いけない夢
1 名前:kouei 投稿日:2007/12/30(日) 16:42
はじめまして。
Berryzと℃-uteを中心に短編やら長編にチャレンジしたいと思います。
文才はありませんが、よろしくお願いします。
2 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/30(日) 16:59

そう
それは突然すぎた恋のはじまり…
3 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/30(日) 17:27


「愛理、これ美味しいねー。」
「ほんと〜?でも、ももちゃんの作ったクッキーの方が美味しいからー。」

桃子、雅、栞菜、舞美、えりか、そしてあたし。
いつも一緒にいるあたし達は今日も時間を共にする。
いつも放課後の教室は賑やかで、飽きる事はない。

その中で、あたしは恋をしていた。
いつもかっこよくて優しい…雅に。

今日もあたしの焼いたクッキー美味しいって笑ってくれた事に喜んでる。
4 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/30(日) 17:44


みんなと一緒の時間が楽しくて、帰宅の時になるとちょっぴりさみしい。

帰り道がバラバラだから、いつも正門でばいばいする。

あたしは電車通学で駅まで歩き。しかも、学校から駅まで結構遠くてめんどう。だけど、電車通学の相方がいるから苦ではないのです。

「…愛理、行こっか?」
「あたし達以外チャリ通学なんだねぇ。」
「今更なに言ってんの。」
あたしの改まった発言にクスッと笑う栞菜。

そう、あたしの相方というのは栞菜の事。
栞菜とは気が合うというか、一緒にいて楽しい。
だから、駅までの長い道のりも短く感じるのです。

今日もくだらない会話を交わす間に駅が近づく。
あたしは覚悟してた。今日こそ、雅の事について栞菜に相談しようって。

5 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/30(日) 17:58


栞菜は雅と仲がいい。
二人は同じバスケ部で、雅は部長、栞菜は副部長を勤めてる。
だから、雅の事を知ってそうな栞菜に相談しようと思ったの。

「…愛理?どうかした?眉に皺なんか寄せて。」
なんて話を切り出そうか考えてたら、いつの間にか黙り込んでたみたい。
心配そうに顔を覗き込んでる栞菜に笑顔を見せた。

もう目の前には人気のない駅。
この勢いで相談しちゃえ!!!

「……か、栞菜…あのっ……っ!?」

その後に続く言葉がでなかった。正確に言うと、言葉を発する事ができなかった。

だって……栞菜に、キスされてたから…。
6 名前:kouei 投稿日:2007/12/30(日) 18:04
早いんですけど、本日はここまでです。
実際は年齢とかバラバラですけど、この中では同学年設定ということで…。

…そんな方いらっしゃらないと思いますが、次をお楽しみにしていただけると光栄です…。
7 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/30(日) 18:12
おおー
ベリキューミックスものになるのかな
これは楽しみですね
8 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/30(日) 21:08
面白そう!
続きが気になります…!
9 名前:名無飼育さん 投稿日:2007/12/31(月) 00:58
なかなか珍しいメンバーの組合せですね
楽しみにしてますよ
10 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/31(月) 20:13



栞菜に…キスをされちゃった……。



11 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/31(月) 20:35


唇に触れて、どれくらい経ったんだろう。
時間を計ったら一瞬だったのかもしれない。でも、考える機能がヒートアップしたあたしには何時間にも感じられたのです。

遠くに踏切の音が聴こえた。

同時に重なっていた唇が離れていく。
スローモーションに。

「……やばっ。上りの電車きたみたい。」
「……………う、ん。」
「んじゃ、また明日ね!愛理。」
「……………う、ん。」

一秒前にキスした栞菜は、なんにもなかったみたいな顔して手を降って、エナメルバックを揺らせながら走っていく。

顔も頭もまだまだヒートアップしているあたしは、その後ろ姿を見つめて立ち尽くした。
12 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/31(月) 20:49

なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんでっ!?
何度、何時間考えたって謎は解けない。


あれから、思考が正常に動くようになるまで結構な時間がかかった。
電車に乗ってからも、何故か熱を持った唇に何度も手を当てた。そのたびに顔が赤くなる事が自分でも分かる程で。
多分、周りの人に変な子だって思われただろうな…。
13 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/31(月) 21:04

でも、電車が逆方向で本当に助かったと思う。
これで帰る駅まで一緒なんていったら、心肺停止で病院送りだったよ。
いや、冗談抜きで。

帰ってきてから、ベッドの上でずっと天井を見つめている。
食事もしてない。
唇に何かが触れると、思い出しちゃうから…。

「……んもぅ!!栞菜のバカー!!」

この気持ちをどうにかしたくて、枕に顔を押し付けて叫んだ。
14 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/31(月) 21:24


「……愛理…愛理ー…愛理っ!!いい加減起きなさいっ!!」

お母さんの怒鳴り声で目を覚ますと、いつもの起床時間より1時間半も遅い。

……最悪。

いつもなら、早く起きてシャワーを浴びて、メイクして、髪を整えて…。
最後に鏡を見て、『よしっ!』って思って学校に行くのに…。

制服に着替えて、寝癖も直さないで、リビングのテーブルに置いてあるトーストをくわえて家を出る。

少女漫画の世界の主人公になった気分。
決して、曲がり角でかっこよくて爽やかな男の子とぶつかるなんて事はないけど。

そして、今日もサラリーマンや学生で満員の電車に乗り込んだ。
ギリギリセーフでいつもの時間の電車に乗れた事は、いうまでもない。
15 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/31(月) 21:47


いつもの駅で降りて、いつもの道のりを歩く。
帰りは栞菜と一緒だけど、行きは栞菜が朝練あるからひとりになる。

昨日の出来事を思い出しながら歩くあたしの胸の音はいつもよりスピードが早い。
動悸、息切れには救心…なんてね。

少しでもドキドキをしずめようと思ってゆっくり歩いていると、後ろから走ってくる騒がしい足音が聞こえた。

足音から、どうやら全力疾走。
会社に遅刻しそうなサラリーマンか、ご苦労様です。
あたしの横を通り過ぎる時にでも、そう心で呟こう。

しかし、あたしの予想は大ハズレ。
予想だったサラリーマンは、あたしの肩をポンと叩くと、いつものはじけるような笑顔で現れた。

「おっはよー!寝癖ついてるぞー!!」

あたしの乱れた髪を掻き回して、更に乱れた状態にすると、彼女は昨日の帰り道のように、エナメルバックを揺らせて走っていった。

昨日のキスなんてどうにも思っていないような、向日葵みたいな笑顔で。
16 名前:恋のはじまり 投稿日:2007/12/31(月) 22:03

教室に入ると、仲良し組で唯一同じクラスの舞美ちゃんに、寝癖のひどさを驚かれた。
まさか、栞菜に会っちゃって。また心臓が一人で先を走っちゃって。
栞菜にぐちゃぐちゃにされた寝癖なんて直す余裕なく、教室に辿り着いてた。

それから、舞美ちゃんに寝癖を直してもらって、軽くメイクして。直りきらなかった寝癖を隠せるようにポニーテールにしてもらった。

…まぁ、授業が手につくはずもなく。
手に持つペンは意味もない線をただ広げたノートに伸ばし。視線は窓の外へ。

大好きな雅の事なんか忘れて、一日中、栞菜の事考えてた…。
17 名前:kouei 投稿日:2007/12/31(月) 22:36
本日の更新はここまでです。

>>7
ベリキューどちらも出したくて、こんな事になってます(笑)
ありがとうございます。ご期待にそえられるか不安ですが…頑張ります。

>>8
あわわわっ!ありがとうございます。
面白そうで終わらず、面白いと言ってもらえるよう頑張ります(笑)

>>9
作者自身も面子が珍しいと作りながら思っています(笑)
ありがとうございます。

今年はもう少しで終わりますが、来年もぜひよろしくお願いいたします。
18 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/03(木) 14:07

短い一日のうちの半分を潰してしまう授業が終わると、放課後という自由を手に入れ、個々に散っていく。
部活動に精を出す人、予備校に向かう人、友人や恋人と出掛ける人。

…あたしはと言うと、今日はみんなと楽しくお喋りするような気分じゃないし、帰る準備をしてた。

「…愛理ー!!」
舞美ちゃんが荷物を持って近寄ってくる。
今日は帰るね、って言うために口を開こうとすると舞美ちゃんの方が先に口を開いた。
「早く行くよー。」
……忘れてた。
あたしと舞美ちゃんは、週に一度体育館に部活の練習を見に行く。

目当ては、バスケ部とバレー部。

きっかけは、舞美ちゃんがバレー部のえりかちゃんのファンだった事。
練習姿を偶然見かけた舞美ちゃんが一目惚れしたらしい。

それで、バレーをしているえりかちゃん見たさに、週に一度だけ邪魔にならないようにコッソリ体育館の観客席から練習を眺める事にした。
あたしは舞美の付き添いで行ってただけなんだけど、バレー部の隣で練習しているバスケ部を見ているうちに雅に恋して、いつの間にかあたしの楽しみになっていた。
19 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/03(木) 14:34

期待に目を輝かせる舞美ちゃんの誘いを断りきれなかったあたしは、観客席の椅子に座っていた。
あたし達以外にも、ちらほら練習を見に来ている女の子がいる。多分、雅や栞菜やえりかちゃんのファンだろう。
三人とも、かっこいいからねぇ…。

ボールが飛んでいかないように、真ん中を網で区切っているコートを覗き込むと、左側に楽しそうに話しながらストレッチをする雅と栞菜の姿が見えた。

練習を見ていても、今日は栞菜ばっかりに目がいく。

…あっ、スリーポイント入った。
…雅とハイタッチしてる。
部員の子達に抱きつかれて嬉しそう…。

……どうしてキスなんかしたのよ…。

胸の中で、コートの中を走り回ってる栞菜に問いかけた。
聴こえるはずなんかないのに。

すると、雅の休憩の合図。
給水に向かう部員の中で、栞菜は立ち止まってた。
いつの間にか観客席を見上げてて、小さく……微笑んだ。

目が、合ったような気がした。
20 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/03(木) 14:49

心臓を捕まれているような感覚に陥る。
ドキドキが止まらなくて、胸に手を当てた。
落ち着けって暗示をかけながら。

横から練習を見ている女の子の声が聞こえてくる。
「…キャー!!栞菜先輩がこっち見て笑ってくれた!!」

そうだよ。
あたしに向かって笑ったんじゃない。自意識過剰すぎる。

元々、栞菜はスキンシップが激しい。
ほら、今もたくさん汗かいてるのに部員の子の腕にベタベタくっついてる。
あの時も、ちょっとしたイタズラでやったんだよね…。

練習を見ているの間、頭の中で、無理やりそうやって考えるようにした。
21 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/03(木) 16:03

あれから2週間が経った。

栞菜との関係は今まで通り。
帰り道は一緒に帰るし、お喋りだって普通にする。
会話の中に、あの時のキスの話題は出てこないけど。

普通なんて言いながら、栞菜と一緒にいるとあたしは未だにいっつもドキドキしてる。
唇に目がいくと、あのキスを鮮明に思い出す。

でも、この2週間で色々と変化もあった。
22 名前:kouei 投稿日:2008/01/03(木) 16:04
更新終了。
23 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/03(木) 22:24
まさかの大好きなCPなので、次の更新も楽しみにしてます!!
24 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/04(金) 02:29
このCPかぁ
最近やじすずが多いので新鮮
25 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/06(日) 20:32

まず、ひとつ。
舞美ちゃんの恋が叶った。

でも意外なことに、告白はえりかちゃんからだったらしい。
これ以上の事は舞美ちゃんが勿体ぶって教えてくれないんだけど…。
とにかく、よかったよかった。
26 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/06(日) 20:33

舞美ちゃんとえりかちゃんがそのような関係になってからというものの、もう遠慮しなくていいなんて言われたのか、バレー部の練習日は必ず体育館に通うようになった。
一人で行けばいいのに、習慣化というのは怖いもので毎回あたしも一緒に連れて行かれる。

しかも、バレー部の練習日は隣がバスケ部。
舞美ちゃんのノロケ話を右から左へ受け流しながら、バスケ部の練習を眺める。
27 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/06(日) 20:35

無意識に、いつの間にか、

栞菜を目で追いかけるようになっているあたしがいた。
28 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/06(日) 21:25

そして、もうひとつの変化。

その日、あたしは部活が終わった栞菜と偶然下駄箱で会って、一緒に帰ることに。
もう少しで駅に到着というところで学校に携帯を置き忘れたことに気付いた。
栞菜は部活で疲れてるだろうし、一人で戻ろうとしたら、栞菜が後を追ってきて。

「あたしも一緒に行くよ。…可愛い女の子ひとりで夜道を歩くのは危ないもんねぇ。」

冗談めいた口調って分かっていながら、心拍数が上がっていた。

キスしといて可愛いなんて冗談でも言うな…ばか。
意識しちゃうじゃんか……。
29 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/06(日) 22:02

学校に着いた時、辺りは真っ暗になっていた。

栞菜の協力もあって、携帯は結構早く見つかった。
最初は教室になくてどうしようと思ったけど、栞菜が機転を効かせて職員室で聞いてみろって。
職員室に行ってみると、教壇に一個だけあたしの携帯が置いてあってそれを見つけた先生が預かってくれていた。
30 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/06(日) 22:03

「みつかって良かったねぇ!!」
「…うん。でも…時間、遅くなっちゃった……ごめんね?」
「いーの、いーの。気にすんなぁ。」
今日二度目の帰り道。
部活で走り回って疲れてるはずなのに、笑顔であたしにつきあってくれた栞菜。

申し訳ないと思う半面、喜んでいるあたしがいる事に気付く。
……何故。
さっきだって、そう。
可愛いなんて、友達の間でもよく言い合ったりするのに…。

確かに、栞菜はキスされたっていのがあるから少しは意識しちゃうけど。
栞菜はキスの事を話題にしてこないし、そろそろ忘れてもおかしくない。
だけどあたしの心は、栞菜に可愛いって言われてドキドキした。

多分…嬉しかったんだ。

気付きかけていた。
31 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/06(日) 22:07

そんな時、いつも別れる場所になる駅に着いて。
「そんじゃ、また明日ね。愛理。」
「また、あした。」
「もう暗いし、気をつけて……あっ!家まで送ろうか?」
「……なっ、何言ってんの!!栞菜の家逆でしょ。大丈夫だよ!」
栞菜の言葉に、思った以上心臓が跳ねた。
「そっか。そこまでか弱くないってか?」

栞菜が、ニッシッシなんて擬音が似合う笑顔で笑う。
あたしも怒ったみたいに頬を膨らませる。
そんじゃ、ってもう一回言って栞菜が上り電車のホームに繋がる階段を降りていく。

心臓の音が元通りに戻ったとき、向かいのホームに栞菜が見えた。
それと同時に、あたしの乗る電車がホームにやってくるアナウンスが入る。

電車がホームに入ってくる瞬間、栞菜が優しく微笑んだ。

電車の扉が開き、人波に任せて呑み込まれるように乗り込むあたし。

閉まった扉の窓に反射した自分の顔が、赤くなっているように見えて。
心臓がどきどき、どきどき。
普段より早く波打っていて。
目を閉じると、写るのは優しく微笑む栞菜で。
一日中、栞菜のことをたくさん考えていて。

走り出した電車の中で、あたしは気付いてしまった。
32 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/06(日) 22:08

…あたし、栞菜の事が好き、みたい…。
33 名前:kouei 投稿日:2008/01/06(日) 22:15
更新終了。

>>23
ありがとうございます。
あはっ、同志さんですね!!私も一番好きな組み合わせで現在書いてますので。

>>24
やじすずに対抗してみました(笑)
いえ、あいかんには勝てませんが、やじすずも好きですよー。

なんか作者自身考えていたよりもストーリーが長くなっている気がしますが、そんなの関係なく突っ走りたいと思います…。
34 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/07(月) 00:54
登場人物も多いし話しの広がりそうな舞台設定ですね
どんな話になるか楽しみです
35 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/08(火) 22:51
一番好きなCPなんでワクワクしながら読みました
引き続き頑張ってください
36 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:32

「よっしゃー!もう1本行こー!!」

彼女の声が
あたしの耳に
心に
木霊する。
37 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:33
栞菜を好きだと思うと、なんだか気恥ずかしくて。
改めて好きだと思うと、特に喋っているわけでもない真下でバスケットをしている栞菜の事を直視できない。
そんなわけで、まだ灯りのついていないライトの並ぶ天井を見上げながら座っている。

「…おーい、あいりー?天井と睨めっこして楽しいー?」
「んー…そんなでもない。」
声の聞こえる右隣を横目に見ると、さっきまで練習中のえりかちゃんをハートの瞳で見つめていた舞美ちゃんが座ってた。
どうやら、バレー部は休憩中みたい。
38 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:34

「さっきから溜息ついたりしてー。……まるで、恋煩いしてる乙女みたいだぞー!!」
冗談って分かる口調で話す舞美ちゃんの言葉に過剰反応してしまうあたしの頬は、自分でも分かるくらい熱くなった。
へらへらと笑ってた舞美ちゃんはあたしの顔を見ると、口半開きの驚いた表情に変わる。

「……まさか、本気で恋煩い…?」
39 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:36

こうなるともう隠しようもなく、今までの経緯を全て舞美ちゃんに話した。
舞美ちゃんは驚き半分と感心半分って顔をして口元に手を当てていた。
「…栞菜やるねぇ。ちゅーして愛理の気持ちまで奪っちゃう…。でも、なにもなかったように今まで通りに接するなんて。謎のポーカーフェイス野郎だ。」
「……うん…?」
最後の『謎のポーカーフェイス野郎』っていうのは正直よく分からなかったけど、とりあえず頷く。

「恋は理屈じゃないからねぇ…。とりあえず、愛理は本当の恋に出会えたわけだ。」
「…本当の恋?」
「そうそう。多分、これはあたしの憶測だけど、愛理は好きと憧れの気持ちがごっちゃになってたんだよ。憧れっていうのが雅、好きっていうのが栞菜。」
「…好きと憧れ。」
「なんかさ、かっこいいなぁとかいう憧れが恋なんだって思い間違えちゃう事ってあるじゃん。」
「…そういうもの?」
「そういうものさ。…だって、今一番一緒にいて楽しいとか嬉しいって思うのは誰?」
「……栞菜…。」

「今何してるかなとか思ったり、頭の中にいつもいるのは?思わず目で追っちゃうのは?手を繋ぎたい、ぎゅーってされたいって思うのは、誰?」

舞美ちゃんの質問、答えに出てくるのは全部、栞菜ばっかりで…。
舞美ちゃんにしか聞こえないような小さな声で、栞菜、って答えると、よしよしなんて優しく頭を撫でてくれた。
40 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:37

「愛理は、ちゃんと栞菜の事好きなんだね。気のない子にキスされたからって、好きじゃない人をそんなに思う事ないもん。キスがきっかけで、愛理は自分の本当の気持ちに気づけたのかもね。」
「……でも、これからどうすればいいのか分かんない…。」
「…そりゃ、もう直球ストレートで気持ちを伝えるっきゃないでしょ!!」
目を輝かせてガッツポーズをする舞美ちゃん。気合い入りすぎだよ。
「…でも、」
「でも、じゃないっ!!…早くしないとあの子達に栞菜、取られちゃうかもよ。」
舞美ちゃんがこっそりと指差した先には、いつもバスケ部の練習を見に来ている女の子。
確かに、栞菜先輩とかなんとか言ってるとこ何度も聞いたかも…。
41 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:39

「恋なんて当たって砕けろだよ!!」
「砕けちゃうの…?」
「…まぁ、もし万が一砕けた時は、あたしとえりがいくらでも慰めてあげるから!」
「………ばかっぷる。バカップルのお世話になんてならないもん!!」

睨みを効かせて、いーって歯を見せて笑うと、舞美ちゃんが安堵の胸を撫で下ろすように笑った。
42 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:39

当たって砕けろ。
そんな事言われたら、行動するっきゃない。
慰めるなんて言う舞美ちゃんをぎゃふんと言わせたくて(さっき栞菜を取られちゃうかもって言われて焦っているのが本心だけど)、給水の合図が掛かったバスケ部のコートを前のめりに覗き込んで立ち上がって、大きく息を吸った。
43 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:40

「有原栞菜ー!!今日練習終わったら校舎裏の桜の木の下まで来ーい!!」
44 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:42

周りの目なんて気にせずに、一息で叫んだ。体育館にいる人の目線が、一気にあたしに集まった。
そんな中で体育館の隅、口に含んでいたスポーツドリンクを噴き出している栞菜の姿が見える。
目を丸くして半袖の裾で口を拭きながら頷いて、分かった、って返事が返ってくる。

「…愛理、それじゃ果たし合いを申し込む柔道部みたいだよ…。」
前のめってた身体を反転させると、顔にぎゃふんと書いてある舞美ちゃんの姿。

「それでは、鈴木愛理。果たし合いの準備にとりかかります!!」
兵隊さんのまねごとをするように、舞美ちゃんに敬礼をして、笑顔を見せる。
ありがとう、って気持ちを込めて。
45 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:44

さて、出口まで歩き出そうとしたとき、舞美ちゃんに腕を掴まれて向き合わされた。
あたしの手を握って念を込めている舞美ちゃんを見上げると、優しい笑顔を向けられる。

「…愛理の恋が成就するように。あたしのパワー注入しといたから……とか言って。」

握っていた手が放れると、今度はぽんっと背中を押される。

「いってらっしゃい。」

舞美ちゃんに背中を押されたら、軽い足取りで歩けた。
これが、舞美ちゃんの言ってるパワーなのかな?
46 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:45

体育館を出る前に、ちょっとだけ栞菜を見ると。
口を開きっぱなしであたしを見ていた。
47 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:45

覚悟しとけよ、ばかかんな。

48 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/01/10(木) 22:46

ちょっと間抜けな顔した栞菜に向かって心の中で呟いて、あたしは体育館をあとにした。
49 名前:kouei 投稿日:2008/01/10(木) 22:55
更新終了。
やじすずはCPというより、友情関係だったり姉妹っぽい関係の方が好みだったりします。

>>34
この後に、やじうめの話も書きたいな、なんて思ったりしています。
長編物になるかどうかは分かりませんが、ありがとうございます。

>>35
ありがとうございます。
一番好きなCPですかっ!!同じくです!!(笑)
妄想まっしぐらで頑張ります。

とりあえず、この話は次でラストになると思われます。
50 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/12(土) 00:32
次でラストだなんて…
大好きなCPなので、終わるのは寂しいですね。。。
さっそく続編など期待して待っていてもよろしいでしょうか!?
51 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/01/18(金) 22:24
好きなCPです
あんまり見ないので頑張って下さい!!!
52 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/01(金) 21:45
次の更新も楽しみに待ってます!!
53 名前:名無飼育さん 投稿日:2008/02/04(月) 20:13
そろそろ、どうですか・・・
54 名前:sage 投稿日:2008/02/10(日) 20:47
更新待ってます!!
55 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:34

うちの学校で恋する乙女達が告白する場所の十八番。
それが、あたしの今居る校舎裏の桜の木の下。

ここで、何人の女の子の恋が実り、恋が散っていったのか。
知っているのは、この大きな桜の木だけ。

なんて言っても…今は春の訪れを待つ冬だから、桜の花びらなんて1枚もない寒そうな桜の木。

告白するって雰囲気ゼロ。

何分ここで待ってるんだろう。
携帯は教室に置いてきちゃったから、時間を知る術がない。

とりあえず寒い。
こんなんならどっかの空き教室に呼び出せば良かった、なんて今更後悔。

56 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:36
そんな事思ってると、校舎の角からタオルを首から掛けたバスケ部のジャージ姿の栞菜が小走りに現れる。
片手にはペットボトルのミネラルウォーター。
前髪上げてるいつもの運動する時のスタイル。

「…愛理、いたー!なんだよ急にー。」
部活終わってすぐ来てくれたのかな。
少し広い額には汗が浮かんでるし、ちょっと息を切らせながら喋ってる。

57 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:36

…こうやって改まって2人になると、緊張。
心拍数が急激に上昇してるのがはっきり分かる。
そんな事知らない栞菜は、暢気に目の前で水を飲んでる。
唇に目がいってしまって、もっと心拍数があがっていきそうな心臓に静まれってお願い。

58 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:37

さぁ、いざ勝負。

59 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:37

「あ、あのねっ!!栞菜!」
「…ん?」
ペットボトルの蓋を閉めながら、栞菜がこっちを見る。
首を傾げる栞菜のちょっと前にバッサリ切ったショートの髪が揺れた。

「……あの、ね?」
「うん。」

60 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:37


「あたし、栞菜が…好き…。」

61 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:38

「……えっ?」
なに間抜け顔してんの。
そんな気の抜けた顔されたら、こっちが恥ずかしいじゃんか…。
「どっ…どうしたの?愛理。」
「だから…栞菜が好きなの。」
2回も言わせるな。
栞菜の間抜けだった顔が、今度は眉を寄せて困った表情に変わる。

苦しい。
栞菜から次に発される言葉が怖くて。

ゆっくりと、栞菜が口を開く。

62 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:38

「…愛理……愛理は、あたしなんかじゃないよ。」

…何?

「あたしが、キスしたからでしょ?…ごめん!!愛理は勘違いしてるだけだよ!変に意識しちゃって、それが好きとごっちゃになってるんだって!」

違う。

「よーく考えて。愛理には、他に好きな人がいるはずだよ…。」

63 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:39

違う。
栞菜の事好きじゃなかったら、こんなに苦しいはずない。
栞菜の事好きじゃなかったら、こんなに涙が溢れるはずない。

涙でにじむ栞菜の顔は、さっき以上に困ってる。
「…ごめんね、愛理。」
困った顔でそう呟いた栞菜は、あたしに背を向けて歩き出す。

64 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:39

他に好きな人?
いるわけないじゃん。
あたしはもう栞菜の事、こんなに好きなんだから。

あたしを好きにさせたのは誰?
人の唇奪っておいて、なによ?
人のことこんなにして…

65 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:40


「…せ、き…責任取れー!!ばかかんなー!!!!」


66 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:40

あたしから離れていく栞菜の背中に叫ぶ声は、我ながらひどい涙声。
そんなの関係なく、あたしは栞菜に叫んでいた。

「栞菜の事好きなんだからしょうがないでしょ!!最初にキスしてきたのはどっち!…あたしばっかり気にして、栞菜は何もなかったみたいにするし…。もうあたしの中では栞菜が一番なの…。」

自分で言ってること分からなくなってるし、涙でぐちゃぐちゃだし、もう最悪。

怖くて目の前は見れないけど、栞菜から返事はない。
代わりに、何かが地面へ落ちる重い音。
それが栞菜の持っていたペットボトルだって事に気付く。

顔を上げようとするけど、それはできなかった。
栞菜に、抱きしめられていた。

67 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:41

「…ほんとに、あたしなんかでいいの…?」
抱きしめられた状態で、問われる。
栞菜の声が震えてるように聞こえる。
「…あたし、愛理が雅のこと好きなの…知ってた。愛理があたしにその事相談しようとしてたのも、何となく分かってた。あの、帰り道も。だから、愛理から聞きたくなくて…気付いたらキスしてて…。あたしこんなズルい人間だし、愛理に好きって言って貰える資格ないよ。」
「…そうだったんだ。」
「だから、今のうちだよ。今なら、まだ間に合うよ。」

あぁ…あたし重症みたいだよ、栞菜。
そんなズルい栞菜もね、今絶対困って情けない顔してるはずの栞菜も
全部好きみたい。
だから、今のうちなんて言わないで。

返事の代わりに、あたしより少し背の低い栞菜の身体に腕を回す。
数秒後、栞菜が回した腕に少しずつ力が込められる。
「……あとから好きじゃなかったなんて、なしだからね。」
「うん。」
「あたし、多分愛理が思ってる以上に愛理の事好きだよ。ずっと前から。」
「うん…だったら、キスで口封じなんてしないよね。」
「…あれしか思い浮かばなかったんだって。」

身体を少し離して栞菜の顔を見てみる。
少し困りながら照れたように笑って、あたしの頬に手を添える。
キスかと思って身体が強張ったけど、栞菜は頬に伝っていた涙を拭ってくれた。

68 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:41


突然すぎた少しおかしな恋のはじまりは、こうしてハッピーエンドを迎えた。

69 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:42

それから、また少し変わったことがある。
舞美ちゃんはバレー部のマネージャに。
あたしは、マネージャーが辞めてしまって困っているももちゃんに誘われて半強制的にバスケ部のマネージャーになってしまった。

「愛理!そろそろ給水だからドリンク配るよ。」
「りょーかい。」

近寄ってくる部員にドリンクを手渡して、最後に渡すのは決まってこの人。
「愛理ー!!水ー!!!」
「ナイスファイト。」
「さっきスリーポイント決めたの、見てた?」
「ごめん…ドリンク作ってて見てなかった…。」
「えぇ!…じゃ、次は愛理のためにスリーポイント決めるから、ちゃんと見ててよ!」

歯を見せて笑う栞菜のこういう発言に、まだまだ慣れないあたしは顔を真っ赤にしてしまう。
すると、後ろから現れた雅が栞菜にゲンコツを落とす。
「…浮かれてないで、早くコートに戻る!」
「…はーい、部長。すいませんー。」
雅とコートに戻っていく時、こっそりあたしに微笑む栞菜。
声に出すのは恥ずかしいから、がんばれ、って口パクで伝えておく。

70 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:43


「ありゃ、バカップル発見…愛理誘ったの間違いだったかな。」


71 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:45

笛が吹かれると、ゲームがはじまる。

72 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:45


あなたとの恋は
まだはじまったばかり。

73 名前:恋のはじまり 投稿日:2008/03/13(木) 23:46

『恋のはじまり』
END.
74 名前:kouei 投稿日:2008/03/13(木) 23:58

お久しぶりです。
帰ってきました!!

色々と忙しくしていたら、いつの間にか未完のまま3月になってしまい…。
お待ちいただいていた皆様には申し訳ございませんでしたm(__)m
そしてコメント下さった方、誠にありがとうございます。
おかげで、恋のはじまりも一応終わりました。

この続きは色々と考えていますので、順次執筆していこうと思います。
これからもよろしくお願いします。
75 名前:kouei 投稿日:2008/03/13(木) 23:59

隠し
76 名前:kouei 投稿日:2008/03/13(木) 23:59

隠し
77 名前:kouei 投稿日:2008/03/13(木) 23:59

隠し
78 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/03/14(金) 01:30
更新お疲れ様です!
やじうめのなりそめ話なんかも読んでみたいですねー
79 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/03/14(金) 10:04
きてたー
お疲れ様です!
これからも応援してます
80 名前:名無し飼育さん 投稿日:2008/06/26(木) 03:38
甘くて素敵な愛栞ありがとう
愛栞いいですよね…ほんとに…
続きなり、別ものなり期待してますぜ
作者さんの書く愛栞は好みですw

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