イケナイ××××
1 名前:ちなつ 投稿日:2008/10/20(月) 22:55
べりきゅのメンバーをメインに、85年組のお姉さん方にも
登場して貰って、書かせて頂きます。

まだまだ不慣れな面もあり、つたない文章ですが、
よろしくお願いします。
2 名前:1-1. 投稿日:2008/10/20(月) 22:57

新学期も始まって二カ月半ばも経った梅雨の晴れ間。
 
新しい学年にも慣れはじめたこの今の時期は、毎日のようにジメジメし、
立っているだけで、気持ちが悪くなる。
服が肌に張り付くような感覚が、尚更それを助長させてしまう。
 
そんな梅雨の日が随分と長い間続いていたが、今日は一転、
心地よい日差しと風が肌にあたり、とても気持ちがいい。
自然と頬も緩むもの。
 
それは、ゆったりと茂る新緑の木々に囲まれたこの一本道を歩く制服姿の少女たちにとっても同じ。
 
さまざまな色のタイを付けた少女たちが、この道を歩いている。
 
小学校から中学、高校、大学と一貫教育の女子校であるこの学校、
各校舎へ続くこの一本道は、始業開始直前の時刻となると大混雑となるが、
今の時刻は、始業時刻まで余裕があるため、まだまだ少女の数も少なく、
歩く少女たちの表情にも、この青空同様、どこか余裕が感じられる。
 
とてもおしとやかに歩く少女たち。
 
それは、「日本女性のココロ」をメインの教訓としているこの女子校に通う少女たちにまさにピッタリである。


3 名前:1-1. 投稿日:2008/10/20(月) 22:58

そんな道を歩く少女がふたりいた。
 
「きもちいー」
 
ピンク色のタイをつけたとても人懐っこそうな笑顔が印象的な少女が立ち止まり、ちょっと背伸び。
女のコらしい可愛い声をあげ、ざわざわ風に揺らぐ木々を見上げる。
 
そして、にっこりと笑顔。
 
目尻を下げて笑うその笑顔は、誰からも好かれそうな笑顔。
事実、少女の通うこの学校の先輩からは、その笑顔が大人気であり、とても可愛がられている。
明るい性格と、人懐っこい笑顔から、とても交友関係の広い少女。
 
少女の名前は『徳永千奈美』。
 
すらっとしたスタイルと、健康的な肌の色。
成長期に入り、一気に身長も伸び、
手足共にとてもバランス良く成長したクラスでも一番の背の高さとそのスタイルが、
千奈美のひとつの自慢。
 
とはいうものの、その反対に、梅雨の季節になると、とても鬱陶しいのが、千奈美の特徴の癖っ毛である。
やはりとても気になるお年頃。
生まれて初めて背中まで伸ばし、最近になってそのヘアースタイルもまわりから随分と好評であり、
やっと自分の髪型がみつかったかなと、笑顔の千奈美。
 
毎朝シャワーを浴びてから、しっかりとストレートアイロンをかけるのが日課になっているのだが、
今日ばっかりは、あまり必要もなく、それさえご機嫌の理由の内のひとつ。
 
今日は、ぴんと伸びてくれている。
 
ちなみに、ピンク色のタイは、中学3年生の印。
小学校からこの女子校に通い、今年で9年目、ちょうど義務教育の最終年である。


4 名前:1-1. 投稿日:2008/10/20(月) 22:59

「きーまってるっ」
 
手櫛で整えると、隣で一緒に歩いていた少女が「それかいっ」と笑顔。
 
「可愛いい女のコらしいコト言うのかなー思ったのにぃ」
 
千奈美の隣に立ち止まり、呆れ顔。
それでも、次の瞬間には、一緒に手櫛でといであげる。
 
「どんなこと?」
「ん…緑がキレーとかー?」
「…さすが、くぅまぃちゃん…乙女だね…」
 
手の感触に、千奈美は気持ちよさそうに目を細めた。
 
「さらっさらー」
「へへ…」
「ちぃのさらさら、スキだなー」
 
若干低くキレイな声にのった少女の言葉に、さらに嬉しそうに目を細めた千奈美。
 
千奈美の髪の毛を手櫛でといであげた少女は、まるでお姉さんのような様子だが、
青色のタイをしていることから、中学2年生である。
そう、千奈美より年下のこの少女。
 
しかし、ふんわりとウェーブ掛かった黒い髪の毛を右耳の後ろでひとつにアップさせたその顔立ちと、
モデルのようにすらっとした身長とその手足は、とても中学2年生には見えないくらいである。
千奈美よりさらに背も高く、高校生の中に混じっても十分通用、
いや高校生でもとても敵わないくらいのそのスタイル。
まさに八頭身。
 
ただ、人に見せるその表情は年相応にまだまだあどけなく、
整った顔立ちの中、可愛らしい表情を何度も浮かべる。
ココロもまだまだ子供。
 
背伸びをしたがる千奈美とは対照的に、とても純粋で、自身の性格を素直に表現する少女。
千奈美には『くまぃちゃん』と呼ばれ、
千奈美と小学校の頃から毎日のように一緒に通っているこの少女の名前は『熊井友理奈』である。
 

5 名前:1-1. 投稿日:2008/10/20(月) 22:59

ちなみに、カツゼツの悪い千奈美が呼ぶとき、『く』の発音が聞こえにくいため、
『まぃちゃん』と呼んでいるように聞こえるらしい。
友達にもいるその名前が紛らわしいという理由で、
小学校の高学年の頃には一度『ゆりな』と呼び方を変えたりもしたが、
いつの間にか、また『くまぃちゃん』に戻り、行ったり来たりの愛称。
 
友理奈としては、『ゆり』だったり『ゆりなー』と呼ばれる方が親しみが込まれているように感じられて、
好きだったが、今ではもう慣れてしまっていた。
 
家もすぐ隣であり、生まれた頃からほとんど一緒にいた千奈美と友理奈。
毎日一緒に学校に通い、今年で8年目。
姉妹のような関係である2人は、今日もいつものように、一緒に登校している。
 





6 名前:1-2. 投稿日:2008/10/20(月) 23:01

「おはよー」
「はよー」

教室に入るまでに何度も挨拶。
これも、千奈美の毎日の習慣である。
初等部の頃からみんな一緒という事もあり、大抵一度は同じクラスになったメンバーばかりである。
教室に入って自分の席に着くまで、更に挨拶ばかり。
もう慣れたとはいえ、さすがに疲れる。

自分の席に着く頃には、ぐったりの千奈美。

「おっはよー」

毎日の習慣である挨拶で、一番最後の挨拶。

「はょ」

千奈美が言葉を掛けた少女は、すっと視線を上げ、短めに挨拶を返すと、
すぐに視線を下ろし、かりかりと慌ただしくシャーペンを動かす。
 
宿題中のオーラ。
 
そんな少女の様子に、千奈美は呆れたように頬を緩めた。
いつものこと、と。

とは言っても、千奈美もつい数年前までは、毎朝この時間は宿題が日課になっていた。
その日課が変わったきっかけは、友理奈の中等部への進級。

根っから真面目な性格である友理奈は、毎晩必ず宿題の時間を作っている。

遊びに来ている千奈美をほったらかし、宿題に没頭しているのは、ざら。
最初の頃は、ちょっかいを出していた千奈美だったが、
次第に諦め、いつしか一緒に宿題を終わらせる事に勤しむようになっていた。
終わらせた後には、友理奈もしっかりと千奈美の相手をしてくれる事もあり。

おかげで、毎朝ゆっくりと過ごす事ができている千奈美。

この少女とは、相反して。


7 名前:1-2. 投稿日:2008/10/20(月) 23:02

「まだしてないんだー」

勝ち誇ったような千奈美の言葉に、頬を膨らます少女。

「わかってるくせにぃ」

いや、少女というにはとても大人びた顔立ちである。
 
千奈美や友理奈が『可愛い』と人から称される一方、『綺麗』と評判であるこの少女。
さらさらしたブラウンのストレートミディアムヘアーをひとつトップサイドでおしゃれにアップ。
そして、綺麗で鼻筋の通った大人びた顔立ちは、初めて会う人に、
一瞬ハーフに間違えられる事もあるくらい。

ちなみに、とても綺麗な顔立ちというのは、
意外と『キャラクター』というものまで作られてしまうものである。
この少女とて例外ではなく、『大人びている』や、
『クール』、『カッコいい』というキャラクターがそれである。
実際には、乙女のように可愛らしい一面や、普通の女のコのように明るい部分もあるのだが。

更に、この少女の顔立ちや、そんな性格は、意外な副産物まで生んでしまうもの。

それは、『ファンクラブ』。


8 名前:1-2. 投稿日:2008/10/20(月) 23:02

そう、この少女は、下級生の少女たちから、羨望の眼差しで見られていた。
とても人気があり、いつの間にか、『ファンクラブ』まで作られていたのだった。

本人は、恥ずかしくて『ファンクラブなんて』と、あまり認めたくないのだが、
流れからいつの間にか、頷かされていた。

意外と乗り気なクラスメートによって色々とサポートされているそのファンクラブは、
ツーショットプリクラ待遇や、半日デート権、月一回の携帯メール会報なんかもある。

教室にやってくる後輩たちから守ったり、カッコ悪い姿を隠すのも、
意外とクラスメートの仕事である。

ま、カッコ悪い姿というのはそれ程なく、強いて言うなら、後輩の間には知られていないものばかり。
『意外と可愛らしい乙女チックな性格も持ち合わせている』といった処とか、
『意外と部活動以外の運動神経はよくない』といった処とか、
『意外な隠された性格』といった処だろうか。
そういう『意外と、、、』となる後輩のイメージとは違う部分については、やんわりと隠されてる。

そんなファンクラブまで存在してしまっている少女の名前は『夏焼雅』。

友達からは『みや』や『みやび』、後輩からは『みや先輩』だったりと、
意外と親しみをこめて名前で呼ばれている。
意外と変わったこの名前すら、人気の内のひとつ。

千奈美は、雅の名前が結構好きだったりする。


9 名前:1-2. 投稿日:2008/10/20(月) 23:02

「みやー、見せてあげよっか?」
「!」
 
ぴくりと雅が反応する。

「みたぃ?」

次の瞬間には、すごい勢いで両手を顔の前。
ぱちん。大きく音を立てる。

「おねがいっ!!多すぎなんだもんっ!!」

ファンクラブのコたちがこの姿を見たら…

「はぃはぃ。じゃ、お昼にジュースねー」
「ぅ」
「ぁ、いいの?」
「…けち」

商談成立。

毎朝とは言わないが、膨大な量の宿題を2週間に一度は出されるこんな日は、大抵このやり取り。

雅より優位に立てるこの瞬間は、案外楽しい。

そして、そんなやり取りがなされているこの教室の少女たちが、このお話の主人公であった。






10 名前:ちなつ 投稿日:2008/10/20(月) 23:05
今日はここまでです。
毎回できるだけ早めの更新を心がけたいと思ってますので、
よろしくお願いします。
それでは、失礼します。
11 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/21(火) 03:13
期待◎
12 名前:ちなつ 投稿日:2008/10/22(水) 22:46
>>11 名無飼育さん。
ありがとうございます。
期待◎に応えられますように、がんばります。
13 名前:1-3. 投稿日:2008/10/22(水) 22:47

朝礼が始まるまでの時間。
後ろから聞こえてくる、雅の宿題を写すのに一生懸命シャーペンを動かしている音を聞きながら、
ぼーっと窓の外に視線を向けていた千奈美。

外では、続々と生徒が登校している。
色とりどりのタイの色が、目に映える。

そんな外の様子を眺めている千奈美の頭の中では、
つい先ほどまで、友理奈との間で交わされていた言葉が浮かんでいた。

『ちぃー?今度の土曜日、お買い物にいかない??』

友理奈の言葉に、自然と笑顔になる。
最近テレビのCMでもよく流れている言葉を思いだす。

『そっかバーゲンだねっ』

ほほ笑む友理奈に対して、びしっと人差し指を立てる千奈美。

『いいね。みんな誘う?』

少しテンションが高くなった千奈美は、ぺちぺちと友理奈の腕を叩くと、目を細めた。

しかし、千奈美のその言葉に、友理奈は一瞬眉を情けなく下げると、
次の瞬間には、少し頬を染め、小さな声で呟いたのだった。

『…ふたり…がいい…かなぁ』

ふたり。

そんな言葉は、初めてだった。

そして、そのたったひとつの言葉に、何故か胸が熱くなった千奈美。
不思議な感覚だった。
スッと顔に熱を覚えた次の瞬間には、友理奈と視線が交じり合い、思わず逸らしてしまっていた。

どうして…?

そのときの、自分の感情を思い出し、頭の中は疑問符でいっぱいになる。

「あー終わったぁー。ありがと。」
「うん。」

千奈美は、雅からノートを受け取ると、机の中に入れる。
そして、再び視線を外に向けた。

「疲れたー」
「ん」

後ろから聞こえてきた、ほっとしたような雅の言葉にも、軽く流した千奈美。


14 名前:1-3. 投稿日:2008/10/22(水) 22:47

「…?」

そんな千奈美の様子に、雅は不思議そうに、首を傾げていた。
黙ったままでいるのが苦手な千奈美が、
雅の一言に『ん』だけで済ませる事など、まずないのだ。

考えてみれば、宿題を写している間も、一言も話し掛けてこなかった。

おかしい。

一言話せば、数倍の言葉になって返ってくるのが、千奈美。
言葉を返さなくても、ただひたすら話しかけてくるのが、千奈美。

それが千奈美の良い処でもあるのだ。

何かあったのかな、と思ったとき、教室の入り口から、クラスメートに名前を呼ばれた雅。

「みやびー」
「なーにぃー?」

『お客さんっ!』と、くいくいと手招きをされたので、
相変わらず外を眺めている千奈美の方をちらりと見てから、
教室の後ろの入り口に向かった。

「だーれぇー?」
「梨沙子ちゃんだょ」
「あぁ」

級友の口から出てきた名前に、表情が緩む。
『ありがと』と声をかけ、級友と入れ替わるようにして、教室の扉から外にでる。


15 名前:1-3. 投稿日:2008/10/22(水) 22:47

「おはよ。」

雅の前に、中学1年生の印である赤いタイをつけた少女が立っていた。
視線が合うと、自然と笑顔が浮かぶ。

「みやぁ」

後輩の中でも、雅の名前の後ろに『先輩』と付けて呼ばない数少ない少女の内のひとり。

「どしたー?」

この4月から、雅と同じ校舎へ移動してきたこの少女は、雅の幼馴染である。
家が近所であり、なおかつ、同じ保育園へと預けられていた事から、
母親同士がとても仲良くなり、いつの間にか、常にふたりも一緒にいるようになったのだった。

母親同士が話している隣で、いつも遊んでいたふたり。
そして、自然と同じ私学の小学校、中学校へと進学していた。

そんな雅の幼馴染の少女は、ロングヘアーを頭の上でひとつにくくり、アップにしている。
雅自身が好きなこのヘアースタイルは、雅が小学校5年生のときに、少女にしてあげたものであり、
この幼馴染も、いつの間にか気に入り、毎日のようにしている髪型であった。

まだまだとてもあどけない表情をしているが、ときどきフト大人びた仕草を見せるようになっていた少女。

思春期にさしかかり、少し女性らしく柔らかなスタイルになってしまい、
最近はとくに雅のスタイルを羨ましがる。
痩せたいという言葉も口にし始めたが、雅はこの柔らかさが大スキだった。

一緒にいると、とても温かいヌクモリを貰えるから。

それに、雪のようにキレイな白い肌も。


16 名前:1-3. 投稿日:2008/10/22(水) 22:48

そんな少女の名前は『菅谷梨沙子』。
年上のヒトに懐くのが得意なこの少女は、『りぃちゃん』や『りさこ』と呼ばれ、
数々の先輩から、とくに可愛がられていた。

雅の笑顔を見ると、自然と梨沙子も笑顔になる。

「おはょ」

しかし、次の瞬間には、少し拗ねたようにクチビルを突き出した梨沙子。
そして、『はぃこれ』と、くいと見慣れた袋を雅の前へ出す。

「ぁ…」

目の前に突き付けられたそれは、お弁当の袋だった。

そういえば、と思い出す。
今朝、宿題の事をすっかり忘れていた事から、朝ご飯もそこそこに、大慌てで家を飛びした事を。
お弁当を持つのも忘れて。
でも、朝の準備だけはしっかりと。

さらに、梨沙子との毎日の約束も思い出した雅。
頭を抱える。

「ごめーん」
「迎えに行ったらさ、先に行ったって」

さらに、冷たい目を雅に向ける梨沙子。


17 名前:1-3. 投稿日:2008/10/22(水) 22:48

そうなのだ。
小学校の頃は、常に一緒に登校していたのだが、雅が中学校に上がり、部活動が始まると、
週の半分は一緒に登校できなくなっていた。

その一緒に登校できる半分が、今日だったのだ。

梨沙子は、その一緒に登校できる日をとても楽しみにしていて、必ず雅を迎えに来る。
それなのに、雅に至っては、今日はさっさと学校に行ってしまったとなれば、
ご機嫌ナナメなのも当然であろう。

「ごめーん」
「…」

二度目の言葉にも、反応のない梨沙子。
やはり、相当ご機嫌ナナメ。
バレないようにココロの中で溜息をつくと、今度は両手を合わせて謝る。

「ごめんねっ」

少し女のコっぽく。
そして、雅にしては精一杯のにっこりスマイル。

「…」

あれ?

「…ムリしてる…」
「…」

今度は雅がクチビルを突き出す番。


18 名前:1-3. 投稿日:2008/10/22(水) 22:48

「いぃよ。その代りねっ」

梨沙子は、少し嬉しそうに雅に腕を取った。
梨沙子がこんな仕草をする時は、大抵相場は決まっていた。

「今度の土曜日にねっ」

ほらきた。
思わず頬が緩む雅。

「お買い物っ!」

思った通りの言葉に、雅は笑顔になる。

梨沙子は昔から素直に自分の感情を顔に出す。

機嫌が悪くなれば、むくれるし、良い事があれば、笑顔を隠しきれない。
頼み事があれば、申し訳なさそうに眼尻を下げる。
悲しい事があれば、眼尻に涙を浮かべながら雅の手を取る。
それは、中学生になってもまだまだ変わらない。


19 名前:1-3. 投稿日:2008/10/22(水) 22:48

すぐにでも頷いてあげてもよかったが、とりあえず週末の予定を頭の中に思い浮かべてみた雅。

部活、なし。
親とのお出かけ、なし。
再来週から始まるテスト、…やばい。

「…」

最後の言葉はどこか奥にしまう事にした雅。
気付かなかった事にでもして、全員を巻き込んでしまえばよいという結論に至る。

「わかった、いいょ。」

雅の言葉に、梨沙子も笑顔になる。

「みんな巻き込もう」
「…?」

ふるふる首をふり『みんなと一緒に行こっか』と言い直す。

「そだね!」

梨沙子は頷くと、『そだそだ』と雅の腕をくいくいとひっぱる。

「なに?」
「あぃりも連れて行ってあげたいの」

梨沙子の口から出てきた名前に、思わず笑顔が零れる雅。

そして、すぐに名前通り愛らしい笑顔まで浮かんだ。


20 名前:1-3. 投稿日:2008/10/22(水) 22:49

梨沙子の後ろに隠れながらも、いつも雅たちと一緒に遊んでいた小学校時代。
どこに行くにも、右手で梨沙子の手を取り、左手では雅の手を取っていた少女。

雅が中学生に上がってからは、数は少なくなったものの、
それでも必ず梨沙子と一緒に遊んでいた姿を思い出す。

「一緒に渋谷とか原宿にお買い物に行きたいんだって」
「あー」
「お母さんから許可が下りたの。でね、みゃとかが一緒だったらイイってさっ」

そういえば、と思い出す雅。

これまで買い物で一緒に出かけた事がなかったのだ。
一緒に遊んではいたのだが、電車で遠くに出掛けるときには、決まって一緒ではなかった。
それは、もちろん母親にダメと言われていけない、というのがもっぱらの理由であった。

それが、とうとう中学生になった事から、許可がおりたのだろう。
うれしそうに笑う笑顔がすぐ目の前に浮かぶ。


21 名前:1-3. 投稿日:2008/10/22(水) 22:49

雅は、中学2年生の夏休みに初めて渋谷や原宿へ行ったのだが、
それを考えると、中学1年生で渋谷や原宿にいける事が羨ましく感じる。

「渋谷でびゅーかぁ」

雅のしみじみした口調に、梨沙子が『おばちゃんみたぃ』と笑う。

「うっさぃ」

少しクチビルを突き出した雅に対して、梨沙子は『まぁまぁ』とたしなめると、
『他には誰誘うの?』と雅に聞いた。

雅の頭の中には、小学校のときからずっと一緒に遊んでいるいつものメンバーが浮かんでいた。

全員梨沙子も知っているメンバーがすらすらと口から出てくる。
その名前に梨沙子は安心したのか、『あぃりも喜ぶと思う』と笑顔で頷いた。

そして、最後にはしっかりと『必ずだかんね』と念押しをした後、
手を振りながら自分の教室へと戻って行ったのだった。






22 名前:ちなつ 投稿日:2008/10/22(水) 22:50
本日はここまででーす。
それでは、失礼します。
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/23(木) 02:27
そろそろ動くかな?
24 名前:ちなつ 投稿日:2008/10/24(金) 23:14
>>22 名無飼育さん
はぃ。
少ーしずつ少ーしずつ動いてます。。。。。
25 名前:1-4. 投稿日:2008/10/24(金) 23:14

梨沙子を見送った後、雅は自分の机に戻ると、さっそく千奈美に声をかけた。

「ちぃ?」
「…?」

相変わらずぼぉっと外を眺めていた千奈美が、雅の声に振り返る。

少し顔に赤みがかかっている千奈美。
日頃より、大人っぽさが増している。

こんな表情もするんだ、と感心しながら、自分の席に座り、
先ほどの梨沙子とのやり取りを話した。

「どう?もちろん一緒に行くよねー」

当然のごとく、喜んでくれると思っていた雅だったが、相反して、千奈美の表情は冴えなかった。
いや、聞いた瞬間こそ、表情が晴れたのだが、何かを思い出したのか、次第に暗い表情になると、
少し困ったように、眉尻を下げたのだった。

「もしかして…都合悪い?」


26 名前:1-4. 投稿日:2008/10/24(金) 23:15

「うー」

正直、千奈美の頭の中では、悩んでいた。

それはもちろん、友理奈との約束があったからである。

ふたりっきり。

もうその言葉に、千奈美の頭の中は、大混乱。

雅には、素直に言っても全く構わないとは思うのだが、
一方、なんだか言ってはいけないような内容にも思えていた千奈美。

からかわれる。

まさにその言葉が頭の中に浮かぶ。

「んー」
「…なによー」

ぐいぐいと雅に肩を揺すられる。
雅の視線が少し冷たい。

軽く溜息をついた千奈美。

小学校から、9年のうち、7回は同じクラスだった雅に対して、千奈美はほとんど隠し事をしない。
もちろん、それは安心感があるからである。
普通の女のコのように、簡単にヒトに話したりしないし、
悩み事にはしっかりと応えてくれるから。

少し、決心が固まる。


27 名前:1-4. 投稿日:2008/10/24(金) 23:15

「あのね…」
「うんうん」

友理奈の笑顔が浮かぶ。

「…」
「言っちゃいなょ」

しびれを切らしたかのように、クチビルを突き出した雅。
そんな少々ご機嫌ナナメになりつつある雅の表情を見て、
千奈美は諦めたように、一息ついた。

「くまぃちゃんがね…」
「うん」
「行きたいんだって…」
「うん」
「お買い物…」
「ん?」

『ならいいじゃん?』と首を傾げた雅に、千奈美は『ちぃーがぅの』と手を振る。

「なにが…」
「………ぁりで…行きたい…って…」

ぼそぼそとなる千奈美。
日頃の千奈美からは考えられないその口調に、雅は更に首を傾げた。


28 名前:1-4. 投稿日:2008/10/24(金) 23:15

「なに?」
「ぅ…」

自然と顔に赤みがかかる千奈美。
少し視線を落とすと、『ふたりで…』と雅の手を握った。
まさにそれは分かりやすい仕草なのか、
雅が繋がれている手に視線を落としながら、『そなの?』と声を裏返らせた。

「うん…ふたりっきりで…行きたい…って…」
「うわぁ…」

なぜか、当事者ではない雅の顔も赤くなる。
机の上で手を握って、頬を赤くした少女がふたり見つめ合っている光景は、
ある意味アヤしく、普段なら千奈美自身がツッコミそうなのだが、
今はそれどころではないといった雰囲気で、雅のリアクションに相槌を打つ。

「でしょー」

視線を落とした雅に対して、少し千奈美のキモチが楽になる。
自分だけかと思ったが、雅もこのリアクション。

変わらないじゃん、と少し嬉しくなる千奈美。

「どういう意味かなぁなんて…」
「うーん…」

千奈美の言葉に、雅は少し首を傾げる。

「でも、気にしなきゃ、ただ一緒に行きたいだけだけど。だって幼馴染じゃん」
「ま、そだけど…」
「たまには、ふたりで行きたいって事も、あるっしょ」

雅の言葉に、『確かに』と頷く。
しかし…


29 名前:1-4. 投稿日:2008/10/24(金) 23:16

「ちぃが気にしてるの?」
「やー…そゆわけじゃないけど…」

少しくちびるを突き出す千奈美。

「『イケナイ××××』だね」
「ぇ」

雅の口から出てきた言葉に、思わず反応する千奈美。

「ただの幼馴染が『イケナイカンケイ』にっ!ってね」

音符までつきそうにご機嫌な雅の言葉だったが、
今の千奈美にとっては、やたらと艶かしく、リアルな言葉に聞こえる。

これまで以上に反応を示す。
普段なら真っ先に出るであろう『どんなマンガ読んでんの!?』ってツッコミすら出ない。

一気に紅色にホホを染めると、視線が泳ぐ。

まともに、雅の顔も見れなくなる。

そんな千奈美の様子に、雅は笑みを浮かべた。
千奈美が困った表情をしているのを、楽しんでいるかのような、その様子。
いつもなら千奈美もすぐに逆襲といくのだが、
今に至っては、それどころじゃなかった。

一度意識してしまったら、全然ダメ。

もう、『イケナイカンケイ=友理奈』が結びついてしまったのか、
友理奈の笑顔が頭の片隅に浮かんでは消えを繰り返していた。
なぜかその友理奈は、小学校時代、一緒にお風呂に入っていたときによく見ていた裸。

「!」

思考までイケナイ方向に向かってしまっている。
ぶるぶると思いっきり頭を振る千奈美。


30 名前:1-4. 投稿日:2008/10/24(金) 23:16

「意識してるー」

そう言いコロコロと笑った雅は、『いぃじゃん』と千奈美の肩をぽんぽんと叩き、
『ふたりで行ってきな』と優しげに、頷いた。

「くまぃちゃんは単純にふたりで行きたいだけなんだから、行ったらいいじゃん」
「うん…」

いつの間に、普段通りの雅に戻っていたことに、千奈美のココロの中も、少し落ち着く。

そう。
ただのお出かけだもの。

そう言い聞かせた千奈美は、力強く握りこぶしを作った。

「『ふたりっきり』でね…」
「ぅ…」
「とうとうくまぃちゃんもそんな年齢になったかー」

妙に悟ったような雅の口調にも、今の千奈美は、ツッコミはしない。
ただただ、がっくりと首を落とす。

「コドモだと思ってたのになぁ」
「…一年しか違わないじゃん…」

かろうじて出た今日一つ目のツッコミも、やはり弱い。

「『イケナイカンケイ』…」
「…」

当分の間は、ネタに使われそうな気がした千奈美。
今年の流行語大賞決定である。






31 名前:ちなつ 投稿日:2008/10/24(金) 23:18
本日はここまででーす。
次回からは、また新しいコたちに登場してもらいまーす。
それでは失礼します。
32 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/25(土) 03:05
いよいよ・・・か?
33 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/25(土) 06:57
ゆりちなが甘酸っぱい感じでドキドキします
千奈美ちゃんがなんか無性に可愛いし!
次回からの新しい登場人物にも期待
楽しみに待ってます♪
34 名前:ちなつ 投稿日:2008/10/27(月) 23:21
>>32 名無飼育さん
いょいょ…ではなかったです。。。。。。
もうしばらくゆっくりと進んでいきますので、
よろしくお願いします。

>>33 名無飼育さん
嬉しいお言葉ありがとうございます
くまぃちゃんのおねえさんっぷりとちぃのお子様っぷりの
掛け合いが個人的にも大好きですw
これからも甘酸っぱさを出せるようにがんばりますv

35 名前:2-1. 投稿日:2008/10/27(月) 23:21

千奈美や雅が通っている女子校には、高等部がある。

高等部は、有名大学への進学率が高く、教育方針がしっかりとしている事からも、
世間的にも人気がある。
そして、外部からの編入も認めている事から、高等部へ上がる時には、
一気に外から生徒がなだれ込んでくる。

中等部の約2倍の人数になる事もあり、高等部が始まって二ヶ月も経った頃には、
友達関係も再編成されがちであった。

ところが、高等部1年A組は、進学クラスの中でも一番優秀な生徒が集まる事から、
だいたいの生徒が、中等部からの繰り上がりの生徒たちであり、他のクラスとは異なり、
この教室の中だけは、初・中等部からの友達関係がだいたい引き継がれていたのだった。

そんな高等部の一室である1年A組の朝。
教室の一番後ろ、ひとりの少女が、ぐったりと机の上に、つっぷしていた。

随分と疲れたその様子は、朝から一仕事してきたのか、目じりがとろんと眠たげに落ちていた。

今にも眠ってしまいそうなその様子。


36 名前:2-1. 投稿日:2008/10/27(月) 23:22

高校生にしては小さい方に入る体の大きさと、幼い顔立ちは、
まだまだ『初等部6年生です』と言っても通用するくらいである。

雪のように白い肌に強調される黒い髪の毛は、肩まで届くくらいのサラサラ。

そして、その黒い髪の毛の間から覗く表情は、まだまだ幼く、
小さな子供のように、表現がとても豊かに感じられる少女。

「ぅぅぅぅ…」
「ついてこなきゃよかったでしょ」

そんな眠そうな少女の隣の席に座っている少女がひとり、呆れたように肩をすくめた。

「そんな言い方しなくてもいいじゃーん」

机につっぷしたまま、頭だけ方向を変えると、声を掛けてきた少女の方に視線を向け、
とても女のコらしい可愛い音色の抗議の声を上げる。
そして、ほっぺを膨らませた。

こういう幼げな仕草が、この少女にはぴったりに感じられる。

「テストの期間前だからって、無理しすぎだよ、ももは。
習慣なんて急には変えられないの」

やけに大人びた意見。
しかし、そんな意見を言う少女の外見は、
これまた先ほどから眠たげに机につっぷしている少女とあまり変わりがない。

いや、むしろ背の高さでは、低い方であり、ショートカットの髪の毛から覗く顔立ちも幼い。
しかし、その表情はどこか大人びている。


37 名前:2-1. 投稿日:2008/10/27(月) 23:22

「ひどー」

『頑張って朝型習慣に変えよー思ってるのにぃ』と、机を叩いて抗議している眠たげな少女。

そう、これまでは、夜に勉強をしていたのだが、
高校生に上がった最初のテスト期間に入る前を機会に、
朝型のスタイルに変えようと、最近は、朝早く登校し、
大人びた意見を言う少女と一緒に勉強しているのだ。

ところが、まだ慣れず、授業が始まる前に、
全てのチカラを使い果たしてしまったといったトコロである。

そんな少女の名前は『嗣永桃子』。

明るく全く人見知りをしない性格から、交友関係も広く、
上は大学部から下は初等部まで、幅広く友達がいる少女。

友達からは、『もも』だったり『ももち』といった愛称で呼ばれていた。
一方、後輩からは『嗣永先輩』と呼ばれ、それについてあまり本人は気に入っていない。
どちらかといえば、下の愛称で呼んで欲しいもの。
ひそかに下の名前で呼んで貰う事に、野望を燃やしていた。

「キャプテンは、…」
「キャプテンじゃない」
「…」

一瞬で呼び名を否定され、またまたほっぺを膨らませる桃子。
この仕草は、桃子の癖。
しかし、あまりイヤラシク見えないのは、桃子のいいところなのであろう。


38 名前:2-1. 投稿日:2008/10/27(月) 23:22

「いいじゃーん。キャプテンだしぃ」
「初等部の頃!」

桃子は、好きなように呼ばせてよと、いつも言うのだが、毎回完全否定されてしまう。
下の名前で呼んで欲しいと言われるのだが、癖なんてそう簡単には抜けないものである。
桃子に至っては、ずっと一緒だった事もあり、
初等部5年生の頃からもうかれこれ5年以上『キャプテン』の愛称で呼んでいた。

それをやめろとは、到底無理な話である。

そんな『キャプテン』と呼ばれる事を頑なに拒否する少女の名前は『清水佐紀』。
昔から人をまとめることに長けているこの少女は、人望も厚く、
そのせいと、初等部の頃に所属していたフットサルのクラブでキャプテンをしていた名残りから、
悲しいかな今でも『キャプテン』なんて呼ばれてしまっている。

呼ばれる度に毎回否定するが、本人の努力とは相反して、
友達のほとんどから『キャプテン』と呼ばれ続けてかれこれ4年。

なかなか努力とは報われないもの。

もう4年も経てば諦めもつく、とはならないものであった。






39 名前:2-2. 投稿日:2008/10/27(月) 23:23

「新しい先生?」

佐紀の言葉に、桃子は聞き返す。

「そ。先生に聞いたの。」
「ふーん」
「この春にココの大学を卒業したヒトから、2人入ってくるんだって。」
「へぇ」

佐紀の話に耳を傾けてはいるが、それほど興味がある内容ではなかった桃子。
一年に一度は必ずある恒例の行事だからである。

そう、ほぼ毎年、この女子大の教育学部を卒業した優秀な生徒が、新しく教師として入ってくるのだ。

そんな恒例の行事に近いものだけに、大抵の生徒にとっては、慣れた出来事であった。

それでも、2人という数字には、少し驚く。
これまで、一番優秀な生徒がひとり入ってくるだけだったのだ。
それが、2人というのは、ふたりともそれほど優秀な先生候補なのだろうか。

しかし、そういう疑問はすぐに消える。
やはり、あまり興味のないことだからである。

ただ、特に興味のない桃子だったが、唯一その恒例行事と共に思い出すのが、
親友の内の一人である、夏焼雅の事であった。

桃子と一学年下の雅は、初等部の5年生からの付き合いになる。
初等部の頃に所属していたフットサルのクラブに、雅も所属していた事もあり、
それ以来大抵一緒に遊んだりしていた。

どちらかといえば性格が正反対なふたりなのだが、お互いに気を使う必要もなく、
喧嘩もよくするが、簡単に仲直りもし、
お互い一緒にいてとても居心地のよい親友関係といった感じであった。

桃子と佐紀が高等部の校舎の方へ移動してきてから、学校の中で会う機会はめっきり減ってしまったが、
それでも、今も頻繁に連絡は取り、お昼のご飯時などを利用して、会うようにしていた。


40 名前:2-2. 投稿日:2008/10/27(月) 23:23

「みーゃんさ、またかなぁ…」

桃子の言葉に、佐紀は肩をすくめた。
雅の『趣味』を思い出す。

「みゃ好みの先生が入ったらね」

そして、苦笑い、顔を見合わせた。

と、そのとき、ぶるぶるっと携帯電話のバイブレーションが慌しくはねる音が聞こえてきた。

「!」

慌てて机から飛び起きる桃子。

「こら。ケータイ禁止!」

桃子は、携帯電話をカバンの中から取り出すと、
びしっとそれを指さしている佐紀の方を見て、
『ごめーん』と情けなく目じりを下げた。

「しっかり持っとかないと、見つかって没収されちゃうよ」
「ぅん」

佐紀の言葉に、素直に頷く桃子。
確かに、佐紀の言うとおりであり、これまでバイブレーションで気付かれ、数回没収された事があった。

置き方や置く場所によって、ビックリするくらい派手に音が聞こえるマナーモードというのも、難しいものである。


41 名前:2-2. 投稿日:2008/10/27(月) 23:23

着信は、メールであった。
受信ボックスを開けると、桃子の目に、『みーやん』の文字が入ってきた。

まさに、噂をすれば、というもの。

「みーゃんだー」
「みやかー」

メールの内容に目を通す。
その内容に、目を細めた桃子。
少女らしく、かわいらしい笑みが零れる。

「どしたのー?」
「うん。この土曜日に遊びに行くんだってさ」
「そなの?」
「うん。とりあえず今日のお昼休みはお弁当持っていつものトコに全員集合!だってさ」

思わず笑う桃子。
細かい内容を書くのが、面倒くさいのかもしれない。
意外と細かい性格なのに、こういう部分では、面倒くさがりな部分が出る雅。

「メンバー、だれー?」
「んーっと…いつものメンバーだと思うょ…
ももと、キャプテン…あー、まいみーも入ってるし、
えーっと、まーも入ってて、あと、りさこに…あっ」
「ん?」
「あぃりもだって!」
「へぇ、あぃりもなんだー」
「梨沙子と一緒だよね。
中等部に上がったから、お母さんからも許可が出て、一緒に遊びに行けるって事じゃないのかなー」

桃子の言葉に、佐紀はうんうんと頷く。


42 名前:2-2. 投稿日:2008/10/27(月) 23:23

ちなみに、佐紀は携帯電話を持っていない。
最近は、持ち始めている友達も多い事から、持ちたいとは思うのだが、
学校が禁止されているし、桃子が持っている事から、意外と不便な事はないのだ。
初等部の頃からの友達であるメンバーとの連絡は、大抵桃子が取ってくれるからである。
今日のような感じで。

「あー」
「ん?」
「ちぃとくまぃちょーが入ってないなぁ」

桃子の言葉に、佐紀も首を傾げた。
確かにおかしい。
雅からのこのような誘いに、ふたりが入っていない事は、これまでなかったのだ。

「もう聞いてて、NGが出ているのかな…」

佐紀がそう呟いたとき、朝礼の時間を示す、チャイムの音が鳴り始めた。
まわりの生徒が席に着き始め、がたがたとイスが鳴る。

「うげ…」

桃子が小さく溜息をついた。
『女のコなんだから、そんな声ださないの』とわざわざ注意をしてくる佐紀に対して、
『はぃはぃ』と苦笑い。
いつまでも子供扱いをされているように感じる。
でも、案外悪くない、と思っている事は、絶対に佐紀には言えない事。


43 名前:2-2. 投稿日:2008/10/27(月) 23:24

桃子は、小さく欠伸をすると、目薬を手に取った。
せめてもの眠気覚まし。

「うーん」

と、そのとき、慌ただしく後ろの扉が開いた。
開き戸が、がたーんと派手に鳴る。

「!」

思わずびくっとなる桃子。
目薬が目から外れ、頬を濡らす。

「ぅ」

ほっぺを膨らませる。
恨めしげに、今回の原因を作った音がしてきた方に目を向けた桃子。
その桃子の目に、ひとりの少女が慌ただしく教室に駆け込んだ姿が入ってきた。

「せーーーーふ」

そして、そんなセリフとともに、嬉しそうに笑顔で両手を広げた少女。
ひとつにくくった艶やかな黒い髪の毛がふわりと舞い上がる。

「確かにセーフだけど…」

桃子の隣で、佐紀が呆れたように呟いた。
そして、溜息をつく。

「まいみっ!」

佐紀に呼び掛けられた本人は気付いていない。

「よかったー」

チャイムが鳴り終わり、そう呟いた少女は、大きなリアクションで胸を撫で下ろす。
そのまま、少し怒ったように眉間に皺をよせた佐紀と目が合うと、『おはよー』と満面の笑み。

佐紀は、そんな少女の笑顔に、思わず『おはよ』と挨拶、
しかし、ふるふると首を横に振ると、『扉を思いっきり開けない!』とびしっと一言。

「あー、ごめんごめん。ついつい」


44 名前:2-2. 投稿日:2008/10/27(月) 23:24

佐紀の言葉に、へへへと苦笑いを浮かべた少女。
教室中から、くすくすと聞こえる笑い声にも、照れたように、頭をさげた。

キレイに整った顔立ちと、大きな瞳。
そして、誰をも笑顔にしてしまう、その豊かな表情が印象的な少女。

日本人離れしているそのスタイルは、誰もの憧れ。
脂肪が一切感じられないくらいにすらっとした白くて長い手足が、
ハーフパンツとTシャツから覗く。

朝の部活の練習終りという事が一目でわかる今の服装そのまま、
体を動かす事が大好きなこの少女は、とても運動神経がよく、
さらに、この教室で勉強している事から、頭もよいのだ。

まさに、才色兼備を兼ね備えた少女であり、同級生だけでなく、下級生からもとても人気のある少女。
この少女の名前は『矢島舞美』。

雅とは正反対の外見と性格という事から、下級生の間では、雅と人気を完全に二分している。
とても明るく、外交的な性格、誰とでも気兼ねなく話す日本美人的な舞美と、
クールでカッコよく、気軽には話し掛けられないハーフのようにキレイな雅。

ふたりのまわりは、いつでも少女たちの歓声が絶えないといっていいだろう。

ただ、雅とは違い、舞美にはファンクラブというものはない。
それは、やはり舞美が誰とでも気兼ねなく話しをしたりする性格だからであろう。
初めて会った後輩とでも、とくに気兼ねなく話をしてあげ、
以降も、舞美の方から話し掛けてあげるくらいなのだ。

ま、そんな行動がますます相手の女のコを『勘違い』させてしまうのは、言うまでもないだろう。


45 名前:2-2. 投稿日:2008/10/27(月) 23:24

「ちょっと着替えるねー」

舞美は、桃子と佐紀の間にバックをどかっと置くと、Tシャツを一気に脱いだ。

「どわっ!!」

妙な声を出し、桃子が慌てて立ち上がる。
そのまま、舞美が脱いだTシャツを取ると、舞美の前で広げた。
もちろん、隠すため。

「…」

佐紀は頭を抱えた。
ま、一番後ろだから特に気にする事はないし、もともと中にタンクトップを着ている事から、
舞美も気にしないのだろう。
それに、もちろん、ここは女子校。
舞美が部活のある日の恒例の朝の一シーン。

しかし、慣れているとはいえ、周りのヒトからしたら、ハラハラドキドキものである。
さっきまで面白そうに舞美たちのやりとりを眺めていた級友たちも、あたふたと視線をそらしてしまっていた。

「はぃ。ありがと」

舞美は制服を着ると、桃子からTシャツを受け取った。

「もぉ」

がっくりと桃子は肩を落とし、席に座りこむ。
続いて大きな溜息。
そういえば、これは、舞美の部活がある日の毎朝の桃子の仕事であった。

なんで自分が毎朝毎朝と思いつつも、なぜかやめる事ができない桃子。
毎朝、律儀に舞美の着替えのカーテン代わり。
でも、それも案外悪くないかな、と思っている事は、あまりに舞美には言えない事。

そして、そんなやり取りがされているここ1年A組でも、このお話の主人公たちが勉学に勤しんでいた。






46 名前:ちなつ 投稿日:2008/10/27(月) 23:30
本日はここまででーす。
ということで、このコたちにも登場してもらいました。
みんな大好きなので書くのが楽しー
舞美ちゃんVSみやびちゃんの学校内での構図もありかなと思いつつw
それでは次回もよろしくお願いしまーす。
47 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/29(水) 01:53
とうとう・・・85年組の影が・・・♪?
48 名前:ちなつ 投稿日:2008/10/29(水) 23:42
>>47 名無飼育さん
むふふ♪
49 名前:2-3. 投稿日:2008/10/29(水) 23:42

「えっ!?」

桃子の言葉に、舞美は思わず声がひっくり返った。

一時限目の授業が終わり、休憩時間、洗顔も終え気分さっぱりの舞美。
付き添いで来ていた桃子からタオルを受け取り、顔を拭いているときだった。

この週末にみんなで遊びに行く話を聞き、再来週から始まるテストが気になるも、
久しぶりに初等部からの友達に会えると思って楽しみな気分になりつつあったその時に、
桃子の口から出てきた言葉にどきりと胸を高鳴らせた。

『あぃりもくるよ』

その言葉、いや名前にぴたりと手が止まる。

ふと顔を向けると、少し目を細めた桃子と目があった。

ふふふと楽しそう笑う桃子に、手を取られると、
そのまま、引っ張られるようにして、教室の方に足を向けられる。


50 名前:2-3. 投稿日:2008/10/29(水) 23:43

『愛理』

舞美にとって、久し振りに聞いたその名前は、とても懐かしい名前だった。
最後に会ったのは、昨年の夏休みにみんなで集まったときであり、それ以来は会っていない。
だいたい一年近く会っていなかった事になる。

一年という期間はまだまだ短いようにも感じられるが、
小学校の頃の事を思い出したら、考えられない事でもあった。

そう、舞美が初等部の頃は毎日のように放課後学校に残って一緒に遊んでいた記憶があった。
いつも舞美のそばに寄ってきて、抱きついてきたカノジョの笑顔が今でも簡単に目に浮かぶ。

まだまだとてもあどけなかったその表情、そして、その仕草。

3年も年齢差があったこともあり、当時は本当の妹のように可愛がっていた舞美。

でも、その3年の年齢差の為、舞美が中等部に上がってからは、ほとんど会えなくなっていた。

家の方向も正反対。
舞美が、本格的に部活や習い事などを始めたら尚更。

高等部に上がってから、カノジョが中等部にあがってきた事も原因の内のひとつ。
校舎が違うと、やはり会うのは難しいもの。

舞美が中等部に上がってきて以来、一年に二回ほど会えたらいいくらいだったのだ。
夏休みと冬休み。
みんなが集まるときくらいである。

昼休みに、桃子や佐紀は、中等部のメンバーと集まってお昼を一緒にしていて、
舞美も呼ばれるのだが、舞美自身、中等部の頃から毎年生徒会の仕事をしていた事もあり、
昼休みの居場所は決まって生徒会室。

そんな事もあり、まるっきり会えないのが現実。

そして、最後に会ったのが、昨年の夏休み。

そのときは、昔のあどけない表情をさせていた頃とは一変、
とても女のコっぽくなり、名前通り愛らしい顔立ちになっていた。

たった一年間会っていなかっただけなのにと、
その時の印象は、今でも忘れられない。


51 名前:2-3. 投稿日:2008/10/29(水) 23:43

「あぃりもくるの?」

舞美の言葉に、桃子は笑顔を浮かべた。

「うん。
お母さんの許可が出て、一緒に行けるんじゃないかなーって、ね。」
「そうなんだ…」
「なになに?気になる?」

悪戯っ子のような笑顔をさせ、ぐいっと顔を寄せてくる桃子のオデコを人差し指で押し返す。
なんだか楽しんでいる桃子の様子に、むっとなる。

「べっつにー」
「うっそだー
食いつきが違った」

そう言ってコロコロ笑う桃子から視線を逸らす。


52 名前:2-3. 投稿日:2008/10/29(水) 23:43

もちろん、素直に言えば、気になる。

昨年の最後に会った日の事が忘れられなかった舞美。

昨年の夏休みの最後、東京近郊のテーマパークに、
桃子や佐紀といった昔からの友達であるメンバーたちも含めて、
母親たちの連れ添いで一泊二日の旅行に行ったのだ。

テーマパークで遊んだ事も思い出に残っていたが、
それより、その日のお泊まりが、一番の思い出。

一年ぶりに出会い、一晩中語り続けて、結局ほとんど眠らなかったふたり。

主にカノジョの方が一方的に話していたといってもいいくらいであったが、
舞美自身そのお話を聞くのがとても楽しかったし、
カノジョも、一年分の出来事を全て語り尽くしても、
後から後から話したい内容が出てくるのか、本当に楽しそうに話していた。

帰る車の中では、ずっと舞美の手を握って眠っていたあのコの幸せそうな笑顔が、
小さな子供から少女のものへとなっていたのが、とても印象的だった。

そして、カノジョの寝顔を見ていると幸せな気持ちになっていた舞美。

別れ際、泣きそうになりながら『絶対にまた会おうね』と約束をしたふたり。
でも、結局は、お互いに会う機会を作れなかったのだ。

やはり、部活が忙しかったり、校舎が違うと難しいもの。
それに、ふたりとも携帯電話を持っていなかったことも、原因の内のひとつ。
単純に家に電話をすればよいたけたったのだが、お互い気を使ったからなのか、できなかった。


53 名前:2-3. 投稿日:2008/10/29(水) 23:44

高校一年生になった今年になって、初めて携帯電話を持ち、ずっと教えたいと思っていた舞美。
しかし、考えてみればお互いに持ってやっと便利さを感じられるもの。

あまり意味はないのかもしれない。

それでも。
やっと会える。

素直な言葉がそれであった。

「もも、もう完全に背抜かされちゃった」
「そなんだ?」
「大人っぽくなって、可愛くなってたしねー」
「へー」
「すっごいしっかりしたコになったよ」

その言葉に、少し不安を覚える。

昔のように、自分事、慕ってくれるかな?

「もちろん、行くでしょ?」

不安はあるけど、桃子の言葉に、舞美は素直な笑顔で頷いた。






54 名前:ちなつ 投稿日:2008/10/29(水) 23:49
すくなくてすみません。。。今日はここまでです。
でも、次回からまた新しいコ(?)に登場してもらいまーす
次回からの数回の更新で全員の自己紹介?が終了して、本編って感じでしょうかw
長かった自己紹介ですが、もうしばらくよろしくおねがいしまーす
では失礼します
55 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/10/30(木) 08:15
更新お疲れ様です
好きな設定が多くて悶えながら読んでますw
次回も楽しみにしてます
56 名前:名無し飼育 投稿日:2008/10/30(木) 19:19
嬉しい組み合わせになりそうで期待大!
57 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/02(日) 13:30
>>55 名無飼育さん
ありがとうございまーす
お好きな設定ですかwよかったw
喜んで頂けますように、これからも頑張りますので、
よろしくお願いしまーす

>>56 名無し飼育さん
ありがとうございまーす
嬉しい組み合わせですかw
あたしも最近お気に入りのふたりですw
これからもよろしくお願いしまーす
58 名前:3-1. 投稿日:2008/11/02(日) 13:31

千奈美や雅が勉強している校舎の一階は、
赤色のタイをつけた中等部1年生の少女たちが勉強をしている場所である。

初等部から数ヶ月前に上がってきた少女たちは、
まだまだ新調したばかりの制服に埋もれてぶかぶか。
まさに『制服に着られている』という表現がぴったり。

初等部では、セーラー服が制服として指定されていたが、中等部からブレザーが制服となる。
そのため、この中学1年生という年齢では、みんな制服は新調したばっかりになる。

夏服に入った今は、ぶかぶかのブラウス姿の少女や、
これまたぶかぶかのカーディガンを着用している少女も多い。

そんなまだまだ『制服に着られている』少女たちがいる中等部一階のフロアーの中の一室、
1年C組に、ひとりの少女が一生懸命携帯電話をいじっている姿があった。

黒いロングヘアーを右耳の後ろでふんわりアップにしているこの少女は、
とても愛らしい顔立ちをしている。
大きな瞳は、人を惹きつけるくらいのメヂカラを備えるも、
その表情には、まだまだあどけなさを残している。

そして、思春期に入る前の少女のように白いすらっとしたスタイルは、誰もが羨むもの。
ただ、とても運動神経がよさそうなそのスタイルであるが、実際は大の苦手。
根っからの文科系であり、歌を歌う事が大スキなこの少女の名前は、『鈴木愛理』。


59 名前:3-1. 投稿日:2008/11/02(日) 13:31

まさに名前通り愛らしい笑顔がとても印象的な少女である。
『おはよう』と声を掛けてくる級友たちひとりひとりに柔らかい笑顔を見せ、挨拶を繰り返す。
その笑顔は、まだまだ純真無垢そのもの。

ただ、今はひたすら目の前の携帯電話との格闘がメインなのか、
挨拶が終わると、すぐさま真剣な表情へ。
携帯電話をいじるのにまたまた集中。

そして、そんな難しそうな表情で眉をへの字にさせた愛理の膝元には、
分厚い解説書がちょこんと乗っかっていた。

しばし、解説書と携帯電話のにらめっこの繰り返し。

しかし、それもあまり長くは続かなかった。
やがて、大きく溜息をつくと、がっくし。

簡単に諦めたようにも見えるが、愛理が携帯電話と解説書とのにらめっこを始めてから、
かれこれ2日は経過していたのだ。
むしろ、長い期間のにらめっこ。

そう、愛理はこの日曜日に、生まれて初めて携帯電話を持たせて貰ったのだ。
生まれて初めてという事もあり、買ってから2日経った今でも、
なかなか携帯電話を使いこなせていないという現実。

その間、携帯電話として機能をなした事と言えは、
母親と、大親友である菅谷梨沙子からの電話を受けた事のみであった。

いや、辛うじてメールは送れるようにはなってはいたのだが。
ホントにただメールを送るだけ。

それは、梨沙子から、メールアドレス教えて欲しいと言われたときである。
自分のメールアドレスが分からない愛理に対して梨沙子は、
自分にメールを送ってくれたら、その返信で愛理にメールを送るから、
その返信でメールのやり取りをしようということだった。


60 名前:3-1. 投稿日:2008/11/02(日) 13:32

その梨沙子の助言通り、とりあえず自分のメールアドレスを教える為、
昨日から、一生懸命メールを送る事を試しているのだが、
これまで送信した10数件のメールが、全て再び愛理の元へ戻ってきたのだ。
なんだか訳の分からない英語の文章が付け加えられて。

メールを送った瞬間に、すぐさまメールの着信をしらせるバイブレーションにどきり。
一瞬、『りーちゃんから?』となるが、
いくらなんでも一瞬で返信なんてできるわけない事に気付き、がっくり。

それが10数回も続き、もうメールを送るのを諦めつつあった愛理が今一生懸命頑張っているのが、
メールアドレスを自分好みのものに変更する事と、
梨沙子とのツーショット待ち受けをカメラで撮り、待ち受けにする事である。

ただ、訳の分からないメールアドレスの変更はもうほぼ諦め、
あとで梨沙子が戻ってきたらやって貰おうと投げやり。
さらに、メールだってお気に入りのメールアドレスでしたいものだから、
こちらもいいやと投げやり。

順番はちょっと違うように感じるが、今は、とにかく待ち受け、待ち受けと呪文のように唱えて、
練習も込め、先ほどやっとカメラで撮れた景色を待ち受けにする為に、
解説書とにらめっこなのだ。

でも…

「やっぱり、だめぇ」

とにかく、さっきカメラで撮った写真が見つからない。
解説書では、『データフォルダ』というものに入っているらしいのだが、
それすら見つからないのだ。

愛理は、自力でする事は諦めたのか、解説書を机の上におき、深くイスに座った。
そして、溜息。

「さすが…りーちゃんだぁ」

同い年なのに簡単に携帯電話を取り扱っている梨沙子はスゴイと、素直に感心する愛理。


61 名前:3-1. 投稿日:2008/11/02(日) 13:32

「あぃりー、できたー?」

愛理が少し落ち込みモードになりつつあったそんな頃、やっと梨沙子が戻ってきた。
今まで、家がご近所同士であるお馴染みの夏焼雅の為、中等部3年の教室に、
お弁当を届けに行ってきたトコロだったのだ。
少しご機嫌になっているトコロをみると、どうやらしっかりと渡せた上に、
今朝おいてけぼりをされた事に対する文句も言えたのだろう。

「だめぇ」

ふるふると首を横へ振る愛理を見て、梨沙子は苦笑いを浮かべると、
『貸して』と携帯を受け取り、すぐ前の自分の席に腰を下ろした。

ぱかっと開き、愛理の方を見る。

「何からする?」
「あ、あれ!りーちゃんと一緒がいい」
「ん?待ち受け?」
「そ、それそれ」

うんうんと頷く愛理を見て、梨沙子が微笑んだ。

日頃は愛理の方がしっかりしていて、
自分に関しては『天然』と友達から言われ、面倒を見て貰っているイメージが多いが、
どうやらこと携帯に関しては完全に自分の方が上らしい、と少し胸をはる梨沙子。


62 名前:3-1. 投稿日:2008/11/02(日) 13:32

カメラを起動させると、愛理の机の方に体を乗り出し、
カメラを自分の方に向けて構えた。

「ほら」

手招きされて、愛理は慌てて机に乗り出すと梨沙子に体ごと寄せた。
そのまま、ほっぺを近づける。

「撮るよー」

梨沙子が携帯電話をぐっと自分たちより離すと、
ぴこーんと派手な音を立てて携帯電話から音がなった。

「入ってるかなー」
「ぇ…、もう撮ったの?」

愛理の言葉に、梨沙子はおかしそうに笑った。

やがて、撮った写真が見つかったのか、
にっこりと微笑むと『いい感じに入ってるよ』と、愛理に手渡した。

「それでいい?」

梨沙子の言葉通り、確かに、しっかりとふたりが寄せたほっぺを中心に、
キレイにフレームに納まっている写真が、携帯電話の画面には写っていた。
しかも、表情も自然な笑顔でいい。

「へー」

でも、ちょっとプリクラとは映りが違うみたい、と感想を持つも、
それより、梨沙子の腕を素直に感心する愛理。

どのように写っているのか、分からなかったはずなのに、
しっかりとふたりを中心に入っていて、更に自然な笑顔の時に撮れているから、驚きである。


63 名前:3-1. 投稿日:2008/11/02(日) 13:32

「すごーい」
「それでいい?」
「うんうん。これがいい!」

愛理の嬉しそうな笑顔に、梨沙子も自然と笑顔になる。

そのまま携帯電話を受け取ると、待ち受けを設定するため、解説書を手にする。
やがて、簡単にそれが書かれている場所を見つけたのか、うんうんと頷いた。

「あのね、『データフォルダ』の中の『マイフォルダ』ってトコに撮ってるから、
それ画面に写してー
で、『メニュー』押したら『壁紙』ってあるから、それ押したら待ち受けに設定できるよ」
「…?…」
「はぃ。かんりょ」

長い説明に、最初の頃に出てきた言葉はもうすでに消えかかっていた愛理。
眉をへの字にさせる。

「…ぁ、また今度、あぃりがする時に教えてあげる」

梨沙子は苦笑いを浮かべた。

そんな梨沙子の様子に、愛理ますます眉をへの字にさせたのだった。

そして、こんなやりとりがされているここ1年C組でも、
このお話の主人公たちが学校生活を楽しんでいたのだった。






64 名前:3-2. 投稿日:2008/11/02(日) 13:33

「次は何がいい?」

梨沙子の言葉に、愛理は少し考える。

「ん…と」
「メールアドレス変える?」
「うんうん。それがいい。メールしたぃ」
「じゃぁ、ちょっと待ってね…」

梨沙子はそう言うと、ぴこぴこ携帯をいじり始めた。

そんな頼もしい梨沙子の手元を見る愛理。
機械にてんでダメなお母さんと比較をし、尚更感心してしまう。

昨日の夜、母親とふたりで、携帯電話を前にしてのテンヤワンヤのやり取りを思い出して苦笑い。
そもそも、未だに買ってきた時のままのメールアドレス、
メールより電話の方が早い、カメラを一度も動かした事のない、
そう開き直る母親に聞くのも可笑しな話。

結局、『りぃちゃんに聞く!』の一言で片付いてしまったのだった。

これでやっとメールできるなぁとしみじみと感じつつ、梨沙子を眺める愛理。
両手で器用に何やら打っている様子を見ていると、かっこよく見えて、少し羨ましくなる。

「両手かぁ」

なにやら訳の分からない呟きをこぼす愛理に、梨沙子は不思議そうな表情で視線を向けるも、
少し首を傾げると、再び手元に視線を落とした。
と、そのとき、ふと何かを思い出したのか、『そだそだ』と手の平をひらひらさせた。

「なに?」
「おっけーだよ」
「?」

主語のない言葉に、今度は愛理が首を傾げる。

「だからね、お買い物」
「ぁ」

愛理は、ぱっと顔を輝かせた。
そう、ずっと前から梨沙子に対してしていたお願いを思い出した。


65 名前:3-2. 投稿日:2008/11/02(日) 13:33

そんな愛理の表情に、梨沙子はうんうんと頷くと、笑顔を見せる。

「みゃに、もも、キャプテン。
ちぃにゆり、まー。
あとねー、なんとねーなんとねー」

やけに勿体振る梨沙子。
ふふふと可愛らしく笑うと、人差し指をびしっと立てた。

「まぃみ!」

突然出てきたその名前に、思わず息が止まる愛理。

「まぃみちゃんも…?」
「そ。あぃり、まぃみスキだったもんねー」

そして、『昔からまぃみの側、絶対離れなかったもんね』と言い、無邪気に笑う梨沙子は、
再び視線を携帯に落としていた。

『スキ』

舞美のキレイでとてもステキな笑顔が浮かぶ。

しかし、それと同時に、その単語がやけに愛理の頭の中に残る。
とても引っ掛かる言葉。
引っかかるそんな自分が分からなくなる。

どうして?

昔から、舞美に対して散々『スキ』だの言ってきたのに、
今、梨沙子から聞こえてきた『スキ』という言葉は全く違う言葉に聞こえてしまっていた。
最後に会った一年前、愛理が初等部6年生の夏休みの時にも、
散々『スキ』という単語を使った記憶があるのに。

なぜ?

恥ずかしく、イケナイ響きに感じられ、そして、頬に熱を帯びる。


66 名前:3-2. 投稿日:2008/11/02(日) 13:33

「まぃみね、またまた生徒会の学年代表に推薦されたんだってさ」
「そーなの…?」

手を止めた梨沙子は、少しイスに深めに腰を下ろすと、窓の外に視線を向けた。

「高校生になってから更に人気が出てるしー。
きれーなのに頭はよくて特進Aクラスだしぃ、
運動神経も抜群で全国まで行くしぃ、それで生徒会の学年代表だもん。」

『ホント凄い』。

梨沙子のその言葉は単刀直入であり、とても分かり易かった。

「人気が出て当たり前だよね。
今は、みゃより人気あるみたぃだょ。
初等部のコたちは、みゃ派がだいぶん多いけど、
あたしたちの学年だったら、まぃみ派が多いでしょ?
あと、ゆりの学年はまだみゃ派が少し多いみたいだけど、
もうすぐ抜かれるんじゃないかなーってゆりが言ってたょ」
「へぇ」
「みゃの学年は、完全にまぃみ派多数だってさ。
 上の方の先輩たちは半々みたいだけど、まぃみが高校生になって身近になった分、
まぃみ派が多くなってるみたぃだょ」

梨沙子の口から、ほいほい出てくる言葉に目を丸くする愛理。
なんだか、聞いている内に、別世界に住んでいる人の話に聞こえてくるから不思議である。

「秋の中祭のミスコン、田中さんの3連覇を阻んで、
まぃみが取るって言われてるみたぃ」


67 名前:3-2. 投稿日:2008/11/02(日) 13:34

ミスコン。

この女子校には、中等部、高等部、大学部と秋に三日連続で開催される文化祭がある。
一日目の中等部がメインの前夜祭、二日目の高等部がメインとなる中祭、
そして、三日目の大学部がメインとなる本祭。
日頃は女子校である事から、外部との関係は遮断されているが、
この三日間は外部に公開される事もあり、一年の内、学校内外で一番盛り上がる期間である。

そんな中、一番人気のある企画というのが、
芸能人やアーティストを呼んでの音楽もしくはトークライブといったものではなく、
やはり女子校だけにミスコンである。

ここでは各祭でミスコンがあるのだ。
前夜祭では、中等部の生徒での前夜祭コンテストがあり、
中祭では高等部の生徒での中祭コンテスト、
そして本祭では、中等部の前夜祭グランプリと準グランプリ、
高等部の中祭グランプリと準グランプリを取った女のコも合わせて、
学校全体のミスグランプリコンテストが開かれて、
この女子校のミスグランプリが決定されるのだ。

外部からの注目度も高く、ミスグランプリを獲得すると、
メディアのスカウトの目に留まる事も多々あるらしい。

梨沙子の言葉は、その中でも高等部の中祭ミスコンの事を言っているのだ。

これまで舞美は、中等部の3年の時に、初めて前夜祭グランプリを獲得した。

それまで獲得した事がなかった事もあり、ミスコン前の注目度は少々低かったのだが、
その年は、中学最後のインターハイで全国3位になったうえ、全国模試で100位以内に入り、
さらに中等部の生徒会長になった事もあり、
上級生や下級生からの幅広い人気で大本命と言われ連覇を狙った二年生の雅、
スタイルで上級生からの票に強く二番人気だった一年生の友理奈、
そういった前夜祭グランプリ候補と言われた面々を押しのけ、
前夜祭グランプリを獲得したのだった。

そして、その頃から、舞美の人気にも拍車が掛かってきたのである。

それまで下級生や上級生からの人気を独占していた雅と並べて見られるようになり、
一気に注目の的になったのだった。

今では、『まいみ派』や『みや派』なんて言葉まで誕生してしまっている。


68 名前:3-2. 投稿日:2008/11/02(日) 13:34

ちなみに、その勢いのまま、本祭でのミスグランプリコンテストにも挑戦したのだが、
さすがにミスグランプリには手が届かず、4位という成績であった。

それでも善戦であり、これまでの中等部の生徒の最高順位だったのだ。

それはある意味仕方のない事であり、
やはり、高等部や大学部の生徒の人数が多い事が一番の原因であろう。

一番多いのが大学部の生徒、続いてが高等部の生徒であり、
中等部の生徒は高等部の半分しかいないだけに、やはり不利となる。

その理由から、これまで本祭におけるミスグランプリを取った中等部の生徒はいないし、
高等部の生徒も数える位しかいないのだった。

そんな中、今年の舞美は、高等部への進学での学年2位の好成績、生徒会の高等部1年の学年代表、
そして、文化祭直前の高校の新人大会での好成績をあげると目されてる事からも、
おそらく、現在連覇中の前グランプリ覇者の3連覇を阻み、
一年生にして中祭ミスコンのグランプリを獲得するだろうと言われている。

さらに、大学部の本命が不在という事から、
中祭グランプリの勢いを持って、本祭のミスグランプリまで獲得するかもしれないと言われていたのだ。


69 名前:3-2. 投稿日:2008/11/02(日) 13:34

「へぇ…」

梨沙子の言葉に、舞美がますます遠い世界の人に聞こえてきた愛理。

「まぃみちゃん、すごいね…ミスグランプリかぁ」

感嘆のため息をこぼす。

「へへへ…あぃりも参加してみたら?」
「ぇ?前夜祭ミスコン?」
「そ。みゃやゆりには、まだちょっと負けちゃうかもしれないけどー
意外とイイトコまで行くかもしれないょ」

そう言って楽しそうに笑う梨沙子は、
さっきまでのお仕事の続きである愛理の携帯電話のメールアドレスを変える作業に、
再び戻っていったのだった。

「ははは…」

一方の愛理、梨沙子の冗談とも言えない言葉は、
舞美のすごいお話を聞いた後だけに、全く実感が沸かず、苦笑いしか出ないが、
それでも、少しは面白いかな、と感じていたのだった。

『少しはまぃみちゃんに近づけるかな』と。

そんな愛理の頭の中では、
さっきまでの『スキ』という禅問答がいつの間にかなくなっていたのだった。

そして、『舞美=手の届かないステキなヒト』という方程式ができつつあった。






70 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/02(日) 13:36
今日はここまででーす
それでは失礼しまーす
71 名前:名無し飼育 投稿日:2008/11/03(月) 01:43
いい雰囲気。やじすずの空気も愛理と梨沙子の仲の良さも。
で、梨沙子は参加しないの?
72 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/05(水) 23:38
>>71 名無し飼育さん
嬉しいお言葉、ありがとうございまーす
あ、ミスコン、りーちゃんについて話すの忘れてました;
うーん。いずれミスコン編は出るので、そのときのお楽しみにでw
73 名前:3-3. 投稿日:2008/11/05(水) 23:40

3-3.

『あーいーりー。でけたよ』と、にっこりと微笑む梨沙子。

「お昼に、間に合ったね」

授業中も先生の目を盗んでは、携帯電話のセッティングをしてくれていた梨沙子は、
お昼休みに愛理の元にお弁当を手に持ちやってくると、携帯電話をひらひら自慢げに見せた。

「あーありがとぉ
 さすがりぃちゃん!」

久し振りに自分の手元に戻ってきてくれた携帯電話が輝いて見える。
たかだか数時間しか離れ離れになっていなかったのに、
やけに情がわいてしまい、嬉しいの一言に尽きる。

しかも、パワーアップして戻ってきてくれたのだ。

『あたしの番号とメアド、電話帳にも入れておいたから』と梨沙子はぴこぴこと打ち、
携帯の画面を愛理に見せる。

「コレね。」

愛理が画面を見ると、『梨沙子』という名前と電話番号、メールアドレスが記されていた。
なるほど電話帳、そんな便利機能がある事に素直に感心する愛理。

「あとね、この『オーナー情報』ってトコにあぃりの電話番号とメアドが入ってるから。」
「あたしの番号とか、見れるんだー」
「うん。
 あと、メアドは、さっきあぃりが言ってたのに変えてるからね」
「ぁ、ありがとー」
「そ。でね、あとね、赤外線通信ってので簡単にヒトと番号とか交換できるから、
 お昼にみんなと交換しよっか」
「せきがいせんつうしん?」
「そ。」
「…?…」

携帯電話を買ってから、横文字やら漢字やらの専門用語がたくさんでてきて、混乱してばかりである。
やはり、まだまだ慣れない。

眉をへの字にさせた愛理を見て、梨沙子はふるふると首を横に振る。

「…ぁ、あたしもよく知らない。
 けど、ぱっぱって番号とかメアドを交換できる機能があるの。」
「ふーん」


74 名前:3-3. 投稿日:2008/11/05(水) 23:40

梨沙子は持ってきていたお弁当を愛理に見せると、『早くいこ』と笑顔を見せる。

「ぁ、そだね」

愛理は、携帯電話とお弁当、あと解説書を手に持ち席を立ちあがろうとした。

「…今はいいと思うょ。。。」

梨沙子の呆れた表情を見て、少し恥ずかしげに『だね』と解説書を机の中へしまい、
立ちあがった愛理。

梨沙子のお弁当を持った方の腕に自分の腕に絡ませると、歩き出す。

「みんなくるの?」

愛理の質問に梨沙子は視線を斜め上、少し考える。

「えーっと…
 ゆりとちぃは、図書委員で無理みたぃ」
「一緒かぁ」

相変わらず仲の良い千奈美と友理奈に、自然と頬が緩む愛理。
ふたりはいつも一緒に生徒会やら委員会の仕事につくのだ。

昨年は、ふたりで一年を通しての生徒会の仕事についていた。
今年は、2人揃っての図書委員である。

しかも、図書室の管理を担当する日も一緒なのだ。

そんなふたりの仲の良さがホントに羨ましく感じる愛理。

もちろん、愛理にとっての大親友である梨沙子だって、
いつも愛理と行動を共にしてくれるのだが、
やはり梨沙子にとっての一番は、幼馴染みとしても愛理より付き合いの長い雅に思える。

それが愛理にとっての少々の不満。

「あと、まぃみもいつも通り生徒会で無理みたぃだね」
「そっか…」

これまで一度もお昼のお弁当時間に来た事がなかっただけに、
だいたい予想はしていたが、やはりどこかココロの中で期待していた愛理。
週末、一緒に遊びに行けるのだから、今日くらいはといった気持ちである。

それでも、今朝の梨沙子の話を聞いていただけに、尚更納得も。

『舞美=手の届かないステキなヒト』という方程式以外にも、
『舞美=とても忙しい』という方程式まででき上がる。

舞美についての連立方程式の完成。
答えを解くと、『手の届かないステキなヒト=とても忙しい』になる。
微妙に違うかもしれないが、少々納得の愛理。


75 名前:3-3. 投稿日:2008/11/05(水) 23:41

「あーもういっぱぃ」

愛理が、目の前の光景に可愛い声をあげる。

中等部の校舎を出たふたりの目に、大きな芝生が敷き詰められた広場が飛び込んできた。

久しぶりの梅雨の晴れ間だけに、もうすでに制服を着たたくさんの少女たちが、
めいめい長イスに腰掛けたり、芝生の上にシートをひいたりして、お弁当を囲んでいた。

この学校の各校舎の前には、大きな芝生がひかれた広場があり、
お天気の日のお昼時となると、たくさんの少女たちがお昼の時間を楽しむ場所となっていた。

初等部からの付き合いとなるこの女子校の少女たちにとって、
どこか広い場所でたくさんの友達と食べたいと思うのが常。

学校が始まった当時から、校舎内には食堂などがなく、
各教室でしかお昼のお弁当を食べられない事もあり、
お天気の日となると、各校舎の前のこの広場で、
お昼のお弁当を食べる事が、この女子校での恒例の景色であった。


76 名前:3-3. 投稿日:2008/11/05(水) 23:41

その大きな広場の中でも一番人気のある場所は、芝生に囲われた中央にある噴水広場。
大きな噴水のまわりに、その噴水を囲うようにして石のテーブルとイスが置かれている。

そんな噴水広場の人気の秘訣は、一年中、絶え間なく流れ出る噴水により作りだされる『虹』。

そう、この噴水広場の高等部側から一本通学路の方を見ると、
天気のよい日には、決まって虹を目にする事ができるのだ。

さらに、その虹が見える場所の周辺にも特別な場所がある。

その特別な場所は、一番人気のある場所であり、
そこから虹を見ると、なんと『七色の虹』を目にする事ができるのだ。

ステキな光景であり、また、その虹には、ひとつの曰くがあった。

年に一度、日の絶妙な傾き加減により、七色の虹が噴水の中央に向かって、
四方向から掛るように見える瞬間を目にする事ができるらしい。
それも、この中等部の校舎の前の噴水広場の前だけ。

とてもキレイなその光景。

さらに、その七色の虹が四方向から掛る瞬間に、噴水広場のその場所で想い人に告白をすると、
どんな叶わない恋でも叶うという噂があった。

『どんな叶わない恋も叶う』という言葉が、数々の少女のココロを掴んで離さなかった。

その言葉に期待し、淡い恋心を抱いた憧れの先輩や、お気に入りの後輩、
はたまたいつの間にか恋心へ発展した親友もしくは友達への、
イケナイ告白を夢見ている少女たち。

ところが残念な事に、ここ数年七色の虹を見たという目撃証言はなく、
ただの噂としてしか語られていなかったのだった。

そして、いつの頃からか、この中等部の前の噴水広場は『告白の噴水広場』と呼ばれ、
少女たちの憩いの広場となっていた。


77 名前:3-3. 投稿日:2008/11/05(水) 23:41

そんな広場は、とても大きく、ヒトを探すのも一苦労。

「どこかなー」

梨沙子は周りを眺めながら携帯電話を取りだし、ぴこぴこ打つ。

その間、愛理は分かりやすい高等部の制服を着た桃子や佐紀を探そうと、
キョロキョロ辺りを見回した。

しかし、やはりそう簡単には、見つからないもの。
数名の級友が見つかり、ひらひら手を振る。

「もも?」

梨沙子の携帯電話が桃子につながったらしい。

「『告白の噴水広場』の…?初等部にちょっと行った方ね…」

梨沙子の言葉に、愛理が向かって左側となるそっちの方に目を向けた。
すると、携帯電話を片手に、ぴょんぴょんと大きくジャンプしている桃子の姿が目に入ってきた。

思わず笑顔になる愛理。

ああいう仕草を見ると、ホントに高校一年生なのか疑ってしまうが、
それが桃子のいいトコロであり、愛理はスキだった。

いつも楽しませてくれる桃子。
子供っぽいトコロもあるが、人一倍まわりのヒトの事を考えてくれている。

そういう性格も、愛理はスキであった。

「いたっいたっ」

梨沙子の腕を引っ張り、愛理は桃子の方に大きく手を振り、歩き出した。

やっぱりスキ。

桃子の笑顔を見たとたんに、その言葉が自然とココロの中で浮かんでいた愛理。
しかし、次の瞬間には、恥ずかしがらずに『スキ』という言葉を思い浮かべた自分を不思議に感じる。

そう、さっき舞美の事で『スキ』という言葉を思い浮かべた瞬間に感じた不思議な自分の気持ち。

舞美への『スキ』。
桃子への『スキ』。
そして、梨沙子への『スキ』。

どれも同じ言葉だが、やっぱり舞美への『スキ』が違う?
どうして恥ずかしいのだろう。






78 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/05(水) 23:44
本日はここまででーす。
うーん。少ない。。。。すみません。
次回で自己紹介編完了でーす。それでは失礼します。
79 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/11/06(木) 02:36
まいみぃ〜好きだぁーw
80 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/06(木) 06:52
ミスコン編楽しみだなあ
りーちゃんがミスコン出たら他のメンバー差し置いて優勝しちゃいそうですけどねw
81 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/07(金) 01:10
そんな舞美を甲斐甲斐しく世話してる桃子の存在が気になる。

「報われないよねぇ。」「でも、いいのっ。」みたいな。
82 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/09(日) 21:28
>>79 名無し飼育さん
いやーん♪

>>80 名無飼育さん
むふふ♪
軽くふたりでグランプリ候補w

>>81 名無飼育さん
おっと、面白そう…いいですね。。。。
イタダキますw
面白い妄想が浮かんだら入れたいなぁw
83 名前:3-4. 投稿日:2008/11/09(日) 21:28

3-4.

「みゃは?」

噴水広場の周りに広がる椅子にシートをひきながら、
桃子がきょろきょろ見回した。
桃子を手伝っている佐紀も、一緒になって周りを見回す。

「ちぃに一緒について、図書室に行ってからくるんだって」

そんな二人の疑問に答えたのは、黒いロングヘアーを、
左トップサイドでふんわりとアップさせたキレイで少し大人びた顔立ちをした少女であった。

意思の強さを感じられる大きなアーモンド型の瞳が印象的な少女。

とても面倒見がよいコトから、たくさんの少女からお母さんのように慕われているのだが、
少し女性らしい柔らかい体のラインが、尚更お母さんのように感じられる。

『よっ』と言い、桃子が引いたシートに、さっそく腰掛ける。
その姿も、お母さん。

「ちょっと手伝ってよっ」

ほっぺを膨らませながら、もう一枚シートをひこうとする桃子に対して、
『勉強しすぎて疲れちゃった』と苦笑いの少女。
この姿は、お母さんでは、ない。


84 名前:3-4. 投稿日:2008/11/09(日) 21:29

「もぉ」
「はぃはぃ。手伝ってあげるから」
「キャプテン、ありがと」

ふたりの様子をほのぼのと眺める。

雅や千奈美と同級生でもあるピンク色のタイをつけたそんな少女の名前は『須藤茉麻』。

カノジョも雅や桃子、佐紀、舞美と同様フットサルのクラブからの幼馴染にあたる。
雅と千奈美が、運命と言ってもよいくらいに、9年の内、7年で同じクラスだったのに対し、
茉麻はなかなか同じクラスになる事ができず、
これまで雅とは2回、千奈美とは1回、三人が揃ったのは1回だけだった。

毎年毎年、今年こそは雅や千奈美と同じクラスになりたいものと願って、
クラス分け発表の日を迎えるのだが、その日は毎年のごとく落胆する日が恒例となっていた。

今年はあまり期待をせずにその日を迎えたら、案の定、別のクラス。

もう、落胆もしなくなっていた。
呪われているとしか思えなかった。

千奈美と雅が手を取って喜んでいる隣で、毎年のごとく眉間に皺をよせる茉麻。
『もういいよ!』、と先生に向かって何度心の叫びを投げかけたか。

来年も別のクラスになったら絶対に呪ってやる、それが口癖であった。


85 名前:3-4. 投稿日:2008/11/09(日) 21:29

桃子と佐紀が、茉麻と向き合う位置にシートをひき終わると、
一仕事終えたとばかりに、ふたり一緒に腰を下ろした。

「みーゃんが図書室に何の用?」

ペットボトルのお茶に喉を潤す佐紀の隣で、桃子が茉麻に問いかける。

普段からなかなか本に縁のない雅の行動だけに、もっともな質問である。

「さぁ」

そんな桃子の質問に、肩をすくめ、苦笑いを浮かべる茉麻。

「手ぶらだったけど、ちぃと一緒にやけに楽しそうだった…」

その時の様子を思い浮かべているのか、視線を斜め上。
数回頷く。

「ぁ、ちぃといえば、週末都合悪いの?」
「うーん、みたぃ」
「くまぃちゃんもダメだから、ふたりの家族揃って遊びに行くのかなぁ」

佐紀のしみじみした言葉に、茉麻が『あーありえる』と大きく頷く。

「家族ぐるみで仲いいもんね」

桃子も頷く。
と、その時、ぴょんとお尻を浮かせた桃子。

携帯電話に着信があったのか、あたふたとポケットを探る。
そして、携帯電話を取り出すと耳に当てた。

「はぃはーい」
「りさこ?」

佐紀の質問に桃子は、携帯電話を耳に当てたまま首を縦に数回ふるふる。

「なんだか久しぶりだなぁ」

茉麻が呟くと、佐紀も相槌をうつ。


86 名前:3-4. 投稿日:2008/11/09(日) 21:30

梅雨の時期に入ってから今日まで、これほど天気が良くなった日はなかったのだ。
雨が降らなくても、大抵曇り空。

その為、校舎内では、広い場所とかがないだけに、放課後に会う事はあっても、
こうやってお昼時にみんなが揃うのは、ほぼ一ヶ月ぶりと言ってよかった。

梨沙子と愛理を見つけて、桃子が隣で飛び跳ねて手を振っているその様子は、
まさに茉麻や佐紀の心情と同じであろう。

やがて、前回一緒にお昼ご飯を食べた時とは異なり、
衣替えの日も経験した淡いカーディガンに袖を通した梨沙子と愛理の姿が、
三人の目に入ってきたのだった。

ひらひらと手をふる。

「あぃりー」

語尾に音符まで付いてしまうそうな程、ご機嫌な桃子が、嬉しそうに自分の隣をぽんぽんと叩く。

そんな桃子の姿に、苦笑いを浮かべるも、愛理も『はぃはぃ』と嬉しそうに目を細め、
桃子の隣に腰を下ろした。

今の様子を見ていると、どっちが年上なのか分からない。

「あーあぃりだけー?」

そのふたりのやり取りに、梨沙子がクチビルをつきだすと、
桃子は慌てて『じゃこっち、りさこ』と自分と佐紀の10cmほどの隙間をぽんぽんと叩いた。

その桃子の仕種に、今度は佐紀がクチビルをつきだす番。

「はーい。わかりましたー
 どけって事だねー
 まーさの方に行きますんで!」

『もぉ』と言いながら腰をあげた佐紀は、茉麻の方へ移動。


87 名前:3-4. 投稿日:2008/11/09(日) 21:30

こうやって、桃子好みに席替えが完了すると、
さっそくとばかりに愛理が声をあげた。

「じゃーん」

愛理が自慢げにピンク色に輝く箱を見せる。

「あーケータイ!?」

真っ先に反応したのは、佐紀。
茉麻の隣に腰を下ろす間もなく、携帯電話にぐいっと顔を近づける。

「いいなーいいなー
 あたしまだ持ってないのにぃ」

そう言って不満げな表情を浮かべる佐紀。

「持たせて貰ったんだー」
「うん
 りーちゃんが買って貰ったって話したらね、
 中学生にもなったし、いいよって」

桃子の言葉に、愛理は嬉しそうに頷いた。

「あぃりのお母さん、厳しいのにね」

茉麻はそう言いながら携帯電話を取り出すと、
番号とメールアドレス教えてと声を掛ける。

「通信で交換できるかなー?」

その言葉に、愛理は眉をへの字にさせるとふるふると首を横へ。

「ぁ、教えてあげる」

梨沙子が桃子を通して愛理の携帯電話を受け取ると、ぴこぴこ打ちはじめた。
そんな梨沙子の様子を眺めながら、佐紀がしみじみと呟く。

「とうとう持ってないのあたしだけになっちゃったなぁ」
「あぃりが持ち始めたって言ったら、持たせてくれるんじゃない」

そう言い、楽しそうに笑う桃子。

とは言っても、佐紀の家が厳しい事を知っている桃子であるからして、
最初から冗談半分の言葉であった。

それほど、佐紀の家は厳しいのだ。

ま、そのおかげにこれだけしっかりし、大人びた高校一年生になっているのだろう。


88 名前:3-4. 投稿日:2008/11/09(日) 21:31

「はぁ…いいなぁ…
 最近のって、テレビとか見れるみたいだけど、あぃりの見れるの?」
「え?テレビ見れるの?」

佐紀の質問に、逆に愛理が驚く。
こんな小さな機械でテレビまで見れるなんて。
他にも電話帳があって、写真が撮れて、至れり尽くせりである。
さらに、先ほど聞いたところ、音楽まで聴けるそうだ。

「へぇ」

まだ自分の携帯電話がテレビを見れると確定した訳ではないのだが、
もうすっかりその気の愛理は、うんうんと素直に驚く。

すると、梨沙子はひらひらと携帯電話を振ると、
『見れるね…これ』と、アンテナをひっぱり出した。
やがて、携帯電話から賑やかな音が聞こえてくる。

「おぉ」

一斉に携帯電話を中心に顔を寄せ合う五人。
黄色い声が上がる。

「いいなぁ」

梨沙子が携帯電話片手にクチビルをつきだす。
と、その時、もう一方の手に持ってた携帯電話がぶるぶると振るえた。
背面の液晶に目を通すと、嬉しそうに目を細めた梨沙子。

「みゃだぁ」

テレビが映っている愛理の携帯電話を片手に、器用に自分の携帯電話を開く。

「あー」

内容に目を通したとたん、とても不満げな表情になる。


89 名前:3-4. 投稿日:2008/11/09(日) 21:31

「だめなの?」

梨沙子の表情に、雅からのメールの内容にそれとなく気がついたのだろう。
桃子も表情を曇らせると、問い掛けた。

「ちぃと一緒にお昼食べるから来れないんだって」

落胆の表情を浮かべる梨沙子。

「土曜の集合時間とか決めて、だってさ」

大きく溜息をつく。

梨沙子と雅は、ほとんど毎日といってもよいくらいに会っているのだが、
実はお昼にみんなで会う時に見せる雅の雰囲気が、梨沙子にとってスキであった。

いつも自分と一緒だと必ずお姉さんぶったような様子になる雅。
ところが他のメンバー、特に桃子や佐紀と一緒になると、
どこかホッとしたような笑顔を見せる。

そんな雅の表情がスキでもあった。


90 名前:3-4. 投稿日:2008/11/09(日) 21:32

桃子は、梨沙子の肩をぽんぽんと叩いてあげると、佐紀の方を見た。
桃子の視線に、佐紀は『じゃぁ』と、視線を斜め上。
そして、すぐに微笑んだ。

「まぁ、朝一でいいよね」

こんな時、だいたい佐紀が場を仕切り、物事を決める。

一番年齢が上というのもあるのだが、やはり初等部の頃のキャプテンの名残りからであろう。
昔からの習慣。

誰も佐紀の決める事に文句は言わない。
ま、誰かがまとめないと、いっこうにまとまってくれない事もあるからだ。

だから、今回の件で、雅が言い出したとしても、
最後にはおおかたの事を佐紀が決めると誰もが思っていた。

「10時に渋谷の駅でいいよね?」

ぱっと決める。

中途半端な近くの駅で待ち合わせをするより、現地集合は意外と楽なのだ。
近くのメンバーはその者同士で集まれるし。

「あぃりは?」

桃子の言葉に、佐紀はすぐに笑顔を浮かべる。
少し不安げな表情を浮かべていた愛理に、視線を向けた。

「あぃりはもちろんあたしが連れて行ってあげるょ。
 りさことみゃも一緒に連れて行くしっ」

佐紀の言葉に、愛理は安心したように頷いた。

「じゃぁ、ももは、まぃみとまーさ組ね
 まぃみには伝えとくょ」
「じゃ、みゃにはりさこが連絡しててね」

佐紀が、梨沙子に声を掛ける。

「はーぃ」

優等生のように手を挙げた梨沙子。

そんな梨沙子の仕種に、全員の顔が綻んだ。

この後も、このようにして、みんな久しぶりの一緒のお昼の短い時間を楽しんでいったのだった。
どのお店に行くのか、どこで遊ぶのか、当日も楽しいが、今が一番楽しい相談をしている時間。

この週末のみんなでのおでかけにそれぞれに思いを馳せながら。






91 名前:3-4. 投稿日:2008/11/09(日) 21:33

☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆

〜[イケナイ方程式]〜

☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆


92 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/09(日) 21:34
本日はここまででーす。
(やっぱり短い…)
次回から、みんなの休日編となります。
よろしくお願いしまーす。
それでは失礼します。
93 名前:85年組・・・ 投稿日:2008/11/10(月) 00:56
 
94 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/11/10(月) 22:17
今気付いたw91年組やんwww
そしここの作者は多分俺と同じ二十歳w
年代3上にしちゃったなw
95 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/10(月) 22:39
読者レスはsageましょうね
96 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/15(土) 22:06
>>93 85年組…
85年組のおねーさん方は、もうちょっと待ってくださーい

>>94 名無し飼育さん
ん??なんですか??なんですか??
意味がわからない??
もしかして思いっきり間違った設定作っちゃってます??

>>95 名無飼育さん
ありがとございます。

97 名前:2.イケナイお遊び[1-1.] 投稿日:2008/11/15(土) 22:07

お天気にも恵まれた土曜日。

休日の晴れ間は、およそ一ヶ月ぶりである事から、東京の山の手のこの閑静な住宅街でも、
朝早くから家族連れで出かける家庭が、数多くみられた。

車で出掛ける為、荷物を積みこんでいる一家や、
電車で出掛けようと、最寄の駅まで急ぐ一家、
朝早くから動きが活発なその住宅街。

その住宅街の一角に、周りの家庭同様、
朝から準備にてんてこ舞いの徳永千奈美の姿があった。

そう。
今日は、友理奈とふたりだけでお買い物に行くと約束をしたその当日なのである。

今はシャワーを浴び終え、ドライヤーで髪の毛を乾かしている千奈美。

簡単に乾かし終えると、毎朝の習慣である、ストレートアイロンを手にする。
こちらは念入り。

とてもご機嫌に、今にも鼻歌まで聞こえてきそうなその様子。
千奈美の特徴でもある、目尻を下げているその
表情は、ホントにご機嫌なのだ。

しかし、ふとした瞬間に、大きく肩を落として溜息をつくその姿も見受けられた。
仕草同様、分かりやすく変化する表情。
この余りにも分かりやすい表情の変化も、千奈美の特徴。

落ち込んだ時、ご機嫌な時、その感情が素直に表情に現れるのだ。
今はまさに後者から前者。

そして、手を止める。

その溜息の理由。

それはやはり、友理奈との初めてのふたりっきりでのお買い物が原因だろう。
不安げな表情を浮かべる。

これまたふとした瞬間に、親友である夏焼雅の言葉を思い出しては、頭をふるふる。
『友理奈=イケナイカンケイ』の方程式を頭の奥へと追いやる。

「はぁ」

そして、再び大袈裟に溜息。


98 名前:2.イケナイお遊び[1-1.] 投稿日:2008/11/15(土) 22:07

気を取り直すと、ストレートアイロンを動かし始める。

やがて、たっぷりと時間を掛け、ストレート度合いに満足したのか、よしと一声。
立ち上がると、壁掛けハンガーに掛けていた服を手に取った。

薄手の淡い色のインナーとショートパンツ。
千奈美の健康的な肌の色がキレイに栄えるそのファッション。

友理奈に選んで貰ったそれが、今一番の千奈美の勝負服である。
あとは、薄手のジャケット系を身につけるだけ。

両手を広げて鏡の前で『ばっちり』と、にっこり笑顔。

そして、息をひとつ吸い込むと、『おかぁぁさぁーーーーん』と声を張った。

お出かけの日の恒例のお願いの出番である。

しばらく待った後の『はいはい』とお母さんの登場に、千奈美は笑顔。

「アップがいい!」

美容室千奈美ママへのお願いは、今日のような友達とのお出かけ日の恒例であった。
美容室という飾り文句は、あまりにも上手にしてくれるから、いつの頃からか友理奈がつけた名前である。
友理奈だけではなく、雅も認めるその千奈美の母親の腕に、こんな日は頼りっぱなしであった。

それはやはり、千奈美の友達であるお出かけメンバーはみんなオシャレである事もあり、
人一倍負けず嫌いな千奈美の性格から、こんな日は特に頑張って準備をする。

気合いが入ると、軽くメイクまでして貰うくらいである。

今日は、まさにその日。

「メイクもお願ぃ」
「はぃはぃ分かりましたー
お客サマ」

苦笑いを浮かべながらも、しっかりとキメてくれるから、ホント頼もしいこと限りなしである。

トップでひとつにまとめると、しっかりとシャギーを入れてのふんわりボリュームアップのヘアースタイル。
最後にカジュアルにバラしてスプレーひと吹き。

続けて、前髪もさっさと調えてくれる。

しっかりと千奈美好みに完了すると、表情も緩んだ。

「さすがー」

そして、そのままメイクに突入。


99 名前:2.イケナイお遊び[1-1.] 投稿日:2008/11/15(土) 22:08

と、なったその時だった。
家への来客を知らせるインターフォンが鳴り、千奈美は母親とふたり顔を見合わせた。

「ゆりなちゃんかな?」

母親の言葉に、『まだ1時間はあるよぉ』と視線を斜め上、考える千奈美。

母親が少し離れたインターフォンを取る後ろ姿を眺めた。
すると、来客は当たらずも遠からずであり、友理奈の母親であった。

少しクチビルをつきだした千奈美。

嫌な予感がする。

『家族でお出かけするからいけなくなったの』

そう、小学校6年生の頃にも一度あったその光景が目に浮かんだ。
あの時の友理奈の申し訳なさそうな表情、そして、その場で泣いてしまった自分の姿。
あの時は、雅たちも一緒のお出かけだったが、友理奈が一緒に行けないという事だけで悲しかったのだ。

母親と友理奈の母親が話している声に、聞き耳を立てる。

『ごめんね』から始まった会話に、表情をしかめた千奈美。
『やっぱり…』という言葉が口から出かかるが、慌てて抑える。
もちろん、それは信じたくないから。

せっかく楽しみにしていた、友理奈とのお出かけ。
それも、初めてのふたりでのお出かけなのだ。

それなのに…

しかし、千奈美の願いは叶わず、母親同士の会話は、やはり千奈美の予想通りであり、
普段日曜日に休みの取れない父親が急に休みが取れて、
久しぶりに家族でお出かけする事になったのだった。

友理奈も千奈美との約束があると駄々をこねたが、やはり最終的には、頷くしかなく、
千奈美には会えないから、代わりに母親に伝えて貰いに来たとの事だった。

途中、千奈美も呼ばれ、友理奈の母親に謝られたが、ひきつった笑顔での対応が精いっぱいだった。
もし、友理奈が来ていたら、どんな対応をしていただろう。

ふと、考える。


100 名前:2.イケナイお遊び[1-1.] 投稿日:2008/11/15(土) 22:08

「しょうがないっか」

友理奈の母親が帰った後、少しの沈黙に呟いた母親の言葉とその苦笑いにも、
千奈美は落胆の表情を変えない。

やはり、とてもショックなのだ。

ふたりでのお出かけ。
気分も盛り上がっていたのに。

それなのに…。

前回、こんな事があった日には、泣くという手段で、気分を変えられたのだが、
中学3年生になった今は、違った。

いや、こんな時の感情の表現方法がいまいち分からないというのが正解だった。

そして、『おかぁさん、ついていってあげるね』という母親の言葉に『いい!』と強めに反応する。

「駄目よ、ひとりじゃ」

その言葉にむっとなる。

友理奈がいないというだけで、ひとりで行っては駄目という事から、
子供扱いされている事に繋がり、腹を立てる。

実際子供だが、こんな日は都合よく、大人扱いを受けたいもの。

「みゃたちが行ってるから!」

それでも、言い訳は子供用の言い訳となる。

千奈美の強い言葉に、母親は小さく溜息をついた。

千奈美がショックを受けているのは分かる。
それに、こんな時には、これ以上何を言っても聞かないのが千奈美の性格だから、
と『ちゃんと5時までには帰るのよ』と頷いたのだった。






101 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/15(土) 22:10
本日はここまでです。
とことこんペースダウン。。。
すみませんです。
102 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/15(土) 23:55
駄々をこねる熊井ちゃん、可愛いんだろうなーw
次回も楽しみにしてます
103 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/16(日) 22:22
今日はじめて読みましたが、好きな設定にメンバーにCPまでw
85年組のお姉さん方も気になるものです。
続き楽しみにしてます、頑張ってください!
104 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/21(金) 23:29
>>102 名無飼育さん
ありがとうございまーす
可愛いと思いますw
かっこいいかっこいい言ってるときのくまぃちゃんじゃなくって、
トマト前にしたときのくまぃちゃんをそーぞーして下さいw

>>103 名無飼育さん
はじめまして
ありがとうございます!
お好きな設定とのことで、嬉しいです
85年組のお姉さん方も気になるのですね
できるだけご期待に添えますように頑張りまーす
105 名前:2.イケナイお遊び[1-2.] 投稿日:2008/11/21(金) 23:29

2.イケナイお遊び[1-2.]

休日の晴れ間の渋谷。
およそ一か月ぶりのそんな晴れ間となると、この若者の街と言われる渋谷も、
ヒト、ヒト、ヒトでいっぱいになる。
雨の日でさえ、人混みであるのに、これだけの天気の日となると尚更である。

見渡せばヒトしかいないその状況に、
生まれて初めて渋谷という街に出てきた鈴木愛理は、
ただひたすら目を白黒させるだけだった。

噂には聞いていたが、もちろん大親友である菅谷梨沙子を通じての噂、
これだけヒトばっかりだと、ぶつからないで歩けるか心配にもなる。

いや、心配どおり、先程からすれ違うヒトとぶつかり、頭を下げる事、数回。
時々、梨沙子にぐいっと手をひっばられ回避する事も数回。

もう隣を歩いてくれている梨沙子の手を、ぎゅっと握り締めてばかりになっていた。

せっかく久しぶりの再会となった矢島舞美の隣を、
ゆっくりとお話しなから歩いてみたいと思っていたのに。

とは言うものの、本当の事を言えば、この状況になってよかったと言うのが、
愛理にとって本音だったかもしれない。


106 名前:2.イケナイお遊び[1-2.] 投稿日:2008/11/21(金) 23:30

久し振りの舞美との再会。
それは、マンガなどを見て思い描いていたとおりステキな再会…とはならず、
ただただ自己嫌悪しか残らないものとなった。

もちろん、舞美が、想像していた通りの理想的なヒトじゃなかったから、という訳ではない。

舞美は、梨沙子の言葉通りやはりカッコよく、ステキな女のヒトになっていた。
周りの級友たちから散々聞いていた『ステキ』や『キレイ』、『カッコイイ』という言葉通り、
一年前とは比べモノにならないくらいにである。

一年前は、まだまだ『可愛らしさ』があったのに、今の舞美はとても『キレイ』なヒトだった。

一年だけでこれだけ『キレイ』になっちゃうんだ。
それが、素直な感想。
『人気が出て当たり前』。
まさに梨沙子のその言葉通りの事を感じた。

そんな感想を持ってしまったからなのか、はたまた梨沙子からの舞美の『スゴイお話』のせいだからなのか、愛理はやはり、舞美を今朝の待ち合わせの時に見た瞬間から、
どうもまともに顔を見て話せなくなってしまったのだった。

会ったその時、舞美にジッと目を見つめられたその瞬間から。
キレイで大きな瞳に射抜かれたその瞬間から。

やがて、舞美のとてもキレイな瞳を吸い込まれるかのように見つめ続けていた愛理は、
しばらく見つめ合った後、ひとつ大きく自分のココロが高鳴った事に気づくと、
慌てて視線を落としてしまっていた。

そして、思わず口から出てしまった言葉は、『ぁ、久し振り…だね』。

言った瞬間に、『ちがぁう』とココロの中て即座に否定しても後の祭り。
軽いパニックになると、もう続けたい言葉も出ない。

『ぁ、そっか…そだね』という舞美の返事を、どこか遠い世界で聞いていたのだった。

会う前には、一年ぶりの再開だからと、抱き着こうやら、腕を絡ませようやら、
乙女チックな再会に色々と思い巡らせていたのだが、
完全にそのシミュレーションは思考から消えてしまっていた。

その出会い以来、まともに舞美の顔を見ていない。
いや、見れていない愛理。

あたしなんて。
あたしが隣を歩くには役不足。
全然似合わないツーショットだもの。
今日の再会で再確認。

もうネガティブな思考しか出てこない。

自己嫌悪。

「はぁ」

自然と零れる溜息も、その象徴。

やがて落ち込み、それプラス、人混みという不慣れな状況となり、
今では、ただひたすら大親友の手を握り締めている愛理であった。


107 名前:2.イケナイお遊び[1-2.] 投稿日:2008/11/21(金) 23:30

そんな愛理に、あまりにも腕を握りしめられ、少々歩きにくいのは梨沙子。
愛理のちっちゃな子供のようなその仕草に微笑ましく思う一方、
せっかく舞美がすぐ隣にいるのにと、苦笑いも浮かべていた。

そして、愛理には申し訳ないと感じつつも、隣を歩いている舞美との会話に華を咲かせる。
そう、舞美との会話は、久し振りという事もあり、
後から後から話が沸いて出てきて、随分と盛り上がっていたのだった。

ときどき、舞美との再会以来めっきり大人しくなってしまっている愛理にも話をふり、
少々急がしい梨沙子。

それと同時に、やはり心配になる。
愛理の舞美への態度に。

まさか予想していたほどステキな舞美ではなかったから落ち込んだとは思えないけど…と思いつつ、
後でふたりだけになってから問いただしてやろうと意気込む梨沙子であった。

その三人の後ろには、清水佐紀と須藤茉麻が歩き、こちらは少々まったりモードに、お話に興じ、
そして、一番後ろを歩いているのが、嗣永桃子と夏焼雅であった。


108 名前:2.イケナイお遊び[1-2.] 投稿日:2008/11/21(金) 23:31

「あぃり、かわいいっ!」

歩きながらお店の方に興味深そうに視線を向け、
ヒトとぶつかりかけては梨沙子に引っ張られている愛理の姿を見た桃子は、
そんなセリフと共に目を細めると、ぐいぐいと隣を歩く雅の腕を引っ張った。

「はぃはぃ」

今日何度目だろうかというくらいの桃子のセリフと行動に、雅はただ苦笑いしか出ない。
どうも、桃子は、今日の愛理がとてもお気に入りのようである。

渋谷駅の待ち合わせの場所で愛理を見た瞬間から、黄色い声を上げた桃子。

待っている間、ずっとぶらぶらと握っていた舞美の手首を、ぶんっと放すと、
雅の隣でおどおどと歩いていた愛理に、雅を弾いてしまわんばかりの勢いで、
おもいっきり抱きついたのだった。

そして、『かわいぃ!』と一声。
抱きついたまま、じぃーっと見つめる。

少し低い視線から見つめられて、さすがに居心地が悪くなった愛理。
手で桃子の目を隠すと、『りぃちゃん助けてぇ』とヘルプを出した程だった。

雅と佐紀によって、いやいや引き剥がされた桃子は、今でも集合時間でのテンションのまま。

とても短いプリーツスカートをひらひらさせ、それはそれで雅を慌てさせる。
さらに、ご機嫌に両サイドトップで小さくくくったふたつのシッポをふるふるさせては、
雅にお話をふる。


109 名前:2.イケナイお遊び[1-2.] 投稿日:2008/11/21(金) 23:31

「もしかして、みーゃん、してあげた?」
「ん?
 前髪セット?」
「そう。それ込みでさ」

桃子の言葉に雅は軽く頷くと『お泊りしにきたからね』、と少々照れたように、
前を歩く愛理に視線を向けた。

お気に入りである右耳の後ろで一つにまとめたふんわりボリュームヘアースタイルの愛理。
浅めに被るキャスケットから覗くキレイに整った前髪に、可愛らしさアップ。
そして、短めのプリーツスカートをおしとやかにひらり歩く。

その姿は、まるでお嬢さまのよう。

そんな愛理の姿にゾッコンの桃子なのだ。

「お泊りかぁ…いぃなぁ…」
「よくなぃ」

ばっさりと切り捨てた雅。

「えぇ〜」
「もう、ふたり共、ウルサイのなんの。
 ずっとしゃべってんの」

その時の様子を思い浮かべ軽く溜息。

「朝も早くから起こされて、手伝わさせるしさ。
 ふたりで1時間だょ1時間。」

人差し指で『1』を作り、時間を更にアピールする。

「結局ウチがまともに準備出来なかったしさ」

と文句を言いつつも、雅も満更ではないその様子。
実際、意外と手先も器用な雅は、ヘアースタイルのセットも得意であり、
人のセットをしてあげるのもスキなのだ。

日頃から、このようにみんなでお出かけする日は、
たいてい梨沙子の朝の準備を手伝ってあげていた。

一番の得意技は、前髪カット&セット。

雅がセットするだけで一日中前髪が崩れないと、もっぱらの評判であり、
前髪セットが苦手な梨沙子はいつも雅に頼りっぱなしである。


110 名前:2.イケナイお遊び[1-2.] 投稿日:2008/11/21(金) 23:33

「に、しても納得いかないなー」
「ん?」

雅の不機嫌な口調に、桃子は首を傾げる。
しかし、雅の視線の先の人物と、その様子に、何かにはたと気がつくと、
次の瞬間には雅の不機嫌な様子の理由に思い当ったのか、
手を口元に持っていき、くすくすとおかしそう笑った。

「まーまー。あんなあぃりも可愛いじゃん」
「えー。
 せっかくセットしてあげたのにさー」
「まともに顔を見て話してないと、いう訳ですね」

笑う桃子は、今度は舞美の方に視線を向けると、『こちらの方は更に凹んでるなぁ』とこれまた肩をすくめた。

「まぃみも?」

雅が首を傾げる。

「そ。気付かない?
 あぃりのせいだよ。
 あ・い・り・の・せ・い。
 みーゃんたちがくるまで、一年ぶりの再会だしって、
 あぃりどんなリアクションしてくれるか楽しみにしてたんだょ」
「そなの…?」
「そ。
 それが『ぁ、久し振り…』、それだけだよ!
 びっくりしたょ。それだけ?って。」

桃子の愛理をマネたその口調に笑う雅。

「そっけないよ!って。
 マジでツッコミ入れたかったょ
 って、みーゃん笑いすぎ」

桃子に肘をつつかれて、『ゴメンゴメン』と口では謝るも、顔の顔はにやけたまま。
今度は桃子が不機嫌な表情になる。

「せめて『きゃぁ〜久しぶり〜〜♪』だったらさ、許せるけどさ」

そうやって今度は随分と明るい愛理の声をマネた桃子は、
ホントに不機嫌そうに、愛理と舞美の両方を交互に眺めたのだった。

「まぃみ、ちょぉ凹んでる…かわいそ…」

そして、胸の前で腕をひとつ組むと、歩きながら考え込んでしまったのだった。
ぶつぶつと呟く桃子。

そんな桃子の隣では、雅が愛理を心配気な表情で見つめていた。
さらに、『今日一日大丈夫かな』と大きく溜息をついたのだった。






111 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/21(金) 23:33
本日はここまででーす。
それでは失礼します。
112 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/22(土) 00:23
みんなカワイイ(*^。^*)
113 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/22(土) 20:28
愛理キャワス(*´Д`)
114 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/26(水) 23:12
>>112 名無飼育さん
ホンモノはもっとかわいいですねw

>>113 名無飼育さん
はきはきあぃりより、おどおどあぃりの方がスキですw
115 名前:2.イケナイお遊び[1-3] 投稿日:2008/11/26(水) 23:12

2.イケナイお遊び[1-3]

「はぁ」

大きく溜息をついた千奈美。
クチビルをつきだすその様子は、初めて千奈美を見るヒトですら、
不機嫌、そして悩んでいる事が簡単に分かってしまうくらいの様子であった。

千奈美の特徴どおり、やはり分かり易い今のその表情。

「はぁ」

もう何度目の溜息だろうか。
ふと考える。

このお店に入ってから、少しの間は数えたりしていたが、
かれこれ30分は経過してしまうと、すっかり忘れてしまっていた。

少し淡いオレンジ色の店内は、あまり千奈美のような中学生が入らないカフェ。
確かに、千奈美も初めて入るお店の名前だった。

それでも、自分と同年代の女のコがいない事もあり、少し気分も楽になる。
今はやはり誰にも会いたくないというのが、本音なのであろう。

だから、これまで一度しか行った事がない、この品川という駅まで来たのだ。
千奈美にとってなかなか縁のない品川駅の駅前。

休日なのにそれほど千奈美と同年代の若いコがいないとう理由だけで、このカフェに入った千奈美。
入って、少々高いカフェのセットに後悔するも、半分投げやり気味な千奈美はあまり悩まなかった。
とにかく『どこでもいいや』的な考え方だったのだろう。

どこか休めるところ、かつ長い時間いても嫌な顔をされない場所がいい。
そこに落ち着けたらと、決めたのがここ。

入った当初は、ただひたすら落ち込んでいた千奈美も、今では、少し気分的にも落ち着き始めていた。
しかし、落ち着き始めると逆に気になるのが、友理奈の事。

考えないように、考えないようにと思えば思うほど、浮かんでくる友理奈。

家族なのだから当たり前とはいえ、自分より優先されたという事で、ショックは隠せない。
一方、これ程自分自身がショックを受けている事も不思議に感じていた。

「はぁ」

誰かと話している方が楽だろうかと考え、雅に連絡をしようかなと、ふと携帯電話に手が伸びるも、
少し考えて携帯電話を置く。
なんだか友理奈に置いてけぼりをされた事を知られたくもないのが、本音かもしれない。

こんなときでも負けず嫌いな部分がでる自分の性格が嫌になる。


116 名前:2.イケナイお遊び[1-3] 投稿日:2008/11/26(水) 23:13

やがて、何もせずにさらに30分も過ぎた頃だった。
ケーキのセットも食べつくし、もういい加減暇にもなりつつあった千奈美。

いや、普通のヒトなら、まだまだ暇にならないくらいの時間しか経過していないのだが、
黙っているのが苦手、じっとしているのが苦手、そんな千奈美にとって、
1時間近くもひとりで黙っていられた事ですら珍しい事であり、
褒めて欲しいくらいの出来事であった。

もう我慢の限界。

どうしよかな。
みゃに連絡を入れようかな。
とりあえずお買い物にでも行っちゃうかな。
友理奈にお土産を買って帰ろうかな。

と、飽きた事もあり次の行動を考え始めていたのだった。

そして、そんな時だった。

突然、隣にヒトの気配を感じた千奈美。

見る間もなく、イスが引かれると、甘い香りと共に一人のヒトが腰を下ろしたのだった。
そして、『こんにちは』と、とても女のコらしい声で話し掛けてきた。

「…?」

思ってもいなかった展開に、一瞬呆気に取られた千奈美。

「さっきからため息つきっぱなしだょ。
 さっきのが50回目。
 50回、シアワセ逃げちゃったょ。」

なにそれ。
数えてたの?
思わず口から出そうになった言葉を、ぐっと抑える。
その相手の顔を見て。


117 名前:2.イケナイお遊び[1-3] 投稿日:2008/11/26(水) 23:13

千奈美に話し掛けてきたヒトは、自分より明らかに年上であったのだ。

いや。
とは言うものの、年上だろうという事はわかったが、どれだけ年上なのかは分からなかった。

顔立ちだけだと、女性と呼ぶには若すぎるようにも感じられるその女のヒト。
見た目の雰囲気では、大学生くらいだろうか、と思うも、
高校生でも十分通用するようにも感じられた。

さらさらのブラウンのロングヘアーから覗く顔立ちは、とてもキレイであり、
さらに、可愛らしさも兼ね備えている。

そして、一番に目が惹かれるのが、とても人懐っこい笑顔だった。
目尻を下げて微笑んでいるその笑顔。

『あたしに似てる』。

一瞬感じた千奈美の感想。

ホントに人懐っこい笑顔は、まだまだ小さな子供のようだった。
その笑顔をみるだけで落ち着けると言っても過言ではなかった。

一方、その身体のラインは、とても女性らしいものである。

健康的な肌の色によく映え、身体のラインを強く出す今の服装は、
薄手の少し大き目に胸元が開いたインナーシャツと、タイトなスキニージーンズ。
とても艶めかしく女性らしいラインを強調していた。

千奈美の友達にはいないファッションタイプの女のヒトの姿に、少し恥ずかしくもなる。


118 名前:2.イケナイお遊び[1-3] 投稿日:2008/11/26(水) 23:14

「どーしたの?
 溜息ばっかりついちゃって。
 さすがに50回も記録を更新したら気にもなっちゃうってば」

そう言ってその女性は手を口元にあて、おかしそうに笑ったのだった。

「あーもしかして友達に約束ブッチされちゃった?」
「…」
「ぁ、当たり…?」

そう言うと気まずそうに、少し舌先を出した。
意外とこの女性に似合うその仕草は、さらに年齢を若く見せる。

「ごめーん。
 ホント表情そのままで分かりやすいね」
「…」
「ぁ、怒った?」

いえ。圧倒されているんです。
突然とてもフランクに話し掛けられ、びっくりもしてるんです。
そのリアクションにも困ってるんです。

どの返事をしようか。
と思うも、どの答えもさすがに初対面のヒトへのモノではないかな、と口をつぐむ。

とは言うものの、相手の女性も初対面の態度ではないのだが。

しかし、ただひたすら話し掛けられているだけであるのだが、意外と不機嫌になる事はなかった。
悪気はないとも感じられるし、気分的にも落ち込みつつあった千奈美自身、
ちょうど誰かと話したいと思い始めていたのだった。

それに、正直に言うと、笑顔に少し魅かれていた。
少し自分にも似ているその笑顔。


119 名前:2.イケナイお遊び[1-3] 投稿日:2008/11/26(水) 23:14

「ゃ、そゆ訳じゃないです…」

千奈美から初めて出てきたその言葉に、女性はほっとしたように胸を撫で下ろすと、
『よかった』と、にっこりと微笑んだ。

『そういう訳じゃない』

それは声を掛けられた事への返事にも聞こえたからだからだろうか、
少し表情も安心したかのように綻んだ女性。

「あたしも友達と約束してたのにさ、コイビト優先されてさ。
 ちょっと落ち込んでたの」

女性は少し体を千奈美に寄せると微笑んだ。
甘い香りが流れる。

「よかったらさ、ちょっとお姉さんとお話しない?
 お昼とか、お昼とか、お昼とか、奢ってあげるよ。」

お昼をどうしても奢りたいのですねと、軽く心の中でツッコミをひとつ。
少し呆れ気味になるも、このテンション、千奈美は結構好きだったりする。

「こう見えてもお給料貰ったトコだからさ、いろいろと付き合ってくれたらお礼とかしちゃうょ」

そして、ピースをする。

そんな女性の『こう見えても』と『お給料』という言葉で、年齢に気がついた千奈美。
少なくとも、高校を卒業したところか、大学を卒業したところという事になる。
とにかく社会人。

とはいえ、どちらにしても、若く見えた。


120 名前:2.イケナイお遊び[1-3] 投稿日:2008/11/26(水) 23:15

しかし、千奈美はそんな事より、その女性の口から聞こえてきた言葉が気になった。

お礼。

少しイケナイ響きに感じられたが、逆に魅力的な響きにも感じられた千奈美。

悩んだのは一瞬だけだった。

どうせひとりだし。
この後、ここにずっと居ても仕方がないし。
変な事しそうなヒトには見えないし。
女のヒトだし。

そんな言葉を思い浮かべながら、千奈美は『いいですょ』と微笑んだのだった。
千奈美のその笑顔に、女性の表情が一気に崩れた。

「あー思った通りだ
 笑顔ちょー可愛ぃ!」

いえいえ。お姉さんの方が可愛いです、軽くココロの中で一言いいつつ、嬉しくなる千奈美。

その言葉は、千奈美がとてもスキな言葉だからである。

「よし!場所変えよう!」

そう言うと、その女性は、さっそくとばかりに千奈美の飲み終えたトレイを持ち、立ちあがった。

ステキな女性らしいスタイルが千奈美の目に飛び込む。
一瞬、恥ずかしげに視線を落とした千奈美。
そして、生まれて初めて声を掛けられた事もあり、
相手が女のヒトとはいえ、少しだけイケナイ事をしているようにも感じていた。

しかし、『くまぃちゃんのせいだもの』と気分を乗せると、
その女性と一緒に、日差しがとても気持ちのいい、お店の外へと出たのだった。






121 名前:ちなつ 投稿日:2008/11/26(水) 23:16
本日はここまででーす。
ちぃ組とあぃり組とかわり番こですね
では、失礼します。
122 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/11/27(木) 05:27
おー気になる展開w
123 名前:ちなつ 投稿日:2008/12/10(水) 21:13
>>122 名無飼育さん
ありがとうございます
気になる展開を維持できるように頑張りまーす
124 名前:2.イケナイお遊び[1-4] 投稿日:2008/12/10(水) 21:15

2.イケナイお遊び[1-4]

「ねっ、いーでしょ」
「うーん」

桃子からの提案に悩む佐紀。

それは、雅がお気に入りであるブランドショップに入り、
ぶらぶらとセッティングされている服を見ていた時だった。
突然、桃子に腕を引っ張られると、お店の外に連れ出された佐紀。

そして、桃子の口から出てきた言葉に悩まされる。

ここに来るまでの道すがら、佐紀は桃子、雅と一緒に歩いていたのだが、
ずっと考え込んでいる桃子のその様子に軽い不安感を覚えていた。

考え込んでいる時の桃子は、あまり良からぬ事に頭を巡らせている事が多いのだ。
すると、案の定、心配した通りの言葉が、桃子の口から聞かされたのだった。

しかし、桃子の口から出てきた言葉に、多少なりとも納得はしてしまった佐紀。

ただ、『じゃあそーしよっか』と素直に頷けないのは、
この中では一番年齢が上だからなのであろう。


125 名前:2.イケナイお遊び[1-4] 投稿日:2008/12/10(水) 21:15

確かに、佐紀も気付いていた。
そう、舞美と愛理のふたりの様子があからさまにおかしいという事に。

とにかく舞美。

桃子も含めた三人、たいてい行動を共にしているのだが、
舞美がこれほど落ち込んだ感情を見せる事はまずないのだ。

普段から舞美の表情では、笑顔がほとんどを占められていた。

どんな辛い時でも笑顔で乗り切っていくのが舞美であり、最大の魅力でもあった。
舞美に惹かれている後輩のほとんどが声を揃えるくらいである。

その舞美がこれだけ落ち込んだ表情になっているのは、本当に珍しい事なのだ。

そして、その原因が愛理であるという事も、簡単に分かった佐紀。

一方、その愛理の態度も本当に珍しいものだった。

日頃から、とても人当たりがよい女のコなのである。
その愛理があからさまにヒトを避けているという行動自体が珍しく、
これまで佐紀は見た事がなかった。

避ける愛理と、それに対して落ち込む舞美。

誰の目にも明らかなふたりの態度。
さすがに気付かないわけはないだろう。


126 名前:2.イケナイお遊び[1-4] 投稿日:2008/12/10(水) 21:15

「でもさ…」

とはいうものの、やはり桃子の言う事は荒療治に思えてしまう。

桃子の言葉を思い返した。

『ふたりをほったらかしにしちゃって、みんなで消えよう!』

まさに荒療治。
不安を覚える。

佐紀が心配している理由としてひとつだった。

考えたくないのだが、もし…

「ホントに避けてたら?」

佐紀の言葉に、桃子は一瞬呆気に取られたような表情を見せた。
しかし、次の瞬間には顔の前でぶんぶんと手を横に振る。
そして、『あーりえないね』と笑顔になる。

「じゃ、りさこに聞いてみる?」
「あ、うん…」

言うが早い桃子は、雅や愛理と一緒にいた梨沙子が少し会話から離れたのを見計らって、
ちょいちょいと肘をツツキ、小さな声で囁き、佐紀の元へと連れ出してきた。

不思議そうな表情をしている梨沙子。
キョトンとした表情で、ふたりの顔を交互に見比べる。

そんな梨沙子に対して、佐紀は表情を緩めつつ、
続けて少しだけ表情を引き締めると、小声で聞いた。

「あぃり、どーしたの?」


127 名前:2.イケナイお遊び[1-4] 投稿日:2008/12/10(水) 21:16

簡単な言葉だったが、梨沙子にとっては充分。
一瞬で言いたい事に気がついたのか、大きく『あぁ』と頷くと、呆れたように表情を緩めた。

「あぃりね
 大丈夫と思うよ。
 久しぶりに舞美に会ってちょっと緊張してるだけだと思う。
 今日、かーんなり楽しみにしてたから」
「あはっ、でしょー」

梨沙子の言葉に、桃子は勝ち誇たかのような笑顔を浮かべた。
そのまま、佐紀の肩をぽんぽんと叩く。

「でもさぁ」

納得できない佐紀。
少し考え込む。

「なになに?
 ふたりしてあぃりの事、心配?」

桃子に尋ねる梨沙子。
その瞳は興味津々といった感じに少し輝いていた。

「当たり前でしょ。
 まーあれだけまぃみへの態度がおかしいとねー
 気になるよ」
「あ、たぶん、あたしが色々と変な事言っちゃったのがマズかったかなって、少しだけ反省してる…
 意識かじょーだね」
「ん、なになに?」

桃子と佐紀の視線に梨沙子は気まずそうに視線を落とした。

「んー
 まぃみがスゴイ人気あるってね、言っちゃってさ。
 まぃみ派がみゃ派より多くなってるって話したし、
 ミスコンでグランプリ取るかもしれないって学校中で噂になってるって話までしちゃったんだょね」
「あーグランプリね。ありえるね。
 てか、中等部ではもうミスコンの話まででてるんだ」

梨沙子の話に相槌を打ちつつ、驚く佐紀。
しかし、隣の桃子はシタリ顔になって頷く。

「みたいなんだな、これが」

128 名前:2.イケナイお遊び[1-4] 投稿日:2008/12/10(水) 21:17

日頃から行動を共にしている桃子は、余計に実感していた。

校内を舞美と一緒に歩くと視線が凄いのだ。

高等部に上がってから少しは落ち着いたのだが、
今年の初め、中等部の卒業式直前の移動教室の時は特にひどく、
教室から顔を出して、舞美の姿を一目見ようとする下級生の女のコがホントに多かったのだ。

舞美が中祭グランプリを取ってから、桃子たちのクラスの時間割が下級生の間に出回ったのが原因。
ま、とはいえ、今のところ遠くから見るだけといった女のコが多いというレベルであり、
まだまだ雅みたいに、本人の教室にまで見に来る下級生の女のコはいないのだが。

ちなみに、日頃からよく一緒に行動している桃子への視線も羨望が交ったものが多く、
舞美には劣るものの、桃子まで軽く有名人になっているのだ。

それはもちろん、佐紀にも当てはまる事は言うまでもない。

「大学部の本命いないし、目立っちゃうんだな、これが」

そう言うと、大きく頷いた桃子。
梨沙子も続く。

「その話してから、なんだかあぃりが大人しくなっちゃって…
 まぃみの話をあまりしなくなっちゃって…」
「へぇ」

意外な顔をする佐紀は、『っていうか』と言うと、当の本人である愛理の方を振り返った。
いつの間にか茉麻と舞美も合流し、4人で雅の服を選んでいるその愛理。

「あぃり、知らなかったの?」

佐紀の言葉に、梨沙子は少し視線を斜め上、『ぁー』と考える。
代わりに桃子が口を開いた。

「うーん…
 中祭グランプリ取った時の文化祭は、パパさんの応援に行ってて、文化祭自体に来てなかったしね」

『そうそう』と梨沙子が頷き、続ける。

「帰ってきてから、グランプリ取ったよって教えてあげたけどさ、
 周りがまぃみの話で盛り上がっていたときも、
 キョトンとした表情で見てたから、実感が湧かなかったんじゃなぃのかなぁ?」
「あー
 あと、全国行ったときは、課外研修だったよねー?
 りさこ?」
「そうそう。
 そのせいで、あたしも応援行けなかったんだもん」

桃子の言葉に大きく梨沙子が頷くと、佐紀まで『そっかぁ』としみじみと頷いた。
中等部3年生の大応援団で舞美の応援に行った時の事を思い出した佐紀。
まだまだ舞美の人気も本格的になる前にも関わらず、地元開催だったらなのか、
下級生もたくさん応援に来ていたその日。

もしかしたら、その日から人気が出ていたのかもしれない。

ふたりの言葉に、納得表情の佐紀。

「自分だけの大スキなお姉さんが、いつのまにか学校全体の憧れの先輩になっちゃったって事かぁ」
「あー、それちょっとつらぃ」

佐紀の言葉に続き、桃子が大袈裟に溜息をついた。


129 名前:2.イケナイお遊び[1-4] 投稿日:2008/12/10(水) 21:17

「でさ」

佐紀が更に梨沙子に体を寄せる。

「ももがね、ふたりがあまりにもぎこちないからさ、見てられないって言うんだよね」
「あー」

梨沙子が桃子に視線を向けた。
少し気恥ずかし気に、視線を落とす桃子。

「だってさ、見ててホント分かり易くてさ」
「ま、確かに分かり易いね」

佐紀の相槌に『でしょー』と大袈裟に手をふるふるする桃子。

「もう、いらっいらってなるっ」
「いやー、ももー
 いらいらしないでー」

佐紀にほっぺをべちべち叩かれる。

「ぁ、それは冗談だけどさー」
「そういう風に言われると、ちょっと心配になるかな…
 確かに、あの表情…
 あぃりも話し掛け辛そうだなぁ…」

梨沙子がそう呟くと、三人は顔を見合わせて、ひとつ大きく溜息をついた。

そして、当事者である愛理と舞美を見る。

三人の視線の先で、愛理は普段より表情を曇らせていた。
今日の朝まで見せていた表情とは、まさに対照的な今の愛理のそれ。

やがて、雅を挟んで反対側にいる舞美に視線を向けた愛理。

横顔を見つめる。

そして、溜息。


130 名前:2.イケナイお遊び[1-4] 投稿日:2008/12/10(水) 21:18

「みた?」

佐紀が、桃子と梨沙子を見る。
梨沙子は隠しきれない笑みを浮かべ、嬉しそうに桃子の肩をぽんぽん。

「今のあぃり、ちょー可愛い!」
「意識してるっ」

桃子の声も上擦る。

「ぁ」

三人、顔見合わせた。

舞美が愛理の視線に気付き、顔を向けたのだった。
そして、頬を赤らめ一瞬で逸らされた愛理の視線。

『目、逸らしたね』

佐紀と梨沙子の声が重なる。

「かわいい…」
「ももの言い方、ヤラシイから」
「なにそれ!」

佐紀の細めた視線に、頬を膨らませた桃子。
しかし、その表情はどこか嬉しそうである。

それはやはり、愛理が舞美の事を意識している姿を垣間見れたからである。
それも、好意を感じられるその姿。

三人は再度顔を見合わせて頷いた。

「ももの言う通りしてみよっか?」






131 名前:ちなつ 投稿日:2008/12/10(水) 21:19
本日はここまででーす。
更新遅ぃ…がんばろ
132 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/12/13(土) 16:45
愛理も舞美も可愛いなぁw
133 名前:名無し 投稿日:2008/12/15(月) 23:13
ほんと、可愛いw
134 名前:ちなつ 投稿日:2008/12/17(水) 23:27
>>132 名無飼育さん
むふふ♪

>>133 名無しさん
現実のふたりもですねw

135 名前:2.イケナイお遊び[1-5] 投稿日:2008/12/17(水) 23:28

2.イケナイお遊び[1-5]

「うんうん。」

生真面目に頷く女性。

「そのくまぃチャンって幼馴染のコとお出かけだったのに、かぁ」

少し悲しげに眉を下げる。

「あーわかるわかる。
 しょっくだなぁ」
「はぁ」
「まぁ、そりゃそだょね」

お姉さんがやけに同情めいた感じでうんうんと頷く様子を見ながら、
千奈美は、なぜこのような展開になっているのだろうと疑問に感じていた。

いや、このような展開とは、単純にお話をしているだけの展開という事。

そう。
声を掛けられたという事は、それなりに遊ぶのだろうと思っていた。

それなのに、今のこの状態。
ただただお話がしたいだけではなかっただろうに。
これほどまったりと友達同士のような会話をしているこの状態。

結局、ふたりは渋谷の方に移動してきたのだが、ちょうどお昼時になった事もあり、
近くのちょっとおしゃれなイタリアンレストランに入って、
お昼ご飯に舌鼓を打っているのだった。

確かに奢ってあげるとは言ってくれていたのだが。

パスタを前にお姉さんと膝を突き合わせている千奈美。
そして、お口をもぐもぐとさせつつも、真剣に千奈美の愚痴を聞いてくれているお姉さん。

スプーンを使ってキレイにホークにパスタを巻きつけ、
ブラウンの髪の毛を耳元でおさえ、口元に持っていくその姿は、
『女のコに声を掛ける』という女のヒトに抱くイメージとは異なり、
とても上品さを感じるものだった。

ここに来るまで、お姉さんと話していた時に感じていた感想そのままである。

少々派手な外見からは見えない、とても女のコらしく可愛い性格。
妙なトコロで急に上がるテンション。
早くは回ってくれない口。
つまり微妙に舌っ足らず。

そんなこの女性を見ている内に、最初に感じた通り、
自分に似ているように感じていた千奈美であった。


136 名前:2.イケナイお遊び[1-5] 投稿日:2008/12/17(水) 23:28

「お姉さんもね、今日遊ぶ約束していた友達とは幼馴染なんだよね」

お姉さん。

この女性は出会った時からずっと自分の事をそう呼んでいた。

珍しいと感じながらも、そういえば名前を一度も聞いていなかった事を思い出した千奈美。

とは言え、何度か名前を聞く機会はあったものの、その度に話題を変えられたように感じていた。
あまり教えたくないようなお姉さんのその様子に、不思議に感じながらも、
かといって、何度も何度も名前を聞いても仕方がないと思った事もあり、
もう今では気にしないようにしていた。

ただ、困る事はなかった。
一対一の対話では、あまり主語も必要はないものである。

「ちぃチャンの幼馴染と一緒で、ひとつ年下のコなんだょね」

いつの間にか『ちぃチャン』と呼ばれていた千奈美。

最初は、苗字から『とくながチャン』とそのまま呼ばれていたのだが、
友達から『ちぃ』って呼ばれている事を話してから、
『ちぃチャン』なんて呼ばれるようになっていた。

その呼び方の変化は、少し残念にも感じていた。
苗字に『チャン』付けで呼ばれる事が少しだけ嬉しかったからである。

それは、千奈美が友理奈を呼ぶときにも、苗字に『チャン』付けだからという、
ある意味、至極単純明快な解答と言えよう。


137 名前:2.イケナイお遊び[1-5] 投稿日:2008/12/17(水) 23:29

「性格はとってもカッコイイんだけど、お料理なんかしっかりとできて、女のコらしいの」

そう言うと少し自慢げに目を細めたお姉さん。
そのお姉さんの幼馴染の話に、まさに友理奈を思い浮かべた千奈美。
そして、自慢話に、千奈美も少し自慢したくなる。

「くまぃチャンも、そーなんですよ。
 とっても大人っぽくてぇ。
 モデルみたぃにすらっとしててカッコイイんです」
「あら、そうなの?
 お姉さんの幼馴染だってとってもカッコイイの。
 女のコにも人気あるのよ」

なんだか自慢話を被せられ、悔しい。

「くまぃチャンも、ちょー女のコに人気あるんです!」

少し『人気』の言葉に力を入れる。

「うちのガッコー、文化祭でミスコンあるんですけど、
 そのミスコンで、中1なのに準グランプリ取ったんですよっ
 去年だって、3位だったんです!」
「あら、お姉さんの幼馴染もそうなの!
 ガッコーのミスコンでグランプリ取った事あるの」

いつの間にか、食べる手を止めてのお互い自分の幼馴染の自慢話。

そして、自分の話をせずに、幼馴染の話ばっかりになっているそんな姿にふと気が付いたふたり。
一瞬顔を見合わせると、急におかしく感じられたのか、自然と吹き出していた。


138 名前:2.イケナイお遊び[1-5] 投稿日:2008/12/17(水) 23:29

「やー
 要は、ふたりの幼馴染はスゴイって事だねぇ」

お姉さんの笑いながら話す言葉に、千奈美もうんうんと頷く。

「お互い今日はフラれちゃたんですけどね」
「だねー」

そう言うと、お姉さんはふっと息を吐き出した。
そして、何かを思ったのか、『いいなぁ』としみじみと呟いた。

「何がですか?」
「んー?
 んとね」

視線を落とすと、意味もなくホークを手の平の中でくるくる回す。

「くまぃチャンといっつも一緒なんでしょ?」
「あ、はぁ。」

学校の行き帰りから、所属する委員会に部活動まで、
ほとんど一緒に行動している事を、確かに千奈美は話していた。

ある意味、友理奈との関係で、幼馴染という以外に一番自慢できる関係である。

幼馴染とはいえ、中学3年生になっても、これ程一緒に行動している事は珍しいだろう。

千奈美の友達の中では、雅と梨沙子が、家がご近所同士という事から、幼馴染にあたるが、
千奈美や友理奈程、行動は共にしていない。
学年が二つも違うという原因が大きいのであろう。
学校の行き帰りと、お昼にみんなでご飯を食べる時くらいなのである。

やはり、千奈美と友理奈の関係は、普通の幼馴染以上の関係に感じられるもの。

そのため、友理奈を紹介する際には、常に一緒に行動している事が真っ先に話に出す内容であり、
お姉さんに話した時にも、口にしていたのだ。


139 名前:2.イケナイお遊び[1-5] 投稿日:2008/12/17(水) 23:30

「お姉さんの方は、そこまで一緒にいれなかったからなぁ」
「そーなんですか?」
「うーん。
 お昼ご飯の時と、生徒会の時くらいかなぁ。
 あー、でも…。
 お昼はほとんど一緒だったんだけど、生徒会はあんまり来てくれなかったからなぁ」

そう言って軽く肩を竦めた。

「誘って、一緒に入ってくれたんだけど、ああいうのスキじゃなかったんだね」
「あたしもスキじゃないんでキモチ分かるかも」
「でも、ちぃチャンは真面目に参加してるんでしょ?」
「はぁ」
「くまぃチャンの事、スキだから?」

お姉さんから聞こえてきた言葉で頬が熱を帯びる千奈美。
ふたりっきりでのお買い物に誘われてから、妙に友理奈の事を意識してしまい、
とても照れてしまう言葉に感じられた。

それまでは特に気にせずに使えていた言葉なのに。

『スキ』

簡単に使えるようで、簡単には使えない言葉。
不思議な言葉。

『スキ』

その言葉に間違いはない。
確実に友理奈の事はスキな方に入る。

かと言って、その『スキ』は、千奈美の他の友達に対して持っている感情と違いはあるのだろうか。
ふと考える。

他の友達とは、もちろん初等部の頃からの友達となる雅や茉麻、
舞美や佐紀、桃子、梨沙子や愛理といったメンバーの事である。

特に雅との付き合いはとても長い。
初等部1年生からの付き合いとなり、千奈美の友達の中では一番長い友理奈の次に長いのだ。
ある意味、雅だって充分幼馴染といっていいであろう。
他のメンバーだって、初等部からの付き合いになると、それだけで幼馴染になるだろう。

そして、雅は一緒にいて本当に落ち着ける親友であり、
ある意味『いる事が当たり前の存在』といってよいだろう。

友理奈も同様に『いる事が当たり前の存在』なのだが、
少し違い、『いないと寂しい』という感情が生まれる親友である。

そうなると、単純に同じ『スキ』で囲ってしまってはよくないように感じられてるもの。

特別な『スキ』?


140 名前:2.イケナイお遊び[1-5] 投稿日:2008/12/17(水) 23:31

「スキじゃないの?」
「そゆ訳じゃないです」

お姉さんの言葉に、簡単に否定の言葉が口から出てきた。
そんな千奈美の慌てた表情に、お姉さんは優しげに微笑む。

「なら、スキじゃん」
「うーん…」

『スキ』

改めて口で呟くと、やはり照れくささを感じる言葉である。
頬が赤くなるのがわかった千奈美。
お姉さんの優しげな視線に、恥ずかしさが二割増。
イケナイ響きも三割増。

「スキならスキでいいの。
 毎日伝えるだけで、シアワセになれる言葉なんだからね。」

シアワセになれる言葉?

「ちぃチャンの年齢ならまだまだ、だいじょーぶ。
 お姉さんの年齢くらいになっちゃうとね、
 素直に『スキ』なんて言えなくなっちゃうんだから。
 ホントにお互いに愛し合っているヒト同士だけの特権だね」

そして、少し悲しげに微笑んだ。

「『スキ』って言葉が色々と繋がっちゃって、重たくもなっちゃうんだから」

重たい?

「駆け引きまでしちゃうしねぇ」

駆け引き?

「ちぃチャンは…
 今はまだ、友達にだって素直に『スキ』は言えるでしょ?」

雅、茉麻、舞美、佐紀、桃子、梨沙子、愛理。
みんなの顔を思い浮かべ、『スキ』という言葉が簡単に繋がった。

メール。
プリクラ。
手紙。

どんなトコロにでも、いくらでも書けてしまう言葉。
そして、相手との繋がりを再認識できる魔法の言葉。

「はぃ」
「もっとオトナになっちゃうと、友達にだって簡単に言えなくなるからね」

お姉さんの話している言葉の意味が、いまいち理解できない千奈美。
『スキ』という言葉が重たくなる意味が。

「『スキ』って言葉が、大きくなるの」
「…?」

不思議そうに首をかしげる。

「たった一言なんだけど、強く想えば想う程、
 相手のヒトに大きなオモシになっちゃう事もあるからね」
「んー」
「ちぃチャンにはまだ分からないと思うけど…
 素直に『スキ』って言葉を伝えられる内は、シアワセだと思うょ」

なんだか不思議なお話を聞いている感覚を覚えていた千奈美であった。
あまりよく理解できない内容であり、全く実感がわかない内容。

ただひとつ分かる事があった。

それは、今のお話は、お姉さんの経験談なのだろうという事。
感覚的に分かった千奈美であった。






141 名前:ちなつ 投稿日:2008/12/17(水) 23:33
本日はここまででーす。
がんばれ!週一更新!
142 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:01

2.イケナイお遊び[1-6]

「大丈夫かなぁ」

視線の先の光景に、とても不安げに黒目を揺らせている佐紀。
時々唸っては、クチビルをヘの字にさせている。

そんな佐紀は、これまでショッピングを楽しんでいたお店から少し離れた場所にある曲がり角から、
少しだけ顔を覗かせていた。

まるで誰かを遠くから見守っているそんな佐紀の視線。

そう。
舞美を桃子が、愛理を梨沙子が別のお店に連れ出し、
その機会を見て、トイレに行くフリをして、そのままみんなで消えたのだ。
つまり、桃子の提案を、早速行動に移したという事。

佐紀と桃子のお姉さんチームは、とりあえず比較的近くでの見守り役。
そして、年下チームの雅と茉麻、梨沙子は、お姉さんチームのふたりが見失った時の為、
離れて待機中である。

そんなお姉さんチームである佐紀の視線の先では、
少し微妙に距離をあけて立っている愛理と舞美の姿があった。

微妙な距離のふたり。

「うーん…」

そのふたりの距離に、自然と佐紀の眉間にシワが寄ってしまう。

「なに唸ってるの?」

そして、難しい顔をさせた佐紀のすぐ下、中腰で佐紀同様に顔だけ覗かせ、
そんな言葉を発したのは桃子だった。

佐紀の言葉に苦笑いを浮かべると、『だぁーいじょうぶだって!』と手をふりふり。

「ほら、あぃり嬉しそうじゃない?」

むふふと可愛らしい笑みを浮かべる。


143 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:02

「嬉しそう…ねぇ」

とても楽しそうな桃子とは正反対の表情である佐紀は、そう呟くと、少し溜息。

そう。
佐紀の目には、どうも桃子が見えているようには見えなかった。
困った時に見せる特徴的な眉尻を下げている今の愛理。

それはまさに困っている表情では?

確かに、急にみんながいなくなった今の状況は、
困っている表情をしている方が普通と言っていいのだろうが、
そう考えたとしてもさすがに不安は拭えない。

とはいうものの、少しはほっとする瞬間もあった。

時折、舞美と顔を見合わせては何かを話している時に見せる愛理のその表情は、
昨年まで舞美の前で見せていたとても嬉しそうな表情そのものでもあるのだ。

そして、微笑みも見せる愛理。

「ほら!
 今のって、いつものあぃりじゃん」

愛理の見せた笑顔に、桃子は嬉しそうに頷いた。

確かに。
そんな表情が垣間見れると、自然と佐紀も安心感を覚える。


144 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:02

「あれなら大丈夫かなぁ」
「あっ」

佐紀が桃子の方、つまり下に顔を向けた瞬間、桃子が慌てたように顔をひっこめた。

「!?」

続いて、桃子にぐいっと引っ張られた佐紀も、慌てて顔を隠す。

「こっち見た?」
「まぃみがね」

そっと桃子が顔を覗かせる。

「気付かれた?」
「うーん
 たぶん、大丈夫かなぁ。
 気づいてないっぽい?」

少し胸を撫で下ろす仕草をする桃子。
そして、携帯電話を取り出すと、ぱかっと開き、佐紀の方を見た。

「りさこたちはどこかわかる?」
「わかんなぃ」

首をふりふりする佐紀。

「とりあえずはいつもの出口の近くで待機しとこかなぁって話はしてたね」
「ばれやすくない?」
「たぶん大丈夫、だってさ。」
「By、りさこ?」
「みゃ」
「…なら大丈夫かぁ」

桃子のその言葉に目を細めた佐紀。

「りさこ聞いたら怒るよ」

メールを打っている桃子は、にゃははと妙な声をあげた。

「まぁまぁ」

手をふりふりする。
と、その時『あっ』と口元を押さえた桃子。

慌てて佐紀の服の裾を握った。


145 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:03

「まぃみーから電話!」

桃子の言葉に、慌てる佐紀。
再びお店の角から顔を少しだけ出した。

ところが、『あっ』と高い声が出る。
目の前から舞美と愛理の姿が消えていたのだった。

「いないっ!」
「どっかいった?」

桃子も慌てて顔を出す。

「下に下りたのかな?」

佐紀の言葉に、桃子も頷くと、携帯電話を佐紀に見せた。

相変わらず、着信を示すバイブレーションで揺れ、
ピンク色のイルミネーションが点滅している携帯電話。

「でる?」
「やー、でない方がいいよね…」

佐紀はそう言うと、歩き出した。

「とりあえず、うちらも下に行こうょ。
 追いかけなきゃ」
「うん」

桃子も頷き、歩きだす。
しばらくして着信が途切れると、今度は梨沙子の電話番号を探す。

先を歩く佐紀は、エスカレーターの近くまでくると、手摺りから下の階を覗き込んだ。
すると、キョロキョロと辺りを見回しながらエスカレーターを下っている愛理の後ろ姿が目に入ってきた。
もちろん前には舞美がいる。

とりあえず一安心と、胸を撫で下ろした佐紀。

「いたょ」

振り返り、桃子に向って指で丸を作る。
携帯電話を耳に当てている桃子が、分かったとにっこり微笑んだのを確認すると、
そのまま『先に行くね』と言い、後を追う為、エスカレーターに足をかけた。

一階分の間隔はあける。


146 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:03

愛理の前に舞美。

時折、愛理の方を振り返り、二言三言声を掛けている舞美。
しかし、すぐに前を向いてしまう。

その表情は、笑顔なのだが、普段の舞美のものからは程遠く、
これまたこれまで見た事がないものだった。

やはり、不安復活。

あまり愛理の顔を見て話せないようである。

どうやら、ふたりっきりになってからは、舞美の方も一段と意識してしまっているようだった。

「まぃみも意識しちゃってるね」

いつの間にか電話を終えた桃子が、手を腰に、難しい表情で佐紀のすぐ後ろにいた。
並んで舞美と愛理を追い掛ける。

「だね」
「あぃりも余計にぎこちなくなってる」

佐紀の言葉に、桃子も相槌を打つと、自分の目を指刺し、クチビルを突き出す。

「まぃみがまともに目見てくれないぽいしねー」
「うん」


147 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:03

頷いた佐紀は、軽く溜息をつくと、何かを思い出したのか、
『そだそだ』と桃子を振り返った。

「りさこたちドコって?」
「あー、キャプテンが言ったトコだったよ」
「大丈夫かなぁ」
「一応そっちに向かってるかも、って伝えたから」

桃子の言葉に頷いた佐紀は、視線を再び舞美と愛理の方に向けた。

いつの間にか、2階まで降りてきていたふたり。
前の二人は、相変わらず会話はなさそうである。

「話さないねぇ」

ぼそっと呟いた佐紀の言葉に、桃子は頷くと首を傾げた。

「気まずそう…
 何か言ったのかな?」
「んー?
 あぃりが?」
「んー、そ」

肯定はしてみたものの、かといってどのような言葉を言ったら舞美が落ち込むのか、
想像がつかなかった桃子。

「って言ってもなぁ」

言ってから、ずぐに否定をする。
今度は考え込む。

「逆に何も話してくれないから、じゃないかなぁ」
「あー、そか…」

軽く頷く桃子。
しかし、すぐに難しい顔をさせた。

「そかなぁ」






148 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:04

「ふたりが下りてくるって!」

携帯電話を閉じながら、梨沙子が慌てて雅と茉麻の方を振り返った。

「くるの?」

梨沙子の言葉に、雅は茉麻と繋いで遊んでいたゲーム機の電源を急いで切る。

「ちょっと!」

大きな声を上げた茉麻。

「ん?」
「ズルイっ!」

抗議の視線を雅に投げかける。

しかし、雅はそんな茉麻の冷たい視線を受け流すと、
アタフタとさっき買ったショートパンツが入ったショップの袋に、
ゲーム機を入れた。

「負けそうだったからでしょっ」

茉麻が攻撃を続ける。

「あーぁ」

続けて溜息。
すると、今度は雅がクチビルを突き出した。

「ちーがぅよ!
 今はまぃみとあぃりでしょ」
「うー」

納得がいかない茉麻は『勝てそうだったのに』と恨めしげに目を細めた。
しぶしぶといった表情で、雅同様、ゲーム機を片づける。


149 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:04

「あ、まぃみからももに電話あったけど、シカトしたからだってさ」
「まぁ、そりゃそうだよね」

梨沙子の言葉に、茉麻は憮然とした表情で頷く。

まだまだゲームを途中で切られた事を根に持っている事がありありと分かるその様子に、
苦笑いを浮かべた雅は、『後で続きしてあげるから』と宥め、辺りを見回した。

入口から比較的近い今いる場所。
さすがにバレ易いであろう。

雅は、梨沙子の手を取ると茉麻の方を向いた。

「あっちの方がバレなさそうだから、あっちに…」

と、そこまで言って、突然言葉に詰まった雅。

目が一点で固まる。
茉麻の右側、遠くを見たまま、少し目を細める。

「…?」

不思議そうに首を傾げた茉麻は、雅の視線の先であろう方向に振り返った。
梨沙子も首をかしげ、雅が目を細める視線の先を見る。

そっちの方向は、
先程まで、雅たちが入っていた大きなショッピングモールの正面出入り口の方向である。

今、雅たちは1階の西出口にあたる場所で待っているのだが、
正面出入り口はだいたいそこから100mほど離れた場所となる。

そして、三人の視線の先では、その正面出入り口から出てきて、
そのまままっすぐ北の方に歩いている女のコがいた。

横断歩道が赤の為、立ち止まる。


150 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:05

「ちぃ?」

その女のコを見て、真っ先に声を出したのは、茉麻だった。
続いて、梨沙子も『ちぃだよっ』と大きく声を上げた。

「やっぱり!?」

ふたりの言葉で、雅もやっと確信。

「ちぃっぽいと思ったんだよねっ」

少し目が悪い雅は、はっきりと顔が分からなかったのだが、
雰囲気だけで千奈美ではないかと思ったのだった。

幼馴染に近い存在ともなると、シルエットとその雰囲気だけわかってしまうもの。
千奈美だと確信はなかったが、千奈美のような気がしたのだった。

しかし。

「だれ?」

雅の疑問に、梨沙子は意味が分からなかったのか、『だから、ちぃ…』と言いかけ、
質問の意味に気がついたのか、もう一度さっきの方向に視線を向けた。

そして、千奈美をまじまじと見る。

すると、千奈美が隣に立っている女のヒトと話している姿が目に入ってきた。
さっきは、隣にいた女のヒトは特に気にしていなかったが、
今度ははっきりとわかった。

話している事から、確実に知り合いである。
ところが、その女のヒトを見て、梨沙子も少し目を細めた。

梨沙子が目を細めた仕草は『見えないから』という訳ではなく、
単純に誰だろうと頭の記憶の糸を手繰り寄せようとした為。

「…だれ?」

しかし、簡単には手繰り寄せられそうになかった。
ぐいっと引っ張っても無理のよう。
諦めたのか、茉麻の方を見る。


151 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:05

「わかんない」

茉麻も首を傾げる。

「知らないコ?」

雅の質問に、ふたりは顔を見合わせ頷いた。

「親戚のヒトかな?」

その質問にも、首を横に振り、分からない事をアピールする茉麻と梨沙子。

「見たことないよ」

茉麻の言葉に、雅が難しい顔をさせる。

雅もそうなのだが、初等部からの付き合いとなる茉麻も、千奈美の交遊範囲はほとんど知っている。
たいていの親戚のヒトも知っているのだから、茉麻が知らないとなると、
親戚や普段よく遊ぶ友達ではなく、更に同じ学校に通っているヒトというわけでもないのだろう。

そんな二人の『分からない』という言葉を聞くと、
梨沙子や茉麻とは正反対となる難しい顔をさせた雅。

頭の中で、色々な思考が駆け巡る。
どうも納得ができない表情。

そう。
雅は、今日の千奈美の予定を知っているのだ。
それだけに、今の千奈美との遭遇は、腑に落ちないのである。

千奈美は友理奈とお買い物をしているはずなのに、と。
なぜ知らない女のヒトと一緒に、と。


152 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:05

しばらく考えた後、雅は携帯電話を取り出すと、
電話帳から千奈美の名前を探し出し、通話ボタンを押した。

梨沙子と茉麻の不思議そうに首傾げている様子をチラリと見て、
千奈美の方に視線を向ける。

やがて、携帯電話からコール音が聞こえてきた。
その音から少ししてから、千奈美が携帯電話を手にしている姿が目に入ってくる。

友理奈の名前を出してみよう。
そう思った雅。
少し緊張する。

しかし、雅の視線の先、少しだけ携帯電話の画面を見た千奈美は、
そのまま携帯電話を再びしまうと、隣の女のヒトとの会話に戻ったのだった。

驚きを隠せない雅。

耳では、相変わらずコール音だけが聞こえている。

雅の友達の中でも、連絡がとても付きやすい千奈美は、
これまで携帯電話に出なかったという事がほとんどなかったのだ。

その千奈美が。

目の前で着信を無視されると、
さすがに自分にも言えないようなイケナイ事をしているのでは、と勘繰ってしまうもの。

やがて信号が青に変わり、歩き出した千奈美。


153 名前:2.イケナイお遊び[1-6] 投稿日:2008/12/26(金) 23:06

その途端、雅は携帯電話を切ると、梨沙子と茉麻の方を振り返り言い放った。

「ついていく!」
「え?」

茉麻と梨沙子の声が重なる。

「ちょっ…」

梨沙子の言葉を聞く間もなく、雅は歩き出そうとした。
と、一瞬立ち止まり振り返る。

「キャプテンには後で合流するからって伝えててねっ」

それだけ言い、手をバイバイと振り、歩き出した雅。

そんな雅を呆気に取られたような表情で見ていた梨沙子だったが、慌てて茉麻の方を見る。

そして、『あたしも付いて行くっ!』と宣言すると、
『あぃりたちの事よろしく』と言い残し、雅を追い掛けたのだった。

「え?」

残された茉麻。

「ぇ…あたしも行きたい…んだけど…」






154 名前:ちなつ 投稿日:2008/12/26(金) 23:09








155 名前:ちなつ 投稿日:2008/12/26(金) 23:10








156 名前:ちなつ 投稿日:2008/12/26(金) 23:10
本日はここまででーす。
って、今年はここまでです。。。。
読んで頂いた方、ありがとうございました。
また来年も頑張りたぃです。

ベリみんなの本当の年齢と2年は離れちゃうとさすがに、、、
なので、4月までにはみんな一学年上げたいですねw
目標。。。


157 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/04(日) 00:54
次回の展開が楽しみです
158 名前:ちなつ 投稿日:2009/01/08(木) 23:22
>>157 名無飼育さん
ありがとうございます。
のろのろ更新で申し訳ないです。。。。
159 名前:2.イケナイお遊び[1-7.] 投稿日:2009/01/08(木) 23:23

2.イケナイお遊び[1-7.]

「ホントにいいんですか?」

驚きで声が裏返ってしまった千奈美。
自分の右手を少し高い位置に持ってきて、まじまじと見つめる。

その自分の右手の小指に輝いているピンキーリングを。

ピンク色のピンキーリング。
中心に小さなハート型をしたガーネットをあしらえ、
とても可愛らしいさをアピールしている。

生まれて初めて自分の手で輝いているその姿に、自然とドキドキ、胸が高鳴る。

これまで千奈美は、ピンキーリングというものを買った事がなかった。

いや、そもそもリングというモノ自体買った事がなかったのだ。

千奈美の友達である友理奈や雅といったメンバーも、
リング系といったものでお洒落を飾らない事もあり、
千奈美も付けた事がなかった。
それに、少々値もはってしまう事から、
わざわざお買い物の合間に見に行く事もなかったのだ。

どちらかといえば、服を中心に見てまわるのが、千奈美のお買い物ルート。

そんなこれまでつけた事もなかったピンキーリングが、
今、千奈美の手の中で輝いている。

とても魅力的な輝き。

まさにそこに埋め込まれているガーネットの輝きと同じ魅力的なそれが、
千奈美の心を鷲掴みにする。


160 名前:2.イケナイお遊び[1-7.] 投稿日:2009/01/08(木) 23:23

「全然構わないわょ」

にっこりと微笑んだお姉さん。
今日何度となく見せられた笑顔に、自然と千奈美の表情も緩む。

それは、申し訳ない気持ちを覚え、千奈美が少し困った表情を見せた時に、
安心させる為に見せてくれる笑顔であり、
その笑顔の度、安心感と共に『ありがとうございます』という言葉を口にしていた千奈美。

ご飯を奢って貰った時にはもちろん。
お姉さんのお買い物に付き合っていて、カットソーを買って貰ったその時も。

そして、今は、たまたま通り掛かったリングショップの前で、である。

これまでリング系の物を一度も買った事がないという話をしたら、
『つけてみたら』と言われ、ちょっとつけるくらいならと、
一番可愛いらしく、目が惹かれたピンキーリングを小指につけてみたのだ。

すると『似合う似合う』、『可愛い』と言われ、自然と表情が緩んでしまっていた千奈美。

そんな千奈美を見たお姉さんの口から、
嬉しそうに『それくらいなら、買ってあげるよ』と、
ビックリするような言葉が聞こえてきたのだった。

少し値段も高くなるこのピンキーリング。
まさか。
不思議そうな顔をしている千奈美に向って、お姉さんは千奈美の手を取った。

「…っ!」
「お姉さん、ちぃチャンが気に入ったんだもの」

そう言うと、ピンキーリングがつけられた小指を優しく撫ぜる。
そして、さっきまでの優しげな目が、とても魅惑的で怪しげなものへとなっていったのだった。






161 名前:2.イケナイお遊び[1-7.] 投稿日:2009/01/08(木) 23:23

「ちぃってリングに興味なかったのに…」

雅が不思議そうに首を傾げ呟く。

大きなショッピングモールの中を楽しげに歩いているヒトとは正反対の表情をした雅の視線は、
吹き抜けになっている空間を抜けた向かい側のリング専門ショップの店内に向けられていた。
その視線の先では、もちろん千奈美と知らないお姉さんのふたりの姿。

千奈美は、自分の指にリングをフィッティングしては、お姉さんに見せ、
そんな千奈美を、お姉さんがとても嬉しそうに見ている。

ふたりの姿は、知らないヒトが見たら、到底他人同士とは見えないくらい、
むしろとても仲の良い姉妹と言って良いだろう。

「やっぱり親戚のヒトじゃないの?」

目の前のふたりを見て、そのまま思い浮かんだ言葉を口にした梨沙子。

「でも…見た事ないし…」

すぐに梨沙子の言葉を否定した雅は、相変わらず難しい顔をさせ、クチビルを突き出す。

あまり納得していないその表情に、梨沙子は小さくため息をついた。
そして、雅と繋いでいる手を前後に軽く振る。

ふたりで千奈美とお姉さんの後をつけ始めてから、かれこれ2時間が経過していた。
さすがに疲れてくる。

とても仲の良さそうなふたりなのだから、千奈美の親戚のヒトだろう。
梨沙子の頭の中では、その結論になり始めていただけに、少しつまらなくもなる。


162 名前:2.イケナイお遊び[1-7.] 投稿日:2009/01/08(木) 23:24

「何話してるんだろ」

そんな言葉が聞こえてくると、少し心配そうな雅の横顔をチラリ。
やがて、雅が自分の視線に気付かない事に、再びため息をつき、視線を足元へ。
少し面白くない表情を浮かべる。

雅の頭の中は、今は千奈美で独占されているだけに仕方がないのだが、
それでも少しくらい視線を向けて欲しいと思って自然と出ていた仕草だった。

しかし、最近はよくでる仕草でもあった。
なんで見てくれなくなったんだろ?
その言葉と共に。

つい数年前までは、あまり気にした事ではなかった事。

常に一緒にいるふたりにとって、話す対象というのが自然とお互いである事からか、
あまりお互いの顔や目を見て話すという事も、少なかったのだ。

でも、最近は違う。

いつの頃から?
雅が自分の目を見て話してくれない事を気にし始めていたのは。

いつの頃から?
そのキレイな横顔を一方的に見てばかりになっていたのは。


163 名前:2.イケナイお遊び[1-7.] 投稿日:2009/01/08(木) 23:24

長い睫毛と大きな瞳、日本人離れしたその横顔。
雅の事は、素直にキレイと感じる。

これまでずっとそんな雅を見てきたが、
最近はビックリするくらいにキレイになったと思っている。

それに伴って、雅の人気もますます出てきている。

いつの間にかファンクラブというモノまででき、
そして、それが一因とも言えるだろう、
いつの間にか雅との幼馴染の関係にも『遠慮』というモノが生まれていた。

これは、雅の人気が大きくなり、毎日のように級友に羨ましいと言われ始めた頃からだろう。
級友への遠慮から、雅との関係にも、徐々に『遠慮』というモノが入ってしまっていたのだった。

やがて、いつの間にか、周りの級友同様、
自分も雅に対して羨望が混じった視線を投げ掛けていたのだった。

そこまで考え、ふと思う。
もしかして愛理も?

言っては、すぐに首を振る梨沙子。
愛理と舞美の関係は、自分たちとの関係とは全く違うと思う。

一方通行といってもよい梨沙子から雅への視線とは違い、
ある意味両想いといってもよい愛理と舞美の視線。

いつでもお互いの顔を見て笑い合えていたふたり。
素直に羨ましいと感じていた。

今日は久しぶりだから、少し意識しているだけなのだから。
お互い一度話せば、昨年みたいな関係になるはず。

梨沙子は、そう思うと、やはり羨ましくなった。

自分も見て欲しい。
しっかりと目を。

自分も見たい。
そのとてもキレイな顔を。
いつの間にか自分とは違う顔立ちになっていた雅を。

似てる似てると言われていた頃がとても懐かしく感じる。

雅が初等部の高学年になるくらいまでは、ふたりはとても似ていたのだった。
互いの両親からは『ホントの姉妹みたい』と言われ育ってきたふたり。

梨沙子はその言葉がとてもスキだった。

いつも言われてきた言葉なのだが、言われる度に、
雅との強い繋がりを感じる事ができたからである。

本当の姉妹ではないのに、似ているという。


164 名前:2.イケナイお遊び[1-7.] 投稿日:2009/01/08(木) 23:25

『それほど長く一緒って事じゃない?』

いつか千奈美に言われた言葉である。
千奈美いわく、『夫婦ってずっと一緒にいると似てくるって言うみたいだょ』。
その言葉は、千奈美の両親が雅と梨沙子のふたりの事を見て言った言葉らしい。

とは言っても、幼馴染のふたりがとても似ている事が羨ましいという事を、
千奈美が両親に話した時に、出てきた言葉なのだ。

そう。
千奈美は、自分自身にも当てはめていた。
雅と梨沙子の関係と同じく、千奈美と友理奈の関係。
同じくらい長いふたりの幼馴染の関係。

そして、とても似ていて姉妹のような雅と梨沙子とは対照的に、
小さな頃から似ていると言われた事がなかった千奈美と友理奈。

その事に対して羨ましいと言っていた千奈美の言葉をふと思い出した梨沙子。

とは言っても、当然の成り行きと言えよう、いつの頃からか、違う顔立ちになっていた雅と梨沙子。
今では、共通している事といったら、日本人離れした顔立ちといった事くらいだろう。

そして、ふたりの顔立ちが離れる毎に、雅の人気にも拍車が掛ってきたような気がする。

どんどん大人びたカッコよくなっていく雅と、
いつまでたっても子供のように幼い梨沙子。

いつか佐紀に話した事があった。

雅があまりにもキレイな顔立ちになっていくのに、自分は、と。

そんな梨沙子の言葉に、佐紀は笑いながら、
『まだ小学6年生なのだから当たり前』という言葉で答えてくれたが、
梨沙子の『みゃは6年生の頃にはキレイだった』の言葉には、
妙に納得顔になってしまっていた。

その佐紀の表情には、少し落ち込んだ梨沙子。

しかし、そんな梨沙子に対して、佐紀は『オトナだなぁりさこは』と笑い、
『りさこはりさこで可愛いから、あたしはスキだょ』と言いながら、
ぎゅと抱き締めてくれたのだった。

とても嬉しかった事を、今でも覚えている。


165 名前:2.イケナイお遊び[1-7.] 投稿日:2009/01/08(木) 23:25

「何考えてるんだろ」

突然聞こえてきた言葉に、慌てて顔を上げる梨沙子。
まさに今の自分に向けられた言葉に感じたのだが、雅の視線は自分を見ていなかった。

先程と同じく、千奈美である。

雅の視線の先を見ると、お姉さんが千奈美の手を取り、
顔を近付け話している姿が目に入ってきた。

そのイケナイ光景に、思わず顔に熱を帯びる梨沙子。
視線を逸らしてしまいそうになる。

お姉さんの瞳は、先ほどまでとは違い、とてもオトナのように艶めかしいものになり、
手を取られている千奈美の頬は紅色に染まっていた。

「アヤシイよ。あのヒト」

険しい表情をさせ、雅が少し目を細める。

やがて、お姉さんは千奈美の指からリングを外すと、ショップのヒトに手渡す。
そして、二言三言話した後、千奈美の方を見て、にっこりと微笑んだ。

しばらく経った後、ショップのヒトが奥から袋を手に出てくると、千奈美に手渡した。
続いてお姉さんからお金を受け取る。

お姉さんのやり取りをみながらとても嬉しそうな千奈美のその表情だが、
どこか申し訳なさそうな部分も見受けられた。


166 名前:2.イケナイお遊び[1-7.] 投稿日:2009/01/08(木) 23:26

「買って貰ったんだ」

梨沙子の言葉に、雅は『みたぃだね』と頷いた。
そのまま、ショップから出て行くふたりをじっと見つめる。

後ろ姿まで見送ると、小さくため息をついた。

「ホントに知らないヒト?」

改めて尋ねてくる雅に対して、梨沙子は頷いた。

「近くで見てみたいなぁ」

そう呟き、再びふたりを追って歩き始めた雅に手を引かれると、
梨沙子も足を動かす。

「大丈夫かなぁ」

雅の言葉に視線を向ける。

「何が?」

聞いてはみたものの、雅の言葉の意味が簡単に分かった梨沙子。
一応、相槌といった代わり。

「あのヒト、アヤシイもん」

梨沙子が思った通りの言葉が、雅の口から聞こえてきた。

先程の千奈美の手を取っていたお姉さんの表情が目に浮かぶ。
とてもイケナイお姉さんの瞳が。






167 名前:2.イケナイお遊び[1-7.] 投稿日:2009/01/08(木) 23:27








168 名前:ちなつ 投稿日:2009/01/08(木) 23:28
本日はここまでです。
それでは、失礼します。
169 名前:85年組・・・ 投稿日:2009/01/20(火) 04:49
目が離せなくなってきました(>_<)

最近、ベリキューにも興味をもちはじめました(笑)
170 名前:ちなつ 投稿日:2009/01/27(火) 23:11
>>169 85年組・・・さん
ありがとうございます。
千奈美に、あたしも最近なんです。。。
去年のべりきゅの合コンから興味を持ち始めましたw(DVD見て悶えてます)
ので、みんなそれぞれの呼び方に不安ありです(苦笑)
171 名前:2.イケナイお遊び[1-8.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:12

2.イケナイお遊び[1-8.]

暖かい日差しがとても気持ち良い今日の天気。
自然と晴れ渡った青空を見上げる舞美。

普段なら、渋谷の街を歩く時は、少し足早に歩いてしまうのだが、
今日ばかりは街の流れに逆らって、少しゆったりと歩いてしまうくらいである。

自分のすぐ後ろを歩く幼馴染に気を使いながら。

幼馴染?

その言葉を、ふと不安を感じてしまう。
本当に幼馴染と自信を持っては言えるのかな、と。

歩く時ですら、手を繋いでくれないのだから、と。
前回会った時とは全く違う態度に、不安しか生まれない。

さらに、幼馴染という関係だって。

自分の周りには、幼馴染という関係を持っている友達が多く、
その友達たちが持っているお互いの幼馴染という関係はとても深い。

物心がつく頃には一緒にいて、以来ずっと一緒。

彼女たちと比べたら、自分の幼馴染との関係なんて、と少し落ち込んだりしてしまう。

そもそも、幼馴染というより、
一年に数回しか会えない親戚同士のような関係という方が正しいような気がしてならない。

久しぶりに出会っては数時間一緒に遊ぶという関係。
連絡もほとんど取らない関係。

しかし、年齢が3歳離れている事もあってか、随分と甘えられていた事は、
少しは幼馴染に近いのかな、と思う。

その事が、素直に嬉しかった舞美。
ただ、今となっては懐かしい思い出になってしまったように感じる。

それは、やはり、今日の朝の久しぶりの再会を果たした時の愛理の様子が原因。

一年ぶりといってよい、幼馴染である愛理との再会。
とても楽しみにしていた再会。

それなのに…

正直言って、とても期待していた舞美。
昨年の夏休みに会って以来という事もあり、どんな風に接してくれるのだろう、と。

昨晩は、色々と期待感とドキドキ感が入り交じり、
気持ちが高揚してあまり眠れなかったくらいである。

それなのに…


172 名前:2.イケナイお遊び[1-8.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:13

舞美は、少し立ち止まり、振り返った。
そして微笑む。

舞美の視線の先、同様に笑顔で返してくれたのは、もちろん幼馴染である愛理。

笑顔。

ふたりっきりになってから、かれこれ2時間経過した今、
随分と愛理の表情も自然なものになっていた。

そう、今朝出会った時、引き攣ったような表情を見せられた瞬間には、少し心配し、
そして第一声が『久しぶりだね』の素っ気無く、やけに大人びた一言だった時には、
思っていた以上にショックを受けてしまった舞美。

たった一年だけでこれだけ変わっちゃうんだ。
まだ中等部1年生なのに。

それが素直な感想。

昨年見せてくれた、とても無邪気に自分に懐いてくれていた姿とのギャップにもショック。

そのせいで、自分の表情も、愛理に負けず劣らず引き攣ってしまっていただろう。

しかし、今では、そんな愛理の表情も、
昔よく見せてくれていたそれに随分と戻ってくれたように感じる。
その点は、少しほっとなる。

正直、ふたりっきりにされた時には、少し桃子を恨んだりもした。

昔のように、自分の事を見てくれない愛理。
昔のように、自分に笑顔で微笑み返してくれない愛理。
昔のように、自分に接してくれない愛理。

そんな愛理とふたりっきりでほったらかしにするなんて、と。

でも、仕方がないか、と簡単に受け入れる事もできたのだった。
素直に接していない自分も悪いのだし、と。
だから、桃子たちが激励を込めて一芝居打ってくれたのだ、と。

みんなが消え、桃子に連絡を入れても、出てくれない事が分かった時、
簡単に意図は理解できたのだった。
そして、自分が何とかしないといけないのだろうという事も。

とは言っても、未だに手探り状態。
愛理との関係には、ひとつ壁が出来ているように感じる舞美であった。


173 名前:2.イケナイお遊び[1-8.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:13

「まぃみちゃん」

舞美が振り返り微笑んでくれた事を確認した後、
立ち止まった愛理が少しクチビルを突き出し、眉尻をさげた。

そんな愛理の様子に、少し焦る舞美。

愛理が少し困った時、もしくは疲れた時に見せるその姿。
昔から困った時によく見せいたその姿は、今も変わらない。

舞美自身が初等部の頃、つまり愛理が初等部低学年の頃なら、
『どしたー』と声を掛け、頭を撫でてあげたり、髪の毛を手櫛でといであげたり、
はたまた甘えた表情なら柔らかいホッペをプニプニしたりしていただろうが、
今はちょっと違う。

大人っぽくなって、気軽には触れてはいけないように感じてしまう。

出来るだけ優しく、『どうしたの』と声を掛けた。

すると、ますます眉尻を下げた愛理。

「お腹空いちゃった」

その愛理の言葉に、思わず笑みが零れた。
そして、胸を撫で下ろす。

何を言われるのか、少し心配したのだが、
無用だったようだ。

しかも、昔の通り、愛理らしいセリフ、微妙に舌足らずな口調と言葉遣い。
自然と安心感も覚える。

キモチに余裕がでると、色々な事を思い出す。
そういえば、気が付けばお昼時も随分と回っていたのだ。
自分のお腹も空腹感を覚える。

「そっか」

『じゃぁ』と周りを見回すと、すぐ近くにカフェがあるのを発見。
ちょうど軽食も置いてある系列のカフェだ。

愛理と自分のふたり分のお金があるのかどうか、
お財布とも相談の上、決定。

「あそこ、入ろっか」

舞美の言葉に、愛理は嬉しそうに頷いた。






174 名前:2.イケナイお遊び[1-8.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:14

舞美と愛理がふたり揃ってカフェの中に消えたのを確認した佐紀は、大きく溜息をついた。
その溜息は、とりあえず無事に進んでいる事に対して一息ついたといった感じである。

どうやら、当初心配していた程、会話が弾んでいないという事は、なさそうであった。
色々な場所を歩きながら、会話している様子は、随分と打ち解けている事が分かったのだ。

そんな二人の様子に、少しは落ち着いた佐紀であった。
そして、お腹を摩るとクチビルを突き出し、隣の桃子と茉麻の方に視線を向ける。

「ウチらもどっか入りたぃね」

佐紀の言葉に、桃子と茉麻が大きく頷いた。

「お腹空いたしぃ」

桃子も佐紀同じくお腹を押さえる仕草で、少しアピール。
周りを見渡す。

ところが、すぐ近くには手頃なお店は見当たらなさそうである。
かと言って、舞美と愛理が入ったお店に入るのは、さすがに無理がある。

「どうしよかなぁ」

と、佐紀が考え込んだ表情を見せると、茉麻が『そだそだ』と手を前後にふるふる。

「今の内に、りさこたちと合流しとかない?」
「あー、そだね。
 しばらくは、あのふたりは大丈夫だろし」

佐紀は、舞美と愛理が入って行ったお店を目でちらり、頷くと、桃子の方を見た。

「いーよ。
 じゃぁ、りさこに連絡入れてみるねッ」

言いながら携帯を取り出した桃子。
梨沙子に連絡を取る。


175 名前:2.イケナイお遊び[1-8.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:14

その様子を見ながら、茉麻が佐紀に声を掛けた。

「思ってたより、普通に話せてるね」

茉麻の言葉に、佐紀は軽く頷く。

「そだね。
 でも、ふたりともまだまだ。
 意識し過ぎだね」
「あー、だね…
 でもなんでまぃみまで意識しちゃってるんだろね」

首を傾げる茉麻に、佐紀は当たり前と言わんばかりの表情を浮かべた。

「そりゃ、大スキなイモウトが反抗期に入ってね」

そう言うと、手を口元に持って行き、可笑しそうに笑う。

「えー
 あぃりに反抗期はないのッ!」

そう言って横槍の抗議の声を上げたのは桃子。
携帯電話を耳元に持って行きながら、クチビルを突き出した。

桃子のリアクションに佐紀は苦笑いを浮かべると、手を横にふりふりする。

「真に受けないの」

さらっと流し、『すぐ分かるじゃん』と笑顔。
しかし、その隣で茉麻は難しい顔をさせた。

「いゃーでもあぃりにだって反抗期はあるかもよ」

そう言い、首を傾げた。

「いゃーッ
 あぃりにはないのッ」

相変わらず悲鳴を上げる桃子は、梨沙子へ電話が繋がったのか、
『あーりさこ?』と、電話口でさっきとは打って変わって声音を変えた。

梨沙子へのいつもの甘いトーンに、佐紀と茉麻はお互いに顔を見合わせ。肩を竦めた。






176 名前:2.イケナイお遊び[1-8.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:15

「みんな、ドコ行っちゃったんだろね」

注文を終え、ホッと一息、愛理の言葉に、舞美は苦笑いを浮かべた。

「だね。」

そして視線を斜め上、少しとぼけたような笑みを浮かべる。

愛理は、本当に気付いてないのかもしれない、そう思うと急に幼く感じてしまった。

桃子たちが意図している事、
佐紀、桃子と茉麻が追い掛けて来ている事は、簡単に分かった舞美。

それは意外と分かり易く、一度桃子と目がバッチリ合った瞬間もあったのだ。
愛理だって、顔を桃子たちの方に向けた時があったから、
気付ていたと思っていたのだが、意外と気付かないものである。

そして、桃子たちの意図している事が分かったからこそ、
こうやって愛理とふたりブラブラとしているのである。

「ねぇねぇ」

愛理が身を乗り出してくる。

「んー、なに?」

舞美も自然と体を乗り出す。

「んとね、ケータイ」
「ケイタイ?」
「そ。ケータイ買って貰ったッ」

そう言うと、自慢気にバックから携帯電話を取り出した愛理。
見て見てと言わんばかりの勢い、

とても嬉しそうな愛理のその様子に、自然と舞美の表情も綻ぶ。

「そなんだー」
「うん。
 まぃみちゃんも持ち始めたんだょね?」
「ぁ、うん」

頷きつつ、バツの悪い表情を浮かべる舞美。
そういえば、まだ愛理に携帯電話を持ったのを教えていなかった事を思い出したのだ。

「教えてくれなかったよね」

少しクチビルを突き出し、拗ねた口調になる。

「ごめんッ」

ここは謝るべき。
これ以上愛理との関係を悪くしても、と思いながら謝る。
しかし、そういえば、とふと思い出す。
昔、こんなやり取りで愛理との会話を楽しんでいたっけ、と。

イジケル愛理と繕う舞美。

今のような会話を投げ掛けてくるのは、愛理が少しご機嫌、
もしくは昔のように接し始めてくれているのかもしれない。

少し表情が緩んだ舞美であった。






177 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:16

2.イケナイお遊び[1-9.]

「親戚のヒトじゃないの?」
「あー、りさこはそう言ってたね」

桃子からの話を聞くと、佐紀が不思議そうに尋ねた。

「でも、みーゃんが気にして付いて行ってるんだってさ」
「みゃが?」
「アヤシイ、アヤシイってさ」
「アヤシイ?」

眉間にシワを寄せた佐紀に対して、桃子は大きく頷いた。

「色々と買って貰ってるみたいなんだってさ」
「そなんだッ」

桃子の言葉に、茉麻が声をあげた。
ビックリした表情を浮かべると、続いて首を傾げる。

「おじさん?」

佐紀の質問に、茉麻は『女のヒト』と首を横にふるふる。
そして、続ける。

「どっちか言うとカワイイ系」
「へぇ」
「何歳くらいのヒト?」

今度は桃子の質問。

「大学生かなぁ」
「大学生なの?」

佐紀が不思議そうに首を傾げた。

「色々と買って貰ったって聞いたから、オトナのヒトかと思ったけど」

佐紀の言葉に、桃子も頷く。

「高校生かもしんない…かな…」

どんなファッションだった?
背の高さは?
ヘアースタイルは?

茉麻を質問攻めにする佐紀と桃子。
唯一その女のヒトを見ているのが茉麻なのだから、仕方がない事であり、
茉麻も、佐紀と桃子の質問に、その都度丁寧に答える。

やがて、質問もひと段落ついた頃、結論も出ない事から、
『とりあえず合流だね』と、三人は歩き始めたのだった。






178 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:16

視線の遠く先、千奈美とお姉さんが仲良く話している様子を見ていると、
周りのヒトには、今日出会ったふたりとは到底見えそうにもなかった。

大きく溜息をつくと、考え込む雅。

その雅の隣では、梨沙子が桃子から掛ってきた電話に対して、
詳しく今の状況を説明していた。
桃子を含めた三人は、もうすでにこっちの方に足を向けているようである。
その桃子と梨沙子は、かれこれ5分以上は話していた。

「アヤシィ」

そんな梨沙子を横目に、もうすでに何度も口にしている言葉を、改めて呟く雅。
そして、腕組み。
難しい顔をさせては、折りたたみ式の携帯電話をぱかぱかと開いたり閉じたり。

「とにかく今日初めて会ったって事は確定だけど…」

そう呟くと、先程の友理奈との会話を思い出す。
さらに、千奈美のお母さんとの会話も。

そう、梨沙子が桃子からに連絡に色々と説明している間、
どうしても気になり友理奈と千奈美の家に電話を掛けてみたのだ。

とにかく、まずは友理奈へ。

もちろん、今日の予定になっていた千奈美と友理奈が一緒にお買い物に行く事は知らなかった事にして、
『今みんな一緒に集まっているから遊ばない』という話をしたのだった。

その雅の誘いに、友理奈の返事は『今家族で出掛けているからゴメン』との事だった。
その事から、なんとなく状況が理解できてきた雅。


179 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:17

おそらく、最初の予定では千奈美と友理奈は一緒にお買い物に出掛ける予定だったのであろう。
だけど、友理奈が家族とのお出かけが入った事から無理になり、
千奈美はひとりでお出かけする事になったという事なのだろう。

そこで声を掛けられたヒトが、目の前のお姉さん。

友理奈とのお出かけがフイになり、少しヤケ気味の千奈美は、
付いて行ってしまった、といった具合だろう。

そして、千奈美のお母さんへの電話で、確信したといったところである。

千奈美のお母さんは、携帯電話を持ち始めてからは珍しい雅からの電話に、
最初は不思議がっていたのだが、千奈美が携帯電話に出てくれない話をしたら、
『あぁ』と思い当たるふしがあると言い、色々と教えてくれたのだった。

『みやびちゃんは知ってると思うけど、あのコ、頑固だから』

その言葉は、そのまま友理奈との約束がフイになっても、
雅たちに連絡してこなかった事にも繋がるだろう。

また、その話の中で、ひとりで出掛けていった経緯まで教えてくれたのだが、
結局、話の最後まで、『知り合いの女のヒト』の話は出てこなかった。

その事から、やはり今千奈美が一緒にいる女のヒトは今日初めて出会ったヒトという、
結論に行きついてしまう。


180 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:17

「うーん」

そこまで思考がたどり着くと、三度ため息。

隣を見ると、梨沙子はまだ桃子に説明をしていた。
お姉さんの容姿を説明している事から、まだまだ長くなりそうである。

しばらく梨沙子を見つつ、考え込んだ雅。

とりあえず、今の状況的に、あまり心配はしてはいない。
けれど、この後の事を少し心配してしまう。

このお姉さん、こうして色々と買ってあげているという事から、
必ずイケナイ下心があるはず。

それは、もちろん『夜』。

千奈美の事だから、絶対にないと思うのだが、それでも昼にこれだけお金を出して貰って、
色々と買って貰ったとなれば、夜もお金を出されたら、
首を縦に振って『色々』と言う事を聞いてしまわないかと心配しているのだ。

『色々』と言うものは、もちろん『イケナイ事』も含む。

千奈美がそんな事をするとは思ってはいないのだが、
それでも、ここまで色々なモノを買って貰っている姿を見ると心配になる。

もしそうなってしまったから…

雅自身、大がつくくらいに親友である千奈美がそういう事に巻き込まれる事自体が嫌だし、
先生にでも見つかったりしたら、厳しい雅たちの学校の事だから、悪い方に向かえば、
退学にもなり兼ねないもの。

とは言っても、最悪、雅と梨沙子がふたりの前に出て行けばいいと考えている。

千奈美が困った表情を見せ始めたら、もしくは門限の時間になっても帰らなければ、
偶然を装ってふたりの前に出て行けば、さすがに千奈美も一緒に帰るだろう。

そう考えると、少しは落ち着く雅だった。






181 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:17

「りぃさぁこぉ」

会うなり、抱き着いて来た桃子に対して、
梨沙子は『はいはい』と苦笑いを浮かべながらも、
しっかりと両手を広げて相手をしてあげる。

呆れたように溜息をつく。

しかし、梨沙子の表情を見れば、あまり嫌がっていないのは明らかだった。
満更でもないその表情。

桃子は、時々、やけに大袈裟に再会で喜びを表現する。
とても無邪気な表現。

梨沙子は、そんな桃子の子供っぽさがスキである。

日頃は自称オトナの桃子だが、梨沙子と愛理のふたりを相手にする時に限っては、
完全に消えてしまう。

ふたり共とても優しく、きっちりとリアクションを返してくれる事もあるからだろう。

「会いたかったぁ」

桃子の甘え。
こんな表情と、その口調を見ていると、どっちが年上だか分からない。


182 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:18

「そのアヤシイヒト見たいなぁ」

そんな桃子のダラシナイ姿を横目に見ながらの佐紀の言葉に、雅は頷くと、
桃子と梨沙子は放っておいて、少しショップの方へと足を向けた。
佐紀と茉麻も続く。

お店には入らないものの、ウィンドウから十分中を見渡せる場所までの移動。

しかし、あまり近づく必要はなかった。
少し近付くだけで、ふたりの姿が目に入ってきたのだ。

今はお姉さんの方が中心に服を見ているようである。

本当にお金は持ってるんだなー、と改めて感心、
いや、半分呆れた表情を見せる雅。

「いたね」

雅の隣で佐紀が千奈美を発見すると頷いた。
そして、隣のお姉さんをまじまじと見つめる。

「あー、確かにキレイなヒトだね…」
「うん…」

佐紀同様頷いた雅。
雅も見つめる。

そういえば、雅もこれほど近い距離でお姉さんを見たのは、初めてだった。
今までは遠い距離だった事もあり、あまりそこまでしっかりと顔は見えなかったのだ。

確かに、キレイ。
しみじみと感じる。

どこか幼い雰囲気を残し、とても純粋そうなヒトであり、
雅の周りにはいないような女のコ、いや、女のヒトである。

こんなヒトが女のコに声を掛けるなんて、到底考えられないのが第一印象。
おそらく、千奈美も、この女のヒトの雰囲気に安心して、付いて行っているのだろう。

明らかに雰囲気がアヤシイヒトなら、何を言われたって付いて行かないだろうし、
千奈美はそんな女のコでもない。
それは、雅が一番知っている。

いや、千奈美がそんな女のコとは信じたくないというのが、本音なのかもしれないが。

でも、どこかココロの中に不安があるからこそ、
こうやってふたりの後を追って付いてきているのかもしれない。

そこまで考えて、慌てて思考を飛ばす。
今の考えを否定する為。


183 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:18

「カワイィね…」

隣から聞こえてきた佐紀の言葉に大きく頷いた。

「そんな事するヒトには見えないなぁ」

続いて聞こえてきた言葉にも、確かにと頷く。

「でしょぉ」

佐紀の呟きに、茉麻は先ほどの疑惑の目を向けられた事に対する抗議の意味も込め、
クチビルをつきだした。

「ごめんごめん」

佐紀が茉麻に謝る。
そして、戻ろうと桃子と梨沙子の方を見た時、
何かに気付いたのか『ぁ』と小さく呟いた。

「でも、ちょっと待って…」

再び、お店の中のお姉さんの方を見る。

「…?」

雅と茉麻が不思議そうに顔を見合わせた。
明らかに何かを思い出したといった佐紀の表情。

もしかして…

「見た事あるかも…」

そう言うと、ショップに一段と近付く。

一方、当然のごとく佐紀の言葉に驚く雅と茉麻。

「うそだぁ」

雅が茉麻の方を見ると、茉麻は首を傾げた。

「知らないヒトだよ」

茉麻の言葉に力強い。
確実に知らないというその表情。

「ちょっと待って…
 ほらっ」

『うーん』と唸ると少し目を細める佐紀。
しばし考え込む。


184 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:19

「カワイィね…」

隣から聞こえてきた佐紀の言葉に大きく頷いた。

「そんな事するヒトには見えないなぁ」

続いて聞こえてきた言葉にも、確かにと頷く。

「でしょぉ」

佐紀の呟きに、茉麻は先ほどの疑惑の目を向けられた事に対する抗議の意味も込め、
クチビルをつきだした。

「ごめんごめん」

佐紀が茉麻に謝る。
そして、戻ろうと桃子と梨沙子の方を見た時、
何かに気付いたのか『ぁ』と小さく呟いた。

「でも、ちょっと待って…」

再び、お店の中のお姉さんの方を見る。

「…?」

雅と茉麻が不思議そうに顔を見合わせた。
明らかに何かを思い出したといった佐紀の表情。

もしかして…

「見た事あるかも…」

そう言うと、ショップに一段と近付く。

一方、当然のごとく佐紀の言葉に驚く雅と茉麻。

「うそだぁ」

雅が茉麻の方を見ると、茉麻は首を傾げた。

「知らないヒトだよ」

茉麻の言葉に力強い。
確実に知らないというその表情。

「ちょっと待って…
 ほらっ」

『うーん』と唸ると少し目を細める佐紀。
しばし考え込む。


185 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:19

「きぃーてぇー」

相変わらず桃子に投げかける佐紀の大きな声を後ろに聞きながら、千奈美を見る雅。

しばらくお互いに見つめ合う。

気まずそうな千奈美の表情。
今にも視線を逸らしてしまいそうな千奈美のそれ。
その表情に、『やっぱり』と雅は感じる。
瞳が揺れている。

やがて雅は、ひとつ溜息を零した。
そして、大きく頷くと、安心させる為にニッコリと微笑み、千奈美に手を振った。

千奈美も手を振り返してくる。
相変わらずとてもぎこちないその表情だが、それでも。

そんな千奈美の方を見て、隣のお姉さんが口を動かす。

『トモダチ?』

口の動きは確実にそれ。
頷く千奈美を見ていると、背中に桃子の気配を感じた雅。

桃子が、自分のすぐ隣から、『なーにー』と間延びした声をさせ、首を出してきた。

「ほらっ、あのヒト
 もも憧れのヒトでしょッ」

佐紀の言葉に、桃子は視線を上げる。

「名前なんだっけなぁ…
 ド忘れしちゃった」

やがて、しばらく千奈美を見ていた桃子の視線が、お姉さんの顔を捕らえると、
すぐに『あっ』と口元に手を持ってきた。

そして、ぶんぶん手を振る。

「いしかわサンッ!!」
「そだッ
 イシカワさんだッ」






186 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:20








187 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:20








188 名前:ちなつ 投稿日:2009/01/27(火) 23:21
本日はここまででーす。
では、失礼します。
189 名前:ちなつ 投稿日:2009/01/27(火) 23:34
しまった!!!
183からひとつ抜けてしまった…(号泣)

>>183から差し替えてください(涙)
190 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:35

「カワイィね…」

隣から聞こえてきた佐紀の言葉に大きく頷いた。

「そんな事するヒトには見えないなぁ」

続いて聞こえてきた言葉にも、確かにと頷く。

「でしょぉ」

佐紀の呟きに、茉麻は先ほどの疑惑の目を向けられた事に対する抗議の意味も込め、
クチビルをつきだした。

「ごめんごめん」

佐紀が茉麻に謝る。
そして、戻ろうと桃子と梨沙子の方を見た時、
何かに気付いたのか『ぁ』と小さく呟いた。

「でも、ちょっと待って…」

再び、お店の中のお姉さんの方を見る。

「…?」

雅と茉麻が不思議そうに顔を見合わせた。
明らかに何かを思い出したといった佐紀の表情。

もしかして…

「見た事あるかも…」

そう言うと、ショップに一段と近付く。

一方、当然のごとく佐紀の言葉に驚く雅と茉麻。

「うそだぁ」

雅が茉麻の方を見ると、茉麻は首を傾げた。

「知らないヒトだよ」

茉麻の言葉に力強い。
確実に知らないというその表情。

「ちょっと待って…
 ほらっ」

『うーん』と唸ると少し目を細める佐紀。
しばし考え込む。


191 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:35

ところが、数秒も経たない内に、『あぁッ!』と高い声を上げた。
そして、自分の隣まで丁度やって来た雅の肩をぐいぐい揺らす。

「…?」
「ホントに知ってるヒト?」
「うんうん」

茉麻の言葉に、佐紀は嬉しそうに首をぐいぐい縦に振った。

「あーでも、名前なんだっけなぁ。
 うちらの先輩ッ
 今年卒業した先輩でさッ」

『ここまで出てるんだけどなー』と、佐紀は振り返ると、
未だに梨沙子と話し込んでいる桃子の方を見て声を張った。

「もぉぉーもぉぉーッ」

辺りに響くくらいにとても大きな声。

「…ちょッ!」

その声に慌てる雅。
さすがに声が大き過ぎる。
これだけ大きい声だと、あのふたりに聞こえるのでは、と。

慌ててお店の方に再び視線を投げた。

すると、案の定であった。

とても驚いた表情の千奈美がこちらの方を見ていたのだった。
さらに、隣のお姉さんが、千奈美の表情に、こちらの方に視線を向ける。

気づいたっ!

「ちょっとッ」

雅が千奈美の方を見ながら、佐紀の肩を揺する。


192 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:36

「きぃーてぇー」

相変わらず桃子に投げかける佐紀の大きな声を後ろに聞きながら、千奈美を見る雅。

しばらくお互いに見つめ合う。

気まずそうな千奈美の表情。
今にも視線を逸らしてしまいそうな千奈美のそれ。
その表情に、『やっぱり』と雅は感じる。
瞳が揺れている。

やがて雅は、ひとつ溜息を零した。
そして、大きく頷くと、安心させる為にニッコリと微笑み、千奈美に手を振った。

千奈美も手を振り返してくる。
相変わらずとてもぎこちないその表情だが、それでも。

そんな千奈美の方を見て、隣のお姉さんが口を動かす。

『トモダチ?』

口の動きは確実にそれ。
頷く千奈美を見ていると、背中に桃子の気配を感じた雅。

桃子が、自分のすぐ隣から、『なーにー』と間延びした声をさせ、首を出してきた。

「ほらっ、あのヒト
 もも憧れのヒトでしょッ」

佐紀の言葉に、桃子は視線を上げる。

「名前なんだっけなぁ…
 ド忘れしちゃった」

やがて、しばらく千奈美を見ていた桃子の視線が、お姉さんの顔を捕らえると、
すぐに『あっ』と口元に手を持ってきた。

そして、ぶんぶん手を振る。

「いしかわサンッ!!」
「そだッ
 イシカワさんだッ」






193 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:37








194 名前:2.イケナイお遊び[1-9.] 投稿日:2009/01/27(火) 23:37








195 名前:ちなみ 投稿日:2009/01/27(火) 23:39
すみません。。。
間違えてしまった…
今日の更新分は、
>>171->>182
>>190->>194
です。間でひとつ抜けちゃいました(反省)
196 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/01/31(土) 02:47
どうなるんだ〜
197 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/01(日) 13:28
桃子といる時は幼い舞美が愛理といるとお姉さんなのが現実っぽいですね。
私は桃子といる時の無邪気さ倍増の舞美が可愛いなと思ってます。
198 名前:ちなつ 投稿日:2009/02/06(金) 22:41
>>196 名無飼育さん
↓どうぞ〜w

>>197 名無飼育さん
ありがとーございます
あーいいですよね^^そのまいみー
あたしも好きですw
このお話の中でも、ももとまいみを近付けても面白いですね(w
199 名前:2.イケナイお遊び[1-10.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:41

2.イケナイお遊び[1-10.]

携帯電話のメールアドレスを探す為、一生懸命慣れない電化製品を触っている舞美と、
そんな舞美を呆れた表情で眺めている愛理。

メールアドレスを教えてと言ってから、かれこれ10分は経過してしまっていた今、
お互いに機械音痴が揃った時には、仕方がない光景なのかな、と思い始めていた。

愛理のお母さん、いや愛理同様あまり機械に疎い舞美は、
まだ自分のメールアドレスを覚えていない。
どこを見れば分かるのか、現在探索中なのである。

日頃、このような機会があった際には、桃子に教えて貰うのだが、
さすがに今日はいないのだから、仕方がないという事。

愛理は、携帯電話を買って貰ってから数日間は続いたお母さんとのやり取りを思い出した。
小さく溜息をつくと、テーブルの上に頬杖をつく。

まだお料理が来ていない事もあり、
メールアドレスを知る為のお仕事に勤しんでいる舞美と、
少し呆れた表情でそんな舞美を見守っている愛理。
それが愛理の今のお仕事。

しかし、考えてみれば、機械が苦手のヒトにとっては難しい作業。

わたしもイヤ。

そう思うと、みんなに会ってからでいいよ、言ってあげようかな、と思う。

「まぃみちゃん」
「あ、なに?」

難しい顔をさせて、散々唸っていた舞美の表情が笑顔になる。

まさにぱっと花が咲いたような笑顔。
その表現がピッタリの舞美のそれ。

常日頃、舞美の表情は笑顔で占められていた。
何があっても、そして、どんな時でも笑顔。

そう言えば、フト思う。
いつもいつも舞美は笑顔。
ヒトまで笑顔にさせてしまう笑顔。

愛理にとって、そんな舞美の笑顔が羨ましくなる時もある。
素直なキモチ。

やがて、話し掛けようとしていた事も忘れ、惹かれるよう舞美の顔を見ていた愛理であった。


200 名前:2.イケナイお遊び[1-10.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:42

「ぁ、なに」

呼ばれてから一向に話し掛けずに、
じっと自分を見つめる愛理のそんな行動にテレてしまったのか、
居心地が悪そうに視線を落とし、言葉を催促する舞美。
気恥ずかしげにハニカんでいる。

それでも、素敵な笑顔だ。

やっぱり笑顔。
テレてても笑顔。

「ぁ、キレイになったなぁって」
「なーによぉ」

愛理の言葉に、頬を赤く染めた舞美。
すぐに手をぶんぶんと降り、再び自分の仕事へと戻っていった。

カラカウの楽しい、と思いつつ、
そんな舞美の、明らかに照れてしまっている様子に、自然と愛理の表情も綻んだ。

昔は、よく言っていた言葉だったのだが、とても久し振りに口にしたその言葉。
自分でもすんなりと出た事に驚いている。

それと同時に、随分と昔の気持ちで舞美に接する事が出来つつあった事を、
改めて気づいた愛理だった。






201 名前:2.イケナイお遊び[1-10.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:42

「なーんだ、イシカワさんじゃん」

佐紀の言葉に、茉麻と梨沙子がお互いに顔を見合わせ、首を傾げた。
もちろん雅も同様に不思議そうな表情を浮かべている。

「ホント知らないんだけど…」

雅の不満げな口調に『えー、あのイシカワさんだよッ』と言いつつ、
佐紀は『名前忘れちゃってたけど』と目尻を下げた。

「忘れるなんてヒドィよ、キャプテン」

少し怒った表情の桃子は、そう言いつつ、
視線だけはお店から出てこようとしている千奈美とお姉さんに向いている。

「まーまー」

佐紀は『その事、言わないでね』と桃子に向かって両手をぱちん。
しっかりと口止めだけすると、雅たちの方を見て『そうそう』と人差し指をいっぽん。

「小五のとき、フットサル教えに来てくれたじゃん」
「それって…」
「あー、あれは五年、六年メンバーだけだったから、みゃ達いなかったね…」

言ってすぐに否定した佐紀。
苦笑いを浮かべる。


202 名前:2.イケナイお遊び[1-10.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:43

「でも、あのイシカワさんだよ?」

桃子が佐紀に代わり、言葉を続ける。

「本祭ミスコンでグランプリ取ってたじゃん。
 三連覇だょ」
「そう高校二年から三連覇だよ、さ・ん・れ・ん・ぱッ」

佐紀が指を三本立てて、数字を更にアピールする。

「やめてよ」

女のコらしい、可愛い声が聞こえてくる。
当の本人がやってきたのだ。

振り返った雅たち。

本人にとっては、あまり言って欲しくない言葉なのであろう。
とても気恥ずかしげな表情を浮かべているあのお姉さんが目の前に立っていた。

桃子と佐紀が揃って『お久しぶりです』と頭を下げる。

「はぃ。
 久しぶりだね」

ニッコリと微笑んだお姉さん。

「えーっと、清水チャン…だょね?」
「はいっ
 よかったー
 覚えててくれたんですね」
「そりゃ、卒業式にも来てくれてたしね」

ほっとしたような笑顔を浮かべた佐紀。
嬉しそうに桃子の方を見る。

その佐紀の笑顔に、桃子がむっとなる。
自分より先に、佐紀が声を掛けられた事が面白くないのだ。

「あー、イシカワさん、さっきキャプテンね…」
「わぁわぁわぁわぁ」
「むぐむぐ」
「どしたの?ももチャン」

名前を呼ばれ、桃子の表情が輝く。

「やー、もーの事も覚えててくれたんですねぇ」

桃子の言葉に、お姉さんは『あたりまえでしょ』と手を口元に持っていき、おかしそうに笑った。
まさにコロコロという音が聞こえてきそうな、笑い方。


203 名前:2.イケナイお遊び[1-10.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:43

その笑顔につられて、梨沙子と茉麻も自然と表情が緩む。
そして、お姉さんが自分たちの方を見たのを見計らって、頭を下げた。

「初めまして、かな」
「はぃ。初めまして、です。」

先程から黙り込んでいる人見知りがはげしい梨沙子に代わり、茉麻が答えた。
さらに、自分の名前と梨沙子の名前も言う。

「わたしは、イシカワ、リカ。
 果物の『ナシ』に『華やか』って書いて、『梨華』」

梨華は、続いて雅とも目が合うと、微笑んだ。

雅も、茉麻に習って、挨拶。

そのまま、お姉さんを間近で観察。

とても可愛い笑顔。
それが真っ先に感じた感想である。
さらに、千奈美の笑顔に似てるかな、と感じた雅。
雅がスキな、千奈美の笑顔に。

そんな笑顔の裏に、イケナイ下心があったとは到底思えなかった。
もしかして、本当に知り合いだったのかな、と思ってしまうくらいであった。

しかし、すぐに否定する。
どうしても、そうは考えられなかった。

それはやはり、途中で梨華が千奈美に対して見せた、視線。
その視線は、絶対にイケナイ下心があったように見えたのだ。

しかし、この笑顔を見せられると…

少し難しい顔をさせた雅は、梨華の後ろで、居心地が悪そうに立っている千奈美の方を見た。
千奈美と目が合う。

しかし、すぐに逸らした千奈美。
そのまま気まずそうに視線を落とす。

「ちぃとも、知り合いだったんですか…?」
「…?」

千奈美を見ながらの雅の質問。
千奈美が慌てて顔を上げた。
瞳が不安げに揺れている。

ハラハラドキドキ、という言葉がまさにぴったりの今の千奈美のその表情を見て、
『やっぱり』と確信した雅は、梨華の方に顔を向けた。

どんな回答をするのだろうか、とまじまじと見つめる雅。
その雅の目を見て、梨華はしっかりと頷いた。

「うん。昔からトモダチだったんだょ」






204 名前:2.イケナイお遊び[1-10.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:44

「まぃみちゃん、知ってる?」
「ん?」
「ちょー人気あるの」
「あぃりが?」

はぐらかされた。
ぶんぶんと首を横に振る愛理。

「あたしのクラスのコ、七割まぃみちゃん派だってさぁ」

そして、少し視線を斜め上。
クチビルをつきだす。
面白くない表情を浮かべた。

梨沙子に聞かされてから、色々とクラスメートに舞美の話をしてみたのだ。
舞美の話が出ていると首を突っ込んだり、はたまた自分から舞美の話題を振ったり、と。

すると、梨沙子のお話通り、確かに舞美の人気はスゴイのが分かった。

調査してみた結果、七割近くのクラスメートが舞美派だったのだ。
残りの三割が雅派。

今までも、ある程度人気がある事は知っていたのだが、
まさか雅を抜いているとは思わなかった。

「んー
 あ、ありがと…
 あまり実感ないけど…」

そう言い、苦笑いを浮かべた舞美。
普段からこのように言われる事には慣れてはいるのだが、
その対応方法、リアクションは未だに分からない。

「頭はいいし、運動神経抜群でさ、きれー。
 みんなまぃみちゃんまぃみちゃんだょ」

愛理の言葉に、舞美は困った表情を浮かべると、小さく溜息をひとつ。

「みんな去年まで興味なかったのにぃ」

拗ねたような愛理のその様子。
『面白くないのかな』、その言葉がまず浮かんだ。

そして、小さな頃の愛理の姿と被る。
そうなると、なんだか無性に可愛らしさを感じてきた舞美。

すっと体を乗り出し、キレイにボリュームアップさせた愛理の髪の毛を整えてあげる。
少しクチビルを突き出したままの愛理はチラリと舞美の方を見る。

その愛理の目を見て、確信。

やっぱり拗ねてる。

舞美は微笑んだ。


205 名前:2.イケナイお遊び[1-10.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:44

「じゃ、あぃりは?」
「…?」

きょとんとした表情を浮かべる愛理。

「どっち派?」

驚いた表情になる。

「あたしはもちろん…」
「…もちろん?」

『まぃみちゃんだょ』
口から出そうとした言葉だが、一瞬止まると自然と頬に熱を帯びた。
意味を頭の中で考えて。

去年までなら簡単に出ていた言葉が、簡単に出ない今。
意味をかみしめればかみしめる程、恥ずかしさでいっぱいになる。

頬の熱が耳まで移る。

「…もちろん、って…みゃび派?」

舞美の口から出てきた言葉に対して慌てて首を横に振る。

もちろん、雅の事もスキなのは当たり前だが、
こうやって舞美本人から聞かれると、『みやび派』なんて答えられない。

『イジワルだ』

その言葉が真っ先に浮かんだ。

しかし、その言葉と相反して、舞美の目を見ると、とても優しげに微笑んでいる。

いつでも笑顔。
そして、いつでも優しい。
誰にでも、優しい。

でも、優しいとは思うけど、わたしに対してはあまり優しくない、と思った。

だって…


206 名前:2.イケナイお遊び[1-10.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:45

「みゃは優しい…」
「ぁ…ぅん、だね」

愛理の言葉に、頷いた舞美。
確かに雅は優しい、と。

「意味、違うょ」

不思議そうな表情になる舞美を見て、愛理は視線を落とした。

「みゃは、ときどき会いに来てくれるの…」
「ぁ…」
「教室だけじゃなくって、家にも来てくれるし…
 とっても、優しぃの
 ももと一緒に勉強も教えに来てくれるの」
「…」

舞美の顔を見ると、バツの悪そうな表情をさせている。
愛理の言いたい事が分かったのだろう。

愛理は、再び舞美の目を見つめる。

「もっとまぃみちゃんと会いたぃ」

愛理の言葉と、その強い目ヂカラに、舞美は視線を落とした。

本当は、忙しいからと言い訳をしたいのだが、今それをしても全く意味はないだろう。
そこまで空気を読めない人間ではないし、今は謝るしかないように思えた舞美だった。

「ごめんね…」

舞美の謝罪の言葉に、愛理は悲しげに眼尻を下げた。

「…なんで謝るの?」
「ぇ…」
「それって、会えないって事?」

なんだか会話が恋人同士のものになってるなー、なんて思いながら目を上げると、
今にも泣き出しそうな愛理の瞳が目に入ってきた。

その目を見て、さすがに前言撤回。

本当に会いたいと思ってくれていると感じた舞美。
愛理にとって、全く無意識の言葉なのだろう。
ただ純粋に自分と会いたいと思ってくれている、という事なのだろう。

そう考えると、自然とココロの中が温かいモノに包まれていく感覚を覚えたのだった。
そして、昨年以来、一度も愛理と会っていなかった自分の行動に罪悪感を覚える。

これほど会いたいと思ってくれている愛理。

それなら…


207 名前:2.イケナイお遊び[1-10.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:45

「じゃぁ、週に一回は必ず会おっか」

自然とその言葉が出てきた。

「…ほんと?」
「うん。会いに行くょ。
 あぃりのキョーシツ。
 遊ぼ」

さっきまでの瞳を潤ませたその姿はどこへやら。
愛理は、目を輝かせると、体を乗り出した。

「ホントに?」

舞美は優しげに頷いた。

「じゃ、じゃ、メールもッ!」
「メール?」
「一日一回は必ずメールしてッ」

もう一度微笑み、舞美は頷いた。
その舞美の笑顔に、愛理も小さく『やったぁー』とガッツポーズを作ると、
携帯電話を手に取った。

「まぃみちゃんはムリだょねッ
 わたしがメアド教える方が早いッ」

そう言うと、自分のメールアドレスを探し始めた愛理。
とてもウキウキしたその愛理の姿は、昔よく見せてくれたモノだった。

舞美は、やっと昔のスタート地点に戻れたかな、とホッと胸を撫で下ろしていた。
なにげなく機械音痴の事をバカにされた事は、聞かなかった事にして。






208 名前:2.イケナイお遊び[1-11.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:46

2.イケナイお遊び[1-11.]

「ホッとした」

佐紀の言葉に、千奈美は苦笑いを浮かべるしかなかった。

「ホント。みゃがアヤシイ、アヤシイ、連呼してるんだもん」

梨沙子の言葉にも、同様。
そして、『結局、石川さんだったんだもんね』という桃子の言葉には、
少しズキっと胸が痛んだ千奈美。
自然と足取りも重たくなる。

みんな、昔からの知り合いという事を全然疑っていない。
その点は少しホッとなる。

ただ、そんな中、この梨沙子の言葉を聞きながら少し不機嫌な表情をさせている雅だけは違う。
やっぱり、まだ疑ってる。

そりゃそうだよね。
くまぃチャンとの予定知っていたんだもの。
気付いてるよね。

その言葉が思い浮かぶと共に、溜息をひとつ。

雅の表情と、その視線。
とても痛くて、まともに見れない。

そして、手元にある今日梨華に買って貰ったリングやカットソーの袋には、
別の意味で胸が痛む。

結局、最後別れる際にも、しっかりとお礼が言えなかった千奈美。

更に、メールアドレスや電話番号なども聞いていなかった。
その事から、別れた今では、とても申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた千奈美であった。


209 名前:2.イケナイお遊び[1-11.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:47

最初から、雅の疑いの眼差しを見て、しっかりと千奈美の事を庇ってくれた梨華。

お店の中でみんなを見つけて、顔を真っ青にさせた千奈美を見て『大丈夫?』と聞いてくれ、
お店を出る際の、千奈美の『昔からのトモダチって事にして下さいっ』ってお願いには、
最後までしっかりと応えてくれたのだ。

そう、お話している長い時間、しっかりと約束を守ってくれたその優しさは、素直に嬉しかった。

最後まで。

全員が合流してから、随分と長い時間話し込んでいた千奈美たち。
そのお話し会は1時間を超えていた。

あまり疲れというものを感じないまま、お話し会が始まってから、
1時間も経過した頃、佐紀が『そうだッ』と大きな声と共に立ち上がると、
トモダチを放りっぱなしにしているんです、と梨華の顔を見たのがキッカケで、
このお話し会は終了。

そうだねと、桃子も携帯電話を見た後、とても残念そうな顔を見せながら、梨華の腕を取った。
そして、『もっと話したかったのですが』と泣くマネで残念さをアピールする。

ただ、次の瞬間には、『ここで出会えたのは運命です』とにっこりと微笑んだ桃子。

ちゃっかりと梨華の携帯電話の番号と、メールアドレスを交換していたのだった。

梨華が学生の頃だったら、到底無理だった事。
話し掛けるどころか、近付くキッカケすらなかったのである。
しかし今はチャンスとばかりに切り出したのだった。
さらに、佐紀や茉麻、梨沙子に雅もその場の勢いと雰囲気で交換。

ただ、そんな中、千奈美だけは、その輪に加わる事が出来なかった。

もちろん、交換したかった。
いや、したかったというか、『しなきゃ』と思ったのだった。

おそらく、今のこの雰囲気だと、これから千奈美は佐紀たちと合流になって、
梨華とは別れる事になるだろう。
梨華も、千奈美も含めた全員の顔を見て、『残念だなぁ』と、もう別れる準備をしていたのだし。

今日一日、これだけ買ってくれた梨華。
いや、そもそも、友理奈にお買い物をフラレて落ち込んでいた千奈美を、
楽しいキモチにさせてくれたのだ。

それなのに…

だから、せめて連絡先でも聞いておけば後でお礼ができる、と思ったのだ。

ただ、その姿をみんなに見せてしまうと、
今まで頑張って見せていた『昔からのトモダチ関係』というモノがバレると思ってしまった千奈美。

だから、結局最後まで連絡先は聞けなかった。

やがて、みんなにバイバイと手を振りながら、
最後には『じゃぁちぃチャンまたね』と手をふりふりした梨華の姿を、
見つめる事しか出来なかった千奈美であった。

その時の千奈美のココロは、本当に申し訳ないキモチでいっぱいであったのだ。


210 名前:2.イケナイお遊び[1-11.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:47

「ちぃ?」

突然自分の隣にやってきた雅の声に驚く。

千奈美は、さっきまで一番後ろを梨沙子と一緒に歩いていた雅の姿を確認し、
少し安心したまま、物思いに耽ってしまっていたのだ。

一番疑っていた雅。
今はあまり話したくなかった。

「なに?」

声が裏返る。
そんな千奈美の様子に、雅は少し笑顔を浮かべると、『よかった』と微笑んだ。
そして、千奈美の手を取った。

前後に手をぶらぶら。
マッタリと歩く。
日頃とは違う雅の歩くスピードに合わせる千奈美。

しばらくして、雅が呟いた。
小さいが千奈美にしっかり聞き取れる声と、その内容。

「あのヒト、怪しぃと思ってた」
「…ッ!」

息が止まる。

「ホント、心配したんだょね」

雅が千奈美の方を向いた。
そして、微笑んだ。

日頃あまり見せない雅のそんな表情。

不思議なキモチになるのと同時に、そのあまりにも優しげな瞳と、
自分を真っ直ぐに見つめる視線に、気恥ずかしさを感じた。

思わず目を逸らす。

「ケータイにも出なかったし」

その意味を理解した千奈美。
一度雅から連絡があったのだが、イケナイ事をしているという後ろめたいキモチがあった事から、
出なかったのだ。

まさに雅の言う通りである。


211 名前:2.イケナイお遊び[1-11.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:48

「でも、石川サン、思ってたよりずっとイイヒトって感じだった…」

雅は顔を前に向ける。
視線の先では、佐紀と茉麻、桃子と梨沙子が楽しげに歩いていた。

「キャプテンと、ももがあれだけスキな先輩なんだもんね」
「ぅん」
「ごとーさんと、ヨシザワさんともトモダチなんだって」

雅のその情報は、千奈美が少し席を外していた時のモノである。

ちょうど、千奈美がおトイレに席を立った時に、梨華のトモダチの話で盛り上がっていたのだった。

特に梨華の一年後輩にあたり、下級生に絶大な人気を誇っている二人の後輩のお話である。
そのふたりは、千奈美は知らなかったのだが、雅や茉麻は知っていた。

初等部の頃、梨華を知っている佐紀や桃子と同様、梨華の一年年下となるその先輩が、
ちょうどフットサルで教えに来てくれた事から知ったのだった。

そのふたり、そして梨華、梨華の友達である同級生のもう一人の先輩の四人が、
この女子校では、創設以来の一番とも言えるくらいに人気を誇っていた四人組であり、
さらに、中学一年から大学三年までは、全員でミスグランプリを分け合っていたというのだ。

ミスコンの常連になりつつある雅も、梨華が参加しなくなってからの常連という事もあり、
梨華の事は知らなかったし、更に、あまり上級生に興味がなかった事から、
このような情報には疎かった。

どちらかといえば、自分が後輩の噂になる事に慣れているのだし。

ちなみに、参加の権限が大学三年までという事から、
今年は梨華の後輩にあたるそのふたりも参加できない。

そう、その事から本命もいないという事になり、
舞美や雅といった面々に注目が集まっているのだ。


212 名前:2.イケナイお遊び[1-11.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:48

「ごとーさんとヨシザワさんと仲がいいらしいから、安心かな…」

そう言うと、再び千奈美の方を見た雅。
雅の視線に気付き、千奈美も雅の方に顔を向ける。

「でも…」
「…?」

少し表情が険しくなった雅。

「まだアヤシイとは思ってるょ」
「ぇ…」
「絶対、イケナイ下心あったはずだょ」
「そんな事…」

否定しようとした千奈美だったが、雅の瞳を見て口が動かなくなった。
その時の冷たかった雅の瞳によって。

「あったょ、ちなみに対してね…」

さっきまでとは全く違う、雅の目の色。

そして、千奈美は思った。
どうして、みゃはこんなに心配してくれてるの…?、と。






213 名前:2.イケナイお遊び[1-11.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:49

「まぃみちゃん」

お金を払い終わり、お店を出た舞美。
愛理との関係も修復、とても満足気な表情の愛理に出迎えられ、
お腹もイイ感じに膨らんで、良い事尽くめに自然と表情が緩む。

「なに?」

近くでみると、まだまだ昔のようにアドケナイ表情をさせている愛理は、
やはり名前通り愛らしさを感じられる。

愛理は、バックからお財布を取り出すと、舞美を見た。

「お金…」

舞美は、言いたい事を理解すると、『いいの』と首を横にふるふる。

「お母さんがね、あぃりも一緒に行くって話したら、余分にお小遣持たせてくれたの。
 ご飯とか出してあげて、ってね」
「ぁ…」

少し愛理の眉尻が下がる。
困った表情に、舞美は笑顔。

そして、昔よく見た可愛いらしい表情に、
自然と笑みが零れると、愛理に近寄り頭を撫でてあげる。

今日一番近い愛理との距離。

大きな瞳と、愛らしい表情。
背の高さも高くなり、舞美とあまり変わらなくなり、キレイにもなった。

さらに、昨年までとは違い、とてもおしゃれに着飾っている、今日の愛理。
短めのプリーツスカートとキャスケットに、愛らしさが五割増。

そんな愛理に、少し、ドキリと胸が大きく高鳴るのが分かった舞美。
少しだけ意識してしまうと、結構些細な事でも、敏感に感じ取ってしまうもの。

うっすらと飾ったメイクだって。
恥ずかしげに視線を落とす仕草だって。
カオリだって。


214 名前:2.イケナイお遊び[1-11.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:50

「ありがと
 またまぃみちゃんのママにお礼言わなきゃ」
「どーいたしまして」

笑顔を作ったが、少しぎこちなさを感じた。

「ぁ、まぃみちゃん?」
「ん?」

声が上ずる。

「あのね」

少し俯く愛理。
その愛理の耳が赤くなるのが、分かった舞美は、
『可愛いなぁ』と感じながら、『どしたの?』ともう一度優しげに訪ねた。

「んとね。」
「うん?」
「手…」
「て?」
「手、繋いで、いい?」

一瞬、意味が理解できなかった舞美。
しかし、その愛理の言葉の意味が分かると、自分の顔も赤くなるのが分かった。
思わず『てぇ?』と妙な声を出してしまった。

まさか、愛理の口から出てくるとは思っていなかった言葉。

そう、今日の愛理の様子から、まずないだろうと思っていたし、
昨年までも、隣を歩く時には、自然と手を繋いでいただけに、
お互いに手を繋ごうなんて言葉を口にした事がなかったのだ。

ある意味、生まれて初めて言われた言葉に、恥ずかしさも倍増。

しかし、そんな舞美とは対称的なのは愛理である。
思い切って口にしたのだろう、
顔を上げると、少し達成感もある晴れ晴れとした表情を舞美に見せていたのだった。

その表情は、昨年舞美が見ていた、愛理の表情そのもの。
その愛理の表情に、舞美は我に返ると、慌てて頷いた。

「ぁ、うん。そだね。」

そして、どきどきと高鳴る胸の鼓動を押さえるように、一息飲み込むと、
恥ずかしげに頬から耳まで顔を赤く染めながらも、
キラキラと輝く瞳で自分を見ている愛理の手首に指をソット当てた。

愛理が少し俯く。
そのまま、ゆっくりと舞美の手を取った。






215 名前:2.イケナイお遊び[1-11.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:50

「きゃはっ」

桃子の可愛らしい声に、みんな表情が緩む。
いや、桃子の可愛らしい声が飛ぶより先に、目の前の温かい光景に、である。

「かっわいぃー」
「なーんだ。あれならもう心配しなくていいね」
「うん。昔のあぃりだね」

その梨沙子の隣では、茉麻が少し呆れ果てた表情になり、肩を竦めた。

「何、あのいかにも付き合い始めたばかりのコイビト同士ですーみたぃな手の繋ぎ方ぁ」
「まぁまぁ」

雅と千奈美に肩を叩かれると、茉麻は『はぃはぃ』と苦笑い。

「さてっ
 じゃ、まぃみとあぃりに会いに行きますかっ!」

佐紀の言葉に、みんなは笑顔で頷いた。
そして、手を繋いで歩いているふたりを追って、歩き出した。

これからが本番。
やっと昔のように遊べるね。

誰かが声に出した言葉は、時も昔に戻したようだった。
全員の姿が一回り小さなシルエットになる。

無邪気な歓声が起こる。

ちょっと!
くまぃちゃん忘れないでよ!

そこでちょっと抗議のセリフを上げたのはもちろん千奈美。

ゴメンゴメン。

ねぇねぇカラオケッ!
おっ、いいねぇ

ちょっとぉ!
まぁーさッ!






216 名前:2.イケナイお遊び[1-11.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:50








217 名前:2.イケナイお遊び[1-11.] 投稿日:2009/02/06(金) 22:51



[Fin:イケナイお遊び]


218 名前:ちなつ 投稿日:2009/02/06(金) 22:56
はい。という事で第2話は終了です。
少しちゅーと半端感ありありですが;

次回からはちぃたちには本業の学校でのお話に戻ってもらいます。

そういえば…ゆりなって一番最初に出てきたっきりなので、
もうちょっと活躍させたいです…;(願望)
では。ありがとうございました。
219 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/07(土) 13:02
舞美と愛理の仲が戻ってよかったー☆☆

次は熊井ちゃんですね☆
220 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/07(土) 15:18
やじすずが可愛すぎて素敵です(*´Д`)
そして今後の2人がどーなるか気になりますw
221 名前:もんちっち 投稿日:2009/02/08(日) 13:20
更新お疲れ様です。


ちなみやに何気に萌えました。
ちょっとこの二人の組み合わせも好きです。
熊井ちゃんとの行方も気になりますww。
222 名前:197 投稿日:2009/02/10(火) 00:16
>>198
>>このお話の中でも、ももとまいみを近付けても面白いですね(w

でしたら、二人きりになって妙に意識する桃子と相変わらず天然な舞美とのやりとりを希望します。
223 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/12(木) 22:48
背の高い娘が気になります(笑)
224 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/02/15(日) 22:13
『ヨシザワ』さんの名前がでてきて、興奮気味です(>_<)
225 名前:85年組・・・ 投稿日:2009/02/22(日) 04:01
続々と85年組の名前も出てきましたね♪ベリキューの子たちとどう絡んでいくのか楽しみです☆
226 名前:ちなつ 投稿日:2009/03/04(水) 23:53
>>219 名無飼育さん
はぃ!よかったです!
次は…;

>>220 名無飼育さん
現実でもやじすずはステキですw
とくにあぃりチャンがまぃみチャンを見る目が(笑)
今後は…どーなるでしょうね^^

>>221 もんちっちさん
ありがとうございます!
ちなみや、あたしもスキです^^
ヤンヤンのカノジョにしたいアンケートでは両想いだったふたりw
悶えました(笑)

>>222 197さん
むふふ、参考にさせて頂きますw

>>223 名無飼育さん
背の高いコに頑張って欲しいのですが…w

>>224 名無飼育さん
おっと、興奮して頂いてありがとうございます^^

>>225 85年組・・・さん
これからも絡ませて行きますv
上手に絡んでくれるか心配ですがw

227 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:54

3.イケナイ奮闘記[1-1.]

セミの鳴き声が日増しに大きくなるこの季節。

暑さが強くなり気持ちが滅入る一方、夏休みが近付くという事から、
どんどん心を軽くさせてくれる。

ただ、その前に、学生本来の仕事である試験という物を終わらせなくてはならない。
セミの鳴き声と共に、否が応でも付いてくる試験という物。

しかし、これさえ終わらせれば、夏休みなのである。
まるまる一ヶ月半近いという長い期間の休み。

それを考えるだけでも、試験期間を乗り越えてやろうというキモチにさせてくれるであろう。

この蒸し風呂のような夏の日々も。

とは言っても、千奈美たちが通う学校は、私学の学校という事から、
各教室共に程よくクーラーが効いてくれている。
その点は恵まれていると言える。

それでも試験というのは辛い物。

一週間という短いテスト期間。
準備期間を含めると二週間。
一日数科目とはいえ、厳しい。

日頃から宿題しかしない千奈美にとっては、尚更苦痛である。
というか、千奈美のトモダチはみんな苦しむ期間であろう。

テストが始まるとなお大変である。

一日のテストが終了したら、放課後は図書館でいつものメンバーとの試験勉強。
そして、図書館が閉まってからも、さらに勉強の場所を移してまだまだ続く試験勉強。
いやむしろこれからが本番である。
追い込み。

各人家に一度帰ってから、勉強道具とお泊りセットを持って、再度集合。

これは、千奈美たちの中で合同勉強会&お泊り会と呼ばれ、初等部からの習慣であった。
集まって勉強する方が意外な程効率がよいのだ。

それぞれの母親も心得たもので、試験週間に入ってからは、
ローテーションで家を開放する協力体制となっている。

勉強をする場所だけではなく、朝夕の食事からお風呂、さらに寝る場所だって。
協力は惜しまない。
試験の成績には変えられないものなのであろう。


228 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:54

最年少である梨沙子、愛理から、友理奈。
雅と千奈美に茉麻、桃子と佐紀。

基本的にこのメンバーが毎回の参加者であるのだが、
今年は、さらに特別に協力な助っ人も参加メンバーに含まれていたのだった。

それは、今年が初参加となる舞美。

試験前のお買い物以来、頻繁に連絡を取っている愛理と、
舞美に色々と教えて欲しい桃子や佐紀といったクラスメートの強力なプッシュで、
舞美も参加する事となったのだった。

初参加という事から、当初は勉強できるのか心配していた舞美だったが、
自分が思っている以上に効率がよく、
桃子や佐紀に教えて貰える事も多い事から、感心しきりの舞美。

今では、毎日率先して参加しているくらいである。

次回も参加させてね、それが口癖になりつつあった。

そして、各人大抵一度は会場となる合同勉強会&お泊り会の会場。
高等部、中等部共に試験の最終日である本日は、
千奈美の家が合同勉強会&お泊りの会場だった。


229 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:55

いつの間にか眠り込んでいた千奈美。
明かりの消えた中、ひとつ燈るスタンドライトに照らされながら自然と目を覚ました。

柔らかい毛布に包まり、ほんのりと軽く効いてくれているエアコンの冷気が素肌に当たり心地よい。

しかし、起きて気付く。
自分の腕の痺れに。

「ぅぅ…たたたた…」

あまりの痛さにクチビルを突き出した。
ぎゅと目を瞑るとうっすらと涙まで浮かぶ。

動かない手。
いや、動かせない手。

腕から先が全く動かない。
その痛さの原因は、目を覚ました千奈美には一目瞭然だった。

「ぅぅ…くまぃぢゃん…」

ひどい痺れ。

自分の腕を枕に、ちゃかり眠りに入っている幼馴染の名前を呼び、
恨めしげな視線を送るも、当然の如く気付く気配もない幼馴染。

友理奈の向こう側で、愛理と梨沙子が仲良くひとつの毛布に包まって、
可愛らしくスヤスヤと寝息を立てている姿が羨ましく感じられる。

軽く溜息をつき、動かして脱出を試みるも、ぴくりとも動いてくれない友理奈。


230 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:55

「キモチ良さそーに寝てるね」

腕の痛みと悪戦苦闘している千奈美の耳に、聞き慣れた声が聞こえてきた。

「おはよ」

佐紀だ。

「はょ…」

一応習慣で挨拶を返すも、ほとんど聞き取れないくらいの声に佐紀が笑う。

「笑わないでぇ」

千奈美の言葉に『ごめんごめん』と謝るも、少し楽しげに悪びれる様子のない佐紀。

『気持ち良さそーに寝てる』

腕の痛みには変えられないが、
佐紀のその言葉には、少し幸せなキモチを覚える千奈美。

最近は少なくなった体を預けられるという事が嬉しくもあるのだ。

背の高さもそこまで違いがなかった初等部の頃とは違い、
今では、千奈美より随分と背の高さも高くなった友理奈。
確実に千奈美に体を預けるという姿はなくなってしまい、
友理奈に千奈美が体を預けるという姿が多くなってしまっていただけに、である。

それだけに今の姿は、痛さはあるけど嬉しさも感じるのだ。

でも痛い…

「ぅぅ…くまぃちゃん…いたぁいぃ」
「もぉ、仕方ないなぁ」

佐紀はペンを置くと立ち上がり、部屋の端においてある座布団を一枚持って来た。
そして、千奈美の腕を下敷きにしている友理奈の頭を軽く持ち上げ、枕代わりに入れてあげる。

腕が重みから解放される。
とはいえ、痺れからは解放されるわけではなく、目尻から涙を数滴。
腕を摩りながらしばらくの間悶絶する千奈美。
笑う佐紀に横目で恨めしげな視線を投げ掛けながら。

「ごめんごめん」


231 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:56

数分後、腕の痛みから解放された千奈美は、大きく体を伸ばす。

ぎゅーと体中の筋肉が鳴く。

そして、一息ついた。
少し落ちつく。

相変わらず幸せそう、いや枕が千奈美の腕から座布団に変わり、
心なしか寂しそうな表情に見える友理奈。

自然と表情が緩む。

しばらく友理奈の寝顔を眺めてから視線を遠くに向けた。

幸せそうにひとつの毛布に包まっている梨沙子と愛理の姿が、千奈美の目に入ってきた。
机の上には勉強道具が開いたままである。
いつの間にか眠ってしまっていたのであろう。

さらに、そのふたりの向こうでは茉麻と雅がソファーの上で眠っていた。

このふたりは、明日の試験は諦めたのだろうか、
教科書は閉じられ、キレイに重ねられている。
はたまた、もう試験勉強は完了したのか。

どちらにしても、ぐっすりと眠っている今のこの様子だと、
朝まで起きる気配は全くなさそうである。
毎回の事ながら、呆れてしまうふたりのその姿である。

とは言うものの、その雅の寝顔に、少し表情が柔らかくなっていた千奈美。

ホントきれー…

いつもいつも呟いてしまうその言葉が、雅の素の表情を見た時の千奈美の素直な感想であった。


232 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:56

初めて雅を見たのは、初等部の一年生の入学式の直前に全員教室に集合した時。
名前が「と」と「な」という事から、出席番号が続きとなり、
一番最初にトモダチになったクラスメートだった。

初めて見た感想は、『超可愛い外国の女のコが座ってるなぁ』。

ホントに可愛いと感じた千奈美。

座ろうとした時に、すでに席に座っていた雅と目が合ったのだが、照れから思わず逸らしてしまい、
さらにその後、話し掛けようと何度か後ろを振り返ったのだが、
雅の大きな瞳と視線が絡むその度に、頬に熱が集まり逸らし続けてしまっていたくらいだった。

やがて、ヘンなヒトって思ってるだろうなぁ、と思いつつ五回もそんな事が続いた後、
今度こそ、と振り返った千奈美に対して雅がニッコリと微笑んだのだった。

『そのペンケース、可愛いね』

後から思えば、千奈美以上に人見知りが激しい雅なのだから、
かなり勇気を持って話し掛けてくれたのだろう。

よくこれだけ挙動不審だった自分に対して話し掛けてくれたなぁ、と今でもしみじみと感じる。

それ以来、雅とは、友理奈とはまた違う幼馴染みの関係となっていた。


233 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:56

雅とは、とても性格が合い、いつも一緒にいて本当に楽しい関係。

話は尽きないし、たとえ機嫌が悪く、話をしたくない時があれば、
お互いに自然なタイミングで気を使え、一緒にいてとても心地良いのだ。

千奈美自身、これ程性格が合うヒトはまずいないと思っているくらいである。
いや、雅だって思ってくれているだろう。
自惚れじゃないという自信もある。

これは、ある意味、運命ではないかと感じている程だ。

学校の中ではいつも一緒。
どこへいくのも一緒。
そして、毎年の如くクラスも一緒。

とは言っても、いつしかその関係は少しずつ変化していたのだが。

相手はいつの間にか学校中の憧れの存在。
初等部の頃とは比べモノにならないくらい人気者となっている今、
余り引っ付いてベタベタとする事も出来なくなったのだ。

ま、その点はお互いの性格も関係しているのかもしれないが、やはり淋しい。

やがて今では、少し気を使う時もあった。

なぜなら…


234 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:57

千奈美は携帯電話を取り出すと、カメラを起動させた。
この瞬間だけは、いつでも気を使う。

そして、カメラを構えるとゆっくりと雅に近付いた。
画面に雅の寝顔が映る。

すやすや。

まさにその表現がピッタリな今の雅。
とても幸せそうに寝息を立てている。

その姿は、日頃の綺麗な幼馴染ではなく、
とても可愛いらしさを感じさせてくれるものである。

自然と見惚れる千奈美。

「そこで止まるとアヤシクなるょ」

思わず振り返る。
少し口角を上げ、イヤラシ笑みを浮かべた佐紀と目が合う。

「今、きれーって思って見惚れてたでしょ」

図星。
何も言えない変わりに、クチビルを突き出し軽く抗議する。

『仕方ないじゃん』と。
その千奈美の仕草に、佐紀は表情を緩めた。

「アヤシイって言われても…」

千奈美は、そう呟くと、再び携帯電話を雅に向けた。
雅の顔が再び画面に映し出される。

すると、普段とは違う状況だけに、さすがに少しドキドキ胸が高鳴った。
雅が撮るって気づいていない、今の状況。

後で許可貰わなきゃ…

千奈美は小さく呟くとキーを押した。

きらりんきらりん

やけに高い音に身を竦めた。
佐紀の方を見ると、少し驚いた表情をさせ千奈美の方を見ている。
千奈美同様、思っていた以上に大きな音に感じたのだろう。

千奈美は雅が起きていない事を確認してから、携帯電話の画面を見た。

そこには、スタンドの光だけというシーンだからか、
普段より更に綺麗であり、かつ神秘的な雅が映し出されていた。

「きれー」

思わず呟くと、自画自賛。
目を細めた。

「へぇ、ウチにも見してょ」

佐紀の興味津々な様子に、少しだけ優越感を覚えると、
嬉しそうに佐紀に携帯電話を渡した。

そして、余韻に浸るようにソファーに座り込む。

「みんな喜びそうなショットだね」

画面を見ながら呟いた佐紀のその言葉に、大きく頷いた千奈美。
『お仕事かんりょ〜』と『V』を指で作った。


235 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:57

佐紀に『他にも見せてね』と言われると、少し気恥ずかしさを覚えつつも頷いた。
とはいえ、佐紀もこれまで一度は見た事があるショットばかりであろう。

千奈美の携帯電話の中に入っている他の雅の写真を見ている佐紀は、ときどきため息をつく。
余程雅がキレイに写っているシーンの写真を見ているのか、
目を細める姿も見受けられた。

と、しばらくそんな佐紀を見ていた千奈美だったが、視線を佐紀から少し右へとずらした。

その視線の先、千奈美と机をはさんで向かい側には、
舞美がソファーにもたれ掛かるように眠っており、
その隣には小さな陰が舞美の腰に抱き着くようにして眠り込んでいた。

小さな陰は…

「まぃみに膝枕して貰ってるの、もも?」
「…ん?そ」

携帯電話に目を通していた佐紀が顔を上げた。

「ずーっと」

そう言うと嬉しそうに目を細めた。
千奈美も表情を柔らかくさせる。

「あぃり、そわそわしてなかった?」

千奈美の言葉に佐紀は笑顔になった。

「ちらちら見てた」

そう言うと、千奈美同様、後ろのソファーに体を預ける。

「ももー!怒られるぞ!ってツッコミ、心の中で何回したか」

可笑しそうに笑う千奈美。
少し拗ねた表情で桃子に文句を言おうとしている愛理の顔まで浮かぶようだった。
『ももだからねぇ』と肩を竦める仕草をする佐紀を見て、千奈美も相槌を打つ。

「あぁ、ま、しょーがない、ね」
「あぃりも何も言えないでしょ」

そう言うと佐紀は、再び携帯電話へと視線を落とした。
と、その時、何かを思い出したのか、『そだそだ』と千奈美の方に顔を向ける。

「ももねぇ」

そして、今度は、相変わらず舞美の膝の上でスヤスヤ眠っている桃子の方に視線を向けると微笑んだ。

「まぃみのファンクラブ作ってあげるんだってさっ」
「へ…?」






236 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:58








237 名前:3.イケナイ奮闘記[1-1.] 投稿日:2009/03/04(水) 23:58








238 名前:ちなつ 投稿日:2009/03/04(水) 23:59
本日はここまででーす
ちょっと間があいてしまいました;
最初考えていた内容とは変えて、小ネタをはさみたいなぁって事でw
では、よろしくお願いします。
239 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/05(木) 01:08
いいなあ
みんなでお泊りとか、楽しいなあ
240 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/05(木) 03:35
とっくま・みやまあ・ちなさき・あいりしゃ・やじもも・・・盛りだくさんでお腹いっぱい(笑)

個人的には熊井ちゃんが千奈美に腕枕してもらってるっていうのがとっても萌えました(笑)
241 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/05(木) 15:32
桃は愛理の邪魔をするなよな(笑)
242 名前:もんちっち 投稿日:2009/03/05(木) 19:31
ゆりちなの腕枕良いですねぇ。普段だったら熊井ちゃんがちぃにしてあげそうなのをあえてちぃが熊井ちゃんに腕枕した
所がいいですね。(笑)

ちなみやも良い感じであったし、顔がニヤけちゃう内容でした。
続きが楽しみです。
243 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/05(木) 20:20
↑レスはsageでしましょうね。
それとネタバレしすぎですよ。
作者さんでもいらっしゃいますよね。
読者としてのマナーもお忘れなく。
244 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/05(木) 22:41
千奈美!その携帯をよこせ!!w
245 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/03/14(土) 20:21
確かにそのケータイほしいな♪
246 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/20(月) 17:41
ちぃが可愛すぎます。

どうなって行くのかが楽しみです。
247 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/20(月) 17:42
すみません。


sageを入れるのを忘れてしまいました。
248 名前:ちなつ 投稿日:2009/04/26(日) 01:19
>239 名無飼育さん
試験勉強メインですけど、こんなときの方が楽しいですよね^^

>240 名無飼育さん
おなかいっぱいになって頂いてよかったです(笑)
ゆりちなはこの中でもメインなはずなんですが、なかなか出番が(苦笑)

>241 名無飼育さん
ももの言い分を聞いてあげて下さーいw

>242 もんちっち
あんまりゆりちなないので力を入れたトコ気に入って頂けまして嬉しいです^^
ちなみやももっともっと出したいですねぇw

>243 名無飼育さん
あ、ありがとうございますm(_)m

>244 名無飼育さん
いろんなみゃが入ってるから、あたしが先に貰います!

>245 名無飼育さん
何が写ってるか分からないのでだめです(笑)

>246 名無飼育さん
ありがとうございまーすw
ホンモノのちぃはもっともっとカワイイですw
249 名前:3.イケナイ奮闘記[1-2.] 投稿日:2009/04/26(日) 01:20

3.イケナイ奮闘記[1-2.]

「へぇ…」

千奈美の言葉に友理奈は不思議そうに首を傾げた。
少し視線を斜め上。
考えると今一度『へぇ』と首を傾げる。
そして隣で下を向きながら歩く千奈美をエスコート。

最後の確認とばかりに教科書に目を通しながら歩いてる千奈美、
ではなく、登校中にしては何故か珍しい携帯電話の画面を見ている千奈美を。

そんな千奈美の姿にも、不思議そうに首を傾げる。

いつもの学校へ続く長い並木道を歩くふたりは、
恒例のお勉強会&お泊り会の会場となった千奈美の家からの登校であった。

とは言っても、お隣りさんでもある友理奈は、一度家に帰ってからの登校となっているのだが。

まだまだ早い時間であり、他にはほとんど生徒は歩いていない。

ちなみに、他のメンバーは、各人一度家に帰って準備をしてから登校との事から、
早朝からめいめい家へと帰っていた。

「ももが言い出したんじゃなくってね…」
「…?」

言葉が詰まる千奈美。
やはり、手元に一生懸命である。

「…頼まれたの?」

仕方なく友理奈が話を繋ぐ。

「ん、…そぉ」
「…?」

どうやら今の千奈美の思考はどこか遠いお空、
吸い込まれるような青い世界に飛び立っているようである。

千奈美のこの姿、慣れているだけに、仕方がないと割り切れるものの、
やはり一緒に登校している間くらいは会話に耳を傾けて欲しいものである。

明日から一週間は試験休みとなり、一緒に登校できないのだから尚更である。
確実に会う機会は減るかもしれないのだ。
家がすぐ隣とはいえ、である。


250 名前:3.イケナイ奮闘記[1-2.] 投稿日:2009/04/26(日) 01:20

「はぁ…」

と、友理奈がため息をつくと同時に、千奈美もため息をついた。
そして『やっぱり今までで一番きれーだなぁ』と呟く。

「…?」

友理奈の視線に気付くと千奈美も顔を向けた。
そして、さっきまでの難しい表情はどこへやら、
千奈美の特徴である目尻を下げたニッコリ笑顔で友理奈に携帯電話の画面を向ける。

そこに映し出されているモノを見て、息を呑む友理奈。
次の瞬間には、自然と頬も緩んでいた。

もう既に公認の事実なのだが、
こりゃ人気あるょ、簡単に頷けた。

千奈美の携帯電話の画面には、幼馴染のひとりであり、
学校中の憧れの存在である雅の姿が映し出されていた。

目を閉じ、眠りについているその姿。
とてもキレイでありながら、可愛いらしさも感じられるその姿。
今年のグランプリもやっぱりこのヒトと感じさせるその姿。

しばらく見惚れる。

「今日の朝に撮ったの」

千奈美の言葉に、友理奈は少し視線を斜め上に向け、しばらく考えた後、頷いた。

「夏休み前、最後のFCメールの写メ?」
「ぴんぽーん」

千奈美が人差し指を一本。
『せーかい』と人懐っこい笑顔でにっこりと微笑んだ。

友理奈の言うFCメールとは、雅のファンクラブにおけるメール会報の事である。
数週間に一度のペース、もしくは学校でイベントがあった時、
学期の区切りなどなど、メールで雅の様子を配信するのだ。

その時の雅の様子のレポートや写真がメインとなるメール内容となる。

レポートはクラスメイトが代わり番こに担当するのだが、写真になると別。
クラスの中で一番近くにいて、一番雅が心を許している千奈美が担当となっていた。

たいていは、千奈美が撮る場合は、何も許可なくパシャリと撮ってよいと、
雅からの許可は貰っている。
ただし、配信する場合は、一応雅も目を通す事になってはいるのだが。

確かに、本人があまりお気に入りではない写真をメール配信されても、
それはそれでイヤなものである。


251 名前:3.イケナイ奮闘記[1-2.] 投稿日:2009/04/26(日) 01:20

「今までで一番いいかもしんなぃ」

自画自賛の千奈美は、日頃の舌っ足らずな口調とは相反し、流暢に話す。

「それにねぇ」

勿体ぶった様子。
ニッコリと目を細めると、再び人差し指をびしっといっぽん。

「ちょうど夏休み前じゃん?」
「あ、うん」
「だから、おやすみぃーってカンジ?」

なるほど、頷いた友理奈。

「おやすみぃーゃ?」
「…」

確かに、夏休み前、文章の最後にそれなりの文章を付け加えれば、
なかなかよさそうな繋がりであろう。

「で、なんだっけ…?」

千奈美の冷たい視線にトボケタ表情で返す友理奈。
三度視線を斜め上。
自分で質問し、自分で考える。

「もも」
「あ、そっ」

千奈美は表情を緩める。
今朝の佐紀の言葉を思い出した。

「そうそう!頼まれたんだってさ」
「頼まれた?」
「うん」

大きく頷いた千奈美は、携帯電話を一度、かちりと閉じた。

強い夏の光線の跳ね返りが友理奈の体を通す。
思わず目を細めた友理奈。

夏の日差しが一段と強く感じられる今日の通学路を通した携帯電話の光。
そして、その光を当てられたのだろうか、蝉の鳴き声まで一段と強くなった。

まさに夏休み前に、夏到来を感じさせるもの。

そんな日差しに照らされた大きな校舎が、
青々と生い茂った木々の隙間から目に飛び込んでくる。


252 名前:3.イケナイ奮闘記[1-2.] 投稿日:2009/04/26(日) 01:21

「なっきぃ」

千奈美の口から出てきた名前に驚いた友理奈。
思わず千奈美を見る。

近付いている校舎を眩しそうに見上げている千奈美を。

「なっきぃ?」
「そ」
「あの『なっきぃ』?」

改めて尋ねた友理奈。
頷く千奈美を見ながら、少し視線を斜め上。
そして、千奈美の口から出てきた級友でもある人物の顔を思い浮かべた。

「なっきぃ…?」
「何回ゆーの!」

笑う千奈美は、もう一度携帯電話を開きながら友理奈に体をぶつける。

「やー、だって…」

笑われて改めて考えるも、クラスメイトであるその人物と、
今まで話題に上がっていた内容は全く結び付かないのだ。

「まー確かにそだけどねぇ」

千奈美が同意すると、『でしょー』と大きく頷いた。

「あのなっきぃでしょ?」

友理奈の言葉に今度は千奈美が視線を斜め上、考える。
まさに先程の友理奈同様、話題の人物の顔を思い浮かべているのだろう。
しかし、すぐさま顔を左右にふりふり、否定する。

「でしょー」

再び同じ言葉を口にする友理奈。
そして、先程同様頷く。

と、その時、ふたりの背後から、『おはよー』と可愛いらしい声が聞こえてきた。
まさに女のコの声であるも、若干鼻に掛かったハスキーな声にも聞こえる。
あまりに特徴的なその声は、一度聞いたら忘れられない声と言えよう。

そんな声を持ち合わせている人物は一人しかいなかった。
振り返るまでもなく、ふたりには分かった。

ふたりは顔を見合わせ、『まさに噂をすればだね』と頷き合う。

そして、『おはよう』と、友理奈が振り返りながら朝の挨拶をすると、
千奈美も振り返り『おはよー』とご挨拶。


253 名前:3.イケナイ奮闘記[1-2.] 投稿日:2009/04/26(日) 01:21

そこには、一人の少女が、自転車を押しながら近づいてくる姿があった。
ふたつのおさげが可愛いらしく揺れている。

「おっはよー」

ふたりの前までくると笑顔で再びご挨拶。

黒いロングヘアーを左右にふたつでくくっている少女。
そして、背が高くてとても中学生離れしたスタイルをした千奈美や友理奈と並ぶと、
背の低さが際立ってしまうが、顔立ちに似合い、愛くるしさも感じさせてくれる。

しかし、幼げな表情を浮かべながらも、どこかふと大人っぽさも兼ね合わせている少女であり、
何より、その声が特徴的である。
声だけですぐに分かってしまうこの少女の名前は、『なっきぃ』こと『中島早貴』。

まさに先程まで千奈美と友理奈の間で話題に上がっていた女のコである。

「まさに噂をすればっての」

千奈美のその言葉に友理奈も頷くと、そのまま中等部の校舎の方へと足を向けた。
千奈美も、バックを早貴の自転車の前カゴに入れると、友理奈に続く。

その千奈美の言葉に、不思議そうに首を傾げた早貴は、
『ねぇねぇ何?』と、ふたりの背中に声を掛けながら、慌てて一緒に続いた。

「何何?」

千奈美に追い付くと、カーディガンの裾をちょこんと握り、くいくいと引っ張る。

そんな早貴の様子に千奈美と友理奈は顔を見合わせ、頬を緩めると、少し足を早めた。

「ちょっとぉ!気になる!」


254 名前:3.イケナイ奮闘記[1-2.] 投稿日:2009/04/26(日) 01:22

左右の長さ30mほどはある中等部の校門をくぐり抜けた三人。

中等部の校舎により造られる影に出迎えられた。

つい数年前に改修された中等部の校舎は、近年流行っているデザイナー監修の校舎であり、
とても近代的なオシャレな外観をしている。
さらに、女子校という事もあり、セキュリティも一段と強化され、
この敷地に入る以外に、各校舎に入るにもセキュリティカードを持たないと扉が開かないのだ。

少々面倒にも感じられるが、安全には変えられないし、持つだけで扉が開いてくれる為、
そこまで不便さは感じないかもしれない。

駐輪場まで早貴が自転車を置きに行くのに付き合った後、
中等部の校舎へ入った三人は、下駄箱で上履きに履き替えると教室へと向かった。

「で、さっきの質問!」

早貴の言葉に千奈美と友理奈が振り返る。

「何何?」

余程気になったのか、目尻を下げた不安顔の早貴。

「あー…」

千奈美が思い出したように頷いた。

「まぃみ」
「…?」
「まぃみのファンクラブ作ってって頼んだの?」
「あー」

千奈美の言葉に早貴は一瞬考えるそぶりを見せるも、すぐに頷いた。

「頼んだ頼んだ」

ところが、『でもね』と、すぐに否定の言葉が口から出る。

「頼まれたの」

千奈美と友理奈は顔を見合わせ軽く首を傾げた後、再び早貴の方を向いた。

「そなの?」
「うん。頼まれちゃってさ」
「だれぇ?」

千奈美の質問に軽く微笑んだ早貴は口を開いた。

「ちさと」






255 名前:3.イケナイ奮闘記[1-2.] 投稿日:2009/04/26(日) 01:22

一年生の教室は中等部の校舎の一階にあたる。
どこの学校宜しく、二階は二年生で、三階が三年生の教室である。
もちろん、千奈美は三階、友理奈と早貴が二階の教室である。

自分の教室へと繋がる二階に上がり掛けているところで早貴のその言葉と同時に踵を返した三人は、
一年生の教室の前までやってくると中を覗き込んだ。

教室の中は、よく顔を見せている教室だけに、だいたい見知った顔の少女がいる。
目が合うと軽く微笑み頭を下げる少女や、はたまた不思議そうに首を傾げる少女たちも。

そんな中、すぐ近くにいた女のコが三人に近付いてきた。

「おはよーございます」
「おはよー」

友理奈と早貴も『おはよう』と声を揃える。
ふたりにも軽く頭を下げると、再び千奈美の方を見た。

このクラスの中でも人一倍人懐っこく、千奈美が顔を出す度に声を掛けてくる少女である。

とはいえ、その目的はたいてい雅の事。

そう、雅のファンクラブに入っている女のコであるのだ。
千奈美を見る度に雅の事で話し掛けてくる。
昨年くらいまでは、よく写メをねだられていたくらいである。

しかし、雅の事とはいえ話し掛けてくれて悪い気はしない。
最近では雅の事以外でもよく話し掛けてくれる事もあるのだ。

「りぃですか?」
「あー、今日は違うっ
 てか、まだ着てないでしょ」

キョロキョロと見回している後輩と一緒に教室を見回す千奈美。
すると教室の一番奥、最後列で机に突っ伏して眠っている女のコを発見した。

「ちさと」
「…?…ちさとですか?」

頷く。

初めての事だから少し疑問に感じているのだろう。
普段千奈美が会いにくるのは決まって梨沙子。
そして、『あいりさこ』と二個一扱いとなる愛理くらいである。

そんな千奈美が、今日に限っては他のクラスメートに会いに来たとなれば、
不思議がられるのも無理はないという事であろう。

「んー、呼んできますね」






256 名前:3.イケナイ奮闘記[1-2.] 投稿日:2009/04/26(日) 01:23

「おはよ…」

前髪をゴムでひとつにくくり、オデコを出した少女は、早貴よりさらに小柄ながらも、
早貴とは全く違う雰囲気をした女のコである。

まさに女のコのような仕草、話し方をする早貴とは異なり、
少年のようにとても元気が良さそうな雰囲気を醸し出していた。

さらにその声も女のコにしては低く、それさえ少年のようである。

そんな少女の、切れ長の目を少し細めて笑うその表情には、人懐っこさも充分。
友達からは『ちっさ』や『ちさと』と呼ばれているこの元気が取り柄の少女の名前は『岡井千聖』。

ただ、今日に限っては元気印もなりを潜めている。

それは、もちろん試験期間中だからである。

試験がスキだなんてヒトはまずいないが、千聖に限っては殊更キライな分類に入るだろうし、
この期間中だけは口数も激減、不機嫌さも五割増しする事で有名なくらいである。

あまり級友も近付きたくない今の千聖。
今にも噛み付いてきそうである。

「はよ」
「なにぃ?」

語尾を上げて聞くその口調に隠し切れない不機嫌さを滲み出ている千聖は、
珍しいお客さんである千奈美と友理奈を見た後、早貴に視線を向けた。

「ぁ…」

やっぱり不機嫌な千聖の様子に、口をつぐむ早貴。

一方、前に押し出された早貴の後ろに隠れた千奈美と友理奈は、
やっぱり不機嫌だね、と小声で囁き、お互いに顔を見合わせていた。

我関せずといった雰囲気で早貴の背中を軽く押す。

「やー、ほら、あれ」
「…なにぃ?」
「ちさとさ、まぃみちゃんのファンクラブを作ってって頼んだじゃん?」
「あー」

早貴の言葉にすぐに頷いた千聖は少し表情を緩めた。

「ほら、まだ理由聞いてなかったなぁなんて思った訳ですよ」
「理由?」

視線を斜め上、少し考えた後、あっけらかんとした表情で、ヒトの名前を口にした。

「まぃちゃん」

その言葉に、早貴は一瞬考える。
そして、その言葉の意味を理解すると、人差し指をびしっと立てた。

「頼まれたの??」
「うん」

大きく頷いた千聖は、今日一番の笑顔だった。






257 名前:3.イケナイ奮闘記[1-2.] 投稿日:2009/04/26(日) 01:23








258 名前:3.イケナイ奮闘記[1-2.] 投稿日:2009/04/26(日) 01:24








259 名前:ちなつ 投稿日:2009/04/26(日) 01:25
スミマセン!時間があいちゃいました(>_<)
とうとうみんなもう一学年あがっちゃって2学年違う設定に(ためいき)
もう追いつかないなぁ。。。
と、こんなお話ですがこれからもよろしくお願いします。
260 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/04/29(水) 21:43
裏方に回った時のツグ氏って、ハロプロ中でも最強じゃないですか。

表に出てて、目立つのは当然ですが。
261 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/05/31(日) 20:36
みんな揃ったかな?


それぞれが役目をもって物語が進んでいくんですね。
262 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/06/24(水) 22:11
ちぃはどこに向かっていくのかな[


続きに期待してます。
263 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/07/19(日) 18:35
2学年離れちゃっても問題ないと思います。

ゆっくりでも続きを待ってます。
264 名前:ou 投稿日:2009/11/11(水) 01:16
まだ?
265 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/11/11(水) 10:41
期待しちゃった分ショック。ageないで欲しい。
266 名前:noa 投稿日:2009/11/14(土) 15:51
続き楽しみに待ってます!
267 名前:名無飼育さん 投稿日:2009/12/23(水) 12:50
来年になろうとも待ち続けます。
268 名前:名無飼育さん 投稿日:2011/09/12(月) 00:03
もう来ないのですか?

ログ一覧へ


Converted by dat2html.pl v0.2