短編集かなぁ
1 名前:さんさい 投稿日:2007/01/29(月) 14:19
はじめまして

吉澤さん絡みだと思います。
よろしければお付き合いください。
2 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:23
「おはよう」
ぼさぼさな髪を手で解かしながらいつものようにテーブルに座る。
欠伸しながらけだるそうな顔でぼーとあたしを見る。
全くかわいい顔が台無しじゃん。
目つきが犯罪一歩手前ってくらいやばいですよ?

アタシはフッと美貴に気がつかれないように苦笑する。
もっと、かわいげがあるとなぁ〜なんて思いながらも
美貴にはこのままでいて欲しいなと思ったり

3 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:28
「はよ」
短くそう答えて美貴の後ろにいきふわっと上着をかけてやると
ふにゃっとした顔をこちらに向ける。

寒がりな癖に布団から出たらすぐにアタシのいる部屋までやってきて
薄いシャツのまま椅子に座る。
で、動くのめんどくさい〜と言ってそのままでいるとクシャミ

アタシは毎朝のことだから既に羽織るものを横に待機させて置く
朝の恒例行事だ。

4 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:33
あったぁいーって上着に頬をこすりながらアリガトと
目を猫みたいに細めて言う。

頭をそっと一撫でしてやるとふにゃーとまた美貴の顔がとろける。

この顔がみたいからアタシは毎朝美貴に掛けてやるんだ。
朝の特権ってやつ

けだるいのも、こういうのも朝だから見せてくれるんだ。
美貴は気がついてるかな?

アタシをそうやってやわらかくしてくれる美貴。
きっとアタシも同じようなやわらかい顔をしているのかも
5 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:35
ホットミルクを出してやろうかな。
きっと、またあの笑顔でアタシを溶かしてくれるだろう。
本当に性質が悪いよ。

「よっちゃん?どった?」

寝起きでまだ舌が回らないところも
上着を体に巻きつけ縮こまる姿も
ぴょこんと跳ねた髪も全てが愛しい。

結局はいっつも美貴中心に物事を考えるアタシがいる。
6 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:38
「んー、なんかいいなこーいうの」

そういってホットミルクを美貴に手渡す。
アタシはそのまま美貴に後ろから抱きつく。

「暖かい」
「ん」
ぎゅーと力強く抱きしめて美貴の肩に顎を乗せてみる。

「ねぇ、今から寝ようか」
「今起きたばっかだよ?」
7 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:46
「暖かいから眠くなってきたんだもん」
「じゃあ、離れようか?」わざと言うと
いやと言ってコツンとアタシの頭に頭をぶつける。

鳩尾に打ち込まれなくてよかったなぁと思いながら

「うーん、たまにはこういう休日もよくない?」

「そうだね」
まったり甘えん坊のミキティもいいね。
と言ったら次こそ鳩尾かな?

アタシは美貴を立たせてマグカップを洗いに行こうとすると
あたしの後ろに美貴の体温を感じた。
美貴はアタシの腰に手をまわしがっちりとホールドする。

「動きにくいよ」
「寒いもん、湯たんぽよっちゃんがいないと」

「湯たんぽって…」
8 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:51
アタシが情けないような声で言うと
後ろから美貴がニシシと笑う。

きっと、美貴はいたずらっ子のような顔をしてるのかな
見なくても浮かんでくるあたりある意味ミキティマニア

「ほーら、いくよ」
アタシを押すような形でシンクまで行く。

なんか小さいときにやった電車ごっこみたいだな
9 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:53

「ガタンゴトンガタンゴトン」
「何それ?」
「んー電車ごっこ」

シンクにマグカップを置いたままにする。

「なるほどね、じゃあ次は終着駅ベット?」
「それは、アタシのセリフだし」
といって美貴の手をつかんで方向転換する。
よろける美貴をすかさずフォローする。
10 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:54
「もう、あぶないじゃん」
「だったら、離せば?」
アタシが意地悪く言うと

「ヤダ、絶対ぃ離してやんない。よっちゃんは美貴のものだし」
といって全体重をアタシにかけてしがみつく。
独占欲丸出しのセリフまるでジャイアン
でも、心は繊細なんだよな
11 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:55
「あたりまえじゃん」

「バカ」
二人して笑いながら寝室へ
ガタンゴトンガタンゴトン
そのままベットへ
シングルのベットに二人で入る。
ぎゅっとお互いの体温を分け合う。

お話でもしようか?それとも、起きたときにする?

じゃれ付きながらゆっくりとした時間を二人で過ごす。
最近、忙しかったからこういうのもいいよな
12 名前:「オハヨウ」と「オヤスミ」 投稿日:2007/01/29(月) 14:56
「よっちゃん、おやすみ」


「おやすみ」




13 名前:さんさい 投稿日:2007/01/29(月) 14:57
  


           とりあえず、おわりっとけ
14 名前:さんさい 投稿日:2007/01/30(火) 23:03
 
15 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:06



「ミキティー!」


大声で叫びながら走ってくる20歳

いろんな障害何のその、いとも簡単によける姿はフットサルの勇姿を
彷彿させる。
鮮やかなボディバランスで人の間を縫うように
ここはまるで「吉澤ひとみ」のためにある
と言っても過言ではないくらい華麗だ。

さすがは「フィールドの貴公子」と名高いだけはある。
16 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:10
しかし、哀しきことにここはフィールドでなければお外でもない。
大学のロビーだ。

多くの障害は当たり前
コーンやラインなんてもの。まして、敵選手などは全くいない。

あるのは、観葉植物に掲示板に椅子、極めつけは一般の生徒。
驚いたりしているのはまだいい方です。
怒りますよ。フツーは…

17 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:15
でも、怒っても効果が全くないなぜなら
人の迷惑なんて考えたことあるのかと問い詰めたいくらいの

ごーいんぐまいうぇい

そして、痛いまでのばか

カタカナも危ういくらいのおつむの持ち主
ごーいんぐまいうぇいなんて絶対に書けないだろう。
とくに「うぇい」のあたり
運動神経に比例………反比例している思考力

先ず20歳と言うところから問い詰めたい気もする。
18 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:20
「よんだ?」
と振り返るだけで周囲の人々が黙って
視線を落とすくらいの目つきの悪さ

一瞬にしてミキティと呼ばれた彼女の周りには
ぽっかり大きな空間が出来上がる。

「誰が目つき悪いって?てか、何気によっちゃんひどく言い過ぎ」
と吐き捨てられたその言葉まるで私に対していっているようで………
19 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:23
「てか、梨華ちゃん沈めるよ。」

うわぁぁごめんなさいと謝る…「とりあえず、フツーにして」
「はい…」
なによ。せっかくナレーターらしく頑張ってたのにぃ!

美貴ちゃんはため息を吐く。
「なんで、美貴の周りこんなんばっか?」
肩を落とす美貴ちゃん

「幸せ逃げちゃうよ。」
と言おうとすると一瞬睨まれたのでお口にチャック♪

「石川、イテェよ。」
20 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:32
その間にも、人という人の間をくぐりぬけ華麗に舞うよっちゃん
微妙にフェイントを入れる姿はっきり言って邪魔だ。

そして、3メートル前

よっちゃんの足に何かが引っかかる。
鈍い金属音と大きな音と周りの悲鳴と床を擦る音と共に
まるで、ヘッドスライディングのように私たちの目の前に倒れこむ。

最後の最後で『なぜか』ゴミ箱にひっかかり見事にこけた。
運動神経はいいから綺麗なヘッドスライディングになっているところが
この子の不思議さ。もとい、バカさ加減をよりいっそ引き立てる。

周りは、息を呑む。

誰もが、動きを止める。

静寂が訪れる。
21 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:37
作り出すのがよっちゃんなら壊すのもまた然り
むくっと立ち上がると

「いてぇー、いてぇよミキティ」
と膝を抱えて大声で叫ぶもんだから
美貴ちゃん、試合のときに出してよ。と思うような
マッハを軽く超越するくらいの速さで駆け寄る。

周りも、「何だいつものことか」と行動を開始する。

「いつものこと」で慣れてしまっているこの空間に少し恐怖を覚える。
22 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:41
美貴ちゃんは、よっちゃんの膝をさすってあげる。

よっちゃんはニコニコして美貴ちゃんに微笑む。
美貴ちゃんもなんだかんだで嬉しそう。

すると、こちらをみて目でゴミ箱を指す。

その目は鋭すぎだよ。変わりすぎじゃない?
私が意味がわからずに首をかしげているとよっちゃんに聞こえないようになのか
頭を撫でる振りしてよっちゃんの両耳を手でふさぐ。

すごく、自然な動作でなれてるなぁーとぼんやり見ていた。
よっちゃんは撫でてもらって相変わらず嬉しそうだ。
23 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:45

   舌打ち

「あれ、よろしく」

と短く低いドスの効いた声でいった。
よっちゃんに向いたとたんぱっと、笑顔に戻る。

なぜかだかよく分からないけどやらなければならないという気がする。
いや、やるのが当たり前だったのかもしれない。
むしろ、やらせて頂いて光栄なことなんだ。

よっちゃんがド派手にぶつかって倒したゴミ箱
中身は散乱していて微妙にゴミ箱へっ込んでいる。

なぜか、鼻の奥がツーンとしたけど気のせいだよね?
大急ぎでやる私。
24 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:48
視界の隅では楽しそうにいちゃこらしている二人組。

「どうしたの、よっちゃん?あんなに急いで」
「あのねぇ、ミキティ別れて!」
間髪入れずにあのバカは言い放った。

空気が止まった

誰一人動けないような空気が充満し私は思わず凝視する。

「なんで?」
かろうじてこの重い空気を振動させた。
声としてはとても頼りないような言葉が紡がれる。

25 名前:好き、バカ 投稿日:2007/01/30(火) 23:56
「ごっちんが…」「ごっちんのことすきになったの!?」
言葉を途中でさえぎった。
重い空気を破壊して全てを出すような叫びに近い声で問う。
いや、震えを隠すためだったのかもしれない。

ここまで、取り乱した美貴ちゃんをはじめてみた。

私は、散乱していた空のパックジュースの形が変わるくらい
ギュッと握り締める。

美貴ちゃんが可哀想すぎる。
なんで美貴ちゃんの痛みが私にも伝染したかのように心が…痛い。
26 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 00:00

途中ですが、つづきます。
続かせていただきます。

次でおわればなぁ
27 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:28
 
28 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:28
「ちがうよ。」

「じゃあ、何で!」

「美貴、とりあえず落ち着けって」
「落ち着けるわけないじゃん」

私は、この状況を変えるために声を掛ける。
「美貴ちゃん、とにかくよっちゃんの話きこ?」

私をみて「あっ、いたんだ。」と二人ともが
小さく呟いたのは気のせいだよね。ゴミ箱の片付け命令したよね?
29 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:30
「…わかった」
うなだれて目線は落としたままの美貴ちゃんに対して
よっちゃんは軽く微笑んでいた。

すごく綺麗な顔だからこそこの場面ではとても残酷に見えた。

そして、話しはじめる。

「あたし、さっき講義受けてたんだ。」
30 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:31

31 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:32
「んあー、この授業眠い」
「ってごっちんいつも寝てるから」
「うるさいなぁ後藤は、よしことちがってできるからいいの」
そういって、ノートを吉澤に見せ付ける。

「すげぇー、なんかずるくない?」
「全然」

「いや、ずるい」
「そんなことよりよしこのノートはどうなのさ」

「おっ、見る?今日はちゃんととってんだー」
「めずらしー何故?」
32 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:34
「ん?どういう意味」

「あーごめん『なんで』ってこと」
(なにゆえが分からないって)
後藤は軽く頭を押さえつつノートを見て欲しそうに見つめるので
ノートを覗き込む。

(んー案外まともかなところどころ空白は漢字が分からないのかなぁ?)

その間、吉澤は後藤のノートをみて感嘆の声を出す。

(ん?これって…コムニケート??)
33 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:37
「よしこ、これって…」
後藤は、謎の言葉『コムニケート』の文字を指差す。

「あーこむ、こにゅ、コニュニケート、こにゅにゅけーしょんのこと」
と照れたように頭を掻く。

「よしこ言えてないし、書けてないよ。コミュニケーション」
と言ってもう一回と吉澤に目で言う。

34 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:43
「こみゅ、こににけーしょん?」
と軽く頭を傾けて後藤を見つめる。

「………」
「ごっちん?」
またもや、吉澤の上目遣いの舌足らずにキラースマイルの
三連コンボがみごと炸裂

(んあぁぁっぁーかわいいけど、違うー)

いろんな衝動を押さえて吉澤のノートに正確な文字を書き込む。
吉澤は感心したように移し変える。
35 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:48
「はぁーミキティも大変だ。これじゃあ愛想つかされるよ。」
と小さく言った言葉にも吉澤は大きく反応した。

ミルクティーをミキティーと読み違えるくらいのミキティーバカだ。

いや、本当のバカだった。

「愛想つかされる…

(ってことは、あたし振られるのかぁ?でも、別れたくないし
でも、美貴の為だったら…ん?でも、言うのとはどっちが辛いんだ?)

ごっちん、ねぇ別れを告げられるの告げるのどっちが辛い?」

あまりにも真剣に聞くので後藤も軽く引きながら答える。

「そりゃねぇ…

(たぶん、ミキティの場合死んでも別れないだろうけど
もしもの場合泣く泣くだろうし…)

告げるほうかな?」

36 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:49
この二人は大きな間違いを犯した。
ひとつは、なぜか「愛想をつかされる」という言葉で
別れの場面まで想定して悲しみに浸っているバカと

それに気がつかず、答えてしまった後藤さん。
せめて、省略せずに答えればと思うほどの奇妙なすれ違い。
37 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:53
「ごっちん、ありがとう。あたし、美貴には悲しい思いして欲しくないから
言いに言ってくるよ。あとは、頼んだ。」
と言って清々しいまでの凛とした表情で言い放ち
華麗に出て行くバカ。

「んあ?よしこぉー」
あまりに突然のことに頭が追いつくこのできなかった
後藤の声が虚しく教室内に響くだけだった。

38 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:58
「ってなわけ」
よっちゃんは自信満々に言い放った。
先ず、よっちゃんと一緒に授業受けてた生徒にも同情した。

「おい、バカよしこ」
とのんびり歩きながらごっちんがやってきた。
せめて、走れよと言いたくなったが私は我慢した。
39 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:58
「ミキティ、ごめん後藤の言葉が足りなかった。あとよしこは頭が足りなかった。」
何気に、うまいこと言っているがややこしいことにした片割れである。

「いいよ、いつものことだしまあ、よっちゃん美貴は別れるきないから」
「でも、ミキティが悲しむとこみたくないんだよ!」
男前に言い切るもどこかが違う。気がつけバカ。
40 名前:さんさい 投稿日:2007/01/31(水) 23:59
「よっちゃん、よっちゃんは美貴と別れたいの?」
聖母のように優しく問う。

「んなわけないだろ」
「美貴も別れたくない」


「あっ、」
「やっと気がついた?」
「あー、うん、ごめんなんか回りが見えなくなってた。」
「いいよ、美貴愛されてること分かったし」
今は、周囲が二人とも見えてないけど
41 名前:さんさい 投稿日:2007/02/01(木) 00:03
「マジで?」
「うん」
恥ずかしそうに俯く美貴ちゃんを優しく抱きしめる。

「だからぁ、次そんなこと美貴に言ったら絶対に殺すから」
「分かってるけど、美貴になら殺されてもいいよ。」
と周りが引くセリフをいいってのける。

暖かい空気が二人を包む。
42 名前:さんさい 投稿日:2007/02/01(木) 00:04
間違えました。
バカは二人いました。
こいつら、お互い
好きすぎて、バカです。

「あっ、梨華ちゃんゴミ箱先生に謝っといて」

「えっ…?」
43 名前:さんさい 投稿日:2007/02/01(木) 00:09
終わりです。
報われない毒舌石川さんとバカのお話でした。

が、タイトル間違えました。
「好き、バカ」でした。
一番のバカは自分だぁぁ

44 名前:さんさい 投稿日:2007/02/01(木) 22:52
45 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 22:55

あたしは空を見上げた。
緩やかに流れる雲が形を変えていく。
普段、秒単位のスケジュールの中では見られない光景だ。

時々、前髪を撫でるように吹く風が開放的な気分にする。

「そよ風に寄り添って」って感じ?
どんなんだよ。とあたしはひとり突っ込みを入れる。

つまり、めちゃくちゃ幸せなのか?
46 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 22:56
いやそんなことない。

全てなくなればいい。

あたしのくだらないもの全てが…

あたしは眉間に力がこもっているのを感じた。

空は憎らしいほど晴れ渡っていた。
47 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 22:57
「よっすぃー」
あたしの名前を呼ぶ声が後ろでした。
聞きなれたやわらかい彼女の声があたしを現実に連れ戻す。

空は、いつの間にか変わっていた。

どれだけの時間がたっていたのか正確には分からない。
もう、既に日は落ちかけていて
青と紫と朱の色が空で混ざり合っていた。

深く考え込んでいたのか、もしくは眠っていたのか
よく分からない。いずれにしろ何かは眠ったままだった。
48 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 22:57


その何かがわからない。
49 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 22:58
大事なことのはずなのに分かっているだろう?と
奥底で叫ぶ声を無視した。

ぼんやりしたまま本能のままに動く。
いつの間にか隣にきていた彼女を抱きしめる。

なんで、そんな行動に出たのか分からない。

きっと、夕方特有の冷たい風が吹き付けて寒くなったからだ。
どこからか出てきた言葉にあたしは無理やり頷いた。

だから、彼女の首筋に顔をうずめるのも寒いから

50 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 22:59
「よっちゃん?」
貴女はいつものように苦笑いしているのかな

「寒いから、石川あっためて」

短く言うと石川は何も言わずに抱きしめる
あたしより小さい体で包み込もうとする。

傍からみれば、きっとあたしが縋りついてるように
見えるんだろうな。

石川はあたしの背中をゆっくりとしたリズムで撫でている。

あたしの言いたい事やして欲しいこと全部が分かっているみたいに
自然にあたしの心にスッと入っていつの間にか包み込む。
51 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:00


大人な貴女と子供なあたし

52 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:00
なんか、腹が立つ。

どうしようもなく苦しい
あたしが、石川を守りたい
石川の支えになりたい

相変わらず無言で優しく背中を撫でてくれる。
何を想ってここにいる?なんて、口出来ない。

だから、うちは名前を呼ぶ貴女の名前を
何度も、何度も100万回呼んだらリアルな貴女に届くかな?
53 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:01
「どうしたの?」
春風かと間違えるくらいの優しい声

「なんでもないよ」

「嘘」

「なんでもないってばー」
あたしは笑顔を作る。

「強がらないでよ。よっすぃー」

何で、貴女がクルシソウナノ?
54 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:01
顔を上げてしっかりと石川を見る。

視力でも落ちたかな?何でだろうぼやけて見える。

「泣かないで・・・」

「泣いてない。あたしは泣いてない」
言葉に出すたびあたしの目からは液体が頬を伝う。
「そうだね。」
石川はあたしの手を握り締めた。
その小さな手が暖かくてまた涙があふれそうになる。
55 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:02
「梨華ちゃん・・・」
あたしは思わずその名前を声に出した。
久しぶりに言った貴女の名前

でも、何も言わない。聞こえてなかったのかな?

何かが起きたがっているのが分かる。
56 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:03
「梨華ちゃん」
あたしは、震える声でもう一度貴女の名前を呼ぶ。

梨華ちゃんは真っ直ぐにあたしを見つめる。

漆黒の瞳があたしを見つめる。

梨華ちゃんはあたしの瞳の方が綺麗だというけど
あたしにとっては梨華ちゃんの瞳のほうがよっぽど綺麗だと思う。
だって、貴女の瞳の中には強い意志がある。

あたしの瞳は何もないガラス玉のようだ。
57 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:05
「よっすぃー、ずっとそばにいるよ」

意味はわからない

でも、梨華ちゃんがふんわり微笑む。
だから自然にあたしは笑顔になれる。

この意味を知るものはまだ眠りの中
58 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:08

今日の空はすっごく綺麗だ。
まるで、貴女のようだ。
はじめてあったときはまだ若く午後の空のように二人とも青かった。

時がたつにつれ貴女は眩しく輝いていった。
あたしはまだ青いまま

夕刻の愁いを帯びた切なげな儚さ
いろんな姿に変わって行く貴女に嫉妬した。

でも、気がついたら惹かれていたんだね。
59 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:09
そうだ、そうなんだ。

やっと起きた。やっと目覚めた。
遅くなったけど、夕方過ぎたけど

オハヨウあたしの大事な想い達
60 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:10

今の空は漆黒の闇

貴女はあたしを夜の闇で包み込んでいろんなものから守ってくれる。

素直にさせる。
61 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:13
「寂しいなぁ、やっぱり無理なんか好きだ」

気がついたら言葉が自然とこぼれていた。

あたしの本音を聞いて貴女は目を丸くして驚く。

何だよ以外かよ。あたしも吃驚仰天だよ。

まさか声に出して貴女に伝える日が来るなんて思いもよらなかった。

だって、さっき目覚めた純粋な気持ち

曇り一つないから

あたしは今更ながら恥ずかしくなり石川に背を向けた。
62 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:13
このまま、夜の空に駆け出したい衝動に駆られた。
でも、ここ屋上だそんなことしたら死ぬって
まだまだ、やることしたいことあるし

場違いな考えが頭を占拠する。
63 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:14
後ろからあたしの腰に手を絡めて抱きしめられた。
そして、耳元で囁く。
「やっぱり、よっすぃーには敵わないなぁ」

何言ってるのそれはこっちの台詞だよ。

振り返った。

ん?

64 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:15
あたしの唇に一瞬、柔らかいものがあたった。
梨華ちゃんは瞳を細めてにっこりと笑う。

あたしは、間抜け面だと思う。
そんなこと構わず石川を見る。
石川は後ろを振り返りさっさと歩いていく。

「ちょっと、待て」

あたしは、梨華ちゃんの後を追いかける。
「今の何だよ。」
あたしは声をあげる。
やばい、声が嬉しそうだったかも

石川はそのまま歩いていく。
65 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:16
なんか、むかつく。



だからその背中におもいっきりありったけの気持ちをこめて叫ぶ。
「好きだって言ってるだろうが石川ぁ!」
66 名前:空変わり 投稿日:2007/02/01(木) 23:19
ぴたっと止まる。振り返ると感情を素直に出した顔

「もう、何でこんなに大きな声で言うのぉ、私も好きだよ」
って石川のほうがでかいから

言ってから気がついたのか明らかに動揺している。

あたしは大爆笑した。その場で腹を抱えて座り込む。

「今更だけど。愛してるかも」
「かもって何よ言い切りなさいよ。」

空のようにころころと表情は変わるけど
想いだけは変わるなよ。
あたしは目の前の愛しくてむかつく奴を抱きしめた。
67 名前:さんさい 投稿日:2007/02/01(木) 23:21
終わりです。

かなり、昔の話なんですが大体
石川さんの卒業前をイメージしていただけると嬉しいです。

では、失礼いたしました。
68 名前:さんさい 投稿日:2007/02/02(金) 19:07


69 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:10
きっかけは、なんだったんだろう?
正反対なアタシ達の始まりは
本当に謎の一言に尽きる。

たぶん、はじまりはあなただと思う。


じゃあ、終わりは?
70 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:11
ピンクのマフラーを口元を隠すまで覆うあなた。
ちっさい手を顔の前で合わせて冷え性のあなたは必死で
暖めようとしてたね?

だから、

それじゃあ、キスができないね。

ってアタシが言うと耳を真っ赤にさせた。

かわいい人
71 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:13
いつの間にか溝が出来ていた。
何でだろう?やっぱり正反対だから?

些細なことでアタシはキレていた。

どんなに、突き放しても
どんなに、心と裏腹なことをいっても
どんなに、傷つけても

笑って許すあなたがアタシは嫌いだ。
72 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:18
高校生だったアタシはあなたを何度も裏切った。
今思えばずっと試していたのかもしれない。

一歩先に社会人として自立したあなたに嫉妬していた。

いつかというまだありもしない未来に怯えて
アタシのもとから去っていくかも知れないという
ありもしない妄想に悲観した。

だから、どんな思い出でもいいから
アタシの存在をあなたに残したかった。

醜い歪んだ形ばかりのアタシだった。
73 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:19
それに気がついたときアタシはバカな自分に呆れた。
でも、待っていてくれる。
という自分勝手な考えしかなった。

アタシはごめんとありがとうの言葉を持って
彼女のもとへ駆け出した。

どんなかおをするのかなぁ?
いたずらを思いついた子供のように期待に胸を膨らませ
飛び跳ねる心臓の鼓動に身を任せて
あなたの住むマンションの前にある坂道を全力で駆け抜けた。
74 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:19
表札がなくなっていたんだ。
慌てて、携帯にコールする。
アタシの携帯はあなたからの着信しかないの知ってた?

何回裏切ったて他の子達には一切連絡先を教えなかった。
いっつも、非通知かメール

ウケルデショ?

アタシも今さっき知ったんだから。
75 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:20
耳に届くのはあなたの携帯がもう使われていないことを
知らせる機械のアナウンスだけだった。

もう、あなたの声がこの携帯から流れないのをはじめて認識した。

すべてお見通しで余裕な態度の裏にあるもの気がつけなかった。
あなたはあなただった。
泣き虫でネガティブで脆くて
だから、守ろうと決めたのに

何もかも遅かった。
76 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:20
あなたの本当の姿を見れなかったこと
アタシのくだらないプライドを捨てること
そして、二人がまた出会うこと


既にあなたはアタシの前から消えていた。

77 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:21







78 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:21
現実を受け止められないアタシはなかったことにした。

彼女の存在「石川梨華」なんていなかった。
そうすることで傷を見ない振りした。

高校生の恋なんてくだらない。
そう、アタシは人を愛したことない。

どうせみんな大人になっていくんだ。
そう、いずれアタシも誰かを愛するんだ。


それからの日々は毎日が笑えるくらい単調だった。
79 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:23
どんどん、傷は深くなるのが分かる。

けど、原因は忘れた。
いや、原因などないただの思い過ごしだ。
だって、こんなに苦しいのなんて知らない。

何かが歯止めをかける。

これ以上考えてはいけないって
80 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/02(金) 19:25
アタシの手の中にあったはずの言葉たちは
どこに行ったのだろうか?

もう、誰も答えてくれない。
誰も笑いかけてくれない。

始まりは貴女

終わりは…まだ来ない。
81 名前:さんさい 投稿日:2007/02/02(金) 19:34
とりあえず、終わりです。

けど、たぶん続き物になると思います。

何回で終われるか不明ですが
よろしければお付き合いください。
82 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/02(金) 23:13
よっすぃーと梨華ちゃん、再会するといいなぁ。
いしよし好きなので二人が幸せになってくれることを祈ってます。
83 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:11







84 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:12
時は誰にでも平等でいつの間にかアタシは大学生になっていた。
東京で今はひとり暮らしをしている。

東京に出たのは偶然ただあの町にはもういれなかった。
坂道を通るたびに、公園を見るたび梨華との楽しかった思い出が蘇る。
だから、どこでもよかったそこから離れることが出来たならば

高校のときは底辺をさまよう成績だったから東京の
しかもランクが上の大学なんて無理だといわれた。

でも死に物狂いでやり遂げた
85 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:14
梨華がいたときは勉強なんてしなかった
梨華がいてくれれば何もいらなかったからだ。

こういえば聞こえは言いが結局は梨華を逃げ場にしていたのだろう。
誰もがあたしを見捨ててもきっと梨華だけはアタシのそばにいる
という勝手な思い込み。

もうつながることがないのは分かっている。
だから、何度もけそうと試みた。
しかし、梨華のメモリーを消すことを出来なかった。

彼女の行方は依然、不明のまま
86 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:17
長いのか短いのか分からない3年だった。

梨華のことを思い出すたびまだ胸は痛むけど

まだ、少し逃げているけど
今はそれに向き合えるような大事な人が出来そうなんだ。
いや、もうできているんだ。
87 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:17
 






88 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:17
「よっちゃん、今日は美貴の家に来るの?」
「うん」
そう言って、アタシは美貴のカバンを持つ。
「ありがとう」

そういって、微笑む彼女

梨華の姿と重なるときが何度もあった。
すごく悪いと思うがどうしても、重なってしまう。

全く似ていないのに、


美貴は強かった。でも、すごく弱かった。
うまい表現はなかなか出来ないが美貴は形変えるのがとてもうまいんだと思う。
つまり、アタシに気がつかれないように甘えてくれたり、甘えさせたりした。

美貴といると自然体で入れて、とても楽だった。
89 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:20
「ねぇ、今晩は何がいい?」
「っていうか焼肉以外に選択肢ないでしょーが」
「いやーそんなことないよ。」
「じゃあ、野菜炒め」
「分かった。鉄板で作ろう。じゃあ、肉も買わなきゃ」
「ほらー、何でそうなるんだよ。」
とふざけあいながらも笑いあう。

空いている手は美貴とつないだままだ。

昔は、公の場では絶対にこんなことしなかった。
梨華はずっとしたがっていたが子供だったアタシは恥ずかしがって拒絶した。

90 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:23
「よっちゃん?」
顔に出てたのか美貴は不思議そうな顔をしていた。

悪い癖だ美貴といてもすぐに比較してしまう梨華と…
アタシは思考を中断させて美貴に覆い被さるように後ろから抱きつく。

「なんでもないよ。また、カルビかなぁって思っていただけ」
美貴はくすぐったそうに首を縮こまらせていた。
「いいじゃんよぉ、じゃあ、今日はホルモン系でいく?」
二人で、笑いながらはしゃぐ。
91 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:26
すごく甘い空気なんだろうなとアタシは冷静に認識していた。

たぶん、恋人特有の幸せな甘い空気

でも、一回も言葉で確認したことはない。

恋人と呼べるのか?でも、確実に友達じゃない。
だから、大事な人。なくてはならない人。

美貴はアタシに人の為に何かするという
喜びや楽しさ、大事なものを教えてくれた。

美貴自身は分かってないだろうけどね。
92 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:27
美貴はこんなアタシをどう思うのか聞いてみたかったが
もし、「恋人だ」と自信を持って言われたときがどうすればいいのか
分からなかった。

でも、「友達」と言われて納得できるほど大人ではなかった。

93 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:30
「さてと、食欲も満たされたし、今度は性欲のほうを満たす?」
瞳は熱を孕んでいた。

さっきまでの子供のように肉を食べる姿はない。

アタシは一回だけ頷いてそのまま美貴を押し倒す。
美貴の熱がアタシにも伝染する。

いつものことだ。

無言で美貴を責め続けるアタシに感じ続ける美貴

おかしな光景なんだろうがアタシも美貴もとっくの昔に
正常な感覚は麻痺していた。
94 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/03(土) 13:32
この関係にそろそろ終止符を打たなければ
アタシはそう決意した。
良くも悪くもどちらに転ぶかは分からない。
全ては美貴しだいだ。

そろそろ、向き合うべきだよな

その行為が終わった後に裸のままの美貴を抱きしめたまま眠った。
95 名前:さんさい 投稿日:2007/02/03(土) 13:36

終わりですが、まだ続きます。

>名無し飼育様
ありがとうございます。

どうなるかまだ分かりませんが
もしよかったら最後までお付き合いください。

96 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/04(日) 23:49







97 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/04(日) 23:53
とても、静かな休日の朝

美貴はまだ眠っていたので起こさないように抜け出して
シャワーを借りた。

その間も美貴はずっと眠ったままだった。
アタシは、ふてくされてテレビをつけた。
ちょうど、子供向けの戦隊モノの番組が流れていた。
だから、わざと大声をだしてかっけーとか言ってみた。

「おはよー、てかうるさい」
美貴は寝癖をつけたままでだるそうにしている。
「はよ。いけぇーぶったおせ!」
「てか、よっちゃん何歳よ?」
美貴はアタシが見ていた番組に気がついて呆れた声で
朝一のツッコミを入れる。

「いやぁー、かっけーじゃん?」
98 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/04(日) 23:55
「じゃあ、美貴シャワー浴びてくる。」
美貴はそのまま半回転して風呂場に向かった。

「えっ、美貴ちゃんシカト?」
アタシは見えなくなった美貴に聞こえるように言う。

「うん、シカト」
美貴はドアを隔てた風呂場のほうから律儀に返事を返す。
アタシは苦笑したままテレビのヒーローを今度は静かに見た。


99 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/04(日) 23:59


「なぁ、美貴って何で学年を一個落としてまで今通ってる大学に来たの?」
朝食のパンをかじりながら美貴に聞く。

美貴は少し驚いた顔をした。
美貴の過去とかあまり聞いたことないよな。

「いや、なんか美貴のことあんまねぇ…」
アタシはバツが悪くなり少し目線をずらす。

「もしかして、やっと美貴に興味湧いたか?照れちゃって〜」
テーブルを乗り出してアタシの頭をいい子いい子と言いながら撫でてくる。

「う、うるへー」
顔に熱が集まるのが分かり余計に熱くなった。
100 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 00:00

そういえば、梨華のことも結局はあまり知らなかった。

ただ、東京の本社からあの町に研修のためきたとか
アタシより学年が一個上とか

何の仕事をしてるかも今までどうやって生きてきたとか
アタシから梨華のことなんて知ろうとしなかった。
全部梨華が話す内容から予測していたからもしかしたら
全部うそかもしれない。

まあ、梨華に限ってないと思うが…
101 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 00:03
「よっちゃんがいたから」
さっきの空気はガラっと変わり真剣なものに変わっていて
思わずアタシは美貴を凝視した。

「なんてね。いやぁ前の大学、全然美貴に合わなくて
それに、こっちの方が、ランクが上の大学ジャン?
だから、美貴的にはどっちでもよかったんだけど
まあ、のちのちのこと考えて就職に便利なこっちに来たわけ。
同じなら楽しんですごしたいジャン?
それに、よっちゃんさんと出会えたから
結果オーライ通り越してハッピーって感じ?」

美貴はそう言って牛乳をいっき飲みした。

ガンッというコップをたたきつける音がアタシの頭の中で反響する。
102 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 00:05
美貴の理由は間違ってはないし、それはとやかく言うことじゃない。
でもアタシが見てきた美貴は安易な理由で行動しないと思う。

だから、前の大学にいっていたのもきっとそんな理由じゃないはずなのに

それに、何かをはぐらかそうとしている。

根拠や証拠はないがアタシの勘がそう訴えかける。
何かがずれているような気がしてならなかった。

だが、あえて触れなかった。
これ以上言うと何か大きなものがずれてしまう気がした。
103 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 00:06
「そっか、まあ美貴ならどこでも就職できそうだよね」
「人当たりいいもん」
「じゃあ○○コーポとか」
アタシは大手の会社の名前を口にした。

確か、アタシの住んでた町にもあったよな
本社は確か東京…
104 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 00:06
なぜだろう。何で気がつかなかった。
アタシの住んでいた町は小さく会社などは少なかった。
梨華は確か研修であの町にきていた。

梨華の住むマンションの近くにあったのは……その大手の会社
よく考えたら梨華のいたマンションも確か会社の寮みたいなとこといっていなかったか?

なぜだろう簡単なことだ。
高卒と聞いていたからそんな大手の会社の勤務だとは思わなかった。
でも、もしかしたら…
105 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 00:07
美貴の表情は固まっていた。
「どうした?美貴ちゃん?」
アタシはやわらかく聞く。

「よっちゃん、美貴、よっちゃんが好きなの、誰よりも」
美貴の表情は今まで見た中で一番、何にもなかった。
真意が全く読み取れなかった。
美貴の心が宙に浮かんでいて掴もうとしたらふわりふわりと手の中をすり抜けるよな感覚。

でも、アタシたちの関係の終着点。

ずるいアタシは分かっていながら困った顔浮かべていた。
「どうしたの?」

「よっちゃんはずるいよ。美貴は、好きだから…」

美貴の姿を見て何もいえなくなった。
106 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 00:07
昨日の決心は確実に揺らいでいた。

見え隠れする過去。まだ、追い求めているアタシ。

「分かった。けど、答えは今は出せない。」
残酷なアタシ。美貴を追い詰めたのはアタシ。
突き放すのもアタシ

「待ってるから」
美貴は一言そう告げた。

107 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 00:08
気がつくとアタシは自分の部屋にいた。

いつも休みの日は美貴と一緒にごろごろしているから
なんか、隣が淋しく思えた。

美貴のことも気にはなったが今はそれどころではない。
アタシのためにも美貴のためにもそして…

アタシは先ず、地元の友達に久々に連絡をした。
梨華のいたマンションの会社を調べるために
108 名前:さんさい 投稿日:2007/02/05(月) 00:10

更新終了です。

気がつけば、想定外に長くなりそうです。
頑張れ、よっちゃん

はい、続きます。
109 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/05(月) 01:18
よっちゃん動き出しましたね
研修で来ていたんなら梨華ちゃん東京に居る可能性大ですね、
頑張って探し出してよっちゃん。
110 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:08








111 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:14
あっけなく、分かった。
簡単すぎてアタシは自分の頭を恨みたくなった。

アタシの予感が正しかったのだ。
友達は即答で答えてくれた。
逆に「よしこ、ばか?てっきり知ってるのかと思った。」
と呆れきった声で言った。

最後に、「変わったね。もうちょっと早く頼れ」といわれた。
アタシは素直に感謝を伝えて電話を切る。

電話の先で驚いた顔をしている友人の顔を思い浮かべて
アタシは一人微笑んだ。
112 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:19
間違いない、梨華はあの会社の社員だ。

でも、分かったところで梨華を見つけることは出来るのだろうか?
東京にいるのか?辞めているかもしれない。

でも、なぜこんなに梨華の残像にすがっているのか
アタシ自身も全く持っての謎だった。

振られたから?    しょうがないことだ。
逃げられたから?   何も言わずに、
より戻したいから?  身勝手極まりない。
けりをつけたいから? 美貴の為に

どれもが、正解だ。
でも、アタシ中心のエゴイズムの塊

頭を掻き毟る。
113 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:26
大きく息を吐き出す。
そして、壁に向かう。
手をつき足を振り上げ倒立。

結局はアタシに考えることは似合わない。
梨華にもし会えたら…その時

足を下ろして元の体勢に戻るとアタシは背伸びをする。
114 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:30
今日はもう考えるのはやめだ。
そうなると、眠気がどっと襲ってきた。

とりあえず、今日の成果梨華のいるだろう本社の住所をメモった。
なくさないようにハンガーにかかっているジャケットの
ポケットに紙を入れた。

そして、アタシはベットにダイブした。

いろんなことが起きすぎた。実際はまだはじまりだけど。
やっと、動き出したアタシの時間


いけねぇー明日、講義始めからだ。
まあ、いいか。

アタシの脳がまだ他にも意識がいくことに感心しながら
ベットの柔らかさに順応に意識を落としていった。
115 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:31









116 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:32
朝、けたたましくチャイムの連打音が響く。
なんだよーゲーマーかよ。
アタシはのそのそとゆっくりドアをあけた。

残念ながら、ゲーマーではなく不機嫌そうな美貴が
ドアの前に立っていた。

まさしく、仁王立ちで
117 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:36

「よっちゃん、遅い。なんで寝癖ついてるの講義始まるから準備」
美貴は全く変わらない表情で毎度のことながら
だるそうに寒いといいながら腕を組んでいた。

「えっ、マジ今日行きたくない」
アタシの口からは習慣になっていた言葉がするりとでた。

「いっつもじゃん。いいから、準備」
「分かりましたから。踏まないで、足」
アタシは指で踏まれてる足を指しながら情けない声で言った。

「まあ、ヒールじゃないだけよくない?
じゃあ、美貴ベットで待ってる。あー寒い寒い」
といって勝手に上がりこんでベット中に潜り込む。

テレビをつけた音もした。
118 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:38
「おい、ミキティ」
「準備」


「…はい」
やっぱり、美貴は美貴のままだった。
変に気を使われてないからアタシも同じような態度をする。

暖かい、暖かいと言う声が聞こえたが気にしないようにしよう。

アタシは身震いをしてさっさと冷たい服に袖を通す。

119 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:38
「はい、美貴ちゃんさん行きますよ」
そう言って布団を剥ぎ取ろうとすると布団にくっついてきた。
美貴が短い悲鳴をあげる。

「うぉーあぶねぇ」
「よっちゃん、馬鹿力」
「いや、美貴のほうがおかしいだろ!」

まるで、すっぽん。
120 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:42
「ていうか、速すぎじゃない」
「そりゃあ3分で準備しましたから」
飛び切りの笑顔で言う。

「お手軽だな。相変わらず」
「だって、めんどうじゃねー?」
「でも、よっちゃんもさぁ、一応乙女なんだしもっと気を使おうよ。」
「いや、30分も一時間もかけてたら遅れるし、美貴寝癖」

「え、嘘どこ?」
美貴は頭を撫で付けて寝癖を探す。
「嘘」

「よっちゃん!」

美貴が軽くアタシの肩をたたく。

121 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/05(月) 23:42
昨日のことは二人とも触れなかった。
確信を撫でるには臆病すぎる二人。
アタシは目を細めて美貴を見た。

目の前の彼女を

そして、変わらないはずだった日常の幕開けだった。
122 名前:さんさい 投稿日:2007/02/05(月) 23:50
更新終了です。

>名無飼育さん
レスありがとうございます。
これから、よっちゃんには頑張っていただきます。
えーホントに(笑)

それでは、次回
123 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/07(水) 01:08
ミキティとは友達に戻れそうな感じだね。
地元の友達ってよしこって呼んでるからごっちんかな?あっでも今だとまいちん?
がんばれ!!よっちゃん。
124 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/07(水) 23:41







125 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/07(水) 23:42
「よっちゃん、ごめんけど一週間くらいうちに来ないでくれる?」
美貴はついでとばかりに話の途中にさらっと言った。
そのあと、すぐにカレーを食べ始める。

広い食堂の中アタシだけが取り残されたように固まった。

126 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/07(水) 23:45
「えっ、何で?」
やっと出た言葉は間抜けすぎて情けなくなった。

やっぱり、もとに戻れないのか。
いろんなマイナスイメージが頭を駆け抜ける。

目線をそらした先の窓からは昼なのに暗い光が差し込む。

濁った空はまるでアタシの心を映したようだった。
127 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/07(水) 23:48
「高校のときの友達が泊まりに来るらしいの」
「あっ、そうなの。」
美貴は淡々と言った。
だから、アタシも出来るだけ冷静に返す。

「もしかして、美貴が浮気でもするかとおもった?」
「いや、違うくて」

「大丈夫、美貴にはよっちゃんしかいないから。」
本気とも冗談ともとれる口調でアタシに仕掛ける。
きっと、試している。

卑怯なアタシは肯定も否定も出来ない。
128 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/07(水) 23:51
「いいよ、1週間戦隊モノのDVDずっと見てやる。」
笑いを含ませながら重くならないように変える。

「えー、何歳だよ。てか、痛いから」
美貴はそのまま話の流れに乗ってくれる。

正直、怖い。何でだろう。
何を言っても今の美貴には響かないみたいだ。
ちがう、アタシがやましいことがあるからだ。

笑いながら、腹の探り合い

交錯する視線

すっと、美貴は視線を外す。
129 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/07(水) 23:53
「じゃあ、美貴もう行くね。
なんか、友達仕事場から直で来るから
美貴が料理しなきゃいけないみたいなの。
よっちゃんこれ、傘持っときなよ。」
今にも振り出しそうな空を見上げながら言う。
そして、美貴は今日の朝から持っていただろうアタシの黒い傘を手渡す。

美貴は一人先に背を向けて歩き出す。


130 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/07(水) 23:58
アタシは傘を持ったまま突っ立ていた。

さりげない美貴の優しさがとても嬉しくて
さっきまでのマイナスな自分に腹がたった。

違う。
美貴に感謝しなきゃ。
そう、美貴から教えてもらったこと
人の立場にたつこと。感謝すること。

こんなときアタシだったらぶっちゃけ美貴みたいに振る舞えない。

だから…
「ありがとう!美貴」
アタシは、美貴の後姿に向かって大声で叫ぶ。
美貴は片手をあげて振り向かずにそのまま姿をけした。
131 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/07(水) 23:59
「あー、振られちゃった。」
軽く言葉にだすが、相槌を打つ人がいないことに気がつき苦笑した。

とりあえず、当てもなく外に出た。
これから一週間暇になりそうだ。
ほんとにDVDかりにいこうかな?って無駄にしてる場合じゃない。
132 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/08(木) 00:00
意気込んでジャケットのポケットの中の携帯を取り出そうとすると
何か、紙のようなものがあることに気がつく。
取り出して広げると昨日調べた梨華の会社の住所だった。


幸い、一駅くらいしか離れていない。
雨もまだ降りそうには無い。
アタシの足はメモの住所へと向かっていた。
133 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/08(木) 00:05
更新終了です。

>名無飼育さん
友達はぶちゃっけ決めてません
余力があればそこまで話を絡めたいかな?

どうなるんでしょうか?
まだ役者はそろってないんで頑張ります。
134 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/02/08(木) 12:49
いしよし・みきよし好きです。
切なくていい感じですね。応援します。
135 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/08(木) 23:38






136 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/08(木) 23:41
ついたはいいが、どうするか途方に暮れる。

あまりにも大きなビル
もう一度会社名と住所を確認する。
間違いない。

てか、こんなとこに梨華がいるのか?
あいつは何もんなんだよ。

開いた口は塞がるどころか開く一方
137 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/08(木) 23:45
既に勤務を終えた人たちが入り口からちらほらと出てきていた。

来たのはいいがどうすることも出来なくてただ立ち尽くすのみ
周りは、スーツやスタイリッシュな服装。

アタシのカジュアルな服装は明らかに場違い。
同じ日本人なのに異世界に迷い込んだ気がした。

138 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/08(木) 23:48
ボーっとたってると雨が降ってきたので黒い傘を差した。

そういえば、梨華は絶対にピンクの傘だったよな。
社会人の癖に
しかも、どっちかといえば服装もまだアタシのほうがセンス
マシだったし、まあ自称だけどさ

ピンクばっか好きでそれだけで店が開けそうだったな
アタシが胸焼けするって言ったらきれて…

アタシは思い出して頬が緩む。
139 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/08(木) 23:52
って、なんでそんなこと思い出してんだよ。

美貴に後ろめたい気持ちが募っていく。

普通、元カノとかに会われたくないよな
って、よく考えたらこれって軽いストーカー?

うえええぇぇぇぇー

やばいってアタシ。

ごめん、美貴アタシ捕まるかもと心の中で謝る。
って違うって落ち着けよアタシ。
140 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/08(木) 23:56
冷静になってみるとアタシ自身の行動に呆れてしまった。
こんなに後先考えず行動するタイプだったっけ?

百面相をしながらも目線はずっと入り口
期待せずに入られないが、別の部分は帰りたがっている。

葛藤を続けたまま足はそこから動かず
目線も動かない。

あー、もう帰ろう。
心の中で、既に48回は繰り返していた。
141 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 00:02
視線の先、入り口からは止め処なく人は出てくる。
次々に開かれる傘
まるで、花びらのように咲き誇る。

パッと咲いた淡い桜、鼓動が早くなるのが嫌でも分かる。

彼女のカラーピンク

黒、青、赤、水色さまざまな色彩の中でも一番鮮明に思い出せる色。


アタシはとっさに身を隠す。
傘を深く差して相手から顔が見えないようにする。

目を凝らして桜井の傘の持ち主を見る。

女性だ。
しかし、髪型はショートでスーツを綺麗に着こなしていた。

142 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 00:05
記憶に残る彼女はロングの髪。

「そう、うまくいくわけないかぁ」
アタシは、誰にも聞かれることないが声に出していた。
その音色には、落胆と共に安堵が含まれていた。

なんともいえぬ感情が支配する。
熱だったんだ。アタシはそっと笑う。

何に対してかは分からない。
143 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 00:08
帰ろうと体を半回転させた。
でも、一歩は踏み出せなかった。
みたい。彼女と同じ桜色の傘を差す女性を

興味と暇を少しでもつぶすためという口実が
アタシの足をその場所に留まらす。

もう一度振り返り子供のようにわくわくしながら
そのまま黒い傘を深く差して待つ。
 
きっと、若いんだろうなぁピンクだし、
予想しながら待つ。案外いい暇つぶしかも

アタシと彼女の距離が短くなっていく。
144 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 00:09
至近距離から、横顔が見えた。

彼女はこちらには気がつかずにそのまま駅に向かう
道に歩いてどんどんアタシから離れていく。

差していたくらい傘もあたしの手から離れた。

間違いはなかった。
あの、目、鼻筋のほくろ、口元、指も
記憶に残る彼女だった。
145 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 00:09
でも、やはり昔よりは洗練されていた。大人の女性になっていた。
服のセンスも変わっていた。
短くなった髪と服が凄く似合っていて胸が痛んだ。

興味で残るんじゃなかった。
会ったときのこととか全て吹っ飛んだ。

会って、話して、笑って、許してもらって…
ムリだ。彼女の顔が忘れられない。
146 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 00:12
出会ったころを思い出す。

すぐに、恋して
その間も他の子と遊んでたアタシ
その間ずっと黙認していたアナタ

短い華の命ようにパッと咲き誇り
そして忽然と消えた桜色。

どうして、アタシと付き合ったの?
疑問は虚しく、周りの音にかき消された。

冷たい雨が項垂れた頭に降り注ぐ。
147 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 00:18
無性に美貴に会いたくなった。
すっごい寂しくて凍えそうだ。
ガタガタ震えてるのは雨のせい?

けど、美貴に会いに家に行くのは我慢だ。

長い

明日大学で会えるカラ

一週間の始まりと共に
アタシの心は最低まで突き落とされた。

後ろ姿の彼女に問う。あなたは今は誰を見てる?
今から、嬉しそうな顔を抱えて誰に会いに行くの?

何も、出来ないアタシはそのまま走って家に帰った。
148 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 00:25
更新終了です。
やっと、そろった?役者さんです。

>134 名無飼育さん
ありがとうございます!
そう言っていただけると張り切ります!

ほんと自分もいしよし、みきよし好きなんで
…困りますよ(苦笑


149 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:11





150 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:17
携帯のアラームで目が覚める。
今日は嫌にアラームの軽快な音楽が頭に響く。
手探りで携帯の掴んでアラームを止める。

ベットの中から起き上がろうとするがなかなか起きあがれない。
なんか、ダリィ、美貴じゃないけどだるい。

目の前に靄がかかったように思考が全く定まらない。
昨日、久々に走ったから疲れたんだろうか。

体に鞭を打つように無理やり起き上がり顔を冷水で洗う。
151 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:24
食欲はあまり湧かないのでインスタントのコーヒーだけを飲む。
身支度を簡単に済ませると、いつも美貴がくる時間より余裕があった。
テレビをつけて朝の情報番組をBGM代わりみ待つ。

天気予報は今日一日雨だった。
窓の外はやはり昨日と同じで暗く。
雨の音が断続的に聞こえた。
152 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:26
時計の針はどんどん進んでいくが一向にドアの開く音はしない。

そこで、アタシは気がつく。

そっか、美貴のとこにはいま美貴の友達がいるからアタシのところに寄らずに
大学に行くとか昨日言っていたっけ、美貴がいることに慣れてい過ぎた。

玄関から一人で出ようと傘を捜す。
あれ、いつもの傘が無い。
そっか、昨日どっかにやったなぁ。
仕方ないので、前に買っていたビニールの傘を取る。

久しぶりに一人で大学に向かう。
その間も思考はいつも以上に定まらなくて目の前がぼんやりとしていた。
153 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:30
駅の構内に着くと美貴を見つけた。

下を向いて、手をポケットに突っ込んで寒そうにしていた。
待っててくれたのかなと少し嬉しくなった。

アタシは、気が付かれないようにそっと近づく。
何か、歌を口ずさんでいるようで全く気が付いてない。
154 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:31
「おはよーミキティ」
アタシは美貴の耳元で言う。

小動物のように震えて、目線を上げた。
「よっちゃん!びっくりしたー」
美貴はそう言って安心した顔であたしを見る。

「今日も、可愛いよ。美貴ちゃん」
あれ?何でこんなこといってんだ?うーん、なんか分かんない。

「はぁ!よっちゃん大丈夫?熱でもあるんじゃあ?」
美貴はおでこをくっつけてアタシの体温を測る。
アタシは無意識のうちに美貴に軽くキスをしていた。
155 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:32
「よっちゃん!?」
美貴は驚いた声を上げた。

そりゃそうだ。ここは公衆の面前だって、普通はしないから
と美貴の専売特許のツッコミが頭では分かるが残念なことに体が言うことをきかない。

そして、アタシはその場に倒れた。
意識はあるが、どうも体が動かない。ホント、ダルイ。

美貴の心配そうな声が遠くから聞こえる。
156 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:33
いやだ。行くな、声にならない声
必死に美貴のコートの裾を掴もうとするが届かない。

行くな、行くな、行くな?
あれ、アタシは誰に言ってるの?

分かんない。

すると、あたしの手に暖かい手を握る感触がした。
そのまま握りしめる、離れていかないように
握り返してくれた、強く。

さっきまでの不安は治まり、とても穏やかな気持ちが訪れる。
157 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:33
アタシは目を閉じた。
縋るように抱きつくと甘い香りがした。
一人じゃないこと証明してくれる気がした。

今、横にいるのは美貴なんだ。他の誰でもない美貴。

「よっちゃん、立てる?」
「んー、とりあえずは」
アタシは美貴の肩を借りてタクシーに乗り込む。
美貴も一緒に乗りテキパキとアタシの家の住所を告げる。

あまり記憶に残ってないがタクシーに乗ってる間ずっと美貴にしかられた気がする。
でも、ずっと手を握っていてくれた。
158 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:34
家に着くと美貴はアタシを寝かす。
「たくっ、心配かけさせんな馬鹿」
その言葉とは裏腹に美貴はとても心配そうな目だった。

「ごめん」
アタシは、謝ることしか出来ない。

「もう、何やってたんだよ。昨日、服とか濡れっ放しのものあるし
ハイこれ熱測るから。あと、ご飯は?薬ってどこだっけ?ていうか、病院行く?」
矢継ぎ早に来る質問に今のアタシは時間をかけなきゃ答えられない。
159 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:37
「ん、朝は食ってない。」
「うん」

「薬は、そこのタンスの上から二つ目に半分優しさのやつがある」
「あった。あった。半分優しさの奴でも、これって頭痛じゃない?」
「そう?でも効くよ。」
「いや、普通に熱さましあるじゃん」
「それ、粉だからヤダ」
「子供か」

ぴぴっと電子音が鳴るとアタシが見る前にすばやく美貴が取り上げる。
「あー、38度9分、やばいねぇ」
「マジで?」
すると、目の前にデジタルの表示を見せると間違いなく記されていた。
160 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:43
「薬飲んで熱下げよ。どうせ、病院行きたくないでしょ?」
さっきの質問の時あたしの顔が渋ったのをちゃんと見ていたらしい。
1回頷く。

「よっちゃんは寝てな、美貴がやったげるから安心しろ。」
「うん」
「なんか、いるものある?」
「えーと、戦隊モノのDVD。だって寝てるの暇だし」
「子供か。てかおとなしく寝ろ」
美貴は苦笑してラックからDVDを取り出す。

「じゃあ、ちょっと向こう行く」
といって隣のキッチンに行く。


161 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:49
凄く美貴の優しさが心にしみた。
なんだかんだでちゃんとしてくれている。

DVDのタイトルがあらわれた。
アタシは叫ぶ。
「ミキティーなんでホラーやるんだよ。」
確かこれって美貴が見たがってたホラー…鬼だ。

「よっちゃん熱上がるよ?」
「って、上げてるのは美貴のせいだろ」
アタシはテレビを指して切れと合図する。

「はい、薬。まったく軽いジョークだって」
いや、笑えないから。
「アタシが元気なときにやって」
「ホントに?よっちゃん約束だよ。」
なんか、はめられた?
162 名前:残像…消えないで 投稿日:2007/02/09(金) 23:55
おとなしく、薬を飲む。
これ以上なんかしたら絶対もっとひどいことされる。
危険のサイレンがなりっぱなし。

すると、薬のせいかとても眠くなる。
うっすらとした中でずっと美貴が手を握っていてくれた。

なんで、意識がなくなるときにばっかり優しいんだよ。


アタシは離れないように強く握って眠りに落ちた。
163 名前:さんさい 投稿日:2007/02/09(金) 23:56
更新終了です。

まだ、続きます。
164 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/03/26(月) 03:33
今日一気に読んだのですが、続きがきになって眠れません
作者さん続きをオネガイシマス
165 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/08(金) 04:53
一気に読んだらちょっと泣きそう…。。。
続き待ってます。
166 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/24(土) 16:46
全体に漂う乾いた空気が好きすぎます
この人たちの結末を見届けたい
作者さん、待ってます
167 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/11/27(火) 04:21
気になる作品でしたので今もまた読み返しました。
つづき待ってますので作者さんせめて生存報告をお願いします。

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