desire
- 1 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/07/24(日) 09:46
- 前スレッドはこの板にあります。
300超えていた事すら忘れて新しいスレ立てました。
同じく短編中心に書きたいと思います。
- 2 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/07/24(日) 14:19
- がんばって
- 3 名前:sky and sky 投稿日:2005/07/29(金) 17:05
- でっかい入道雲が窓の外を通り過ぎた
低く飛んでる いや、別に飛んでるわけじゃないけど
あたしにはなんとなくそう見えたと論するほど、彼女はあたしをバカにする
視界から消えてしまった入道雲を追いかけてベランダに出た
どうせすることもないし、テレビを消して真夏を感じるように
容赦なく照りつける太陽なんてどうでもいい
暇人にはもってこいのネタが、入道雲か
- 4 名前:sky and sky 投稿日:2005/07/29(金) 17:06
-
「おー、でけぇ」
むくむくと膨らんだ雲を見て思わずそう口にした
たぶん後であたしを見てるヒトは彼女しかいない
どうせあたしはガキだでもこういうのって当たり前の行動だと信じたい
あ、これじゃまるで必死に言い訳してるみたいだな
がらっ
「あつー…」
「美貴ちゃんさん携帯持ってきて」
「ヤ。美貴も見る」
ものすごいいきおいで、入道雲が消えて行った
ふはは、と大笑いするあたしに彼女は不服そうな顔をして遠くへ行ってしまった雲を睨んだ
雲にも感情があるんだね
そう言ったら、背中をばしんとぶったたかれた
- 5 名前:sky and sky 投稿日:2005/07/29(金) 17:06
-
「あーあ、撮りのがした」
「ミキは見ても無いけど。生きてもないくせに生意気」
「雲が?」
「うん」
べっと舌を出して、せめてもの反抗をする
雲はただそれを見下ろして、夏の空をゆっくりと散歩しているようだ
生意気なのはどっちだろーね
ふふ、と微かに笑うあたしに、彼女は気付かないままベランダのてすりを離さない
「生きて無いモノの方が、よっぽど意思があるようにおもうけど」
こんな難しい事考えられたのは、勝手に格好つけたかっただけだから
普段バカにされてばっかだから
ちょっとでもカッコつけたくて
- 6 名前:sky and sky 投稿日:2005/07/29(金) 17:07
-
「よっちゃんさん」
「はぁい」
「キモイ」
その一言で、あたしは美貴に一本取られてしまった
キモイ、ね
どっかの黒い女と一緒にされちゃ、それは認められないなぁ
あいつ、日焼け止め塗る意味ねーよな
なんてムダな事を考えていると、また大きな空に出没する大きな入道雲
食ってみてーなぁと言いたかったけど、冷たい目で見られるのが嫌だったからやめた
「今度こそ」
そう言って微笑みながら雲を見つめてる彼女を見て、すきだと思った
おしまい。
- 7 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/07/29(金) 17:08
- スレ立ててはじめての更新。どうでもいいんですけどね。
みきよしでした。
>名無飼育さん
ありがとうございます。がんばります。
- 8 名前:作者 投稿日:2005/07/29(金) 17:10
- 色じれにて握手会があるそうで。
ちなみに作者は無論美貴様目当てで応募します。
どうでもいいけどね。
- 9 名前:ピース 投稿日:2005/08/07(日) 18:45
-
「ほら、パズルのピースって、相棒がいないと形にならないワケでしょ?
だったら、アタシとみきたんだってそうなんだよ」
「ぶへっ」
- 10 名前:ピース 投稿日:2005/08/07(日) 18:45
- 絨毯の上に口から吹き出したチューハイがばらまかれた
さっきの言葉とは裏腹に、亜弥ちゃんは怪訝そうな顔をして雑巾でそこを拭きはじめる
残りの酒をぐびっと飲み干すと、なんだか味が変わっていた
不味い
「きったねーみきたん」
「どっちがっゲホッ」
気管に酒が入ってしまった
- 11 名前:ピース 投稿日:2005/08/07(日) 18:46
- オレンジジュースだけを飲んで彼女は酔ったと言う
ミキはまだ1缶目のチューハイを飲み終えただけでまだまだだった
つまみに一切手を付けないから、そろそろヤバいかも
はぐらかすように日付けが変わる時計を見ているとやっぱり視線を感じる
怒ったな
「みきたん」
「うん」
「あたしの相棒ピースでしょ」
「そう…ねぇ」
「ずるい。もっとないの?言葉」
- 12 名前:ピース 投稿日:2005/08/07(日) 18:46
-
相棒ね、相棒
それだけを言ってあげると、亜弥ちゃんは納得していないような顔をする
酒を飲めないその相棒は新しくあけたジュースを口にした
まだ未成年のくせに色気づいた事をしたりする
その反面、絶対に酒には手を出さない
カチリ
「顔まっか」
「んー」
「サル」
「亜弥ちゃんに言われたくない」
「ゆったな」
時刻、日付けは変わった
ミキの相棒ピースは唇を一度だけ舐めて、妙に色気づいてた
fin.
- 13 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/08/07(日) 18:47
- 超短編。結構前に書きました。あやみき。
- 14 名前:magic A/M 投稿日:2005/08/08(月) 23:53
-
放り出した手のひらに触る、やや堅いスポンジのようなもの
半寝状態でも、これは危機だと感じる事ができた
がばっと飛び起きて、イタズラの犯人にデコピンをかました
「なにすんの」
「いったぁぁぁ」
「バカ、これ油性じゃん」
「マジックだもん」
「バカ」
- 15 名前:magic A/M 投稿日:2005/08/08(月) 23:54
-
そう言ってもういちど、軽く彼女の頭を小突いた
黒いマジックはミキの掌にしっかりと黒い証を残している
大文字で書かれた英語のモジを消そうと、テーブルにあった布巾を手に取る
が、落ちない
「どうしてくれんの。落ちないよコレ」
- 16 名前:magic A/M 投稿日:2005/08/08(月) 23:54
- 「つーん」
「…亜弥ちゃん。ミキ怒るよ」
「もう怒ってるじゃん。ふん」
「キレるよっつってんの。明日撮影なのに」
こんな手でピースやらポーズやら取れない
特殊技術で消してもらうことはできても、ミキのプライドがある
亜弥ちゃんはつんつんしたまま、黒マジックを手放さなかった
だいたい人の家のモンに手を出すな
そう言ったけど聞く耳を持たないまま、きゅぽっと音をたててマジックの封印は再び解かれた
- 17 名前:magic A/M 投稿日:2005/08/08(月) 23:55
-
「あたしにも書いて」
「はっ?」
「あたしは、みきたんにAって残した。だから」
「だから?」
「たんも、あたしにMって残すんだよ」
まるで、当たり前の行動のように
亜弥ちゃんは黒マジックをミキの手にねじ込んで、得意げにそう言う
- 18 名前:magic A/M 投稿日:2005/08/08(月) 23:55
- こんなことでミキが納得するなんて思ってるのか
それとも苛立ちを高めるためにこんな我侭を言うのか
どっちつかずで、亜弥ちゃんはマジックを見遣ってミキに命令しようとする
年下のくせに
ねじこまれたマジックは亜弥ちゃんの白い肌を染めて行く
少しづつ、少しづつマジックは「M」を刻み始めて
とうとう、亜弥ちゃんの思惑通りになった
- 19 名前:magic A/M 投稿日:2005/08/08(月) 23:56
- 「ハイ。これで満足?」
「にゃふふ、みきたんの字だ」
「あーあ、どうやって落とそうかな」
「ダメっ、落としたらダメ」
「んな事言ったってそっちもマネージャーに叱られるよ」
「そんなの、どうだっていいもん。あたしは」
- 20 名前:magic A/M 投稿日:2005/08/08(月) 23:56
-
布巾ではとれそうもない黒の証
こすりすぎて肌が紅くなって、黒いイニシャルはちっとも落ちない
亜弥ちゃんは愛おしそうに自分の掌を見つめて
にっこりと笑う
愛のカタチだよ
そう信じておこう
亜弥ちゃんが明日、ミキにまたイタズラをするまで
おしまい。
- 21 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/08/08(月) 23:57
- あやみき。松浦さんがちょっと怖いかも。
- 22 名前:作者 投稿日:2005/08/09(火) 00:03
- さてもうひとつ。
あやみき。
- 23 名前:eye 投稿日:2005/08/09(火) 00:03
- 「ねえあれなんて書いてあるの」
「あんたそればっか。眼鏡使えよめがね」
「だってめんどいじゃん」
他のものは見えなくてもいい
君がそこにいて、その笑顔を見れたらいい
- 24 名前:eye 投稿日:2005/08/09(火) 00:03
- 「あたし髪切ったんだよ」
「うん知ってる」
「可愛いねーとか」
「いわないよばーか」
言えないよ
可愛いだなんて、恥ずかしいだろう
ぜんぶ知ってて、全部見てるんだいつも
- 25 名前:eye 投稿日:2005/08/09(火) 00:04
-
「キスして」
「うん」
そんな時の顔も
- 26 名前:eye 投稿日:2005/08/09(火) 00:04
- 「たん、みきたん」
甘えたい時の表情も
ミキには、ミキだけには見えてる
おしまい。
- 27 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/08/12(金) 23:22
- いいですね〜あやみき大好きです☆
- 28 名前:灰 投稿日:2005/08/30(火) 12:45
- 吐き出した灰色の煙は、ふわりと風に乗って消えて行った
このまま美貴もどっかに飛んで行っちゃって
今考えてる事とか これから何をすればいいんだっけとか
全部忘れたくなった
恋してる時の気持ちが一番、人生のなかで思いでに残る
辛い
つらい
そう感じて、まだ余っていた煙草をぐしゃりと握りつぶす
前まで吸ってたヤツはもう販売中止になったからこれにしたけど
口の中が靄でいっぱいになる感じ
たまらなく目眩がする
- 29 名前:灰 投稿日:2005/08/30(火) 12:45
-
「みーきたん。こっち、カモーン」
大きく手を広げて、いかにも『抱きしめて』とアピールする彼女は
煙草を吸い終えた美貴をずっと観察していたに違い無い
亜弥ちゃんの傍で、ミキは煙草を吸えないから
少し離れた場所でいつも一服している
味がない、つまらない一服だけど
- 30 名前:灰 投稿日:2005/08/30(火) 12:46
-
「んー、や。煙草くさい」
「わるかったね」
望み通りにぐっと力を込めて抱きしめてやる
唇でこめかみにキスをすると、案の定不満を漏らすワガママな亜弥ちゃん
そっちがしろって言ったのに
きゃはきゃはと笑って美貴の髪を弄って離さない亜弥ちゃんは笑っているけど
ほんとうに心から微笑んでいるのか、わからなかった
- 31 名前:灰 投稿日:2005/08/30(火) 12:46
-
「ねー、たん」
「ん?」
「まだ頭痛い?」
「うーん。びみょう」
「二日酔いオヤジー」
「オヤジだもん」
「だいたい、こんなくっさい煙草吸ってる時点でオジサンだよ」
美貴の額にキスをして、腕からひゅるりと逃げる
潰した煙草を美貴のポケットからうばって、くんくん臭いを嗅いでる
くさいに違い無い
顔をしかめて、わざとらしそうにこんこんと咳を繰り返す
未成年の彼女にとって、酒も煙草も未知の世界であって
味とか、美味さなんてわからない筈でしょう
そのくせ色々と探ってきたり、美貴に追い討ちをかけたりする
- 32 名前:灰 投稿日:2005/08/30(火) 12:47
-
「禁煙とかさー、当分お酒飲まない!とか無いの?」
「え?」
「みきたんって負けずギライのくせに打たれ弱いってゆーかー。そんなに好き勝手やってると、どーにかなっちゃうよ?」
「美貴に向って説教する気?」
「ニャハ、残念。あたしは平和主義者です」
そう言って亜弥ちゃんは、煙草くさい筈の美貴にキスをした
ほんの一瞬、ただ唇が触れて、ちゅっと音がしただけのキス
平和主義者、か
美貴はどっちだろう
- 33 名前:灰 投稿日:2005/08/30(火) 12:47
-
ほんとうは自分の中に閉じ込めてるものがあって
美貴もそれは亜弥ちゃんと同じなんだよって言いたいけど
口にしたら、煙草や酒のことで喧嘩も出来なくなるんじゃないかって
冗談のキスも冗談の抱擁も
不安で怖いんだ
「あーヤダヤダ。気分悪くなっちゃった」
「自分の意思に反したことすると、そうなるって誰かが言ってた」
「どこぞの偉い学者さん?」
「ノー!ワタクシでございます、みきたんさん」
説教したいんじゃん
美貴のこと、知った風に振る舞うけど
- 34 名前:灰 投稿日:2005/08/30(火) 12:47
-
本当はなんにも知らないで
なんにも知ろうとしないで
真っ白のままで、亜弥ちゃんは美貴にアイシテルと囁く
真っ黒の美貴はそれを信じてしまうから
洗い流すことができないから
- 35 名前:灰 投稿日:2005/08/30(火) 12:48
-
「おーててつーなーいーでー」
「そろそろ帰ろうか」
「おーててつーなーいーでー!」
「わかった、わかった」
今ここで亜弥ちゃんの手を握っていることが
なにより幸せだと言う事を忘れてしまわないように
気付かないうちに逃げてしまおう
この気持ちが、煙みたく空に消えてゆく前に
やべ、泣きそうだ
おしまい。
- 36 名前:灰 投稿日:2005/08/30(火) 12:48
-
* * * * * * *
- 37 名前:灰 投稿日:2005/08/30(火) 12:49
-
* * * * * * * *
- 38 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/08/30(火) 12:50
- あやみき。藤本さん片思いみたいなちがうような。
>名無飼育さん
あやみきは私も大好物です。ありがとうございました。
- 39 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/06(火) 22:29
- 更新お疲れさまです☆切ないですね・・・つかみ所のない松浦さん素敵!藤本さん
ガンバぁ!
- 40 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 21:58
-
ブクブクと白い泡があたしを包んで行く。
シャンプーの匂いや風呂独特の温かい空気で、あたしは満足感でいっぱいだった。
仕事での疲れや不満、ストレスが、このバスタイムで全て泡となって消えて行く気がするから。
最近、現実逃避し過ぎている気もする。夢見る少女、ってか。
ああ、このまま夢を見て眠ってしまいたい。
気付いたら天国にいて、いまの苦労も痛みも忘れる事が出来たら良いのに。
- 41 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 21:59
-
がらっ
お湯の中で目を瞑って、そんなことを考えながら十秒数えていた。
いち、に、さん、し…
水面でちゃぽんと音がしたかと思うと、頭をなにかに掴まれて、水中に深く潜らされる。
驚いてざばぁっと顔をあげると、意地悪く微笑んでいる、こらまた色っぽい小悪魔。
ありゃ、ここは地獄なんか。
- 42 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 21:59
-
「これは…何のサービス?」
「何で美貴がよっちゃんにサービスしなきゃいけないの。出るの遅いから入りに来た」
「あ、そりゃごめんね。って違う違う、溺死させる気か」
「ヤダ、美貴んちで死なないでよ」
「殺そうとしたのそっちだっつの」
泡を両手ですくって、小悪魔はあたしの髪にそれでコーティングをし始めた。
わしゃわしゃとあたしの髪をいじくって、なんだか彼女は楽しそうだ。
お返しに泡を顔にぶつけてやろうかと思ったけど、マジで怒りそうだから止めとく。
- 43 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 21:59
-
にしても、タオルも捲かないで乱入してくるとは。
泡で誤魔化されている彼女の小さな、いや形の良い胸が見えかくれしている。
ここは仕事の疲労を爆発させる良いチャンスだけど、風呂場でヤるのはちょっとなぁ。
- 44 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:00
-
「よっちゃん」
「…ん、う?」
「背中洗ってよ」
「ああ、はいはい」
もやの中でボゥッと考え込んでいると、すでに髪を洗い終えた美貴が顔を覗き込んで来た。
髪が濡れて、前髪まで後にオールバックにされていた。なんか、艶がある。
あたしが美貴の雑談を聞いて無かったせいか、唇を尖らせてフキゲンそう。
渡されたハンドタオルを受け取って、感情を抑えながらせっけんをこすりつけた。
がまん、我慢。
- 45 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:01
-
「ねー」
「おう」
「よっちゃんって、男と付き合った事ある?」
「はっ?」
くぐもって、エコーがかかった美貴の声に、あたしは手を休めた。
いや、質問の内容にびっくりしたんだけど。
突然問いかける事じゃないと思うけど。
こんなことを言ったら、言い訳っぽく聞こえるだろうな。
あたしはあえて、少し難しい顔を作って、鏡ごしの美貴を見つめた。
なんでそんな、神妙な顔をするんだろう。
ふと鏡の美貴と目が合い、正直にさらけ出す事にした。
- 46 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:01
-
「あるよ。2回くらい?」
「本当?」
「あー、高校ん時に」
「エッチは?」
ふたたび、美貴の背中を流していたあたしの手が止まる。
なにかがおかしい気がした。美貴の言葉といい、あの表情といい。
何か良からぬ事を考えているのだろうかと、あたしは一瞬不安になった。
大抵面倒な事を思い付いているに違い無いからだ。
エッチ、ねぇ。
- 47 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:01
-
「まあ、したね」
「良かった?」
「精神的にってこと?」
「ううん、セックスして気持ち良かった?」
「……さー、痛かったくらいしか記憶にない」
なにか、嫌な予感がする。
そんなことどうでもいいだろうに。そんな昔の話でもないけど。
美貴はあたしの答えに不満げらしく、ごしごしと手を動かしていたあたしを睨んだ。
べつに、あたしが何したっつうわけじゃないのにだ。
だいたい、こいつ、こんなこと気にする女だったかな?
- 48 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:02
-
「美貴は?」
「…えぇ?」
「あたしに答えさせたんだから、そっちも吐け」
意外に繊細な女だけに、あたしはわずかな美貴の一部分しか知らない。
お湯で背中を流してやって、あたしは泡風呂のバスタブに飛び込んでそう言った。
まあ、一応気になる。
嫉妬に近い感情が湧き出て、あたし自身が保てるかどうか、すこし不安だけれど。
だからわざと、明るく振る舞ってみせた。
- 49 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:02
-
「モテたんだろ、高校ん時は」
「勝手に過去形にしないでよ」
「ははっ、そりゃすいません。で?」
「エッチだったら、結構してた」
「ほお」
「一回、犯されそうになったことある」
「え!?」
- 50 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:02
-
泡風呂が波立って、ぶくぶくと白い泡のつぶが増えて行く。
それはあたしが勢い良くバスタブから飛び上がったからだった。
美貴はびっくりした様子で、含み笑いをしながら放心するあたしを放ってバスタブに入る。
なんか、すげえ、こいつ。
「そんな怖い顔しないでよ、びっくりした」
「誰だよそいつ、ぶっ殺す」
「そんなの美貴、覚えて無いよ。てか、男と付き合った事ないから」
「…へ?」
「ま、エッチ目当ての男ばっかだったからねー」
なんであたし、顔も知らない男に敵意剥き出しにしてるんだ。
- 51 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:03
-
バスタブに揺れていた波はおさまって、美貴は意外にあっけらかんとした様子で淡々と話し続ける。
あたしの知らない美貴の経験が、すごくあたしにとってはショックだった。
泡で遊ぶ美貴の瞳は、別にたいした意味もなさそうに映ってる。
だけど、本当の美貴を、あたしは知らなかった。
あたしが男とセックスしたことを、彼女はどう思っているだろう。
今のあたしと、同じような気持ちなんだろうか。
ふと、そう思った。
- 52 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:03
-
「なー美貴」
「ん?」
「あたしの処女、美貴にやるよ」
「…なに、そのハレンチワード」
「るせ、美貴だって散々放送禁止用語使っただろ」
あたしは、美貴と出会って初めて快感を感じた。
なぞるように触れると厭らしく喘ぐ声、愛しいひとの躯。
あたしはこれまでになかった感情を、美貴に抱いているから、あたしの初めては美貴な気がする。
男と付き合ってうまく行ったことなんて無かった。あたしが男っぽすぎて、相手にしないから。
別に僻んでたわけじゃない。あたしは、この世ではじめて美貴を選んだ。
- 53 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:04
-
当の本人は不思議そうな顔をしたけど、嬉しそうに、恥ずかしそうに笑った。
たとえ何人の男が美貴の淫らな表情を知っていようとも、今はあたしの物でしかない。
誰にも触れさせない、誰にも渡さない存在なんだから。
首に腕を回して、美貴の華奢な肩を抱いて、強く抱き締める。
「美貴、時々すごく怖いの」
「なにが?」
「よっちゃんが、美貴に興味無くなって、他の人と寝たらどうしようって」
「んな事アリエナイ。第一寝させてくれねーだろ」
「そんなの、当たり前じゃん。よっちゃんは美貴のだもん」
その瞬間、あたしのスイッチを抑えていた何かが堪え切れなくなった。
美貴の身体をこっちに向かせて、無我夢中で唇を奪った。
柔らかくてドロップみたいに甘い唇を、喰らうように、舐めるように。
人間はなにより、性欲が一番に燃え盛る。あたしは猛獣と化していた。
- 54 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:04
-
風呂場では、美貴の喘ぐ声だけが響いた。
指を奥まで突っ込んで、唇を塞いで空いていた手で胸を攻め続けていた途中、美貴は果ててしまった。
あたしにもたれ掛かって来た美貴を抱いて、あたしもそのまま眠ってしまった。
- 55 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/20(火) 22:05
-
* * * * * * *
- 56 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:05
-
「よっちゃん」
「ん?」
「美貴が、よっちゃんの知らないオンナでも好きでいてくれる?」
「ああ」
「絶対、嫌いにならな――」
「ああ」
ろくに身体も拭かないで、気を失った美貴をベッドに運んだ。
ようやく目を覚ましたかと思えば、あたしに抱きついてこんな事を言い出す。
いつもツンツンしていて、猫みてぇな性格してるくせにあたしは
泣きだしそうな美貴の顔にキスを降らせて、それ以上哀しませないように。
凍えそうなベッドの中で、ただ一言愛してると呟いた。
- 57 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:06
-
世界が終っても、あたしは美貴を手放す気はねぇよ。
- 58 名前:バスタイム 投稿日:2005/09/20(火) 22:06
- おしまい。
- 59 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/09/20(火) 22:09
- 久しぶりの更新で申し訳。
軽エロチックなみきよしでした。本当は長編のやつだったんですけど無理矢理圧縮して(ry
>名無飼育さん
あやみきはこうであって欲しい。と勝手に思ってます。ノーテンキな松浦さんと、冷静な藤本さんが理想なんですけど実際の所真逆ですからね。
ありがとうございますー。
- 60 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/09/20(火) 23:22
- 長編読みたかったです。
いつか気が向いたら日の目をみさせてあげてくださいw
とてもとても良かったです。軽エロなのに胸打つものがありました。
- 61 名前:空から降る一億の星 投稿日:2005/09/24(土) 08:35
- 真夜中ミメイ、東京の空に灰色の雲が広がる
- 62 名前:空から降る一億の星 投稿日:2005/09/24(土) 08:35
-
カーテンを開けると、予想外に外はまだ真っ暗だった
あたしの家には時計が無い
携帯で時間を確認することはできるけれど、それが面倒だった
どれくらい行為に夢中になっていたのだろう
くすんだ空を見上げて、そっと窓を開けると蚊が侵入してくる
ふほーしんにゅうなんたらっていう罪で逮捕する、なんてバカほざいてる場合じゃない
早々腕にかゆみが走って、ムシャクシャした故に禁煙の扉を撃ち破ってしまった
テーブルに長い事放置されていたセブンには、まだ数本残っている
口にそれをくわえた時、ライターを捨てていた事を思い出した
- 63 名前:空から降る一億の星 投稿日:2005/09/24(土) 08:36
- 行き場を失ったあたしの両手は自然とポケットの中に潜る
めんどくさい
行為の後はなにか、物足りなさというか脱力感に襲われる
煙草を吸いたいだがライターがないどうすれば良いのか
単純な考え事さえ、すぐに諦めてしまいそうな衝動に駆られる
ガチャ、と扉が開く音がする
煙草をくわえ、外をぼーっと眺めるあたしを見て彼女は吹き出した
無論、その表情は見えないだってあたしは彼女を見ていない
だけど、顔をくしゃっとさせて笑ってるに違い無い
そう思った
- 64 名前:空から降る一億の星 投稿日:2005/09/24(土) 08:36
-
「あ、ぼっしゅー」
「…へ」
「未成年の喫煙は法律上禁止されてまーす。はい、返して」
「そんな今更。っていうかこれまっつーのじゃ無い」
「いーから。そこのゴミ箱にポイしちゃる」
あたしからセブンの箱を奪って、ぐしゃっと潰した彼女
あーあ、というあたしの吐息にも耳を貸さず、彼女はベッドに座って髪を拭き始めた
四六時中、傍にこんな五月蝿い女がいたら自由に遊べもしない
一部はそう言うんだろう
あたしも一時期はそう思っていた仲間だ
こんなにも幼く、無邪気なカタチをしているのに
あたしに触れられた途端、本性を現す妖艶で立派な女だ
- 65 名前:空から降る一億の星 投稿日:2005/09/24(土) 08:37
-
「まっつー」
「んー、なに?」
あたしは珍しく、甘えるように彼女の腰に抱きついた
こんなにも近くにいて、同じ時間を過して来たというのにあたしは根っからの寂しん坊らしく
必要以上に彼女の温もりを欲しがった
いくら行為を繰り返しても、いくら甘い言葉を囁いても
本当の彼女に、あたしは正直になれていない気がするんだ
何の変哲もない、いつものまっつーが
今のあたしにとって、いつもじゃない事だった
- 66 名前:空から降る一億の星 投稿日:2005/09/24(土) 08:37
-
「…ふんふん、ごっちん、このシャツ洗濯した?」
「なんで?」
「なーんか、だれかさんの香水の匂いするんですけど」
「気のせいでしょ」
「どこまでしたの」
「いやだから気のせいでしょ」
「…あー!みきたんの匂いだー!」
ウトウトと夢心地の中
あたしは腰に抱きついて、彼女の大きな声を完全にシャットアウト
親友に嫉妬してどうすんの?
別にあたしら、付き合ってるわけでもないのに
- 67 名前:空から降る一億の星 投稿日:2005/09/24(土) 08:38
-
「…ね、ごっちん?」
「なに?」
「…アタシら、なにしてんだろうね」
「何って、不純交際?」
「ああ、そっか」
真っ白のシーツの上で、まっつーの唇に触れた
こんなこと初めてじゃない
なのにあたしは、必要以上に心を揺さぶられて、確実に感情を見失っていた
全て、彼女のせいだということに気付かずに
何度も傷めたこの気持ちに
嘘を付く事は許されないのですか?もし神様がいるなら
- 68 名前:空から降る一億の星 投稿日:2005/09/24(土) 08:38
-
ひとつだけ願いごとをしたい
あたしを、彼女の一部にして欲しいと
- 69 名前:空から降る一億の星 投稿日:2005/09/24(土) 08:39
- おしまい。
- 70 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/09/24(土) 08:43
- 後藤さんオメ。
ラブラブを書きたかったのに何処に路線がずれたのやらorz
あやごまって微妙な関係が良いと思います(言い訳
>名無し飼育さん
いやー、そう言ってもらえるととっても嬉しいです。
みきよし寄りのあやみきヲタとしては妄想に尽きますよ。
長編でつか…いつか、まあいつかw
- 71 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/09/24(土) 22:55
- あやごまの微妙さ加減が絶妙でした。
気がむいた時にでもまた書いて下さい。
- 72 名前:嘘 投稿日:2005/10/01(土) 20:14
-
あたしは馬鹿だから、頭の良い奴の言う事は解らない
今隣であたしに説教をしている美貴の声も、いまは聞きたく無い
美貴の言っていることはいつも正しくて、現実味が滲み出てる
正座するあたしを見下ろして睨むその姿が、こわいから
ごめんなさい、もうしない
あたしが泣きそうな声でそう呟くまで、美貴は黙り続けた
そうすると美貴はゆっくりとしゃがみこんで、ぎゅーっとしてくれる
- 73 名前:嘘 投稿日:2005/10/01(土) 20:15
-
美貴なんかきらいだ
不貞腐れたガキみたく、あたしは体育座りをして美貴に抱かれていた
さっきまで悶々としていた偽りのあたしの想いを、ゆっくりと溶かして行く
魔法みたいな美貴の甘さに、あたしは目を閉じて浸っていた
ほんとうはこんなにも優しくて、あたたかい美貴だけど
あたしを叱る時の瞳は、この世のものとは思えないくらい、こわい
ぽんぽん、と背中を撫でてくれる華奢な肩にしがみつく
- 74 名前:嘘 投稿日:2005/10/01(土) 20:15
-
「みきちー、ごめんね」
「もういいよ。怒って無いから」
「ほんと?」
「ほんと」
「じゃ、ちゅーしてよい?」
「馬鹿、調子乗んな」
「でも、して欲しいんでしょ?」
いまなら
このくらいの意地悪をしても、美貴は笑って許してくれる
- 75 名前:嘘 投稿日:2005/10/01(土) 20:16
-
あたしの首に腕をかけて、あたしは美貴の瞼に唇を落とす
額をくっつけて、あともうすこしで唇同士が触れる
そこから香ってくる、美貴の匂いがあたしは好きだ
飾り気の無い、甘さが滲んでいて
「いいよ、して」
そっと、つぶやいた
- 76 名前:嘘 投稿日:2005/10/01(土) 20:16
-
格別にとろけそうなあたしの心を
美貴は何でも知っている
だから今みたいな艶しい瞳や、綺麗な輪郭をあたしにくれる
美貴の味を憶えたあたしの舌は、止まりを知らない
- 77 名前:嘘 投稿日:2005/10/01(土) 20:16
-
美貴なんかきらいだ
そんなのは嘘
だいすき
おしまい。
- 78 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/10/01(土) 20:18
- モ−チャンの藤吉は18禁だと思った今日この頃。
絶対ホニャララな情事を済ませた後二人でベッドで撮った(ry
>名無飼育さん
いやいやありがとうございます。でふでぃばでもイチャコラして欲しいですな。
- 79 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/10/01(土) 20:19
- でもでふでぃばで紅白は嫌だな
- 80 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/10/08(土) 16:31
- 更新お疲れ様です。みきよしいいですねぇ。
エロくも無邪気にもなる二人なんで、見てて飽きないです。
(ラジオに出たらどうなっちゃうんだろうって今からドキドキ・・・)
- 81 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/10(月) 11:31
- 面白いです。
想像しながら読み進めた為発狂するかと思いました。
これからも更新頑張ってください
モーチャンのミキティは何も着ていないようにしか見えない。
- 82 名前:青く、白く 投稿日:2005/10/20(木) 22:23
- 「…ごっちん」
「…ん、なに?」
「何してんの?」
「……や、寝ようかなと思って」
「いやいやいや」
- 83 名前:青く、白く 投稿日:2005/10/20(木) 22:24
-
今日は空が高くて暖かいから、外で昼寝をしようと思い付いた。
唐突なアイディア故に、あたしの傍らでクスクスと微笑みを
浮かべる彼女。
ボケとツッコミのコンビだね、なんてよく言われる。周りに。
彼女の膝は柔らかい。
枕と変わらない位に抵抗がなく、本当に夢の世界へ
堕ちてしまいそう。
- 84 名前:青く、白く 投稿日:2005/10/20(木) 22:24
-
あー、空が青い。
彼女の膝に頭を乗せて見える景色は限られていた。
空、雲。そして、明後日の方向を向いてぼーっと佇む彼女の顔。
瞬きをしている間が勿体無く感じる程、あたしはその景色を
見つめていたいと思った。
あー、眠い。
- 85 名前:青く、白く 投稿日:2005/10/20(木) 22:24
-
「白いね」
「ねー」
「まっつーって美白してんの?日焼けのアトとか見た事ないんだけど」
「…え?」
キョトン、と首を傾けて理由がわからなさそうにしてる。
「白いって、あたしの肌の事言ってんの?」
「うん。何だと思った?」
「いや、ごっちんが空見てるから、雲が白いねーって言ってるのかと思ったの」
こんなやりとりはしょっちゅうだ。
基本的にあたし達の会話には要点が無い。どうでも良い事を話す上に、
主語を置かないからたまにお互いが話を聞いていない事もある。
彼女は顔をくしゃりと歪ませて笑う。呆れているのだ。
- 86 名前:青く、白く 投稿日:2005/10/20(木) 22:25
-
ああ、こういうの何ていうか。
可愛いなと思う。白い頬に、屈託のない笑顔が広がる。
「んー、別になにもしてない」
「陽にあたってない所はもっと白いけどね」
「…どーゆー意味よ」
「ほら、まっつーのおなかって綺麗じゃん」
しろくて、あったかくて、やわらかくて。
あたしは彼女を抱く度にいつも、そう言っていた気がする。
胸元の開いたボタンから、ちらりと覗く、これはまた白い首筋が
羨ましかった。
- 87 名前:青く、白く 投稿日:2005/10/20(木) 22:25
-
「えっちぃなー。そういうのはこういう所で言わないんだよ、普通は」
それじゃあきっとあたしは普通じゃない。
普通じゃないくらい、目の前にいる白く綺麗な女の子に恋してるんじゃないのか。
それをそのまま口には出さない。言えばきっと、後悔するから。
照れる。
むくりと起き上がる。寝ている時間が、非常に勿体無いと感じる。
- 88 名前:青く、白く 投稿日:2005/10/20(木) 22:26
-
「まっつー、ねえ」
「今度はなによ」
「今、すごくまっつーの事抱きたいんだけど」
- 89 名前:青く、白く 投稿日:2005/10/20(木) 22:26
-
間髪を入れずに、あたしは彼女の華奢な肩先に触れていた。
感覚がみるみるうちに敏感に研ぎすまされる。
彼女の淡い石鹸の匂いが好きだった。香水は嫌いらしい。
息を吸い込んでたっぷりと体中に巡らせて、返事を待った。
どくん、と鼓動が伝わる。
ゆっくりと口を開く。
- 90 名前:青く、白く 投稿日:2005/10/20(木) 22:27
-
「いいよ」
飾り気の無い、ゆったりとした特徴的な彼女の声。
語尾の言葉を聞いた瞬間に、彼女の唇を欲しがった。
愛おしい。好きだ。三つの感情が混ざりあって、絶対に
消し合う事は無い。
堕ちてしまおうか。いっそふたりで、夢の世界へと。
おしまい。
- 91 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/10/20(木) 22:30
- あやごまが個人的にヒット中です。でぃふでぃば、じゃなくてでふでぃばですねorz
松浦さんは最近藤本さんに冷たいですよね。あやみきが少なくて困ります。
>名無し飼育さん
すんごく楽しみにしてます、ラジオ。ただ聞くのが困難な地方に住んでる
のでろだで落とそうかと。
読んでくれてありがとうです。
>名無飼育さん
あのモーチャンはいけません。色んな意味で危ないw
ただ全身を写したのがなかったのでそれがざんね(ry
…失礼しましたorz
- 92 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/21(金) 06:51
- お、甘いあやごまだ!
いいですねぇ。無理のない感じです。
あやみきは不動ですから…
といいつつあやごまが増えてきてうれしい(おい
- 93 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/10/22(土) 08:04
- 自分もあやごま最近好きです
- 94 名前:囚われて、夏の夜 投稿日:2005/10/22(土) 22:07
-
ただひたすらに、あのひとを想っていた―――
- 95 名前:囚われて、夏の夜 投稿日:2005/10/22(土) 22:08
-
夜風が頬を掠める、夏の夜のこと。
その日は残暑の蒸し暑さで気温が思っていたよりも上がり、汗で
シャツが肌にへばりつく。
風は生温い。ほんのすこし、夏の匂いが香る。
ライターを数本持ち寄り、わずかな夏を味わう。
花火の袋を開けるどきどき感は幾つになっても変わらないものだと、
人一倍わくわくしている吉澤を見て想う。
――昔と、同じ笑顔
- 96 名前:囚われて、夏の夜 投稿日:2005/10/22(土) 22:08
-
月の光より強く、電灯が夜を照らす。
その光を頼りに、花火は始まった。線香花火は、最後にとっておくのだ。
あのこの為に。あのこの、かわいい笑顔のために。
パチパチと火花をたて、青白く、黄色く鮮やかに光る手持ち花火に
吉澤の白い肌は何となく様になっていた。
その姿を目で追うのは、もう癖になっていた。
「なに、ボーッとしてんの?」
「…え?」
「暗いとこでじっとしてると、誰だかわかんないぞ」
「…どういう意味よ」
「へへ、黒いんだもん、梨華ちゃん」
- 97 名前:囚われて、夏の夜 投稿日:2005/10/22(土) 22:08
-
しゃがみこんで、吉澤は一本花火を渡す。
片手にライターを持ち、顔を覗き込まれる。
嫌味を言われても、なんてことなかった。
むしろ、嬉しいくらい。
火花が鮮やかに散った後、その花火はすぐ消えてしまった。
でも、そんなことはどうでもいい。
――となりにいるだけで、いい。
- 98 名前:囚われて、夏の夜 投稿日:2005/10/22(土) 22:09
-
ずっと、このまま時が止まれば良い。
ずっと、近くにいられたら良い。
何時までも同じ時間だけが流れる訳ではない。わかっていた。
だけど、思い込ませていなければ、自分自身が壊れてしまいそうになる。
あのひとの笑顔を、自分だけのものにしたくて。
――わがまま。我侭。ごめんね、よっちゃん。
「よっちゃん、線香花火やろう」
「おう、やるやるー。梨華ちゃんも、ほら」
聞こえてくる。
思い通りにはならないから、そんな事を考えちゃいけないと。
誰がが、確かに悟っていた。
- 99 名前:囚われて、夏の夜 投稿日:2005/10/22(土) 22:09
-
砂利をビーチサンダルで踏む音。吉澤は立ち上がり、美貴の
元に行こうと促す。
嫌だった。
単純に、役立たずの嫉妬が渦巻く。他の誰でも無い、吉澤の
『一番』である、あのこに。
――あなたのために、とっておいたんだけど。
しょうがない、よね。
線香花火、いっしょにやりたかったな。
- 100 名前:囚われて、夏の夜 投稿日:2005/10/22(土) 22:10
-
「私、まだこっちやってるから」
「…へ?でも…」
「行ってきなよ、ね?」
嘘を付いたら、気付いてくれるだろうか。
行き場の無い嫉妬心に、あなたを想うこの気持ちに。
- 101 名前:囚われて、夏の夜 投稿日:2005/10/22(土) 22:10
-
「よっちゃん、はやくおいで」
いらだったような声が、聞こえた。
苦笑いをして騙す、虚像の自分。美貴の存在が、切ない程に許せない。
吉澤は躊躇いがちに傍を離れ、線香花火を受け取った。
細い糸のようなそれは、まるで私のことみたい。
- 102 名前:囚われて、夏の夜 投稿日:2005/10/22(土) 22:11
-
「キレイ。ね?」
「うん、やっぱいいね」
ちらりと覗く、吉澤の視線。
躊躇した事を後悔しているのだろうか。それでも美貴の傍からは離れなかった。
望んでいる。あなたを、この目に焼きつけたいと。
もうすぐ、ぜんぶの花火が無くなる所だった。仲間は既に飽きて、地面に座り込み
数人で喋っている様だった。
- 103 名前:囚われて、夏の夜 投稿日:2005/10/22(土) 22:11
-
夏が、終る。
花火の季節は、もう来ないのだろうか。来年は、あなたと一緒に
こんな風に逢えるのかな。
きっと、忘れているかもしれない。この瞬間を、一緒にすごしたこと。
――それでも、良い。
あなたを愛していたこと。忘れもしない、夏の夜のこと。
おしまい。
- 104 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/10/22(土) 22:15
- いしよしみきみたいな。この美貴さんはちょいと黒いかな。
季節はずれでごめんなさい。花火とかこの人達にして欲しかったんですそれだけです。
>名無飼育さん
あやみきは永遠のカプだと過信しております。あやごまは変にエロいのが好きです。
取りあえず美貴さんと後藤さんで松浦さんを取り合えば良いと思います。
>名無飼育さん
あやごま最近はやってますよね。たまに見かけるラブラブさが好きです。
- 105 名前:名無し飼育さん 投稿日:2005/10/24(月) 22:25
- 黒い美貴さんハァーン!
三田久郎酢さんの書かれる美貴さんはどれもツボります
- 106 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/11/09(水) 22:09
- 気付けばもう11月。みきよし更新したいと思います。
かなり下手な内容なんで甘い話とか見たく無い人はスルーよろ。
- 107 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:11
- くしゃくしゃに丸められたテストの解答用紙が、寂しそうに拾ってくれと訴えている。
なんか、放っておけなくて。
廊下の隅にぽつんと捨てられてあったそれを広げて、名前を確認したらやっぱあいつの物で。
なんだこの点。
人間が取る点数じゃないだろ。
心のどこかで、そうつっこんでしまった。
- 108 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:11
-
丸の数は極めて少ない。それに自分の名前すらまともに書けていないのを
伺うと、テストに関しては本当にやる気がないのが分かる。
だって全部平仮名で書いてある。
バカじゃねえの、と罵りたい気分だけど取りあえずそれをポケットの中に突っ込む。
一言、言ってやりたいことがあったから。
- 109 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:12
-
「廊下にこういうの捨てないでよ。恥ずかしいから」
「えー?だれが恥ずかしいの?」
「美貴がだよ。ほら、よっちゃんのでしょ」
ぐしゃっ、と手で握りつぶして、胸元にどんっと押し付ける。
美貴の恋人名義を語るなら、ニ度々あんな恥さらしはしないでくれと釘を刺した。
しかし、まともに話を聞いて無いように見える。
ああ殴りたい。
ヘラヘラ笑いながら、解答用紙をボール代わりにして、空中にぽーんと投げて遊んでる。
- 110 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:12
-
「もうちょっと勉強してよ。お願いだから」
「してるよ。保健体育とか?」
「…」
「いやいや、引かないでよ。冗談だって」
冗談に聞こえないって。
こうやって一緒に帰ってあげてるのだって、何がきっかけだったのか覚えて無いけど。
美貴とよっちゃんは一応恋人同士なんです。でも、どうしてこうなったのかよくわかんない。
ただ、よっちゃんが美貴の事好きだーって言うから。
別に断る理由も無かったけれど、今になって後悔している。とても。
- 111 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:13
-
一言で言うと、とんでもないバカ。
授業は出ない勉強しない努力嫌いの夢見る夢子ちゃんタイプの人間。
初対面にも関わらず美貴に告って来た勇気は認めるよ。だけどこんなバカと一緒にいると正直疲れるんだって。
「手繋いでいいー?」
美貴だってそんなに頭良い方じゃないけど、こいつは論外。
補講とか受ける以前の問題だから、そろそろ学校自体に存在していられるか問題だと思う。
恋人の身を案じて考えてあげてるというのに、こいつは色々と薄情な奴。
許可もしていないのに手を繋がれて、少しびっくりした。
『あのバカのどこがいいの?』
っさー、わっかんないね。
- 112 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:13
-
怪訝そうな顔をして、いくつかの友人はよっちゃんを嫌っていた。
何故かって?他人から見るとこいつは相当なワルらしいよ、笑っちゃうけど。
煙草やら何やらやってるとか喧嘩強そうとか。こいつが喧嘩?張り倒されて終るっつの。
授業をサボる=不良っていう古いイメージの型にはまっちゃってるんだよね。
見かけもチャラチャラしてるから、思われてもしょうがないんだけど。
やけに綺麗な横顔を眺めながら、ぼーっと小1時間考える。
「なんだい、見とれるなよ」
「は。バッカじゃないの」
「あ、怒った」
「は?」
「よしざーさ、美貴の怒った顔好きなんだよね」
「…」
「だから引くなよ。Mとかじゃねーぞ」
繋がれてた手を、なおさら強く握られた。
- 113 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:14
-
確かに美貴がよっちゃんを睨んだり怒ったり殴ったりするといつも嬉しそうに笑ってる。
それってやっぱアブな気な趣味ってことかよ。
よっちゃんは焦ってアタフタしながら、顔を真っ赤にさせて首を横に振る。
「なんていうか、アレだ」
「ほらやっぱり」
「違う!格好良いんだ!」
「は?」
「なんつーかー、アレだって。かっちょいいしキレイなんだ。うん」
拳を握って、なんか熱血っぽく語りだす。
ちょっと待て。美貴がこういうの苦手だって分かってるくせに嫌なやつ。
キレイとかカワイイとかほんと痒くて駄目。褒められてる気しないんだもん。
- 114 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:15
-
「そういうの、別の子に言うもんだから」
「え?なんで?」
「あんたってホント馬鹿だよ。人の気も知れよ」
「だって、美貴にゆいたい」
「……あぁ、そ」
ぐいぐいと美貴のブレザーを引っ張って、待ってと後ろから付いて来る。
まともに顔が見れなかった。なんでかって。恥ずかしいからだよワルイか。
- 115 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:15
-
…なんだかんだで、付き合って一年か。
どっちかって言うと苦労して過して来た。だってこいつバカだから。
バカだから放っておいたらフラフラしてどっか行くし、かと言ってちょっと構ってやると
犬みたく尻尾振って四六時中離れなくなるし、亜弥ちゃんにまで手出そうとするし。
浮気、みたいなもんか。
あー、なんかイライラしてきた。なんでだ。
……嫉妬ってやつか。ああ、そうか。
美貴がこんなこと考えて悩む事はないけど、たまに、ね。
しつこいくらいに一緒にいたがるあいつのことだから、不安になることなんて一切無い。
筈、なんだけど。
- 116 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:16
-
「今日は勉強するよ。ばっちりね」
「へー。せいぜい頑張ってテストの点でも上げてみな」
「美貴が教えてくんないと出来ない」
「参考書でも読め」
「や、そりゃムリな話」
「なんで」
「だってさー」
- 117 名前:こういうのも、いいんじゃないか 投稿日:2005/11/09(水) 22:16
-
漫画みたいな展開とか期待してないのに、こいつはどこまで寒いやつなんだろ。
とか言って、どっかでこういう事されるの頭のどっかで分かってたかもしれない。
後から、抱きしめられるとか。
「保健体育、だってば」
あー、バカが伝染りそう。
おしまい。
- 118 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/11/10(木) 17:54
- ああーっと返レス忘れてました。
>名無飼育さん
リアルじゃあんなに甘えん坊だけどギャップを書くのが楽しいです。
お世辞でも嬉しいです。ありがとうございますー。
- 119 名前:言えないよ 投稿日:2005/11/26(土) 21:23
-
うるさい所が嫌い
面倒くさいことは、もっと嫌い
あたしは彼女のそんな尖った性格を、よく知っている
もちろん丸く優しい所だって、他のどのメンバーよりも知っているつもりだ
少なからず、寂しがりやな所はあたしに負けないくらいだってこと
知ってる
- 120 名前:言えないよ 投稿日:2005/11/26(土) 21:24
-
どこ見てるの?
なんて聞く余地も与えないくらい、彼女の素の表情は近寄り難いオーラを放ってる
知らないうちに怒らせちゃったのかな
何かまずいことでも言ったっけ
ただ会話がしたいだけなのに、こっちが遠慮して言葉も出なくなっちゃうんだから
彼女はずるい
ほんとうは、可愛くて幼い所が目立つのにね
- 121 名前:言えないよ 投稿日:2005/11/26(土) 21:24
-
さっきも言った通り、彼女はうるさい所が好きじゃない
空き時間は殆ど楽屋の外にいて、ぼうっとしてる
みんなから遠ざかって、一匹狼なやつ
ふつうなら、こう言われてしまうのも無理はないだろうけど
彼女はちがう
ほんとうは、みんなから構って欲しいだけだからね
- 122 名前:言えないよ 投稿日:2005/11/26(土) 21:25
-
「ミキティー」
あったかい紅茶を手に、あたしは彼女の名前を呼ぶ
自販機で買った2つの紅茶はレモンティーとストレート
すると彼女は反応して、携帯に目を向けていた視線をぱっとあたしに移す
この瞬間が、たまらなくあたしの胸を打つ
トキメキってやつだろうか
- 123 名前:言えないよ 投稿日:2005/11/26(土) 21:25
-
「ほい」
「ありがとー。よっちゃんレモンで良いの?」
「うん」
缶を受け取る瞬間、手が触れた
中学生じゃあるまいし、別にどきどきなんてしない
うそ
してる
壁にもたれかかって、何を話そうか考えた
不思議と彼女が黙っていても、あたしは何も気にしなくて済む
沈黙なんて怖く無い
だけど、隣にいるからには何か喋りたい
切り出したのはミキティの方からだった
- 124 名前:言えないよ 投稿日:2005/11/26(土) 21:26
-
「こないだのラジオ、好評だったよ」
「へ?…あー、マジで?」
「うん、リスナーさんからメールいっぱい来ててさ。全部よっちゃんのことだけど」
「ふーん。んじゃ、番組乗っ取っちゃおうかな」
「やめてよー、レギュラー番なんだから」
この間、あたしは彼女がやってるラジオ番組にゲスト出演した
嫌な予感はしていたけど、案の定リスナーからのメールの内容が濃過ぎて困った
苦笑いしてたあたしの微妙な反応を、リスナーは気付いていただろうか
それとも、仲が良いなぁなんて思ってくれていたんだろうか
どちらにしろ、今のあたしには結構重い話だ
泊まりに来てよ
…本気にして良いのか?
- 125 名前:言えないよ 投稿日:2005/11/26(土) 21:26
-
「よっちゃん」
「ん?」
「あの時ね、本音喋っちゃいそうで危なかったんだよ。気付いてた?」
「…本音って、なに?」
「あのね、よっちゃんがリーダーだから、美貴はサブリーダーなんだなって思ったの」
柔らかく、彼女はいつものように笑ってみせた
少しおどけたように振る舞ったのは、きっと恥ずかしかったからで
彼女が口にしたその言葉に、あたしはすこしの迷いもしなかった
ただ、意味をもっと知りたいと思った
- 126 名前:言えないよ 投稿日:2005/11/26(土) 21:27
-
「よっちゃんあってのモーニングで、よっちゃんあっての美貴かもしれないなって」
「うん」
「なんか、恋人同士みたいなこと言っちゃったよ。はっずかしー」
「恥ずかしい?」
「うん。すっごく」
顔を少し赤くさせて、ほんとうに恥ずかしいようだった
あたしはそれを抱きしめようか一瞬迷った
だけど答えはすぐに出た
『やめておけ』
頭のどこかで誰かが言ったから
- 127 名前:言えないよ 投稿日:2005/11/26(土) 21:27
-
嬉しい
言葉だけじゃ物足りないから、あたしは彼女と同じように笑った
笑う事しか、ないと思った
あたしが笑う事で彼女もまた満足してくれるような、そんな気がしたから
本音、か
どうやらこれが彼女の、あたしへの本音らしい
信じたくなかった
「吉澤さんともっさーん、時間ですよー」
「んー、今行くよ。ほら、よっちゃん行こ?」
「あぁ、うん」
- 128 名前:言えないよ 投稿日:2005/11/26(土) 21:28
-
空き缶をゴミ箱に捨てて、美貴はあたしの手首を掴んだ
ガキさんは遠くで手招きをして、首を傾げてた
伝う温度が、彼女そのもののあたたかさを示している様で
喜ばしくもあり、切なくて仕方がなかった
優しく掴まれた手首を、お返しに優しく解いて華奢な肩を引き止める
ごめんな
「ミキティ」
「何?」
「好きなんだミキティのこと」
心がなくなってもいいと思えた
だけどひたすらに君を想う事だけは、許して欲しいと願った
たとえ、彼女があたしを嫌う事を選んでも
おしまい。
- 129 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/11/26(土) 21:29
- 久々に更新。みきよしは相変わらず熱いですよね。
更新していない間に色んな事があってどれをネタにしようか考えちゃいますよ。
終りが曖昧なのは許して下さい。続きはないです。
- 130 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/11/26(土) 21:30
- かくしておきます
- 131 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/11/26(土) 21:30
- そろそろ別カプを書かなきゃいけない気がします。
- 132 名前:名無し読者 投稿日:2005/11/26(土) 22:13
- 更新お疲れ様です!!
いつも更新楽しみにしてます♪
違うカプ……そろそろあやみきが見たい季節です(*´д`*)?笑
- 133 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/27(日) 06:20
- 新しいスレに移ってたことに今気付きましたorz
ツボにハマる作品ばかりで次も楽しみです
- 134 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:20
- 満月が、暗い夜道を照らしていた
それは、コンクリートの上を駆ける亜弥の背中を追っているようにも見えた
どこにも行く宛がない少女を嘲るように
月は冷たく微笑んでいた
冬の寒さにも負けない位に、亜弥の手は凍え切っていた
体温などまるでない、自分が自分でないような気がしてならなかった
それもすべて、このカラダのせい
「っ、ッハ…う…」
心臓が千切れそうな痛み
亜弥は堪らず、辿り着いた公園のベンチに身を投げ出す
寝転んで左胸に手をあてて、何度も何度も心のなかで唱える
ごめんね、走ったりしたから
落ち着かない呼吸を整えながら、自分を操っている心臓に語りかけた
壊れそうな心臓の音が、どくどくと聞こえて来る
- 135 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:21
-
来た
先程とは比べ物にならないくらいの痛みだ
いつもならば常備している薬は、手元にない
はぁ、はぁ、と乱れ出す呼吸は亜弥の心ごと狂わそうとしている
目を瞑っても襲い続ける痛みと苦しさ
原因は何かなんてとうに分かっていた
幼い頃から共に歩み続けて来た、喘息の症状である
こんなときにはいつも、愛して止まない美貴がいたのに
何も掴めない掌を広げても、あの温度は伝わって来る事はない
冷たい空気を掠めて、ますます身体が冷えて行くだけ
げほっ、げほっと咳き込んでも、背中をさすって抱きしめてくれる腕はない
たすけて
- 136 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:21
-
ものの大切さというのは、失ってから気付くものである
消えてしまいそうな意識のなかで、亜弥は涙を流した
痛みと苦しさと、愛おしさで
あのひとの名前を叫んで、今すぐ抱きしめて欲しい
湧き出て来る感情は素直だ
でも、あのとき何故自分は逃げてしまったのだろう
美貴は逃げるつもりなんてさらさらなかった
なのに何故
「み…っ…たん、はっ…あ…」
開きかけた唇に、冷たい風が入って来る
ひゅう、と音をたてて忍び込んだ風は亜弥の喉を冷まして行く
それが余計に亜弥の声をかき消していた
みきたん
愛おしくて、切なくて、何度も音の出ない喉を震わせた
- 137 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:22
-
自転車の鍵は、引き出しの奥にしまわれていた
美貴はやっとの思いで銀色に光るそれを見つけて、ポケットにねじ込んだ
部屋は滅茶苦茶な状態のまま物が散乱していた
部屋を出る際に、美貴はそれらを踏んづけながら階段を2つ程とばして駆けおりる
亜弥ちゃん、亜弥ちゃん
声には出さなかったけれど、亜弥以外の事なんて考えられなかった
空気が殆ど入っていないのを承知で、美貴は自転車に跨がった
普段使う事のない代物だったため、少しぎこちないスタートを切る
行き先なんて決めている筈がなかった
ただ、神経を研ぎすませて自転車を走らせる
自分なら亜弥の居場所ならすぐに見つけられる
自信はあったけれど、護ってあげられる自信はこれっぽっちもないのに
- 138 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:22
-
事の始まりは、亜弥がいなくなる数時間前のこと
亜弥を、傷付けてしまった
そして自分は、とんでもない事をしてしまったと気付く
美貴は自分に嘘をついてまで、亜弥を護りたかった
けれどそれは愛ではなく、単に自分が傷付きたく無かっただけで
- 139 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:23
-
『美貴なんかに、亜弥ちゃんは勿体無いよ。もっと他にいるでしょ?なんで美貴がいいのかなぁ』
後悔と、懺悔
ほとんどばればれの笑いを浮かべて美貴は至って不真面目だった
亜弥に体しても、自らの言葉に対しても責任なんて負うつもりはなかった
亜弥が自分のことを想い続けていることなんて最初から知っている
だからこそだ
自分は相応しく無いと厳しく教えるべきだった
- 140 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:23
-
亜弥は頑だった
美貴にそう言われても、形を変える気は起きなかった
けれど、今まで通りの関係を保つには、亜弥には荷が重過ぎたこと
美貴に解らなかった事の、ひとつだった
好きと言われて、嬉しかっただろう?
当たり前だ
美貴だって、亜弥のことを愛しているんだから
- 141 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:24
-
「ハァッ、ハァッ」
ぎぃぃ、と不吉な音をたてて自転車は坂道を登る
ペダルが重いせいで、体力には自信があった筈の自らの身体が限界を告げていた
美貴はがしゃんと自転車を乗り捨てて、坂道を走る
筋肉が悲鳴を上げるという表現を、初めて身に滲みて感じた
亜弥の痛みに比べたら、こんなもの
一度傷付けた癖に、往生際が悪い事はこの際どうでも良かった
もしかしたら、発作を起こしているかもしれない
予感は的中していたことを、美貴は未だ知らない
- 142 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:24
-
景色が掠れて行く
意識を手放したその時、自分はどこにいるのだろう
亜弥は美貴の名前を呼ぶのを止めて、ぱたりと手を下ろした
眠りに陥るのとは違う感覚である
死を告げられているかのような、そんな感覚だった
もうすぐ天使が迎えに来て、この痛みも苦しさもすべて忘れさせてくれる
それなら、本望だった
「…亜弥、ちゃ…」
砂利を蹴る音がする
亜弥の耳はもう殆ど音を聞き取れていなかった
蠢く人の気配をわずかに感じ取り、こほんと小さく咳をする
美貴は亜弥の冷えきった手を握って、その場にしゃがみこんだ
亜弥の頬が濡れている事に気付く
罪悪感で、こころがいっぱいだった
- 143 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:24
-
「亜弥ちゃん、美貴だよ、分かるよね?ねえっ、何してんのさこんな所で」
それは、亜弥にもしっかりと聞こえていた筈の言葉
しかし、亜弥が美貴の呼び掛けに反応することはなかった
美貴がだらりとした亜弥の身体を抱き起こして、冷たくなった身体を抱きしめても
亜弥が、美貴の名を呼び返してくれる気配はない
その瞬間、すべてが駄目になってしまったと悟る
亜弥の指と自分の指を絡めて、甲にキスをしても
いつもなら嫌がるけれど首筋に唇を寄せてくすぐってみても
唇を、重ねてみても
- 144 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:25
-
「亜弥…ちゃん?ねえ、止めてよ、冗談じゃないよ…ねえってば」
月は亜弥を見下ろしていた
嘲ることを止めて、静かに下界を見下ろしていた
- 145 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:25
-
美貴は亜弥を抱きしめて、声が枯れるほど泣叫んだ
涙腺はとっくに壊れてしまっている
抱きしめても抱きしめても満たされない温度に、堪え難いものを感じた
亜弥が苦しがっている時に、いつもこうやって背中をさすってやったのを覚えている
咳をしていれば、落ち着かせるように抱きかかえてやった
それがもう、出来ない
好きだと本当の気持ちを伝える事が、できない
「…っ…あぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」
狂気に満ちていた美貴の声が夜にこだまする
月はそれをじっと、眺めているだけだった
- 146 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:26
-
* * * * * * * * *
- 147 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:26
-
さやかに聞こえる、亜弥の鼻歌
日光をこれでもかと浴びた布団はふかふかで、美貴はそれにじっと伏せていた
病院独特のにおいと、お日さまのにおいで心がいっぱいだ
けれど、あまり気が乗らないのが本音である
亜弥はクスクスと微笑んで、昨日のことを思い出しては美貴の額にキスをする
美貴はそれが、恥ずかしくてたまらなかった
- 148 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:27
-
「たんってば、目ぇ真っ赤にさせて泣いてた」
「……だ、だからそれはさぁ」
「ママが言ってたんだよ?たんとあたしが公園にいたのを見つけて、びっくりしたって」
「………」
「あたしは気ぃ失ってるし、たんはずっと泣きっぱなしだったから」
「………」
「救急車で運ばれてる間中、みきたんこう言ってたって」
『亜弥ちゃんが死んじゃった』
「やめてよね、縁起でもないんだから」
「だっ、だって!美貴がずっと亜弥ちゃんの事呼んでるのに反応しないから…」
「だから、気失ってたんだって。たんもよく知ってるでしょ?あたし興奮すると発作酷いんだから」
淡々とした口調の亜弥とは正反対に、美貴はしょぼくれて布団に突っ伏したまま
恥ずかしい気持ちと、なんとも言えない複雑な気持ちが入り混じる
この世の終わりかと思っていたのに、亜弥は1日経って凄く元気だ
発作を起こした理由がこの自分なんだから、申し訳ない気持ちはあるけれど
なんか、納得行かない
- 149 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:27
-
ここの所亜弥の発作が収まっていたので、担当の主治医からは厳重注意を頂いた
亜弥の主治医とは美貴も面識があったので、こっぴどく叱られたのだ
当然、二人の関係も重々承知の上でのことである
『亜弥ちゃんを泣かせたら、許さないからね』
いや、泣かされたのは美貴なんですけど……
「で、まだあたし聞かされてないんだけど」
「……え?」
「…発作もあったし、あたしも意識ボーッとしてたからだけど」
「……なに?」
「ちゃんと、答えてよ。あたしの気持ちに。もう、はぐらかしたりしないでよ」
ドキッとした瞬間はわずかで、でも本当にびっくりして
美貴は自分の手を握り、頬を少し赤く染めている亜弥と目を合わせる事が出来なかった
昔からよく知っている、幼い亜弥ではない
もう立派な大人のうちに入り、美貴のことを愛してくれている
ここで正直にならなければ、また発作を起こしてしまうかもしれないんだから
- 150 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:28
-
泣き明かしたせいでウサギのような目で、亜弥を見る
そして、言えなかった言葉を全部吐き出した
「…勿体無いとか、ごめん。亜弥ちゃんが好き」
「うん。あたしも、たんが好き」
「……あ、あの時…した、んだけど…覚えて無い?」
「あの時って…あたしが気失ってる時?」
「うん」
「…たん、何かしたの?」
キスしてやったなんて、死んでも言えない
美貴は迫り寄る亜弥を避けて、顔を赤くさせて病室の中を逃げ回った
それを亜弥が追いかけて、病み上がりのくせに元気過ぎるんだよと美貴が追い返す
パジャマ姿で変わらない笑顔を見せる亜弥は、やっぱり昔のまま可愛くて
すっぽりと、美貴の腕に収まってしまう亜弥が愛おしかった
- 151 名前:あいしてる 投稿日:2005/11/27(日) 16:28
-
「亜弥ちゃんが好き過ぎて、おかしくなりそう」
こつん、と額と額を合わせて、美貴は独り言のように呟く
でもそれは亜弥にもはっきりと聞こえていて、お互いに頬を真っ赤にさせた
自分の額に、頬に次々と口付ける美貴を押し退ける訳には行かない
最後に口付けられた唇の感触を感じて、亜弥は美貴の首筋に鼻を押し付けた
「たん、大好き」
心臓の痛みも、苦しみも
美貴の想いが強過ぎて、亜弥の負担になっていただけ
美貴はそう思う事にして、亜弥にまた口付けをするのだった
おしまい。
- 152 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/11/27(日) 16:32
- ああ、楽しかった(超自己満足
こういうあやみきを書くのが結構好きです。
ていうかあやみき自体久しぶりに書いた気がします。
>名無し読者さん
冬っていうとあやみきな感じしません?あったかい部屋でべたべたべたべたしてそうです。
一声を頂いたので、書いてみました。やる気を出させてくれてありがとうございました。
>名無飼育さん
新スレたててましたー。駄文にも関わらずおつき合いありがとうございます。
これからもどうぞよろしくお願い致します。
- 153 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/11/28(月) 04:04
- ああああぁぁなんちゅう話だああぁぁ!!
と思ったらそういうことですか。なんだ。よかった。
でもえらい取り乱してたついさっきの自分思い出すと恥ずかしいです。
- 154 名前:名無し読者 投稿日:2005/11/28(月) 17:20
- ・・・うぅっ、よかったよかった、ビックリしちまったけどあやみきがラブラブでホッとしました♪やっぱ冬はあやみきですね〜癒されますヽ(=´▽`=)ノ笑
- 155 名前:友達 投稿日:2005/12/04(日) 17:59
- 「ごっちん、入るよー?」
「わ、待って待って」
二人の間に、遠慮だとか不自然な言葉は必要無かった
いくら真希の部屋が汚くて整とんがされていなくても、亜弥が片付けてくれるし
亜弥が泣いていれば、真希が頭を撫でてくれる
殆ど言葉のキャッチボールは交わさない仲であると同時に
仲が良い、友達同士
- 156 名前:友達 投稿日:2005/12/04(日) 17:59
-
亜弥は真希の部屋に滑り込むと同時にベッドの上へダイブした
ごろごろと転がり、まるで猫のように自分の匂いを擦り付けて満足げに笑みを浮かべている
真希は亜弥に気付かれないような小さな溜め息を吐いてから、参考書とノートを閉じた
亜弥が来てしまった以上、勉強のできる環境にはならない
「止めちゃうの?」
「うん。てか、止めて欲しいでしょ?」
「うん。よくわかってんじゃん、ごっちん」
「で、今日はなに?」
亜弥の横に座って、真希はいつもと同じような口調で会話を始める
聞くまでもないが、亜弥が自分の家に訪れる時は決まってこうである
何か悩みがあったり、腹をたてた時、悲しくなった時
もしくは
- 157 名前:友達 投稿日:2005/12/04(日) 18:00
-
「―――あのね、ミキたんが今日ね」
ごくたまにではあるが、楽しそうに『ミキたん』の話をする亜弥が疎ましいと感じる
だからと言って真希は亜弥を追い返したり、感情を尖らせる事はしない
何よりも彼女が声のトーンを変えて喋り出す事に胃がムカムカしてしまう
同時に、熱いコーヒーを胃に流し込んだような感覚
「購買でパン買ってたんだけどぉ、間違ってアンパン選んじゃってて」
「うん」
「ミキたんあんこ嫌いなのにだよ?わっけわかんないよねー」
「へえ」
「で、その後に石川先輩のお弁当別けてもらっててー。かわいいんだよー」
- 158 名前:友達 投稿日:2005/12/04(日) 18:00
-
話を聞く限り、なんとなく『ミキたん』という姿も知らぬ人物を頭で描けるようになった
きっとツリ目で気が強くて負けず嫌いで、でも気が弱い所もあって優しくて
想像に近い現実だと思った
なぜなら、亜弥がこんなにも優しい顔をして『ミキたん』との出来事を語るのだから
たぶん、悪い人じゃない
分かっていても蠢き続ける、コーヒーの感覚はおさまらなかった
「ちょっとごっちんに似てるかも」
「え?」
「そやって、人の話聞いてくれない所とかー」
「聞いてるよ。ちゃんと」
「うそ。上の空だったよ。あたしの話、つまんない?」
「や、そんなことないよ。おもしろいおもしろい」
「棒読みじゃん。あたし何かしちゃった?」
亜弥に何かされたというならば、思い当たる節は限られている
四六時中、頭に浮かんでは消えて行く亜弥の姿だけが唯一の被害だ
決して気分を害されたわけではなかった
けれど、逆に気分が優れないというのは事実でもある
何かされたというよりは、今更気付いた気持ちに戸惑っているだけ
それだけ
- 159 名前:友達 投稿日:2005/12/05(月) 18:21
-
「なにも。まっつーは何もしてないよ」
「…ほんとぉ?」
「ん。ちょっと、色々あって」
「色々ってなに?あたしが聞いちゃいけないこと?」
「んー、そういう訳じゃないけどさ」
「話してよ。あたしだって、ごっちんにいっぱい喋ってばっかなんだから」
求められたなら、言葉にしても後悔は少ないだろうか
一瞬過った思いに身を任せそうになるが、真希は不安気に自分を見上げる亜弥の頭を撫でた
亜弥が物事を秘密にされることを嫌うのは自分がよく知っている
それが余計に、この想いを急かしているのかもしれない
- 160 名前:友達 投稿日:2005/12/05(月) 18:22
-
「だいじょぶ。もうちょっとしたらまっつーに教えたげるから」
「…もうちょっとって、いつ?」
「そのうちね。ほら、帰った帰った」
「えぇー?気になるんだけど」
「だから、そのうちだって」
- 161 名前:友達 投稿日:2005/12/05(月) 18:22
-
人を騙すのは得意な方じゃない
相手が亜弥だったから、こんなはぐらかし方が使えただけのこと
到底2、3ヶ月も持たないということは真希も勘付いていた
しかし、鈍感な亜弥のことである
きっとこの想いを打ち明けたとしても、笑って冗談だよね?と肩を小突かれる
構わなかった
- 162 名前:友達 投稿日:2005/12/05(月) 18:23
-
「ごっちん、何かヘンだよ」
「いつもと同じだよ。じゃ、ばいばい」
「んー、何か納得行かないけど。ばいばいっ、おやすみ」
「ん、おやすみ」
二人の間に、遠慮だとか不自然な言葉は必要無かった
いくら真希の部屋が汚くて整とんがされていなくても、亜弥が片付けてくれるし
亜弥が泣いていれば、真希が頭を撫でてくれる
殆ど言葉のキャッチボールは交わさない仲であると同時に
仲が良い、友達同士
きっとこれからも、友達同士
おしまい。
- 163 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/12/05(月) 18:24
- 間が空いてしまいすいません。読みにくかったですね。
ちょっと今立て込んでるのでレスは後日返しまーす。
あやごまでした。
- 164 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/06(火) 02:39
- せつない・・・
- 165 名前:名無飼育さん 投稿日:2005/12/12(月) 04:56
- 突然失礼します。
いま、2005年の飼育を振り返っての投票イベント
「2005飼育小説大賞」が企画されています。よろしければ一度、
案内板の飼育大賞準備スレをご覧になっていただければと思います。
お邪魔してすみませんでした。ありがとうございます。
- 166 名前:what is it? 投稿日:2005/12/12(月) 16:58
- 好きだとか、愛してるだとか。そんな言葉はただの飾りに過ぎない。
あくまでも身体で表現する代わりに用意しておくとっておきの技、みたいな?
でもそれで世界中の女がオチると思ったら大間違いだって。
今、美貴の目の前にいる人とかさ。
- 167 名前:what is it? 投稿日:2005/12/12(月) 16:58
-
「で、結局エッチまで行っちゃったワケだ」
「おー、分かってるじゃん美貴ちゃんさん。さっすがあたしの愛し…」
「言わないで。言ったらよっちゃんのこと本当に軽蔑しそうだから」
「そりゃ困るな。分かったよ、言いませんよ」
「よっちゃんもいい加減にしないと大変なことになるよ」
「ほー、その大変な事とはなんだい?」
「殺されるかも」
「愛しい人に殺されるならそれも本望だね」
「…はぁ」
- 168 名前:what is it? 投稿日:2005/12/12(月) 16:58
-
節操無しの貞操にはこちらもしばしば驚かされる。
無類の人間好きというか、人懐っこさが高じてこんな変態が出来上がってしまうのだろうか。
優しくされればほいほいと後を追い、そのくせ飽きたら他の飼い主へ移る。
よっちゃんて、人間以下の生き物として存在しているような気がしてならないんだ。美貴はね。
だからこの人の言う甘い言葉やクラッと来るような囁きも聞きたく無い。
だって、頭の中でいつまでも響いてるんだもん。よっちゃんの低めの男らしい声とか、彼女特有の仕種とか。
たまに美貴の家にやってきてはべらべらと色んな事を喋ってくれる。
今日あった出来事とか、楽しかった事辛かった事。美貴はそれを聞いて上げてる。
まあ、聞いてるだけじゃ腹が立ってどうしようもない内容ばっかりだから引っぱたいたりする事もあるけど。
そんな感じでかれこれ3年くらい友達やってるのかな。なんか、歴史だよね。
言っておくけど、美貴は健全でチャラチャラしたようなこいつとは違う種類の人間だから。
誰でも彼でも貞操を捧げるワケじゃないし(かと言って処女でもない)、身体奪って心もとない相手を傷付けるような非道な女の子じゃない。
- 169 名前:what is it? 投稿日:2005/12/12(月) 16:59
-
「もう、早く帰りなって。家にあの子置いてるんじゃないの?」
「あー、知らない」
「知らないって…待ってるんでしょ、その子。美貴だってもう仕事行かなきゃいけないし」
「じゃ待ってるから仕事行っといでよ。とびきりの夕飯作って待ってるからね」
「や、そういうことじゃなくて」
人の家に勝手に上がり込んだ上に、美貴のベッドを占領してごろごろ転がってる。
眠そうな瞳からは、『朝方までずっとヤッてました』みたいな雰囲気が伺える。相当疲れてるみたいだ。
別によっちゃんは美貴のお手伝いさんでもないんだから、飯作ってあげるなんてことも必要ない。
かと言って、それを言葉にしてよっちゃんにぶつけてしまったら彼女は傷付くだろう。
意外に、ナイーブな一面だってある。
- 170 名前:what is it? 投稿日:2005/12/12(月) 16:59
-
「…ま、いっか。美貴、もう行くからね?」
「うん。行ってらっしゃい」
「は?何だよこの手は」
「勿論、行って来ますのチュー」
バキッ
「…か、顔は止めてよボディーボディー」
「バカ。勝手にしなよ、もう」
「うんじゃあそうする」
- 171 名前:what is it? 投稿日:2005/12/12(月) 17:00
-
美貴はそう言って仕事へ向った。
家によっちゃんをひとり残して置いたら、きっと好き放題やりまくってくれるだろう。
帰って来たら冷蔵庫に入っているビールやチューハイが消えていて、美味しい料理が待っていて。
お風呂場の床がビショビショに濡れたままになっていて、ただいまとおかえりのやりとりとして。
なんか、バカみたい。
美貴がよっちゃんと一緒に生活してるみたいで。こんなこと考えちゃってる美貴もどうかしてる。
期待なんか1ミクロンだって持っていないはず。おかしいって分かっててもそのままにしておいちゃう。
それは多分相手がよっちゃんだから。
よっちゃんを叩いた手がほんのすこしあったかい。
ああ、結構痛かったのかもしれない。そう思う。
おしまい。
- 172 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/12/12(月) 17:04
- みきよし。友達じゃなくて、恋人じゃなくてみたいな。
もう年末が近くなって参りましたね。
藤本さんの写真集の表紙に見事瞬殺された私はそれを片手に新年を迎えたいと思います。
今年はあと2回くらい更新すると思われます。
では。
>名無飼育さん
あららー、すいません驚かせてしまったみたいで。レスありがとうございました。
>名無し読者さん
今年は凄く寒いみたいなんで二人とも身体に気を付けてイチャコラしてて欲しいです。
また御希望があればあやみき書かせて頂きます。
>名無飼育さん
あやごまは両想いよりどっちずかずの方がキュンキュンします私的に(何
レスありがとうございましたー。
- 173 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/12/12(月) 17:06
- おっと。何やら投票イベントが開催される模様ですね。
ちょっくら見て来ます。
- 174 名前:愛だとか、証だとか 投稿日:2005/12/23(金) 17:33
- 美貴との関係は、全てゼロから始まった
取りあえず一番最初の出会いは人気の無い公園だった
夜眠れない時に外を出歩くあたしの存在など露知らず、彼女の呼吸は乱れていた
厭らしい唾液と唾液が絡まる音
はぁ、と溜め息を吐いた先にあるのは公然猥褻の真っ最中
唇を重ね合うカップルがそこにいた
あたしは見て見ぬフリをして公園を出た
だって見学してる訳にも行かないし
一瞬のうちに気分を害されたのだからすぐにでも消し去りたい記憶だ
男の影から見えた、栗色の綺麗な髪をした女の顔がとても綺麗だった事意外は
- 175 名前:愛だとか、証だとか 投稿日:2005/12/23(金) 17:34
-
それから暫く経って、二回目の出会いを果たした
体して興味も無いのに首を突っ込んだ合コンは予想通り面白く無く
目の前で仏頂面を下げる彼女の存在に気付いたのは、あたしに酔いが回った頃だった
見れば、あの時のヘンなカップルのかたっぽの女
視線を何処かに置いて、馴れ馴れしく寄って来る送り狼達をけむがってるようだった
不意に目が合う
やっぱり、これまでに見た事のないほどのかわいらしさがあった
「送ってよ」
狼達を遮って、彼女はあたしの腕をキュッと引っ張った
やけに卑しいその瞳にあたしは吸い込まれるかのようにあっけにとられていた
だからと言って腕を解きたい気持ちはこれっぽっちも無くて
結局、あたしは狼に喰われそうな山羊を助けてしまった
さっき飲んだウーロンハイの味が、ぐっと込み上げて来た
- 176 名前:愛だとか、証だとか 投稿日:2005/12/23(金) 17:34
-
彼女はあたしを覚えているだろうか
いや、知っている筈がないだってアレはあたしが勝手に見ちゃっただけなんだから
そう言い聞かせて、彼女が歩く度に揺れる小柄な影を見つめていた
街灯がこの少ない道を、いつもひとりで帰るらしい
公園で見たあの時の厭らしい空気など、少しも感じさせない
少し微笑んだ表情が、とても可愛い
「名前、なんていうの?」
「ミキ」
「そっか。あたしは…」
「よっちゃん。でしょ?」
よっちゃん
嬉しそうにあたしの名を呼ぶ彼女が、ほんとうに愛しいと感じてしまった
悪戯な笑顔を全部包んでしまいたい
この手で彼女のすべてを支配してしまいたい
そんな衝動に駆られたのは、これが最初で最後だった
- 177 名前:愛だとか、証だとか 投稿日:2005/12/23(金) 17:35
-
朝起きた時に思い出せたできごとは
彼女を好きになってしまったことと
卑しい彼女の瞳の、虜になってしまったことだけだった
- 178 名前:愛だとか、証だとか 投稿日:2005/12/23(金) 17:35
-
「よっちゃん、だっこ」
「へいへい。ちょっと待って」
まだ乾いていない濡れた髪をガシガシと拭くあたしの腰に抱きついて、彼女は甘える
嬉しそうに、はやくはやくと急かす彼女はまるで子供のようだ
お望み通りにしてやると、ぱあっと笑う
ああ、かわいい
無意識に、無条件にそう思ってしまうのは恋をしているからだと思う
「美貴はさ、なんであたしなの?」
「は?」
「何で、あたしに送り狼させたの?」
美貴は吹き出して笑った
なんだかバカにされたみたいで悔しくて、冷蔵庫の扉を少しだけ強く閉めた
- 179 名前:愛だとか、証だとか 投稿日:2005/12/23(金) 17:36
-
「覚えてたから」
「何を?」
「公園で、セックスしてた所。よっちゃんが覗き見してた」
勢いで、あたしはビール缶2本を床に落としてしまった
唖然とするあたしを他所に、美貴は至って冷静に状況を説明し始めた
なんか色んな情報が錯誤して誤解を招いてる気がする
あたしは変型したビールの缶を拾い上げて、よっこらせとソファに腰掛ける
内心、どきどきしていた
- 180 名前:愛だとか、証だとか 投稿日:2005/12/23(金) 17:36
-
「趣味悪いよね、人のセックス見るなんて」
「違うって、覗き見じゃないから。偶然だよ、偶然!」
「分かってるよ。ムキになりすぎ。かわいいんだから」
「…大体、何で今更そんなのぶり返して来るかなぁ…」
「よっちゃんが聞いたんじゃん」
美貴は狡い
そして、あたし以上にエロい女だと言う事が分かった
あたしの頬をふにふにと指で突いて、ちゅっとキスをされる
あの事を思い出すと、顔が熱くなってとても不快な気分になる
美貴はあたしので
あたしは美貴ので
なのになんであんな男と?
「ねえ、付き合ってたの?その…してた男と」
「うん」
「……へぇ」
「付き合ってたつっても、ヤリたかっただけだし。あ、美貴がじゃないよ?あっちがね」
「分かってるよ」
- 181 名前:愛だとか、証だとか 投稿日:2005/12/23(金) 17:37
-
あたし以外の誰かが美貴に触れた事が許せなくて
つい怒ったような口調になった
だけど怒ってる訳じゃなくて、歯がゆかっただけ
美貴はあたしのなのにっていう気持ちが強過ぎたから
「でも、よっちゃんの方が良い」
「…ん?」
「よっちゃんとしてる時が、一番良いから」
だ、そうだ
顔もよく知らない男に嫉妬したあたしを、美貴は察したようだ
あたしの指と自分の指を絡めて、唇を少し舐めてそう言った
でも何故か、それ以上の言葉を言われるのがなんだか嫌で仕方なくて
覗いた赤い舌に、素早く食らいつく
- 182 名前:愛だとか、証だとか 投稿日:2005/12/23(金) 17:37
-
「ん、ヤッ、ハンッ!あぁっ、よっちゃんっ!」
「美貴、美貴っ」
ゼロから始まったなんて嘘かもしれない
運命だとしか思いたく無いと、美貴の身体に触れてそう思う
出会うべき運命だった
取りあえず、ちゃんとした貞操を教えてやらないといけない気がする
きっと美貴は寂しくてしょうがなくて
だから、抱いて抱かれてそれを満たそうとしてた
不意に落ちててくるキスにまどろんで、睡魔が襲って来る
目を開こうにも、美貴の唇がそれを許さないらしい
おやすみ、と一言呟いてあたしは華奢な肩を抱いて眠った
手放しちゃいけない気がしたから
おしまい。
- 183 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/12/23(金) 17:38
- みきよし。男の影がちらほらあったりするので嫌悪感を感じる方はスルーして下さい。
- 184 名前:三田久郎酢 投稿日:2005/12/23(金) 17:41
- 今年の更新はこれが最後だと思われます。
皆さん良いお年を。1つ心残りなのは紅白で娘。が19人出場って事だけです・゚・(ノД`)・゚・
大杉。
- 185 名前:名無し読者 投稿日:2005/12/24(土) 10:02
- 更新ありがとうございます。ここはいつもチェックしてます。
来年も是非お願いします!!
- 186 名前:tricky 投稿日:2006/01/05(木) 17:08
-
「よっちゃん」
「ん?」
「よっちゃんは美貴の事好きですか」
「は?」
「いいからゆって」
- 187 名前:tricky 投稿日:2006/01/05(木) 17:08
-
可愛く三つ編みなんかしちゃって、女の子だなぁ。
なんてぼうっとしていると、唐突な質問を投げかけて来る不安げな瞳。
なんだい、何かあったのかい?
なんて軽く問う事はしにくい、非常に緊迫した雰囲気が漂っていた。
いくら鈍感なあたしでも、最愛のヒトが何か大事な事を伝えようとしている事くらい。
分かった。
- 188 名前:tricky 投稿日:2006/01/05(木) 17:09
-
ふ、と小さく笑ってうんと頷く。
すると美貴はそっか、とだけ言ってとことこ洗面台へ行ってしまう。
何がしたいんだろ。
あたしより遥かに知能が高いはずの彼女が、まるでちいさな子供のような事をする。
頭をぽりぽりと掻いて、面白く無い漫才コンビの談笑に耳を傾けていると。
美貴がぽすん、と元いた場所に座っていた。
「何してたの?」
「三つ編み、やりなおしてた」
「あ、そっか。うん」
「よっちゃん」
「ん?」
「よっちゃんは何で美貴と一緒にいるの?」
アラ。
おばちゃん風のリアクションをして、あたしは少しの間考え込んだ。
美貴は首を傾げて、あたしの返事を待っているようだった。
こんなクソ真面目に質問をしてくる彼女は見た事がない。
しかも、結構くさい事聞くんだな。
- 189 名前:tricky 投稿日:2006/01/05(木) 17:09
-
「そりゃ、好きだからでしょ」
「ちがう。そういうんじゃなくて」
「なんだよ、ちゃんと言わないとわかんないぞ」
「…」
あ、まずいな。
美貴はちゃんと喋ってた。自分の聞きたい事あたしに聞いただけだよ。
答えにくいからつい、上からものを言うような感じになっちゃった。
美貴は唇を尖らせて、拗ねるような顔をする。
あーこんちくしょうかわいいぞ。
頭撫でてやってキスしてやってぎゅっとしてやりたい衝動に駆られる。
- 190 名前:tricky 投稿日:2006/01/05(木) 17:10
-
「ごめんごめん。でも何でそゆこと聞くの?」
「…こわいから」
「怖い?あたしが?」
「ちがうってば」
「怒るなよ」
「おこってない。こういう事言いたくないからやっぱいい」
「おいおいそれじゃさっきまでの質問は何だったのさ。ちゃんとゆって?」
「やだ」
「やだじゃない。あたしが聞きたい」
自分から切り出したくせに、なんかもじもじしちゃって。
あたしに言えないくらいの秘密なんて、持って良いと思ってんのか?
三つ編みに結った髪を解いて、ウェーブがかかった髪にキスをする。
美貴はあたしの肩を押して、力無い抵抗を見せて「ぁう」とだけ聞き取れる言葉を発した。
強情な奴。そんなんだから、ミキサマなんて言われるんだよ。
- 191 名前:tricky 投稿日:2006/01/05(木) 17:10
-
「さ、ゆってごらん」
「…笑わない?」
「笑わないよ」
「……うざいって思う」
「思わない。美貴の事うざいなんて思った事一度も無いよ」
額と額を合わせて、美貴の耳元でちいさく呟く。
愛情表現が豊かじゃない美貴ならではの方法で、彼女はあたしの服を握りしめてくいくいと引っ張る。
どこからか香る美貴独特の甘いにおいが、あたしの鼻腔をくすぐって落ち着かせない。
人間ってどういうふうにこう、ホルモンを分泌しているんだろう。
そそられるというか、我慢出来なくなる性欲が湧いて来てしまう。
- 192 名前:tricky 投稿日:2006/01/05(木) 17:11
-
「……だからぁ――――」
ぼそぼそと美貴が喋り出す。あたしはテレビを消して、その声に耳を澄ませた。
ひとつでも聞き逃してしまったら、きっと美貴は拗ねてしまうから。
あたしは全てを聞き終えてから、ぎゅうぎゅうと美貴を抱きしめた。
世界にこんな愛おしい人がいて、あたしは本当に幸せものだなぁ。
なんてのろけは誰も聞いてくれないから、自分の胸にしまっておくことにした。
- 193 名前:tricky 投稿日:2006/01/05(木) 17:11
-
「こういうこと、ほんとは言いたく無かったんだから」
「にひひ、かぁいいなぁー美貴ちゃんはー」
「やだ、こっちこないで」
「拗ねるなよー。ほら、こっち来ないとちゅうしてやんないぞ」
「………ばかじゃないの、よっちゃん」
「馬鹿で結構。好きだよ」
馬鹿だろうが何だろうが構わない。それでもあたしが好きなんだろう?
キザっぽいあたしの言葉を無視して、美貴は大人しくあたしの胸におさまる。
こいつは素直じゃない。ほんっとに。
ずっと待ち焦がれていた唇に触れた瞬間、すべてが弾けてスイッチが壊れた。
断続的に漏れる美貴の艶っぽい声を忘れられる事が出来なくて、また舌を絡めて、唇を舐めて。
よっちゃんて自分の欲望が第一のニンゲンなんだよ。
だから美貴のことこういう風にしたりするんでしょ。
すべてが終った後に、あたしの身体にしがみつくようにして美貴は言う。
そんな疲れ切った身体で、しかも眠そうな顔で言われても説得力ないのに。
あたしはそうだよ、と返事しただけで、あとは何も言わない様にした。
なのに、美貴がそれを許さない。
かふ、とあたしの喉元に噛み付いて、もっと何か言う事はないのかと訴えかけて来た。
- 194 名前:tricky 投稿日:2006/01/05(木) 17:11
-
「…あのな、あたしをサカりのついた猿みたいな言い方をするな」
「だってそうじゃん。ちがってないよ」
「そりゃそうかもしれないけど。でも美貴がそうさせるんだからしょうがないじゃん」
「っ…ちょ、や!ダメ!」
「言ったろ?あたしは自分の欲望が第一のニンゲンなんだって」
求めても求めても、足りないのは何故なんだろう。
きっとそれは美貴がそうさせるんであって、あたしにはこれっぽっちも理由はない。
そしてまた美貴を不眠へと導くんだ。
薄暗い明りが灯る部屋の中で、何度も美貴の名前を呼んでそう思った。
おしまい。
- 195 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/01/05(木) 17:15
- 明けましておめでとうございます。
今年も色々とお世話になるつもりなので、よろしくお願いします。
紅白での吉澤さんと藤本さんの美しさに卒倒してしまいましたが
今年もそんな調子で執筆に力を入れたいと思います。
一発目はみきよし。結構甘めだったかなぁ。
>名無し読者さん いやいやありがとうございます。今年も駄文におつき合い願います。
- 196 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/01/06(金) 00:31
- あけましておめでとうございます
今年もよろしくです
そして更新お疲れ様です
新年しょっぱなからのあま〜いみきよしをニヤニヤしつつ拝見しました
最高です!みきよしいいっすねぇ〜
今年もたくさんのステキなお話、楽しみにしています
- 197 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 20:59
- その日の夜はとても冷えた。
今年一番の最低気温を記録しただけに、いつも賑わっているおでんの屋台も今日は姿がない。
このまま真直ぐ家に帰れば、身体もあたたまるし美味しい御飯だって食べられる。
それに一番風呂だって入れる。
だけど今晩は、そんな気分にはなれなかった。彼女のいる家には、帰りたくなかった。
北風がひとつの塊みたく結合して、顔面を直撃する。
痛いし寒いし、ポケットに突っ込んだ冷えた手先は温もりを感じない。
ポケットの中で握りしめた携帯が微かに振動して、あたしの蟠りをどんどん広げて行く。
メールなんて見なくても内容はだいたい解る。
- 198 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 20:59
-
バイト終った?御飯作っちゃったけど、どうする?
- 199 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:00
-
って所だろう。彼女には悪いけれど、今夜は帰らないつもりだ。
電話もする気にはなれない。声を聞いたら、あいつへの未練とか理性とか全部壊れちゃうから。
彼女には悪いと思う。本当に、すまないと思う。
裏切りとは違ったこの気持ちを、彼女は分かってくれるだろうか。
言い訳も程程に、あたしは夜道をフラフラと渡り歩いた。
目的地は無い。放浪してる間、あやふやになってしまったあいつとの思い出を思い出していた。
- 200 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:01
-
冷めたやつだった。
去るもの追わずと言ったタイプで、常に冷静を装おうクールな人間だった。
何に対しても興味なさ気な瞳で物事を見つめ、何か喋ったと思えばトゲトゲしい批評。
そのため、同性からも異性からも好かれるタイプではなかったと思う。
我が道を行く。かなり質の悪い、マイペースなやつだった。
かわいいやつだった。
時折見せる笑顔には、ほんとうの女の子らしさが表れていてあたしはそれが好きだった。
決して人に弱味を見せず、常に強くいようとする意地っ張りな所はまるで肉食動物みたいだ。
何でかって?あいつが自分でそう言ったからだ。
あたしの話を時には軽く、時にはクソマジメに聞いてくれた良いやつだった。
どちらからでもなくあたし達は付き合う事になって、適当に1年を過していた。
適当にデートをして、適当に手繋いだりキスして、適当に身体を重ねて。
言葉にはしてくれなかったけど、あいつはあたしの事を想ってくれていたらしい。
口にしない分、いろんな愛情表現でそれを示していた。
あたしはあいつのことを、他の誰よりも愛していた。
好きだった。
いや、違う。今でもそれは、変わらないんだけど。
- 201 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:01
-
「わーやべーさびー」
夜道で独り言を言うなんて、どこぞの不審者だろう。
時刻は真夜中の二時過ぎを回っている。彼女はあたしの帰りを待って、心配している頃だろう。
剥き出しになった顔に吹き付ける風がさっきよりも強く、冷たく感じた。
行く宛なんて無い。…嘘。本当はある。
久しぶりに見上げる、茶色のタイルが巡るマンション。
よくこのマンション前で、別れのキスをした。と言っても、頬だけのキスだったな。
何でだったっけ。あいつはちゃんとしたキスをしたがらなかった。
『よっちゃん、唇乾いてて痛いからヤ』
だった、な。
あたしの唇を手で押し退けて、代わりに頬に音をたててキスをしてくれてたっけ。
- 202 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:02
-
あいつが住むこのマンションに訪れたのは、別れてから始めてだ。
最後に家まで送ったのはいつだったか。今みたいな寒い夜だった気がする。
ただ一つ違うのは、あいつの髪が伸びて、一段ときれいになった事だろうか。
- 203 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:03
-
目が合ったその先には、あのキツい茶色の瞳。
栗色の滑らかな髪が、肩より下にまで伸びていた。
疑いを含んだ警戒心たっぷりのあいつが、あたしを睨んでいた。
懐かしい。そう思った。
あたしはポケットに突っ込んだ両手を出して、持て余し気味に両手を擦った。
よ、久しぶり。
軽く挨拶をした所で、思い出話に花を咲かせる。
そんなの無理だった。思ったより緊張してしまって、手に汗なんかかいてら。
それ以上に、美貴は驚いた様子だった。
人をビビらせるようなその無表情な態度からは、いかに動揺しているかが伺える。
やっぱり、気まずかった。
- 204 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:03
-
「ひさしぶり。元気?」
「何してんの?」
「やー、うん。ちょっと近くまで来たから寄ってみようかなと」
真っ赤な嘘だって、美貴は気付いてた。
昔っから勘の鋭いやつだったもんな。あたしの苦し紛れの微笑に、美貴は目を逸らして俯いた。
本当は違うんでしょう?
そう尋ねてくれるのを待つのが今はベストかもしれない。
だけど、そんなんじゃあたしが何をしに来たのか全然伝わらない気がして一歩歩み寄る。
美貴の肩がびくんと小さく揺れたのが分かった。
- 205 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:04
-
「あー…ちょっと話したいんだけど。良い?」
「ごめ、今日は無理。今度、また話そうよ」
「今度っていつ…ってか、うん。すぐ終るからさ。ごめん」
引き止めないと、もう二度と美貴に会えないような気がした。
今この場で再会していることすら、現実にあって良い事なのか解らないのに。
二度目は、無い。
- 206 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:05
-
美貴はすごく悲しそうな顔をして部屋に入れてくれた。
罪悪感。またひとつ、あたしはバカな事をしたと後悔しながら美貴の後を歩く。
部屋は相変わらず白黒で統一されていて、ごくシンプルな家具がデザイン良く並んでいた。
小さな子犬がトトト、と美貴の足に戯れついても何も動じない。
やっぱり、あたしとの空間に拒絶を感じている様だった。息苦しそうに。
「かわんないね、部屋。今、彼氏とかいんの?」
「話って、なに?疲れてるから、はやくして欲しいんだけど」
「あー、うん。分かった。ごめんな」
「ううん」
ナイフで腹をかっさかれたような痛み。
- 207 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:05
-
これくらいどうって事ないさ、なんて済ませられる痛みじゃなかった。
別に傷ついた訳じゃない。あたしが美貴を傷つけた痛みに比べたら、こんなのどうだって良いのに。
せつねぇ。
虚ろな美貴の瞳を覗き込んで、ごめんなと呟いた。
- 208 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:06
-
かわらない。これじゃ、あの日と同じじゃねえかよ。
美貴を振って、傷付けて、酷い事をした。あたしは今も後悔してる。
手放した事を、後悔している。
抱きしめて良い?
一言、承諾を得ようとして目を合わせないまま美貴に告げた。
返事はない。それでもあたしは、美貴の身体を以前と同じように引き寄せた。
子犬があたしと美貴の間に分け入ろうとする。
- 209 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:06
-
「ごめん。ほんと、ごめんな。うん、ごめん」
「ごめんじゃわかんないよ。やだ、はなしてよっちゃん」
「好き。あたし、まだ美貴が好きだよ。美貴があたしの事嫌いでも、あたしは」
「ダメだってば、ねぇっ、よっちゃん!」
駄々をこねる子供みたいに、あたしは美貴にしがみついた。
好きで好きで好きで好きで好きで好きで。仕方ないんだってこと、伝えなきゃって必死だった。
前みたいにあたしの下らない冗句に付き合って笑って欲しい。
前みたいにあたしの前で泣きじゃくって我侭を言って欲しい。
前みたいに、あたしを好きだと言って欲しい。
子供を相手に美貴は苦しそうに腕を振り払った。
弱く、優しく振り払った。あたしは大人しくなって、美貴の手を解く。
頭の中でグルグルと巡るのは嫌な感情ばかりで、どれもあたしの心を落ち着かせるようなものじゃなかった。
最低だ。
- 210 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:07
-
「…も、帰って。お願いだから」
栗色の髪を手でとかして、美貴は掠れた声であたしに言った。
従う他無い。あたしも美貴も、お互いに泣きそうだってことに気付いたから。
美貴の潤んだ瞳が、あたしの涙腺を緩ませようとかかってくる。
もうどうにもならないんだね。
あたしは何も言わずに、スニーカーの踵を踏んで電球が切れかかった玄関の天井を見上げた。
オレンジ色の、きれいな明り。
- 211 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:07
-
いつか、美貴が言ってた。
――美貴ね、よっちゃんの事最初嫌いだったんだよ。
- 212 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:08
-
『あ、やっぱそうだったんだ』
『気付いてたんだ。なんかさ、うざったくてしょうがなかった』
『うーわ、厳しいなぁ』
『一人で偽善者ぶって、美貴にしつこく付きまとって。同情してんのかコイツって思ってた』
『…マジで?そんなにうざかった?』
『うん。でもね』
『ん?』
『美貴の事好きって言うから、好きになっちゃったんだよ』
初めて見た、美貴の笑顔がまぶしくて思わずあたしは呆然として。
美貴は不思議そうに首を傾げて、バーカとあたしの額にデコピンを喰らわせた。
ライオンが心を開いた瞬間を、あたしは見たんだ。
あの美貴の笑顔が、この照明にそっくりに映った。
じわりじわりと忍び寄る、しょっぱい味の粒で目が覚めた。
- 213 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:09
-
『ごめん。他に、好きなひとが出来た』
――そっか。ん、分かった。じゃ、ばいばい。
『ほんと、ごめんな』
――いいよ。しょうがないじゃん、好きな人いるならさ。
美貴は、笑ってあたしに手をふった。
涙のひとつも見せないで、最後の最後まで強がりなやつだった。
- 214 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:10
-
「やっぱ無理」
「…っ…やだ、かえってよぉ…」
「美貴じゃなきゃ嫌だ。もう裏切ったりしないから。ずっと好きでいるから」
「またいなくなるじゃん、それ言っていなくなったじゃんっ」
「ごめん。けど美貴が好き。もう離れない。約束する」
思い付く限りの言葉を美貴にぶつけた。
泣きじゃくって震える肩をぎゅうぎゅう抱きしめて、髪を撫でる。
それで美貴が納得してくれるとは思わなかったけど、なんとか泣き止んで欲しかった。
泣いてる美貴はたいてい言う事を聞いてくれなくて拗ねてしまうから。
あたしはさっきから、「ごめん」という言葉をいくつ使ったんだろう。
謝れば済むって問題じゃないのに、ね。
- 215 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:11
-
「どこにも行かないで」
小さくあたしの耳元で呟いて、その夜はやけに静かだった美貴の唇を塞いでやった。
これって初恋みたいだななんて思ったあたしは、相当美貴に惚れていたんだと思う。
カサついたあたしの唇を指でなぞって、美貴は何度も口付けてきた。
それに答える訳でもなく、ただ受け入れていたあたしにギュッとしがみついてくる。
寂しい思いさせて、ごめんね。
心の中で強くそう思った。
――いいよ。しょうがないじゃん、好きな人いるならさ。
どんな思いで、美貴はあたしとの別れを決めたんだろう。
辛かったんだろう。悔しかったんだろう。死ぬ程悲しかったんだろう。
それなのにあたしは、美貴から離れて別の女の子の元に行ってしまった。
その子を本当に愛していたかどうかは、今じゃもう思い出せない。
美貴の顔を見た瞬間に、そんなことどうでもよくなってしまったから。
彼女には悪いと思ってる。
だけど、美貴から離れられなくなっちゃったからもうどうしようもない。
- 216 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:12
-
「浮気しちゃだめだよ」
「しないよ」
させないくせに。
あたしと別れてから、美貴はいくつの恋をしたんだろう。
部屋を見渡しても、真新しい痕はひとつも伺えなくてなんとなく嬉しがってる自分がいる。
あたしを想い続けてたんだろうか。
それとも、また苦い思いをして一人声を上げて泣いていたんだろうか。
どちらにしろ、可哀相な事をしたなと思う。
携帯がブルブルと震える。
美貴はそれを目ざとく見つけて、あたしのポケットに手を突っ込んだ。
- 217 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:13
-
「カノジョじゃん」
「あーも、勝手に見るなよ。そういうの全然変わんねーなお前」
「…帰んないの?」
「帰れないよ。美貴置いて帰れない」
ベタボレだったんだなぁ、あたしってば。
美貴の不安気な瞳を覆って唇にキスを落とした。こうすれば大人しくなるって事はずっと覚えてる。
ぱちん、と折り畳んだ携帯を放り投げて、柔い身体をベッドに放り投げる。
これからが、ほんとの恋愛だっていう風にあたしの中で確信した。
置いてきぼりにされた美貴の事も、嘘をつき続けたあたしの心もすべて洗い流すように美貴を抱いた。
幸せだった。
- 218 名前:忘れられない、君への想い 投稿日:2006/01/17(火) 21:13
-
その夜はとても冷えた。
代わりに、あたしの心臓がどくんどくんと、美貴の鼓動と重なった。
おしまい。
- 219 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/01/17(火) 21:17
- あっというまに正月も終り、仕事モードです。
久しぶりに中編っぽいの書いた気がします。自己満足ですが。
次回はあやみきでも書こうかなと思ってます。いい加減吉藤ばかりだと、ねえ(何
>名無し読者さん 明けましておめでとうございました(笑
みきよしは美貴さんがデレデレしてる方のが書きやすいんですけど
実際リアリティ溢れてますから萌えられ(ry
- 220 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/01/23(月) 12:57
- 更新お疲れ様です。
ベタベタデレデレ系も好きですが、こういうみきよしもまた堪らないですね。
キュンと鷲掴みされまくりです。藤本さんがいいなぁ。
次回のあやみきも楽しみにしています。
- 221 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/02/26(日) 09:17
- 更新が滞って申し訳orz
今晩中にはなんとか美貴生誕小説出来そうです。
読んで下さると言う親切なお方は、しばしお待ちを。
- 222 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/03/07(火) 22:14
- しばし待ってますよ〜
- 223 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/03/13(月) 19:50
- 本当にお待たせして申し訳ないorz
未だ更新出来ず…こんな時にあやごまのドエロを書いてしまった
馬鹿な作者をお許し下さいorz orz orz
みきよしやらあやみきやらどどんと更新しようと思います。約束します。
…あやごま、見たいって方いたら、レスどうぞ(ごめんなさいごめんなさい
- 224 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/03/14(火) 06:10
- 是非読ませてください
まってます
- 225 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/03/14(火) 08:22
- 从‘ 。‘)´ Д `)ノシ
- 226 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/16(木) 13:36
- あやごま読みたいです!
是非読ませてください。
- 227 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/03/17(金) 10:27
- 長らくお待たせ致しました。
なんだか反応が良かった松後、行っちゃいます。
これを見てある人の御気分が良くなる事を願っておりますww
- 228 名前: 後藤さんと松浦さん 投稿日:2006/03/17(金) 10:28
-
「ごっちん、あたしもう寝るよ?」
「あーうん。おやすみ」
「ん、おやすみ」
「あぁ待って。きて」
散らかった洋服を片付けてくれるのはいつも彼女だ。
そして寝る前にきちんと洗濯物を畳んでくれるのも、彼女だ。
指を素早く絡めてキス。少しの油断も許されない。
呼吸の音が聞こえて、まっつーがごとーから一歩下がる。抱きしめたいと思った。
「なんで逃げるの?」
「だってごっちん、えっちぃこと考えてるでしょ?」
「…ははっ、バレた?」
- 229 名前:後藤さんと松浦さん 投稿日:2006/03/17(金) 10:28
-
今夜中にやらなきゃいけない事とか、忘れてた事もあったのに全部吹っ飛んだ。
柔らかなベッドに柔らかな肌が擦れる音で、彼女の感度も高まる。
優しく寝かせたつもりだったけど、今夜はそうもいかない。
唇を舐めて、噛んで、舌を絡めて、口付ける。きっと止まらない気がして、夢中になってキスをした。
白い餅みたいな肌に舌を這わせば、どんどんハマッて行く。
「や、んっ」
「舐めても良い?ねえ、まっつー」
「ごっ…ちん、おねが…」
性悪の血が騒ぐ。こんなことして、後で反逆を喰らうのは目に見えてる。
だけど目の前で身体を捩らせる姿が言葉じゃ言い表わしようがなくて、可愛過ぎて。
一度強く抱きしめて、深い深いキス。苦しげに呻く声すら愛おしい。
豊満な胸に顔を埋めて、敏感な部分を舌で攻撃。吸って吸って、弄ぶ。
- 230 名前:後藤さんと松浦さん 投稿日:2006/03/17(金) 10:30
-
「あぁっ、ん…」
「挿れるよ?ほら、こんなんなっちゃってる」
「やっ、あんっ」
「言ってよ。ごとーが、欲しいってゆって」
「あはぁっ、あんっ…ごっちんっ、ずるいよぉっ…あん」
下腹部まで到達した手をあちらこちらに動かし、探り回る。
ショーツの中に指を忍ばせて、彼女がもっとも歓ぶ場所を見つけ、集中的に攻める。
そのたびに名を呼んで、じれったいと訴える腰が震えていた。
ずる、と脱がせて舌を埋めれば声のトーンも高くなり、厭らしい音がこだまする。
舌先でそこを突いたり吸ったりするたびに、漏れる喘ぎ。
- 231 名前:後藤さんと松浦さん 投稿日:2006/03/17(金) 10:31
-
「おねがっ…挿れて、ごっちん…が、欲しい…っあぁん」
「……んははっ。良い子いいこ、楽にさせたげる」
「はぁんっ、あぁぁっ…んっ、んんっあっ、もっとぉっ」
「もっと…欲し?」
口を塞いで指を挿れたまま、よいこらせと胡座をかいた上に跨がらせる。
押し寄せる新たな快感にまっつーは絶え切れないようだった。
さらに声を上げて、奥を突き続けるあたしにしがみついて、ごとーの名を呼ぶ。
こんな姿でさえ可愛いと思ってしまうごとーは…変なのかな。
ゆるい動きを断続的に続け、ベッドが軋む。
額に浮かんだ汗を拭ってやると、まっつーは掠れた声で「いやだ」と発した。
- 232 名前:後藤さんと松浦さん 投稿日:2006/03/17(金) 10:31
-
「どうしたの」
「いい、よ…あぁんっ…汗っ…きたな…っから」
「そんなことない。いいから、もっと感じてよ」
「うぁっ…ああっ、んっ、あっ」
「…かーわいい」
揺れて、揺れて、揺れて。まっつーは腰の動きを止め、果ててしまった。
尚も止めようのない色っぽい呼吸で、重ねたシーツがほのかに動いた。
その上に覆い被さると、まっつーはごとーの肩を押し退けてそっぽを向いた。
終った後は決まってこうだ。いじわるをすると、こういう事になる。
「まっつーこっち向いて。キスしよう」
「やだ、よ。またするもん」
「もうしないから。ごとー、まっつーとキスしたい」
有無を言わせずに唇を奪う。ああ、さっきまであんなに厭らしく光っていたのに。
- 233 名前:後藤さんと松浦さん 投稿日:2006/03/17(金) 10:32
-
「レポート、やんなくて良いの?」
「あ…忘れてた。提出明日だよ」
「えぇ、ホントに?」
「うん。でもいいよ、どうにかする」
「今からでも書けるんじゃない?」
「いや、無理。手ぇ痺れちゃってるからね」
わざとらしく右手の指をひらひらとさせてまっつーの羞恥心を煽る。
ぽっ、とピンク色になった身体を抱き寄せて、そこら中にキスの雨を降らせた。
まっつーがごとーから逃げる事なんてない。っていうか、逃がさないけど。
- 234 名前:後藤さんと松浦さん 投稿日:2006/03/17(金) 10:32
-
「いっ…」
ごめんね。少しの間、消えない痕だけをつけて。
- 235 名前:後藤さんと松浦さん 投稿日:2006/03/17(金) 10:33
-
「まっつー」
「…なに?」
「すき」
「……にゃっはは、ありがと」
1週間もしたら痕、消えると思うから。それまでおあずけかなぁ。
シーツを引っ張り上げて微笑むまっつーを抱きすくめて、夜が過ぎて行く。
欠伸をするたびに腕の中で小さく寝言を呟かれる。
こういうの、幸せって言うんだろうな。
次の日、寝坊してレポートは書けませんでした。
おしまい。
- 236 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/03/17(金) 10:34
- うん。ええ、まぁね(何
突然書きたいという衝動に駆られる事だってあります。後悔はしてませんw
ここの皆さんは松後スキスキな方が多いんでしょうか。だとしたら嬉しいです。
- 237 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/03/17(金) 10:43
- レス返し。
>名無し飼育さん こういう美貴さんをツンデレって言うんですかね。実際「ツンデレ」の正しい意味とかよくわかんないんですけど笑ベタなみきよしもツボなんですけどねー。
>名無し飼育さん お待たせしました。期待はずれでしたら申し訳orz
>名無し飼育さん お待たせしました。更新速度の調整を致しますorz
>名無し飼育さん 从‘ 。‘)´ Д `)ノシ <スマンカッタぽ
>名無飼育さん レスありがとうございます。期待に添えられているかどうか…あ、226ゲットおめでとうございますなんとなくときめいてしまいました(何
- 238 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/03/18(土) 15:47
- エローいw甘ーいw
松後スキスキです。
気が向いたらまた書いて下さい。
- 239 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/03/24(金) 21:03
- 久しぶりに中編でもスタートさせてみます。
どの方向に進むか全く分かりません。だって見切り発車(ry
- 240 名前:triangle 投稿日:2006/03/24(金) 21:11
- 枯葉がカラカラと乾いた音を起てて足に纏わりつく。
ぐしゃ、とブーツで枯葉を粉々に砕いてやると、梨華ちゃんは怪訝そうにそれを見つめてた。
たかが枯葉を潰したくらいでどうってことはない。店員を睨んでカフェオレをずーっ、と飲み干した。
枯葉の掃除くらいちゃんとしろ。そう眼で念を押した。
「よっすぃー、おそいね」
「いつものことじゃん。てゆうかお腹すいた」
「ごめんね、邪魔しちゃって」
「ん、別にいいよ。二人でいても飽きるしさ」
「え?」
「へ?や、あれだよ。会話がワンパターンでつまんないってこと」
美貴は言い訳上手だってよっちゃんによく言われる。
じぶんが悪くならないように、精一杯の言い訳を考えて相手を手なずけようとする。
嫌な女だなぁ、とつくづく思う。誰にでも好かれたい、なんて微塵も思わない。
まして、嫌いな人間に手を伸ばそうとは思わない。
- 241 名前:triangle 投稿日:2006/03/24(金) 21:11
-
よっちゃんは美貴の恋人で、美貴はよっちゃんの恋人。
それはずっと変わらないはずで、誰にも変えられない定義。
誰かによっちゃんを奪られる事も、よっちゃんが美貴から離れて行く事も考えた事は無い。
だけど今は、そういうニオイがしないでもなくて。
秋風に絡まるコートがなびいて、ぱたぱたと梨華ちゃんのほうへはためく。
風さえも美貴達をじっと見つめているようだった。
「…あのね、美貴ちゃん。私嘘付くの下手でしょう?」
知ってるよ。
だからこうやって付き合ってあげてるんじゃん。
- 242 名前:triangle 投稿日:2006/03/24(金) 21:11
-
「そうかもね」
「だから…黙ってるのもどうかと思って。美貴ちゃんに黙ってたら私…」
「うん。はやく言ったほうがいいよ」
よっちゃんが来てしまうのも時間の問題だ。
そう、だからその時が来るまでに、美貴達が話さなきゃいけないことはひとつ。
ほんの一瞬だけ時が止まったように、美貴達の周りだけが静かになった。
鳥がさえずる音色、乾いた木枯と枯葉の奏。
ガラにもなく緊張しちゃって。美貴以外の女に、興味持たせる必要なんかない。
- 243 名前:triangle 投稿日:2006/03/24(金) 21:13
-
「私、よっすぃーの事が好きなの」
「うん」
「冗談じゃ無いから、美貴ちゃんに言いたかった。だけどこんな事で美貴ちゃんと言い合うの、嫌なの」
「何で?美貴の事嫌いになればいいじゃん。よっちゃんの事、美貴から意地でも奪えばいいじゃん」
「そんなこと…出来ないよ」
「出来ないならよっちゃんの事諦めてよ」
通りすがったサークルの仲間が、振り返ってこっちを見てる。
梨華ちゃんは珍しく強気だった。言葉は発しなくとも、美貴から眼を逸らす事はなかった。
ちっとも怖いなんて思わない。なんでかって?だって譲る気なんかさらさらない。
「よっちゃんは、美貴の事愛してるんだよ。だから、梨華ちゃんは入れない」
絶対、入れさせない。
梨華ちゃんだって知ってる筈だよ。美貴が負けず嫌いだってことくらい。
- 244 名前:triangle 投稿日:2006/03/24(金) 21:16
-
「入れなくてもいい。私、それでも
「――ごめん美貴っ!教授に講議サボッたこと説教されてさぁー」
息を切らせてよっちゃんがやってくる。
梨華ちゃんは俯いたまま、美貴の視線から逃れられないでいた。
よっちゃんは何も知らない。
ううん、知らなくて良い。
遅れた言い訳を並べて、両手を合わせて美貴に深く頭を下げて謝り続けて。
- 245 名前:triangle 投稿日:2006/03/24(金) 21:16
-
「……れ?いし、かわ?なにしてんの?今まで美貴と一緒にいたの?なんか珍しいね」
「よっちゃん、行こ。外でなんか奢って」
「え!?あたし今月ピンチなんだけどっ…って、おい!」
「じゃどっか連れてって。デートしようよ」
「で、でぇとって…」
つくづく大人気ない女。何かドス黒いものが、身体の奥からどろどろと流れ出て来る。
よっちゃんは梨華ちゃんの顔を覗き込みながら先を歩く美貴を気にしていたようだった。
勘の鋭いやつだから、何があったのかすぐに察知できたみたいだった。
そういう所、大嫌いなのに。
気を引く為になんてことしてるんだろう。心のどっかで、よっちゃんが離れて行く気がした。
微かでも、そんな予感を抱いた。
- 246 名前:triangle 投稿日:2006/03/24(金) 21:17
-
それでも
「みき、待ってってば!」
犬みたく美貴の後を引っ付いて回るよっちゃんが好きで。
梨華ちゃんはそんなよっちゃんを美貴とおんなじくらい好きで。
負けるはずないのに、胸の奥でざわざわ音を起てる不安。
美貴が、梨華ちゃんに負ける?
- 247 名前:triangle 投稿日:2006/03/24(金) 21:17
-
よっちゃんが美貴の指先を絡めとる。
離さないで、と言わんばかりに人込みのなかで必死にその手を待ってた。
どんなに優しくされても満たされはしない。
梨華ちゃんがあんなこと言うから。
気にしないふりしてるって、気付いてよ。
よっちゃんのそういう鈍い所が、今はすごく嫌い。
「…かないでよ」
「え?ああごめん、歩くの早かった?」
「どこにも行かないで」
『よっちゃんは、美貴の事愛してるんだよ。だから、梨華ちゃんは入れない』
わかってない。
よっちゃんは、なんにも分って無いし知らないし。
まして梨華ちゃんがよっちゃんの事を想い続けてる事なんか、知る由も無い。
- 248 名前:triangle 投稿日:2006/03/24(金) 21:18
-
「…行かない、ケド」
「うそ、ついたら怒るよ」
「嘘なんかついてないよ。へんな美貴」
「ねぇ、美貴が言ってること、わかる?」
「え?あたし別にどっか旅行とか行く予定ないよ。さっき映画見て金ないし」
「………」
「…みき?アレ、なんで怒ってんの?え、ちょっと待ってよ!」
このとき、よっちゃんは美貴の気持ちを軽く考えてたんだと思う。
普段からへらへらしてて誰にでも優しくて頭わるそうな事ばっかり言って。
それでも美貴のこと好きだって言ってくれるから、嫌々な表情作って嬉しがってた。
通りすがる人に次々ぶつかりながら、よっちゃんは美貴の背中を追いかけてた。
待って、待ってと頼り無く弱い声でずっと美貴を呼んでた。
振り向いたらきっとよっちゃんの事どうにかしてたと思う。
気が済むまでひっぱたいて、涙が枯れるまで酷い言葉を投げ付けて。
- 249 名前:triangle 投稿日:2006/03/24(金) 21:19
-
「みきー!!」
どっか行けばいいんだよ。
かわいくないもん、美貴なんか。
そうだよ、梨華ちゃんにあげちゃおうかな。もう、めんどくさくなっちゃった。
「ねえっ、あたし何かしたの…美貴が怒るような事何か」
よっちゃんの足が止まる。
涙で、前が見えなかった。
- 250 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/03/24(金) 21:23
-
両思い。なのに一方通行の感情みたいな設定が好きなもので。
よっちゃんがアフォな子ですみません。
多分続きます。多分じゃなくて頑張って続けさせますけど。
内容はもうタイトル通り。湿っぽくてすいません。
>名無し飼育さん ええもちろん!自己満足で終らなければいずれ載せたいと思いますw
- 251 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/05/16(火) 19:28
- ぬぁ、気になるとこで止まってますね(ノ∀`)
待ってますよん
- 252 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/05/28(日) 17:00
- 続き待っています
- 253 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/06/11(日) 10:43
- ダメ人間が帰って来ました…お待たせして申し訳ないorz
大分荒れた文になっていますが、取りあえず更新したいと思います。
- 254 名前:triangle 投稿日:2006/06/11(日) 10:44
-
「…え?美貴、やっぱ来てないの?」
「うん。今日は一度も見てないけど。なんで?」
「や、別に。何でもない」
「そう?何でもないような顔、してないけど」
サンドイッチを頬張りながら、松浦はあたしと目も合わせずに先程取ったノートと睨めっこ。
どうやら美貴から何かを吹き込まれたらしい。
- 255 名前:triangle 投稿日:2006/06/11(日) 10:44
-
「喧嘩もほどほどにしてよね。みきたん、ああ見えてナイーブな子なんだから」
一個あげる。そう言って差し出されたサンドイッチを一口齧って、味も分からぬまま胃に流し込む。
あの日、美貴にあんなことを言わせたのは他ならぬあたしだ。
…未だに、何で美貴が取り乱したのかは分からないままだけど。
皮肉っぽく光る松浦の茶色い悪戯な瞳が美貴と重なって、複雑な気持ちになった。
なんでアイツは年下のくせに、ああも頭の切れることを考えるんだろう。
確かに松浦はあたしと美貴が出会う前から美貴のことを知ってるし、もしかするとあたしよりも美貴のことを知っているのかもしれない。
そう考えると、あたしの存在って何なんだろう?そう思う事だって少なくないんだ。
- 256 名前:triangle 投稿日:2006/06/11(日) 10:44
-
『どこにも行かないで』
あたしは美貴から逃げも隠れもしない。
だから美貴を置いて何処かに消えたりも、一人で遠い場所へ行くこともしない。
だったら何だ?なんであたしは美貴を泣かせたりなんかしたんだ。
自問自答をしてばかりのあたしを、美貴は今どう思ってるんだろう。
- 257 名前:triangle 投稿日:2006/06/11(日) 10:45
-
「バーーーッカ」
付き合ったばっかりのころ。こんなんじゃなかった。もっと、美貴達はサッパリしてた。
大学は、休んじゃった。
でもいいや。よっちゃんの顔見なくて済むし。
…なんて、全部ウソだった。
- 258 名前:triangle 投稿日:2006/06/11(日) 10:45
-
起きたのは昼過ぎ、相変わらず憎たらしい寝癖だらけの自分の姿が鏡に映った。
少しだけ目が腫れている。久しぶりだった。しかも、よっちゃんの事が原因で泣くなんて有り得ない。
根本的な原因は…ま、梨華ちゃんなんだけど。
- 259 名前:triangle 投稿日:2006/06/11(日) 10:46
-
メールが来てた。亜弥ちゃんからだ。
『休みぶっこいてずるい!たんがいないとつまんないよ』
つまんない。そっか。美貴も、つまんない。
亜弥ちゃんにはごっちんがいて、美貴にはよっちゃんがいる。
その輪が崩れないように今までは順調だったのに、なんでこう美貴だけがうまくいかないんだろう。
捻くれてるし素直じゃないし我侭だし短気だし言いたい事すぐ言っちゃうし。
自分でも、わかってる。
また泣きたくなった。だけど、泣いたら今度こそよっちゃんに嫌われる気がした。
たとえその涙がよっちゃんには見えていないとしても。なんか、そんな予感がした。
- 260 名前:triangle 投稿日:2006/06/11(日) 10:46
-
待ち構えてたディスプレイの文字は、さっきと変わらず亜弥ちゃんからだった。
メールの次は電話攻め。あの子らしいと思った。
「もしもし」
『わ、出た』
「何その言い方?かけたの亜弥ちゃんでしょ」
『カリカリしてるねー。…打ちひしがれてる所悪いけど、いっこ聞いて良い?』
「…なに?」
『よっすぃーがもし石川さんの所に行っちゃったら、あんたどうする?』
いじわるな事を言う。どこもかしこも、美貴の周りは敵だらけらしい。
もちろん答えないわけには行かなかった。亜弥ちゃんだってそのくらいのこと、分ってる筈だから。
試されてる。なかなかきつい。
やばい。もうなんか、限界。
- 261 名前:triangle 投稿日:2006/06/11(日) 10:46
-
『…泣いてんの?みきたん?』
「……泣いてないよ」
『泣いてんじゃん。めっちゃ声掠れてるし』
「…亜弥ちゃぁん」
『ん?』
「どうしよう。美貴、どうしたらいいんだろう」
『…みきたん』
「美貴よっちゃんに酷い事言った。もしかしたら、じゃなくて本当に…ホントによっちゃんが梨華ちゃんの所に行っちゃったら」
『…あちゃー、やっぱ聞かなきゃ良かった。取りあえず、落ち着いて。大丈夫だから。ごっちんっ、よっすぃー探して来て!早く!みきたん、電話切っちゃだめだかんね。わかった?』
- 262 名前:triangle 投稿日:2006/06/11(日) 10:47
-
違う。美貴はこんなんじゃない。
よっちゃんごときに感情左右されて、思考回路めちゃくちゃにされるような女じゃないのに。
幾ら強がりを言っても、幾らプライドを高くしてても、堪え切れなかった。
『みきたん!聞こえてんの?あんた、この電話切ったらおしまいだかんね?』
よっちゃん、会いたいよ。
- 263 名前:三田久郎酢 投稿日:2006/06/11(日) 10:50
-
ええと、もうなんか色々ごめんなさい。
更新を待って下さった読者の皆様、すみませんでした。
まだズルズルと続きます。次回で終ると…良いんですが。
レス返し。
>名無飼育さん レスありがとうございます。やっと更新ですorz
>名無飼育さん 大変お待たせ致しました…読んで頂ければ幸いです。
- 264 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/11(日) 20:36
- キタキター!
更新お疲れ様です
ドキドキな展開でワクワクしちゃってます
- 265 名前:名無飼育さん 投稿日:2006/06/14(水) 23:19
- 頑張ってくらはい
- 266 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/07/04(火) 17:15
- 続きを待ってます。
- 267 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/07/17(月) 18:34
- 待ちます
- 268 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/08/09(水) 14:06
- 待ってます
- 269 名前:名無し飼育さん 投稿日:2006/09/03(日) 15:18
- 待ちます
- 270 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/02/08(木) 13:32
- 待ってます。
- 271 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/06/14(木) 17:22
- 待ちますよ
- 272 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/06/15(金) 11:23
- 待ってます!…てか、もう待てない!
おい!三多久郎酢!今すぐ帰って恋!オレはお前が恋しいZO!。
- 273 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/09/07(金) 00:52
- マジで先が知りたいよ!!
待てない!いや、待つけど。でも待てない!!
- 274 名前:名無し飼育さん 投稿日:2007/09/30(日) 20:39
- 待ちます。
- 275 名前:triangle 投稿日:2008/04/10(木) 22:38
- 当たり前の毎日
でも、それが幸せに満ちている事に気付かないんだよ
- 276 名前:triangle 投稿日:2008/04/10(木) 22:38
-
ぱちん、と携帯を閉じる音。
あたしは電話の相手が誰かすぐに解った。松浦の顔が曇る。
呆然とする彼女に、なにかかける言葉を探す。
「あの」
「今すぐみきたんとこ行ったげて」
「…や、でもさ」
「でもじゃないよ。今の、みきたんの声聞こえたでしょ?」
心臓をわしづかみにされるような感覚。
強いまなざしがあたしに向けられる。
美貴は、泣いていた。
理由はゴチャゴチャいろんなことが混ざりあってる。
あたしのこと、それ以外のこと?
なんにしても、美貴はあたしが遠くに行ってしまうんじゃないかって恐れてることは確か。
- 277 名前:triangle 投稿日:2008/04/10(木) 22:38
-
電話は切られてしまった。
「みきたん、かなり混乱してるからあたしじゃダメみたい。ったく、親友まで敵にした罪は重いからね!」
松浦が捨て台詞を吐き、あたしの肩を強く殴った。
「好きなんでしょう?たんのことが、大事なんでしょ?」
なのに、あたしはいつも美貴を困らせて。
一緒にいると楽だよ。
でも、きっとあたしは彼女を幸せしてやれていなかったんじゃないかって思う。
- 278 名前:triangle 投稿日:2008/04/10(木) 22:39
-
「行ってくる」
あたしは走っていた。
気付いたら、この前買ったばかりのナイキの新作モデルのスニーカーが雨上がりの泥にまみれていた。
雨のにおいがまだ残る。じめっとしたアスファルトをひたすらに走った。
泣きそうになった。
辛いのは美貴なのに。あたしまで辛くなって、どうするんだ。
あたしの美貴に対する気持ちは揺るがない。いつだってそうなのに。
伝えられない。伝えてやれなかった。
だからいま、伝えに行く。
- 279 名前:triangle 投稿日:2008/04/10(木) 22:39
-
美貴の部屋は殺風景だ。
モノクロで、無駄なものが一切置いて無い。
今日は珍しくキッチンにトゲトゲ(サボテンね)が置いてあったくらい。
もらいものかな?可笑しいけど、少し笑ってしまった。
不用心にも鍵のかかっていないトビラ。
いつでも入って良いよ、って言ってるようなもんだよね。
「美貴、顔上げてよ」
ふとんの塊。オバケみたい。
背中が語ってる。めずらしく、泣いてる背中。
あたしの声に気付き、美貴は泣き出す。
せっかく泣き止んだのに、このばかよっちゃん。
いつもの憎まれ口が聞きたくて、あたしはそのふとんの塊を抱き締めた。
もぞもぞ動いて、抵抗しようとする。
でもそんなんじゃ解いてやんない。
- 280 名前:triangle 投稿日:2008/04/10(木) 22:40
-
「…なんでいんのー」
「こいって言ったじゃん」
「ゆってない」
「松浦が心配してたよ」
「よっちゃんは美貴じゃなくて梨華ちゃんと付き合えばいいんだよ」
「はぁ?」
あたしの顔を見るなり鼻をまっかにしたまま、いつもの生意気なペース。
しかも訳の解らないことを言い出す始末。
唐突すぎて、あたしも対応に困った。
というか、何故石川の名前が?
- 281 名前:triangle 投稿日:2008/04/10(木) 22:41
-
「うそつき」
「嘘じゃないよ」
「抱き着くなぁー」
「じゃああたしのこと殴ってみろ」
「できないよ」
「うん、やめてね」
「梨華ちゃんはよっちゃんのこと好きなんだよ?」
「知ってるよ」
「美貴がいなくなれば付き合えるよ?」
「ばか言うな、あたしは美貴がいい」
- 282 名前:triangle 投稿日:2008/04/10(木) 22:41
-
あー言えばこー言うやつ。石川があたしの事好きってことくらい、とっくのとうに知ってる。
ノイローゼになる位、ゼミで会う度にガン見してくるし弱々しい声で食事に誘ってきたり。あの子は頑張ってあたしを振り向かせようとしてる。
けどね、答える気はさらさらないんだ。でも断る気もない。だって可哀想だから。
キス、してもいいかな?
あたしはそっと唇をあてがって、様子を伺う。
どうやらお姫さまは、了承してくれたようだ。
「あたしは美貴じゃないとやだよ」
美貴はまた泣いた。
握りしめていた携帯からは、松浦の着信があるようだ。
虹色に光る携帯はサイレントモードになっているため、音は響かない。
その間あたし達は抱き合った。
この世の終わりが来ることを悟り、最期を過ごす恋人達のように。
美貴は笑った。
あたしの泣く姿を見て、なぜか微笑んだ。
すきだ。ただそれだけの気持ちが溢れて、止まらなくなった。
- 283 名前:triangle 投稿日:2008/04/10(木) 22:41
-
幸せはいつも不幸と隣り合わせにあるんだよ
でもね、いつまで経っても不幸なままの人生は、ないんだよ
美貴の名言。
あたしはいつもそれを聞いて、まるで説教じみたことを言うやつだと笑っていた。
でも、なんとなく分かる。
あたしは今日幸せだけど、明日また不幸が降り掛かってくるか分からない。
けどね、あたしは、美貴といられたらそれでいい。
二人の不幸なら、二人の幸せに変えてゆけば、それでいいから。
end
- 284 名前:三田久郎酢 投稿日:2008/04/10(木) 22:43
- まず最初に。
放置してごめんなさいちょっと首吊ってきますorz
一応完結させました。おかしな点もりだくさんですが、これで勘弁してください(土下座
これからはちょくちょく更新していくつもりです。
レス下さった方々、更新が滞り本当に申し訳ございませんでした。
管理人さんにも御迷惑をおかけしたかと思います。
では、今回はこれで御勘弁を……泣
- 285 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/05/19(月) 02:59
- 更新お疲れ様です!
ずっと待っていました。
次回更新も楽しみにしています。
- 286 名前:三田久郎酢 投稿日:2008/06/01(日) 15:12
- >>285
お待たせしました。申し訳ないです。
- 287 名前:あやみき 投稿日:2008/06/01(日) 19:54
- 着信、今日もゼロ
- 288 名前:あやみき 投稿日:2008/06/01(日) 19:54
-
仕事を終えてメイクを落とし、いつものように携帯をチェックする。
数年前までは返事をしなくても、あの子から数件のメールが届くのは当たり前だった。
面白い写メールや、新商品のお菓子等にコメントを添え付けて、可愛い文章で飾られたその報告を美貴は喜んでいた。
あの頃は、ただそういう下らないとも思える事が当たり前で−−幸せに感じた。
「はぁ…」
ため息が訳も無く出る。メールも、着信も、ゼロ。
パチンと携帯を閉じ、ベッドに身を投げ出した。
これが寂しさということ。
昔は一緒に仕事をやらせてもらうことが多かったから、傍にいない時でもつながっていられるような気がした。
どこにもいかないで、とかそういう重ったるい言葉を好まないのは知っているから。
だから、寂しいなんて言えなかった。
- 289 名前:あやみき 投稿日:2008/06/01(日) 19:55
-
『たーん、かまってよぉ』
『ほら、脱いだらちゃんとかけてってば』
甘え上手で、お節介で、涙もろい亜弥ちゃん。
昔はしょっちゅう泣いてたな。美貴の何気ない一言に傷付いたりして、可愛いなこんにゃろう!とか思って抱き締められずにはいられなかった。
十代を過ぎたころの今、昔の亜弥ちゃんの面影はあまりない。
お節介は相変わらずだ。けれど、甘えることを嫌うようになった。
やたらと「好き」と言わなくなった。
あのふにゃっとした笑顔も、どこか大人びて。
「ごめんね」と謝られる事が増えた。
あまつさえ
「みきたん」
この言葉を、最近耳にしていない。
- 290 名前:あやみき 投稿日:2008/06/01(日) 19:55
-
もう、だめなのかなぁ
- 291 名前:あやみき 投稿日:2008/06/01(日) 19:56
-
「それでさあ、美貴がそのときこけちゃってー膝すりむいてさー」
「んー」
「でもばんそうこう持って無くて、血ぃダラダラのままでー」
「ん」
「それでー……
スケジュール帳とにらめっこ。久しぶりに会った彼女は、相変わらず忙しいようで。
- 292 名前:あやみき 投稿日:2008/06/01(日) 19:57
-
試してやろう。
ふと、悪戯な考えが頭をよぎった。
「この前さ、事務所行ったら新しい社員の子がいてね、すっごく可愛かったんだよね」
「へえー」
…だめか。
「だからさ、メアド聞いて」
「うん」
「最近良い雰囲気なんだよねー」
「良かったじゃん」
嫉妬の「し」の字も見えないのは、亜弥ちゃんが美貴を信じてる証拠なんだって分かってるけど。
今は、そんな絆とかどうでもよく思える。もっとこっち見てよ。かまってよ。
- 293 名前:あやみき 投稿日:2008/06/01(日) 19:57
-
「別れよ」
「…へ?」
「だから、美貴、亜弥ちゃんと別れたい」
「……たん?」
「その子さあ、美貴の事頼りにしてくれてて、慕ってくれて…一緒にいて、すっごく楽しいんだ。気遣わなくて良いし、会話もちょー弾んで」
思わず口から出任せな言葉が次々と出てきてしまった。
気付いたら、亜弥ちゃんはスケジュール帳もテレビのことも忘れて、美貴の目を真剣な瞳でじっと見つめていた。
社員の子と仲良くなったなんて、大嘘だった。無論、好きでもなんでもない、ただ挨拶をかわした程度の関係。
部屋は静寂に変わった。テレビはつけっぱなしだったけど、コマーシャルで流れてるタイアップ音楽はほとんど耳に入らない。
美貴、何言ってんだ。
- 294 名前:あやみき 投稿日:2008/06/01(日) 19:58
-
「やだよ」
やってしまった、と首をもたげていると、押し殺したような声が聞こえた。
それは亜弥ちゃんが口にした言葉で、頬にはひとすじの涙が通っていた。
それと同時に、亜弥ちゃんの言葉が嘘みたいに幼く聞こえて。
「やだよぉ、何それ、訳わかんないよ」
「や、亜弥ちゃんごめん実は…
「みきたんにはあたししかいないんだよ、あたし以外の子なんて有り得ない」
「いやだから
「どこにも、行かないでよ!」
亜弥ちゃんは美貴の言葉を遮って、わあわあと泣いた。
美貴は慌てて亜弥ちゃんを抱き締めた。少しの抵抗を後に、大人しくなった。
昔はこんな風に泣く事、しょっちゅうだった。
その度に美貴が謝って、泣き止むまで背中をこうポンポンしてあげて。
あの時の16歳の亜弥ちゃんも、21歳の亜弥ちゃんも−−−−何一つ、変わらないままだった。
- 295 名前:あやみき 投稿日:2008/06/01(日) 19:58
-
テレビは消した。その後に美貴も泣いて、亜弥ちゃんは泣き止んだ。
「ごめんね」と呟くと、亜弥ちゃんは首を横に振ってうなだれた。
ずっと寂しくて、孤独な想いを抱えていたのは、亜弥ちゃんも同じだった。むしろ、亜弥ちゃんの方がそれが強かったんだ。
忙しくて目まぐるしい毎日の中でも、寝る前には美貴の事を考えていてくれてた。
そんなこと、美貴、知らなかった。
美貴たちさぁ
嬉しさも、楽しさも、寂しさも、同じ時間に共有してたんだね。
ごめんね。美貴、バカだから、気付かなかったんだ。
- 296 名前:あやみき 投稿日:2008/06/01(日) 19:59
-
「……で、嘘って、どういうこと?」
「いや、あのだからね…それには深い事情が
「ふーん、あたしの事信じて無かったってことかーへぇぇ〜」
「ち、違うよ!だってさふぁ…」
「それとも、何?ほんとに浮気してんの?え?」
「違うってば!!」
この後、二人が甘い時間を過ごすのは何時間後のことやら。
end
- 297 名前:三田久郎酢 投稿日:2008/06/01(日) 20:00
- 色々gdgdでごめんなさい。
食わず嫌いの松浦さん見て萌え死んでしまった結果ですすいませんorz
- 298 名前:三田久郎酢 投稿日:2008/06/01(日) 20:01
- 遅くなったけど藤本さん復活オメ。
いつか松浦さんとまたイチャコラ放送してほしいもんです。
- 299 名前:三田久郎酢 投稿日:2008/06/01(日) 20:01
- 次はなにをかこうかな。
- 300 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/06/02(月) 01:19
- 作者さんのあやみきいいですね。
次回も楽しみにしてますね。
- 301 名前:I 投稿日:2008/06/02(月) 18:41
- 久しぶりに作者さんのあやみき見れてうれしいです!
またあやみき書いていただけると私的にはとってもHappy
- 302 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/06/04(水) 01:50
- 久々にお邪魔したら更新されてた〜お疲れ様です。
三田さんの書くみきよしもあやみきもあやごまも大好きです。
次回更新もワクテカしながら待っております。
- 303 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:30
- 『仲良しの友達はぁ、みきたん。藤本美貴ちゃんですねぇ』
『あ〜、じゃあ御飯食べに行ったりとかはしょっちゅう?』
『御飯も行きますし、一緒にオフロも入りますよぉ』
- 304 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:38
-
懐かしいモノを見たような気がする。いや、これほんとに懐かしいや。
リモコンを握りしめたまま、美貴はソファで横になりながら画面のそれを見続けた。
部屋を掃除していたら見つけた、いつかの音楽番組の収録ビデオ。
家に上がり込んでた画面のそいつに押し付けられて、何十回と見せられたんだっけ。
思い出せば切りが無い、幼かったあの頃。
幼気な表情と喋り口はあまり変わっていない。強いて言えば、あのくっつき癖が落ち着いたくらい。
あの頃の亜弥ちゃんは、ことあるごとに美貴を呼びつけた。
ウンザリだと声高に言いたかった。けど、そんなこと、出来なかった。
亜弥ちゃんには美貴が必要で、またその逆でもあったから。
あの笑顔を、あの瞳を見ると、言いたい事も言えない。言うべきことも、そのまま飲み込んで、黙って亜弥ちゃんを受け入れてた。
- 305 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:39
-
『ホント、仲良しですよぉ』
語尾にしつこい程のハートマークがつきそうな台詞。
サラッと言ってのけるのも、あの頃の亜弥ちゃんらしかった。
- 306 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:39
-
「ヤダあんた、何見てんの?」
「わ、ちょっ」
「止めてよ、懐かしすぎる」
「あー…見てたのに」
「ったく、どっから引っ張りだしてきたの」
いや、亜弥ちゃんが美貴に押し付けたんだって…
そんなことはもう忘れたようで、亜弥ちゃんは頬を膨らまして、それでも美貴と愛おしむような瞳でリモコンをテーブルの上に置いた。
画面には何も映らない。21歳の亜弥ちゃんと、22歳の美貴。
少し大人びて、少し子供じみた二人が映るだけだった。
- 307 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:40
-
昔は自分のことを『世界一可愛い』と過信してアイドル道を突っ走っていた亜弥ちゃん。
今は何故かそれも自重して、落ち着きはなった脱アイドルみたいになっちゃって。
鏡をじっと見つめながらそれごしに美貴と会話することも無くなったし、自分のライブDVDや出演番組のビデオを見せられる事も無くなった。
それはある意味、成長したということなんだと思う。良い意味でも、悪い意味でも。
『たん、オフロ入るよー』
『えぇ、美貴もう入ったのに…』
『いーからっ、たんも一緒に入るの!』
いやがる美貴の手を引っ張って、無理矢理にバスタブに身体を沈められた。
もくもくと湯気が上がる中、亜弥ちゃんは凄く嬉しそうに笑ってた。
泡だらけの浴槽でばちゃばちゃ騒いでは、美貴の額に泡をつけたり、アヒルを浮かばせたり、そんなことで2時間も費やした。
普通の友達同士だったら、美貴、こんなこと甘んじて許さなかった。
ただその相手が亜弥ちゃんだったから、心に邪魔をするものは一切無かった。
- 308 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:40
-
トモダチ?
その言葉が、いつも怖かった。
いつ途切れるか、いつ壊れるか。
- 309 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:41
-
『ねー、みきたん』
『…ZZ、ん、なに?』
『寝ちゃダメ。まだ話してるでしょ』
『んあ、んー…何の話だっけ?』
『だからぁ昨日ママとパパがねー…』
ベッドの中では、亜弥ちゃんの話ばかりが繰り広げられた。
明日は二人ともオフだから、と言って亜弥ちゃんはマシンガントークを続ける。
それが嫌っていうわけではなかったけど、今にしたらカンベンして欲しいと思う。
亜弥ちゃんは美貴の腕をしっかり抱いて、頬を美貴の首筋にこすりつけて、これでもかというほど美貴に甘えた。
そういう夜は、亜弥ちゃんの口から「たん、好き」という言葉を何度耳にしただろう。
その度に、胸の奥が疼いた。
いつも眠るフリをしては、亜弥ちゃんに怒られていた。
- 310 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:41
-
「ちょっと」
「…ん?ああ、ごめん」
「何ボーッとしてんの?」
「なんでもないよ。おいしいなーって」
「嘘つけ、違う事考えてたんでしょ」
16歳の亜弥ちゃんを思い出してた、なんて言ったら、「今の」亜弥ちゃんはどんな反応をするだろう。
亜弥ちゃんが昼食に作ったペペロンチーノをずるずると食べながらそんなことを考えた。
確かにおいしい。けど、亜弥ちゃんに言いあてられてしまうのはいつものことだった。
- 311 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:42
-
「亜弥ちゃん」
「なーに」
「好き」
「っブハッ」
あの頃言えなかった一言。亜弥ちゃんは口に含んだスパゲティを吹き出しそうになり、そばにあったグラスについだ水をがぶがぶ飲んだ。
美貴はそれを見て、笑いに笑ってやった。あの頃のお返しだと言わんばかりに、亜弥ちゃんの額を小突いて。
「なに、あんたいきなり!」
「亜弥ちゃんこそ、なんでそんなに興奮してんの?」
「だって、急に」
「亜弥ちゃんだって、つい昔まで平気でほいほい言ってたよ」
「何、その言い種。まるで今のあたしはみきたんの事好きじゃないみたいじゃん」
「…じゃあ、言ってみ」
- 312 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:42
-
尋ねると同時にスパゲティは皿から消えた。
美貴はもぐもぐと口を動かしながら、真面目な顔になる亜弥ちゃんとじっと見つめた。
亜弥ちゃんは唇をきゅっと結んで、めずらしく恥ずかし気な表情を浮かべて美貴の視線を避けた。
悪意ではないことは分かっていたから、美貴は小さく笑って皿を片付けようと立ち上がる。
同時に、亜弥ちゃんも立ち上がって美貴の腕をやわく掴んだ。
何か言いたげな瞳が美貴に突き刺さる。
皿をテーブルに戻して、目の前に小さく佇む女の子をぎゅっと抱き締めた。
- 313 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:43
-
「…あの時はね」
「うん」
「みきたんの事、1秒でも考えない時間、作りたく無かったの。大好きで、大好きで…初めてだったから。こんなに誰かを好きになること。もちろん今でも好きだよ?誰よりも、ずっとずっと。でもね、思いが叶った時、凄く怖くなった。たんは優しいから、あたしの思いを受け入れてくれてるって思うと、苦しくなった。ずっと重荷を背負わせて、これからもあたしがそんなんじゃ、いつかみきたんは…」
「…美貴が離れるのが怖いから、一緒のオフロも、毎日電話するのも止めた?」
「……ウン」
- 314 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:43
-
いつしか亜弥ちゃんは、美貴のことを『みきたん』だとか『たん』と呼ぶ事を避けた。
その何気ない変化を、美貴は当たり前のように受け入れていたから、ずっと気づけなかった。
友達でも、家族でも、どうとでもとれてしまう関係。だから変に安心してた。
その小さな変化のひとつひとつに、亜弥ちゃんの想いが重なっていた。
あの時のように、亜弥ちゃんは美貴の背中をぎゅっと掴んで離さなかった。
子供がえりしたかのように、小さく震えながら、21歳の亜弥ちゃんがそこにいた。
「バカだな。そんなことで離れてやんないから、美貴。
亜弥ちゃんと色んな思い出が出来て、美貴、嬉しかったんだよ。いつも一緒にいて、寝る時もぴったりくっついて寝て。それがだんだん当たり前になっていくにつれて、もしこの関係が壊れたらって、怖かった。気付くの遅かったけどね、この気持ちに気付くの」
ドキドキした。白い頬や首や、身体中が、うす赤く染まっていく姿を見て。
触れたいと願った。自分はおかしい。そう思うより早く、美貴は亜弥ちゃんに惹かれていた。
- 315 名前:変わらないもの 投稿日:2008/06/08(日) 09:43
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「…へへ、久しぶりだな。亜弥ちゃんに好きって言われたの」
「こら、どさくさにまぎれて何してんの」
「触りたい。…ダメ?」
亜弥ちゃんを抱き締めたまま、耳もとでそっと囁く。
小さくこくりとうなずいた亜弥ちゃんを抱いて、ベッドに沈んだ。
ささやかな抵抗の後、亜弥ちゃんは泣きそうな瞳で美貴を見上げて、絶頂に達した。
何度も何度も、愛の言葉を呟き、叫びながら。
果てた亜弥ちゃんの隣に転がり、昔のようにぴったりくっついて眠りに落ちた。
亜弥ちゃんは泣いていた。もう安心していいんだよ、と言うように頭を撫でても、涙は止まらなかった。
今も昔も、亜弥ちゃんは亜弥ちゃんのままで、美貴は美貴のまま、変わらない。
それでいいと思った。これらかもずっと、傍にいるから
fin
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