友達以上…恋人未満
1 名前:雨の弓 投稿日:2009/02/09(月) 21:47
はじめまして。
いしよしを書きたいと思います。

感想とかどんどん書いてほしいです。
よろしくお願いします。

2 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/09(月) 21:53
「よっちゃん、今日この後・・・暇?」

フットサルの練習が終わった後、着替え終わった石川が額の汗を拭きながら、あたしに話しかけてきた。


「うん。 別に暇だけど」
あたしはスポーツドリンクを飲みながら、ぶっきらぼうに答えた。

「じゃあさ、 飲みに行こ!」

「えっ今から?」
「そうに決まってるじゃん!!」

「まぁーいいけど、二人で行くの?」
「うん!そうだよ。」

なんか嫌な予感がする。
最近フットサルメンバーでよく飲みに行ったりするけどさ
石川が酒飲むと、あいついきなりテンションあがって、話すだけしゃべって必ず寝るんだよ。
みんなからうざいとか、きしょいって言われて、それ聞いて独りで喜んで熟睡してしまう石川さん。


でも二人で飲みに行ったら、誰が石川を介抱するわけよ!
あたししかいねーじゃん…。泣
石川の介抱役はいつもまいちんとかに任せてたからなぁ…。


3 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/09(月) 22:00
よし、ここはまいちんも誘おう。
あのウザイキャラの石川さんの介抱はやっぱまいちんが上手。

「飲みに行くのはいいけど、石川と二人は嫌だ。」
「えーなんでよ?」
石川はタオルで汗を拭きながら、不満そうな顔であたしを睨んだ。


「だってお前介抱すんの疲れるもん。みんなも誘おうぜ!」
「だめっ!!」
そう言った途端、あたしの耳に近づけてきて小さな声で言った。
「今日はよっちゃんにだけ話があるの。だから...ね?」

4 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/09(月) 22:03
えっ…あたしだけに、話?
まさかこいつ…『フットサル引退しまーす!』とか言わねーだろうな。
まぁ宣言されても引退させねーけど。


でも、今日の石川は、なぜかいつもよりテンションが低い。
今日朝に会ったときから気づいてたけど、目が腫れている。
昨日めちゃくちゃ泣きましたって感じの目なんだよ。

自慢じゃないけど、あたしは石川のそういうちょっとした変化に気がつくのが早い。
それは辻とかもそうかな。
フットサルメンバーの中でも、同期の辻と石川はやっぱなんか特別な絆みたいなのがある。
顔見ただけで、なんか思ってることがわかるっていうか。
やっぱ長年一緒にいるから。

5 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/09(月) 22:05
「ねえ、よっちゃん聞いてる?」
「あっごめんごめん。」

「もう!とにかく飲みにいくから早く着替えてきてよぉ」
「あー。わかったから、もうわかったよ!!」
「着替えてくっから、そこで待っとけよ。」

小さく頷いた石川を見て、あたしは急いで着替えにいった。

6 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/09(月) 22:07
石川と二人っきりで飲むのは初だよな。

「よっちゃん、なんか嬉しそうな顔してるね」
「へっ?」
いきなり横で着替えていた辻に話しかけられて、なんともまぬけな返事をしてしまった。


「ふはは。なんかにやにやして、嬉しそうじゃん」
「はあ?にやにやなんかしてねーし。」

「拗ねんなーかわいいよっちゃん。」
「うるへー」
なんか調子狂うぜー。

7 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/09(月) 22:09
「よっちゃんさー、このあと予定ある?」
「行きたくないけど、まぁあるかな」
「あははっ」
「何だよー?一人で笑うなよ」


「よっちゃん、もしかして梨華ちゃんに無理矢理誘われた?」
えっ、なんでわかったんだ….?

「図星でしょ?」
「うん。飲みに誘われた。ののなんでわかったの?」

「うーん。勘、かな。」
勘かよ!!!

「まぁでも梨華ちゃんと飲みに行くと大変だよ?のんが介抱するぐらいだから。」

「だよな、酒飲むとき石川とさ、のの見てると、ののが年上に見えるもん。」
「のんもそう思う!!だって梨華ちゃんキショイもん」

ははっ。こいつもさすが同期。
二人で笑いまくった。

8 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/09(月) 22:12
あたしは石川が4期で一番年上って今でも思わないんだ。
きっと石川本人もそう思っているはず。
最初の頃は泣いてばっかでさ、よくあたしが慰めてたよね...。
怖がりで、ホテルも一人で寝れなくて、まああの時は可愛かったよ。
今じゃ、おばちゃんみたいにしゃべりまくって、うるさいもん。

そんなことを思いながら、あたしは着替えを終えて石川が待っているとこまで走っていった。

9 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/09(月) 22:16
「もうよっちゃん遅いよぉ!!」
拗ねた顔で口を尖らせている石川さん。そんな顔しても可愛くないよ!笑

「なんだよー。そんなに待ってないだろ。」
「結構待ったもん…いつもは着替えるの早いくせに。」
「へいへい。すみません」
「感情こもってない!!」
「こめてねーもんっ!」

ほらまた拗ねた。今日はやけにテンション低いですね…石川さん。
まぁ、低いぐらいがちょうどいいか。


「飲み行くんだろ、子供みたいに拗ねんなよぉ。ほら行くぞっ!!」
あたしは石川の腕を引っ張って歩きだした。

10 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/09(月) 23:52
あたしたちは居酒屋に入った。今日はお客はあまり居ないみたいだ。
あたしに話あるって言ってたけど、石川はさっきからずっと下を向いている。

なんだよー自分から誘ってきたくせに…。
「とりあえずさぁ、なんか飲もうよ!」
「うん…。」

返事だけでもわかる。
今日の石川さんはテンションが低い。でも低すぎるぞ!!
久しぶりのネガティブ石川登場でしょうか?

11 名前:& ◆LLa7xc1BZQ 投稿日:2009/02/09(月) 23:54
「あのーすいません。生ビール、中ジョッキで!石川は?」
「じゃあ、あたしは梅酒ロックで」

注文したとたん、また俯いた石川。

なんかこんなにテンションが低い石川を見ると昔を思い出すなぁ。
あたしがいつも慰めていた、あの泣き虫の石川梨華を。
今では後輩をよく叱っている先輩かぁ…。
昔、圭ちゃんがいってたけど、人って変われるんだよ。


12 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/09(月) 23:59
そんなことをふと思い出しながらあたしはビールをまず一杯いただく。

「うっめー。やっぱ運動した後は最高だわ!!」
あっやっべ一人でテンション上がったしまった。

まずはこの黙り込んでいる相方の話を聞かねば。
とりあえずあたしになんか相談があるんだろうなぁ。

「石川ぁ、相談があるんなら聞くからさ!キャプテンに何でも話してよ。」
「うん」

石川は弱々しく返事をして、俯いたまま話しだした。
「よっすぃ〜あたしさ…」
「うん」

「あのね…」
「彼氏と別れたんだ」

「えっ?」

13 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 00:04
正直フットサルのことで悩んでいるのだと思っていたあたしは吃驚した。
石川に彼氏がいたことは同期と圭ちゃんは知っている。
でも別れたのか…。

「彼氏ってあの、3年ぐらい付き合ってる人でしょ?」
「浮気されてたの…。」
まじかよ…。
「その人と結婚するんだって。」

あぁ…石川さん。なんという悲劇のヒロイン。
まぁこういう役は似合うんだけど。
そんなこと言ったらあたし半殺しにされるか...。

14 名前:& ◆LLa7xc1BZQ 投稿日:2009/02/10(火) 00:26
「よっすぃ〜〜。もうだめだよ、あたし。」

そう言ったとたん、石川は大声で泣き始めた。

「石川!今日は飲もう。飲んで忘れるしかないよ」
「わぁーっん。もう恋なんてしなーい///」


あれからあたしたちは3時間飲み続けて、石川はすでに泥酔状態。

「石川ぁ〜。もう忘れられたか?」
「よっちゃん、あたしもう恋しないって決めたもん」

「なんで?恋はしろよぉ!幸せになるのが夢だっていつもいってんじゃん」

「だって、もうこんなに傷つきたくない…。」


「もう、昔みたいに泣きたくない…。」

今度はぽろぽろ泣き始めた。


圭ちゃん、やっぱり人は根っこは変わらないのかなぁ…。
あたしも酔ってるせいか、目の前にいる石川が、昔の15歳の石川に見えてきたんだ。



また泣いてるのかよ…。泣き虫な君、いつものように慰めてあげるよ。
親指で涙を拭ってあげて、石川の頭を自分の肩によせた。

あたしの心臓はいつも通りに刻んでいる。

大丈夫だ、きっと。

肩に温もりを感じながら、あたしは目を閉じた。
ずっと声にするのが怖かった。

でも今なら呼べる気がした。昔の石川が隣にいるから...。


「梨華ちゃん…。」


ずっと心の奥底に封印してきたものが蘇って来る。
君に夢中で、君にかまってほしくて、君を本気で好きだったあのときの自分が。



あたしは自分の心臓の鼓動が早くなっているのを感じていた。

15 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 04:13
どれぐらい時間が過ぎたのだろうか。
突然あたしの携帯が鳴った。思考が一気に過去から現実に帰ってきた。

何考えてんだよ。もう過去のことは忘れてたはずなのに。
今まで自分に言い聞かせてきたじゃん…。

16 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 04:14
さすがにあれだけ飲んで泣けば、人間眠たくなるもので石川はそのままあたしの肩で眠っていた。

起こすのがもったいないぐらい熟睡中だったが、こんなとこで眠ってもらったらあたしが家に帰れない。
相変わらず寝顔可愛くないなぁ、なんて思いながら起こす事にした。

「石川ぁ。いいかげん起きろ」
「んぁ、あれ、寝ちゃったんだあたし」

「家まで送るからさ、立てるか?」
17 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 04:16
タクシーを捕まえて車に乗ったのはいいが、気持ち悪いと言い出した。
あとマンションまで少しってところで限界が来たらしく、さすがにタクシーでもどすわけにいかず、降りる。
「大丈夫?水いるか?」
「やばい、気持ち悪いよぉ」

自販どっかねーかな。
少し歩いたところに公園が見えた。

「ちょっと水買ってくるから、そこ座ってろ。」
「うん。よっちゃんごめんね。」

18 名前:& ◆LLa7xc1BZQ 投稿日:2009/02/10(火) 04:19
近くの自販機で水を買ってきて石川に渡した。

さっきよりは顔色良さそうだな。しかし酔うとやっぱ大変だわこいつ。
まいちんとか辻が介抱してんのすげーって思う。


「まだ気持ち悪い?」
「ううん。さっきよりはマシかも」

んじゃ部屋に帰ってからゆっくり休んだ方がいいよな

「立てるか?」
「んー無理っ!よっちゃんおんぶして」

やっぱこいつうぜーって思ったのは内緒にして、このままではどうしようもないので石川を背負った。

19 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 04:23
「石川さぁ、太ったよね最近」
「もうそういうこと言わないでよ。」
「だって重いんだもん!」
「ごめん。これでも努力しようとしてるの!」
「嘘だろぉ〜。フットサル最近来ないから太るんだよ!」
「もう、うるさいよぉ」

アルコールのせいか、石川を背負っているせいかはわからないが、冬なのに外を歩いていても寒く感じない。


20 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 04:25
「よっちゃんさぁ、さっきあたしのこと名前で呼んでくれたよね」
「うん…。」

ドキっとした。

「いつもさ、あたしのこと石川って言うけど、昔見たいに名前で呼んでよ」
「嫌だ!」

はい、即答。

「じゃあ、なんでさっきは呼んだの?」
「なんとなく…。」

「ふ〜ん。じゃあ今度は呼び捨てで呼んでよ」
「ぜってーやだ」
「けち」

そう言って絡めていた腕であたしの首を絞めてきた。

「うわっ、バカ。苦しいからやめろ。下ろすぞ!」
「よっすぃ〜のけち!けちけちば〜か」

そう言ってようやく腕を緩めてた。
やっぱこいつは辻よりガキだ。

石川の鼓動が聴こえる。
早くもなく遅くもなくって感じ。あたしの鼓動も今は落ち着いてると思うよ。

21 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 04:29
「ねぇ、よっちゃん」
「何?」
「よっちゃんにとってさぁ、あたしって何?」

えっ。何って…。なんだろう。


「どういう存在かってこと?」
「うん。」

「うーん。石川はそうだなぁー、戦友かな!!」
「戦友?」
「そう戦友。かっけーでしょ?」
「言う事がよっちゃんらしいよね!なんか」

まあ確かにあたしらしいかもね。


「じゃあ石川は?あたしってどういうやつなの?」
こんな質問、酔ったときにしかできねーよな。


「よっちゃんはね〜、そうだね、友達以上で、恋人未満みたいな存在かな♪」

「ふーん、そっか。恋人以下じゃなくてよかったよ!」
「なんで?」
「だって以下なら恋人も含まれちゃうでしょ?」
「ああそっか。じゃあ以下にしちゃおっか?あはは」
「結構です!未満がいいです。」
なんだと〜って言いながらまた首を絞めてくる。

22 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 04:32
ようやくマンションに着いた。
玄関脇の写真立てが伏せてあった。彼氏との写真か…。部屋に入って石川をソファーに座らせた。

「よっちゃん、ホントにありがとね。今日はいろいろ迷惑かけちゃった//」
「別にいいよ。落ち込んだらさ、また飲みでも何でも誘え!!」
「うん、ありがと。よっちゃん今日もう遅いから泊まっていきなよ!」
「いや、いいよ。今からタクシー捕まえて帰るから。」
「でも、よっちゃん明日仕事お休みでしょ?だから、ね?」


まあ確かに明日は仕事休みだし、石川がいいって言うならいっか。

23 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 04:35
「じゃあ、あたしもう眠いからそこのソファーで寝る。シャワー明日朝使わせて。」
「なんでソファーなの?ベッドで一緒に寝よっ?」
「いや、石川寝相悪いからぜってーやだ。」

「なんで?一緒に寝ようよ。ののとかは泊まりにきたら一緒に寝るよぉ?」
石川さん、そもそもあたしは辻じゃないし。それに、そんなの無理だから。


「ソファーで寝て身体痛くなっても知らないよぉ〜?」
「大丈夫だって!」


石川がシャワー浴びている間、あたしはぼーとテレビを見ていた。
ふとテーブルを見ると灰皿が置いてあった。
タバコ吸う奴は副流煙吸うからやめとけってずっと前にいったのに…。
もしかしたらこんな悲しい想いすることもなかったのにさ。

24 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 04:38
「じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみ」

少しするとベッドの方から、石川の寝息がかすかに聴こえてきた。
時計を見るともう2時になろうとしていた。


真っ暗になった部屋で、あたしはさっきの石川の言葉を思い出した。

『友達以上で恋人未満』か…。

お酒を一緒に飲んだり、愚痴を聞くのは恋人未満でもするよな。じゃあおんぶは、まあ恋人未満でもするかな。




じゃあ一緒に寝てって言われたら。
恋人未満の人間は一緒に寝てあげますか?





あたしはしないよ。
そんなことしたら恋人未満でいられなくなる気がするんだ。
そんな危険な賭けはしない。

25 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/10(火) 14:11
面白いですね。
楽しみにしています(^^
26 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 15:31
君の名前を呼んだのはいつ以来だろう。

娘。に加入したばかりのころ、4期の中で、年が近いこともあってすぐに仲良くなった。
そのころは辻加護がホントにまだ子供で、同期のあたしたちも面倒見るのが大変だったよな。

加護にキレられて、泣いてあたしたちのホテルの部屋に来る石川。
それを見てあきれている辻。
そして話を聞いてあげるあたし。

石川の面倒みるのも大変だったけどね…。





この夜、あたしは夢を見た。とても、リアルな夢


27 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 15:33
ここは、石川の部屋…。
薄暗い部屋で、あたしと君しかいない。



突然石川は、あたしの首に正面から腕を絡ませてきた。
上目遣いで、じっと見つめてくる…。身体が熱くて溶けそうだ。

「よっすぃ〜の目ってすごく綺麗だね…」
「そんなことないよ。」

「唇も薄くて上品な感じだよね…。」
目線があたしの口元に注がれる。


顔があまりに近すぎて、息が出来ない。
あたしは視線に耐えきれなくなった。

「顔、近いよ…。」
「ふふっ、よっすぃ〜真っ赤だよ。照れてるの?
「べっ別に、照れてないし//」

あたしは目線を反らした。

心臓が痛いぐらい高鳴っている。ドキドキするとはこういうことなのだろうか。

28 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 15:37

「ねえ、キスしていい?」
「へっ?」

驚いて顔をあげた。
あたしは目を閉じる暇もなく、意図も簡単に唇を奪われた。

触れるだけの、たった3秒間の
でも、とても心地のよい瞬間だった。



あたしがキスされていると認識する間もなく唇は離された。

石川だけが目で笑っていた...。

29 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 15:39
「ねぇ。 もう一回、してもいい?」
「嫌だっていったらどうすんの?」

あたしがそう言った途端、今度は強引に舌を入れて来た。


抵抗できたはずだ。
だけど気持ちよくて、感情を抑えられない。
本能のまま、石川の唇を味わった。
「んっ…」








これは夢?それとも現実なのだろうか?
唇の感触あまりにもリアルで、過去の記憶と、この現実のような夢を結びつける。


30 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 15:41


遠くで電車の音が聴こえる。


「もう、朝か…。」

厚手のピンクのカーテンの下から、外の世界の光が入り込んでいる。


やはり夢だった。こんなこと現実ではあり得ない。



だって現実で起こったならば、あたしは必死で抵抗するはずだから。
君には幸せになってほしいから、だから拒絶してあげるんだ。

31 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/10(火) 15:43


天井を見上げた。でも涙が溢れて来る。



「もし恋人以下なら…キスしても許されるのかな…」




漏れる声と、このどうしようもない感情を抑えて、あたしは再びソファーに潜り込んだ。

なぜ、今頃になって溢れ出すんだよ。







もう9年も、ずっと君のそばにいるのに...。

32 名前:雨の弓 投稿日:2009/02/10(火) 15:46
本日は以上です。


>25 :名無飼育さん
ありがとうございます!読んでもらって本当に嬉しいです!
頑張って更新しますね♪
33 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/10(火) 22:38
せつないですね、キュンキュンします。
次回も楽しみにしてます。
34 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/11(水) 00:19
何か泣けるね
35 名前:& ◆U4iNOz0Yyg 投稿日:2009/02/11(水) 11:53
二度寝から目覚めた。時計を見ると11時を回っていた。

「やっべぇ、寝過ぎたよ…」
「そろそろ石川起こすかぁ。」

あの眠り姫は、何度寝も出来るのが自慢とか言ってたっけ。
そんなの自慢にならねーよ!。

36 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/11(水) 11:54
石川の寝ているベッドまで忍び足で行き、そっと顔を覗き込んだ。
あはは、やっぱ石川寝顔いけてねー。笑
放送禁止並みだよ

「石川!起きろぉ、もう11時過ぎてるぞ」
「んぁ〜!よっすぃ〜おはよ」
「ふふっ」
思わず笑ってしまった。
寝顔はさ、はっきり言ってやばいのに、寝起きの顔はまぁ、いけてるんですね石川さん。

「なんで笑うのぉ!もう頭痛いのに」
あーあ、二日酔かぁ

「いや、寝顔可愛くないなぁっておもってさ。ははっ」
「なにそれぇ。もうよっちゃん嫌―いっ!!!」

37 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/11(水) 11:55
「あのさ石川、シャワー借りていい?」
「あっどうぞ。タオルとか棚に置いてあるから勝手に使ってね」
「さんきゅ!」


あたしは熱いシャワーを頭から浴びた。

なんか、強がってる、自分。
すべてを洗い流してほしい。そしたら楽になるのかな。

でも、楽になったところで、






素直になんて、いまさらなれない。


38 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/11(水) 11:56
シャワーを浴びて暖まった身体を拭いて、あたしはドライヤーを探した。
あれっ?昨日見た時は洗面台の横にあったはずなんだけど…

「石川ぁ、ドライヤーどこ?」
「あっごめん!あたしさっき使ったからこっちあるよ」
リビングから、高い声がした。



「ねぇよっちゃん座って」
「何?」
「髪乾かしてあげる!」
「はっ?んなことしなくていいよ。」
「いいから、いいから。早く座ってよぉ」


「よっちゃんのショート、好きなんだよねぇ」

なんて言いながら、石川は最近ショートにしたばかりのあたしの髪を乾かし始めた。
くすぐったいけど…すっげー気持ちよくて、あたしは目を閉じた。

39 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/11(水) 11:59

乾かし終わってあたしの髪を梳かしていた手が急に止まった。




息が止まるかと思った。
後ろからいきなり抱きしめられたから…。


「どっ、どうしたぁ?」
「うん。あのね.. 想い出しちゃった。」
彼氏の髪を乾かしてあげたことあるんだろうか…。


普段そんなことされたら、さりげなくかわすけど、でも今日は抱きしめられたまま。
振り向かなくても、石川がどんな表情をしているかわかるから…。






避けることなんて、抵抗することなんて、できなかった。


40 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/11(水) 12:00
どれぐらい時間が過ぎたのだろう。
ようやく泣き止んだ石川が、あたしの背中に顔を押しあてて来た。




「ねえ、心臓の音、聴こえるよ」
「そうか?」



「昨日おんぶしてもらったときより早いね…。」



平常心を保てない。焦れば焦るほど、胸が高鳴る。

41 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/11(水) 12:05

「でもこっちの鼓動のほうが、懐かしいな…」

「へっ?」



小さな声で石川が呟いた...











「だってよっちゃん今、昔みたいにさ…

あたしにドキドキしてるでしょ?」








42 名前:雨の弓 投稿日:2009/02/11(水) 12:11
とりあえずここまでで。次は夜に更新します。
なんかタイトル変なところありますが、気にしないで下さい。

>33 :名無飼育さん
キュンキュンしてくださったんですか♪
嬉しいです!!!

>34 :名無飼育さん
甘いいしよしも大好きなんですけどね♪
どんどん切なくしていきますよ!!



43 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/11(水) 17:37
そろそろ甘くなりそうな展開かと思ったのに
切なくなるんですか?
続き待ってマス
44 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/02/12(木) 04:35
この感じたまらんです。ガンパって。
45 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/12(木) 20:30
ドクン、ドクン…


「ドキドキしてるんじゃないの?」
そう言って、さらに強く抱きしめられた。




頭で考えていた行動ができない。



意識が背中に集中してしまう。

昔より大きくなった彼女の胸が当たる、息がかかる、鼓動が伝わってくる。
あの時のままの、甘い匂い。


五感全てで石川を感じてる。






許されるのなら
もうすこしだけ、このまま…

46 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/12(木) 20:32

このままで、いさせて…。





けれど、そんな願いは叶わない。


あたしの中の何かが…そうさせない。

この想いは封じ込める。
だから今、この一瞬だけ、心の中で「その通りだよ」と呟いて、あたしは口を開いた。

47 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/12(木) 20:34

「ちげーよバカ!違うって!シャワー浴びて体力使ったからだよ。」

石川の腕を掴んで自分から離した。



怖かった。
これ以上抱きしめられたら、この感情、自分で抑えきれなくなる。



「もう大きい声出さないでよぉ。冗談だってばぁ〜。」


「でも…」

「でも?」

「よっちゃんなんか、すごーく暖かかった。」
「すいませんねぇ、平熱高くって〜!」

なんて言ったらあたしの額に手を伸ばしてきた。
自分のとあたしの体温を比べている。

「えぇ〜、あたしとそんなに変わんないよぉ〜!」
そりゃそーだ、あたし平熱別に高くないもん。


額に触れられたけれど、今度は大丈夫みたいだ。
いつも通り、平常心。
そう自分に言い聞かせていた。


48 名前:& ◆9lWw8tig2I 投稿日:2009/02/12(木) 20:36

あたしは今日まいちんと会う予定があったが、それまでの時間石川の部屋でごろごろ過ごした。


「そうだ!今度よっちゃんデートしようよっ♪」
「はいっ??」

今なんて言いましたか石川さん?


「だからデートだよ♪けめちゃん誕生日近いじゃん?一緒にプレゼント選びに行こっ!」

そーだった。来週圭ちゃん誕生日だよなぁ。
あたしはこうみえて誕生日のメールとかプレゼントとかちゃんとしてるんで!
ってその前に、デートってなんだよ?

49 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/12(木) 20:38
「ね?選びに行こうよぉ?」
「まぁーいいけど。」

「やったぁ!じゃあ、デートいつする?」
「その言い方はさぁ〜やめろよ!」
「いいじゃん別にぃっ♪」

ほんとにガキだなこいつは。

「じゃあ、月曜のリハの後は?」
「うん、空いてるよぉ♪」

「んじゃあ決まりな!」
「その日はよっちゃん、あたしの彼氏ね!」

「はぁ?」
「いいじゃん♪一日限りの恋人ごっこ、ね?」
「へいへい。勝手にすれば!」

50 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/12(木) 20:39

そんなこんなで来週そのデート?とやらに付き合うことになったわけだが。



「そんなにあたしが恋人じゃ不満?」

頭を掻いていたあたしを下から覗き込んできた。
やべっ怒らしたか?


「いえ!不満じゃありません!むしろ…」
「むしろ?」

「一徹の妻にしたいぐらいです!」
「なにそれぇ〜!!ばーかぁ!もう妻じゃん!あたしトメ子役だもん」

二人で笑った。
まるでコントかよ。まぁコントの息は最高だけど。

51 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/12(木) 20:41
「じゃあ、あたしこれからまいちんと約束あるから行くわぁ!」
「うん!」


玄関まで石川が来てくれた。

「お前今日中には二日酔い治せよ!明日練習あんだからなぁ。」
「わかってるよぉ〜」

「あと…」
「あと?」

「もう落ち込むなよ。明日はいつものキショイ石川が来るのまってから!!」
「何それぇ〜別にいつもキショくないもん。」
「ははっ!じゃあ、またなぁ!」

52 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/12(木) 20:44

石川のマンションを出てから、一気に緊張が解けた。
勢いだけであたし話してたよ。

なんか、疲れが一気にきた。

でも、昨日からずっと一緒にいてわかったことがあるんだ。


あいつはかなりのガキだってことと…

石川は変わってないってこと。







そして石川に後ろから抱きしめられた時、想ったこと。



この想いは、友情を越えているのだろうか。


昨日歩いた道。寒くて手が悴む。
あたしは駆け足でまいちんとの待ち合わせ場所に向かった。


53 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/12(木) 20:45
【R side】


よっちゃんが帰った後、あたしは部屋を片付け始めた。
ライターに灰皿、写真、指輪、彼を思い出すものすべて、段ボールに詰め込んだ。



そして最後に携帯。

『アドレス一件削除しますか』

あたしは迷いなく『はい』を選択した。

「これで、すべて忘れよう…もう」

「顔も見たくない…。」

54 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/12(木) 20:46
「あっ」
お気に入りのピンクのソファーの上に、黒のシンプルなハットが置き忘れられていた。


「よっちゃん忘れてる…」


しっかりしてそうで、でもどこかぬけてる少年みたいなキャプテン。



「戦友かぁ…」
昨日よっちゃんに言われた言葉を想い出した。

同期は一番のライバルであり、一番信頼できる仲間でもある。
なんでもわかり合える仲間。

55 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/12(木) 20:48

でもあたしにはわからないことがいっぱいある。


あなたとあたしは
戦友なのに…


どうしてあんなに優しいのだろう。

どうしていつも、あたしにだけ目線を合わせてくれないのだろう。




そして今日、またひとつ増えた。

どうして、

まだ、あたしにドキドキしてるの?


もうあのときのような子供じゃないのに。
もう、大人。あたしたち、大人になったんだよ…。



あなたの心には今も、あの時のあたしがいますか?

56 名前:雨の弓 投稿日:2009/02/12(木) 20:52
本日は以上です。
次回は、過去に何があったのか書いていきたいと思います。



>43 :名無飼育さん

小説は全体的に切ない感じにしていこうと思ってます。
甘いのは二人のデート辺りで書くかもしれません♪


>44 :名無し飼育さん

ありがとうこざいます!!更新頑張ります!

57 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 13:18
ああ〜、いいですねぇ〜。
二人の過去、とても気になります!
更新楽しみにしております!
58 名前:名無し飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 14:25
おもしろい展開になってきましたね!応援しています。
59 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:12
あたしはまいちんとの待ち合わせ場所に向かった。
電車に揺られながら、流れて行く風景をずっと見てた。


あたし石川と飲みにいったんだよな…。
さっきまで二人っきりで、部屋にいたんだよね。




『あたしにドキドキしてるでしょ…』

うん、その通りだよ。
さっき想ったことをまた心の中で呟く。



60 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:13
でも、あたしの頭の中で何度もリフレインしてるのはその言葉じゃない。


『昔みたいに…』


昔みたいに….




わかってたんだね…。
あたしが昔、君を抱きしめる度に、胸が高鳴っていたこと。




電車に揺られながら夢をみた。
過去の記憶を辿る旅。

61 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:14
2001年…夏


ようやく仕事にも慣れてきたあたしたち。
最近では先輩とも打ち解けて話せるようになり、毎日大変な日々を過ごしてるけど、楽しいことも増えた。



『よっすぃ〜何ぼーとしてるの?』
「いや、なんか幸せだなーて思ってさ。」

『えぇ〜なんかババくさーい!』
「うっせぇよ加護ぉ!」

最近辻加護が悪ガキすぎる。二人でモノマネとか、メンバーにいたずらしたりしてさ。
まぁそれも可愛いんだけど。

62 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:16
『よっすぃそのお菓子ちょうだい!』

たくっまだまだ子供だなぁ。
なんて思いながらあいぼんにお菓子をあげようとしたら、ののが走ってやってきた。

「あぁ〜ずるい!あいぼんだけよっすぃにお菓子もらってる!!のんにも頂戴!」
『だってののはさっき食べてたじゃんかぁ!』

ケンカが始まる予感…ケンカするほど仲がいいってか!


「もう二人ともケンカしないでよぉ〜」
高い声のトーンでそんなことを言いながら、梨華ちゃんが楽屋に入ってきた。


63 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:18
あたしがいつも目で追っている人。


梨華ちゃんは入った時から、年が近いから話しやすかったんだけど、一年も一緒に過ごしていると性格がわかってくる。
梨華ちゃんは、責任感が強くて、負けず嫌い。
それにせっかちで、すぐネガティブモードに入る奴。
だけど最近変わってきたと思う。なんていうか、元々強い子なんだろうな。


でも自分だけに何でも素直に話してくれるのが嬉しかった。


惹かれてるって気がついたのは、去年の秋頃からだ。
でもそれに恋愛感情があるなんて思っていなかった。

64 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:20
『よっすぃ〜も何か言ってよぉ!!』
「んぁ?のの、お菓子とってぇ〜」
『もう!よっすぃ〜もお菓子食べ過ぎ!!』



「梨華ちゃんさ、最近ネガティブやめたの?」
『うん。だって、ネガティブだめっていわれるんだもん!』

「ついこの前まではあたしにすぐ泣きついてきてたのにさ♪」
『もぉ〜そういうこと言わないでよ!ポジティブになるの!』

そう、最近よくポジティブって言ってる。
初めはさ、この泣き虫梨華ちゃんがポジティブ?無理だろぉ!なんて思ってたけど、最近本当に泣かなくなった。
「よっすぃ〜」って泣きながらあたしのとこに来ていたのが懐かしい。

65 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:21


今日はテレビ収録の日である。

朝からあたしはテンションが高い。


だって梨華ちゃん家に今日泊まりにいくから。
すっげー久しぶり。子供だったあたしは素直にその嬉しさが表情に出ている。


『よっすぃ〜喜びすぎ!』
「だってぇ〜梨華ちゃん家行くの久しぶりじゃん!」

『そうだけど、顔にやけてるよぉ〜//』
「だって嬉しすぃ〜だもん。」



66 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:22
仕事が終わってから夕食を食べた後、二人で梨華ちゃんの家に行った。

ドアを開いた瞬間、ピンクが視界に入り込む。

「やっぱこの部屋チカチカするわぁ〜」
『そのうち慣れるよ♪あたしは落ち着くんだけどなぁ』


二人でソファに座ってテレビを見ながらいろいろ話した。
タンポポであいぼんとケンカして、負けなかったらしい。それを自慢げに語る梨華ちゃんがおもしろい。
あとはあたしがごっつぁんとゲーセンにいった話とか、梨華ちゃんが保田さんとご飯食べにいった話とか。

最近ユニットの活動が忙しくて、久しぶりに二人で話した気がする。

67 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:24
お風呂から上がって、二人でテレビを見ていたら、
突然梨華ちゃんがあたしの首に正面から腕を絡ませてきた。

「どっ…どした?」

上目遣いでじっと見つめてくる
『よっすぃ〜の目ってすごく綺麗だね…』
「そんなことないよ。」

『唇も薄くて上品な感じだよね…。』
目線があたしの口元に注がれる。


顔があまりに近すぎて、息が出来ない。
あたしは視線に耐えきれなくなった。

「顔、近いよ…。」
『ふふっ、よっすぃ〜真っ赤だよ。照れてるの?』
「べっ別に、照れてないし//」


あたしは目線を反らした。心臓が痛いぐらい高鳴っている。
ドキドキするとはこういうことなのだろうか。


68 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:26
「ねえ、キスしていい?」
「へっ?」

驚いて顔をあげた。

思わず梨華ちゃんの唇を見てしまった。
もう顔が真っ赤で湯気が出そう。



『ばーかぁ!嘘だよぉ♪そんな照れないでよ』

「もう!からかうなよぉ。ほんとビックリしたし!!」
『よっすぃ〜可愛いね!』


もう梨華ちゃんが変なことするから顔熱くなったし。


『でも…してほしかったら言って♪』
「はいっ?」
『よっすぃ〜にならしてあげる!』



たぶんね、好きになってたと思う。
梨華ちゃんがこんなこと言うから意識しちゃって。

69 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:28
『ねぇよっすぃ〜。一緒に寝よ♪』
「おう!」

あたしたちはいつも通り一緒のベッドで寝た。

なんかわかんないけど、緊張してる…。



「なんか梨華ちゃんと一緒に寝るのとか、久しぶりな気がする」
『だってぇ、最近ののが一緒に寝よって言ってくるからさぁホテルとか怖くないんだもん』

「それに最近梨華ちゃん泣かなくなったからね!」
『いつもあたしよっすぃ〜に慰めてもらってたよね♪』

70 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:29
「じゃあ今日も抱きしめてあげよっか?なーんてねっ」
『うん♪お願いっ』


冗談で言ったのに…。
満面の笑みでお願いなんて言われたら、そうしますよ。
あたしは左腕を梨華ちゃんの頭の下に通して、右腕で上から腰をぎゅっと引き寄せる。
久しぶりで緊張するよぉ〜。


「どうすかねぇ〜?」
『なんかいつもより落ち着く感じ。』

「なにその感想っ!いつもはどうなの?//」
『泣きすぎてあんまり覚えてない!』

「まぁ、泣いてるとき梨華ちゃん必死だもんね!笑」
『何それぇ〜!』
そう言って唇を尖らして拗ねる。

71 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:31
しばらく抱きしめたまま、ベッドの中で会話をしていた。
体温が伝わってきて、暖かい。

『よっすぃ〜そろそろ寝る?』
「そうだね、明日も仕事早いし」

『腕、解いていいよ。ごめんね…痛かったでしょ?』
そう言われて、抱きしめていた身体を離した。

『じゃあね、おやすみ』
「うん、おやすみ」


隣から寝息が聴こえる。


できるなら、もっと、朝まで抱きしめていたかった。
あたしは自分の感情に気がついたんだ。



好き。

大好き…。こんな気持ちになるのは初めて。





神様、これは…初恋ですか。


72 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:33
それからのあたしは、いつも梨華ちゃんが気になってしょうがない。


気がつけば、目で追っている...。

楽屋で寝ている姿を見たら、顔がにやけてしまう...。

君が他の人と、楽しそうに会話してると、少しだけ嫉妬する...。




こんな日々が半年ぐらい続いた。

73 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:33

でも、あたしの片思いは辛かった。


梨華ちゃんは無意識に、あたしの手を握ったりする。
腕を絡ませたり、抱きついてきたり…。



その度に、あたしは意識してしまう。

触れられたところが熱い。

74 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:34
あれから何回か梨華ちゃんの家にも泊まりに行った。
最初は抱きしめてあげられることが、嬉しかった。



でも、いつの間にか、それは辛いものになっていた。




変な夢を見てしまう。
唇に触れたくて、抑えるのがつらい。


好きで、好きすぎてたまらない。

75 名前:& ◆LLa7xc1BZQ 投稿日:2009/02/13(金) 17:37
それから時が過ぎた…

ツアーが始まる。
この期間は移動とかリハも大変で、とても疲れる。


移動中の新幹線、梨華ちゃんがあたしの隣に座ってきた。
今日は大阪から福岡まで移動。

『よっすぃ〜、疲れたから寝てもいい?』
「うん。着いたら起こすよ。」
『ありがとう。』
そう言って、隣ですやすやと眠り始めた。


あたしは梨華ちゃんが眠ったあと、外を見ながら想い出した。
昨日ホテルでみた、あの夢を...。

76 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:40
夢の中、梨華ちゃんのベッドで君を抱きしめて、いつものように話をしていた。

『じゃあそろそろ寝よっか』
『腕、解いていいよ…。』

あたしは抱きしめたまま離さない。

『よっすぃ〜どうしたの?』

この温もりを手放したくない。

「梨華ちゃん…。」



あたしは梨華ちゃんの方に顔を向けていきなりキスをした。
何度も、何度も。
溶けそうなくらい、優しいキスを。

身体が熱くなってきて、君をベッドに無理矢理押し倒す。

ボタンを一つずつ外して行く。手が、震えてた。
胸元のボタンに手をかけた時、君の顔を見たんだ。



泣いている君の顔、懐かしいあの泣き顔を…。





そこで携帯のアラームが鳴ったんだ。
もしあのまま、夢を見ていたらどういう展開になったのだろうか。


あたしは新幹線がトンネルを通過している間、窓に映る自分をじっと見つめていた。

77 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:41

ふと、肩に重みを感じた。
君があたしに寄りかかって眠っている。

子供のような安心しきった顔…。
でも、どこか大人びてもいる彼女の顔。



「ごめんね…。」

あたしは前を向いたまま、小さく呟いた…。





夢の中だけど、

初めて君を泣かせてしまったから。

78 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:43
それからは仕事のことしか考えないようにした。
でも、一人になるとどうしても考えてしまう...。


ライブが終わった後、疲れているはずなのに眠れない。
ベッドに入って、ただ眠ることができない。



突然ドアのチャイムが鳴った。

「こんな時間に誰だよ…」
時計を見ると、もう2時を回っている。



あたしはベッドから起きて、ドアの覗き穴を見た。



「梨華ちゃん…?」

79 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:44

ホテルの部屋のドアをあけると泣きながら梨華ちゃんが立っていた。

「どうしたの?」
「んっぐすっ、、怖い夢見た…」

泣いている理由がいかにも梨華ちゃんらしい。


「よっすぃ〜、一緒に寝てもいい?」
「うん、いいよ。」



最後だから…。

80 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:45
あたしたちは一緒にベッドに入った。


泣いてる君を見るのは本当に久しぶりだね。

ベッドに入ったら、あたしはいつもみたいに優しく抱きしめてあげた。
梨華ちゃんの甘い匂いがする。


「梨華ちゃん、大丈夫?」
『うん。よっすぃ〜に抱きしめられると落ち着くよ…』

「そう?」
『うん、前からそうだよ。すごく落ち着く。』


あたしは自分の鼓動が高鳴っているのに気がついた。
いつからこんなに、高鳴っているのだろうか。

今日が初めて…?  いや、もっと…もっと前からこうだった。

81 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:48

しばらく抱きしめていると、梨華ちゃんはようやく泣き止んでくれた。
いつものあたしなら、抱きしめている腕を解くけれど、今日はそのままでいた。


『ねぇ、よっすぃ〜の夢って何?』
突然、上を向いていた梨華ちゃんがあたしの方に顔を向けた。

「夢?うーんそうだなぁ。まだ考え中。梨華ちゃんは?」
『あたしは、いつか、幸せをあげれられるような強い人になることかな。』

「えっ、なら梨華ちゃん自身は?」
『自分自身も幸せじゃないと誰かになんて無理だよぉ』
「あっ確かにそうだね。」


『あたしね、いつか結婚したら、今のあたしの家族みたいな家庭を持ちたいんだぁ…』



『一緒にいるだけで幸せって思える家庭をもつことに憧れてるのかもね…。』
そう言って君は照れながら小さく微笑んだ。
82 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:49

それからいろんな話をした。カントリー娘での失敗談や、飯田さんに怒られたこととか。

『あたしポジティブになれたかなぁ?』
「まずは泣き虫から卒業したら?」

『別にもう泣き虫じゃないもん!』
「今も泣いてたくせに…」


でも、もう君は強くなってるよ。成長してる。


慰め役のあたしがいなくても、きっと大丈夫だよね…。

きっと。




だからもう終わらせようと思う。

83 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:50

『ねぇ、よっすぃ〜あたしのこと好き?』


「うん。好きだよ、誰よりも。」

視線を合わせずに、でも...素直に答えた。



『嬉しいけど、それ大げさすぎるよぉ〜。』


「梨華ちゃんは?」
『もちろんよっすぃ〜大好きだよ…』
「そっか」



好きの意味が違う事ぐらいわかっている。
けど、嬉しかった。


幸せだよ。十分すぎるぐらい。

84 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:51

「梨華ちゃん…あのさ。」


寝ちゃったか…。疲れちゃったんだろうな。
横を向くと、無防備な顔がある。
寝顔、前から思ってたけどあんまり可愛くないよね。こんなん言ったら平手打ちされるかな?



あたしのTシャツを小さな手が掴んだまま寝ている。
抱いたまま朝まで寝ろってか?


涙の痕が残ったままの頬に手を添えた。



愛しさがこみ上げてきた。

85 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:52




「夢、決まったよ……..。」





梨華ちゃんが幸せになるのをそばで見ていたい。
それでもっとたくさんの人に幸せをあげてほしい。


たとえ君が誰かのものになっても、
あたしはその笑顔見るだけで、幸せになるからさ。

86 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:53



あたしは今から失恋をする。自分で終わらせる。




頬に添えていた手を離して、強く抱きしめた。

目を閉じて静かに誓う。

この届かぬ想いは封じ込める。
次、目覚めた時は、君の一番の理解者としてそばにいるから。





「おやすみ、梨華ちゃん」




その日あたしは泣きながら眠った。

悲しくはない、幸せだから。

87 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:55



それから、あたしは名前を呼ぶ事をやめた。



時が流れる...

少し距離をおいていた時期もあった。でも、いつも石川のことは気にしていたよ。
よくちょっかい出したりしたけど、それは大人に成って行く君に、ただ少しかまってほしかっただけ。


同期が卒業していく時なんて、本当はすごく寂しかった。
辻加護の時も、石川の時も、自分だけ取り残されていくような感覚になっていたのかもしれない。


でも、それがあたしを強くしてくれた。
リーダーになってから、本当の意味で成長できたと思う。


あたしの方が、何年も遅い成長期だったね…。

88 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:56

そして、誓った日から、もう8年になる。


あたしも強くなった。
二人っきりでプライベートで遊ぶことはないが、相談にもよくのってあげたし、石川に彼氏が出来たときは応援した。
もう石川を、戦友としてしか見ていなかった。



そして今ではポジティブに成りすぎて、きしょいキャラになっている石川。
あたしもときどきキショっ!て思うときがあるぐらい(笑)

今の石川しか知らない人は、昔のネガティブで泣き虫だった石川なんて考えられないだろうな。

89 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 17:58

時が経てば人も変わる。

もう完全にあの頃の想いは、友情に変わっているはずだった。





でももし昨日、昔のように一緒に寝たとしたら…あたしはどうしてたかな。

石川の嫌がるようなことは絶対にしない。
泣き顔は、見たくないから。



でも、一睡もできない自分が容易に想像できた。



戦友がさ、隣で一緒に寝るだけで一睡もできないなんて、おかしいよね。







あたしは8年前に語った石川の夢を想い出す。

そう、あたしは君を幸せにできない。
だから、自分から失恋したんだ。

90 名前:友達以上...恋人未満 投稿日:2009/02/13(金) 18:00

以上で過去編は終了です。


>57 :名無飼育さん

過去編では、どこまでも優しい吉澤さんを書きたかったのですが、なんだか書いていて、つらくなりました。


>58 :名無飼育さん

応援ありがとうございます。更新頑張りますね!

91 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/13(金) 20:50
よっすぃーがとても健気ですね…
これからどうなっていくのか楽しみです。
幸せになってくれ!
92 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/14(土) 00:09
よっすぃの大きな大きな“愛”いつか届くといいな。(泣
93 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/14(土) 01:54
また吉澤を男扱いするいしよしか・・・
94 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/20(金) 22:31
ままままま待ってます♪
95 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/26(木) 06:52
面白いですね
期待して待ってます
96 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/26(木) 20:34
待ってます。
97 名前:雨の弓 投稿日:2009/02/28(土) 03:16
作者です。
現在自分のPCが手元にない状況なので、「友達以上…恋人未満」の小説の続きは3月下旬に更新したいと思います。

その代わりになるかわかりませんが、実家のPCで緩いアンリアル小説(短編)を書きます。
98 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:17

長い夜が始まろうとしている。
あたしは今日もスーツ姿。

大学の講義が終わった後、柴ちゃんと別れて急いでバイト先へ向かった。

「よし、今日も頑張るわよ!」

この辺りでも一際目立つ豪邸の前、あたしは勢い良く玄関のチャイムを鳴らす。
99 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:18

『あら、こんばんは石川さん。ひとみは部屋にいるから、今日も宜しくお願いね。』

「こんばんは、お邪魔しますね」

今の人がひとみちゃんのお母さん。美人薬剤師さんなのよ。
この人の子供なんて、とても思えない・・・いつ見てもそう感じてしまう。
いや、容姿はひとみちゃんも負けないくらい綺麗なのよ。

100 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:20
挨拶を済ませて二階へと続く階段を上る。
部屋の前に着くと、あたしは過去三回ひとみちゃんにされた悪戯を思い出した。

初回、ドアを開けた瞬間、大声で脅かす。

二回目、鳥のぬいぐるみをあたしに投げつける。

そして先週、いきなり抱きしめてセクハラ。

何でもいいわ。あたしは全く怖くないのよ!
可愛い悪戯をされたら笑顔でかわして、度が過ぎると説教でもしてあげるわ。

101 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:21
今日あなたにされる悪戯をいろいろと予想しながら、あたしはドアを開ける。

「えっ!?」
『あっやっと来た。石川先生!二分遅刻だよ』

あたしの予想は全て外れた。

『せんせー?何突っ立ってんの?』

ひとみちゃんが真面目に椅子に座っている。
しかも数学Tのテキストを広げて予習みたいなことまでしているわ。
ありえない・・・
102 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:22
「今日は真面目なのね、ひとみちゃん」
『いつもそうです。あと先生さぁ、ひとみちゃんって呼ぶのいい加減やめてよ』

「じゃあ、真面目なひとみちゃん。90分しっかり勉強しよっか。
 今日は数T何ページからだっけ?」

『ちぇっ、無視かよー』

完全無視してひとみちゃんの隣に座り、テキストとボールペン、参考書を鞄から取り出す。

あたしはひとみちゃんって呼ぶのが好きなの。
だって嫌がる姿が子犬みたいで少し可愛いから。
最近気がついたんだけど、あたしはどうやらSっ気があるみたい。

103 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:24
ひとみちゃんはペン回しをしながら、拗ねたような声で言う。
『今日は52ページからだよ』

えっと52にね。ごじゅー・・・って。
何でページ数まで覚えてるの!?
先週なんかテキストすら机に出してなかったのに・・・


そう、あたしは三週間前からこの吉澤ひとみの家庭教師をしている。
数学を担当していて、教えるのは今日が四回目。

某大学の薬学部の一回生で、実家から仕送りを貰っているけれど、せめて食費ぐらいは自分で賄うためにバイトを始めた。
数学と化学は昔から結構得意で、よく友達にも教えていたから今回家庭教師のバイトをすることにしたのよ。
時給は結構良いんだけどね・・・
まぁ服とか化粧品買うだけでも給料は消えていくかも。

104 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:25
『石川先生、今日も綺麗ですね。』

真面目そうな顔で横に座っているこの子犬が唐突に変なことを言ってきた。
なんか、今日あなた変よ?

「ふふっ、そうよ。いつもあたしは綺麗なの」

高校に入学した辺りから、綺麗とか色っぽいってよく言われるあたし。
自分で言うのもあれだけど、あたしって結構モテると思う。
ちなみに告白成功率は今のところ100%、月に三回は告白される。
今まで付き合った人も結構いるし、告白された男の子の数はもう多すぎてわかんない。
女の子にも告白されたこともある。まぁ付き合った人はへたればっかで最悪だったけど。
最近は付き合う前に振ってばっかり。

こんなあたしを柴ちゃんは魔性の女とか言うんだよね。
まぁ理想は高いんだけど・・・

105 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:26
だからね、吉澤さん。そんな口説き文句、聞き飽きるぐらい言われてるの。
あたしはそう簡単に騙せないし、落とせないわよ。


『世界一綺麗な石川先生見ながら数学できるなんて最高だよ〜』

綺麗なのは知ってるわ。
世界一かどうかは知らないけど。

『だから先生早く始めよ、52ページだよ』

ふふっ、あたしが忘れているとでも思っているのかしら。

106 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:27
「ひとみちゃん。授業の前にまず中間テストの結果、見せて?」
『えっ、なんのこと?』

「とぼけたってダメ。中間ってもう一週間以上も前にあったのよ。
返却されているのは知ってるの。」

『返却まだだよ。今日も数学授業変更だったんだ。』

まだとぼけた振りをしている。しょうがないわね。
あたしの武器、使うしかないかな。

107 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:28
あたしは椅子を左に回転させて、彼女の頬を両手で優しく包んだ。
そして顔を極限まで近づけて甘い声で言う。

「ひとみちゃん、点数悪くても怒らないから。ね?だから見せて?」

ふふっ、顔真っ赤よ。可愛いんだから。そんなにあたしのことが好きなの?

『ほんとに怒らない?』
「うん、怒らない。」

もう飼い主の顔色を伺っている子犬にしか見えない。
今度チワワでも飼おうかな。
108 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:29
『わかった。なら見せます。』
その子犬は赤い顔をしながら素直にファイルから数学のテストを取り出した。

そうそう、素直じゃなきゃ、あたしと付き合えないよ。
まぁ子犬と付き合う気なんて全くないんだけどね。

『はい』

もう、そんなに恐々渡さないでよ。
ひとみちゃん化学や生物の点数良かったんだから、数学も大丈夫でしょ。


「えっ・・・何これ」

数学T 14点
数学A 16点

もしかして、20点満点のテストとか・・・

「ひとみちゃん、このテストの平均点は?」

嫌そうな顔をして答える。
『数Tが72点で、数Aが65点』
109 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:30
ありえない。なんで・・・

「ちょっと平均の半分もないじゃない。理由を説明して。」
『ほらやっぱ怒ったぁ。もう嫌だよー』

どうやら真面目モードを解除したみたい。
子犬は椅子を離れてベッドにどすーんと寝転がった。

『だってうち数学嫌なんだもん。やりたくない』

そういえば模試も数学出来なかったって言ってたような。
先週来たときは結構問題出来てたのになぁ・・・
110 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:32
しょうがない。
テストはもう終わったんだから、今日から本気で勉強するしかないわ。
だってあなたも、あたしと一緒で薬剤師になるのが夢なんでしょ。
ここで数学が苦手になったら後々困るわ。

「ほら、ひとみちゃん。早く机に戻って!」


そう言って寝転んでいる彼女の腕を掴んで起こす・・・

計画だったが逆に子犬に引っ張られて正面から抱きつかれる。


『いやだ。先生と90分遊んでる方がいいよ』

先生と遊ぶ?  遊ぶ・・・play
この子犬、まだ16歳でしょーが、ばか。
発情期の雄犬じゃあるまいし。あたしが変な風に変換してるのもどうかと思うけど。

『石川先生の身体ってなんか・・・いい。』

何よそれ、意味わかんない。
これって立派なセクハラよ。
111 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:34

「もう、いつまで抱きついてんのよ。早く離れて」
『じゃあ、先生がうちと付き合ってくれたら離す。今振ったら後悔するよ』

もう、この台詞何回目?初めてあたしが来たときからからずっとこれ。

「ひとみちゃん、あたしねこれでも結構モテるの。」
『うん、知ってるよ。前に先生から聞いたから。』

「だから別に振っても後悔しないと思う。」
『・・・。』

あぁちょっときつかったかなぁ。
こんなセクハラ子犬でも恋する乙女なんだよね。


「ごめんね、付き合うとか無理なの。わかったら机戻って勉強しよ?」
112 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:35
いじけちゃったかな?
でも、付き合う気がないんだったらきっぱり断るのがあたしの主義なの。

『わかった。諦める。でも・・・』
「でも?」



『まずは数学より、先生の身体を勉強したいな♪』

とびきりの笑顔でとんでもないことを言うから、あたしは子犬の頬を両手で思いっきり抓った。

「バカなこと言わないの」
『うっー、うそれす。ごめんらさい』
113 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:36
ようやく授業開始。
まずはテストの答え直しから。
まずね、基本的なことを理解してないから解けないのよ。
応用する能力はあるはずなんだから、必ず偏差値だって上がるはず。


『ねぇ先生、これどうやって解くの?』

『先生、なんでこの部分積分違うの?』

『先生、アドレス教えて?』

三回に一回は変なことを聞かれるけれど、そこはさっさと教えて勉強に集中。

『やったーアドゲット!毎日メールしよっと』
「それならあたしは毎日数学の問題をメールするから、必ず答えをメールしてね」
「いえ、メール控えます」

114 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:37
90分の授業はあっという間に終わる。
「じゃあ、ここは前の問題の応用だから、来週までに全部解いてきてね。」
『えぇー無理』

「最初から無理とか言わないの。考えることが大切なんだから。
 わかんなかったら解き方のヒントをメールするから、一人で解いてみて」

『メールしてくれるの?よっしゃぁ』



まるで
餌をあげた犬並みの喜び方だわ。
115 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:38
「じゃあ今日はこれで終わりだから、ちゃんと復習しておいてね」
あたしは鞄にテキスト類を入れて立ち上がる。

『待って先生!』

そう言われて振り返ったら、顔を近づけてきて突然子犬にキスされた。

「んっ・・・っ・・」


今まで付き合ってた人で突然キスしてくる人も結構いたから、あんまり驚かないけれど、
付き合ってもない人にされたら、もちろん、平手打ち。


あたしは右手を振り上げた・・・けれどやめた。
女の子にキスされてる驚きとかより、なんかあまりにも下手すぎて・・・
犬に舐められている気分で、悲しくなる。
116 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:42
子犬!もう離して、いくらなんでも長すぎ!

ようやく彼女はあたしの肩に置いていた手の力を緩めた。
そして唇を離すと、彼女は笑顔であたしに聞く。


『先生!今のキス、何点ですか?』
「へっ?」

『だって、先生と付き合うのは無理なんでしょ。今後のうちの恋のために練習したんです』
「はあ?なんであたしが練習用なのよ?」
『だって石川先生恋愛経験豊富だから、練習したいなーって思って。で、何点ですか?』


嘘。あたしとキスしたかったから強引にしたんでしょ。ばか!
練習とかなによ。

117 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:44
「5点。 下手すぎ!それも宿題」
『えっ?なら答え合わせは来週するの?』

なんでそういうとこだけ速攻で答えるかなぁ。


「ばか!しないわよ。彼氏にでも答え教えてもらいなさい。」
『今彼氏いないし。じゃあ練習してくるから、来週は模範解答もほしいな』

にやにやしないでよ。
練習とか一体誰とするのよ。マネキン?

はぁ・・・この子犬はほんと子供っていうか素直っていうか
単にエロいのか。あたしもわかんないし

「模範解答なんて知りません。じゃあ、問題ちゃんと考えて解いてね。」
『はいはい』
「“はい”は一回」
『へーい』
118 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:45
梨華にとっての4回目のバイトはやっと終了した。

90分って意外と短いかも。
家帰ってからもっと効率の良い進め方考えないと。
あぁでも実験のレポートもやらなきゃ。今夜は徹夜かもぉ



その頃、ひとみはというと

先生今日も綺麗だったなぁ。キスしちゃったし。
でも、うちそんなにキス下手かな?結構巧い方だと思ってたのに・・・
そうだ、メールで聞いてみよう。

119 名前:TEACHER− 投稿日:2009/02/28(土) 03:46
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

宛先  石川せんせー
件名  やっほー
本文
石川先生〜うちのキス、どういう所が下手でしたか?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

宛先 エロ子犬
件名 数学復習してね♪

考えることが大切。以上
(犬の絵文字)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なんで犬の絵文字なんだろ・・・うーん謎だ。
まぁメール出来たからいっか。



END
120 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/01(日) 02:21
いしよし・・・


95点!
121 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:28
今日は快晴。
雲一つない空、あたしはこんな日が大好き。

だって、洗濯物がよく乾くんだもん。ごめんね、夢も何もなくて。

『梨華ちゃん、早く食べないと麺伸びるよ』

大学の中で一番好きな場所、それは学食。
お昼はおいしいご飯食べられるし、夕方はみんなでしゃべったり、先輩から貰った過去問とにらめっこしたりできる場所。
122 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:30
今は高校からの親友、柴ちゃんとまったりランチ中。柴ちゃんも同じ薬学部なの。

「あーあ。もう伸びちゃったぁ」
『ぼーっとしてるからよ。あっ、ねぇ見てあの人、この前梨華ちゃんが振った人じゃない?』

確かにあたしに告ってきた人だ。

そう、あたし実は結構モテる。
柴ちゃん曰く、いろんな人の告白を振りまくる魔性の女。

『梨華ちゃん今フリーなんでしょ?
 あの人かっこいいしさ、付き合ってみればいいのに』

「いやよ。あんな超へたれ男。
あの人解剖の実験の時、怖いとかいって全部あたしにやらせたんだから。」


顔がどんなにかっこよくても、へたれな人はイヤ。
それに優しくて、リードしてくれる人じゃなきゃあたしは付き合いたくないの。

123 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:30

『ふーん、まぁへたれ君はだめかもね。あっ梨華ちゃんの携帯光ってるよ』


イヤな予感・・・
この時間に来るメールといえば、あのエロ子犬に間違いないわ。


「やっぱり・・・」


携帯を開いて確認すると、子犬からメールが来ていた。

『何がやっぱりなの?』
「なんか最近ね、カテキョで教えている子犬から毎日メール来るんだ。」

『えっ、犬に教えてんの?』

柴ちゃん、犬にどうやって数学教えるのよ。
でも案外本物の犬に躾を教える方が楽かも・・・
124 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:33
「違うわよ、あたしが勝手に子犬って呼んでる女の子」
『へぇー。でも仲良いいなら教えるの楽そうじゃん。
 毎日何メールしてんの?』

決して仲が良いわけではない。
あたしは子犬から来たメールを柴ちゃんに見せた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
名前 エロ子犬
件名 宿題やってます☆
本文

学校でちゅーの練習ちゅー(0^〜^)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
添付画像は子犬とその友達みたいな子がキスの真似をしている写メ。

125 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:34
ほんとバカ。毎日こんなメールが送られてくる。
そんなことをする暇があるんなら勉強しなさいよ。

『何これ?なんで梨華ちゃんにこんな写メ送ってくるの?』
「宿題だからじゃない?」

『宿題って?』
「キス。あまりにも下手だったから宿題にしたの」

だって下手すぎて呆れるぐらいだったもん。

『ぶはっっ!!』
「うわ、ちょっと柴ちゃんお茶噴出さないでよ。」

126 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:35
ごめんとか言いながら、ティッシュでテーブルを拭いてあたしに聞いてくる。
『ちょっと梨華ちゃん、この子とキスしたの?』
「したっていうか、無理やりされたの」

そうよ、あたしは無理やりされたのよ。
やっぱあの時平手打ちしておけばよかった。

『でもこの子女の子でしょ。あーでも写メ見る限りはかっこいい系の子だね』

まぁ確かに家で教えてる時のひとみちゃんはいつも炎のマークのジャージ着ててかっこいいけど・・・
中身はただのセクハラ子犬よ。そういえば制服姿初めて見たわ。

127 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:37

「だっていきなりで避けれなかったんだもん。
 それに超下手だったし」

『梨華ちゃん、その美貌でこの子犬ちゃんを惚れさせたんでしょ。』


美貌だなんて・・・やめてよ柴ちゃん、照れるし ////

ってそうじゃなくて

「違うし、勝手に子犬が懐いてくるだけよ」
『でもさ、キスが下手とかよくわかるよね、さすが経験豊富な女は違うわぁ〜』

またそれ言う。柴ちゃんだって今付き合ってる先輩とそういうことしてるでしょ。

「別にあたしそんな経験豊富じゃないよ。ただキスに関してうるさいだけですぅ」
『どういうところが下手だったわけよ?』
「うーん、なんか犬が飼い主を舐めてるだけみたいな。
 普通だったらさ、こう舌がさぁ・・・」
『あぁーもういいわ。梨華ちゃんが言うと生々しいよ』

「なんなら試してみる?柴ちゃんとなら別にしても構わないよ」
『あははっ、遠慮しとくわ。それより暇だからその子犬ちゃんにメール返そうよ』
128 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:39
そう言ってあたしの携帯を楽しそうにいじりはじめた柴ちゃん。
勝手にメール返信してるし。
「ちょっと柴ちゃん、何送ったのよ?」

不敵な笑みを浮かべ、小悪魔みたいな顔をしながらあたしに携帯の画面を見せる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
宛先 エロ子犬
件名 今週答え合わせしようね♪
本文 

あたし以外の人とちゅーしちゃダメだよ(ハート)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
129 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:40
「ぶはっっ!!」
あたしはオレンジジュースを噴出した。

『ちょっと梨華ちゃんきったなーい』
汚いじゃないわよ。何送ってんの。

「もう何してんのばかぁ。勘違いされるし」
『ちょっとぐらいいーじゃん、この子犬ちゃんなんか可愛いし、それに梨華ちゃんのこと好きなんでしょ?』

あたしの目の前にいる柴ちゃんが、だんだん子犬と遊ぶ柴犬に見えてきた。

「好きも何も、もう100回ぐらい告白されたわよ。もちろん全部振ってるけどね」
『うわぁ子犬ちゃん可哀想。梨華先生酷すぎだよね、よしよし』
「もう!柴ちゃん面白がってるでしょ」

130 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:42
あたしは教えに行くたびに「好き」とか「付き合って」とか言われて、おまけにセクハラまでされてほんと困ってるのよ!!

『まぁまぁ、好かれてるってことは良いことじゃん。あっ返信来た。』

もうあたしの携帯で遊ばないでよぉ・・・

メールを読んだ柴犬が真面目な顔をして聞いてくる。
『ねぇ、基本問題の次にすることって何だと思う?』

何よいきなり・・・
基本の次って言ったら
「応用問題じゃないの?」

『じゃあ普通ならキスの次って何する?』
「キスの次はもちろん・・・。もう、柴ちゃんまで変なこと言わないでよ。」

柴犬は大声で笑いながらあたしに携帯の画面を見せてきた。
131 名前:TEACHER−MISCHIEF OF FRIEND 投稿日:2009/03/05(木) 12:43

………。



「柴ちゃん、あたし今週からずっとパンツスーツでバイト行くことにするわ。」

『えぇー梨華ちゃんスカートの方が似合うのに』
「似合わなくていいの、そっちの方が安全だから。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

名前 エロ子犬
件名 するA
本文

わかった、せんせー以外の人と練習しないから。
あと今週は応用も教えて。もちろん数学のことじゃないよ(0^〜^)えへへっ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(`▽´)笑って変なこというなバカ犬!!

END
132 名前:   投稿日:2009/03/05(木) 12:44
  
133 名前:    投稿日:2009/03/05(木) 12:44
  
134 名前:TEACHER−MIDNIGHT 投稿日:2009/03/05(木) 12:46
深夜の東京

月は厚い雲に覆われてその光が届かない。
雨と雷の音だけが響いている。


気がつくと時計の針は1時半を指している。
明日は1限から講義があるからそろそろ寝なきゃ。
あたしはレポートを途中で切り上げ、PCを閉じてベッドに入る。

すると突然枕元にある携帯が鳴った。
誰よこんな夜中に電話してくるのは。

携帯の画面に出た名前を見た途端、あたしは無意識にため息をついた。
「エロ子犬」

なんでこんな時間に、しかも電話なのよ。

135 名前:TEACHER−MIDNIGHT 投稿日:2009/03/05(木) 12:47
あたしはしぶしぶ電話に出た。

「もしもし」
『あっ先生、もしかして今寝てた?』
「いや寝てないけど、こんな夜中にどうしたの?」
『うーんとね、石川先生の声聞きたくなった』

あのね、そんなことでわざわざ電話しないでよ。
明日はカテキョがあるんだからあたしに会えるじゃない。

「じゃあもう声聞いたからいいね、明日19時にお家に行くから。おやすみ」
『待って!まだ切らないで』
「何?」

『雷・・・』
「えっ?」
『雷、怖いから・・・寝れないんだ』
136 名前:TEACHER−MIDNIGHT 投稿日:2009/03/05(木) 12:49
えぇー雷が怖いって!???
もしかして、あなたは本当に子犬なの?

『だから先生、うちが眠るまで一緒に寝ながら話そ?』
「話そうって言っても・・・」

あたし子守唄でも歌えばいいの?

『あっ本当は一緒のベッドで寝たいんだけどね』
「切るよ?」
『いえ冗談です。えへへっ』

冗談に聞こえないわよ。
もう雷ぐらいで眠れないなんて、ほんとにへたれなんだから。
急に笑うのをやめて、あたしに話しかけてくる。

『ねぇ、先生』
「何?」
『好き』
「うん知ってる」
『じゃあ付き合って』
「無理」
『何で?』
「雷に怯えているようなへたれな子犬はいやなの」

『子犬って何?』

やばっ、つい子犬って言っちゃった。


137 名前:TEACHER−MIDNIGHT 投稿日:2009/03/05(木) 12:50
「とにかく無理なの。そうだ、ひとみちゃん宿題やった?」
『もちろん上手くなったよ』

いや、そっちじゃなくて
「違うから、積分の問題のことよ?」
『あぁ、そっちか。友達に答え聞いたからできたよ。』

もう、間違っててもいいから自分ひとりで考えてほしかったのに・・・
「次から答え聞いちゃダメよ。ちゃんと自分で考えてみて。」
『へーい』

ちゃんと聞いてるのかしら?
『それより、明日楽しみだなぁ』
「何が楽しみなの?」
『だって先生来るから』

これってあたし、喜んでいいのかなぁ?

「言っとくけど、明日勉強しかしないわよ」
『え、他に何かする予定だったの?』

ムカツク。なんか今日はやけにムカツクわよ。
138 名前:TEACHER−MIDNIGHT 投稿日:2009/03/05(木) 12:51

「もういい。早く寝て」
『じゃあ受話器に向かっておやすみのちゅーしてくれたら寝る』

なーに言ってんだか。
あたしたち付き合ってもないのにするわけないでしょ。

「あのね、あたしはひとみちゃんの恋人じゃないの。ただの家庭教師なの」
『じゃあこれからはカテキョの先生兼恋人になって』
「ばか、早く寝なさい」
『ちぇっ、先生のけち』

けちとかそういう問題じゃないの!
あたし明日早いのに、いい加減寝ないと遅刻するわ。
139 名前:TEACHER−MIDNIGHT 投稿日:2009/03/05(木) 12:56
子犬が寝付くまで、しばらくあたしは子犬の高校であったおもしろい話や、中澤先生という怖い数学教師の話を聞いていた。

ふと時計を見る。もうすぐ3時。

「ねぇ、まだ眠れないの?」
『・・・うん』

もう、しょうがないわね。あなたも明日学校でしょ。
こうなったら最後の手段。

「じゃあね、数えて」
「何を?」

「羊が」
『えっ何?』
「とにかく数えて。羊が」 『1匹』
「羊が」 『2匹』
「羊が」 『3匹』
「羊が」 『4匹』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「羊が」 『1443・・・』
「羊が」 『せん・・よ・・』
「羊が」 『・・・。』

やっと寝た。
受話器の向こうから規則正しい寝息が微かに聞こえてくる。
もうすっかり夢の中ね。

「おやすみ」
そう言ってあたしは電話を切った。

同時に睡魔に襲われる・・・
あたしも、そろそろ夢の中にいくことにするわ・・・。
140 名前:TEACHER−MIDNIGHT 投稿日:2009/03/05(木) 12:57
その夜、あたしは夢を見た。

暖かい部屋。
落とされた照明。

明け方のベッドの中、可愛い子犬とあたしがいる。
真っ白でぬいぐるみみたい。犬種は、ポメラニアンかなぁ。

あたしは小さな子犬を抱きしめるように眠っている。
けれどその子犬はあたしを舐めて起こそうとする。

「もう、くすぐったいよぉ。起きるからやめてったら」


それでも子犬は顔を舐め続ける。
あたしの唇の味を確かめるように。

その行為が、なんだか誰かにキスされている感覚に似ている・・・
でもキスにしてはあまりにも下手すぎて、現実世界のあたしも目が覚めた。
141 名前:TEACHER−MIDNIGHT 投稿日:2009/03/05(木) 13:00

「ううっ眩しい。今何時よ。」

外の光が射し込んで非常に眩しい。あたしは時計を見て唖然とした。
「えぇーっ10時!??遅刻だぁぁぁ」

何でアラーム鳴らないのよ!

携帯を見て肩を落とす。
昨夜、充電せずに電話をしていたせいで、寝ている間に電源が切れたらしい。

充電器に差込み、電源をつけると新着メールが二件。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
名前 柴ちゃん
件名 おはよー
本文

梨華ちゃん起きてる?
出席表出しといたよ♪」
早くこーい☆

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

柴さま、ほんと助かります。ありがとう

そしてもう一件。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
名前 エロ子犬
件名 先生おはよう
本文

電話のおかげでよく眠れました。
今日は駅までチャリで迎えに行くから18時40分ぐらいに東口で待ってる(0^〜^)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今日は迎えに来てくれるんだ・・・。
って何あたし喜んでるんだろ。

子犬のバカ野郎ぅ。大遅刻しちゃったよ。

142 名前:TEACHER−MIDNIGHT 投稿日:2009/03/05(木) 13:01
あたしは二人にメールを返信して急いでパンツスーツに着替え家を出た。
その日学校で柴ちゃんに遅刻の理由を説明して笑われたのは言うまでもない。

あっ、メール来た・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
名前 エロ子犬
件名 あはは♪
本文
大丈夫、黄色のチャリ乗ってるからすぐわかるよ!
先生遅刻したんですか?大人のくせにダメじゃんー。(0´〜`)笑

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(ι^▽^)あんたの電話のせいよバカ!!

END
143 名前:雨の弓 投稿日:2009/03/05(木) 13:12
ENDと書いていますが、一応続きものです。


>91 :名無飼育さん
そうですね。ちょっと健気すぎるかもしれません。

>92 :名無飼育さん
最終的にハッピエンドになるか、それとも・・・はこれからのお楽しみに。

>93 :名無飼育さん
そうですね、この小説の中ではそうとう男っぽいかもしれません。
ボーイッシュな吉澤さんが好きなもので。ご了承ください。

>94 :名無飼育さん
>95 :名無飼育さん
>96 :名無飼育さん

申し訳ありませんが只今実家に帰省しているので、続きは3月下旬に更新します。

>120 :名無飼育さん
100点目指して頑張ります。
144 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/05(木) 21:45
ボーイッシュなのとまるで男なのは全然違うな
145 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/06(金) 01:35
徐々に洗脳されてる?
なにげにエロ子犬は策士?それとも天然?
146 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/06(金) 08:45
吉澤を男扱いするような作者が吉澤好きとは思えないな
147 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/06(金) 22:40
こっちの話もおもしろいですね。
楽しみにしてます。
148 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/06(水) 00:26
待ってます。

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