん
 ゼロにはなり得ないけど、だからこそそれに恋い焦がれるのだろうなあ、と
思う秋の夜更けでございます。末っ子さんへのお褒めの言葉も感謝感激でご
ざいます。

 >>166 名無し飼育さん
 本家さんが歌い上げるそれも、また胸をかきむしるような恋の熱情に満ち
ていますよね。元々男性視点(本家さん)なので、女性視点にシフトすると
それはそれでまた違う艶を帯びております。
柴田さんの気持ちにシンクロとのこと、大変嬉しく賜りました。

 >>167 名無し飼育さん
 力強いお褒めの言葉、ありがとうございます。
 あまりバリエーションが多くないのですが、今後ともご贔屓をいただければ幸いです。
169 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:19
仕事の関係で、「もし〜なら」の問いかけに答える事は多い。
基本は時節もの。もしくは夢のあるもの。「サンタクロースになったとしたら」だったり、「魔法が
使えるなら」とかね。
170 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:19
基本的に、みんな「その時に思ったこと」を書き、過去のモノとかぶらないようにしているんだと
は思うけど。こう、ムラタ的には、ぎりぎりまで粘って「ひらめきの神様」が降りてくるのを待ちた
いんですよ。
171 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:19
ええ。そして毎度ながら、そういう時節モノの提出物になんと書こうか、うんうん唸っていたの
でした。お題は「七夕の願い事」。
172 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:20



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173 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:20
「まーたぎりぎりまで待ってるの?」
174 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:20
おじゃまします、の次に響いた声がこれだった。
しまった。机から離れて考えようと、部屋をぐるぐるしたのがあだになった。
玄関すぐのチェスト上に置き去りにした書きかけの原稿を見られたのだろう。
175 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:21
あゆみとはしばらく別仕事が続いて、声も、文字上でのやりとりもちょっと途切れていたという
のに。なんたる失態。
176 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:21
「あー!き、今日はもう考えないから!」
177 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:21
あわあわしながら原稿をクリアファイルに綴じ、明日持って行くカバンへしまう。久々の逢瀬に
ブツは無粋な邪魔モノでしかない。
178 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:21
あわあわする私を、あゆみがひょこっとのぞき込んでくる。
声とは裏腹に、その表情は柔らかい。
179 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:22
「根を詰めすぎて眠れない、ってのはなしにしてね。めぐちゃん。」
180 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:22
ぬう。優しく諭されると、倍、言葉が出なくなる。
元々眠りは浅いけれど、考え事のループや緊張が降ると、てきめんに眠りが消えてしまう。
仕事には響かせまいと気を張るけれど、表じゃない部分だと、どうしても隠せない時があって。
その度にメンバーたちを心配させてしまっていた。
181 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:22
「……心配かけて、ごめんね。今日は、来てくれてありがとう。」
182 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:23
混ぜっ返すことだって、強がることだって出来る。仕事場だと、そうして位相をずらして話を曖
昧にしてきたけど。二人だけの空間で、素直にならないのは、マイナス。
だから。照れくさくもあるけど、ちゃんと、一番「伝えなきゃならない」言葉を、きちんと渡す。
183 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:23
ふわっ、と目を細めてから。ゆっくり、あゆみが首に腕を回してきた。
184 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:24
「あーいたかったあ……。」
ほわっ、と、つく息といっしょに、頬に彼女の髪がそよぐ。そして、ちょっと低めのトーンで、言葉
が吹き込まれる。
甘えたい時に、彼女が見せるクセ。肩口に顔を埋めてだきついてくる。昔はこちらから手をさし
のべて、そしてゆっくりほどいていたのに。お互い少しずつオトナになって、そして、素直になる
ことを覚えていった。
185 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:24
意外と、素直になるコトって難しい。
どうしても自分に不利になるような気もして。ついつい、気持ちと逆の札を出してみたり、駆け
引きと称してぎりぎりのところまで逆張りを続けたことも多々あった。
186 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:24
でも。たくさんのぶつかりあいと、たくさんの涙と。それらを経て、素直に「嬉しい」だったり「大
好き」だったりを示す方が、お互いに楽だとの境地に、やっと辿り着けた。
187 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:24
挑発し合うアソビだって、お互い無言の了承があるならば楽しいけれど。
でも。それはふんだんに二人だけの時間があった後の、爛熟を経た後に付け加えるスパイ
ス。
188 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:25
まっすぐに伝え合うこと。
距離と時間が空くならなおさら。
照れもあるけど。でも、すれ違えるだけの余裕がないなら。その前にきちんと芯にたどり着こう、
と、やっとお互い思えるようになった。
189 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:25
髪から背中へ、ゆっくりと手のひらをすべらせる。
ゆるやかな呼吸が、そして胸が刻む音が、身体にしみこんでゆく。
メンバーや、同じハローの子たちとも軽くハグを交わしたりすることは多々あるけど。身体も心
も、こうして委ねてもらえるのは、やはり「とくべつ」の関係性があるからこそ。そして、そこで重
ねられる気持ちも、また「とくべつ」だからこそ。
190 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:26
くしくし、と、あゆみが頬をすりつけてくる。

もっと深く、もっと近く、もっと隔てなく重ね合うことだってしているけれど。
こうして互いのぬくもりを交わすことでもたらされる平穏は、またナニにも代え難い幸福感をも
たらしてくれる。
191 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:26



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192 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:26
いつものように、二人並んでソファに腰掛ける。
目の前にはあたたかいミルクティ。
193 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:26
「これからも、こうやって笑っていられたらいいなあ」
ことん、と肩にアタマを載せて、あゆみが呟く。
194 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:27
「うん。それを、ずっと重ねていけたらいいですね。」
膝に載せた手に、自分のそれを重ねて。言葉を継ぐ。
「……わたしのコメント、それにしたんだ。」
目をつむったまま。いたずらっ子のトーンでつむぐ声。
うん、全く以てあゆみらしいや。
195 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:27
わたしは……。
仕事上の言葉はまた別。本当に大切なことは、表に出さずにそっとしまっておくことにしている
から。
ひとつだけ。
ただひとつだけ、誰にも見せずに、そっと願い続けている。
196 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:28
「離れていても、わたしのことを心のどこかに置いていてほしい。
何かあったら、すぐに呼び出していてほしい。」

ねえ、お願い。
197 名前:ひとつだけ 投稿日:2007/10/07(日) 23:33
「ひとつだけ」<<END>>
おそまつさまでした。

時期はずれもいいところですが、2007年七夕のコメント写真のお題から想を得ました。
コメントの〆切についてははっきり分かりませんが、勝手に6月半ば頃(3人CDSと
シニアグラフィティで別仕事中)、の設定とさせて頂きました。

お気に召していただければ幸いです。
198 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/10/15(月) 03:55
変わらずな、ほろ苦甘い二人をありがとうございます。
大好物です。
199 名前:あけそら 投稿日:2007/10/31(水) 02:17
>>198 名無し飼育さん
  お褒めの言葉、本当にありがとうございます。
 これからも「大好物」と言っていただけますよう、精進したいと思います。
200 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:18
「LOCK ON!」ツアーの中盤過ぎ。あゆみが、時々、誰にも見えないところでこっそり泣いていた
のに、薄々気づいていた。迫るタイムリミットの焦り。手と足が途中まで掛かりながら、まだ越え
られずに居ることの悔しさ。いつもなら、ぎゅっと抱きしめたり。アタマを撫でたり。そんな形で何
かしらの手を差し出すのだけれど。こちらもどうにもいっぱいいっぱいで、その一歩、そのひとつ
の手、が出せなかった。

恋人でもあり、一番の「おねえちゃん」であるむーちゃん。さりげなく、あゆみの矜恃を傷つけない
かたちでほぐしていた。はたまた、まぁしい。軽いおふざけのテイにあゆみを引きずり込んで、気
持ちの流れを変えていた。そんな形で、みんながみんな、巧くバランスを取ってくれていた。

わたしは、といえば。最終日の公演のステージ上で、ぐずぐずになってしまって。あゆみに気遣い
が出来なくてごめんなさいどころか、3人と、お客さんにもいろいろフォローしてもらう始末。ひと
つの壁を越えることが出来た、との安堵感だったんだけど。ううん。なんだか迷惑ばっかりかけ
ちゃったなあ。
201 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:19
と。そんな夏のライブハウスツアーが終わったと思ったら、秋の芝居に向けてもうみっちり稽古。
今までのハローで経験した物事とはまた別のアタマと身体を使う分、なんだか知恵熱が出そう。
ツアー進行と稽古が丸かぶりしていたあゆみと比べたら、随分楽させてもらっているけれど。い
やはや、夢にまでセリフや、演出家さんの説明がみっちり出てくる日々です。
202 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:19
そんな中、あゆみの芝居の本番を3人で見に行った。
凜とした表情。流れるような長セリフ。あれだけの短い期間で、「あゆみじゃない、その役として
の人」を舞台に表せたのは本当にすごい。

終演後、あゆみに「すごく格好良かったよ!」と感想を言ったら、いつも以上の笑顔で抱きつい
てきて「ひとみんが、その笑顔でそう言ってくれるのが、何より嬉しい!」と言われた。
え、えと。あゆみとは良くこういうやりとりはするけど。そういう言い回しは、わたしじゃなくて、むー
ちゃんにすべきじゃない……のっ?

あわあわしながらむーちゃんの方へ視線をやると、意外にこのひともにこにこ。そりゃまあ、やき
もち焼いてたとしても、そんなことを分かりやすく出すことはしないけど。でも、この表情は、何か
を隠してってものじゃない。心底喜んでくれてるみかづきの目だ。
まぁしいも、変わらずやさしい笑顔を浮かべている。「ワシらも稽古がんばるから、今度はあゆみ
が見に来てね」と、アタマを撫でてた。

うん。
いろいろ迷うし、今もまだ雲が完全に晴れたわけじゃないけど。
独り先んじてがんばったあゆみにも。そして次に同じフィールドで共にがんばるむーちゃんやまあ
しいにも。恥ずかしくないだけのものが見せられるよう、稽古をがんばる。そう、気持ちに新しい
風を吹き込んでもらえた。
203 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:20





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204 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:21
撮影とDVD録りの仕事がラジオの日に絡めてある以外は、基本的には稽古づくしの毎日。とな
ると、気晴らしは稽古終わりにごはん食べたりお茶したり、といったところに集中する。疲れが溜
まるとついつい甘いモノに手が伸びて「……いかんよねえ」なんてぼやくのだけど。でも、それで
明日へのチカラが生まれるのなら良いのだ!といって、正当化しちゃう。

ただし、まぁしいはかなり節制モード。晩に食べちゃった!なんて日は、「ごめん、ここから歩いて
がんばって減らすよー」と言うこともしばしば。その意志の強さと実行力は、とても尊敬するけれ
ど。
……ほんのちょっと。さみしいなあ、と。そう思ってしまうのも、ある。
205 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:21
仕事上、自分の身体の在り方には細心の気配りが必要。まぁしいがそうするのも、職業上当然
とは、アタマでは重々承知だけど。たまには、こう一緒にお茶飲んだり、甘いモノ食べて、な輪に
入ってほしいなあ、と。ワガママと分かった上で、ふつりと思いは生まれるのですよ。

大事なメンバーや、大事な友達とゴハン食べたり、お茶飲むのも、そりゃそれで楽しい時間だけ
どさ。やっぱりこう……むーちゃんはあゆみと居るのが一番しっくりくるし。そして、わたしだって
まぁしいと一緒に居るのが一番しっくりくる。そういうこと。
206 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:22





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207 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:22
「今日、わたしまっすぐ帰るね。」
ある日の稽古終わり、ブーツの紐を結びながら、むーちゃんが言った。
「そうなの?」
「……あゆみとデートでしてね。」
ひらひらと手を振りながら、さっさか出て行った。突っ込むヒマも与えてくれず、一目散。
208 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:23
「ありゃあ尻尾があったら絶対ブンブン振ってるよなあ。」
スニーカーの紐を調整しながらまぁしいが感心した声音でこぼす。
「ねー。ま、久しくすれ違い生活だったから、ホンの数時間でも『会える』のは嬉しいんだろうね
え」
むーちゃんが出て行ったドア先に、ぼんやり視線を向けながら、まあしいへ言葉を渡す。
あんまり表だって言葉にする人じゃなかったような気がするんだけど。でも、久しく別々の-しかも
お互い密度の濃い-仕事が続いていたから。ほっと息つく時間が欲しいのも、良く分かる。
209 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:24
「ひとみん、久しぶりに二人ごはんしない?」
とんとん、とつまさきを地面に打ち付けながら。さらりとまぁしいがつむぐ。
ごく普通の、稽古帰りの声掛け、かもしれない。
でも。その「ごく普通」が、ことりと胸に明かりを灯してくれた。
210 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:24
「ひとみんと言えばパスタだねえ」とは、周囲の人たちによく言われるけども。そりゃあね。適度に
他人と距離が取れて、ゆっくりお茶も出来て、財布にほどよく優しいとなると、お店の選択も限ら
れてくるからさ。

……というのは、まあ、イイワケ。
高校生時代、東京の「パスタのお店」ってのが、どうもまぶしく感じていて。それが身近な存在と
なって以来、ついつい「食事とちょっとした甘いモノとお茶」が欲しい時には、イタリアン!と返事
するようになっていた。
211 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:25
二人でゆっくり外でごはんを食べるのは、いつぶりだろう。
仕事の合間にってのはちょくちょくあるけど。こうしてゆっくり「すぐ次の予定」に気持ちを急かさ
れることなくおいしさを分かち合えるのは、ぐるり、と思い返さないと出てこない。

久しぶりだけれども、いつものお店。
良く座らせてもらう壁奥の席に腰を下ろし、二人して「いつもの」メニューをお願いする。
あっちゃんや、有紀ちゃんとだと、二人につられて冒険することもあるけど。基本嗜好は保守
的。

ゆっくりパスタを食べて。その後、お茶と甘いモノも「今日だけ特別!」と二人して追加して。申し
訳ございませんが、閉店のお時間です、と、そっとテーブルに声を落とされるまで、おしゃべりを
堪能した。
212 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:25
ついこないだまでは半袖か袖無しにミュール、なんて格好をしてたはずなのに。いつの間にか薄
手のコートを羽織り、ブーツを履く季節になった。
本番が終わって、ソウルへ行く頃には。本格的に毛のモノを引っ張り出さなきゃいけないだろう。
そりゃあ、寝る時にメルを抱きしめると丁度良いはずだ。

稽古の話。この冬買いたい靴や服の話。たわいない話をしながら、二人、それほど違わぬペー
スで、てくてくと夜道を歩く。
213 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:25
話が途切れた時に、左手がぶつかった。ように思った。
あ、ごめんね、と言いかけた時。そっ、と、左手を包まれた。
214 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:26
……えっ?
215 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:26
楽屋内で、4人だけで居る時だって。中々恥ずかしがってこうやって手を握ってくれたりすること
はない。完全に二人、と分かっている時なら、優しく触れてくれるのに。人目のあるところで、こう
して手を握ってくれるなんて、信じられない。


アタマがあれこれぐるぐるしている間にも、歩くペースは落ちなくて。
そして、左手はいわゆる「恋人つなぎ」に-指をしっかり絡めて握るかたちに包まれていた。
216 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:26
「……ひとみん、いっぱいいっぱいになってたのに。上手くほどいてあげられなくて、ごめんね。」
目は進行方向を向いたまま。その代わり、ぎゅっ、と手を握って、言葉を渡してくれる。
「ただ見るしか出来ないな、って思ってたんだけどさ。でも、表さないと何も伝わらないんだ、って
気づいて。……いまさらだけど、ね。」
握る手から、彼女の心のあたたかさが、やさしい速度で伝わってくる。
217 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:27
すぐ側に居る。仕事上の大事な盟友。そして、こいびと。
でも、お互いどこか過剰に「自分たち以外」の、世間とか社会とか。そんな諸々を気にしすぎてし
まって。背中合わせのほぼゼロ距離にあってもなお、互いを求めて手が空を彷徨っている。
218 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:28
それなりの時間は重ねているけど。どうにも、この不器用さはまだわたしたちから
去ってくれない。

ならば。また、原点に戻ればいい。
気持ちを表す。言葉で渡す。触れて、互いの温度を融和させる。
ひとつずつ、重ねてゆけばいい。
219 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:28
「……ありがと。まぁしい、だいすき。」
220 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:28
ネイルが彼女の白い甲に傷を付けないように。それだけ気をつけながら、そっ、と、重なる指に
チカラを込めた。
221 名前:Thinking of you 投稿日:2007/10/31(水) 02:33
「Thinking of you」<<END>>
おそまつさまでした。
「LOCK ON」中盤戦〜10月中頃、の設定で書かせていただきました。

斉藤瞳さん。26歳の誕生日、おめでとうございます。
知れば知るほど、中身がとてもあったかくて、まっすぐで。何事にも一生懸命
な姿に、どんどん「好き」の気持ちを強くしていただいております。

大谷さんも斉藤さんもそれぞれ柔らかな思いがあるのに、それを「表す」のに
は何重もの照れがあって……、というのが、私の中の勝手な二人像です。
222 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/01(木) 01:45
斉藤さんも大谷さんも本当に温かい人ですよね
この二人を見ていると優しい気持ちになります

ほろりと来るお話をありがとうございました。
223 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/01(木) 04:23
お疲れさまです!
メロンのオネエ様方はメンバー同士の
揺るぎ無い愛情があるようで安心して応援できますね
これからも是非メロン小説頑張ってくださいお願いします。
224 名前:あけそら 投稿日:2008/01/06(日) 20:35
保全用の生存報告です。少しあたためているものはあるのですが、この一週間で
アップ出来るかどうかは不安だったので、こういう形で失礼いたします。

>>222 名無し飼育さん
あたたかなお褒めの言葉、ありがとうございます。
コンサート会場でのMCだったり、はたまたblogの言葉の連ねから見るに、
あの4人は本当に心の優しいひとたちだよなあ、とにこにこしています。
みんなその表し方は異なるけど、でも、根っこは一緒。
今後とも、どうぞご贔屓に願います。

>>223 名無し飼育さん
嬉しいお褒めの言葉、ありがとうございます。
冬ツアーでは、お互い相談していないのにそれぞれ年末ジャンボを買って
いたらしい斉藤さんと大谷さん。はたまた、普段はさらりと妹3人をフォロー
するけど、カウントダウンではついに感極まって涙ぐんじゃった村田さん。
そして村田さんにはいっつも「はにゃっ」と安心して妹の顔を見せる柴田さん。
みんなみんな、いとおしく思っています。
225 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:09
2月の半ばから3月にかけては、プチ誕生日ラッシュ。
メロン記念日としての誕生日。そしてわたしの誕生日、まぁしいの誕生日、〆にむらっちの
誕生日。ひとみんだけ離れてて、ちょっとばかり悪いなあとも思うのだけど。でも、それは
それできちんとお祝いしているから、許してほしい。
226 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:09
二回目の、自分の生まれ年の干支になる日。
年始めからわくわくしていて、ことあるゴトにそれをクチにしていたら。「ぴったり合うのは五回
目ですよ、あゆみちゃん」なんて博士口調で突っ込まれた。
でも、そんな関係ねぇ!なの。
自分のノートに新しい一頁が追加される日で。それが、生まれた時から数えてほんの数回し
かない「ぴったりの日」なんだから。
227 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:10
そう言い返すと。いつものようにちょっと目を見開いてから、三日月のかたちにして、アタマを
撫でてくれた。
その手の温かさは、出会った時からずっと変わらずに在ってくれる。
最初は、メンバーとして。そして今は、背中もココロも身体も委ねられる、歩みを重ねていこう
と共に誓い合った「とくべつのひと」として。
228 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:10

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229 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:10
2008年になってからこのかた、あゆみが年女だと随分嬉しそうにしているから。じゃあ誕生日
にはワインかシャンパンでも奮発しようか?と思いつつ。クチから出るのは軽いツッコミ。
むーっ、という音が聞こえそうな顔で言い返してくるけど。その表情と返事も全部ひっくるめて
いとおしいんだ、なんて、今更言えないよね。
230 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:11
んっ、と目を見て受け止めて。それから、髪を撫でる。
出逢った頃はまだまだ稚さが勝っていたのにね。
231 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:11
「オンナノコは、鮮やかに変わっていくんだよ」

どこかの小説にあった一文が、改めて差し出されるような気持ちになる。
232 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:11
最年長の自分と、最年少のあゆみ。
引っ込み思案で内弁慶なコだから、上手くやれるかな?と最初は心配したけど。こちらのこと
を何かにつけて頼ってくれて、逆に先んじて手を引いてくれたことも多々。

こと、この関係についてもそう。
233 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:12
彼女に対して抱く気持ちが、友愛だけではなく恋情であること。認めるまでにはずいぶんと時
間が掛かったけれど。今でははっきり「いちばんだいじなひと」と言える。ファンの方々も、スタ
ッフのみなさんも、ひとみんも、まぁしいも、家族も。それはそれで大事だし愛しているけど、
「たったひとつ」に出逢えた後では……申し訳ないけど、そこには一枚隔てが出来た。
排他、ではなく。たくさんの大事なものがある中での「たったひとつ」。
234 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:12

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235 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:12
自分の誕生日は仕事で逢えることを考えて、今年は「21日の夜に」自分の部屋へあゆみを招
いた。去年の誕生日には一緒に居られなかったから、せめてもの罪滅ぼし。それをクチにする
と「まだ気にしてるの!」と怒られるんだけどね。やっぱり、気になるものなのですよ。そういう
ところは。
236 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:13
「さーて、カウントダウンするかねー」
パソコンで日本標準時のサイトを呼び出して、二人でじっと画面を覗き込む。

表示される秒数がことこと変わってゆく。
自分たちのカウントダウンライブの時も、お客さんはこのような気持ちだったんだろうか。あの
時はもういっぱいいっぱいだったけれどもけれど。こうして「数えて」くれるわくわくを、遅ればせ
ながら追体験する。
237 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:13
「誕生日おめでとう、あゆみ」

日付が変わった瞬間に、抱きしめて、ことほぎを渡す。
くちづけることも、ほかの言葉を渡すことも可能だけれども。
とにかく今は、彼女のぬくもりを自分の腕の内に確かめたかった。
238 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:14
「これからも、ずっとこうしてね、めぐちゃん」

腕の中から、自分の心臓にめがけるように言葉が吹き込まれる。

変わらないものなんてない、かもしれない。
でも。ほんのひとつくらい、逆らうものがあってもいいはず。

腕にチカラをこめて、その返事の代わりにした。
239 名前:It's gonna never change 投稿日:2008/02/22(金) 23:22
「It's gonna never change」<<END>>
おそまつさまでした。

柴田あゆみさん。24歳の誕生日、おめでとうございます。
どんどん後輩も増えて、「おねえさんモード」な部分も見せて頂くようになりましたが。いざ何か
あった時は、必ずといって良いほど村田さんに甘えるところがとてもいとおしゅうございます。

「Never say "never"」なんて物謂いもありますが。この二人と、そして四人についてはつい
ついタイトルの言葉を願いたくなります。

25歳と、そして「10周年」。共におめでとうを贈れますよう、祈ってやみません。
240 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/23(土) 23:52
柴田さんお誕生日おめでとうございます
後輩の前では凛凛しいお姉さんなのに、村田さんや斉藤さん大谷さんと一緒にいる時は末っ子になる柴田さんかわいいですね
それだけメンバーには心を許してるんでしょうね
来年も再来年もその先もずーっと、変わらない4人で記念日を祝えるといいですね
241 名前:あけそら 投稿日:2008/02/25(月) 02:23
 >>240 名無し飼育さん
お祝いの言葉、ありがとうございます。
ハロ10@札幌では、まぁしいの背中を押して「ほら、まぁしいだって『ただいま
』じゃない」なんておねえさんなしぐさもしてましたけども。それでも、やっぱり
ホームに戻ると彼女は(良い意味での)「末っ子ちゃん」なのねと思うところ
しきりです。これからも、また彼女たちの記念日を続けて祝えると良いです
ね。
242 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:25
誕生日前のオフ日。日頃気になってたライブがちょうどその日。
メルちゃんにはちょっと悪いけど、久々に泊まりにこない、との言葉もつけて、ひとみんを
誘ったら。あー行く行く!と上機嫌でお返事いただきましたよ、っと。やー、久しぶりに
「でぇと」ですよ。決まった時からもう顔がにやけまくりですよ、奥様。

当日、ムメスから「にやけすぎて溶けないようにね」なんてメールが来てたけど。ああもうそん
なの勝手におっしゃってらっしゃい!そういう自分だって、あゆみんとデートするんだとこっそり
会社の廊下でスキップしとったやんけ。勿論、写メも取らなければ、あゆみんにも内緒にして
おいてあげる、優しい犬谷でございますよ。
243 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:25
ライブフロアで、普通に他のお客さんたちと一緒にはしゃぐ。
自分たちもこんな風に客席を沸かせたい。
勿論今までもそれ相応にしている自負はあるけど。でも、現状で満足するんじゃなくて。もっと
先に、それこそ「ピリオドの向こうへ」跳んでいきたい。
楽しみと同時に、いろいろ前向きな課題ももらった時間だった。

それを、隣に「だいすきなひと」がいて。同じ時間と、いろんな思いを数倍にしてもらって、なお
かつ分かち合える幸せも噛みしめたんだけど、ね。
244 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:26
終演後はひとみんのリクエストでもつ鍋屋さんに。
個室でゆっくり出来るのもいいし、なんといっても寒い時にはこの熱々の食べ物がイイ。お互
いそんなには呑めないけど、ひとみんがお銚子を一本だけ頼んでくれた。「誕生日前だから、
ちょっと特別にしてみない?」だって。
245 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:26
小さなお猪口にちょっとずつお酌しあって。にっこり視線を交わして、一緒に杯を干す。
その後、ひとみんが

「これからもずっとよろしくね。早いけど、誕生日おめでとう」

との言葉を渡してくれた。嬉しいねえ。

「ありがとう」とか「だいすき」は、4人だけならまあ言ってくれるんだけど。こと本気モードの言
葉となると、意外と照れて言ってくれないひとなんだよね。

まあ、そんなだから。二人きりの時には、「どうしてまぁしいそういぢわる言うの!」なんてことも
言われちゃいます。どういう状況か、ってのは、な・い・しょ。
246 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:27
その後はいつも通りの軽めの飲み物にシフトして。鍋をつつきつつ、あれやこれやとおしゃべ
りに華を咲かせましたよん。
247 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:27
帰りはちょっとゼイタクしてタクシーで部屋まで。
普段ならある程度まで歩いて電車とかにするんだけど、いかんせん春一番とは名ばかりの風
がきつくて。ひとみんの腰を痛くさせても悪いし、と思ってこの選択にしたんだけども。

……あれれ。なーんか、世界がぐるぐる回ってるよ、っと。
車の中ではなんとか目をつむることでやり過ごせたんだけど、降りてからのほんの僅かな距
離がまあ遠い。エントランスから自分の部屋まで、そう大した長さじゃないのに。一歩踏み出し
てぐるぐる、二歩目でさらにごどろんごどろん。
248 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:28
「ちょ、まあしい大丈夫!」

あああ、ひとみんに心配掛けることだけはしたくないのに。
気持ちだけは急くけど、足が上手く動かない。
酔うような量は呑んでないはずだけども。なんなんでしょ、これ。

とりあえず、ひとみんの肩に支えてもらって、自分の部屋までたどり着いて。
久々のデートなのに申し訳ないと思いながら、投げるように服を着替え、そしてベッドに横にな
らせてもらう。
249 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:28
「だいじょうぶ?何かお薬いる?」

コートも脱がずに覗き込んでくれるひとみん。ああ、本当にごめんね。そして、ありがとう。

「うー、ごめんね……。とりあえず、ちょっとだけ横にならせて。多分小一時間もしたら大丈夫
だと思うし。ホント、ごめん」

それだけなんとか絞り出して、あとはこの「ぐるぐるまわるセカイ」から自分を切り離すべく、一
端目を閉じた。
250 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:29


あれ。ひとみんが、ずっと背中を向けてる。
ひとみーん、と声を掛けても、振り向いてくれない。しかも、なんだかお怒りの様子。ご機嫌を
損ねることは……うーん、今日のこの失態くらい、だけど。でも、振り向いてもくれない、なんて
程怒るかな?

とんとん、と肩を叩こうとしても、手が届かない。
触れられる距離なはずなのに、するりと先へ行ってしまう。

追いかけなければ。追いかけて、謝らないと。
どうして怒っているのかは分からないけど。でも、今謝らないと、もう彼女と二度と逢えなくなっ
てしまう。そんな確信だけはあって、必死に彼女を追いかける。

逃げ水のように彼女の姿は先へ先へと進んでしまう。
足下は何故か熱い砂。そこを素足で走る私。
じっとすることも出来ないけれど、思うようには足は動いてくれなくて。
焦る気持ちが、言葉をつむぐ舌さえももつれさせる。

「待って、行かないで、ひとみん!」


251 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:29
「大丈夫だって、ここに居るってば」
やさしい声。いつも身近にあって、ほどいてくれるトーンのそれ。
えと。わたしは無事に追いつけたの?謝れたの?
252 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:30
わけがわからないまま、きょろきょろと辺りを見回す。

えと、自分が居るのは、自分の部屋の見慣れたベッド。
腰のあたりにひとみんが腰掛けてて、優しく上体を抱きしめてくれてる。
253 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:30
「……ホントに、ひとみん?怒ってない?こっち向いてくれて、いいの?」

まださっきの光景が続いているような気がして。縋るように問うてしまう。

「怒ってもないし、むしろまあしいが辛くないか心配なくらいよ。てか、大丈夫なの?」

変わらず抱きしめてくれたまま、ゆっくり背中を彼女の細い手のひらが上下する。それで、少し
ずつアタマが整理されてきた。
254 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:31
「ホント、ごめんなさい。」

柄にもなくお酒に負けて、それで悪夢を見たなんて。
せっかくのデートだというのに。さあこれから、の部分がこんなていたらくだなんて。自己嫌悪
以外のなにものでもない。

お酒のせいかどうかは分からないけど、急にひどくめまいがしたこと。
その後目をつむって横になったら、ひとみんが背中を向けて怒っていて。謝らなきゃと思って
追うんだけど、ずっとそれが叶わなくて、叫んでしまったこと。

それらをざっくり説明した後、改めて「せっかく二人で過ごせる楽しい日だったはずなのに、本
当にごめんなさい」とアタマを下げる。

うーん。正直、このままひとみんの顔を真っ直ぐ見られない。それくらい、申し訳なさでいっぱい。
255 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:32
ぎゅっ、と抱きしめられたあと、ぽんぽん、と背中を叩かれて。それからひとみんがベッドから
離れていった。

さてはて、どうしよう。気持ちはただただぐるぐるするばかり。
256 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:32
すぐにひとみんがベッドに戻ってきて、さっきと同じように腰掛けた。

「ねえ、まあしい。顔あげて、あーん、して」

いつもと変わらない、あたたかなトーンの声。
いいのかなあ、との不安を消せないまま。言われたとおりにする。
257 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:33
「はい、これからの眠りがだいじょうぶになるおまじない」
ぽい、とクチに入れられたのは、ちいさなチョコレートのかけら。
ひとみんが好んで手元に置くだけあって、かなり甘い。

その気遣いが、今はとてもココロに沁みる。
どうしたの?との問いじゃなく。大丈夫よ、との、肯定の言葉。そして、こちらの負担をさらりと
拭ってくれる大人の技。メンバー4人中ひとりだけ「おねえちゃん」育ちなのは伊達じゃない。

こんな素敵なひとが、側に居てくれるなんて。これほど嬉しいプレゼントは滅多に望めません。
かみさま、本当にありがとう。
258 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:34
でも、現金なもので。クチをつくのは、ちとお調子者の謂い。
259 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:34
「ありがとう、ひとみん。でも欲を言うと、もっと甘いものが欲しいなあ」
「……チョコだって十分甘いと思うんだけどね。」

基本的に恥ずかしがり屋さんなので、向こうから何かしてくれる、ってことは滅多にないのだけ
ど。あまりの様子を見かねたのか、目を閉じて軽くキスをしてくれた。

こちらが目をつむる間もないほどの、短くて軽い、触れるだけのもの。
でも、それが、震えるほど甘くて、そして大事。
260 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:35
「あのさ、ひとみん」
「んー?」
「今晩、ずっと触れても、いい?……えと、そういうことをしたい、ってのもあるんだけど。
そうじゃなくて、ひとみんを抱きしめて眠ることが出来たら嬉しいんだけど。ごめん、ワガママ
言って。」

ああもう。自分でナニが言いたいのか分かんなくなってる。
隅々まで触れつくしたい。彼女を味わいつくしたい。
そういう感情だって、実際そうさせてもらったことも、あるけれども。
今夜一番望むのは、彼女のぬくもりを自分のそれに重ね合わせることなのだ。
261 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:36
「全然、ワガママじゃないよ。……ひとだって、まあしいに触れて眠りたい、って思ってたから
さ。」

にっこり微笑んで、それから、おじゃましまーす、と、ベッドに潜り込んできた。
ベッドで二人はちょっと狭いけれど。お互い向かい合って抱きしめ合うなら、それはそれで
丁度良い広さ。

腰に響くようならすぐに言ってね、との断りをいれて。
彼女の首に手を回し、胸元に顔をうずめる。
262 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:37
ひとみんがしんどいときに、わたしはちゃんと手をさしのべられてるかな。

二人の体温が、服を通してひとつに融けようとする間際。そんなことを思いながら、もう一度
目を閉じた。
263 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:37
今度こそ。良い夢でありますように。
264 名前:One night with chocolate 投稿日:2008/02/25(月) 02:43
「One night chocolate」<<END>>
おそまつさまでした。
先週後半にこのお二人でDJ OZMAのライブに行かれたとのことなので、そこ
から勝手な補助線を引かせていただきました。(ラウンジblog参照)

大谷雅恵さん。26歳の誕生日、おめでとうございます。
ボーイッシュ担当、といいつつ。実はとても細やかで、一番「オンナノコ」の部
分が多いのかな、と思っております。思うことと、表すこと。どうしてもその間
には距離が出来てしまいがちなのですが。一番そこを「えいやっ」と飛び越
えようとする強い気持ちを、blogだったりライブだったりで渡していただいて
いる気持ちがあります。

新しい一頁が加わった「まぁしい」さんに、今後も深い幸いがありますように。
265 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/29(金) 20:58
優しいお話をありがとうございます
遅くなりましたが
大谷さんお誕生日おめでとうございます
大谷さんは直感派で思い切りが良い面と、センシティブにじっくり物事を考えられる面を兼ね備えた方だと思います
最近は細やかな気配りの出来る女性的な感じがしますね
そんな大谷さんにとって幸せな年になる事を願って止みません
266 名前:あけそら 投稿日:2008/03/03(月) 22:11
>>265 名無し飼育さん
 やさしい言祝ぎをありがとうございます。
 おっしゃるとおり、大谷さんはひょいっと直感的に揺れる橋を渡りきることも
あれば、石橋を叩いてなお案ずるような二面を持ち合わせていらっしゃると
思います。そんな彼女が居て、3人が居る。だからこそわたしは彼女たちを
見続けているのだろうな、と思います。

 しかし、柴のひと以外がみんな20代後半戦ですか。いやはや、続くというの
はよいものです。
267 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:12
アタマを悩ませる時期がまた巡ってきた。
そう、めぐちゃんへの誕生日プレゼントをどうするか。
勿論メンバーとしてのそれは用意した。おかげさまで当日は4人揃っての仕事だから、みんな
ではしゃいで、って流れにもなるだろう。
268 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:12
問題は、「たったひとりのあなた」に贈るモノ、としてのプレゼント。
問うたところで春風のようにかわされたり、あるいは「側に居てくれるのが一番のプレゼントだ
よ」と言われるだけなんだけど。ううむ、それでもやはり何か特別なことをしたい、と思うのよ
ね。
269 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:12
めぐちゃんは、わたしより遙かにオトナ。
あ、もちろん、とんでもなく天然さんなところも多いけど。でも、わたしに対しては、ずっとずっと
オトナで居てくれる。

そんなめぐちゃんに、「たったひとりのあなた」に、この日だからこそ贈ることが出来るモノ。もう
そろそろ見えてもいいはずなのに、未だにそれがはっきり分からないのが、悔しい。
270 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:13
めぐちゃんは、本当に望むこと、本当に欲しいモノは、ココロの奥深くにしまって、まるでそんな
ものはないかのようにふるまう。でも、こちらが年下の特権でぶつかったり。ごくごくたまに空
回って泣いてしまったりする時。たまに閂がちらりと緩むこともある。

ずっと一緒に手をつないでいこう、との決意。
でも、それとひっそり沿うように、「でも、それは、あゆみを振り回しているだけなんじゃ?」って
不安も、どこか消せずに居る模様。
271 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:13
わたしはめぐちゃんと一生同じ道を歩こうと決めた。それは誰の命令でも無理強いでもなく、
自分で考え抜いて決めたこと。だから、不安をどうにか消し去りたい。そのチカラがあれば、そ
れをプレゼントにするんだけどな。

勿論クチに出せば、いつものように穏やかな笑みと、ぎゅっと抱きしめてくれることで返してく
れる。でも、わたしのココロの定まりが、本当にめぐちゃんへ伝わっているのか。疑うわけじゃ
ないけど、ほんのちょっと、「伝わってるのかな?」なんて思いが消せずに在ってしまう。
272 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:13

……そっか。

273 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:13
伝わらない、とじたばたするなら。なんとか自分にあるものを使って伝える努力を重ねればい
い。歌、もあるけれども。それよりもっと根っこにある道具。そう、言葉。
274 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:14
直接会って話すことも出来る。メールだってやりとりするし、毎晩のチャットだって、余程のこと
がない限りは欠かしていない。そして、肌の温度をひとつに重ねて伝えることも出来る。

だからこそ。普段は滅多に使わない方法を使ってみよう。

仕事での書き物のたぐい-写真に添えるひとことだったり、それに類するモノ-は苦手なんだけ
ど。でも、こうしてめぐちゃんに渡すのはそうそうないから。だからこそ、格別の彩を持ってくれ
るかもしれない。
275 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:14
季節の柄の便箋と、封筒を買って。そう、封の部分のシールも忘れずに。

一年のうちで、たった一日の、とくべつの日。
その日に、わたしの思いが、めぐちゃんちのポストに届きますように。
276 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:14
「村田めぐみ様

 とくべつのあなたへ、こころからのだいすきを

 柴田あゆみより」
277 名前:ほんの少し 投稿日:2008/03/03(月) 22:19
「ほんの少し」<<END>>
おそまつさまでした。
別名、「柴田くん、3月3日に村田さんちに届くように手紙を書く」の巻でござい
ます。

改めて。村田めぐみさん、27歳の誕生日、おめでとうございます。
こっそりこの日には桃の花を飾ろうかと思っていましたが。2月中にご本人様
が飾っていらっしゃったので-そして買える場所を通らずに帰ってきてしまっ
たので-気持ちの中で活けさせていただいております。

気遣いを気遣いと悟らせぬ聡さを持つひと。だからこそ、この4人は上手く
やっていけるのだろうな、と思います。これからも、貴女と、そして貴女の
居るグループに「おめでとう」を申し上げることが出来ますよう、お祈りして
おります。
278 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/03/07(金) 23:46
村田さんお誕生日おめでとうございます
静かに心温まるお話をありがとうございました
柴田さんの想いが村田さんに届くといいですね

さりげない気遣い、相手を恐縮させない心配りって難しいですよね
メロンの4人の、そんなやりとりを見ていると自然と顔が綻んでしまいます
仲間って素晴らしいなぁと思います

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